2010年3月6日土曜日

楽しい図書館(7)点字や絵人形で支える

(読売 2月11日)

障害のある子に読書の喜びを伝えようと、
特別支援学校で様々な取り組みが進む。

教諭が、いくつもの声色を使い分けて動物の鳴き声をまねると、
ホワイトボードに向けられた生徒の視線が輝きを増した。
「12番目に出てくる動物は何かな?」との問いかけに、
「イノシシ」と答える女子生徒。
教諭が隠していたイノシシの絵人形を、
ボードに張りつけると、女子の表情が大きくほころんだ。

知的障害がある児童生徒が通う鳥取県立白兎養護学校
図書館では、生活単元学習を活用した高等部の
「図書の学習」が行われていた。
生徒が食い入るように見つめていたのは、
絵人形を動かして物語を展開させるパネルシアター。
この日は、十二支がテーマ。

活字や音声だけでは理解が難しい生徒にとって、
視覚に訴えるパネルシアターは有効な教材。
月に何度も同じ話を繰り返すことにより、言葉を覚え、
先の見通しも立てられるようになっていく」。
司書教諭の児島陽子さん(49)。

知的障害の児童生徒は増加傾向にあり、
図書館を普通教室に転用する学校が多い。
全特別支援学校に司書教諭を配置し、公立には学校司書も
常駐させる鳥取県は、先進県として知られている。

児島さんは、小学部の担任も兼ね、図書館教育に携わる時間が
週に5時間確保。
「発達年齢や障害の状態に応じて、読書の楽しみを教えてくれる
人の存在が、知的障害特別支援学校でも不可欠」

視覚障害特別支援学校では、全盲から弱視まで一人ひとり
異なる見え方に対応、様々な図書が必要。
横浜市立盲特別支援学校では、墨字(活字)図書を点字図書、
録音図書、大活字本などへ変換する作業を、
33グループ約600人のボランティアが支えている。

学校司書の石井みどりさんは、「よりよい図書資料を作成するには、
専門的な技術を習得したボランティアグループと連携し、
受け入れる体制をつくることが重要」

拡大読書機や点字印刷機など、様々な機器が豊富にそろう
図書館には、好きな格好で読書を楽しめるカーペットコーナーも。
「作品に引き込まれると、何も聞こえなくなり、
家では夜中まで読み続けてしまうこともある。
図書館で新しい本を探すのは、楽しい時間」
小学部5年の藤本昌宏君(11)はそう言って、笑顔。

専修大学の野口武悟准教授(図書館情報学)は、
「情報獲得の困難を補う支援をする情報保障の観点からも、
特別支援学校で図書館が果たす役割は小、中、高校より大きい。
現状を比較すると、すべての面で遅れている」と批判。

一人ひとりのニーズに応じた読書活動を提供するために、
人的にも予算的にも、特別支援学校には
より手厚い措置が求められている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100211-OYT8T00259.htm

十勝の実業団で五輪選手を 引退危機救った病院

(2010年3月1日 共同通信社)

スピードスケート男子団体追い抜きの7、8位決定戦に出場する
日本チームのメンバー、平子裕基選手(27)と土井槙悟選手(26)
の所属先は、北海道帯広市の開西病院。
スケートどころの十勝地方の実業団から五輪選手を出したい、
という人々の思いが、2人を支えてきた。

平子選手は、帯広市に隣接する音更町出身。
明治大時代、2002年ソルトレークシティー五輪に出場、
その後スランプに。
05年春、大学卒業後は親せきの会社に籍を置き、1人で練習。
トリノ五輪出場を逃し、家族に「もう限界なのかな」と漏らした。

そんな時、白樺学園高時代に指導した帯広市職員の
川原正行コーチ(54)と開西病院の幹部らが話し合い、
平子選手を支援しようと立ち上がった。

十勝地方は、長野五輪金メダリスト清水宏保選手(36)ら
数々の名選手を輩出してきた「スケート王国」。
高校や大学を卒業しても、地元に受け入れ先がなく、
「十勝で五輪選手を応援したい」との思い。

病院は平子選手と、同じく十勝の芽室町出身の土井選手を
職員として採用。
06年4月、十勝初の実業団スピードスケート部を設立。

2人は、シーズンオフは病院職員として午前中勤務。
カルテの運搬や機材の発注などが主な仕事。
「平子選手は、カルテが入ったファイルをよく運ぶので、
ネクタイがボロボロになってしまって。
2人とも一生懸命仕事をしている」と医事課長栗林祐子さん(44)。

昨年11月、W杯前半の代表から漏れた土井選手が
職員の前であいさつ。
「支えてくれてありがとうございます。
あきらめないで国内で頑張ります。2人で(五輪に)行きたい」。
涙ながらに話す姿に、「感激した。背中を押してあげたいという
思いが強くなった」と栗林さん。

1回戦で敗退後、平子選手は、「やめようと思っていた時に
手を差し伸べてくれ、トレーニング環境と遠征費を支援してくれた。
ありがとうございますと言いたい」と感謝。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/3/1/116689/

フラーレンで遺伝子導入 マウス実験、治療に応用も

(2010年2月23日 共同通信社)

遺伝子の"運び屋"として、炭素の原子がサッカーボールのように
つながった分子「フラーレン」を使い、
マウスの体内に遺伝子を導入することに成功、
東京大の野入英世准教授(腎臓病学)と中村栄一教授(有機化学)
らが、22日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表。

この方法で、インスリンを作る遺伝子を入れ、
血液中のインスリン濃度が上昇することも確認。
「毒性が低く、安価に大量合成が可能」とし、
将来は遺伝子治療に応用できるのでは。

"運び屋"には、ウイルスや脂質などを使う方法があるが、
ウイルスは安全性に、脂質は効率に課題。

研究チームは、通常のフラーレンに四つのアミノ基を取り付け、
水に溶けやすく、DNAと結合する「水溶性フラーレン(TPFE)」合成。

緑色に光るタンパク質を作る遺伝子を、TPFEに結合させて
マウスに静脈注射すると、肺や肝臓、膵臓に遺伝子が導入されて
働き、光るタンパク質ができた。
肝臓と膵臓では、脂質を使った導入方法より
遺伝子が多く運ばれていた。
インスリンを作る遺伝子を結合させて投与すると、
血液中のインスリン濃度が上昇し、血糖値が下がった。

細胞内に取り込まれた後、TPFEは運んだ遺伝子との
結合状態をほどくらしい。
実用化に向けては、安全性確認などの課題がある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/23/116394/

2010年3月5日金曜日

楽しい図書館(6)「検索」充実 広がる関心

(読売 2月10日)

パソコンやデータベースの環境を整備し、豊富な蔵書を活用。

3クラスが同時に授業できる広々とした閲覧席で、
約40人の生徒がパソコンで蔵書を検索。
ほぼ1人1台ずつ使えるパソコン。
生徒の周りには、約14万冊もの本が整理されて並ぶ。

中央大学付属高校の図書館。
現代文の授業、2年生が「取材リポート」の作成に取り組んでいた。
博物館や美術館を訪ね、興味を持った作品を調べ、
2000字のリポートにする課題。

「書名にない言葉でも、キーワードで本を探せる。
これがうちの学校の大きな自慢」。
授業に先立ち、司書教諭の平野誠さん(48)がマイクで生徒に説明。
同校は、8000字以上の卒業論文があるなど、
リポートの課題が多い。
その生徒の学習に役立つよう、図書館を充実。

「格差社会」、「ニート」、「フリーター」……。
同校では、パソコンの検索システムに、図書館の職員が一冊一冊、
本の内容に関連するキーワードを追加で登録。
書名や著者名だけでなく、キーワードで検索できる。
文学作品より、調査研究に対応できるような本を集めてきたが、
それらの本を十分活用できるようにする。

文学作品を読まないわけではない。
学校が選んだ100冊を各自で購入、3年間で全員が読む
「課題図書」の制度。
課題図書は、年によって変わるが、例えば夏目漱石、芥川龍之介、
スタインベックといった古典の名作から、
村上春樹や宮部みゆきまでと幅広い。
テストに出題されるため、生徒は必ず100冊読むことに。

図書館のパソコンでは、蔵書だけでなく、百科事典・辞書、
新聞各社の過去記事の検索、インターネットへの接続ができ、
約20台のプリンターも備える充実ぶり。
学習に必要な環境が、すべてそろうように目指してきた。
生きる力を育むような場所になってくれれば」と平野教諭。

千葉県立印旛高校の図書館で、2年生の授業の一環として、
英語による「舌切りスズメ」の紙芝居が上演。
自ら英語で紙芝居を読んだ仲佐健治校長(56)は、
図書館は資料が豊富で、自分にあった本を選んで勉強できる。
授業後、英語の本を探しに来た生徒もおり、関心が広がったようだ」

近くの小学校から児童を招き、図書館を活用した授業を行う。
高校の図書館は、小学校よりも蔵書が多い。
昆虫の本を使い、高校教師が体の仕組みを説明して
標本を観察したり、児童がごみ問題の資料を探して調べ、
高校の教師に質問したり。
高校にない本は、公共図書館から借りて授業をした。

印旛高校は今春、移転して単位制高校に変わる。
学校司書の山中規子さん(58)は、
「図書館は学びが深まる場所。
その場所を、十分活用できる学校になれば」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100210-OYT8T00272.htm

サニックスの宗政伸一社長「住宅用太陽光発電、普及価格は100万円」

(日経 2月24日)

住宅用の太陽光発電市場が急拡大。
2009年、住宅用の太陽電池出荷量は、前の年の2.3倍。
新たに生まれた市場には、異業種からの新規参入。
害虫駆除など住宅向けサービスのサニックスも、そのうちの1社。
韓国製の太陽光発電システムを輸入し、
日本製よりも大幅に割安な価格で販売、シェアの拡大を目指す。
宗政伸一社長に、市場の見通しと勝算を聞いた。

——異業種からの新規参入。
なぜ、太陽光発電の販売を始めようと考えたのか?

「完全な新規参入ではない。
換気がしにくく、湿気がこもりやすい床下や屋根裏用の換気扇の
電源として、1平方メートル程度の小さな太陽光発電パネルを
京セラから買って、20年以上前から販売。
太陽光発電ができるくらいの晴れた日の空気を、
換気用に取り込み、雨の日など、湿度の高い日は太陽電池が
発電しないため、換気扇も回らない仕組み。
18万円強の価格、これまでに32万世帯に導入

「二十数年前、発電用途の製品も市場投入。
太陽熱温水器と組み合わせた製品の販売。
価格が300万円以上する富裕層向けの商品。
数十セット売れたものの、それ以降は尻すぼみで
普及させることはできなかった」

——失敗をしたのに、あえて再度チャレンジするのはなぜ?

政府の普及策が整ったため。
余剰電力を、1kw時あたり48円で電力会社が購入する制度が
昨年11月からスタート。
この制度が議論になり始めた2008年末あたりから、
準備の動きを始めた。
サニックスは、太陽光発電パネルを作っていないので、
国内のほか、韓国、中国のメーカー5~6社の製品が
使えるかどうか調査。
比較検討する中、国内製パネルでは価格面での普及が難しい。
富裕層だけを対象にした製品ではダメだった経験から、
利用者の費用負担を極力抑えた水準にすることを最も重視。
韓国LGグループのLS産電が生産する製品に決めた。
品質などについて、最終的には私が現地で、
『これなら日本でも売れる』と判断した」

——現在、3.5kwのシステムを工事費込みで129万円で販売。
価格帯はどうやって決めたのか?

「いくら、『割高な価格で、余剰な電気を買ってもらえる制度ができた』
といっても、多くの人にはまだ購入にためらいが。
ローンでなく、一括で購入する場合、
一度に大きな出費になることが間違いないし、
長い期間に制度変更がないとも限らない。
利用希望者の声から、購入に近づく価格帯は100万円程度。
光熱費削減効果によって、初期投資がおよそ10年で元が取れる。
補助金を使えば、今の価格帯でも100万円に近づくが、
補助金なしで100万円の水準を目指したい」

——市場の平均的価格は200万円近い水準。
割安な価格はどうやって実現するのか?

「太陽光発電の流通経路は極めて複雑で、
顧客の手に到達するまでに多くの事業者の手を介している。
経過でマージンが発生し、割高に。
サニックスは、LS産電から太陽光発電システムを輸入、
そのまま自社で販売するので、中間マージンがほとんどない

「昨年11月から3カ月で、800世帯に販売。
来年度は、これを10万世帯近くに広げたい。
直販だけでなく、販売店を全国で募集し、販売網を広げる。
他社製品を扱う既存の販売店だけでなく、
サニックスの太陽光発電を売る起業家を募りたい。
一般の家庭が負担なく使える価格帯にならなければ、
太陽光発電の本格的な普及はない。
100万円という水準は、その分かれ目になる

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100223.html

基本習得、目指せ五輪 二戸市でカーリング体験会

(岩手日報 2月28日)

「目指せ!オリンピック」。
県カーリング協会(浪岡正行会長)は、
県立県北青少年の家のスケート場で、カーリング体験会を開いた。
講師に、2008年3月の第1回世界ミックスダブルス選手権
日本代表、苫米地美智子さん(30)を招待。
参加者約20人は、現在開催中のバンクーバー冬季五輪で
注目を集めるカーリング競技の基本を学び、その魅力を肌で感じた。

初心者と経験者の2コースに分かれ、世界カーリング連盟公認
テクニカルインストラクターの浪岡会長も加わり、指導。

苫米地さんは、競技のルール、ストーンの投げ方やブラシの掃き方
などの基本動作を指導。
経験者には、浪岡会長が試合で用いる高度な戦術を伝えた。

最後は、各コースの参加者代表がチームを組んで試合を開催。
会場には、「イエス」(掃く)、「ウォー」(掃くのをやめる)などと
指示を出す声が響き、約40m先のハウスに
見事にストーンが入ると、大きな歓声が上がった。

岩手町の沼宮内小3年の平松実鈴さんは、
「思ったよりもストーンが重かったが、
だんだんうまく投げられるようになった」と笑顔。

苫米地さんは、「カーリングの楽しさを伝えるいいチャンス。
冬季五輪を機に、競技を身近に感じてほしい」と期待。

同協会によると、カーリングの競技人口は現在、
リンクのある二戸市と盛岡市で合わせて約150人、年々増加傾向。

浪岡会長は、「体験会を重ねて、さらに競技人口を増やし、
有能な選手を輩出したい」と意気込む。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100228_12

2010年3月4日木曜日

楽しい図書館(5)新聞活用 時事も美術も

(読売 2月9日)

新聞が充実した図書室で、NIEの授業を展開する。

資料や新聞の切り抜きで、分厚くなった思い思いの
「時事ノート」を手に、生徒たちが図書室に。
新聞5紙を購読している島根県立出雲商業高校では、
新聞を使う授業を図書室で行うことが珍しくない。

1年の現代社会の授業。
各自が関心をもったテーマについて、毎週二つずつ記事を
選んで張り、要約と意見を書いて提出。
生徒たちは、先生からもらった助言や課題について調べる作業。

「用語集、統計などを含め役立つコーナーも作ってもらったので、
そちらもうまく活用して。さあ民族大移動!」と岡田誠吉教諭(57)。

竹島領有問題、出雲そばの由来など、地元ならではの問題を
調べる生徒もおり、山本恵美子学校司書専門員(58)ら
図書班の教員が、他校からも参考資料を借り出すなどして準備。

次回発表を控えるKさん(16)が選んだテーマは、「現代人のうつ」。
「個人が気をつける問題というよりも、社会的な理由を考えたい」と、
Kさんに、教諭は、「不景気によって生活苦になったり、
人間関係が希薄化して孤立する人もいる。
そのあたりから、自分はこう思うというのをまとめたらどうだろう」

狙いは、生徒たちが世の中の問題に関心を持ち、
情報を整理する力、表現力を身に着けてもらうこと。
「最終的には、人の見方に対し、果たしてそうかな、
私は違うというようなやり取りができれば」

1年前、生徒たちに「新聞で見る欄は?」と聞いたら、
スポーツ、番組、広告などが多かった。
Fさん(16)は、「中学まではパラパラ眺める程度だったけど、
地元の話など興味のある記事は読み込むようになった」
新聞活用授業を通じ、新聞の面白さに気付き始めた生徒は多い。

2年の美術の授業も、図書室。
商業デザインを学ぶうえで、新聞広告が格好の題材と考える
高橋恭子教諭(52)が指示すると、生徒たちはあらかじめ考えていた
広告が載った紙面を、収容棚からさっと取り出してきた。

「みんなが選んだ広告を“自慢”してもらおうかな」
Oさん(17)が紹介したのは、1面大のスペースの真ん中に、
「さみしくなったら、おヘソを見よう」という標語とともに、
小さな人間が自分のおへそを見ている素描。
「空間をぜいたくに使っているね。何を言いたいんだろう」と教諭。
「隅に小さい字で、『あなたが一人じゃなかったこと思い出せば
きっと大丈夫 実感しよう絆』とあるね。どう感じる?」

豊かな発想やメッセージ性が、イラストやキャッチコピーに込められ、
生徒たちがそれぞれの発見を熱く語る。

図書室入り口のほか、購買部の前の廊下にも、
新聞を自由に閲覧できる机といすのコーナーが設けられている。
社会への窓となる、生きた教材を備えた図書室での授業。
生徒たちの目は、生き生きしている。

◆NIE(Newspaper in Education)

生きた教材として、新聞を教育に使おうという活動のこと、
新聞活用学習とも呼ばれる。
教育界と新聞界が協力し、20年以上組織的に進めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100209-OYT8T00264.htm

太陽光を100%電気にする太陽電池

(日経 2010-02-26)

太陽から降り注ぐエネルギーは、1m2当たり約1kwと計算。
太陽光発電(太陽電池)は、そのエネルギーから電気を
作っているが、電気への変換効率は20%程度。
残りの80%以上は捨てている。
実にもったいない。

日本の最先端研究で、太陽光を100%利用できる可能性が。
危うく研究予算を打ち切られるところだった
スーパーコンピューターが、太陽電池の設計をやってのけた。

大気や海洋の変化の大規模なシミュレーションに使う
超高速スパコン「地球シミュレータ」。
高度情報科学技術研究機構(RIST)の手島正吾主任研究員らは、
原子の特性値から物質の構造や電気特性などを求める
「第1原理計算」という手法を使い、太陽光をすべて電気に変換する
太陽電池の構造を求める研究に取り組んでいる。

高速計算だけあって、その成果は1年で出始めた。
「地球のどこにでも豊富にある炭素だけで、作ることができる」
それを実現するのは、「マッカイ結晶」。
英ロンドン大学の結晶学者、アラン・マッカイ名誉教授が
数学的に推定、1991年に英科学誌ネイチャーに発表。
まだ誰も合成に成功していない、幻の物質。

マッカイ結晶は、炭素原子で構成する実在の球状分子
「フラーレン」から作れる可能性。
フラーレンを、立体的に積み重ねて全方位から圧縮すると、
計算上はお互いが結合してマッカイ結晶になる。
フラーレンは、炭素原子の数によってC78、C76、C74、C70、C60など
様々な種類が見付かっている。
原子数が減少するほど、フラーレンは縮小、
それで構成するマッカイ結晶は高密度になる。

手島主任研究員らは、フラーレンが縮小するほど、
太陽電池の電気特性値である「バンドギャップ」が小さくなる。
バンドギャップが小さくなると、反比例して電気に変換できる
光の波長が長くなる。
シリコン太陽電池を素通りしたり、跳ね返っていたりした可視光より
長い波長の赤外線光も利用できる可能性が。

シリコン太陽電池の下にマッカイ結晶を敷けば、
エネルギー変換効率は格段に上がる。
手島主任研究員は、その先にある「オール炭素太陽電池」実現を
目指している。
太陽光に当たる側から、紫外光、可視光、赤外光に対応した
マッカイ結晶を配置。

「アンコウのつるし切り」のように、太陽光をすべて食べ尽くす。
積層順を反対にすると、長波長側から光を外に逃がすので効果はない。

ここまでは、スパコンで求めた。
実際に、マッカイ結晶を合成することに。
RIST自体は、超高速計算の専門機関だが、
ナノ炭素研究所(上田市)の大沢映二社長(豊橋技術科学大学名誉教授)、
名古屋大学の篠原久典教授、信州大学の遠藤守信教授など、
著名な炭素物質研究者をメンバーとする研究会組織を持ち、
計算結果を物質合成につなぐ仕組み。

マッカイ結晶は、まだ計算上の物質だが、合成研究者と連携することで、
太陽光を丸ごと電気に変える太陽電池は、
近い将来に日本で開発されるかもしれない。
炭素だけで作れれば、資源が少ないと嘆く日本も困らない。
日本の資源で、世界制覇できる製品が誕生することに。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec100225.html

完成近づく運動公園野球場 こけら落としは7月記念行事案まとまる

(東海新報 2月26日)

野球場拡幅を柱とする住田町運動公園の
大規模改修事業が来月終了。
供用開始は、人工芝の落ち着いたあとの7月を予定、
落成記念関連行事のスケジュール案の概要を発表。
秋にかけて、新グラウンドでの各種大会がめじろ押し。

従来の運動公園野球場は、昭和60年に完成。
その後、24年が経過し、老朽化が目立ってきたこと、
グラウンドも狭いことなどから改修が必要。

町は、生涯スポーツ推進の観点も踏まえ、
20年度に用地取得と設計に着手。
今年度に入って着工、着々と工事が進んでいる。
工期は3月25日まで、土木工事と建築工事を合わせた
建設費は約3億6600万円。

グラウンド面積は、従来の約1万800平方㍍から
約1万3000平方㍍に拡大、野球公式試合に対応できる。
ゲートボールやグラウンドゴルフ、ミニサッカーなど
多目的使用も可能となる。

供用開始は7月、同3日(土)の記念式典(町主催)と
プロ野球北海道日本ハムファイターズジュニア野球教室、
社会人野球のオール気仙対フェズント岩手を皮切りに、
秋口にかけて大会やイベントがめじろ押し。

公式試合対応グラウンドとなることを受けた野球の各種大会を
中心に、グラウンドゴルフやゲートボール大会、
子ども対象のスポーツ教室などが随時開かれる。

9月上旬、日本女子ソフトボールリーグ岩手大会が
2日間にわたり開かれ、北京五輪で金メダルを獲得した
ソフトボール女子日本代表のエース上野由岐子を擁する
ルネサステクノロジ高崎事業所の試合も予定。

落成記念関連行事の概要。
【7月】▽3日=記念式典、日ハム野球教室、記念試合

【8月】▽7、8日=ベースボールマガジン社杯第14回
東北学童・少年軟式野球大会
▽28、29日=秋季東北高校野球県大会沿岸南部地区予選

【9月】▽4、5日=日本女子ソフトボールリーグ岩手大会
▽18~20日=気仙地区中学体育大会新人大会軟式野球

【時期未定】▽フェズント岩手野球教室(中学生対象)
▽住田町長杯グラウンドゴルフ大会(7月中旬、八月中旬)
▽気仙地区ゲートボール大会
▽日本サッカー協会「夢の教室」

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年3月3日水曜日

楽しい図書館(4)社会の制度学ぶ拠点

(読売 2月6日)

図書室を拠点とした調べ学習が、市民性を磨く教育をバックアップ。

「今日は、市役所の税務課長さんに来ていただきました。
これまで学んだことをふまえ、国民健康保険について聞いてみましょう」
金谷佳奈子教諭(50)。
群馬の県立高校入試を、2週間後に控えた今月1日。
藤岡市立東中学校で、社会保障を学ぶ最終授業が行われた。

年金、介護といった身近な題材を、社会、国語、道徳といった
教科横断的に取り上げた授業。
生徒たちは、「国民健康保険の負担は全国どこでも同じですか」、
「仕事を失って収入がなくなったら、税負担はどうなりますか」など、
てきぱきと質問を繰り出し、調べ学習の成果をうかがわせた。

昨年9月、最初の授業で、生徒たちは制度について
知っていることを話し合った。
「年金はおばあちゃんももらっている」、
「けがをして医者にかかる時、保険証を出したよ」。
こうした疑問をもとに、7班で分担し、国保、年金、生活保護、
介護保険などを学ぶことに。

図書室にある関係資料が難解だったため、生徒たちの要望で、
図書主任の先生らが端末などで適当な資料を検索。
探し出した文献を、市立図書館から多数借り出し、
市役所や社会保険事務所からは、わかりやすいパンフレットを入手。

生徒たちは、これらの資料で制度の仕組みを勉強し、
分からないところは関係機関に出向いて直接質問。
班ごとに、制度の仕組みをわかりやすく模造紙に図示、
まとめの発表を行った。

授業を終え、「安定した職業に就き、父母と同居し、
生活を助けたい」と、湯井明子さん(15)。
根岸奈穂さん(15)は、「夢を抱きながら安心して生活できるのは、
いろんな制度が整っているからだと、感謝しつつ勉強に励みたい」

様々な制度に支えられて生きていることを、
認識してもらうのが狙い。
一つの資料だけでは不十分で、複数の資料に当たれる
図書館は調べの拠点として不可欠。
生徒たちが、その活用方法を知ったのも成果」と金谷教諭。
岸正博校長(60)は、「チームで物事を成し遂げる楽しさ、
情報を判断し、表現、コミュニケーションする力の育成にもなった」

同校は昨年秋、図書室を改装。
テーブルカバーを交換し、窓辺のカーテンをレースに替え、
お薦め本の展示コーナーを設置。
書架にも変化をつけるなど、「思わず立ち寄りたくなる」(岸校長)
魅力的な空間に。

地域ボランティアに毎週水曜日、昼休みに放送で
小説や民話の読み聞かせをしてもらうなど、
読書への関心を高める運動をした。
4年前、2000冊を切っていた年間貸し出し数が、
今年度は12月までで4360冊と大幅に増えた。

気楽な雰囲気のなかで活字に親しみ、
生徒たちは自立への道を歩む。

◆市民性を磨く教育

市民としての意思決定や価値判断できる力を育てる教育。
調べ学習や話し合い、創作劇などの手法が用いられる。
欧米では、シチズンシップ教育と呼ばれ、移民の増加や若者の
政治意識の低下などが目立つようになった1990年代に始まった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100206-OYT8T00250.htm

「気仙マスターズ」旗揚げ 陸上競技愛好者で協会設立

(東海新報 2月26日)

気仙地区で陸上競技を愛する仲間たちが、
気仙マスターズ陸上競技協会(熊谷光一会長、会員31人)を旗揚げ。

会員相互の親睦を深めながら、生涯スポーツとしての
陸上競技の普及発展を図り、各種大会への参加と運営への協力を行う。

設立総会は、市民交流館・カメリアホールで開かれた。
立ち上げ経緯の説明後、議事に入り、役員選出、規約、事業計画、
名称などを決定。

3市町の陸上競技仲間が、県内外のマスターズ陸上競技会に
出場する場合、他市協会に会員登録するか、個人で参加。
「気仙として、一つの協会をつくろう」との機運が高まり、
1年前に準備会を立ち上げ、設立に漕ぎ着けた。

規約によると、陸上競技を愛するマスターズの健康保持・増進を
図るとともに、会員相互の親睦を深め、活力あるライフワークに
寄与することなどが目的。

事業計画では、各種大会への参加と運営への協力、記録会の開催、
競技力の向上、陸上競技の普及、啓蒙、情報提供などを行う。

会員は、気仙地区に在住する陸上競技愛好者で構成、
満年齢が男子35歳以上、女子30歳以上。
協会事務所は、田村スポーツ内に置き、活動の円滑な推進を
図るため、組織内に広報、競技、普及の3専門部会を設定。

広報部担当の熊谷佐智夫さんは、
「協会組織を十分に生かし、同じ年代の陸上競技愛好者間の交流の
場を広げながら、競技の普及振興を図り、健康づくりに努めたい」
6月に開かれる金ケ崎マスターズ大会に、協会として初参加する予定。

▽顧問=村上實、青山豊正
▽会長=熊谷光一
▽副会長=東昇
▽事務局長=岩沼利英
▽事務局次長=鈴木眞紀
▽理事長=大和田政弘
▽理事=熊谷佐智夫、佐藤寛文、志田光恵、村上栄子
▽監事=菊池悟、及川浩哉

http://www.tohkaishimpo.com/

「お父さん眠れてる?」 自殺対策キャンペーン

(2010年2月23日 共同通信社)

眠れない日が続く人は、うつを疑って-。
自殺者が、昨年まで12年連続で3万人を超える中、
うつの兆候である睡眠不足の自覚を促すキャンペーンが、
年度末の3月に展開。
内閣府自殺対策推進室が22日、ポスターなどを公開。

医療機関やJR東日本、私鉄の車内や駅などに計25万枚が
張り出されるポスターは、娘が父親へ「お父さん眠れてる?」と
尋ねる姿をイメージ。

テレビコマーシャルも放映、3月1日には短文を投稿する
交流サイト「ツイッター」で、有名人が一斉につぶやく。

推進室は、「自殺者の4割を占める中年男性は、
『弱音を吐きにくい』立場にいるが、睡眠不足なら口にできるのでは
との思いから焦点を当てた。
家族が気にかける契機にもなってほしい」

自殺対策として、推進室はほかに、警察庁の自殺統計の
分析結果を3月に発表、各地のハローワークで
心の健康相談窓口を開設するよう自治体に働き掛ける方針。

睡眠不足などを自覚した際、
同室のホームページで相談先を探せる。

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/23/116397/

2010年3月2日火曜日

楽しい図書館(3)校舎の中心で調べ学習

(読売 2月4日)

校舎の中心に図書館を置き、様々な学びに活用。

理科の授業が始まって10分後、4年生の児童24人が
おもむろに席を立ち、隣接する「メディアセンター」に移動。

千葉市にある私立幕張インターナショナルスクール。
4年生を受け持つジョディ・クラーク教諭(27)は授業の初め、
電子黒板を使い、乾電池と豆電球を使った
電気の回路について英語で説明。
教室にいるのはここまで。
続きが行われるのは、約8000冊の図書と
24台のノートパソコンを備えたメディアセンター。

児童は、それぞれインターネット上で実験を体験する
学習用サイトに接続、乾電池のボルト数を変えるなどして、
電気が流れる仕組みや明るさの変化を学習。
その後、実際に回路をつないで豆電球を光らせた。

講義を受けるだけの授業では、学ぶ効率が悪い。
子供たちにいろいろな機会を与えることが大事
ポール・ロジャーズ校長(46)が教育方針を説明。

2009年4月に開校した同校は、文部科学省が定める
学習指導要領に基づいて授業が行われ、小学校卒業資格が
得られる全国初のインターナショナルスクール。
外国籍を持つ子どもや帰国子女が幼小一貫で学び、
国語以外の授業はすべて英語。

多様な学び方を象徴するのが、センターの積極的な活用、
4年生の場合、週35コマの授業のうち、
少なくとも8コマでセンターを使う。
それを容易にしているのが、センターと教室の位置関係。

高学年棟の中心に置いたセンターをぐるりと取り囲むように、
4~6年生用の教室を配置。
どの教室からも、等距離でセンターに行ける仕掛け。
ロジャーズ校長は、「高学年は、リサーチをする機会が多い。
自ら学び、創造性を育んでほしい」

この日は、4年生の近くで2年生18人が本を広げて
外国について調べ、コーディネーターが
各教諭のまとめ役として事前の調整に当たる。

センターを使った授業は、児童に人気。
4年生(10)は、「先生から『メディアセンターで授業をする』と聞くと、
ワクワクする」、受け身にならない学びを楽しんでいる。

福岡市にある中高一貫の西南学院も、
03年、校舎新築の際、中央に開放的な図書館を置いた。
4階までの吹き抜け構造で、「図書館は学校の要
(中根広秋副校長)という理念を体現。
約7万冊の蔵書があり、調べ学習のほか、
校舎内を行き来する際に立ち寄る生徒も多い。

03年度、6870冊だった貸し出し総数は、08年度は1万冊超。
「危機に直面した時、乗り越える手がかりを与えてくれるのが本」
と説く中根副校長は、「図書館に来る生徒が圧倒的に増えた」と
変化を歓迎する。

校舎の片隅で脇役に甘んじることの多かった図書館が、
その存在感を高めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100204-OYT8T00491.htm

ネットの長城は中国政府を守れるか

(日経 2010-02-25)

中国政府は、インターネット利用に身分証の登録などを
求める実名制を導入する方向で検討。
中国では、米ネット検索最大手のグーグルが、
1月、中国市場からの撤退をかけ、検閲撤廃を当局に要求、
米中間の政治問題に。
中国のネット利用者は、世界最大の3億8400万人。
世論への影響力は急激に増し、
中国当局は、規制強化を加速する方針。

「ネットの安全問題は、厳しい挑戦にさらされ、
管理をさらに強化する」——。
北京で開かれた工業情報化省の幹部会議で、
同省の李毅中相は、演壇で握り拳を振り上げた。

李氏は、具体策として、ネット利用に実名制を導入する方向で検討。
中国のネット利用者3億8400万人のうち、携帯電話経由が
2億3300万人、携帯電話の通話契約にも実名制を導入。

北京市で、年内にも実名制の試験運用を始める計画。
パソコンに接続したカードリーダーで、身分証を読み取らないと、
ネットを利用できないようにすることなどを検討。
浙江省杭州市でも、実名制を導入する方針。

実名制の実効性を高めるため、中国当局は1月末、
パソコンや携帯電話の利用時に指紋などを使って、
利用者を確認する生体認証の標準技術化を進める
専門チームも立ち上げた。
湖北省の公安当局に、ネット犯罪撲滅を目的とする
専門要員の訓練基地も設けた。

中国政府は、1990年代からネット規制に着手。
「金盾工程(プロジェクト)」と呼ばれるネット検閲システムで、
民主化運動やポルノなど、中国共産党が有害と指定した
サイトを閲覧できず、電子メールの利用も制限。
要注意人物のネット利用状況の監視も手掛ける。

2008年
1月 動画共有サイトの運営を中国国有企業に限定
2009年
3月 「ユーチューブ」が、恒常的に閲覧不能に
6月 中国当局がグーグルなどに有害情報を掲載していると批判
7月 国内販売パソコンに検閲ソフト搭載を義務付け(直前に延期)
9月 多くの動画共有サイトが閉鎖に追い込まれる
2010年
1月 米グーグルが中国市場撤退を視野に、当局に検閲撤廃を要求
2月 中国当局がネット利用に実名制導入を検討

最近では、中国に100万カ所以上あるといわれる監視カメラや、
携帯電話とも連携しているとされ、要注意人物の詳しい行動や
社会全体の動きも把握。
現在は、全国で3万人以上とされるネット検閲官が
人海戦術で対応、将来は全自動での作動を目指す。

「海外に対し、情報の公開を約束した北京五輪が終わり、
ネット規制が急激に厳しくなった」
住民運動を支援する弁護士。
2009年1月、国務院新聞弁公室、工業情報化省、公安省など
7省庁が合同でネット規制の強化に乗りだした。

09年、チベット動乱から50年、天安門事件から20年を迎える
節目の年、中国当局は治安維持を最重視。
3月、グーグルの動画サイト「ユーチューブ」が恒常的に閲覧不能、
6月、グーグルが低俗情報を提供しているとして、
英語サイトが一時的に閲覧不能。

5月、当局が7月から国内販売パソコンに「検閲ソフト」搭載を
義務付けると通知。
ヒューレット・パッカード(HP)など、米メーカーが米政府と共同で反発、
義務付けは見送り。
今でも、レノボ・グループ(聯想集団)などの国産商品の一部は搭載。

なぜ、中国政府はネット規制を強化するのか?
ネット利用者が多いだけでなく、世論形成で大きな力を
持ち始めたことが背景。
中国共産党機関紙の人民日報は、09年、中国社会が注目した
事件の約3割は、ネットからの世論形成だったと分析。

公安省は09年、9000サイトを閉鎖、150万以上の情報を削除。
有害な情報を流した容疑者5394人を身柄拘束、
刑事事件としての検挙数は08年の4倍。
工業情報化省によると、10万以上のサイトを閉鎖。
10年、さらに取り締まりを強化する方針。

「金盾」の別名は、「グレート・ファイアウオール・オブ・チャイナ」。
万里の長城にちなんだ名前だが、万里の長城は
外敵の侵入を完全には防ぐことはできず、王朝の崩壊に。
ネットの長城が、中国共産党の外敵を防げるか予断を許さない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt100224.html

太平洋セメント、国内3工場で生産中止 大船渡は生産維持

(東海新報 2月25日)

国内セメント製造最大手の太平洋セメント㈱(徳植桂治社長)は、
国内3工場の生産中止を発表。
大船渡工場は、この対象には含まれず、生産機能が維持。

同社は、生産委託先を含め、国内に12工場セメントキルン23基の
設備を持つ。
生産中止は、土佐工場、大分工場の佐伯プラント、
子会社である秩父太平洋セメント㈱秩父工場の3工場。
今年9月までに、生産を中止。

生産中止は、国内セメント需要がピーク時から半減するなど、
厳しい経営をふまえ、需給バランスの是正や大幅な固定費節減、
生産効率の最大化を実現し、収益力強化を図るのが目的。
3工場合わせた生産能力の削減量は、年間約310万㌧。

生産中止により、国内2300万㌧体制から2000万㌧体制。
同社では、ベトナムにある工場を拡大、
国内工場で生産している500万㌧近い輸出分も、
今後見直しを進めたい意向、
さらなる組織見直しについては流動的。

広報IR室では、「大船渡工場は、生産中止の対象から外れている。
今発表できるのは、3工場の生産中止のみ、
全体的な人員、組織の見直しも進め、
詳しい諸施策は3月30日に開示する予定」

大船渡工場は、年間185万7000㌧を生産、従業員は約150人。
大船渡市の産業、雇用、税収を支える主力事業所の一つ、
鉱工業や港湾業など関連企業の裾野も広い。

同工場では、二戸市などで見つかった不法廃棄物が運ばれ、
原料処理。
市では今年度から、再利用ごみ事業をモデル的に進め、
赤崎町内で回収したプラスチックごみは同工場に運ばれ、
燃料資源として活用。

同社では、昨年11月、「例外なき事業構造改革の迅速な実行と、
成長事業の拡大を図る」と公表、大船渡市内の関係者も
生産見直しの動きを注視。
甘竹勝郎市長は、「(大船渡工場は)大船渡経済に深いかかわりがあり、
地域の基幹産業、雇用確保、港湾活用の面から心底感謝。
今後も、大いに連携していきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年3月1日月曜日

楽しい図書館(2)司書専任で指導充実

(読売 2月3日)


専任の司書教諭を置き、読書活動を充実させる。

児童が、数人ずつのグループに分かれ、「読書座談会」を始めた。
1人が自分の読んだ本の主人公やあらすじを話すと、
聞いていた児童らが、「すごくいい話」、「かわいい」と目を輝かせた。

北海道恵庭市立柏小学校の図書館で、6年生の国語の授業。
狙いは、本の面白さをお互いに伝え合うこと。
手にした本は、歴史やファンタジーなどジャンルも様々、
どれも付せんだらけ。
子どもたちはページをめくりながら、楽しそうに話していた。

授業後、高橋みづきさん(12)は、「ぜひ読みたいと思った」と
友達の本に興味津々。
本が好きという守谷佑太君(12)も、
「改めて本の面白さを知った」

担任と一緒に指導していたのは、司書教諭の小川英子さん(32)。
担任と兼任だったこともあるが、昨年度から専任。
「専任になったおかげで、準備に時間をかけられ、
内容を充実させられる」

2年生では、学校や市立の図書館に出かけて図書館の使い方を学び、
3年生では図鑑を使ったクイズ形式の問題を作り、
目次や索引に慣れる。
6年生では、本の内容を紹介する本の帯づくりも。

図書館の前に、小川さんが作った「お話クイズ」も並ぶ。
本ごとに、3問程度のクイズを出したプリントを作っている。
いずれも、本を読めば分かる内容、本に関心を持ってもらう試み。

恵庭市は、市内の全小中学校に学校司書を配置、
読書に力を入れている。
読書教育などを行う司書教諭を専任として配置するのは、
市内の小中で同小だけ。
司書教諭は、公立校では担任などとの兼任が多く、
全国的にも専任は珍しい。

司書教諭は専任でないと、広く仕事ができない」と田中剛校長(60)。
同小に6年間勤務している学校司書の高橋辰美さん(50)も、
図書館の本を、授業で使う機会が増えた。
教科書や児童に合った本を使ってもらっている」

同小では毎年秋、「読書まつり」を開いている。
クラスごとに児童1人1人が顔写真入りで、お薦めの本を紹介、
学校挙げての取り組み。
教師による読み聞かせも、今は通年で20回以上を行う。
昨年度の1人あたりの貸し出し冊数は約54冊、
児童へのアンケートでは、9割が本が好きと答えた。

「授業でもっと図書館を活用できるようにし、
子どもたちが本に対していい印象を持ってくれれば」と小川さん。
田中校長も、「本を読むことは、生涯必要なこと。
本が好きな子をじっくりと育てていきたい」

◆司書教諭

学校図書館を利用した読書教育、図書館の管理などを行う教員。
学校図書館法で、小中高で12学級以上に配置が義務づけ。
計10単位の専門の講習を履修すると、取得できる。
「学校司書」は、主に図書の貸し出しや蔵書の整理などの
事務的な仕事を行うが、配置に制度上の定めはない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100203-OYT8T00645.htm

アルバックの中村会長、製造装置事業「独創性と汎用化、両方を追求」

(日経 2月23日)

エレクトロニクス製造装置のアルバックが、
収益源の多様化を進めている。
従来の事業領域である液晶パネルや半導体の製造に使う
主力の真空装置にとどまらず、環境エネルギー、
資源リサイクル分野などにも参入。
中村久三会長に、激変する世界経済への対応と事業戦略を聞いた。

——世界経済の潮流をどう読む。

米国から中国へ世界経済の中心が急速に移行。
成長をけん引するのは、電子デバイス、ITソフトではない。
エネルギー・環境、資源・材料の分野が重要。
中国、インドやロシア、中東、ブラジルなど、
これらの製造業が大きく成長。
米国の財政状態は、依然として不安定。
中国は、安い労働力を活用し、一大製造拠点として
急成長を続けている。
日本では、円高ドル安、デフレ傾向が長引くだろう」

——主要顧客の薄型テレビ向け液晶パネル分野は何が起きている?

薄型テレビは、まもなく中国市場が世界最大に。
中国は、液晶パネルの国産化政策を進め、
外資メーカーも、中国で生産に乗り出さないと、
製造コストで太刀打ちできなくなる」

製造装置もそう。
日本市場向けと同じ性能の製品を、数分の1の価格で
製造・販売しなければならない。
液晶分野に限らず、あらゆる産業の生産拠点が新興国に展開、
現地企業も急成長。
装置も、新興国で生産するのと同時に、
カスタマーサポート体制を敷く必要」

——世界の潮流に置き去りにされないため、どう対応していく?

「我々は、6年前から構造変化を見越し、
『ポストFPD(フラットパネルディスプレー)戦略』という計画。
液晶パネルや半導体だけでなく、選択と集中をせずに
異分野の技術を積極開拓しようという計画

急速に進む商品の汎用化についていくこと、
独創的商品を開発すること、この2つの課題を同時に追求。
円高ドル安から逃れるため、積極的に海外生産を進めて、
製造コスト競争で勝って、シェアを上げる。
中国で、幅広いエレクトロニクス製造装置拠点、
サービスセンターを置いている。
日本の研究開発拠点で、弊社にしかできない商品を開発し、
事業領域を広げる」

——具体的な攻略分野は?

「『エネルギー・環境』では、永久磁石、2次電池、コンデンサー、
パワー半導体の4領域向け製造装置を開発、供給。
デジタル家電用電子部品製造装置も、重点領域に位置付け。
LED(発光ダイオード)やMEMS(微少電子機械システム)部品の
製造装置も強化」

——太陽電池パネル製造装置事業にも注力。

「太陽光を電気エネルギーに変える発電効率が高い
薄膜太陽電池用の一貫製造装置の拡販を急ぐ。
結晶や化合物半導体向け装置も、性能強化を進めている」

——『資源・材料』分野の事業内容は?

「液晶パネルや半導体、太陽電池パネル製造で使う材料を回収、
リサイクルする事業。
デバイスの成膜工程には、大量の希少資源を使う。
各国で資源の囲い込みが加速。
都市鉱山の鉱脈を持ち、川上を押さえることが
デバイス産業のコスト競争力強化に。
資源を制する国が世界を制する時代で、意義ある事業

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100219.html

義足 風呂敷応用し、安価に 島根の装具メーカー開発 地雷被害者の支えに

(2010年2月21日 毎日新聞社)

地雷や災害で足を失った途上国の人たちが、
安く義足を使えるようにと、島根県大田市の
義肢装具メーカー「中村ブレイス」が、
風呂敷を応用した装着器具の開発に成功。

体の切断面を義足とつなぐ器具(ソケット)の製作には従来、
手間と費用がかかっていたが、10分の1以下の価格で買える。

従来のソケットは、シリコン袋に連結用ピンを取り付けた「断端袋」。
ピンで、切断面を義足本体に固定。
ピンは軽合金製で、袋は切断面に合わせて作るため、
10~20万円かかっている。

同社は、日本古来の風呂敷に着目。
約50cm四方のシリコン製の布で切断面を包み込み、
余った部分の布をたたみ込んで、そのまま義足にはめ込む。
シリコンの摩擦力が働き、義足本体とぴったりフィット。
断端袋のようなサイズ合わせは不要、ピンで固定する必要がなく、
途上国でよく使われている木製や竹製の
単純な構造の義足にも応用できる。
開発したソケットは、日本や米国、中国、EU、インドに特許を出願。

中村ブレイスは、両足を失ったモンゴルの少年に無償で
特注の義足を贈るなどの活動を続けている。
地雷被害が絶えない貧しい地域での義足の需要の高さと、
日本製の高性能の義足の高コストにギャップを感じ、
安価で安定した義足の普及に取り組んできた。

NPO「地雷廃絶日本キャンペーン」によると、
現在も80以上の国と地域が地雷問題を抱え、
08年、世界で5197人が地雷や不発弾で死傷。

同社の中村俊郎社長は、
「毎年多くの人が地雷被害や災害で、体の一部を失っている。
高価な義足を買えない人たちの社会復帰を助けたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/22/116328/

2010年2月28日日曜日

楽しい図書館(1)「ぐりぐら」と命名 親しむ

(読売 2月2日)

絵本の名前が付いた学校図書館で、児童は本に親しむ。

「ぐりとぐら」のキャラクターが、入り口で児童を出迎える。
「ぐりぐら図書館」。
東京都中野区立啓明小学校の図書館は、
児童が大好きな絵本の名前が付けられている。

「話のロウソクに火をともしましょう」。
図書館での1年生の授業で、学校図書館指導員の
米村和美さん(57)がおはなし会を始めた。
節分にまつわる昔話が始まると、約20人の児童から笑顔。

広い図書館にある「おはなしひろば」。
コルク材の床に児童がじかに座り、じっと聞き入る。
壁には、児童の絵などが飾られ、ぬいぐるみも置かれた
明るい雰囲気。
授業の終わりには児童らが我先にと、本を借りに列を作った。
「子どもたちは図書館が大好きです」。
担任の小山朗子主幹教諭(49)もうれしそう。

1997年、従来の図書館を拡張したのに併せ、
児童から名前を募って命名。
絵本「ぐりとぐら」の作者、中川李枝子氏から許可。
「楽しく、ほっとできる図書館に」。
絵本の名前を付けたのは、そうした思いが込められている。

そんな場所には、児童が楽しめる仕掛けがふんだんにある。
壁に張られた大きな野原の絵。
「ぐりとぐら」、「くまのコールテンくん」など、
好きな絵本の主人公を子どもたちに描いてもらった。
「子どもたちは、本を読んだ時の面白さを表現したいと思っている。
みんなで描いて、一つになればうれしいこと」
休み時間には、様々な学年の児童が絵を描きにくる。

「難しいかもしれないけど、頑張って読んでみてね」
壁に飾られていたのは、6年生が1年生に書いて送った本の感想。
友人に本の感想を書いて送る読書郵便は、
図書館内のポストに入れると、友人に届けてくれる仕組み。

一昨年、学校で見つかったカラスの巣も飾られ、
周りにカラス関連の本が置かれている。
こうすることで、関心も高まるとの狙い。

「楽しい場所なら、児童も図書館に来てくれる。
本を手に取ってくれれば、色々な世界が広がる」

学校図書館であるため、各クラスで週1回、授業で
図書館を活用するなど、学習に役立てる。
国語でジャンケンを学ぶ1年生には、世界のジャンケンが
載った本を紹介。
図工で読書感想画を描いたり、国語の授業で本のカバーや
帯を作り、図書館に飾ったり。

手製の「ぐりとぐら」のキャラクターを使い、年度初めには
全学年で図書館の使い方を学ぶ。
本の分類を学ぶことは、調べ学習の資料探しだけでなく、
将来にも役立つ。

本の貸し出しは、米村さんが手渡し。
その際、個々に合った本を勧めることも。
「読めたよ」、「楽しかったよ」。
本を返しに来る児童から、そう言われることが何よりもうれしい。

子どもたちにとって居心地のいい場所にと、
学校全体で取り組んできた図書館づくり。
「児童の心を育てる大切な場所。これからも充実に努めたい」と
橋浦義之校長(55)。

◆学校図書館指導員

中野区が、1995年から全小中学校に配置している非常勤職員。
図書館で図書の整理や貸し出し、読み聞かせなどを行う。
区では、教員免許か司書の資格を持つ人から選んでいる。
専門の講習を受けた教員が、図書館を使った読書教育などを
行うのが司書教諭となる。
米村さんは指導員だが、司書教諭と司書の資格を持つ。

◇蔵書や司書 整備不十分

今年は、国民読書年。
学校で読書や学習の拠点になる学校図書館だが、
必ずしも整備が十分とは言い難い状況。
「学校図書館の現状に関する調査」よると、国が定めた
公立小中学校の図書館の蔵書数の標準について、
達成した小学校は約45%、中学校は約39%(2007年度末)。

専門の講習を受けた司書教諭は、改正学校図書館法で
12学級以上の学校で置くことになったが、
全国学校図書館協議会の森田盛行理事長は、
「公立ではほとんどが担任などとの兼務で、
十分機能していない部分がある」
11学級以下では、配置自体が2割程度しかない。

学校司書については、高校では配置が進むが、
高校に比べ、図書館が小さい小中学校は4割程度と少ない。
森田理事長は、「読書を活発にするには、
専任の司書教諭と学校司書の配置が必要

島根県立大学短期大学部の堀川照代教授(図書館情報学)は、
まずは、図書館の雰囲気作り。
子どもたちは、自分たちの紹介文などが展示されていれば、
自然と目を向ける。
玄関や廊下の空きスペースに本を置いたり、読む場所にしたりと、
学校全体を図書館にしてしまう発想もいい」とアドバイス。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100202-OYT8T00239.htm

CO2回収・貯蔵に積極的な欧州電力会社

(サイエンスポータル 2010年2月18日)

地球温暖化対策として期待されている
CCS(二酸化炭素分離・回収・貯留)に、
欧州の電力会社が積極的に取り組んでいる。

ドイツに石炭火力発電所を持つバッテンフォール社は、
2030年に向けCO2を半減する目標を掲げ、
積極的にCCS実証プロジェクトを実施中。

発電量の42%が火力発電であるRWE社も、
同じくドイツで発電効率の向上とCCSに力を注いでいる。

Nuon社は、オランダでバイオマスと石炭を燃料とする
石炭ガス化複合発電(IGCC)実証プラントを、
1993年から運転、CCSのパイロットプラントも建設。
商業レベルのIGCC・CCSプラント(130万キロワット)を建設計画。

欧州電力会社とプラント会社の共同出資体であるElcogas社も、
スペインでこの3月から化学吸収法によるCO2回収プラントの
試運転に入るなど、CCSに積極的に取り組む電力会社の姿が明らかに。

視察団は、経産省資源エネルギー庁の石炭課長を団長に、
新エネルギー・産業技術総合開発機構など5法人と、
CCSに関心の高い関西電力、東芝、三菱重工業など企業14社、
8~14日にドイツ、オランダ、スペインを訪れ、
CCSの取り組み状況を見てきた。

http://scienceportal.jp/news/daily/1002/1002181.html

がん守るたんぱく解明 新薬開発に道 東京都臨床研など

(2010年2月22日 毎日新聞社)

肝細胞がんや脳腫瘍で、過剰に作られる特定のたんぱく質が、
がん細胞を傷つける酸化ストレスを軽減、薬剤への耐性を高めるなど、
がん細胞の生存を助けている可能性が高い
ことを、
東京都臨床医学総合研究所、東北大などの研究チームが突き止めた。
21日の英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」(電子版)。

このたんぱく質の蓄積を抑えることで、
新たな抗がん剤開発につながる可能性がある。

チームが注目したのは、「p62」と呼ばれるたんぱく質。
肝細胞がん、脳腫瘍などの細胞で多量に蓄積することが確認。
マウスの肝細胞がんなどの細胞を使い、p62の機能を分析。

酸化ストレスを軽減させる別のたんぱく質を分解する
細胞内のセンサー部分にp62が結びつき、分解を阻害。

p62の働きの結果、がん細胞で酸化ストレスを減らす
たんぱく質が作られ、抗がん剤などを細胞外に運び出す
遺伝子の働きが高まるなど、がん細胞の生存を助けている
可能性が高まった。

小松雅明・都臨床研副参事研究員は、
「p62の働きを阻害することによって、がん細胞の増殖や
薬剤耐性を抑制する抗がん剤を開発できる可能性がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/22/116359/