2009年3月21日土曜日

ロボットスーツ、世界制覇の夢

(日経 2009-03-13)

外骨格型と呼ばれるロボットが、将来有望な技術として脚光。
筑波大学の山海嘉之教授らが開発したロボットスーツ「HAL」
先陣を切り、昨秋リース販売を始めた影響が大きい。
米国でも、同型ロボットの開発は進み、商品化は目前。
HALは、世界市場を席巻できるだろうか?

山海教授が最高経営責任者を兼ねるベンチャー企業、
サイバーダイン(つくば市)が大和ハウス工業を通じて発売したHALは、
足に障害を持つ患者や脚力が弱くなった高齢者の歩行を助ける。

関節近くの皮膚に張り付けた電位センサーが、
筋肉を動かそうと伝わってきた神経信号をとらえ、
制御装置が関節の曲げ伸ばしを判定し、装着した人と一体的にモーターを駆動。

筋肉が動き出すより、ほんのわずかだけ早く動かせるため、動作が自然。
生後まもなく病気で足がまひした患者が、自分の意思で足を動かせるようになり、
脳卒中でひざを曲げられない患者が、ゆっくりと曲げられるようになるなどの効果。

リハビリテーション用とか医療機器とうたうと、薬事法上の許認可が関係、
山海教授もこうした言葉を避けて解説。
研究は面白くても、事業化の遠いヒューマノイド(人間型)ロボットとは
一線を画し、人間の動きを支援する機能が実用的。

研究段階では、全身用のスーツも作っているし、
ひじだけのような単一の関節用のHALも試作済みで、製品化を準備。
衰えた機能を支援する分野だけでなく、重労働を補助する用途や
災害救助の現場などでも応用できる。

山海教授はもう1つ、面白い利用方法を考えている。
HALは、装着者の動作を学び取る機能も備える。
例えば、イチローや松井秀喜選手ら一流選手の打撃動作を記録し、
「未来の博物館でHALを装着し、名選手の打撃を実体験」(山海教授)
できるようになるかも。
娯楽用途の開拓はこれからの楽しみだ。

達筆な人の指や腕の動かし方を写し取れれば、
字が下手な人の訓練にも使えそう。
効果的な教育手段になるだろう。

関節が反対側に回らないストッパーや、過剰な力を出さない制限をかけるなど、
安全対策は多重に備えている。
両脚の動作支援用の場合、1時間の充電で約90分間しか動かせないが、
これからの電池の開発で、動作時間はどんどん伸ばせるだろう。
汗に弱いセンサーも課題だが、対策もあり大きな問題にはならない。

障害者や高齢者用には、HALを個々の装着者に適合させる作業が必要で、
量産に向かない点が、今のところ営業を拡大するうえで最大の悩み。

山梨大学などと協力して歩行補助機器を開発した大日本印刷や、
体重を支え歩行を助ける機器を試作したホンダなど、
サイバーダインに追随する動き。
2011年には、45億円規模の市場に成長するとの予測。

日本発のロボットスーツ技術が世界に通用すれば、一大産業に発展。
強敵は、軍事用の開発計画が進行する米国の企業。

米レイセオンやロッキードマーチンの大手は関連ベンチャーを買収し、
商品化を検討。
マサチューセッツ工科大学のロドニー・ブルックス教授をリーダーとする
米政府のプロジェクトでは、約20億円の予算を割り当てられた
5つのチームが新技術を競い、1件を選んで実証段階に移行する計画。
量産すれば、非軍事用途へも転換は簡単で、侮れない相手に。

平和利用に徹する日本のロボットスーツは、ちょっとクール。
自動車やデジカメのように、洗練された日本製品として世界に広がってほしい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090311.html

アシックス、ランナー専用の第2号直営店を原宿にオープン

(日経ヘルス 3月5日)

アシックスは、ランナー向けに商品やサービスを提供する直営店
「ASICS STORE HARAJUKU(アシックスストア原宿)」を、
2月28日に東京都渋谷区にオープン。

アシックスストア原宿は、2007年2月に東京・銀座にオープンした
「アシックスストア東京」に続く、国内で2店舗目のランナー向け直営店。
ランニングシューズやランニングウエアなどのグッズを販売するほか、
足のサイズやランニング姿勢を計測して利用者にアドバイスする、
といったサービスも提供。

参加者を募って走るイベントの拠点にも利用するため、
更衣室やシャワーといった設備も用意。

同店テクニカルスタッフの高橋洋平さんによると、
銀座にあるアシックスストア東京の利用者は、
「数百人いるうちの7~8割が女性。30代前半で、近隣の丸の内で働く
オフィスワーカーが多い」

これらの利用者向けに、平日の夜に同店を出発して皇居の周りを走る
イベント「ナイトラン」を、週に6回開催。

アシックスストア原宿では、「近隣の居住者などには、
朝の時間を有効に過ごしたいと考えている人が多いようなので、
土日の朝に代々木公園などを走るイベントを開催する」(高橋さん)

このイベント「モーニングラン」の初回は、3月14日を予定。
参加するためには、同店で会員登録し、1万5000円以上の商品を購入する、
といった条件がある。
アシックスストア原宿(http://www.asics.co.jp/running/store/harajuku/index.html

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090305/103231/

マラリア予防の蚊帳を開発 アフリカの尊い命救う 住友化学の伊藤高明さん

(2009年3月11日 共同通信社)

防虫効果が5年以上続くマラリア予防の蚊帳「オリセットネット」を開発
アフリカなどで尊い命を救っている。
製品化は1990年代半ばだが、定年間際にようやく脚光を浴びた。
「いい物が必ずしもすぐ売れる訳ではない。
技術者はこれだと思った仕事は、決して手放さない心の余裕が大切」

注目されるようになったきっかけは、2001年の世界保健機関(WHO)のお墨付き。
米国ファンドも、貧困対策として感染症予防が大切だと支援を表明し、
国際的な枠組みができた。
03年、タンザニア企業へ技術を移転、現地に4000人の雇用を生み出した。

蚊帳は、ペット用のノミ取り首輪の技術を応用、
人体に害がない防虫成分を繊維に練り込んで、洗濯しても効果が続く。
風通しを良くするために、網目も広げた。

「船長として、インド洋の夕日を見るのが夢」だったが、
大学は農学部に進学。
会社では、上司の指示で感染症を研究。
「目指した仕事と違うとさえない日々を送っていたある日、
この研究があこがれの海外とつながっていると気付き、猛勉強した

08年、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、
福田康夫首相(当時)が民間投資の成功例と紹介。
定年後も再雇用され、使用済みの蚊帳のリサイクル法などの
研究に取り組んでいる。名古屋市出身。60歳。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/11/93515/

学士力(8)本物のビジネスに参加

(読売 3月14日)

社会で即戦力として役立つ人材の育成が、大学に求められている。

「自分の提案を聞いてもらいたいなら、もっとはっきり話しなさい!」
担当教授の厳しい声が飛ぶと、企業の営業戦略担当者の鋭い指摘が続いた。
「エリンギは、『食物繊維が豊富』と言うけど、データは?
根拠がない説明は説得力がないですよ」

愛知学泉大学家政学部管理栄養士専攻の学生11人と、
コンビニエンスストア「ココストア」(本社・名古屋市)による
弁当共同開発プロジェクト。1月末の会議は緊張感が張りつめた。

学生たちは昨年4月から、「売れる弁当を」というココストアの要請に応え、
5度の試作品制作を経て、野菜中心のおかずをそろえた
「メタボ予防弁当」を提案、開発。
この日は、宣伝用ちらしに載せる情報や弁当の基本理念の最終確認を、
リーダーの2年生、疋田健人さん(20)が発表。
次々と質問を浴びて言葉に詰まる場面もあったが、
「将来は栄養教諭になりたいので、人に理解される説明能力が必要。
厳しい指導のおかげで実力は付いたと思う」と振り返った。

同大は、専門知識を身につけるだけでなく、知識を活用する実践を通して
「地域社会で即戦力として活躍できる人材の育成」を目指す。

2年前から始まった、弁当開発プロジェクトもその一環。
「栄養学の知識を、実社会で活用する生きた訓練の場。
本物のビジネスに参加することで、責任感も生まれる」と安藤明美教授(50)。
学生に自己評価させると、「創造力」や「柔軟性」「規律性」などが
大きく成長したという結果。

これまで2種類の弁当が発売され、うち若いサラリーマン向けの
「午後力弁当」が、ココストアの弁当の中で最大の売り上げを記録。
たんぱく質、脂質、炭水化物のバランスに配慮し、
午後のエネルギー補給を意識した弁当。
「この実績も、学生の意欲に結びついている」と安藤教授。

同大は、経済産業省が昨年度から開く社会人基礎力育成グランプリの
第1回大会で準グランプリを、
40大学が参加した第2回では特別奨励賞を受けた。

現状のプロジェクトは、任意参加の課外活動だが、新年度から、
すべての授業で「社会人基礎力」育成を位置づけ、全学的に取り組む。
授業ごとに理解度を自己評価させ、参加意欲を促す。
同一課題をグループで取り組ませ、成果を発表する機会を与え、
チームで取り組む力と課題発見力を育てる授業も取り入れる。

こうした改革を進めようとしていた矢先の5日、
社会人基礎力の根幹を揺るがす事故が起きた。
1年生の男子学生が、学内で禁止されている飲酒が原因で死亡。

若林努学長(64)は、「重い責任を感じている。
教員のきめ細かな指導体制に加え、社会人基礎力を育てる教育の重要性も
再認識した。教員一丸となって取り組みたい」

◆社会人基礎力

経済産業省では、主体性や実行力などの「前に踏み出す力」、
課題を見つけ計画を立てる「考え抜く力」、自分の考えを伝え、
相手の意見を聞きながら目標に向かう「チームで働く力」の三つの養成を提唱。
約3700社を対象に、2006年に実施した調査では、
「前に踏み出す力」を最も重視する企業が多かった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090314-OYT8T00361.htm

2009年3月20日金曜日

不幸な結婚は女性の健康に悪影響を及ぼす

(2009年3月11日 WebMD)

結婚生活がうまくいっていない女性は、男性よりも、
うつ病のような精神障害を患う可能性が高く、
高血圧および肥満などの危険な症状を伴う可能性も高い。

うまくいっていない結婚生活は、男性もうつ病を引き起こす、
と研究者であるユタ大学のNancy Henry氏。

女性とは異なり、緊迫関係にある男性が、メタボリックシンドロームを
発症するリスクは高くない。
過剰な腹部脂肪および高血圧とは別のメタボリックシンドロームの特徴として、
中性脂肪高値、高血糖、HDL(「善玉」)コレステロール低値が挙げられる。

5つのうち、3つ以上が認められる場合、メタボリックシンドローム患者。
メタボリックシンドロームは、心疾患、脳卒中、糖尿病のリスクを増大。

Henry氏らは、夫婦276組を登録。
結婚期間は平均20年、男性と女性の年齢は40-70歳。
思いやり、支え合いなどの良好な夫婦関係、口論の頻度、セックス、子供、
金の問題に関する意見の相違など、夫婦間の不和に関する質問票に回答。
血液検査、血圧測定、胴囲測定などの医学的スクリーニングを受けた。

研究者らは、次のようなことを見出した。
1)結婚生活が良くない女性は、抑うつ症状の可能性が高い。
2)結婚生活が良くない女性では、メタボリックシンドロームが多い。
3)結婚生活が良くない男性は、メタボリックシンドロームに関連しない
抑うつ症状を報告。

◆不幸な結婚が、女性の健康に影響を及ぼす可能性がある理由

「女性の方が関係を重視するようである」と、
Veteran Affairs Salt Lake City Medical Centerのユタ大学博士課程Henry氏。
「女性は、自己概念の基礎を対人関係とその現状に置く傾向。
夫婦間の不和が、女性の心身の健康により大きな影響を及ぼす」

不幸な結婚は、男性において、うつ病を引き起こし、
生理的障害は、女性のみに発現するようである、
とユタ大学心理学教授であるTim Smith氏。

「男性が問題を抱えていなかったのではない。
女性の方が体重増加の可能性が高いことを、はっきり示された。
ストレスホルモンは、内臓脂肪の蓄積を助長。
ストレスは体重増加、コレステロール値上昇を引き起こす可能性がある

多くの研究で、男性、女性いずれも離婚が冠動脈石灰化に関連し、
「ストレスと心臓の健康の関連は、女性の方が強い」

メタボリックシンドロームがうつ病を引き起こす可能性は、
うつ病がメタボリックシンドロームを引き起こす可能性と同程度、
とエモリー大学(アトランタ)心血管転帰プログラム
(cardiovascular outcomes program)部長のViola Vaccarino。

うつ病患者は、メタボリックシンドロームの可能性が高く、
またその逆もそうである。
うつ病患者は、身体活動が不足し、健康に良い食事を選択できず、
メタボリックシンドロームを発症する可能性が高い。
うつ病が、男性よりも女性に影響を及ぼすという性差をみたのは初めて」

◆女性の方が不幸な結婚にストレスを感じる?

男性と同様、女性も心疾患は死因の第一位、
「関係の因子と精神的苦痛が、心疾患にどのように関連しているかは
まだ多くを学んでいる段階」、見出された性差は重要。

ストレスによって、女性は男性よりも身体的障害を起こしやすくなると
結論付けるのは時期尚早だが、最新の研究結果が示唆している、
と心疾患における結婚の質の役割に関するユタ大学の
大規模研究のリーダーSmith博士。
「結婚の様子および質を改善するか、夫と別れれば、
心疾患のリスクが減少すると言うのは時期尚早である」
他の研究で、結婚の質の改善が配偶者の健康を増進するかは確認中。

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http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/03/11/93493/

不況こそチャンス 「好きなこと」を仕事にした起業家たち

(CNN 2月28日)

米経済の悪化を受けて失業や解雇の嵐が吹き荒れるなか、
逆風を方向転換のチャンスととらえ、新たな道を進み始めた人々がいる。
長年の夢や趣味をキャリアにしようと、
美容院や時計店など新たな事業に挑戦するケースも多い。
不況下の起業はリスクが大きいが、経費が安く済むなどの利点も。

イリノイ州シカゴに住むジェニファー・ジャクソンさん(39)は大卒後12年間、
電気エンジニアとしてモトローラ、AT&Tなどの大企業で活躍。
景気の悪化にともない、エンジニアの求人は激減。
「この機会に発想を切り替えよう」と決心し、昨秋美容室を開業。
子どものころからの夢だった美容師となって、多忙な毎日を過ごしている。

テキサス州ヒューストンのローラ・ウォルダスキーさんは、
有名ブランドのデザイナーだったが、オリジナルのアクセサリー店を開いた。
数カ月の失業期間を経て、長年の趣味を仕事にしようと思い立ち、
預金をつぎ込んで開店にこぎ着けた。
「ずっと他人の会社のためにお金をもうけてきたけれど、
今度は自分の才能を自分自身のために使いたいと思った」と、目を輝かせる。

同州アーリントンでは、IT企業のサラリーマンだったジム・ペンソンさん(55)が、
音楽講師に転身。
04年、ITバブルの崩壊で職を失い、800通以上の履歴書を送っては
突き返された末、「残ったのは趣味のカントリー・ミュージックだった」
バンジョーやマンドリンの教室を立ち上げて、20人以上の生徒を集め、
何とか生計を立てている。

ニューヨーク州ハーツデールで時計店を始めたのは、
ウォール街の金融マンだったウォルター・カーシュバウムさん(63)。
2年前に解雇されたが、60代で新たな職を見つけるのは難しかった。
趣味は古時計の収集、特技は時計修理。
それらを生かして、年中無休で店に立つ。
「失業前の仕事と違って、華やかさも権威もないが、楽しい毎日。
妻と2人で食べていくだけの収入はある」と、満足げ。

厳しさを増す米国内の雇用状況。
毎日どこかの大手企業が人員削減を発表し、金融や法律などの分野も
もはや安全ではなくなった。
学歴が豊かな収入につながるという図式は、すでに崩壊。

小規模企業の経営は、通常でも決して簡単ではない。
起業後、1年生き残る会社は8割、4年では半分以下という統計。
信用収縮が深刻化する昨今、起業家は相当のリスクを覚悟する必要。

一方、景気の悪い時は家賃や広告料が安くなる傾向があり、
求職中の有能な人材を確保できる確率が高い。
既存の競争相手も体力が弱っているため、
新参者が市場シェアを奪い取るには絶好のチャンス。

過去の例をみても、日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブルは
1837年の恐慌、運送大手フェデックスは1973年の石油危機という
時代にそれぞれ設立。
「リスクはもちろん怖いけれど、その分だけ希望も大きい。
逆風にさらされるままじっとしているより、未来にかけるほうがはるかに良い
と、起業家たちは口をそろえる。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200902280001.html

クローズアップ2009:チベット動乱50年 中国、硬軟両面抑え込み

(毎日 3月10日)

チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世(73)のインド亡命に至った
チベット動乱の発生から10日で50年。
14日で、チベット自治区ラサで起きた暴動から1年。
二つの「敏感な節目」を控え、亡命政府のあるインド北部ダラムサラは
平静を装うが、中国国内のチベット人居住区では緊張が高まる。
中国当局はチベット問題で譲歩しない構えで、
硬軟両面で抑え込みを図ろうとしている。

全国人民代表大会(全人代)に出席していたチベット自治区のトップ、
張慶黎・自治区共産党委書記は、北京から区都ラサへ戻った。
年に1回の国会開会中に任地へ戻るのは異例。
「反北京」の動きを、陣頭指揮で抑え込むため。

当局は、自治区と周辺のチベット族が多い居住区に
治安部隊を大量動員し、厳戒態勢。
公安省辺防管理局の傅宏裕・政治委員は、
「国家主権に危害を及ぼす犯罪活動に打撃を加える」

◆譲歩はせず

チベット亡命政府は、昨年5月に再開された中国政府との協議で、
自治構想の「覚書」案を提示。
分離独立やダライ・ラマ14世の政治活動の放棄、中国憲法の順守など
譲歩した内容だったが、「中国側に一蹴された」(ロディ・ギャリ亡命政府特使)
亡命政府や関連組織は、「中国当局はチベット人弾圧を強めている。
これが中国との間で緊張を生む背景だ」と中国側を非難、

中国指導部がチベット問題で妥協しない方針は変わらず、
亡命政府側が望む対話再開のめどは立たない。

予算面では、「チベット重視」を鮮明。
中央政府は、自治区に昨年の2倍の240億元(約3480億円)を投入。
自治区政府も、昨年比2倍の49億元(約710億円)を
教育や衛生など市民生活の向上につぎ込み、アメとムチを使いわける。

中国政府は、「チベット民主改革50年」と題する白書を発表。
過去半世紀を、「暗黒から光明へ 貧困から富裕へ 独裁から民主への
輝かしい道のりだった」と自賛。
中央の統治権が確立した今月28日を、「農奴解放記念日」に定め、
「ダライ(ラマ)を頂点とした封建制度から人民を解き放った日」と強調。

◆欧州けん制

指導部が神経をとがらせるのが、主要国の視線。
楊潔ち外相は、「ダライ側は、中国の4分の1の土地に
『大チベット区』創設を求めている。
ドイツやフランスなどは、自国領の4分の1の分割に同意するか。しないだろう」
欧州連合(EU)が、中国の宗教・人権問題に厳しい目を向けていることを踏まえ、
チベット問題と対中政策を結びつけないようけん制。

対話が暗礁に乗り上げ、北京五輪後はチベット問題に対する国際的関心も
薄れつつあり、中国は半世紀に及ぶ統治の実績を背景に、
チベット政策に自信を深めつつある。
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◇緊張する居住区/亡命政府は平静

山々に囲まれたのどかな風景が広がる中国青海省。
ダライ・ラマ14世が4歳まで育った同省平安へ続く道路は、
生家の数キロ手前で警察車両に封鎖。
「住民以外は通せない。立ち去れ」。

普段は自由に通行できるはずだが、警官にはぴりぴりした雰囲気が漂う。
記者にパスポート提示を求め、「上からの指示だ」と繰り返した。

生家には、14世のおいが暮らす。
チベット族男性に物陰で声をかけると、携帯電話の待ち受け画面にある
14世の写真を示した。
「生家の部屋に今も飾られている写真だ。
14世が生まれた村に帰る日を祈り、待っている」。男性は合掌。

昨年のラサ暴動以降、ラサをはじめチベット自治区への外国人立ち入りは
厳しく制限された。昨年、暴動が起きた青海省同仁県の僧侶は、
「愛国主義教育として、ダライ・ラマを批判するよう強要された」

亡命政府のあるダラムサラ。
「チベットは一つ」、「1959 抵抗の50年」。
寺院前の壁面に、亡命チベット人男性がペンキで大きく記していた。
国内外から約5000人の亡命チベット人らが集まり、祈りをささげるが、
昨年3月の大規模デモの際の張り詰めた空気はない。
亡命議会のワンチュー議員(35)は、「対話は失敗したように見えるが、
朝の来ない夜はない」と対話継続に期待感を示した。
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◇チベット動乱

中国共産党政権は1951年、ダライ・ラマが事実上統治していた
チベット全土を、軍の力を背景に掌握。
ダライ・ラマ14世の地位や政治制度など、政教一致の維持を約束したが、
社会主義改革に反発するチベット人との衝突が頻発。
59年3月10日、14世が「中国に拉致される」と疑ったラサ市民数万人と
軍との全面対決に発展。中国は制圧後、65年に自治区を置いた。

http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/archive/news/2009/03/20090310ddm003030147000c.html

学士力(7)教室改装、討議の場に

(読売 3月13日)

東京大学が、学生の討議力養成に本腰を入れる。

旧制第一高等学校本館で、国の登録有形文化財の東大教養学部1号館(駒場)。
駒場キャンパスのシンボルにもなっているこの歴史的な建物で、
入試の合間を縫って六つの教室が改装。

ほかの教室は、教卓に向かって50人分の机とイスがびっしりだが、
新しい教室は机をコの字形に並べてゆったり。
壁には小ぶりのホワイトボードがあり、机をグループ単位で並べ替えた時に使う。
暖色系の方が議論が弾むと、いすはオレンジ色、
机も明るいクリーム色。録画装置も備えた。

部屋の狙いは、東大生の討議力向上。
教養学部では新年度から、討議を主体にした授業を、
全学生が学期に1度は経験できる体制を取る。
2学年約6000人が学ぶ駒場キャンパスでは、1学期の授業が
約1200コマにもなるだけに、学期に1度といっても大がかりな取り組みに。

「討議させる授業に自覚的に取り組んでもらうため、
この教室を使ってみませんかと働きかけもしたい。
場を変えることで、駒場の先生たちの意識をからめ手から変えたい」と
教養学部付属教養教育開発機構の山本泰教授(58)。
新しい教室では、原則として授業見学を認めるという方法も考えられる。

背景には昨年3月、700人近い教養学部の2年生が答えた
「教養教育の達成度調査」
「学問的知識」、「論理的・分析的に考える力」、「知識や考えを表現する力」、
「他者と討論する力」など6項目が身についたかを聞くと、
「討論する力」だけが2割に届かなかった。
他の5項目は少なくとも5割近く、「学問的知識」は7割超。

「討議力は、何かを勉強する過程で身につけるハイレベルの力だが、
ここまで低いとは思わなかった。
本来、大学は知識を教える場ではなく、教員と学生が対等に議論して
新しい知を作り出す場だ」(山本教授)

2月、学生を集めた模擬授業も試みた。
ミラーリングと呼ばれる討議力養成の手法も体験。
1人が報告した内容を、もう1人が再説明することで、
ずれを観察し、表現力や聞く力を養う。

参加者に聞いても、討議する授業の経験の有無に大差があった。
今回の取り組みで、「身についた」を5割程度に引き上げるのが目標。

駒場キャンパスには2007年、最先端のハイテク設備を備えた
教室KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)もできている。
英語の論文の書き方を学ぶ授業では、
学生が書く英語の文章を、教員が同時進行でスクリーン上に引き出して
添削するといったこともできる。
文字通り、学生を能動的に授業にかかわらせる場。

教室を変えることで教育を変える――
小中学校などではすでに取り組まれてきたことが、
最高学府でも動き出している。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090313-OYT8T00241.htm

2009年3月19日木曜日

女性国会議員の数、昨年は総数の18.3% IPU報告

(CNN 3月6日)

列国議会同盟(IPU)は、昨年の年次報告書を発表、
世界の女性国会議員の数が総数の18.3%を占め、1995年以降、60%増。
2007年は17.7%。

国連は、女性議員の比率の目標を30%としているが、
世界の議会のうち、この数値を達成したのは39カ国。
アフリカのルワンダの56%が、特に目立った。

IPUは、女性議員の増加率は依然鈍いとし、偏見の存在や
女性の社会的な役割への理解が遅れていることなどが原因。

昨年、54カ国で議会選挙があり、当選した女性議員は2656人。
1707人が直接選ばれ、878人が間接選出、71人が任命。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200903060029.html

FDA認可の「まつげが伸びる薬」、女性らが歓迎

(CNN 2月22日)

まぶたに塗布することでまつげを濃く、長くする薬が、
米食品医薬品局(FDA)に認可。
「お化粧の手間が省ける」という女性や、抗がん剤の副作用で
まつげを失ったがん患者らが、さっそく処方を受けている。

この薬は、米製薬会社アラガンが申請した「ラティス」。
緑内障患者の眼圧を下げる点眼薬として開発。
使用した患者の多くに、まつげの成長が促進されるという「副作用」が
みられたことから、美容目的での販売が認められることに。

ラティスを処方する整形外科医、ランディ・ラダーマン博士のもとに、
「素顔でもお化粧をしているように見せたい」、
「私のまつげは髪と同じブロンド。マスカラを分厚く塗る手間を省きたい」と、
早くも多くの女性たちが詰め掛けている。

ラティスは毎晩、就寝前に1滴を上のまつげに軽くつけて使う。
価格は、1カ月分で約120ドル(約1万1300円)。
まつげの伸びが最も盛んになるまでには、最長で4カ月使い続ける必要、
中止すると2―3カ月後には元の状態に。

使用が認められているのは18歳以上、
妊婦、目の病気やアレルギーのある人は注意が必要。
副作用としては、目のかゆみや充血、まぶたの縁が黒っぽくなることも。
まつげの部分にうまく塗れず、まぶたに毛が生えてきてしまった例もあるが、
使用を中止したところ、まぶたの毛はしばらくして抜け落ちた。

ラダーマン博士の診察を受ける女性の中には、
メアリー・ジョンソンさん(56)のようなケースも。
昨年、乳がんで化学療法を受け、髪とともにまつげが抜けてしまった。
頭はかつらで解決したが、まつげはどの化粧品を試してもうまくいかなかった。
「普段は気づかないけど、まつげがなくなると、
本当に顔の印象が変わってしまう」
博士に処方されたラティスの効果に期待。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200902220018.html

肝がんリスク「野菜」で低下、「果物」で上昇?

(読売 3月10日)

野菜を多く食べる人は、少ない人に比べ、肝がんを発症する危険性が
4割低くなるが、果物の取り過ぎは逆にリスクを高める可能性が高いことが、
厚生労働省研究班(主任:津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)
の調査でわかった。
40~69歳の男女約2万人を約12年間、追跡調査。

野菜や果物の摂取量の多寡で、「多」「中」「少」の3グループに分け、
肝がん発症との関連を調べた。

期間中、約100人が肝がんになり、8割はB型かC型の肝炎ウイルスに
感染していたが、野菜摂取量「多」のグループは「少」に比べ、
肝がんの発症率が約40%低かった。
果物摂取量「多」のグループは、「少」に比べ、発症率が45%高い。

緑黄色野菜に多く含まれるカロテンは、肝がん予防作用が確認、
果物に多いビタミンCは肝がんの危険性を高める傾向。
ビタミンCには、肝炎の原因となる鉄分の吸収を助ける作用もあり、
発症率が高まるらしい。

「肝炎ウイルスに感染している人は、野菜を多く食べ、
ビタミンC摂取は控えた方がよい」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090310-OYT1T00860.htm

学士力(6)「学びの軌跡」で適性探る

(読売 3月12日)

学生が適性を探せるよう、大学が知恵を絞る。

「建築の勉強が楽しくない」、
「建築にもいろいろな分野がある。もう少し見直せば楽しくなるよ」
パソコンの画面に、そんな学生と教員の言葉が並ぶ。

北海道工業大では、1~3年生約2700人全員が年2回、
担当教員と面談して、目標の達成状況や新たな目標を話し合う機会がある。
面談前には、学生が「履修の目標」、「理解できない科目」など、
パソコン上の項目に自らの目標や悩みを書き込む。
教員は面談後、パソコンでアドバイスを入力、
こうしたやり取りが毎回蓄積されていく。
学びの軌跡を記録する「ポートフォリオ」(PF)。

「学生のキラッと光るところを伸ばしてやること」が同大のモットー。
入学後に、適性検査で性格の傾向や適した職業なども把握し、
個々に合った支援を心がける。

同大では、大勢の学生を相手に全体事務を行う担任とは別に、
PF担当の教員が付く。
約150人の教員が1人約30人ずつの学生を3年間、受け持つ。
パソコン上の過去の記録は、4年生になるとゼミの教員に引き継がれ、
就職活動にも活用。
入学から卒業まで、学生の一人ひとりに教員が目を配ることに。

PFを始めたのは2001年。
「20年前の学生は放っておいても大丈夫だったが、
10年前から大学に入っても目的意識がなく、留年や退学する学生が増えた。
手間をかけて導くことの大切さを実感している」と
同大企画室長の苫米地司教授(56)。

2年の留年率が最も高い。
受験時に考えていた教育内容と入学後の現実との隔たりによる意欲の喪失、
大学生活への戸惑い、学力不足、コミュニケーション能力の欠如――
そんな理由が考えられる。

今春卒業する4年の女子学生も、悩んだ1人だ。
建築学科のデザインコースに入ったが、
「授業が自分に合わないと感じた。入学前はよく分かっていなかった」

2年になった頃、PFで担当教員に相談すると、
同じ学科にあるエンジニアリングコースを勧められた。
2年の後期にコースを変えたところ、「答えの出ないデザインより、
構造計算など、学べば学ぶほど結果の出る授業が楽しかった」
大手ゼネコンへの就職が決まっているが、
「あのまま悩んでいたら、就職できたか分からない」と思う。

2年の留年率は、PFを始める前には12~15%もあった。
実施後は7~9%に下がり、「PFの成果だと思っている」と苫米地教授。
07年度は再び2けたに増えており、新たな対策が必要に。
4月からは、学生部、就職部、教務部の3部を統合した
学生サポートセンターを発足させ、情報を共有化するなど、支援体制を強化。

どうやって学生に意欲を持たせ、長所を伸ばしていくか?
大学の試行錯誤は続く。

◆ポートフォリオ

紙ばさみを意味する言葉。
経済用語では「資産の一覧表」、「分散投資の選択」などの意味で使われるが、
教育分野では学生が学習の過程や成果などを長期にわたって
収集したものを表す。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090312-OYT8T00306.htm

2009年3月18日水曜日

インタビュー・環境戦略を語る:キーコーヒー・柴田裕社長

(毎日 3月9日)

レギュラーコーヒー大手のキーコーヒーが、
インドネシアの直営農場内での森林保護など環境保全に取り組んでいる。
07年、安全で信頼性が高いコーヒーを認定する世界的なプログラム
「グッドインサイド」の認証を受けた。
柴田裕社長に環境への取り組みについて聞いた。

--環境保全に積極的に取り組みを始めたきっかけは?

◆コーヒーは、自然のめぐみ。
自然のお陰で事業が成り立っている。
コーヒーはほとんどを輸入に依存しており、
生産国の生態系を壊さないようにしなくてはならない。
インドネシアのスラウェシ島の高地で、直営農場を長年運営する中で、
環境保全の大切さが分かってきた。

--直営農場ではどのような取り組みをしていますか。

530ヘクタールの農場のうち、コーヒー栽培に使用しているのは約6割、
残りの4割は森林。
農場より、標高の低い地域で暮らす人々の水源を守るためで、
植林などで森林率を維持。
コーヒーはハチによる受粉、自然交配で実がなるため、
さまざまな植物が共存し、多様性が保たれている方が、
コーヒーの生育にもいいことが分かってきた。
減農薬や有機栽培も取り入れている。

農場は、1000~1200メートルの山岳地帯にあって、
がけくずれが起きやすいが、日本の建設会社の協力で、
農場内の道は、江戸時代の日本で用いられた伝統的な舗装技術を導入し、
コンクリートを使わないようにしている。

--現地化は進みましたか?

◆35年前に事業に着手、現地スタッフには親の代から農場で働く2世も多い。
若い日本人スタッフが教えられることも。
07年、環境保全や現地化の取り組みが認められ、
「グッドインサイド」の認証を取得できた。
投資や取引の選択基準になるなど、事業にとってもプラス面が多い。
今後は、協力農家にコーヒーの苗を無償提供し、
技術指導しながら栽培をお願いする「集買事業」を進めていく方針。

--再利用やリサイクルの取り組みは?

◆コーヒーの焙煎時、豆を包んでいる薄皮が大量にはがれ落ちる。
これを家畜用の敷きわらに提供。
玩具メーカーのバンダイと協力し、薄皮を樹脂に混ぜて玩具の材料にし、
昆虫フィギュアやオセロ、自社の記念品に加工。
コーヒー豆を入れる麻袋は、タイヤのクッション材や住宅の壁材に利用したり、
福祉作業所との協力で、コースターにして記念品として配っている。

本社では紙コップを使わず、社員は「マイカップ」を持参
普段使っているマイカップとおつまみを持ち寄って、
部署を超えた交流を進める「エコパーティー」も社内で実施。
フランクに話ができる雰囲気で、今後も続けていく考え。
==============
◇しばた・ゆたか

慶応大経卒、87年キーコーヒー入社。総合企画室課長として、
94年の上場プロジェクトに携わったのち、96年慶応大大学院MBA取得。
02年から社長。横浜市出身、45歳。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090309ddm008020036000c.html

米国人の3人に1人、8670万人が健保未加入と

(CNN 3月7日)

米国で、2007~08年、一時期でも健康保険に未加入だった
65歳未満の人数が8670万人に達していることが、
米消費者団体ファミリーズUSAが発表。
同時期の65歳未満人口は2億6231万人で、
約3人に1人に相当する33.1%が保険未加入状態。

保険未加入期間は、25.3%が24カ月の2年と長期間にわたり、
13─23カ月の19.5%と合わせ、未加入状態が1年超は44.8%。
6カ月以上の未加入状態は74.5%、
4人に3人が半年以上にわたって健保未加入。
未加入期間が1─2カ月と短期だったのは5.4%で、最少。

年代別に見ると、19─24歳の世代が49.5%とほぼ半数。
人種別に見ると、未加入者全体の49.8%が白人。
各人種の人口に対する割合で見直せば、ヒスパニックの55.1%、
黒人の40.3%が未加入。

ファミリーズUSAの共同設立者でもあるロン・ポラック常務理事は、
「これほど多くの人々が健保未加入状態にあるのは、
(疾病の)大流行よりも憂慮すべき事態だ」
オバマ政権は、加入者を増やす健康保険制度の見直しを公約の一つ。

http://www.cnn.co.jp/business/CNN200903050026.html

「抗うつ薬で攻撃性」副作用の疑い42件

(朝日 2009年3月7日)

抗うつ薬「パキシル」など4種類のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)
を服用した患者が、他人への攻撃性を増したり、激高したりするなど
副作用が疑われる症例が、08年秋までの4年半に計42件、
医薬品医療機器総合機構に報告、厚生労働省が調査を始めた。
製品の添付文書の改訂を指示することも検討。

パキシルのほか、ルボックス、デプロメール、ジェイゾロフトについて、
攻撃性、敵意や焦燥感を膨らませるといった報告。
07年以降、32件。
暴力を振るうなど、他人を傷つけるおそれのあるケースが42件中19件。
メーカー側に報告への見解を尋ね、専門家らの意見も聞いて検討。

SSRIは、日本で99年に承認。
脳内の神経細胞に情報を伝える神経伝達物質の働きを円滑にさせる効果があり、
副作用が少ないとしてうつ病の治療に広く使われている。

パキシルは、00年の販売開始以来の推定使用患者数が100万人超、
国内のSSRI市場で約5割のシェア。
製造販売元のグラクソ・スミスクライン社は、
「報告の集積状況を見て、国とも協議しながら対応を考えたい」
他3社も同様の姿勢。

薬害オンブズパースン会議は昨年5月、厚労省などに
SSRIの使用実態を調べるよう要望書。
水口真寿美事務局長は、「攻撃性が増すなどの副作用は海外でも報告があり、
日本での報告は氷山の一角」

専門家の中には、SSRIの副作用でなく、元々の病気や医師の処方との
関連を指摘する声も。
防衛医大の野村総一郎教授(精神科学)は、
「詳しいデータがそろっておらず、医学的評価は難しい。
治療効果が上がっている患者が多いことを踏まえ、慎重な対応が必要」

http://www.asahi.com/science/update/0307/TKY200903070002.html

学士力(5)学部横断 進化するゼミ

(読売 3月11日)

ゼミでの師弟関係が「考える力」を育てる。

「ゼミの武蔵」と異名をとる武蔵大学の演習室で、
朝から熱のこもった声が飛んでいた。
「論文に、『思う』『ようだ』はだめ。作文じゃない!」
経済学部の松島桂樹教授(60)が学生23人を相手に、
提出された論文の問題点を指摘。

1年生が対象の基礎ゼミ。
松島さんはグループごとの自由研究を通し、大学生としての基本――
自主的に学ぶ姿勢を身につけさせることを狙う。
学生は、それぞれのテーマに沿って調査や討論を重ね、
1月初め、ようやく論文提出にこぎ着けた。
プロ野球球団の経営について研究した男子学生(19)は、
「討論しながら論文を書くのは初めて。高校とは違う」と手応えを口にした。

別の演習室では、人文学部の福間具子准教授(34)が4年生十数人に、
「抽象概念の形成が未熟」と厳しい言葉を浴びせていた。
その裏には、巣立ちの時を迎えた教え子への愛情がある。
「うちの学生は素直でまじめだが、競争に慣れていない。
社会の厳しさを伝えたい」

同大のゼミは、前身・旧制武蔵高等学校の遺産。
1922年(大正11年)に始まり、49年に新制大学として開学した
現在の大学でも、1、2年は基礎ゼミ、3年生からは専門ゼミという
設計で引き継がれた。
学生自らが調べ、考える力を養う場として、緊密な師弟関係による
少人数教育は、最適と考えられた。
全体の学生数が約4000人という、大学の規模がそれを後押しし、
いつしか「ゼミの武蔵」と呼ばれるように。

しかし、現状に満足しているわけではない。
3年前に就任した平林和幸学長(60)は、改革の必要性を強調。
「ゼミは武蔵の宝物。だからこそ進化させる」

2年前に、人文・社会・経済の全学部横断ゼミを始めた。
都内の情報関連企業に、「中堅企業の採用活動を活発化させるための提案」
という課題を出してもらい、1年かけて、
ゼミの学生約50人が調査・分析を続けて、提言をまとめた。
その取り組みは、経済産業省の「社会人基礎力の育成・評価事業」にも採択。
横断ゼミは、学内でも「他学部生との討論や共同作業で視野が広がった」と
学生、教員双方から評価が高い。

伝統のゼミのてこ入れも進める。
従来、個々の教員に委ねられていた基礎ゼミでは、
論文の書き方すらわからないまま専門ゼミに上がる学生も現れ、
最低限、学ぶべきことを統一する基準を作り始めている。
専門ゼミも、経済学部だけが就職活動の早期化などを理由に、
3年までとなっているのを、4年も必修に切り替える。
いずれも、2年以内の実施を検討。

「昔と違って、今の学生は手をかけないと育たない。
ますますゼミの大切さが問われる時代になった」と平林学長。
自らの強みを前面に押し出す改革が、芽吹こうとしている。

◆私立は専任教員1人当たり学生21人

2008年度の学校基本調査によると、専任教員1人当たりの学生数は
私立21.49人、公立10.93人、国立10.22人。
前年度よりわずかに減った。
私立は10年前の25.95人に比べると、かなり手厚くなっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090311-OYT8T00296.htm

2009年3月17日火曜日

人間弾圧の象徴、復元を 」「ハンセン病重監房」

(2009年3月9日 共同通信社)

足元にある食事の差し入れ口から、骨と皮だけの手が突き出ていた。
それが右に左に泳ぐ。
しゃがんで声をかけた。「飯だよ。早く引っ込めて」、「あぁ?」
独房から男の声がして、一瞬、手の動きが止まった。
だが、また宙をさまよう。「早くしなよ。飯なんだから」、「わあぁ」
今度は奇声になった。
「放っておけッ」。後ろにいた看守が怒鳴る。
「飯なんかやらなくていい。次の房へ行け」

群馬県草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」にあった
患者の監禁施設、通称「重監房」。
入園者の鈴木幸次(85)は、太平洋戦争末期の数カ月間、食事を運んだ。
「翌日、給食係に行くと1人分減っていた。死んだんだよ」
60年以上過ぎても忘れない。「人間に対する扱いじゃねぇよ」

▽医療はせず

標高1、200メートルの草津高原。
温泉街から3キロほどの森の中、約360平方メートルの広さに
重監房の礎石が残る。正式名称は「特別病室」。

だが、医療が行われた形跡はない。
鈴木らの証言では、コンクリートで造られ、高さ約4メートル、
中には独居房が8つあった。
入り口から鉄の扉を4、5枚開けて、ようやく房にたどり着く。
通路には屋根がない。
冬の寒さは厳しく、氷点下20度近くまで下がり、積雪も深かった。
4畳半ほどの広さの房には、暖房も照明もなく、
縦約10センチ、横約80センチの素通しの窓が唯一の明かり。

食事は、午前8時半と午後2時半の2回。
地面から30センチの高さの差し入れ口を通して渡した。
じゃがいもや大根を混ぜて炊いた麦飯一膳ぐらいに、梅干しやたくあん。
器に盛るのではなく、木の箱にそのまま載せた。

重監房が使われたのは、1938-47年の9年間。
この間、92人が収監され、14人が"獄死"、8人が出所後に死亡。
その記録が正確かどうか。「そんな数じゃすまない」。鈴木は言下に否定。
収監者を外に出し、風呂に入れるのを見たことがある。
「おばけだった。やせすぎて浮いてくるから、係の人が湯に押し込んでいた」

▽責任問わず

ハンセン病患者を隔離する法律が制定されたのは、1907年。
医学的根拠はなかった。
患者の不満が高まり、逃走や反発が増えると、政府は弾圧を強め、
監禁などの懲戒権限を各所長に与えた。

新潟大医学部准教授の宮坂道夫(44)(医療倫理学)は、
「欧米諸国に並ぼうと、近代国家を目指した日本にとって、
ハンセン病は後進性の象徴だった

患者は"国辱"として隠ぺい、排除された。
「隔離ばかりか、強制労働、懲罰制度にも、
誰も疑問を抱かないほど人権意識がなかった」
近代国家をアピールするつもりで露呈したのは、皮肉にも後進性だった。

実家の農作業で一時療養所を抜け出したり、
賭けをして遊んだりした人たちが、全国の療養所から重監房に送られた。
「草津送りにするぞ」。
職員がこの一言を発すると、患者たちは何も言えなくなった。

重監房は戦後、楽泉園入園者が待遇改善を求めた
47年の"人権闘争"で使用中止に。
人道問題として国会で取り上げられ、調査もされたが、
設置や運営の責任が問われることはなかった。
53年に取り壊されたとされるが、確かな記録さえない。

▽続いた隔離

特効薬の投与が始まった戦後も、「公共の福祉」の名の下に隔離は続く。
開始から90年、強制隔離は96年に終止符を打った。
2001年、熊本地裁が隔離政策の違憲性を認める。
歴史は、ようやく正しく流れ始めた。

東京都東村山市の多磨全生園入園者自治会長佐川修(78)は、
「判決以降、社会が関心を持ち、回復者が自由に発言できる環境ができた」
「重監房は、日本のアウシュビッツだ」
楽泉園入園者自治会副会長のこだま・ゆうじ(76)は、
ナチス・ドイツによるユダヤ人強制収容所になぞらえ、
人権弾圧の象徴として復元を求めている。

宮坂は02年、新潟大に谺を招き講演会を開催、その主張に共鳴。
「栗生楽泉園・重監房の復元を求める会」を設立、
10万人以上の署名を集めて04年6月、厚生労働省に提出。
同省は、08年から復元に向けて調査を始めている。

公立の療養所が設立され、今年で100年。
55年に1万人を超えた入所者は全国15施設で約2700人に減り、
平均年齢は80歳近くなった。
4月、ハンセン病問題基本法が施行、療養所の一般開放も目前に迫る。

楽泉園の自治会は今、1000ページを超える「証言集」を編んでいる。
鈴木は、重監房の話を含め10時間以上、体験を証言。
人間として扱われず、死んでいった仲間たち。
「重監房の体験を、人権教育の基礎にしてほしい」
記憶を語る鈴木のほおを、涙が伝った。

※報道の使命

皮膚などが侵されるが、感染力は極めて弱く、致死性もないハンセン病。
日本は隔離を徹底するため、医療従事者が患者に懲罰を与えるという
海外に例のない制度。断種や堕胎も強要。
患者撲滅の政策が、10年前まで存続していたこと、
おかしさに、患者以外はほとんど気付かなかったことに驚き、がくぜんとした。

多くの国民が無関心に陥ったとき、権力の暴力は見過ごされ、正当化される。
「知る」ことは、権利ではなく市民の義務。
雪の降りしきる重監房の跡地で、報道の使命を自分に問いかけた。
目を閉じ、60年以上前の悲しい情景を思い浮かべる。
冷たい風が音を立てていた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/9/93345/

サッカー選手の成功のカギは体形、長身で細身な選手が有利と

(CNN 3月4日)

現代のサッカー選手として成功するカギは、長身で細身な体形だ、
とする調査結果を、英ウォルヴァーハンプトン大学のアラン・ネビル教授が
まとめ、専門誌ジャーナル・オブ・スポーツ・サイエンスで発表。
イングランド代表のピーター・クラウチやフランス代表のティエリ・アンリ、
オランダ代表だったルート・ファン・ニステルローイなどの選手が好例。

ネビル教授は、イングランドのサッカー協会が保管するデータを基に、
1970年代、80年代、90年代と、2003─04年の選手やクラブ成績などを調査。
調べた選手は800人以上、上位6位以内のクラブにいたかどうか、
シーズン終了時の成績や欧州で開催される選手権の出場傾向などを成功の基準。

成功しているクラブの選手は、そうではない選手と比べて、
より身長が高く、細身な体形で、さらに若いということが判明。
年齢については、活躍しているクラブの選手の平均年齢は、
そうでない選手と比べて、約2年若い傾向。
あまり成功していないクラブの選手の体形は、より筋肉質だった。

ネビル教授は、1980年代に成功した選手は、筋肉質な体形が多かった。
「より若く、より軽い選手は、より素早く動けることができる。
長身で細身な体形であれば、体重が重く身長が低い体形よりも、
より早く体の熱を発散できる」と、
成功しやすい体形が変わってきた理由を分析。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200903040024.html

学士力(4)予習・復習させる工夫

(読売 3月7日)

学生に勉強させるため、教員は奮闘を重ねる。

「○○君、今回はいいぞ。誤字に気を付けろ」、
「○さん、前回の成績が泣くよ。期待しているんだ」
大同工業大(名古屋市)の選択科目「教育社会学」の授業で、
曽我静男教授(61)が個々の学生に声をかけ、
学年末試験の答案用紙を手渡した。
後期の授業15回は終わった。
この日は答案を返すだけの“おまけ”で、午前9時からの1限目だが、
欠席者はいない。

答案用紙は、添削のペンで真っ赤。
受講生約70人の名前をよどみなく呼び、以前の成績や課題の提出状況、
最近の授業態度にも触れながらミスを指摘し、しかり、あるいは励ます。
満面の笑みもあれば、悔しそうにゆがむ顔もある。
「学生に勉強させるには、からくりが要る」と曽我さん。
その一つが、手渡しの答案返却。
「こんなに緊張する授業はほかにない。先生が名前を覚えていて、
いつ指されるかわからない」と1年の男子学生(19)。

毎回宿題も出し、次の授業で指名して15分間、発表。
誰が指名されるかわからない。
小テストも頻繁にあるため、予習・復習なしでは授業に出られない。

ただ厳しいだけではない。
課題図書を示す際は、持ちやすい新書サイズで価格は1000円以内。
入手できる書店も事前に確認し、所在地を配布。
学生が「売ってなかった」とあきらめてしまわないようにする気配り。

数々の工夫は、大学全体で10年前に始めた教育改革の過程で生まれた。
入試の偏差値は、40前後。
多くの学生が強い劣等感を抱き、勉強への拒否反応が強い。
欠席や遅刻、私語が目立ち、崩壊状態の授業も散見された。
2001年、新設の授業開発センター長に就いた曽我さんは、
いかに勉強をさせるかに知恵を絞った。

授業ごとに、学習到達目標を設定する一方、国内では当時ほとんど
例がなかったCAP制(単位の上限制)にも踏み切った
1年で履修できる授業数を、従来の学生が取っていた約半分の
40単位までに絞り、きちんと自習させることを狙った。

授業も変わらなくてはいけない。
全教員に、授業公開を義務づけた大学憲章を制定。
公開授業は、ビデオカメラでも撮影、いつでも見られるようにし、
意見を交換し合った。

この間の取り組みで、遅刻や欠席、私語は減ったが、
3年前から単位を取れない学生の割合は増えている。
それを裏付けるかのように、1週間当たりの平均自習時間も、
全科目平均は1時間弱にとどまっている。
曽我さんの授業では約3時間に伸びたが、全学的に広がらず、
「これまでの工夫だけでは、太刀打ちできない現実も依然ある」

新年度に「大同大学」へと名称変更するのを機に、
勉強せずにはいられない新たな環境整備が始まる。
中学生からの英数国理の復習を入学直後に始め、
15人程度のクラスを2人の教員で担当。

学ぶ意味を、学生自身に理解させる新たな闘いが始まる。

◆CAP制

1年間、または1学期間に履修登録できる単位の上限を設ける制度。
単位制度は、学生の自学自習を基本精神としているため、
一定の制限を設けることで、授業のための準備学習をさせることを狙う。
一昨年11月の調査では、全大学の64%を占める453大学が採用。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090307-OYT8T00287.htm

2009年3月16日月曜日

破損バットをリサイクル「かっとばし」 売れ行き好調

(毎日 3月3日)

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やプロ野球の
ペナントレース開幕を直前に控え、
松本市中央の生活雑貨店「知新堂」(横沢敏社長)で、
破損したバットをリサイクルした箸、「かっとばし」の売れ行きが好調。

セ・パ両リーグ12球団のマスコットが張り付けられ、
チームカラーに染められている。
知新堂によると、日本球界では年間約20万本の木製バットが消費、
焼却処分が一般的。

材料になるアオダモは、成長するのに約70年かかるが、
植林されておらず、輸入に頼らざるを得ないのが現状。

「かっとばし」は、箸の生産で有名な福井県小浜市製。
使い終わった木製バットを、「かっとばし」にリサイクルし、
売上金の一部をアオダモの森の保護育成のために寄付。

WBCや春のセンバツ高校野球を控え、横沢社長は、
「『かっとばし』で、野球人気が少しでも盛り上がり、
アオダモの木が育つよう購入してもらえたらうれしい」

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2009/03/20090303mog00m040061000c.html

学士力(3)入学前授業 学生に自信

(読売 3月6日)

入学前教育が、学習意欲や目的意識の育成でカギを握る。

2月中旬、キャンパス全体はひっそりとしているのに、
三つの教室だけが授業の熱気であふれていた。
一つ目の教室は英語。be動詞の使い方を復習。
隣の教室は数学。黒板には「速さ=距離/時間」の公式と「は・じ・き」という
語呂合わせが書かれている。
公式を思い出し、文章題を解こうとしている。
最後の教室は国語。約50人が作文用紙に筆記用具を走らせていた。

聖学院大学(上尾市)の入学前準備教育。
約150人の高校生が11日間、3教科を学ぶ。
「新生活への不安を抱えた入学直前期をどう過ごさせるかで、4年間が決まる」と、
発案者である同大広報センターの山下研一所長(54)は強調。

始めたのは8年前。
面接や論文などで選抜するAO入試の導入と引き換え。
学習意欲がない、アルファベットの順番もあやふやといった学生が
問題になっていただけに、AO導入でさらに授業がしにくくなるという
教員の不安を解消するため。

そこまでしてAOを進めたきっかけは、食堂で耳にした学生同士の会話。
雑誌の企画などを手がけてきた東大出身の山下さんが、
入試改革担当として着任してまもない頃。
「どうせ、この大学はだれでも入れるから」
自信がなければ、学習意欲や目的意識を持てるわけがない。
AOを通して、「君たちは大学に選ばれた学生だ」と伝え、
自信と誇りを持たせようと考えた。

入学前なのに、大学に通学させることにこだわるのも同じ理由。
担当者は、勉強嫌いの生徒とつきあい慣れている予備校の教員を集めた。

内容は、小中高校の復習にとどまらない。
知識をもとにした「考える力」の育成につながるよう、数学では、
数学的な考え方で暗号を解読したり、英語では雑誌を読んで内容について
話し合ったり。「偏差値でランク付けされ、傷ついた生徒が目立つ。
学習は、広い世界への入り口だと知ってほしい」と
英語担当の上島康道さん(39)は力をこめる。

昼休みは個人面談に充て、在学生が一人ひとりの生徒と話し、
高校と大学の違いや不安を聞き取る。
「私も入学前から支えてもらった。一緒に大学生活を楽しもうね、と伝えたい」と
面談を担当する人文学部3年の女子学生(21)。

準備教育は3月にも行う。
自由参加で、受講料は各2万円かかるが、計250人と入学者の約4割が参加。
個々の理解度や面談の記録は各学部に渡し、新生活への軟着陸も図る。
「学業成績の向上など、はっきりした成果は示せていない」(山下さん)が、
受講生らは、「友達や先輩と仲良くなれた」、
「大学生活が楽しみ」と口をそろえる。

一昨年度の卒業生約500人に、大学教育への満足度を100点満点で
尋ねたところ、平均点は約72点。3人に1人は、80点以上を付けた。
目に見えた成果が出るのも、そう遠くなさそうだ。

◆AO入試、7割が導入

AO入試は、2008年度で全大学の約7割を占める498大学が実施。
選抜方式の多くは、面接と高校からの調査書を含む書類の審査。
実施時期も一般入試よりかなり早いため、多くの大学が基礎学力の担保や
入学者の意欲の維持に頭を悩ませている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090306-OYT8T00300.htm

疑惑の論文200本発見 米大が盗作探知プログラム開発

(朝日 2009年3月6日)

米テキサス大のチームが、盗作が疑われる医学論文約200本を
見つけ出し、著者や編集者に見解を問いただした。
「盗作された側」は、「露骨な盗作」とあきれかえるが、
「盗作した側」は、「先に論文が出ていたとは知らなかった」と言い訳。
こうした盗作の実態が明らかになるのは珍しい。
6日付の米科学誌サイエンスが掲載。

チームは、米国立医学図書館が運営する医学・生命科学の
論文データベースを対象に、独自開発のプログラムを使って
表現の相似性を調べ、著者が異なっていた約9千本を抽出。
実際に論文を読んで、212本を「盗作の可能性がある」と判断。

著者や掲載紙の編集者と、連絡のとれた163本について
電子メールでアンケートを行った。

「盗作された側」の著者からは、「こんな露骨な盗作は初めて」、
「科学者として受け入れたくない」など厳しい反応が多い。
「盗作した側」は、「データ借用の許可をとらなかったことは謝罪したい」
などの釈明が目立った。

「なぜ私の名前があるのかわからない」、
「学生が書いた論文で研究室をやめてもらった」など、
かかわりを否定するコメントも。

83本の論文について、アンケートをきっかけに編集者が内部調査を実施、
46本は「取り下げ」の形で不備を認めたが、
半分近くでは何の対応もとられなかった。
アンケートは、匿名を条件にしており、日本人がかかわっているかは不明。

調査で使ったデータベースは、世界80カ国以上の約5200の
学術雑誌の論文を収録。

http://www.asahi.com/science/update/0305/TKY200903050322.html

2009年3月15日日曜日

ペレットストーブ人気 県内メーカー出荷急伸

(岩手日報 3月9日)

本県企業の今季のペレットストーブ出荷量が大幅に伸びた。
「脱化石燃料」の環境意識浸透や、燃油高などから
県外からの受注が拡大。
本県は、持続可能な社会形成に向けた木質バイオマス先進地として
全国から注目、今後の飛躍が期待。

花巻市のサンポットは、2008年度から県外向け販売を開始。
これまで500-600台を出荷、07年度の約3倍の出荷台数。
特に北海道からの需要が多く、300台以上を出荷。
ペレットは、産地で品質が異なり燃え方も違うため、
同社は「北海道型ペレットストーブ」を開発。
関西方面からの需要もあり、買い手は全国規模で広がっている。

釜石市の石村工業も好調。08年度1月末現在で、268台を出荷。
07年度同期200台以下で、最終的にも245台。
08年度の伸びが際立つ。
石村真一社長は、「9月あたりまで灯油が高く需要が伸びた。
エコ意識も高くなり、岩手以外の県も普及に熱心になってきた」

木質バイオマスは、本県が力を入れる分野。
地球温暖化防止対策としても、有効な燃料として注目。
燃料であるペレットの出荷量も増加。

住田町の気仙プレカットは、08年度はこれまで07年度より
約150トン多い約500トンを出荷。
泉田十太郎専務は、「07年度より3割程度多い注文になっているが、
まだまだ普及を図らなければならない」とし、今後も振興の必要性を説く。

木質バイオマスとは 木の枝や樹皮、廃材などを原料とする
生物資源・エネルギー。
木の粉を固めた「ペレット」、チップ、まき、木炭などのほか、
木材からのエタノール抽出など木を使った燃料を指す。
バーク堆肥で、農業利用、廃材利用などを含む場合も。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090309_8

iPS細胞、相次ぐ研究成果 再生医療に新たな展望

(2009年3月9日 毎日新聞社)

さまざまな細胞に分化する能力を持つ新しい万能細胞
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」が、ヒトの体細胞から作られて1年あまり。
使えなくなった組織や臓器の再生を目指す研究が脚光を浴び、
日本再生医療学会では、iPS細胞を使った成果が数多く報告。
難病治療の切り札と期待される再生医療の実現は、どこまで近づいたのか?

◇「がん化」防止が課題

「iPS細胞登場の衝撃から研究が進み、医療応用への展望が見えてきた」
iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大教授が座長を務めたシンポジウム。

学会では、期待を抱かせる成果が次々と発表。
中内啓光・東京大教授は、マウスの骨髄から取った血液のもとになる
細胞を使い、iPS細胞を作った。
将来は、採血だけで自分の治療に必要なiPS細胞を作ってもらえるかも。

岡野栄之・慶応大教授は、ヒトiPS細胞から作った神経細胞を使い、
脊髄損傷マウスの運動機能を回復させることに成功。
iPS細胞から再生医療に利用可能な細胞の作成に成功したとの報告も。

1)出血性の病気の治療に役立つ血小板
2)脊髄損傷やパーキンソン病の回復につながる神経細胞
3)心臓病治療に役立つ心筋細胞

「胚性幹細胞(ES細胞)」は、生命の萌芽とされる受精卵を壊して作るため、
倫理的に問題があるとの批判。
研究のスピードは上がらず、ヒトES細胞が作成されたのは98年だが、
世界初の臨床試験が米国で承認されたのは今年1月。
脊髄損傷患者を対象にした臨床試験が始まる見通し。

iPS細胞にはそうした問題点はなく、「目的の細胞に分化する能力は、
ES細胞と基本的に同じ。ES細胞の研究で培った技術は、iPS細胞にも利用できる」
研究の加速が期待でき、今後5-10年後には臨床研究に。

分化を終えた体細胞を、人工的に受精卵と同じ状態に戻したiPS細胞には
謎も多く、治療に使うことへの不安は大きい。
最も大きな障害は、作った細胞にがん化の恐れがあること。

山中教授が開発した方法では、がん遺伝子を含む四つの遺伝子や、
それらの運び役のレトロウイルスを使う。
いずれも、細胞のがん化を招くと指摘され、
がん遺伝子やレトロウイルスを使わない方法の研究が進んでいる。

山中教授は、「本当にレトロウイルスなし、がん遺伝子なしが最適か?」と
問題提起。マウスの実験では、がん遺伝子を使わないと
iPS細胞の分化能力が落ちるとのデータを紹介。
レトロウイルスを使わない方法でも、6割でがんが生じた。

ぬで島次郎・東京財団研究員(科学政策論)は、
iPS細胞研究には、生命発生の謎を解明するという意義がある。
性急に治療の実現を望むだけではなく、科学的な解明を求めていく
息の長い付き合いが必要」

◇難しい「規格化」

顕微鏡の向こうで、一つの細胞が拍動している。
バイオベンチャー「リプロセル」(東京)が、ヒトiPS細胞から作成した心筋細胞。
同社は、薬物の毒性試験を受託する事業を始める。
ヒトiPS細胞を使ったビジネスは、世界初。

横山周史社長は、「新薬開発の期間短縮に役立ってほしいが、
治療用の細胞販売が事業化されるかどうかは未知数だ」
再生医療を一般的な治療に広げる産業化には、
大量に生産する細胞などの品質を保証する標準化が必要。

製品の信頼性を担保する規格作りや品質管理が欠かせないが、
ここにも壁がある。
細胞の均質性を確保するのは難しい。
日本では、再生医療用の素材や細胞を「医薬品」として扱うか、
「医療機器」として扱うかも決まっていない。

国際標準化機構(ISO)の再生医療関連部会委員の堤定美・日本大特任教授は、
「承認基準に透明性を確保し、医療機器扱いにして規格化を進めるべき。
日本企業の技術を規格案として提出し、世界中の患者に貢献できる
産業化をけん引してほしい」と提言。
………………………………………………………………………
◇iPS細胞

大人の皮膚細胞など、体細胞に遺伝子などを導入することで、
受精卵のように体のさまざまな細胞になれる能力を再現した細胞。
京都大の山中伸弥教授らは06年、マウスの細胞で成功、
07年11月にはヒト細胞での成功を発表。
患者本人の細胞から作れるため、拒絶反応の起きない組織を作り、
難病治療に使える可能性がある。
病気の仕組みの解明や薬の探索にも役立つと期待。

◇iPS細胞から作られた主な細胞
▽ヒト
・血小板(東京大)
・網膜色素上皮細胞(理化学研究所)
・大脳立体構造(同)
・神経細胞(慶応大)
・心筋細胞(米ウィスコンシン大)
▽マウス
・軟骨(近畿大)
・血液細胞(京都大)
・骨格筋細胞(同)
・角膜上皮細胞(慶応大)
◇マウス実験で治療に成功した病気
・脊髄損傷(慶応大)
・鎌状赤血球貧血症(米マサチューセッツ工科大)
・パーキンソン病(同)
・血友病(米ネバダがん研究所)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/9/93252/

学士力(2)試験問題 学生が作る

(読売 3月5日)

学生自身に試験問題を考案させる。

「大学の責務とは何か」について、38人の学生が六つのグループに分かれ、
額を寄せ合って議論。
弘前大学での選択授業「国際社会を考える――日米大学の比較から見た
教育と研究の現状」。1年生を対象にした全学的な授業。

議論のテーマは、土持ゲーリー法一教授(64)が、事前に課題図書を示し、
授業は毎回、クイズ形式で始まる。
グループごとに解答を発表し、教授が解説を加えて、さらに議論を深めていく。

計6問が出て、全問正解グループはなし。
「残念!賞品はハワイ旅行だったのに」と残念がってみせる土持教授に、
学生たちは笑い声をあげながら、解説をヒントにして
新たな疑問を書き留めてもいく。
「全入時代の大学の責務は?」と書き込む学生を見つけ、
土持教授がささやいた。
「もしかしたら、これが期末試験の問題案になるのですよ」

自ら課題を見つけ、解決の道筋を探る「問題解決力」を育てようと、
この授業では、昨年度からこうした手法で試験の問題と解答、解説の案を
学生に提出。採用されれば、成績にも反映されるから、学生は必死。

授業の目的は、日米の大学教育の比較を通して、
なぜ大学に入ったかを1年生のうちに見つめ直させること。
「学生たちは、狙いを深く理解できるようになった」と土持教授は胸を張る。

改革のきっかけは近年、意欲も目的もなく入ってくる学生が増えていると感じた。
「与えられた課題をこなせばいいという、高校までの学習スタイルを
早く転換しなければ、4年間の学習は維持できない」
米国籍を持ち、日米の複数の大学で教えてきた経験から、
なおさら危機感を募らせた。

授業の効果を高める「仕掛け」は、ほかにもある。
「聞きっぱなし」を許さず、討論への積極参加や課題提出を課す。
毎回、数冊指定する課題図書は、図書館で借りるよう指示、
貸し出しスタンプを集めないと出席できなくする。
クイズ用紙には、コインで削る「スクラッチカード」を利用し、
現代っ子になじみやすい「遊び感覚」も忘れない。

試験問題の自作は、米国の理系大学の最高峰、
マサチューセッツ工科大学(MIT)が成果を上げていることを知り、
国内でいち早く取り入れた。
「MITでやっている」と言えば、学生にもがぜん意欲がわく。
「毎回大変だが、生まれて初めて勉強が面白いと思った」と
理工学部の1年生(19)は喜ぶ。

土持教授は、教員側にも「転換」を求めている。
自らが中心となった教員研修に、昨夏から学生数人を招き、
「大学の学び」をテーマに一緒に議論する場を設けた。
ホームページ上での「教育者総覧」の掲載を提案し、採用。
学生に向けたメッセージや教育に対する自分の熱意など、
6項目を各教員が発信することで、
教育姿勢の見直しや改善に役立てることを狙った。

授業の公開も表明。
教員は参観に訪れないが、土持教授は「一歩ずつですよ」とおうように構えている。

◆大学で重視される「問題解決力」

ベネッセコーポレーションが昨年9月、国公私立大学の677学部長に
「今後特に重視して育成していきたいスキル・能力」を聞いた結果、
58%が、自ら課題を見つけ、必要な情報を収集・分析・活用して解決する
「問題解決力」をトップ。「理・工・農」学部系は67%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090305-OYT8T00286.htm