2008年10月18日土曜日

大阪をバイオの世界拠点に 府が旗振り役、産学官連携 「関西経済」

(共同通信社 2008年10月9日)

10年後の2018年に、世界第5位の国際バイオ都市に。
大阪府は関西の大学、製薬会社などと産学官の連携を強め、
大阪を、革新的新薬や医療機器を生み出す世界有数の
バイオ産業拠点に育てる取り組み。

緊縮財政の大阪府が、橋下徹知事の肝いりで08年度予算に
バイオ振興関連費約3億1000万円を計上。
旗振り役が決まったことで、関係者は「転機になる」と期待。

大阪は、江戸時代から栄える薬の街「道修町」に製薬会社が林立し、
学研都市「彩都」(大阪府茨木、箕面両市)には、
研究施設やベンチャー企業が集まる。
免疫学に強い大阪大や、高い技術の東大阪の製造業者など、
バイオ産業創出の素地はある。

大阪医薬品協会を中心に、製薬会社や医療機器メーカー、大学など
第一線の実務者が集う「大阪バイオ応援団」が発足
橋下知事は、「関西全体でバイオを盛り上げる施策を考えたい」。
企業や大学と連携する府の窓口「大阪バイオ・ヘッドクオーター」を開設。

大阪商工会議所の野村明雄会頭や大阪大の鷲田清一学長、橋下知事ら
産学官のトップでつくる「大阪バイオ戦略推進会議」を開催。
戦略やスケジュール、国への要望などを審議し、数値目標を明示した
行動計画を来年3月までにまとめる予定。

大阪バイオ戦略推進会議が挙げた課題は、
ベンチャー支援、規制緩和、治験ネットワーク作りの3つ。

「いかにベンチャーを多数創出し、成功例を積み上げるかに尽きる」
(府商工労働部・藤田哲士理事)が、
それには資金や人材を呼び込む仕組みが要る。

欧米に比べ、「新薬審査に時間が2倍かかる」といわれる規制の緩和も重要、
東京だけの審査窓口を大阪にも設けるよう国に要望する予定。

大阪府が本格的に取り組む背景には、
「手をこまぬいていれば、国際的な競争力を失う」との強い危機感。
製薬業界の再編に、東京への一極集中の流れも加わり、
本社機能を大阪から関東に移す企業が続出。

医薬品生産額で長らく全国1位だった大阪府は06年、
埼玉県と静岡県に続く3位に転落。
「これ以上の流出に歯止めをかけたい」との思いがにじむ。

世界的な株価下落もあり、大阪の新産業を取り巻く環境は厳しい。
逆風下でいかに資金と人材を集め、規制緩和などの側面支援を
国や自治体に求めていくかが鍵。
オール関西として京都府、兵庫県などの自治体との協力も視野に。

大阪バイオ応援団メンバーで、遺伝子医薬を開発する企業
「アンジェスMG」(茨木市)の森下竜一取締役
「将来の基盤産業を目指し、京都や神戸と連携できれば、
関西の強みはさらに生きてくる」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81131

粘性廃油と木くず混合で新燃料に 太平洋セ工場で12月施設稼働へ

(東海新報 10月12日)

太平洋セメント(株)大船渡工場(森本知久工場長)は、
同工場敷地内に粘性度の高い廃油と木くずを混ぜ合わせた燃料を
製造する施設建設を進めている。

これまで、リサイクル資源を製造原料や熱資源として利用を拡大してきたが、
廃塗料など粘性度の高い廃油は取り扱いが難しい。
12月中の稼動を目指し、石炭など資源価格が高騰している中、
市内におけるリサイクル産業拡大の契機としても注目。

セメント製造の主な原料は、石灰石や鉄原料、粘土で、
原料を混ぜ合わせて焼き上げる際の燃料として石炭が用いられる。
同工場では、廃棄物原料として焼却灰や下水汚泥、
燃料として木くずやタイヤ、肉骨粉、廃油などをすでに資源化。

燃料利用後に残る灰も、セメント原料として使われ、
環境に優しい資源化として実績を伸ばし、
年間で約45万トンの廃棄物処理実績を誇る。

廃油のうち、流れやすい粘性度の低いものは利用してきたが、
高粘性の廃油は焼成施設の投入や運搬などでの取り扱いが難しく、
利用を見合わせていた。

廃油には、廃塗料や油泥、廃グリス、廃グリセリンなど、
食産業、工業分野問わず幅広い業態で排出されるが、
他業種でも資源化は困難。

同工場では2年前から、再利用に向けた検討に着手。
燃料利用されていた木くずは、着火性に課題があったため、
廃油と混ぜ合わせて固形燃料化するプロジェクトを立ち上げ、実験を重ねてきた。

木くずは五センチ以下に、破砕して廃油と混ぜることで、
固体のリサイクル混合燃料ができる。
炭火焼きなどで用いられる着火材のような役割を果たし、
安定的な運搬や焼成設備への投入が可能となり、実用化へのメドがついた。

同工場敷地内に今年6月、廃油などの保管施設を建設。
現在は、混合するミキサー設備などを備えた混合燃料製造施設の整備を進め、
12月からの稼動を目指す。

燃料化事業を本格的に進める背景には、世界的な資源価格高騰の影響。
同工場では、「石炭は、5年前から価格は上がり、現在は当時の4、5倍」。

廃棄物利用は、原材料費コストの削減だけでなく、
処理費用としての収入も見込める。
国際的にリサイクル資源化が進む中、廃タイヤや廃プラスチックも
確保が難しくなっており、より高度な利用技術を確立することで、
安定的な確保を図るネライ。

輸送コストを考慮して、県内を中心とした高粘性廃油、木くずの確保を目指し、
運搬や破砕処理、資源集約など地域全体でのリサイクル産業充実にも期待。
自然災着による被害木処理といった地域課題にも応用できる将来性があり、
今後の展開が注目。

「木くずだけでなく、廃畳などを混ぜて混合燃料とすることも。
環境負荷のない処理方法であり、この設備を生かして
さらにリサイクル事業を拡大していきたい」

同工場は、昭和55年に廃タイヤ再生利用認定を取得。
昭和60年には、各種リサイクル資源の受け入れを始めた。
平成10年、ISO14001を取得し、16年からは青森・岩手の
県境産業廃棄物の本格処理を行っている。

廃棄物のセメント資源化による適正処理が評価され、
今年度の循環型社会形成推進功労者環境大臣表彰を受けることが決まった。

http://www.tohkaishimpo.com/

子どもの運動能力下げ止まり 中学男子に向上の兆しも

(朝日 2008年10月12日)

低下傾向にあった子どもの運動能力が、この10年で下げ止まって、
中学生男子は向上の兆しが見える――。
文部科学省が発表した体力・運動能力調査。
今年の調査は、07年5~10月に全国で実施。
6~79歳の約7万人の結果を集計。

6~19歳については、ピークだった85年ごろと比較して、
「走る(50メートル走)」、「跳ぶ(立ち幅とび)」、「投げる(ソフトボール投げ)」
などの基礎的な運動能力が低下。
11歳の50メートル走は、男子が85年の8.75秒から8.91秒に、
女子が9.00秒から9.19秒に。

種目を増やして「新体力テスト」を導入した10年前と比べると、
「50メートル走」、「ハンドボール投げ」などは横ばいで、
「上体起こし」などは向上し、低下傾向に歯止めがかかっている。

中学生の13歳でみると、男子は50メートル走が8.00秒から7.94秒、
女子が8.82秒から8.79秒に短縮。
ハンドボール投げでも、男子は21.89メートルから22.03メートル、
女子は13.91メートルから14.10メートルに向上。

順天堂大の青木純一郎名誉教授は、「85年前後から低下し続けていた
子どもの体力が下げ止まり、中学生男子では向上の傾向。
指導者が効率良く指導している成果などが背景にあるのでは」

http://www.asahi.com/health/news/TKY200810120187.html

ものづくり(5)中学生向けの企画模索

(読売 10月11日)

ものづくりのすそ野を広げようと、大学や教育委員会が模索する。

岐阜大学に、はしゃいだ声が響いていた。
小学生が、手に持ったプロペラ式模型飛行機を飛ばしている。
着地した時に、プロペラ部分が外れて壊れてしまっても笑顔は消えない。
すぐに修復が可能だからだ。
男児の1人は、「針金での固定の仕方がよくなかったのかな」と教室に戻った。

同大教育学部の技術教育講座が主催し、8月初めに行われた
「こどものためのものづくり教室」。
小学1年から中学3年までの100人が、大学生や大学院生に教わりながら、
飛行機、銅鏡、げた、ラジオ作りに励んでいた。
銅鏡作りは、女子向け。げた作りは、ゲゲゲの鬼太郎ブームを反映。
子供4人に指導役が1人。分からなければ、すぐ聞ける。
接着剤やカッターを初めて使った子も。

講座は、中学校の技術科の教師を目指す学生が属するだけに、
準備は学生に任されている。
材料を集めたり、木にドリルで穴を開けて準備したり。
子供に分かりやすいようにまとめた説明書も作る。
準備を通して学生に、ものづくりを経験させる狙いも。

今年で10年目を迎えた企画を見続けた担当の吉田昌春教授(65)は、
「カッターを使ったことのない小学生が依然として多い。
学校でのものづくり体験が少なすぎる」と危機感を募らせる。

これまでの参加者は、延べ881人。
繰り返し、参加する子供も多いとはいえ、課題は中学生の参加者の少なさ。
今年も全体の1割にとどまった。
吉田教授も、「中学生を引き付ける題材も、何か考えていかなければ」

東京都教育委員会が、費用の半額を補助する形で、昨年から始めた
「わくわくどきどき夏休み工作スタジオ」も、事情は同じ。

今年は、工業高校6校で教諭が講師となった。
参加費は1000~2500円で、小中学生1282人に、手作り時計や指輪、
キーホルダーなどの製作を指導。
小学生の参加希望者が定員の3倍近くあって、抽選で参加者を
絞り込んだのに対し、中学生の参加者は346人にとどまっていた。

中学生の参加は、企画次第ともいえる。
都立工芸高校では、中学生の参加者のほぼ3分の1に当たる
111人が足を運んだ。
エコバッグやデザインクロック、銀のスプーンの製作など、
やや大人向きの題材を選んだ。

都教委の担当者は、「夏休み中の中学生は、部活動や進学準備で忙しく、
なかなか引き込めていないのが現状。
題材を工夫しながら、全体の企画数を増やしていけば、
中学生の参加者増が見込めるのでは」

小学生には受け入れられやすい、ものづくり体験教室。
その流れを断ち切らず、いかに中学生の参加を増やすか、
模索が続いている。

◆中学校のものづくり教育

1998年改訂の学習指導要領は、「技術・家庭」の3年の標準授業時数を、
従来の年70~105時間から35時間に減らした。
新指導要領も、この時間はそのまま。
新たに3年間で、「生物育成に関する技術」など4項目を必修化するため、
現場からは、工作的なものづくりの時間が足りないと言う声も。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081011-OYT8T00265.htm

2008年10月17日金曜日

乳由来の多機能たんぱく「ラクトフェリン」に内臓脂肪の低減作用

(日経ヘルス 10月10日)

ライオンは、京都府立医科大学の西野輔翼教授、
京都市立病院の吉田俊秀教授、名古屋市立大学大学院医学研究科の
飯郷正明客員教授らと共同で行った臨床試験により、
牛乳や母乳に含まれるたんぱく質「ラクトフェリン」が、
人間の内臓脂肪を低減させる作用を持つことを確認。

ラクトフェリンは、牛乳や母乳などに含まれるたんぱく質。
抗菌作用や免疫作用をはじめとする様々な作用を持ち、
乳児の健康を守っている。

ライオンは、こうしたラクトフェリンの機能性のうち、
特に歯周病予防作用に着目し、
「研究の一環として、ラクトフェリンを犬やマウスなどの動物にのませたところ、
特にマウスとラットで内臓脂肪の蓄積が明らかに少ないことに気がついた」
(研究開発本部の村越倫明主任研究員)。

マウスやラットは、胃の消化機能が弱く、
食べたものを主に小腸で分解して体内に吸収する。
ライオンは、ヒトがのんでも胃で分解されず、腸まで届くように
皮膜でコーティングしたラクトフェリンの腸溶剤を開発し、
これを用いて、20代以上の肥満傾向のある26人を対象に、
二重盲検法にて、8週間の臨床試験を行った。

結果、腸溶剤を1日300mgのませたグループは、
のませなかったグループに比べ、内臓脂肪面積や腹囲、体重、BMIが
有意に減ることを確認。

ライオンでは、「ラクトフェリンが、どのような経路で吸収・代謝され、
脂肪細胞にどう作用するか、詳しいメカニズムを明らかにしていくのが
今後の課題」(村越主任研究員)。
今回の研究成果は、第29回日本肥満学会大会で発表の予定。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20081010/102741/

水泳ビジネス 北京攻略

(読売 9月25日)

「金のために、これをやっているんじゃない。
金のためだったら、別のスポーツを選んでいた」と
男子競泳界のスーパースター、マイケル・フェルプス(米)は言い切った。

「これ」とは、五輪で1972年ミュンヘン五輪のマーク・スピッツの
金メダル7個と並ぶという目標。
フェルプスは、決して自分の銀行口座をふくらませるために、
競泳の歴史を書き換えているわけではないが、
ついに、スピード社が金7個で支払いを約束していた
100万ドル(約1億580万円)のボーナスを北京五輪で手にした。

北京以前の彼の年収は、340万ユーロ(約5億2700万円)と見込み、
この推定額は現実とかなり隔たりがあるのは間違いない。
競泳界では、イアン・ソープ(豪)は絶頂期に年収600万ユーロ。

ロイター通信が報じた専門家の推計では、
「フェルプス・チーム」の年間売上高は2000万ユーロ(約31億円)に届く。
スポンサーには、VISA、マクドナルド、オメガなどトップ企業がずらり並ぶ。

2002年4月にスポーツエージェントのオクタゴン社の代表、
ピーター・カーライルと会ったとき、フェルプスは17歳にもなっていなかった。
カーライルは、「何が望みか」と尋ねた。
半年前にプロに転向していたフェルプスは、
「水泳を革新したい。スポーツ専門チャンネルで毎日、
水泳が放送されるようにしたい」と答えた。

2人は、成績は必要条件だが、それだけでは不十分だと意見が一致。
天才選手は、過密な大会出場計画を練り上げ、
報道に毎日取り上げられてファンのハートをつかんだ。

アテネ五輪の直後、カーライルは長期戦略を説明。
メディア面でも経済面でも、避けては通れない国、中国に、
2008年まで毎年1回行くべきだ――。それも、スポンサー付きで。

フェルプスは、スピード社、VISAとマクドナルドなどの
違ったスポンサー付きで、4回の中国行きを実行。
北京五輪をゴールに、フェルプス・チームは
思い切った中国征服作戦を取っていた。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/lequipe/

岩手大、年度内にも設立 地域スポーツクラブ

(岩手日報 10月13日)

岩手大(藤井克己学長)は、大学発の総合型地域スポーツクラブ
「がんちゃんスポーツクラブ(仮称)」を年度内にも設立。
スポーツを通じた地域貢献が目的で、
大学の体育施設を開放するとともに、教員や学生のマンパワーを活用。

スポーツ教室の開催や定期的なサークル活動などを展開し、
県民が継続的にスポーツを楽しめる環境づくりを進める。
盛岡を中心に、1000人以上の会員確保を目指す。

「がんちゃんスポーツクラブ」は、子どもから高齢者まで
幅広いスポーツ愛好者の参加を想定。
課題となる運営費は単発のイベント参加費のほか、
会員制による会費運営を検討。

事業は、大学を拠点に構内の施設を活用し、
▽スポーツ教室やイベント開催、
▽テニスやニュースポーツなどのサークル活動―などを展開。
地域のスポーツクラブとの合同企画なども視野に入れる。

教員や学生が指導・サポートに当たり、要請があれば出張講師なども行う。
学生には、クラブでの活動を講義のカリキュラムとリンクさせ、単位化も検討。
陸上やサッカーなど、現役の学生アスリートたちと交流することで、
本県の子どもたちの競技力向上にもつなげたい考え。

クラブ会員が学生選手の応援団となり、大会に駆け付けるなど、
「サポーター的存在」になることも期待。

クラブの運営は、岩手大のスポーツユニオンの事業の一環。
2006年に開設されたスポーツユニオンは、
構内の地域連携推進センターを事務局に、
これまで各地域にある総合型地域スポーツクラブの育成支援や
子どもの体力向上、生涯スポーツ振興などに取り組んできた。

同センターは既に、任意のスポーツクラブの設立準備を進め、
これを土台に「がんちゃんスポーツクラブ」に発展させる方針。

岩手大人文社会科学部の浅沼道成准教授は、
「新たな試みだが、多くの人に参加してもらいたい。
少しでも地域スポーツのリーダー的存在になれるよう努めていく」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081013_3

北京五輪のドーピング検体、再検査へ 新薬物の検出狙う

(CNN 10月9日)


国際オリンピック委員会(IOC)は、8月の北京五輪の選手から
採取したドーピング(禁止薬物使用)検査の検体を、再び検査すると発表。

世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスの出場選手の
ドーピング再検査で、新たな禁止薬物が検出されたことを受けた異例の決定。
北京五輪の検体の再検査は、スイス・ローザンヌにある
世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の研究所が担当。

IOCは、五輪期間中に5000検体以上を検査、
再検査対象となる検体数の数は不明。

再検査では、持久力効果があるとされる
持続性エリスロポエチン受容体活性化剤(CERA)の検出を図る。

IOCは、五輪出場選手の検体を8年間保管し、
新たな検査方法が開発された場合の再検査に対応する体制が整っている。
北京五輪については、これまでに選手6人がドーピング違反で失格、
3人が調査対象。

http://www.cnn.co.jp/sports/CNN200810090007.html

ものづくり(4)学生の発想 ホンダ刺激

(読売 10月10日)

大企業と協力して、ものづくり教育を進める大学がある。

山形市の緑豊かな郊外にある東北芸術工科大学の研究棟には、
これまでの学生の作品を集めて展示した場所がある。
カメラ、かばん、いす……。
一際目立つのが、除雪機のハンドル。
正面に「HONDA」の文字。
2年前、当時3年生だった森泰香さんが作ったモデルを基に、
ホンダの技術者が作った。

多くの学生が、除雪機の外形をデザインしたのに対し、
森さんは操作部分に着目。
既製のものは大型で曲がりにくく、お年寄りや女性が簡単に作業できない。
その発想の面白さをホンダが評価し、
そのハンドルを組み込んだ試作機まで作った。
学生の作品を基に、大企業が技術と費用を投入するのは極めて異例。

同大では2005年から、プロダクトデザイン学科でホンダとの
共同授業を行っている。
一つのテーマで約4か月間、デザインを考え、社員の前で発表。
さらに4か月間で工業用粘土を使ったモデルを作り、
社員や教授らから評価を受ける。

担当の上原勲教授(44)は、ゲーム機から車まで多様な製品を手がける
現役の工業デザイナー。
「デザインというと、提案して終わりという場合が多いが、
体験して気が付いたことを基礎に発想し、自ら金属や木材、化学素材に触れて
モデルを作ることで、改めて気付くことが出てくる」と体験に力を入れる。

ホンダの汎用エンジンを使った耕運機の製作が課題だった初年度は、
大学近くに畑を作り、既製の耕運機を使って野菜を作った。
2年目の除雪機も、学内に積もった雪を実際に取り除いた。

ホンダのデザイナーが、授業で技術的な助言をすることも多い。
アイデアスケッチをその場で描いたり、絵を粘土で3次元にしてみたり。
ホンダの滝沢敏明主任研究員は、
「プロの技を目の当たりにして、面白そう、楽しそうと純粋に思ってもらうことが、
ものづくり日本の復活につながる。
東北芸術工科大の取り組みは、まさにホンダが重視する
三現主義(現場、現物、現実)」

現在は、汎用エンジンの利用をテーマに12人が取り組む。
植樹用の穴掘り機、雨水の浄水装置、日焼け止めミスト噴射機と
様々なアイデアが並ぶ。
同学科3年の長谷川徹さん(20)は、軽い耕運機が硬い土では
使いづらいことに気付き、水を入れて重量を増やすモデルを作製中。

「素朴な疑問で向かってくる学生と接することで、
ホンダのデザイナーにも良い刺激になる」と滝沢主任研究員。
採用に直結したプロジェクトではないが、参加学生のうち、
森さんを含む4人がホンダに就職。
「能力を示せば、試作機が作ってもらえ、就職も出来るかもしれないと、
学生にいい意味の競争意識が生まれている」(上原教授)

同大では現在、キヤノン、東芝などとも同様の取り組みを進めている。
長い目で、種をまくような企業の協力が、もっとあっていい。

◆三現主義

ホンダの創業者本田宗一郎氏が提唱。
「現場に行く」、「現物(現状)を知る」、「現実的であること」ということを
行動指針とし、これら三つの「現」を大切にしていこうという考え方。
同社には、「社長は技術畑出身であるべき」という伝統、
福井威夫現社長まで歴代の社長6人はすべて技術畑出身。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081010-OYT8T00210.htm

2008年10月16日木曜日

バイオ燃料「環境への貢献大きくない」 FAOが指摘

(朝日 2008年10月9日)

国連食糧農業機関(FAO)は、08年の「世界食料農業白書」を発表、
食糧価格高騰の一因とされるバイオ燃料について、
「現状では、温暖化ガス排出抑制への貢献は期待されたほど大きくない」
補助金などで、自国での生産の促進を図る
一部先進国の拡大政策を見直すよう求めた。

「世界食料農業白書」は、FAOの活動の基となる年次報告。
今年は、6月の食糧サミットで、バイオ燃料が各国の食糧輸出規制とともに
焦点となったことから、その温暖化対策としての効果と食糧危機への影響の
分析が中心となった。

白書は、バイオ燃料が原料のトウモロコシなどの生育過程で
温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収するとされる点について、
環境への効果は製造に費やされる電力や地域条件によって異なると指摘。

温暖化対策としての効果も、現状の技術では原料作物の耕作地に
緑地や森林が転用されることでかなり相殺され、
作物によっては結果的に石油などの化石燃料を使用するより、
温暖化ガスを増やす可能性さえある。

食糧以外の原料を使う第2世代を含むバイオ燃料全体の将来性にも触れ、
「危険と同時に可能性がある」と指摘。
ディウフFAO事務局長は、「恩恵は広く共有する必要がある」として、
先進国がバイオ燃料の自国での生産拡大のために導入する補助金など、
「途上国が市場に参加する機会を妨げている」と撤廃を求めた。

http://www.asahi.com/eco/TKY200810090271.html

スポーツ界から見た温暖化防止、北島選手らが重要性訴え

(読売 10月12日)

アテネ、北京両五輪で金メダルを獲得した
競泳の北島康介、柔道の谷本歩実両選手らが、
「スポーツと環境 グリーンアクションフォーラム」
(日本オリンピック委員会主催、読売新聞など後援)に参加、
スポーツ界から見た温暖化防止の重要性を訴えた。

ビデオ参加したフリースタイルスキーの上村愛子選手が、
「近年雪が少なく、大会中止が相次いでいる。
孫たちにも、スキーの楽しさを残したい」とアピール。

北島選手は、「環境問題が注目された北京五輪を体験し、
日本に五輪が来たら何が出来るか考えた。
2016年東京五輪(への機運)を盛り上げ、
環境面でも子供たちにメッセージを送りたい」

フォーラムは、日常生活で行動する大切さなどをうたった決議を、
選手が読み上げて閉幕した。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20081012-OYT1T00574.htm

てんかん症状持つラット、弘前大学院が世界初開発 新薬やメカニズム解明へ

(毎日新聞社 2008年10月10日)

弘前大大学院医学研究科などでつくる
「日本てんかん・熱性けいれん遺伝子解析グループ」(代表・兼子直教授)は、
睡眠中に起こる前頭葉てんかんの患者と類似した症状を持つマウス
「モデルラット」の開発に世界で初めて成功。

てんかんの新薬開発や発症のメカニズム解明などにつながる画期的な開発で、
研究成果は近く、米の専門科学誌に掲載。

実験用のマウスなどはこれまで、電気ショックを与えるなどして
人工的にてんかん状態にし、研究に利用。

研究グループは、実際の前頭葉てんかん患者の遺伝子を取り出し、
組み換えたものをラットの卵子に移植。
生まれてきたラットが、てんかんを患っているかどうかをみた。

その結果、てんかん患者の症状と類似した発作が表れたほか、
てんかん薬の投与で発作の改善もみられ、
人の患者と同様の状態になっていることが分かった。
モデルラットの特許を既に取得し、京都市の会社から販売される予定。

国内のてんかん患者は、約72万人いると推定、
兼子教授らは今回のラット開発について、
「根治療法やてんかん防止薬の開発などにつながる突破口になるはず」と期待。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81168

ものづくり(3)学内の橋、広場など自作

(読売 10月9日)

ものづくりの実践を重視した大学がある。

ものつくり大学(埼玉県行田市)には、学生が設計から施工まで
担った広場、あずま屋が点在する。
校舎間をつなぐ二つの連絡橋も学生の作品。
学部は、技能工芸学部(建設技能工芸、製造技能工芸)だけで、
定員は1学年360人、12万平方メートルという
広いキャンパスを十分に生かしている。

今夏には、キャンパス内の調整池にも橋を架けた。
歩道橋など小さい橋を研究している増淵文男教授(60)が発案した
建設技能工芸学科3年の実習。

二つの連絡橋は、大手ゼネコンで現場所長を務めた経験のある
非常勤講師4人の指導を仰ぎながら、足場作りなど工事の基礎から始め、
それぞれ2年がかりで完成。

調整池の橋は、環境重視でコストの低い浮橋。
発泡スチロールをコンクリートで固めた浮体を、ロープでつないだ。
池に生えていた約3メートルのアシを引き抜き、
大型クレーンを使って橋を浮かべた。
学生たちは図面を見ながら、浮体のパーツを作っていった。

「教授の指摘を受けて確認したら、図面にミスがあることがわかった。
そんなことの繰り返しだった」と建設技能工芸学科3年の菊池康太さん(21)。
「図面を書くことは上手でも、実際に想像できなければ意味がない。
本物を造ることで、その想像力を養いたい。
実際に完成したものを見たことがないと、どこが違うのかも分からないこともある」

同大は、ものづくり日本を復活させる人材を育てようと、
国や県の補助、寄付を得て2001年に開学。
土地は行田市の提供。
開学前、建設推進母体の一員だったケーエスデー中小企業経営者福祉事業団を
巡る汚職事件が発覚し、学生募集に苦戦したが、
今では全国から集まるようになった。
工業高校出身者が学生の3割を占める。

従来の理工系大学は、実技よりも理論を重視する傾向があったが、
同大では実践的な力のあるエンジニアを育てることに力を入れる。
神本武征学長は、「企業側から『大学の機械科を卒業しているのに、
スパナの使い方も知らない学生がいる』といった声も聞く。
しっかりとものを知った上で設計、開発出来る人材を育てたい」

教授25人のうち18人までは、民間企業の技術者や研究開発に携わった
経験がある人をそろえた。
316人いる非常勤講師には、大工や左官職人、国際職業訓練競技大会の
金メダル受賞者を並べた。

就業体験も重視する。
製造技能工芸学科は3、4年に各40日間、建設技能工芸学科では
2、4年で各40日間、大手ゼネコンや工務店、設計事務所などで働く。
授業の一貫だから、終了後にはリポートの提出が義務。

これまで4年間の卒業生の就職率は、93~99%。
この評価を定着させるには、企業の中でいかに力を発揮できるかが重要。

◆多額の補助金投入

1990年代、財界からの声を受けて、旧労働省所管の公益法人が
“職人大学”の設立を計画。
国が約83億円、埼玉県が約30億円、行田市が約24億円を補助、
産業界からも約3億8000万円の寄付を受けて、2001年に開学。
計画段階の仮称は「国際技能工芸大学」だったが、
現総長の哲学者、梅原猛氏が「ものつくり大学」と命名。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081009-OYT8T00235.htm

2008年10月15日水曜日

ホッケーの町に栄光の樹 岩手町で五輪記念し植樹

(岩手日報 10月11日)

岩手町出身のホッケー日本代表・小沢みさきさん(23)
=富士大大学院、沼宮内高―富士大出=の北京五輪出場を記念する
植樹式は、同町子抱の町ホッケー場で行われた。
植えたのは、五輪由来の「栄光の樹」。
次なる栄光を目指し、五輪と町を結ぶ象徴とする。

「ホッケーの町」を掲げる同町から初の五輪選手となった小沢さんと、
今年8月の全日本中学生選手権大会で優勝した一方井中女子前主将の
高橋真唯さん(3年)、民部田幾夫町長が
高さ約1メートルのドイツカシワの苗木を植えた。

植樹は、町民ホッケー大会の開会式に先だって行われ、
ユニホーム姿の児童生徒ら約200人があこがれのまなざしで見守った。
標柱には、「勝利の栄光のために成長せよ」と記され、
高台からグラウンド全体を見渡す。

小沢さんは、「次回ロンドン五輪では、チームにとって欠かせない
存在となるため、この4年間で成長したい。
岩手の後輩たちも五輪を身近に感じ、夢を持って頑張ってほしい」

苗木は、1936年のベルリン五輪三段跳びで優勝した田島直人選手が
副賞として母校の京都大に持ち帰ったドイツカシワの子孫で、
栄光の樹についての著書がある滝沢村滝沢の小山尚元さん(70)が
自宅で種子から育てた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081011_13

肺がん克服「役立てる機会に」 フィギュア・井上がCM出演

(朝日 2008年10月9日)

日本出身で、フィギュアスケートの米国ペア選手として活躍する
井上怜奈(31)が、がん保険のテレビCMに出演。

肺がんを克服して、06年トリノ五輪代表になった井上は、
「私の姿を見て励まされたという声を聞くと光栄。
多くの人に役立てる機会が持ててうれしい」

20歳の時、父雅彦さんを肺がんで亡くし、
98年には自分にも同じ病気が見つかった。
だが、これを乗り越え、00~01年シーズンから
ジョン・ボルドウィン(34)とペアを組み、06年全米選手権で優勝。
トリノ五輪に出場。

生きる強さに注目したアメリカンファミリー生命保険会社が出演依頼。
07年世界選手権(東京)の後、井上は現役引退を表明したが、
今年初めの全米選手権から復帰。
08~09年シーズンは、24日からのグランプリシリーズ開幕戦、
スケートアメリカに出場する。

「今は精神的にモチベーションもあげてやっていける。
バンクーバー五輪とかあまり先のことを考えず、
次にあるイベントや試合に集中していくだけ」

http://www.asahi.com/sports/spo/TKY200810090105.html

つながる生命(下)照葉樹林守った「知恵」

(読売 10月10日)

シイやカシのこずえが、天を覆う石畳の道をゆく。
朝露にぬれ、フジつるが絡む昼なお暗い照葉樹の森。
沢のよどみにトノサマガエルが身を潜め、切り株の根元を青大将が横切った。

奈良市街の東に鎮座する春日大社。
裏手に控える御神体の「御蓋山」を取り囲むように、
「春日山原始林」が広がる。

地元の人たちが、今も「神の山」と敬う聖域である。
「続日本後紀」によると、狩猟や伐採が禁じられたのは841年。
以来ほぼ手つかずの自然が保たれてきた。
そのほとんどは、今も一般の入山が許されていない。

なぜ先人は森を守ろうと決めたのか?
鹿島大明神が御蓋山に降臨したという伝承を別にすれば、
水がカギを握るとの見方が有力。

春日大社禰宜の今井祐次さん(47)によると、
原始林一帯は古都奈良の水源。
春日大社を挟んで流れる能登川と水谷川は、別々の河川に流れ込んで
名前を変え、それぞれ佐保川と合流。最後は、大和川となって大阪湾に注ぐ。

御蓋山の山頂には本宮神社、奥山の尾根筋にも社が点在。
御神体山に向かって、神職が唱える祝詞が毎朝、春日大社の本殿に響く。
厳かな光景は途切れることなく続いてきた。

森を敬う文化は、アジアの各地にある。
東京のNPO「ヒマラヤ保全協会」が植林活動を続けてきた
ネパール西部のナンギ村。
事務局長の田野倉達弘さん(45)は、村人から深い緑の森に案内。

人口増による薪炭材の需要増で、森林破壊が進む風景のなか、
そこだけは苔むす倒木が折り重なる照葉樹林。
「デウタ」という神が住むと村人が信じる森には、泉もわき出していた。

暮らしの基本は、焼き畑や水田農業。
納豆やモチを好んで食べ、漆や養蚕の技術にも優れる――。

ネパールからブータン、中国中南部を経て、西日本まで続く照葉樹林帯。
民族植物学者の中尾佐助(1916~93)は、
この一帯の文化や習俗に共通点を見つけ、「照葉樹林文化」と名づけた。
独自の文化論は、宮崎駿監督のアニメーション作品にも大きな影響を与えた。

アジア各地を調査した国立民族学博物館の佐々木高明名誉教授は、
「照葉樹林文化の底流にあるのは、伝統的な焼き畑農耕。
そこに共通するのは、神々が支配する森林を借り、
耕作の後に再び神に返すという考え方。
水田農業にも、里山の多様な自然と共存する知恵が生きている

森は水を蓄え、多様な生き物たちをはぐくむ。
アジアの森林破壊に歯止めをかけるため、
先人の知恵に学ぶべき点は少なくない。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20081010-OYT8T00469.htm

ものづくり(2)映画セット 学生の手で

(読売 10月8日)

映画制作を通じて、学生たちに手作りの価値を伝える大学がある。

コンクリート打ちっ放しの作業場で、
学生たちが劇場用映画「築城せよ!」のセット作りに汗を流していた。
愛知工業大学にある「みらい工房」。
学生の創作活動を支援するため、工作機械などを備えている。
映画は、来年の同大開学50周年を記念して制作、来夏に公開予定。
大学はスポンサーで、ヒロインは愛工大生という設定。

学生たちは、ベニヤ板を3人がかりで力いっぱい丸め、
電動工具で木枠に打ち付ける。
全長4メートルほどの筒状のベニヤ板が、映画の中では「井戸」に。
工房の隅には「石垣」が積まれていた。
発泡スチロールの表面をバーナーで焼いて凹凸を作り、塗料で色付け。
工学部4年の高木章広さん(21)は、
「劇場でこのセットがどんな風に映るのか楽しみ」

高度な機器を駆使してハイテクを学ぶことも大切だが、土台はあくまで手作り。
そんな考え方に立って、同大は8年前から選択科目
「ものづくり文化」を開いてきた。
トヨタ自動車の技術者をはじめ、作家、写真家など、
様々な分野のスペシャリストからものづくりの本質や魅力を聞く。
講師はすでに40人を超えた。

5年前にできた「みらい工房」では、「ものづくり文化」の受講生が、
山車などを作ってきた。
講義を担当する森豪教授(60)は、
「講師の話に興味を持ち、実際に手と足を動かすことで、
パソコンの前に座っているだけでは得られない発想が生まれる」

映画制作は、こうした活動の集大成。
講義を通じてプロデューサーらと知り合い、話が進んだ。

映画は、戦国武将の霊が町役場の職員に乗り移り、
数々の困難を克服しながら、地域住民や大学生らと
段ボールの城を築き上げていくというストーリー。
撮影で実際に作られる城の高さは20メートルだが、
高木さんたち美術班のメンバーは、高さ4メートルほどの縮小版の制作を始めた。

最初は失敗の連続だったが、強度実験を繰り返すうち、
細長く切った段ボールを格子状に組んで何層にも重ねることで、
学生20人以上が乗っても崩れない「天守閣の床」を作り上げた。
この技術が映画の中でも取り入れられる。
「1人では難しくても、仲間と力を合わせれば乗り越えられる」と高木さんは実感。

撮影は、同大周辺で9月25日から始まった。
美術補助やエキストラなど、参加する学生は総勢500人。
11月上旬までの撮影期間中、出演者やスタッフの多くが学内の寮で寝泊まり。
学生は、プロの技術に触れながら映画作りを楽しんでいる。

「多くの人たちの技術と情熱が集結して、映画という一つの作品ができ上がる。
学生に本物のものづくりを肌で感じてほしい」と森教授。
映画の中で、城は最後に壊されるというが、学生たちは完成した作品から
大きな達成感を得るはずだ。

◆「築城せよ!」

監督は古波津陽さん。2005年に「築城せよ。」というタイトルの短編を制作。
主役の町職員と戦国武将の2役を演じるのは、
歌舞伎役者の片岡愛之助さん、ヒロインは海老瀬はなさん。
江守徹さん、阿藤快さん、藤田朋子さんらが脇を固める。
地域住民も、多くがエキストラとして参加。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081008-OYT8T00227.htm

2008年10月14日火曜日

大船渡市民文化会館リアスホール利用説明会開催

(東海新報 10月9日)

大船渡市民文化会館・リアスホールの使用受付説明会。
市側では、利用予約の受付方法や使用料金などを説明。
年内は、施設使用料を無料とする方向で検討、
利用料減免制度は文化団体などに適用されている市内の教育施設と
比較して、限定的な運用となる方針が示された。

同館は10月末の完成、11月15日(土)開館を目指して、
現在整備が進んでいるが、使用受付開始は今月14日を予定。
説明会は、使用方法や申し込み手続きなどについて理解を深めてもらおうと
開催し、市民ら約20人が出席。

説明役は、市民文化会館の志田努館長補佐が務めた。
出席者には、各階ごとの平面図が配布、
大ホールやマルチスペース、図書館部分の機能などについて説明。

市条例で定められた施設使用料も、各スペースや利用時間などに分けて提示。
大ホールは、来場者から徴収する入場料や曜日に応じた金額設定。
入場料は、3段階設けられ、「無料から2千円まで」は同じ使用料。
市民団体が主催して、舞踊発表や音楽会などを開く場合、
入場料が2千円以下が多く、利用しやすい価格設定にした。
受付予約について、使用形態によって受付期間を分ける方針。
志田館長補佐は、「多くの施設をまたがって利用する予約を優先したい」

催事開催として大ホールを使用したり、同ホールと一緒に他のスペースを
使用する場合は、使用日の1年前から1カ月前までの間に予約。
練習目的での大ホール使用は、3週間前から5日前まで。
マルチスペースの催事予約は、6カ月前から1カ月前まで。
会議室、和室、練習室、スタジオの単独使用は、使用日3カ月前から当日まで。
大ホール以外の施設を複数使用する場合は、6カ月前から受付ができる
優遇措置がとられるが、使用日の4カ月前までに申し込む。

当面の対応として、開館から12月末までの使用料は、無料とする方向。
施設全てを対象とするか、一部にとどめるかは現在調整中。
年内は、完成した施設を見学してもらう「施設のお披露目期間」と位置づけ、
大ホールやマルチスペース、展示ギャラリーは
練習目的の使用に限定する方針。

利用料の減免措置について、志田館長補佐は
「広い芸術文化活動や市民活動、一般利用も想定。
特定の方々を優遇する形にはいかず、(減免は)できるだけ限定的としたい」

公益上特に必要な場合には適用する方向だが、
カメリアホールなど市内にある文化施設と同じような適用対象による
減免措置は難しいとの見方。

使用料、利用予約に関する問い合わせは、
市民文化会館(市役所内、電話27-3111内線168、203)

http://www.tohkaishimpo.com/

生体観察に欠かせない技術 オワンクラゲのタンパク質

(共同通信社 2008年10月10日)

生物を構成する細胞やタンパク質の動きを観察し、
病気が起こるメカニズムを解明しようとする近年の生命科学関連の
研究論文で、必ずといっていいほど登場する緑色蛍光タンパク質(GFP)

小さくて目に見えない分子の世界を、明るく照らすこの"道具"の
開発者たちに、今年のノーベル賞化学賞が贈られる。

透明で、100分の1ミリサイズの細胞を観察することは
それ自体、骨の折れる作業。
ところが、生体に起こっていることを本当に理解するには、
その中で化学的な反応を起こしているタンパク質や糖質など、
さらに小さい物質の動きを追うことが不可欠。
これには、通常の光学顕微鏡の能力を超える力が必要。

GFPのすごいところは、最重要なタンパク質にくっつき、
紫外光を当てると緑色の光を発して"目印"となる点。
注目するタンパク質がいつどこで、何をしているのかなどを直接、
目で見ることを可能に。

GFPは、別の生体に組み込まれた時にも、目立った害を及ぼさないため、
生体を生きた状態で見られるという利点。

これを応用すると、細胞間に張り巡らされる血管が、
どのような過程を経て形成されるのかが分かる。
この知識を利用し、がん細胞に栄養や酸素を供給する新たな血管を
つくらせないことで、がんの増殖を抑える研究が進みつつある。

アルツハイマー病では、神経細胞が壊れていく様子を、
感染症では病原体が体内で増殖する過程を観察、
病気の進行を抑える対策を立てるのに役立っている。
薬を投与した際の生体の反応を調べることもできるため、
副作用の少ない薬剤の開発につながると期待。

山中伸弥京都大教授が開発して、世界を驚かせた新型万能細胞
「iPS細胞」でも、必要な遺伝子が働いているかどうかを確認するのに使われた。

ノーベル賞受賞が決まった下村脩・米ボストン大名誉教授は、
家族や研究スタッフも動員、米西海岸の桟橋から長い柄のついた網で
来る日も来る日も海面に漂うクラゲの捕獲を続けた結果、
オワンクラゲからGFPを抽出することに成功。
なぜ光るのか、のメカニズムも明らかに。

最初は、下村さん自身も「何かの役に立つとは思わなかった」。
下村さん自身を含め、その有用性を気付かせてくれたのが、
共同受賞のマーティン・チャルフィーさん。
GFPを生体に組み込み、目印になることを示した。

同じく共同受賞のロジャー・チェンさんは、GFPが出す色の
バリエーションを増やし、さらに使い勝手を良くした。
別々に活動していた3人だが、研究テーマがリレーのように引き継がれ、
大きな業績へとつながった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81183

遺伝子組み換え作物:解禁望む「大国」の畑 フランス、消費者は強い抵抗感

(毎日 10月5日)

燃料費や穀物価格の高騰を受け、
遺伝子組み換え(GM)作物への関心が高まっている。
栽培に手間がかからず、収穫量が多いからだ。

農作物自給率120%超の農業大国・フランスでは、
消費者の抵抗が強く、組み換え作物の商業生産が法律で禁止。
しかし、農家には殺虫剤が不要などの理由で栽培解禁を強く望む声が。
今春まで、3年間組み換えトウモロコシ栽培を続けた農場を訪ねた。

パスカル・メッジさん(30)の畑は、仏南部トゥールーズ近郊に。
メッジさんは、トゥールーズ大農学部修士課程を修了後、
農業機械の会社に就職。
03年、農業をやめた人から土地を借りて転職、
学生時代から関心のあった組み換えトウモロコシの栽培を05年から始めた。

100ヘクタールの畑のうち、トウモロコシは40ヘクタールで、
うち30ヘクタールを組み換えとした。
「トウモロコシ農家にとって、最大の敵は実や茎を食べる害虫のアワノメイガ。
ほら、今年もこんなにやられている」。
メッジさんは、食べられた実の先端を指さした。
菌糸状のかたまりになっている。
害虫を防ぐために殺虫剤を2度散布するが、収穫の2割前後は虫食い状態。

害虫への抵抗性を高めた米モンサント社製の組み換えトウモロコシ
「MON810」からは、害虫が一切発生しない。
ほぼ作付け通りの収穫が見込める。
種子の値段は、組み換えで1ヘクタール当たり135ユーロ(1ユーロは約145円)、
普通種は同100ユーロ。

しかし、普通のトウモロコシには殺虫剤をまかねばならない。
初期段階には同35ユーロ、後期段階には飛行機で散布するため
同50ユーロかかる。
肥料と除草剤などがかかるが、これらは双方同じ。
基本経費でみると、普通のトウモロコシは1ヘクタール当たり
50ユーロ余分にかかることに。

収穫量は、通常トウモロコシが1ヘクタール当たり10・5トンなのに対し、
組み換えは同12トンに達する。
市場価格は年によって変動するが、1トン当たり200ユーロとすると、
1ヘクタール当たり300ユーロの差が出ることに。
メッジさんの組み換えトウモロコシ耕作面積は30ヘクタールなので、
年間1万500ユーロ(約152万円)の収益差。
これは、メッジさんのトウモロコシ畑の年収の3分の1に相当する。

欧州連合(EU)は01年、組み換え作物栽培について、
普通の作物との隔離を条件に解禁した。
フランスでも07年まで、MON810の栽培は認められており、
07年には2万2000ヘクタール(総耕作面積の1%以下)で栽培。

しかし、国民には抵抗感も強く、政府は諮問委員会の報告を受けて
今年2月、国内栽培禁止を決めた。
これに対し、与党の国民運動連合は5月、解禁を求める新法案を提出し、
上下両院で採択され、今後試験を経て最終決定を下すことに。

メッジさんも07年まで3年間栽培し、組み換え作物に抵抗の少ない
スペイン市場に出荷していたが、今春禁じられたため現在は栽培していない。
試験栽培は認められるものの、実際は反組み換え団体が耕作を妨害するため、
事実上、農家での栽培はできない状態。
==============
◇安全性、長期データが必要-パリ第11大研究員、クリスチャン・ベロー氏

-MON810が虫を殺す仕組みは?

MON810は、昆虫病原菌の一種、バチルスチューリンゲンシス(Bt)の
遺伝子を導入してBtたんぱく質を作る。
昆虫の消化液はアルカリ性のため、Btたんぱく質を完全に消化できない。
残ったものが、昆虫の腸にある受容体に結合し、
栄養素が吸収できなくなり、昆虫は餓死する。

-人間はどうか?

人間など哺乳類の消化液は酸性で、Btたんぱく質をアミノ酸に分解。
受容体もないため、食べても害はない。
Bt遺伝子を導入する際、「促進剤」を使うため純粋ではなく、
「変形Btたんぱく質」となる。
これが未知の作用をもたらす疑いが残る。
影響を詳しく知るには、動物での長期実験データが必要。

-交雑は起きないか?

◆花粉は重いので、多くは遠くまで飛ばないが、2割は分からない。
受粉時期がずれるように植えても、遠くに飛んだ場合、どうなるかは不明。

-殺虫剤をまいても、普通のトウモロコシの2割は虫食いになるというが。

◆同じ畑で連作すれば、虫の卵などが残り、翌年も発生。
有機農業の基本は、同じ畑で毎年作物を替えることだ。
そうすれば、害虫は発生せず殺虫剤も不要。
(組み換え作物に頼らなくても)有機農法で、虫と菌を避けることができる。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081005ddm016040040000c.html

ものづくり(1)僕らの人工衛星 高専5年間没頭

(読売 10月7日)

高等専門学校の学生が、宇宙に思いをはせる。

東京都立産業技術高等専門学校電子工学科5年幕田竜さん(20)は、
荒川キャンパス内の教室にできた手作りのクリーンルームにいた。
水色の除菌服、帽子、マスク姿で取り組んでいたのは、
1辺約15センチの立方体にフタを取り付ける作業。

立方体の正体は、超小型人工衛星。
宇宙航空研究開発機構が打ち上げるH2Aロケットへの搭載が決まっている。
打ち上げ時期は、今年度中の予定。

同校は2年前、荒川区の航空高専と品川区の工業高専の都立高専2校が
合併して誕生。公立大学法人首都大学東京が産業技術大学院大学を新設
東京都は今年度から、同校も同法人の傘下に組み入れた。
この結果、高専で通常の5年の後、専攻科で2年学び、
さらに大学院の修士課程に進めば、計9年間、
ものづくりの一貫教育を受けることが可能に。

高専生の作った人工衛星を宇宙に飛ばすプロジェクトは、
石川智浩准教授(32)が2003年に赴任、
宇宙科学研究同好会の学生たちに声をかけて始まった。
石川准教授は、北海道工業大学で超小型衛星システムを研究、
「大学院まで続けて、無重力実験施設での実験までしかできなかった。
15歳から始めれば、より深いところまで到達できる」。

石川准教授から声がかかるまで、同好会は衛星設計コンテストに
参加する程度で、ものづくりまではやってこなかった。
最初に手を挙げたのは2人。
だが、すぐに幕田さんら新入生3人が加わり、現在は15人。
他の教授や准教授もプロジェクトに加わり、
この5年間で衛星づくりに取り組んだ学生は約40人。

学生が、特別な技術を持つわけではない。
夢のある話も、学生が実現性を感じなければ、力が入らない。
石川准教授は、製作工程を200以上に細分化した。
難しく見える作業も、簡単なことの応用を繰り返すだけという
認識を持たせるため。
メンバーの役割は、電源担当、通信担当、カメラ担当などに分かれ、
幕田さんは、衛星を回転させる装置を担当。

予算が少ないため、材料は秋葉原の安売り店や通販で購入することが多い。
ゴミ捨て場で廃材集めもした。
金属加工など特殊な技術が必要になると、学生たちも近くの工場を回った。
「夢のあることだ。早く相談してくれればよかったのに」と
協力を快諾する経営者が現れ、衛星を囲う金属パネルを
厚さ1ミリ単位で削って組み合わせてもらうなど、採算度外視で協力。
東京商工会議所荒川支部主体の
「荒川区から衛星打ち上げを応援する会」も生まれ、寄付金も集まるように。

宇宙航空研究開発機構の審査には、2年前に通った。
東大、東北大、香川大の人工衛星と一緒に搭載。
宇宙では、地球からの指令を受けて、人工衛星を移動させたり、
地球や宇宙空間をカメラ撮影して画像を地球に送信したりする。

5年間をこのプロジェクトにささげてきた幕田さんは、
「入学当時、ものづくりの経験はほとんどなかった。
好きでやる気があれば、何でもできると実感した」。

石川准教授は、「学生の興味は様々。こういうプロジェクトがたくさんあれば、
ものづくりに参加する学生が増える」と期待。
新たに、金星方面に行くロケットに搭載される
小型衛星プロジェクトにも取り組み始めた。

ことあるごとに口にされる、ものづくり大国復活への期待。
まず若者に興味を持たせ、ものづくりにのめり込むきっかけを
提供することが肝心だろう。

◆製造業離れ 対策進む

日本の経済成長を支えてきた、ものづくりの基盤が揺らいでいる。
少子高齢化による人口減少が進む中、ものづくりにかかわる企業で、
工場の海外移転が進んだ上、団塊の世代の大量退職期を迎え、
後継者をどう育てるかという問題に直面。

経済産業省によると、製造業への新規学卒就職者は、
1992年の約34万人をピークに減少、
03年に約13万4200人と過去最低を記録。
その後、若干プラスに転じたものの、92年の半分以下という低水準に。

工業高校の数も、1975年の736校から07年には613校にまで減少。
特に、都市部でその傾向が著しい。
都教育委員会が、企業ニーズに応えるため、
工業高校での資格取得支援やものづくり企業での就業体験に力を入れるなど、
自治体レベルの対策が進む。

経産省や文科省も昨年度から、高校生の企業実習や企業技術者の
学校での実践的指導などを盛り込んだ「地域産業の担い手育成プロジェクト」
を始めるなど、対策に乗り出している。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081007-OYT8T00211.htm

2008年10月13日月曜日

メタボ体質:やせてても 4人に1人、血液数値に異常 重病リスク、正常値の5倍

(毎日 10月5日)

肥満度を示す体格指数(BMI)が「やせ」(18・5未満)でも、
血糖値など血液検査の数値が特定健診(メタボ健診)の基準値を
超えている割合が、4人に1人に上ることが、
日本医療データセンターの大規模解析で分かった。

こうした人は、心筋梗塞などの重大疾患を起こす危険性が正常な人の5倍。
肥満の人だけでなく、やせた人も検査値に注意を払う必要性が浮き彫りに。

センターは、全国の健康保険組合と契約し、加入者の情報を匿名で分析し、
病気の傾向や治療などの評価に取り組む企業。
06年4月~07年3月に健診を受けた男女5万2265人(30~59歳)を
対象にデータ解析。

「やせ」の人のうち、血糖値、血中脂質、血圧のいずれかが
特定健診の基準値を超えた人は25・6%。
BMIが、18・5以上25未満の「標準」で51・3%。
「肥満」(25以上)では81・6%。

心血管疾患や糖尿病の合併症などを発症した「肥満」は、
「標準」、「やせ」に比べ2~3倍。
基準値を超える検査値があった人の発症率を正常値の人と比べると、
「やせ」は5倍、「標準」は3・4倍、「肥満」は3・1倍と、
やせているほど検査値の異常が影響を及ぼしていた。

今春始まった特定健診は、腹囲など肥満に関する数値が
健診の必須項目。
肥満でない人は、健診後の指導対象から外されている。

データを解析した佐藤敏彦・北里大准教授(公衆衛生学)は、
「スリムでも血液検査に問題がある人は、早めの対策が必要」

http://mainichi.jp/select/science/news/20081005ddm001040082000c.html

益川さんと小林さん、文科相ら表敬…教育行政を手厳しく批判

(読売 10月10日)

ノーベル物理学賞の受賞が決まった京都産業大教授の益川敏英さんと
日本学術振興会理事の小林誠さんが、
塩谷文部科学相と野田科学技術相を訪問。

益川さんは塩谷文科相に、大学受験などで、
難しい問題は深く考えず、易しい問題だけを選んで解くよう指導している
学校の現状を指摘。

「これでは、考えない人間を作る『教育汚染』だ。
親も、じつは教育熱心じゃなくて、『教育結果熱心』だ」
と教育のあり方を手厳しく批判。

小林さんも、「検定教科書には、必要最低限のことが書いてあるだけ。
もっとストーリーが必要」と、読む気を失わせる教科書の現状に苦言を呈した。

野田科技相が、「雲の上の人が地上に降りてきた感じ」と
緊張気味にあいさつすると、益川さんは「ひねくれものですから」と恐縮。
言葉少ない小林さんは、「(しゃべりは)益川さんに任せてますから」と笑顔。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081010-OYT1T00311.htm

第2部 かけ橋として/1 若手研究者らユニーク活動

(毎日 9月28日)

国民の「科学離れ」が問題になって久しい。
近年、科学の魅力やその成果の意義を分かりやすく伝える
「科学コミュニケーション」の重要性が認知され始めてきた。
「理系白書」’08第2部は、さまざまなやり方で
「科学と社会をつなぐかけ橋」となっている人々を紹介。

「信じられない。本当に宇宙に行って見ているみたい」
秋の訪れを告げる虫の鳴き声が響く、国立天文台(三鷹市)のグラウンド。
大型双眼鏡で月面をのぞいた同市在住の吉武リマさん(44)が、
興奮気味に歓声を上げた。

「中秋の名月」を翌日に控えた9月の晩、外国人を対象に開かれた「観月会」。
近隣に住む留学生や家族連れら約40人が参加。
ススキが飾られ、月見団子も振る舞われた。

企画したのは、天文台で学ぶ学生や若手研究者らで作る
天文学普及プロジェクト「天プラ(天文学とプラネタリウム)」。
中心メンバーで、超新星を観測して宇宙の膨張の様子を研究している
高梨直紘さん(28)=国立天文台広報普及員=は、
「言葉という障壁を持つ人たちにも、天文学の魅力を伝えたかった」

この日は、三鷹国際交流協会と連携し、日本語、英語、ハングルで、
月見の風習の説明、月や木星の観望会などがあった。

ロシアから来日し、同市に住んで13年になるという吉武さんは、
「初めて望遠鏡で月を見たが、オレンジ色のような黄色のような
素晴らしい色だった。地元に天文台があることを今まで知らなかったが、
大人も子どもも感動できるよいイベントだと思う」

「天プラ」は03年、当時東京大の大学院生だった高梨さんと
平松正顕さん(27)=現・台湾中央研究院研究員=が、
プラネタリウムと協力して、天文学を一般の人に普及しようと始めた活動。
2人は学部生のころ、東京大の文系学生対象に天体観望会を開いていた。

「将来の官僚候補に、天文学の応援団になってもらおう」という
“下心”があってのことだったが、
経済学者を父に持つ高梨さんには別な思いも。

世界には、1日1ドル以下で生活している貧しい国がたくさんあるのに、
研究に年間数十億円などと気軽には言えない。
なぜこの研究をするのか、どこが面白いのかを
一般の人にきちんと説明できないとだめだ」

学会などで同志を募ったところ、約30人が集まり、
科学館やプラネタリウムで天文教室を開くなどの活動を始めた。
しかし、「科学館などには、元々科学に興味を持っている人しか来ない」
(高梨さん)ことに気づき、より多くの人に訴えかける方法を模索。

着目したのが、「天文グッズ」。
誰でも毎日使うトイレットペーパーに、星の一生を描いた絵と解説文を
印刷することを発案し、企業の助成金で試作品を作った。
05年に売り出したところ、約3万5000個を出荷するヒット。
天文学の用語を織り込んだ「あすとろかるた」や、ネット上のゲームなども作った。

科学館や天文台を飛び出し、都心の盛り場やデートスポットなどに
天体望遠鏡を持ち込んで、道行く人々に惑星や星団など
さまざまな天体を見せる「ゲリラ観望会」もたびたび開いた。
天文教室などでは、研究者が敬遠しがちな宇宙人の話なども積極的に取り入れる。

最近、天プラが取り組んでいるのは、
冒頭の外国人向け観月会のような、ターゲットを絞った普及活動。
「よく『科学の面白さを市民に伝える』と言うが、
この場合の市民とは具体的に誰なのか?
それをはっきり意識し、相手の求めるものを提供しないと、
研究者側の独りよがりになってしまう」。

乳幼児を持つ母親のために、託児所付きの観望会を開いたり、
入院患者のために病院に望遠鏡を持ち込んだことも。
一方で、富裕層を狙い、豪華客船を使った
日食観望クルージングを運航会社に提案。
次から次へとユニークな活動を展開するバイタリティー。

「天プラは、あくまで趣味の延長で、まずは自分たちが思い切り
面白がることが大事」と強調する高梨さんは、
「研究にも普及にも力を注げる、新しい職種を生み出すことが目標」

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20080928ddm016040006000c.html

日本人3氏がノーベル物理学賞に輝いた理由

(サイエンスポータル 2008年10月8日)

南部陽一郎、益川敏英、小林誠の3氏に、
ノーベル物理学賞が贈られることが決まった。
この快挙について、新聞各紙は、3氏の業績が早くから内外に
広く知られたものであり、受賞は遅すぎるくらいである、と一様に伝えている。
「南部陽一郎氏が、『自発的対称性の破れ』をまとめたのは1961年、
『小林・益川理論』の発表は73年。評価されるまで47、35年待たされた」(読売)。

また読売は、「2004年のノーベル物理学賞の際、
スウェーデン王立科学アカデミーは発表資料の中で、
『ナンブの理論は正しかったが、おそらく早すぎた』と
異例の長文で言及」していたことも紹介。

日経も、駒宮幸男・東京大学素粒子物理国際研究センター長が、
「2004年のノーベル物理学賞は、素粒子のクォークの振る舞いに関する
研究で成果を上げた米国人らが受賞したが、その基礎の理論は
南部先生のオリジナルな仕事だ」、
益川、小林氏の業績についても、「小林・益川理論は、現在も素粒子分野の
論文の被引用件数で世界歴代2位を誇る」(産経)、
その重要性が詳しく紹介。

なぜ、ことし3氏がようやく受賞の栄誉に輝くことになったのか?
益川氏は、「ノーベル賞の出し方には、規則性がある。
昨年までは絶対ないと思っていたが、ことしはある程度予測していた」(東京)

規則性とは何か、まで益川氏は明らかにしなかったが、
なぜことしだったかを推測する事柄を、各紙の記事から探すことができる。
3氏の研究業績の根源にある疑問、「質量の起源」を探る
「壮大な実験が、9月からジュネーブにある欧州合同原子核研究機関(CERN)
の新しい加速器LHCで始まった」(朝日)。

「大型加速器『LHC』は、陽子同士を高速に近い速さで衝突させ、
宇宙誕生直後の状況を再現しようと試み。
その過程で、CP対称性の破れがどのように生じたか、
課題が解明されることが期待される」(毎日)。

日経は、駒宮幸男・東京大学素粒子物理国際研究センター長による見方、
「来年にも、南部先生の理論をもとに存在が予測されている
未知の素粒子が実験で証明されるはず。
今回の受賞は、そのタイミングだからではないか」

http://www.scienceportal.jp/news/review/0810/0810081.html

2008年10月12日日曜日

中学生向け学習ソフト開発 県教委など

(岩手日報 10月10日)

県教委と県立総合教育センターは、
独自のパソコン学習ソフト「Gベース」を開発したと発表。
県内中学校に配布している問題集「Gアップシート」と、
同じ内容をパソコン上で学習でき、
11月から同センターのホームページで公開する予定。
中学生の学力向上へ、家庭学習などでの活用が期待。

「Gベース」は、学校ごとに配布を検討するID、パスワードがあれば
ダウンロードも可能。
今回活用した「Gアップシート」は2007年、本県の独自教材として、
国語、数学、英語の3教科で作成。
行政が作成した教材のデジタル化は、全国的にも例がない。

開発したのは、数学と英語。国語は、採点が難しいため見送った。
内容はシートと同じだが、パソコン上で「選択」、「反復」、「自学」
できる利点がある。
採点機能も持つほか、得点や学習回数の履歴も一覧表で表示する。

県内でインターネット接続環境にある児童生徒の世帯は、6-7割。
パソコンのない家庭では、従来のプリントで問題に取り組むことに。
同センターの藤原忠雄所長は、
「使いやすさを重視して自主開発したソフト。
全国学力テストでも課題となった本県中学生の家庭学習の定着に
役立ててほしい」と活用を呼び掛ける。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081010_9

つながる生命(中)海育てる 漁師の憲法

(読売 10月9日)

サザエは、殻の穴の直径が500円玉より一回り大きいもの以上、
アワビは殻の直径が10センチ以上に限る――。

大分県北部の国東半島沖に浮かぶ姫島(人口2500人)。
日に焼けた漁師たちが、大分県漁協姫島支店(姫島漁協)に集まり、
翌月から始まる潜水漁のルールに合意。

島には、乱獲を避けるため、明治時代から守り続けられた「憲法」がある。
漁期、操業海域、漁法を細かに定めた「漁業期節」。
魚介類の成長や資源量を踏まえ、毎年12月の漁協総代会で正式に決まる。

年間24日は一斉休漁日。
キスやクルマエビの刺し網漁は、小さい個体をとらないよう、
網目が一定以上の大きさのものしか認めない。
魚を一網打尽にする底引き網漁は一切禁止。

「明治時代、『鯛縛り』という漁法があってな。えらいとれた。
それで、決めごとをやめてしまった時期もあったそうや。
でも2、3年ですぐとれんようになった。苦い経験や」

漁協運営委員長(組合長)の北村昭雄さん(61)は、
和紙に記された漁業期節の束をめくり、
「先人の苦闘が刻まれとる。大きくは変えられん」

「小漁業者ニトリマシテハ死活ニ関スル一大問題……」。
戦前の古文書つづりには、困窮する漁師が規制の緩和を求めた
陳情書がとじ込まれている。
1年の漁獲を左右する総代会が激論になるのは、今も昔も同じ。

島では、クルマエビ、カレイなどの稚魚が毎年300万匹も放流。
「育てる漁業」も、水産資源管理の重要な柱である。

組合長室に、1枚の肖像画がある。
明治中期、姫島で森林組合を創設した中條石太郎(1847~1900)。
薪炭材の需要増で、森林破壊が進んだ時代。
漁協幹部でもあった中條は、私費で見張り番まで雇い、
水産資源保護につながる森の伐採禁止を訴えた。

森林の腐葉土層は、プランクトンや海藻に必要な養分を供給する。
「魚付き林」の大切さを説いた先人を、漁師たちは今も親しみを込め、
「石太郎さん」と呼ぶ。

緑が戻った島で、80年代以降に猛威をふるった松食い虫。
被害木を1本ずつ切り出し、浜に運んで焼く。
伐採跡には、シイやケヤキが植林。
搬出には漁師を始め、多くの島民が協力。
漁協青年部は被害木で魚礁を作った。
ここ数年、被害は下火になっている。

ハタハタの不漁に泣いた秋田の漁師は、禁漁に耐えて漁獲の回復を果たし、
宮城の漁師や市民は、漁場に流れ込む川の上流の山に木を植え続ける…。
漁業と共存する「里海」を取り戻そうという活動が、全国で動き始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20081009-OYT8T00347.htm

ノーベル賞に沸くが…日本の大学、トップ10入りなし

(朝日 2008年10月10日)

英タイムズ紙別冊高等教育版などは、08年世界トップ200大学を発表。
日本からは東京大の19位が最高、100位以内には4校。
ノーベル賞の4人受賞にわく日本だが、
大学では米英に水をあけられている。

04年から始め、研究者による評価、論文の引用数など研究力を中心に、
教育力、企業からの評価、留学生比率などで総合ランクを付けている。
1位は米ハーバード、2位は米エール、3位は英ケンブリッジで、
20位までに米国が13校、英国が4校入った。

日本勢では、東大のほか京都が25位、大阪が44位、東京工業が61位。
トップ200入りは、計10校で昨年より1校減。
先日発表された上海交通大学高等教育研究所のランキングでも、
100位以内は東大、京大、阪大、東北大の4校。

政府の教育再生会議は、昨年6月の第2次報告で、
10年以内に、国際ランキングで日本の大学が上位30校に
5校は入ることを目指す。

ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈・茨城県科学技術振興財団理事長は、
「欧米の大学では、研究者は実力で評価される。
研究力の違いが、ランキングにも反映したのではないか」

◆日本の大学の順位
(英タイムズ紙別冊高等教育版などの「08年トップ200大学」から)

東京(19)、京都(25)、大阪(44)、東京工業(61)、東北(112)、
名古屋(120)、九州(158)、北海道(174)、早稲田(180)、神戸(199)

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200810100155.html

ノーベル賞に沸いているけど… 日本の論文数5位に転落

(朝日 2008年10月10日)

日本の最近10年間の科学系論文数の伸びは、主要国中最低レベルで、
数では中国、英国、ドイツに抜かれて2位から5位に転落。

論文数は、その国の「科学技術力」を示す重要な指標。
ノーベル賞4人受賞にわく日本だが、先行きは必ずしも安泰とはいえない。

オランダの学術情報出版社「エルゼビア」がつくっている
世界中の主要学術誌の約6割をカバーするデータベースから、
スペインの科学情報調査会社「スキマゴ」が集計、
07年の上位20カ国について、97年と比較。

日本の07年の論文数は9万185本で、米国、中国、英国、ドイツに次いで5位。
97年からの伸び率はわずか5%、中国(505%)、韓国(204%)、
ブラジル(159%)、西欧諸国(22~80%)、米国(10%)にも及ばず、
下から2番目。

政府は、「資源に乏しい日本の未来を切り拓く途は、
独自の優れた科学技術を築くことにかかっている」として、
科学技術基本計画を策定。

96~05年度の10年間で、約41兆円の政府研究開発投資をつぎこみ、
06年度からの5年間で約25兆円を投入する目標を掲げているが、
米国(年額17兆円)や中国(同10兆円)よりはるかに少ない。

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200810090308.html