(読売 9月19日)
社会人基礎力を全学部で必修化している大学もある。
照明を消した薄暗い教室で、学生2人がパソコン画面を
スクリーンに映し出し、説明を始めた。
「僕らの班は、バスの乗降をスムーズにするため、
人にやさしい両替機を考えました」
提案したのは、液晶画面に指で触れると目的地までの料金が
表示される両替機。
乗車口の整理券発行機と一体化することで、
乗客はもたつかずに降りられる点をPR。
金沢工業大学で行われた「プロジェクトデザイン1」の授業。
受講していたのは、情報経営学科1年の40人。
学生たちはこの授業のため、入学直後に5、6人ずつ
7班に分けられ、「人と環境にやさしい新交通システム」を考えてきた。
この日は13回目の授業で、翌々週の最終発表に向けて発表の練習。
「バス利用者にアンケートを取ったら、『料金がわかりにくい』との
声が多かったので考案。
手すりを付けたので、走行中も安全に使えます」と発表者。
担当の武市祥司准教授(42)は、「説明の流れも、図もわかりやすい。
他の班もぜひ参考にして下さい」と拍手。
同大は、全学部(工、環境・建築、情報、バイオ・化学)の
全学年で基礎力プログラムを行う、全国でも先駆的な大学。
学部生約6800人は全員4年間、基礎力を養う。
「専門知識のない1年生が課題解決型学習をすれば、
『やはり専門知識がないと難しい』と実感。
それが、次の学習意欲の向上につながる」と、
プログラムを統括する松石正克教授(68)。
地域に役立つ技術者を輩出するため、同大は1995年、
「教える教育」から「学生が自ら学ぶ教育」への転換に着手。
知識と基礎力は「車の両輪」という考え方は、
その時以来、貫かれている。
なぜ今、早期からの基礎力育成が求められるのか?
2005年度、基礎力の定義をまとめた経済産業省の
「社会人基礎力に関する研究会」で、座長を務めた
諏訪康雄・法政大学教授(61)は、大学や専門学校などへの
進学率が高まり、社会に出る時期が遅くなっていることを指摘、
「学力だけ高めて、後から基礎力をつけようとしても難しい」
経産省が、07年度から行ってきた基礎力育成のモデル事業は、
今年度でいったん終了。
同省産業人材政策室は、「取り組みは全国の大学に広まった。
今後は、各教育現場で自主的に取り組んでもらいたい」との考え。
小中高校も含め、基礎力を育成する取り組みは
さらに広がるのかどうか?
課題解決に向け、教育関係者にも「前に踏み出す力」が
求められている。
◆社会人基礎力に関する研究会
2005年7月、仕事で求められる能力を明確化するため、
経済産業省経済産業政策局長の私的研究会として、
企業の人事担当者や大学関係者ら約20人で開催。
06年2月、基礎力の定義と3能力12要素を公表。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090919-OYT8T00299.htm
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