2008年11月22日土曜日

喜びに満ちた音楽は心臓に良い

(WebMD 11月13日)

喜びに満ちた音楽は、心臓に良いことが研究で明らかに。
メリーランド大学の予防心臓病学の部長であるMichael Miller博士は、
米国心臓協会の年次総会で知見を報告。

10名の被験者が、自分が喜びに満ちた気分になれる音楽をそれぞれ特定。
博士らは、被験者が音楽を聴いている時に、
各人の血管が突然の血流増加(血圧計の腕帯を外すことによる)に
どのくらい反応したかを超音波検査装置で測定。

喜びに満ちた気分になれる音楽を聴いた時、被験者の血管は26%拡張し、
これは非常に健康に良い反応。
有酸素運動後にみられる反応と同様の大きさ。

笑うことでも、血流が改善した。
喜劇のテープを聴いた後、被験者の血管は19%拡張。
以前の研究で、被験者がKingpinというコメディ映画の抜粋を鑑賞した時に
認められた笑いの効果と同様。

しかし、音楽の作用は良いことばかりではない。
被験者が不安な気持ちになるような音楽を聴くと、血管が6%収縮。

「これらの結果は、我々の心臓の健康を増進するために
日常生活に取り入れることのできるもうひとつの予防法を示唆しており、
私の耳に心地良かった」

カントリー・ミュージックを聴くと、大部分の被験者は喜びに満ちた気分に。
ヘヴィメタル・ミュージックを聴くと、大部分の被験者は不安に。
Miller博士は、重要なのは音楽の種類ではなく、
音楽に対する各人の感情的反応である。
どのような種類の音楽に喜びを感じ、心臓の健康に良いかは、
十人十色だろう。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=83112

市民参加型イベントこそ、スポーツ界の主役だ [第1回] オリンピックは参加型のイベントだった

(sfen.jp 08.09.24)

北京五輪が終わって約1週間がすぎて、この原稿を書いている。
現地に行かず、テレビ観戦に終始したせいもあってか、
興奮が覚めるのが早い。
閉幕直後は、オリンピック中継がない寂しさも感じたが、
わずか1週間ですっかり遠い過去の出来事に思える。

幼いころ、若いころはそうではなかった。
オリンピックの余韻は、数週間も続いた記憶がある。
自分自身が齢を重ね、感度が鈍くなった、感動に慣れたせいなのか。
それとも、世の中の流れが変わったからなのか。

1964年の東京五輪のとき、筆者は小学校2年生だった。
大会から数ヵ月経った『卒業生を送る会』でも、
重量挙げのジャボチンスキー(ソ連)がバーベルを上げたまま
片足を上げてみせた真似や、三宅義信選手が慎重に拳を開いたり閉じたりして、
握る場所を測る真似などが「出し物」に。
マラソンで優勝したアべべ選手(エチオピア)が、
ゴール直後に平然と整理体操をした姿に衝撃を受けたことは、いまも忘れない。
そのような深い驚嘆を、北京五輪がどのくらい世界の人々に与えただろう。

中国の子どもたちは、東京五輪直後の日本の少年と
同じような熱に打たれているかもしない。
けれど、日本をはじめ多くの国の人々にとって北京五輪は、
素朴な興奮と感動の源泉ではなく、4年に一度の『テレビのスペシャル番組』の存在に。

オリンピックには「4年に一度」ゆえの特別感があり、勝負の緊迫感も増す。
だが本来、4年に一度開催した理由はそうした緊迫感を演出するためではない。
近代五輪が始まった1896年、世界は広く、容易に大陸間を移動できなかった。
スポーツを愛する若者たちが、なんとか4年に一度だけ
同じ場所に集うことに大きな意義があった。
万難を排して「スポーツの祭典」に参加すること自体が、人生の勝利。
競技力だけでなく、仕事や経済的事情、家族や職場の理解など
あらゆる条件をクリアしなければ五輪への参加は叶わなかった。
何しろ、往復の船旅だけで軽く1ヵ月以上を要する選手が少なくない。
だからこそ、「参加することに意義」があった。

オリンピックは、世界レベルの『参加型イベント』だった。
それから100年以上経って、世界は狭くなった。
スポーツの交流は日常的になり、バレーボールのように年に何度も五輪と同じか、
それ以上の国々が参加する国際大会が開かれる種目も珍しくない。
その点ではもはや、オリンピックの存在価値は薄らいでいる。

スポーツという分野、スポーツの活動が、社会から熱い期待を受けている。
国内で、深刻な事件が多発。
青少年が心技体の基本を失い、日本人としてのわきまえ、道徳観、倫理観が
失われつつある。
ゲームやインターネットなど、バーチャルという空想世界で暮らす時間が多くなり、
現実の痛みを知らない、理屈だけが先走る、
現実の厳しさから逃れて生きる子どもたちや、若者が激増。
そうした環境が、危険な発想・非人間的な行動の温床に。

モンスターペアレントと呼ばれる、身勝手な大人たちも急増。
心身のバランスを崩した社会人の割合も高い。
閉塞的な状況で、スポーツが人々の心身の健康を取り戻す
「切り札になる」と期待する者は少なくない。
スポーツに携わる者ならなおさらそう感じ、使命感を覚えている。

だが、スポーツの分野も社会状況に翻弄され、本来の良さを失いつつある。
現状のままでは、決して日本の閉塞状況を救う切り札ではありえない。
オリンピックは、ロサンゼルス五輪をきっかけに「商業化」。
オリンピックと共に、スポーツ界全体も商業化の流れに支配されてきた。
本当の影響や実態を、スポーツを愛する者、スポーツに携わる者は
冷静に分析し、改革すべき時期。

国際オリンピック委員会、各競技の国際連盟(協会)が商業化を受け入れ、
「選手のプロ化」が進み、スポーツの大会や組織がビジネスの世界に解放され、
スポーツ界が桁違いの国際ビジネスの渦に巻き込まれた。
スポーツは、テレビを中心とするマスメディアと広告代理店、協賛企業の意向が
強く反映されるビジネスそのものに。

日本の社会が求めている「スポーツへの社会的使命」を、
メディアや広告代理店、協賛企業が主導で構築している
スポーツ・ビジネスは果たしてくれない。
彼らはそれを目的にしていないし、哲学的な使命も感じていない。
メディアが「スポーツ」と呼ぶのは、スポーツの一角。
メディアが扱うスポーツは、巨額の予算が動く『見るスポーツ』が大半。
商業化が進み、テレビを中心にスポーツ・ビジネスが展開され、
スポーツはテレビの規格、テレビの基準で判断されるようになった。
ゴールデンタイムに、2ケタの視聴率が稼げないスポーツは
「マイナー」と呼ばれる風潮を、スポーツの当事者たちが受け入れている。

社会が切実に必要としているのは、一部のスター選手や
一部の企業が利益を得るスポーツ・ビジネスの成功ではなく、
ひとりでも多くの人々がスポーツを通じて心身の喜びを感じ、
生きる希望を抱くこと、心身の健康を獲得すること。
いわば「参加型のスポーツ」の振興だ。

スポーツが隆盛しているように見えて、世間で語られるスポーツの大半が
社会的ニーズとは違うところにある「見るスポーツ」だという現実が、
いまスポーツ界が直視し、改革に乗り出すべき重要なテーマではないかと感じる。

小林信也(作家・スポーツライター)

慶応大学法学部法律学科卒業。
高校時代、投手として新潟県大会優勝や北信越大会出場を果たす。
大学時代からフリスビーを始め、ディスクゴルフ日本選手権大会や
ジャパンオープン・マスターズで優勝。国際大会でも活躍し、
1993 PDGAディスクゴルフ名誉の殿堂入りを果たす(アメリカ・ジョージア州)。

http://sfen.jp/opinion/citizen/01.html

2008年11月21日金曜日

小中とも正答率低下 県教委学力テスト

(岩手日報 11月15日)

県教委は、6年目となる学習定着度状況調査(学力テスト)の
結果をまとめ公表。

小中学校とも、昨年より全体的に平均正答率は低下、
記述式など知識を「活用する」問題に対応できなかった。

正答率の集団分布を分析した結果、小学校の算数、中学校の数学、英語で
学習の定着にばらつきが目立った。
調査は10月、県内の市町村立小中学校、約6万2000人を対象に実施。
調査科目は小学校4、5年が国語、算数。
中1が国語、数学、英語、中2は国語、社会、数学、理科、英語で中3は英語のみ。
生活習慣の調査を、小3から中3まで行った。
本年度から新学習指導要領に合わせ、思考力、表現力などを身に付ける
「活用」の問題を全教科で取り入れた。
算数は選択式を減らし、英語では正答率90%以上の問題を変更するなど、
読み取る力を見る問題を増やした。

小学校では5年生の国語を除き、平均正答率は昨年度より低下。
特に算数が課題となった。
正答率の集団分布を見ると4、5年生とも中位層から下位層の幅が大きく、
両学年とも昨年よりばらつきが拡大。
中学生では、全教科で平均正答率が低下。
特に本県の課題とされる数学、英語で顕著。
2年生の正答率の集団分布を昨年(1年時)と比較すると、
全教科でばらつきが拡大。
「分からない」まま学年が上がる状況だ。
2年生の数学、英語で無回答の割合が10%を超えるなど
「考える」問題に対する意欲も課題。

県教委は分析を進め、12月に報告書を県内全小中学校に配布する予定。
各学校は18日以降、個人の教科ごとの正答率などを記載した
「学習チェックシート」を利用できる。

医療、介護にロボット技術 看護師らの負担を軽減 「関西経済」

(共同通信社 2008年11月20日)

医療や介護関係者の負担を軽減しようと、関西の電機メーカーなどが
病院向けの自動搬送ロボットや車いすロボットの開発に力を入れている。

関西には、センサーや電子部品をはじめ、ロボットとかかわりの深い分野を
得意とする企業が集積。
市場の成長が見込まれる中、今後は技術力を生かす場が広がりそう。

「こちらに進みます」、「道を空けてください」。
点滴液や注射器を積んだワゴンを引っ張るロボットが、障害物を避けながら
京都第2赤十字病院病棟3階の廊下をゆっくりと進む。

村田機械(京都市)が、慶応大と開発中の「MKR-003」。
センサーを駆使し、建物を1度周回するだけで自動的に
地図を覚え込むのが特長で、30キログラムまで搬送できる。

田中聖人消化器科副部長は、「人手不足の中、重い物を運んでいる
看護師の支援になれば」と期待。
現場の声を改良につなげようと、今年4月から走行実験を続けており、
村田機械は2010年度の商品化を目指す。

20台弱の自動分析装置が並ぶ臨床検査大手ビー・エム・エルの
総合研究所(川越市)の生化学検査室。
互いにうまくすれ違い、目的の装置に到着して次々と検体をセットしていくのは、
パナソニック電工の自律走行ロボット「HOSPI(ホスピー)」。

複数のロボットが移動する際に渋滞しないようコンピューターが制御し、
入力された地図情報を基に最適な経路を選ぶ。
計15台を購入したビー・エム・エルは、
「ヒューマンエラー回避を目的とする自動化の一環。スピードも問題ない」
(広報担当)と高く評価する。

中小・ベンチャー企業も独自の技術力を生かし、成果を挙げている。
八洲電業(大阪市)は、付き添いの看護師の負担を軽減する
自動電動車いすロボットを、来春をめどに欧州に出荷する方針。
磁気テープに沿って走り、障害物があると自動停止する。
1度の充電で12キロ走行できる。

パナソニックの社内ベンチャー、アクティブリンク(京都府)は
人の手足の力を増幅させ、建設作業などを支援するシステムの開発に取り組む。
ベッドから患者を移動させるなど、介護現場での活用も検討中。

日本ロボット工業会(東京)は、医療施設分野向けのロボット技術市場の
出荷額が2010年に4億円、20年には980億円まで増加すると予想。
介護・福祉施設用は、10年の79億円から20年に2727億円に増える。

大阪市では、11月26日から3日間、"ロボットが創る地球と人間の新しい未来"
をテーマに、約70の企業・団体が参加する
「国際次世代ロボットフェア2008」が開かれ、市場拡大をにらんだ動きも活発化。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=83293

授業を変える(10)学外の教職員と研修

(読売 11月15日)

「授業を変える」を合言葉に、大学の枠を超えた交流が広がる。

蔵王山麓にある山形大学寮。
全国から集まった大学教職員ら約60人が、窓外の輝く緑に目もくれず、
「学生の意欲を起こすにはどうしたらいいか」を熱っぽく語り合っていた。
教育力向上を目的に、山形大が7年前から毎夏開く1泊2日の合宿研修。
4年前からは学外にも門戸を開き、今年は他大学の教員が講師も務めた。

その1人は、前年の参加者だった東京工芸大学の大島武准教授(45)。
「アメリカ映画のように冒頭で心をつかむ」、
「発問は答えやすいように二者択一にするか、意見を聞くか」などと
授業の工夫を披露した。

教員になった12年前、学生に「つまんない授業」と批判されて以来の
努力の成果を惜しみなく紹介。
「ほかの教員の意見も聞きたい。自分の研さんになる」と意欲を語る。

参加者は、グループに分かれて大学の現状や自らの悩みを話し合い、
講師の話も踏まえて、学生が意欲的に取り組める授業を設計し、発表。
これ自体が授業のようで、「初めて教壇に立った時の気持ちを思い出した」
と語るベテラン教員もいた。

山形大は4年前に県内5校、今年は関東以北の35校と連携し、
同大が取り組んできた、学生による授業評価などの手法を伝えてきた。
「生き残るのが、社会と学生にとって良質な大学でなければ。
互いの枠を超えた切磋琢磨が必要だ」と山形大の小田隆治教授(54)。
大学淘汰への危機感がある。

愛媛大学は、全国の大学教職員約60人を集め、東京都内で2日間、
教員研修担当者の講座を開いた。
講師の1人、佐藤浩章准教授(36)は、
米国で教育力向上の研修に参加し、能を磨いてきた。

佐藤さんが、ピザや果物つきのランチ研修で参加者を増やした
米国の大学の例を紹介すると、参加者が笑った。
「大事なことですよ」と佐藤さんは少し気色ばんだ。
研修に積極的に参加する人ばかりではないからこそ、細かな気配りが不可欠。
参加者は、こうしたノウハウを学びながら、それぞれの研修計画をまとめた。
受講後に、「学長に提案する」と意気込む職員もいた。

信州大学が合宿研修を開いた。
提案者は山形、愛媛両大学の研修に参加した松岡幸司准教授(43)。
担当するドイツ語の授業での工夫が買われて、今春から研修担当に。
キャンパスが分散しているだけに、教員を集められるか心配していたが、
ふたを開けてみると、他大学からも参加者があった。
活発な意見交換の場に刺激され、「再度開いて」という要請も出た。

大学の教育力向上は、国の教育振興基本計画にも盛り込まれた。
「授業を変える」取り組みは、着実に根を広げようとしている。

◆教育振興基本計画

改正教育基本法で規定。
大学教育について、国が、教育力向上のための拠点形成や
ネットワーク化の推進など、大学の枠を超えた質保証の体制や基盤の強化を支援。
学士課程(学部教育)において、学生の専門分野にかかわらず、
共通に身につける学習の成果について明確化することも盛り込まれた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081115-OYT8T00235.htm

2008年11月20日木曜日

構造化された運動プログラムによりQOLは早期から持続的に改善する

(Medscape 11月12日)

運動トレーニングプログラムに参加した心不全患者は、QOLが改善され、
その改善は早期に始まり、3年間にわたり持続するという新知見。

Ileana Pioa博士(ケースウエスタンリバース大学)は、
「臨床医が、心不全患者を治療する際の目標は、
気分を改善し、延命しつつ、生活の質(QOL)も改善すること。
トレーニングプログラムへの参加は、通常治療に比べて、
心不全患者の健康状態に僅かながら有意な改善をもたらす。
改善は、運動トレーニングに関連し、トレーニングの早期から認められ、持続した。
この結果は、サブグループでも一貫して認められた」

米国心臓協会(American Heart Association:AHA)で報告された
HF-ACTION試験のQOLに関する同結果、
高度に構造化された運動プログラムを施行した患者では、
「通常治療」を受けた患者と比べて、死亡と入院に有意な減少が認められた。

HF-ACTION試験の研究者らは、心不全患者2331例
(ニューヨーク心臓協会心機能分類[NYHA]2-4度、心駆出率<35%)を、
強度と時間を漸増していくトレーニングに焦点を合わせた運動プログラム、
または通常治療(運動は米国心臓病学会(ACC)/AHAの奨励)の
いずれかにランダムに割り付けた。

構造化運動群は、週3回30分間の運動を行うトレーニングセッション36回から開始。
6週間は監視下でプログラム実施後、家庭でトレッドミルまたはエアロバイクで、
週5回、40分間、適度(moderate intensity)の運動を行った。
通常治療群には、毎日30分間、適度の運動をするように指示したが、
途中で監視したり励ましたりすることはなかった。

健康状態の評価は、身体的制限、症状、QOL、社会的制限に関する質問が
盛り込まれた検査であるカンザス市心筋症質問票
(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire:KCCQ)を用いた。

KCCQの総スコアでは、構造化運動プログラム群の健康状態において、
3カ月以内に早期改善が認められた。
この効果は3年後まで持続し、総スコアは3カ月~36カ月まで変化しない。
身体的制限および症状を含めて、すべての健康状態スケールは改善。

「日常生活動作のスコアは、構造プログラム群の患者の方が高く、
同群の患者の気分には改善が認められる。
これらの患者では、外出したり人と付き合ったりする能力も改善。
症状さえも改善され、彼らは気分が良くなっている」

Anne Taylor博士(コロンビア大学)は、心不全患者の治療目標は
疾患進行の予防、死亡と罹病の減少であり、
慢性疾患集団に重要なこととして患者のQOLの改善がある。

2つの治療群の差は僅かなものの有意であり、臨床試験効果の結果である。
通常治療群の患者でさえ、参加しなかった場合に比べると運動量が増えている。

今後は、高齢患者や他の併発疾患患者のQOLに対する効果を確認するため、
筋力トレーニングを併用すると有酸素トレーニングに効果が追加されるか検討する。

いかなる運動を中心とした治療プログラムについても
指示の遵守(adherence)の問題が残っているが、
このサブ研究のデータは有用な情報を提供している。

「QOLについては、本当に臨床医はもっと注意深く考える必要がある。
これは、単なるソフトサイエンスではない」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=83075

授業を変える(9)保護者の目線で点検

(読売 11月14日)

学費を負担する保護者が自ら授業を点検する。

「学生の居眠り、私語が目立つ」、「授業に工夫がないのも一因?」……。
岩手大学の講義室で、前の方に陣取った女性(46)が
きちょうめんな字で感想をメモしていた。

同大は14日までの5日間、全学共通の授業を一般公開。
大学が特に注目するのは、学校側の呼びかけに応じて
「モニター」に登録した保護者の意見。

女性もモニターの1人。農学部に次女が通う。
この日が初めての参観で、勤めを休んで朝から複数の授業を見た。
工夫する教員もしない教員もいる。
同じ大教室の授業でも、居眠りが目立つ一方通行の授業もあれば、
学生とのやりとりを交えてメリハリをきかせた授業もある。

総じて言えるのは、「学生も教員も、もっと緊張感がほしい」。
目の前の授業が、家計に重くのしかかる学費に見合うものか。
その問いかけが生んだ答えだった。

教職員の研修会などで授業改善を進めてきた岩手大が、
一般公開に踏み切ったのは3年前。
だが、参加者は伸び悩み、授業に足を運んでもらう工夫として翌年、
保護者モニター制度を作った。

モニターは公開期間中、自由に参観し、アンケート用紙に感想や意見を書いて
提出するほか、大学が設けた昼食会で教職員や他の保護者と意見交換もする。

主な目的は授業改善だが、
「保護者と大学は、一緒に学生を育てる大切なパートナーなのだと伝えたい」
モニター制度を推進する玉真之介副学長(54)。

最近の学生は幼さが目につき、勉強や友人関係に悩むと、
簡単に休学や退学をする。
以前に比べて、細かな配慮を必要とするようになったと痛感し、
それらを防ぐためにも保護者との協力関係が欠かせないと考えた。

モニター登録をする保護者は毎年10人足らずだが、意見は多岐にわたる。
学生の受講マナーや教員の授業技術・態度、
「授業公開を知らない教員がいて、参観を断られた」などといった
お粗末な学内状況……。
意見は研修や会議などを通し、具体的に個々の教員に伝えられてきた。

その結果、最近は授業に遅刻する教員が少なくなり、休講も減った。
小さな変化だが、授業に臨む教員の心構えが変わりつつあることを
示していると、玉さんは喜ぶ。

岩手大は今春、地元の岩手県立、岩手医科、盛岡、富士の4大学と
「いわて高等教育コンソーシアム イーハトーブキャンパス計画」に乗り出した。
夏には、県内の小中高校の校長会などと協議の場を設置。
岩手大が、県全体の教育力の向上の中核を担う。
そのためにも、玉さんは「まず足元から」と力を込める。

共通科目に限定されていた公開の対象を専門科目にも広げ、
年内に教員同士の授業参観も始める。
保護者モニターの役割はさらに重くなり、人数を増やす必要もある。
地域の未来が、授業改善の新たなエンジンになろうとしている。

◆いわて高等教育コンソーシアム イーハトーブキャンパス計画

授業改善の共同実施や共通キャンパス整備などを進める。
人材育成や大学進学率の向上を通した地域の活性化を狙う。
2010年度までの3年間の取り組みで、今年度、文部科学省の
「戦略的大学連携支援事業」に選ばれた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081114-OYT8T00241.htm

韓国農業の現状報告 いわてアグリスクール

(岩手日報 11月16日)

岩手大、県などが主催するいわてアグリフロンティアスクール
(IAFS、校長・高畑義人岩手大農学部長)は、
岩手大農学部で韓国研修の報告会を開いた。
受講生は、日韓での集落営農の違いなどに触れ、
農業経営改善への意識を高めた。
受講生ら60人が出席。

10月の韓国研修に参加した7人が、写真などを交えながら研修内容や
自らの経営に生かす点を発表。

加工品以外は国産農産物をそろえ、安全・安心を強調するため
客から見える場所に食品検査所を設置している農協経営スーパーや、
平均年齢が60歳を超える営農法人で全員がパソコンを使い、
情報収集や通信販売を実践している例も紹介。

報告した二戸市野々上の関口泰史さん(35)は、
「研修で付加価値をつける意識が足りないと感じた。
数値を分析し、作業の非効率な部分も削っていきたい」と目標を述べた。

岩手大農学部の木村伸男教授は、
「韓国で受けた感動を、経営改善に生かすことが大事。
しっかりとした経営戦略計画を立ててほしい」とアドバイス。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081116_4

特許に見る科学技術基本計画の効果

(サイエンスポータル 2008年11月10日)

大学、公的研究機関の特許出願状況から、科学技術基本計画で
重点領域とされた分野が特許出願でも多数を占めることが、
科学技術政策研究所の調査で明らかに。

「大学および公的研究機関からの特許出願の重点8分野別ポートフォリオ」は、
2006年の特許出願が多かった上位52の大学と上位5つの公的研究機関を
対象に、06年と07年の特許出願状況を調べた。

06年からスタートした第3期科学技術基本計画では、
ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野を
「重点推進4分野」、エネルギー、ものづくり技術、社会基盤、フロンティアの
4分野を「推進4分野」として定め、優先的に研究開発費が配分。

06、07の2年間で、日本全体では約85万件の特許が出願、
調査対象大学・公立研究機関57の特許出願件数は全部で約1万2千件。
特許出願の中で、重点8分野が占める割合を見ると、
日本全体では約45%であるのに対し、57大学・公立研究機関では74%。

日本全体では、重点8分野の中で情報通信分野の出願が最も多いが、
今回の調査対象となった大学・公立研究機関では、
ナノテク・材料分野の出願が最も多かった。

大学や公的研究機関は民間企業に比べ、国の政策をより反映した
研究開発を行う傾向にあるため、結果的に創出される特許も
重点8分野の影響を強く受けたものに。

大学の研究者が得た特許については、数年前までは95%が研究者個人や
企業に帰属しており、大学、技術移転機関(TLO)帰属は5%にすぎないことが、
科学技術政策研究所が東北大学を対象に行った調査で明らかに。

国立大学は、04年の法人化後にその多くが大学帰属へと切り替わっている。
01年以降次々と法人化している公的研究機関も同様で、
その移行時期はさまざまだが、法人化後の特許は原則機関帰属として出願。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0811/0811101.html

2008年11月19日水曜日

アルカリ性物質の痛み解明 ワサビのセンサーが関与

(共同通信社 2008年11月14日)

膵炎やアルカリ性の注射液が起こす痛みには、
ワサビの刺激を感じる細胞のセンサーがかかわっている。
自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンターの
富永真琴教授(分子細胞生理学)らがこんな研究結果をまとめ、
米医学誌JOURNAL・OF・CLINICAL・INVESTIGATIONに発表。

アルカリ性物質の刺激は、痛みの原因になる。
膵炎や膵臓がんでは、アルカリ性の膵液が背中や腹部などに
強い痛みをもたらし、アルカリ性の抗てんかん薬や抗ウイルス薬は
血管の痛みを起こすとされる。
痛みの仕組みが解明されたことで、治療薬開発に道が開けそう。

富永教授によると、このセンサーは細胞表面にある
「TRP(トリップ)A1」というタンパク質。
ワサビやマスタードの辛み成分によって、活性化する。

富永教授らは、TRPA1を持つ培養細胞をアルカリ性の物質で刺激すると、
TRPA1が活性化されることを発見。
遺伝子操作でこれをなくしたマウスと普通のマウスの足の裏に、
それぞれアルカリ性の液体を注射し、行動を比べた。

普通のマウスは痛みを感じたとき、足をかんだりなめたりといった特有の行動を
取ったが、TRPA1をなくしたマウスでは、こうした行動が全く見られなかった。

富永教授は、「TRPA1の働きを抑えることで、アルカリ性物質の刺激が
起こす痛みを緩和できるのではないか

◆野口光一・兵庫医科大教授(疼痛学)の話

酸性の刺激に反応するセンサーはいくつも見つかっているが、
アルカリ性のセンサーが見つかったのは初めてで、非常に面白い結果。
胃酸を中和する膵液はアルカリ性で、膵炎や膵臓がんで起こる
強い痛みの原因と考えられる。
今回の発見は、そうした痛みの治療に役立つ可能性がある。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82985

南部鉄器、中国に販路 プーアル茶ブーム

(岩手日報 11月17日)

本県の南部鉄瓶が、中国雲南省が原産地の高級茶・プーアル茶の
販売大手企業から注目。

プーアル茶は、少量の茶葉を20回程度、熱湯を注いで飲み、
最後はさらに加温の上、煮出し使用することから、
保温性が高い南部鉄瓶が適している。

企業はすでに、本県の南部鉄瓶数100個を輸入し、
中国のプーアル茶ブームを受けさらなる取引拡大に意欲を示している。

この大手企業は、中国上海市の上海大可堂茶業有限公司
2007年春に中国大連市の県大連事務所を通じて、南部鉄瓶に着目。
今年5月から奥州市水沢区の及源鋳造と取引を始め、
これまでに約1000万円相当を輸入。

上海大可堂茶業有限公司は輸入拡大に向け、
今月中旬に及源鋳造のほか、盛岡市の岩鋳を視察。
プーアル茶に合う弱アルカリ性の軟水も求め、本県の水質事情を調べた。

何作如名誉会長(60)は、「中国ではプーアル茶が流行しており、
水や器が大切になっている。今は上海を中心に販売しているが、
中国全土に販売を広げていきたい」と意欲的。

本県の南部鉄瓶は、国指定の伝統的工芸品の南部鉄器の一つ。
海外には、商社経由で欧州や台湾などに輸出しているが、
中国への直接輸出は初めて。

上海大可堂茶業有限公司では、グループ企業の出版会社が
「中国文化と日本文化の融合」をテーマに出版物を発行。
プーアル茶と南部鉄瓶の魅力を中国に広くPRする予定。

質、デザインが認められ、世界的にマーケットが広がる南部鉄器だが、
海外での商標権問題も抱えている。
中国では、個人が「南部鉄器」の商標を登録申請し、
中国商標局が審査中だが、認可された場合、
本県から「南部鉄器」の商標で中国輸出できなくなる可能性がある。

県地域産業課の飛鳥川和彦・海外マーケット特命課長は、
「商標登録される前に、中国で本県の南部鉄器の知名度を高めていく必要がある」、
中国での岩手ブランドへの認識の高まりを期待する。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081117_13

授業を変える(8)計画書作成 「進化」促す

(読売 11月13日)

授業の改善計画書が力を発揮する。

「なぜ?説明して」。
近畿大学理工学部の岩崎光伸准教授(45)は、「基礎化学結合論」の授業で、
約70人の1年生に質問を繰り返した。
口頭で答えさせるだけでなく、板書もさせる。
クラス全員が目で見て理解できるようにするためだ。
考えさせる授業を心がけている。

座席は指定し、最前列には昨年度に単位を落とした再履修生を座らせる。
90分授業を前半と後半に分け、それぞれの最後に、
理解度を測る練習問題を課し、質問時間も設ける。
わからない部分を放置しない。
毎回、復習・予習が必要な宿題を課し、次の授業で提出させる。

こうした授業の仕方は、以前に自分で授業改善計画書に記した内容。
理工学部で授業を担当して約8年。
「高校の授業みたいでとっつきやすい」と学生から高評価を受け続けるが、
「さらに進化しないと」と表情を引き締める。

教員の「進化」を支える授業改善計画書は、担当する全授業について、
〈1〉授業で工夫した点
〈2〉授業で良かったと思う点
〈3〉改善を要すると思う点
〈4〉授業評価結果について思うこと――を記述。
改善計画は、学生の評価をきちんと受けとめたかが一目でわかる。
学部で冊子にまとめ、学内に置いて学生に公開。

学生の授業評価は8年前、評価結果に基づく改善計画の作成・公表は5年前、
理工学部の全教員に義務化された。
「学生に力をつけられない大学は不要。
教育に力を注ぐ教員を厚遇しないと、授業は変わらない」と強調する
宗像恵前学部長(67)が推進してきた改革の目玉。
授業評価が低い教員には、学部長の面談や指導を受ける義務もある。

4年前には、授業評価で上位5%に入った教員に給与5%分、
最大20万円上乗せし、2年連続で低評価の教員には賞与の減額を実施。
提案時に教職員組合は、学生による授業評価への不信感から反発したが、
最終的には妥結した。翁長博副委員長によると、
「上司との相性で評価されるよりはマシ」という意見もあった。

宗像さんは、授業評価の確度は高いと分析している。
どんなに高度な内容で宿題やテストが多くても、学生に質問を重ね、
理解度に合わせて進める授業は評価が高い。
“楽勝”の内容が、高評価とは限らない。
評価は無記名式だが、記名式で試しても結果はほぼ同じで、
学生はきちんと答えているとわかったという。

昨年度後期の評価の平均点は、
共通教養・専門・外国語科目とも8点弱(10点満点)。
いずれも5年前より上昇。
5点以下の授業は、25%から10%にまで減った。

来年度からは、同様の取り組みを全学に広げる。
学部の壁を超えたマンモス大学の改革に注目したい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081113-OYT8T00190.htm

大学へ編入希望4人に1人 5年一貫の看護高校生 助産師に2年遠回り

(共同通信社 2008年11月11日)

看護師養成教育を5年(本科3年、専攻科2年)一貫で行う看護高校の
生徒の27・7%が、卒業後の進路として、現行制度では認められていない
大学への編入を希望していることが、
全国看護高等学校長協会の調査で分かった。

一貫高校を卒業しても、助産師などの受験資格を得るには、
さらに看護系の4年制大学などに1年生から入り直す必要があり、
普通科高校から直接、大学進学する場合に比べて
2年間"遠回り"を強いられていることが背景に。

文部科学省の検討会も問題解消に向け、編入容認を検討課題に挙げた
報告書案をまとめ、省内で議論が始まっている。
調査は7-8月、全国の一貫高校で学ぶ生徒約1万6000人を対象に実施し、
うち約1万5000人が回答。

卒業後、引き続き大学への編入を希望する生徒は15・4%、
時期は特定しないが、将来的に編入を希望する生徒も12・3%、
4人に1人強に当たる27・7%が編入を望んでいる。
希望者の81・3%が、編入先として看護系大学を希望。

理由を複数回答で聞いたところ、高卒では取れない「助産師資格取得」を
挙げたのがほぼ半数の49・6%。
「保健師資格取得」が35・7%、「養護教員希望」も22・4%。
「高度な看護学を学びたい」33・5%、「看護学の学位を取得」16・6%など、
大学での学習に意欲を示す生徒がいる一方、
21・7%は「看護を学び直したい」と答え、卒業後すぐ医療現場に出ることに
不安を抱える姿も浮かんだ。

協会調査では、昨年度に一貫高校を卒業した生徒の95・5%が就職し、
大学や短大などに入学したのは3・1%。

▽看護高校

高校の看護師養成課程は、
(1)3年課程で准看護師を目指す
(2)その後2年課程の専攻科へ進み看護師を目指す
(3)当初から看護師を目指し、5年課程の一貫校で学ぶ-の3形態。

資格取得に関係なく、看護学を学ぶ学科を設ける高校もある。
全体の生徒数は約2万人。文部科学省は、
短大や高等専門学校(高専)、専門課程を持つ専修学校(専門学校)
からの大学編入を認めているが、高校専攻科の教育内容は
学習指導要領の対象外なことなどから、
「教育の質が保証されていない」として編入を認めていない。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82772

2008年11月18日火曜日

斎藤実の精神を後世に 奥州でシンポ

(岩手日報 11月16日)

奥州市出身の元首相・斎藤実(1858-1936年)の
生誕150年記念シンポジウムは、市文化会館(Zホール)で開かれた。
生前の斎藤を知る孫の岡百子さん(81)らがパネリストとして参加。
斎藤と妻春子さん(1873-1971年)にまつわる企画展も始まり、
多くの市民らが郷土の偉人の遺徳をしのんだ。

記念事業実行委(会長・相原正明奥州市長)主催。
岡さんのほか、東京大准教授の加藤陽子さんと外村大さん、
相原市長の4人がパネリストを務めた。

岡さんは、斎藤が凶弾に倒れた1936(昭和11)年の二・二六事件まで、
東京都四谷区(現新宿区)の斎藤の別邸で斎藤夫妻と過ごした。
祖父の人柄を、「温厚で人を怒ることはなかった」と振り返り、
斎藤死後の春子さんについて、「穏やかではあったが、不幸だったことは
息子に先立たれたことではないか」。

外村さんは、「人柄が表れている」と斎藤の書を分析。
加藤さんは、二・二六事件後、昭和天皇が涙を流したとされる理由として、
当時の陸軍が斎藤の考えに沿わず、新しい戦争に動きだしていたことなどを挙げた。
相原市長は、「武士の魂を持ち、国際性にも優れていた」と、
斎藤の志を後世に伝えていくことを誓った。

市民ら約760人が聴講。
同市水沢区東大通りの浅倉牧子さん(84)は、
「変化の時代でも、受け継がれてきた斎藤の精神や水沢の心を感じた」。

Zホールの展示室では24日まで、二・二六事件当日の記録が記された
資料や弾痕が残る鏡など約100点を紹介する企画展が開かれている。
開館時間は午前10時-午後6時。入場無料。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081116_7
(共同通信社 08年11月05日)

日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が、日本薬剤師会と協力して
ドーピング防止規則やスポーツ知識に精通した薬剤師を養成する
「公認スポーツファーマシスト制度」の創設に踏み切った。

国際的にも例がなく、幅広い世代の競技者や指導者に
適切な情報提供と啓発活動を推進していくのが狙い。

日本薬剤師会によると、薬剤師は全国で約25万人。
浅川伸JADA事務局長は、「五輪の種目によっては、
ドーピング検査を受けた選手の2、3%が陽性反応を示すのが世界の実情。
まずは、国体や小中高の教育現場で活動する役割が出てくる」と期待。

来年3月から薬剤師の資格を持つ希望者を募集し、
初年度は450―500人に認定証を発行する予定。

近年は日本でも薬のインターネット販売が進み、個人輸入も容易になった。
知識不足や不注意から禁止薬物を使用する「うっかりドーピング」の例も少なくない。
日本薬剤師会の関係者は、「最近は外国製のサプリメントで
成分表示にない禁止薬物が含まれるケースも多い」と警鐘を鳴らす。

日本体協の福林徹医事部会長は、医師の立場として
「薬剤師と競技者の接点をつくる仕組みが今後重要だ」と指摘。
JADAは制度が軌道に乗れば、将来的にはスポーツを楽しむ
中高年層を対象に活動の範囲も広がると期待。

http://www.anti-doping.or.jp/cgi/news.php?mode=content&newsid=20081105_01

花粉症、3か月で改善…スイスの研究チーム開発

(読売 2008年11月11日)

花粉症などのアレルギー患者に原因物質を繰り返し注射する
「減感作療法」を、3か月で済ませることに、
チューリヒ大学病院(スイス)などの研究チームが成功。

皮下でなく、そけい部のリンパ節に注射する方法で、
副作用も従来の方法より少ない。
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

減感作療法は通常、原因物質のエキスを少量ずつ、約3年かけて注射。
研究チームは、皮下注射したエキスが体内の免疫システムをつかさどる
リンパ節へは一部しか達しないことに注目。
58人の花粉症患者に対し、リンパ節へ直接、
1か月おきに計3回だけ注射する新手法を試してみた。

開始から4か月後に検査したところ、アレルギー症状が劇的に緩和され、
治療前に比べ平均10倍の花粉量がないと、鼻炎が起きなくなっていた。
効果は、開始から3年後も持続していた。

従来の減感作療法を行った別の54人では、
じんましんなどの軽い副作用が18件、
入院の必要なぜんそくの副作用が2件起きた。
新手法では、軽い副作用が6件起きただけ。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82753

授業を変える(7)語学強化 外大に委託

(読売 11月12日)

遠く離れた他大学の協力を得て、語学教育を充実させる大学がある。

外壁はピンク色、中の床はオレンジ、ソファは赤、
最上階となる3階の教室はガラス張り。
広島文教女子大学のキャンパスに、これまでと全く雰囲気の違う建物がお目見え。

文教英語コミュニケーションセンター(BECC)。
授業で使うだけでなく、昼休みや放課後には、
サロンで教員と気軽に会話ができる。
2階以上では原則、日本語が使えないルール。
学習アドバイザーも常駐。
映画やCD、漫画などの教材がふんだんにあり、発音が練習できるブース、
ビデオカメラを借りて発表の練習ができる小部屋などを使って、自学自習ができる。

神田外語大学と業務委託契約を結んだ施設。
同大は、教員4人を含む7人をBECCのスタッフとして送り込んだ。
教員が全員、英語を母語としているだけでなく、
言語学や教育学などの修士号を持っている。

神田外語大では、4年前からの東北大を手はじめに、
岩手大や九州大でも語学教育を手がけている。
その評判を聞いた広島文教女子大の角重始学長が、導入を即断した。

人間科学部1学部の5学科だけという小さな大学。
地方私大の経営は厳しい。
初等教育学科の教員免許など、すべての学科が資格に結びつくが、
それに加えて語学力は付加価値になるという判断。
「自学自習の習慣を身につけることは、将来にわたって学び続ける力になる」
国が大学生に必要な能力を、「学士力」という言葉で提示、
その一つとして語学などコミュニケーション力を掲げようとしていることも、
学長の背中を押した。

10月上旬の1年生の授業。
「ハーイ」と手を挙げて教室に入っていく学生たちには、
教室に入るのを尻込みしていたという入学当初の姿は想像できない。
ニュージーランド出身のジーン・トンプソンさん(30)は、
「新婚旅行の行き先」といったテーマで学生を引きつける。
教室内は笑顔が絶えない。

BECCで授業まで受けるのは、まだ1年生限定。
小学校教員になるにも、英語の素養が必要な時代だけに、
「そのことは意識しています」という学生が多い。
施設を使いこなす1年生に、上級生からは「うらやましい」といった声も。

語学を専門に学ぼうという学生に比べれば、
英語を学ぶ動機が弱いことは否めない。
前年度の1、2年生へのアンケートでは、
「中学・高校で英語は不得意だった」と答えた学生が52%、「嫌いだった」43%。
独自のカリキュラムが必要になっている。
学習アドバイザーへの相談も、日本語でできるよう、配慮。

新年度にはスタッフが増員される。
「いつまでも神田コーナーでいいわけがない」と角重学長。
将来、この施設をどこまで自分たちのものにできるのか。
大学の評価は、卒業生の進路とともに、その点にかかっている。

◆大学は連携の時代

大学間の連携が、全入時代を迎えて加速、
文部科学省も今年度から、連携を後押しする戦略的大学連携支援事業を始めた。
採択された54件には、地元同士だけでなく、武蔵工業と室蘭工業、
日本福祉と北星学園と熊本学園といった全国規模の連携や、
共同での大学院設置を目指す動きも含まれている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081112-OYT8T00198.htm

薬を飲む子供が増えている:原因は肥満

(WebMD 11月3日)

糖尿病、高血圧、高コレステロール、うつ病など、肥満に関連した
健康問題で薬物療法を受ける子供や10代の若者が増え、
また肥満とは関係しない喘息や注意欠陥多動障害 (ADHD) で
薬を飲んでいる5‐19才の子供が増えている。
『Pediatrics』11月号。

セントルイス大学小児科教授のDonna Halloranは、
「今までより、慢性疾患治療薬を使う機会が増えてきた。
肥満は糖尿病、高血圧、コレステロール異常、うつ病などの
合併症の原因になる」。

小児用慢性疾患治療薬:その利点 肥満とADHDの関連は分かっていないが、
薬物療法を選ぶ小児科医が増えている。
「薬物の使用が増えるのは悪いことではない。
これらがみな適切に診断されるのは喜ばしい。
高血圧は治療が必要である。喘息、糖尿病、うつ病も然り」。

エモリー医科大学(アトランタ)小児科教授のRobert Gellerは、
ADHDの薬を飲む子供たちが増える傾向にある。
これは、ADHD等の病気に伴う「社会的偏見が少なくなっている」ため。
「今では多くの人がその病気を受け入れるようになり、適切な援助を求めている」。

喘息の重症度と発生率が、若者の肥満増加と関係あるのかについて
同研究は答えを明らかにしていないが、こうした問題は多少重なる部分がある。

Halloran博士らは、2002~2005年、民間の保険に入っている5‐19才の若者
350万人以上の処方箋データを調べた。
若者の糖尿病薬処方率は2倍になり、喘息治療薬の使用率は46.5%上昇。
ADHD治療薬の使用は40.4%上昇し、脂質およびコレステロールを下げる
薬については15%上昇。

「病気の増加に伴い、病気の発見率が向上し、薬剤の使用量も増えている。
長期的な服用のリスクは分からないが、診断の向上は良いこと」。

肥満とADHD、肥満と喘息に関係があるかどうかは科学者も分からない。
「肥満がうつ病の原因になるのか、その逆はあるのかも分かっていない。
しかし、両者をセットで考えてもおかしくはない」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=82906

2008年11月17日月曜日

英皇太子はサイエンスがお好き

(サイエンスポータル 11月7日)

北澤 宏一 氏(科学技術振興機構 理事長)

チャールズ英皇太子は、サイエンス通で知られる。
東京・お台場の日本科学未来館を訪問された。
毛利衛館長が、天井から下がる巨大な球状ディスプレイ「ジオ・コスモス」に
映し出される未来の地球の気象変動をお見せした。

ジオ・コスモスは、館長就任の際、毛利さんのたっての願いで作られた装置。
スペースシャトルから見た「暗黒の宇宙に輝く青い地球」が、
毛利さんの世界観を完全に変えた。

当時、日本で開発されたばかりの青色を含む発光ダイオード100万個を使い、
明るいオールカラー表示が初めて可能に。
今、この未来館の巨大ジオ・コスモスは、
世界の科学館からうらやましがられている。

チャールズ皇太子は、ナノテクノロジーや地球環境について、
学会や市民講演会でも熱い議論を展開される論客。
今回は、科学未来館講堂で多くの聴衆に向けて
「人間による地球環境の破壊と気候変動の危機」と題して講演、
日本語で「いま、不言実行の時」と結論を述べられた。

皇太子は講演の中で、日本の省エネルギー技術のすばらしさに何度も触れて、
欧州と日本が協力して地球の危機に対処していくべきことを訴えられた。
講演の締めくくりには、ジオ・コスモスが登場。
「30秒の映像は、地球温暖化のペースが本当に警告していることを示す」
という皇太子の紹介に続き、2000年から2100年に向けての
地球表面温度変化のシミュレーションで、
6度の温度上昇を示す真っ赤になっていく地球の様子が映し出された。

英国ではこの10月3日、ブラウン首相による内閣改造が行われ、
新たに「エネルギー・気候変動省」がつくられた。
「気候変動の省ができた」ことは、21世紀の地球環境に対する
英国の思い入れの強さが表れたもの。

新大臣が、次の労働党党首とも目されるミリバンド外相の実弟で、
38歳という若さのエド・ミリバンド氏であることも注目。
今後、英国はこの外務大臣と気候変動大臣を務める、
若くて人気の高い兄弟政治家、チャールズ皇太子のコンビネーションによって、
地球環境を外交の表舞台に登場させていく。

「地球環境」は、いずれ私たちの毎日の生活の意識を形作る
基本的な規範となってくる。
外交においても、各国の地球環境貢献度が指数のようなもので示され、
輸出時の関税率が影響を受けたり、外交における錦の御旗としての役割を
果たしていくことが予想。

「地球環境イデオロギー時代」が到来。
チャールズ皇太子の今回の講演は、その先駆けのように思えた。

http://www.scienceportal.jp/highlight/0811.html#081107

難病の歌手がコンサート 本田美奈子基金が開催

(共同通信社 2008年11月14日)

2005年11月に亡くなった歌手本田美奈子さんの遺志を継ぎ、
重病患者の支援に取り組む民間非営利団体(NPO)
「リブ・フォー・ライフ美奈子基金」は、筋力が低下する難病と闘う
シンガー・ソングライター朝霧裕(本名・小沢由美)さん(29)のコンサートを
11月15日に都内で開く。

同基金は、「生前の本田さんのように、
『病気になっても前向きに強く生きていける』
というメッセージを送ってくれるはずだ」と期待。

さいたま市中央区に住む朝霧さんは、生後すぐに脊髄性進行性筋萎縮症を発症。
幼少から書くことが好きで、16歳の時には日常生活などをつづった
エッセー集を出版。
20歳ごろから自作の詩に曲を付ける音楽活動を始め、
最近は月1回程度、首都圏を中心にライブ活動を続けている。

コンサートは、朝霧さんの友人らが同基金に働き掛けて実現。
東京都港区東新橋のヤクルトホールで行われる。

本田美奈子さんと親交があったミュージカル俳優今井清隆さんや
歌手松本伊代さんらも参加し、朝霧さんのオリジナル曲や本田さんの歌など
二十数曲を披露する。

朝霧さんは、「一流の人との共演は初めてなので不安はあるが、
毎日を精いっぱい生きる素晴らしさを伝えたい」と楽しみにしている。
問い合わせは同基金事務局、電話03(3280)2012。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82977

「飲む発毛剤」がOKに 禁止リストから外れる 「ドーピングの話題」

(共同通信社 2008年11月12日)

頭髪の薄いトップアスリートには朗報か-。
世界反ドーピング機関(WADA)はこのほど、公表した2009年向けの
禁止薬物リストから発毛剤などに使用されているフィナステリドを外した。

この薬は、日本でも販売されている「飲む発毛剤」に含まれる成分で、
筋肉増強剤を使用した痕跡を消す作用があるとして、
05年から禁止薬物に指定。

06年トリノ冬季五輪前には、ソリ競技のスケルトン男子で金メダル候補だった
ザック・ランド(米国)が陽性反応を示して五輪出場を逃し、
昨年は日本のプロ野球でガトームソン(当時ソフトバンク)が
違反を指摘されて話題となった。

WADAは今回の除外決定を、検査技術の進歩によって、
フィナステリドを使用しても筋肉増強剤の使用が
容易に見抜けるようになったと説明。

1年間の出場停止処分で五輪を棒に振ったランドは、
「情報を聞いた時は、ソファで泣くほどふき出してしまったよ。
彼らは何の科学的根拠もなく、禁止リストに載せていたのだから」と憤慨気味。

日本体協スポーツ科学研究室の伊藤静夫室長は、
「選手側からすれば、確かに禁止薬物に追加したり除外する根拠が
あいまいな印象をぬぐえない」という見解。

今や頭をそり上げ、発毛剤の服用も控えているランドだが、
"解禁"は来年1月1日から。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82849

授業を変える(6)改革論議 学生主体で

(読売 11月11日)

学生が主体になって、教職員と授業改善に知恵をしぼる場がある。

「大学に長く勤める事務職員の方に、キャンパスの隠れた名所を
教えてもらう授業はどうだろう」、
「自信のある目玉授業を持ち寄ってコンテストを開いてみては」

岡山大学の講堂で、班を代表して壇上に上がった学生が
10分間で企画案を説明する。
学生や教職員らは、ほかの班の発表を熱心にメモしながら、
「予算はどの程度の額か」などと、具体的な質問を投げかける。

大学教育の改善を目的に、他大学の学生や教職員とも交流するイベント。
5回目の今年は、新潟大、静岡大など全国の国公私立17校から
約60人の学生と教職員が参加。
午前中、5~6人の小グループで議論を始め、
午後からは10人程度の大グループに再編、企画案をさらに詰めた。
昼食を挟んでの議論は5時間を超えた。

岡山大では7年前、授業改善を目的に、各学部から推薦された
学生と教授らによる「学生・教職員教育改善委員会」ができた。
学生が新入生向けの履修相談会を開くなど、学生主体の改革を進める一方、
他大学まで波及することを期待して始まったのが交流イベント。
学生のアイデアが基になって、コンビニエンスストアを多角的に分析する授業が
始まるなど、成果も表れている。

委員会で教員代表を務める橋本勝教授(53)は、
「初対面の人同士で何ができるか。
学生には、何かをやったという達成感が重要。
他大学の学生にも感じ取ってもらえることがあるはず」

議論するグループは、学生と教職員の混成だ。
互いの立場から、大学や授業、学生に対しての率直な気持ちを語ってもらい、
議論に深みを出そうとしている。

ある小グループでは、6人がテーブルを囲むと、1人の学生が
「教授1人に学生が300人。これでは授業は変わらない」と口火を切った。
「大学教育に、まず学生が興味を持たなければ」と学生が発言すると、
教員の1人は「問題意識は教員側も同じ。学生の学ぶ意欲を引き出したいが、
何事も、できるまではつまらないと感じて当然では」と応じた。

参加した学生の反応は良好だ。
早稲田大学教育学部2年の小川昌樹さん(19)は、
「他大学の人と交流を持てる機会は案外少ない。貴重な経験だった」。
静岡大学工学部3年の森野秀朗さん(22)も、
「今後も大学の枠を超え、学生が参加したくなる面白い授業を考えていきたい」

イベントの最後、実行委員長の岡山大学薬学部2年、安藤誠さん(20)が
「教育改善とは何か。すぐに答えを出すのは難しいが、
自分から学ぶ楽しさを追求することが大事だと思う」と話すと、
講堂に大きな拍手が起きた。

学生と教職員が力を合わせ、大学の可能性を探る。
地道な取り組みの先に、理想の大学や授業の形は見えてくるはずだ。

◆学生・教職員教育改善委員会

11の各学部を代表する学生ら37人と、教職員19人で構成。
授業改善、システム改善、学生交流のテーマごとに作業部会を作り、
週1回程度活動している。
システム改善の作業部会では、学生が学びやすい環境整備のため、
老朽化した学内設備の見直しや、科目を履修する際の
抽選方法のあり方なども議論。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081111-OYT8T00217.htm

県産雑穀で料理の腕競う 鷲北さん最優秀賞

(岩手日報 11月12日)

2008年度県産食材料理コンクール(県外食産業協議会)は、
盛岡市志家町のサンセール盛岡で開かれた。
日本一の生産量を誇る県産雑穀を初めてテーマに据え、
プロの料理人が創意と技術を競った。
盛岡市・ホテル東日本の鷲北真吾さん(28)の
「雑穀米詰め杜仲茶ポークの蒸し煮」が最優秀賞(県知事賞)。

県産雑穀に加え、県産食材を使用した原価500円以内の
和食、洋食、中華、デザートなど1品料理28点が出品。
県調理師会の加藤綱男会長を審査員長に、
5人の審査員が味や基本技術、食材の生かし方などを5段階で評価。

鷲北さんの料理は、豚バラ肉のブロックに、ヒエやアワ、キビ、ハトムギ、
うるち米を詰め2時間蒸した。
しょうゆベースのあんを添え、蒸しパンに挟んで食べる。

鷲北さんは、「雑穀の使い方が難しかった。調理法を追求していきたい」と
意欲を新たにしていた。
受賞作品は今後、ホテルでも提供される予定。

加藤審査員長は、「蒸す、煮るなど下処理を十分にすること、
別の食材のうま味に合わせることがポイント。
食感をアクセントにするなど、自分なりに雑穀を生かした料理を作ってほしい」

県外食産業協議会の葛巻治会長は、
「ヘルシー志向で雑穀に目が向いている。
全国に発信する方法を考えていきたい。
ホテルやレストランでも、雑穀を使った料理を提供していただきたい」

入賞者は次の通り。
◇一般の部
▽優秀賞 下河原健(ホテル東日本)
▽奨励賞 高村和佳(盛岡調理師会青年部)、
木村佳宏(ホテルメトロポリタン盛岡)、府金洋平(ホテル東日本)
▽特別賞 工藤昌子(北日本ハイテクニカルクッキングカレッジ)
◇新人の部
▽最優秀新人賞(県外食産業協議会長賞) 石山歩美(ホテルメトロポリタン盛岡)
▽優秀新人賞 村上亮(ホテル東日本)
▽新人奨励賞 黒沢司(清次郎)

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081112_9

2008年11月16日日曜日

遺伝子ダイエット:根拠ないかも 「変異」有無で結果に差なし--東北大調査

(毎日 11月9日)

肥満になりやすい遺伝子変異を持っている人でも、
持たない人と同等にやせられることを、
栗山進一・東北大准教授(公衆衛生学)らが調査で示し、
米医学誌「メタボリズム」電子版に発表。

遺伝子を調べて肥満体質の型を判断し、効率的な減量法を指導する
「遺伝子ダイエット」が話題だが、栗山准教授は
「現時点で科学的根拠があるとは言いがたい」と指摘。

調査は、福島県内での減量教室参加者のうち、同意が得られた
40~60代の37人(男性9、女性28)に、
「β3アドレナリン受容体遺伝子」の変異の有無と減量の関係を調べた。

同遺伝子は、代表的な肥満関連遺伝子で、これに変異がある人は
変異がない人に比べて基礎代謝が低いため、肥満になりやすい。

被験者のうち、変異があったのは12人。
肥満程度を示すBMI(体格指数、25以上が「肥満」)は、
「変異あり」群の平均が25・6、「変異なし」群は24・8。
全員に保健師や管理栄養士が6カ月間、食生活や運動を指導した結果、
変異あり群の体重は平均2・52キロ減り、BMIは1・08減った。

一方、変異なし群は体重1・89キロ減、BMI0・8減で、
両群の間に統計的に意味のある差はなかった。
栗山准教授は、「遺伝子変異だけが肥満を起こすわけではなく、
両者の関係はまだ議論がある」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081109ddm041040100000c.html

授業を変える(5)店舗実習 磨け社会人力

(読売 11月8日)

実社会の目を徹底的に意識させる試みが始まった。

愛知県内の百円ショップで、名古屋商科大学の学生5人が、
開店前のぞうきんがけに汗を流していた。
掃除が済むと、社員と一緒に「いらっしゃいませ」。
客に商品の説明を求められ、社員を探し回る学生もいる。

アルバイトではない。
同大が4月から、百円ショップを展開する「セリア」(本社・岐阜県大垣市)と
連携して始めた授業「社会人基礎力育成講座」の一コマ。

受講生は、抽選で選ばれた7学部の2~4年生37人。
6チームに分かれ、前期は業界の現状や課題を研究し、発表を重ねてきた。
後期は、その成果をもとに考案した独自の商品陳列棚をセリア側に提案、
「売り上げ増に貢献できる」と認められたチームが実際に棚を持つことができる。

夏休み返上の“店員見習い”は、提案を認めてもらうには
客層や好みなどの把握が欠かせないと、学生が自主的に始めた。
万事に消極的だった開講時とは打って変わった姿に、
担当の亀倉正彦准教授(38)は目を細める。

同大の「社会人基礎力育成講座」の狙いは、
企業から与えられた課題をチームで考えて実行し、
事後に客観的に振り返る総合力を培うこと。
実社会で役立つ力を身につけさせてほしい、という
外部からの要請が起点だが、教員たちも必要性を実感していた。

亀倉さんは、同大に着任して9年。
学生の意欲のなさが気になっていた。
授業中の私語は少ないが、試験をしてみると、全く理解できていない。

開講と同時に、学生たちが人との関係を築くのも不得手だとわかった。
「あいつがいるからチームがまとまらない」と
メンバーの入れ替えを求める学生もいた。
「売り上げ増を見込める商品棚」という課題に必要な
「客の立場で考える」どころではない。
研究室を学生に開放し、頻繁に相談にも乗ってきた。

そうした積み重ねを評価したセリア側の好意もあって、
提案は全チーム採用された。
今月9日までの2週間、愛知と岐阜の3店舗に学生たちの棚が設けられている。

大掃除向けの洗剤や道具をまとめた棚、
「働く女性の癒やし」をテーマに入浴剤が並ぶ棚、
木炭と塩を使った「エコ洗濯」などユニークな組み合わせで
環境と節約を提案する棚……。
どの棚にも、半年以上の苦労がにじむ。
前期から授業を見てきたセリア営業部の佐野満係長(48)は、
「客への気配りができるようになった」と成長を喜ぶ。
子供向け商品は、低い棚に置き換えるなどの工夫に驚いた。

「やっと芽生えたやる気を持続させたい」と亀倉さんは願う。
来年1月には、取り組み全体を振り返らせるため、学外に発表させ、
優秀なチームに投票してもらう計画。

一つの授業で学生を成長させるには、限界がある。
社会へのかかわり方を体得する――
この講座の狙いを、全学的に広げることができるか。
大学の姿勢が問われている。

◆社会人基礎力

経済産業省が養成を提唱している「職場等で求められる能力」。
主体性、働きかけ力、実行力からなる「前に踏み出す力」、
課題発見力、計画力、創造力の「考え抜く力」、発信力、情況把握力、
傾聴力、規律性、柔軟性、ストレスコントロール力を含む
チームで働く力」の三つで構成。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081108-OYT8T00164.htm

日本人の臓器移植仲介「108人」

(読売 2008年11月12日)

「中国では、臓器のあっせんを処罰する法律はない」、
「私は病院に指定された金額を支払っていただけ」。
中国で1年2か月の懲役刑に服し、国外退去処分を受けた
「中国国際臓器移植支援センター」の長瀬博之代表(52)は、
中国で108人の日本人の臓器移植を仲介したことを明かし、
「確かにビジネスだが、医師もビジネスだろう」などと正当性を主張。
しかし、フィリピンで昨年開始した臓器あっせんについては
「もうやめる」などと、あきらめたような表情を見せた。

--中国に進出した経緯は?

「瀋陽(遼寧省)で光触媒の塗料を扱う会社を経営していた頃、
日本の友人が肝臓移植が必要になり、調べると、
中国では多くの移植手術が行われていた。
1000人を超える臨床経験の医師がいる。
これだけのところなら、日本の患者も移植手術できるという前提で開始」

--これまで移植を仲介した日本人は何人か?

「108人。1年2か月間、拘束されている間、
妻に『非常に感謝している』との連絡があったようだ」

--臓器移植法に違反するとの指摘があるが

「中国には、臓器移植のあっせんをとがめる法律はない。
日本では待っていても移植はできない。
法律で許されている国があれば、そこへ行くのは当然。
私のやっていることは、もちろんビジネスだが、医師だってビジネスだ」

--何百万円もの金を払うから移植を受けられるのではないか

「私は病院の指定する金額を払って、日本人患者を紹介しただけ。
経費は受け取っていたが、経営はぎりぎりだった」

--こういう形で中国から出国したことをどう思う

「ものすごく残念。私にしかできない天職だと思っていた。
たくさんの患者が本当に涙を流して、
喜んでくれるのを見てここまで続けてこられた」

[解説]中国側捜査協力 立件のカギ 

日本臓器移植ネットワークに登録して腎臓移植を待つ患者は1万人超。
しかし手術を受けられるのは、生体移植、心停止後の移植を含め
年間1000例程度で、海外に渡航して移植をする患者は後を絶たない。
中国で長瀬代表が逮捕された後も、長瀬代表と渡航移植を契約した
患者数人が別の渡航移植仲介業を探し、待機している。

臓器移植法を巡っては2006年10月、
「宇和島徳洲会病院」(愛媛県宇和島市)での生体腎移植の際、
臓器提供の見返りに現金30万円などを渡したとして
患者や内縁の妻が逮捕された事件以外、
同法違反で立件されたケースはない。

厚生労働省はこの事件をきっかけに、
親族以外の第三者から生体移植を受ける場合、
移植施設の倫理委員会で承認を受けることを求める指針を策定したが、
海外での「臓器移植ビジネス」に歯止めはかけられていない。

警察当局が中国での臓器仲介の捜査に乗り出すのは、
こうした現実を放置したままでは、「無償」、「善意」を前提にした
国内の臓器移植システムが崩壊しかねないからだ。
患者の救済を名目に高額な仲介料がやり取りされれば、
利益優先の悪質な業者がはびこる可能性もある。

立件には、臓器を提供した中国人を特定し、
移植を受けた日本人の臓器とDNAが一致することや、
仲介料の支払いがどこで行われたのかを確認する必要がある。
このためには中国側との緊密な捜査協力が不可欠で、
日中両国の捜査当局がどのように協力関係を築くのかが注目。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82827

「中国で臓器仲介」聴取へ…臓器移植法違反容疑

(読売 2008年11月12日)

警察当局は、中国で日本人への臓器移植仲介事業を手掛けていた
「中国国際臓器移植支援センター」(本部・遼寧省瀋陽市)の
長瀬博之代表(52)について、週内にも
臓器移植法違反容疑で事情聴取する方針を固めた。

同センターの業務が、営利目的での臓器のあっせんを禁じた
同法に違反する疑いが強いと判断。
警察庁も今後、中国公安当局に捜査協力を要請する方針で、
日中両国をまたにかけた臓器提供ビジネスの刑事責任追及に向け、
本格捜査に乗り出す。

同センターは、2004年からインターネット上のホームページ(HP)で、
腎臓の移植希望者の募集を始め、申し込んだ日本人に、
中国人の臓器提供者をあっせん。

移植手術は、提携先の上海や瀋陽の病院で中国人医師が執刀。
HPの説明では、費用は手術代も含め腎移植が780万円以上で、
肝移植は1300万円以上に上る。

この事業を巡って、中国の瀋陽市公安局は昨年9月、
〈1〉法人登記の業務範囲の逸脱
〈2〉臓器売買を禁じる中国衛生省の関連規定違反--の疑いで
長瀬代表を逮捕した。

しかし起訴段階では、罪状が「虚偽広告罪」に切り替わり、
先月30日、瀋陽市中級人民法院(日本の地裁に相当)が懲役1年2か月、
罰金10万元、国外追放の判決を言い渡した。
刑期が今月10日に満了になったため、長瀬代表は11日夕、帰国。
成田空港に到着直後、読売新聞の取材に
「これまで108人の移植の仲介をした」。

警察当局では、中国の裁判で臓器移植の仲介行為が審理されていないことから、
同じ事件を2度裁くことを禁じた「一事不再理」にはあたらないと判断。
厚生労働省と協議のうえ、長瀬代表が中国渡航前に
神奈川県内に住んでいたことから、同県警を中心に捜査を進めることに。

国内の臓器移植希望者は1万人を超え、海外での移植を目指す人も多い。
厚労省研究班の2年前の調査によると、
中国では少なくとも106人の日本人が腎臓移植を、
14人が肝臓移植をしていたことが判明。

警察庁は、すでに国際刑事警察機構(ICPO)を通じ
中国側に捜査結果を照会するなど、
長瀬代表の仲介で移植手術を受けた日本人と
中国人臓器提供者の特定を急いでいる。

◆臓器移植法

1997年10月に施行された脳死の判定基準や移植手続きを定めた法律。
第11条で臓器の提供や仲介に伴って利益を受けることなどを禁じ、
20条には海外での同様の行為も対象とする「国外犯規定」がある。
違反すると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82828