2007年11月16日金曜日

新訳百人一首 いにしえの感性 英文に ピーター・マクミラン杏林大教授

(毎日 2007.11.13)

これまでもたびたび英訳されてきた「小倉百人一首」の新訳が、
米国コロンビア大学出版局から刊行。
訳者は、アイルランド人のピーター・マクミランさん(48)。
杏林大学外国語学部の教授。

「10年ほど前にコロンビア大学で、ドナルド・キーン先生に
日本の古典文学を学びました。このときに『小倉百人一首』と出合い、
日本人の感性が凝縮されたこの詩集に強く引かれました」

詩人でもあるマクミランさんは、これまでの英訳について
「詩的とは言いがたい。むしろ散文といった方がいいかもしれません」。
翻訳にあたっては、英語の詩として成立するように心を砕いた。

百首の中でもっとも手ごわかったのは、小野小町の
≪花の色はうつりにけりないたずらにわが身世にふるながめせしまに≫。

「このすばらしい歌を翻訳するのは、ほとんど不可能。
≪花≫には、≪さくら≫≪美≫≪詩的・芸術的才能≫が、
≪色≫には、≪色≫≪色気≫≪肉欲≫が、
≪うつる≫には、≪色があせる≫≪変わる≫≪散る≫といった意味が込められ、
それらが複合的に絡み合って歌の世界を構築している」。

柿本人麻呂の
≪あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む≫を、
≪ながながし≫に着目して単語を配列するなど、
訳にとどまらず隅々にまで工夫を凝らした。

この英訳を高く評価するキーンさんは、
「ピーター・マクミランによる小倉百人一首の英訳は、
『美しい』の一言で片付けられてしまうことが多かったこの歌集に、
本来の意義と美を回復してくれた。
これまでの小倉百人一首の英訳の中でも、断然最高の逸品」

英訳本はコロンビア大学で、日本の古典を学ぶ学生のテキストとして
利用されることになるが、マクミランさんは別の期待も。

「残念なことに、日本はいま古典とはほとんど縁のない社会に。
私の英訳を通じて、日本人が日本の古典と出合うのも面白いのではないか」。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/071113/acd0711130809001-n1.htm

肥満により引き起こされるインスリン抵抗性における長鎖脂肪酸伸長酵素Elovl6の重大な役割

(nature medicine 10月号)

インスリン抵抗性は、しばしば肥満に合併し、2型糖尿病の発症要因に。
これまで知られているインスリン抵抗性を改善する治療法のほとんどでは、
肥満や脂肪肝の改善が先行する。
今回、この法則が必ずしも必須ではないことを示す。

すなわち、インスリン抵抗性と高血糖は、
肥満と脂肪肝が持続的に存在していても、
肝臓の脂肪酸組成を変化させることにより改善される。

パルミチン酸からステアリン酸への変換を触媒する
伸長酵素をコードする遺伝子Elovl6を欠損するマウスを作製。
この欠損マウスを高脂肪食で飼育したり、レプチンを欠損する
肥満モデルob/obマウスと交配させると、肥満になり脂肪肝を呈した。

ところが、Elovl6欠損マウスは、高インスリン血症、高血糖、
高レプチン血症を発症しなかった。
このインスリン抵抗性の改善は、肝臓でのインスリンシグナル分子
IRS­2(insulin receptor substrate­2)の回復と
肝臓プロテインキナーゼCε活性の抑制を伴っており、
結果としてAktリン酸化の回復が見られた。

得られた結果を総合すると、肝臓の脂肪酸組成は、
細胞のエネルギーバランスやストレスとは関係なく作用する、
新たなインスリン感受性決定因子であると考えられる。
この伸長酵素の阻害は、肥満が持続した状態においても、
インスリン抵抗性、糖尿病、心血管病リスクを改善する
新たな治療法となる可能性がある。

[原文]
Crucial role of a long-chain fatty acid elongase, Elovl6, in obesity-induced insulin resistance

Takashi Matsuzaka1,2, Hitoshi Shimano1,2, Naoya Yahagi2,3, Toyonori Kato1, Ayaka Atsumi1, Takashi Yamamoto1, Noriyuki Inoue1, Mayumi Ishikawa1, Sumiyo Okada1, Naomi Ishigaki1, Hitoshi Iwasaki1, Yuko Iwasaki1, Tadayoshi Karasawa1, Shin Kumadaki1, Toshiyuki Matsui1, Motohiro Sekiya3, Ken Ohashi3, Alyssa H Hasty4, Yoshimi Nakagawa1,2, Akimitsu Takahashi1, Hiroaki Suzuki1, Sigeru Yatoh1, Hirohito Sone1, Hideo Toyoshima1, Jun-ichi Osuga3 & Nobuhiro Yamada1

Insulin resistance is often associated with obesity and can precipitate type 2 diabetes. To date, most known approaches that improve insulin resistance must be preceded by the amelioration of obesity and hepatosteatosis. Here, we show that this provision is not mandatory; insulin resistance and hyperglycemia are improved by the modification of hepatic fatty acid composition, even in the presence of persistent obesity and hepatosteatosis. Mice deficient for Elovl6, the gene encoding the elongase that catalyzes the conversion of palmitate to stearate, were generated and shown to become obese and develop hepatosteatosis when fed a high-fat diet or mated to leptin-deficient ob/ob mice. However, they showed marked protection from hyperinsulinemia, hyperglycemia and hyperleptinemia. Amelioration of insulin resistance was associated with restoration of hepatic insulin receptor substrate-2 and suppression of hepatic protein kinase Cε activity resulting in restoration of Akt phosphorylation. Collectively, these data show that hepatic fatty acid composition is a new determinant for insulin sensitivity that acts independently of cellular energy balance and stress. Inhibition of this elongase could be a new therapeutic approach for ameliorating insulin resistance, diabetes and cardiovascular risks, even in the presence of a continuing state of obesity.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200710/nature_medicine/04.html

2007年11月15日木曜日

ウォーキングによって骨量減少を予防できるか

(Medscape 10月29日)

早足でのウォーキングによって、前立腺癌治療に伴う重度の骨量減少が回復し、
骨折および骨粗しょう症のリスクを低く抑える可能性がある。

ジョンズホプキンス病院(ボルチモア)看護学部の
臨床指導者兼上級研究助手Paula Chiplisは、
前立腺癌のため、アンドロゲン枯渇療法(ADT)や放射線療法を受ける

男性を対象とした小規模試験において、
8週間、週5日、30分間の 速いペースでの散歩によって
骨の強度が増加し、運動を行わなかった男性では骨量が減少した。

ジョンズホプキンス病院のJennifer Wenzelは、
「健常な男性において、骨密度減少が現れ始める年齢に、
運動によって前立腺癌患者の骨量が増加した。このことは実に興味深い」。

癌が前立腺に限局している男性では、
ADTと同時に放射線療法が行われることがある。
放射線療法は、癌細胞を死滅させるために用いられる。
ADTは、癌細胞に栄養を与えるアンドロゲンと呼ばれる
ホルモンの産生を抑制し、癌の増殖を遅らせ、生存の可能性を高める。

しかし、アンドロゲンは骨強度を高めるのにも役立つため、
アンドロゲンを抑制することで、「男性更年期」状態を引き起こし、
骨が弱くなり、骨折および骨粗しょう症のリスクが高くなる。
また、放射線療法も骨を弱くすると考えられている。

試験では、早足でのウォーキングによって
ほんの8~10週間で骨量が0.49%増加。
運動を行わなかった男性では、2ヵ月間の試験期間中に骨量が2.21%減少。
健常男性では中年期以降、年間に0.5~1%骨量が減少。
さらに、ADTを受ける男性では、骨密度が年間に4~13%減少する。
「これらの基準を考慮すると、運動の効果は絶大である」。

被験者の半数は、ADT療法中に週5日、20~30分間の
早い速度でのウォーキングを行った。
2週間ごとに、気分について電話で尋ねた。
運動群の被験者は、気分に応じて、運動を控えたり、強化したりするように指示。

ハーバード大学医学部の癌専門家Phillip M. Devlinは、
担当した看護師が被験男性にやる気を起こさせ、
活動的に過ごすように仕向けるのに役立ったと思われる。
Devlin博士は、前立腺癌の男性に体を動かすよう指導。

効果を得るためには、どのくらいの速度で歩く必要があるか?
Chiplisは、「できる限り速く、まだ会話が続けられる程度の速さ」。

American Society for Therapeutic Radiology and Oncology (ASTRO) 49th annual meeting, Los Angeles, Oct. 28-Nov. 1, 2007. Paula Chiplis, PhD, RN, clinical instructor and senior research assistant, department of nursing, Johns Hopkins Hospital, Baltimore. Jennifer Wenzel, PhD, RN, assistant professor, Johns Hopkins University School of Nursing. Phillip M. Devlin, MD, assistant professor, department of radiation oncology, Harvard Medical School; ASTRO spokesman.

マウスで成功 もう痛くない、飲むワクチン開発へ

(毎日新聞社 2007年11月6日)

腸などの粘膜から吸収される新型の飲むワクチンを、
東京大医科学研究所などが開発。

粘膜にある免疫システムを作動させる細胞に着目。
これを見分けるたんぱく質をワクチンの運び役にして、
効率的に免疫を働かせることにマウス実験で成功。

インフルエンザやエイズなどに対する
「痛くない」ワクチンの開発につながると期待。

腸や肺の粘膜には、侵入した異物を排除し身体を守る
独自の免疫システムがある。
粘膜表面のM細胞が異物を認識し、取り込むと免疫が作動する。

しかし、M細胞はまばらにしかなく、飲むワクチンは弱毒化したウイルス
そのものを使うポリオなどの生ワクチンに限定。

清野宏・東大医科研教授らは、マウスの粘膜から取り出した
M細胞を含む細胞群をラットに注射し、
約1000種類の中から、M細胞を見分けるたんぱく質を発見

不活性化した破傷風菌やボツリヌス菌の毒素と、
このたんぱく質を結合させてマウスに飲ませ、
免疫を働かせることに成功。

「粘膜で効くワクチンは感染初期段階で有効で、予防につながる。
ヒトへの応用を進め、将来的には飲むだけで
感染症を予防できる錠剤を開発したい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=60316

2007年11月14日水曜日

肥満は世界的問題

(Medscape 10月22日)

肥満は現実に世界中に広がっており、
健康と疾患に関する世界的規模の問題になっている。

世界全体の肥満率を検討する過去最大規模研究より、
男性では60%以上、女性では50%以上が過体重または肥満であることが判明。
肥満は、世界のあらゆる地域で深刻化している問題であり、
伝統的には細身のアジア人集団でさえ例外ではない。

フランス国立医学研究機構(French health service INDERM)の
Beverley Balkauは、「過体重は世界中に広がっており、
全被験集団の1/2-2/3が過体重または肥満である」。

●世界中に広がる肥満

5大陸にわたる63カ国の男性69,409名、女性98,750名を対象に、
体重、身長、心血管疾患(心疾患、脳卒中)、糖尿病、胴囲について評価。
米国は、この研究には含まれず。

胴囲は、心疾患、糖尿病などの肥満関連疾患の重要なマーカーである。
男性では40インチ(約102cm)以上、女性では35インチ(約89cm)以上が
これらの疾患のリスク因子。

被験者は、体重、身長、胴囲、既往歴に関する詳細なデータを収集。
これにより、肥満の世界的罹患率が垣間見えた。
体重と身長の測定値から、肥満指数(BMI)を計算。
BMIとは、その人の身長に対する体重の割合であり、
肥満および過体重を判定するのに用いられる。

男性の40%、女性の30%が、過体重の基準(BMI:25-29.9)を満たした。
男性および女性の1/4が、BMIの肥満(BMIが30以上)を満たした。
肥満率は、南アジア・東アジア諸国に居住する男女の7%から、
カナダに居住する男女の36%まで、地域によって異なっていた。

男性では3人に1人弱、女性ではほぼ半数が
それぞれ胴囲40インチ以上および35インチ以上であり、
心疾患および糖尿病の高リスク群に分類。
男性の16%、女性の13%は心疾患、
また男性の13%、女性の11%は糖尿病と診断。

胴囲が最高群の人は、胴囲が最低群の人より、心疾患を有する確率が2倍以上。
4段階に分けた胴囲の最高群における糖尿病のリスクは、
男性では最低群の3倍、女性では最低群のほぼ6倍。

●肥満傾向を逆転させる必要

南アジア、東アジアに居住している人たちは、
肥満および胴囲について他地域の集団より良い結果であったが、
肥満率も上昇しつつある。

メイヨー・クリニック・ジャクソンビル分院(Jacksonville branch of the Mayo Clinic)の
Gerald Fletcherは、「肥満が世界的な問題であることはわかっていたが、
この研究はそのことを実際に示した過去最大規模の研究である」。

この傾向が逆転しなければ、肥満関連疾患による死亡が大幅に増えるだろう。
Fletcher博士は、この問題に対処するには大きな公衆衛生上対策が必要。
「そうした対策が、喫煙の減少に奏効した。
肥満率を低下させるためには、同じような熱心な取り組みが必要」。

Balkau, B., Circulation, Oct. 23, 2007; online edition. Beverley Balkau, PhD, director of research, INSERM, Villejuif, France. Gerald F. Fletcher, MD, professor of medicine, division of cardiovascular disease, Mayo Clinic Jacksonville; spokesman, American Heart Association.

http://www.webmd.com/diet/news/20071022/global-problem-obesity

地球にやさしいエネルギーシステム、太陽光発電の進展を目指す研究センターが誕生

(nature Asia-Pacific)

岐阜大学未来型太陽光発電システム研究センター

太陽電池を使う太陽光発電は、
温室効果ガスを出さないクリーンなエネルギーシステムで、
エネルギー源は無尽蔵、設備が小さく、設置場所に合わせて大きさを変えられる、
監視やメンテナンスもほぼ不要、リサイクルもしやすい、
という大きなメリットを持つ。

日本の太陽光発電システム設置量は、世界のトップレベルであるが、
変換効率が低くて発電量が小さく、コストが高く、昼間にしか発電できない、
発電量が気象条件に左右されるというデメリットがあり、
電気事業法等の制度上の理由もあって、大量普及には至っていない。

岐阜大学未来型太陽光発電システム研究センターは、
太陽光発電システムにターゲットを絞った研究組織で、2006年12月に誕生。
太陽光発電システムに関する研究を行う同大学の3つのプロジェクトが
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成研究費を受けたことを契機に、
高効率・大面積・長寿命・高信頼性・低コストのシステム開発を目指し、
共同研究やネットワーキング、人材養成を進めるのを目的として開設。

工学部の25名の研究者が所属し、
①薄膜シリコン系太陽電池研究開発部門、
②発電量評価技術研究開発部門、
③色素増感太陽電池研究開発部門
に分かれて、研究を行っている。

薄膜シリコン系太陽電池研究開発部門は、
野々村修一センター長を中心に、
シリコン系太陽電池をさらに高効率化するための研究を行い、
アモルファス(非晶質)シリコン薄膜の研究を日本で初めて行った
という岐阜大学の伝統を受け継いでいる。

微結晶シリコンカーバイドやゲルマニウム系薄膜など新規材料の開発や、
透明電極に使う原子状水素による透明性の損失を防ぐため、
酸化チタンを保護膜として貼り付ける研究、
走査型プローブ顕微鏡を用いた薄膜上の微小領域での特性評価技術の開発。
太陽電池は、昼間にしか発電できないため、
小型で効率のいい蓄電システムの開発も課題だ。

伊藤貴司准教授は、微小なグラファイトが自立的に壁状に発達する
カーボンナノウォールを蓄電用大容量キャパシタに応用する研究。

発電量評価技術研究開発部門では、
太陽電池の発電量を左右する気象条件についての研究。
小林智尚教授は、大気環境の細密時空間分布の気象モデルと
その解析・予測システムの開発。

太陽電池の効率は日照時間だけでなく、
大気中の水蒸気やエアロゲルなどさまざまな条件によって
その場所・時間で強くなる太陽光のスペクトル成分にも左右される。
このシステムは、発電効率の高い地域を選定したり、
地域の気象条件に合った太陽電池を選んだりするのに役立つ。

色素増感太陽電池は、
有機材料を使うため、材料が手に入りやすく、
毒性がない、軽量でデザイン性が高くなる。
未来の太陽電池として期待。

吉田司准教授が、酸化亜鉛薄膜の電界メッキを使う独自の方法を開発。
光や電子を通しやすい構造の酸化亜鉛薄膜をプラスチックに貼り、
カラフルな有機材料の増感色素を用いた太陽電池を作成。

野々村センター長は、「センターとして目的を明確にしたことで、
研究者や企業が集まりやすくなり、情報交換や産学連携が活発に」。
他大学出身の学生が大学院に入学するなど、
将来の研究を担う人材養成も徐々に軌道に乗っていきそう。

同センターのホームページ www1.gifu-u.ac.jp/~solar/program.mht

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=57

2007年11月13日火曜日

【ニュースな言葉 週刊こども塾】かぐや 日本による月探査

(毎日 2007.11.13)

9月14日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや」が、
種子島宇宙センターから、H2Aロケット13号機で打ち上げられ、
10月5日には月の軌道に入りました。

アメリカのアポロ計画以来となる本格的な月探査機で、
今年12月から約1年間の観測を始めます。

Q アポロ計画って何?

A アメリカは、冷戦状態だったソビエト連邦に、宇宙開発で後れをとっていた。
国の威信を保つため、1960年代~1970年代初め、
月面探査を目的にアポロ計画に取り組み、
1969年7月には人類初の月面着陸も果たした。
アポロ計画で持ち帰った月の赤道付近の石の分析で、
月と地球はほぼ同時期の約45億年前に誕生したことなどが分かった。

Q かぐやで何を調べるの?

A 1990年代にアメリカの周回衛星による観測で、
場所によって月の構成物質が異なることが分かった。
月の誕生やこれまでのあゆみなどをはっきりさせるには、
月をすべての場所で詳しく探査する必要。
かぐやは、月の地形を立体撮影し、詳細な月面地図を作製。
電波反射で月の地下の地質も調査し、鉱物や元素、磁場、重力の分布など調査。

Q 人間は月に住める?

A 月面上は、重力が地球上の6分の1。空気や水がない。
昼間は、太陽の熱が空気で弱められることもなく、
これが15日近く続くので、温度はセ氏110度近くに。
逆に、夜は熱が逃げやすく、マイナス160度に。
クレーターとよばれるたくさんの隕石の衝突跡がある。
こうした月面の環境条件から、人類が月に住むことは難しい。

http://sankei.jp.msn.com/life/education/071113/edc0711130809005-n1.htm

ヒトTH17リンパ球は血液脳関門の破壊および中枢神経系の炎症を促進する

(nature medicine 10月号)

TH17リンパ球は、多くの炎症性疾患の発症に不可欠である。
本論文では、多発性硬化症病変では血液脳関門内皮細胞(BBB-EC)上で
IL-17およびIL-22の受容体が発現していること、
またIL-17およびIL-22がin vitroおよびin vivoで
BBBの密着結合を破壊することを示す。

また、TH17リンパ球は、BBB­ECを効率よく通過し、
グランザイムBを高度に発現していて、ヒトニューロンを死滅させ、
CD4+リンパ球の動員により中枢神経系の炎症を促す。

【原文】
Human TH17 lymphocytes promote blood-brain barrier disruption and central nervous system inflammation

Hania Kebir1, Katharina Kreymborg2, Igal Ifergan1, Aurore Dodelet-Devillers1, Romain Cayrol1, Monique Bernard1, Fabrizio Giuliani3, Nathalie Arbour1, Burkhard Becher2 & Alexandre Prat1 1 Neuroimmunology Unit, Center for the Study of Brain Diseases, Centre Hospitalier de l'Universite de Montreal?Notre-Dame Hospital, 1560 Sherbrooke Street East, Montreal, Quebec H2L 4M1, Canada.2 Neurology Department, Division of Neuroimmunology, University of Zurich, Winterthurerstrasse 190, 8057 Zurich, Switzerland.3 Department of Medicine, Division of Neurology, University of Alberta, Edmonton, Alberta T6G 2G3, Canada.

TH17 lymphocytes appear to be essential in the pathogenesis of numerous inflammatory diseases. We demonstrate here the expression of IL-17 and IL-22 receptors on blood-brain barrier endothelial cells (BBB-ECs) in multiple sclerosis lesions, and show that IL-17 and IL-22 disrupt BBB tight junctions in vitro and in vitro. Furthermore, TH17 lymphocytes transmigrate efficiently across BBB-ECs, highly express granzyme B, kill human neurons and promote central nervous system inflammation through CD4+ lymphocyte recruitment.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200710/nature_medicine/01.html?Mg=410017ff82937c56e70fff7f4588a699&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

2007年11月12日月曜日

マージャン、オセロも 茨城でねんりんピック開幕

(毎日 2007.11.10)

60歳以上の高齢者が、スポーツや文化イベントを通じて交流する
「第20回全国健康福祉祭いばらき大会」(ねんりんピック茨城2007)
の開会式が10日、常陸宮ご夫妻を迎え、
茨城県ひたちなか市の笠松運動公園陸上競技場で開かれた。

約1万人が参加。
ゲートボールやゴルフ、俳句、今回から加えられた「健康マージャン」、オセロなど
計25種目を、茨城県内の21市町の会場で競う。

健康マージャンには50チーム、計200人が参加。
「賭けない、飲まない、吸わない」を合言葉に、金のやりとり、酒、たばこを禁止し、
相手の出方を読む純粋な頭脳ゲームとして老化防止に役立てようと
高齢者の間に広がりを見せている。

高齢者にマージャンをしてもらい、脳の活動を調べた
諏訪東京理科大の篠原菊紀教授(脳科学)は、
「リーチされたときなど、加齢によって衰えやすい
脳の前頭前野の活動が活発になる」と認知症予防などの効果を指摘。

終戦直後、旧制水戸中学(現水戸一高)の生徒だった長谷川五郎さん(75)が
原型を考案、世界中に広まったオセロ競技は、
発祥地の水戸市で開催。


http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/071110/wlf0711101115000-n1.htm

掃除屋細胞、マクロファージにセンサー 細胞の要不要、見分け方解明

(毎日新聞社 2007年10月25日)

体内の“掃除屋”細胞と言われる「マクロファージ」が
不要になった細胞を取り除く際、アレルギーなど免疫にかかわる
たんぱく質がセンサーのように要不要を見分けていることを、
京都大医学研究科の長田重一教授らが突き止めた。

ぜんそくやアレルギー、アトピーなど自己免疫疾患の解明や
治療法の開発に役立つ成果という。

細胞が死ぬと、有害な物質が放たれて周囲に炎症が起きないように、
マクロファージが細胞を丸ごと取り込んで分解する。
死んだ細胞の表面にリン脂質の物質が現れるが、
マクロファージがどのように目印を見分けるかは未解明の部分が多かった。

マクロファージの表面にあり、この目印と結合するたんぱく質を探したところ、
免疫にかかわる「Tim1」と「Tim4」が当てはまると判明。
これらを働けなくすると、マクロファージは細胞を取り込めなくなり、
Timたんぱく質が死細胞を取り除くために必要と分かった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=59115

2007年11月11日日曜日

聖路加国際病院理事長・日野原重明さん 今、平和を語る

(毎日新聞 2007年10月29日)

聖路加国際病院理事長の日野原重明さん(96)が、
75歳以上をシニア会員とする「新老人の会」を設立して7年。
活動の大きな柱に、
「将来の日本を担う子どもたちに平和のメッセージを伝える」。

--小学生に平和のメッセージを伝える意義を。

日野原 僕たち大人は、世界の平和を実現できなかった。
戦争を体験した「新老人」は、想像を絶する苦しみや悲しみを味わいながら、
地上から戦争をなくせないできた。
子どもたちに託すしかないではありませんか。
75歳以上の戦争体験者が将来の日本をつくる子どもたちに、
戦争の悲惨さと人間のいのちの大切さを直接語りかける、
これは大変有意義なことです。

--日野原さんご自身も多忙なスケジュールの合間を縫って、
全国各地の小学校に出前授業に行かれています。

日野原 「新老人」の使命ですから。
訪問した小学校の校歌を歌いながら登場し、教壇に足を上げてみせる。
子どもたちは僕の年齢を知っていますから、それは驚きますよ。
何歳まで生きたいですかと聞くと、100歳とか120歳と答える子。
僕を見てのことですね。

そこで、いのちについて考える。

いのちは、人間に与えられた時間だから、とてもかけがえのないもので、
どのように使うかが大切だと話します。
どのようないのちも粗末にしてはいけない、奪ってはいけないと伝えるのです。
一度に大勢のいのちを奪うのが、戦争です。
戦争だけは絶対にやってはいけない、反対しなければいけないと語りかけると、
しっかりとうなずいてくれます。心強い。
手紙をたくさんもらいますが、僕をモデルにしてくれるのはうれしいですね。

--いのちについての考え方は、
よど号ハイジャック事件(1970年3月)に遭遇した経験によるとか。

日野原 58歳のとき。福岡での内科学会に向かう途中にハイジャックされ、
韓国の金浦空港で3晩過ごしたのですが、
相手は武装しているのだから、さからってはダメだと思いました。
生き延びることができてから、与えられたいのちだと考えるようになり、
このいのちを人のために使おうと心に決めました。

--徹底した非暴力主義を通されています。

日野原 子どもたちには、こう話しています。
けんかをして殴られたら、仕返しをしたくなるだろうが、応戦しないでほしい。
恨みが恨みを呼んで、報復がいつまでも続く、これが大人の戦争です。
恨みの悲劇的な連鎖を断ち切るには、「恕(ゆる)しの心」しかありません。
平和の実現には、犠牲がつきものです。
相手を恕す勇気と暴力や武器を放棄しても、
負けない精神力とをあわせもって、初めて平和は実現するのでは。

インドにガンジー、アメリカにキング牧師という非暴力主義者のモデルがいます。
暗殺されましたが、2人の魂は生き残って世界に大きな影響を与えています。
犠牲を覚悟のうえで平和行動を起こせば、必ず地上に平和は訪れる。
僕は日本の子どもたちに期待しているのです。

--日本の憲法については、どうみていますか。

日野原 世界中でこれほど先進的な憲法はないでしょう。
犠牲を強いられても、この憲法を永続させていかなくてはならない。
今の世の中の動きは、「いつか来た道」を感じさせてやまない。
日本は、積極的に他国に攻め入らないでしょうが、
米軍と一緒に戦う道を選ぶ可能性はありますね。とんでもないことですよ。
日本から米軍基地を撤去してほしい、
そのための費用がなければ、税金を上げてもいい。

--自衛隊については。

日野原 自衛のための軍隊も持つべきではない。
戦争は、決まって自衛のためだと言って起こる。
何かを契機に拡大路線に走るのは歴史が証明している。
軍力で相手を封じ込めても、そこには軋轢が生まれるだけで、
真の平和にはつながりません。
自衛隊は、国内外での災害や事故の救助隊に徹すればいい。

若者たちも、徴兵制の代わりに、海外ボランティアを義務づけては。
発展途上国の現実をみて、苦労して帰国したら、とても素晴らしい。
これは勇気ある実験です。
こうした行動を世界に先駆けて行う国を攻撃したらどうなるか、
そんなことはできないという世界の世論をつくるべきです。

--医学的な見地から。

日野原 最高の公衆衛生は、というと、戦争がない状態におくこと。
予防医学で必要なのは、水や空気をきれいにする前に戦争をしなければいい。
戦争難民が出ないし、ベトナム戦争の枯れ葉剤のような被害もない。
いま地上から戦争がなくなれば、公衆衛生が達成される。

--2005年に広島で、指揮者の小沢征爾さんと平和コンサートを開きました。
広島への思いは強いですね。

日野原 牧師だった父親が広島女学院の院長をしていました。
原爆で町が焼き尽くされ、352人の生徒らが犠牲になったことを、
父は深く悲しんでいました。
父の怒りと悲しみを見てきて、広島で平和イベントをしたいと考えていた。
今までのような原爆反対や核兵器反対の運動ではなく、
愛のメッセージと音楽でいのちの尊厳を訴える企画に。

子どもたちを通して、世界に平和を発信する
世界へおくる平和のメッセージ」に力を入れたものです。
4年後の2011年秋に、再びやることに決まりました。
そのとき僕は100歳です。

……………………………………………………………………………
■人物略歴

1911年山口県生まれ。京都帝大医学部を卒業後、
41年に聖路加国際病院の内科医となり内科医長、院長を歴任。
05年に文化勲章を受章。今春から日本ユニセフ協会大使に就任。
ベストセラー「生きかた上手」(ユーリーグ)、
「私が人生の旅で学んだこと」(集英社文庫)、
「十歳のきみへ--九十五歳のわたしから」(冨山房インターナショナル)など。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=59514

免疫:「危険」信号

(Nature Reviews Cancer 7(10), Oct 2007)

Toll様受容体(TLR)は、外因性、内因性の「危険」信号を認識するが、
瀕死の腫瘍細胞に対する効率的な免疫応答はどのように起こるのか?

G KroemerとL Zitvogelらは、これまで知られていなかった経路、
すなわち化学療法後に死滅しつつある腫瘍細胞がTLRによって認識され、
免疫応答の引き金となる経路について記載。

野生型TLRやさまざまなTLRが欠損したマウスの足蹠に、
ドキソルビシンまたはオキサリプラチンで治療した
瀕死の胸腺腫、肉腫、結腸癌細胞のいずれかを接種したところ、
腫瘍抗原による再刺激後のT細胞プライミング
(インターフェロンγの産生量として測定)に異常があったのは、
Tlr4–/–マウスのみ。

野生型マウスの樹状細胞(DC)が枯渇すると、
瀕死の腫瘍細胞によるT細胞のプライミングは終息。
さらに、野生型またはTlr4–/–のいずれかのDCを瀕死の腫瘍細胞に
暴露してTlr4–/–マウスに移入したところ、
T細胞を活性化できなかったのはTLR4のないDCのみであり、
免疫応答にはTLR4+ DCが必要であることがわかった。

次に、共沈降法を用いて、瀕死の腫瘍細胞によって放出された
内因性タンパク質high-mobility group box 1 protein(HMGB1)
危険信号となり、DC上のTLR4に結合して刺激することで
免疫応答を動員することを明らかにした。

この信号が必要である理由は、HMGB1に対する短い二本鎖RNA(siRNA)
または中和抗体と腫瘍細胞とのプレインキュベーションが、
瀕死の腫瘍細胞によるDCの刺激能力を阻害したため。

瀕死の腫瘍細胞に暴露されたMyd88–/– DCは、
Tlr4–/– DCと同じ挙動をみせたことから、
HMGB1を認識したTLR4は、TLRアダプターである
myeloid differentiation primary response protein(MYD88)
通じてシグナルを変換する。

HMGB1-TLR4-MYD88経路は、抗癌剤の効果にどう関与するのか?
Tlr4–/–マウス、またはHMGB1のない瀕死の腫瘍細胞は、
初回注入から1週間後に接種した同じ腫瘍細胞に対して、
効率的な抗腫瘍反応を誘発できなかった。
腫瘍が定着したマウスにTLR4またはMYD88がなければ、
化学療法も局所放射線療法も、野生型マウスにみられたほどの
腫瘍増殖の抑制や生存期間の延長をもたらさなかった。

以上の所見は、患者とどうかかわってくるのだろうか?
白人の8~10%にはTLR4(Asp299Gly)に多型があり、
これが乳癌に対する化学療法の効果を弱める可能性がある。
この多型がTLR4とHMGB1との相互作用を抑え、
DCが瀕死の腫瘍細胞からの抗原を細胞傷害性T細胞に提示するのを
妨げていることを突き止めた。

また、リンパ節浸潤のため、術後にアントラサイクリン類による治療を受けた
非転移性乳癌患者280例を対象に、転移までの時間を分析。
術後5年までの転移率は、野生型TLR4をもつ患者が26.5%に対して、
変異型TLR4をもつ患者は40%であり、
変異型TLR4をもつ患者の無転移生存率も有意に低かった。

以上のように、瀕死の腫瘍細胞は治療の成功に必要な免疫応答を誘発し、
現在の化学療法における免疫原性の改善に利用できる可能性がある。

http://www.natureasia.com/japan/cancer/highlights/article.php?i=60561