2011年7月30日土曜日

やる気の秘密(13)勉強の意味 心に刻む

(読売 6月1日)

「好きな子が落とし穴の近くを歩いているのが見えたら、
『危ないよ!』って叫ぶよね。
お父さんやお母さんが、みんなに勉強しいよ!って言うのも同じ。
言われたら、『ありがとう』って言おう」

塾長の本田篤嗣さん(36)が話すと、中学生たちに笑顔が広がった。
山口県内に5教室を展開する「みかみ塾本田屋」の
名物「ココロ・トーク」。
小1から高3まで約300人の教え子に、勉強に向かう心構えを、
授業の合間に照れることなく、繰り返し説く。

「勉強の成績は、才能みたいなもので決まっちょると思ったら大間違い。
やるから上手になる。上手になると思ってやろうや!」

大学卒業後、音楽活動のかたわらテレビ局勤務なども経験し、
CDデビューも果たしたが、事務所が倒産。
高校時代から家庭教師をした経験を生かして塾講師になり、
その後、独立して6年。

同じ勉強をしていても、成果が出る子と出ない子がいる。なぜか?
心理学や思考法など本を乱読し、「勉強に向かう心の問題ではないか?
との思いに至り、生徒に語りかけるようにブログに書いた。

「勉強にやる気はいらない。言い訳になるくらいなら行動しよう」、
「君の歩く道を決めるのは君の心」

2007年から、ブログをもとに書いた中・高校生向けの小冊子を次々に刊行。
自ら作詞作曲、演奏した「受験生応援ソング」も録音。
全国の希望者に、自費で配布した小冊子やCDは計3000冊、7000枚に。
09年、初めての著書『君の成績をぐんぐん伸ばす7つの心のつくり方』は、
静かなベストセラーに。

ここ数年、社会の変化を痛感。
学校の授業を、全然聞かない子は珍しくない。
受験も「入れるところでいい」。
「生涯学び続けることができる人を育てることが、
地域や日本の未来を作る」が持論だが、なぜ勉強が大切なのか、
正面から子どもに語る大人が少なくなったことに、強い危機感を覚える。

競争であおったり強制したりする指導では、今の子どもたちに伝わらない。
「コミュニケーション授業」と称した少人数のクラスで、
一対一の対話を大事にする。

夜10時半。
授業が終わっても、生徒たちは、「少し勉強していこうかな」となかなか帰らない。
心に届く言葉が、小さな意欲の火を燃え上がらせる。

◇成績を上げる「7つの心」(本田さんの著書を参考に作成)

〈1〉目標(目的地をイメージする)
〈2〉できる!(自分自身を信じる)
〈3〉忍耐(目の前の苦痛は未来の喜び)
〈4〉継続(小さなことを積み重ねる)
〈5〉言葉(使う言葉が未来を作る)
〈6〉感謝(勉強できる環境のありがたさ)
〈7〉信念(強い思いは才能を超える)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110601-OYT8T00226.htm

子供の運動と食 見直そう 肥満とやせ形、進む二極化

(2011年7月25日 毎日新聞社)

子供たちの体格は平均的によくなっているが、肥満とやせ形が増えている。
体を動かす運動習慣が身についていないことや、
栄養摂取の偏りなどが背景。
夏休みを機に、子供たちの生活スタイルを見直してみては?

子供たちの間では肥満とやせ形が増え、その中間に当たる
標準体重の子供が減る傾向。
文部科学省の学校保健統計調査(10年度)によると、
11歳男子の肥満の割合は約11・1%、
14歳男子では約9・4%と約1割。
70年代後半から肥満の割合は増加傾向。
11歳と14歳の女子でも、約8~9%が肥満。

やせ形の男子も増えている。
11歳のやせ形の割合は約2・6%、14歳では約1・5%。
全体に占める比率は少ないものの、増加傾向。
11歳と14歳女子のやせ形は約3・1%、男子と同様に増加。

肥満とやせ形と二極化する傾向の裏側に、どんな要因があるか?
小熊祐子・慶応大スポーツ医学研究センター准教授(内科専門医)は、
「子供たちが外で遊んだり、スポーツをしたりして、
体を動かす機会が減っていることや、栄養摂取の偏りなどがある」

気軽に遊べる場所が自宅近くに少ないことなどから、
外で遊ぶ子供の姿は昔に比べて減っている。
文科省は、小・中学生の運動時間を「1日に1時間、1週間で
7時間程度が望ましい」としているが、
文科省「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(10年)によると、
1週間の総運動時間が1時間未満の小学男子は10・5%、
同女子では24・2%。
中学生でも男子は9・3%、女子は31・1%。

運動量の少ない子供は、運動部や地域のスポーツクラブに
属していない傾向が見られる。

6~11歳の男女がテレビやゲーム機遊びなど、家で座ったり、
寝転がったりして過ごす時間は、平日で1日平均約5~6時間。
この結果、子供たちの体格はよくなっているのに、
走り幅跳びや持久走など運動能力が低下している。

小熊さんは、「子供の場合、少なくとも1日に1時間程度の運動が必要。
子供の時にしっかりと運動をしておけば、大人になってから、
肥満や高血圧などの病気予防にもつながる」、
親や周囲が意識して、子供が運動できる環境を整えることが大切。

言葉だけで、「運動しなさい」と言っても効果は低い。
子供たちに運動習慣を身につけさせるには、工夫が必要。
日本体育協会は、楽しみながら体を動かす工夫を盛り込んだ
「アクティブ・チャイルド・プログラム」をホームページで公開。
「基礎的な動き」、「運動遊び」、「伝承遊び」、「しかけづくり」など、
五つのプログラムで構成。

子供たちが興味を示すための工夫について、プログラムの作成に
加わった青野博・体協スポーツ科学研究室研究員は、
「地域のスポーツイベントに、家族で積極的に参加したり、
縄跳びや一輪車など体を動かすのに役立つ道具をプレゼントするなど、
親が仕掛けをすることが大切」、意識的に働きかけることが重要。

子供の肥満ややせ形の増加には、食生活の乱れも関係。
肥満が増えているのは、全般的に食べ過ぎが多いのでは、
と思いがちだが、実際はそうではない。
7~14歳のエネルギー摂取量の平均は、01年をピークに減少傾向
(08年の厚生労働省・国民健康・栄養調査)。
食べ過ぎよりも目立つのは、一人で食べる「孤食」、
栄養摂取の偏り、運動不足や遅い就寝時刻など、生活リズムの乱れ。

全エネルギー摂取量に占める脂質の割合は30%が望ましいが、
小中学生の男女とも、半数近くが30%超
(07年の日本スポーツ振興センター調べ)。
脂質の摂取源を見ると、おやつや夜食で取る割合が10%超。

夜食にラーメンを食べるなど、食塩の取り過ぎも目立つ。
貧血防止などに役立つ鉄の摂取でも、推奨量を満たしている
小中学男子は約2~3割、女子では約5~10%とさらに少ない。

管理栄養士の橋本玲子さんによると、食生活の偏りは、
生活スタイルと深く関係。
肥満傾向の子供は、朝食の欠食、一人で食べる孤食、就寝時刻が遅い――
などが共通して見られる。

肥満とやせ形の二極化が生じている要因として、
橋本さんは、「栄養の偏り、運動不足、生活リズムの乱れ」、
「今の子供たちにとっては、エネルギー摂取を抑えつつ、
たんぱく質やビタミン、ミネラルの豊富な栄養価の高い食事を
心掛けることが大切」

食事にも工夫が必要。
のり巻きを弁当用に作る時、たんぱく質と鉄などに富む牛肉やチーズを
具に加えるなど、不足しがちな栄養素の摂取を心掛けることも必要。
………………………………………………………………………………
◇家や学校で子供に運動習慣を身につけさせる工夫

(1)授業の始めに短時間のストレッチ運動を取り入れる

(2)運動に役立つ遊具を子供の目につくところに置く

(3)子供と一緒に徒歩や自転車で自然観察など探検に出かける

(4)地域で行われる伝統行事やスポーツイベントに積極的に出かける

(5)運動に役立つ遊具を子供にプレゼントする

(6)親同士で連絡網を作り、アウトドア活動など子供同士で遊べる環境をつくる

(7)目標を達成したら表彰するなど、やる気をもたせる

(アクティブ・チャイルド・プログラムから)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/25/139753/

[医学研究] 最良な医療のため、臨床研究評価の仕組みを  日本学術会議

(2011年7月22日 WIC REPORT(厚生政策情報センター))

日本学術会議は、「エビデンス創出を目指す検証的治療研究の
推進・強化に向けて」と題する提言を公表。
日本学術会議の臨床医学委員会・臨床研究分科会の
意見を取りまとめたもの。

検証的治療研究とは、「最良かつ安全な医療」を科学的に評価するため、
研究者が仮設を立て、収集されたデータが仮設と一致するか否かを
調べる臨床研究である。

これらは主に大学等で行われているが、不採算部門であるため、
研究の存続が「これまでにない困難に直面している」(p8-p19)。

学術会議では、「わが国の医療研究をこれ以上衰退させてはならない」と、
(1)遂行可能性の高い治療研究グループの基盤強化によるモデル事業実施、
(2)検証的治療研究にかかわる競争的科学研究費のプロトコルに基づく選考、
(3)治療研究の科学的妥当性と被験者保護を担保するシステムの構築、
(4)人材育成、
(5)生体試料レポジトリーシステムの構築-の
大きく5点について提言(p20-p22)。

エビデンスの質は、データの量によるところが大きい。
(1)では、臨床データを蓄積するために、多施設共同研究グループに
公的研究費を優先的に配分することを提案し、
まずモデル事業を展開することを求めている。

研究を推進するには、人材が不可欠である。
(4)では、治療研究に興味・能力をもつ医師研究者の育成や、
統計学・疫学を継続的に所管する組織の構築、
透明性・柔軟性を確保した研究費の運用などを求めている。

具体的には、奨学金給付制度や、大学等での専任ポスト確保、
臨床研究への参加を業績として評価することなどを例示。

P1-P28
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201107_4/1585_4_1.pdf

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/22/139709/

2011年7月29日金曜日

ILCの北上山地への誘致、政府に要望 東北研究会

(岩手日報 7月27日)

産学官でつくる東北加速器基礎科学研究会
(代表・井上明久東北大総長、高橋宏明東北経済連合会会長)は、
超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)の本県・北上山地(北上高地)
への誘致に国を挙げて取り組むよう、政府に要望。
東日本大震災からの復興の象徴として今後、本格的な誘致運動を進める。

高橋会長、宮舘寿喜副知事、東北大大学院理学研究科の山本均教授らが、
内閣府で、平野達男復興対策担当相に要望書を手渡した。
高橋会長は、「ILCは、復興につながるとともに、住民には夢や希望を与える」
と趣旨を説明。

平野担当相は、「政府内で検討するよう働き掛ける」と答えた。
与謝野馨経済財政担当相や文科省、民主党本部などにも要望。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110727_1

やる気の秘密(12)「型」で伸ばす国語力

(読売 5月28日)

「今度は、ヘリコプターと飛行機の違いを考えよう」。
横浜市のマンションの一室にある「ふくしま国語塾」。
塾長の福嶋隆史さん(38)の言葉に、中3から高2までの4人が
一斉に考え込んだ。
「対比」の力を高める授業だ。

「機体の大きさ」、「乗れる人数」など、比較する観点を考えて表に整理。
福嶋さんが、「『ホバリング』は、実際の動きを見ているから高レベル。
Aマル!」と、その場で評価を下す。
評価は、客観性や独自性がポイントで、最低のCから最高の
「トリプルA」まで9段階。
「翼の有無」といった見た目より、「人命救助が可能か」など
本質に迫るほど高評価になる。

この日は、「マンガと小説の違い」、「写真と映像の違い」などの課題でも
議論が白熱した。
高2の男子生徒は、「学校の国語の授業より、実践的な力がついた実感。
もっとやりたくなる」

小学校教諭だった福嶋さんが、国語の専門塾を開いたのは2006年。
「国語力とは、論理的な思考力のこと。
子どもが武器として使いこなせる『型』が必要だ」
現在、小3から高2まで約70人を1人で教える。
「対比」は、重要な「型」の一つ。

福嶋さんが考える国語力は、三つの柱からなる。
要約したり、抽象的な言葉でまとめたりする「言い換える力」。
物事を対比させて「比べる力」。
結果や結論から原因や理由を「たどる力」。

曖昧になりがちな「国語力」を明快に整理した著書
『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』(大和出版)は、
2009年の初版から約7万部を売り、国語教育書のベストセラーに。
問題集を教材に取り入れる私立小学校も出てきた。

子どもたちを夢中にさせるカギは、条件を限定することにある。
論理的な文の構造を身につけるため、「AつまりB」、「AなぜならB」
といった短作文に繰り返し取り組む。
自由度が低いことで、逆に発想が広がる。

「400字を自由に」では戸惑う子も、「共通点や相違点を書く」、
「30秒間の出来事だけを書く」と条件を絞ると、
とたんに水を得た魚のようになる。

「鬼ごっこのルールを変えるように、目標や方法、評価の方法を限定して
変化をつければ、勉強もゲームに生まれ変わる」と福嶋さん。
やる気の源として、遊び心が上手に使われている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110528-OYT8T00190.htm

外国人向け問診用「通訳」ソフト、無料公開

(2011年7月22日 読売新聞)

京都市のNPO法人「多文化共生センターきょうと」は、
被災した外国人のための通訳ソフト「多言語医療問診システム」を、
スマートフォンに無料でダウンロードできるサービスをしている。
英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、インドネシア語を日本語に訳す。

「頭が痛い」、「熱がある」といった1796通りの具体的な症状や
生活環境などから当てはまるものを画面上で選び、
「翻訳」ボタンを押せば、問診をする医師に状況が伝わる。

選択項目に、「原子力発電所の近くに住んでいた」、
「被曝検査を受けたい」などもある。

代表の重野亜久里さん(37)は、「不安を少しでも和らげられれば」
ホームページ(http://www.tabunkakyoto.org/

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/22/139699/

2011年7月28日木曜日

やる気の秘密(11)大学入学前に復習合宿

(読売 5月27日)

長野県南西部、木曽・御嶽山のふもと。
3月末、山々に残雪がきらめく窓外の景色をよそに、
王滝村の1軒の民宿が熱気にあふれていた。

「y=xをグラフにすると?」。
中学レベルの数学を真剣な表情で問いかけるのは、
愛知工業大学都市環境学科の四俵正俊教授(68)。
参加するのは、いずれもAOや推薦など面接や書類審査で
同学科に合格し、入学間近の高校生18人。

工学の基礎となる数学を、「入学前の不安な時期にこそ学ばせたい」と、
四俵教授が連日10時間学習の4泊5日の合宿を始めて17年に。

東京大学を卒業後、東京工業大学助手を経て、
1974年、現在勤務する愛知工大へ。
教え始めて間もなく、学生の学力に驚かされた。

因数分解や関数がわからないのは、ざら。
桁もそろえず、足し算引き算したりする。
授業についていけず、留年・退学する学生が目立った。

89年、今度は学力試験なしの推薦入試が始まることになり、
危機感はさらに募った。
「いったい、どんな学生が入るのか?」
何とかしなければと悩むうちに思いついたのが、
中学からの数学をやり直す入学前合宿。
「そこまで大学で?」という同僚の異論を無視して、一人で始めた。

合宿では、初日の実力テストでつまずき具合を確認。
その後、講義と練習問題を繰り返す。
気楽に質問できるよう、上級生も指導役として参加する。
愛知県内の高校から進む岡田康甫さん(18)は、
「こんなに勉強したのは初めて」と苦笑し、すぐに表情を引き締めた。
「大学は、遊べる所じゃないとわかった」

大学側も5年前、全員対象の基礎数学の授業を始めたが、
四俵さんは合宿を続けた。
早くに人間関係を培う結果として生まれる安心感のせいか、
参加者は入学後も意欲的に授業に取り組み、
よく質問に来るといった利点が。

その成果は、数字にも表れている。
合宿参加者の7割が留年せずに卒業でき、入学時に学力の高い
一般入試合格者を一貫して上回っている。
合宿で火のついたやる気は、卒業時まで燃え続けるのだ。

基礎のしっかりした学生を組織的に育てるため、
入学前合宿に学科全体で取り組むよう改めて働きかける。

点から線へ。熱いうちに鉄を打つ努力が続く。

◆メモ

1980年代に始まった入試の多様化は、入学希望者数が
全大学の募集定員より少なくなる「全入時代」の到来を控え、
多様な入り口を設けることで、入学者の確保を図る狙い。
従来の学力試験一本から、論文や面接による選考も併用、
学生の能力を多角的に測るようになる一方、
学力低下問題を引き起こした。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110527-OYT8T00149.htm

被災地の在宅医療を支援 宮城・気仙沼での取り組み

(2011年7月21日 毎日新聞社)

気仙沼市で、病院まで来られない在宅患者に巡回診療を続ける、
医療関係者のボランティア団体がある。
「気仙沼巡回療養支援隊」(JRS)。

医療機関の多くが被災したため、巡回対象は広範囲にわたる。
6月上旬、支援隊に同行し、被災地の在宅医療事情と課題を探った。

気仙沼市本吉地区の男性(80)は、脳梗塞で寝たきり状態。
震災前から同居の娘(51)が介護、停電で電気式エアマットが使えなくなり、
腰に10cmほどの床ずれが生じた。

「傷を見せてくださいね」。
縁側に面した部屋でJRSの医師、宮地純一郎さん(30)が
床ずれの処置を始めた。
宮地さんは、北海道家庭医療学センターから支援に駆けつけた。

「何日か前から足の指がむくんでいる」
心配する娘に、宮地さんは手を動かしながらも
「気になりますね。いつから?」と優しく声を掛け、
ケアマネジャーらに普段の食事や薬について質問。
約1時間かけて診療。

地区唯一の病院が被災し、男性は月1回の通院ができない。
今は週2回、JRSの訪問で床ずれの治療を受ける。
「ありがたいことです」。娘はしみじみと語った。

JRSは、震災2週間後の3月25日に設立。
市内を巡回した医師が、被災を免れた家に多くの高齢患者が
取り残されていることを憂慮し、医療関係者に協力を呼びかけたのがきっかけ。

実動部隊は、全国から集まった医師と看護師でつくる「在宅医療班」と、
保健師らでつくる「健康相談班」からなる。
医療班は1日約10軒を巡回し、これまで約260軒、訪問診療。
復旧した医療機関に引き継いだが、今も約40軒を担当。
すべての患者を、地元に引き継ぐことが課題。

JRSのコーディネーターを務めた松山市の医療法人理事長、
永井康徳さん(45)によると、最初の壁は、誰が巡回診療を
必要としているかを把握すること。
津波で、行政や医療機関にあった高齢者のデータはなくなっていた。
民生委員らの協力を得つつ、健康相談班がローラー作戦で
市内を回ることから始めた。

医療班も苦労した。
がれきが行く手を阻む中、重い荷物を持って長時間歩き、
懐中電灯の光を頼りに処置した日も。
永井さんは、「最初は1日に2、3軒回るのがやっとだった」

医師の専門分野は、外科や皮膚科などさまざま。
朝夕にミーティングを開き、対処できない場合は引き継いでしのいだ。
永井さんは、「まずは、医者同士が支え合う体制を作る必要があった

震災で、“医療難民”となった在宅患者は高齢者が多く、
家族は被災と介護で疲弊していた。
背景にある少子高齢化や過疎化は全国共通で、
JRSのきめ細かい活動は地域医療のあるべき姿を示した。

JRS本部長を務めた地元の外科医、村岡正朗さん(50)も、
訪問診療の大切さを改めて感じた。
自身のクリニックは津波にのまれたが、6月に仮事務所を設け再開。
「手伝ってくれた多くの人の意志を継ぎ、高いレベルの訪問診療を続けたい」

被災地では、感染症予防や衛生改善を含む総合的な対応が
医師に求められてきた。
JRSを支える「日本プライマリ・ケア連合学会」の
東日本大震災支援プロジェクト本部コーディネーター、林健太郎さんは
「地域でどんな医療が必要とされているか、
現場に出て自分の目と足で探し出すことが、災害医療には重要。
今回の在宅医療支援は、一つの手段となった」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/21/139632/

日野原重明さん 特別講演 (3)音楽には癒しの力がある

(2011年7月21日 読売新聞)

治りにくい病気として、認知症はなかなか治りにくいと言われている。

認知症という病気は、物忘れがひどくなる。
「あなたのお名前は?」と聞いても、名前が言えない。
「ご主人の名前は?」と聞いても、言えないし書けない。
こういう極度の物忘れをするのが認知症。

認知できない患者を、厚生労働省は「認知症」という病名に。
夜、よく眠れないのは不眠症。
不眠症の患者は、睡眠病といわない。
認知できない人を認知症というのは、
ちょっと名前の付け方がおかしいのではないか。

外国では、認知症の病気を研究した人の名前をつけて、
「アルツハイマー病」といっている。

アルツハイマー病に効く薬が、だんだん開発されてきた。
これらも使い方によっては効果があるとは思うが、
私はアルツハイマー病には音楽療法が効果的だ。

私は、日本音楽療法学会の理事長をしているが、
音楽を認知症の人に聞かせる。

例えば、「故郷」というだれでもよく知っている唱歌がある。
「うさぎ追いしかの山、こぶなつりし」と歌うと、自分の名前も言えない、
自分の名前も書けない人でも、メロディーが聞こえてくると、
そのうちに言葉が浮かんでくることがある。

子供の病気に、「自閉症」というのがある。
自閉症の患者にも、音楽療法士が一緒になって歌ったり、
楽器を演奏したりすると、内にこもっていた心がだんだん解けてきて、
話をするようになったりすることもある。

「どうしてつらいか」ということを、音楽療法士と話をするようになれば、
音楽療法士はそれをお医者さんや学校の先生や両親に伝えて、
どうすればよいかという対策を考えることができる。
自閉症には今のところいい薬はないが、
音楽療法は非常にいい。
歌うことによって、脳が活性化される。
音楽には、癒しの力がある。

私は医者だが、ピアノを弾いたり合唱を指揮したりすることがとても好き。
医療と音楽を結びつけて、音楽が病気に効果があるということを
実証するために、いろいろと症例を集めている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/21/139619/

2011年7月27日水曜日

大船渡国際港湾ターミナル協同組合 コンテナ事業にも〝二重債務〟

(東海新報 7月23日)

東日本大震災による大津波で、保有設備が甚大な被害を受けた
大船渡国際港湾ターミナル協同組合は、
各種支援制度を生かした再建策を模索。

修繕費は数億円規模に上り、既存の借入金もあるため、
事業再開には「二重債務」の壁が立ちはだかる。
行政による港湾施設復旧が求められる中、関係者からは、
「震災後に、貨物量が戻らなかった神戸の二の舞になるのでは」

同組合は、平成19年度から本格化した大船渡港と韓国・釜山港などを
結ぶ外貿コンテナ事業で、必要な荷役設備を運営。
市内外の民間企業16社が出資。

約4億4000万円を投資し、県が管理する野々田ふ頭に、
船舶からコンテナを積み上げるハーバークレーンと、
ふ頭内で運搬するリーチスタッカなどを導入。
流失は免れたが、東日本大震災による大津波で甚大な被害を受けた。

内部機械に海水が入り込み、稼働できない。
同組合では、専門業者に修繕費用などの見積りを依頼し、
合わせて2億円以上に及ぶ。
震災前から続く設備返済として、約1億7000万円を充てなければならず、
苦しい判断に迫られている。

自己資本での修繕は難しく、組合では国による、
「事業協同組合等の共同復旧施設補助」への申請を検討。
復旧経費の4分の3補助を受けられる制度、
補助に該当するかはまだはっきりしていない。

該当しても、残り4分の1は自力返済しなければならない。
事業再開できなければ、収入がないほか、震災で被災した出資企業が
多いため、重い負担となる。

国土交通省や県、市などで取りまとめ作業を進める
大船渡港復旧・復興方針素案計画では、地盤沈下対応のかさ上げを含む
港湾機能の本格復旧は、「概ね2年以内をめど」
震災前に多く利用されていた茶屋前・野々田地区の対応を急ぎたい考え、
コンテナ航路の本格運用と支援にも言及。

港湾利用のあり方は、市議会災害復興特別委員会商工港湾専門部会と
大船渡商議所との意見交換の場でも話題。
「阪神・淡路大震災以降、神戸港を利用する船舶が減った。
スピーディーに進めなければ、衰退の一途をたどる

震災前は、地元水産魚の輸出も多く、再開時期が遅れることでの
幅広い影響を懸念する意見も。

港湾も荷役設備も壊滅的な被害を受け、実質的にはコンテナ事業再開に
ゼロから取り組まなければならない大船渡港。
前年度は、本格運用4年間で最多のコンテナ取扱高となっただけに、
協同組合関係者は早期復旧に意欲を示す。

同組合の宮澤信平理事長は、「これまでは、被災していない
県内陸部の荷主も多かった。
来年の半ばくらいには始めないと、荷主は離れてしまう。
上り調子で来ていただけに、各種支援制度を生かしながら、
再開を目指していきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

やる気の秘密(10)集中のためリラックス

(読売 5月26日)

「字が丸く並んでいるね。
対角線にある字を、時計回りに読み上げて下さい。始め!」

埼玉県熊谷市立大里中学校の2年生のクラス。
中島清校長(59)が、ストップウオッチを手に合図。
校長自ら導入を提案した「ビジョントレーニング」の初めての授業。
目を素早く動かして、バラバラの数字を番号順に見つけたり、
複雑な図形を見て正確に写したり。
次々にドリルをこなし、「疲れたけど面白かった」と生徒たち。

同中は過去3年間、「学習意欲向上」を目指して改革に取り組んできた。
生徒への丁寧な声かけ、家庭学習、独自の校内検定などを実施して
一定の成果はあげたが、中島校長は「何か変だ」と感じていた。

疲れやすい。集中がすぐ切れる。
こうした状態を、教師や親は、「だらしない」などと否定的に
受け止めがちだった。
保健体育が専門の中島校長は、感覚や体の調節機能の未発達を
見逃しているのかも、と発想を変えた。

「心身の心地よさが、意欲の源のはず」
中島校長は、企業などで導入されている心身調整法の指導者資格を取得。
2年生の1クラスで朝礼時、CDに合わせて深呼吸や軽い体操で
リラックスするプログラムを実験的に始めた。

最初は、関心を持てず机に伏せていた生徒もいたが、次第に習慣に。
担任の川端慶枝教諭(29)は、「落ち着いて集中でき、授業しやすくなった」
その後、期末テストで飛び抜けて高い学級平均点を取り、
生徒たちも「すごい」と驚いた。

好成績を受け、次に試行を始めたのが、ビジョントレーニング。
瞬時に目のピントを合わせたり、立体感や奥行きを調整したりする
目の機能は、学習や運動効率に大きく影響する。
毎日の校庭掃除の際、何人もの生徒が、見えているはずのリヤカーに
つまずくのを見て、必要性は感じていた。

専門家のアドバイスも仰ぎつつ、気になる子は、授業だけでなく、
校長室にも誘って指導する。
効果は検証途上だが、評判は上々。

「『自分はダメだ』という思いこみを取り除けば、生徒は変わる」と中島校長。
朝のリラックス体操は、今月から全校で取り組んでいる。
他校やPTAからの講演依頼も相次いでいる。
子どもの気持ちを変える処方せんは、意外なところにある。

◆ビジョントレーニング

通常の視力と異なり、眼球運動や目と体の協調性、動体視力など
様々な視覚機能を向上させるための訓練法。
アメリカでは100年以上の歴史があり、「オプトメトリスト」(検眼医)と
呼ばれる国家資格を持つ専門職が、
児童だけでなくスポーツ選手の検査や訓練を担っている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00186.htm

もやもや病感受性遺伝子を特定 京都大

(2011年7月21日 毎日新聞社)

日本、韓国、中国など東アジアに多い難病「もやもや病」に
かかりやすくなる遺伝子(感受性遺伝子)を、
京都大の小泉昭夫教授(遺伝疫学)らのグループが初めて特定。
米国の科学誌プロスワン電子版に20日掲載。

もやもや病は、大脳の動脈が細くなり、脇道のように
毛細血管網が発達する病気。
血管造影すると、血管網がもやもやとした煙のように見えるところから命名。
脳の血流不足から手足の力が抜けたり、
言葉がうまく話せないなどの症状がでる。
日本で約1万3000人の患者がおり、韓国、中国にも多く、
白人やアフリカ人は少ない。

研究グループが、3世代にわたって患者がいる日韓の42家系を
調べたところ、発症者の全てで「RNF213」という遺伝子の一部が
変化していることが分かった。

この遺伝子は、頭蓋内の血管の発達に関わることも確認。
各家系に共通する染色体に着目し、変異の確率などを基に
世代の数を計算すると、約760世代前(推定1万5000年前)に
共通の祖先を持つことも分かった。

小泉教授は、「感受性遺伝子を持つ人全員が発症するわけではなく、
東アジアに共通する外的な要因(環境因子)もある。
3カ国が協力し、予防や治療につなげたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/21/139643/

2011年7月26日火曜日

被災地の子支援財団発足 王さんやSMAP発起人

(岩手日報 7月26日)

ソフトバンクの孫正義社長、王貞治さん、SMAPが発起人となり、
発足した「公益財団法人東日本大震災復興支援財団」の設立記者会見。
本県など、被災地の震災孤児ら子どもたちの支援に取り組む。

財団は、孫社長が被災地への寄付金として私財を投じた
100億円のうち、40億円を活用して設立。

手始めに、被災地の子どもが早く日常の生活を取り戻すため、
支援活動を行うNPOなどの団体に助成する。
第1期の助成額は1億円、8月1日から募集。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110726_5

携帯電話 発がん性は WHOの組織、可能性指摘

(2011年7月19日 毎日新聞社)

携帯電話から出る電磁波と、がん発症との関係を調べていた
世界保健機関(WHO)の付属組織「国際がん研究機関(IARC)」が、
「電磁波は、人に対して発がん性をもつ可能性がある」との結果。

WHOの組織が、携帯電話に関し発がん性を指摘したのは初。
携帯電話の契約数は世界で50億と推定、
今や多くの人の生活に欠かせない存在。
IARCの結果をどう受け止めたらよいだろうか?

評価結果は、14カ国31人の専門家グループが、
世界各国の研究報告を分析して導き出した。
特に重視されたのが、昨年まとまった世界最大規模の調査
「インターフォン研究」。

同研究は日本や英国、フランスなど13カ国で00~04年に診断された
脳腫瘍患者と、年齢や生活状況がよく似た健康な人のそれぞれ
約5000人について、携帯電話の使用歴を比較。

その結果では、携帯電話の使用が脳腫瘍発症のリスクを上昇させると
示す証拠は得られなかった。
むしろ携帯電話の使用者は、非使用者よりもわずかにリスクは低かった。

脳腫瘍の一つである悪性の「神経膠腫」に限って見ると、
累積通話時間を10段階に分けたうちの最長グループ
(1640時間以上。毎日平均30分、10年間使用)では、
非使用者に比べて発症リスクが1・4倍、40%のリスク上昇を示した。

携帯電磁波と脳腫瘍の関連については否定する研究結果も多いが、
スウェーデンの研究でも、「携帯電話の累積使用が2000時間を超えると、
神経膠腫のリスクが3・2倍に上昇した」との結果。

脳腫瘍のうち、耳にできる「聴神経鞘腫」については、
日本の研究グループの結果で、1日20分以上通話した人に約3倍のリスク上昇。

IARCは、こうした調査や動物実験の結果などを総合的に判断し、
神経膠腫と聴神経鞘腫については、「発がん性の限定的な証拠」があると評価。
白血病など、その他のがんについては「証拠は不十分」。

携帯電磁波の発がん性を、5段階評価で「2B」に分類。
2Bは、人での証拠が限定的で、動物実験での証拠も不十分な場合に適用、
コーヒーと同じ分類に入る。

IARCの幹部は、「長期で頻繁な使用について、さらに研究することが重要」、
「携帯メールや(電話を頭部に接触させない)ハンズフリーキットを
使用するなどの対策が有効」

これらの研究は、聞き取り調査に基づくため、統計上の偏りがある、との指摘。
日本の国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの
津金昌一郎・予防研究部長によると、今回の結論に至った主な調査は、
脳腫瘍になった人とならなかった人を対象に、過去にさかのぼって
通話時間を思い出してもらうもの。
この種の調査では、脳腫瘍になった人の方が通話時間を
長く見積もる傾向がある。

脳腫瘍患者の累積通話時間が、最長のグループの210人のうち、
10人は「1日12時間以上」というありそうにない使用状況を報告、
対照になる健康な154人に、こうした例はなかった。

津金さんは、「電磁波が、がんを起こす詳しいメカニズムは分かっていない。
今回のIARCの評価結果は、携帯電話使用に対する予防的な警告の意味も
含まれるのではないか」、現時点ではそれほど恐れるリスクではない。

電磁波などの科学的な情報を提供する「電磁界情報センター」の
大久保千代次所長は、「IARCの評価は、あくまで第1ステップ、
WHOによる健康リスクの総合評価がまとまるには数年かかる。
米国では、06年までの約20年間で、携帯電話の使用者が急増、
脳腫瘍の罹患率は変わっていない。英国やスウェーデンも同じ」

世界各国は、IARCの評価結果公表直後、相次ぎ見解を発表。
ドイツ連邦放射線防護局は、「長期的な影響や子どもへの影響については
可能性を排除できない」、
「念のため、浴びる量を減らすことが適切」と指摘。

スウェーデン放射線安全機関も、通話中は電話機を体から離すことを勧め、
「使用時間が長い人や若者は特に重要」。

日本では、総務省電波環境課が「過去の日本の研究では
影響はないとの結果だったが、IARCの評価結果は真摯に受け止めたい」

インターフォン研究は、30代以上の成人が対象。
子どもへの影響については、国際的な大規模調査が始まっているが、
答えはまだ出ていない。
国立がん研究センターは、「電磁波のエネルギーの脳への影響は、
子どもは成人の2倍以上という報告も。
小中高生の携帯電話の使い過ぎには注意すべきだ」

大久保さんも、「通信状態が悪い場所では、携帯から通常より強い電波が出る。
心配な人は、そうした場所での使用を避けたり、
通話よりメールを使うようにした方がよい」
…………………………………………………………………………………
◇神経膠腫と聴神経鞘腫

世界や日本での脳腫瘍の発症率は、人口10万人当たり14~20人。
神経膠腫は、神経細胞の周りにあって神経細胞の働きを支えている
グリア細胞(膠細胞ともいう)にできる悪性の腫瘍で、
脳腫瘍の約2~3割を占める。
聴神経鞘腫は、神経を包む膜や鞘の細胞にできる良性の腫瘍で、
脳腫瘍の約1割を占め、40~60代の女性に多い。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/19/139538/

やる気の秘密(9)応用へ丁寧な基本解説

(読売 5月25日)

「さあ、ここからは教科書に出てないからね」。
大阪府貝塚市立東山小学校で行われた
市川伸一・東京大学教授(57)の特別授業。

この日、初めて「円の直径」を学んだ3年生に、授業の残り15分で
出された課題は、「折れない厚紙の円の中心点を見つけてコマを作る」。

物差しと三角定規を使って直径を何本か書き、
その交点が中心点であることを見つける発展的な問題。
子どもたちは、班ごとに顔を寄せ合って議論に夢中に。
45分の授業でここまで到達するのは、前半で「直径は中心点を通る」などの
基本知識を丁寧に確認したから。

同小は昨年度から、市川教授が提唱する「教えて考えさせる授業」を、
算数を中心に導入。
目標は、「授業のユニバーサルデザイン」(誰にでも優しい設計)。

児童の学力差が大きい公立校共通の悩みが出発点。
先取り学習をしている子もいれば、教科書を読んだだけでは
分からない子もいる。
子どもの理解度に注目し、全員のやりがいを目指す方針に共感。

基本の流れは予習から。
教科書の分からないところに付箋を張り、新しい知識は解説や例題まで
先生が丁寧に教える。
基本知識の使い方を確認してから、発展問題に挑戦。
ここで、子どもたちが「面白い」と思う問題を出せるかが、
先生の腕の見せ所。
子どもたちが教え合う活動も多く入れる。
人に説明することも、理解度のチェックになる。

東山小はこの授業に合わせ、見開き2ページを四つの枠に分けた
独自の「かがやきノート」も作った。
深井利恵子校長(54)は、「授業の見通しが持てる安心感があり、
復習もしやすい」と手応え。

長年、子どもの学習相談を続けてきた市川教授が、
「習得の授業の基本設計」として提案したのは10年前。
詰め込みへの批判から、「教えずに考えさせる」授業に極端に傾いたのに
危機感を覚えていた。
英語で会話テープは聞くが、発音記号や口の形は教えない。
算数・数学では、公式や定理を自力で発見させようと議論して授業が終わる。
身についた実感が持てず、新たな「勉強嫌い」も生んでいた。

当初は、「詰め込みの復活では」と誤解も反発も強かったが、
小中学校への全国行脚を続けるうち、自治体ぐるみの取り組みも増えた。
「なるほど、と思うのが勉強の醍醐味。
理解する喜びを引き出したい」。
子どもたちが、「面白い」と身を乗り出す姿が原動力だ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00190.htm

2011年7月25日月曜日

3次補正で道路、三鉄へ大型予算 大畠国交相が視察

(岩手日報 7月24日)

大畠章宏国土交通相は、本県の東日本大震災被災地を視察、
10兆円を超す規模になるとの見方がある国の第3次補正予算に関し、
「大型予算とし、堤防や道路、鉄道などで地域の期待に応え、
復興基盤にしたい」。

東北横断道など「復興道路」の早期整備や、
三陸鉄道の復旧費などを大規模に計上する考え。

大畠氏は、「道路、鉄道、港湾、空港などの整備が、
命を守るための道筋であることが分かった」と発言。

同省が、8月中のルート確定を目指す三陸縦貫道や110億円の復旧費を
見込む三陸鉄道について、本格復興予算と位置付ける3次補正の中で、
「しっかり盛り込み、まちづくりの柱として全面的にバックアップする」

達増知事は、「迅速かつ十分に対処するには県、市町村自ら対応する
規模を超えている」とし、国家プロジェクトとしての復興を要請。
湾口防波堤の復旧など、重点事項の要望書を手渡した。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/kako_kiji.cgi

特定看護師、創設へ議論

(2011年7月19日 読売新聞)

厚生労働省の「チーム医療推進会議」で、「特定看護師」の創設に向けた
議論が進んでいる。

--一般の看護師とどこが違うのか?

医師にしか認められていない医療行為の一部を行う。
医師から大まかな指示さえあれば、患者の状態を判断しながら、
薬を出したり、簡単な検査や処置を行ったりできる。
5年以上、医療現場で働いた後、大学院などで専門教育を受け、
国が行う試験に合格し、認証を受けることが要件。

--なぜ特定看護師が必要なのか?

医療が進歩して専門的になり、医療スタッフの仕事量が増加。
超高齢化で、在宅医療が必要なお年寄りも増えている。

医療体制の見直しが求められ、厚労省の検討会は昨年3月、
看護師や薬剤師など、医療スタッフの役割を広げて、
互いに連携して治療にあたる「チーム医療」の推進を打ち出した。

看護師は患者に一番近い存在で、チーム医療の要として期待、
それが特定看護師というわけ。

医師不足が深刻なことも、特定看護師導入の後押し。
在宅医療や症状が急変しない病気の場合、普段から患者の生活を
見ている看護師が判断して対応した方が、効率的な場面がたくさんある。

--「看護師が医療行為をして安全なのか?」と懸念する声も。

特定看護師に、どのような教育をするかが重要。
制度ができるのを見越して、国内でも2008年から複数の大学院などが
医療行為ができる看護師を養成するコースを設けている。
厚労省の推進会議は昨年から、こうした養成コースについて、
十分な教育ができるか調査。

4月から、このコースを卒業した看護師が、医療施設で特定看護師として
安全に医療行為ができるか、検証するモデル事業も始まった。
大分県の佐伯中央病院では、「特定看護師」という名札を付けた看護師が、
心臓の超音波(エコー)検査や胃ろうチューブの交換など、
患者相手に医療行為を始めている。

--特定看護師以外は医療行為はしてはいけないのか?

実はそうではない。
看護師は法律で、医師の指示の下、「診療の補助」ができると。
どこまでが「診療の補助」に含まれるかは明らかでないので、
推進会議では、看護師すべてが行える医療行為もはっきり定めようと。
医師から具体的な指示があれば、すべての看護師が、
特定看護師と同じ医療行為ができるようにした方がいいという案も。

特定看護師が行うことを想定されている医療行為は、
技術も難しく、一般の看護師が、特別な訓練なしでできるように
してしまうのは危険だと、反対意見も。

--海外の状況はどうなのか?

米国などの先進諸国では、「ナース・プラクティショナー(NP)」という、
検査や診断、薬の処方を行う「診療看護師」が普及。
東日本大震災では、米国でNPとなった日本人が来日し、
医師が不足した被災現場で活躍。

--日本ではいつごろ制度ができるか?

日本医師会などは、「患者の安全が心配」などを理由に反対、先は見えない。
国民の間の議論も必要。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/19/139534/

やる気の秘密(8)探求心引き出す「納得感」

(読売 5月21日)

「先生が予定通りまとめようとする授業はイヤ。見え見えだから」、
「教科書通りでいいから一工夫ほしい」。
子どもたちが大人に交じって議論する。

文部科学省が推進する「リアル熟議」が、
「若手教師の育て方、育ち方」をテーマに都内で開かれ、
東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組の代表10人が参加。

進行役を務めた担任の沼田晶弘教諭(35)が熟議終了後、
子どもたちに感想を聞くと、「大人は、上から子どもを見ている。
何を与えるかの話ばかり」と不満の声。

「教育は自立支援」と考える沼田教諭。
「自分たちで決める」運営で自信をつけてきた子どもたちは、
「納得できない」、「リアル(現実的)じゃない」ことに違和感を隠さない。

「デシ・リットル」の単位の勉強では、
「全然使わない単位をなぜ勉強するのか」、と疑問が出る。
先生が、「確かにそうだね。でも、升を使う豆の量り売りには欠かせない
単位なんだって」と教えると、目を輝かせた。

「知りたい」、「やりたい」と思えば、探求心の塊になる。
夏の移動教室では、計画段階から地図を頼りに遠足の距離を求めた。
行きたい公園まで歩くと、何分かかるか?
歩数計で1歩の距離を測り、歩くペースを合わせる作戦も立てた。
当日は13kmもの道のりを、全員が歩ききった。

昨年度、2学期から取り組んだ総合学習のテーマは「映画作り」。
沼田教諭もさすがに「無謀では」と伝えたが、子どもたちは引き下がらない。
監督、脚本からカメラの配置、大道具作りまで分担し、
映画の中心となるダンスも、連日猛練習。
2週間かけて作った小道具が使えないなど、計画変更や失敗にも
「やめたい」という弱音は出なかった。

映画完成を控えた3月、近くの老人ホームでライブ公演が実現。
マイケル・ジャクソンの難しいダンスを踊って喝采を浴びたが、
沼田教諭が「真価を発揮した」と感じたのは、公演の後。

舞台で始まったお年寄りの盆踊り練習に飛び入り。
社交ダンスの相手も買って出て、話もはずんだ。
普段から、「先生の指示待ち」ではこうはいかない。
遠くから見ていた沼田教諭は、「やればできるんですよ」とつぶやいた。

4月の全校集会で、クラスと担任替えが発表。
最後に、1組全員が声をそろえて先生の背中にかけた言葉は、
「いってらっしゃい!」。
成長の証しの一言だった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110521-OYT8T00200.htm

2011年7月24日日曜日

国民に防護ライン示せ 被ばくリスクに向き合う 武田邦彦・中部大教授

(2011年7月14日 共同通信社)

放射線被ばくのリスクとどう向き合うか-?

武田邦彦中部大教授は、福島第1原発事故の発生以来、
子どもを持つ親に向けて、インターネット上で放射線から身を守る
方法についての執筆を続ける。
元旭化成ウラン濃縮研究所長で、事故前は、「安全な原発なら推進」との
立場だった同教授は今、「国の防護政策は甘すぎる」と警鐘を。

-インターネットで情報発信を始めた理由は。

「国は、原発からの距離に応じて住民退避の是非を判断。
重要なファクターは、風の影響のはず。
これはいかんと思い、執筆を始めた。
原子力技術者として事故に責任を感じ、正しい情報を発信して償おうと考えた」

-文部科学省は児童、生徒が浴びる放射線量について、
4月に「年20ミリシーベルトを下回れば、平常通りに活動できる」、
5月末には「年1ミリシーベルト以下を目指す」との目標を示した。
教育現場は混乱している。

国際放射線防護委員会が示す年間被ばく量の上限『年1ミリシーベルト』の
基準を変えてはならない。
放射線で被ばくするという"損失"があるなら、その損失に対して
"利益"が上回る必要がある。
年1ミリシーベルトの場合の発がんリスクが、原子力による電力供給で
国民が得るメリットと相殺されるという考えから、
年1ミリシーベルトが国際的な合意となったのだから、
もし年20ミリに上げるなら、メリットも20倍にならないと駄目。
その議論を十分にしないまま、文科省が年20ミリシーベルトとした罪は大きく、
親が納得できなくて当然」

-幼い子を持つ親たちが、放射線量を自主的に測定し始めた。

「非常に評価すべきだ。
追随する形で自治体が細かな計測を始めたが、本来なら家庭よりも
先に動かなくてはならなかった。
気になるのは、子どもへの放射線の影響を気にする親を、
神経質などと異端視する社会の風潮。
子どものため、産地を気にして食品を購入するのは自然なことであり、
非難してはならない。
給食について不安ならば、学校に食材の産地を明示してもらう」

-食べることで、被災地の生産者を助けようとする動きがあるが。

人助けと、自分の体への影響の問題は、切り離して考えなくてはならない。
生産者の損失は経済的なものだが、消費者が食べることのリスクは健康に響く。
食品の安全性が確認できず、被ばくの恐れがあるならば、当然、注意が必要」

-風評被害を防ぐべきだという声も強い。

「『風評被害』という言葉が、独り歩きしたことが問題。
食べ物からセシウムなどの放射性物質が検出されたんだから、
『風評』ではなく『実害』のはず。
その賠償は消費者ではなく、東京電力に負わせなくてはならない」

-では、安全な食べ物とは何か?
継続して摂取しても、年1ミリシーベルトを超過しない作物ということか?

「そう。食べ物だけでなく、外部被ばくも含めたトータルの値で、
原発事故による被ばくを年1ミリシーベルト以内にとどめないといけない。
国には国民の健康を守る決意を持ち、1ミリシーベルト以下にとどめる
ための日常生活での防護ラインを示してほしい」
   ×   ×

◆たけだ・くにひこ

43年東京都生まれ。専門は資源材料工学。
08年、内閣府原子力委員会専門委員を務める。
著書に「子供を放射能汚染から守りぬく方法」など。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/14/139363/

県、海洋エネ試験場誘致へ 沿岸に国際研究拠点

(岩手日報 7月19日)

県は、東日本大震災で被災した本県沿岸部に、
日本初の海洋エネルギー試験場の誘致を目指している。

国内外から研究機関を招き入れ、三陸の海を活用した
国際海洋研究拠点をつくるのが狙い。
全国的な海洋研究組織も、県内で研究フォーラムの開催や現地視察を
予定するなど、実現に向けた動きも出始め、未曽有の大津波の経験を
生かして、国際的な研究の深化を図る方針。

海洋エネルギー試験場は、三陸の海洋に波力や潮力などの
実験用設備を設けるほか、陸地にも既存の研究施設を活用して
専用施設を建設することを想定。

県内の海洋環境、生態系の津波による変化の解明、
研究機関による新たな科学的知見やアイデアの集積、
世界的に意義ある学術的知見の発信-などを進める。

同試験場で実験を行う国内外の大学、研究機関を招き、
大規模な研究拠点として機能させることで、
世界的な海洋研究の促進を図る。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110719_2

やる気の秘密(7)児童「内閣」授業で「先生」

(読売 5月20日)

「書き順いくよ。一、二、三」。
黒板の前で新しい漢字を教える「先生役」の児童に合わせ、
全員が空中で指を動かす。

東京・世田谷区の東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組。
先生役の児童の席には、担任の沼田晶弘教諭(35)が座り、ノートを代筆。
「自分が教えると思うと、よく勉強するよ」と女子児童。

このクラスは、みんなで選んだ「内閣」が学級をリードし、
授業の運営にも関わる。
総理は、班の中で交代で務め、文部科学、環境、厚生労働の
各大臣の下に各省を置く。
国民ならぬ「クミン(クラス民)」のため、「文科省」はテストの予想問題も作る。
毎週の選挙で「政権交代」もあるから、成果にはこだわる。

沼田教諭は、アメリカでスポーツ経営学やコーチング論を学び、
大学教員から転じた異色の経歴の持ち主。
2年前、担任になった初日、「君たちを信じて任せる」と宣言。
以後、最も意識してきたのは、やる気のスイッチをあえて「切る」こと。

授業の45分間集中し続けるのは難しいが、緩急をつければ勢いづく。
朝の会で、30秒間限定のスピーチ練習。
わっと騒いで一瞬で沈黙する練習。
3度手をたたいたら、その人に注目。
最初はゲーム感覚だったが、すぐに子どもたちは、「オン」、「オフ」を
切り替える快感に目覚めていった。

忍者のように、校内を静かに移動。
全校集会が始まった瞬間、全員で姿勢を正す。
給食を毎日完食する。
自分たちで考えて達成するのが面白くなり、一体感も生まれた。

給食後の掃除は、内閣の段取りの力の見せ所。
先生がパソコンで流す3曲の間で終わらせるため、係は決めずに
全員で流れを見て動く。
ほうきは同じ方向に掃き、使ったぞうきんを誰かがまとめる間に机運び。
子どもたちがテキパキ動き回る中、先生は机で家庭学習ノートに
コメントを返すのに集中。

「今2曲目の半ば。急いで」。
トランシーバーで、内閣メンバーが特別教室への出張掃除組に連絡。
ダンダンダンダン。
全員席につくまで机を打ち鳴らし、総理の合図でハイ、終了。
一瞬で、子どもたちは遊びに散った。
開始から約11分。
当初の半分に短縮し、昼休みに遊ぶ時間も増えた。

「子どもがいいから、先生が取材されるんだよ」
子どもたちの冗談交じりの言葉に、先生はニヤリ。
「自分たちならできる」という自信こそ、クラスの最大の財産だ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110520-OYT8T00156.htm