2010年12月11日土曜日

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/2

(毎日 12月1日)

大会の視察を終えたスポーツマーケティング会社
「UFAスポーツアジア」(本社・シンガポール)のジェフ・チュー常務は、
声を弾ませた。
「アジアには、まだまだ可能性を秘めた競技があると感じさせてくれた」

アジア大会最大の特徴は、広いアジアのさまざまな民族の間で
親しまれている競技を多く取り入れていること。
今大会でもドラゴンボート、クリケットのほか、チェスの一種目となった
囲碁などが新設、過去最高となる42競技476種目が行われた。

「民族スポーツ」を取り込む傾向は、86年ソウル大会で
韓国の国技・テコンドーが採用されたのを皮切りに、
90年北京大会で東南アジアのセパタクロー、インドの国技・カバディ、
中国に由来する武術、94年広島大会で沖縄発祥とされる空手と、
年々強まってきた。

テコンドーは、88年ソウル五輪で公開競技となり、
00年シドニー五輪から正式競技に採用、今や国際的競技に成長。
カバディも、04年に第1回ワールドカップをインドで開催、
今年4月、円形のコートで行う「サークルスタイルカバディ」の
ワールドカップを初めて行うなど、世界戦略に乗り出している。
民族スポーツにとってアジア大会は、いまや「国際化への登竜門」。

セパタクローは、今大会期間中に国際サーキットの大会創設を表明。

プランを作成したのは、欧州最大のメディアグループ
「RTLグループ」傘下の「UFAスポーツアジア」。
チュー常務は、セパタクローに目をつけた理由について、
「テレビを含め、観戦する人にわかりやすいように『再梱包』すれば、
必ず人気が出ると思った」

個人的な見解とした上で、「カバディや、中央アジア、中東からの参加が
増えた武術には大変魅力を感じたし、アジア大会未実施の競技でも、
(ビジネスの対象として)興味を持っているものがある」
人口が世界の6割を占めるとも言われる巨大なアジアには、
まだ掘り起こされていない“商品”と“市場”が眠っている。

◆本質失われる恐れも

国際化には弊害もある。
テコンドー女子49キロ級で、台湾選手が失格となった件を巡って、
台湾で韓国への反感が高まる騒ぎが起きた。
台湾選手の相手はベトナムの選手だったが、一部で、
世界テコンドー連盟が本部を韓国に置くことなどから、
韓国関係者が今回の判定にかかわったという報道が。

台湾では韓国国旗が燃やされ、韓国外交通商省が憂慮を表明するなど、
国際問題に発展しかねない状態に。
あってはならない「事件」ではあったが、それだけ競技が世界で認知され、
人気が高まったことの証左とも言えた。

クリケットは、五輪に不可欠なテレビ放映に対応するため、
最近の国際試合では「20オーバー(1チームの投球数が120球)制」を採用。
伝統的なものでは、テストマッチ(国代表試合)で5日間もかかっていた
試合を、約3時間に短縮。

「(20オーバー制は)五輪でやれば完ぺきだ。
今がクリケットにとって大きなチャンス」と選手の中には歓迎する声がある
一方で、専門家は「(競技が持つ)本来の良さが失われつつある」

いかに競技の本質を守りながら、国際化の波に乗るか。
残された課題は大きい。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101201ddm035050053000c.html

インタビュー・環境戦略を語る:住友生命保険・佐藤義雄社長

(毎日 12月6日)

メーカーや小売りと異なり、保険という形のない商品を扱う生命保険業界。
住友生命保険は、06年「スミセイ環境方針」を策定し、
環境負荷低減に向け、自然保護活動の支援やボランティア活動などを
積極的に行っている。
佐藤義雄社長に、具体的な取り組みについて聞いた。

--スミセイ環境方針の理念は?

住生は、「豊かで明るい長寿社会の実現」を目指す。
本業である生保事業の公共性や社会的責任を踏まえ、
事業活動を通じて、地球環境問題への対策にも
積極的に取り組もうという姿勢。

--具体的な取り組みは?

◆08年から、石垣島とフィジーで、サンゴ礁保全プロジェクトを始めた。
サンゴ礁は、数多くの生物の貴重なすみか。
石垣島では、サンゴの生育に悪影響を及ぼす赤土の流出を
防ぐための植栽、子供たちへの環境教育、
フィジーでは、サンゴの植え付けをそれぞれ行っている団体に、
社内の基金から毎年寄付。
フィジーでは、今年3月末までに1万5000本以上の植え付けに成功。

--保険の分厚い約款などは紙資源を大量に使う。

◆商品内容を丁寧に説明すると、どうしてもページ数が増える。
住生では、08年から約款をCD-ROM化し、
紙の使用量を年間約400トン削減。
紙の約款も選べるが、CDを選んでもらうと、
契約1件につき10円がサンゴ礁保全プロジェクトに寄付される。
同プロジェクトへの支援額は、基金からの寄付も合わせ、
今年度末で累計約8500万円となる見込み。

お客様への連絡を、封書でなく電子メールで行うサービスも以前から実施、
今年4月から、新規利用1件につき10円を自然保護団体に寄付。

--全国の営業職員による活動は?

営業職員や内勤職員らによる地域ボランティア活動を92年度に始め、
09年度は植林や里山保全、竹林整備など239活動に
延べ2万7267人が参加。
日常的な訪問活動の中、お客様から応援したい
環境・社会貢献活動に投票してもらい、票数に応じ住生が寄付する
キャンペーンも行っている。
サンゴ礁保全プロジェクトには、08~09年度で10万票以上が集まり、
50万円を超す寄付を上乗せした。

--今後の環境対策の方向性は?

◆既存の活動を息長く続けることが大切。
住友のルーツである別子銅山(愛媛県)では、製錬に使う燃料用に
多くの木を伐採し、煙害や洪水の被害が広がった反省から、
積極的な植林に努めた経緯も。
環境を大事にし、地域と共生しようという伝統を引き継いでいきたい。
==============
◇さとう・よしお

九大卒。73年住友生命保険入社。株式運用部長、証券投資部長、
総合法人本部長などを経て、07年7月から現職。福岡県出身。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/12/06/20101206ddm008020054000c.html

総合学習を生かす(10)下級生指導 統率力育む

(読売 12月4日)

四国山地にある高知県大豊町立大豊町中学校。
体育館では、1~3年生の男女15人が、人気アイドルグループ
「AKB48」の曲に合わせて、振り付けの練習中。
「顔も手と一緒に上げて」、「もう一度やるよ」と、
リーダーの3年女子生徒2人が指示を出す。

総合学習の授業で、全校生徒が「演劇」、「アート」、「ダンス」班に分かれ、
1か月先の発表会に向けて、練習や制作活動に励んでいた。

同中の総合学習は、1~3年を混成させた縦割り班で学ぶ。
狙いは、リーダーシップの育成。
リーダーは3年生に限り、なるべく部活動の部長などの
経験者以外の生徒に担当。

どの班もリーダーは複数おり、話し合いや練習など
活動すべてのまとめ役を担う。
ダンス班は、AKBを含めて2チーム、リーダーは各2人いるが、
2チーム合同で踊る「ソーラン」や、全体を統括するリーダーも計3人いる。

矢部喜久校長(56)は、「人を束ねて、一つのものを作り上げるのは大変。
その苦労と達成感を、多くの生徒に学んでほしい

総合学習の授業時間は、学年ごとに年間50または70時間と違うが、
全学年が発表会前に計31時間を集中させたカリキュラムを組む。
リーダーたちに、スケジュールの見通しを持った運営も経験させる。

ダンスの練習後、リーダーたちが、
「いつから『ソーラン』を始めたらいいですか」と質問、
担当の福留雅子教諭(36)は、「それは自分たちで考えないと」と答えた。
リーダーは、練習日程など考えて班を引っ張り、教師はあくまで相談役。

AKBでリーダーを務めた3年松本結里さん(15)と関口凛さん(14)は、
「去年は、先輩の指示に従えば良いだけで楽だった」と、
「踊りを覚えるより、人に教える方が難しい」、
「人をまとめるのは大変」

同中は町内唯一の中学校で、各学年約30人の1クラスずつしかない。
小さな頃から同じ顔ぶれに囲まれ、クラス替えもないので、
新しい人間関係を作る経験も乏しい。
リーダーシップ育成に取り組む背景には、こうした事情も。

卒業生の多くは、高校の部活や体育祭などで、
まとめ役を買って出て活躍している。
矢部校長は、「上級生の自覚が芽生えるだけでなく、
様々な人と作り上げていく力が養われている」と力を込める。

今後の人生の出会いを生かす素地が、総合学習で培われている。

◆縦割り学習

異なる学年の子どもたちが一緒のグループで活動する学習。
異年齢の人間関係を学べる効果がある。
上学年は、下学年の子どもを気遣い、責任を持って活動できるようになり、
下学年が上学年の先輩に対し、あこがれや目標を見いだす機会に。
体育祭や掃除、給食などの活動で行われている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101204-OYT8T00199.htm

ケータイ写真を送るだけでカロリー判定 NTTコミュニケーションズらが「健康増進アシストサービス」の実証実験開始

(日経ヘルス 12月7日)

携帯電話機で撮影した写真を送ると、自動でカロリーを推定して
食事のバランスを判定、記録し、運動量などの情報と合わせて、
食事や運動についてアドバイスする実証実験が、
2011年1月から始まる。

実験を行うのは、携帯電話機向けのアプリケーション開発などを
担当するNTTコミュニケーションズと、インターネット上での
ダイエット・コミュニティ「gooからだログ」を運営しているNTTレゾナント
写真を使った食事記録サービスを提供している
東京大学発ベンチャーfoo.log(フードットログ)の三社。

今回の実証実験の目玉の一つが、携帯電話機で写真を撮影して
メールで送信すると、カロリーや主食、主菜、副菜といった
食事のバランスを推定する「自動カロリー推定」サービス。

センター側は、送られた画像から食事領域を切り抜いて
色や質感(テクスチャー)、料理区分などの特徴情報を抽出、
データベースに登録された過去のデータと比較。
カロリーや料理区分に対するバランスを推定。

料理の種類を推定してから標準のカロリーを呼び出すのではなく、
個々の写真から直接カロリーなどを推定するので、
柔軟性が高く推定の誤差が少ない。

カロリーの推定は、東京大学大学院情報学環・工学部の
相澤 清晴教授が開発した食事画像解析技術を用いる。
今回の実証実験は、カロリー推定の精度向上やデータの蓄積を
目的とし、「カレーライス」などの食事の名称はユーザーが手入力、
将来的には、自動で判定しユーザーが複数候補から選択するなど、
入力の手間も軽減する予定。

もう一つの特徴が、従来個別の機器やパソコンを使って実現していた
複数のサービスについて、携帯電話機を使って一元管理できるようにし、
利便性を高める点。

「自動運動量測定」サービスは、携帯電話機から得られる位置情報や
加速度情報をもとに、ウオーキングなどによるカロリー消費量を算出、
データを自動で保存。

「食事/運動コンシェルジュ」サービスでは、
記録した食事や運動量、位置情報などから、その時点でユーザーに
適したレシピやエクササイズを提案する。
レシピはエルネット、エクササイズはティップネスといったように、
協力企業のコンテンツを利用して提供。

仲間の達成度や食事、運動内容を閲覧して参考にできる
「ソーシャル機能」や、歩数計や体重計といった別の機器とも連携する
「健康機器連携」なども盛り込む。

今回の実験は、1万人程度で行う予定、
まずは2011年1~3月に行うが、様子を見つつ期間は延長する見込み。
今後、モニター登録サイトを開設し、モニターには無償で
専用アプリケーションを提供。

このアプリケーションは、Google社の開発したOS「Android」を搭載した、
アンドロイドケータイ向けのもの。
Apple社の「iPhone」向けにも対応する予定、
一般的な携帯電話機への対応は未定。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20101129/109381/

2010年12月10日金曜日

読解力回復 数学、科学上位維持 PISA結果で判明

(サイエンスポータル 2010年12月8日)

国際的に見劣るとされていた15歳生徒の読解力が
3年前より向上、9年前のレベルに回復していることが、
経済協力開発機構(OECD)が公表した
国際学習到達度調査(PISA)結果から明らかに。

PISAは、OECD加盟国と調査実施基準を満たす参加希望国・地域を
対象に、2000年から3年おきに実施。

文章を理解、利用、熟考する能力を問う読解力、数学的根拠に
基づいて、判断できる能力を問う数学リテラシー、
科学的知識を使用し、証拠に基づく結論を導き出す能力を問う
科学リテラシーの3分野について、15歳を対象に抽出試験を行う。

各回3つの試験のうち、1つが重点分野とされ、
今回は読解力が他の2分野に比べ、倍の試験問題が受験者に課された。
前回、読解力が重点分野だったのは2000年で、
この年との比較が最も重視。

今回の調査は、09年に実施。
日本の15歳生徒の読解力平均得点は、統計的有意差を考慮すると
上海、韓国、フィンランド、香港より下だが、
シンガポール、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、
オランダとほぼ同じ、上位4カ国・地域の次に位置。

3年前06年の調査結果では韓国、フィンランド、香港、カナダ、
ニュージーランド、アイルランド、オーストラリア、リヒテンシュタイン、
ポーランド9カ国・地域より下位、
グリアOECD事務総長から、「文章情報を取得し、処理し、統合し、
評価することが最大の課題」と評された。

今回の調査結果は3年前に比べ、明らかに読解力の向上を示しているが、
読解力が重要分野とされた2000年の調査結果に比べ、
「統計的有意差はない」。

2000年の調査では、「1位のフィンランドとは統計的に有意差が認められるが、
上位2位グループに位置する」という結果、このレベルに回復。

数学リテラシーの平均得点は上海、シンガポール、香港、韓国、台北、
フィンランドに次ぐグループで、科学リテラシーは上海、香港、
フィンランドにつぐグループに入っている。

いずれも前回、重点分野だった調査年(数学は03年、理科は06年)に比べ、
調査結果に「統計的有意差はない」とされた。
数学リテラシーは03、06年とも高いレベルを維持していると評価。

科学リテラシーについて、「科学的知識を再現し、科学的証拠を
解釈することにより、結論を導く能力は高い」と評価、
「科学的に探ることができる問題を認識し、科学的探求に必要な要素を
見つけ出すのは苦手」とOECDから指摘。

数学、科学リテラシーとも明確な経年比較は、
それぞれが重点分野となる次の調査結果(数学2012年、科学2015年)を
見ないと分からない。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012082.html

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/1

(毎日 11月30日)

中国・広州で開かれた第16回アジア大会は、27日に幕を閉じた。
大会規模は過去最大に膨れあがり、競技では中国が200個に
あと一つに迫る金メダルを獲得。
インドなど新興国の台頭や、国境を越えて流動化する指導者たち、
ビジネス化を図って五輪入りを狙う競技など、新しい動きもある。
中国や韓国に押され、成績不振が目についた日本の今後は--。
大会中に連載した「大河流れて」の総集編として、
今大会を通じて見えてきたアジアスポーツの姿に迫る。

◇ジャイアント・チャイナ

「メダル数で、中国の国力の強さを示した。
独占しているわけではなく、韓国やインドもスピードを持って成長」
アジア大会最終日の27日、大会で史上最多の199個の金メダルを
獲得した中国選手団の段世傑団長は、総括会見で誇らしげに。

同じ時刻、隣の会見場では、前回よりも金メダルを減らした
日本の選手団も会見。
ロイター通信の記者から、「アジア大会は、中国の国内大会
みたいではなかったか」という質問に対し、日本の市原則之団長は、
「中国は非常に強くて、我々は脅威を感じている」と、
率直な意見を述べるしかなかった。

中国は、08年の北京五輪で金メダル51個を獲得、
米国や旧ソ連などに代わって、世界一のスポーツ大国にのし上がった。
全国の体育技術学校を軸に、優秀な選手を集める有名な強化策に加え、
経済の急速な発展を背景に、北京五輪後も外国人指導者の数を
増やすなど、強化への意気込みはまったく弱まっていない。

◆施設規模でも力量

2年前と異なるのは、五輪や世界選手権に出場する

「競技スポーツ」に加え、市民へのスポーツの普及を強調したこと。

中国の新しいスポーツ振興策の一つとされ、
一部のエリート競技者のものでしかなかったスポーツを、
国民に広く普及させようとしている。
段団長は、「さまざまな種目でメダルを取ることは、
国内スポーツの多様性に寄与する。
これまでは、中国のスポーツ文化は低かったが、
若者のスポーツ志向は高まっている」

史上最大規模になった今大会。
施設の規模も、中国のパワーを見せつけるものだった。
バスケットボール会場となった広州国際スポーツアリーナは、
3階までで1万7000人の観客席。
中心地近くにある陸上会場の奥体スタジアムは、
中国の英雄、劉翔が出場した110m障害決勝の時は8万人を収容。

五輪をしのぐような巨大施設の数々に、日本オリンピック委員会の関係者は、
「これを見たら、もう日本でアジア大会を開こう、という都市は
ないんじゃないか」と、冗談とも本気ともとれる口調で話した。

◆仁川も拡大路線か

今大会中、アジア大会の開催をめぐっては、競技を削減したい
アジア・オリンピック評議会(OCA)と開催地の間で、対立が起きた。

OCAは、今大会から実施競技数を減らす方針、
それも広州の意向で実現せず、今大会中に協議した次回の
14年仁川大会でも決定は先送り。

オイルマネーが支えになった前回のドーハ大会に続いて、
広州が巨大市場という資金力をバックに拡大路線を貫いたため、
OCAのアーマド会長は、「(実施競技の)プログラムは、
開催都市が関心を持っているものを入れていけばいい。
開催地が資金を出すのは、その後のインフラ投資にもなる」と、
拡大容認ともとれる発言まで飛び出した。

運営規模、競技力ともに世界トップの力を見せたアジアの巨人、中国。
2年後のロンドン五輪、その後は何に向かおうとしているのか。

段団長は、気になる発言をしている。
「北京五輪で、中国はスポーツ大国になったが、
ロンドン五輪ではスポーツ強国を目指す。
中国のスポーツ力をアピールすることによって、
中国人が持っている素晴らしさを見習ってもらえるからだ」
まるで、スポーツで世界を支配しようというようなコメント。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/30/20101130ddm035050051000c.html

4期16年、甘竹大船渡市長が退任 和やかに見送り

(岩手日報 12月3日)

大船渡市の甘竹勝郎市長(67)の退任行事は2日、
同市役所で行われた。

職員や市民約300人から、4期16年のねぎらいを受け、
庁舎を後にした。

甘竹市長は、退任記者会見で、
▽旧三陸町との合併
▽重点港湾指定
▽リアスホール整備
▽全国海フェスタ開催
▽財政改革―
を成果として挙げ、「職員と市民の協力でやろうとしていたことは
ほぼ達成できた。日々全力投球で、充実感でいっぱい」と心境。
最も緊迫したのは、今年2月のチリ大地震に伴う大津波警報の発令。
今後は、晴耕雨読の生活を送ると言い、
「市民は大船渡に自信を持ち、羽ばたいてほしい」と願った。

見送りセレモニーは、甘竹市長のおはこで、
同市出身の歌手新沼謙治さんの「三陸・大船渡」が流れる中、
職員が胴上げするなど、和やかな雰囲気。
贈られた花束を高く掲げ、別れを告げた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101203_7

総合学習を生かす(9)就業体験 学ぶ意欲に

(読売 12月3日)

さいたま市内の美容室。
緊張した様子で洗髪しながら、「力加減はどうですか」と聞くのは、
埼玉県立蓮田松韻高校(蓮田市)1年の古川亜依さん(15)。
見守る美容師の坂巻裕美さん(39)から、
「左右の手の力加減を同じにするため、両ひじは突き出して」、
「耳に水が入らないよう手で押さえて」など細かい注意。

同高の1年生は全員、総合学習で就業体験に臨む。
古川さんは、やはり美容に興味のある同級生の中谷馨さん(15)と
2人で5日間、美容室に通った。
仕事は掃除などの雑用だが、洗髪なども教えてもらい、
最終日のこの日は、佐藤智明教頭(47)を実験台に成果を試していた。

「髪を洗うのが、こんなに大変と思わなかった。腰も痛い」、
「タオルの巻き方も、細かい配慮があった」と苦労を語る2人。
坂巻さんは、「華やかさややりがいの一方で、厳しさもあることを
学んでもらえたのでは」

就業体験は、前身の旧県立蓮田高校時代の4年前、
中途退学者の減少を目指して始まった。
柿岡文彦校長(59)は、「働く厳しさを知り、自分の将来を
具体的に見つめ、高校で学ぶ自覚を持ってもらうため」と狙い。
生徒の大半が、就職や専門学校進学を希望していることもあり、
受け入れ先には、「見学ではなく、就労させてほしい。
厳しい指導も結構です」と依頼。

当初12%を超えた退学率は半減したが、目的意識がないまま
入学する生徒は依然多く、就業体験も一筋縄には行かない。
「あいさつができない」、「働く意識が低い」などと、
その後の受け入れを拒否されたことも。

今年は、1年生234人がスーパーや農家など74か所に行ったが、
福祉施設に行ったある生徒は、休憩するよう指示され、
職員に声をかけられるまで、2時間も部屋から出てこなかった。
仕事に戻るよう指示がなかったからだと。

とはいえ、効果は少しずつ表れている。
佐藤教頭は、「社会の厳しさを知り、生徒の多くが
高校はきちんと卒業しようと考えるようになる。
将来のことを、親子で話すきっかけにもなっている

修理工場で、計器の修理をした横山勇斗さん(16)は、
「ずっと同じ作業でつらかったが、どの仕事も責任を持って
やらなければいけないということが分かった」

働く尊さを知ることが、意欲ある高校生活につながっている。

◆就業体験

学生が在学中に、民間企業などで就業を体験すること。
インターンシップともいう。
国立教育政策研究所の調査によると、2009年度は
全国の公立中学校の約95%、高校(全日制・定時制)の約71%が実施。
中学校は、「原則として全員参加」だが、体験した高校生の割合は
全体の約29%にとどまっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101203-OYT8T00195.htm

2010年12月9日木曜日

日立がHDDやエアコンからレアアース回収技術開発

(サイエンスポータル 2010年12月7日)

使用済みのハードディスクドライブ(HDD)のモータやエアコンなどの
コンプレッサーから、レアアース磁石をリサイクルする技術を、
日立製作所が開発。

コストや回収率を試算した上で、2013年をめどに
リサイクルの本格稼動を目指す。

レアアース磁石は、強い磁力を持たせるためネオジムを、
耐熱性能向上のため、ジスプロシウムを鉄に加えた合金。
ネオジム、ジスプロシウムはレアアースと呼ばれ、
産出量の約97%を中国が占め、
資源確保の観点からにわかに大きな問題。

日立が開発した技術は、レアアース磁石の分離・回収の効率が
HDDの場合、現在の手作業より約8倍高く、従来、分解が困難だった
コンプレッサーについても、新たに切断装置や脱磁装置などを開発し、
高効率で安全な分離・回収を可能。

HDDの分解装置は、振動を与えてネジをゆるませる方法を採用。
コンプレッサーは、切断装置と抜き取り装置で、
レアアース磁石を含むローター(回転子)を分離、
その後振動を与えてレアアース磁石だけを分離・回収する。

レアアース磁石からのネオジムとジスプロシウムの抽出は、
岡部徹・東京大学生産技術研究所教授との共同研究で、
酸などの化学薬品を使わない、新たなレアアース抽出技術の実験に成功。

ネオジムやジスプロシウムと親和性の高い特定の抽出媒体を用い、
最終的に加熱して抽出媒体を蒸留させることで、
レアアースの合金だけを取り出すことができる。

この技術開発成果は、経済産業省の
「平成21年度新資源循環推進事業費補助金
(都市資源循環推進事業-高性能磁石モータ等からの
レアアースリサイクル技術開発)」を受け、
昨年10月から開発を始めた結果、得られた。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012071.html

インタビュー・環境戦略を語る:キリンビール・松沢幸一社長

(毎日 11月29日)

キリンビールは今年、自然環境保護のため、
12年のCO2排出量を、90年比で60%削減する目標。
食品メーカーにとって、環境保護活動は、消費者の環境志向に
応えるとともに、原料の天然資源の保全にもつながる。
計画の旗振り役である松沢幸一社長に聞いた。

-意欲的な目標を掲げている。

◆環境に対する社会の意識が変化し、企業は商品を販売して
利益を得るだけでは通用しない時代に。

環境保護活動は、「経営課題の一つ」との認識のもと、
ビール製造などと同じ「事業」として取り組むことにした。
環境保護のための設備更新など投資も必要になるので、
経営陣でリーダーシップをとっている。

-具体的な取り組みは?

◆製造、物流などそれぞれの段階で、CO2排出削減に取り組んでいる。
製造部門では、仕込み工程などで使用するボイラーを、
効率の良い小型のものに変え、燃料も重油からCO2排出量の少ない
天然ガスへの転換を進めている。

今年1月、約200億円を投資して最新設備を導入した
滋賀工場(滋賀県多賀町)は、使用するエネルギーも従来の約3分の1。
各工場で節水にも取り組んでおり、以前はビール1Lを作るのに
15L必要だった水が、現在は6Lで済む。

-配送、物流面では?

◆今年6月から、仙台工場から青森、秋田県の卸業者への
出荷は、トラックから貨物列車を使うモーダルシフトに切り替えた。

今年から一部の地域で製缶メーカーと協力し、製品を詰める前の空缶を
運んできたトラックに製品を積んで帰ってもらうようにした。
トラック輸送を、なるべく減らすように努力。

-自然保護にも取り組んでいる。

◆99年から、ビールの水源となる森林を保全するため、
工場の上流や周辺の森林の計17カ所で、植林活動に取り組んでいる。
社員だけでなく、地域の方々にも協力してもらい、
植林や樹木の枝打ちなどを行っている。
この活動は、参加した社員のエコ意識向上にも役立っている。

-今後取り組みたい活動は?

◆環境省が、環境保全に積極的に取り組む企業を認定する
「エコ・ファースト企業」に、08年に製造業として初めて選ばれた。
現在、エコ・ファースト企業で作る「エコ・ファースト推進協議会」の
議長を務めている。

協議会には、ビックカメラやユニーなど、さまざまな業種の企業が
参加し、加盟企業で業界を超えたキャンペーンなど、
共同事業を展開できればと考えている。
==============
◇まつざわ・こういち

北海道大大学院農学研究科修士課程修了、73年キリンビール入社。
常務生産本部生産統轄部長、キリンホールディングス常務などを経て、
09年3月から現職。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/11/29/20101129ddm008020006000c.html

総合学習を生かす(8)地元PR 自作パレード

(読売 12月2日)

「ほいっと、ほいっと」のかけ声とともに、
浴衣や法被姿の中学生たちが歩く。
観光名所で知られる京都・嵐山のふもとにある中ノ島公園。
京都市立嵯峨中学校の生徒約250人が、恒例のパレードを行った。

約2・5kmを3時間近くかけて歩き、太鼓の演奏やダンスを披露したり、
10年前の第1回から引き継がれる手作りのみこしを担ぎ出したり。
5月に行われる伝統の「嵯峨祭」に似ているが、
こちらは生徒たちがメッセージを掲げている。
実はこのパレード、同中の総合学習の発表の場の一つ。

総合学習では、3年の時、「嵯峨嵐山に人を呼ぼう」をテーマに、
観光振興や環境保全に1年間かけて取り組んでいる。
パレードで、生徒が手にするのぼりに書かれた
「古都の風 京の誇り 今 返り咲く」、
「京の都 我らが誇る 嵯峨の町」などの標語は、各組ごとに考えたもの。

沿道の人に再生紙で作ったはがきを配ったり、沿道のゴミを拾ったりと、
様々な方法で、「観光」と「環境」を訴えた。

多くの観光客がカメラを向けるパレードでは、生徒一人ひとりが主役。
「校外でのPRは、生徒の自信につながる」と宮崎幹也校長(58)。
3年の仲北大朗君(15)は、
「僕たちの活動が、観光の一端になったらうれしい」

パレード以外の校外活動も好評。
環境保全では、大堰川にかかる渡月橋の近くで、
外来種の水草オオカナダモの除去やゴミ拾いを行う。
観光振興では、地元の商店街と協力し、毎年数量限定で
土産物の新商品を企画。

昨年度は、舞妓さんの顔を絵柄にしたポーチ「舞ポーチ」(1000円)
300個を完売、生徒たちは確かな手応えを感じた。

約10年前の同中は、校内暴力などで荒れていたが、
地域と連携した総合学習で改善した。
みこしを指導してくれる嵯峨祭奉賛会のメンバーなどとの交流が、
地域への誇りを高めるなど、生徒の意識変化をもたらした。

「人のためになっている」という「自己有用感」は、
学習面でも効果をもたらし、全国学力テストでは平均点を上回る。
今では、家庭で学校の出来事について話す生徒も多く、
アンケートでは全国平均57・8%に対し、63・1%、
特にパレード後の11月は65・1%に上る。

観光地を盛り上げる取り組みが、確かな学びにつながっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101202-OYT8T00167.htm

水沢鋳物組合が台湾出展へ 今月の国際博覧会

(岩手日報 12月2日)

水沢鋳物工業協同組合(及川敬理事長)は、
台湾・台北市で開かれる台湾国際茶葉博覧会に、
南部鉄瓶を出展する。

企業単位で海外の商談会に参加する例はあるが、
組合として国際博覧会に出展するのは初めて。
同博覧会は、茶や茶具などを展示販売、商談を行う事実上の見本市。
茶湯に適した南部鉄瓶は台湾や香港、中国で人気が出ており、
アジア戦略を加速させる。

同組合が出展するのは、南部鉄瓶80点、急須30点の計110点。
展示販売のほか、現地の茶業者との商談をメーンに、
茶湯に適した製品の魅力を現地のバイヤーなどに売り込む。

同組合によると、南部鉄器は台湾の出版社が同組合などを
取材して発刊した冊子のPR効果で、知名度を上げている。
6月、東京都内で開かれた見本市でも、鉄瓶は例年以上に
台湾人のニーズが高かったため、今回の出展に踏み切った。

今年の上海万博では、県と中国上海市の上海大可堂茶業有限公司、
雲南省プーアル市の3者の共同ブースで、プーアル茶に適した
南部鉄瓶を世界に発信。
アジアで、人気は高まりつつある。

「南部鉄器は、本県の海外展開の重要品目」
(福沢淳一県産業経済交流課総括課長)だけに、
組合として海外に打って出る試みが注目。

博覧会は24日から3日間、台北市内の展示ホールで行われ、
数万人の来場が見込まれる。
同組合は、及川理事長ら6人がセールス展開する計画。

同組合の後藤安彦事務局長は、
「この機会に台湾、中国、香港で人気が高まっている南部鉄瓶を
大いにPRし、販路拡大したい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101202_5

2010年12月8日水曜日

糖尿病の「元」、突き止めた…京大チーム

(2010年12月6日 読売新聞)

血糖値を下げるインスリンの分泌や働きを妨げ、
糖尿病発症の原因になる体内物質を、
京都大ウイルス研究所の増谷弘准教授、吉原栄治研究員らが突き止め、
科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表。
この物質を減らす薬を開発すれば、新薬として期待できる。

この体内物質は、細胞の核にあるTBP2というたんぱく質。
吉原研究員らは、遺伝子を操作してTBP2を持たないマウスを誕生。
マウスは、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンの量が
約1・5倍に増加。
いくら食べて太っても、血糖値が正常に保たれ、糖尿病にならなくなった。

普通のマウスは、3日間絶食させても平気だったが、
TBP2を持たないマウスは9割が死んだ。
TBP2は、食べるものがなくても血糖値が下がりすぎないようにし、
生命を維持するために働いているらしい。

増谷准教授は、「かつては生存に欠かせない物質だったが、
飽食の時代を迎え、病気の原因になってしまったのだろう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/6/129367/

いのちの灯文化賞 旧沢内村の高齢者医療費無料化半世紀を記念 NPOが創設

(2010年12月4日 毎日新聞社)

故深沢晟雄村長の下、旧沢内村(現西和賀町)が、
高齢者の医療費無料化を実施、今年で50年を迎えたことを受け、
同町の2NPO法人が、生命を尊重する活動をしている
個人や団体に贈る「いのちの灯文化賞」を創設。

第1回の受賞者には、一関市在住の作家で、
伝記「村長ありき」等の著作を通じ、深沢氏の理念を全国に伝えた、
及川和男さん(77)が選ばれた。

賞を創設したのは、輝け「いのち」ネットワークと、深沢晟雄の会。
1961年、60歳以上と1歳未満の乳児の医療費を無料化し、
翌年には全国の自治体で初めて乳児死亡率0を達成するなどした
事績の伝承などをしている両団体が、今年1月ごろから検討を始めた。

いのちネットの高橋典成理事は、児童虐待死や自殺の増加などの
問題から、「自分の力だけで生きていけない人たちに、
手を差しのべられない社会になってきている」
表彰を、命を大切にする社会をつくるきっかけにしようと考えた。

初回の受賞者には、著作で深沢氏の実績を広めたことを評価し、
及川さんを選んだ。

及川さんは、県内で銀行員をしながら同人誌などに寄稿していた
60年代初め、旧沢内村の業績を知った。
自身も、県北の無医村で幼少期を過ごしたことから感動。
「いつか深沢村長について本を書きたい」と思うようになった。

銀行を退職後、82年から約2年をかけて取材を重ね、
「村長ありき」を書き上げた。
出版社を変えながら3度出版、多くの読者を獲得し、
深沢村長の奮闘を描く映画「いのちの山河」(09年)の原作に。

授賞を受けて、及川さんは、「人間の生命が軽く扱われるようになった
現代社会では、生命尊重はより重要度を増している。
今後も沢内の理念を広げたい」
授賞式は4日午後1時から、西和賀町沢内の「深沢晟雄資料館」で。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/6/129314/

総合学習を生かす(7)地域ボランティアが講師

(読売 12月1日)

伊達政宗の正室・愛姫、自由民権運動で知られる
元衆議院議長の河野広中……。
郷土の偉人ゆかりの史跡の写真が、スクリーンに映し出される。

福島県三春町立三春小学校6年生の総合学習の時間で、
「三春の歴史を学ぼう」と題した授業。

講師を務めたのは、平安時代の将軍、坂上田村麻呂伝説を生かし、
地元の田村郡で観光振興に取り組む田村歴史観光協議会副会長の
影山勝夫さん(66)。
戦国時代から現代に至るまでの歴史を、1時間以上も熱っぽく語り、
「54年前、自分も地元の人から城下町・三春町のことを習った。
みなさんも、三春町を誇りにしてください」と訴えた。

同小が掲げる総合学習のテーマは、「三春大好き」で、
学年別に郷土・福祉(3年)、国際理解(4年)、自然・環境(5年)と
切り口が違う。
6年生は、歴史・文化という視点の
「これまでの三春町を見つめて未来を考える」

総合学習を支えているのは、地域ボランティア。
昨年度は100人以上の校外講師が、戦争体験を語ったり
伝統の太鼓を指導したりした。

講師の話は教科書より説得力があり、児童だけでなく
教師も勉強になると好評。
高橋正美校長(58)は、「講師は総合学習に欠かせない存在。
街の色々な人と児童がかかわりを持てる」

100人を超える地域ボランティアの人選を行うのは、
「三春小学校学習支援ボランティアコーディネーター会」(通称サンボラ)。
「学校で教えたい」と思っていた地域のボランティアが、
2003年の総合学習開始に合わせて作った組織。

サンボラは、PTAや地域の学識経験者で作る学校運営協議会とは
別組織で、現在のメンバー10人は元PTAや町のボランティア関係者。
教師と一緒に、年度初めに年間計画を立てた後、
奇数月の第3火曜日に会合を開き、総合学習の授業内容を練り、
校外から招く講師の人選を行う。

設立当初からサンボラという降矢由美子さん(60)は、
「児童から手紙をもらったり、町であいさつされたりする。
参加するのは楽しい」
総合学習の講師は人気で、お呼びがかからないと、
「何で声がかからないのか」とボランティアから電話がかかることも。

地域のボランティアの積極参加が、総合学習を実りの多いものにしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101201-OYT8T00263.htm

コンビ、乳酸菌EC-12にインフルエンザに対する有効性を確認

(日経ヘルス 11月5日)

ベビー用品などの開発・販売を行うコンビは、
同社開発の滅菌乳酸菌EC-12に、インフルエンザウイルス感染後の
治癒促進効果を確認。

富山大学大学院医学薬学研究部生薬学研究室の林利光教授との
共同研究で、食品開発展2010で発表。

EC-12は、乳酸菌の一種、フェーカリス菌を殺菌処理したもの。
これまでにヒトを対象とした試験で、整腸作用、免疫賦活による
アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎などの改善作用が確認、
動物試験でリステリア菌や薬剤耐性菌などに対する有効性も報告、
この乳酸菌を配合した食品は、
ロート製薬や久光製薬など数社から販売。

今回の研究は、インフルエンザウイルスに対する有効性を
確認するためのもの。
EC-12を投与したマウスをA型インフルエンザウイルス(H1N1型亜型)に
感染させ、その後の体重の変化、肺や気道のウイルス量、
抗体の産生量などを測定。

マウスは、感染7日前から感染後7日目まで「EC-12を1mg投与した群」、
「EC-12を5mg投与した群」のほか、「何も投与しなかった群」、
「感染後に抗インフルエンザ薬オセルタミビルを投与した群」も観察、
マウスは各10匹ずつ。

その結果、オセルタミビル以外の3群では、感染3日目から
体重減少が見られ、EC-12を投与した2群は非投与群に比べ、
体重減少が少なかった。
非投与群では、その後も体重減少が続いたのに比べ、
EC-12群では4日目から体重回復の傾向。

感染3日後、気道を洗浄してウイルス量を比較、
EC-12投与群では非投与群に比べ、有意にウイルス量が少なかった。

これらの結果から、「EC-12がウイルスの増殖を抑制したと考えられる」と
同社ファンクショナルフーズ事業部営業管理グループ技術担当の
伊地知哲生主任。

感染から14日後、気道中のウイルス中和抗体価を調べたところ、
EC-12を5mg投与群の抗体価は、非投与群やオセルタミビル投与群に比べ、
有意に高い。

EC-12が、ウイルスに対する抗体産生を高めた可能性がある。
ウイルスが体内である程度増殖すると、それに対抗するため、
体内で抗体が作られる。
抗インフルエンザ薬は、感染直後にウイルス増殖を強力に抑制、
抗体価はさほど上がらなかった。
さまざまな感染症を予防するという視点では、
EC-12のような免疫を賦活する食品成分の利用が有効なのでは」
(伊地知主任)と、今後の需要拡大が期待。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20101105/109129/

2010年12月7日火曜日

スポーツ政策を考える:高峰修・明治大准教授(スポーツ社会学)

(毎日 11月27日)

国家戦略として、スポーツの振興に取り組むのは世界的な流れで、
日本も対応せざるを得ない。
このままでは取り残されてしまう、という危機感が行政にあり、
経済に代わる成長のツールとして、スポーツが注目されている。

日本は、スポーツを欧米から文化として輸入。
ボールを投げたり、けったりという行動レベルではまねできても、
背景にある理念、哲学などが理解され、
国民の間に根付いているとは言い難い。

今までの文部科学省の政策やスポーツ立国戦略を見ると、
トップアスリートが世界的レベルの大会で活躍することに、
ポイントが置かれている。
それも哲学だろうが、倫理的な面に配慮せず、
競技力の向上ばかりを追い求めることに疑問を持っている。

日本スポーツとジェンダー学会のメンバーと、
「スポーツ指導者と競技者のセクシャル・ハラスメントに関する
認識と経験の現状と特徴」と題する合同調査を実施。

都道府県体協に登録している指導者と国体レベルの選手を対象に、
暴力を含む反倫理的行為とセクハラになりうる行為についての
意識や体験を尋ねたところ、実際に体罰や暴力は行われていて、
そうした行為を受けた選手のうち、2割以上が容認する一方で、
「足でける」などの行為を受けた選手の半数以上は
受け入れられないと答えていた。

スポーツ指導の現場では、暴力行為が許されるという認識が
指導者や選手だけでなく、保護者たちにも共有。
愛情が伴えば「愛のムチ」であり、国のトップレベルや国際レベルに
到達するためには必要である、というのが肯定側の主張。

全員ではないが、そこを通過した選手たちがオリンピックや
世界選手権に出場して活躍。
競技団体は問題解決に消極的で、触れようとしない。
そういった現状にメスを入れないままのスポーツ振興でいいのか?

日本の多くの競技団体は、人員的にも財政的にも余裕がなく、
いきなり倫理問題について考えて取り組むように、と要求するのは
現実的ではない。

豪州やカナダ、フランスなどのスポーツ政策と倫理や
人権に対する取り組みを調査したうえで、
競技団体がすぐに活用できるような形で情報を収集し、
まとめて提供したいと考えている。

すでに豪州は、スポーツ行政の中心的役割を担っている
スポーツ委員会(ASC)がホームページ上で、
規約文書のひな型などを公開。

倫理の問題や人権の問題への目配りを欠いたまま、
立国戦略が進んでいくことを危ぶんでいる。
それは一部の人たちの利益になるかもしれないが、
必ずしも国民全体の幸せにつながるとは思えない。
==============
◇たかみね・おさむ

1968年生まれ。中京大大学院修了。
編著に「スポーツ教養入門」(岩波書店)。
日本スポーツとジェンダー学会事務局長。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/27/20101127dde035070057000c.html

総合学習を生かす(6)論文議論で批判力養う

(読売 11月27日)

京都市立堀川高校の「探究科」では、総合学習の時間で、
2年生の秋までに、生徒一人一人が論文を書く。
カタバミ科の植物についてまとめた佐野みずほさん(17)は、
論文提出直前の9月中旬、保護者や教育関係者を招いて開かれた
研究発表会が忘れられない。

「カタバミが葉を閉じるのは、体温やエネルギー維持のためだと
考えられます」。
考えを尽くして導き出した仮説だったが、参加者から
思いもしなかった質問が飛んだ。
「食べられないように身を守る動きとは考えられませんか」

予想外の指摘に、「確かに……」と答えるのが精いっぱい。
その場では、賛同も反論もできなかった。

発表会後、考えた末に提出した論文には、指摘を反映させ、
「捕食者から身を守るため」と付け加えた。
「授業で先生や同級生から、研究方法などについても
何度も指摘を受けた。
『自分は何も知らないんだ』とわかり、もっと学びたいと思った」

同高は1999年、学校改革の目玉として「探究科」を新設。
総合学習を「探究基礎」と銘打ち、物事を多角的に考え、
意見やリポートを批判し合う指導を始めた。
1年生から国際文化や心理・教育、生物など10分野に分かれ、
データ収集や実験方法などをゼミ形式で学習。
2年生は、一人一人がテーマを設定して実験や研究をする。

生徒有志で、論文の冊子化などに取り組む「探究基礎委員会」の
委員長で2年の富森大地さん(16)は、
「この考えや情報は本当に正しいのかと、常に批判的に見るようになった。
自分で答えを探すのは、しんどいけれど楽しい。
一言で表すと、『たのしんどい』ですね」と笑う。

卒業生で、哲学を研究している京都大学文学部3年の
飯島弘一郎さん(21)は、「高校で、学びは尽きないということを学んだ。
型にはまった常識を疑うことや、問い続けることなど、
自分の可能性を広げてくれた」

「生徒たちが卒業後に進む社会でも、
答えがすぐに見つかることばかりではない」、荒瀬克己校長(57)。
「非難ではなく、批判的に見る力は、自分で考え、
課題に立ち向かうのに不可欠」

8年前、国公立大学への進学実績を急伸させ、「奇跡」とまで称された。
その土台には、主体的に考え学ぶ厳しさと楽しさを伝える教育が、
今もしっかりと息づいている。

◆【論文テーマの例】

▽「ライトノベルがなぜ人気なのか」
▽「イギリス料理が不味いと言われる理由」
▽「なぜ信号無視をするのか」
▽「乳児はなぜかわいいのか」
▽「クモの糸の強度」
▽「植物の葉からプラスチックはできるか」
▽「電磁波は聞こえるのか」
▽「使い捨ておむつの再利用は可能か」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101127-OYT8T00205.htm

温泉健康効果を知る 効能以外に休養、運動効果 体に悪い場合も

(2010年12月3日 毎日新聞社)

世界有数の温泉数や湧出量を誇る温泉大国日本。
寒さが増すこれからの季節、癒やしを求めて温泉地を訪れる人も多い。
硫黄や硫酸など多様な泉質を持つ温泉は、
どれだけ健康に影響があるのだろうか?

温泉のもととなる地下水には、土や岩石からいろいろな物質が
溶け込んでいる。
温泉と呼ばれる条件は、温泉法で定められている。
・水温が25度以上
・硫黄やラドンなど19種類の物質のうちどれか一つを基準以上含む
のどちらかの条件を満たしているもの。
水温が低く、25度未満のものは「冷泉」。

国内の温泉地は約3000カ所、源泉数は約2万8000カ所(08年度)。
温かい湯につかるだけでも、新陳代謝が促され、
疲労回復が図れるほか、水圧の影響で心臓が圧迫され、血行もよくなる。

国の鉱泉分析法指針は、温泉の基準を満たし、
療養効果が期待される温泉を、「療養泉」として分類。
環境省の委託を受け、日本温泉気候物理医学会が06年に
温泉の効能についての報告書を作成。

同省は、「治療による医学的な効果は法律上、保証しておらず、
医師に任せている。
個人的な利用による健康への効果は、多くの実証例がある」

科学的に温泉の健康効果を検証している一般社団法人
「健康保養地医学研究機構」代表理事の阿岸祐幸・北海道大名誉教授
によると、温泉に含まれる成分が皮膚から吸収され、
皮膚や筋肉などの細胞、神経に作用する。

カルシウムやマグネシウムなどは、腫れや痛みを抑える働きがあり、
皮膚病や切り傷、やけどなどに効き目。
胃腸薬にも使われている重曹を含む温泉を飲むと、
薬と同様の効果も期待。

泉質だけでなく、温泉には休養や運動の効果も期待。
温泉は山の中など、豊かな自然に囲まれている場所に多くある。
日ごろ過ごしている場所と環境が変わることで、
気分転換になったり、ストレスを減らす効果。

熱い湯に入った後、皮膚の表面から汗や水蒸気が発散し、
蒸発によって気化熱が奪われる。
1g(1ml)の水が気化すると、約0・5kcalの熱が奪われる計算から、
高温の入浴で300mlの汗を流せば、150kcalの消費に達する。
これを脂肪(体重)に換算すると、約16g減少。

持病や体質によっては泉質の成分と合わず、体に悪い場合も。
温泉に入れば体力を消耗するため、体調が悪い人が入れば、
症状が悪化することも。
高齢者は、温度に対する皮膚の感受性が低くなり、
熱さを感じにくくなることもあり注意。

環境省も、「温泉地に書いてある成分や入ってはいけない禁忌症などの
説明に注意してほしい」

温泉の効能で最も議論があるのが、放射能泉。
全国に「人工ラドン温泉センター」などの施設もあり、
体の芯から温まると感じているファンも多いが、
放射線被ばくを心配する人も。

日本温泉気候物理医学会は、07年に環境省へ提出した報告書で、
ラドンの影響を調査するため、三朝温泉(鳥取県)のサウナと
実験用ラドンサウナ、ラドンを含まないサウナを比較し、
20~40歳の男性15人を対象にした実験結果を紹介。

ラドンの濃度に応じて5日目以降、血糖値を下げるインスリンなどの
血中物質が有意に増加。
「ラドンは高血圧、関節の痛み、糖尿病の改善に有用」と結論。
環境省も、「自然に含まれるラドンのレベルは極めて低く、
健康な人には有用と考えている」

放射線の被害防止を訴える市民団体「高木学校」の
崎山比早子医学博士は、「放射線による健康増進の科学的根拠は乏しい。
医療検査は別として、できるだけ浴びない方がいい」

阿岸名誉教授は、「温泉の効能について、これまで経験的なものが多く、
放射能泉を代表に議論も多い。
温泉大国として、予防医療への利用を進めるためにも、
積極的な研究で、科学的にしっかりした根拠を示す必要
………………………………………………………………………………
《代表的な療養泉と効能》

<療養泉>      <効果>                <禁忌症>
・単純温泉    免疫調整、脱ストレス 不眠症
 ※歴史的な名湯が多い
・二酸化炭素泉 血流循環の改善、保温、抑うつ改善  (飲用)下痢の時
・塩化物泉    保温、抑うつ改善             (飲用)腎臓病、高血圧症
・硫黄泉     婦人心身症改善、関節炎、        皮膚、粘膜の過敏な人
          皮膚疾患に適応 
・放射能泉    免疫調整
・炭酸水素塩泉 循環促進、保温、冷え性
・硫酸塩泉    塩化物泉と同じ。脱ストレス       (飲用)下痢の時
・酸性泉     かゆみ軽減、皮膚炎
(日本温泉気候物理医学会の06年度報告書などから作成)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/3/129254/

ATP合成酵素 岩手医大、仕組み解明 秒単位で回転・停止

(2010年12月3日 毎日新聞社)

岩手医大薬学部と米バージニア大医学部の共同研究グループが、
生命活動のエネルギー源となる物質「ATP)」を生み出す酵素が、
自ら回転と停止を繰り返す仕組みを持つことを発見。
将来、がん細胞などの増殖を抑える医薬品の開発に役立つ
可能性がある。

ATPは、糖を分解してエネルギーに変える過程に作られる。
生物は筋肉などの部位で、ATPを分解することで
生命活動に必要なエネルギーを得ている。

ATPは、ミトコンドリアにある酵素の回転運動により合成。
継続的に回転していると思われたが、同グループは酵素を1分子ずつ
特殊な顕微鏡と高性能カメラを使って観察し、
酵素が秒単位で回転と停止を繰り返していることを発見。

停止には、酵素を構成する「イプシロンサブユニット」という部位が
働いていることも分かった。
回転を止めれば、ATPも合成できないため、
ATP合成酵素を持つがん細胞や病原菌の活動抑制に
応用できる可能性がある。

研究成果は今年10月、米国の医学生物学分野の学会誌
「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に発表。

岩手医大薬学部の関谷瑞樹助教は、
「酵素は、継続的に動いていると考えていたため、とても驚いた。
新薬開発の一つのきっかけになればいい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/3/129253/

2010年12月6日月曜日

総合学習を生かす(5)自然探検 絵本で表現

(読売 11月26日)

前夜の激しい雨が、うそのような青空。
「ノブドウの実ってきれい」、「カマキリつかまえた!」、
「ここにも野ウサギのふんがあるよ」。
子どもたちの歓声が雑木林に響く。

池の周りや林に座り込み、スケッチをする子も。
栃木県那珂川町の自然の中にある「えほんの丘」で、
町立小川南小学校の総合学習の授業。

「不思議だったとか、食べたらまずかったとか、
体で感じたことをすぐ手帳に書き残そうね」とアドバイスするのは、
「14ひきのシリーズ」などで世界的に知られる
絵本作家のいわむらかずおさん。
「えほんの丘」とは、いわむらさんの美術館がある丘のこと。
リスや野ウサギなどの小動物が多く、数々の絵本の舞台にも。

同小の総合学習では2006年から、いわむらさんの協力で、
4年生以上全員が毎年一冊、自分の絵本を作っている。
自然豊かな地域に住んでいても、最近はスポーツや室内での
ゲーム遊びが多いことから、「総合学習を、自然に向き合い、
表現につなげる機会にしたい」と考えた。

季節を変えて年3回、「えほんの丘探検」を行い、
いろいろなものをスケッチして、イメージを膨らませる。
秋から制作に取りかかり、小さなサイズで試作品を作った段階で、
いわむらさんが学校を訪れて一人一人に助言。
「場面をもう少し絞ったらどうかな」、
「よく見て描くと、気づくことがあるよ」。
テーマが絞れず苦労する子もいるが、無理に教えず、
自分の表現に自信を持つように励ます。

何度も改良したり、アイデアを加えたりする過程そのものが、
子どもたちの力になっていく」といわむらさん。
地味な虫をずっと追い続けた子、トンボの複眼の拡大図から
視点を広げる壮大な作品にする子。
テーマも大きさも、個性的な一冊一冊にいわむらさんが寄せる
温かいコメントは、子どもたちの宝物。

総合学習を担当する斎藤義雄教諭(52)は、
「自由な心を表現できるのが絵本の良さ。
絵が苦手な子でも、大胆な着想ではっとさせられることも多い。
毎年、一冊を仕上げる達成感は大きい」

「自分で作るのをずっと楽しみにしていた。だからうれしくて」、
目を輝かせるのは4年生たち。
世界に一冊だけの絵本は、後輩の創作意欲をかき立てている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101126-OYT8T00265.htm

「春を告げるホルモン」働き、マウスで解明 理研・近畿大

(2010年12月3日 毎日新聞社)

日が長くなることによる「春の到来」を知らせる動物体内の
ホルモンの働きを、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターと
近畿大が明らかにした。

日照時間の変化は、うつ病に似た症状の季節性情動障害や、
統合失調症などに関わるとされ、成果は病気の治療に
役立つ可能性がある。
米科学誌「カレントバイオロジー」(電子版)に3日、論文が掲載。

理研の上田泰己プロジェクトリーダーは08年、ウズラの下垂体の一部に
日が長くなると作られるホルモンがあり、
春に繁殖を活発にしていることを、名古屋大と共同で見つけた。

今回は、近大の升本宏平助教とともに、同じホルモンを持つマウスを、
1日の日照時間が8時間のグループと16時間のグループに分けて
2週間飼育。
その後、秋・冬に当たる8時間グループのマウスに対し、
夜になるはずの時間に光を当てて、ホルモンと関連した遺伝子の
有無や機能を調べた。

16時間グループでは、活発ではないある種の遺伝子が活性化されて
ホルモンを作る引き金になり、他の複数の遺伝子が
後押ししていることが分かった。

このホルモンは、ヒトにもあるとみられ、病気に関わっているらしい。
上田さんは、「日照時間を調節して遺伝子発現を抑えれば、
症状を緩和できるかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/3/129282/

ヒ素で成長する細菌発見 異なる生命要素の可能性も

(2010年12月3日 共同通信社)

通常の生物にとっては有毒なヒ素を、生命活動の根幹となる
DNAに取り込んで成長できる細菌を発見したと、
NASAなどの研究グループが2日、米科学誌サイエンス(電子版)に発表。

地球上の生物は、主に炭素、酸素、水素、窒素、リン、硫黄の
6元素でつくられ、これらは生命活動に不可欠。
この細菌は、リンをヒ素に換えても生きることができる。

現在知られているものとは異なる基本要素で、生命が存在する
可能性を示すもので、生命の誕生、進化の謎に迫る発見といえそう。

専門家らは、生命を構成するのが6元素であることを前提に、
地球外の生命探しを進めているが、研究グループは、
「どのような物質を追跡の対象にするか、
より真剣に考えなければならない」

米カリフォルニア州にあるヒ素濃度の高い塩水湖「モノ湖」に
生息する「GFAJ1」という細菌に着目。

ヒ素が多く、リンが少ない培養液で培養すると、
リンが多い培養液よりは成長は遅くなるものの、
細胞数が6日間で20倍以上に増え、
GFAJ1はヒ素を取り込んで成長することを確認。

細胞内の変化を詳しく調べると、DNAやタンパク質、脂質に
含まれていたリンが、培養によってヒ素に置き換わっていた。
リンとヒ素は、化学的性質が似ているため、
このような現象が起きたと考えられるが、どのように置き換わるか、
置き換わった分子が細胞の中でどのように働くかは分からない。

◆山岸明彦・東京薬科大教授(極限環境微生物学)の話

ヒ素は、生物にとって猛毒だが、リンと性質が似ているので、
ヒ素を使う生物がいてもおかしくはないと考えられていた。
今回、具体的に生命にとって、非常に重要なDNAにまで
ヒ素を使っている生物が確認され、生物の在り方を広げた。
これまでとは異なった形で生物が存在する可能性が広がり、
地球外の生物を探す際、地球と似た環境にこだわるのではなく、
範囲を広げる必要が出てくる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/3/129238/

2010年12月5日日曜日

細菌増殖抑える分子解明 効果高い薬開発に期待

(2010年12月2日 共同通信社)

細菌が増殖する際などに働く酵素「RNAポリメラーゼ」の働きを
抑える分子の詳しい形状を、横山茂之東京大教授(構造生物学)らが
明らかにし、1日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表。
横山教授は、「効果が高く、耐性のできにくい抗菌剤の開発が期待」

RNAポリメラーゼは、カニのはさみのような形をし、
DNAの鎖を挟みつつ、そこにRNAの"部品"を取り込み、
DNAの遺伝情報を基にRNAを組み立てる。
細菌の体をつくるタンパク質は、できたRNAを基に合成。

横山教授らが調べた分子は、RNAポリメラーゼにくっつき、
RNAの合成を中断したり、終了させたりする時に働く。
くっついた状態を、大型放射光施設「スプリング8」などで調べた結果、
分子はくさびのような形で、RNAの部品の取り込み口を
しっかりとふさいだ上、組み立てを行う部位に突き刺さっていた。

従来の抗菌剤は、組み立て部位の周りに小さな分子がくっつき、
"邪魔"をする程度であるため、細菌が突然変異などで
少し形を変えても、効き目は弱まる。

今回の分子は、「かなり念入りに、がっちりとガードしている」(横山教授)、
似たような分子を人工的につくれば、
強力な抗菌剤ができる可能性もある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/2/129158/

総合学習を生かす(4)修学旅行 生きた教材に

(読売 11月25日)

横浜国立大学付属鎌倉中学校の総合学習の発表会。

3年の板倉亜遊さん(15)たち女子生徒5人は、
花かんざしを髪に挿して教壇に立った。
花かんざしは、修学旅行先の京都でインタビューした職人が作った
思い出の品。

「仕事は、お金を稼ぐためにあると思っていたが、
責任とこだわりを持って働く人になりたいと考えが変わった」、
「花かんざしには、職人の技術と気持ちが詰まっている。
思いを込めて取り組む大切さを学んだ」。
5人は、自分の将来と結びつけて、それぞれの発表を締めくくった。

同中の修学旅行は、物見遊山ではない。
生徒全員が、各自のテーマの基本的な知識や情報を事前に詳しく調べ、
新聞形式でまとめた上で、その道のプロにインタビュー。
一人一人が、寺社など「モノ」だけでなく、「人」から学び得ることを重視、
生き方や職業観を深く学ぶ機会。

今年は、生徒172人が40班に分かれ、
京野菜の店の店主や刃物職人、茶の研究員など約40人に取材。

板倉さんたち5人が訪れたのは、江戸末期から京都・祇園で、
唯一続く花かんざし専門店の「金竹堂」。
花かんざしについて事前学習で徹底的に調べ、現地では、
金竹堂五代目職人の定永光夫さん(54)に、
「流行に合わせた新しいかんざしは作らないのか」、
「なぜ職人になったのか」などと、本人にしか聞けない話をぶつけた。

「材料となる絹糸や染め屋の職人も減る中、江戸時代と同じものを
作る方が大変。
私は、舞妓や伝統を守る責任があるから、作り続けなければならない
と答えた定永さん。
年数回、仕事の合間の約30分という約束で、
修学旅行生の取材を受けているが、
「受け身でやって来る学校が多く、基本的な話で終わってしまう中、
よく勉強して来てくれたので、伝えたいことを話せた」とうれしそう。

しっかりした課題設定と徹底した事前学習で、
ありふれた京都への修学旅行もひと味違う学習に変わる。
自分の意思で進路選択する力も養える」、
総合学習の主任である岡正敏教諭(36)。

どの学校にもある修学旅行が、生きた教材となって、
生徒一人一人の心に響いている。

【横浜国立大付属鎌倉中の修学旅行の主な研究テーマ】
町屋を守る、寺社を守る、刃物職人、箸、京扇子、清水焼、西陣織、
京友禅、香道、舞妓の仕事、茶道の礼法、茶と地下水、京菓子、
京料理、八ツ橋、京都とくずきり、剣術と新撰組、陰陽道と陰陽師、
天皇と秀吉と人々

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101125-OYT8T00219.htm

嫌な臭いを線虫が学習 大阪大、新薬開発にも

(2010年12月1日 共同通信社)

体長約1mm、ごく小さな線虫が、1度嫌いな臭いを感知すると、
再びこの臭いにさらされた際、より遠くへ逃げるように学習することを、
大阪大や国立遺伝学研究所のチームが明らかに。
1日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載。

学習には、脳内で働く神経伝達物質「ドーパミン」が
重要な働きをしていた。
大阪大の木村幸太郎特任准教授は、
「神経細胞が302個しかなく、遺伝子の解析も容易な線虫を使えば、
学習などの複雑な神経機能を簡単に調べられ、
抗精神病薬の作用機構の解明や新薬開発に役立つ」

チームは、線虫が嫌がる臭いのする有機物質を使って実験。
低濃度の有機物質に、事前に1時間さらして学習させた線虫を、
再び高濃度の有機物質の近くに置くと、
学習していない線虫に比べ、約1・5倍遠くへ逃げた。

遺伝子の突然変異で、ドーパミンの機能が失われている線虫では、
臭いを学習しないことが判明。
正常な線虫でも、ドーパミンの働きを抑える薬を与えると
学習しないことが分かった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/1/129101/