2010年8月21日土曜日

ストレスは妊娠妨げ、失敗するとなお悪循環も

(2010年8月12日 読売新聞)

ストレスを抱える女性は妊娠しにくい、とする初の研究結果を、
米国立衛生研究所(NIH)と英オックスフォード大が発表。

研究チームは、18~40歳の英国人女性274人を対象、
妊娠の有無を定期的に検査。
身体的、心理的ストレスの指標とされる唾液中の消化酵素
「アルファアミラーゼ」を計測。

その結果、アミラーゼの濃度が高い人は、低い人に比べ、
妊娠する確率が12%低い。

子供を望む夫婦は、妊娠に失敗するたびに失望するため、
研究チームは、「妊娠できずストレスを感じると、
いっそう妊娠しにくくなる悪循環を招くかもしれない」。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/12/123948/

建設業・運輸業、異常所見が増加傾向 2年連続6割超 宮城・健康診断

(2010年8月12日 毎日新聞社)

宮城労働局が発表した09年の調査によると、
県内で定期健康診断を受けた労働者のうち、
異常の所見があると診断された割合(有所見率)は、
年々増加傾向、建設業と運輸業では2年連続で6割超。

建設業と運輸業は、他業種と比べ労働時間が長いことから、
長時間労働が健康に悪影響を及ぼしている。

県内全産業の09年の有所見率は52・7%、
05年に比べ5・2ポイント悪化。
主な業種別では、
建設業62・9%、運輸交通業61・2%、製造業52・2%、
商業51・8%、保健衛生業45・4%--の順。
検査項目別では、血中脂質(38%)や肝機能(18%)が高い。

県内の正社員34万人、パート11万人を対象にした
労働時間の調査によると、サービス残業を除いた全産業の
年間総労働時間(09年)は1795時間。
建設業は2106時間、運輸業は1979時間。

厚生労働省の全国調査(07年)でも、長時間労働が健康に
悪影響を及ぼしている結果が浮き彫りに、
1日の残業時間が平均1時間未満の労働者の有所見率は30・6%、
5時間以上では38・6%に上昇。

宮城労働局の堀内克浩・労働時間設定改善指導官は、
「有所見率を上げる最大の要因は年齢だが、
労働時間の長さが健康に悪影響を及ぼしていると考えて良い」
として、長時間労働の抑制を求めた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/12/123954/

市町合併の久喜市でシンポ 「覚悟して利用を」 医療の窮状を市民に問う

(2010年8月11日 Japan Medicine(じほう))

3月の1市3町の合併で、人口15万7000人となった
埼玉県の久喜市の医療提供体制をめぐり、
市民団体が市民公開シンポジウムを開催。

旧久喜市には、中核となる総合病院はなかったが、
合併によって旧栗橋町にあった済生会栗橋病院、
厚生連の久喜総合病院(2011年4月開院予定)が、
新たな久喜市の医療の中核を担う。

シンポジウムには市長をはじめ、地区医師会長、
2つの基幹病院の院長らが参加、市民に厳しい現状を訴えた。

田中暄二市長は、「合併前の市は、総合的医療機関がないことが
欠点だった」と、久喜総合病院の誘致について説明。
久喜市医師会の高木学会長は、2つの病院が増えても
医療従事者の不足から、すべての救急患者を市内の医療機関で
治療することはできない、との認識。
トリアージの実施や疾病ごとの救急輪番体制の構築を提案。
市民に対しては、コンビニ受診の抑制を訴えた。

栗橋病院の遠藤康弘院長は、外来患者数の縮小・病床再編・
逆紹介率の向上などで、医師不足を乗り切ってきた現状を説明。
幸手総合病院の井坂茂夫院長も、診療科の閉鎖で
医師不足をしのぎ、久喜市から35億8000万円の補助金を得て、
新築移転するまでの経緯を説明。
移転時、救急専従医2人を確保できたことについて、
「地域の方々も、覚悟して利用していただきたい」、
受診の際、診療所からの紹介状を持ってきてくれるよう訴えた。

シンポジウムは、1市3町合併後の久喜市の医療を守ろうと、
久喜市医療を考える市民の会が企画。
市民の関心は高く、会場となった約350人収容のホールは
立ち見の聴衆が出た。

シンポジウムの司会を務めた栗橋病院の本田宏副院長は、
医療を守るには、市民の協力が不可欠。
シンポは、市民としての自覚をもった行動の第一歩になった

◆2病院増でも「なお深刻」

埼玉県は、人口当たりの医師数が最も少ない県、
久喜市は人口10万人当たりの医師数は107人と少なく、
全国平均206人に遠く及ばない状況。
久喜市がある利根保健医療圏も、崩壊の危機にあることから、
国の地域医療再生計画に選定。

旧栗橋町にあった済生会栗橋病院を加えて、
現在久喜市の医療は7病院、78診療所で支えられている。
来年4月、厚生連の幸手総合病院が、
隣の幸手市から久喜市内に移転し、久喜総合病院として開院。

10万人当たりの医師数は132人に改善されるものの、
全国平均に比べれば、依然少ない状況に変わりはない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/11/123927/

2010年8月20日金曜日

3D映画は視聴注意、頭痛や眼精疲労

(2010年8月10日 読売新聞)

立体的な映像を楽しめる3D映画を見て、
頭痛や眼精疲労などを訴える人が相次いでいるとして、
国民生活センターが注意を呼びかけている。

神奈川県の40代の女性は今年5月、中学1年の娘と3D映画を見た。
その後、女性は眼精疲労と頭痛を感じ、
娘も乗り物酔いに似た症状が続いた。

同センターによると、同様の体調不良に関する相談が、
今年に入って5件寄せられた。
3D映像は、従来の2D映像に比べ、酔いや疲労を感じやすい。
なぜ、こうした症状が出るのかについて研究は進んでいない。

今夏公開の映画には、3D版での上映が増え、
3D対応テレビも相次いで発売。

同センターは、3D映像を視聴する際の注意点として、
〈1〉気分が悪くなったら、視聴を中止する
〈2〉見た後、しばらくは自動車の運転を控える
〈3〉幼い子どもに見せるのは避ける--など。

同センターは、映画業界に対して、3D映像の注意点を
映画館で周知することなどを要望。
映画産業団体連合会は、「要望に沿う形で対処するため、
映画制作会社や劇場の関係者を集めた対策会議を開きたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/10/123847/

地方再生へ"医商連携" 空洞化対策の動き広がる

(2010年8月9日 共同通信社)

商店主の高齢化や大型商業施設の郊外出店を受け、
地方で進む中心市街の空洞化。
危機感を強めた地元商店街が、医療や介護にかかわる施設と
連携して、人の流れを呼び戻そうとする動きが広がっている。
特に高齢化率が高い四国や九州で、"医商連携"が活発。

▽ワンストップ医療

高松市の中心部にある「高松丸亀町商店街」は、
地元開業医らと協力し、商店街の一角に各診療科が集まって
買い物の合間に診察が受けられる「医療モール」を10月開設。

同商店街では、後継者不足などで空き店舗が目につくようになり、
近くに住む高齢者が日用品購入に苦労する状況も。
医療機能を集めてワンストップサービス化し、再開発の核にしたい。

商店街振興組合の熊紀三夫専務理事は、
「市街地の医療が過疎化しているとの認識を、
県医師会と共有できたことで、計画が大きく進んだ」

先進医療を、"新規顧客"の誘致に結び付ける動きも。
年末、JR小倉駅北口に移転する小倉記念病院は、
中国やアラブ諸国の富裕層を対象に、
同病院での先進的な心臓治療を目的とした医療ツアーを計画中。

北九州市小倉地区中心市街地活性化協議会は、
ツアー参加者が近くの商店街で買い物する際に特典を付ける
サービスを検討。
同協議会の吉田潔さんは、
「商圏を拡大する千載一遇のチャンス」

▽福祉や子育て支援も

若い母親が本を読み聞かせるうちに、寝息を立てる幼児ら。
「子どもを預けて安心して、買い物が楽しめる。
良い場所ができて助かります」とやわらかな笑みがこぼれる。

熊本市「健軍商店街」は医療、福祉、子育て関連の本を貸し出す
図書室を、空き店舗に設置。
元看護師が無料で健康相談を受けるほか、
買い物中に子どもの世話もしてくれる。
傍らでは、年配の女性が友人と談笑しながら血圧測定。

総務省の人口推計によると、65歳以上の割合を示す
高齢化率は全国平均22・7%。
若年層が集まる福岡を除く九州6県は、24~26%台。
四国4県も25~28%台に。

医商連携を提唱する佐賀大経済学部の岩永忠康教授は、
「高齢化が進む中、医療を媒介に中心商店街を交流の核として
盛り上げることができるのでは」と期待。

▽移転で城下町は危機

病院城下町として栄えた街が、病院の移転で危機に陥る事例も。
老朽化などで、2012年度に郊外移転する佐賀県立病院好生館。
近くの「新道商店街」で、老舗の薬局を営む川内嘉昭さん(66)は、
「売り上げの9割が病院関連。
移転したら、店だけでは食べていけない」

跡地利用を主導する佐賀市は、「具体的な計画は未定」と素っ気ない。
跡地は、公益性確保や周辺住民への配慮などが欠かせず、
集客施設などの誘致は簡単ではない。

県立病院に代わる連携相手を探し当て、商店街のピンチを回避できるか。
商店主らは、医療の「集客力」の大きさにあらためて気付かされている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/9/123797/

ワクチン不要、素早く免疫効果…実験成功

(2010年8月11日 読売新聞)

初めて体内に侵入した病原微生物に対し、
免疫細胞を改良して、事前にワクチンを打っておいたように、
素早く十分な免疫反応を起こすことに、
東京医科歯科大の鍔田武志教授と松原直子・特任助教らが成功。

マウス実験の段階だが、変異を繰り返すインフルエンザウイルスなど、
あらゆる微生物による感染症を防御する薬の開発につながる。

免疫反応(抗原抗体反応)では、リンパ球の一種のB細胞が、
病原体(抗原)ごとに抗体を作って攻撃する。
初めての病原体に反応したB細胞が、大量の抗体を作るまでに
1~2週間かかるが、B細胞の一部が抗体の作り方を記憶。
同じ病原体が再度入ってきた時、大量の抗体を2、3日で作ることができる。
ワクチンは、この反応を利用。

鍔田教授らは、B細胞表面の「CD22」という膜たんぱく質が、
初めての病原体に反応した時に作られる抗体の量を
抑制していることを突き止めた。

遺伝子操作で、CD22をなくしたマウスに病原体を注入すると、
初めての病原体なのに、素早く大量の抗体ができた。
自分自身の正常な細胞まで攻撃してしまう自己免疫疾患や
アレルギーなどの異常は見られなかった。

CD22の働きを妨げる化合物も合成し、国内、国際特許を申請。
製薬企業と連携し、従来のワクチンとは異なる
新しい予防・治療薬の開発を目指す。

鍔田教授は、「病原微生物を標的にしないため、
薬剤耐性菌や耐性ウイルスが出現する心配がない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/11/123900/

2010年8月19日木曜日

岩盤安定性に理解 北上山地を小中学校の先生が見学

(岩手日報 8月11日)

2010年度生物地学実地研究会(県科学教育研究連合会など主催)
の地学巡検は、奥州市江刺区の阿原山周辺で開かれ、
小中学校教諭が超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)計画の
国内有力候補地の一つとされる北上山地(北上高地)を見学。

公開されていない、国立天文台の観測用花こう岩帯トンネルにも入り、
北上山地の岩盤の安定性に理解を深めた。
約30人が参加。

国立天文台水沢VLBI観測所の田村良明助教の案内で、
阿原山中腹にある江刺地球潮汐観測施設を見学。

同施設は、1979年開設。
月の影響による潮汐力で、地球の伸縮や傾斜などを観測し、
山中には観測計を設置する直線約150mのトンネルがある。

ILCの候補地とされる江刺区から一関市千厩町までの北上山地は、
振動に強い安定した岩盤が特徴。

国立天文台のトンネルも、岩盤に設置した機器で、
微少な変化を観測するため、岩盤の安定を重視して選定。

田村助教は、「試掘を重ね、大きな断層もないことから
観測点として決定したようだ。
岩盤がしっかりしていないと、質の良いデータが取れない」

阿原山山頂では、講師の奥州自然研究会の
原子内貢専門調査研究員が、北上山地について説明。
「(ILCは)地下100mに、数十kmの直線の穴を掘る。
江刺から千厩までの花こう岩帯は、両側を古く固い岩帯に挟まれ、
大きな断層もなく安定している適地。
世界が注目している」

参加した久慈小の熊谷明宏教諭(39)は、
「地形的にいい場所と分かった。
国立天文台という最先端の研究機関が奥州市にあることも、
ILCにいい環境と思う」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100811_8

こどもの体力向上へ、東京都教委が対応策 1日1万5000歩/小学校に運動部

(2010年8月7日 毎日新聞社)

都教育委員会は、子どもたちに体力を付けさせるための
12年度までの対応策をまとめ、「1日1万5000歩」、
「小学校での運動部創設」などの目標を掲げた。

都内の子どもの体力が、ほとんどの学年で全国平均を
下回っているため。
都教委は、12年度までに体力を全国平均にまで引き上げ、
19年度にはピークだった昭和50年代のレベルまで向上させたい。

都教委によると、79年の小学生の歩数は1日平均約2万7000歩。
07年、約1万3000歩に減少。
背景には、ゲーム機の普及で外で遊ぶ時間が減ったことなど。

「現段階において、子どもが体力を高めていくために妥当な目標」として、
「1日1万5000歩」とした。
達成度をみるための歩数計の配布を検討。

09年度の小学校の部活動で、運動部には全体の0・6%の
約3000人しか参加していない、
「1日60分運動・スポーツ」の実践を最低基準にし、
運動部の創設を促していく。
文化部には約1万人が参加。

文部科学省が、小学5年と中学2年を対象に昨年度実施した
全国体力調査では、都道府県別で小5の男子38位、女子35位。
中2の男子は46位、女子は43位。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/9/123755/

農村医科大学を佐久に 「地域医療のメッカ」から「メディコ・ポリス」へ

(2010年8月6日 Japan Medicine(じほう))

農村医学の発祥地として国際的にも知られ、
「地域医療のメッカ」と呼ばれるJA長野厚生連「佐久総合病院」。

長野県を「健康長寿日本一」へと導いた異能の医師・故若月俊一氏が
目指した「メディコ・ポリス構想」が着実に歩を進める中、
次はいよいよ農村医科大学設立だ、と医大誘致構想。

「第一線医だけを育てる」
佐久総合病院の元院長で、若月氏の遺志を継ぐ
清水茂文・同院老人保健施設こうみ施設長は、
「医科大学の誘致を研究する会を設置した段階で、
議論は充分にできていない」、
「2つの病院(基幹医療センター・地域医療センター)が
できることが決まった。
次は大学。向こう10年のうちに実現したい」

設立に向けた研究会は、統括院長の指示で2008年春に設置。
清水氏は、医大誘致構想の方向性を示す論文
「メディコ・ポリス構想と農村医科大学」を、昨年5月発表。
若月氏のビジョンに基づいた農村医科大の実現化を目指し、
構想を練ってきた。
教職員確保や財政面での課題は大きいが、
育成すべき医師像は固まっている。

第一線医療と呼んでいる、まったく一般的な総合診療医。
国保診療所や村営診療所、地域の中小病院で仕事をしてくれる
医師だけを育てる大学。専門医は育てない」

医師不足の日本で、最も求められている医師は専門医ではなく、
第一線で保健・医療・福祉を地域で実践できる医師。

佐久総合病院は、世界に向けて農村医学を発信。
大学では、日本の地域医療ばかりでなく、
アジア・アフリカなど途上国の保健・衛生問題をも視野に入れ、
地域で実践的行動が取れる医師を育てたい。

政府が医師不足を認め、医師数拡大の方向を打ち出したことを受け、
国際医療福祉大や北海道医療大、聖隷クリストファー大が、
医学部新設の準備を進めている。
佐久総合病院の医科大学構想は、これらとは一線を画する。

清水氏によれば、佐久総合病院の農村医科大設立構想は、
1965年頃には固まっていた。
若月氏の提案に基づき、64年末、全国厚生連の中に
設立準備委員会が設置、70年の全国農協大会でも、
佐久総合病院を候補地として大学を設立することが決議。
農村地域における医師不足を解消しようとする若月氏の構想は、
政府案に基づいて各都道府県が共同で設立した
自治医科大(72年開設)に取って代わられ、頓挫した。

若月氏は、佐久地域の学園都市化構想を捨てなかった。
その思いは、氏と交友関係が深い医学史研究家・医師の故川上武氏が、
88年に提唱したメディコ・ポリス構想などの中に息づいてきた。

メディコ・ポリスは、医療・福祉都市というもので、
川上氏らは佐久の医療・保健・福祉を地域社会の経済構造を支える
産業とする構想を描いた。
佐久地域は、04年人口増のピークを迎えた。
高齢化に加え、過疎化によって崩れていく農村の現状を逆手に取って、
地域産業の再生を図ろうとする考え。

構想は、実現の方向にある。
老朽化した佐久市臼田にある本院を、2つの病院に分割移転する
計画もその1つ、13年度、救急や高度先進医療の機能を
同市中込に新築する基幹医療センターに移し、
本院は16年度に地域医療センターとして、地域医療機能を
より強化した病院へと生まれ変わる。
病院が設立資金を出し、実習生を受け入れている
看護大学(佐久大看護学部)も、08年4月にできた。
あとは大学ができるのみ。

清水氏は、「病院の分割・移転により収益が上がり、
数百人単位で地域雇用が拡大するだろう。
医科大ができれば、研究施設や製薬企業などを含めて
千人単位の雇用が期待でき、地域産業振興につながる

若月氏・川上氏と引き継がれてきたメディコ・ポリス構想は、
医科大誘致により完成へと向かいつつある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/6/123748/

2010年8月18日水曜日

黄砂の日ご用心、児童ぜんそく黄信号

(2010年8月10日 読売新聞)

黄砂が中国大陸から飛来した日は、
児童がぜんそくの発作で入院するリスクが3倍以上に高まることを、
京都大学の金谷久美子医師と伊藤功朗助教ら。

黄砂が、微生物や大気汚染物質を運ぶことは知られていたが、
子どもたちの健康に深刻な影響を及ぼしている実態が
浮き彫りになったのは初めて。
米国胸部疾患学会誌で発表。

金谷医師らは、05~09年の2~4月、富山県内の基幹8病院に
ぜんそくで入院した1~15歳の計620人について、
入院前の1週間に黄砂が飛来した日があったかどうか、
環境省の大気測定データで調査。
入院とは無関係な期間の黄砂の有無も調べ、
黄砂と入院との関係を比較。

その結果、黄砂当日に入院するリスクは普段の1・9倍、
小学生に限ると3・3倍高い。
黄砂の飛来から1週間は、入院リスクが普段の1・8倍という
高い状態が続いていた。
男子は、黄砂当日の入院が多いのに対し、
女子は数日後に入院するケースが目立つ。

伊藤助教は、「学校や家庭で、気象庁の黄砂予報などを
積極的に活用し、窓を閉めるなどの対策を講じれば、
入院するほどの発作は減らせるのではないか」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/10/123852/

特定機能病院機能評価係数II・トップ30/私立医科大病院が20大学占める

(2010年8月6日 Japan Medicine(じほう))

2010年度DPC点数改定では、新たに機能評価係数IIが導入。
地域医療係数の告示によって、機能評価係数IIの6係数が出そろった。
特定機能病院グループにおける機能評価係数IIでは、
東海大病院が最も高い。
特定機能病院トップ30で見ると、国立大病院が8病院、
公立大病院が3病院で、私立医科大病院が20病院。

◆救急医療係数や地域医療係数で明暗

DPC評価分科会後のブリーフィングでは、
地域医療係数について、国立がん研究センター中央病院が
地域医療係数の中で、がん登録がクリアできていない点に質問。

厚生労働省は、東京都が地域がん登録事業を
行っていないためと説明。
地域医療係数が0.0000の施設は、全国で37施設あるが、
国立がん研究センター中央病院もその1つ。

国立がん研究センター中央病院については、
がん医療に特化した疾病構造になっている特徴など、
係数だけで短絡的に評価できない側面がある。

特定機能病院の機能評価係数IIでは、トップ3が東海大病院、
日本大板橋病院、川崎医科大病院。
東海大病院は、効率性係数、複雑性係数、カバー率係数、
地域医療係数、救急医療係数ともに、バランス良く高い係数を
積み上げているのが最大の特徴。

大学病院は、救急医療係数が全体的に低調、
トップ3病院や自治医科大病院、国立循環器病研究センターは、
他の総合病院と比較しても高い係数を取得。

◆国立大8病院がトップ30に食い込み

トップ30に入った国立大病院は、広島大病院、長崎大病院、
信州大病院、山口大病院、岐阜大病院、鳥取大病院、
千葉大病院、滋賀医科大病院の8病院。
公立大病院では、和歌山県立医科大病院、横浜市立大病院、
福島県立医科大病院がトップ30。

調整係数で見ると、特定機能病院で日本医科大病院が最も高く、
東海大病院は5番手。
調整係数が最も低いのが、名古屋大病院。
名古屋大病院の機能評価係数IIは、順天堂大順天堂医院、
北海道大病院と同じ。

私立医科大病院における機能評価係数IIでは、
後ろから2番手になった順天堂大順天堂医院。
トップの東海大病院と比較すると、救急医療係数と地域医療係数で
大きな差ができている。

近隣の東京大病院は32番、東京医科歯科大病院も35番手。
この2大学病院と比べ、効率性係数と救急医療係数が低い。
これは、大学病院としての立つ位置の問題も絡むため、
是非論で語れる問題ではないが、調整係数で見ると
順天堂大順天堂医院が、東京大病院と東京医科歯科大病院を上回る。

◆国循と国がんの係数は病院の役割を反映

国立循環器病研究センターと国立がん研究センター中央病院も、
地域医療係数と救急医療係数で、機能評価係数IIでは明暗を分けた。
救急医療係数が、国立循環器病研究センターは、
急性期心筋梗塞など時間との争いになる救急患者が搬送される
機能を有していることから、当該係数は全国でもトップクラス。

がん患者を扱う国立がん研究センター中央病院は、
救急医療係数を積み上げることは不可能に近い。
こうした疾病構造の違いによる格差も踏まえての評価が、
必要な係数内容に。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/6/123746/

ロケや和食、医療で外国客 政府がニューツーリズム案

(2010年8月6日 共同通信社)

政府の観光立国推進本部分科会は、
海外ドラマや映画のロケを支援して外国人観光客を呼び込んだり、
和食グルメツアー、健康診断や治療と結び付けた医療観光など、
「ニューツーリズム」を展開する取り組み案をまとめた。

近く同本部に報告、将来的に年間訪日客を、
3千万人にする目標達成のため活用する。

取り組み案は、日本の伝統文化に加えて、アニメやゲーム、
ファッションなどが世界から注目、観光の原動力になると指摘。
アニメファンをターゲットにした旅行商品や、原宿などファッションの
発信地をめぐるツアーなどを提案。

日本をロケ地にした映画やドラマが、
中国や韓国でヒットしたことを重視。

国内外の映画祭や、海外の放送局などとの協力を通じて、
観光PRに取り組む。
世界的な日本食ブームを受け、すしなどに続く外国人の人気を集める
料理を探すとともに、英語や中国語などで注文できる飲食店を
増やすことも必要。

医療観光は、地域の医療機関も活用。
医療に詳しい通訳の育成を図り、海外の医療保険を
国内でも利用できる仕組みも検討。

海外から定期健診に来てもらい、同行者と一緒に
各地で観光を楽しめるようにする。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/6/123723/

2010年8月17日火曜日

病院とジムの連携、支援…経産省

(2010年8月6日 読売新聞)

経済産業省は、医療・介護分野の市場拡大を図るため、
病院と、エステティックサロンやスポーツジムなどの民間企業が
連携した、新たなビジネスの創出を支援する。

15程度のモデル事業を選び、8月から3年間の実証研究を行う方針。
新ビジネスを育てることで、新成長戦略の柱の一つとしている
医療・介護産業のすそ野を広げていく考え。

健康保険や介護保険の枠外となる事業が対象で、
高齢者介護施設とエステティックサロンが連携して、
入所者にマッサージを施したり、病院とスポーツジムが共同で
患者の運動療法を手掛けたりするビジネスを想定。

病院の処方せんに基づいて、療養者向けに食事の宅配を
行うこともテーマになりそうだ。

実証研究には、数十の病院や企業が参加し、事業化できる
料金水準や、病院と企業の責任分担などを検証する。
経産省は、人件費など約10億円の関連予算を支出。

病院や介護施設の経営は、公的保険からの給付に頼っており、
周辺サービスの拡大に乗り出す例は少ない。

その中で、熊本市では民間の病院と企業が連携し、
承諾を得た患者の健康データを共有。
有償で運動や食事療法などのサービスを提供し、好評。

経産省は、同様の取り組みを全国に広げたい考え。
6月、政府の新成長戦略は、健康関連サービスで2020年までに
25兆円の市場を創出することを打ち出している。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/6/123742/

スポーツ政策を考える:來田享子・中京大教授(スポーツ史)

(毎日 8月7日)

日本のスポーツ政策が、生涯スポーツと競技スポーツという
二つの柱で成り立っているのに対し、
欧州のスポーツ政策は、スポーツが持つ社会的機能に注目、重視。

移民や人種差別、貧困などの問題を解決する間接的手段として、
スポーツが活用されている。

経済的な階層の下に追いやられ、教育も十分に受けられない人たちは、
スポーツへのアクセスも狭められてしまっている。
生きていくのに精いっぱいな人たちに、
スポーツを経験させることには異論もあるだろう。

食べ物や寝る場所を提供したから、仕事を探しに行け、
と言うだけではだめ。

一度社会から脱落してしまった人たちは、自分が生きていること、
自分が社会の一員として存在していることを実感し、
そこから自分にも何かできるかもしれない、と思えるようにならないと、
なかなか立ち上がることができない。

そういうことを理屈ではなく、身体で感じさせる
機能を持っているのが、スポーツだ。

日本でも今後、すべてのマイノリティー(社会的弱者)に対する
社会政策の中に、スポーツを取り入れていくことを検討した方がいい。

欧州議会の議事録を調べたことがある。
スポーツというキーワードで検索すると、スポーツ政策への
さまざまな提言書のほか、DV(家庭内暴力)やジェンダー、
労働、宗教、文化などさまざまな分野のものがヒットする。

それだけスポーツは使い勝手がいいということで、
他の政策の中で使ってもらえばいい。

日本では、厚生労働省が健康政策の一環で取り扱っているが、
労働雇用政策の中での自己実現のツールとして使うこともできる。
生活保護を受けている人たちが、自分の体に適したスポーツをして
他の人たちとかかわることで、自分の居場所を見つけ、
誰かの役に立ちたいと思うようになる。

本来スポーツとは関係ない人たちから、
スポーツ政策に提言してもらう。
つまり逆照射だ。
それをスポーツの人たちが統合していく。
その方が発想が豊かになり、広がっていくのではないか。

大学でも、100年後を考えてスポーツしている学生はなかなかいない。
自分の好きなスポーツを楽しむこと、自分の技術を上げることは大事。
学生には、100年先のスポーツ、スポーツを通じて変えたい、
実現したい社会を思い描いてほしい。

そうでないと、日々のしんどさ、技術獲得だけで終わってしまう。
スポーツを通して、100年先の社会を思い描くことが
体育系学部の使命だと思う。

Jリーグは、「百年構想」を掲げて、誰もが気軽にスポーツを楽しめる
環境作りを目指している。
日本のスポーツ界にも、「百年構想」が必要だ。
==============
◇らいた・きょうこ

1963年生まれ。神戸大卒。
「スポーツ・ジェンダー学への招待」(共著)。
日本スポーツとジェンダー学会理事長。オリンピック教育も研究テーマ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2010/08/07/20100807dde035070030000c.html

リアル医療漫画が人気

(2010年8月5日 読売新聞)

医師や看護師らが活躍する医療漫画が、
漫画の一ジャンルとして定着。
テレビドラマ化される作品も多いうえ、
いまや学術研究のテーマになるほど注目。

医療がテーマだったり、医師らを主人公にしたりした漫画173作品を
調べあげ、傾向を分析した論文を発表するのは、
東大医科学研究所の医師、岸友紀子さん(36)。

論文によると、医療漫画は1980年代後半から徐々に増え始め、
これまで約1割がテレビドラマや映画、アニメへと映像化。
岸さんは、「患者意識の変化で、医師が従来の聖職者から
身近な存在となり、医療がだれでも関心を持ちやすいテーマに」

最近の傾向は、臨床心理士や理学療法士など
医師以外の医療従事者を主人公とする作品が出てきたこと。

「医療漫画は、野球漫画やグルメ漫画と同様、定番のジャンル」、
18万冊の蔵書を誇る現代マンガ図書館の西智子さん(30)。
同図書館は昨年、企画展「医療マンガ傑作選」を開いた。

西さんによると、70~80年代の作品では、
超人的な技量を持つ医師が多く登場。
手塚治虫の「ブラック・ジャック」が代表例。

90年代以降、新米医師の成長を描く「研修医なな子」など、
等身大の主人公とそれを取り巻く人間ドラマが増えた。

最近では、医師不足や医療事故をテーマに採り入れた「医龍」、
「麻酔科医ハナ」、「最上の命医」などが、
「医師が見てもリアリティーがある」と評判。

昨今の医療漫画は、医師が監修したものが多く、
内容も専門分化してきた。

漫画研究家のヤマダトモコさんは、
「大人が漫画を読む時代になったのに合わせ、
内容の方も本格的でリアルさが追求されるようになった。
専門家が監修したり、実態を詳細に調べたりして
描かれた作品が増えている」

60~70年代、「巨人の星」を見てプロ野球選手を夢見た
子どもたちがいたように、若者の職業選択への影響も見逃せない。

東大の岸さんは、「私の周りでも、漫画の登場人物にあこがれ、
医師になった人は多い。漫画は、関心を持つきっかけになりやすい

昨年テレビドラマ化されて大ヒットした「JIN-仁-」は、
幕末にタイムスリップした脳外科医の活躍を描いたものだが、
「JINの効果なのか、脳外科の希望者が増えた」と喜ぶ大学病院関係者も。
医療漫画のヒットが医師不足解消に一役、なんてこともありそうだ。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/5/123695/

感触伝える手術ロボット 内視鏡支援に、慶応大

(2010年8月5日 共同通信社)

鉗子というピンセットのような医療器具を持ったロボットアームを、
医師が遠隔操作し、患者の患部をつまんだり、
縫合用の糸を結ぶ際に鉗子に伝わる感触が医師の手に伝わる
内視鏡手術・診断の支援ロボットを慶応大が開発。

これまでも、米国製の「ダビンチ」のように、
遠隔操作で手術をする支援ロボットはあったが、
触覚を高感度で伝えるものは初で、より高度な手術が可能。

大西公平教授(電気工学)によると、
ロボットは医師が遠隔で操作する「マスターロボット」と、
それと同調して動くロボットアームを備えた「スレーブロボット」で構成。

アームが持った鉗子の動きなどから、力の大きさを計算、
マスター側の装置に伝える。

水を入れた風船を鉗子でつまんだり、風船が鉗子の先から
つるんと擦り抜けたりする感覚も感じられる。

臓器を傷つける操作ミスを防ぐため、鉗子を通じて臓器にかけている
力を20倍に感じる仕組みを取り入れ、
森川康英教授(小児外科)は、「脳など柔らかい臓器は、
繊細な技術が求められる。
名人芸の手術が、より安全に短時間でできるようになる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/5/123669/

2010年8月16日月曜日

インサイド:五輪ボイコット30年・第3部 歴代政権とスポーツ政策/5止

(毎日 8月7日)

7月の参院選を控え、民主党のマニフェストから
「スポーツ」の文字が消えた。

民主党議員の一人は、「マニフェストには当初、スポーツ振興策を
盛り込む案が出されていた。
総理が代わって、最後は執行部に一任となった後、それが削られた」

政権交代後、鳩山由紀夫前首相は昨年10月の所信表明演説で、
「新しい公共」の理念を打ち出し、「スポーツや芸術文化活動、子育て、
介護などのボランティア活動、環境保護運動、地域防災、
そしてインターネットでのつながりなどを活用して、
『誰かが誰かを知っている』という信頼の市民ネットワークを
編みなおす」ことを訴えた。

しかし、退陣後のどたばたの中で、スポーツ政策の優先順位の
低さが露呈される形となった。

自民党は、マニフェストでスポーツ庁の設置や国際競技力向上をうたい、
20年夏季五輪と22年サッカー・ワールドカップの招致も盛り込んだ。
みんなの党は、アジェンダに東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国
による五輪共同開催を唱え、アジアの中の日本を意識した外交を主張。

◆地域スポーツ重視

61年、スポーツ振興法制定から半世紀が過ぎ、
超党派のスポーツ議員連盟は、新たな法整備の必要性から
スポーツ基本法の制定を検討。

民主党と自民党の足並みがそろわず、
昨年7月に自民、公明両党だけの議員立法で法案を提出、廃案。

民主党は今年5月、同党独自のスポーツ議員連盟を発足。
同議連の奥村展三幹事長は、
「自民はトップダウン、民主はボトムアップ。
独自のスポーツ議連をつくる必要があった」と、
五輪などを目指すトップ選手の国際競技力向上に重点を置く
自民党に対し、民主党は底辺の地域スポーツを重視していると
政策の違いを説明。

別のメンバーは、「スポーツ団体を旧政権と引き離すため、
民主党に陳情の受け皿をつくった側面もある

スポーツ団体と自民党は長年、有名選手の参院比例代表出馬、
議員のスポーツ団体役員就任、予算の陳情などで蜜月の関係に。

民主党は、7月の参院選で敗れたが、比例代表に
柔道の谷亮子氏を立てて初当選。
さっそく議連の会長に、知名度の高い谷氏が就任することを決めた。
党内には、「スポーツを政争の具にすべきでない」という声。

◆一転、選手強化も

民主党は、09年「政策集インデックス」で、
地域密着型スポーツクラブの振興や公共スポーツ施設の
芝生化事業を打ち出すなど、地域スポーツを重視。

政権交代後、初めての予算編成では一転して、
五輪を目指すトップアスリートの強化を目的とした
「マルチサポート事業」に、前年度比6倍の予算をつけるなど、
スポーツ政策の「揺れ」が見られた。

鈴木寛・副文部科学相は、「今までは自民党がトップスポーツで、
民主党は地域スポーツのようなレッテルを勝手に張られていたが、
二項対立は非常に不毛で、トップスポーツと地域スポーツが
好循環になっていくことが大事


国会での議論が想定されるスポーツ基本法への対応を含め、
民主党政権がどんな姿勢を打ち出すか?
日本のスポーツ振興を方向づける全体像は、まだ見えてこない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100807ddm035050027000c.html

海洋生物:日本近海は種の宝庫 多様性、世界有数--海洋機構など10年かけ調査

(毎日 8月3日)

日本近海に生息する海洋生物は、確認できただけで
3万3629種、全世界約23万種の14・6%にあたる。
海洋研究開発機構などの調査で分かった。
1872種が日本固有種と判明、世界で最も多様な海洋生物の宝庫
裏付けられた。2日付の米科学誌「プロスワン」電子版。

微生物から哺乳類までを網羅する「海の生物目録」をつくる
初の国際共同研究の一環。
80カ国、2000人以上の研究者が参加、10年かけて過去に
生息の報告があった種類を、25海域別に集計。

日本の排他的経済水域(沿岸約370km)は、
世界の海の容積の0・9%に過ぎないが、
生物の種類は、豪州近海の3万2898種を上回り、最多。
巻き貝7013種、魚類3770種、エビやカニの仲間2501種が多い。

固有種では、「星の砂」として土産品に使われている
有孔虫の仲間383種、クラゲやイソギンチャクを含む刺胞動物350種、
魚類358種が目立った。

魚のハゼ類だけで200種以上が未報告、研究が進めば、
日本近海だけでさらに12万種以上が見つかると推定。

同機構の藤倉克則チームリーダー(深海生物学)は、
「豊富な種類は、水深約9800mの小笠原海溝をはじめ、
日本近海の複雑な地形や寒暖流など多彩な環境のおかげ。
今後、人間活動や地球環境の変化が海洋生物に与える影響を
継続的に調べたい」

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2010/08/20100803dde001040003000c.html

特集:内モンゴルの荒れ地に森と笑顔を 10年間、豊かに結実

(毎日 8月8日)

砂漠化が深刻な中国・内モンゴル自治区で、10年間の
日本の産学協同の植樹プロジェクトが区切りを迎え、
宮脇昭・横浜国立大名誉教授ら、最後の植樹祭が開かれた。
今後は、地元自治体が住民参加で事業を継続する。
緑地を失った乾燥地で、植生の回復は可能か?

◇苗木と友好、すくすくと

「荒れ地が緑で覆われるのを見ると、感動します」
植樹祭に参加し、土を意識して触ったことがなかった女子中学生は、
乾ききった土の感触を確かめながら、ポット苗を植えた。
幼児の娘を抱えた母親3人は、宮脇さんのアドバイスを受けながら、
娘に植え方を教えていた。

このプロジェクトは、横浜市立大の藤原一繪特任教授の研究室と、
蜂蜜製品メーカーの山田養蜂場が、2001年から始めた。

04年、同自治区の首都・フフホトで2万本を植樹後、
05年、北京から北北東約400kmの林西県の県林業局富林林場に移し、
計27万本を植えた。

植樹祭は、県人民政府主催で同林場で開かれた。
気温35度。乾燥地のため、太陽が照りつけるわりには汗が出ず、
格好の植樹日和。
開会式には、県幹部や宮脇さん、藤原さんらが出席。

県人民政府の王春艶・副県長が、「林西県は、かつて緑豊かだったが、
長い間の人間による経済活動で、森林が破壊された。
荒れ山の自然林回復に向け、交流の発展を望んでいる

山田養蜂場の立藤智基・執行役員が、
苗木がこの地で根を張り、日中友好も広がっていくことを願う

植樹場所は、林場丘陵部の約3300平方メートル。
県立第3中学1年生200人と地元住民、日本の植樹ツアー参加者ら
総勢約300人が、リョウドウナラやニレ、アンズなど
土地本来の6樹種計5万本を植えた。

県立第1高校1年の劉博文さん(15)は、今年も夏休みを利用し参加。
「ここは、私が生まれ育った場所。
少しでも緑が豊かで、きれいな町にしたい」

岡山市小串の中島莞爾さん(69)は、
「岡山でも、年々黄砂の頻度と量が増え、中国の砂漠化を心配。
言葉は通じなくても、若い世代と植樹するのは楽しい」

◇渇水・風・寒さとの闘い、住民も参加

林西県は、同自治区東部を縦断する大興安嶺山脈の南麓、
人口は24万人。
最近は、年間250mm前後しか雨が降らない。
表土は、降雨が夏に集中し、流出しやすく、
乾燥期の強い季節風によって吹き飛ばされて薄い。
冬は、氷点下30度、耕作地が限られ、生産性が低い。

同自治区出身で横浜国大の留学生、ボルジギン・ナランゴワさん(32)、
農家の平均年収は9000元(約12万円)、
内モンゴル自治区でも典型的な貧困地域。
農地転用や過放牧など、人間の生産活動によって土地が荒廃し、
さらに貧困が増す悪循環に。

植樹は、「ふるさとの木を植える」、「混植・密植で樹木の成長を促す」
という宮脇さんの方式で実施。
宮脇さんや藤原さんらは、同自治区内を調査、
主木となるリョウドウナラなど、土地本来の樹種を明らかに。

植樹は渇水と強風、寒さとの闘い。
落葉広葉樹は、枝が横に広がらないため、
間を空けて植えると、密植効果が薄い。
間隔を置いて、四角い穴(50cm×80cm)を掘り、
穴に5本の苗を植えることで湿度を保ち、競り合い効果で成長を促した。

苗木の根元全体に、稲わらを厚めに敷き詰め、
乾燥と冬の気温低下の影響を抑えた。
苗作りでは、冬はビニールハウスに練炭火鉢を持ち込み、苗木を促成。

工夫が実り、06~07年に植えた場所はすでに茂みに成長、
2mを超える樹木も。
宮脇さんは、「全般に順調に成長している」

同林場長は、「ここの荒れ地は、ポプラなどの経済林の樹木を
植えても育ちが悪かった。
宮脇方式だとよく育つ。
住民参加が基本のため、環境保全の認識を広めることができる

同林場では、ポット苗の生産の一部を農家に委託。
植樹作業や初期管理にも住民を雇用、地域住民の収入源に。
ドングリは豚のえさになり、アンズは杏仁豆腐の材料になり、
落葉広葉樹の植樹は地域経済の振興にもつながる。

◇砂地化進む中国 「退耕還林」に転換

中国では森林を伐採し、農地を広げる食糧増産政策を続けてきた結果、
洪水や干ばつが頻発。
中国政府は、急斜面の農地を元の森林や草原に戻す
「退耕還林(還草)」政策を導入、内モンゴル自治区を含む
17省・自治区で実施。

内モンゴル自治区の砂地化は、家畜が草を食べ尽くす過放牧や
農地拡大が要因、中国建国(49年)で「往来規制」がなくなり、
中国人が流入し、人口が急増したことが背景。

食糧や住居地の確保のため、草原が開墾されたが、
草原は元々やせ地で農業に適さないため、
耕作放棄地が増えて砂地化が加速。
同自治区は、退耕還草政策の一環として、牧草の成長が
安定するまで放牧を禁じたり、放牧を一定区画に限定する措置。

牧畜民を都市部に移住させる、「生態移民政策」を導入。
自治区の東南部にある赤峰市の再開発地区には、移住を促すため、
家賃を安く抑えた真新しい高層住宅が並ぶ。

林西県の北西部にあるシリンホト周辺の草原に点在する
牧畜民の住居は、空き家や廃屋が目立つ。
同国立大留学生、李強さん(29)は、「移住者はフフホトなど大都市で、
観光業に転職したりしている」

◇藤原特任教授、砂丘でも植生回復

藤原一繪特任教授らは6月23~26日、林西県南東部の
「ホルチン沙地」(約506万ha)西域の砂丘で植生や土壌を調査。

横浜国大大学院の持田幸良教授(植物生態学)、
同大非常勤講師で大成建設技術センター水域・環境研究室の
藤原靖室長(環境土壌学)、
中国・内蒙古包頭師範学院の
樊永軍講師(植物分類学)らが参加。

ホルチン沙地は、年間降雨量が350~480mm、
冬は気温が氷点下30度まで下がる。
林西県から約106km、翁牛特旗の県政府所在地・烏丹を拠点、
風で全体が移動している砂丘や、砂の動きが抑えられ固定した砂丘などで、
植生状況や砂中の含水率、特徴を調べた。

調査の結果、砂丘頂上部は30cmほど掘っただけで湿り気があった。
低地では、フーシャーヨモギなど多年草の生育場所周辺の砂地が
盛り上がっており、草が砂の移動を抑えている。

固定化した砂丘の砂地には、砂より細かい細粒の割合が多かった。
細粒は、カリウムなど植物の必須元素を含み、養分や水分を吸着。
「固定化が進む砂丘では、細粒が、草などが分解してできた
有機物と混ざり合い、多様な植物をはぐくむ土壌ができつつある」

「砂丘でも、かつて草地や森林だった場所なら、
まず草で砂の移動を抑えた後、土地本来の植物を植えれば、
元の植生を回復することが可能。
降雨量の少ない林西県のような地域でも、
土壌が砂地でなく土であれば、植生は回復できる

藤原特任教授は、7月2日に中国安徽省淮北市を訪問、
2011年から5年間、同市で宮脇方式による植樹を実施する
プロジェクトについて、市政府と調印。

淮北市は、石炭の露天掘りで知られる。
森林伐採など、悪化した都市環境の改善を迫られ、植樹に取り組む。
林西県のプロジェクトと同様、山田養蜂場と共同し、
荒れ地が広がる同市烈山区の大黄山と淮北師範大の新キャンパスで、
土地本来の樹木10種類を年間4万本ずつ、計20万本を植える。
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◇山田養蜂場

蜂蜜製品のほか、健康食品や化粧品も製造販売。
01年、本社屋の建設工事に伴い、敷地周辺を宮脇方式で植樹、緑化、
来月18日、岡山県にて、宮脇さんが指導して植樹祭を開く。
海外では内モンゴル自治区、ネパールでも99年から社員らが
植樹活動を展開。
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◇ふじわら・かずえ

横浜市立大大学院生命ナノシステム科学研究科特任教授、
横浜国立大名誉教授。専門は植生生態学。
同国立大で、宮脇昭氏から潜在自然植生理論を学び、
以来、土地固有の自然植生の再生について研究や実験を続けている。

http://mainichi.jp/life/today/news/20100808ddm010040002000c.html

2010年8月15日日曜日

ストレスに対し抗うつ作用 特定タンパク質、群馬大

(2010年8月4日 共同通信社)

脳の神経細胞にある特定のタンパク質が、
外界からのストレスに反応し、うつ病にならないよう
脳を守っている可能性が高いとのマウスでの研究結果を、
的崎尚群馬大客員教授(神戸大教授、生化学)ら
米神経科学会誌に4日、発表。

的崎教授は、「うつ病の原因の理解や、
新たな治療薬の開発が期待できる」

このタンパク質は、細胞表面にある「SIRPα」。
別のタンパク質「CD47」と結合、細胞外の信号を
受け取って伝えるが、役割は不明だった。

的崎教授らは、遺伝子操作でSIRPαを持たないマウスを作り実験。
足の届かない水槽で、強制的に泳がせてストレスを与えると、
逃げられないと絶望して暴れるのをやめる「無動時間」が、
正常なマウスに比べ長かった。
CD47を持たないマウスでも同様の結果で、強いうつ傾向を示した。

正常マウスでは、こうしたストレスを受けると、
ストレスの応答で重要とされる海馬や扁桃体などの領域で、
SIRPαにリン酸が付け加わる「リン酸化」が起きていたが、
CD47を持たないマウスでは、リン酸化が弱かった。

的崎教授らは、SIRPαがCD47と結合、リン酸化し、
ストレスから脳を守っていると結論づけた。
今後、リン酸化が脳を守る仕組みの解明を進める。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/4/123645/

米国の大人、4分の1肥満 「徹底した対策必要」

(2010年8月4日 共同通信社)

米国の大人の26・7%は肥満とする調査結果を、
米疾病対策センター(CDC)が発表。

2007年の調査に比べ、1・1ポイントの増加、
CDCは、「肥満は公衆衛生上の重大な脅威であり、
徹底して対策に取り組む必要がある」

09年、米国の18歳以上の40万人を対象、
電話で体重と身長を聞く形式で調査。
BMIが30以上の人の割合が、26・7%に上った。
回答者は、体重を実際より軽く申告している恐れもあり、
肥満の割合はもっと高い可能性もある。

アラバマ州やルイジアナ州など南部を中心とした9州では、
肥満人口が30%を超えた。
00年、30%を超えた州は一つもなかった。
人種別では、黒人女性41・9%、ヒスパニック系30・7%と高い。

肥満は、糖尿病や心臓病などさまざまな病気の原因となり、
肥満の人の年間医療費は、正常な体重の人に比べ、
約1430ドル(約12万3千円)高くなる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/4/123649/

インサイド:五輪ボイコット30年・第3部 歴代政権とスポーツ政策/4

(毎日 8月6日)

スポーツと政治の距離が近年、急速に縮まってきた。
スポーツ振興を、国家戦略と位置づけるスポーツ基本法案策定の
動きが与野党で活発化しているのも、一つの表れ。

過去最多の37個のメダルを獲得した04年アテネ五輪直後、
世論の盛り上がりを背景に、当時の小泉純一郎首相は、
積極的にスポーツ政策に乗り出した。

08年北京五輪後の完成を予定していた
ナショナルトレーニングセンターの整備前倒しを宣言。
05年3月、自民党文教族の“ドン”と呼ばれた森喜朗元首相の
日本体育協会会長就任が決定。
景気低迷が長引く中、スポーツ界を引っ張っていける
財界人は見当たらず、大物政治家の登場となった。

この時期を境に、政治の関与は強まっていく。
東京都は、森氏ら自民党議員の支援を背景に、
16年以降の夏季五輪招致に乗り出すと発表。
小泉政権の後を継いだ安倍晋三氏は、
著書「美しい国へ」(文春新書)の中で、
「スポーツには、健全な愛国心を引きだす力がある」と。

そんな国家主義的な思想と、企業スポーツの衰退で
政界へ支援を求める競技団体側の思惑が一致し、
共同歩調が取られていった。

◆積極姿勢の自民党

07年8月、当時の副文部科学相だった自民党の
遠藤利明衆院議員が、私的懇談会でまとめた報告書
「スポーツ立国ニッポン」が、国策化を促す呼び水に。

「国際競技大会において、日本人選手が活躍することは、
国際社会における先進国としての我が国の国力を明示し、
真の先進国『日本』のプレゼンスとアイデンティティーを高めることになる」

スポーツ振興は、国力を誇示する一つの手段になる。
その後、遠藤氏は森氏にスポーツ政策の担当部門発足を持ちかけ、
クレー射撃で五輪出場経験があり、後に首相となる麻生太郎氏を
会長に据え、党内にスポーツ立国調査会が誕生。

今年2月、同調査会の会長に就任した遠藤氏は、
「スポーツ界では、ずっと(不参加だった)モスクワ五輪のトラウマがあり、
政治とは距離を置いていた。
(不振だった06年の)トリノ五輪をきっかけに、
積極的に国が関与すべきだとの意識が高まった

◆競争力低下が背景

国策化が進む背景については、こんな見方が。
日本体育・スポーツ政策学会理事を務める東京成徳大の
出雲輝彦教授は、「国力の低下」に着目。

「少子化などの影響で、国力が衰退すれば、
将来日本が経済的な優位性や国際的な地位を確保できるとは限らない。
向上可能な分野で国際競争力を高めるため、
スポーツの国際競技力向上を目指す考え方がある」と指摘。

政治家を介し、スポーツの存在感は確かに増した。
ラグビー経験者の森氏は、日本ラグビー協会会長として、
19年ラグビー・ワールドカップ招致の実現に大きな影響力を発揮。

政界との適正な距離を保たなければ、
スポーツ界の自主独立はゆらぐ。
出雲教授は、「競技スポーツは、国家間の国際競争力を競うための
道具として存在しているのではない」とクギを刺す。

昨年の衆院選で、政権政党は民主党に代わり、
体協やJOCへの補助金は削減。
スポーツが持つ価値観をどう定義づけるか?
政策のあり方も揺れている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100806ddm035050046000c.html

特集:内モンゴルの荒れ地に森と笑顔を 緑化活動40年・宮脇昭名誉教授

(毎日 8月8日)

40年にわたって、「ふるさとの森づくり」に取り組んできた
宮脇昭さんに、中国・内モンゴル自治区での植樹活動や
森づくりの意義などについて聞いた。

--内モンゴル自治区で植樹をする意義は?

宮脇 内モンゴル自治区では、森だったところが、
伐採や過放牧により砂漠化。
中国国内だけではなく、朝鮮半島や日本に飛来する黄砂の量が増えた。

黄砂の被害を防ぐ根本的な対策は、森をつくること。
植樹は、以前から取り組まれていたが、成功していない。
ポプラやニセアカシアなど、成長の早い木を植えたが、
土地本来の植物ではないから、長持ちしない。
私たちは、土地本来の植生の主木であるリョウドウナラなどを植え、
今では背の高さを超える木に成長。

--中国や内モンゴル自治区の方々の受け止め方は?

宮脇 植樹前、「日本から多くの人が植樹に来るが、
3年たったら看板しか残らない」と言われた。
実際に成功すると、本気になってきた。
内モンゴル自治区の政府は、今後も宮脇方式で植樹を続けたいと。

--1970年に始めた植樹活動から40年たつが、
研究者がなぜ植樹に取り組んだのか?

宮脇 私は雑草の研究後、ドイツで留学中に
潜在自然植生という考え方を学んだ。
人の手が入らない状態での植生。
いま見ている日本の植生のほとんどは、人によって変えられた二次群落。
潜在自然植生を残しているのは、各地にある鎮守の森。
鎮守の森を調べると、潜在自然植生が分かる。
1960年から10年かけて全国調査し、「日本の植生」という本を書いた。

潜在自然植生を踏まえた森づくりを、と主張したが、
行政も造園業者も相手にしてくれない。
そんな時、経済同友会での講演をきっかけに、
新日鉄から植樹指導の依頼が。
以降、100以上の企業・団体と「ふるさとの森づくり」を進め、
約4000万本の木を植えてきた。

--今では、林野庁などの官庁も宮脇方式を取り入れている。

宮脇 生きている間に、林野庁と一緒にできるとは思ってもいなかった。
造林のプロたちが取り組んでくれると、地域の環境保全や防災に
役立つだけではなく、地球規模ではCO2を吸収・固定し、
地球温暖化防止につながり、生物多様性を保全できる本物の森ができる。

--今後の抱負は?

宮脇 生物学的には人間は、120~130年生きられる。
私はまだ82歳、あと30年は木を植える。
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◇みやわき・あきら

地球環境戦略研究機関国際生態学センター長、
横浜国立大名誉教授。専門は植物生態学。
潜在自然植生理論に基づく植樹方法は「宮脇方式」と呼ばれ、
世界を舞台に植樹活動を展開。
06年、ブループラネット賞受賞。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100808ddm010040003000c.html