2009年12月31日木曜日

幼児教育(5)みそ作って食に関心

(読売 12月22日)

園児の食物アレルギーに向き合うことで、食育が広がっていく。

教室に隣接する調理場から、みそ汁や炊き込みご飯の香りが
漂ってきた。
園庭を駆け回って遊んでいた子どもたちが、
「今日は何?」とのぞきにやってきて、食器を運ぶ。
仙台市青葉区の私立みどりの森幼稚園の、週1回の給食の日。

調理には、食育専任の安東厚美教諭(42)のほか、
保護者数人が手伝いに入る。
保護者の出身地の郷土料理も度々登場。
この日は、毎回3種類用意されるご飯が、炊き込みご飯、
大根葉が入ったシラスご飯と白いご飯。
具だくさんのみそ汁、山芋の磯辺揚げ、大根の漬けもの、ミカン。

「強制されて、食べられるようになる子はいない」との考えから、
無理強いはしない。
子どもたちは、「ネギなしでお願いします」、
「シラスご飯を大盛りで」などと自分で種類や量を決める。

園の給食はかつて、月に1度のカレーや、園で飼っているニワトリが
産む卵を使ったホットケーキなどが人気メニュー。
2005年春、小麦アレルギーを持つ男児の入園をきっかけに、
小麦を使わずにできる和食に転換。

男児の母親からは入園時、「給食の日は休ませる」という申し出が。
小島芳園長(43)らは、「仲間を休ませてまで、
しなければいけない活動はあるのだろうか」と考え、
この献立にたどり着いた。

小島園長は、「ほかの子どもの体験を減らしたくないとの思いも強かった」
お菓子作りで、小麦粉を使うクッキーの代わりには、
干し柿をすりつぶして焼く郷土料理のおやつ「柿のり」を作るなど、
食の体験はむしろ増やしていった。

教師たちはある日、男児が他の園児たちから
「小麦粉!小麦粉!」とからかわれている場面を目撃し、
ショックを受ける。
アレルギーをなるべく意識させない園生活を優先しすぎていた、
という反省がわいてきた。

この男児は、大豆アレルギーもあるため、
給食のみそ汁は大豆みそを使わずに、別に作ってもらっていた。
改めてアレルギーに向き合う一歩として、
「一緒に食べられるみそを作ろう」と、
園児たちで米、ヒエ、キビを使ったみそ作りに挑戦。
子どもたちは、それぞれの色や香り、味の違いに注目するようになり、
合わせみそで、「自分好みのみそ」作りをするまで発展。

食への関心を引き出す取り組みから5年目。
園児の母親らは、「子どもたちは家でも野菜やご飯を好み、
ファストフードなどはあまり食べない」と口をそろえる。
卒園時のアンケートでは、一番好きなメニューに、
ご飯を挙げる子どもが多い。

味覚が発達していく幼児期に、「食」を通した働きかけで、
生活の基本が形成されていく。

◆メモ

食べ残しの多くなりがちな幼児だが、安東教諭は
「体調などによって、必要な栄養やカロリーは変わる」と指摘、
家庭ではやや少なめの盛りつけを提案。
食べきることで達成感を感じ、もっと食べられそうな時には
おかわりをさせるといい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091222-OYT8T00252.htm

妊娠女性の全身数値データベース公開

(サイエンスポータル 2009年12月22日)

妊婦と胎児の体の組織を忠実に再現した
「妊娠女性全身数値データ」が、企業向けに有償で公開。

このデータは、情報通信研究機構と千葉大学が共同で開発、
妊娠女性の体を、約710万もの立方体に細分化し番号を振り、
デジタル表示を可能。
電波が、人体にどのような影響を与えるかを調べる目的で
開発が始まったが、本来の目的以外の医療機器開発や
治療効果の評価、交通事故時の障害の評価、
衣料デザインなど、幅広い分野での研究開発や商品開発に
利用できると期待。

情報通信研究機構は、昨年7月から非営利目的の研究利用にのみ
データベースを提供、企業からの要望が高いことから、
営利目的の利用に対しても提供。

データベースは、妊娠26週の日本人妊婦の平均的体型を模し、
胎児や胎盤などの妊娠女性固有の組織を含む
56種類の組織と臓器に電気定数を設定することで、
電波が妊娠女性の体内にどのように吸収されるかを
高い精度で推定。

電気定数以外の人体特性値を設定することで、
さまざまな分野での利用が可能に。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0912/0912221.html

新しい波/328 フェンシング界その後/中

(毎日 12月19日)

就職せずに競技を続け、「ニート剣士」と呼ばれた
北京五輪フェンシング男子フルーレ銀メダリストの太田雄貴が、
その生活から抜け出したのは昨年11月。

太田を正社員として雇った森永製菓の
松崎勲・ウイダー事業本部長は、
「アスリートと我々の事業の懸け橋になってほしかった」と、
採用の理由を語る。

競技者が吸収しやすいように開発されたゼリー飲料を、
94年に「朝食向け」として売り出し、これが当たった。
現在まで10年以上にわたって、同社の稼ぎ頭に。
「スポーツの栄養補給のあり方を、一般消費者に
『平行移動』した結果」と松崎本部長。
スポーツのノウハウを活用することで、ビジネスチャンスが生まれる。
太田には、引退後もスポーツ界との橋渡し役を期待し、
契約社員ではなく、正社員として雇用。

今年4月、飲食・娯楽施設を経営するネクサス(群馬県高崎市)が
北京五輪代表の千田健太ら5人によるフェンシングチームを発足。
星野敏社長は、法大フェンシング部出身で国体に出場したことも。

大学までトップ選手でも、社会人となって競技に専念する場が
少ないフェンシング界。
北京五輪出場時の太田の所属は「京都クラブ」、
千田も「宮城クラブ」。
企業などの受け皿はなく、地元のクラブを所属先として登録。

ネクサスは、競技に専念してもらう一方、
引退後も社員として働けるようにと、選手を正社員として雇用。
日本フェンシング協会の藤原義和事務局長は、
「企業が、選手にフェンシング中心の生活を
準備してくれるのはありがたい」
こうした待遇を受ける選手は、まだ一部に過ぎず、
選手の雇用環境の整備は道半ば。

五輪での注目をきっかけに、好転し始めた競技者支援の動きを
どう維持、拡大していくか?
日本協会の張西厚志専務理事は、
「さらに受け皿を広げるには、まずは強い日本代表を作るしかない」
選手の強化と雇用。
フェンシング界にとって、課題の両輪。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20091219ddm035050004000c.html

子ども自ら考える授業を 盛岡で全国算数研究会

(岩手日報 12月27日)

全国算数授業研究会岩手大会(全国算数授業研究会主催)は、
青山小で開かれた。

県内外の小学校教諭ら、約500人が参加。
本年度から、新学習指導要領への移行期間に入り、
テーマは「Change!」。

教え込むのではなく、子どもたちが自ら考え、工夫して
解決方法を見いだせるような算数教育の在り方を探求。

午前中は、青山小の2~5年の児童を対象にした
七つの公開授業が行われた。
筑波大付属小の夏坂哲志教諭による3年生の授業では、
答えが2けたになる割り算について取り上げた。

商が1けたの問題は、九九を利用して答えられても、
2けたになると理解できない児童が目立った。
児童の考え方を引き出しながら、子どもたちが納得できるまで
寄り添い、解決への「気づき」を導く授業が行われた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091227_7

2009年12月30日水曜日

睡眠不足は太りやすい 食事量は同じでも活動量が減る!

(日経ヘルス 12月25日)

睡眠時間を減らすと、食べる量は変わらないのに、
体を動かす量が減ることが実験で確かめられた。

対象は、15人の男性。
通常の睡眠時間(8時間15分)と、少ない睡眠時間(4時間15分)の
場合の身体活動量とエネルギー摂取量を比較。
身体活動量は、腰につけた加速度計で評価。

それぞれの睡眠時間で続けて2日間過ごしたところ、
睡眠時間が少ないと、通常の睡眠時間の場合に比べ、
日中の身体活動量が1日目は13%、2日目は9%減る。

食事はビュッフェ式で、朝食から夕食だけでなく、
おやつが用意され、好きなだけ食べた。

食事からのエネルギー摂取量を分析すると、どちらの睡眠時間でも
ほぼ同じで、睡眠不足は食事量に影響しなかった。
食欲や空腹感にも変化がなく、空腹感に関係したホルモンである
グレリンとレプチンの量も、睡眠時間による違いは見られない。

睡眠不足が重なると、太りやすくなるばかりか、
「肥満や糖尿病、心臓病につながる可能性がある」と
研究者らはいっている。
(Am. J. Clin. Nutr.; 90,1476-1482,2009)

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091225/105396/

野球用具に“第二の人生” 廃バットから木製靴べら

(東海新報 12月18日)

野球に「もったいない精神」を―。
大船渡市の社会人野球チームと木工作家が協力し、
折れて使えなくなった木製バットを、木工品の靴べらとして蘇らせた。
これまでほとんどが捨てられるだけだった廃材を、
有効活用するエコな取り組みに注目が集まりそう。

バットは、同市の社会人硬式野球チーム、
赤崎野球クラブ(菅原敬司部長)が提供。
質のいい木で作られながら、折れれば捨てられるだけのバットを、
「もったいない」と感じていた同市赤崎町の木ばくり工房
(佐々木淳一さん経営)に送り、木工品として蘇らせることを依頼。

どんなものに仕上げるか、当初は答えが見えず、
試行錯誤したという佐々木さん。
最終的には、縦にひびが入ったように割れた形状が多いことから、
靴べらにしようと決定。
「細かく砕いて別のものに仕上げるのは簡単だが、
できるだけバットの形を残したかった」というこだわりが
生きた木工品が完成。

出来上がった靴べらは手触り、光沢もよく、実際に使ってみると、
バット表面のカーブがほどよく踵にフィットする逸品。
完成品は、同クラブの後援会に寄贈する予定。

佐々木さんは、「木も折れて捨てられるだけでは面白くないだろう。
別のモノとして、もう一回日の目を浴びさせてやれればうれしい」

菅原部長は、「折れたバットから、素晴らしい出来栄えの
木工品が生まれた。
エコが叫ばれる時代に、野球界も資源を無駄にしないよう
積極的に取り組むべき」と活動の意義。

http://www.tohkaishimpo.com/

幼児教育(4)身近な漢字少しずつ

(読売 12月19日)

幼児期に漢字に触れさせ、知的好奇心を刺激する。

「なぞなぞです。〈1〉顔にあります、〈2〉赤い色です、
〈3〉中には白いものが見えます」
「口!」

東京都杉並区の区立堀ノ内幼稚園。
小学校入学を翌春に控えた年長児が、山田和美教諭(50)の出す
なぞなぞや、絵合わせゲームなどに興じていた。
使っていたのは、「石」、「空」、「山」などの漢字が
絵柄とともに書かれているトランプ大の「漢字カード」。
杉並区教委が作成し、区立の全6園で昨年度から導入。

「幼稚園教育で漢字を」という区教委の方針は、
小学校入学後の学力向上も視野に入れたもの。
当初、現場の教師や保護者からは、拒否反応があった。

2007年度の1年間、区立幼稚園の漢字教育プログラム検討会の
委員を務めた同幼稚園の川副園美・副園長(51)も、
就任当初は消極派。
「幼児は、教えればどんどん覚えるが、小学校で漢字を初めて
習った時の新鮮さは失われる。
友達との交わり方など、幼稚園で学ぶべき事はほかにある」
幼児教室などに通い、「漢字が書けるよ」と得意げに話す園児がいても、
「そうなんだあ」と素っ気ない対応で聞き流していた。

検討会委員に就任したため、とりあえず子どもたちの日常にある
漢字を撮影し、年長児に見せてみた。
道路に書かれた「止まれ」、電柱にある住所表示など、
ほとんどの園児が読めることが判明。
「身近なものなら、知的好奇心を刺激する教材として
活用してもいいのでは」と、考えを改めた。

検討会での議論もあり、遊びながら学べる教材として、
漢字カードを作ることに。
採用する漢字は、養護学校の教科書などを参考に、
子どもの生活に身近で、形から意味をイメージしやすい20字を選んだ。
4枚ずつ計80枚のセットにし、
裏には区のキャラクター「なみすけ」を描いた。

使い方も工夫した。
いきなり漢字カードを使うことはせず、
年長になった4月ごろに曜日などを漢字で書いたカレンダー、
6月ごろには漢字の名札などと、生活の中の漢字を
少しずつ増やしていく。
12月ごろから、遊びの中で漢字カードを使い始め、
読みや意味を教え込むことはしないことにした。

川副副園長によると、子どもたちはカードで遊ぶうちに、
「川副先生の『川』の字だ」などと興味を示す。
自分たちで同じカードを作ったり、カードに取り上げていない
車などの絵を描き、先生に漢字を書いてもらったりするようになる。

描かれている絵で、漢字の意味をイメージするため、
中には「虫」を、「カブトムシ」などと読む子どももいるが、
川副副園長は「知識として与えるよりも、『なんて読むんだろう』という
興味の気持ちを大事にしたい」

身近な生活に結びつけた遊びの中で、
子どもたちが漢字に親しんでいる。

◆メモ

漢字は、間違った書き順や形を覚えて小学校に入学すると、
覚え直すのに苦労することがある。
杉並区教委は、家庭などで行きすぎた指導をしないよう薦めている。
「なんて読むの?」と質問してきたら答えるなど、
知りたい欲求を満たすことが効果的。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091219-OYT8T00248.htm

県民税のあり方を意見交換 森林づくり評価委

(岩手日報 12月26日)

いわての森林づくり県民税事業評価委員会
(委員長・岡田秀二岩手大農学部教授)は、エスポワールいわてで
開かれ、同事業(2006~10年度)終了後の
同県民税のあり方について意見交換。

委員10人が出席。
県は事業の実施状況について、計画通りに間伐など
森林整備が進んでいるが、事業対象となる森林の拡大や
間伐材の利用などに課題がある―と報告。

委員からは、今後の事業のあり方について、
「事業の目的や手段を明確にすべき」、
「間伐材をものづくりに利用してはどうか」などの意見。

同事業について、11月に行われた県民アンケートの結果が報告、
県民税の仕組みや使途への賛同、継続を望む声が約6割。
一方で、「PR不足」、「植樹など県民が参加でき、実感できる
活動がほしい」などの意見も。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200912/e0912261.html

2009年12月29日火曜日

環境ビジネス:市場をつかめ 欧州各国の戦略

(毎日 12月17日)

地球温暖化対策を話し合うため、コペンハーゲンで開かれている
国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の
ホスト国・デンマークや英国、オランダは、
環境対策に熱心に取り組んでいる。
背景には、再生可能エネルギー関連産業の育成など、
ビジネスチャンスを生かす、したたかな狙いも。
環境先進国の実情を報告。

◇20年に34%削減 洋上風力発電に強み--英国

英国は、EUの目標を上回る野心的な目標を掲げる。
温室効果ガスを、20年までに90年比で34%削減(EUは20~30%)、
電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を
30%(同20%)にまで高める計画。

主役は、08年にデンマークを抜き発電量世界一になった
洋上風力発電。
既に150万軒の家庭に電力を供給する能力
(発電容量3ギガワット)があるが、20年には25ギガワットに。

中心は、英北部スコットランド。
日本と違い、沿岸部は遠浅の海岸が多く、洋上風力発電所の設置が
容易な上、沿岸12カイリまでは王室所有のため、
漁業権も含め権利調整などの問題がないのが利点。

自治政府のジム・マーサー環境相は、
「欧州の洋上風力資源、潮力発電資源の25%がスコットランド」
北海油田で培った洋上開発技術を転用するほか、
油田の跡地にCO2を貯留する施設を建設する計画も進め、
「欧州の低炭素社会の中心」(環境相)を自負。

英国が熱心に取り組むのは、
(1)エネルギー安全保障上の対策、
(2)環境産業育成--などが背景。

英王立国際問題研究所のエネルギー問題専門家、
ウィリアム・ブリス氏は、「06年、ロシアがウクライナ向けの
天然ガス供給を停止したのを機に、
エネルギー安保の議論が本格化」
北海油田の産出量は、ピーク時より4割以上落ち込み、
20年までにさらにその3分の1が減少。
不足分は、ロシア産天然ガスに依存する可能性が高く、
10年後には輸入量が75%上昇すると予測。

石炭火力発電所、原子力発電所の老朽化問題も重なる。
原発は、電力供給で約2割を占めるが、
20年には6%にまで落ち込む見込み、
代替エネルギーの早急な手当てが必要という側面。

産業界は、商機到来と受け止めている。
英機械技師協会で気候変動問題を担当する
ティム・フォックス博士は、「他国に先駆けて技術を開発すれば、
世界中の市場を獲得できる」
ブラウン首相は、気候変動は「第4の産業革命を起こす機会」
環境関連の市場規模は、50年には現在の60倍以上の270兆円、
2500万人の雇用を生み出す一大産業になると意欲的。

◇「脱石油」で成果 関連産業の輸出増狙う--デンマーク

デンマーク・エネルギー庁のアンネ・シモンセン次長は、
「デンマークは、経済成長とエネルギー効率化を共に実現」
80年を起点にすると、デンマークの国内総生産(GDP)は
7割上昇、エネルギー消費量はほぼ横ばい。

デンマークは、80年代に北海油田・ガス田の生産が始まり、
現在はエネルギー自給率が130%、石油、天然ガスなどを輸出。
第1次石油危機当時は、エネルギーの99%を輸入に依存。
日本と同様、石油価格急騰が経済に与えた影響は大きく、
これを機に大胆にエネルギー政策を転換。

シモンセン次長は、「石炭などの化石燃料からの脱却と、
巨大発電所中心の電力供給態勢を地域密着の分散型発電に転換
風力発電所やバイオマス発電所を、全土にきめ細かく整備し、
火力発電で発生した蒸気を地域暖房にも活用、
エネルギー効率を大幅に高めた。

再生可能エネルギーのエネルギー消費量に占める割合は、
80年は3%、07年には17%にまで上昇、
25年には少なくとも30%(EUの目標は20年までに20%)まで高める。

コペンハーゲン市は、25年までに「(CO2排出・吸収量が同じ)
カーボンニュートラル」達成を掲げる。
現在、石炭火力が主力の地域暖房をバイオマスに転換、
自転車専用道路を整備し自転車通学の割合を
現在の3分の1から2分の1に増やす。
電気、水素自動車は、駐車禁止対象外とする促進策を導入するなど、
50ものプログラムを進めている。

デンマークは、世界有数の風力発電メーカーのほか、
節電機器メーカーなどの関連産業が多い。
輸出に占める環境産業の割合は、90年の4%に対し、
現在は10%を超す成長産業、
COP15を機に商機拡大を狙う。

◇低地国家リードする新技術--オランダ

地球温暖化の世界的な影響が懸念される中、
国土の4分の1が海抜0メートル以下にある
低地国家オランダに、各国から熱い視線。
デルタ地帯を海面上昇から守る治水技術や、
河川増水時に船のように浮かんで難を逃れる
「フローティングハウス(浮かぶ家)」のアイデアなどが
専門家の関心を集めている。

アムステルダム南東約80キロの村マースボンメル。
マース川沿いに、淡いパステルカラーの住宅46棟が並ぶ。
外見は普通の家だが、特殊な水害対策が施されている。
14棟は川面に浮き、コンクリートの土台の上に乗る32棟は、
増水時に浮かぶ仕掛け。
5・2メートルの水位まで対応できる。
流されないよう土台とつながる大黒柱があり、
電気、水道、ガスはケーブルで「陸」から届く。

家の広さは185平方メートル。
不動産業のケース・ウェストダイクさん(54)は、別荘として購入。
「自然に囲まれた暮らしができ、水面上昇にも準備万端」
と余裕の表情。
近所の家には、29万5000ユーロ(約3800万円)の
値段が付いた「売り家」も。

建設したドゥラ・フェルメール社は、
水に浮かぶオフィス街や温室を開発中。
「中国とバングラデシュが関心を示している」
ヤン・ウィレム・ロール事業担当部長。

オランダでは、海面上昇や河川増水が深刻化した場合、
人口(約1650万人)の6割が暮らす地域が
洪水被害を受ける可能性。
1953年、大暴風雨に伴う高潮で、1800人以上が死亡する惨事。

商港を擁するロッテルダムは、デルタ都市。
53年の大洪水後、オランダ政府は河口部を堰で覆う治水工事
「デルタ計画」を進め、97年には高潮時に幅約360メートルの
河口を可動式の堰でふさぐ「マエスラント堰」が完成。

オランダ政府の諮問委員会は昨年、温暖化の影響で
「海水面の上昇が、2100年に65cm~1・3m、
2200年には2~4mに達する」との予測を発表。
政府は、「新デルタ計画」立案に着手。

共通課題を抱える国家間の協力も始まった。
「ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、エジプト、
モザンビークへの技術移転が検討」
独立組織「オランダ水パートナーシップ」の
イボ・デメルス事業開発戦略部長が明かす。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/12/17/20091217ddm007030107000c.html

片足立ち運動 歌に乗せ お年寄りの骨折予防に 静岡・富士、富士宮中心に広がる

(2009年12月17日 毎日新聞社)

高齢者の大たい骨の骨折予防に効果があるとされる
「片足立ち運動」が富士市、富士宮市を中心に広がりつつある。

地元のコミュニティーFMラジオ番組から生まれた
「片足立ちの歌」が発信源。
「ただ運動するより楽しい」と好評で、無料CDも半年近くで
100枚以上が配られた。
放送地域以外からの問い合わせや合唱サークルから、
「歌いたい」との要望が寄せられるなど、
高齢者にとどまらない人気。

「片足立ち運動」は、日本整形外科学会が提唱する
高齢者向け運動の一つ。
椅子の背もたれなどにつかまり、片足を床につかない程度、
持ち上げる。
左右1分間ずつ、1日3回で筋力を強くする効果が期待。

毎週金曜放送のFM番組「ときめき倶楽部」で、
月1回出演する医師の清水怜さん(80)が5月、
この運動を紹介。
番組ディレクターの清水やすこさん(53)の依頼で、
作詞・作曲が趣味だった清水さんが6月、歌にした。

歌は2番までで、それぞれ1分間。
「はるかに歩いた人の世の道をしっかり踏みしめて」、
「苦しかったこと かなしみも 今は楽しいことばかり」など、
人生を感じさせる歌詞と懐かしい曲調で、
お年寄りが覚えやすいように工夫。

今月中旬、富士市錦町の介護付き有料老人ホーム
「ザ・サンシャイン富士」で行われた収録では、
約25人の70~80代の男女が挑戦。
「気持ちよかった」、「音楽があればできるかも」などと好評。
清水さんは、「団体や施設などから要望があれば、
放送エリア外でも訪問して紹介したい」

「片足立ちの歌」は、ホームページ(http://radio-f.jp/)から。
富士コミュニティエフエム(0545・55・1123)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/17/113220/

新しい波/327 フェンシング界その後/上

(毎日 12月12日)

東京都新宿区内のスポーツセンターに、
約100人の小学生が集まった。
昨年の北京五輪フェンシング男子フルーレで2位となり、
日本勢初のメダルを獲得した太田雄貴(森永製菓)が
企画した、小学生の大会「太田雄貴杯」。

太田の呼び掛けに賛同した森永製菓が主催、
日本フェンシング協会も後援に名を連ねた。
太田の活躍を見て、2月から競技を始めた岐阜県の
笠松町立松枝小3年、一柳龍之介君(9)は、
「太田選手に会えると思って応募した」と目を輝かせた。

太田は、「(昨年11月の)森永製菓への入社前から
やりたい大会だった」と明かす。
日本協会によると、小学生の全国大会は年2回。
競技人口が少なく、予選を行わない地域も。
太田は、「世界では、小学生から始めるのがスタンダード。
この時期から始められると、相手との距離感を培うのに有利」
海外のように、子どもたちに切磋琢磨する場を提供したい、
というのが狙い。

出場資格は、競技歴1年以上か、地域の大会などに
2回以上出場したことのある選手。
「『強いから出られる』というのとは、違う大会にしたかった」と太田。
昨年の男子フルーレ全日本選手権覇者の福田佑輔(警視庁)らの
協力も得て、日本代表選手が、優勝者に胸を貸した。
トップ選手たちには、競技を始めて間もない選手にも
大会を楽しんでもらい、小学生レベルから競技を活性化させたい、
という共通の意識。

小学生の日本協会登録選手数は、今年度が約510人。
昨年度の約440人から、北京五輪を経て1割強増えた。
「五輪しか注目してもらえない」と、人気スポーツではない現実も
認識している太田。
底辺の環境をどう整えるか?
12年ロンドン五輪での金メダルを目指しながら、
第一人者は普及にも取り組んでいる。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20091212ddm035050113000c.html

幼児教育(3)数や図形 遊んで学ぶ

(読売 12月17日)

遊びのなかに、数や図形のセンスを養う仕掛けが。

京都市中京区の私立光明幼稚園。
遊んでいた年長組の男児が、友達に説明しながら、
12枚の折り紙を使って十二面体を作り始めていた。
興味深そうに見ていた友達が、「少しちょうだい」と、
何枚かを持って行ってしまい、パーツが足りなくなった。
「しょうがない。サイコロにしよう」と、
とっさに立方体に作り替えていった。

その様子を見守っていた田中雅道園長(57)は、
「単純に折り方を覚えている訳ではなく、
『折り紙を減らしたり、増やしたりしたらどんな形になるんやろ』と
考えてきた結果。
幼児としては、かなり高度な図形感覚が身に着いてきている」

同園では、伝統的に数や図形の遊びを積極的に導入。
特に、京都大学工学部で学んだ田中園長が園長に就任した
1989年以降、在園する3年間の発達を見通した指導計画の中に、
図形や数へ親しむ仕掛けを作り、子どもたちの興味を伸ばしている。

幼稚園では、よく遊びに取り入れるお菓子作り。
同園では、小学校入学を控えた年長組の3学期ごろ、
5人のグループでわざと半端が出る7個ずつのクッキーを
焼かせてみる。

子どもたちは1個ずつ分けた後、残り2個をどうするかと
あれこれ考える。
「2個を、五つに分けるにはどうするの?」と考える子もいれば、
「もう3枚焼いたらいい」と言う子も。
その過程で、数の感覚が自然と養われていく。

お弁当を食べる時や遊びのグループ分けも、
入園当初は5~6人程度。
それより多いと、人数を体感しにくい。
4歳くらいになると、「今日は1人休んでいるから、昨日より少ない」
と、数を意識するようになる。

田中園長は、「計算だけなら電卓にかなわないし、
小学生になってからでも十分に習得。
幼児期は、実体験を通じた知性を育むことに重点を置くべき

この日、アクセサリー作りを楽しんでいた年少組では、
教師が切り抜いて準備していた厚紙で、
立方体の「宝石箱」を作った。
意識しないで遊んでいても、こうした体験が、
大人顔負けの複雑な多面体の製作につながっていく。

年長組では、毛糸の指編みに熱中している子どもたちがいた。
編み目を数えながら、楽しむ編み物遊びは、
数の感覚の発達に効果的。

田中園長は、「園の取り組みが影響している結果かは
分からないが、卒園生の進路を聞くと、
大学では理系に進んでいる子が多いようだ」

教育的な意図が埋め込まれた遊びを通して、
知性につながる体験が蓄積されていく。

◆メモ

田中園長によると、折り紙は初歩的な折り方のなかにも
図形や数の要素が含まれ、親子で楽しむのに格好の教材。
高度な折り方を覚えるよりも、
折り方を説明できるようになるのが理想。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091217-OYT8T00310.htm

2009年12月28日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:NTTデータ・山下徹社長

(毎日 12月21日)

NTTから1988年に分離後、日本最大のシステム開発会社(SI)に
成長したNTTデータ。
CO2排出量削減に向け、持ち前のITを駆使した
積極的な取り組みを始めている。
山下徹社長に、今後の環境戦略を聞いた。

--ITの地球温暖化防止への貢献が注目。

◆これまで、ITはコスト削減への貢献が求められたが、
CO2排出量削減が世界的な課題となるなか、
環境性が重視され始めている。
大量の紙を使っていた記録を、コンピューターシステムで処理したり、
テレビ会議システムの導入で車の移動を減らすことができる。

--09~12年度の経営計画で、初めて「環境志向経営」を掲げた。

◆環境志向を経営の軸に位置付け、
IT業界でリーダーシップを取りたい。
環境経営には、IT自体の省エネと、ITを活用した省エネの
両面から取り組む必要。
環境経営推進室を設置し、来春に向けて目標の設定や
それを実現するための投資計画を立案。

--IT自体の省エネではどのような取り組み?

◆情報システムの普及に伴い、サーバーを集中管理する
データセンターの需要が増え、CO2排出量も無視できない規模に。
08年から、消費電力を従来比で20%以上削減した
「グリーンデータセンター」を展開、
このセンターの給電方式は、従来は3回だった直流交流変換を
1回に減らし、消費電力を20%削減。

IT機器の省エネは、情報機器メーカーの主導だが、
この給電方式は、NTTデータがメーカーに提案して実現。

--ITを活用した省エネはどうか?

◆IT利用に伴うコスト削減効果は数字で分かるが、
CO2排出量削減効果は明確ではない。
環境効果は、顧客がシステム導入を判断する重要な要素。
わが社では、システムの導入による人やモノの移動量の変化に
伴うCO2削減効果を算出し、顧客の関心に応え、
導入が進むよう努めている。

--ITの利用が進めば、IT企業のCO2排出量は増えてしまう。

◆行政が申請書類の電子システムを導入すると、
申請を出す企業や市民が紙の使用量を削減、
ITは取引先や消費者など社会全体に環境効果が波及。
日本全体で、CO2排出量25%削減を目指すのなら、
企業単位で排出量を判断すべきではない。
ITの環境効果を、客観的に評価できる指標を、
NTTグループと協力して作り上げたい。
==============
◇やました・とおる

東工大卒、1971年日本電信電話公社(現NTT)入社。
01年NTTデータ取締役。経営企画部長、副社長などを経て
07年6月から現職。神奈川県出身。62歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/12/21/20091221ddm008020025000c.html

五輪招致委:赤字1億円超に 東京都がJOCにも負担要請

(毎日 12月22日)

2016年夏季五輪の東京招致の中核を担った
特定非営利活動法人「東京オリンピック・パラリンピック招致委員会」
(招致委)の決算が、1億円を超える赤字となる見通し、
東京都がJOCに赤字分について一定の費用負担を要請。

都は、10月までの3年間の五輪招致活動経費の公金投入を
100億円と決め、追加の公金投入は避けたい考え。

JOC幹部は、都からの要請があったことを認め、
「手伝えることは手伝いたい」

JOCは、政府の事業仕分けで補助金縮小が検討、
内部で慎重論が出ることも予想。

IOC総会で東京が落選するまでの3年間、
招致委が予定した招致活動経費は75億円。
25億円は都の補助金で、残り50億円を民間企業などからの
寄付・協賛金で確保。

景気低迷などの影響で、民間からの資金が43億円程度、
年度内に確定する決算で、1億円超の赤字が出る見通し。
都は、招致委への補助金のほか、都独自の招致活動経費として
75億円の公金支出を予定。

都議会では、「これ以上の公金投入は都民の理解を得られない」
との意見が根強い。
都が、招致委赤字分の負担のあり方を検討する中、
都や招致委とともに五輪招致の中心的役割を果たした
JOCが交渉先として浮上。

石原慎太郎知事は、「JOCにいっさいの責任がないということは
ありえない。JOCは負担の努力をすべきだろう」

招致委は、06年11月設立。
石原知事が会長を務め、海外でのロビー活動など五輪招致を推進。
メンバーには、JOC関係者や五輪出場経験者、都職員が含まれる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091222k0000m040144000c.html

幼児教育(2)意思育む「コーナー保育」

(読売 12月16日)

遊びを選ばせる「コーナー保育」で、
意思決定の力をつけさせる取り組みが広がる。

大きなテーブルで、緑や赤の紙を使って
クリスマスカードを作る子どもたち。
別の部屋では、衣装に着替えた園児たちが、
自分たちで考えた劇を演じていた。
埼玉県松伏町の私立まつぶし幼稚園には、
様々な遊びのコーナーがあり、園児たちは毎朝、
自分でコーナーを選び、そこで遊ぶ。

「造形」、「絵」、「絵本」のコーナーのほか、本格的な調理器具で
教師と本物のクッキーなどを作れる「クッキング」や、
「ごっこ」遊びができるコーナーも。
指先を使う訓練や表現力など、幼児期に必要な発達を促すよう、
一つ一つのコーナーが意図を持って設けられている。

同園は、1974年の開設直後から、デンマークなど
北欧諸国の幼児教育を参考に、子どもが意思決定できる保育を実践。
クラス全員が、同時に何かを行う「一斉保育」に比べ、
教育効果が中途半端になる恐れもあったため、
「子どもの動きを的確に促せるよう、コーナー配置の工夫や
試行錯誤を重ねた」と、若盛正城園長(64)。

若盛園長によると、子どもたちは自分で選んでいるつもりでも、
一人一人の発達に合わせ、子どもの選択を教師が「操作」している。
体を動かすのが苦手な子どもには、外遊びコーナーに興味がいくよう
促し、手先を器用にしたい子には、近くにはさみを置いたりする。

一斉保育は、午後のわずかな時間だけ。
集団行動が身に着かないのでは、との懸念に対して、
「園にやってきて、ワクワクどきどきできる。
まったく自由に遊ぶより、『今日は何をしようか』と意識して
選択する習慣が身に着く。
『個人』を育てないうちに、『集団』を育てようとするのは逆効果

コーナー保育を、昨年度から取り入れた宮崎県日南市の
私立吾田幼稚園。
まつぶし幼稚園のような最初からコーナー保育を前提に設計された
建物ではないが、教室内に仕切りを設け、
ままごとコーナーや積み木コーナーなどを設けている。

伊豆元精一園長(44)は、「一斉保育の頃は、
同時に何かをさせようと、教師の大声が絶えなかったが、
コーナー保育にしてから大声が必要なくなった」

絵の描き方も、一人一人に丁寧に指導することができる。
ほかの子どもたちをコーナーで遊ばせつつ、
少人数ずつに順番に教えることができる。
自分で考えて行動する習慣がついているので、
厳しく訓練しなくても、小学校入学を控えた年長組の2学期ごろから、
自然と集団行動もとれるようになっていく。

「強制」でも、「自由気まま」でもない環境が、自主性を育んでいる。

◆メモ

子どもが苦手な「片づけ」。
若盛園長は、おもちゃ箱などに雑然と収納するのではなく、
コーナー保育のように、工作、絵、積み木などと
目的別に分類することを勧める。
毎回同じ場所に、親と一緒にしまうことで、
次第に自分で片づけられるようになっていく。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091216-OYT8T00208.htm

精子の"守護神"発見 タンパク質がDNA保護

(2009年12月15日 共同通信社)

哺乳類の精子がつくられる際、遺伝情報が正しく伝わるように
DNAを保護しているタンパク質を、
京都大の中馬新一郎助教らのチームが発見、
15日付の米科学誌デベロップメンタルセルに発表。

中馬助教は、「いわば精子の守護神。
男性不妊症の診断や治療法の開発に役立つと期待」

チームは、「Tdrd9」というタンパク質を合成できない
遺伝子操作マウスを作製。
雄のマウスの精巣を調べると、DNAに自分自身を次々にコピーする
「転移性遺伝子」と呼ばれる小さな遺伝子が異常に増殖し、
精子が全く形成されない。
雌マウスは、生殖機能に異常がなかった。

このタンパク質は通常、転移性遺伝子を抑制する役目を
果たしているらしい。
男性が原因の不妊症は、全体の3~5割を占め、
中でも無精子症が最も深刻。
中馬助教は、「人の精巣でのタンパク質の詳しい働きについて、
産婦人科医と研究を進めたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/15/113089/

2009年12月27日日曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/6止 安定化へ基金創設

(毎日 12月20日)

キーワードは「自立」。
男子バスケットボールのbjリーグが、創設5シーズン目を迎えた
今季、節目を迎えようとしている。
bjリーグは05年11月、6チームでスタート。
毎年、新規参入球団を受け入れ、09~10年シーズンは
13チームが、東西カンファレンスに分かれてリーグ戦。
これからも、参入希望について広く門戸を開く方向。

「3年目ぐらいまでは、『リーグやチーム同士、互いに助け合って』と、
一緒になって動いてきた。
今季からは違う。
各チームが自立するための時間は、十分あったはず。
こういう経済状況の中、新しいチームには、他チームに
協力することはできないという前提がある」と河内敏光コミッショナー。

具体化のための一例は、チーム運営会社の経営安定化を
目的とした基金を今季中に設けること。
1チーム1500万円をメドに基金を積み立て、
経営難に陥った運営会社に融資する。
大分が経営危機に直面した際、リーグは役員を送り込むなど
再建支援に主導的な役割を果たしたことがある。
ただし、「これは最初で最後」(河内コミッショナー)。
サッカーJ1の大分が、Jリーグの積み立ててきた
「公式試合安定開催基金」から、来年1月末までに
最大6億円の融資を受けることが決まった。
bjリーグが設ける基金も、同じ効果を狙ったもので、
側面支援重視にシフトすることを意味。

参入段階で、厳しい審査を設ける方針も固めている。
東京や高松、大分など、比較的早い段階からリーグに参加している
チームの経営難が、相次いで表面化していることについて、
河内コミッショナーは、「経営者が頻繁に交代するチームは、
やはり何らかの問題を抱えている。
厳しい審査をクリアした新規参入チームについて、
経営面の心配はしていない」

特別な事情がない場合、運営会社の年間収支ラインは
2億3000万円程度。
8000万円の入場料収入があれば、スポンサー収入などでクリア。
これを踏まえ、bjリーグでは参入チームに対し、
1年目からこの収入レベルを見込める事業計画の策定を求めている。

昨季は、沖縄や仙台のチケット売り上げが1億円を超えた。
これらの地域では、「ホームタウン制、地元密着型チーム経営により、
支持基盤の安定・拡大を図る」という「bjリーグ宣言」の理念が
浸透しつつあるようだ。
成功したビジネスモデルを、各球団が共有できるかが、
bjリーグの将来を左右する。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/20/20091220ddm035050127000c.html

幼児教育(1)「なぜ」を大事に 科学の心培う

(読売 12月15日)

子どもの疑問を受け止め、科学の心を育てている。

「イチゴも、種をまくとできるの?」
いわき市の市立藤原幼稚園で、イチゴの絵本を読んであげていた
初瀬玲子副園長は、4歳男児の問いに口ごもった。
男児が発熱し、職員室で一緒に保護者のお迎えを待っていた時。

果肉表面の粒々が種であることは知っていたが、
実際の栽培では株で増やすのが一般的。
実から取った種は育つのか?
「そうなんだねえ」とあいまいに答えてしまった直後、ハッとした。

園では、毎年入園してくる幼児たちの様子に危機感を持っていた。
パンを与えても、食べられないほど粉々にちぎってしまったり、
口を開けて待つだけだったりする姿が増えていた。

初瀬副園長らは、入園前の体験の少なさに原因があると考えた。
男児の質問に、「教師自身も、子どもの『なぜ』に真剣に向き合わず、
実体験をおろそかにしてきたのではないか」と、
猛烈な反省がわいてきた。

「種、まいてみようね」。
男児の一言をきっかけに、年中組でイチゴを種から育ててみる
という試みがスタート。

子どもたちの関心は、熟し切って黒く乾燥したイチゴから
種を取ることを知ると、「食べるための実」から
「種を取るための実」へと広がっていった。
最初に出た芽を大事に育てていたところ、
ほかの芽と葉の形を比べ、雑草だったと気付いたことも。

「種のとりこ」となった園児たちは、
「お弁当のミニトマト」や「家で食べたブドウ」などの種も観察し、
色や形、大きさの違いに驚く。
子どもの野菜嫌いがなくなったという効果も。
藤原幼稚園の園庭には、今では種から育てた花や果物、
野菜があふれ、園内には様々な種が展示。

「イチゴの種をまくとどうなるのか」。
子どもの疑問を、教師自身も同じ目線で楽しむことで、
「科学の心」を引き出したこの取り組みにより、
同園は、ソニー教育財団の幼児教育支援プログラムで、
2008年度の最優秀プロジェクト園に選ばれた。

聞き逃しがちな子どもの疑問に向き合う取り組みは、
その後も続いている。

ヒマワリを育てている年中組の男児の一人が、
「ヒマワリは、カボチャになるんだよ」とつぶやいた。
小野晴香教諭(25)が、年長組の園児に聞いたところ、
予想に反し「カボチャになる」との意見が多数派。

教師や保護者は答えを教えずに、なぜそう考えるのか
意見を発表させたり、カボチャがなる「予想図」を描かせたりして
謎解きを見守った。
夏休み明けの9月、3メートル30に育ったヒマワリを
全員で引き抜き、葉っぱや根っこまで隅々を夢中で調べた
子どもたちは、「ヒマワリはカボチャにならない」との結論に
自分たちでたどり着いた。

「教える内容が細かく決められている小学校と違い、
幼稚園では何でも学ぶことができます。面白いですよ」と、
初瀬副園長は笑顔を見せる。

身近な自然を使った効果的な指導が、
子どもたちの発達を促している。

◆メモ

家庭でも身近な種から育ててみると、親子で楽しみながら
「科学の心」を芽生えさせることができる。
藤原幼稚園のお薦めは、芽が出やすく、育てやすいアボカド、
ミカンなどかんきつ類全般、ビワ、スイカ。
植える前に、水でよく洗うといい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091215-OYT8T00235.htm

新日本石油の松村副社長「国産バイオ燃料、1リットル40円で生産可能」

(日経 12月17日)

CO2排出をゼロとみなし、環境負荷が少ないほか、食料と競合しない
バイオ燃料を、国内で製造しようとする動きが進んでいる。
新日本石油は、トヨタ自動車や三菱重工業などと6社で、
「バイオエタノール革新技術研究組合」を組織、
食料に使わない植物を使ったバイオ燃料の研究を進めている。
組合の理事長を務める松村幾敏・新日本石油副社長。

——ブラジルや米国では、大規模な農場で作った農作物を使って
バイオエタノールを大量に生産。
日本で、経済的なバイオエタノールの生産は可能か?

目標としている1Lあたり40円での生産は、十分に可能。
現在、6社に加えて大学など研究機関の力を借りて
技術開発を進めている。
育種や収集、糖化などバイオエタノールの製造工程を6つに分け、
各社が工程内のコストを現在の10分の1~20分の1にすることに
取り組んでいる。
現在の工程表では、2015年に技術を確立し、年産1万kL程度の
実証プラントを立ち上げる。
20年までには、20万kL程度の量産プラントを立ち上げたい」

——国内で栽培した原料を使っていても、
40円の水準を維持することはできるのか?

「東京大学農学部の試験場で、いろいろな植物を作って検討。
トヨタも、栽培技術をいろいろと持っており、
各社の知見を持ち寄って、可能性を検討。
条件になるのが、1年を通じて収穫ができること。
燃料の需要は、周年を通じてあるため、ある期間だけしか
収穫できないのでは、供給が安定しない。

原料の有力な候補と考えている植物の1つが、
多年生のエリアンサスという巨大なススキ。
種をまいたら、すぐに芽が出てきて、半年もすれば8メートル近くに。
耕作の手間がかからず、短期間で大きくなり、栽培の効率が高い。

このプロジェクトは、耕作ができない場所を有効に使うという目的も。
目標としている20万kLの生産に、1.2haにも及ぶ広い土地が必要、
土地代はゼロであることが40円の実現の条件」

——トヨタと、次世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けた
研究も進めていた。

パームヤシの植物油脂を、水素と反応させて製造する
水素化バイオ燃料(BHD)の生産を、マレーシアで計画。
国内でも、東京都のハイブリッドバスに試験導入し、
北海道洞爺湖サミットでも利用。
昨年の原油高騰時、パーム油の価格も急騰、
採算が見とおせなくなった。
食用にもなるパームヤシを、燃料に使うことへの批判も多い。
昨夏、マレーシアでの事業化の計画はいったん見直すことに。
新日石としては、BHDの技術を東南アジアの諸国に提供、
原油の権益獲得のための交渉にもメリットは出てくるかと
期待したが、そうはいかなかった」

——バイオ燃料は、ガソリンなど石油燃料を代替するものになるか?

「全部を代替するということはない。
石油燃料とは、量の面で圧倒的な差がある。
バイオエタノールは、国内で生産しているコメを全部使っても、
年間に400万kLしか作ることができない。
ガソリンの国内需要は減ってきたとはいえ、5800万kL。
石油に置き換わるメーンの燃料にはならない。
一部でも代替できれば、その意味合いは大きい。
新産業の構築にもつながるため、米国も多額の費用をかけて
研究を進めている。
国内でのバイオ燃料作りが、非常に低い国産エネルギーの割合を
わずかでも引き上げることにつながる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091216.html

2009年12月26日土曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/5 スポンサー撤退

(毎日 12月19日)

高松市香川総合体育館。
男子バスケットボール、bjリーグの高松-福岡戦
終わったコートに、軍手をはめた観客約40人が集まった。
組み立て式の床面や観客席などの撤収作業を1時間余りで終え、
「お疲れ様」と声を掛け合って家路に。

高松は、リーグ創設2季目の06~07年シーズンから参戦、
今季が4季目。
地元の穴吹工務店がオーナーとメーンスポンサーを兼ね、
財政的に恵まれた。
会場でのにぎやかな演出や選手の待遇等も、リーグ屈指。

建設不況で経営が悪化、昨季限りでスポンサーから撤退。
球団は、地元の幅広い企業に支援を求めて営業活動を
進めたが、難航。
今年8月、収入が約8000万円不足し、
今季の参戦を見送る可能性を公表。

元二俊朗球団代表は、「チーム創設時から自立採算への移行は
予定していたが、景気低迷と重なりタイミングが悪かった」
その後、支出削減やスポンサー獲得などで、
不足見込みを約5500万円まで圧縮。
開幕が半月後に迫った9月25日に、ようやく参戦を発表。

選手の年俸は、昨季よりもカット。
主催試合は、主に約3000人収容の高松市総合体育館を使い、
1試合あたり約500万円を費やしていたが、
今季は音響や照明などの演出を最小限に抑制。
26試合中10試合は、市中心部から約10キロ離れ、
収容人数もほぼ半分の香川総合体育館に移し、
経費を半額以下に抑えた。
1口1万円の個人スポンサー制度も導入し、現在約560口を集めた。
試合のコートの周囲には、賛同者の名前を記した
ステッカーがずらりと張られる。

ブースター(bjのファンの呼称)も協力に乗り出し、
募金や署名などを進めた。
試合運営のボランティアもその一つ。
前日の設営、当日のチケットのもぎり、終了後の撤収など。
球団が、アルバイトを雇う人件費が減る上、短時間で撤収が
終わるため、会場使用料を抑える効果も生んでいる。

同様のボランティアは、bjの他球団では以前から行われている。
ブースターのグループ「ちーむ・アロぶる。ブースターズ。」
宮西育代さんは、「これまでは試合を応援するだけ。
今は、試合に至る過程にも関心がある。
球団の危機で、チームとブースターの距離が縮まり、
かえって良かったかも

球団は、スポンサーやチケットの営業も含め、努力を重ねる。
赤字見込みを解消するには、まだ遠い。
元二代表は、「決定打はない。少しずつ地域に浸透し、
さらに支援を得られるチームになるしかない」。
形になり始めた地域の動きを支えに、模索が続く。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/19/20091219ddm035050086000c.html

特別支援教育(8)障害話し合える社会へ

(読売 12月12日)

読者から、連載への感想が相次いだ。

「普通高校と特別支援学校とのはざまで、発達障害の子は
ちゅうぶらりんになっている」
広汎性発達障害のある中学2年の娘を持つ埼玉県の母親(40)。
娘は、知的な遅れがなく、療育手帳を持っていない。
特別支援学校からは「管轄外」、普通高校からは
「集団生活が苦手だと、単位取得は難しい」と言われている。
「高校の特別支援教育は名ばかりで、
中学までの支援が途絶えてしまう」と嘆く。

ディスレクシアの中学3年の娘を持つ千葉県の母親(47)は、
「普通高校へいきたい」という娘の希望をかなえるため、
娘とマンツーマンで受験勉強に励んでいる。
今の悩みは、娘の発達障害を志望校に伝えるかどうか。
担任は、「不利になるから、ふせた方がよい」と言うが、
面接や作文で配慮をしてもらえる特例があることを
教育委員会から聞いた。
「アメリカなどでは、試験時間の延長や誤字・脱字への配慮は
当たり前と聞く。その度に、日本の特別支援教育の遅れを
痛感して、ため息が出る」

苦手なことを、力ずくでやらせようとした上、
「できないのは、親が甘やかしたからだ」と非難する、
無理解な教師の対応に傷ついたという声。

社会への橋渡しとなる、義務教育後の特別支援教育に
課された役割は大きい。

「発達障害がある子の存在を認め、クラスに居場所を作ってほしい」
ディスレクシアを告白し、中学、高校で講演活動を行う
南雲明彦さん(25)は、そう訴える。

文字がにじみ、かすみ、揺らいで見える――。
読み書きが苦手だと意識したのは、小学生のころ。
「みんなと同じようにできないのは、怠けているからだ」と自分を責めた。

教師から朗読するよう指されると、笑いを取ってごまかす。
読めない自分を悟られぬよう、必死に「おちゃらけキャラ」を演じたが、
高校2年になって受験モードに入ると、仲間の視線が厳しくなった。

学校に行くのも、人に会うのもこわくなり、自宅に引きこもった。
「自分は汚れている」という強迫性障害が表れ、
一日に何度も、何度も、手を洗わずにはいられない。
3度の転校を経て、たどり着いたのが、
インターネットを活用した通信制高校。

21歳のとき、ボランティアをしようと、
ディスレクシアを支援するNPOを訪れた。
自分も当事者だと、初めて気がついた。
「怠けていたわけじゃないんだと分かり、目の前が明るくなった」

同じように苦しむ子のためにも、発達障害を啓発することが
必要だと考え、講演をするようになった。
講演先で教室に入ると、つらかった学校時代の思い出が
今もよみがえる。
生徒から、「学習障害のことがよく分かった」と言われると、
当事者が声をあげる大切さを実感。

「勇気ある告白」と言われることには、違和感を覚える。
だれもが気軽に自分の障害について話し合える社会が、
いつか来ると信じている。

◆ディスレクシア

学習障害の一種、知的な遅れはないのに、読み書きに
困難を示しやすい発達の障害。
日本での発現率は約5%、英語圏の発現率は10%以上。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091212-OYT8T00314.htm?from=nwlb

東京ベイスタジオの川辺社長「ネット放送、ライブ感を大切に」

(日経 12月15日)

携帯電話向けコンテンツ制作や貸スタジオ事業を手掛ける
東京ベイスタジオが、インターネット放送局
「ODAIBA(お台場)TV」を開設。
アイドルグループが出演する若者向け番組などの合間に、
企業と共同で制作する宣伝番組も配信。
川辺保弘社長に、戦略を聞いた。

——ネット放送局を始めた理由は?

「これまで携帯端末を中心に、飲食店の紹介やイベントの
中継をする動画配信事業を手掛けてきた。
携帯電話で情報を集めたり、コンテンツを楽しんだりする動きが広がり、
当社も成功を収めた。
携帯端末は、短い動画を見るのには適しているが、
長く見続けるのは難しいというマイナス面。
長いコンテンツを提供するには、パソコン向けの配信が必要

「地上波テレビ放送の広告は、料金が高く、手を出しにくいと
思っている企業の受け皿になれる。
電波ではなく、ネットで配信するため、放送時点で可能な
アクセス数は、500〜600に限られ、放送済みのコンテンツを
アーカイブとして半永久的に視聴できる

——放送局の特徴は?

「ネット放送局を名乗る企業は多いが、地上波と同じように
毎日番組表を作ってコンテンツを流すのは、当社と
『あっ!とおどろく放送局』の2局しかない。
当社は、日本を代表する観光スポットとなったお台場のイメージを
生かし、お台場の風景や商業施設をふんだんに盛り込む」

——番組編成は?

「アイドルグループAKB48や人気モデル武田真理子さんの
トーク番組、料理教室など、番組を1週間に35時間ほど流す。
トーク番組では、視聴者が放送を見ながら送ってきたメールを、
番組の中ですぐ取り上げるなど、ライブ感を大切にしていく

——企業と共同制作する宣伝番組も配信する。

「自社のサービスや店舗をじっくり詳しく紹介したい企業とともに、
最長1時間の番組を制作・配信。
多彩な企業と交渉し、近く放送ができるだろう。
配信1時間につき、7万~16万円という手が届きやすい料金設定。
まずは効果を試したい企業にも合っている。
1週間に100時間の放送が目標」

「放送したコンテンツは、半永久的に残すので、
各企業が自社のウェブサイトから接続して、
閲覧できるようにすることも可能」

——どのような業種の利用を想定?

「指導法などアピールしたい学習塾やテナントを紹介したい
商業施設、アイドルを売り込みたい芸能事務所などの
利用があるとみており、実際に相談を受けている。
経済や金融、投資を学べる専門学校からも問い合わせ。
意外な需要があるかもしれず、どのようなアイデアが
生まれるか楽しみにしている

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091214.html

2009年12月25日金曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/4 観客数1位で破綻

(毎日 12月18日)

「ディーフェンス!」
神奈川県大和市の体育館に、市民約1100人の歓声。
バスケットボールのbjリーグ・東京アパッチの約2カ月ぶりとなる
ホーム試合は、東京から電車で約1時間離れた
人口約22万人の地方都市開催。
観客の一人、桜井雅樹さん(25)は、
「近くでプロのバスケが見られるなんて」と歓迎したが、
東京初の都外開催となったこの試合は、運営を巡るドタバタの表れ。

観客数トップなのに破綻--。
bjリーグ1位の観客動員数を誇っていた東京の運営会社が、
今季開幕直前の8月、経営の見通しが立たなくなった。
リーグ主導で新たな引き受け先に決まったのは、
スポーツ界では無名の医療器具販売「エクスター」。
2~3年後の参入を視野に入れていたため。

社内では、「時期尚早」との声もあったが、
リーグ側の熱意にほだされ、受諾。
運営会社「エクスターエンターテイメント」を設立し、
走りながらの運営を始めたが、問題はすぐに噴出。
前運営会社は、今年11月の試合会場を押さえておらず、
開催規模に合う体育館は既に埋まっていた。
リーグに、11月のホーム試合を12月にずらしてもらい、
何とか大和市で会場を確保。
会場のDJが、「アパッチが大和市初上陸!」と叫んだ
舞台裏には、こんな引き継ぎ不足があった。

破綻の謎解きも始まった。
昨季のメーン会場・有明コロシアムは、1万人収容。
昨季の観客数はリーグ最多とはいえ、1試合平均3244人
(リーグ平均2246人)で、会場にはかなりの無駄。
そのうち1000~1500人は、「無料券」を受け取った客で、
収入に結びつかない。
実態に合わせた会場に変更し、
代々木第2体育館(約3000人収容)での
開幕4試合の平均観客数は、1500人程度。

「まだ大きい」と、さらに小さな会場への変更を検討。
公的施設で試合を行う場合、営利目的と見なされ、
割高な料金を徴収されるが、来年4月に試合を行う
墨田区総合体育館(2000人収容)とは交渉の結果、
練習開始から試合終了までの約4時間半以外の会場設営などに
かかる時間は、割安な一般料金としてもらうことに成功。

今季の予算は、約2億円。
チケットが完売できたとしても、収入は1億5000万円、
スポンサー獲得は急務。
運営会社の鴨志田聡さん(34)は、「企業の予算年度が
替わった後の来季が正念場。
それまで、身の丈に合った経営を続けたい」
「観客動員リーグトップ」の美名を捨て、チーム存続を第一に模索。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/18/20091218ddm035050170000c.html

結核菌認識するタンパク質 九大、阪大グループが特定

(2009年12月15日 共同通信社)

世界で年間160万人以上が死亡、とされる結核について、
人体の免疫細胞にあるミンクルというタンパク質の一種が、
体内に侵入した結核菌を認識する"アンテナ"として働いていることを、
九州大と大阪大の共同研究グループが特定。

研究グループの中心となった九州大生体防御医学研究所の
山崎晶教授(免疫学)は、「ミンクルの働きを強めることができれば、
結核に対する有効な治療につながる可能性がある」

山崎教授によると、ミンクルはマクロファージと呼ばれる免疫細胞に存在、
糖と結合する性質などを持っている。

研究グループが結核菌成分を分析した結果、ミンクルが結核菌に
特徴的な糖脂質「トレハロースジミコール酸(TDM)」を認識。
免疫細胞に働き掛け、一酸化窒素を放出させるなど、
結核菌を排除する働きをしていることが判明。

実験では、ミンクルを持たないマウスの免疫細胞は、
結核菌に対する反応が弱いことも確認。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/15/113090/

「クライメートゲート」が迫る覚悟

(日経 2009-12-21)

今年最もメディアを騒がせたニュースは何だったか?
国内なら、間違いなく政権交代後の日米関係やデフレ、
松井秀喜のエンゼルス移籍かもしれない。
世界に目を転じれば、「クライメート(気候)ゲート」ではないか。
え、聞いたことない?

「気温の低下を隠すトリック(データ操作)を終えた」。
地球の温暖化研究で知られるフィル・ジョーンズという英大学教授が、
米研究者にあてたメールがネット上に流出。
同教授が務めるイーストアングリア大学のコンピューターから、
そのほか10年分以上ものデータが流出。
一連の「事件」を、ウォーターゲートならぬクライメートゲートと呼ぶ。

メールの中身に反応したのは、温暖化現象が人為的だという
事実そのものに懐疑的な科学者たち。
以降、欧米では大騒ぎになり、
連日、メディアが競って成り行きを取り上げた。

温暖化人為説の支持者たちは、流出事件が計ったように、
第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の
直前だった点にざわめいた。
「ロシア情報機関の仕業じゃないか」、
「石油が温暖化の元凶のように言われ、劣勢に立たされていた
中東某国が関与した」
そんな憶測が、まことしやかにネット上などに広がっていった。

開幕当初は、COP15も揺れた。
政府間パネル(IPCC)のパチャウリ議長は初日、
同パネルの信頼性が揺らぐことを懸念し、
「透明性と客観性は保証されている」と機先を制している。
ジョーンズ教授は、IPCCに深く関係していた。

日本では、あまり話題にならなかった。
流出したメールの信ぴょう性や背後にある政治的意図が
見え隠れしたためかもしれない。
「温暖化は、どんなことがあってもよくないこと」との考えが
日本人には強い背景も。
調査機関によれば、人為的温暖化説を信じる人は
米国が6割弱、日本は9割にものぼる。

米欧と日本の温度差が大きければ大きいほど、
CO2削減を巡る目標水準の差と重なって見えてくる。
日本の鳩山政権は、25%削減を打ち出すことで、
国際交渉でイニシアティブをとる考え。
米国や、中国ほか新興・途上国は、高い目標にあくまで消極的。
日本だけが突出してしまう結果に。

日本では、産業界が自国の「突出」に反発。
恐らくクライメートゲートについても、政府に対し各国での報道ぶりを
詳しく紹介し、25%への慎重姿勢を促していたに違いない。

クライメートゲートは、米欧の中の利害対立の構図を浮き彫りに。
排出権取引など、地球温暖化を巡る金融取引や環境関連企業など
への出資を通じて、利益を上げそうな国や人々。
石油産出国のように、時代に逆行しかねない国や人たちの2つ。

前者には多分、元米副大統領のアル・ゴア氏や著名投資家の
ウォーレン・バフェット氏、米欧金融機関が入る。
「環境ビジネス」と一口に言っても、政治や経済の複雑な人脈、
世界とのかかわりを抜きには語れない。
100年に一度のエネルギーと製造業革命が起きようとしているだけに、
日本企業にもそれなりの情報武装と覚悟が必要。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091218.html

2009年12月24日木曜日

特別支援教育(7)自立・就労へ重点指導

(読売 12月10日)

発達障害がある若者が社会で自立できるよう、学習を支援。

冬の穏やかな日差しが入る小さな教室。
2人の生徒が国語、英語、数学の問題を解いている。
「はい、終わり。じゃあ、答え合わせしようか」という女性教師に、
生徒の大和田聡美さん(仮名)(20)は、「えー。難しいよ、これ」と苦笑い。

名古屋市の見晴台学園は、学習障害(LD)がある子どもの
保護者らが設立した無認可の学校で、中等部と高等部がある。
高等部は、3年間で学力の底上げをはかる「本科」と、
その後2年間で自立・就労を目指す「専攻科」がある。
専攻科には、職場体験や調理実習などの授業もある。
いずれも6人ほどの少人数で授業を行い、
5年かけて「理解する喜び」をじっくり育む。

同学園には、子どもに知的障害がないため、
特別支援学校などに入学できないが、
「一般の学校で学ぶのは難しい」と判断した保護者が通わせている。
現在、本科11人、専攻科10人が在籍し、
東京から親と転居してきた生徒も。

「開校20年目を迎え、義務教育を終えた発達障害の生徒が
しっかり支援を受けられる学校は今も少ない」と、
藪一之学園長(44)は嘆く。

大和田さんは、専攻科の2年。
相手が話す言葉が抽象的だと、十分理解できない。
この日は、来春の定時制高校入学を目指し、過去の試験問題に挑戦。

小学生時代、わからないことがあっても教師に聞けず、
友達ともうまく意思疎通できないことで悩んでいた。
今は、「友達もできたし、先生に何でも聞けるようになった。
自分に自信が付き、前向きになった」と、社会に出ることを楽しみに。

春日部市の自然学園は、通信制高校の技能連携校という形で
高校卒業資格を得られる高等部(3年)と、
その後の自立に向けた学習を行う大学部(原則2年)をもつ。

現在4人が通う大学部では、パソコンの操作法や文書作成、
電子メールの使い方などを中心に、ビジネスマナー、
コミュニケーションなどを指導、職場体験も行っている。

大学部1年の小谷俊明さん(仮名)(20)は、
読み書きが困難な「ディスレクシア」などの障害。
同県内の定時制高校を、3月に卒業。
在学中に経験したスーパーなど複数のアルバイトで
度々上司に怒られ、自信を喪失、同学園大学部に入った。
入園後、読み書きの指導を重点的に受け、
「先生方が、自分の障害を理解してくれているので、うれしい。
頑張って早く就職したい」

働きたくても、働けない人は多い。
小林浩・学園長(47)は、「企業は、障害者を雇うよう促されているが、
発達障害がある人で、障害者手帳を持っている人は少ないのが現状」

社会で自立するための勉強が報われるよう、受け皿作りを急ぐ必要。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091210-OYT8T00192.htm?from=nwlb

早稲田大学の黒澤教授「トップ主導でISOを生かせ」

(日経 12月12日)

鳩山由紀夫首相が、温暖化ガス削減目標について、
2020年までに1990年比25%減を掲げ、産業界に波紋。
厳しい数値だが、技術革新が促されて日本経済に
活力を与えるという見方も。
企業は、どのような姿勢で挑むべきか?
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の黒澤正一教授。

——25%削減目標をどうみているのか?

25%削減の宣言は、企業の環境経営のあり方に一石を投じた。
この数値は、先進国全体で2050年までに80%以上の削減という
目標を踏襲し、妥当性を認めなければならない。
高いハードルを前に、早くも真水による25%削減をあきらめ、
途上国・新興国の削減に対する貢献の代償や排出権取引で
賄おうとする向きが大勢。
環境経営の技術を駆使し、国内のみでの25%削減の具現化を提言したい」

目標は、必要だからこそ設定される。
現在の力量、慣習、インフラ、技術水準では、
簡単には達成できなくても、不必要になるわけではない。
多くの企業は、『必要な目標』ではなく、『できる目標』として
低水準の数値を勝手に設定し、知らずに現状を追認してしまいがち。
まず現状否認からスタートし、温室効果ガス削減に向けて
業務変革を繰り返すことによってのみ、到達できる。
現状否認を継続させるけん引役として、
環境マネジメントシステム(EMS)の役割が、一段と重要

——具体的にはまず何をすべきなのか?

我が国では、EMSが瀕死の状態にある。
今年4~6月、日本適合性認定協会(JAB)による
ISO14001適合組織数が前期に比べ減少に転じ、
7~9月期は2期連続減。
ISO14001やEMSは、『負担の重い看板代』くらいの印象では。
ISO卒業を宣言する例まである。
それは、規格の要求事項についての誤解や曲解によるもの。
システムを正しく構築し、厳格に運用する必要がある」

——どのあたりが間違った理解なのか?

「経営トップの姿勢を例に。
トップは、担当者まかせにしていないか。
ISOでは、トップが継続的改善にかかわるという明文の規定。
消費電力が2%減ったとか、廃棄物処理費用が5%減ったとか、
パフォーマンスに偏重せず、将来への信頼確保が必要。
トップが方針を示して、高い目標を設定する仕組みが必要。
ISOの精神を正しく踏襲した効果的なPDCA(計画・実行・評価・改善)
サイクルを実現させる必要。
EMSの健全化、“第2世代”EMSにバージョンアップしなければならない。
ISO14001が発行され、これまでは練習期間とも言ってよい。
それなりに市民権を得たものの、今のままではいけない」

——企業が参考にできる事例はあるか?

大阪の歯ブラシメーカーが、第2世代EMSに向けて果敢に挑戦。
紙や電気の無駄を省くといった第1世代EMSからの卒業を宣言。
目標として、『温室効果ガスの90%削減』を掲げた。
歯ブラシという製品で、90%削減を実現するにはどうすべきか。
試行錯誤して得られた答えの1つが、ブラシの付いた頭の部分だけを
切り離し、交換できる製品を開発。
柄の部分を捨てず、いつまでも使ってもらうため、
指で押さえる部分に、ネコの肉球のような手触りのアクセントを付けた。
これで、70%までの削減につなげた。
トップマネジメントで動いており、社内に良い意味での緊張関係が
できている好例ではないか」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091211.html

電子書籍ブーム もう一つの文脈

(日経 2009-12-17)

今年の米クリスマス商戦最大の注目アイテムは、
電子書籍リーダー。

アマゾン・ドット・コムの「キンドル」、ソニーの「リーダー」、
米書店大手バーンズ・アンド・ノーブルの「ヌック」の、
三つどもえの競争が激しい。
ゴールドマン・サックスの調査では、米国消費者の6%が
今年のクリスマス・プレゼントに電子書籍リーダーを贈る計画。
この冬を境に、電子書籍が大きな市場として離陸するのは確実。

コンテンツを供給する側のメディア企業の動きも激しい。
タイムワーナー、ニューズ・コーポレーション、コンデナスト、
ハースト、メレディスの出版・新聞5社は、新聞・雑誌・書籍の
電子配信に関する共通プラットフォームや標準技術仕様を開発する
共同出資会社の設立を発表。
電子書籍リーダー、多機能携帯端末、携帯型パソコンなど、
端末の形態やメーカーにかかわらずに対応できるプラットフォーム。
アマゾンやアップルなど、特定企業の配信プラットフォームに
支配されず、コンテンツ供給元が自ら課金配信の
“胴元”を運営しようという試み。

これらの動きが示唆しているのは、
単なる印刷媒体の電子シフトだけではない。
ネットの利用端末として、携帯端末がパソコンに代わって
成長の中心になりつつあることを象徴している。

パソコン用にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版の
日本語版を開設したダウ・ジョーンズのトッド・ラーセン消費者
メディアグループ最高執行責任者(COO)は、
「多端末対応と世界的なローカライゼーションが、
WSJの成長戦略の両輪」

米国では、アップル製iPhone版で、
パソコン用電子版とは別途課金を開始。
今後も、利用端末ごとに課金の道を探っていく模様。
日本語版でも、来年早期に記事ごとに課金するシステムを導入。

載せるコンテンツ自体は1つで、閲覧可能端末を増やしていくと、
端末ごとに読者や広告を巡って共食いになる恐れも。
ラーセン氏は、「これまでの米国の経験でいうと、
紙と電子版の併存は相乗効果を出している。
電子版によるプロモーション効果で、紙の有料発行部数も伸び、
広告も多メディアでの提供に人気が集まる。
携帯端末を増やしても、より相乗効果が広がるはず」

日本でも、同じような現象はすでに起きている。
パソコン版と携帯電話版が併存するコンテンツサービスで、
有料にもかかわらず携帯版が売れたり、割高にもかかわらず
携帯電話向けの音楽配信「着うたフル」が売れたりといった現象。
日本のメディア・コンテンツ企業にとっても今後、
課金を織り交ぜた新たな成長分野として、
携帯型端末向けの配信サービスは注目が高まる。

モルガン・スタンレーの著名インターネット業界アナリスト、
メアリー・ミーカー氏は、最初の一般向けパソコン用ブラウザー
(閲覧ソフト)であるネットスケープの利用者が、
配布2年後に1100万人だったのに対し、
NTTドコモの「iモード」が2500万人、アイフォーンとiPodタッチを
合わせた利用者が5700万人に達したと指摘。
「携帯ネットは、大方の予想をはるかに上回る規模に成長、
今後も想像を超える規模に成長していく」と予想。

モルガン・スタンレーは、第3世代以上の携帯通信網の
全世界契約者は2010年に年間53%増加、
10億5500万人に達すると予想。
分母が増えても、09年の60%増(見込み)に匹敵する急成長が続く。
中国とインドという2大インターネット市場で、
3Gが普及するのはこれから。
インターネット利用端末は、これから携帯型が主流になっていく。

携帯型ネット端末は、電子書籍リーダーだけでなく、
パソコンでも電話でもない、新たなタイプが増えていく。
メディア・コンテンツ企業だけでなく、ネット上で事業展開する企業は
今後、多様な端末戦略が欠かせなくなりそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091216.html

2009年12月23日水曜日

特別支援教育(6)発達障害の学生 後押し

(読売 12月9日)

大学でも、発達障害のある学生が支援を必要。

9学部と大学院に約9200人が通う富山大学
大勢の学生が教室に吸い込まれ、キャンパスが静かになった午前、
理系学部に入学して4年目の佐野耕平さん(仮名)(21)が、
「アクセシビリティ・コミュニケーション支援室」のドアをノック。
全国の大学でも珍しい、発達障害の学生支援を目的とする機関。

佐野さんは、アスペルガー症候群と注意欠陥・多動性障害(ADHD)。
「講義が急に変更になったり、遅刻しそうになったりすると動揺してしまう」。
その場に座り込み、動けなくなることも。

昨年度の約1年間は休学。
昨年4月に支援室が開設、今年度から復学した。
支援室では、佐野さんの障害を考え、履修科目の選択を一緒に検討。
各教員にも状況を伝え、体調不良による欠席を
リポート提出で代替するなどの配慮。

支援室の吉永崇史・特命准教授(33)は、
「佐野さんは、授業に出たいとの意欲が強い。
どういう形なら単位が取得できるのか、教員も含めて一緒に考えている」

膨大な学生たちの中で、誰が支援を必要としているのか――。
大学の特別支援教育はそこが難しい。

入学時の書類に、障害があることを記載する学生はほとんどいない。
同大では、支援室の開設を機に、新入生や保護者、全教員に
パンフレットを配布。
「発達障害」に限定せず、学業や人間関係で困りごとをもつ
学生の相談機関としてPR。

「発達障害を前面に出すと、障害を自覚していない学生は来ないし、
教員も『行ってみなさい』とは言いづらい」と
支援室長の斎藤清二教授(心療内科医)。
同大は現在、発達障害がある、疑われる学生23人を支援。
そのほとんどは、教職員や保護者の勧めで訪れた学生。

支援につながるもう一つの窓口は、インターネット。
ゼミやサークルの連絡に使ったりするSNSでも、
支援室は困りごとの相談を受け付け、
学生本人や教職員から「要支援」の情報が寄せられている。

「大学での特別支援は、前例が少なく、すべて手探りの状況」
支援室では、特別支援学校の元教諭らコーディネーター4人が
相談に対応し、相談件数は昨年度から3倍強の月平均80件に。

アスペルガー症候群で一時大学を休んでいた男子2年生の
母親(49)は、「支援室の方々はよく連絡をくれるし、熱意を感じる。
支援がなかったら復学できていなかったはずで、感謝している」

青年期の発達障害は、子ども以上に周囲から理解されにくい。
大学での支援が当たり前になれば、
社会全体の理解も広まっていくはずだ。

◆SNS

趣味や仕事などの共通項を持つ人々が、
インターネット上に作った交流の場。多くは匿名で参加。
友達の輪のように、交流のネットワークがどんどん発展するのが特徴。
最近は、企業の社員用コミュニティーや広報・宣伝など、
ビジネスでの活用も増えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091209-OYT8T00282.htm

くま 血行良くして改善 カシス飲料に即効性 入浴、睡眠も重要

(2009年12月18日 毎日新聞社)

疲れがたまると、目元にできる「くま」。
「病気ではない」と軽視され、関心を持つ研究者は少なかった。
女性の社会進出が増え、目を長時間酷使する
コンピューター作業が定着、90年代後半から相談が急増。
化粧品メーカーによる研究も進んでいる。

市橋正光・神戸大名誉教授(皮膚科学)は、
「一口にくまといっても、原因によって『青くま』と『茶くま』の
二つに大別される」

疲れ、ストレスによって、血行が悪くなるとできるのが青くま。
酸素が少なく青黒い静脈血が、目の下に大量に滞ることで起こる。
まぶたや目の周りの皮膚の厚さは0・6ミリ。
顔のほかの部分の皮膚の約3分の1の厚さしかないが、
皮下には多くの血管が走り、血液の色が他の部位より透けやすい。

紫外線や摩擦による刺激で傷んだ細胞でメラニン色素が増え、
皮膚に沈着したのが茶くま。
目の周りは、皮脂腺や汗腺が少なく角質が薄いため、
乾いて傷つきやすいことで起こる。

それぞれの予防や対処法はどうすればいいのか?

市橋さんは、「青くま解消には、血行を良くするのが一番
入浴やマッサージでも改善、
市橋さんが「即効性がある」と勧めるのがカシス。
カシスに含まれるポリフェノールの一種アントシアニンが
細い血管を拡張し、血液を流れやすくする働き。

市橋さんらが、カシスアントシアニン50ミリグラムを含有した
ドリンクを、女性33人に飲ませて目元の血流を測ったところ、
15-90分で血流量が3-8%増加。
肌の色も、黒みが減って赤みが差し、実験後の聞き取り調査でも
7割が「くまが改善された」と答えた。

資生堂スキンケア研究開発センターの舛田勇二・主任研究員は、
「ビタミンEにも血行促進作用があるので、
普段使っている化粧品に含まれているか確認してほしい」

茶くまでは、色素生成を抑えることと、できてしまった色素を
早く皮膚から排出するのが対処の柱。

舛田さんが、20代と50代の女性を対象、
くまの有無と目元のメラニン量の関係を調べると、
どちらの世代でも、くまのある人の方がメラニン量が多かった。
50代の方が、20代よりメラニン量が多かった。

別の調査でも、年齢が上がるほど茶くまに悩む女性が増え、
舛田さんは「年齢とともにメラニン量が増え、
茶くまができやすくなるようだ」と推測。

舛田さんらによると、ビタミンCに色素生成を抑える働きがあり、
アセロラやレモンなど果物や野菜で摂取。
美白成分入りや保湿効果のある目元用化粧品も市販。

市橋さんは、「沈着が浅ければ、メラニンも古い角質と一緒に
そのうち排出。新陳代謝の改善も心がけてほしい。
入浴や十分な睡眠は、代謝にも良い」

英語でくまを表す言葉すらないほど、
欧米では関心を払っていなかった。
舛田さんによると、「dark eye circles(目元の暗い円)」という
言葉が定着してきた程度。
日本人は、以前からくまを意識していた。
くまの語源は、歌舞伎役者が施す赤や黒の化粧「隈取(くまどり)」に
由来するという説がある。

研究の歴史が浅いこともあり、わからないことも多い。
徹夜明けなど、疲労が蓄積した場合にくまが出るように思われている。
舛田さんが、18歳-50代の女性200人を対象に行った調査でも、
半数以上が「くまが目立つのは朝」
社員に徹夜で過ごしてもらい、目元を観察すると、
宵の口と朝方で変化はなく、徹夜後に仮眠をとって
午後に起きたらくまができた社員が多かった。
舛田さんは、「寝ている時には血管が拡張し、
起きると血管が収縮することと関係があるのかもしれない」と推測。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113354/

梅に糖尿病の治療効果成分?

(2009年12月18日 読売新聞)

和歌山県みなべ町は、特産品の梅に糖尿病治療などに
利用されている「α-グルコシダーゼ阻害剤」の効果がある成分が
含まれていることを、県立医科大の研究グループなどとともに
解明、特許を取得。

古くから「梅干しは体によい」などと言われてきたが、
具体的な効果を検証しようと、県立医科大や近畿大などの
8機関が2001年から、研究を重ねてきた。
昨年、胃潰瘍などの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を
抑制する物質があることを解明、特許を取得。

今回の特許では、食後高血糖を改善するために服用されている
α-グルコシダーゼ阻害剤の効果がある成分が、
梅にも含まれていることを突き止めた。
動物実験などでは、糖尿病の予防効果も。

宇都宮洋才・県立医科大講師は、
「研究が続いており、具体的な成分などは公表を控えたいが、
言い伝えられてきたことが、科学的に裏付けられたと思う」
特許の取得を受け、町は梅のこうした効果を積極的にPR。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113332/

2009年12月22日火曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/3 2人からの再出発

(毎日 12月17日)

福岡県二丈町にある製パン会社所有の球場から
ユニホーム姿が消えて、1カ月半が過ぎた。
独立リーグの四国・九州アイランドリーグに所属する
福岡レッドワーブラーズのメーン練習場。
球団は9000万円の負債を抱え、10月末、チームは解散。
3年目の来季は、試合に参戦しない「準加盟球団」となり、
23人の選手はリーグの救済ドラフトで、
他の4チームなどに散っていった。

球団に残ったのは、江口信太郎球団代表(40)とスタッフ1人。
1年かけて、負債だけでなく、復帰後最低限必要な運営費
約7000万円も合わせた1億6000万円程度を
かき集めなければならない。

経費節減のため、福岡市内の事務所を引き払った。
スポンサー約10社には増資を依頼し、
新規の企業スポンサーを探している。
ホームページで、1口3000円や1万円の個人、法人会員を募る。
復帰への道は、緒についたばかり。

次の失敗は許されないため、復帰後「人を呼べる球団」
にするための策は練っている。
試合を集中的に開催する地域を選んで本拠地とし、
存在感を出すもくろみ。

「県民球団」を目指すレッドワーブラーズは、
県内各地で試合を行ってきた。
福岡には、プロ野球ソフトバンクを筆頭に、
サッカーやバスケットボールといった人気チームが多く、
互角に戦うのは難しい。
年間80試合の観客動員の1試合平均は、500人未満。
試合を、これまで開催した球場の中から絞って
存在感を出そうというもの。

四国・九州アイランドリーグ、徳島インディゴソックスの
ボランティアスタッフを務めたこともある、
徳島大総合科学部の長積仁・准教授(スポーツ経営学)は、
「うまくいっているチームでも、興行を行わずに
1億6000万円集めるのは相当厳しいと思う」
その上で、「地域特化にシフトする試みに、一定の評価はできる。
試合のプロデュースを、学生に任せるなどして地域に開放し、
派生させるような顧客開拓に結びつくシステムを作り出せばいい」

福岡のスポンサー集めの売り文句は、「地域での実績」。
地域イベントに参加したり、小学校の登下校を見守る
スクールガードなど、地域に溶け込んできたことをアピール。

不況続きの中、企業スポンサーは10万円単位の小口が中心。
「正直、1年での復帰は厳しい。
だが、できると信じて動くしかない」。
江口代表は、オフィス代わりにしている自家用車で、金策に奔走。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091217ddm035050052000c.html

意外に役立つ農商工連携

(日経 2009-12-15)

「農商工連携」。
製造業の技術や流通業のノウハウを農業に活用するため、
昨年施行された国の施策。

独自技術や新商品など、有望な事業シーズを持ちながら
経営体力が弱く、自力で新規分野に挑戦することに
臆病になっている中小モノ作り企業も、農林業者と連携して
新事業や販路開拓に成功するケースも増え、
地域の中小企業の活性化策として成果をあげている。

東京ビッグサイトで開催された「チャンスを活かせ!!中小企業総合展」は
4万6000人が来場、熱気であふれた。
出展した514社は、事業や新製品のPRだけでなく、
連携相手探しにも力を入れていた。

展示会を主催した中小企業基盤整備機構(中小機構)は、
農商工連携を浸透させる場とも位置付け、
参加者同士の“見合い”があちこちで繰り広げられた。
パネルディスカッションのテーマも、ズバリ
「売れる商品作りと販路開拓のポイント・農商工連携活用の現場から」

パプリカ生産農家、Tedy(水戸市)の林俊秀代表は、
「異業種の知恵を借りて、アイスクリームのヒット商品を
誕生させることができた」と成果を披露。

国産パプリカ農家の先駆者であるTedyは、
年間約300トンを生産、国内産の1割以上をまかなう。
首都圏の高級スーパー、外食店向けに出荷。
形はピーマンに似て、赤、黄、ダイダイと色鮮やかなうえ、
肉厚で糖度が高く、煮ても焼いてもおいしいパプリカだが、
農家にとって扱いにくい作物。

温度変化に弱く、日照時間や温度変化に応じて
きめ細かな管理が必要。
見た目が重視され、少しでも傷があると流通業者は買ってくれず、
スーパーなどの店頭に並ぶのは色合いや形の整ったもの。
出荷できない規格外のパプリカは、全生産量の1割、約25トン。
焼却にかかるコストは、年数百万円。

「傷ものを廃棄せず、有効活用できないか」
林氏は、パプリカの売り物である色合いや味・栄養を
そのままにしたペーストを作りたいと考えた。

レストランでは、スープやドレッシングの材料として使われ、
ペーストを作るにはパプリカの表面をバーナーで焼き、
薄皮を取り除くなど手間がかかり、輸入品が市場をほぼ独占。
食の安心・安全に消費者の関心が高まり、
国産品にも需要があると判断した林氏は、水戸市にある
食品加工メーカーのオーピーシートレーディングと組み、
薄皮を除去し、鮮やかな色合いのペーストに加工する設備を
共同開発。

開発は、試行錯誤の連続で、昨年施行された
「農商工等連携促進法」の認定を受け、新商品開発のための補助金
(上限3000万円)などの支援がなければ、あきらめていた。

Tedyは、今春、水戸京成ホテルのレストランと協力、
パプリカペーストを練り込んだアイスクリームを商品化。
「農工」連携による成果に、「商」が加わった。

林氏は、「市場拡大に向け、パプリカの新しい食べ方を提案、
今後も連携の輪を広げていきたい」と意欲。

現在の農商工連携認定は272件。
業種内訳は、食品が218件と最も多い。
認定件数の約6割が売り上げを計上、新規事業として独り立ち。

成功事例を紹介した「農商工連携88選」をみると、
浜松市の自動車部品メーカーが地元の農園、花芽販売業者と組み、
LED(発光ダイオード)を使い、小型で安価な発芽誘導装置を開発、
チンゲンサイの周年栽培が可能になったケースなど。

政府の行政刷新会議の事業仕分けでは、
「農商工等連携促進施設整備支援」は、
来年度概算事業要求額(11億6700万円)の縮減判定。

中小同士の連携は、利害関係の調整など難しい側面があり、
信頼関係が築けず、破談になるケースも多い。
何を作り、どうやって売るか?
連携相手探しなど、入り口の段階から経営指導に携わる
良きメンター(指南役)と出会えるかが成否のカギ。

中小機構は、ビジネス経験豊富な大企業OBが
プロジェクトマネジャーとしてメンターの役割を担い、
中小企業診断士、弁理士など地域の実情に通じた
アシスタントマネジャーの合計120人を全国に配し、
新事業創出の阻害要因を指摘、事業のテークオフ(離陸)を助ける。
補助金の出し放しに終わらせず、認定後の支援にも力を入れ、
新規事業の継続的な発展に当たることにも主眼。

「日本最大級の中小企業マッチングイベント」と銘打った
中小企業総合展の活況をみると、大手の下請けでは生きていけない
中小企業が、中小同士の連携に活路を見いだそうとしている。
生き残りに苦闘するモノ作り中小企業は、
これまであまり関心を示さなかった農林水産市場に目を向け、
技術力を生かして新規事業にチャレンジしてみたらどうか。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091208.html

小学生の視力低下止まらず 0・3未満が過去最多

(2009年12月18日 共同通信社)

視力が0・3に満たない小学生の割合が、
2008年度より0・2ポイント増えて7・3%に上り、過去最多。

文部科学省が公表した、09年度学校保健統計調査速報。
調査項目に加わった1979年度の2・7倍に増加。
視力低下が止まらない現状。

背景には、幼児期からのテレビゲーム、パソコンの影響があるとみられ、
文科省は、「以前より目を酷使する機会が増えたのではないか」と分析。
「0・3未満」の児童の割合は、6年が14・9%(昨年度比0・9ポイント増)、
4年が8・4%(同0・5ポイント増)。
1年は1・0%、2年は2・7%で、いずれも昨年度と同じ割合。

中学生は0・4ポイント減り、22・0%。
高校生も0・7ポイント減の27・7%、「1・0未満」の割合は、
1・4ポイント増加し、59・4%を占めた。

中1の虫歯の本数は、過去最少の1・4本。
低下を続けており、10年前の2・9本の半数以下になった。

ぜんそくの子どもの割合は、小学校4・0%、高校1・9%、
最高を更新。
粉症などを含む鼻・副鼻腔疾患の児童生徒の割合も
高校9・6%、中学校10・8%、小学校12・6%、幼稚園4・0%。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113308/

2009年12月21日月曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/2 BCリーグ6球団

(毎日 12月16日)

苦難の経営を強いられた原因を問うと、関西独立リーグ、
紀州の竹中則行社長は苦渋の表情。
関西には、地元有力紙と呼べるものがない。
当初から危ぶんではいたが、メディア露出の少なさは
想像以上に痛かった」
創設1年目の今季、世間を騒がせたのは、リーグの金銭問題と、
男子に交じってプレーする吉田えり投手の話題ばかり。
リーグとして、発信力を欠いたのは明らか。

地域密着を掲げる独立リーグにとって、
地元メディアの協力は必要不可欠。
北信越を中心とするBCリーグは、6球団すべてがスポンサーや
パートナーといった形で、地元有力紙の協力を得ている。
08年度決算で、赤字ゼロを達成した石川の端保聡社長は、
「地元のメディア、通信、金融機関の3者の協力なくして、
この事業は成し得ない」と力を込める。

BCリーグの福井は今年7月、福井新聞社が球団経営を引き継いだ。
球団は初年度、約3500万円の赤字を計上、
今季も5月末で1800万円の赤字。
福井新聞社専務の吉田真士球団社長は、
「資本金をほぼ食いつぶした状況で、不安は大きかった」
福井は石川、富山など近隣県から1年遅れる形で、
リーグ創設2年目の08年から参戦。
ようやく誕生した県民球団が、わずか1年余りでつぶれてしまっては、
「プロスポーツ文化で、福井が取り残されてしまう」と吉田社長。
「地域が活性化することが、新聞社の繁栄にもつながる」
という観点から、球団に手を差し伸べた。

7月以降、専従の球団代表と営業スタッフの2人を派遣、
経営の効率化を図り、積極的な紙面展開でサポートを続けている。
吉田社長は、「有力コンテンツというよりは、
郷土愛の象徴ととらえている」
試合の翌日、スポーツ面のトップ記事として扱うだけでなく、
地元開催の前には展望記事や特集面が組まれる。

取材を担当する運動部は、08年のリーグ参入を前に
部員を1人増やした。
「県内のトップチームとして扱う姿勢は、
経営に乗り出す前から変わらない」と近藤修運動部長。
すべての遠征に同行できているわけではないが、
他の5球団を支える地元新聞社と記事や写真の交換で、
協力体制をとり、地元開催時と変わらない紙面展開を実現。

日々の報道や事業を通して築き上げたネットワークを、
スポンサー営業などに生かせるのも強み。
吉田社長は、新聞社が球団経営に関与し続けることには
疑問を持っている。
「球団を、一企業のものにしてはいけない。
地域に密着し、福井を元気にできる球団の土台作りのお手伝い」
今は、すべての県民に支えられる球団として、
独り立ちさせるための過程だととらえている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091216ddm035050160000c.html

老いを支える制度活用を 包括センターが相談窓口

(2009年12月11日 共同通信社)

一人暮らしの高齢者の大きな支えとなるのが社会保障。
制度をよく知って賢く使いたい。
仕組みのポイントや生活の心構えをまとめた。

▽身なりに乱れ

82歳の男性、2年前に妻が特別養護老人ホームに入って
一人暮らしになってから、身なりが乱れ始めた。
掃除をしないため、部屋はごみが散乱し、
台所には虫が大量発生する状態。

妻を担当する職員が気づき、町の地域包括支援センターに連絡。
担当者が、害虫の駆除の手配などを手助けした。
判断能力も衰え、要介護認定を受け、
ヘルパーが週に数回、家事援助に入ることに。
お金の引き出しにも不安があるため、行政サービスの利用や
手続きなどを助けてくれる社会福祉協議会の
日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)を利用。

▽よろず相談窓口へ

一人暮らしの高齢者が頼りにしたいのが、
高齢者の"よろず相談"を受け付ける地域包括支援センター。
社会福祉士や保健師、ケアマネジャーらが常駐。
全国に3976カ所(2008年度)ある。

介護保険の利用方法や閉じこもり予防、体操教室の案内、
生活に関するさまざまな情報なども得られる。
介護保険制度を利用したい場合、まず地域包括支援センターや
市町村に相談。

制度を使えるのは、原則65歳以上の要介護認定者。
居宅サービスの限度額は、要介護の程度により
月額4万9700~35万8300円。自己負担はこの1割。
介護を受けながら最後まで一人暮らしをしたい場合、
費用を介護保険だけで賄うのは難しいが、
24時間対応のヘルパーや在宅医を確保できれば可能。

近所の訪問看護事業所に聞けば、医師の情報などが分かる。
介護を受けられる施設には、特別養護老人ホームや
老人保健施設、療養型病床、介護型有料老人ホーム、
認知症グループホームなど。

地域にもよるが、費用の目安は月額20万円前後
有料老人ホームは、一時金が数百万~数千万円程度かかる。
体験入居で確認して、決めた方がいい。

70歳からの医療費の窓口負担は、現役並み所得者を除き1割。
入院などで医療費がかかる場合、所得に応じ上限額がある。
介護費と合算した上限額も設けられた。
市町村によって、独自の低所得者減免もあるため、確認して。

▽遺族年金に違いも

年金は25年の加入が必要で、国民年金の場合、
満額は月約6万6千円。
遺族年金は、夫が厚生年金なら、報酬比例部分の4分の3を妻が受給。
国民年金なら、子どもが18歳になる年度の末日までが支給対象。

生活資金に困った時、自宅を担保にお金を借りられる
「リバースモーゲージ」や、社会福祉協議会の
「生活福祉資金貸付制度」も利用できる。

生活保護を受ける場合、地域で最低生活費の基準額が決まっており、
支給額は年金など収入との差額。
保護対象になると、医療費や介護費が無料。

▽見守りサービス

一人住まいで心配なのが、万が一の対応。
時々様子を見てもらいたい場合、市町村や社会福祉協議会、
特定非営利活動法人(NPO法人)などが行っている
見守りサービスや緊急通報サービス、民生委員に頼む方法も。
配食サービスも、安否確認を兼ねて活用できそう。

東京都千代田区の地域包括支援センター菰田俊樹相談員は、
「日ごろから周りに困っている、助けてほしい、と言えるようにしておく。
自分がどんな暮らしがしたいか、あらかじめイメージしておく
老い支度も必要」とアドバイス。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/11/112946/

学力上位県、体力も好成績 第2回テスト、前年横ばい 揺らぐ継続の意義

(2009年12月18日 共同通信社)

文部科学省は、小学5年と中学2年を対象に、
4~7月に実施した第2回全国体力テストの結果を公表。

8種目の数値を得点化した体力合計点の平均は、
前年からほぼ横ばい。
全国学力テストで好成績が続く福井、秋田県などが、
体力でも前年同様に高得点を収め、固定化傾向が見られた。

体力テストは、行政刷新会議の事業仕分けで、
文科省が1964年度以降、毎年実施する抽出調査との重複が指摘、
来年度予算の大幅縮減を求められた。

前年とほぼ同じ結果となったことで、
「毎年、全員」の調査の意義があらためて問われそう。

国公私立全児童生徒の体力合計点(80点満点)の平均値は、
小5男子で54・2(前年度比増減なし)、
同女子54・6(同0・3ポイント減)、
中2男子41・3(同0・1ポイント減)、
同女子47・9(同0・4ポイント減)。

都道府県別(公立)では、男女とも全国学力テストで上位だった
福井が、小5で最も高く、秋田が続いた。
中2は、男子が茨城が最高点で、秋田、福井と続き、
女子は福井、千葉、茨城の順。
前回の上位県が、今回も高い値を示した。

種目別の全国平均は、抽出調査だった85年度と比べ、
下回る種目が多く、中2男子50メートル走は
24年前の7・90秒に対し、8・05秒。
小5女子ソフトボール投げは、17・60メートルから
14・61メートルに落ちた。

1週間の総運動時間でみると、60分未満は
小5男子が11%、女子23%。
中2男子は10%で、中2女子は32%に上り、
文科省は「運動する子としない子の二極化が見られる」

体力テストは国が現状を把握し、学校の指導につなげるのが目的。
全国学力テストと同様、文科省は都道府県教育委員会による
市町村別や学校別の結果公表を禁じている。
秋に体力テストをする学校も多く、
参加率は公立小中が約9割、私立小中は約3割。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113306/

2009年12月20日日曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/1 ベースボール北海道、船出へ

(毎日 12月15日)

「プレミアム会員券」の試作品を手に、
「ベースボール北海道」(BB北海道)の統括プロデューサーを
務める中田元茂(46)は、笑みを浮かべた。
「これを、どうプロモーションして売り上げにつなげられるか。
それが成功のカギになる」

野球の独立リーグ、BB北海道の設立が発表。
設立準備委員会は、企業を経営しながらNPO法人で
環境問題に取り組んできたメンバーが中心。
広告代理店を経営する中田は、「野球を通じて道内を活性化したい」
選手給与は月額10万円程度で、初年度は札幌、小樽両市に
計2チームを置き、順次拡大していく予定。

四国・九州、関西などの先行リーグは、観客動員の伸び悩みに加え、
不況がスポンサー収入に影を落とし、経営難が浮き彫り。
道内経済も、昨年度の完全失業率が平均5・1%と
全国平均を大きく上回るなど冷え込みが続く。
その荒波の中で、BB北海道はあえて船出を決断。

光も見える。
少年から大学まで、チーム数が4000を超え、
野球熱は高いにもかかわらず、選手の受け皿は少ない。
「各都市の間に距離があり、四国のようにそれぞれ特色も違う」
札幌市には、04年から日本ハムが本拠地を置くが、
広大な北の大地でそれを生で目にすることができるのは一部。
地域性、プロとの共存の可能性では、勝算は十分と見る。

収入の柱に掲げるのが、「プレミアム会員券」。
観戦チケット5枚に、協賛者の店舗・施設の利用時に
割引を受けられる特典を付け、1口2000円で販売。
初年度は、広告料は無料とする方針、協賛者は元手なしで
集客促進できる上、特典を厚くすることで野球に関心の無い人にも
購入してもらえる可能性が広がる。
すでに30以上の法人・個人が手を挙げ、購入申し込みも
100件近くに上っている。
先行リーグも後援会などを設けているが、個人会員(一般)は
1口1万円前後が主流。
BB北海道の低価格戦略は際立っている。

公益性を高めるため、リーグの財団法人化を目指し、
2球団を一括運営する方針。
運営費は、年間2億~3億円が見込まれるが、
会員券を目標の20万人に売りさばければ、
売り上げは4億円で収益が出る計算。
中田は、「札幌だけでも200万人近い人口がある。
不可能ではない」と自信を見せる。

関西リーグ、紀州の竹中則行社長は、
BB北海道の取り組みについて、
「最初は、スポンサーの助けがなければ苦しいかもしれないが、
方向性は決して間違っていない」と評価。
不況で、広告収入頼みの経営モデルが崩壊しつつある中、
新たな手法はどんな成果を上げるのか?
11年春の開幕に向け、BB北海道は動き始めている。

「地域密着」を掲げて、各地で誕生したプロリーグが苦境に直面。
景気の先行きが見えない中、存続に向けた模索が続く。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091215ddm035050002000c.html

太陽光発電「60億人市場」を照らせ

(日経 2009-12-14)

民主党政権下で、CO2を排出しない太陽光発電の普及が
加速するのが確実となり、パネルメーカーの間で期待は大きい。
日米欧だけでなく、中国など新興国も含めて
パネルメーカーは乱立状態。
先進国で成功した製品やビジネスモデルを、
新興国に移転する従来手法ではいずれ行き詰まる。

太陽光発電の潜在需要は、地球規模。
「60億人市場」を見据えた構想力が問われる。
太陽光発電を切実に必要としているのは、
CO2排出量削減の手段に使おうとする日本などより、
インドやアフリカなどの新興国。

発電所や送電線網の整備が追いつかず、不便な暮らしを
強いられてきた人々にとって、自宅や集落に設置すれば、
電力の恩恵を受けられる太陽光発電は魅力的。
家庭の電源、集落の灌漑用水を引くポンプの電源などとして
急速に普及。

変換効率など、技術力に自信のある日本メーカーは、
主に先進国をターゲットにするなか、
新興国市場の開拓を宣言しているのが昭和シェル石油。
同社は、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと組んで、
2012年から中東やアフリカなどで、1000~2000キロワット級の
太陽光の小規模分散型電源を設置、大規模電源のない地方都市や
集落で電力を販売する事業に乗り出す。

このビジネスモデルは、サウジの意向が強く反映。
「サウジは、特にアフリカでの太陽光発電事業に意欲的で、
新産業を国内に育成したい思いが強い」(関係者)。
サウジは、雇用吸収力のある産業を興そうと再三、日本に協力を要請。

過去に日本の自動車メーカーに対し、
工場建設を要請したのも1度ではない。
現業労働者の大半を移民で賄うという同国の労働事情を前に、
各社は大型工場建設を尻込み。

そこで浮上してきたのが、太陽光による分散型発電事業。
サウジは、石油輸出国機構(OPEC)のリーダーで、
アフリカ事情に精通。
昭シェルが、アフリカ市場開拓に乗り出すうえで、
アラムコは頼もしい水先案内人になる。

昭シェル+アラムコによる太陽光発電事業のもうひとつの
大きな可能性は、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)ビジネスへの発展。
アフリカの低所得国でも事業が軌道にのれば、
インドや東南アジアなど世界全域で通用する道が開ける。

60億人強の世界人口のうち、1日2ドル以下で生活するBOPは、
40億人以上。
市場経済から取り残されていた「世界の3分の2」が、
実は市場として十分成立するという認識が強まっている。

インドで、1日分のシャンプーや食品を低価格で販売する
ビジネスで急成長する英ユニリーバ系のヒンダスタン・リーバ
バングラデシュで低価格栄養食品販売に乗り出した仏ダノン
農村向けに煙のでない低価格キッチンストーブの
生産・販売を始めたオランダ・フィリップス——。

成功を収めつつあるBOPビジネスは、貧困層の暮らしを
確実に改善し、製品や企業へのロイヤルティーは高い。
経済成長とともに市場のパイが大きくなれば、
企業はもっと大きな果実が得られる。
昭シェルの太陽光発電事業も、BOPビジネスの成功例として
続く可能性はある。

もっともハードルは高い。
先進国での手法を導入しても、まず成功しない。
成功したBOPビジネスは、低所得者が購入できる価格から
逆算して、製品原価を決定していることが大きい。

昭シェルのパネルが、シリコンを使わない金属化合物型で
コストが比較的安いとはいえ、相当のコストダウンが不可欠。
販売・サービス機能を充実させるため、
最適なパートナーを各市場で探す必要。
過剰消費ぎみだった北米市場が尻すぼみとなり、中国では
現地メーカーの猛烈な追い上げを受ける

日本企業のグローバル戦略は視界不良。
ハードルは高くても、60億人市場に挑戦する意義は大きい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091209.html

寿命1・3倍、体はスリム 雄なしで誕生のマウス 免疫も強く、東京農大など

(2009年12月14日 共同通信社)

雄が全く関与せず、2匹の雌の卵子から誕生させたマウスは、
通常の精子と卵子の受精を経て生まれたマウスより、

1・3倍長生きだとの研究を、河野友宏・東京農業大教授と
川原学・佐賀大准教授がまとめた。

体重は通常マウスの3分の2しかなく、免疫機能が強い傾向。
河野教授らは、「哺乳類で雌の方が長生きなのは、
精子の遺伝情報が寿命にマイナスの影響を与えているため」、
「寿命には多様な側面があり、人間にも当てはまるかは分からない」

哺乳類には、父母のどちらから受け継いだかによって
働いたり働かなかったりする「インプリント遺伝子」がある。

河野教授らは、精子から伝わった場合にだけ働く遺伝子のうち、
胎児の発育に必要な遺伝子を働くようにした「雄型」の卵子を作製、
その核を別の卵子に入れてマウスを誕生させる方法を開発。

これを「二母性マウス」と名付け、
最初のマウス「かぐや」の誕生を2004年に発表。

今回は、二母性と通常の雌各13匹の成長を観察。
二母性の寿命は平均841・5日、通常の同655・5日より長く、
生後1年8カ月時点の体重は、二母性が平均29・4g、
通常マウスの同44・9gより軽かった。

遺伝子を調べると、通常マウスでは、成長ホルモン分泌に関係する
Rasgrf1という遺伝子が父方から受け継がれて働いていたが、
二母性では働いていなかった。
これが、体重差などに影響しているらしい。

河野教授は、「雄は繁殖競争に勝つため、体を大きくすることに
エネルギーを使う結果、寿命は短くなるのではないか」

※インプリント遺伝子

哺乳類が、受精後に発育していく過程で、
両親から伝わったうちの一方だけが働く遺伝子。
河野友宏東京農業大教授らは、インプリント遺伝子の一部が
精子のように働く卵子を作り、別の卵子と合わせた
2個の卵子によって、マウスを誕生。
1個の卵子からコピーの子ができる「単為生殖」とは、厳密には異なる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/14/113036/

岩手県内肥満児、男女ともに全国最高 学校保健統計調査

(2009年12月18日 毎日新聞社)

岩手県は、今年度学校保健統計調査の結果(速報値)を発表。
肥満度20%以上になる肥満傾向児の割合は、
6歳男児が9・16%、10歳女児が15・49%で全国で最も高かった。

他の年代も昨年度と同様に順位が高く、
県教委スポーツ健康課は、「小学校の統廃合が進み、
バスや自家用車での通学が増えたほか、
少子化で外で遊ぶ機会も減っている」と分析。

調査は、5~17歳の県内1万2933人を対象に行い、
全体から7・8%を抽出して結果をまとめた。

男児の肥満傾向は、5歳で全国2位の6・08%(前年度4位、5・53%)、
12歳が全国4位の15・94%(同1位、18・93%)。
女児は、5歳で全国2位の5・05%(同5位、4・66%)、
12歳で3位の13・27%(同4位、14・02%)。

同課が小学生を対象にまとめた地域別では、
二戸が14・52%で最も高く、久慈14・43%、宮古13・85%、
県北・沿岸部で肥満傾向が強かった。
盛岡が、10・26%で最も低かった。

同課の平野晃施設・学校健康担当課長は、
「肥満は、体力や運動能力が低下しがちになり、
生活習慣病につながりかねない」。

昨年度、導入した体育の授業を手伝うアシスタントを活用し、
児童や生徒の運動を習慣づけていく。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113364/

2009年12月19日土曜日

選手との一体性必要 岩手国体強化策探る

(岩手日報 12月13日)

「いわてスポーツコンベンション2009」(国体県準備委など主催)は、
スポーツ関係者ら約180人が参加して開かれた。
日本一を経験した指導者によるパネルディスカッションなど、
2016年の2巡目岩手国体に向けた選手強化などに認識を深めた。

「岩手からの日本一を目指して」と題したパネルディスカッションでは、
アルベールビル五輪ノルディック複合団体金メダルの
三ケ田礼一・県体協スポーツ特別指導員を司会に、
富士大ホッケー部の西田範次総監督、盛岡商高サッカー部の
斎藤重信監督、北上翔南高陸上部の本正園子監督が意見交換。

選手を奮い立たせるため、本正監督は、
目標設定し、どうやるかを具体的に示す。
日本一になるにはどういう練習をし、生活すればいいか、
考え行動させる」と、指導者と選手が一体となった
取り組みの大切さを指摘。

斎藤監督は、「大学生やJリーグサテライトチームなどとの
練習試合などを繰り返した。
自分のプレーに達成感が得られれば、それが自信になる」と、
選手に積極性を植え付ける必要性。

日本一になったときには、「生活などでチームに落ち着きが感じられた」
(斎藤監督)、「選手が指導者の先を読んで行動していた」(本正監督)、
「リーダーを育てた。そこからチャンスが広がる」(西田総監督)。

11年の北東北インターハイや2巡目岩手国体に向け、
西田総監督は、「目的意識を持った選手が中央に流れることなく、
岩手で育てていきたい。
冬季でも、練習できるハード面の整備が必要だ」

「競技力の向上について」と題して講演した日本オリンピック委員会の
福田富昭副会長は、「選手強化には時間がかかる。
今から取り組まないと、国体に間に合わない」と指摘。

http://www.iwate-np.co.jp/sports/2009sports/m12/spo0912134.html

コンセントは? EVに思わぬ難敵

(日経 2009-12-07)

地球温暖化対策の切り札として、電気自動車が注目。
日本エネルギー経済研究所によると、発電の過程で出る
CO2を含めても、1km走行あたりの排出量は57gにとどまり、
ガソリン車の176gやハイブリッド車の94gに比べ、かなり低い水準。

普及に向けた課題も多い。
クルマそのものの課題としては、走行距離の短さと値段の高さがあり、
社会インフラ、すなわち充電設備の普及について考えてみたい。

電気自動車用の高速充電装置を1基装備するのに、
どのくらい費用がかかるか?
充電装置自体の価格は約350万円。
かなり高めだが、いずれ量産化が進めば、急速に安くなる。

装置の値段は、全体のコストの氷山の一角。
高速充電するためには、新たな受電設備が必要になるケースが多く、
大型のトランス(変圧器)などを導入する必要。
設置する場所によって、構内の配電網にも手を加えなければならない。

ネクスコ東日本(東日本高速道路会社)は、
今年度末までに首都圏のパーキングエリア4カ所に
高速充電設備を設置する計画、1カ所あたりの平均費用は
2500万円から3000万円に達する。

大きな企業なら、「CSR(企業の社会的責任)の一環」とみなして
出せない金額ではない。
街のガソリンスタンドが投資するには、相当思い切らなければ。
少なくとも電気自動車が普及する前に、
先行投資と割り切ってポンと出せる額ではなさそう。

普通の家庭はどうか?
夜間に長時間かけて、電気自動車(プラグイン車も同じ)に充電すると
想定すれば、高速充電は必要なく、普通のコンセントがあればいい。
敷地内に駐車場のある一戸建ての場合、
戸外にコンセントを新設すればOK。
手間も工事費も、たいしてかからない。

問題は、マンションのような集合住宅で、
地下に共同の駐車場があるケース、家から少し離れたところに
駐車スペースを借りているようなケース。

これらの場合、充電用のコンセントは設置されていないので、
新たにそこまで電線を引っ張る必要。
マンションなら共用スペースの工事なので、住民の賛成が必要だが、
これが承認される見込みはきわめて低い。
電気自動車やプラグイン車に乗りたい人は、
マンション住人の間でも当初はごく少数派。
その人たちのために、他の多くの住民が配電網敷設の
費用負担を受け入れるとは思えない。

賃貸駐車場でも事情は同じ。
駐車場のオーナーは、できるだけ新たな投資はしたくない。
借り手の1人や2人がコンセントをつけろと言っても、
「それならヨソで借りてくれ」と言われるのがオチ。
日産自動車の担当者が、本社周辺のコインパーキングのオーナーに
「充電のための設備を入れてほしい」と働きかけても、
誰も耳を貸さなかった。

電気自動車やプラグイン車が普及するには、
あちこちにコンセントが存在する電源の「ユビキタス(遍在)性」が前提。
その費用をだれが負担するのか?
電気自動車やプラグイン車の普及をめざす自動車会社と、
電力の需要拡大に取り組む電力会社、
政府や自治体が協力して取り組むべき大きなテーマ。
この問題にしっかりした解答を示すことが、
電気自動車が本格的に普及するための出発点。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091201.html

生体リズム乱れ、高血圧に マウスで解明、治療に期待

(2009年12月14日 共同通信社)

24時間周期で働く体内時計遺伝子に異常が起きると、
特定の酵素が副腎で過剰に働いて、高血圧症を引き起こすのを、
京都大の岡村均教授のチームがマウス実験で解明、
13日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表。

この酵素が産生にかかわるホルモンの作用を薬剤で抑えると、
マウスの血圧が下がるのを確認。
人の副腎でも似た酵素が働いており、徹夜など不規則な生活で
生体リズムが乱れて起きるさまざまな体調異常に関係している可能性。

岡村教授は、「高血圧の詳しいメカニズムが分かったのは初めて。
この酵素に、特異的に働く薬が開発できれば治療に役立ちそう」。

体内時計にかかわる遺伝子が働かないようにしたマウスに、
食塩水を飲ませて実験。
その結果、副腎皮質で「Hsd3b6」という酵素が過剰に働く
ようになることで、ホルモンが活性化し、
腎臓から塩分や水分が排出するのを妨げ、血圧が上昇する。

マウスは、薬剤で高血圧が改善したが、
人では同じ薬剤が副作用を起こす可能性があり、別の手法が必要。
岡村教授は、「臨床チームと組んで、酵素の働きを詳しく調べたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/14/113035/

ゲレンデは紫外線にご用心 夏のビーチの2・5倍 雪の反射で目に悪影響

(2009年12月8日 共同通信社)

ゲレンデなど、雪山で目が浴びる有害な紫外線量は、
雪面の反射により夏のビーチの約2・5倍に上ることが、
金沢医大の佐々木洋・教授(眼科学)と医薬品メーカーの
ジョンソン・エンド・ジョンソンの共同調査で分かった。

佐々木教授によると、目の角膜は皮膚よりも
紫外線の影響を受けやすい。
雪山などで、強い紫外線を短時間浴びただけで、
角膜や結膜が炎症を起こす「雪眼炎(雪目)」などの
急性障害が生じ、雪眼炎を繰り返すと、水晶体が白く濁る
「白内障」を発症しやすくなる。

佐々木教授は、「サングラスは、顔とのすき間が大きいと
紫外線を防ぐ十分な効果が得られない恐れがあり、
目を完全に覆うゴーグルが有効」

雪山は、石川県白山市のクロスカントリー競技場の新雪で、
ビーチは沖縄県南城市の人工砂浜で調査。
眼部に紫外線センサーを埋め込んだマネキン頭部2体を、
常に太陽に正面を向けた状態と背を向けた状態で配置、
視線は歩行時の標準的な15度下向きに固定、
日の出から日の入りまで紫外線量を計測。

太陽を正面にした場合、1日に浴びる総量は、
ビーチが1平方メートル当たり換算で260キロジュール、
雪山は658キロジュールに上った。

雪山では、太陽に背を向けた状態でも、
多い時で正面を向いた場合の85%以上の紫外線を浴びる。

気象庁によると、紫外線の反射率は砂浜で10~25%、
新雪は80%に達する。
高度が300メートル上がると、紫外線量は4%増加、
標高が高いスキー場では十分な対策が必要。

▽紫外線

太陽光の中にあり、波長が可視光線より短く、
エックス線よりも長い電磁波。
浴びすぎると、皮膚がんになりやすい。
紫外線による目の障害として、「雪眼炎」や「白内障」、
結膜の白目組織が黒目に広がる「翼状片」など。

成層圏に存在する「オゾン層」が、有害な紫外線の多くを吸収、
地上の生物を保護しているが、近年、フロンなどの排出が原因で
オゾン層が破壊されてできる南極上空の「オゾンホール」など、
有害紫外線の増加が問題。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/8/112713/

2009年12月18日金曜日

子どもに就学支援の輪を 盛岡でシンポ

(岩手日報 12月13日)

「子どもの貧困」を考えるシンポジウムは、
岩手教育会館で開かれた。
経済的な理由による子どもたちの教育格差が深刻化する中、
教員や市民ら約350人が就学援助制度に理解を深め、
貧困根絶の道筋を考えた。

早稲田大非常勤講師の鳫咲子さんは、
「子どもの貧困と就学援助制度」と題し講演。

鳫さんは、自治体によって就学援助制度の運用に差があること、
情報提供の不十分さなどを指摘し、
「対象者に適切な情報を提供し、すべての子どもに高校卒業を
できる環境づくりを整えたい」と訴えた。

シンポジウムでは、あしなが育英会の学生募金事務局岩手代表の
高橋万里子さん(盛岡大2年)、甲子小の高橋美智子養護教諭、
児童福祉司の佐藤伸一さん、鳫さんの4人が発表。

中学生のころ父親を亡くし、奨学金で進学した高橋万里子さんは、
「夢や進学を、あきらめなければならない人の声を聞いてきた。
これからを生きる子どもたちを救うことを考えた政治をしてほしい」

参加した一関市の小学校教諭は、
「集金滞納などを周りから聞くようになった。
学校としても、保護者負担を軽減しなければならない」
会場からも、「貧しいことは個人の責任じゃない。
社会全体で問題に取り組まなければ」と声が上がった。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091213_13

筋ジスの遺伝子機能修復 人工染色体で、鳥取大など iPSも作製、治療法に道

(2009年12月9日 共同通信社)

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者の細胞で、
働かなくなった遺伝子の機能を修復した上で、
それを基に新型万能細胞(iPS細胞)を作製することに成功、
鳥取大と京都大の研究チームが
8日付の米学会誌電子版(MOLECULAR THERAPY )。

この病気の原因は、X染色体にあるジストロフィン遺伝子の
機能不全だが、この遺伝子はサイズが大きく、
既存のウイルスを"運び屋"に使う方法では遺伝子治療は難しい。

押村光雄・鳥取大教授らは、人工的に作った染色体を
遺伝子の運び屋に使った。

筋ジストロフィーの治療法開発につながる。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、男児の約3500人に1人の
割合で発症する進行性の筋萎縮症。

押村教授らは、人工染色体にジストロフィン遺伝子を搭載し、
筋ジストロフィー患者の線維芽細胞に入れ、
導入したジストロフィン遺伝子が機能。

この細胞からiPS細胞を作ることにも成功。
マウスの精巣に移植する実験で、筋肉細胞に分化することを確認。
こうして作ったiPS細胞を、培養皿などで筋肉細胞に分化させ、
治療に利用できるようにしたい。

人工染色体は、巨大な遺伝子を搭載することができる上、
導入した細胞の染色体には組み込まれず、
染色体を傷付けないなどのメリット。

押村教授は、「いずれも日本発の人工染色体とiPS細胞の技術を
組み合わせて、これまでできなかった筋ジストロフィーの
原因遺伝子の完全修復ができた。
将来の新しい遺伝子治療の第一歩になる」
山中伸弥・京都大教授との共同研究。

▽人工染色体

染色体は、細胞の核の中にあり、生命の遺伝情報が
収められているDNAで構成。
人工的に作製した極小の染色体が、人工染色体。
染色体構造に必要な部品を集めたボトムアップ型と、
元からある染色体を改変したトップダウン型があり、
押村光雄・鳥取大教授らが使ったのはトップダウン型。
どのような遺伝子でも搭載でき、導入した細胞の染色体には
組み込まれず、独立した状態で維持。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/9/112765/

道内植物を使った自然療法を体感できる滞在型モニターツアー

(日経ヘルス 12月10日)

北海道新得町観光協会は2010年1月、同町に自生し、
不眠やストレス緩和などに効果があるとされる
セントジョーンズワート(和名:セイヨウオトギリソウ)という
ハーブを使った自然療法、食事療法などを体感できる
2泊3日の滞在型モニターツアーを実施。

このツアーは、セントジョーンズワートを地域資源とする
ヘルスツーリズムを通して、新たな地域おこしに取り組むため、
同観光協会がJTB北海道と連携して企画。

ツアー名は、「スパ&ネイチャー 北海道 2010 冬 in サホロ」
開催日程は2010年1月15日~17日、
料金は3万9800円(札幌発)、6万9800円(羽田発)。

道内のほぼ中央に位置するサホロリゾートを拠点に、
専門家が指導するアロマトリートメントや気功などの
自然療法プログラムを開催、ツアー参加者に旅行中に
体の中から健康になることを実感。

参加者は、都内などで自然療法スクールを主宰する
マザーズオフィスグループ代表の宮川明子氏による
トリートメントセミナー、東邦大学医学部関山タマミ氏による
セロトニン活性講座、響きの杜クリニック西谷雅史医師による
気功・呼吸法セミナー、アイヌ民族に伝わる自然療法セミナー
などのプログラムについて学び、トリートメントや気功などを体験。

食事は、「デトックス」をテーマに、
北海道産食材を活用したディナーが用意。
このツアーの効果を測るため、旅のスタート時と最終日で、
参加者のストレス度合いがどのように変化するかを
測定するプログラムも予定。
この滞在型モニターツアーは、09年夏に続き2回目。

企画を担当しているJTB北海道の横岡実マネジャーは、
「09年は一般の女性など35人が参加、セントジョーンズワートの
効果について実感するコメントが多く寄せられた。
今回は、ツアー参加者だけでなく、同町在住の地元の人たちにも
参加を呼びかけている。
地元の観光資源や自然療法についての理解を深める
きっかけにしてもらいたい」

JTB(http://www.jtb.co.jp/ripple/

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091210/105206/

2009年12月17日木曜日

箱根山舞台に「観光塾」 振興目指し学習会

(東海新報 12月13日)

いわて沿岸広域観光推進会議が主催する「観光塾」は、
陸前高田市の気仙大工左官伝承館などで開かれた。
気仙三市町をはじめ、釜石、大槌五地域の観光関係者らが
同館や周辺施設を見学し、観光振興に向けた意見交換を行った。

同会議は、沿岸圏域における広域的な観光振興の取り組みを
推進しようと設立。
同塾は、地域の観光振興においてリーダー的役割を担う
「地域コーディネーター」の育成を図ろうと、昨年度から開設。

会場は、5地域の持ち回りとなっており、今年度3回目となった
この日、陸前高田で開催。
各地の地域コーディネーターや観光関係者ら約20人が参加。

一行は、同館に集合後、市観光ガイド・新沼岳志さんの案内で、
箱根山展望台や杉の家「はこね」を見学。
管理者の黄川田巳之助さんによる講話や意見交換会など。

黄川田さんは、昔の家の造りや習わし、しきたりなど解説。
「最近は上下関係がなくなってきているが、
昔は常に上下を大切にして生活していた」、
「子どもたちには、あいさつ、返事、履き物をそろえることが
教えることの三原則だった」

石臼と木製のきねを使って、昔ながらのもちつきを体験。
つきたてのもちはあんこやクルミで味付けし、
地元産の食材で作った料理とともに味わった。

意見交換会を開催。
参加者らは、見学した施設の印象などを踏まえ、
箱根山観光について誘客促進のアイデアを出し合い、
有意義な時間としていた。

http://www.tohkaishimpo.com/

肥満率、日本が最小 OECD保健医療調査

(2009年12月9日 共同通信社)

経済協力開発機構(OECD)が公表した
「図表で見る保健医療2009」によると、加盟30カ国中で、
成人の肥満人口の割合が最も低いのは日本。

日本は、平均寿命でも加盟国中、最も長い82・6歳(2007年)
と好成績を示した。

「図表」は、ことし7月にOECDがまとめたヘルスデータなどを基に、
先進国を中心とする加盟国の保健医療状況を分析。
体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が
30を超える「肥満人口」の割合は、日本が3・4%と最も少なく、
韓国(3・5%)が続いた。

米国は、日本の10倍に当たる34・3%。
英国(24・0%)などが高かった。平均は15・4%。

日本は、医療機器の普及でも、人口100万人当たり
磁気共鳴画像装置(MRI)が40・1台、
コンピューター断層撮影装置(CT)が92・6台と最も高い。

人口10万人当たりの自殺者数は、韓国、ハンガリーに次いで
3番目(19・1人)に多く、人口千人当たりの臨床医数も
2・1人とOECD平均(3・1人)を下回った。

女性医師の割合は、平均は40%、日本は17%で最低。
喫煙者の割合は、26・0%と平均(23・6%)を上回ったが、
1人当たりの年間アルコール消費量は7・7リットルと
平均(9・7リットル)を下回った。
医療費に占める公的支出の割合は81・3%と、
北欧や英国などと並んで高い比率。平均は73・0%。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/9/112766/

べにふうき緑茶にショウガ汁を加えると 、スギ花粉症の症状緩和に相乗効果

(日経ヘルス 12月10日)

鹿児島県を中心に栽培されている「べにふうき」という
品種の緑茶に、抗アレルギー作用があり、
さまざまな研究が進められてきた。

べにふうき緑茶にショウガのしぼり汁を加えると、
抗アレルギー作用が増強されることが明らかに。

JA鹿児島県経済連主催の緑茶研究公開セミナーで、
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所、
野菜・茶機能性研究チーム長の山本万理さんが、
この臨床試験のデータを含む研究結果を発表。

べにふうきは、もともと紅茶のアッサム種に近い品種、
成熟した葉の部分に抗アレルギー作用のある
メチル化カテキン(EGCG3”MeやEGCG4”Me)を多く含む。

緑茶として価値の高い新芽や茎の部分には、少量しか含まれない。
日本で最も多く流通している緑茶品種の「やぶきた」には、
全く含まれていない。
紅茶系の茶葉を、あえて緑茶に加工するのは、
発酵させて紅茶にすると、メチル化カテキンが消えてしまう。

メチル化カテキンは、
(1)アレルゲンに対して反応するIgE受容体の発現を抑制
(2)マスト細胞に直接入り、情報伝達たんぱく質の活性を阻害
(3)アレルギー症状の引き金となるヒスタミンの放出を抑える
――この3つの作用点で、アレルギー症状を抑える。

スギ花粉症のボランティアを集めて行われた臨床試験では、
被験者を2群に分け、一方にはべにふうきなどの
メチル化カテキンを含む緑茶を、もう一方にはメチル化カテキンを
含まない緑茶を飲んでもらい、症状をスコア化。

その結果、メチル化カテキンを含む緑茶群では、
鼻をかむ回数、目のかゆみ、のどの痛みの3点で、
顕著な症状の改善。
べにふうき緑茶の効果を増強する食品
(ショウガ、カイワレ大根、ブロッコリースプラウトなど)との
組み合わせを調べる試験管レベルの実験も。

マスト細胞で産生され、炎症の原因となるサイトカインTNF-αへの
影響を調べ、べにふうき緑茶が単独でTNF-α産生を40%抑制、
ショウガは単独で70%抑制、べにふうき緑茶とショウガを
組み合わせると、95%抑制する。

この実験結果をもとに、べにふうき緑茶にショウガ汁を
加えたものの飲用試験を行い、べにふうき緑茶だけのグループや
メチル化カテキンを含まない緑茶のグループに比べ、
べにふうき緑茶+ショウガ汁のグループは鼻をかむ回数や
レスキュー用に用意された抗アレルギー薬をのむ回数が減る。

メチル化カテキンの摂取量を変えて効果を調べた試験結果から、
山本さんは「1日にメチル化カテキン34mg以上を目安に摂取したい」。
これは、濃いめのべにふうき緑茶約700mlに相当。
メチル化カテキンを効率良く抽出するには、
沸騰した湯に茶葉を入れて5分以上煮出すのがベスト。
緑茶に加えるショウガのしぼり汁は、耳かき1杯ぐらい。
花粉飛散開始後からのみ始めても、効果は期待できるが、

飛散開始1カ月半前からのみ始めると、より効果が高い。
2010年の飛散開始予想日は、東京で2月10日前後。
効果のほどを試してみたい人は、年末からのみ始めるのがよい。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091210/105205/

2009年12月16日水曜日

ネット検索で脳イキイキ、米大学研究 認知症予防にも?

(朝日 2009年12月3日)

インターネットになじみのない中高年が、ネット検索を続けると、
意思決定や判断をつかさどる脳の中枢が活性化される。
認知症予防の手段になる可能性がある。
米カリフォルニア大ロサンゼルス校の研究チームが発表。

チームは、インターネットを毎日使う人と、
ほとんど使ったことがない人の計24人(55~78歳)を対象、
脳の活動を機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)で調べた。

その結果、ネットをほとんど使ったことがない人が、
2週間のうち7日、自宅で1時間ほどネット検索をしただけで、
毎日使う人と同じ程度、「中前頭回」など意思決定に
重要な中枢が活性化。

チームは、「ネット検索のとき、大切な情報を一時的に覚えたり、
絵や文から何が重要かをつかんだりすることが効果につながる」

とはいえ、ネット利用は良いことばかりではなさそう。
米オハイオ州立大の研究チームは、日記を書いたり、
コメントをつけたりできる交流サイト「フェースブック」を
利用している大学生は、勉強する時間が減り、
成績も悪くなる傾向があるとの調査結果を発表。

http://www.asahi.com/science/update/1202/TKY200912020153.html

リチウムイオンよ、お前もか

(日経 2009-12-10)

電気自動車やプラグインハイブリッド車への期待が
盛り上がる中、中核部品である電池にも脚光。
将来を見渡せば、リチウム空気電池など様々な次世代技術が
あるが、ここ数年あるいは10年程度はリチウムイオン電池が
「自動車の電動化」の主役。

このリチウムイオンで、日本企業はしっかり稼げるだろうか?
今の市場動向をみると、不安を感じざるを得ない。
リチウムイオン電池メーカーが追求すべき命題は2つ。

第1に、自動車1台あたり軽く100万円を突破する
電池のコストを急速に低減すること。

通常のガソリンエンジンのコストは、1基20万円程度。
エンジンの代替物である電池も、
それと競争できる水準まで下げるのが待ったなしの課題。

もう1つは、第1の課題とも密接に絡むが、
生産能力の急速な引き上げ。

リチウムイオン電池は、携帯電話やパソコンなどの
電子機器向けなどに普及。
車載用に本格普及が進めば、携帯やパソコンとは
けた違いの量の電池が必要。

ジーエス・ユアサコーポレーションの依田誠社長によると、
「世界のリチウムイオン電池の生産能力を全部かき集めても、
電気自動車50万台分にすぎない」
50万台といえば、世界の自動車販売の1%以下。
電池の生産能力の大幅増強が実現しなければ、
電気自動車の時代はいくら待ってもやってこない。

リチウムイオン電池をめぐるこうした状況は、
半導体のメモリーによく似ている。

メモリー事業の本質は、ごく単純。
需要拡大を先取りして大胆に設備を増強し、同時に
量産効果をフルに発揮して製造原価を大幅に引き下げること。

この種の競争で重要なのは、技術的な優劣よりも、
時機を見定めて、思い切った投資に踏み込む経営者の判断
(あるいは勘)と、それを支える資金力。

日本企業がDRAMをめぐる競争で、韓国のサムスン電子に
負けたのも資金力、財務力の差が大きかった。
過剰プレーヤーの問題を引きずった日本の半導体メーカーは、
技術レベルは高くても、個々の企業の財務基盤は弱体で、
投資競争でサムスンに力負け。

リチウムイオン電池でも、同じ展開にならないか?
日本企業でリチウムイオンを手掛けるのは、
三洋電機やソニー、パナソニックなどの電機メーカー、
GSユアサのような従来型の自動車バッテリーの会社、
最近では米ベンチャーと提携したIHIなどの重工メーカーも参入、
10社前後のプレーヤーがひしめいている。

いくら成長分野だからといって、この数は多すぎないか?
市場の成長性と、当該事業の収益性は似て非なるもの。
いくら市場が伸びても、競争が苛烈なら
参入プレーヤーはもうからない。

「全員負け組」になって、韓国メーカーや中国のBYDといった
新興勢力に漁夫の利をさらわれるパターンが
繰り返される心配はないのか。

三洋電機で2次電池事業を統括する本間充副社長は、
「2次電池市場は、かつて日本企業の独断場で、
10年前には世界シェアの90%を握っていた。
今は、40%まで下がった」と危機感を打ち明ける。

技術が粗削りで、いろいろな試行錯誤が必要な初期の段階で、
数多くのプレーヤーが参入するのは悪い話ではない。
「数打てば当たる」ではないが、いろいろ試す中で
ブレークスルーが生まれるかも。
米シリコンバレーが、持続的にイノベーションを生み出せるのも、
数多くのベンチャー企業が日々試行錯誤を繰り返している。

技術がある程度確立し、競争の焦点が量産投資に移った段階では、
「過剰プレーヤー」は業界全体の足を引っ張りかねない。
日本の電機産業は、この教訓を痛いほど学んだはずなのに、
同じ罠にまた陥ろうとしている。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091208.html

インテルの江田マーケティング本部長「IT教育の環境整備を」

(日経 12月10日)

教育現場でのIT活用に注目が集まっている。
児童にパソコンを貸与する授業はどこまで有効なのか、
実効性を問う声も。
2008年度から内田洋行と共同で、首都圏の小学校で
パソコンを使った授業の実証実験を実施している
インテル日本法人の江田麻季子マーケティング本部長。

——実証実験に乗り出した背景は?

小学校など、早い段階でITになじんでおくことは、
次世代のITリテラシー(活用能力)の高さにつながる。

インテルは、さまざまなプログラムを通じてIT教育普及に
携わってきており、今回の実証実験もその一環。
子どもたちに、ITスキルを身につけてもらうことが目的。

実証実験で利用している『インテル クラスメイトPC』は、
これまでのインテルの取り組みから、
『こんなパソコンがあったら』という要望を吸い上げ、
製品にフィードバックしている」

——実験では教育用パソコンを使い、国語・算数・英語の授業で
児童1人に1台のパソコンを貸与、有効性を検証。
浮かび上がっている問題点は?

「08年度、千葉県で行った実験では、画面が小さい、
バッテリーの駆動時間が短いといったハード面での課題が明らかに。
無線LAN(構内情報通信網)の配備といった環境整備も必要」

日本では、IT教育に対する理解の度合いが
教育委員会ごとに異なり、運営上のサポートなども
学校によってまちまちである点も、今後の大きな課題。
海外には、教育に適したパソコンの仕様に始まり、
インフラ整備や運営に至るまでを、
国家レベルで一括して管理している国もある」

——日本でも、補正予算などを活用しインフラを整備しようという動き。

インターネットなどから情報を吸い上げて、
それをさばいてゆく力は、今後ますます必要。
海外では、新興国でもすでに子どものIT教育への動きは
当たり前になり、日本も後れを取ってはならない。

IT教育の環境整備はもちろんのこと、パソコンを活用するに
当たってのノウハウや、既存の教科書との兼ね合いなど、
教える側のスキル向上へ向けた取り組みも、
同時に進める必要がある」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091209.html

2009年12月15日火曜日

切っても頭側が頭に プラナリア再生の仕組み、京大解明

(朝日 2009年12月8日)

体を10個に切れば、10匹に再生する強い生命力を持つ
プラナリアという動物は、もとの体の頭の向きに頭ができ、
尾の向きに尾ができる――。

長年の謎だった頭と尾の方向を決める仕組みを、
京都大の阿形清和教授らが解明。
頭から尾側に運ばれるたんぱく質と、
その受容体が重要な役割を果たしていた。

プラナリアは、水中にすむ体長1~2センチの動物で、
切っても切っても断片が完全な形に再生することから、
再生学のモデル動物。

阿形教授(再生生物学)らは、動物の体の形づくりで
重要な役割を果たす、ヘッジホッグと呼ばれるたんぱく質に注目。
ヘッジホッグは、頭側から尾側に運ばれ、
受容体に結びつくと、信号が伝えられ、そこで尾を作る命令を
出す遺伝子が働き始めることがわかった。

断片にした時も、もとの体の尾の方向にヘッジホッグがたまり、
再生後も尾になっていた。
断片が短いと、ヘッジホッグの量が足りず、
尾の方向に頭ができる。
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

人でも、胎児の臓器が形づくられる時には前後、左右などの
位置関係がある。
阿形教授は、「基本的な仕組みは、プラナリアと共通する可能性」

http://www.asahi.com/science/update/1208/OSK200912080012.html

印テクノバ社のヨグラジ会長 「印製薬買収で競争優位に」

(日経 12月8日)

国内外の大手製薬会社が、新興国市場の開拓を急いでいる。
医療費抑制を狙う米国や欧州の市場が、急速に伸び悩んでいる。
インドも急成長が見込まれ、進出を模索する企業が増えてきた。
インド進出を支援する同国最大級のコンサルティング会社
テクノバ・インディアのアブヘイ・ヨグラジ会長兼最高経営責任者
市場成長の見通しや進出の利点を聞いた。

——市場の見通しは?

インドの医薬品市場は人口の15%、ヘルスケア分野の支出の
75%を占めるいびつな構造。
ここに来て、構造変化が急速に進んでいる。
貧困層が、安い費用で保険に加入できる仕組みが整い始め、
国民の保険カバー率は今後高まる。
最新鋭の私立病院も相次ぎ設立、患者が先端医療を受けられる
体制も整備。
政府も、ヘルスケア関連の支出を年間予算の5%
(4年前は2.5%)に増やしている」

「医療制度の充実を追い風に、2008年で140億ドルだった
製薬市場は、18年には450億ドルに膨らむと予測。
製薬会社は、大きな恩恵を受けられるだろう」

——同国市場は、急成長が見込まれ魅力が高いとはいえ、
価格の安い後発薬が台頭しており、競争激化は避けられない。
進出の利点は?

欧米の製薬大手は、主力薬の特許が切れる『2010年問題』を抱え、
後発薬との競争激化は避けられない。
それは、インドに限った話ではなく、グローバルの競争でも同じ。
後発薬の台頭を逆手にとって、現地の後発薬メーカーと
買収などで手を組む戦略があってもいい。
インドの後発薬メーカーは、後発薬の原料を大量生産し、
連携すれば安い原料を調達できる。
世界各地で、後発薬事業の展開を優位に進められる」

インドの伝統医術『アーユルベーダ』に興味を持つ海外の製薬会社も。
(西洋薬だけでは治療に使える新薬が見つけられず、)
西洋医学とアーユルベーダを融合することで、
新たな治療法を生み出せるかもしれない」

——米食品医薬品局(FDA)が生産管理が十分でないとして、
第一三共傘下の印製薬最大手ランバクシー・ラボラトリーズが、
インドの工場で生産した製品の輸入を差し止めた問題も。

「インドの後発薬メーカー全体の問題ではなく、
ランバクシー固有の問題と理解」

——日本の製薬会社でもインドに熱い視線を向け始めた。

第一三共が、2008年にランバクシーを買収するまでは、
後発薬や新興国進出など、新薬以外に事業を多角化するという
視点はほとんどなかった。
インドへの直接投資350億ドルのうち、日本分は10億ドル。
投資する企業は自動車などで、製薬会社からの投資はほとんどない。
製薬会社の投資を誘致する余地は、まだまだある」

——創業者一族が経営する企業が多く、買収しても
コーポレート・ガバナンス(企業統治)による経営権掌握が難しい例も。

「インド企業と外資が合弁を設立したうち、9割は失敗。
1つの企業で“王様”が2人いれば、経営がぶれる。
創業者一族が経営権を握るような経営は避け、完全に経営権を
掌握することが、成功がうまくいく秘訣。
日本の大手自動車メーカー、スズキは、国営自動車会社ではあるが
マルチ社と合弁会社を設立。
最終的には出資比率を引き上げ、経営の主導権を握れる。
インド企業との合弁では、株式の過半数を確保し、
経営権をがっちり握ることが重要」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091207.html

大学職員の在り方探る 岩手大で交流会

(岩手日報 12月13日)

岩手大(藤井克己学長)は、学内外の大学職員の交流を図り、
自らの働く意義を考える「第1回大学アドミニストレーターコロキウム
(アドコロ)inいわて」を同大図書館で開いた。

東北で初めて開催、県内外の約50人が参加した。
国立大法人化を機に、大学職員には企画提案など
積極的な大学経営への参画が求められ、
自ら考え行動できるために必要なことは何か、
先進的な取り組みの事例発表や意見交換を通して考えた。

岩手大研究交流部国際課国際企画グループの石沢友紀主任は、
「仕事をするなら楽しくやりたい。
仲間を増やし、いい大学にするきっかけになれば」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091213_12

2009年12月14日月曜日

「25%削減」が開くパンドラの箱

(日経 2009-12-08)

「ともに苦労してきた仲間のことを考えると……」、
「できればどこか他のチームに……」
11月4日に発表された、トヨタ自動車のF1撤退

記者会見で言葉に詰まり、大粒の涙をこぼした
山科忠専務の姿は同社のみならず、
自動車業界全体の苦悩を強烈に印象づけた。

米サブプライムローン問題を引き金にした世界的な
金融危機が、昨年9月のリーマン・ショックで一気にエスカレート。
2009年3月期、トヨタの連結純損益は4369億円の巨額赤字に転落、
10年3月期も2000億円の赤字を予想。

自動車の年間生産台数で、トヨタが米ゼネラル・モーターズ(GM)を
抜いて「世界一」の座を奪ったのは、わずか2年前。
豊田章男社長が、矢継ぎ早に打ち出す体質改善策の背後に
強い危機感が垣間見える。

「“リーマン・ショック”よりも、“鳩山イニシアチブ”」。
自動車産業の動向を注視するアナリストから最近、
こんな声が漏れてくる。
不況の深刻化による需要不振は、景気サイクルに伴って克服できるが、
価値観の変化は容易にフォローできない。
鳩山由紀夫首相が、表明した温暖化ガス25%削減(1990年比)目標が
「長期的に、既存の自動車メーカーの地盤沈下につながる可能性がある」
との観測が、アナリストたちの間に広がっている。

クリーンかつ低燃費の「環境にやさしい車」といえば、
日本の自動車メーカーの「専売特許」。
麻生太郎前首相時代に導入されたエコカー減税の効果で、
最も恩恵を受けたのは、トヨタ「プリウス」、ホンダ「インサイト」
といったハイブリッド車(HV)で、昨今の好調な売れ行き
(09年4~9月累計販売ランキング、「プリウス」11万6298台で首位、
「インサイト」5万5845台で3位)をみると、
「地盤沈下」というイメージは抱きにくい。

「HVが売れても、浮かれてはいられない」というのが
自動車各社の共通認識。
鳩山首相の「25%削減」表明が、近未来の自動車市場の主役を、
HVから電気自動車(EV)へと、さらに1歩進めてしまった感。

市場に漂う雰囲気の、微妙な移り変わりを如実に示している例。
三菱自動車が、「世界初のEV量産車」として、
個人向け予約を開始した「i−MiEV(アイ・ミーブ)」。
2度のリコール(無償回収・修理)事件とダイムラークライスラーによる
支援打ち切りの後遺症で、いまだにバランスシート(貸借対照表)にも
P/L(損益計算書)にも問題をはらんでいる同社だが、
「世界初」を看板に掲げたアイ・ミーブへの注目が国内外で高まり、
仏プジョーシトロエングループ(PSA)との資本提携への動きなど、
EVがもたらす業界再編の台風の目。

HVで遅れを取った日産自動車も、EVでの巻き返しを
虎視眈々と狙っている。
5人乗り小型車「リーフ」をはじめ、EVを10年には国内で5万台、
12年に米国で15万台を量産する構想を、
カルロス・ゴーン会長兼社長が打ち出している。
アイ・ミーブで先駆けた三菱自動車を一気に抜き去り、
EVのトップメーカーに躍り出る計画。

HVで先行したトヨタやホンダが、近未来市場では振るわず、
主役の座はEVを切り札にした日産や三菱が取って代わるのか——。
「世界の自動車メーカーが警戒しているのは、同業の既存の
ライバルメーカーではなく、異業種やベンチャー企業」。

自動車の基幹部品といえば、ガソリン車はエンジンであり、
EVならばモーター、HVは両方を備えるのだが、
モーターに関して、既存の自動車メーカーは内製化よりも
外部の電機メーカーなどに依存しているケースが多い。
三菱自動車のアイ・ミーブの駆動用モーターを製造しているのは
明電舎で、マツダが今年発売した水素HVのミニバン「プレマシー」の
駆動装置は安川電機が開発。

生産者の立場からみて、ガソリン車(HVを含む)から
EVへの移行で、最も劇的に変わるのは部品の数。
現行のエンジン搭載車の部品数が3万〜10万点に達し、
EVはおおむねその5分の1以下。
EVの普及が進めば、10年後にはエンジン周りを中心にした
既存の自動車部品メーカーの売り上げが激減するとの予測。

部品数の減少は、製造工程の単純化につながる。
明電舎や安川電機のような重電メーカーが、
EVの完成車メーカーに早変わりすることも十分可能で、
証券市場ではそうした銘柄の「自動車産業への新規参入」をにらんだ
思惑買いを囃し立てている向きも。

製造工程の単純化は、ベンチャー企業参入のハードルを下げる。
米国でEV市場の主役として、テスラ・モーターズ(カリフォルニア州)、
フィスカー・オートモーティブ(同)などが頭角。
テスラ社には、米グーグルの2人の共同創業者や独ダイムラーなどが
出資し、2011年に量産車を売り出す予定。
フィスカーは、10月にGMの旧ウィルミントン工場(デラウェア州)を
買収し、2012年に量産を始める。

日本でも、高性能EV「エリーカ」の開発者として知られる
慶大の清水浩教授が、今年8月に新会社「シムドライブ」設立。
ベネッセコーポレーションや丸紅などが出資、
出井伸之・元ソニー社長や福武総一郎ベネッセ会長らが経営に参画。

シムドライブは、駆動モーターの基幹技術を公開。
提携先企業に提供しながら、2013年までをメドに
EV(5人乗りの量産車)の開発を目指す。
「オープンソース」のビジネス形態で、実現すれば、
自動車産業の地図は大きく塗り替えられる。

日本では、半ば「夢物語」に聞こえたEVベンチャーの構想が、
鳩山政権の「25%削減」目標で現実味を帯びる。
パンドラの箱は、徐々に開かれつつある。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091203.html

目覚め、ストレスと関連…20代は上司左右

(読売 12月5日)

朝の目覚めの良さは、仕事のストレスなどを反映し、
20代は上司との関係、30代は仕事の満足度、
40代はリラックスできる時間の有無が
最も影響していることが、北里大などの調査でわかった。
日本ストレス学会で発表。

北里大は、企業のメンタルヘルスを助言する
日本ヴィクシーと共同で、東京都内の情報通信企業に勤務する
20~40代の社員1500人を対象に、
生活習慣やストレス度、意欲などをアンケート。

〈1〉朝の目覚め、〈2〉仕事中の眠気、〈3〉休日の寝だめ、
の3項目から睡眠の充足度を「高い」、「普通」、「低い」の
3段階に分け、ストレスとの関係を調べた。

その結果、充足度の低い群は、高い群に比べて
ストレスを訴える割合が高く、「会社に行くのがつらい」、
「ぼーっとする」、「集中力が低下する」と答えた人が、
それぞれ11・7、11・4、6・6倍も多かった。

朝の目覚めの良さには、何が一番影響しているか
詳しく分析したところ、20代では「上司との関係」など、
年代によってストレスの原因が違っていた。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091205-OYT1T00591.htm

抗体産み出す遺伝子の作用の仕組み解明…京大

(読売 12月7日)

免疫を担うリンパ球が、異物に対抗する多様な抗体を
作り出すのにかかわる重要な遺伝子が、
細菌感染の影響で、リンパ球以外の細胞のDNAを傷つけてしまう
仕組みを、京都大医学研究科の本庶佑・客員教授や
長岡仁・准教授らのチームが解明。

この遺伝子を制御できれば、ピロリ菌による胃がんなどの
予防につながる可能性がある。
7日の米科学誌ネイチャー・イミュノロジー電子版に発表。

この遺伝子は「AID」。
本来、異物を認識したBリンパ球で働き、DNAの部品を
切り張りして抗体作りに貢献。
細菌に感染すると、免疫細胞以外でもDNAを切ってしまうが、
その理由は謎。

本庶教授らは、マウスのDNAを使い、AID遺伝子を制御する
遺伝子が、AIDの周辺にあるか調べた。
その結果、「細菌など外部の刺激でスイッチを入れる部分」と
「リンパ球内だけでスイッチを入れる部分」、
「スイッチをオフする部分」があることがわかった。
リンパ球以外では、通常、スイッチは入らないが、
大量の細菌感染でAIDのスイッチが入ってしまう。

長岡准教授は、「いろいながん発症に、AID遺伝子が
関与しているのかどうか調べたい」

Nat Immunol. 2009 Dec 6. [Epub ahead of print]
B cell-specific and stimulation-responsive enhancers derepress Aicda by overcoming the effects of silencers.
Tran TH, Nakata M, Suzuki K, Begum NA, Shinkura R, Fagarasan S, Honjo T, Nagaoka H.

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091207-OYT1T00134.htm

2009年12月13日日曜日

僧侶に学ぶ業務のヒント

(日経 12月4日)

日々の業務の忙しさが影響し、気持ちにゆとりを失う
ビジネスパースンは多い。
平常心を保って規則正しく生活することが求められる
僧侶の日常から、何か学べるものはないか?
ビジネス経験もある若手僧侶と、法話の経験が豊富な
ベテラン僧侶を取材。

東京・浅草の緑泉寺で副住職を務める青江覚峰さん(32)は、
米国留学で経営学修士(MBA)を取得、現地で起業をした経験。
寺の住職である父を補佐しながら、日常業務をこなしていくうち、
「1日の仕事のほとんどを午後3時までに仕上げる」
習慣を身につけた。
その秘訣は早朝にある。

平日の午前7時。
多くのビジネスパーソンが身支度をしているころ、
青江さんは机に向かい、檀家へのお礼状を書いたり、
寺で開くイベントの企画を考えたりしている。
「誰にも邪魔されずに仕事ができる時間帯を探したら、こうなった」

寺院は訪問客が多い。
檀家だけでなく、観光客や散歩がてらにふらりと立ち寄る
近所の人などが入れ代わり立ち代わりやって来る。
僧侶になったばかりの20代前半のころ、
訪問客への応対に手間取り、仕事のペースをつかめなかった。

どうすればよいのかと対策を考えるうちに、
訪問客が午前10時~午後3時に集中していることに気がついた。
その前に重要な仕事を済ませておけば、
午後は手紙のあて名書きや庭の掃除など、
中断されても再開しやすい仕事だけになり、
訪問客にゆとりを持って接することができる。

気持ちに余裕があるので会話も弾み、
お寺の運営方針を伝えられる。
檀家や参詣客が、お寺のことをどのように考えているのか
意見を聞くこともある。

早朝に実力を発揮するには、工夫が要る。
「起床した直後は、大抵の人は頭がさえていない」
起床から2時間ほど経過する間に、集中力を高めることがコツ。

青江さんをはじめとする僧侶は、午前5時前後に起床し、
「朝のお勤め」として読経、その後に掃除するのが一般的。
15~30分にわたる読経は身体を目覚めさせる効果があり、
短時間で終わらせる掃除には集中力を高める効果がある。
7時に仕事を始めるころ、「エンジン全開」の状態に。

青江さんは、僧侶以外の人にもできる朝の習慣として、
「15分程度、書物を音読してみるとよい」と提案。
掃除など単純作業を短時間はさんで集中力を醸成し、
午前中に2時間ほど頭を使う仕事に臨めばよい。

青江さんは、僧侶らが宗派の枠を超えて、仏教をPRするための
ウェブサイト「彼岸寺」の運営にも携わっている。
本業以外の仕事もこなすうえで、お寺の暮らしで培った
時間配分のノウハウが役立っている。

室町時代の東山文化の象徴である銀閣寺。
その近くの古寺の法然院は、
「法話を毎週聞けるお寺」として知られている。
貫主の梶田真章さん(53)は、コンサートや落語会などの
会場として寺院を提供、イベントの合間に法話することも。
梶田さんは、「わかりやすく」だけでなく、「じっくり」も心がけている。

梶田さんは、「法話は、ある意味でビジネス会話の対極にある
法話では、語りかける相手に、
「今日教えたことは、今すぐ分からなくてもよい」という態度を貫く。
ビジネスの会話では、「(商談を成立させるため)今すぐにでも
理解してもらいたいという気持ちが先行する」

製品・サービスのプレゼンテーションには、わかりやすさとともに、
スピードも重視。
忙しい顧客に対し、無駄を省いて説明しなければならない。

梶田さんは、「営業ではそれでよいのかもしれないが、
社内で部下などに教え諭す場合は、法話のような態度が必要」
教育の場面では、部下が自分の力で理解できるまで
じっくり待つ「ゆとり」も上司には必要。

梶田さんは、法話の要件として、
(1)すぐに理解することを求めない、
(2)理路整然と具体的に語る、
(3)何度も繰り返す——の3点。

因果(物事の結果と理由)という概念を重視する仏教は、
本来論理的な思想。
理屈ばかりでは、聞いている人に伝わりにくいので、
僧侶は身の回りで起きたできごとなどを話題に取り入れ、
具体的に語ることを心がけてきた。

何度も繰り返すというのは、一言一句同じことを
唱えるということではない。
言葉や話題を変えながら、同じメッセージを毎回伝えるという意味。
すぐに理解してくれないことに腹を立てず、
辛抱強く反復することが、長い目でみると効果を生む。

梶田さんは、法話を終えると、必ず人の質問に答える。
法話の分かりにくかった部分を指摘してもらい、
次回の法話で改善するため。

法話と同様、朝礼やグループミーティングで話す際、
上司は時間の許す限り質問に答えるべきだと、梶田さんは説く。
梶田さんは、法話の中身を考える時、
出てきそうな質問も想定しながら組み立てる。

法話には、修行の世界にこもっている僧侶が
俗世間の人々の考え方や感じ方を布教に取り入れるために
問答したという意味合いも。
1000年近い伝統がある法話の技術に、
ビジネスパースンが学べる要素は多い。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz091203_3.html