2009年10月3日土曜日

緑茶好きの女性、少ない肺炎死 東北大調査

(朝日 2009年9月28日)

ふだん緑茶をよく飲む女性は、肺炎によって亡くなるリスクが
半分ほどにまで下がるという調査結果を、
東北大公衆衛生学のグループがまとめ、
米の臨床栄養学の専門誌で報告。
男性では差がなかった。

緑茶に含まれるカテキンという成分が、肺炎を起こすウイルスや
細菌の働きを抑えている可能性があり、
グループは、静岡県掛川市民の協力を得て、
緑茶がインフルエンザを抑える効果があるかどうかを調べる。

94年、緑茶を飲む習慣や健康状態などについて聞いた
宮城県在住の男女約4万人(40~79歳)について、
06年まで追跡。
この間に男性275人、女性131人が肺炎で亡くなっていた。

女性では、緑茶を飲むのが「1日あたり1杯未満」だった
4877人のうち、肺炎で死亡したのは43人。
「1~2杯」の4458人では死亡は24人、
「5杯以上」の7208人で38人。

年齢や体力、結核感染の有無など、肺炎死亡と関係しそうな要因を
考慮して比べると、1~2杯飲む人たちは1杯未満に比べて41%、
5杯以上では47%、肺炎で死亡するリスクが低かった。

男性では、飲む量とリスクは関係がなかった。
解析を担当した大学院生の渡辺生恵さんは、
「男性の8割以上は、肺炎と関連が指摘される喫煙歴があり、
緑茶の効果が及ばなかったのかもしれない」

今回調べたのは、季節性インフルエンザを含むウイルスや
ブドウ球菌などの細菌で起きた肺炎が主体。
飲食物が気道に入って起こる誤嚥性肺炎などは除いた。

http://www.asahi.com/science/update/0928/TKY200909280165.html

環境が問う 新政権の本気とやる気

(日経 2009-09-14)

民主党の鳩山由紀夫代表が講演で、
国内の温暖化ガス削減目標について、
「あらゆる政策を総動員して、2020年までに
1990年比25%削減の実現をめざす」と、
従来の政府目標である8%削減から大幅に踏み込むことを明言。

“新首相”が公約を果たす決意を示すのは当然。
大手メーカーの環境部長も、選挙中から
「鳩山さんは9月22日の国連気候変動サミットで、
『Japan has changed(日本は変わった)』と言いたい」

注目しているのは、どんな環境政策や削減技術を
積み上げるのかといった具体策とその実現可能性。

マニフェストに掲げた「キャップ・アンド・トレード(C&T)方式に
よる実効ある国内排出量取引市場の創設」をめぐって、
産業界でこんなブラック・ジョークが。
「A社とB社が、ともにエコカーを発売した。
性能が良いA社製品の売れ行きが好調だが、
B社の社長はなぜか涼しい顔。
『A社は売れ過ぎで、排出枠が足りなくなったそうだ。
うちの余った排出枠を売ってくれと連絡があったよ。
負けるが勝ちさ』」

C&Tは、政府が企業にあらかじめCO2の排出枠(キャップ)を
割り当て、過不足分を企業間で取引(トレード)する仕組み。
最小のコストで削減を進める手法。

ジョークの例は極端にしても、「優れた製品の開発は、
必ずしも経営的にプラスではない」という矛盾は、
「キャップの公平で、合理的な割り当ては難しい」
(岩間芳仁・日本経団連環境本部長)という懸念。

25%削減のうち、海外からの排出枠調達をどの程度見込むかも、
国民や企業の実質的な削減負担(いわゆる「真水の削減」)の
水準を決めるうえで焦点に。
25%に相当する排出量は、約3億1500万トン。
仮に、5%分を排出枠で賄うとしたら、必要量は約6300万トンに。

考えなければならないのが、米国の出方。
「20年までに05年比20%削減」などを柱とする
米国の地球温暖化対策法案(ワックスマン・マーキー法案)では、
海外での排出削減による「オフセット(相殺)」を
年間10億トン認めている。

京都議定書で認められているクリーン開発メカニズム(CDM)や
共同実施(JI)に基づく排出枠の総供給量は、
08~12年の累計で14~19億トン(世銀予測)に過ぎない。
米国が想定するオフセットは、CDMやJIに限らないようだが、
ケタ外れの排出枠需要が生まれる可能性が潜む。

米国抜きの「京都」の枠組みでは、比較的容易だった排出枠の
海外調達が、「ポスト京都」では難しくなり、需給逼迫で調達価格が
高騰するというシナリオも産業界では浮上。

マニフェストには、「温暖化ガス抑制の国際的枠組みに、
米国・中国・インドなど主要排出国の参加を促し、
主導的な環境外交を展開する」という項目も。

鳩山代表は、7日の講演でも「すべての主要国による公平かつ
実効性のある枠組みの構築をめざす」

主要排出国の参加と公平な負担は鉄鋼、電力ばかりでなく、
自動車、電機など国際競争力の低下を懸念する多くの業界が、
「ポスト京都」の国際交渉の前提として
政府に求めている最大の条件。
ある鉄鋼大手幹部は、「麻生首相よりはっきり言っている」と評価。

外相には、党の地球温暖化対策本部長も務める岡田克也氏。
政権公約説明会で、鳩山講演と同様に主要国参加の必要性を指摘、
25%削減案の積算根拠を求める日本経団連側に、
「科学が出した結論、50年に地球全体でCO2を半減することが
前提で、できることだけをやればよいとの考え方はとらない」
と原則論を貫いた。

世界のCO2排出量のうち、米国と中国がそれぞれ2割(06年)。
「科学の結論」の実現は、両国の大幅削減なくしてはあり得ない。
米国では、ワックスマン・マーキー法案の上院通過の難航が予想、
中国など新興国は、先進国の削減率として
民主党案を大幅に上回る「40%」を突きつけている。

12月、コペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約
締約国会議(COP15)まで残り3カ月。
米中を交渉のテーブルに着かせ、主要排出国が
公平な削減負担を分かち合う決着を導き出す役回りを、
日本が果たせるのか?
懐疑論も根強い産業界をうならせるには、「論より証拠」。
新政権の手腕が試される。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090911.html

農業に学ぶ(4)森の魅力知り進路選び

(読売 9月26日)

実習の工夫と地域交流で、林業教育の未来を探る。

鳥取県立智頭農林高校から、山道をマイクロバスに
揺られること25分。同校演習林に着いた。
作業着姿の森林科学科の生徒6人は、ヘルメット、ナタ、
ノコギリの装備を点検、小林徹教諭(46)の先導で歩き出した。

一汗かいて到着したのは、秘密基地のような「ツリーハウス」
7年前、先輩たちが小林教諭の指導で組み立てた。
立ち木の数メートルの高さに桟を渡し、
板を敷いてデッキ付きの小屋がしつらえてある。
部屋は、一間だけで4畳半ほど。
ロープを使って木に登るツリーイング、高い枝からつり下げた
ブランコなど、遊べる仕掛けが施されている。

「こうやるんです」と3年の久保仁君(17)が、
ブランコに乗って大きな弧を描いて見せた。
「雲行きが怪しいので早めにやろう。手分けして枝打ちを始めて!」
小林教諭のきびきびした声が響く。
生徒たちは枝をナタで切り落とし、付近を整備する。
しばらくすると、小雨がぱらついてきた。
「残念だけどきょうはここまで」。山の天気は変わりやすい。

林業の衰退で、林業専門の高校や生徒数も減少し、
林業教育に影響を与えている。
自然や環境への関心の高まりがあり、
森の持つレクリエーション機能が見直されている。

同高では、森林ガイドやキャンプの実践方法など
野外活動の指導者に必要な能力を養成しようと、
2000年から「アウトドア」科目を取り入れた。
ツリーハウスをベースに、森に生息する動物や野鳥を
観察調査したり、小学生や市民を招き、森の楽しみ方を伝える
交流も行っている。

岡山県西粟倉村から通う3年の白旗伸治君(17)は、
実家が山を持っている。
「ゲームなんかするより、山に入っていたい。
将来は、森林インストラクター志望です」と明確な夢がある。

こずえをわたるさわやかな風、普段は体験できない鳥瞰……。
“秘密基地”では、五感で森の深さを学ぶことができる。
「林業の進路は厳しいですが、森林の良さを伝えられる仕事に
進んでくれれば」と小林教諭は願っている。

全国で唯一、林業の名前を校名に残す天竜林業高校(浜松市)。
木材の加工から販売までの流れを確立する研究などが評価され、
07年度に国の支援制度「目指せスペシャリスト」にも指定。

指定最終年度の今年度は、「バイオトイレ」を年間テーマ。
木材を森林科学科が用意、上屋は建築デザイン科が建て、
バイオ装置は環境システム科、とうまく連携。
11月の文化祭で発表。

地元商店街の協力で、木工製品を販売する「チャレンジショップ」も、
今年は9月20日に開催。
評判が口コミで広がって行列もでき、売上点数は過去2回を上回った。

大石常夫教頭(57)は、「大きく言えば、地球環境を守る人材作り。
まずは、森林や木に親しむ楽しさを教育の場から広めたい」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090926-OYT8T00320.htm

2009年10月2日金曜日

エコナで「SOS」対応 消費者庁、政務官リーダー

(2009年9月29日 共同通信社)

福島瑞穂消費者行政担当相は、
発がん性が懸念されている花王の食用油
「エコナ クッキングオイル」について、
「食品SOS対応プロジェクト」を消費者庁に発足。

泉健太政務官をリーダーとし、消費者庁次長ら職員6人も加え、
消費者庁としての対応指針を1週間以内につくる。

エコナをめぐっては、商品に含まれる
「グリシドール脂肪酸エステル」が分解されると、
発がん性を持つとの懸念が欧州を中心にあり、
内閣府の食品安全委員会が安全性を調査。
花王も、関連商品の販売を自粛。

食品安全委員会の結論は、11月までかかる見通し。
福島氏は、「結論が出ていないので、科学的知見を飛び越えては
いけないが、消費者の不安を解消するため、
客観的な事情を説明し、啓発するなどといった対応が
できるかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/29/108353/

早大駅伝復活に学べ 負け癖なくした監督術

(日経 9月20日)

「負け癖」がついてしまった組織を立て直すのは
容易ではない。
今年の東京箱根間往復大学駅伝競走で、
2年連続総合2位になった早稲田大学競走部も、
2006年までは低迷。

日本能率協会の経営誌「JMAマネジメントレビュー」
編集部記者で、早大駅伝チームの渡辺康幸監督と
親しい伊田欣司氏に、再建の秘訣について寄稿。

1月3日、東京・大手町では、えんじ色のランニングシャツを着た
早大の選手が、トップを走る東洋大学の選手を追い上げていた。
期待されていた総合優勝こそならなかったが、
2年連続の総合2位という結果は、駅伝ファンに
名門復活を強く印象づけた。

「この時期に監督を引き受けるのは、貧乏くじをひくようなもの」
04年、早大駅伝チームの監督に就任した渡辺氏は、
周囲にこう心配された。

この年の箱根駅伝で、早大はチーム史上ワーストタイの16位。
上位10位までのチームに与えられるシード権
(次の年に優先的に出場できる権利)を、2年連続で逃した。
チームの状況はどん底。

渡辺監督は、早大時代に3年連続で区間賞を獲得するなど、
「箱根駅伝史上最強ランナー」と呼ばれた。
29歳で競技生活から退き、母校のコーチを1年務め、
駅伝監督に就任。
貧乏くじと心配された監督就任だが、再建への意欲がみなぎっていた。

だが、その意欲は空回り。
就任直後に採り入れたのが、スピード重視の練習メニュー。
あまりにハードな練習に、故障者が続出。
渡辺監督は、「自分の成功体験を押しつけてしまった」

05年の箱根駅伝は11位、06年も13位、
低迷状態を脱することはできなかった。

理想のチームに近づけるには、どこから変えればよいのか——。
渡辺監督は、チーム状況をもっと深く知ろうと、
学生たちが暮らす競走部の寮に移り住んだ。
冷暖房もない応接室に、1年半近く寝泊まりし、
学生たちとじっくり話し合った。

「選手一人ひとりの状況をつかむ一方、
どのようなチームにしたいのかを語った。
(寮に住んだことが)選手との信頼関係につながったと思う」

選手との意思疎通を密にしていく中で感じたのが、
意識と実力のギャップ。
特に、目標設定に問題があった。

選手たちが口にするのは、箱根駅伝での優勝。
だが、シード権すら獲得できないという状況からは
あまりに遠い目標。

「実現への道筋が見えないのは、目標ではなく、夢でしかない。
自分たちが置かれている現実に目を向けてほしかった」
渡辺監督は、選手一人ひとりに、タイムや試合成績など
具体的な目標を細かく刻んで設定。

達成できれば、また次の目標を設定。
小さな成功を積み重ねることで、選手たちは自信を持つように。

選手の自主性と自己管理を重んじるのが、渡辺流の指導法。
日々の練習や試合結果で、学生たちをしかることはほとんどない。
自主性を尊重しているから。

ただし、自己管理を怠ったときは別。
特に体調をうまく調整できず、病気やケガを隠して
試合に出場したときは表情が一変。

現役時代に故障で苦しんだ自らの経験のせいもあるが、
「厳しい指導者から離れた途端、成長が止まった選手を
何人も見てきた」から。
「日々の指導でいえば、僕は日本一テキトウな監督。
選手たちが自ら成長し、チーム力が高まっていくのが理想の姿」と
渡辺監督は冗談を交えながら自己分析。

次回の箱根駅伝は、監督として6度目。
周囲は、より高い成果を期待。
「箱根は甘くない」と気を引き締めながら、
自身が大学1年生の年以来、17年ぶりの総合優勝を目指す。

◆「観察→質問→傾聴→助言」士気向上のコツ

リーダーシップとコーチングに詳しい日本能率協会経営ソリューション
本部の中島克紀・担当部長の話

渡辺監督は、チームの意識改革を促した際、
「観察→質問→傾聴→助言」のコーチングサイクルを回した。
このことが、選手たちのモチベーションアップにつながったのでは。
企業の管理職にとっても、参考になる手法。

選手たちの目を、箱根優勝という夢から現実的な目標に向けさせた。
企業の人事手法では、「チャンクダウン(目標の細分化)」
着実にステップアップさせる手法は、部下の育成にも通じる。
一方、優秀な選手には国際試合に出場させるなど、
世界のトップレベルを体感。
一人ひとりに適切な目標を設定するやり方は実に巧み。

現役時代、物おじしない発言で周囲の注目を集めたが、
指導者としては非常に繊細なタイプ。
栄光だけでなく、何度も故障を繰り返した挫折の経験が生きている。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090918.html

再編前夜、学習塾に価格破壊の足音

(日経 2009-09-26)

家計消費支出の中で、教育費は景況や収入の多少の変動に
左右されない項目とされてきた。

子供1人当たりの支出額は拡大傾向で、塾・予備校などの
教育産業の成長を支えてきた。
「特定サービス産業動態統計調査」によると、
「学習塾」の2008年の売上高は、05年比で12.2%伸びた。
「外国語会話教室」は4割も減少。

英会話教室が、家計の余剰を原資にした趣味の支出であるのに対し、
教育費は必要経費として家計の中で聖域視。

昨年9月、「リーマン・ショック」以降、節約の波が
教育費にも押し寄せてきた。
夏期講習の生徒確保に成功したというリソー教育など
一部を除いて、夏のかき入れ時に生徒数を減らした
学習塾・予備校が目立つ。
夏期講習の出費をおしんだ家庭が少なくなかったことの証左。

売り上げの伸びが見込めない09年度は各社とも、
経営効率という基礎体力が問われる。
業界内では、効率の高いグループと低いグループに2極化が起き、
その格差は拡大する傾向に。

売上高が100億円以上の上場企業は、約10社。
08年度、売上高経常利益率を2ケタに乗せたのは、
フランチャイズチェーン(FC)展開で効率を確保する
明光ネットワークジャパンとリソー教育。
4社が2%以下に。

FC方式か営業形態が個別指導中心の学習塾は、
経営効率が高く、集団指導は低い、という明暗がはっきり。
大学全入時代に突入し、難関校受験といった
小さなパイを奪い合う高校生向けの比率が高い企業が苦戦。

学習塾業界は、ベネッセコーポレーションや学習研究社が
参入した06年を境に、再編ラッシュに突入。

07年、ベネッセによる東京個別指導学院の買収など、
系列化の動きが噴出。
09年、M&A(合併・買収)の意欲を隠さないナガセを除くと、
動きが一服している。

次の再編ステージに突入するのは間違いないが、その前段に、
学習塾にも「価格破壊」が波及するとみる業界関係者は少なくない。

「価格競争を仕掛けられるのがこわい」
大手学習塾の営業担当役員は漏らす。

念頭にあるのは、ベネッセ。
今夏にも、夏期講習に比べて“値ごろ感”がある「進研ゼミ」が健闘。
「高い合格実績と高い利益率」のセットが通用しづらくなる
可能性が膨らんでいる。

実績とブランド力さえあれば、薄利多売の通信教育と拠点型で、
利益率が高い個別指導を組み合わせて自由な価格政策が採れる——。
こうした不安が忍び寄る。

信用力の影響度が大きい業種だけに、
集団指導にせよ個別指導にせよ、拠点型で低価格モデルを
確立するのは容易ではない。
期間限定の講習を対象に、価格政策で先手を打つ動きが
出るかもしれない。

消耗戦を仕掛けるか、巻き込まれないよう策を打つか、
各社は正念場を迎える。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo090925.html

農業に学ぶ(3)食の安全 目利き育てる

(読売 9月24日)

多角的に農業をとらえる人材が、農業高校から羽ばたく。

こうべを垂れた稲穂が風にそよぐ。
収穫まで2週間に迫った宮城県農業高校の実習田では、
穂をかき分ける生徒たちの声が響きわたっていた。

化学肥料を使わずに栽培した「ひとめぼれ」の生育を観察する
農業科3年の授業。
稲穂の間隔が異なる田から数株を引き抜き、
茎の数や穂の長さを比較。
指導の佐藤淳教諭(36)は、生徒から上がってくるデータを見て、
「稲の生える間隔が広い方が日当たりはよく、茎の数が多い」

作業で日に焼けた嶺岸和弥君(17)は、
「農業は、手を掛けるほど結果が出るので楽しい」と笑み。

同高は今年度、文部科学省が専門高校の研究を支援する
「目指せスペシャリスト」に指定。
減農薬や無化学肥料によるコメの栽培方法をマニュアル化し、
米粉を使った商品開発を手がけ、宮城米の消費拡大を図る。
稲の生育診断も、一連の計画のプロセス。

「ササニシキ」、「ひとめぼれ」といった品種を
世に送り出してきた宮城県だが、今では次々に登場する
ブランド米に押され、地盤沈下が進んでいる。
佐藤教諭は、「環境に優しく安全なコメ作りをマニュアル化できれば、
付加価値のある農業を地域に伝えることができる」と、
米どころの復権を夢見る。

目指せスペシャリストを申請した背景には、
「環境や食品など、関連した分野から農業を理解できる
人を育てたい」という高校側の思い。

2003年度から3年間、目指せスペシャリストの支援を受けた
熊本県立鹿本農業高校では、生徒たちの発想から、
米粉と特産のメロンで作る「高校生のコメロンパン」が誕生。
首都圏の百貨店にも出荷し、ヒットを飛ばした。
地域の農産物をいかに売るかを、高校生が真剣に考えた結果。

06年度まで同高に勤務し、当時のいきさつに詳しい
県高校教育課の田畑淳一・指導主事(44)は、
「周辺に食品加工などの関連産業が集まり、
農業高校の卒業生ほど、地元で就職する割合が高い。
高校時代から意欲を持たせて未来のリーダーを育てることは、
地域貢献につながる」と農業高校の役割を説明。

米価の低迷で、稲作農家を取り巻く環境は厳しい。
124年の長い伝統を受け継いできた宮城県農業高校でさえ、
農業をなりわいにする卒業生は少なくなっている。
稲の生育診断に参加した農業科3年の11人のうち、
「将来は就農したい」と考えている生徒は1人。
多くは、「農業は嫌いじゃないけれど、仕事にはしたくない」
というのが本音。

それでも佐藤教諭は、教え子たちに、こう説いている。
「人の口に入る食べ物を生み出す農業に携わった君たちは、
知識もあり、食の安全への目利きが出来るんだ」
枠にはまらない農業が、地域を救うのかもしれない。

◆目指せスペシャリスト

専門高校が計画した意欲的な研究に対し、
文部科学省が助成する制度。期間は3年間。
農業、水産、商業、工業などの専門高校の活性化と、
産業基盤の強化が狙い。
2003年度から始まり、これまでに77校が指定。
このうち農業高校は21校。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090924-OYT8T00251.htm

2009年10月1日木曜日

歯磨きでがんリスク3割減 1日2回以上が効果的 3800人調査

(2009年9月28日 共同通信社)

1日2回以上歯を磨く人が、口の中や食道のがんになる
危険性は、1回の人より3割低いとの研究結果を、
愛知県がんセンター研究所がまとめた。
全く磨かない人の危険性は、1回の人の1・8倍。

約3800人を対象とした疫学調査の結果で、
歯磨き習慣と発がんの関連を示す報告は国内初。
日本癌学会で発表。

同研究所疫学予防部の松尾恵太郎室長は、
口やのどには、発がん物質とされるアセトアルデヒドを
作る細菌がいる。
歯磨きで細菌や発がん物質が洗い流されるので、
少なくとも朝と夜に磨けば、がん予防に役立つ」

同センターを受診した人の中から、口の中やのどなどの
頭頸部がんと食道がんの患者計961人と、
がんでない2883人に、歯磨きや喫煙、飲酒などの習慣を聞いた。
年齢は20~79歳で、平均は61歳。

解析した結果、2回以上磨く人は1回の人に比べ、
がんになる危険性が約29%低く、全く磨かない人の危険性は
2回以上磨く人の2・5倍。

喫煙や飲酒をする人だけの解析でも同様の結果で、
歯磨き習慣がないことが、ほかの危険因子と関係なく、
独立したがんの危険因子であることを強く示すもの。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/28/108259/

かゆみ感じる脳部位特定 痛みと別のメカニズム

(2009年9月25日 共同通信社)

「かゆみ」を感じる脳の部位を、
自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授らが特定、
24日までに米学会誌に発表。

頭頂葉内側部の楔前部と呼ばれる部位で、
類似点が指摘される「痛み」とは別の、かゆみ独自の
メカニズムの存在を明らかにしたのは初めて。

柿木教授は、「アトピーなどのかゆみを抑制する薬の開発に
つながるかもしれない」

柿木教授らは、手首に取り付けた電極を通じ、
かゆみを電気的に引き起こす装置を開発。
機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)と脳磁図で、
被験者の脳内を調べたところ、感覚の情報を処理する
楔前部が反応していることを突き止めた。

かゆみの認知は、痛みの認知との共通点もあるため、
「かゆみは痛みの軽いもの」との見方もあったが、
楔前部は痛みを感じる際には反応しない。

ヒスタミン注射で、かゆみを起こす方法もあるが、
不快感やかゆみ以外の作用が同時に起きるため、
かゆみの純粋な反応を調べることはできなかった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/25/108162/

食べて学ぶ地元の幸 3地域で児童ら地産地消行事

(岩手日報 9月26日)

おいしく地域を学ぼう―。
宮古・下閉伊、釜石、大船渡の3地域の小中学校などで、
地元の食材を使った給食や料理講習会が行われた。
子どもたちは郷土の食材に触れ、秋の味覚を堪能。
食で地域を体感する機会を楽しんだ。

「宮古・下閉伊地域たっぷり地場食材給食の日」は、
宮古地方振興局管内の5市町村で実施、
特産のサンマとシイタケを児童らが味わった。

宮古市藤原上町の藤原小(細越馨校長、児童91人)では、
田山清宮古地方振興局長とシイタケ生産者、
市魚市場職員らが児童と会食。
サンマは二色揚げにし、干しシイタケはきのこ汁に仕上げた。

「宮古のシイタケは日本一」、
「秋はサンマの脂がのっておいしくなる」など
生産者の声に児童は耳を傾け、地元食材に理解を深めた。

金沢楓花さん(6年)は、「サンマが一番おいしい。
地元のものをもっと食べてみたい」

5市町村の保育所と小中学校計78カ所で、
サンマとシイタケを使った給食が出された。

釜石市唐丹町の唐丹中(藤舘茂校長、生徒66人)は、
同校でサケの料理講習会を開いた。
参加した2年生20人は、地元産のサケを使った
メニューの調理を通じて食の大切さを学んだ。

唐丹漁協女性部のメンバーら9人が講師となって、
サケの親子丼、サケハンバーグ、サケのあら汁の3品を作った。

調理前、サケの雄と雌の違いなども説明され、
生徒は地元食材への理解を深めた。

中居林優唯さんは、「サケハンバーグは、肉で作ったものと
変わらない感じでおいしかった。家で家族と一緒に作ってみたい」
同講習会は、唐丹漁協女性部の鮭魚食普及運動の一環。

大船渡市教委は、「さんまの日」学校給食を同日から開始。
同市大船渡町の大船渡北小(上関みさ校長、児童252人)では、
「さんまのかば焼き丼」が出され、
児童は甘竹勝郎市長、金野大登教育長らと味わった。

柴田瞳さん(2年)は、「骨が軟らかくて食べやすい。
サンマはおいしいから大好き」
同日は盛小でもサンマ給食が出された。

同市では、2003年から9月30日を「さんまの日」とし、
サンマを使った学校給食を展開。
今年は25日~10月1日に、市内の22小中学校、
3460人を対象に行う予定。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090926_7

農業に学ぶ(2)「そば娘」たちの甲子園

(読売 9月23日)

高校生が、農業の大会で汗と涙を流している。

「農業高校生の甲子園」と呼ばれる大会がある。
農業を学ぶ高校生が、活動の成果を発表したり、
知識や技術を競ったりする「日本学校農業クラブ全国大会」
60回目を迎える今年は、10月に茨城県で開かれ、
341校、生徒2021人が出場。

8月、9都県の代表が全国出場をかけて争った関東ブロック大会。
食料・生産のプロジェクト発表では、高校生たちが
写真や図表のスライドを映しながら、「野菜で街を元気に」、
「農業における糸状菌の有効利用」など、
地域づくりの活動や農業技術の研究成果を披露。

「常陸秋そば」という県産品種のそばのPR活動について
発表したのは、茨城県立水戸農業高校。
女子メンバー5人を中心に、栽培収穫から製粉まで行い、
「そば娘」と名付けて商標登録、
そば打ち講習会を開くまでを熱く語った。
その名も、「そばにかけた青春 5人のそば娘
~常陸秋そば拡大プロジェクト」。

3年の大貫若子さん(18)は発表後、
「常陸秋そばを打って食べた時、感動するぐらいおいしくて、
地元の宝を広めたいと思った」と、活動の原点を話した。
校内発表した時は、先生たちから「ダメ出しの嵐」。
発表準備がうまくいかず、「イライラし、けんかばかりだった」

県大会直後の6月下旬、顧問が急死したことが転機。
みんなが思いを一つにし、朝から晩まで毎日、
発表の練習に明け暮れた。
全国大会出場は逃したが、「ほかではできない経験ができた」

全国農業協同組合中央会(JA全中、東京)も、
「全国高校生対抗ごはんDE笑顔プロジェクト選手権」と題した
大会で、農や食に興味を持つ高校生の盛り上げに一役買っている。

3人以上の高校生グループが、
〈1〉野菜や果物、畜産物などを育て、
〈2〉それを生かした料理や加工品を考案、
〈3〉地元の人に食べてもらう機会をつくる――という3段階の競技。

各グループが、活動状況を同選手権のホームページで発表、
他のグループと競いながら進めるのが特徴。
JA全中は、「若さとアイデアで地域を元気にするプロジェクトを期待」

今年は、108校200グループが参加。
在来種のニンニクを栽培してしょうゆを作ったり、育てた大豆を
郷土料理に使ったりするなど、様々な活動に取り組んだ。
11月の決勝大会出場をかけた地区予選が各地で開かれている。

農業高校に詳しい明治大学の井上猛・教職課程兼任講師(68)は、
「全国を目指し、より高い目標が持てることが、
農業に情熱を燃やす高校生の励みに。
地域貢献活動などに取り組むきっかけにもなる」

「農」をテーマに競い合う大舞台が、
若者の農業への意欲を支えている。

◆日本学校農業クラブ全国大会

1950年に発足、農業高校や農業系学科の生徒約9万人が入る
同クラブ連盟が毎年開催。
食料・生産、環境、文化・生活の3部門で研究を発表する
「プロジェクト発表会」や思いを語る「意見発表会」のほか、
知識や技術を競い合う「平板測量」、「農業鑑定」、
「農業情報処理」の各競技会などがある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090923-OYT8T00220.htm

2009年9月30日水曜日

地域課題解決へ学生の力 県内5大学がプロジェクト

(岩手日報 9月26日)

若い「脳力」で地域課題を解決しよう―。
県内大学の学生が、地域の医療・社会福祉、教育、経済などに
関する課題に取り組む「学生の地域参加プロジェクト」
進んでいる。
県内5大学で構成する「いわて高等教育コンソーシアム」が
取り組む教育力向上事業の一環。
学生ならではの視点を生かし、独創的な活動を展開。

プロジェクトは、学生の発想力や行動力などを養うことを
目的に初めて実施。
1件当たり40万円以内の経費を支援。
本年度は、岩手医大1件、県立大4件の計5件。

岩手医大の医、歯、薬の3学部の学生からなる衛生検査部
(佐藤俊代表=医学部3年)は、
「地域医療の実態調査」を企画。
医療過疎の現状を把握し、問題点を検証。

10月中に、医師不足の原因や地域医療の現状などを
患者や医師らからアンケート調査し、
下旬に病院で直接話を聞く予定。
佐藤俊代表は、「地域医療の利点、欠点を探り、
今後に生かしたい」と意気込む。

県立大社会福祉学部で保育を学ぶ佐藤佳菜代表(3年)らの
グループは、高齢者と保育者対象に
「光るどろだんご作り指導者養成講座」を企画。
高齢者と子どもの世代間交流の推進などが狙い。

27日、滝沢村の同大で作り方を指導。
佐藤佳菜代表は、「作る楽しさを伝える人を増やし、
交流を通して保育について学びたい」
同講座、doronkotai@gmail.com

他プロジェクトは、次の通り(プロジェクト名、代表者、活動内容の順)
▽「STEP」(大越香澄=県立大社会福祉学部4年)
思春期の発達障害児とそのきょうだいに対する支援活動

▽「地域勉強会~ホームレス支援ボランティアから感じたもの~」
(触沢陽介=同)
ホームレス支援活動と行政機関、地域に対する勉強会の開催

▽「大学生の参加による観光資源を活用した地域経済活性化
のための研究」(熊谷歩=同大総合政策学部4年)
岩手の自然や歴史、食など地域資源を活用した
観光客誘致のための情報発信

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090926_9

農業に学ぶ(1)高3が「社長」 野菜販売競う

(読売 9月22日)

時代を見据えた新しい授業に、農業高校の底力が見える。

馬術の名門校で、映画の舞台にもなった
青森県立三本木農業高校。
毎週木曜日、一般開放される校内の直売所前で、
長靴を履いた3年の番匠雄大君(18)が、
とれたてのシソを売り歩いていた。

客の反応は悪い。
「シソだば、この辺にあっから」
一緒にいた同級生と番匠君が話し込む。
「値段を下げれば?」、「種代にならないよ」、
「寮のおばちゃんは?」、「やっぱ作ってるもん」

職員室でニンジンを売っていた母良田雄貴君(18)も、
「売るのは大変。授業とは言え、責任も問われるから。
俺たち、売り上げを伸ばしたいんです」と切実に語った。

野菜を売り歩くのは、植物科学科3年生の20人が受講する
「農業経営シミュレーション」の授業の一環。
「18歳にして社長、目指すは農業の達人」という掛け声の下、
2001年度に学校独自の科目として始まった。

生徒たちは3~5人で資金を出し合い、
1年限定で模擬法人を設立。
校内にある約800平方メートルの畑で野菜や果物を作り、
売り上げを競う。
教職員から出資を募ることもでき、その資本金で種子や肥料、
資材を調達、“社員”には80円の月給が支払われる。

スーパーの売り場を歩いたり、新聞の市況欄を読んだりして、
売れる作物、売れる時期、適正な価格を考えるのも仕事。
1月には経営報告会が開かれ、赤字が出れば、
出資者の教職員らから原因を追及。
教師は、あくまで作業の相談役に徹し、購入する種子も、
収穫の時期も、すべて生徒の判断に任せている。

農業高校といえども、かつてのように農家の後継者が入学する
ケースは少なくなっており、授業への関心が低い生徒が出る。
同高でも、かつては職員会議で、「いい授業方法はないか」と、
毎回のように話題に上がった。

10年前、教員同士の雑談から「生徒に畑を持たせて、
最後まで責任を持って売らせてみては」という案。
「授業にも集中できない子どもが、取り組めるのか」と不安もあったが、
やってみたところ、生徒たちは自主的に休日を返上して、
水やりや草取りに励んだ。

担当する小笠原理高教諭(40)は、授業の効果について、
農業を生産だけの点ではなく、販売までの線でとらえることで、
一つひとつの作業が何につながるのかを自分で考えるようになる。
売ることで伝える力に磨きをかけ、お金を預かることで
責任感も生まれてくる」

「起業家教育」を06年度から取り入れているのは、
岡山県立高松農業高校
農業科学科3年生38人でつくる模擬株式会社が、
校内で育てたミニトマトの商品開発に取り組む。

これまでに生食用のほか、規格外のトマトをシロップに漬けた
デザートを販売。
10月、県内の土産物で人気の高いトマトゼリーの製造を
業者に委託し、校内の即売所で発売。

ケチャップの製造も考えたが、原価計算をしたら、
手間がかかるうえ、もうけが少ないことが分かった。
品質管理が難しく、カビを生やして無駄にした試作も。
トマトゼリーの製造は、校内では難しいが、業者に頼めば可能。
委託費を工面しなければならない。
7月に1株1000円の株券を発行、教職員から計14万円を集めた。

生産部長を務める香山慎二君(18)は、
「お金を出して普通に食べていた物の背景に、
いろんな努力があることを知り、自分で作った物に愛着がわいてきた」

同高で、起業家教育の導入を進め、農業教育の著書もある
岡山県立久世高校の佐々木正剛教諭(31)は、
「農業の起業家教育には、緊張感やリスクも伴う。
それが生きる力につながる」

農業教育の新しい役割が模索されている。

◆農業高校

農業、園芸、畜産、食品科学、農業土木など農業に関する
学科のある高校。
1960~70年代は500校台で推移、
農業の衰退や少子化で統廃合が進み、現在は380校。
農業に関する学科のみを持つ単独校は128校、
普通科などとの併設校は174校、
多様な科目を生徒が選択できる総合学科高校が78校。

◆高齢化…増える生産法人

高齢を理由に引退する農家が相次ぐ中、
株式会社や農事組合法人などの形態で農業に取り組む
農業生産法人が増えている。
国や自治体が後押しする集落営農の法人化も追い風となり、
法人で働く雇用就農者数(08年)は前年比15・2%増の8400人。

農業就業人口全体の約289万人に比べ、
雇用就農者数はまだまだ少ないが、
39歳以下が65・8%を占めるなど、未来の農業経営者を育む
土壌が生まれている。
こうした環境の変化を受け、農家の後継者育成を進めてきた
農業高校でも、より視野を広げた授業内容への転換を図っている。

2013年度から実施する高校の新学習指導要領では、
教科の「農業」に、「農業と環境」という履修科目が加わる。
農業を通して、環境や食の安全などの問題も考える内容。
文部科学省では、「農業に限らず、どの進路に進んでも
対応できる課題解決型の人材を育てたい」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090922-OYT8T00186.htm

2009年9月29日火曜日

大船渡市職員、脱マイカー通勤実施 当面は月1回ペース

(東海新報 9月26日)

大船渡市は、10月から月一回、市職員を対象に
「エコ通勤運動」を実施。
現在ほとんどの職員が自家用車で通勤している中、
第3水曜日を基本に「脱マイカー」とし、
公共交通機関や自転車、徒歩で通勤。

市では、来年以降の継続や実施日増なども視野に入れ、
温室効果ガス排出削減や公共交通機関利用増といった
効果に加え、今後市内事業所に同様の動きが広がるか注目。

市内では、JR大船渡線や三陸鉄道南リアス線、
岩手県交通による路線バスなどの公共交通機関があるが、
いずれも自家用車の普及や少子高齢化社会の進展による
沿線人口減少などの影響から、利用者は年々減少傾向。

高齢者や児童生徒の利用手段としては欠かせない中、
公共機関維持には乗客増が急務。
通勤方法をマイカーから換えることで、
温室効果ガス排出量の抑制も見込まれる。

公共交通機関に対する実態認識を深め、
エコに対する職員の意識改革を図ろうと、
市では「エコ通勤運動」の実施を決めた。

10月から12月まで3カ月間実施。
毎月第3週を運動ウイークとし、水曜日を基本に職員が
公共交通機関や自転車、徒歩などで通勤。
市では、毎週水曜日を「ノー残業デー」として、定時退庁を提唱。

対象は、市役所本庁、三陸支所、市保健介護センターなどで
勤務する市職員約400人。
現在、公共交通機関を利用して通勤しているのは6人。
自転車や徒歩通勤も一部で、ほとんどがマイカーで通勤、
市役所本庁駐車場の大半は職員らの自家用車が占めている。

バス、列車とも、採算性確保などから運航便数削減が続き、
庁舎から離れた地域に住む一部職員は、
通勤手段確保が難しい場合も。
市では、複数職員による相乗りも認めている。

県内他市では、これまでに盛岡、二戸両市で実施。
実施状況を見ながら、来年以降の継続や回数の増加も検討、
「まずは、市職員が率先して行いたい」とし、
市内各事業所などへの広がりにも期待を寄せる。

該当日には、盛町内にある自宅から徒歩で通う予定という
甘竹勝郎市長は、「実際にやってみることで課題も多いが、
克服しながら取り組んでいきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/index.html

社会人基礎力(8)必修化 知識欲の向上も

(読売 9月19日)

社会人基礎力を全学部で必修化している大学もある。

照明を消した薄暗い教室で、学生2人がパソコン画面を
スクリーンに映し出し、説明を始めた。
「僕らの班は、バスの乗降をスムーズにするため、
人にやさしい両替機を考えました」

提案したのは、液晶画面に指で触れると目的地までの料金が
表示される両替機。
乗車口の整理券発行機と一体化することで、
乗客はもたつかずに降りられる点をPR。

金沢工業大学で行われた「プロジェクトデザイン1」の授業。
受講していたのは、情報経営学科1年の40人。

学生たちはこの授業のため、入学直後に5、6人ずつ
7班に分けられ、「人と環境にやさしい新交通システム」を考えてきた。
この日は13回目の授業で、翌々週の最終発表に向けて発表の練習。

「バス利用者にアンケートを取ったら、『料金がわかりにくい』との
声が多かったので考案。
手すりを付けたので、走行中も安全に使えます」と発表者。
担当の武市祥司准教授(42)は、「説明の流れも、図もわかりやすい。
他の班もぜひ参考にして下さい」と拍手。

同大は、全学部(工、環境・建築、情報、バイオ・化学)の
全学年で基礎力プログラムを行う、全国でも先駆的な大学。
学部生約6800人は全員4年間、基礎力を養う。

「専門知識のない1年生が課題解決型学習をすれば、
『やはり専門知識がないと難しい』と実感。
それが、次の学習意欲の向上につながる」と、
プログラムを統括する松石正克教授(68)。

地域に役立つ技術者を輩出するため、同大は1995年、
「教える教育」から「学生が自ら学ぶ教育」への転換に着手。
知識と基礎力は「車の両輪」という考え方は、
その時以来、貫かれている。

なぜ今、早期からの基礎力育成が求められるのか?
2005年度、基礎力の定義をまとめた経済産業省の
「社会人基礎力に関する研究会」で、座長を務めた
諏訪康雄・法政大学教授(61)は、大学や専門学校などへの
進学率が高まり、社会に出る時期が遅くなっていることを指摘、
「学力だけ高めて、後から基礎力をつけようとしても難しい」

経産省が、07年度から行ってきた基礎力育成のモデル事業は、
今年度でいったん終了。
同省産業人材政策室は、「取り組みは全国の大学に広まった。
今後は、各教育現場で自主的に取り組んでもらいたい」との考え。

小中高校も含め、基礎力を育成する取り組みは
さらに広がるのかどうか?
課題解決に向け、教育関係者にも「前に踏み出す力」が
求められている。

◆社会人基礎力に関する研究会

2005年7月、仕事で求められる能力を明確化するため、
経済産業省経済産業政策局長の私的研究会として、
企業の人事担当者や大学関係者ら約20人で開催。
06年2月、基礎力の定義と3能力12要素を公表。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090919-OYT8T00299.htm

ベトナムに広がる野球、指導は元高校球児

(読売 9月26日)

2016年五輪への競技復帰がかなわなかった野球だが、
その振興に今から取り組もうとしている国がある。
東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国の中で唯一、
野球がほぼ行われていなかったベトナム。

ホーチミンの大学生による国内初の野球チームが、
国際大会に挑む。

将来の国家代表と目され、競技団体設立の動きもあるチームを
指揮するのは、ホーチミンでIT企業を経営する西村重明さん(46)。

チームは、元高校球児の西村さんが、
地元の日本人児童生徒に指導しているのを見て、
興味を持った学生が昨年1月に作ったもので、
RMITベトナム国際大学の学生が中心。

今年3月、カンボジア代表との練習試合で4戦全敗した悔しさを
バネに活動を本格化、11月にドバイで行われる南西アジア諸国の
大会に ホーチミン市代表としてオブザーバー参加。
「高校野球県大会1~2回戦」(西村さん)のレベルながら、
エリート学生たちは理論ののみ込みが速く、日に日に力をつけている。

活動の広がりを受け、ベトナムのスポーツ当局は、
野球協会設立と国際野球連盟加盟の検討に入っている。

後押しに乗り出した背景には、人気スポーツのサッカーに続いて
野球を普及させ、経済振興につなげる狙い。

2001年夏の甲子園大会では、ベトナム国籍の
グエン・トラン・フォク・アン投手(東洋大姫路)の活躍が話題を呼び、
西村さんは、「ベトナム人は小柄ながら野球に向いている」と
可能性に期待。

主将のレ・タン・ニャ投手(21)は、「僕ら第一世代のうちに、
東南アジアのトップクラス入り」の目標を掲げ、
大学卒業後も野球を続けるつもり。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/yakyu/news/20090926-OYT1T00590.htm

2009年9月28日月曜日

埋もれかけた「信仰碑」保護 19基、県道沿いに移設整備 赤崎町の大畑さん

(東海新報 9月25日)

金比羅大権現や六地蔵など19基を安置した信仰碑群が、
大船渡市赤崎町の県道沿いにお目見え。

人目のつかないのり面に埋まったり倒れたりしているのを憂いた、
元会社員・大畑久松さん(77)が保護するため、
1カ所にまとめて移設。
誰もが参拝しやすいように生まれ変わった。

石碑群は、のり面から約3㍍下の人通りや交通量の多い
県道沿いに移設。
ブロック石と御影石で造成した長さ約17㍍、幅2・5㍍の台座に
建て直し、立派に整備された。

江戸時代の1770年に建てられた念仏講中1基が最古。
文政5年(1822)などに建立された金比羅大権現が2基、
昭和25年の馬頭観世音が3基、山神、雷神塔、虚空藏大菩薩、
庚申、庚申塔、百萬辺供養、湯殿山が各1基。
6地蔵を入れ、計19基が林立。

石崎の六地蔵と呼んでいる地蔵尊は、三体が見つからず
行方不明なため、久松さんが代わりに用意した2個と、
知人の大畑信吾さんから寄付された1個の自然石を加え、
6基にして建て直した。

馬頭観音1基は、久松さんの先祖が建てたもので、
分家の大畑安吉さん、大本家の大畑健志さん、佐々木信吉さんの
三家が建立したものが計5基、
そのほか「地域の有志が建てたものでは」と久松さん。

19基の信仰碑は昔から、久松さんの所有地ののり面に、
二列にバラバラに建てられていた。
倒れそうになっていたり、この春に倒れたものも。
埋もれかけている信仰碑のことが、「3、4年前から気になっていた」
という久松さんは一念発起、移設に動いた。

建立者が分かっている他の三家の了承を得て、
のり面下の自分の所有地に信仰碑をまとめて建て直すことが実現。
移設する際、土に埋まっていた六地蔵の一体の頭が出てきた。
人目に触れる場所に移されて、お地蔵様も心なしかうれしそうな表情。
移設工事は業者が行い、今月、宮司に依頼し落成式を行った。

「もう一回地震が来て転んだら最後、碑は二つにも三つにも
割れてしまう。移設して良かった。拝みやすくなりました」と
大願を果たした久松さんは穏やかな笑顔で語る。

http://www.tohkaishimpo.com/index.html

社会人基礎力(7)入社前から育成スタート

(読売 9月18日)

企業も新入社員の採用・教育に、社会人基礎力を採り入れ始めた。

スーツ姿の緊張した学生34人が会議室に集まる。
富士通の川崎工場で行われた「ATTチャレンジ」
採用内定から入社2年目まで、約3年かけて社会人基礎力を養う、
同社の育成プログラムの初日。

「残りの学生生活を充実させるため、あなたが実現したい
目標を考えましょう」
講師の説明に、学生は「国際学会で発表」、
「世界一周旅行」などと用紙に書き込んだ。

「それを実現するために欠かせない基礎力は?」との質問に、
内定者は悩んだ。
主体性か計画力か、他人に働きかける力か?
身近なテーマで自分の能力を見つめ直させるのが狙い。

「ATTチャレンジ」は、実は学生が採用選考に応募する
時点から始まる。
応募者は、3能力12要素の基礎力について、
5段階の自己評価を提出。
同社の林田淳吾・人材採用センター担当課長(41)は、
「自己評価だけで選考から落ちることはないが、
自己PRと矛盾すれば、面接で追及している」

このプログラムの最大の特徴は、内定後は自己評価を
9段階に拡大し、内定期間に3回、入社後の2か月間に2回、
その後も2年目終了までに4回と、計9回も繰り返すこと。
目標を立てて行動を振り返る「PDCAサイクル」を
習慣づける意味もあるが、同社は
「評価が5から7に上がることより、『なぜ上がったのか』、
『何がまだ足りないのか』を考えることが重要」(林田課長)。

同社は、経済産業省が2005年度、基礎力12要素を公表、
「基礎力は、大学と企業の共通言語」と認識。
08年度から「ATTチャレンジ」を始めた。
内定者の早稲田大4年、今西良磨さん(21)は、
「自分は、計画力や傾聴力が弱いと気付いた。
普段は意識していないが、今回参加して見えてきた」

資生堂も08年度から、基礎力を採り入れた3週間の新人研修
「STARTプログラム」を始めた。

同社が目指すのは、「美意識」、「自立性」、「変革力」を
備えた社員の育成。
同社人事部は、「若手社員は自ら考えて行動し、
目標までやり通す面が弱い」(深沢晶久・人材開発室長)と、
基礎力の育成に乗り出した。

新入社員は、「得意先の社長」を演じる管理職社員に対し、
同社の理念や仕事への思いをプレゼンテーションするなど、
「自分の言葉で語る力」を鍛える。
同社が独自に設定した27項目の能力要素が伸びているのかどうか、
日々振り返るための時間も設けている。

深沢室長は、「最近の若者はすぐ答えを求めたがるが、
明確な正解がない中で考えていくのが仕事。
それを学んでもらうのも、プログラムの狙いの一つ」

社会人こそ、基礎力の自己評価を続けていく必要がある。

◆ATT

経済産業省が定義する社会人基礎力の3大能力である
「前に踏み出す力(action)」、「考え抜く力(thinking)」、
「チームで働く力(teamwork)」の英語の頭文字を取った略称。
社会人基礎力の英略語として用いられる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090918-OYT8T00195.htm

運動会これでOK?「速く走れる靴」続々登場

(読売 9月26日)

運動会シーズンを迎え、「速く走れる」を切り口にした
子供用運動靴の販売競争が過熱。

少子化で、一人の子供にお金をかける傾向が強まり、
消費不振の中でも高機能の子供用品市場は成長が見込める。
新商品が相次いで投入され、ランニング教室を開き、
走り方の指導まで行う動きも出てきた。

子供用品は、両親と双方の祖父母が物を買い与える
『シックスポケッツ』と呼ばれる購買力の強さが特徴。

祖父母の財布のひもは、孫に対しては緩みがちで、
子供用運動靴を売り込むのに、運動会前は絶好の商機。

ミズノが、小学1~3年生の親子に、走り方のコツを伝授する
「運動会必勝塾」。
トレーニング前後の50メートル走のタイムを比べる企画が目玉で、
参加者の7割のタイムが良くなることも。
後半のタイム計測前に、足形測定器でデータを採り、
中敷きを調整するなどして足に合わせたミズノ製シューズも貸し出す。
一押し製品には、けり出す時に最も力がかかる部分に
滑り止めをつけた。

9月中旬、兵庫県芦屋市で開いた必勝塾に、
子供3人と参加した近くの主婦、金本ひとみさん(41)は、
「運動会で1等をとらせるために来たが、フォームが良くなった」

各社も、創意工夫を凝らしている。
ムーンスターが8月に発売した新製品は、特殊なゴム素材の
バネの力により歩幅が伸びる。

アサヒコーポレーションも、靴底に高反発ゴムを装着した
タイプを投入。
ホームページに「速くなる!かけっこ教室」を掲載。

市場拡大のきっかけは、2003年の発売以来、
1500万足を売り上げたアキレスの「瞬足」。
左回りのコーナーを走りやすいように、足裏の左側に重点的に
滑り止めをつけた左右非対称の構造が特長で、大ヒット商品。

矢野経済研究所によると、09年の子供用運動靴の出荷額は
前年比7・1%増の172億円となる見込み。
06年比で15%も伸び、有望な市場。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20090926-OYT1T00685.htm

2009年9月27日日曜日

社会人基礎力(6)能力評価 成長を実感

(読売 9月16日)

社会人基礎力を育成するカギは、評価のシステムだ。

「君、ちょっと遠慮しすぎなんじゃない?」
大阪大学大学院工学研究科を修了した笹井謙一さん(25)は、
2年前、共同研究で企業から訪れていた講師の指摘に今も感謝。

研究を進めるには、他の研究室の実験装置を使わせてもらう必要。
「院生の立場で、よその教授に直接依頼などしていいのだろうか」
笹井さんがためらい、研究が進まないのを見て、
講師はズバリ指摘した。

「目上の人に頼むことを怖がっていた」
そう自覚した笹井さんは、依頼の仕方を研究室の先輩に尋ねた。
「なぜ装置を使いたいのか、どういう計画か、
相手にもメリットがあるのか。
それを説明すれば話は通ることがわかった」
大手電機メーカーで働いているが、その経験が生きている。

経済産業省は、学生の社会人基礎力を育成するモデル大学に対し、
学生の能力評価を求めている。
大学は、各学生が3能力12要素の基礎力の到達度を、
「発揮できなかった(レベル1)」、「何とかできた(同2)」、
「大いにできた(同3)」のいずれかで記録。

評価は、学生の「自己評価」と、教員や企業社員による
「他者評価」があり、プログラムの事前・中間・事後の3回行うのが基本。
同省は、「学生は自分の行動を振り返り、成長を実感できる」

大阪大では、基礎力12要素を66項目に細分化した
独自の評価シートを作成、レベルも5段階に拡大。
企業社員を月1回招き、学生の研究に助言や評価も依頼する
「インターンシップ・オン・キャンパス」を実践。

同大の北岡康夫教授(43)によると、以前は、教員の助言や評価に
ショックを受けて講義に出なくなる学生もいて、指導が難しかった。
今は、「評価シートの活用によって、学生自身に弱みや強みを
気付かせることができ、教員も指導しやすくなった」

基礎力のモデル大学として3年目に入った宮城大学も、
独自の評価方法を導入。

文系・理系が融合した全国唯一の「事業構想学部」の1~4年生が、
基礎力プログラムを受講。
1、2年生は授業が中心の「学内社会人基礎力」、
3、4年生は企業や自治体と連携した「学外社会人基礎力」を育成。

評価方法もこれに合わせ、1、2年生は自己評価と教員の評価によって
自分の基礎力を認識。
3、4年生にはそれに加え、他学生と企業社員らも評価。

同大の富樫敦教授(53)は、「作業の負担軽減が今後の課題」
学生や教員らがインターネット上で評価シートを書き込める
ITシステムの開発を進めている。

基礎力が本物に育つよう、模索が続く。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090916-OYT8T00241.htm

成功するシンポジウムとは

(サイエンスポータル 2009年9月24日)

お彼岸シンポジウムとも呼ばれている
自然科学研究機構主催のシンポジウムが開かれた。
今回のテーマは、「脳が諸学を生み、諸学が脳を総合する」

いつものように、独創的な研究を展開する研究者を
ずらりと講師陣に並べていた。
このシンポジウムは、今回が8回目。
リピーターが非常に多いと主催者が自慢するだけのことはあり、
毎回、いすを追加するほどの盛況ぶり。
今回は会場が変わったせいか、珍しく空席もいくらかあったが、
内容はこれまで以上に充実していたように見える。

ジャーナリトの立花隆氏が、シンポジウムの企画、進行に
大きな役割を果たしているのが、このシンポジウムの特徴。
それが、大勢の聴衆を集める最大の理由だろう。
あらためて成功するシンポジウムとは、ということを考えてみた。

シンポジウムというのは、主催する方も大変だが、
一日中、集中して聴いている方も相当なエネルギーを要求。
講演者やパネリストに、わずかでも平板、難解な話しぶりの人や
当たり障りがないことしか言わない人が含まれていたりすると、
そこで聴衆の集中力は途切れてしまう。
中には、2度とこのシンポジウムには来ない、という聴衆も。
悪貨は、良貨を駆逐するという面が、シンポジウムにもありそう。

自然科学研究機構は、旧国立大学共同利用研究所が
集まってできた集合体。
今回のように脳、宇宙、生命といった根源的テーマで、
これぞという講師を集めやすいことも人気の理由。
講師、パネリストに名のある研究者をそろえるという点では、
日本学術会議主催のシンポジウムも引けを取らない。

せっかくの議論が、中途半端に終わるものが時々ある。
幅広い意見を、と学界だけでなく多方面から講師や
パネリストを集めたシンポジウムに、そうしたものが見られる。
卓越した研究者が、自らの研究成果やその分野の全体状況を
洗いざらいかつ上手に話す。
このような講演に、多分、聴衆は満足するし、
往々にして感動もするだろう。
どちらかというと手の内をさらけ出したがらない人や、
そういう人が多い職種、業界というのもあるのも現実。

自分は脇役に徹し、主役は独創的でかつ話がうまい研究者に限る。
立花氏が切り盛りする自然科学研究機構シンポジウムが、
毎回、多くの聴衆を満足させる秘訣は、
その辺りにあるような気がする。

http://scienceportal.jp/news/review/0909/0909241.html

スポーツ21世紀:新しい波/318 ハンドボールの挑戦/中

(毎日 9月19日)

ハンドボールの日本リーグ機構が、10月から始める新リーグ
「チャレンジ・ディビジョン」の特徴の一つが、
国体に向けたクラブチームの参加。

今年は、10年に国体を開催する千葉、11年の山口、
12年の岐阜から四つのチームが出場。
企業チーム数が減少する中、「チーム数の増加を見込めるのは、
国体をきっかけにしたクラブチームしかない」
(日本ハンドボール協会関係者)という見方。

国体開催を2年後に控えた山口県周南市。
今年4月から本格的に活動を始めた
「HC山口」の選手たちが練習に励む。
5年前から、地元出身の大学生らを呼び集めて
国体予選には出場していたが、湧永製薬(広島)などと争う
中国予選を勝ち進めなかった。

今年4月、日本リーグで活躍をした元日本代表の東慶一が
南陽工高の教諭に就任したのを契機に、
県内のクラブチームの協力を得て選手を集めた。
週3回の練習で力をつけ、中国予選で初の国体出場を決めた。

監督を務める徳山高教諭の山根安彦さんは、
「(国体で上位進出ができる)強いチームを作ってくれと要請。
試合が少ないので、チームにどれぐらいの力があるのか分からない」

国体に向けたクラブチームは、地域の体育協会などから
強化指定を受けると、補助金が出る。
HC山口も、今年度から約70万円の補助を受ける。
ほかのチームと比べ、運営面で恵まれているものの、
補助がなくなる国体後には存続の危機に見舞われる。

茂木均・日本リーグ機構事務局長は、
「国体後も続ける手段として、新リーグを活用してもらいたい」、
山根監督は、「寄せ集めのチームなので、山口国体後も
このチームが続くかどうかも分からない」と疑問。

これまでも地元開催の国体で活躍しながら、
その後に解散や縮小を余儀なくされたチームが多い。

HC山口の東は、「(新リーグでは)日本リーグにいたチームと
試合ができるので、大きな経験に。
リーグですそ野が広がれば、日本のトップの強化にもつながるはず」

地域に根ざしたチームが強化、運営の両面で、
新リーグをどう活用できるのかが成功への試金石になりそう。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/09/19/20090919ddm035050048000c.html