2009年12月24日木曜日

電子書籍ブーム もう一つの文脈

(日経 2009-12-17)

今年の米クリスマス商戦最大の注目アイテムは、
電子書籍リーダー。

アマゾン・ドット・コムの「キンドル」、ソニーの「リーダー」、
米書店大手バーンズ・アンド・ノーブルの「ヌック」の、
三つどもえの競争が激しい。
ゴールドマン・サックスの調査では、米国消費者の6%が
今年のクリスマス・プレゼントに電子書籍リーダーを贈る計画。
この冬を境に、電子書籍が大きな市場として離陸するのは確実。

コンテンツを供給する側のメディア企業の動きも激しい。
タイムワーナー、ニューズ・コーポレーション、コンデナスト、
ハースト、メレディスの出版・新聞5社は、新聞・雑誌・書籍の
電子配信に関する共通プラットフォームや標準技術仕様を開発する
共同出資会社の設立を発表。
電子書籍リーダー、多機能携帯端末、携帯型パソコンなど、
端末の形態やメーカーにかかわらずに対応できるプラットフォーム。
アマゾンやアップルなど、特定企業の配信プラットフォームに
支配されず、コンテンツ供給元が自ら課金配信の
“胴元”を運営しようという試み。

これらの動きが示唆しているのは、
単なる印刷媒体の電子シフトだけではない。
ネットの利用端末として、携帯端末がパソコンに代わって
成長の中心になりつつあることを象徴している。

パソコン用にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版の
日本語版を開設したダウ・ジョーンズのトッド・ラーセン消費者
メディアグループ最高執行責任者(COO)は、
「多端末対応と世界的なローカライゼーションが、
WSJの成長戦略の両輪」

米国では、アップル製iPhone版で、
パソコン用電子版とは別途課金を開始。
今後も、利用端末ごとに課金の道を探っていく模様。
日本語版でも、来年早期に記事ごとに課金するシステムを導入。

載せるコンテンツ自体は1つで、閲覧可能端末を増やしていくと、
端末ごとに読者や広告を巡って共食いになる恐れも。
ラーセン氏は、「これまでの米国の経験でいうと、
紙と電子版の併存は相乗効果を出している。
電子版によるプロモーション効果で、紙の有料発行部数も伸び、
広告も多メディアでの提供に人気が集まる。
携帯端末を増やしても、より相乗効果が広がるはず」

日本でも、同じような現象はすでに起きている。
パソコン版と携帯電話版が併存するコンテンツサービスで、
有料にもかかわらず携帯版が売れたり、割高にもかかわらず
携帯電話向けの音楽配信「着うたフル」が売れたりといった現象。
日本のメディア・コンテンツ企業にとっても今後、
課金を織り交ぜた新たな成長分野として、
携帯型端末向けの配信サービスは注目が高まる。

モルガン・スタンレーの著名インターネット業界アナリスト、
メアリー・ミーカー氏は、最初の一般向けパソコン用ブラウザー
(閲覧ソフト)であるネットスケープの利用者が、
配布2年後に1100万人だったのに対し、
NTTドコモの「iモード」が2500万人、アイフォーンとiPodタッチを
合わせた利用者が5700万人に達したと指摘。
「携帯ネットは、大方の予想をはるかに上回る規模に成長、
今後も想像を超える規模に成長していく」と予想。

モルガン・スタンレーは、第3世代以上の携帯通信網の
全世界契約者は2010年に年間53%増加、
10億5500万人に達すると予想。
分母が増えても、09年の60%増(見込み)に匹敵する急成長が続く。
中国とインドという2大インターネット市場で、
3Gが普及するのはこれから。
インターネット利用端末は、これから携帯型が主流になっていく。

携帯型ネット端末は、電子書籍リーダーだけでなく、
パソコンでも電話でもない、新たなタイプが増えていく。
メディア・コンテンツ企業だけでなく、ネット上で事業展開する企業は
今後、多様な端末戦略が欠かせなくなりそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091216.html

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