2008年8月2日土曜日

IL-21とTGF-βはヒト17型TH細胞の分化に必要

(nature 2008年7月17日号Vol.454 No.7202 / P.350-352)

インターロイキン(IL)-17の分泌を特徴とするCD4+ T細胞(TH17)
胸腺由来の調節性FOXP3+ CD4細胞(nTreg)の最近の発見は、
TH1/TH2モデルでは容易に説明ができない免疫過程に対する
我々の理解に大きな影響を与えた。

TH17とnTreg細胞は、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患や
乾癬といったヒトの自己免疫疾患の発症機序に関与。

我々の最近のデータおよび他の研究によって、
トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)とIL-6がマウスの
ナイーブT細胞のTH17細胞への分化に重要であることが証明、
IL-23がTH17の表現型の安定化に重大な役割をもつ可能性が示唆。

TGF-βとIL-21の組み合わせにより、IL-6非存在下でも
マウスTH17細胞の分化誘導ができるという第二の経路も。

しかし、TGF-βとIL-6はヒトのTH17細胞を分化させることはできず、
TGF-βが実際にヒトTH17細胞の発生を抑制する可能性が示唆。
サイトカインIL-1β、IL-6とIL-23が、ヒト末梢血から単離した
短期系CD4+ T細胞株で、IL-17分泌を誘導できるが、
ヒトナイーブCD4細胞のTH17への分化に必要な因子は知られていない。

今回、IL-1βとIL-6はヒトのセントラル記憶CD4+ T細胞から
IL-17A分泌を誘導、TGF-βとIL-21はヒトのナイーブCD4+T細胞に
転写因子RORC2を発現させ、TH17細胞へと分化誘導するという
独自の働きをもつことを確認。

これらのデータは、ヒトの炎症性疾患でのTH17細胞という、
この新しい集団の研究を可能にする。

[原文]
IL-21 and TGF-βare required for differentiation of human TH17 cells
Li Yang, David E. Anderson, Clare Baecher-Allan, William D. Hastings,
Estelle Bettelli, Mohamed Oukka, Vijay K. Kuchroo, David A. Hafler

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200807/nature/7202/02.html

メタボ健診:自治体の6割「見直し」1割「廃止」求める

(毎日 7月27日)

今年4月から始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)について、
6割の自治体が見直しを求め、1割は廃止すべきと考えていることが、
全国に806ある市と区を対象にした調査で分かった。

費用は、国と県が3分の1を補助する仕組みだが、
国の補助単価が実費に届かない自治体が8割近くある。

がんなど他の検診への補助を削減する自治体もあり、
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)以外の対策が
後退し始めた実情も浮かんだ。
調査は、全国783市と東京23区に実施。551市区(68.4%)が回答。
「特定健診を、現在のかたちのまま継続すべきだと思うか」との問いに、
347市区(63%)が「問題点を見直すべきだ」、
60市(11%)は「制度自体を廃止すべきだ」。
「現行制度のまま継続すべきだ」は62市区(11%)。

見直すべき理由は、
▽メタボに限定した検査で他の病気を見落とす可能性がある、
▽制度が複雑で受診率が下がる、
▽医療費抑制につながるか疑問。

国は昨年末、国、県の補助額を決める補助単価案として、
集団健診2880円(課税世帯の65歳未満の場合、1人あたり)、
委託先医療機関などで個人が受診する個別健診5300円(同)と示した。

この単価より実費の方が高いと答えた市区が、
集団健診を実施する市区の76%(335市区)、
個別健診では79%(397市区)、自治体の持ち出しになる例が目立つ。
今年度から保健事業の縮小・廃止をしたと答えたのは、293市区(53%)。
▽がん検診受診者への補助削減、
▽人間ドック受診者への補助削減、
▽メタボ健診の対象外の40歳未満の健診の縮小。

メタボ健診は、受診率などの目標を達成できない場合、
ペナルティーとして後期高齢者医療制度への拠出金が増額されるが、
「達成可能」は41市区(7%)のみ。
「分からない」408市区(74%)、「不可能」97市区(18%)。
不可能と答えた市区に対応を尋ねると(複数回答可)、
「保険料を上げる」が7割超。
◆特定健診・保健指導(メタボ健診)

腹部に内臓脂肪のたまったメタボリックシンドロームの人は、
脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を起こしやすいという学説に基づき、
今年度から導入された健診制度。
背景に、生活習慣の改善を指導することによって
生活習慣病の患者を減らし、医療費削減を目指そうという国の方針。
医療保険の保険者に実施が義務付けられ、健診実施率、指導実施率、
メタボ該当者の改善率が目標を下回ると、
保険者に財政的なペナルティーが課される。

目指せF1ドライバー 奥州市出身の三浦さん

(岩手日報 7月28日)

奥州市出身のレーサー三浦和樹さん(19)=名古屋外国語大2年=は、
国内の若手ドライバー育成のフォーミュラ・チャレンジ・ジャパン(FCJ)
今シーズンから参戦している。

目指すは、世界最高峰のF1。
大学生活を送りながら、あこがれの舞台へと突き進んでいる。

レースでの最高速度は、時速200キロを超える。
三浦さんは、FCJ第6戦で3位となり、初の表彰台に立った。
第10戦終了時点のポイントは、6位と好調。

幼いころから車が好きで、中学校3年のときに「F1ドライバーになる」と決心。
佐藤琢磨選手にあこがれた。

両親から出された条件は、まず一関一高に合格すること。
2004年に同校に合格し、翌年
「鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ」(SRS―F)
ベーシックを受講。
月1、2度片道6時間かけて、鈴鹿に通った。

06年に、F1ドライバーの中嶋一貴選手の弟・大祐選手らと走り、
奨学金の資格を獲得。
07年は、SRS―Fベーシックを受講してFCJに参戦。

レース活動と学業の両立は厳しいが、
「今の努力が将来必ず自分に返ってくると思う」と前向き。
海外でのレースを見据えて、英語の勉強も欠かさない。

次戦は8月9、10日に栃木県のツインリンクもてぎで開催。
初表彰台を経験した相性の良いコース。
「レース経験を積んで、スタートが得意になってきた。
両親が、初めてFCJのレースを見に来てくれる。
誰よりも速く走って優勝したい」と念願のチェッカーフラッグを狙う。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080728_16

かすむ北京…大気汚染対策も効果上がらず

(読売 7月26日)

開幕まで2週間を切った北京五輪に向けて、
市内では準備が大詰めを迎えた。

各所で飾り付けが進み、27日には選手村が開村するが、
参加選手が懸念して課題となった大気汚染への対策は
効果が上がっていない。
20日から始まった厳しい交通規制などにもかかわらず、
この数日は汚染度が思うように下がらないのが現状。

天安門広場では、五輪をテーマにした特設花壇の準備が進められ、
巨大な北京五輪エンブレムも姿を現した。
しかし、こうした飾り付けも文字通りかすんで見える。
大気汚染が原因とされる独特のもやによるものだ。
乗用車の半数以上を通行禁止とする規制、一部工場の操業停止などの
空気浄化策を実施する北京市。

中国が独自に採用する「空気汚染指数」では、
0~100までは「空気がきれいな日」と評価され、
「100以下」の達成が目標。

規制施行当初の20~23日は55、65、67、89だったが、
24日は113、25日も109で「軽微な汚染」。
市環境保護局の杜少中副局長は、
「雨や風が少ないため」と気象条件を原因に挙げ、
「一層の努力も必要」と、市民生活を犠牲にした対策の
効果が上がらないことに焦りものぞかせた。

北京市は、8月8日の開会式に向け、事前に人工的に雨を降らせて
雨雲を消す準備も進めているが、この「人工消雨」が
大気中の汚染物質を洗い流す効果も期待。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20080728-OYT1T00412.htm

理科再興(14)高校教員に最新の知

(読売 7月25日)

最先端の科学知識を吸収して授業を作ろうと、高校教員が勉強に励む。

東京・飯田橋の区政会館に、首都大学東京の生涯教育施設がある。
4月からほぼ週1回、高校教員や教員を目指す大学院生向けに、
生物の授業技術を学ぶ講座が開かれた。

講座のテーマは「DNAと遺伝」、12人が参加。
受講者による模擬授業と討論の後、同大生命科学専攻長の
松浦克美教授(56)がプリントを配る。
「突然変異とは何か」、「老化の原因は何か」など、
生徒から出ることを想定した疑問や論点が約30項目並ぶ。

「この中の何を知りたいか。自由に議論、質問して」。
松浦教授の呼びかけに、進化が話題になった。
「小進化と大進化の違いを、高校生にどう教えるか。
本によっても定義が違い、戸惑っています」

松浦教授は、早ければ数世代で変化が現れる小進化、
化石などで観察できる大進化を区別する考えが、
ゲノム研究の進展に伴い重要でなくなり、
両者の区別を大学で教える機会は減っていると説明。

「今は用語の区別より、進化の出発点に突然変異があり、
その繰り返しによって進化が進む筋道を理解させる方が大事」

1時間半の講座の中で質問や討論を求めるのは、
学校でも教科書を教えるだけでなく、質問や意見を引き出す
授業をしてほしいと考えるから。
教員が生徒の疑問に答えるには、最先端の生物学を自ら学ぶ必要がある。
「新聞や科学誌を読むだけでは、最新の情報を教えるのは難しい。
第一線の研究者を交えて、生物学の議論ができるのがいい」と
受講生の一人、東京都立新宿山吹高校の南洋史教諭(35)。

同大は、高校教員向けに、生物学の知識や技術、授業法などを教える
公開講座を、夏休みなどの単発も含めて、9講座開く。
都内の高校教員研究会の依頼で、2001年に最初の講座を開いた。

松浦教授は、03年から2年間、都立大付属高校の校長を務め、
高校教員が、最新の生物学を学ぶ時間や余裕がないことを痛感。
日進月歩の生物学は、高校で教えていた常識が覆ってしまうことがあり、
生物の教科書の内容は、あまり変化がなく、
高校教員も最新の知識から取り残されているのが現状。

生徒は、大学に入ると知識を学ぶだけでなく、自分で疑問点を見つけ、
実験方法を工夫し、研究成果を出す姿勢が問われる。
高校教員の教育は、生徒の高校から大学への学習を、
スムーズに橋渡しすることにも直結する。

「科学技術者の養成と、科学リテラシーの定着の双方を実現するには、
最新の科学知識を元に、生徒に科学の本質の理解と、
科学的な思考力を養わせる、力のある理科教員が必要」

同大は、これまでの講座で培ってきたカリキュラムを、
質の高い理科教員を育てる研修に応用することも検討。
大学発の生物学の授業を変える試みが、高校の理科教育に風穴を開けるか。
その成果に注目が集まりそう。

◆科学リテラシー

自然や科学に対する適切な知識を持ち、論理の積み重ねである
科学の考え方を理解し、外部から科学的な情報を与えられた時に、
知識を活用して合理的な判断や行動ができる能力。
こうした問題解決の能力を一般国民に広げ、共有する意味でも使われる。
日本の子供は科学知識は多いが、
科学リテラシーが弱いことが指摘。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080725-OYT8T00284.htm

2008年8月1日金曜日

男性の筋力が全死亡率および癌死亡率の低下と相関

(Medscape 7月15日)

『BMJ』Online First号に報告された前方視的コホート研究の結果、
心肺系の健康状態に関して補正した条件でも、
男性の筋力は全死亡率および癌死亡率と相関関係を示す。

カロリンスカ研究所のJonatan R. Ruizらは、
「レジスタンス運動トレーニング(無酸素運動)は、筋力増強効果があり、
主要な保健機関が健康および体力の向上を目的として処方。
心肺系の健康状態から、幅広い年齢層の成人の疾患および
死亡リスク全般に関し、強力かつ独立した予後情報が得られる。
筋力が全死亡率と逆相関関係にあることは、
複数の前方視的研究から明らか」

縦断的研究の目的は、男性の筋力と、全死亡率、心血管系疾患による
死亡率および癌死亡率の関係を前方視的に検討すること。
20-80歳の男性8762例を対象、2003年までの全死亡率を観測。
筋力は、レッグプレスおよびベンチプレスの1回反復可能な最大負荷を
組み合わせた変数により定量化。
参加者は、年齢別に3群(高筋力群、中筋力群、低筋力群)に分けた。
心肺系の健康状態は、トレッドミル最大運動負荷試験により測定。

追跡期間(平均18.9年)中に死亡した男性は503例、
うち145例の死因は心血管系疾患、199例の死因は癌。
低筋力群、中筋力群、高筋力群における年齢補正死亡率
(10,000人-年あたりの死亡数)は、全死亡率は38.9、25.9、26.6、
心血管系疾患による死亡率は12.1、7.6、6.6、癌死亡率は6.1、4.9、4.2。

年齢、身体活動度、喫煙、飲酒、体格指数、ベースライン時の医学的状態、
心血管系疾患の家族歴に関して補正したハザード比(HR)を求めた。
全死亡率の補正HRは、低筋力群、中筋力群、高筋力群が1.0、0.72、0.77。
心血管系疾患による死亡率の補正HRは、それぞれ1.0、0.74、0.71。
癌死亡率の補正HRは、1.0、0.72、0.68。

心肺系の健康状態に関して補正したところ、
筋力と全死亡率および癌死亡率の相関パターンに変化がなかった一方、
筋力と心血管系疾患による死亡率の相関性は低下。

「男性の筋力は、心肺系の健康状態および他の交絡因子に補正した条件で、
全死亡率、癌死亡率と逆相関関係を示し、
この関係は他の因子の影響を受けない」。

研究の限界は、教育水準が高く社会経済的地位が中から高の
白人男性以外に一般化できないこと、
使用薬物および食事に関する詳細な情報がないため、
残りの交絡因子により結果にバイアスが生じた可能性、
参加者の癌家族歴が報告されず、自己選択バイアスが示唆される。

「上半身および下半身の主要筋肉群の定期的な
レジスタンス運動トレーニング(週2-3回)を推進することにより、
男性の全死亡率を低下できる可能性がある。
レジスタンス運動トレーニングは、有酸素運動の代わりに行うのでなく、
有酸素運動に追加して行うべき」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77645

欠陥品を連携して廃棄 細胞内に巧みな仕組み

(共同通信社 2008年7月25日)

細胞内で誤って合成された欠陥タンパク質を選別し、
分解・廃棄する仕組みを京都大の永田和宏教授らのチームが解明し、
25日付の米科学誌サイエンス電子版に発表。

小胞体と呼ばれる細胞内器官で、
3種類の酵素などが連携して働き、巧みに品質管理していた。

遺伝子異常などによって生じる欠陥タンパクが神経に蓄積すると、
アルツハイマー病やプリオン病などが起きる。

永田教授は、「将来、薬などでこの仕組みを活性化できるようになれば、
新たな治療法につながる可能性がある」。

チームはこれまで、欠陥タンパクをチェックするEDEMという物質を特定。
今回、新たに酵素として働くERdj5など2種類の物質を発見。
これらは、欠陥タンパクの凝集を解きほぐして1本の細い分子にし、
小胞体の外に運び出して廃棄処分するなどの役割を分担。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77620

子供の運動量、10代前半に激減 テレビゲームの影響も

(CNN 7月19日)

全米各地で、9~15歳までの子どもの運動量を調べた研究によると、
12歳前後を境に、運動不足の傾向が急激に強まることが明らかに。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の小児医学専門家、
フィリップ・ネーダー博士らが、米医師会雑誌(JAMA)最新号に発表。

調査は、2000~06年、全米の子ども1000人を対象。
ベルト取り付け型の加速度計を使って、平日と週末の活動レベルを計測。

その結果、ほぼ毎日2─3時間運動している子どもの割合は、
9歳で9割を超えたのに対し、15歳では3%未満に激減。

米当局が出している指針によると、この年齢層の子どもは毎日、
サイクリングや水泳、ジョギングなど
「中度から強度の運動」を最低1時間続けることが望ましい。

その基準に達している子どもは、12歳までのグループで半数を超え、
15歳になると平日で3割程度、週末には約17%にとどまる。
1日に中・強度の運動をする時間は、9歳が平均3時間、
15歳では1時間に満たなかった。

子どもたちがテレビゲームやインターネット、DVDなどに
多くの時間を費やすようになるのは、ちょうどこの年代。

パソコンやテレビ画面の前で過ごす時間が増える分、
戸外で活動する機会が減っている。
学校で、体育の授業や休み時間が削られていることも、
影響を及ぼしている可能性。

ネーダー博士らは、「子どもの運動量は、成長とともにやや減少するが、
この激減ぶりには驚いた。
運動不足の傾向がこのまま続くと、大人になって心臓病や肥満、
高血圧、糖尿病にかかる恐れ。
家庭でも危機感を持って、子どもにバランスの取れた生活を促すべき」

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200807190005.html

理科再興(13)生活に直結 地学の魅力

(読売 7月24日)

高校の地学教育が瀬戸際に立っている。
「石灰岩が一番」、「かんらん岩の青や紫もいい!」
大阪府岸和田市の府立岸和田高校で、地学の授業。
薄く切った岩石の標本を、偏光顕微鏡でのぞいた2年生は、
ステンドグラスのような美しい光の造形に、一目で夢中に。

寺戸真教諭(51)は、「岩石には、性質が違う鉱物の結晶が集まっている。
偏光顕微鏡で見えた色から、鉱物の種類や組み合わせがわかり、
石の種類を調べることができる。
みなさんも、石の魅力に気づいてください」と授業を締めた。

地学研究に定評のある大阪市立大がある大阪は、
伝統的に学校の地学教育も強く、教材研究も盛ん。
徳島出身の寺戸教諭も、大阪で地学教員に採用されて25年。

進路指導部長でもある寺戸教諭は、不本意ながら1年生の進路指導で、
理系の生徒は地学を選ばないように指導。
地学の試験が必要な理系の大学が少なく、大学入試センター試験は
物理と地学が同じ時間で、地学研究を志す生徒にもリスクが高い。
現2、3年で地学を選択した145人全員が、文系志望。

宇宙、気象、地震、火山、環境、防災など、科学ニュースの多くに、
地学が深くかかわっている。
「天変地異に対応し、生き抜く力を学ぶためにも、
高校生全員が知って欲しい学問なのに」と残念な思いでいっぱい。

現在、高校で働く地学教員の多くが50歳代で、高齢化が進む。
地学教員を募集する教育委員会が、ほとんどない。
高度な受験指導をする場面が少なく、天文は物理、環境は化学や生物など、
他の教科と重なる部分が多く、他の専門教員でも指導できると考えられがち。
地学の魅力や意義を伝えられる教員が少なく、
理系で有能な生徒が選択しない悪循環が、地学教育の先細りに。

東京都港区の私立麻布高校の山賀進教諭(58)は、
地学の授業のテーマを2日前に発生した「岩手・宮城内陸地震」に変更、
生徒を驚かせた。
気象庁の発表や新聞記事、東大地震研の分析などの情報を
パソコンのスライドにまとめ、緊急地震速報の課題まで踏み込む。

現在進行形の話題を授業に組み入れられるのは、地学教育の魅力。
ただ、研究が進んでも、「なぜ今、発生したか」などの
正解にたどりつく保証はない。
物理や化学の教員が、正解が見えにくい地学の授業を苦手と考える原因。

「物理や化学は、自然現象の一部を切り取って、
原因と結果の関係を単純化して追求する学問。
地学は対照的に、宇宙誕生からの時間、空間、自然を
全体的に鳥観する複雑系の学問。
地学教員の役割の一つは、今の科学で解明できないことがたくさんある、
と教えること」(山賀教諭)

生活に直結し、常に幅広い視点からの考察を求める地学。
学習意義が増えることこそあれ、減ることはないはずだ。

◆高校地学の実態

大阪府高等学校地学教育研究会が2004年に行った調査では、
府内の公立高で回答した115校のうち、地学を開講していたのは63%。
地学の内容を含む理科総合Bの開講は67%、
うち地学教員が地学分野を教えるのは62%。
会員も大半が50代以上。
同会では、「5~10年後には、この数値すら維持できないかもしれない」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080724-OYT8T00272.htm

複合・小林選手ら支援 「冬季五輪育てる会」

(岩手日報 7月28日)

本県からの冬季五輪選手輩出を目指す
冬季オリンピック選手を育てる会」(事務局・八幡平市スキー連盟)は、
複合の小林潤志郎選手(盛岡中央高)ら日本代表海外派遣選手への
遠征費補助として、30万円を支援するなど初年度の事業計画を決めた。

初総会は、八幡平市田頭の西根地区市民センターで会員30人が出席、
会長に県スキー連盟会長の鈴木俊一衆院議員を選んだ。

事業計画は、2007―08年シーズン日本代表として海外大会に参加した
複合の小林選手のほか、畠山長太選手(早大)
バイアスロンの八幡いつか選手(冬戦教)に30万円、
強化指定されたジャンプの遠藤悠介選手(清光社)、
遠藤秀治選手(日大)、アルペンの新里尚子選手(平舘高)
に5万円を支援。

同会は八幡平市内のスキー、商工観光団体、県スキー連盟などを中心に
3月に立ち上げ、県内で会員を募ってきた。
現在の会員は個人、企業、団体の185人。
全日本スキー連盟(SAJ)強化指定選手を対象に、
会費から海外遠征費などで個人負担の大きい選手を支援。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080728_5

2008年7月31日木曜日

過酷な重圧で心の病に 期待のエリート選手たち 連載企画「五輪科学ノート」

(共同通信社 2008年7月25日)

五輪での活躍が期待されるエリート選手たち。
主に10-20代の若者たちにのしかかる重圧は、想像以上に過酷。
日本のトップ選手でも、心身のバランスを崩して心の病気に
なってしまう例は、実は珍しくない。

日本オリンピック委員会(JOC)の強化指定選手が受診する、
国立スポーツ科学センター(東京)のクリニック。
5年前から非常勤で心療内科を担当する待鳥浩司医師(精神医学)は、
「周囲の目を気にしたり、海外遠征で時間がとれなかったりして
受診できない人が多い」。

突然の不安やパニックに襲われる不安障害、過食と嘔吐を繰り返す
摂食障害、うつ状態が現れる気分障害を訴える選手が多い。
「スタイルや体重の維持が厳しく求められる競技では、
特に女性選手で摂食障害が目立ちます」。

だが、日常的に吐き続けている選手たちには、
「嘔吐を繰り返すのは、病気ではない」という意識もみられ、
受診を妨げている。

こうした心の病気は、集団で行う球技では比較的少なく、
低年齢から始める個人競技で多い傾向。

原因はさまざま。
直接のきっかけは成績不振や失敗だが、
親や指導者との極端な密着や閉鎖的な関係に悩む選手も多く、
中には暴力や虐待が背景に潜んでいる例も。

しかし、指導者に見捨てられたり競技を辞めさせられたりすることを
恐れて受診せず、症状の悪化を招いてしまうケースも少なくない。
「精神疾患も風邪も病気。病院にかかるのは当然のことだ。
周囲の理解が得られないと、治療はうまくいかない」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77639

出産を力に「ママでも金」 妊娠中の運動継続が鍵 連載企画「五輪科学ノート」

(共同通信社 2008年7月25日)

女性の体に劇的変化をもたらす妊娠と出産。
最近、この命がけの一大事を乗り越えて、
世界のトップに返り咲く選手が目立つ。

「ママでも金」に挑む柔道の谷亮子選手はもちろん、
海外に目を向ければ、マラソンのポーラ・ラドクリフ選手(英国)や
ハードルのジャナ・ローリンソン選手(オーストラリア)など。

復帰の鍵は、いかに基礎体力や技術レベルを落とさずに
妊娠期間を過ごすか。彼女たちは、必ず戻るという強い意志で、
妊娠中も運動を継続していたはずだ」と、
妊婦スポーツに詳しい日本医大の中井章人教授(産婦人科学)は指摘。

妊娠期間は40週。
さらに出産後、体がほぼ元通りになるまで6週間かかる。
完全に休めば復帰は難しいが、中井さんは
異常がなければ、妊娠中も普段の60-70%の運動ができる。
産む直前まで続けて構わない。
出産後は徐々にペースを上げ、6週間後は100%も可能」。

ただし、胎児のために有酸素の全身運動に限り、
腹部の圧迫や転倒を防ぐなどの十分な安全管理は不可欠。

大きいのは、精神面への影響。
「忍耐強くなった」、「幸福感が後押しになった」。
復帰したトップ選手の多くが、競技へのプラス作用を口にする。

陸上選手として、出産後も走り続けた女子美大の
石田良恵名誉教授(運動生理学)は、
「競技より出産の方がつらい。
乗り越えれば自信がつき、一段と強くなる。
子どものために頑張る母の強さは、動物の本能」。

昼夜問わずの授乳や家事の負担。復帰後の道のりも険しい。
だが石田さんは期待を込めて言う。
「今は練習でも育児でも、周囲のサポート態勢が整ってきた。
出産後の選手が強さを発揮できる可能性は増している」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77638

理系の人材育成は停滞と 米実業界が警鐘

(CNN 7月21日)

全米の大学で、2015年までに理学部、工学部など理系学部の卒業生を
倍増させようとの目標を掲げる米実業界のグループが、
「理系の人材の数は伸び悩んでいる」とする報告書をまとめ、
このままでは米企業の競争力低下につながると警告。
グループは目標達成に向け、公的資金による補助などを求めている。

「タッピング・アメリカズ・ポテンシャル(米国の可能性を開拓しよう)」と
名付けられたこのグループは、米国商工会議所、全米防衛産業協会など
実業界の16団体で構成。

05年に、理系大卒者の倍増を目指して結成され、
「年間40万人の新卒者が必要」と主張。
米国内の理系の新卒者は過去数年間、22万5000人前後にとどまり、
増加する兆しがみられない。

議会では昨年、科学技術分野の研究、教育を支援する法案が
超党派で可決されたものの、十分な資金提供にはつながっていない。
理系の人材育成については、米大手企業CEO(最高経営責任者)らによる
経済団体、ビジネスラウンドテーブルも、必要性を強く主張。

同団体の教育、労働力部門を率いるスーザン・トレイマン氏は、
「技術者1人を育てるのに、幼稚園から大学卒業まで17年かかる。

旧ソ連の人工衛星打ち上げに、全米が衝撃を受けた
『スプートニク・ショック』のような事態になってからでは遅過ぎる」。

こうした主張に対し、「理系の人材が求められているのが事実なら、
公的補助などなくても、学生は自然に理系の道に集まってくる」との批判も。

経営コンサルティング大手、アクセンチュアのウィリアム・グリーン
会長兼CEOは、「世界には、官民一体となって、企業の競争力強化に向けた
人材育成に集中している国がたくさんある。
わが社を含め、どの企業でも、採用した人材の訓練には力を尽くしている。
だが、人材自体の不足を解決するには、連邦政府の力が必要

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200807210003.html

「外国人に聞いてはいけない」8項目、北京五輪前に指南

(CNN 7月24日)

給料のことを尋ねてはいけない。年齢を聞いてもいけない。
恋愛についての質問もご法度――。

北京五輪で外国から訪れる観光客と接する際に、
「聞いてはいけない」8項目を列挙したマナーポスターが、
北京中心部に張り出された。

ポスターは、地元自治体が作成したもので、住民向けに中国語で書かれ、
北京五輪とパラリンピックで海外から訪れる観光客と接する際の
マナーを説いている。

聞いてはいけないプライベートな事項として、年齢、給料、恋愛、健康、
収入、政治的立場、宗教、個人的体験の8項目。

北京市の広報は、「初対面の人にこのような質問をするのは、
中国では普通だが、外国人は拒否反応を示す。
地元住民を啓発し、社交上もっと神経を配るようになってもらいたい」

障害者と接する際の注意事項を記したポスターも。
視覚障害者との会話で、「あっちです」、「そっちです」などの表現を避け、
身体障害者に「後ろにあります」などと言ってはいけない。
「あなたは素晴らしい」、「すごいですね」などの言葉を掛けるよう奨励。

中国政府や北京五輪委員会は、これまでにも地元住民のマナー向上
目指し、列に並んで待つ、たんを吐かない、乱暴な運転はしないなどの
啓発キャンペーンを展開。

http://www.cnn.co.jp/world/CNN200807240011.html

理科再興(12)興味わくテーマ提供

(読売 7月23日)

高校生に、科学の心を育てようと教員が奮闘する。

マイナス196度の液体窒素の煙の上で、
ボタン電池のような円形磁石が、震えるように浮かび上がる。
日が完全に暮れた高校の教室で、たった2人の生徒が、
息をのむように磁石を見つめた。

大阪府立成城高校の3部は、午後6時過ぎに授業が始まる定時制。
総合学科2、3年の「電気概論」の授業で、横川敬一教諭(45)が、
超伝導の実験を実演。
「君たちが授業で取ったデータを使って、論文を学会に発表。
論文に成城高校・定時制って載るからな」。
横川教諭がはっぱを掛けると、2人は、照れたような笑顔を見せた。

横川教諭は2000年、大阪市立大学3年に編入学。
現在は、大学院で電子物性学を学び、超伝導などの研究も続ける。

定時制には、「自分は学力がない」、「先生も授業の手を抜く」と
初めから思いこんでいる生徒もいる。
そんな姿に悔しさを感じ、「最先端の研究に触れさせ、
達成感のある授業がしたい」と、昨年から超伝導を授業に組み入れた。

今年、電気概論を選択した生徒は4人。
仕事や家庭の事情もあり、全員そろわない日がほとんど。
それでも生徒は真剣で、鉛筆の芯で電気抵抗を測る訓練をしながら、
超伝導の仕組みやデータの取り方、用語を覚えていく。

授業を受ける近藤悠輝君(17)は、
「内容は難しいけど、ゆっくり考えれば理解できる。
将来、こんな仕事をしてみたい」。
授業は昨年の実績が評価され、科学技術振興機構の
サイエンス・パートナーシップ・プロジェクトに選ばれた。

高度な実験も、大学の支援があってこそ出来る。
横川教諭を指導する大阪市大の村田恵三教授(58)は、
「熱い思いを持つ先生が指導するのに、協力は惜しまない。
定時制であることは関係ない」。

福井県鯖江市の県立丹南高校は、月1回のペースで昼休みに
物理、化学、生物の科学実験をする講座
「ランチタイムサイエンス」を始めて4年。
実験場所は、パンなどを買いに来る生徒が足を止めやすい
購買部近くの廊下。

海の生物がテーマ。
西出和彦教諭(47)が、近くの漁協の協力で採集したウニやヒトデ、
ウミウシなどを水槽に入れ、生徒を待ち受ける。

昼休みは40分。実験は正味30分。
ウニの口から塩化カリウム溶液を入れて放精を促し、
顕微鏡の画像をモニターに映す。
実験に積極的な生徒、水槽の生物をつかんで楽しむ生徒、
物珍しそうに見守る生徒。
接し方は様々だが、西出教諭はそれで十分と考える。

「地方の学校は、科学館や自然観察会などの仕掛けが少ない。
体験しようとしない子は、都会よりも体験が少ないくらい。
生徒の日常会話に、少しでも昼休みの実験講座や科学の話題が上ればいい」

高校は多くの生徒にとって、学校で科学を学ぶ最後の機会。
科学を身近に感じる心を育てる知恵を絞ってほしい。

◆サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)

大学や科学館などと連携した、科学技術や理数への探究心を高める
学習活動の支援事業で、2006年から実施。研究者、技術者らが
実験などの講師をする「講座型」、夏休みなどに生徒を公募する「合宿型」。
今年度は1077件が採択、2135校が参加の見込み。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080723-OYT8T00216.htm

「小泉劇場」議論置き去り 福田氏、欠陥見抜けず 政治通年企画「検証 岐路の瞬間」 後期高齢者医療制度

(共同通信社 7月24日)

75歳以上を対象とする「後期高齢者医療制度」は、
首相小泉純一郎が自作自演する「小泉劇場」の陰に隠れ、
十分な議論を置き去りにしたまま誕生。

当時官房長官の首相福田康夫は、その後問題化する制度の
「欠陥」を見抜けないまま、「聖域なき構造改革」の奔流にのまれていく。

2002年1月21日召集の通常国会は、冒頭から波乱含み。
患者、医療機関、保険加入者が痛みを分かち合う、
「三方一両損」の医療制度改革を掲げた小泉は、
サラリーマンの医療費自己負担を03年度から3割に引き上げる方針。

患者負担増に猛反発する自民党厚生族を、「抵抗勢力」とののしり、
全面戦争の火ぶたを切ろうとしていた。

80%あった内閣支持率は、小泉改革の象徴的存在だった
外相田中真紀子の更迭で、一気に20ポイントも急落。
3割負担実現のスローガンをおろし、国民の離反を招く事態を小泉は懸念。

約3週間後の2月9日午前10時。
小泉は、厚生族の攻勢を受け、3割負担先送りを模索していた
厚生労働相坂口力(公明党)に電話を入れ、
自らの方針に従うようにくぎを刺した。
「自民党は必ずまとめるから、心配無用だ」。

坂口が、「厚生関係議員との問題は簡単ではない。
きちんと折り合ってください」と懇願すると、
小泉は「分かっている」とだけ言い捨てて、電話を切った。

2日後、小泉は国会近くのホテルで開かれた政府、与党会合に
福田を派遣して最後通告を突きつける。
「3割負担は、03年度から実施する。これだけは譲らない」
小泉サイドは、03年度実施で押し切り、
引き換えとして厚生族が要望した抜本改革策の検討を了承。

その中に隠れるように入っていたのが、高齢者医療制度の創設。
ここをピークに、小泉は医療制度改革から距離を置き、
新たな「劇」の幕を上げる。

02年9月の電撃訪朝だ。
拉致被害者の帰国などで、国民の視線は北朝鮮問題にくぎ付け。

政府は03年3月28日、医療制度改革基本方針を閣議決定。
厚労省は、75歳以上を対象とする「独立保険方式」、
制度間で資金をやりくりする「年齢リスク構造調整方式」の2案を提示。
小泉政権は、「現役世代の負担を軽減するには、独立保険しかない」
とする自民党の主張を採用。

4月からの3割負担スタート前の「駆け込み決着」だった。
決定後、小泉と厚生族のバトルに翻弄された坂口が、
「抜本改革になっただろうか」と問い掛けると、福田はつぶやいた。
「どんな制度にしても、野党はいろいろ言う。一歩でも二歩でも前進させよう」

小泉は、郵政民営化へ突っ走り、06年2月、
後期高齢者医療制度関連法案が閣議決定。
国会審議は、医師不足の問題に時間が費やされ、
後期高齢者医療制度の問題点に焦点が当たらないまま、
与党の賛成多数で6月に成立。

制度設計から関連法成立まで、政府、与党が一貫して重視していたのは、
「現役世代の負担軽減」。
75歳以上を切り離すことへの感覚は鈍く、後に「姥捨山」との批判が出る
事態など想定外だった。

「低所得層の負担軽減など微修正は必要だが、骨格は間違っていない」。
元厚労相尾辻秀久は、08年4月の制度スタート後、
そう強調しながら、割り切れない思いを口にした。
「福田さんは、小泉政治のツケを払わされて怒られ、内閣支持率も下がる。
小泉さんは人気が衰えず、待望論さえ出る。理不尽な話だ」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77587

2008年7月30日水曜日

小児の身体活動量は15歳までに低下

(WebMD 7月15日)

小児は、15歳までにぐうたらになり、身体活動量は、健康維持のために
推奨されている1日60分をはるかに下回る。

研究者らは、小児を9、11、12、15歳時に調査。
9歳時、小児は、中等度から強度の身体活動を1日3時間行っていた。
専門家が勧めている60分以上の運動をはるかに上回っていた。
小児の運動量は、15歳までに、推奨量をはるかに下回り、
平日の運動量は、平均49分に過ぎなかった。

カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部Philip R. Naderは、
「小児は、かつてほど活動的ではない。
驚くべきことは、身体活動量が低下する程度と速さ」。

Nader博士らは、米国立小児保健発育研究所(NICHD)の長期研究
「Study of Early Child Care and Youth Development」に参加した
1000例以上の小児から身体活動データを収集。

4つの各記録期間(9(2000年)、11、12、15歳時(2006年))に、
加速度計(ベルトに固定された、運動を分単位で記録する装置)を1週間装着。
身体活動に加えて、職場に復帰する母親の増加による影響など、
他にも多数の話題を検討。

小児は、9歳時には十分に運動をしていたが、
15歳までに、中等度から強度の身体活動は、平日では平均49分、
土・日曜日では平均35分。
60分の推奨レベルを満たした小児は、9および11歳時では90%以上、
15歳までに、平日では31%、週末では17%。
15歳のデータ収集時点で、半数以上(604例)に有効な加速度計データ。

低下はいつ始まったのか?
平日の運動量については、女児では約13.1歳までに、男児では14.7歳に
1日60分の推奨量を下回った。
コンタクトスポーツ(対戦相手の体に接触するスポーツ)や水泳をするときには
装置を装着しなかったので、活動量は過小評価された可能性がある。
これが、全活動量の劇的な低下の原因となる可能性は低い。

小児では、年齢に応じた正確な速度の早歩きは中等度の身体活動とみなされる。
他の中等度の身体活動の例として、鬼ごっこ、縄跳びが挙げられる。
水平面でのサイクリングは中等度、丘でのサイクリングは強度。

『Journal of the American Medical Association』に掲載。
「低下の原因は、おそらくさまざまな状況の組み合わせであろう」。
この研究では、身体活動低下の原因を検討しなかったことを指摘。
今日の小児は、かつてほど外で遊ばない、と指摘。
コンピュータや他のテクノロジーなど、
「今日の10代の青少年には、運動不足となる原因がある可能性がある」。

研究結果は、小児科医、両親、政策立案者への警告。
ティーンエイジャーになるにつれ、ぐうたらになる小児の傾向に。
「医師および公衆衛生従事者として、憂慮すべき結果」。

University Hospitals' Rainbow Babies & Children's Hospital (クリーブランド)の
プログラムHealthy Kids, Healthy Weightsのコーディネーター、
Eve Kutchmanにとって意外なことではない。
この研究が他の研究と異なるのは、加速度計を使用した具体的な数字。
他の研究は、自己報告による身体活動データを利用。

多くの両親は、子供を団体スポーツに参加させて、
身体活動の問題について対策が講じられていると考えている。
団体スポーツは、身体活動プログラムを開始する良い方法または
身体活動プログラムの補助となるかもしれないが、
実際の活動時間は十分でない可能性がある。

「1試合の時間は、2時間かもしれないが、活発な競技時間は15分に
過ぎないかもしれない」。

子供の好きな活動を見つけて、それを行うよう促すことを勧めている。
子供と一緒に行うことができればさらによい。
「子供を本当に変えるのは、子供が優れていると感じている活動を見つけること。
子供を変化させるのは、できるという自信である」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77536

理科再興(11)「生命の基本」必修化

(読売 7月22日)

生命科学を必修化した高校がある。

京都市の私立立命館高校には、2年生全員に週3時間、
「生命」の授業がある。
生物Iと生物2の内容を整理し、生徒全員に学んでほしい知識を生命、
それ以外を3年の選択生物とした。
実験などを通じ、生命科学の基本を学ぶカリキュラム。

「DNAという言葉は、授業で何度も使っていますが、きょうはまったく違う
二つの生物から、生命の設計図であるDNAを抽出してみよう」
担当の久保田一暁教諭(38)は、9組の生徒24人に、
近くのスーパーで買ってきた鶏のレバーとバナナを見せた。

レバーとバナナを、別々にミキサーで砕き、湯せんして余分なたんぱく質を
固めてから、遠心分離器にかける。
試験管の上澄みをエタノールに加えると、
白い糸くずのような微量のDNAが姿を現した。

「写真を見たことはあるけど、実物は初めて。本当に糸みたい」。
男子生徒が、濾紙の上に取ったDNAを、興味深そうに眺めた。

9割が立命館大に進学する同校は、理数教育の質の高さで定評があり、
文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールにも指定。

高校の学習指導要領では、生命科学の理解に必要な、
遺伝子からたんぱく質が作られる仕組み、代謝、進化、
バイオテクノロジーなどの内容の大半が、生物2に含まれる。

しかし、生物2の履修率は1割程度、
文系の高校生は、大半が学習しないまま卒業。

欧米では、中学や高校で生命科学の基本を学ぶのが常識で、
日本でもこうした授業が広まってほしい。
遺伝子組み換え作物やES細胞(胚性幹細胞)、生物多様性から
環境まで広がる生命科学の話題は、文系・理系にかかわらず、
社会人になった時に、自分の判断で選択が必要になる」。

約300ページの教本は、久保田教諭がまとめた。
ES細胞などの新しいトピックがニュースなどで登場すれば、
「科学読み物」などのコラムにして、翌年の教本に追加。

授業は、毎年11月になると、3人程度のグループごとにテーマを決めて、
調査や取材、実験などを通して意見をまとめ、年度末に発表。
生命科学について問題意識を持って行動し、
意見を発言できる力をつけるのが目的。

バイオエタノールについて発表した渡辺亜美さん(17)のグループは、
クラスコンテストで優勝。
「生命の授業の内容が、ここまで濃いとは思わなかった。
本格的な実験をするだけでなく、自分で理由を考える学習が多く、
論理的に考える力がついたと思う」

受験を前提に授業を作る多くの一般校で、大胆な教科の再編は難しい。
とはいえ、社会に出た時に必要な科学の知識を教えるのは、
中学や高校に課せられた使命のはず。

◆スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

科学技術に強い人材の育成を目的にした理数教育重点校。
大学や研究機関と連携した教育活動をしたり、
指導要領を超えた理科の学習カリキュラムを組んだりする。
科学技術振興機構が、活動に必要な経費を支援。
期間は5年間で、2008年度は102校が指定。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080722-OYT8T00205.htm

桑の葉成分:血糖値を抑制、人体で初めて証明 農研センター/福島

(毎日新聞社 2008年7月18日)

独立行政法人・東北農業研究センター福島研究拠点は、
桑の葉に含まれる成分が血糖値上昇を抑制する効果がある
という人体で初の研究結果を発表。
糖尿病予防などの効能の解明につながるものと期待。

寒冷地バイオマス研究チームの木村俊之・主任研究員(41)を中心に
03年から、東北大大学院や日本医科大などと連携。

園芸作物では、桑の葉にしか含まれていない
「1-デオキシノジリマイシン」(DNJ)がブドウ糖の構造に似ており、
糖の消化酵素の働きを抑え、血糖値上昇の抑制につながる。
これまでマウス実験が進められてきたが、人体では実証されていなかった。

通常の桑の葉の10倍の濃度のDNJを含むカプセルを作り、
健常者24人と、血糖値が高い「糖尿病境界者」12人に投与。

糖や米飯の摂取後に血糖値を比較した結果、
カプセル0・8グラムで健常者で血液10CC当たり平均約25ミリグラム、
境界者で同約30ミリグラムの血糖値減少が確認。
カプセル0・8グラムは、乾燥した桑の葉2-3枚(約10グラム)に相当。

木村研究員は、「今後は、長期間食べても副作用がないことなど
安全性を実証し、糖尿病の予防効果があることを証明したい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77453

北京五輪で音声翻訳技術の実証実験

(サイエンスポータル 2008年7月23日)

北京オリンピックの期間中、日本人旅行者などを対象に
音声翻訳技術の実証実験を、情報通信研究機構が行う。

同機構が開発した「携帯電話音声翻訳サービス」を使用し、
日本語あるいは中国語で、日常会話を携帯電話に向かって話しかけると、
それぞれ相手国語に翻訳され、音声で再生。

JTB北京オリンピック観戦ツアーに参加する日本人旅行者50人に、
移動、観光、ショッピングなどの際に利用。
北京在住の日本人50人に、「音声翻訳専用機」を使用してもらい、
アンケートなどによりそれぞれ利用に伴う満足度も調べる。

実証実験に使用する携帯端末には、音声翻訳アプリケーションを
事前にダウンロードし、音声とキー操作により日本語から中国語、
中国語から日本語へ音声翻訳が可能になる。

音声翻訳専用機は、ビジネス手帳サイズで音声とタッチパネルのみの
操作により、音声から音声への翻訳機能が可能。

情報通信研究機構
http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h20/080718/080718-2.html

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0807/0807231.html

9日間の活況

(東海新報 7月29日)

大船渡市、陸前高田市、釜石市、住田町、大槌町の沿岸五市町で
開催された、全国規模の海の祭典「海フェスタ」は、
9日間の日程に幕を閉じた。

閉幕式では、次回開催地の横浜に「海フェスタフラッグ」を引き継いだ。

『日本丸』、『飛鳥Ⅱ』などの船舶寄港や地域行事を集約的に開催し、
60万人近い入り込み客数を迎えて、三陸の魅力を全国に発信。

閉会式では、主催者代表として海フェスタ実行委の甘竹勝郎大船渡市長が
「大都市ではないが、大自然が見守ってくれた。
五市町で心を一つにして開催できたことに御礼申し上げたい」。

甘竹市長から、「海フェスタフラッグ」が横浜市港湾局の
金井良樹副局長に手渡された。
次回の「海フェスタ」は、開港150周年を記念して、横浜港を会場に開催。

金井副局長は国内外物流の要として、
今後も整備を続ける横浜港の概要を説明。
中田宏同市長による「三陸沿岸の五市町が一体となって開催する
初の試みが、成功裡に開催したことをお祝い申し上げます」
とのメッセージも紹介。

「海フェスタ」は19日から開幕し、9日間以外に行われた協賛事業も含めて、
5市町合わせた実施事業は100を超えた。
度重なる地震や、雷雨など天候不順もあったが、
一部の船舶寄港が中止となった点を除き、おおむね計画通りの事業が開催。

『日本丸』のセイルドリルや寄港船の一般公開、ロックフェスティバルなど
集客力のあるイベントが目白押しとなり、
大船渡港の茶屋前、野々田両岸壁は多数の来場者に溢れた。
動員数は、この一日だけで10万員以上と推定。

記念式典ご臨席のため、秋篠宮ご夫妻が初めて大船渡入り、
歓迎ムードに沸いた。
『日本丸』と『飛鳥Ⅱ』が湾内で共演する「海フェスタ」ならではの光景も。

岩手・宮城内陸地震などによる風評被害で、観光面の影響が懸念、
地元宿泊施設を利用する関係者も多かった。
物産展も、飲食品を提供したブースを中心に人気が高かった。
入り込み者数は、59万9923人。
財団法人・県観光協会が実施する観光レクリエーション客の
入り込み客数の調べを準用。
一人が2会場に来場した場合は、「2人」として計算。

大船渡会場が57万4652人余りと、9割以上を占める。
三陸海岸観光物産展には約8万人、
野々田、茶屋前両ふ頭には合わせて約21万6000人。
陸前高田会場は7358人、住田会場は4269人、
いずれも祭りイベントでの集客が大きかった。
釜石会場は1万3303人、大槌会場は341人。

2008年7月29日火曜日

理科再興(10)科学館で「体感」授業

(読売 7月19日)

科学館や博物館を、授業で有効利用させる動きが広がる。

栃木県真岡市の科学教育センターのプラネタリウムに、
満天の星が映し出されると、座席の中学生から「はーっ」とため息。

プラネタリウムで授業を受けたのは、市立真岡中学校の1年生。
星が東から西へと動く日周運動の仕組みを学んだ。
職員が手元で操作する地球の模型などを
プラネタリウム上に映しながら、授業が進む。

センターには、高さ約10メートルの大気圧実験装置、
巨大な振り子や天秤など、体感型の大型装置や展示物が40点並ぶ。
各装置には、「学習単元 小6 人の体のつくりと働き」などと説明があり、
学年と学習内容がわかる。
授業で利用することを前提に設計したセンターは、
21小中学校の小3以上の全学級が、年2~3回授業を受ける。

元中学教員の福田一悦センター次長(47)は、
「小中学校14人の理科主任らによる研究会が、
センターの授業計画を作るので、現場の意向を反映した授業ができる」

プラネタリウムの授業は好評。
天体の立体的な運動は、教科書では教えにくい。
真岡中の吉住隆教諭(40)は、「今の指導要領で、
小5から中2まで天体を学ぶ機会がないが、
真岡では毎年続けて体験しているので、中3になってから理解が早い」。

人件費を除いた事業費は、年間約7000万円。
顕微鏡を3クラス分120台備えるなど、
予算をセンターに集中できる利点は大きい。
「植物の茎を顕微鏡で観察する実験では、ホウセンカを600本育てた。
生きた植物を自分で輪切りにして見た生徒は、目の輝きが違う」

科学館を理科授業に利用する自治体は増えているが、数はまだ少ない。
国立科学博物館は、全国の科学館や博物館、動物園などと連携し、
科学学習施設の知識を授業に活用できる学習プログラム作りを進める。

国立科学博物館で行われた研究会では、
磐梯山噴火記念館(福島県北塩原村)の佐藤公副館長が、
火山の噴火モデルを紹介。
新指導要領では、火山の噴火による土地の変化が小6で必修に。

小麦粉に、水と食紅をまぜてビニール袋に入れ、中央に穴を開けた
板の下から手で絞り出し、きな粉の山の中心から溶岩のように噴出。
水の濃度を変えると、粘り気が変化し、“火山”の形が変わるのが、
学習のポイント。
「学校は、授業時間や準備、片づけの手間などの制約がある。
記念館のノウハウを、授業で使いやすい形にして提供する工夫が必要

新指導要領では、科学学習施設を学習に活用することを強調。
国立科学博物館の小川義和学習課長は、
「施設側は、つい説明をたくさんしたくなるが、
指導要領に沿った形の仕組み作りが大事。
学習効果が上がる様々な方法を検討したい」

1回限りの校外学習だけでなく、ふだんの授業での活用が広がれば、
子供の科学への関心も高まるはずだ。

◆科学館学習の効果

文部科学省科学技術政策研究所が2003年、科学館と小中学校が
連携学習をする真岡市など、4市の小5~中3に、
理科学習の意識を調査。
同市は、理科の勉強が「好き」、「大切」、「役に立つ」、「わかる」と
答えた子供が、全学年で国の調査(01年度)の平均を
10ポイント以上上回った。
同市の小5と小6の9割が、「実験や観察が好き」と答えた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080719-OYT8T00230.htm

水素水に記憶力低下抑制効果、日医大教授がマウスで確認

(読売 7月19日)

水素水を飲むことで、記憶力(認知機能)の低下を抑えられることを
日本医大の太田成男教授らが動物実験で確認。
認知症の予防や治療にも道を開く成果で、
科学誌ニューロサイコファーマコロジー電子版に発表。
ストレスによって、記憶力が低下することは知られている。

研究チームは、マウスを狭い空間に閉じ込め、餌を与えないなどの
ストレスを加えたうえで、記憶力が、水素が大量に溶け込んだ水と
通常の水を飲ませた場合でどのくらい違うか、10匹ずつ、
三つの方法で6週間かけて比較。

その結果、いずれの場合も水素水を飲ませた方が記憶力が顕著に高く、
ストレスのないマウスとほぼ同等。
記憶をつかさどる脳の領域(海馬)における神経幹細胞の
増殖能力も同様の傾向。

研究チームは昨年、水素が活性酸素を取り除き、脳梗塞による
脳障害を半減させることを確認。
認知症は、活性酸素などによって神経細胞が変性する病気とされるが、

太田教授は、「水素水を飲まないマウスの海馬には、
活性酸素によって作られた物質が蓄積。
水素水が、活性酸素によって低下した神経細胞の増殖能力を回復させ、
記憶力低下も抑制したと考えられる」。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080718-OYT1T00613.htm

心筋梗塞:せっかちな行動の人、なりにくい 日本男性、欧米と逆--厚労省研究班調査

(毎日 7月18日)

日本人男性は、行動がせっかちで怒りっぽい人の方が、
そうでない人より心筋梗塞などの発症の危険が低いことが、
厚生労働省研究班(担当研究者、磯博康・大阪大教授)の
大規模調査で分かった。
国際疫学会誌電子版に今月掲載。

欧米では、せっかちな行動の人の方が発症しやすいことが
報告されているが、逆の結果に。

研究班は、90年と93~94年、8県の40~69歳の
男女計約8万6000人に自分の行動パターンについてアンケートを実施。

せっかち、怒りっぽい、競争心が強い、積極的という行動傾向は「タイプA」、
Aと対照的な傾向は「タイプB」とし、
その程度によって全体を4グループに分けた。
03年までに、669人が心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症。

男性は、Bの傾向が強まるほど虚血性心疾患の危険が上昇し、
Bの傾向が最も強いグループの発症の危険が、
Aの傾向が最も強いグループより32%高かった。
Bより、Aの方が飲酒量や喫煙者が多かった。
女性は、統計学的に意味のある違いはみられなかった。

磯教授は、「日本は、協調性を大事にする社会のため、
温和なように振る舞っているBの人の中に、
感情を押し殺してストレスをため、発症の危険を高めている人がいる。

Aの傾向が強い日本人男性は、酒を飲むことなどによって
ストレスを発散させているのではないか」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/18/20080718dde001040022000c.html

網膜の神経回路つくる物質 「ピカチュリン」と命名

(共同通信社 2008年7月22日)

目の奥にあって光を感じる網膜の神経回路がきちんとつくられるのに
必要なタンパク質を、大阪バイオサイエンス研究所の
古川貴久研究部長らのチームがマウス実験で突き止め、
米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に発表。

光を発するネズミに似た人気アニメキャラクター、ピカチュウにちなんで
「ピカチュリン」と名付けた。

古川部長は、「網膜の神経回路ができる仕組みの一端が分かった。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った目の病気の
再生医療にも応用できそうだ」。

チームは、視神経の周りで働いているピカチュリンを特定。
これが働かないよう遺伝子操作したマウスでは、
受光細胞から中枢神経につながる視神経に異常が起きるのを確かめた。
通常のマウスに比べ、神経伝達が遅れ、動くものを見る視力が落ちていた。

ピカチュリンが、筋ジストロフィーに関係する物質と結合するのも確認。
筋ジス患者にみられる目の疾患にかかわっている可能性も示された。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77479

夏休みに多い熱中症や水の事故、そばで人が倒れたら?

(毎日新聞社 2008年7月22日)

倒れている人を見たら、手当てより先にすることがある。
関西医大付属滝井病院高度救命救急センターの津田雅庸医師は、
「自分の安全を確保する。それから、近づき話しかける」。

6月の東京・秋葉原の17人殺傷事件では、
はねられた男性を介抱していた警察官が刺された。
交通事故の現場など、道路なら車にも注意が必要。
手当てする場合は、患者をその場から動かさないのが原則。

しかし道路上なら、安全な場所まで移動させる。
この際、頸椎の保護が大切。
ぐらぐらしないよう頭を支え、何人かで持ち上げたい。

安全に手当てができる状態になったら、まず声をかけ、
意識があるか確かめる。
呼びかけに反応しない場合、119番通報とAED(自動体外式除細動器)の
手配をし、あおむけにしてあごを持ち上げ、頭を後ろにそらせて気道を確保。
呼吸を確かめ、していなければ、心臓マッサージと人工呼吸(心肺蘇生)。

人工呼吸は省略もできるが、心臓マッサージは欠かせない。
脳の最大の弱点は、酸素不足。酸素は、血流で供給される。
心臓マッサージをすると、心臓が動き出すまでもある程度血流を保てる。
「病院に運ばれる救急患者でも、居合わせた人が心肺蘇生をしていると
回復が全く違う。一人の命を助けることにつながると思い、
勇気を持って積極的に」。

けがをしている場合は、止血のため患部にガーゼやタオル、
ハンカチを当て、手で強く圧迫。
刃物が刺さっている場合、抜くと大量出血する可能性があるので抜かない。

傷口より心臓に近い部位を縛る止血法もあるが、
正しい方法を学んでいないと、患部を壊死させる。

夏には、プールや海でおぼれる事故も増える。
助ける側までおぼれないよう注意し、砂浜や陸地に引き上げる。
体を横向きにして、口にたまった水などを出し、
人工呼吸や心臓マッサージをする。

熱中症も、要注意。
暑さで体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れて起きる。
重い場合は、けいれんや意識障害に陥る。
子どもは、体重の割に体の表面積が広く、汗をかく量が相対的に多い。
湿度が高い日は汗が蒸発せず、皮膚を流れるだけで体は冷えない。
こうなると、水分を失うばかりで、熱中症になりやすい。

予防には、こまめに水分を取るのがよい。
それでも立ちくらみやめまい、けいれん、頭痛や吐き気が起きたら、
日陰など涼しい場所に移して水分を飲ませる。
吐き出すなど水分をとれないようなら、病院を受診した方がいい。

ハチなどに刺されるのも侮れない。
アナフィラキシーショックと呼ばれる激しいアレルギー反応が起き、
呼吸困難などで死亡することがある。

最初に刺されると、体内に抗体ができる。
この抗体が原因で、2回目に刺された時にアナフィラキシーが起きる。
「刺された部分だけでなく、全身が真っ赤になったり、息苦しくなったら
すぐに病院へ」と津田医師は警告。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77514

2008年7月28日月曜日

理科再興(9)市挙げて「研究発表会」

(読売 7月18日)

小中学生向けの科学コンクールに強い地域がある。
名古屋市と愛知県豊橋市の間にある刈谷市は、人口約14万5000人。
豊田自動織機をはじめ、トヨタグループの多くの会社が本社を置く、
工業の町としても知られる。
市立刈谷東中学校科学部は昨年、ペットボトルロケットを遠くに飛ばす
角度や飛び方を分析し、日本学生科学賞の中学校・研究部門で、
科学技術担当大臣賞を受賞。

研究を主導したのは、現3年の松ヶ谷明史君(14)。
様々な材質のミニロケットで実験し、距離や飛び方との関係を調べた。
ロケットの飛び方に3パターンがあり、よく飛ぶのは直線で上昇後、
放物線を描いて落ちる飛び方で、45~60度の時、
その出現が多いことを確めた。

「小さいころから理科は好きでしたが、仮説を立てて実証することを
学んだのは、中学校の部活動」。
今年は部を挙げて、墨汁が紙ににじむパターンの解析などに取り組む。

同賞に強いのは、同中だけではない。
市立雁が音中学校は、トタン板のさび方の研究で環境大臣賞を受賞。
県審査は刈谷南、富士松を加えた4中学が、10賞中9賞をさらった。
理科だけでなく、技術工作のコンクールにも強く、
昨年、全国と県レベルで刈谷の小中学校が受けた関連の賞は、
市が把握しただけで50件以上。

市には年1回、小中学校の理科研究の発表会と、
工作の技術やアイデアを競う創意工夫展がある。
車の両輪と言える科学と技術に強い子を育ててほしいという、
石田退三・トヨタ自動車工業元会長の寄付から生まれ、
約半世紀の歴史を刻む。
市内21小中学校の全児童生徒が毎年、夏休みに理科研究か
工作に取り組む。
夏休み明けに、校内やクラスで発表、発表会や展示会の代表を決める。

近藤博司・市教育長(66)は、「市民に技術者が多い刈谷は、
理科研究や創意工夫展への関心が高い。
小学校でも夏休み前の指導が必要で、そのため理科の
教材研究や授業研究も盛ん」。

毎年指導するには、工夫がいる。
「理科研究でなぜを追求するのは、あまりうまくいかない」と
刈谷東中の鈴木竹久教諭(48)。
中学生が身の回りで気づく「なぜ」は、解明済みの現象が多い。
ペットボトルロケットの研究は、なぜ飛ぶかではなく、
飛び方のパターンと出現率に着眼したのが正解。
「形や材質を替え、実験や観察しなければわからない条件で調べる。
そこで規則性を見つけ、なるほどと思わせる研究が大事」

研究や工作の課題は、不得意な子の苦手意識を強める危険も。
「工作なら、障害者の方が使いやすい道具を作ってみる。
自分が不便と感じた道具に、ひと工夫してみる。
自分の作品が学校や周囲に評価され、
成功体験につながる指導が必要」。

刈谷の理科教員には、常に「10年後も学習レベルを保てるか」
という危機感がある。
教員の工夫と不断の努力なくして、科学に強い子を育てる風土は生まれない。

◆日本学生科学賞

日本で最も伝統のある中高生対象の科学研究コンクール。
戦後の復興を担う若者の科学教育を振興するため、1957年に始まった。
最高は内閣総理大臣賞で、中学と高校で各1点、副賞として
研究奨励金50万円が在籍校に贈られる。
高校の優秀な研究には、米国で開かれる「国際学生科学技術フェア」への
参加、派遣もある。読売新聞社が主催。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080718-OYT8T00235.htm

エコナビ:熱中症防ぐための暑さ指数 どういう指標なの?

(毎日 7月21日)

暑い夏に相次ぐ熱中症を予防するための基準に、
「暑さ指数」があります。どのような指標なのでしょうか?

熱中症は、暑さで体温を一定に保てなくなり、
体内の水分や塩分のバランスが崩れて、異常が表れた状態。
このような人の体内の熱収支には、気温だけではなく、
湿度、照り返しや日射などの輻射熱も大きく影響。

これらの要素を取り入れたのが、暑さ指数。
専門的には、「湿球黒球温度(WBGT)」と呼ばれ、「度」で表します。

日本体育協会の運動指針では、WBGTが31度以上なら、
気温はほぼ35度以上に相当し、
皮膚の温度より気温の方が高い環境となるため、運動は原則中止。

この運動指針では、WBGT28~31度は厳重警戒、
▽同25~28度は警戒、▽同21~25度は注意、
▽同21度まではほぼ安全、と分類。

環境省は、携帯電話のインターネット向けに、
一部地域の暑さ指数を情報提供。
予防の参考にしてはいかがでしょうか。
http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/kt/prev_menu.html)

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/21/20080721ddm016040033000c.html

活動量:多い人ほど病気死亡の危険低い…厚労省8万人調査

(毎日 7月21日)

体を動かすことが多い人ほど、平均寿命前に病気で死亡する
危険性が低くなることが、厚生労働省研究班
(担当研究者、井上真奈美・国立がんセンター予防研究部室長)の
調査で分かった。

激しい運動でなくても、歩いたり、立っている機会を増やすだけで、
死亡の危険が下がる。米疫学会誌7月号に掲載。

研究班は95、98年に、10都府県の45~74歳の約8万3000人に対し、
▽肉体労働や激しい運動をしている時間、
▽座っている時間、
▽歩行か立っている時間、
▽睡眠時間--について尋ねた。

活動の強さと時間から、1日当たりの平均活動量を数値化し、
活動量別に4群に分けた。
05年末までの追跡期間中に、4564人が死亡。

活動量と死亡の関係を調べたところ、
活動量の最も多い群は最も少ない群より、
平均寿命前の死亡の危険性が男性で27%、女性で39%低下。

死因別でみると、最も多い群の男性では、
がんによる死亡の危険性が20%、心疾患は28%低い。
女性は、がんによる死亡の危険性が31%低下。

活動の種類別では、比較的軽い活動でも死亡の危険が低下。
「歩行か立っている時間」の場合、1日当たり3時間以上だと、
1時間未満の人と比べて男性で20%、女性で36%、
平均寿命前の死亡の危険性が低い。

体格指数(BMI)が27より大きい肥満の人では、
活動量増加に伴う危険度低下の度合いが小さかった。

井上室長は、「循環器疾患などの場合は身体活動で脂質、血圧などが
改善されることが背景にあるのではないか」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080722k0000m040084000c.html

一度の過ち 五輪消えた 〈反ドーピング最前線〉

(朝日 2008年7月24日)

一度でも禁止薬物に手を出したら、五輪選手としては「死刑」になるのか?

英国五輪委員会(BOA)は、北京五輪陸上代表選考会の
男子100メートルで、10秒00で1位になったドウェイン・チェンバーズ(30)
代表に選ばなかった。

03年に、筋肉増強剤テトラハイドロゲストリノン(THG)に陽性反応を示し、
2年間の出場停止。
違反歴のある選手を、五輪に派遣しないというBOAの内規に抵触。

チェンバーズは、BOAの判断取り消しを求めて英高等法院に提訴、
18日に訴えは退けられていた。

ドーピングに関しては、世界反ドーピング機関(WADA)が定める
「統一コード」が各国の政府、五輪委、国際競技団体が承認する世界基準。
禁止薬物の種類などにより、出場停止期間が分けられている。

チェンバーズの場合、WADAの規定に基づく2年間の出場停止を経て復帰。
米国をはじめ、他国ではドーピング歴のある選手が五輪代表として
出場する例は珍しくない。

悔い改めた選手に、再起の道を開くべきではないか。
ごく少数ながら、英国内にもチェンバーズ擁護論はあった。

国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長は、厳しい姿勢を鮮明。
6月の理事会で、「6カ月以上の出場停止処分を受けた選手は、
次の五輪の参加資格を与えない」という新たな指針。

チェンバーズは、北京五輪の夢が絶たれた19日、英民放局ITVで、
故郷で開かれる12年ロンドン五輪の出場をめざし、
現役を続行する考えを明らかにした。
「私は、競技に参加したいだけ。
クリーンなアスリートとしての力を証明したい」

BOAは、「我々は、ドーピング歴のある選手には
英国代表のユニホームを着させない強いメッセージを今後も送り続ける」。
自国開催の五輪でも、薬物汚染の過去を持つスプリンターを
復帰させる可能性は極めて低そう。

http://www2.asahi.com/olympic2008/news/TKY200807240207.html

受け入れ枠の半数に達せず インドネシア人介護士ら

(共同通信社 2008年7月22日)

経済連携協定(EPA)に基づくインドネシアからの
初の介護士・看護師受け入れで
日本側の老人ホーム、病院など求人施設と、
インドネシア側で派遣が内定した候補の組み合わせを決める
「マッチング」作業が18日終了、受け入れ成立は
両国政府が想定した初年度枠500人(介護士300人、看護師200人)の
半数にも達せず、来年以降の募集方法などに課題が残った。

成立したのは、介護士候補114人、看護師候補112人の計226人。
マッチングでは、インドネシアで一般的な男性の看護師多数の
受け入れ先が見つからず、宙に浮いた。

日本の医療施設が、女性を求めたことが背景にありそう。
日本側の仲介機関、国際厚生事業団によると、マッチングの対象となった
介護士の候補は124人、求人は281人で、候補の約9割の採用が決まった。

看護師の候補は170人に対し、求人は155人。
候補の3割以上の採用が不成立となり、不成立の看護師は全員が男性。

作業は、予定よりもやや遅れたが、全員が8月上旬に来日する方向で、
日程を調整中。
半年間、日本語などの研修を受けた後で就労する。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77483

2008年7月27日日曜日

理科再興(8)元教員生かす小規模校

(読売 7月17日)

小規模校が多い地方でも、理科への関心を高める工夫がある。
太陽電池パネルを積んだ模型の車が、電球の光を追って
理科室を勢いよく走る。
岩手県宮古市の宮古小学校に、5、6年生33人が集まった。
「自分たちで走らせてみよう」。
花巻市の県立総合教育センターから派遣された講師の指示で、
子供たちは頭をひねりながら、模型の車の配線をつなぐ。
車輪が回ると、目が一斉に輝いた。

人口減が続く宮古市では、3校の5、6年を合わせても229人で、
愛宕小の5、6年は複式学級。
市教委は2年前、子供の理科離れに歯止めをかけようと、
3校で合同実験などをする「宮古・ニュートン・スクール」事業を始めた。

講師は、岩手大や県内の理科の得意な教員らが務めるが、
市内の退職教員らがボランティアで活動を支える。

中屋定基・市教育長(69)は、
「実験を敬遠する先生が増える中、地域の人材を活用して
子供たちの理科のセンスを伸ばしたい。
不登校気味の子供でも、ニュートン・スクールには来たいという子もいる」

3年間の予定で採択された文部科学省の
「新教育システム開発プログラム」の一つだったが、
国の事業は昨年度で打ち切られた。
今年度は開催数を減らし、200万円の予算で事業を続ける。

山口小教務主任の田中真喜子教諭(49)は、
「理科の時間と内容が削られた結果、理科室から廃棄された器具もあり、
学校では発展的な実験をする余裕がない。
学校では扱えない内容を取り上げるスクールは、
子供たちにとって貴重な学習体験の場」。

新潟県糸魚川市の東端にある磯部小学校は、児童数90人。
5年生13人は、生きたメダカを顕微鏡で観察。
理科支援員である元小学校長の下越克男さん(63)が、
「顕微鏡でスケッチするとき、どっちの目で見ればいいかな?」と問いかけ。
首をかしげる子供たちを見て、「右利きなら、右側にノートを置いて、
左目で見るといいんだよ」。
担任の池田義広講師(26)は、「気づかない点も、よく指導してくれる」。

糸魚川市は、支援員4人中3人までが理科を専門に教えてきた元教員。
豊富な経験で授業を助ける。
市は、スプートニク・ショック後に理科教育センターを設置、
理科教材の研究や教員の研修に、力を注いできた伝統がある。

センターは、今も市内の理科教育研究の中心として、
学校で管理が難しい実験器具を貸し出したり、試薬を提供したりして、
実験や観察を充実させている。
昨年度は、市内の小中学校に、エタノールや気体の検知管など
約50品目をのべ200回提供。
「児童数の少ない学校は教員1人の負担が大きく、
人材や実験器具の支援、融通は助かる」

地方にも、地域ぐるみで理科授業を充実する知恵がある。

◆スプートニク・ショック

ソ連が、1957年に人工衛星スプートニク1号の打ち上げに
成功したことを契機に、米国で科学者・技術者を育成する
理科教育の近代化の機運が高まった。
日本も、68~69年告示の学習指導要領で、科学教育の強化が図られた。
後に、理科の詰め込み教育を助長したという批判も出たが、
理科学習研究施設の充実も進んだ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080717-OYT8T00209.htm

スポーツ21世紀:新しい波/275 ロッテ集客作戦/上

(毎日 7月19日)

さまざまなイベント企画などで、地域密着の人気を高め、
プロ野球の集客回復のお手本にもなってきたロッテ。
新たな取り組みを模索する姿勢は、まだ衰えていない。

瀬戸山隆三球団社長は、「地域密着ではなく、地域との融合」と
球団の目標を掲げる。
多額の費用をかけずとも、目標を実現する策はありそう。

今年5月、本拠地の千葉マリンスタジアムで行われた
対日本ハム戦前のマウンドに柔道着姿があった。
北京五輪柔道男子81キロ級代表の小野卓志で、
バレンタイン監督を相手に始球式。
ユニークな取り合わせに、スタンドは沸いた。

小野が所属する了徳寺学園は、千葉県浦安市で了徳寺大学を経営。
芸術学部と、理学療法士やスポーツトレーナーなどを育成する
健康科学部の2学部からなる大学で、スポーツには縁が深い。
同大学の講座で、ロッテのトレーナーらが特別講義をするなど、
友好関係にあった。
アイデアが豊富なことで知られるロッテ球団は、そこに目をつけた。

始球式だけではない。
了徳寺学園は、小野をはじめ北京五輪に柔道の4選手を送り出すが、
その記者会見まで、始球式と同じ日にマリンスタジアムで開いた。
「野球場で五輪代表選手が会見するなんて、おそらく初めてでしょう」
球団企画広報担当の羽地朝博ディレクターが胸を張る。

学園側にとっては、五輪代表が声援を受けただけでなく、
「柔道を知らない層に対して、『了徳寺』の名前をアピールするいい機会」
(入試広報課)という知名度アップのメリット。
ロッテ側も、異種競技との交流で
「地元のスポーツ熱を高められる」とファン層拡大の期待。

教授・講師陣に、理学療法士などの有資格者を抱える学園は、
選手のリハビリプログラムや、メディカルチェックなどに
協力する希望も持つ。

羽地ディレクターは、「プロ選手なので、学生に(体調管理を任せるの)は
難しいのでは。でも、何かできることはないか話はしてみたい」
今後の新たな「産学協同」を考えている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

海洋研究開発機構:海底下の泥に大量微生物…英誌に発表

(毎日 7月21日)

酸素や栄養分に乏しい海底下350メートル前後までの泥(堆積物)
の中に、大量の微生物が生息していることを、
海洋研究開発機構などが突き止めた。
地球全体でみると、地上の全植物の6分の1に相当する量と推計。

陸上や海中に匹敵する「第3の生命圏」を明らかにし、
生命の進化や環境適応の解明につながる成果で、
20日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表。
海底下については、約1000メートルの深さまでの堆積物から、
1立方センチ当たり10万~10億個の生物細胞が、
遺伝子の形で見つかっていた。
しかし、生きているのか死んでいるのかは分からなかった。
海洋機構高知コア研究所の諸野祐樹研究員(微生物生態学)らは、
独ブレーメン大と共同で、世界16カ所から採掘された海底堆積物を分析。
生きた細胞の指標となる細胞膜の脂質を抽出し、
10センチ~365メートルの深さまでに、アーキアと呼ばれる微生物が
大量に生息していることを発見。

海底下のアーキアの総量は地球全体では、
炭素換算で900億トンに上ると推定、
地上の全土壌中に住む微生物の3倍以上に相当。
アーキアは、通常の細菌(バクテリア)より細胞膜が硬く、
物質を透過しにくい特徴。
諸野さんは、「厳しい環境に適応し、独自に進化したのではないか」

安い飼料で肉質向上 県農研センターが成果

(岩手日報 7月19日)

沢村の県農業研究センター畜産研究所家畜育種研究室は、
そばの乾めんくずとおからを乳酸発酵させた飼料(サイレージ)を、
豚や特産肉用鶏「南部かしわ」に食べさせ、
飼料コストを削減できるとする研究成果を明らかにした。
鶏は3割減、豚は半減し、豚は肉質も向上。
世界的に飼料が高騰する中、自給できる飼料の一つとして注目。

サイレージは、そばの乾めんくずとおからを6対4の割合で混ぜ、
ポリ袋1袋に20キロ入れて密閉。
2週間かけて乳酸発酵。
乳酸菌が酸素を消費し、ほかの雑菌が活動できないため
漬物の原理同様、保存期間が延びる。

肥育後期の豚に、サイレージと市販の配合飼料をそれぞれ与えると、
発育はほぼ同じだったが、サイレージ飼料を与えた豚は、
ロース中の霜降りの度合いが増加し、軟らかく肉汁が豊富になった。
南部かしわは、サイレージと配合飼料で発育と産肉は同等。

出荷までの豚1頭当たりの飼料費は、サイレージが3329円で、
6718円の配合飼料の半分以下。
南部かしわ1羽では、配合飼料416円に対しサイレージが307円。
飼料価格は、サイレージの1キロ18・1円に対し、豚用の配合飼料は
昨年10月の同研究所の購入単価で1キロ50・8円。
現在は、さらに約16円値上がり。

県内豆腐メーカーでは、おからを廃棄処分するメーカーも多いといい、
資源の有効活用策として期待。

課題は、給餌方法。
大規模な養豚場で主流の自動給餌機械では、水分が多いサイレージは
そのまま使うことができず、手作業での給餌が必要。
頭数が多いと、給餌に人件費がかかるため、
養豚では500頭までの小中規模農家での活用を勧める。

小麦とそばを主原料とするそば乾めんくずは、量が多くないといい、
サイレージに代替できるほかの資源も検討。

同研究室の吉田力室長は、「穀物が世界的に逼迫する中、
地域の資源を有効に使え、地域の養豚養鶏振興にも寄与できる。
食産業と農業の分野間をつなげる技術」と期待。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080719_4

持続可能な世界トップクラス研究拠点とは

(サイエンスポータル 2008年7月4日)

「いかにして欧州の世界トップクラス研究拠点は形成されたか」を
探る科学技術政策研究所が報告。

優秀な研究者と研究資金をいかに集めるか?
欧州の名だたる研究機関も、この目的のためにさまざまな工夫、努力を
重ねているが、先行する米国に対抗するため、
2つの面で欧州がより積極的に取り組んでいる。

「外部から優れた人材を登用するための柔軟な研究交流制度」
「優れた人材を集めるための条件として、生活面での支援を含む
受け入れ環境の整備」。

マックスプランク神経生物学研究所や欧州分子生物学研究所
(ハイデルベルグ)で、子弟の養育を支援する仕組み(child care)が
整備されていることが紹介。

日本の場合、優れた研究者を集める努力を欧州以上にしなければならない。
欧州の取り組みは、日本の関係者たちも当然、念頭に置いているが、
実行となると容易ではない。

もう一つ、報告書が指摘していること。
世界トップクラスの研究拠点であり続けるために、
どのような工夫がなされているか?
「特定の領域が、非常に重要になる(重要になりすぎる)時が、
その領域から去る時だ」。

ナノテクノロジー・材料分野のトップクラス研究拠点とみなされている
英国ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のポリシー。
トップクラスの研究拠点は、そこに「トップクラスの研究がある」ということ。
それは、「トップクラスの研究者がいる」、
トップクラスの研究者を集めるには、
「Not Yet Visibleな研究領域を見つけ出す」ことが最も重要なポイント。

こうした取り組みには、「Physics for Medicine」を対象とした
新たな研究センターの立ち上げがある。

ケンブリッジ大学は、昔から物理学が強く、物理学の強みを活かして
生物学の研究実績も挙げているが、医学は10-15年前まで
ほとんど研究対象とみなしていなかった。

ドイツのフラウンホーファー・コンピューターアーキテクチャー&
ソフトウェアテクノロジー研究所の場合、
パーマネントスタッフの割合を一定以下に。

一つの領域に固執していると、トップ拠点としての研究成果を
生み出し続けることはできない、という考え。
今のディレクターが就任して、コンピューターアーキテクチャー中心から
ソフトウェアへと研究領域が大きくシフトした。

世界トップクラスの研究拠点作りは、日本でも動き出している。
世界のトップクラスの研究者を集めることで、苦労しているが、
世界トップクラス研究拠点であり続けることは、拠点立ち上げ以上に
「Not Yet Visible」な難題のよう。

http://scienceportal.jp/news/review/0807/0807041.html

単語の切れ目聞き分ける脳機能解明

(サイエンスポータル 2008年7月18日)

ヒトが言語を習得するうえで重要な鍵といわれる「音声文節化」が、
脳の中でどのように行われているかを、神経生理学的方法によって
観察することに、理化学研究所の研究チームが初めて成功。

乳幼児がどのようにして言語能力を獲得し、発展させるかを明らかにし、
失語症など脳障害患者のリハビリ効果の観察や、
教育法の開発などにも役立つ成果。

理化学研究所脳科学総合研究センター・生物言語研究チームの
岡ノ谷一夫チームリーダー、アブラ・デリシャット(D. Abla)研究員らは、
人工的な単語を数個作成し、それらが切れ目なくランダムに
繰り返される連続音を、大人の被験者28人に聞かせた。

脳波計で、被験者の頭皮上から誘発される電位変化を調べたところ、
単語の切れ目で、N400と呼ばれる陰性電位の振幅が
大きくなることが観察。

N400と呼ばれる陰性電位は、聴覚刺激を受けた400マイクロ秒後に
頭皮上で記録される電位で、光や音、あるいは自発的な運動といった
特定の事象に関連して、一過性に生じる事象関連電位の一つ。

人工単語の切れ目をすぐに覚えるグループでは、
N400の振幅が学習初期に最も大きく、中程度のグループでは
学習が進むにつれ徐々に大きくなり、
成績の低いグループでは振幅が小さいままで変化しないという差。

これは、単語の切れ目を聞き分ける「音声文節化」という脳の働きを、
N400が定量的に反映している。
音声文節化は、最初は意味が分からない言葉でも、
繰り返し聞かされているうちに、単語をひとかたまりの語として
聞き分けられるようになる能力。

意味が分からない言語も、最初から意味のない人工単語を
ランダムに並べた“言語”も、「単語」内では、一つの音素の次に来る
音素が決まっている(続いて現れる頻度が高い)ため。

米国の研究者による赤ちゃんを対象にした研究などで、
ヒトが言語を身につける上で、音声文節化が大きな役割を
果たしていることが分かっている。

http://scienceportal.jp/news/daily/0807/0807181.html