2011年7月30日土曜日

やる気の秘密(13)勉強の意味 心に刻む

(読売 6月1日)

「好きな子が落とし穴の近くを歩いているのが見えたら、
『危ないよ!』って叫ぶよね。
お父さんやお母さんが、みんなに勉強しいよ!って言うのも同じ。
言われたら、『ありがとう』って言おう」

塾長の本田篤嗣さん(36)が話すと、中学生たちに笑顔が広がった。
山口県内に5教室を展開する「みかみ塾本田屋」の
名物「ココロ・トーク」。
小1から高3まで約300人の教え子に、勉強に向かう心構えを、
授業の合間に照れることなく、繰り返し説く。

「勉強の成績は、才能みたいなもので決まっちょると思ったら大間違い。
やるから上手になる。上手になると思ってやろうや!」

大学卒業後、音楽活動のかたわらテレビ局勤務なども経験し、
CDデビューも果たしたが、事務所が倒産。
高校時代から家庭教師をした経験を生かして塾講師になり、
その後、独立して6年。

同じ勉強をしていても、成果が出る子と出ない子がいる。なぜか?
心理学や思考法など本を乱読し、「勉強に向かう心の問題ではないか?
との思いに至り、生徒に語りかけるようにブログに書いた。

「勉強にやる気はいらない。言い訳になるくらいなら行動しよう」、
「君の歩く道を決めるのは君の心」

2007年から、ブログをもとに書いた中・高校生向けの小冊子を次々に刊行。
自ら作詞作曲、演奏した「受験生応援ソング」も録音。
全国の希望者に、自費で配布した小冊子やCDは計3000冊、7000枚に。
09年、初めての著書『君の成績をぐんぐん伸ばす7つの心のつくり方』は、
静かなベストセラーに。

ここ数年、社会の変化を痛感。
学校の授業を、全然聞かない子は珍しくない。
受験も「入れるところでいい」。
「生涯学び続けることができる人を育てることが、
地域や日本の未来を作る」が持論だが、なぜ勉強が大切なのか、
正面から子どもに語る大人が少なくなったことに、強い危機感を覚える。

競争であおったり強制したりする指導では、今の子どもたちに伝わらない。
「コミュニケーション授業」と称した少人数のクラスで、
一対一の対話を大事にする。

夜10時半。
授業が終わっても、生徒たちは、「少し勉強していこうかな」となかなか帰らない。
心に届く言葉が、小さな意欲の火を燃え上がらせる。

◇成績を上げる「7つの心」(本田さんの著書を参考に作成)

〈1〉目標(目的地をイメージする)
〈2〉できる!(自分自身を信じる)
〈3〉忍耐(目の前の苦痛は未来の喜び)
〈4〉継続(小さなことを積み重ねる)
〈5〉言葉(使う言葉が未来を作る)
〈6〉感謝(勉強できる環境のありがたさ)
〈7〉信念(強い思いは才能を超える)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110601-OYT8T00226.htm

子供の運動と食 見直そう 肥満とやせ形、進む二極化

(2011年7月25日 毎日新聞社)

子供たちの体格は平均的によくなっているが、肥満とやせ形が増えている。
体を動かす運動習慣が身についていないことや、
栄養摂取の偏りなどが背景。
夏休みを機に、子供たちの生活スタイルを見直してみては?

子供たちの間では肥満とやせ形が増え、その中間に当たる
標準体重の子供が減る傾向。
文部科学省の学校保健統計調査(10年度)によると、
11歳男子の肥満の割合は約11・1%、
14歳男子では約9・4%と約1割。
70年代後半から肥満の割合は増加傾向。
11歳と14歳の女子でも、約8~9%が肥満。

やせ形の男子も増えている。
11歳のやせ形の割合は約2・6%、14歳では約1・5%。
全体に占める比率は少ないものの、増加傾向。
11歳と14歳女子のやせ形は約3・1%、男子と同様に増加。

肥満とやせ形と二極化する傾向の裏側に、どんな要因があるか?
小熊祐子・慶応大スポーツ医学研究センター准教授(内科専門医)は、
「子供たちが外で遊んだり、スポーツをしたりして、
体を動かす機会が減っていることや、栄養摂取の偏りなどがある」

気軽に遊べる場所が自宅近くに少ないことなどから、
外で遊ぶ子供の姿は昔に比べて減っている。
文科省は、小・中学生の運動時間を「1日に1時間、1週間で
7時間程度が望ましい」としているが、
文科省「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(10年)によると、
1週間の総運動時間が1時間未満の小学男子は10・5%、
同女子では24・2%。
中学生でも男子は9・3%、女子は31・1%。

運動量の少ない子供は、運動部や地域のスポーツクラブに
属していない傾向が見られる。

6~11歳の男女がテレビやゲーム機遊びなど、家で座ったり、
寝転がったりして過ごす時間は、平日で1日平均約5~6時間。
この結果、子供たちの体格はよくなっているのに、
走り幅跳びや持久走など運動能力が低下している。

小熊さんは、「子供の場合、少なくとも1日に1時間程度の運動が必要。
子供の時にしっかりと運動をしておけば、大人になってから、
肥満や高血圧などの病気予防にもつながる」、
親や周囲が意識して、子供が運動できる環境を整えることが大切。

言葉だけで、「運動しなさい」と言っても効果は低い。
子供たちに運動習慣を身につけさせるには、工夫が必要。
日本体育協会は、楽しみながら体を動かす工夫を盛り込んだ
「アクティブ・チャイルド・プログラム」をホームページで公開。
「基礎的な動き」、「運動遊び」、「伝承遊び」、「しかけづくり」など、
五つのプログラムで構成。

子供たちが興味を示すための工夫について、プログラムの作成に
加わった青野博・体協スポーツ科学研究室研究員は、
「地域のスポーツイベントに、家族で積極的に参加したり、
縄跳びや一輪車など体を動かすのに役立つ道具をプレゼントするなど、
親が仕掛けをすることが大切」、意識的に働きかけることが重要。

子供の肥満ややせ形の増加には、食生活の乱れも関係。
肥満が増えているのは、全般的に食べ過ぎが多いのでは、
と思いがちだが、実際はそうではない。
7~14歳のエネルギー摂取量の平均は、01年をピークに減少傾向
(08年の厚生労働省・国民健康・栄養調査)。
食べ過ぎよりも目立つのは、一人で食べる「孤食」、
栄養摂取の偏り、運動不足や遅い就寝時刻など、生活リズムの乱れ。

全エネルギー摂取量に占める脂質の割合は30%が望ましいが、
小中学生の男女とも、半数近くが30%超
(07年の日本スポーツ振興センター調べ)。
脂質の摂取源を見ると、おやつや夜食で取る割合が10%超。

夜食にラーメンを食べるなど、食塩の取り過ぎも目立つ。
貧血防止などに役立つ鉄の摂取でも、推奨量を満たしている
小中学男子は約2~3割、女子では約5~10%とさらに少ない。

管理栄養士の橋本玲子さんによると、食生活の偏りは、
生活スタイルと深く関係。
肥満傾向の子供は、朝食の欠食、一人で食べる孤食、就寝時刻が遅い――
などが共通して見られる。

肥満とやせ形の二極化が生じている要因として、
橋本さんは、「栄養の偏り、運動不足、生活リズムの乱れ」、
「今の子供たちにとっては、エネルギー摂取を抑えつつ、
たんぱく質やビタミン、ミネラルの豊富な栄養価の高い食事を
心掛けることが大切」

食事にも工夫が必要。
のり巻きを弁当用に作る時、たんぱく質と鉄などに富む牛肉やチーズを
具に加えるなど、不足しがちな栄養素の摂取を心掛けることも必要。
………………………………………………………………………………
◇家や学校で子供に運動習慣を身につけさせる工夫

(1)授業の始めに短時間のストレッチ運動を取り入れる

(2)運動に役立つ遊具を子供の目につくところに置く

(3)子供と一緒に徒歩や自転車で自然観察など探検に出かける

(4)地域で行われる伝統行事やスポーツイベントに積極的に出かける

(5)運動に役立つ遊具を子供にプレゼントする

(6)親同士で連絡網を作り、アウトドア活動など子供同士で遊べる環境をつくる

(7)目標を達成したら表彰するなど、やる気をもたせる

(アクティブ・チャイルド・プログラムから)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/25/139753/

[医学研究] 最良な医療のため、臨床研究評価の仕組みを  日本学術会議

(2011年7月22日 WIC REPORT(厚生政策情報センター))

日本学術会議は、「エビデンス創出を目指す検証的治療研究の
推進・強化に向けて」と題する提言を公表。
日本学術会議の臨床医学委員会・臨床研究分科会の
意見を取りまとめたもの。

検証的治療研究とは、「最良かつ安全な医療」を科学的に評価するため、
研究者が仮設を立て、収集されたデータが仮設と一致するか否かを
調べる臨床研究である。

これらは主に大学等で行われているが、不採算部門であるため、
研究の存続が「これまでにない困難に直面している」(p8-p19)。

学術会議では、「わが国の医療研究をこれ以上衰退させてはならない」と、
(1)遂行可能性の高い治療研究グループの基盤強化によるモデル事業実施、
(2)検証的治療研究にかかわる競争的科学研究費のプロトコルに基づく選考、
(3)治療研究の科学的妥当性と被験者保護を担保するシステムの構築、
(4)人材育成、
(5)生体試料レポジトリーシステムの構築-の
大きく5点について提言(p20-p22)。

エビデンスの質は、データの量によるところが大きい。
(1)では、臨床データを蓄積するために、多施設共同研究グループに
公的研究費を優先的に配分することを提案し、
まずモデル事業を展開することを求めている。

研究を推進するには、人材が不可欠である。
(4)では、治療研究に興味・能力をもつ医師研究者の育成や、
統計学・疫学を継続的に所管する組織の構築、
透明性・柔軟性を確保した研究費の運用などを求めている。

具体的には、奨学金給付制度や、大学等での専任ポスト確保、
臨床研究への参加を業績として評価することなどを例示。

P1-P28
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201107_4/1585_4_1.pdf

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/22/139709/

2011年7月29日金曜日

ILCの北上山地への誘致、政府に要望 東北研究会

(岩手日報 7月27日)

産学官でつくる東北加速器基礎科学研究会
(代表・井上明久東北大総長、高橋宏明東北経済連合会会長)は、
超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)の本県・北上山地(北上高地)
への誘致に国を挙げて取り組むよう、政府に要望。
東日本大震災からの復興の象徴として今後、本格的な誘致運動を進める。

高橋会長、宮舘寿喜副知事、東北大大学院理学研究科の山本均教授らが、
内閣府で、平野達男復興対策担当相に要望書を手渡した。
高橋会長は、「ILCは、復興につながるとともに、住民には夢や希望を与える」
と趣旨を説明。

平野担当相は、「政府内で検討するよう働き掛ける」と答えた。
与謝野馨経済財政担当相や文科省、民主党本部などにも要望。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110727_1

やる気の秘密(12)「型」で伸ばす国語力

(読売 5月28日)

「今度は、ヘリコプターと飛行機の違いを考えよう」。
横浜市のマンションの一室にある「ふくしま国語塾」。
塾長の福嶋隆史さん(38)の言葉に、中3から高2までの4人が
一斉に考え込んだ。
「対比」の力を高める授業だ。

「機体の大きさ」、「乗れる人数」など、比較する観点を考えて表に整理。
福嶋さんが、「『ホバリング』は、実際の動きを見ているから高レベル。
Aマル!」と、その場で評価を下す。
評価は、客観性や独自性がポイントで、最低のCから最高の
「トリプルA」まで9段階。
「翼の有無」といった見た目より、「人命救助が可能か」など
本質に迫るほど高評価になる。

この日は、「マンガと小説の違い」、「写真と映像の違い」などの課題でも
議論が白熱した。
高2の男子生徒は、「学校の国語の授業より、実践的な力がついた実感。
もっとやりたくなる」

小学校教諭だった福嶋さんが、国語の専門塾を開いたのは2006年。
「国語力とは、論理的な思考力のこと。
子どもが武器として使いこなせる『型』が必要だ」
現在、小3から高2まで約70人を1人で教える。
「対比」は、重要な「型」の一つ。

福嶋さんが考える国語力は、三つの柱からなる。
要約したり、抽象的な言葉でまとめたりする「言い換える力」。
物事を対比させて「比べる力」。
結果や結論から原因や理由を「たどる力」。

曖昧になりがちな「国語力」を明快に整理した著書
『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』(大和出版)は、
2009年の初版から約7万部を売り、国語教育書のベストセラーに。
問題集を教材に取り入れる私立小学校も出てきた。

子どもたちを夢中にさせるカギは、条件を限定することにある。
論理的な文の構造を身につけるため、「AつまりB」、「AなぜならB」
といった短作文に繰り返し取り組む。
自由度が低いことで、逆に発想が広がる。

「400字を自由に」では戸惑う子も、「共通点や相違点を書く」、
「30秒間の出来事だけを書く」と条件を絞ると、
とたんに水を得た魚のようになる。

「鬼ごっこのルールを変えるように、目標や方法、評価の方法を限定して
変化をつければ、勉強もゲームに生まれ変わる」と福嶋さん。
やる気の源として、遊び心が上手に使われている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110528-OYT8T00190.htm

外国人向け問診用「通訳」ソフト、無料公開

(2011年7月22日 読売新聞)

京都市のNPO法人「多文化共生センターきょうと」は、
被災した外国人のための通訳ソフト「多言語医療問診システム」を、
スマートフォンに無料でダウンロードできるサービスをしている。
英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、インドネシア語を日本語に訳す。

「頭が痛い」、「熱がある」といった1796通りの具体的な症状や
生活環境などから当てはまるものを画面上で選び、
「翻訳」ボタンを押せば、問診をする医師に状況が伝わる。

選択項目に、「原子力発電所の近くに住んでいた」、
「被曝検査を受けたい」などもある。

代表の重野亜久里さん(37)は、「不安を少しでも和らげられれば」
ホームページ(http://www.tabunkakyoto.org/

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/22/139699/

2011年7月28日木曜日

やる気の秘密(11)大学入学前に復習合宿

(読売 5月27日)

長野県南西部、木曽・御嶽山のふもと。
3月末、山々に残雪がきらめく窓外の景色をよそに、
王滝村の1軒の民宿が熱気にあふれていた。

「y=xをグラフにすると?」。
中学レベルの数学を真剣な表情で問いかけるのは、
愛知工業大学都市環境学科の四俵正俊教授(68)。
参加するのは、いずれもAOや推薦など面接や書類審査で
同学科に合格し、入学間近の高校生18人。

工学の基礎となる数学を、「入学前の不安な時期にこそ学ばせたい」と、
四俵教授が連日10時間学習の4泊5日の合宿を始めて17年に。

東京大学を卒業後、東京工業大学助手を経て、
1974年、現在勤務する愛知工大へ。
教え始めて間もなく、学生の学力に驚かされた。

因数分解や関数がわからないのは、ざら。
桁もそろえず、足し算引き算したりする。
授業についていけず、留年・退学する学生が目立った。

89年、今度は学力試験なしの推薦入試が始まることになり、
危機感はさらに募った。
「いったい、どんな学生が入るのか?」
何とかしなければと悩むうちに思いついたのが、
中学からの数学をやり直す入学前合宿。
「そこまで大学で?」という同僚の異論を無視して、一人で始めた。

合宿では、初日の実力テストでつまずき具合を確認。
その後、講義と練習問題を繰り返す。
気楽に質問できるよう、上級生も指導役として参加する。
愛知県内の高校から進む岡田康甫さん(18)は、
「こんなに勉強したのは初めて」と苦笑し、すぐに表情を引き締めた。
「大学は、遊べる所じゃないとわかった」

大学側も5年前、全員対象の基礎数学の授業を始めたが、
四俵さんは合宿を続けた。
早くに人間関係を培う結果として生まれる安心感のせいか、
参加者は入学後も意欲的に授業に取り組み、
よく質問に来るといった利点が。

その成果は、数字にも表れている。
合宿参加者の7割が留年せずに卒業でき、入学時に学力の高い
一般入試合格者を一貫して上回っている。
合宿で火のついたやる気は、卒業時まで燃え続けるのだ。

基礎のしっかりした学生を組織的に育てるため、
入学前合宿に学科全体で取り組むよう改めて働きかける。

点から線へ。熱いうちに鉄を打つ努力が続く。

◆メモ

1980年代に始まった入試の多様化は、入学希望者数が
全大学の募集定員より少なくなる「全入時代」の到来を控え、
多様な入り口を設けることで、入学者の確保を図る狙い。
従来の学力試験一本から、論文や面接による選考も併用、
学生の能力を多角的に測るようになる一方、
学力低下問題を引き起こした。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110527-OYT8T00149.htm

被災地の在宅医療を支援 宮城・気仙沼での取り組み

(2011年7月21日 毎日新聞社)

気仙沼市で、病院まで来られない在宅患者に巡回診療を続ける、
医療関係者のボランティア団体がある。
「気仙沼巡回療養支援隊」(JRS)。

医療機関の多くが被災したため、巡回対象は広範囲にわたる。
6月上旬、支援隊に同行し、被災地の在宅医療事情と課題を探った。

気仙沼市本吉地区の男性(80)は、脳梗塞で寝たきり状態。
震災前から同居の娘(51)が介護、停電で電気式エアマットが使えなくなり、
腰に10cmほどの床ずれが生じた。

「傷を見せてくださいね」。
縁側に面した部屋でJRSの医師、宮地純一郎さん(30)が
床ずれの処置を始めた。
宮地さんは、北海道家庭医療学センターから支援に駆けつけた。

「何日か前から足の指がむくんでいる」
心配する娘に、宮地さんは手を動かしながらも
「気になりますね。いつから?」と優しく声を掛け、
ケアマネジャーらに普段の食事や薬について質問。
約1時間かけて診療。

地区唯一の病院が被災し、男性は月1回の通院ができない。
今は週2回、JRSの訪問で床ずれの治療を受ける。
「ありがたいことです」。娘はしみじみと語った。

JRSは、震災2週間後の3月25日に設立。
市内を巡回した医師が、被災を免れた家に多くの高齢患者が
取り残されていることを憂慮し、医療関係者に協力を呼びかけたのがきっかけ。

実動部隊は、全国から集まった医師と看護師でつくる「在宅医療班」と、
保健師らでつくる「健康相談班」からなる。
医療班は1日約10軒を巡回し、これまで約260軒、訪問診療。
復旧した医療機関に引き継いだが、今も約40軒を担当。
すべての患者を、地元に引き継ぐことが課題。

JRSのコーディネーターを務めた松山市の医療法人理事長、
永井康徳さん(45)によると、最初の壁は、誰が巡回診療を
必要としているかを把握すること。
津波で、行政や医療機関にあった高齢者のデータはなくなっていた。
民生委員らの協力を得つつ、健康相談班がローラー作戦で
市内を回ることから始めた。

医療班も苦労した。
がれきが行く手を阻む中、重い荷物を持って長時間歩き、
懐中電灯の光を頼りに処置した日も。
永井さんは、「最初は1日に2、3軒回るのがやっとだった」

医師の専門分野は、外科や皮膚科などさまざま。
朝夕にミーティングを開き、対処できない場合は引き継いでしのいだ。
永井さんは、「まずは、医者同士が支え合う体制を作る必要があった

震災で、“医療難民”となった在宅患者は高齢者が多く、
家族は被災と介護で疲弊していた。
背景にある少子高齢化や過疎化は全国共通で、
JRSのきめ細かい活動は地域医療のあるべき姿を示した。

JRS本部長を務めた地元の外科医、村岡正朗さん(50)も、
訪問診療の大切さを改めて感じた。
自身のクリニックは津波にのまれたが、6月に仮事務所を設け再開。
「手伝ってくれた多くの人の意志を継ぎ、高いレベルの訪問診療を続けたい」

被災地では、感染症予防や衛生改善を含む総合的な対応が
医師に求められてきた。
JRSを支える「日本プライマリ・ケア連合学会」の
東日本大震災支援プロジェクト本部コーディネーター、林健太郎さんは
「地域でどんな医療が必要とされているか、
現場に出て自分の目と足で探し出すことが、災害医療には重要。
今回の在宅医療支援は、一つの手段となった」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/21/139632/

日野原重明さん 特別講演 (3)音楽には癒しの力がある

(2011年7月21日 読売新聞)

治りにくい病気として、認知症はなかなか治りにくいと言われている。

認知症という病気は、物忘れがひどくなる。
「あなたのお名前は?」と聞いても、名前が言えない。
「ご主人の名前は?」と聞いても、言えないし書けない。
こういう極度の物忘れをするのが認知症。

認知できない患者を、厚生労働省は「認知症」という病名に。
夜、よく眠れないのは不眠症。
不眠症の患者は、睡眠病といわない。
認知できない人を認知症というのは、
ちょっと名前の付け方がおかしいのではないか。

外国では、認知症の病気を研究した人の名前をつけて、
「アルツハイマー病」といっている。

アルツハイマー病に効く薬が、だんだん開発されてきた。
これらも使い方によっては効果があるとは思うが、
私はアルツハイマー病には音楽療法が効果的だ。

私は、日本音楽療法学会の理事長をしているが、
音楽を認知症の人に聞かせる。

例えば、「故郷」というだれでもよく知っている唱歌がある。
「うさぎ追いしかの山、こぶなつりし」と歌うと、自分の名前も言えない、
自分の名前も書けない人でも、メロディーが聞こえてくると、
そのうちに言葉が浮かんでくることがある。

子供の病気に、「自閉症」というのがある。
自閉症の患者にも、音楽療法士が一緒になって歌ったり、
楽器を演奏したりすると、内にこもっていた心がだんだん解けてきて、
話をするようになったりすることもある。

「どうしてつらいか」ということを、音楽療法士と話をするようになれば、
音楽療法士はそれをお医者さんや学校の先生や両親に伝えて、
どうすればよいかという対策を考えることができる。
自閉症には今のところいい薬はないが、
音楽療法は非常にいい。
歌うことによって、脳が活性化される。
音楽には、癒しの力がある。

私は医者だが、ピアノを弾いたり合唱を指揮したりすることがとても好き。
医療と音楽を結びつけて、音楽が病気に効果があるということを
実証するために、いろいろと症例を集めている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/21/139619/

2011年7月27日水曜日

大船渡国際港湾ターミナル協同組合 コンテナ事業にも〝二重債務〟

(東海新報 7月23日)

東日本大震災による大津波で、保有設備が甚大な被害を受けた
大船渡国際港湾ターミナル協同組合は、
各種支援制度を生かした再建策を模索。

修繕費は数億円規模に上り、既存の借入金もあるため、
事業再開には「二重債務」の壁が立ちはだかる。
行政による港湾施設復旧が求められる中、関係者からは、
「震災後に、貨物量が戻らなかった神戸の二の舞になるのでは」

同組合は、平成19年度から本格化した大船渡港と韓国・釜山港などを
結ぶ外貿コンテナ事業で、必要な荷役設備を運営。
市内外の民間企業16社が出資。

約4億4000万円を投資し、県が管理する野々田ふ頭に、
船舶からコンテナを積み上げるハーバークレーンと、
ふ頭内で運搬するリーチスタッカなどを導入。
流失は免れたが、東日本大震災による大津波で甚大な被害を受けた。

内部機械に海水が入り込み、稼働できない。
同組合では、専門業者に修繕費用などの見積りを依頼し、
合わせて2億円以上に及ぶ。
震災前から続く設備返済として、約1億7000万円を充てなければならず、
苦しい判断に迫られている。

自己資本での修繕は難しく、組合では国による、
「事業協同組合等の共同復旧施設補助」への申請を検討。
復旧経費の4分の3補助を受けられる制度、
補助に該当するかはまだはっきりしていない。

該当しても、残り4分の1は自力返済しなければならない。
事業再開できなければ、収入がないほか、震災で被災した出資企業が
多いため、重い負担となる。

国土交通省や県、市などで取りまとめ作業を進める
大船渡港復旧・復興方針素案計画では、地盤沈下対応のかさ上げを含む
港湾機能の本格復旧は、「概ね2年以内をめど」
震災前に多く利用されていた茶屋前・野々田地区の対応を急ぎたい考え、
コンテナ航路の本格運用と支援にも言及。

港湾利用のあり方は、市議会災害復興特別委員会商工港湾専門部会と
大船渡商議所との意見交換の場でも話題。
「阪神・淡路大震災以降、神戸港を利用する船舶が減った。
スピーディーに進めなければ、衰退の一途をたどる

震災前は、地元水産魚の輸出も多く、再開時期が遅れることでの
幅広い影響を懸念する意見も。

港湾も荷役設備も壊滅的な被害を受け、実質的にはコンテナ事業再開に
ゼロから取り組まなければならない大船渡港。
前年度は、本格運用4年間で最多のコンテナ取扱高となっただけに、
協同組合関係者は早期復旧に意欲を示す。

同組合の宮澤信平理事長は、「これまでは、被災していない
県内陸部の荷主も多かった。
来年の半ばくらいには始めないと、荷主は離れてしまう。
上り調子で来ていただけに、各種支援制度を生かしながら、
再開を目指していきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

やる気の秘密(10)集中のためリラックス

(読売 5月26日)

「字が丸く並んでいるね。
対角線にある字を、時計回りに読み上げて下さい。始め!」

埼玉県熊谷市立大里中学校の2年生のクラス。
中島清校長(59)が、ストップウオッチを手に合図。
校長自ら導入を提案した「ビジョントレーニング」の初めての授業。
目を素早く動かして、バラバラの数字を番号順に見つけたり、
複雑な図形を見て正確に写したり。
次々にドリルをこなし、「疲れたけど面白かった」と生徒たち。

同中は過去3年間、「学習意欲向上」を目指して改革に取り組んできた。
生徒への丁寧な声かけ、家庭学習、独自の校内検定などを実施して
一定の成果はあげたが、中島校長は「何か変だ」と感じていた。

疲れやすい。集中がすぐ切れる。
こうした状態を、教師や親は、「だらしない」などと否定的に
受け止めがちだった。
保健体育が専門の中島校長は、感覚や体の調節機能の未発達を
見逃しているのかも、と発想を変えた。

「心身の心地よさが、意欲の源のはず」
中島校長は、企業などで導入されている心身調整法の指導者資格を取得。
2年生の1クラスで朝礼時、CDに合わせて深呼吸や軽い体操で
リラックスするプログラムを実験的に始めた。

最初は、関心を持てず机に伏せていた生徒もいたが、次第に習慣に。
担任の川端慶枝教諭(29)は、「落ち着いて集中でき、授業しやすくなった」
その後、期末テストで飛び抜けて高い学級平均点を取り、
生徒たちも「すごい」と驚いた。

好成績を受け、次に試行を始めたのが、ビジョントレーニング。
瞬時に目のピントを合わせたり、立体感や奥行きを調整したりする
目の機能は、学習や運動効率に大きく影響する。
毎日の校庭掃除の際、何人もの生徒が、見えているはずのリヤカーに
つまずくのを見て、必要性は感じていた。

専門家のアドバイスも仰ぎつつ、気になる子は、授業だけでなく、
校長室にも誘って指導する。
効果は検証途上だが、評判は上々。

「『自分はダメだ』という思いこみを取り除けば、生徒は変わる」と中島校長。
朝のリラックス体操は、今月から全校で取り組んでいる。
他校やPTAからの講演依頼も相次いでいる。
子どもの気持ちを変える処方せんは、意外なところにある。

◆ビジョントレーニング

通常の視力と異なり、眼球運動や目と体の協調性、動体視力など
様々な視覚機能を向上させるための訓練法。
アメリカでは100年以上の歴史があり、「オプトメトリスト」(検眼医)と
呼ばれる国家資格を持つ専門職が、
児童だけでなくスポーツ選手の検査や訓練を担っている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00186.htm

もやもや病感受性遺伝子を特定 京都大

(2011年7月21日 毎日新聞社)

日本、韓国、中国など東アジアに多い難病「もやもや病」に
かかりやすくなる遺伝子(感受性遺伝子)を、
京都大の小泉昭夫教授(遺伝疫学)らのグループが初めて特定。
米国の科学誌プロスワン電子版に20日掲載。

もやもや病は、大脳の動脈が細くなり、脇道のように
毛細血管網が発達する病気。
血管造影すると、血管網がもやもやとした煙のように見えるところから命名。
脳の血流不足から手足の力が抜けたり、
言葉がうまく話せないなどの症状がでる。
日本で約1万3000人の患者がおり、韓国、中国にも多く、
白人やアフリカ人は少ない。

研究グループが、3世代にわたって患者がいる日韓の42家系を
調べたところ、発症者の全てで「RNF213」という遺伝子の一部が
変化していることが分かった。

この遺伝子は、頭蓋内の血管の発達に関わることも確認。
各家系に共通する染色体に着目し、変異の確率などを基に
世代の数を計算すると、約760世代前(推定1万5000年前)に
共通の祖先を持つことも分かった。

小泉教授は、「感受性遺伝子を持つ人全員が発症するわけではなく、
東アジアに共通する外的な要因(環境因子)もある。
3カ国が協力し、予防や治療につなげたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/21/139643/

2011年7月26日火曜日

被災地の子支援財団発足 王さんやSMAP発起人

(岩手日報 7月26日)

ソフトバンクの孫正義社長、王貞治さん、SMAPが発起人となり、
発足した「公益財団法人東日本大震災復興支援財団」の設立記者会見。
本県など、被災地の震災孤児ら子どもたちの支援に取り組む。

財団は、孫社長が被災地への寄付金として私財を投じた
100億円のうち、40億円を活用して設立。

手始めに、被災地の子どもが早く日常の生活を取り戻すため、
支援活動を行うNPOなどの団体に助成する。
第1期の助成額は1億円、8月1日から募集。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110726_5

携帯電話 発がん性は WHOの組織、可能性指摘

(2011年7月19日 毎日新聞社)

携帯電話から出る電磁波と、がん発症との関係を調べていた
世界保健機関(WHO)の付属組織「国際がん研究機関(IARC)」が、
「電磁波は、人に対して発がん性をもつ可能性がある」との結果。

WHOの組織が、携帯電話に関し発がん性を指摘したのは初。
携帯電話の契約数は世界で50億と推定、
今や多くの人の生活に欠かせない存在。
IARCの結果をどう受け止めたらよいだろうか?

評価結果は、14カ国31人の専門家グループが、
世界各国の研究報告を分析して導き出した。
特に重視されたのが、昨年まとまった世界最大規模の調査
「インターフォン研究」。

同研究は日本や英国、フランスなど13カ国で00~04年に診断された
脳腫瘍患者と、年齢や生活状況がよく似た健康な人のそれぞれ
約5000人について、携帯電話の使用歴を比較。

その結果では、携帯電話の使用が脳腫瘍発症のリスクを上昇させると
示す証拠は得られなかった。
むしろ携帯電話の使用者は、非使用者よりもわずかにリスクは低かった。

脳腫瘍の一つである悪性の「神経膠腫」に限って見ると、
累積通話時間を10段階に分けたうちの最長グループ
(1640時間以上。毎日平均30分、10年間使用)では、
非使用者に比べて発症リスクが1・4倍、40%のリスク上昇を示した。

携帯電磁波と脳腫瘍の関連については否定する研究結果も多いが、
スウェーデンの研究でも、「携帯電話の累積使用が2000時間を超えると、
神経膠腫のリスクが3・2倍に上昇した」との結果。

脳腫瘍のうち、耳にできる「聴神経鞘腫」については、
日本の研究グループの結果で、1日20分以上通話した人に約3倍のリスク上昇。

IARCは、こうした調査や動物実験の結果などを総合的に判断し、
神経膠腫と聴神経鞘腫については、「発がん性の限定的な証拠」があると評価。
白血病など、その他のがんについては「証拠は不十分」。

携帯電磁波の発がん性を、5段階評価で「2B」に分類。
2Bは、人での証拠が限定的で、動物実験での証拠も不十分な場合に適用、
コーヒーと同じ分類に入る。

IARCの幹部は、「長期で頻繁な使用について、さらに研究することが重要」、
「携帯メールや(電話を頭部に接触させない)ハンズフリーキットを
使用するなどの対策が有効」

これらの研究は、聞き取り調査に基づくため、統計上の偏りがある、との指摘。
日本の国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの
津金昌一郎・予防研究部長によると、今回の結論に至った主な調査は、
脳腫瘍になった人とならなかった人を対象に、過去にさかのぼって
通話時間を思い出してもらうもの。
この種の調査では、脳腫瘍になった人の方が通話時間を
長く見積もる傾向がある。

脳腫瘍患者の累積通話時間が、最長のグループの210人のうち、
10人は「1日12時間以上」というありそうにない使用状況を報告、
対照になる健康な154人に、こうした例はなかった。

津金さんは、「電磁波が、がんを起こす詳しいメカニズムは分かっていない。
今回のIARCの評価結果は、携帯電話使用に対する予防的な警告の意味も
含まれるのではないか」、現時点ではそれほど恐れるリスクではない。

電磁波などの科学的な情報を提供する「電磁界情報センター」の
大久保千代次所長は、「IARCの評価は、あくまで第1ステップ、
WHOによる健康リスクの総合評価がまとまるには数年かかる。
米国では、06年までの約20年間で、携帯電話の使用者が急増、
脳腫瘍の罹患率は変わっていない。英国やスウェーデンも同じ」

世界各国は、IARCの評価結果公表直後、相次ぎ見解を発表。
ドイツ連邦放射線防護局は、「長期的な影響や子どもへの影響については
可能性を排除できない」、
「念のため、浴びる量を減らすことが適切」と指摘。

スウェーデン放射線安全機関も、通話中は電話機を体から離すことを勧め、
「使用時間が長い人や若者は特に重要」。

日本では、総務省電波環境課が「過去の日本の研究では
影響はないとの結果だったが、IARCの評価結果は真摯に受け止めたい」

インターフォン研究は、30代以上の成人が対象。
子どもへの影響については、国際的な大規模調査が始まっているが、
答えはまだ出ていない。
国立がん研究センターは、「電磁波のエネルギーの脳への影響は、
子どもは成人の2倍以上という報告も。
小中高生の携帯電話の使い過ぎには注意すべきだ」

大久保さんも、「通信状態が悪い場所では、携帯から通常より強い電波が出る。
心配な人は、そうした場所での使用を避けたり、
通話よりメールを使うようにした方がよい」
…………………………………………………………………………………
◇神経膠腫と聴神経鞘腫

世界や日本での脳腫瘍の発症率は、人口10万人当たり14~20人。
神経膠腫は、神経細胞の周りにあって神経細胞の働きを支えている
グリア細胞(膠細胞ともいう)にできる悪性の腫瘍で、
脳腫瘍の約2~3割を占める。
聴神経鞘腫は、神経を包む膜や鞘の細胞にできる良性の腫瘍で、
脳腫瘍の約1割を占め、40~60代の女性に多い。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/19/139538/

やる気の秘密(9)応用へ丁寧な基本解説

(読売 5月25日)

「さあ、ここからは教科書に出てないからね」。
大阪府貝塚市立東山小学校で行われた
市川伸一・東京大学教授(57)の特別授業。

この日、初めて「円の直径」を学んだ3年生に、授業の残り15分で
出された課題は、「折れない厚紙の円の中心点を見つけてコマを作る」。

物差しと三角定規を使って直径を何本か書き、
その交点が中心点であることを見つける発展的な問題。
子どもたちは、班ごとに顔を寄せ合って議論に夢中に。
45分の授業でここまで到達するのは、前半で「直径は中心点を通る」などの
基本知識を丁寧に確認したから。

同小は昨年度から、市川教授が提唱する「教えて考えさせる授業」を、
算数を中心に導入。
目標は、「授業のユニバーサルデザイン」(誰にでも優しい設計)。

児童の学力差が大きい公立校共通の悩みが出発点。
先取り学習をしている子もいれば、教科書を読んだだけでは
分からない子もいる。
子どもの理解度に注目し、全員のやりがいを目指す方針に共感。

基本の流れは予習から。
教科書の分からないところに付箋を張り、新しい知識は解説や例題まで
先生が丁寧に教える。
基本知識の使い方を確認してから、発展問題に挑戦。
ここで、子どもたちが「面白い」と思う問題を出せるかが、
先生の腕の見せ所。
子どもたちが教え合う活動も多く入れる。
人に説明することも、理解度のチェックになる。

東山小はこの授業に合わせ、見開き2ページを四つの枠に分けた
独自の「かがやきノート」も作った。
深井利恵子校長(54)は、「授業の見通しが持てる安心感があり、
復習もしやすい」と手応え。

長年、子どもの学習相談を続けてきた市川教授が、
「習得の授業の基本設計」として提案したのは10年前。
詰め込みへの批判から、「教えずに考えさせる」授業に極端に傾いたのに
危機感を覚えていた。
英語で会話テープは聞くが、発音記号や口の形は教えない。
算数・数学では、公式や定理を自力で発見させようと議論して授業が終わる。
身についた実感が持てず、新たな「勉強嫌い」も生んでいた。

当初は、「詰め込みの復活では」と誤解も反発も強かったが、
小中学校への全国行脚を続けるうち、自治体ぐるみの取り組みも増えた。
「なるほど、と思うのが勉強の醍醐味。
理解する喜びを引き出したい」。
子どもたちが、「面白い」と身を乗り出す姿が原動力だ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00190.htm

2011年7月25日月曜日

3次補正で道路、三鉄へ大型予算 大畠国交相が視察

(岩手日報 7月24日)

大畠章宏国土交通相は、本県の東日本大震災被災地を視察、
10兆円を超す規模になるとの見方がある国の第3次補正予算に関し、
「大型予算とし、堤防や道路、鉄道などで地域の期待に応え、
復興基盤にしたい」。

東北横断道など「復興道路」の早期整備や、
三陸鉄道の復旧費などを大規模に計上する考え。

大畠氏は、「道路、鉄道、港湾、空港などの整備が、
命を守るための道筋であることが分かった」と発言。

同省が、8月中のルート確定を目指す三陸縦貫道や110億円の復旧費を
見込む三陸鉄道について、本格復興予算と位置付ける3次補正の中で、
「しっかり盛り込み、まちづくりの柱として全面的にバックアップする」

達増知事は、「迅速かつ十分に対処するには県、市町村自ら対応する
規模を超えている」とし、国家プロジェクトとしての復興を要請。
湾口防波堤の復旧など、重点事項の要望書を手渡した。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/kako_kiji.cgi

特定看護師、創設へ議論

(2011年7月19日 読売新聞)

厚生労働省の「チーム医療推進会議」で、「特定看護師」の創設に向けた
議論が進んでいる。

--一般の看護師とどこが違うのか?

医師にしか認められていない医療行為の一部を行う。
医師から大まかな指示さえあれば、患者の状態を判断しながら、
薬を出したり、簡単な検査や処置を行ったりできる。
5年以上、医療現場で働いた後、大学院などで専門教育を受け、
国が行う試験に合格し、認証を受けることが要件。

--なぜ特定看護師が必要なのか?

医療が進歩して専門的になり、医療スタッフの仕事量が増加。
超高齢化で、在宅医療が必要なお年寄りも増えている。

医療体制の見直しが求められ、厚労省の検討会は昨年3月、
看護師や薬剤師など、医療スタッフの役割を広げて、
互いに連携して治療にあたる「チーム医療」の推進を打ち出した。

看護師は患者に一番近い存在で、チーム医療の要として期待、
それが特定看護師というわけ。

医師不足が深刻なことも、特定看護師導入の後押し。
在宅医療や症状が急変しない病気の場合、普段から患者の生活を
見ている看護師が判断して対応した方が、効率的な場面がたくさんある。

--「看護師が医療行為をして安全なのか?」と懸念する声も。

特定看護師に、どのような教育をするかが重要。
制度ができるのを見越して、国内でも2008年から複数の大学院などが
医療行為ができる看護師を養成するコースを設けている。
厚労省の推進会議は昨年から、こうした養成コースについて、
十分な教育ができるか調査。

4月から、このコースを卒業した看護師が、医療施設で特定看護師として
安全に医療行為ができるか、検証するモデル事業も始まった。
大分県の佐伯中央病院では、「特定看護師」という名札を付けた看護師が、
心臓の超音波(エコー)検査や胃ろうチューブの交換など、
患者相手に医療行為を始めている。

--特定看護師以外は医療行為はしてはいけないのか?

実はそうではない。
看護師は法律で、医師の指示の下、「診療の補助」ができると。
どこまでが「診療の補助」に含まれるかは明らかでないので、
推進会議では、看護師すべてが行える医療行為もはっきり定めようと。
医師から具体的な指示があれば、すべての看護師が、
特定看護師と同じ医療行為ができるようにした方がいいという案も。

特定看護師が行うことを想定されている医療行為は、
技術も難しく、一般の看護師が、特別な訓練なしでできるように
してしまうのは危険だと、反対意見も。

--海外の状況はどうなのか?

米国などの先進諸国では、「ナース・プラクティショナー(NP)」という、
検査や診断、薬の処方を行う「診療看護師」が普及。
東日本大震災では、米国でNPとなった日本人が来日し、
医師が不足した被災現場で活躍。

--日本ではいつごろ制度ができるか?

日本医師会などは、「患者の安全が心配」などを理由に反対、先は見えない。
国民の間の議論も必要。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/19/139534/

やる気の秘密(8)探求心引き出す「納得感」

(読売 5月21日)

「先生が予定通りまとめようとする授業はイヤ。見え見えだから」、
「教科書通りでいいから一工夫ほしい」。
子どもたちが大人に交じって議論する。

文部科学省が推進する「リアル熟議」が、
「若手教師の育て方、育ち方」をテーマに都内で開かれ、
東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組の代表10人が参加。

進行役を務めた担任の沼田晶弘教諭(35)が熟議終了後、
子どもたちに感想を聞くと、「大人は、上から子どもを見ている。
何を与えるかの話ばかり」と不満の声。

「教育は自立支援」と考える沼田教諭。
「自分たちで決める」運営で自信をつけてきた子どもたちは、
「納得できない」、「リアル(現実的)じゃない」ことに違和感を隠さない。

「デシ・リットル」の単位の勉強では、
「全然使わない単位をなぜ勉強するのか」、と疑問が出る。
先生が、「確かにそうだね。でも、升を使う豆の量り売りには欠かせない
単位なんだって」と教えると、目を輝かせた。

「知りたい」、「やりたい」と思えば、探求心の塊になる。
夏の移動教室では、計画段階から地図を頼りに遠足の距離を求めた。
行きたい公園まで歩くと、何分かかるか?
歩数計で1歩の距離を測り、歩くペースを合わせる作戦も立てた。
当日は13kmもの道のりを、全員が歩ききった。

昨年度、2学期から取り組んだ総合学習のテーマは「映画作り」。
沼田教諭もさすがに「無謀では」と伝えたが、子どもたちは引き下がらない。
監督、脚本からカメラの配置、大道具作りまで分担し、
映画の中心となるダンスも、連日猛練習。
2週間かけて作った小道具が使えないなど、計画変更や失敗にも
「やめたい」という弱音は出なかった。

映画完成を控えた3月、近くの老人ホームでライブ公演が実現。
マイケル・ジャクソンの難しいダンスを踊って喝采を浴びたが、
沼田教諭が「真価を発揮した」と感じたのは、公演の後。

舞台で始まったお年寄りの盆踊り練習に飛び入り。
社交ダンスの相手も買って出て、話もはずんだ。
普段から、「先生の指示待ち」ではこうはいかない。
遠くから見ていた沼田教諭は、「やればできるんですよ」とつぶやいた。

4月の全校集会で、クラスと担任替えが発表。
最後に、1組全員が声をそろえて先生の背中にかけた言葉は、
「いってらっしゃい!」。
成長の証しの一言だった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110521-OYT8T00200.htm

2011年7月24日日曜日

国民に防護ライン示せ 被ばくリスクに向き合う 武田邦彦・中部大教授

(2011年7月14日 共同通信社)

放射線被ばくのリスクとどう向き合うか-?

武田邦彦中部大教授は、福島第1原発事故の発生以来、
子どもを持つ親に向けて、インターネット上で放射線から身を守る
方法についての執筆を続ける。
元旭化成ウラン濃縮研究所長で、事故前は、「安全な原発なら推進」との
立場だった同教授は今、「国の防護政策は甘すぎる」と警鐘を。

-インターネットで情報発信を始めた理由は。

「国は、原発からの距離に応じて住民退避の是非を判断。
重要なファクターは、風の影響のはず。
これはいかんと思い、執筆を始めた。
原子力技術者として事故に責任を感じ、正しい情報を発信して償おうと考えた」

-文部科学省は児童、生徒が浴びる放射線量について、
4月に「年20ミリシーベルトを下回れば、平常通りに活動できる」、
5月末には「年1ミリシーベルト以下を目指す」との目標を示した。
教育現場は混乱している。

国際放射線防護委員会が示す年間被ばく量の上限『年1ミリシーベルト』の
基準を変えてはならない。
放射線で被ばくするという"損失"があるなら、その損失に対して
"利益"が上回る必要がある。
年1ミリシーベルトの場合の発がんリスクが、原子力による電力供給で
国民が得るメリットと相殺されるという考えから、
年1ミリシーベルトが国際的な合意となったのだから、
もし年20ミリに上げるなら、メリットも20倍にならないと駄目。
その議論を十分にしないまま、文科省が年20ミリシーベルトとした罪は大きく、
親が納得できなくて当然」

-幼い子を持つ親たちが、放射線量を自主的に測定し始めた。

「非常に評価すべきだ。
追随する形で自治体が細かな計測を始めたが、本来なら家庭よりも
先に動かなくてはならなかった。
気になるのは、子どもへの放射線の影響を気にする親を、
神経質などと異端視する社会の風潮。
子どものため、産地を気にして食品を購入するのは自然なことであり、
非難してはならない。
給食について不安ならば、学校に食材の産地を明示してもらう」

-食べることで、被災地の生産者を助けようとする動きがあるが。

人助けと、自分の体への影響の問題は、切り離して考えなくてはならない。
生産者の損失は経済的なものだが、消費者が食べることのリスクは健康に響く。
食品の安全性が確認できず、被ばくの恐れがあるならば、当然、注意が必要」

-風評被害を防ぐべきだという声も強い。

「『風評被害』という言葉が、独り歩きしたことが問題。
食べ物からセシウムなどの放射性物質が検出されたんだから、
『風評』ではなく『実害』のはず。
その賠償は消費者ではなく、東京電力に負わせなくてはならない」

-では、安全な食べ物とは何か?
継続して摂取しても、年1ミリシーベルトを超過しない作物ということか?

「そう。食べ物だけでなく、外部被ばくも含めたトータルの値で、
原発事故による被ばくを年1ミリシーベルト以内にとどめないといけない。
国には国民の健康を守る決意を持ち、1ミリシーベルト以下にとどめる
ための日常生活での防護ラインを示してほしい」
   ×   ×

◆たけだ・くにひこ

43年東京都生まれ。専門は資源材料工学。
08年、内閣府原子力委員会専門委員を務める。
著書に「子供を放射能汚染から守りぬく方法」など。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/14/139363/

県、海洋エネ試験場誘致へ 沿岸に国際研究拠点

(岩手日報 7月19日)

県は、東日本大震災で被災した本県沿岸部に、
日本初の海洋エネルギー試験場の誘致を目指している。

国内外から研究機関を招き入れ、三陸の海を活用した
国際海洋研究拠点をつくるのが狙い。
全国的な海洋研究組織も、県内で研究フォーラムの開催や現地視察を
予定するなど、実現に向けた動きも出始め、未曽有の大津波の経験を
生かして、国際的な研究の深化を図る方針。

海洋エネルギー試験場は、三陸の海洋に波力や潮力などの
実験用設備を設けるほか、陸地にも既存の研究施設を活用して
専用施設を建設することを想定。

県内の海洋環境、生態系の津波による変化の解明、
研究機関による新たな科学的知見やアイデアの集積、
世界的に意義ある学術的知見の発信-などを進める。

同試験場で実験を行う国内外の大学、研究機関を招き、
大規模な研究拠点として機能させることで、
世界的な海洋研究の促進を図る。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110719_2

やる気の秘密(7)児童「内閣」授業で「先生」

(読売 5月20日)

「書き順いくよ。一、二、三」。
黒板の前で新しい漢字を教える「先生役」の児童に合わせ、
全員が空中で指を動かす。

東京・世田谷区の東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組。
先生役の児童の席には、担任の沼田晶弘教諭(35)が座り、ノートを代筆。
「自分が教えると思うと、よく勉強するよ」と女子児童。

このクラスは、みんなで選んだ「内閣」が学級をリードし、
授業の運営にも関わる。
総理は、班の中で交代で務め、文部科学、環境、厚生労働の
各大臣の下に各省を置く。
国民ならぬ「クミン(クラス民)」のため、「文科省」はテストの予想問題も作る。
毎週の選挙で「政権交代」もあるから、成果にはこだわる。

沼田教諭は、アメリカでスポーツ経営学やコーチング論を学び、
大学教員から転じた異色の経歴の持ち主。
2年前、担任になった初日、「君たちを信じて任せる」と宣言。
以後、最も意識してきたのは、やる気のスイッチをあえて「切る」こと。

授業の45分間集中し続けるのは難しいが、緩急をつければ勢いづく。
朝の会で、30秒間限定のスピーチ練習。
わっと騒いで一瞬で沈黙する練習。
3度手をたたいたら、その人に注目。
最初はゲーム感覚だったが、すぐに子どもたちは、「オン」、「オフ」を
切り替える快感に目覚めていった。

忍者のように、校内を静かに移動。
全校集会が始まった瞬間、全員で姿勢を正す。
給食を毎日完食する。
自分たちで考えて達成するのが面白くなり、一体感も生まれた。

給食後の掃除は、内閣の段取りの力の見せ所。
先生がパソコンで流す3曲の間で終わらせるため、係は決めずに
全員で流れを見て動く。
ほうきは同じ方向に掃き、使ったぞうきんを誰かがまとめる間に机運び。
子どもたちがテキパキ動き回る中、先生は机で家庭学習ノートに
コメントを返すのに集中。

「今2曲目の半ば。急いで」。
トランシーバーで、内閣メンバーが特別教室への出張掃除組に連絡。
ダンダンダンダン。
全員席につくまで机を打ち鳴らし、総理の合図でハイ、終了。
一瞬で、子どもたちは遊びに散った。
開始から約11分。
当初の半分に短縮し、昼休みに遊ぶ時間も増えた。

「子どもがいいから、先生が取材されるんだよ」
子どもたちの冗談交じりの言葉に、先生はニヤリ。
「自分たちならできる」という自信こそ、クラスの最大の財産だ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110520-OYT8T00156.htm

2011年7月23日土曜日

コロンビア中部の貧困の村、見えぬ恐怖 アルツハイマー病遺伝子、6人に1人

(2011年7月14日 毎日新聞社)

南米コロンビアの中部アンティオキア州に、村民の6人に1人が認知症の
アルツハイマー病を引き起こす遺伝子を引き継ぐ村がある。

新薬開発に取り組む世界中の医学者や製薬会社が、「天然の実験場」と期待。
遺伝子を保有する村民の発症時期や病状を観察することで、
どんな薬をいつ使えば効果が出るか、分かる可能性がある。
「自分には間に合わなくとも、子どもたちが発病する前に、
新薬ができるかもしれない」
政府や地方自治体の公的援助が十分に行き届かない中、
住民はわらにもすがる思いで、治療薬の臨床試験に協力。

アンティオキアの州都メデジンから、車で北に約3時間行くと、
人口約1万2000人の農村アンゴストゥラ。
道中、馬に乗った農夫たちとすれ違う。
農家のほとんどが、遺伝する家族性アルツハイマー病の患者を抱える。
国内で遺伝子を引き継ぐ25家族約5000人のうち、
約1800人が村に暮らしている。

患者の一人、ハビエルさん(59)は、「あー」と声を出す。
2年前から、意味の通る会話はできない。
発症したのは、バスの集金係をしていた10年前。
運賃を受け取ったのを忘れて、乗客と言い争うようになり、職を失った。
母親は認知症だった。
兄弟姉妹15人のうち、3人が認知症の末、死亡、3人に症状が出ている。

アンティオキア州出身者は、スペイン語で「パイサ」と呼ばれ、
村の患者が持つ遺伝子は、「パイサ遺伝子」と名付けられた。
平均44~49歳で発症、通常のアルツハイマー病よりも進行が早い。
片親が遺伝子を持っていれば、子どもは50%の確率、
両親なら75%の確率で受け継ぐ。

「未来が描けるのは40歳まで。その先は、病気になるかもしれない」。
ハビエルさんの次男エマーソンさん(21)。

一家の年間収入は、エマーソンさんが看病の合間に畑で作る豆の売り上げ
55万ペソ(約2万5000円)だけ。
最低賃金1カ月分(53万5600ペソ)と大差ない。
6人暮らしの家には、毛布が2枚しかなく、下水道整備率26%の
アンゴストゥラ村の中でも困窮世帯。

患者を抱える家族が貧苦にあえぐ背景には、
社会保障システムの未発達もある。
公的医療保険制度はあるが、腐敗と非効率な運営が障害となって、
きちんと機能していない。
エマーソンさんは、「政府や村からの公的な援助は一切ない」

アンゴストゥラ出身で、現在はメデジンに暮らすカルロスさん(54)は、
7年前に認知症と診断。
祖父と父親は、認知症を患った後に他界、兄弟16人のうち
カルロスさんを含む4人が発症。
1年前には、歩いたり笑ったりできたカルロスさんだが、
今は話すこともできず、自宅のベッドに横たわる。

夫の世話をする妻ネリーさん(43)の母親も認知症となり、昨年亡くなった。
50歳の姉は3年前、認知症と診断。
48歳の姉はスープの作り方を忘れ、46歳の姉は子どもが金を盗んだと言い出した。
「同じ遺伝子を持っているかもしれないと思うと、恐怖にさいなまれる」

ネリーさんは看病に専念するため、自営していた食料品店を手放した。
看護師になった長女のナタリアさん(23)が、家計を支える。
「看病の苦労を、子どもにさせたくない。
『発病したら老人ホームに入れて』と言ってある」
医療知識のあるナタリアさんは、「子どもは産まない」
見えない発病の恐怖が、人々の心に巣くっている。

◇ゲリラから血液サンプル死守--来年秋から新薬開発本格化

アンゴストゥラ村では長年、家族性アルツハイマー病は

「ボベラ(痴呆)」と呼ばれていた。
「魔女の呪い」とされたり、「特別な木に触った」、「洞窟に入った」ことなどが
理由との迷信が流布。
遺伝性の病気との認識がないまま、近親者間の結婚・出産が繰り返され、
患者が増えた形。

パイサ遺伝子を発見したのは、アンティオキア大の
フランシスコ・ロペラ教授と看護師ルシア・マドリガルさん(55)。
マドリガルさんが、患者のいる家族や親族を戸別訪問して血液を集め、
ロペラ教授が患者の診察や血液の検査を続けた。
地道な調査が実り、95年に原因となる遺伝子の変異を突き止めた。

村や近隣一帯は、数年前まで左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の
実効支配下にあった。
マドリガルさんは99年、採取した血液を持ち帰る途中、ゲリラに拉致され、
1週間、小屋に監禁。
「血液を冷やしておいて。さもないと、だめになってしまう」とゲリラに訴え、
貴重な血液サンプルを死守した。

マドリガルさんも、ロペラ教授も近隣の出身で、病気は人ごとではない。
「患者がいるというので訪ねると、小学校時代の友人のこともある」
ロペラ教授は、母親が認知症。
「認知症が、私を(研究者に)選んだ」と感じている。
「運命と諦めていた村人は、病気だと納得すると、献血に協力してくれた」

ロペラ教授は、米国の国立衛生研究所やバーナー・アルツハイマー研究所と
協力して、12年秋から治療薬の臨床試験を開始する予定。
治験には、パイサ遺伝子の保有者と非保有者それぞれ200人の参加。

アルツハイマー病で、薬の効きが悪い理由の一つは、
投与時期が遅すぎるためと推測。
パイサ遺伝子の場合、症状が出る数十年前から脳の状態に
変化が出るかどうか観察できる。

「いつから認知症の原因となるたんぱく質が脳に蓄積するのか、
いつ薬の投与を開始すれば最も効果的かを調べることができる」(ロペラ教授)。

パイサ遺伝子を持つ家族にとって、新薬開発や治療法の研究は「命綱」。
健康被害のリスクを伴う治験に尻込みせず、積極的に協力する。
ネリーさん一家も、全員が参加を望んでいる。
「一刻も早く治療法を確立してほしい。
夫のためには間に合わなくても、子どもたちの役に立てばいい」(ネリーさん)
との思いがあるからだ。
………………………………………………………………………………
◇アルツハイマー病

1901年、ドイツの精神科医アルツハイマー博士が発見した認知症。
脳内に、たんぱく質の一種である「アミロイドベータ」や「タウ」が
蓄積することで、引き起こされる。
パイサ遺伝子のように、遺伝子が発症を決定する症例は全体の数%、
多くの場合、リスクを高める遺伝子と環境の複合要因で発症。
患者数は、世界で約2400万人。
20年後には倍増すると予測。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/14/139376/

横断軸道路も早期整備 復興事業で国交省検討

(岩手日報 7月18日)

国土交通省は、10年後をめどに完成させる三陸沿岸の
高速道路に加え、東北横断自動車道釜石秋田線など、
沿岸と東北自動車道をつなぐ横断軸の道路も早期整備する方向。

政府の復興構想会議が、横断軸の重点的な事業化を提言したことを受け、
未事業化区間のルート確定などを急ぐ。
今後は、整備スケジュールの明確化、財源確保が課題。

大畠章宏国交相は、仙台市―八戸市の三陸縦貫自動車道など
3路線について、おおむね10年後をめどに完成させる意向を表明。
既にルート案を本県などに示し、8月末のルート確定を目指す。

県内の横断軸道路は、東北横断自動車道釜石秋田線(県内分79・3km)と
地域高規格道宮古盛岡横断道路(国道106号、100km)の2路線。
県は、三陸縦貫自動車道などと共に、
「復興道路」として早期完成を国に働き掛けてきた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110718_3

やる気の秘密(6)チーム研修 教師に自信

(読売 5月19日)

「分からない、と子どもが素直に言える学級づくり。
これは大事な課題ですね」

東京・荒川区立尾久第六小学校。
教師たちが科目ごとにチームに分かれ、手慣れた様子で議論。

この日は、年度最後の研究会。
30分ほどで次年度の目標をまとめると、
各チームの代表が模造紙を前に発表を始めた。

同小が、ワークショップ形式の校内研修会を始めたのは5年前。
教員が、50代と20代に偏った年齢構成で、教員同士の
コミュニケーション不足を懸念した長谷川秀紀校長(62)が、
南部昌敏・上越教育大教授(63)に協力を求めたのがきっかけ。
「良い授業は、先生自身が自信を持って授業ができることが第一」と、
南部教授が提案したのは、「チーム」による研修。

3、4人から7、8人のチームで、授業の計画づくりからチームで取り組む。
研究授業は、チームの代表として交代で行う。
教科を問わず、校長以下全員で同じ授業を見る。
この結果、反省点が個人の批判に終わらず、
一緒に課題に取り組む姿勢が共有できる。

鶴田裕子前副校長(53)は、「良い点に注目していくので、
最初は『ぬるい』と感じた」
ベテランも若手も、対等に活発な意見を交わす姿を見て、考えが変わった。
「年齢や経験差を超えた絆が生まれたことで、逆に問題点についても
深く議論できる関係ができた」

「受け入れられている」という安心感が意欲を生むのは、子どもも大人も同じ。
そのことに気付いた先生たちは、子どもたちの様子に、
これまで以上に目を配り、ほめ上手になった。
年10回以上学校に通うという南部教授は、「先生たちも含め、
学校全体で成長を支え合う雰囲気が生まれている」

職員室で、「ちょっと次の授業見に来て」と気軽に声を掛け合う。
この協力体制が生かされた良い例が、昨年4月、同区で全教室に
導入された電子黒板の活用。

ハイテク装置が得意でない先生ももちろんいたが、
「実物投影機」でお手本を書きながら、ノートの使い方を指導したり、
手元で実験を見せたり。
アイデアを共有し、都内で有数の先進校に急成長した。

「同僚に助けられた。今は電子黒板なしには授業ができないほど」と、
昨年度6年生担任の野沢一代教諭(43)。
職員室の風通しのよさが、活気を呼び込んでいる。

◆尾久第六小の校内教員研修

〈1〉教科部会で授業づくり(当初は低・中・高の学年部会で)
〈2〉部会の代表者が授業。授業を見た人全員が教師、
  子どもそれぞれに「良い点」、「改善点」について付せん紙に意見を書く
〈3〉授業の検討会は、意見を模造紙上で整理しながら議論する
  ワークショップ形式。結果を図にして発表、意見交換する。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110519-OYT8T00268.htm

2011年7月22日金曜日

再生エネルギー普及へ意欲 江田環境相が葛巻視察

(岩手日報 7月18日)

江田五月環境相は、葛巻町の再生可能エネルギー施設と
東日本大震災で被害を受けた宮古市を視察。

エネルギー自給率100%を超える葛巻町の取り組みを評価した上で、
「葛巻町でできることが、日本全体でできない理由がない」と、
再生可能エネルギーの導入促進に意欲。

江田氏は葛巻町で、間伐材で発電する木質バイオマスガス化施設や、
冷暖房を地中熱で賄うゼロエネルギー住宅、葛巻中に設置した
太陽光発電、風力発電施設などを視察。

案内した鈴木重男町長は、「山村には、再生可能エネルギーが豊富にある。
規制を緩和してもらえれば、どんどん増える」と訴えた。

江田氏は、「エネルギー自給率が、100%を超えているのはすごい。
(再生可能エネルギーを普及させるためにも)法案を通してもらわないと」と、
再生エネルギー特別措置法案の成立を急ぐ考えを示した。

宮古市では、田老地区でがれき撤去の状況を確認し、浄土ケ浜を視察。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110718_7

老老介護世帯の増加顕著 在宅は女性に負担重く

(2011年7月13日 共同通信社)

国民生活基礎調査では、要介護の高齢者を、同居する高齢の家族が
介護する「老老介護」世帯の増加が浮かび上がった。

75歳以上の要介護者がいる世帯のうち、75歳以上の家族が
主に介護している世帯は25・5%と、過去最高。

団塊世代が60歳代に到達した影響で、60歳代同士の老老介護世帯も
62・7%と過去最高に。
65歳以上同士は45・9%、厚生労働省は「次回調査時には、
団塊世代が65歳に達し、老老介護世帯の割合はさらに増加するだろう」

介護の負担が、女性に重くのしかかっている現状も浮き彫りに。
主に介護を担当する「介護者」を、要介護者の同居家族が務めている
ケースが64・1%、うち約7割を女性が占めた。
介護時間が、「ほとんど終日」という介護者も、72・8%が女性。

居宅介護サービスの利用状況を見ると、要介護者がいる65歳以上の
高齢者世帯の20・6%が、「利用しなかった」と回答。
訪問サービスや短期入所を利用しなかった理由では、半数以上の世帯が
「家族介護で何とかやっていける」と答え、「他人を家に入れたくない」、
「利用者負担が払えない」などの理由も。
在宅介護サービスの拡充を目指す、介護保険制度の定着の難しさも垣間見えた。

※国民生活基礎調査

厚生労働省が政策の基礎資料とするため、世帯ごとの平均所得や
人員構成など、国民生活の基礎的事項を調べる調査で、
1986年から毎年実施。
全国から無作為に対象を抽出し、調査員が各世帯を訪問して、
前年の状況を聞き取る。
2011年、保健や医療、福祉、年金などの分野を3年に1度調べる
大規模調査の公表年に当たっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/13/139263/

やる気の秘密(5)頭のなか 描いて整理

(読売 5月18日)

津軽半島北端に近い青森県中泊町立小泊小学校で、
2月上旬に行われた6年生の社会科の授業。

子どもたちが、模造紙を囲んでカラーペンを走らせ、
「マインドマップ」と呼ばれる樹形図を作っていた。
「いい感じで枝が伸びてるな」。
担当する教務主任の前多昌顕教諭(41)が声をかけた。

マインドマップとは、ものごとの関連づけや発想の広がりを、
色やイラストなどを使って視覚的に表現したもの。
21人の児童は、韓国、ブラジルなど、グループごとに選んだ国について
調べ上げた特徴で、マップを作成。
これを見ながら、各国の概要を140字の文章でまとめた。

独学でマインドマップを始めた前多教諭は、思考を練り上げる
「道具」としての可能性を感じ、2008年、前任校で授業に本格導入。
小泊小では、昨年度から6年の社会で使い始めた。

歴史のように、記憶する知識が多く、苦手な子が増える科目では
特に有効と感じた。
大切なのは、何を成し遂げるかだと考え、マップの描き方だけでなく、
文章で再構成する作業も取り入れた。

「思考を、すぐに言葉にするのが難しくても、
マップを使えば表現の幅が広がる。
授業に参加できない『お地蔵さん』がいなくなった」と前多教諭。
担任の中谷美穂教諭(38)も、「作文嫌いが確実に減り、構成力もついてきた」

道具は、使いこなせなければ意味がない。
マップが、子どもたちの血肉になるように気を配った。
まず、言葉をつなげて枝を広げる作業に慣れるため、
教科書から単語だけを抜き出す練習から開始。
慣れたら予習として、教科書の内容から簡単にマップを描く。

授業では、先生が大きな模造紙にマップを描きながら説明、
テストのまとめにも使う。
「平安時代」なら、中心に描いたキャラクターは十二ひとえ姿といった具合。
「内容が覚えやすい」、「落書きみたいで楽しい」と、
授業以外で使いこなす子も増えてきた。

マップの「効果」は、前多教諭自身も実感。
ネットを通じて、実践を紹介したところ反響を呼び、人脈も視野も広がった。
同僚にも活用の輪ができ、県内への普及会も発足。
「将来、教育の場で当たり前に使われるようになるのが夢」。
教師の発信力が、周囲を巻き込んだ力になりつつある。

◆マインドマップ

イギリスの教育者トニー・ブザン氏が考案した思考整理法。
日本では2006年頃、まず企業が注目。
07年発足の「ブザン教育協会」(東京)が教員向けに研修などをしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110518-OYT8T00244.htm

2011年7月21日木曜日

東北大に女性科学者特別賞 震災後も活動と評価

(2011年7月13日 共同通信社)

優れた成果を出した若手の女性科学者に贈る
「ロレアル・ユネスコ女性科学者日本奨励賞」の今年の受賞者に、
名古屋大の植田桐加さん(25)=有機化学=ら4人が選ばれ、
東北大の「サイエンス・エンジェル」事業が特別賞に選ばれた。

サイエンス・エンジェルは、理系の大学院生の女性が
小中高校に出張セミナーなどを行い、科学の面白さを伝える活動。
参加した大学院生は延べ約230人、震災後も活動を続けていることが評価。

代表して表彰状を受け取った小谷元子東北大教授は、
「受賞によって、復興への大きな力をもらったように感じている」

奨励賞には、物質科学分野に、植田さんとお茶の水女子大の竹原由佳さん
(26)=ソフトマター物理=の2人。
生命科学分野に、東大の水沼未雅さん(25)=神経薬理学=と、
広島大の森田真規子さん(26)=細胞生物学=の2人が選ばれた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/13/139268/

やる気の秘密(4)職員会議やめ授業研究

(読売 5月14日)

「教師の説明量が多かった」、
「子どもの学び合いが発表会になっていた」。

東京・東村山市の市立大岱小学校の校長室。
1時間前に行われた小林由佳教諭(27)の音楽の研究授業に対し、
次々と課題が指摘。

教師たちは、付箋に書いた課題点を読み上げ、書記担当の教師が
それらをグループ別に分類。
書記担当が、そのグループの主題をピンク色の短冊形の紙に
書いて模造紙に貼る。

続いて改善策。
「板書を効果的に生かしてはどうでしょう」、
「学び合いの時間を増やしては」。
今度は、青色の短冊が貼られていく。
小林教諭はすぐさま、黄色の短冊に書いておいた改善プランを
貼りながら発表。

「説明が多かったので、掲示物で代替します」、
「発表会にしないよう、学びを深めさせるための手だてを考えます」

時間にしてわずか30分。
普通の学校で見られる、良い点の評価などは一切ない。
小林教諭はその後、改善プランの論文をすぐ書き上げ、
模造紙は児童や保護者らも読めるように校内に掲示。

研究授業と、その後のこうしたワークショップ型研究会は年に約40回。
教師1人につき年2回以上。
教える側のこうした努力があって初めて、大岱小の
「児童が主役の授業」は成り立っている。

教師が、こうした研究や授業改善により多くの時間を割けるような工夫も。
その一つが、職員会議の廃止。
2004年度から段階的に縮減、全廃。
通常の学校では、教師数人で担当する校務を1人の責任制にするなど、
校務をスリム化。
「DCAPサイクル」と名付けた同小独自の仕組みも実行し、
教師はより一層、子どもに寄り添う時間を確保できる。
西留安雄・前校長(61)は、「改革には、学校の常識を見直さなければならない」

鳴門教育大学の村川雅弘教授(教育工学)は、
特に職員会議の廃止が独創的だと評価し、こう解説。
「何かを削らなければ、日々の改善も無理が生じて続かなくなる。
子どもから最も離れたものは、何かを考えての結果」

こうした取り組みは、ほかの学校でも可能か?
村川教授は、「授業、研究、経営のそれぞれの改善を連動させることが必要。
異動のある公立校では、市・県単位での努力が求められる」と指摘。

◆DCAPサイクル

運動会の場合、Do(実行)したら、その日のうちにCheck(検証)と
Action(改善)をし、翌年の運動会のPlan(計画)を作ってしまう。
翌年のPlanにかかる時間を大幅に減らす。
通常のPDCAサイクルだと、「Pの比重が大きく、時間がかかる割に、
CとAがつながりにくく、循環が回らないことがある」という反省から、
こうした取り組みが始まった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110514-OYT8T00164.htm

政府の「医療イノベーション」推進

(2011年7月12日 読売新聞)

「ドラッグ・ラグ」が問題になっているけれど、
解消に向けた取り組みは進んでいるのだろうか?

ドラッグ・ラグとは、日本では新薬の承認が欧米より遅く、
海外では一般的に用いられる薬でも、
国内の患者がなかなか使えない状態を指す。

2007年の世界売り上げ上位品目について、医薬品産業政策研究所が
調査会社IMSのデータを基に分析した報告では、
新薬が世界で初めて発売された時点から、日本で発売されるまでの
平均期間は4・7年。
世界で最初に発売される薬が、近年多い米国の1・2年などと比べ、
大幅に遅い。

日本では、薬の効果や安全性を調べる臨床試験や、
その結果を基にした公的な審査に時間がかかる。
製薬企業側も、審査が早い欧米で先に臨床試験に着手しがちに
なっていることなどが、遅れの原因として指摘。
その結果、経済的な面でも、医薬品や医療機器の分野は大幅な輸入超過。

こうした状態を解消しようと、政府は「医療イノベーションの推進」に
力を入れ始めた。
産学官が連携し、がんや認知症などの画期的新薬や新しい治療法を
世界に先駆けて開発しようという構想。
国内の患者に、新薬などを早く届けると共に、
医療分野で国際競争力を高める狙いもある。

政府は昨秋、新成長戦略に基づいて「医療イノベーション会議」を設置、
6月に決定した社会保障・税一体改革案にも推進方針を盛り込んだ。

同会議は、基礎研究から実用化まで切れ目ない支援をするため、
大胆な予算投入と規制改革を行う方針。
重点分野には、
〈1〉医薬品、
〈2〉医療機器、
〈3〉失った体の組織や機能をよみがえらせる「再生医療」、
〈4〉一人一人の体質に合わせて治療を選ぶ「個別化医療」--を挙げている。

すでに薬の審査に当たる職員の増員は始まり、
臨床試験の拠点病院を、3年以内に15か所指定する方針。

東日本大震災などで財政が厳しい中、どれだけ重点分野に
予算を投入できるかは不透明。
新薬発売を急ぐあまり、安全性が軽視されることもあってはならない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/12/139239/

2011年7月20日水曜日

やる気の秘密(3)言語能力高める工夫

(読売 5月13日)

45分のうち、わずか約8分。
東京都東村山市立大岱小学校6年2組の社会の授業で、
池田守教諭(30)が話した時間。
残り37分間を進めたのは、ほかならぬ児童33人。

テーマは国連。
冒頭、目的や流れなどが示されると、児童は独自に事実や意見を調べ、
2~3人のグループで内容をまとめ、それを板書。
黒板の前で発表者を相互に指名し、書かれた事実や意見を
確認したり、議論を深めたりした。

「『1945年設立。56年日本加盟』とありますが、何で分かったことですか?」
「設立は辞書に、加盟は資料集に書いてありました。
では、次に○○君、何か意見などはありますか?」

「△△さんの、『なぜ紛争・戦争が起こるのか』というのは疑問なので、
意見だと思います。
その答えですが、資料集に、今も宗教や民族の対立などが原因で
紛争が起きている、と書いてあります」
「そろそろ誰かまとめてください」

この間、池田教諭は発表を聞いて、板書を加えていくだけ。
大岱小の目指す、児童主体の、児童で学び合う授業は
スムーズに進んでいった。

こうした授業を可能にする背景には、独自の取り組みがあり、
それが児童のやる気につながっている。

独自教科書の「まなブック」。
資料や教科書の調べ方のほか、「つまり~ということですか?」など、
学び合いの際に使う言葉「言語わざ」が書かれ、児童は常に活用。

質問や確認をできたら「レベル5」、自分たちで授業を進められたら「レベル7」
というような独自の基準「言語星」があり、
児童たちは今のレベルを認識でき、更に上を目指そうとする。

授業を通じて成長したり気付いたりしたことを、

ノートに書いて提出する「振り返り」、
児童の手によるノートコンクール、独自の算数ドリル・漢字検定、
放課後補習などの取り組みもある。

成果は数字でも証明され、2010年度の全国学力・学習状況調査
(全国学力テスト)で、全国や東京都の平均を上回った。
「思考」や「表現・処理」の観点で分析すると、
全国平均より約20ポイント高かった。

7年かけて授業改革を主導した西留安雄・前校長(61)(3月で退職)は、
「教師が話すだけの授業はつまらない。
仕組みさえあれば、子どもたちは自ら学ぶ。
塾に行かなくても、成績は上がる」

◆言語星

大岱小学校での言葉の使い方に関する規律。
レベルは1~7。
授業前に、日直が目標レベルを宣言する。
各レベルは次の通り。
〈1〉「はい」という返事を大きな声で言える
〈2〉「です、ます」と最後まで丁寧に話せる
〈3〉相手に聞こえる声で、最後まで話せる
〈4〉相手の目を見て話したり聞いたりできる
〈5〉質問や確認をできる
〈6〉わけを添えて意見を言える
〈7〉まなブックを使って、自分たちの力で授業を進められる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110513-OYT8T00224.htm

県の復興基本計画案を説明 住宅再建や仮設などで意見要望 「多重防災型」に異論なく

(東海新報 7月17日)

県が、東日本大震災津波で策定した「復興基本計画(案)」の
地域説明会が、大船渡、陸前高田両市で相次いで開かれた。

高台移転や避難ビルで、「多重防災型まちづくり」を進める計画案の
考え方について異論は出なかったが、住宅の再建に対する支援や
土地利用などに関しての提言のほか、仮設住宅の入居者から
要介護者を抱える家族などに配慮を求める要望。

県は、9月議会に提出する復興基本計画に、県民の意見を反映するため、
地域説明会を各地で開催、廣田淳副復興局長らが概要を説明。

基本計画案は、津波対策の基本的な考え方として、
多重防災型まちづくりを掲げ、暮らし再建、なりわい再生の10の柱を設定。

復興に向けたまちづくりでは、
▽都市再生型
▽都市再建型
▽集落移動型
の三つの復興パターンをデザイン画で示しながら説明。

大船渡会場で開かれ、高校生を含む市民約50人が出席。
住宅移転に関連して、「農地の宅地転用に2カ月かかる。
スピーディーに行うようにすべき」という提言、
県は農地転用の手続きが短縮できるよう、国に特区を設けることを要望中。

特区に関する質問もあり、県はまちづくり、土地利用、二重債務、
漁業再生など九つの特区を国に提言、「人命を二度と失わないよう、
早く防災計画を作るべき」との意見に対し、
計画の見直しを同時に進めていると説明。

岸壁が地盤沈下し、漁船が係留できない現状を訴える漁業者は、
「漁船の係留場所を確保してほしい」と要望。
計画案に盛り込まれた復興教育の具体的な内容を問う質問もあり、
「防災文化を次世代に伝え、いま支援の手が差しのべられている
『つながり』を保ち広げていく」との考え。

陸前高田会場には約100人が参加、要望や提言が続出。

民間で住宅団地を計画している人から、
「100戸規模の建設を計画、土地の売買、造成に対する補助や
相談窓口を設けてほしい」と要望。
実家を流失した被災者は、「住宅再建に対する支援をもっと国にアピールすべき」

住宅再建の支援策について県は、「新潟地震の時に適用された
防災集団移転事業では、用地取得や造成の補助があるが、
住宅建築は利子補給のみ。
住宅の建築資金への補助が無いので、国に要望

浸水地域の私有地について、「地権者に補償したうえで、市や県、国の
宅地造成計画に対して協力するような法改正が必要」、
「土地を嵩上げする時、史跡を残し平泉と一体の観光を進めてほしい」

被災した学校などの公共施設のがれき撤去に、国の補助が無く、
「市の復興の支障になっている」という声に、
県としても国に対応してもらう方向。

仮設住宅の入居者から、家族構成に配慮した住宅の割り当てを求め、
要介護者を抱える人は、「仮設での高齢の母親の介護に不安を持っている」、
要介護向け仮設の建設や仮設間での移動可能を求め、
県では市とも今後検討。

廣田副復興局長は、「早くまちづくりの姿をはっきりさせてほしいとの
皆さんの意見と受けとめ、県としても生活の安定と復興の道筋が
できるように頑張りたい」

計画期間は、平成23~30年度までの8カ年計画。
「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」
を目指す姿。
計画案について、今月末まで県民の意見を募集するパブリックコメントも実施。

http://www.tohkaishimpo.com/

スポーツを考える:高橋豪仁・奈良教育大教授(スポーツ社会学)

(毎日 7月16日)

スポーツの魅力の一つは、物語性にある。
人間は、意味を求めずには生きていけない動物だから。
では、どうやって物語は作られるのか?
スポーツには、スポーツならではの物語の作られ方がある。

92年夏の甲子園、星稜の松井秀喜選手が明徳義塾戦で
5打席連続敬遠され、一度もバットを振らせてもらえずに敗れた。
あの時、スタンドの観客は怒ってブーイングをしたり、
「帰れコール」をしたりした。
打たれる確率が高くても、真っ向勝負をするものだという
物語の枠組みが出来上がっていたからだろう。

阪神大震災から3年半後の98年7月、オリックスの活躍によって
勇気づけられたかを球場に来た人たちにアンケートしたことがある。
神戸在住者の97%が、「勇気づけられた」と回答。

市民球団の広島カープが75年に初優勝した時、
当時のオーナーが球団の歩みと、原爆で壊滅した町の復興とを
重ね合わせて語っている。

感動を呼ぶ出来事(プレーや試合)をメディアが切り取り、
強調することで物語が作られている。
出来事と物語の循環によって、物語が強化・再生産される。
そこでメディアの果たす役割は大きい。

01年に発生した9・11同時多発テロの時、米国に滞在。
大学フットボールでは、試合前に犠牲者に祈りをささげ、
ヤンキースタジアムに行くと、第二の国歌と言われる
「ゴッド・ブレス・アメリカ」が歌われた。
国民としての凝集性を高めるのは、スポーツの政治的な機能で、
物語性と関係している。
いい悪いは別にして、これも有事にスポーツが果たす役割。

今回の東日本大震災では、阪神大震災の時と同じように、
災害からの復興を映し出す鏡として、スポーツが位置付けられている。

日本一になったオリックスのように、うまくはいかないかもしれないが、
被災者は楽天やベガルタ仙台をはじめ東北のチームの戦いぶりに、
つかの間、自分たちの生活を重ね合わせ、勇気づけられるだろう。
阪神が強くなかった時でも、ファンは「出来の悪い息子みたいなものだ」
という物語を作って応援。
勝てばすべていいのではなく、勝敗の絶対性が揺らぐような物語が作られる。

今後は、スポーツ情報を批判的に読み解くメディアリテラシーが必要。
メディアは、明るい前向きな話題の方がニュース価値があり、
読者や視聴者の同意を得やすいと考え、その文脈から外れる
厳しい現実やスポーツの限界は取り上げようとしない。

受け手は、こういう文脈だから、こういうメッセージをメディアが発していると
自覚的に受け取る能力を磨かなければならない。
==============
◇たかはし・ひでさと

1962年生まれ。スタジアムにおける観戦者行動の調査など。
近著「スポーツ応援文化の社会学」(世界思想社、2011年)

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/16/20110716dde007070061000c.html

2011年7月19日火曜日

親が受けたストレス、子に遺伝…理研グループ

(2011年7月11日 読売新聞)

外からのストレスで遺伝子の働きが変化する仕組みを、
理化学研究所の石井俊輔主任研究員らのグループが明らかに。
遺伝子の「働き」の変化は、子に遺伝することもわかった。
米科学論文誌「セル」に発表。

遺伝情報は、「塩基」とよばれる物質の並びとして、DNAに刻まれている。
トウモロコシの実の色は、基本的にはこの塩基の並び方で決まる。
気温や日照時間の異常といったストレスが加わると、
遺伝子の働きが変化し、ストレスが取り去られても、
その影響が子に伝わることが知られている。
だが、その変化の仕組みがわかっていなかった。

DNAは、ヒストンというたんぱく質の塊に巻き付いている。
石井さんらは、塩基の並びに変化がなくても、その巻き付き方の違いで、
遺伝子が働いたり働かなかったりする仕組みに着目。

白い目のショウジョウバエの卵を、お湯につけてストレスを与えると、
「ATF2」というたんぱく質が活性化し、DNAの巻き付きが緩むことを発見。

緩んだ結果、赤い色素を作る遺伝子が働くようになり、
生まれてくるハエは目が赤くなった。

巻き付きの緩さは、子に遺伝した。
目が赤くなったショウジョウバエの子も、目が少し赤くなったが、
孫の世代では白い目に戻った。
親と子に続けてストレスを与えると、
目の赤さは孫、ひ孫、やしゃごまで残った。

石井さんは、「ストレスが、生活習慣病や精神疾患を引き起こす
メカニズムをあきらかにして、病気の予防などにつなげたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/11/139181/

やる気の秘密(2)ボードに意見、課題解決

(読売 5月12日)

「今日は、最後のホワイトボード・ミーティング。
ファシリテーター(進行役)は、メンバーが力を発揮できるように支えてね。
この経験は今後、どんなチームに所属しても使えるよ」

埼玉県狭山市立堀兼小学校の4年2組。
担任の岩瀬直樹教諭(40)が呼びかけた。
「子どもが主役の授業」を実践するこのクラスでは、ホワイトボードが大活躍。

この日の学級活動は、「お悩み相談室」。
一人の悩みをグループで話し合い、交代で進行役を務め、
みんなの意見をボードにひたすら書く。
どんなつぶやきも、否定しないのがルール。
出された意見を線で囲んで整理、解決策につなげる。

この方法を始めて約3か月、話を引き出す質問も、
あいづちも板についてきた。
ある子は、「ケンカのとき、ホワイトボードで話を聞くと解決が早いんだ」
「勉強時間が短い」との悩みに、
「じゃあ一緒にチェックリストを作ろう」と、支援策も生まれた。

岩瀬教諭は近年、異年齢の遊び集団が少ないためか、
人とかかわるのが苦手な子が多いのを感じていた。
自ら学ぶ姿勢を育てるには、教師だけが努力しても効果が薄い。
企業で注目される会議法など、学校外の知恵も積極的に求め、
子ども同士の交流が生まれる参加型の授業に切り替えた。

1冊の本を分量を決めて読み、グループで話し合う「文学サークル」
3学期は、約150ページある児童文学『テラビシアにかける橋』を読了。
疑問や感想を持ち寄り、約30分も話が盛り上がる。
読書が苦手な子も、長編を読み通す自信をつけた。

「作家の時間」と称した作文の時間は、自由な題材で書いた「作家」が、
「作家の椅子」に座って発表。
全員が読者になって、ファンレターを返す。
こうした日々の積み重ねが、どの子も安心して
授業に参加できる雰囲気を作った。

子どもたちが毎日書く「振り返りジャーナル」(日記)には、
「きょうの授業は、みんなが意見を言えて良かった」など、
クラス全体を見渡した記述が多い。
「意欲というのは、他の人と一緒に取り組んだ時に生まれることを、
実感します」と岩瀬教諭。

3月末でクラスは解散した。
ある子は、最後の日記にこう書いた。
「5年になっても、(中略)大人になっても、クラスの友達が
一緒じゃなくても、自分の力でチーム、クラスをつくる。
イワセン(岩瀬先生)、いままでありがとう!」

◆ホワイトボード・ミーティング

「人まちファシリテーション工房」(大阪市)代表のちょんせいこさんが提唱。
ファシリテーターを中心に意見を出し合う「発散」、
課題を見つける「収束」、解決策につなげる「活用」の3段階に沿って、
黒、赤、青の色ペンを使い分け、議論の過程を可視化する。
合意形成や課題解決がしやすく、企業などで活用。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110512-OYT8T00226.htm

JOC:都内で100周年シンポ 「スポーツ宣言日本」採択

(毎日 7月16日)

日本体育協会(体協)とJOCの創立100周年を記念した
シンポジウムが15日開かれ、スポーツの過去100年の成果や教訓を踏まえ、
今後100年に果たすべき使命を集約した「スポーツ宣言日本」を採択。

体協とJOCの前身となる大日本体育協会は1911年、
柔道の創始者、嘉納治五郎氏によって創立。

趣意書には、「国民体育の振興とオリンピック競技大会参加のための
体制整備」と記されたが、今回のスポーツ宣言は、趣意書の志を継承しつつ、
「21世紀における新たなスポーツの使命」と題し、
各地で行ったシンポジウムなどの意見も参考にまとめられた。

宣言では、
(1)公正で福祉豊かな地域生活の創造に寄与する
(2)環境と共生の時代を生きるライフスタイルの創造に寄与する
(3)フェアプレーの精神を広め、深めることを通じて平和と友好に
満ちた世界を築く--の3点を柱。

◇IOC会長講演

シンポジウムでは、IOCのジャック・ロゲ会長が特別講演を行い、
「スポーツ界は、ドーピングや人種差別、不正などさまざまな危険に
さらされているが、今こそスポーツの意義を有効に活用しなければならない
などと強調した。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/16/20110716ddm035050116000c.html

2011年7月18日月曜日

やる気の秘密(1)児童が教室レイアウト

(読売 5月11日)

教室に入ると、一風変わった景色が広がっていた。
埼玉県狭山市立堀兼小学校の4年2組。

黒板の脇には「おしゃべりスペース」、後方の窓際には
約1200冊の本が並ぶ畳敷きの図書コーナー、
先生の机は、教室後方の出入り口の横に。

担任の岩瀬直樹教諭(40)(現・同市立入間野小学校教諭)は、
担任になった昨年4月、子どもたちに「教室リフォーム」を呼びかけた。
自分たちが、居心地がよくて勉強したくなる教室。
殺風景だった部屋が、数時間で変わった。
その後も、整理棚や教室の掲示を、自分たちで工夫するのが日常に。

机の配置は、4人組が向かい合う形。
先生が話す時間より、子どもたち同士で話し合ったり、
教え合ったりする場面が多いため。

どの授業でも、その日のテーマや目標をはっきりと先生が伝えて共有。
算数などは、ポイントを先生が教えるが、その後は少人数に分かれ、
教室内で移動してもOK。
畳コーナーにも、輪ができる。

最後の5~10分は、必ず「振り返り」に使う。
目標が達成できたか、改善すべき点はあるかなどを確認しあい、
ミニテストにも使う大切な時間。

学習の「目標設定」と「振り返り」の先には、4月に数時間、
話し合って決めた「ニコニコハッピークラス」というクラス目標。
「男女の別がない」、「前向きなプラスの言葉をつかう」、「協力しあう」
といった話し合いの過程の付箋がついたまま、教室に掲げてある。

昨年7月のある授業の後、「クラスの力が一段上がった」と感じた
岩瀬教諭は、授業の振り返りに時間をとり、
出された意見を模造紙に書きこんだ。

「全員で分かろうとしてた」、「燃えた」、「できない人を放っておかない」、
「教える人も教わる人も集中!」。
いい授業はみんなの力で作るもの、という意識が次々に表れた。

岩瀬教諭は約10年前まで、「面白い授業で喜ばせる」ことに
必死になっていた。
自分が担任を離れた後で、子どもたちの様子を見て、
「ただ口を開けておいしいものを待つ、受け身の子どもたちを
育てていたのか」とがくぜんとした。
「学習の主役は子どもたちのはずだ」。
改革は、その思いから始まった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110511-OYT8T00177.htm

大船渡復興屋台村が始動 10月開業目指す 野々田地区に仮設20店舗

(東海新報 7月17日)

大船渡市大船渡町の商店街再興に向け、地元飲食店主たちが、
同町野々田地区に大船渡復興屋台村をオープンさせる計画。

大船渡飲食店組合(及川雄右組合長)が、仮設店舗を一つのエリア
(約400坪、20店舗予定)に集め、復興屋台村として
開業・運営するもので、10月上旬の開業を目指す。

3月11日の大震災による大津波で、大船渡飲食店組合に加盟する
60店舗のうち、57店舗(95%)の飲食店が津波で流された。

同組合では、港町・大船渡を支えるもう一つの顔である飲食店の賑わいを
取り戻そうと、4月に大船渡復興屋台村プロジェクトを立ち上げ、
屋台村オープンに向けて準備を進めていた。

中小企業基盤整備機構(中小機構)の認可を申請中で、
認可が下り次第ただちに建物を着工し、10月初旬の開業を目指す。

建設予定地は、同町野々田の民有地で、
敷地面積は1321平方㍍(約400坪)。
飲食屋台(1店舗当たり約8坪)と共同トイレ2棟を設置。

出店業種は、居酒屋系、ショットバー、ラーメン、そば、寿司、焼肉、
洋食、和食、中華、スナック、バーなど原則不問。
運営形態は、大船渡屋台村協同組合とし、店舗数は20店舗を予定。

1次募集は、大船渡飲食店組合加盟店が対象(募集期間、25日~31日)、
2次募集は、市内に在住、店舗があった人が対象(同、8月1日~10日)、
3次募集が、気仙管内に在住、新規参入者が対象(同、11日~20日)。
定員になり次第締め切る。

募集要項によると、契約者本人が営業することが原則、
契約期間は3年間。
出店者負担費用は、付帯設備の配線工事費(20~30万円程度)。
毎月のテナント料・家賃はなく、共益費が月1万5000円。

及川組合長は、「屋台村を、飲食店街の復活と市街地の活性化、
復興への幕開けの象徴とし、大船渡の人たちの元気を取り戻し、
復興に向けてがんばっている姿を全国に発信したい


出店者募集説明会は、20日午後3時からオーシャンビューホテル丸森で。
問い合わせは、及川さん(℡090・3362・7712)。

http://www.tohkaishimpo.com/

OCA:スポーツで世界は一つに フォーラムで室伏らが講演

(毎日 7月13日)

日本体育協会と日本オリンピック委員会(JOC)の
創立100周年記念事業として招致した、
アジア・オリンピック評議会(OCA)の会議が12日始まった。
13日は理事会、14日は総会が行われる。

この日は、午前のアスリート委員会に続いて、
「アジアアスリートフォーラム」が行われ、国際オリンピック委員会の
フランク・フレデリクス選手委員長(ナミビア)や、
陸上の室伏広治(ミズノ)ら7人が講演。

講演で、フレデリクス委員長は、競技生活中も引退後のことを考え、
高い教育を受けることの重要性を力説。

室伏は、自作の映像を駆使して、東日本大震災の被災地を
訪問した時のエピソードなどを披露し、
「世界は、スポーツを通じて一つになれる」と訴えかけた。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/13/20110713ddm035050113000c.html

2011年7月17日日曜日

復興計画8月末以降に 地区別図案に課題多く 「二線堤」構想に唐突感も

(東海新報 7月16日)

大船渡市は、市災害復興計画の策定時期が
8月末以降にずれ込む見通し。
国の復興施策審議が予想よりも遅れる中、市では再度地区別に
懇談会を開催、住民の意向把握を進める考え。

土地利用の「たたき台」として復興方針図案を示したが、
かさ上げする道路の高さや居住可能区域の範囲など、議論の余地を多く残す。
市が強調する「復興のスピード感」と、住民の合意形成を得た
将来像確立との両立に向け、正念場を迎えている。

県内被災地自治体の中でいち早く、復興施策づくりに着手した大船渡市。
震災から12日後の3月23日、庁内に災害復興局を新設。
4月以降、住民意向調査の実施や復興計画策定委員会の開催など、
早期策定を目指して積極的に取り組んできた。

各種施策の指針となる復興計画骨子は、住民懇談会や
復興計画策定委などによる議論を経て、今月上旬にまとまった。
具体的な事業内容を盛り込む復興計画は、今月末の策定を目指していた。

市では、計画策定時期を8月末以降。
計画実施に国の予算支援が欠かせない中、復興施策の財源となる
第3次補正予算が秋以降に。
国の動向を判断しながら、策定作業を進める。

この間、再度地区別の住民懇談会を開く。
住民の意向を、再度把握しなければならない課題も。

第3回復興計画策定委で初公表した、復興方針図案。
図案はあくまでも、議論に入る前段階の「たたき台」として用意。
今後、図案内容が大きく変更する可能性も。
半面、この認識の裏を返せば、現段階では甘さや問題点が多い。

これまで、「再び津波が来ても人が亡くならない、
住居が流されないまちづくり」を掲げ、
その一つとして高台に住居移転する構想。
復興図案でも、高台移転の候補地を示しているが、
浸水域の多くが居住可能な地域。

浸水域の住宅を守る機能として盛り込まれたのは、道路のかさ上げ。
沿岸部を通る道路を盛り土などで高くすることで、
津波を食い止める「二線堤」の考え。

今回、末崎町の船河原海岸沿いに位置するJR線の線路が
「防波堤」となり、山側に広がる住居地域の被害を軽減。
道路自体の浸水被害も抑え、交通アクセス確保も期待できるが、
実現化には議論の余地を多く残す。

道路のかさ上げは、復興計画策定委員からも「唐突では?」
先月の市議会定例会では、国道45号のかさ上げに言及した
当局答弁はあったが、海側の道路には踏み込んでいない。

二線堤による減災対策は、東日本大震災復興構想会議が
菅直人首相に答申した提言に盛り込まれた。
この提言や国の動向をふまえた上で、市内では“初披露”。

図案でのかさ上げは、主要地方道大船渡綾里三陸線、
県道丸森権現堂線、門之浜海岸沿いを通る市道高清水鶴巻線、
県道崎浜港線が検討候補に。
高さの具体的な数値はなく、「さらに山側の線路や国道が
検討対象になる可能性もある」

2巡目の住民懇談会では、道路や土地利用のあり方が議論の柱に。
どの道路をかさ上げするかで、居住可能区域は大きく変わり、
住民生活にも大きく影響。
計画策定から、スムーズな事業着手に入るためには、
住民の合意形成が欠かせない。

多くの住民がマイカーを持ち、道路位置のあり方は、
まちづくりや商業地図にも大きく影響。
今後、数十年を見据えた地域社会形成の視点と防災の両立が
求められる中、計画策定時期を8月末以降に延ばしたとしても、
残された時間は決して長いと言えない。

さらに計画策定を遅らせれば、復興ムードの醸成や経済活動の
再開にも支障をきたすことが予想。
これからの1カ月半が、市内復興の正念場となりそう。

http://www.tohkaishimpo.com/

東日本大震災:IOCのロゲ会長、被災者と対面

(毎日 7月15日)

国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長が14日、
東京都内で東日本大震災の被災者と面会した。

日本オリンピック委員会(JOC)が、ユニホームなどの衣料を届け、
医療チームなどを派遣してきた岩手県大船渡市の9人が参加。

同市にある本増寺の木村勝行住職が、
「JOCのみなさんから、オリンピックの精神である元気、健康、
スポーツの精神をいただいた」とあいさつし、
ロゲ会長に、津波で自宅が流されていく写真、復興の印として特産品の
ワカメなどが手渡された。

ロゲ会長は、「大惨事に耐え、勇気を持って立ち上がる皆さんに敬服する」
などと話した。

ロゲ会長はこの日、日本外国特派員協会で行った講演で、
東京が立候補に意欲を示している20年の夏季五輪招致について、
「大陸間で開催地を巡回するというルールはない。
18年(冬季大会)が平昌になったが、東京が立候補すれば、強い候補地である」
と東京の立候補を歓迎する意向を示した。

*****
これに私も参加しました。
ロゲ会長が、被災者に気を配っていただいたことは、本当にうれしいことです。
スポーツの多くの試合会場や競技会場で、エールを送ってくれたことは、
私たちを大いに励ましてくれました。
今後も、アスリートを派遣してくれるとのこと。
スポーツで、多くの人たちを励ましてほしいです!!
そのくらい、スポーツにはパワーがあります。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/15/20110715ddm035040078000c.html

生殖細胞の性決める遺伝子 ショウジョウバエで発見

(2011年7月8日 共同通信社)

生殖細胞が雄、雌どちらの性別になるかを決める遺伝子があることを、
自然科学研究機構基礎生物学研究所の小林悟教授(発生学)らの
研究チームがショウジョウバエを使った実験で発見、
米科学誌サイエンス(電子版)に8日付。

生殖細胞の性別が決まるメカニズムは明らかになっておらず、
生殖細胞そのものに性別を決める遺伝子があることを証明したのは初。

雄の生殖細胞は精子に、雌の生殖細胞は卵になる。
生殖細胞の性別はこれまで、体細胞から出るタンパク質の刺激を受けて
決まると考えられてきたが、体細胞の性別が変わっても
生殖細胞の性別が変わらない事例が多数あることから、
チームは、生殖細胞そのものに性別を決める遺伝子があると考えた。

生殖細胞が、精巣や卵巣になる「生殖巣」という袋に入ると、
体細胞の影響を受けるため、袋に入る前の「始原生殖細胞」に着目。
性別に関係しそうな遺伝子を選んで分析し、
卵(雌)を形成する細胞だけに、「Sxl」という遺伝子が
活性化していることを発見。

精子(雄)になる始原生殖細胞のSxl遺伝子を人為的に活性化させ、
雌の生殖巣に移植すると、卵となることを確認。
Sxl遺伝子が活性化していない始原生殖細胞を、
そのまま移植しても卵にならず、Sxl遺伝子が生殖細胞の性別決定に
関わっていると結論。

小林教授は、「他の動物における生殖細胞の性別を決める仕組みを
明らかにする第一歩」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/8/139113/

2011年7月16日土曜日

大船渡市内の仮設店舗 9カ所に計2万平方㍍申請 完成までの遅さに焦りも

(東海新報 7月15日)

中小企業基盤整備機構(中小機構)が、民間事業所に無償貸与する
仮設店舗・仮設工場の候補地として、大船渡市は
市内の9カ所計2万平方㍍を申請。

中小機構による現地調査はすでに8カ所で終え、
「適地」判断が得られたのは6カ所。
申請事業所の半数で土地のめどがついたが、
完成までに3カ月程度要するため、関係者からは
整備のスピードアップを求める声が出ている。

無償貸与制度は、中小機構による東日本大震災支援策の一環。
市町村の所有地か、市町村が提供できる場所に、
建築面積約650平方㍍の工場タイプや、建築面積350平方㍍で
2階建て構造の店舗・事務所タイプなどを建設できる。

数カ月から1年程度の使用を想定、
一定期間経過後は市町村に管理を委託する方針。
市内では、大船渡商工会議所が被災事業所から希望を取りまとめ、
用地や店舗集積を調整。
こうした動きをもとに、市が中小機構に対して申請を行った。

市商工観光部によると、申請を希望した事業所数は224カ所。
市では、6月から7月にかけ、86%にあたる192カ所分の申請を終えた。

候補地は、三陸町綾里の黒土田地域、同越喜来の杉下地域、
末崎町の小細浦地域、大船渡町の茶屋前、中港、地ノ森、野々田(2カ所)、
永沢各地域の計9カ所。
合計面積は約2万平方㍍、ほとんどが東日本大震災で
浸水被害を受けた被災地。

三陸町や末崎町、大船渡町北部の候補地は、被災前に事業を行っていた
土地の近辺で再開してもらおうと、市側で選定。
大船渡町南部では、仮設利用を望む事業所側で土地確保が進められた。

中小機構による現地調査は、大船渡町の野々田地域1カ所を除く
8カ所で終了、6カ所で「適地」と判断。
三陸町越喜来の杉下地域は上水道整備を、大船渡町の中港地域は
建造物の基礎部分まで撤去した更地とするよう条件が出た。

事業所側で土地確保に動いた地域は、業種別の「集積」が見られる。
茶屋前地域は、震災前に近隣で商店街を形成していた
事業所関係者がまとまるほか、野々田地域は飲食店関係者が集中。

完成すれば、「仮設商店街」、「仮設飲食店街」が生まれることに。
大船渡魚市場に近い永沢地域は、水産関係事業所が多い。

「適地」判断を得た土地での再開を希望する事業所は、
申請希望数の半数となる112事業所。
営業再開への光が見えた一方、課題も抱える。

着工から営業開始までに、要する期間は3カ月程度。
今月中に着工しても10月ごろとなり、秋漁の取り引きを見込む。
水産関係者から、「活気が増すサンマ漁に営業を合わせたいと
思っているのに、これではピークが過ぎてしまう」

3月11日に発生した震災から半年以上にわたり、
事業所側では収入につながる営業拠点を確保できない形に。
市でも、視察に訪れる国会議員らに対して早期対応を求めているが、
現状では不透明な情勢が続く。

申請を終えていない約30事業所分も、土地のめどが付いた段階で行う。
「条件付き」の土地申請分については、
新たな用地を選定するかも含め、対応を協議。

市商工観光部では、「農地や農振地域、住居指定地などでも
期間限定的に設置が認められれば、候補地も増える。
土地利用の弾力的な運用対応も、国に求めていきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

タイと日本の病院が提携 人的交流も視野に 「アジアビジネス」

(2011年7月8日 共同通信社)

質の高い医療を低料金で提供し、観光を兼ねた海外からの患者を
呼び込み、「医療観光」を推進するタイ。

中東や米国などの富裕層をターゲットにする病院が多い中、
日本人誘致を目指す「バンコク病院」が、複数の日本の病院と提携し、
相互の患者紹介や診療記録などの情報を共有する取り組みに乗り出した。
「タイの病院では初の試み」(関係者)。

在タイ日本大使館によると、タイに居住する日本人は、
日系企業の駐在員や長期滞在者など4万7千人(昨年10月現在)。

バンコク病院は、同国の主要な私立病院の一つで、
日本人専門クリニックを備え、日本語が話せる医師や通訳らが常駐。
タイだけでなく、周辺国からも1日100人以上の日本人が外来診療に訪れる。

提携先は、山形県新庄市の新庄徳洲会病院や
鹿児島県曽於市の昭南病院など、全国の12医療法人の病院。

バンコク病院の日本人マーケット部の田中耕太郎マネジャーは、
「将来的には100、200の病院とネットワークを構築し、
医師や看護師らの交流も進め、相互の医療技術やサービスの
向上にもつなげたい」

これまで、日本の医療機関との提携がなく、
帰国後も引き続き治療を受ける場合、
「患者は、自分で治療経過などを説明しなければならなかった」

提携先の病院と患者の受け入れや診療の引き継ぎを直接進めることで、
患者側の負担軽減を目指す。

医療を海外に売り込む動きは、日本でも活発化しているが、
国策として医療観光を推進してきたタイやシンガポールなどに比べ、
大幅に出遅れているのが現状。

日本の医療機関にとって、バンコク病院との提携は、
患者を「顧客」ととらえる同病院のホテル並みの設備や通訳サービスなどの
ビジネススタイルを取り込むチャンスともなりそう。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/8/139100/

自分を攻撃、抑える物質 リウマチ治療に応用も

(2011年7月7日 共同通信社)

免疫機能が、自分の細胞を異物と認識して攻撃するのを抑える
働きがある物質をマウス実験で発見したと、筑波大や東北大、
大阪大などの研究チームが6日、発表。

この働きを強める薬を開発できれば、関節リウマチなどの
自己免疫疾患や、アレルギー疾患の治療に役立つ可能性。
筑波大の渋谷彰教授は、「本来の免疫機能には、
外敵をやっつけるプラスの働きもある。
創薬にあたっては、正常な免疫機能をじゃましない工夫が必要だ」

体内に入った異物を食べるマクロファージと呼ばれる免疫細胞を、
MAIR2という物質が活性化するのに着目。
リンパ球の表面で、これにDAP12という別の物質がくっついて働くことで、
自分の細胞への免疫反応を引き起こす「自己抗体」が、
必要以上につくられるのを抑えることを確かめた。

生まれつき二つの物質をつくれないマウスでは、
自己抗体が通常のマウスより多くつくられていた。
チームは、これらの物質の異常が原因で起きる病気の解明にも役立つ。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/7/139046/

2011年7月15日金曜日

糖尿病に関与のタンパク質 東大が特定、新薬に期待

(2011年7月5日 共同通信社)

肥満による糖尿病や動脈硬化の発症に、深く関わっているとみられる
タンパク質を、東京大の宮崎徹教授(疾患生命科学)らのチームが
マウスで特定、4日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表。

宮崎教授は、「人でも、このタンパク質の働きを抑えれば、
生活習慣病になりにくくなるだろう」、
生活習慣病を予防する新たな薬剤開発につながる可能性。

特定されたタンパク質は、免疫細胞の一種が分泌する「AIM」。
遺伝子操作で、体内でAIMを作れなくしたマウスと、
通常のマウスに約3カ月間、高カロリーの餌を与えて太らせ比較。
通常のマウスは、糖尿病などと同様の症状を起こしたが、
AIMを作れなくしたマウスはほとんど発症しなかった。

人でも肥満が進むと、免疫細胞の働きで全身の臓器や器官に
慢性的な炎症が起こり、生活習慣病発症のきっかけとなる。
チームは、AIMが免疫細胞を活性化させるとみている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/5/138971/

過疎食い止めた包括ケア 「脱ハコモノ」の発想を 「日本を創る―復興への道」老いの未来

(2011年7月5日 共同通信社)

病院や介護施設にも甚大な被害を与え、多くの患者や高齢者が
行き場を失った東日本大震災。
政府の復興構想会議は提言の中で、お年寄りが住み慣れた自宅で
暮らしながら、医療や介護サービスを受けられる
「地域包括ケア」の導入を打ち出した。
復興に合わせて白紙からシステムを構築し、少子高齢化時代の
モデル地域にする狙い。

医療過疎という現実に直面してきた被災地は、
地域のコミュニティーを取り戻し、復興につなげることができるのか?

▽近づく限界

「職員は、もうぎりぎりの状態。このままでは続けられない」

気仙沼市の特別養護老人ホーム「恵風荘」の佐藤久子施設長。
震災から3カ月以上が過ぎ、介護現場は限界が近づいている。
特養ホームには、被災施設から収容したお年寄りがあふれ、
体調を崩したり、ストレスで要介護度が上がったりした高齢者も少なくない。

恵風荘は震災後、30人の高齢者を受け入れ、入所者は120人超に。
過密状態の中、肺炎などで17人が亡くなった。
関係者は、「自宅のある高齢者は、在宅医療や介護のシステムが
整備されていれば、自宅に帰すことができ、犠牲者を出すこともなかった」

医療費の膨張、施設不足という現状を打開するシステムとして、
地域包括ケアへの期待が高まっている。
ヘルパーらが、30分以内に駆けつけられる「圏域」を設定し、
医療や介護、福祉、生活支援サービスを切れ目なく提供するという考え方。

▽戻った表情

尾道市の笹山良法さん(84)の自宅に6月20日、看護師と保健師が訪れた。
「お母さんこんにちは、変わりないですか」。
2人は、ベッドで寝たきりのイツキさん(81)に語りかけた。

6年前に脳出血で倒れて以来、イツキさんは入退院を繰り返した。
夫の良法さんは、「家に帰って、表情が戻ってきた」と喜ぶ。
7カ月前、良法さんが在宅介護への切り替えを決断した背景には、
24時間訪問看護サービスがあり、リハビリ部門も充実している
公立みつぎ総合病院の存在が。

尾道市中心部から北に約20kmにある同病院は1956年、
わずか20床ほどでスタート。
「寝たきりゼロ作戦」など、在宅医療・介護に積極的に取り組み、
患者は増加。
現在は200床を超え、特別養護老人ホームや介護老人保健施設なども
併設する地域の一大拠点となった。
山口昇病院事業管理者は、「地域包括ケアで高齢者が町にとどまり、
過疎化を食い止めることができた。
地域の活性化にもつながった」

▽脱ハコモノ

「介護している息子さんは、職に就いてるの?
職がないなら、ハローワークにつなぐ。それが包括ケアだよ」。
東京のベッドタウン・和光市の南地域包括支援センター。
会議室に集まったケアマネジャーや看護師、介護福祉士ら約40人を前に、
市職員(厚生労働省出向中)の東内京一さん。

人口約8万人の同市に、特養ホームは1カ所(定員60人)しかない。
市内に4カ所ある地域包括支援センターが事実上の司令塔となり、
自治体主導で包括ケアの導入に成功。

釜石医師会の小泉嘉明会長は、岩手県沿岸部で被災者の医療に
当たってきたが、「被災地では、介護問題に焦点が移ってきた」、
地域包括ケアの導入が今後の課題に。

医療と介護の連携の難しさなど課題も多いが、東内さんは、
「問題意識を持つ自治体職員や医師がいれば可能。
ハコモノ(施設)から脱し、人中心に考えることが大切だ

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/5/138972/

2011年7月14日木曜日

復興方針図案を公表 地区別に土地利用、移転先描く

(東海新報 7月8日)

大船渡市災害復興計画策定委員会は、
各地区の現状や被害状況をふまえた今後の議論のたたき台として、
「土地利用計画案」を提示。

高台移転の候補地を示しているが、全壊・流失被害地の多くが、
居宅区域として利用可能に。

海岸に近い道路をかさ上げすることで、津波被害を最小限に抑える
「二線堤化」の考えが盛り込まれている。

策定委員会は5月に発足し、委員は学識経験者や
産業団体関係者ら28人で構成。
この日は、委員のほか戸田公明市長、各部課長ら約50人が出席。

戸田市長は、「地区懇談会では、さまざまな意見が寄せられたが、
どれも『すぐやってほしい』との声ばかり。
復興には、スピード感を持っていきたい

委員長を務める塩崎賢明神戸大学院教授は、
「3回目の委員会を迎え、実際の事業着手につながる復興計画に
だいぶ近づいてきた」

議事では事務局から、各地区別の復興方針図案が示された。
湾口防波堤や防潮堤の復旧を前提に、新たな土地利用区域の
大まかな概要をまとめたもの。
市では、今後の復興施策における基本的な「たたき台」としての活用を期待。

方針図案は、盛・大船渡地区①、大船渡地区②(永沢以南)、末崎地区①(細浦)、
同②(大田団地など)、赤崎地区①(太平洋セメント~永浜貯木場)、
同②(蛸ノ浦)、綾里地区①(綾里漁港周辺)、同②(砂子浜・小石浜)、
越喜来地区①(浦浜など)、同②(崎浜)、吉浜地区―に分類。

各地区とも、津波危険区域や居住区域、高台に移る際の移転候補地、
産業区域などを色分け。

これまで市では、「再び津波が来ても、人が亡くならない、
住居が流されないまちづくり」を掲げてきたが、
JR大船渡駅周辺や末崎町の大田団地、三陸町越喜来の浦浜など、
全壊・流失住居が多かった地域も、「居住区域」。

こうした地域では、海岸沿いの防潮堤とは別に、
道路のかさ上げ検討を明記。
主要地方道大船渡綾里三陸線、県道丸森権現堂線、
末崎町の門之浜海岸沿いを通る市道高清水鶴巻線、
県道崎浜港線を候補。

盛り土などによって道路を高くすることで、岸壁を越えて流入した津波を
防御する「二線堤」の機能を持たせる。
津波襲来後も、道路アクセスが維持されるといった効果も期待。

大船渡町南部に広がるJR大船渡線より海側の地域や、
末崎町の泊里地域などは「危険区域」に。
市街地よりも高台の山林などに、移転候補地を示したほか、
山側への避難路確保の必要性にもふれている。

案段階ではあるが、戸田市長がこれまで必要性を訴えてきた
「高台移転」は、限定的な対応。

戸田市長は、「当初は『二線堤』をはじめ、道路のかさ上げ対応は
考えていなかった。
最近の国の動きなどをふまえ、議論のたたき台として提示した」

道路をどの高さまで上げるかや、危険区域の判断基準が
明確化されておらず、委員からはより具体的な説明を盛り込むよう
意見が寄せられた。

市では、今回提示した土地利用計画案を生かした、
ワークショップ開催などを経て、7月末以降に策定する復興計画内で、
より具体的な地区別復興図をまとめることに。

http://www.tohkaishimpo.com/

新潟・熱中症対策 節電でも無理しないで 高齢者宅訪問で予防

(2011年6月29日 毎日新聞社)

暑い夏が近づいてきた。
新潟地方気象台によると、昨夏ほどの酷暑となる可能性は低いが、
平年以上の暑さになる確率は40%。
暑くなると懸念されるのが、熱中症。
今月26日までに全国で3709人、県内で50人が救急搬送。
今年は節電対策で、エアコンの使用抑制が呼びかけられているが、
保健師らは熱中症のリスクが高い高齢者宅を回るなど、
「体に無理をしてまで節電せず、しっかり対策をとってほしい」

◆地域で守る

昨夏、全国で1718人が熱中症で命を落とした。
県内では50人が死亡、1355人が救急搬送。
危険性が最も高いのが、高齢者。
死亡者の79%を、高齢者が占める。

「節電って言っても、暑いとできないこともある」。
新潟市西区役所の保健師、石川玲子さん(54)は、健康教育で
地域を回る中で、お年寄りのこんな声を聞いた。
石川さんは、「熱中症になるくらいなら、エアコンをつけて」。

高齢者は若者に比べ、体内の水分量が少ないうえ、暑さへの感覚、
調整機能が低く、室内にいても熱中症になる危険性が。

同区役所は昨年8月、熱中症予防のための高齢者宅の訪問活動を始め、
今年もすでに取り組んでいる。
同区に住む65歳以上の高齢者は、約3万6000人。
保健師14人ですべてを回ることはできないため、特にリスクの高い、
80歳以上の1人暮らし、夫婦2人暮らしを対象。
エアコンと扇風機の適切な使用方法を教えたり、こまめな水分補給など
予防法が書かれたチラシを配っている。
石川さんは、「お年寄りには、なかなか情報が入らない。
地域のみんなで守ることが大事」

◆こまめに休憩

働く人の中でリスクが高いのは、炎天下での作業が多い建設業と、
空気のこもりやすい工場内などに勤務する製造業。
昨夏は全国で、建設業で17人、製造業で9人の死者が出た。
県内では、職場での熱中症発生は33件、うち建設業が10件、製造業が7件。

今年は節電で、エアコンでの暑さ対策が困難になることを踏まえ、
新潟労働局は、業界団体に予防対策の実施を要請。
労働者の定期的な水分・塩分補給を徹底させることや、
気温が高くなる午後2~4時を中心に、こまめな休憩をとらせるなどの
対策を求めている。
……………………………………………………………………………
◇熱中症を防ぐために気を付けたいこと(県のホームページより抜粋)

▽ブラインドやすだれを垂らし、扇風機やエアコンを使うなど暑さを避ける。

▽のどが渇く前、暑いところに出る前、こまめに水分を補給。

▽汗をかいたとき、スポーツドリンクや食塩水を飲み、水分と一緒に塩分も補給。

▽高齢者は、温度に対する感覚が弱く、のどが渇いていなくても水分を補給し、
部屋の温度をこまめに測る。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/29/138719/

2011年7月13日水曜日

がれき、両市で170万㌧ 県の処理計画雇用とリサイクル図る

(東海新報 7月8日)

東日本大震災で発生した膨大な災害廃棄物を、
有効かつ迅速に処理するため、
県は災害廃棄物処理実行計画を策定。

計画では、大船渡、陸前高田の両市の一般家屋や事業場などから
発生したがれきの量は、170万3309㌧にのぼると推計。

腐敗や危険物など、生活環境に支障のある廃棄物は今月末までに、
その他も本年度内に撤去し、3年をめどに処理を完了する方針。

計画は先月下旬に策定し、「雇用」、「リサイクル」、「広域処理も活用」の
三つを基本方針に掲げる。

今月末までに、腐敗性や火災の危険性のある災害廃棄物を撤去し、
年度内に全ての移動を完了。
処理は、平成26年3月末まで3年をめどに行う。

計画は、一般家屋や中小企業から発生した災害廃棄物が対象。
大企業や道路など、公共施設は別の処理計画になる。

県が推計したがれきの量は、陸前高田市が一番多く95万5920㌧。
大船渡市は74万7389㌧。
両市合わせて170万3309㌧、内訳は住宅が約65万8000㌧、
事業場が25万9000㌧、泥などの堆積物69万3000㌧、
家財道具などの水害廃棄物9万3000㌧。

災害廃棄物の処理責任は市町村にあるが、行政機能が被災した
陸前高田市など7市町村は、県に処理事務を委託。

県内全体では583万㌧以上で、うち可燃物は100万㌧で
木くずの割合が多い。
不燃物は300万㌧、残りは堆積物など。

この処理を進めるにあたり、沿岸の雇用の確保を重点に置き、
県内の既存施設や業者を活用して、分別や破砕などの前処理を行う。

可燃物の処理は、太平洋セメント㈱大船渡工場を中核として、
三菱マテリアル㈱岩手工場、いわて第2クリーンセンターなどの民間と
市町村の一般廃棄物処理施設を利用。

セメント工場での大量処理には、除塩施設の設置が必要とし、
塩分濃度が高く焼却できない場合は、仮設焼却炉を併設する。

がれき撤去は、スピードを優先したため、1次仮置場に混合状態にあるが、
柱材・倒木、可燃物、がれき類、金属、危険物・有害物、家電、混合物の
7種類に分別を検討し、再利用率を高めリサイクルを推進。
それによって、焼却や最終処分量を減らす。
泥などの堆積物は、埋立や焼成対象物とする。

最終処分の方法は、県内の埋立処分場が不足し、既存施設だけでは
処理が間に合わないことから、県外施設に一部を委託し、
広域処理も念頭に進める。
処理費用の財源は、環境省の補助金を活用する。

県環境生活部資源循環推進課の佐々木秀幸主任主査は、
地元の雇用も図ることを、重点において進めたい」、
がれきの試験焼却が太平洋セメントで始まっているほか、
腐敗水産物の処理が大船渡、陸前高田で行われている。

県は、8月末までに地域ごとに処理施設などを明らかにした
詳細な計画をつくることに。

http://www.tohkaishimpo.com/

環境・健康が勝負どころ 製造業にサービス価値を 小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長

(2011年6月29日 共同通信社)

日本経済を支える柱である製造業の将来が、危ぶまれている。
円高、高い法人税率...といった逆風に、電力不足が加わり、
生産拠点の海外移転、いわゆる「空洞化」の加速が懸念。

日本では、数少ない理学博士号を持つ経営トップとして、
国内最大の総合化学会社の最前線から「モノづくり」の再生策を説く。

「日本が今後、何をもって生きていくのか、何で食っていくのかという問題は、
バーチャル(仮想的)な危機としては意識されていたが、
東日本大震災と福島第1原発事故によって、リアル(現実的)な危機となった。

将来にわたって、原発をエネルギー源として頼ることができず、
代替するグリーンエネルギーを早く開発しなければならないという問題。
製造業は、三重四重のハンディを抱え、一部は空洞化せざるを得なくなる」

空洞化が、そのまま製造業の衰退につながらないのか心配。

「石油化学は、資源のない日本ではタンカーで高い原油を運んでくる。
競争相手の中東では、極めて安い天然ガスで、ポリエチレンをつくっている。
明らかに競争にならないから、日本の化学会社は、
海外に出て行かざるを得ない。
三十数億人のアジアの人々の洋服や自動車に、われわれが培った
石油化学の技術が有効に使われるはず。

ただ、それだけではない。
二面作戦のもう一方として、世界シェアが一番とか、
非常に特異な技術を持っている分野、環境・健康という方向性を
明確にすれば、21世紀的な商品体系をつくることができる

日本の製造業が、勝負していける「強み」は、どこにあるのだろうか?

「技術力だと思う。
ノーベル賞をもらうような科学というより、テクノロジーのレベルが強い。
改良とか、小さいモノをものすごく器用につくるとか。
日本人には、まだまだその力がある。
大事なことは、その技術が目指す目標を、健康や環境といった
方向に変えていくことだ。
原発に頼れない時代になると、植物由来の材料や、太陽光などの利用に
つなげていけるかが、勝負どころになってくる」

製造業が生き残っていくには「モノづくり」に、
サービスという付加価値を付けることも重要というのが持論。

「自動車会社だと、自動車をつくるだけではなく、ロボットを含めて
モノを動かす総合的なサービスを事業化する。
ビール会社も、ビールだけじゃなく、人間が心地よいと思う食品文化をつくる。
化粧品会社だって、モノに付随したサービス業。
三菱ケミカルが手掛けている医療品も、薬だけつくっていればいいという
時代は終わった。
一人一人の患者さんの診断を受け、予防医学でなるべく
病気にしないようにしたい」

産業の柱を、製造業から思い切ってサービス産業に
転換してしまった方がいいという主張も。

「サービス業だけだと、ちょっときつい。
海外に打って出る、強さを持った産業がないと駄目。
介護とか医療産業は、あくまで内向き。
国内だけで金のやりとりをして、最後に気付いたら
何もなくなっちゃったという、『花見酒経済』に陥ってしまうだろう」

「じっくりと技術を育て、仕掛けをつくって磨いていくことに優れている
日本人の特徴は、製造業に向いていることも忘れてはならない」

21世紀は、化学の時代だ。
化学が日本産業をどう変えていくのか?

「ノーベル化学賞をとれるような日本人が、あと何人もいる。
日本人は、ナノテクノロジーなどでは、アジアの中では非常に優れている。
悩ましいのは、若者が理科系に行きたがらないこと。
鉄や化学は、CO2ばかり出しているという誤ったイメージがある。
出来上がったモノを享受する産業にだけ集まってしまうのは、どこか違う。
人間は物を食べ、排せつし、飛行機や自動車に乗っている。
そういう全体系をしっかり可視化して、教育しなくてはいけない。
製造業はどうあるべきかを、国民全体がもっと共有していかないと」

「新炭素社会」との言葉をつくり、炭素技術の将来性を熱っぽく語る。

「炭素の細工を、僕は『錬炭素術』と呼んでいる。
究極の錬炭素術は、植物がCO2と水と太陽光から炭化水素、
糖をつくるような光合成。
光合成のまねをするか、もっと原理的に炭素と炭素をくっつけるか、
これがあと40年か50年たったら、必ず現実になるだろう。
それは、何で実現できるかといったら化学だ。
僕が『新炭素』というのはそこにある」

※小林 喜光氏(こばやし・よしみつ)

東大理学系大学院修了後、イスラエルのヘブライ大に留学。
イタリアのピサ大留学を経て、三菱化成工業に入社。
企業統合で誕生した三菱ケミカルホールディングスで、07年に社長就任。
今年4月、経済同友会の副代表幹事を務める。山梨県出身。64歳。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/29/138696/

2011年7月12日火曜日

「独りじゃない」周囲の支えで前向きに 支える 在宅療養への道/1

(2011年6月28日 毎日新聞社)

「おはよう。今日は天気だよ」
高浜町和田の自宅で、筋肉を動かす神経が働かなくなる難病
「筋委縮性側索硬化症」(ALS)との闘病生活を送る一瀬長義さん(71)に、
妻篤子さん(67)が明るく声をかける。

一瀬さんは、唯一動かせる唇の筋肉で、呼びかけに応える。
昨年に次女が嫁いだが、篤子さんは、
「お父さんがいてくれるから、独りじゃない」と、
夫婦そろっていられることをありがたく思っている。

06年、一瀬さんを異変が襲った。
腹に力が入らない。
医師も驚く進度で病状は悪化し、5カ月後には永平寺町の福井大病院に入院。
同12月には歩けなくなった。

ベッドの上で、体勢を変えることもできなくなる。
肺の機能が衰え、呼吸にも支障が生じ、変えてほしい体勢を
口にするのが精いっぱいに。
つらさを訴えることもできない行き詰まった精神状態から、
夜中でも体勢を変えるよう、付き添いの篤子さんに求め続けた。
生来の明るさで夫を励ましていた篤子さんも、この時ばかりは体調を崩し、
院内の救急診療にかかった。

症状が進行しきってできる治療がほとんどなくなり、
07年5月に退院せざるを得なくなった。
一瀬さんは家族の負担を心配し、別の病院での入院を希望。
専門医が少なく、ベッド数も限られているため、転院先のめどは立たない。
篤子さんが、県難病支援センター(福井市)に相談すると、
ALS患者の多くが自宅療養をしていることが分かり、
6月から家へ連れて帰ろうと決めた。

一瀬さんは、面倒見が良く、勤めた工場の退職後、
区長など地区の役職を一手に引き受けた。
篤子さんは、「誰彼かまわず世話をするのが大好きだった人。
それが人の手を煩わせることになって、どれほど悔しかったことだろう」、
涙声で当時を振り返る。

望んだ在宅療養ではない。
しかし、わが家であった。
天気のよい日、篤子さんや主治医の井階友貴医師(30)らが、
車いすで外に連れ出すと、たくさんの知人が声をかけてくれる。

一瀬さんは、明るさを取り戻していった。
筋肉の動きを伝えて文字にする特殊機器を通じ、
「この心地よさは 隣人の心と血の動きと風の清かさよ」と詩をしたためた。
「運命の定めに従い、感謝して生きていこうと思います」と前向きな気持ちも。

篤子さんも当初は不安だった。
初めての介護、見通せない将来……。
たんの吸引やおむつの交換など、日々の介護に慣れるうちに意識が変わった。

「お父さんが生きていてくれることが、幸せだと思えるようになった。
体力が続く限り、家で診たい」
在宅医療を選択して本当によかったと、今は思っている。

******
国は、自宅を「第3の医療現場」として、在宅医療を進める方針だが、
なかなか広がらない。
患者一人一人で望ましい治療のあり方は異なるが、
在宅医療のよい面が知られていないことも普及の壁になっている。
県内の在宅医療の好例や、地域ぐるみの前向きな取り組みを紹介。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/28/138632/

アルツハイマー病 理研、新原因のたんぱく質を特定

(2011年7月4日 毎日新聞社)

アルツハイマー病の原因物質と考えられているたんぱく質
「アミロイドベータ(Aβ)」のうち、これまであまり注目されていなかった
「Aβ43」が、アルツハイマー病の大きな原因となっていることを、
理化学研究所などのチームが突き止め、
ネイチャーニューロサイエンス(電子版)に4日発表。
新たな治療戦略や診断法の開発に役立つ可能性がある。

従来、Aβ42と呼ばれるタイプが、アルツハイマー病の主原因と考えられていた。
亡くなった患者の脳を調べたところ、Aβ43の量がAβ42の半分近くあり、
アルツハイマー病の特徴であるアミロイド斑(老人斑)の部位に集中的に存在。

マウスの神経細胞に、各種のAβを加えて経過を見たところ、
Aβ43を加えた細胞の生存率は大幅に低く、毒性が強いことも分かった。

Aβ43は、他のタイプよりアミノ酸の数が多い。
これまでの臨床実験は、Aβ42に注目したもので、目立った成功例はなかった。
チームの西道隆臣・同研究所チームリーダーは、
42だけでなく、43の産生を抑えるなど新たな治療戦略が必要。
43は、加齢によって顕著に増えることも確認、早期診断に役立ちそうだ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/4/138923/

2011年7月11日月曜日

東北大学加齢医学研究所が新事業 研究所内にフィットネスクラブを設置

(日経ヘルス 6月15日)

東北大学加齢医学研究所は、
研究所内に民間のフィットネスクラブなどを誘致して、
認知機能への効果を評価する産学協同の研究事業を始める。

第一弾として6月14日に、フィットネスチェーンのカーブスジャパンが、
同研究所内に店舗をオープン。
国立大学の学内に、共同研究のための民間施設が設置されるのは国内初。

高齢化が進む我が国において、高齢者の健康維持は国家的な課題。
中でも重視されるのが、認知症の予防。
同研究所は、認知機能を中心とする加齢研究および対策の拠点として、
09年にスマートエイジング国際共同研究センターを開設
(センター長:川島隆太・東北大学教授)。
このセンターが、今回の共同研究を進める。

川島教授によると、認知機能の維持には「認知的刺激」、「運動」、「栄養」、
「社会との関わり」という四つの要素が重要。

「運動」を実践する場として、同センター内に「カーブス」店舗を開設。
通常の店舗と同様の営業を行いながら、店舗の会員と、
同センターが独自に募集するボランティア参加者(無料)を対象にして、
認知機能に対する運動の効果を評価する臨床研究を行う。

「カーブス」は、米国生まれのフィットネスチェーン。
トレーニングマシンを使った筋力アップメニューと、
その場ウオーキングなどの有酸素運動メニューを30秒ごとに
交互に繰り返す「サーキットトレーニング」プログラムが特徴。

運動負荷があまり強くないため、通常のフィットネスクラブでは
負担を感じる高齢者層に人気。
国内店舗数は、約1000カ所。
会員は女性限定のため、男性への効果は、同センターが募集する
ボランティア参加者を対象にした研究でカバー。

「認知的刺激」の要素としては、学習塾をフランチャイズ展開する
日本公文教育研究会が、9月にくもん学習療法センターを
同センター内にオープンする予定。
ここでも共同研究が行われる。
「栄養」面のパートナーも検討中。

「参加者がセンターに通うことで、『社会との関わり』も維持できる」
と川島教授。
民間企業と共同で地域住民向けのサービスを提供しながら、
研究を推進するスタイルは、予防医学分野の臨床研究のあり方として、
注目を集めそう。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20110615/111217/

唾液でも前立腺がん把握 再発・転移でPSA高値

(2011年7月4日 共同通信社)

前立腺がんの腫瘍マーカーで、血液検査に使われるPSA
(前立腺特異抗原)は、患者の唾液にも含まれ、がん手術後の再発や
転移を調べるのにも有効だとの研究結果を、
神奈川歯科大の槻木恵一教授(唾液腺健康医学)らのグループが
2日までにまとめた。

PSAは、がん以外の前立腺の病気でも数値が上がる。
唾液は、血液に比べ採取が簡単なのが利点で、槻木教授は、
「大規模な研究を進め、がん手術後の検査だけでなく、
がんを含めた前立腺疾患の検診にも使えるようにしたい」

PSAは、普通に前立腺から分泌される物質だが、
がんなどの患者では、血中の濃度が高くなる。
グループは、唾液が血液から作られ、血液成分を反映していることに着目。
唾液を分泌する唾液腺では、PSAが作られないことも確認し、
前立腺がんの手術をした患者31人の血液と唾液中のPSAとの関係を調べた。

その結果、術後に再発や転移が見つかった11人は、
PSAの血中濃度が1ml中2・5ng以上と高かった上、
血中濃度が上がるにつれ、唾液中の濃度も上がっていた。
経過が良かった20人は、血中濃度が低く、PSAは唾液にも
ほとんど含まれていなかった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/4/138892/

2011年7月10日日曜日

おいしさを数式で表す

(日経ヘルス 6月6日)

口に入れた瞬間に感じる「おいしい」という直感的な判断が、
15の簡単な質問表に基づき、計算して導いた数値とよく一致した、
と京都大学大学院農学研究科の伏木亨教授。

第65回日本栄養・食糧学会大会の教育講演での発表。
人は、食べたものがおいしいかどうかを、口に入れてすぐに判断。
「おいしさの判断を左右する要因はせいぜい、3~4個」

伏木教授は、できるだけ簡素化を図り、
以下の4つの項目でおいしさを決定できる。

「(1)=生理的なおいしさ」

体が要求するため、おいしく感じる。
のどが渇いたとき、飲むビールがおいしかったり、
疲れたときに甘いものがおいしかったり、という例。
30分の激しい運動をしたところ、いつもよりも甘いものを欲する。

「(2)=文化によるおいしさ」

子供の頃からの食習慣に合う料理はおいしく、合わない料理はおいしくない。
関東の人は甘い卵焼きが好きだが、関西の人はだしの利いた
塩味の卵焼きが好きで、甘い卵焼きを好まない、というのが一例。
「特に匂いが決め手になることが多く、発酵によるうまさは
文化に関わらず共通で感じられるが、匂いで好き嫌いが分かれる」

「(3)=情報によるおいしさ」

「この味をおいしいと考える」と学習すること。
「赤ワインのおいしさは渋みのバランス」、
「この味は、美食家のあの人がおいしいといっていた」などの情報をもとに、
人はおいしい味の判断基準を身につけていく。

「(4)=報酬によるおいしさ」

食べることで快楽を感じ、やみつきになる成分が含まれているもの。
「脂肪、砂糖、うまみのあるだしには、繰り返し食べたいという
執着を生み出す力がある」

(1)~(4)のうち、(1)は食べる側の条件であり、食べ物そのもののおいしさを
決定するものではないため除き、(2)、(3)、(4)の3つの要素を組み合わせて、
おいしさを表す数式を導いた。

被験者に食品を試食させ、直感的においしいかどうかを、
VAS法※で評価してもらい、上記のおいしさを決める要素について問う
15の質問表(やみつきになりそうな味か、食べなれた味か)への答えを
それぞれ点数化。
この両方を合わせて、下記のような重回帰式を得た。

Y(おいしさ)=1.74×((4)報酬によるおいしさ)+1.48×
((3)情報によるおいしさ)+0.38×((2)文化によるおいしさ)+8.77

重回帰式の係数は、個人もしくは母集団によって異なるが、
市販の12種類の食品(カレー、親子丼、たこ焼き、グラタンなど)を
用いて算出した重回帰式は、他の食品の評価にも有効で、
質問表の点数を数式にあてはめて算出した評価値と、
VAS法による直感的な総合評価値は、高い相関。

「質問表はまだ見直す余地はあり、質問項目はもっと減らせる」

※VAS(Visual Analogue Scale)法

痛みなどの主観的な評価を客観的な数値に置き換える方法。
痛みの場合、左端は「痛みなし」、右端は「考えられる最大の痛み」とした
100mmの直線を引き、自分が現在感じている痛みが直線上のどこに
位置するかを書き込む。
今回は、左端が「おいしくない」、右端が「おいしい」として使用。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20110606/111116/

海洋生物に迫る大量絶滅の危険性 科学者らが報告書

(CNN 6月22日)

世界の海洋生物が、大量絶滅の危機に直面していることが、
各国の科学者らによる暫定報告書で明らか。

報告書は、海洋研究国際計画(IPSO)の呼び掛けで今年4月、
英オックスフォード大学での会議に参加した18団体、27人の
専門家チームが、国際自然保護連合(IUCN)と共同でまとめ、国連へ提出。

会議では、海洋の汚染や酸性化、水温上昇、魚の乱獲、
酸素濃度低下の影響を総合的に検討し、地球史上で過去5回あったとされる
大量絶滅期と同様の条件がそろっているとの結論。
今後、一世代のうちにサンゴ礁が消滅するなど、
海洋の生態圏全体が失われる恐れがある。

生態系の破壊が、予想以上の速さで進行していると警告。
一部の魚は、行き過ぎた商業漁業によって、
以前の1割以下まで減ったとも指摘。

IPSOの研究責任者を務めるオックスフォード大の
アレックス・ロジャーズ教授は、大気中に放出されて海洋に吸収される
CO2量はかつてない勢いで増加し、CO2サイクルの乱れは
過去の大量絶滅でもみられたと強調。

http://www.cnn.co.jp/fringe/30003149.html

最大クラスの津波も対象にした防災対策提言

(サイエンスポータル 2011年6月27日)

中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした
地震・津波対策に関する専門調査会」は、津波対策について
従来の考え方を根本的に改める必要がある、とする中間報告。

中間報告は、従来の防災対策を、
「海岸保全施設などに過度に依存していた」

理由として、過去発生したことが指摘されていても、
地震動や津波を再現できなかった地震は、
地震発生の確度が低いとみなし、想定の対象外にしていた。

今後の対策は、「考えうる可能性を考慮し、被害が大きくなる
可能性についても十分に視野に入れ、想定地震・津波を検討する必要」

具体的には、これまで対象にしていた「頻度の高い津波」に加えて、
東北地方太平洋沖地震のような想定対象外にしていた
「最大クラス」も、併せた2段階の津波対策を提言。

「最大クラス」の津波が襲来しても、「行政機能、病院などの
最低限必要十分な社会経済機能を維持することが必要。
このため、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、
防災施設などを組み合わせて、ソフト・ハードの取り得る手段を尽くした
総合的な津波対策の確立が必要だ」

できるだけ被害が拡大しないよう、特に住民や行政の防災教育、
防災訓練などを通じて、防災意識の向上に努める重要性を強調。

「頻度の高い津波」対策では、海岸保全施設の設計対象よりも
高い津波が来襲しても、施設の効果が粘り強く発揮できるような
技術開発の必要を指摘。

今後、検討する必要があることとして、「避難対策が確実に実施できるよう、
津波避難ビルの指定、避難路の整備」、
「すばやい避難行動をとることができるよう、リスクコミュニケーションの構築」、
「地震・津波災害に関する国民の理解を向上させる
総合的な教育プログラムの開発」などを挙げた。

「数千年オーダーでの大規模津波の発生を確認するためには、
津波堆積物調査や海岸段丘などの地質調査、生物化石の調査など、
地震学だけでなく地質学、考古学、歴史学も含めた
統合的研究の充実が重要」、

「今回の巨大津波の発生原因と考えられる海溝付近の状態を
正確に把握するために、陸上だけでなく、海底において
直接地殻変動を観測し、プレートの固着状態を調査するなど、
地震学に基づく想定地震・津波の精度向上の研究推進を
一層努める必要がある」など、
調査研究面でも大きな課題があることを指摘。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1106/1106271.html

2011年7月9日土曜日

子どもに栄養ドリンクはダメ、スポーツ飲料も不要 米研究

(CNN 5月31日)

栄養ドリンクは、10代までの子どもにふさわしい飲料ではなく、
スポーツ飲料も、ほとんどの子どもにとっては必要ない、
とする研究報告を米国の専門家が米小児科学会誌に発表。

報告は、同学会に所属する栄養学やスポーツ医学の研究者がまとめた。
栄養ドリンクは、集中力や精神力を高めるなどの効果をうたい、
大量のカフェインやガラナ、朝鮮人参、タウリンなどの
滋養強壮成分が配合。

こうした飲料を子どもが飲むことには危険が伴う、と研究チームは解説。
栄養ドリンクと心拍数や血圧の上昇、睡眠障害、
不安神経症との関係を指摘。

栄養学専門家のマーシー・シュナイダー氏は、
「多くの場合、ラベルを見ただけではどのくらいのカフェインが
入っているのか分からない」、
「エネルギードリンクの中には、ソーダ14缶分に匹敵する500mg以上の
カフェインが含まれているものも」と警告。

運動で失われる水分や電解質の補給をうたって、
炭水化物やビタミンなどを配合したスポーツ飲料については、
激しい運動や長期に及ぶ練習をする若者の場合は効果的な場合も。

そうでなければ、ビタミンやミネラルはバランスの取れた食生活を通じて
摂取すべきだと指摘、「定期的に運動しているほとんどの子どもにとって、
普通の水が一番よい」(スポーツ医学専門家のホリー・ベンジャミン氏)。

スポーツ飲料には、子どもには不要な余分なカロリーが含まれ、
肥満や虫歯の原因になりかねない。
「運動後には水を飲み、食事の時には推奨摂取量のジュースや
低脂肪牛乳を飲んだ方がいい」

http://www.cnn.co.jp/fringe/30002918.html

1日1時間の運動実施は15%、米国の男女高校生調査

(CNN 6月19日)

米疾病対策センター(CDC)は、米国の男女高校生のスポーツ活動に
関する報告書をまとめ、1日1時間のエアロビクス運動を
実行しているのは、15%に過ぎなかった。

男女別の比率を見ると、女子は8%を少し超えるだけで、男子は22%。
学年が上がれば、運動を行う比率は下がっている。

健康衛生当局の勧告に従い、1週間に少なくとも3度、腕立て伏せや
ウエートリフティングなどの筋肉増強運動を行っているのは51%。

男女高校生のドリンク摂取調査も合わせて実施、
水、牛乳や100%果汁が最も人気を集めたが、
大多数が健康ドリンクの代替飲料として、ソーダや砂糖成分が入った
飲み物を選んでいる。

約4分の1が、1日少なくとも1個のソーダを摂取。
63%が、1日当たり少なくとも1個のソーダ、「ゲータレード」のような
スポーツドリンクや砂糖が入ったドリンクを飲み、
33%がそれぞれ2個以上を消費。

CDCは、運動量が少ないにもかかわらず、ソーダや砂糖が入ったドリンクを
過度に摂取するのは、体重増加や糖尿病発病の恐れにつながると警告。
砂糖が入ったドリンクは、自宅で飲むことが大多数なことから、
両親に対し、水などの健康ドリンクに変えるよう指導。

運動不足は後々の人生で、心臓疾病や高血圧など多数の健康障害を
招く原因にもなると注意。

今回調査は2010年、全米の高校生1万1429人を対象に
アンケート調査を配って実施。

http://www.cnn.co.jp/fringe/30003118.html

ぜんそくの秘薬は小魚 印南部に伝来、効能は?

(2011年6月27日 共同通信社)

インド南部ハイデラバードに、ぜんそくを治すという、
生きた小魚を使った"秘薬"が、160年以上前から伝わっている。

ヒンズー教の聖人が処方箋を授けたとされ、今月7日から年に一度の
無料配布が始まり、会場には患者ら数千人が押し寄せた。
医師らは、「非科学的」と効能を疑問視するが、
実際に治ったという人からは「魔法の薬」と尊ばれている。

秘薬を代々受け継いでいるのは、
ヤシの樹液から酒をつくっているバティニ・ゴウド家。

164年前、先祖が聖人から、小魚に井戸水を使った黄色の液体を
口から注入し、生きたままのみ込むという"調薬"を教わった。
その際、液体の成分を決して他言せず、
秘薬は無料で患者に配るよう約束。

患者が、薬として丸ごとのみ込むイワシなどは2~3cm。
医師らは、「薬が効く、というのは思い込みにすぎない」と酷評、
人権団体も、「子供に無理やりのますべきではない」と厳しい。

8歳からぜんそくに悩まされていた元銀行員D・シブムルティさん(60)は、
2年前にこの薬で完治したと主張。
「自分の家族にも、予防のために服用するよう勧めた」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/27/138545/

2011年7月8日金曜日

スポーツを考える:佐伯年詩雄・筑波大名誉教授(スポーツ社会学)

(毎日 7月2日)

スポーツ基本法が成立した。
私は、超党派のスポーツ議員連盟のアドバイザリーボードを務め、
衆院の文部科学委員会でも意見陳述をしてきた。

基本法ができたことは喜ぶべきだが、
この法律は多くの「宿題」を抱えている。

衆院の委員会では、スポーツは自発的な運動の楽しみを基調とする
自己目的的な文化であり、その文化的特性が十分に尊重されるとき、
さまざまな公益性が期待されるものであることを述べてきた。

法律の中では、前文の2段落目に
「スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進……
のために行われる」と定義。

これは、50年前のスポーツ振興法の体育的定義とまったく変わらない
「スポーツ手段論」であり、1行目の「スポーツは、
世界共通の人類の文化である」という言葉に矛盾。

私が求めているのは、もう一度、「スポーツとは何か」を
考えてほしいということだ。
国会議員やスポーツ関係者だけでなく、国民すべてに対して。

振興法は、スポーツ関係者だけに関係していたが、
基本法になると、すべての人にかかわる問題。
スポーツ大嫌いという人の意見も、取り入れなければならない。
そうでないと、これまでと同じように「たかがスポーツ」になってしまう。

とりあえず、スポーツ基本法を読んでもらいたい。
サッカー愛好者ならサッカー基本法、野球関係者ならば野球基本法と
置き換えてみてはどうか。
その中で、この条文はそぐわないとか、もっと議論してみるべきでは、
という問題点や評価すべき点が見えてくるはず。

このたびのスポーツ基本法の成立に至っては、
国民的な関心を持たれないまま、「こっそりと」であった。
これには、メディアの責任も大きい。

成立した日のテレビのスポーツニュースでは、
大リーグのことは伝えても、基本法についてはまったく触れなかった。
新聞も、「スポーツの権利」が入ったことに万々歳していて、
「自由な」身体活動の権利としての「スポーツ権」ということを
追求しなかった。

世界標準のスポーツのとらえ方、考え方から見ると、
スポーツ思想に関しては、日本は後進国。

その問題点を見つけられなかったがために、全く論議にならなかった。
法律は、できてしまえば終わりではない。
次は、スポーツ庁の設置へと向かうだろうから、
そこで改正することもできる。

日本には、週に1回以上スポーツをする人が、
4000万~5000万人いると言われている。
基本法は、そのすべての人たちにかかわってくる。

これから法律をどのように動かすか、
よりいいものにするためにどうするかが、
5、6年かけた私たちの宿題と思う。
==============
◇さえき・としお

1942年生まれ。東京教育大大学院修了。
企業とスポーツのかかわり方などを研究。
著書に「現代企業スポーツ論」など。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/02/20110702dde007070038000c.html

養護教諭(6)岡山大大学院 高橋香代教授に聞く

(読売 5月5日)

今回の連載では、子どもたちの課題が多様化する中で注目される
全国各地の養護教諭の実践を報告。

教育現場における養護教諭の役割や可能性について、
養護教諭の資質能力の向上について研究している
日本養護教諭養成大学協議会の高橋香代会長
(岡山大学大学院教育学研究科教授)に話を聞いた。

――養護教諭を取り巻く環境をどう見るか?

「以前は、病気やけがの処置が仕事の中心だったが、
悩みや不安を抱えている子どもに対応する割合が大きくなってきた。
アレルギーや感染症、いじめや発達障害など子どもの健康課題が多様化し、
家庭の問題を抱えた子どもは増えている。
理由なく、ふらっと保健室に来る子の数も増え、養護教諭の役割は重要」

――仕事の意味は何か?

養護教諭は、学校保健を推進する中核的な存在。
保健室で個別に対応するので、子どもの体や心の状態に気付きやすい立場。
『おなかが痛い』と訴え、保健室に来た子がいれば、
養護教諭は、病院で診てもらう必要があるかどうかを確認。
食事や睡眠などの様子を聞きながら、生活指導することもあれば、
ふと漏らした友だちや家庭の問題に気付くことも」

「東日本大震災直後、被災地の養護教諭から、
『今は皆、空腹感や寒さから逃れるのに精いっぱいだが、
落ち着いた時に心や体への傷が見えてくる。
傷の深さは計り知れないが、子どもたちをサポートするのが
養護教諭の役目』とメールが来た。
養護教諭はどんな状況でも、子どもたちの保健管理や心のケアに
見通しを持って取り組んでいる

――働く環境はどうか?

「子どもたちの心と体の健康を守り育てるのは、学校教育の基盤。
健康課題が多様化・複雑化し、虐待やいじめ、リストカットなど
命にかかわる場合も。
養護教諭には、専門性の向上が求められるが、研修は十分とはいえない。
自治体は個人の努力任せにせず、もっと全体の底上げを図るべき。
子どもに対応する十分な時間の確保も必要」

――複数配置についてどう考えるか?

「1人配置の場合、子どもの対応に十分な時間を割けないことが多く、
教科担当の教員のように、校内に相談相手もいない。
2人以上配置すれば、子ども一人一人に時間をかけて対応でき、
養護教諭の数だけ、多面的に子どもたちを見ることもできる。
互いに相談し合ったり、学び合うことで、実践力の向上にもつながるので、
全国規模でもっと増員するべきだ」

◇たかはし・かよ

専門は学校保健医科学。岡山大学医学部を卒業。
同大教育学部長などを経て、現在は同大大学院教育学研究科教授。63歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110505-OYT8T00190.htm

1万4千人が受診・相談 精神科医らの「心のケア」

(2011年6月27日 共同通信社)

東日本大震災で被害の大きかった岩手、宮城両県で、
精神科医らによる「心のケアチーム」の相談支援や診察を受けた
被災者が、少なくとも延べ1万4111人に。

津波で家族や家、職を失い、不眠や不安、いら立ちを訴えた人が
多数を占め、被災者の精神的サポートの必要性があらためて浮き彫り。

避難生活の長期化で、心のバランスを崩す人が出る一方、
仮設住宅入居で孤独感を抱く人も。
専門医らの対応には限界があり、被災地で治療に当たっている
心療内科医は、「今後は、精神面を支える地域のつながり、
周囲の支援が大切になる

心のケアチームは、精神科医や看護師、精神保健福祉士らが
数人単位で組織し、厚生労働省に登録。
被災地の要請に基づき、これまでに54チームが派遣、
避難所や被災住宅を巡回、心身に不調を来した住民の相談を受け、診察。
被災した自治体で、独自に組織されたケアチームも巡回。

宮城県精神保健福祉センターによると、政令市の仙台市を除く
県内では、3月17日から活動を開始。
中心市街地が壊滅的な被害を受けた気仙沼市や南三陸町を
抱えていることもあり、支援をした被災者は5月27日現在で延べ8318人。

最も多かった症状は「不眠・睡眠障害」で、1891人。
「不安・恐怖」954人、「イライラ」を訴えた被災者も369人。
「抑うつ気分」278人、「無気力」126人と多かった。
「食欲不振」、「アルコール問題」の相談も数多く寄せられた。

沿岸部の被害が大きかった仙台市では、3月14日からケアチームが
活動を始め、6月11日までに診察などをした被災者は延べ2310人。
岩手県は、3月18日~4月30日に、延べ3483人、
5月以降の数字は集計中のため、人数はさらに膨らむ見通し。

福島県でもこれまでに11チームが入っているが、
担当者は「まだ活動実績がまとまっていない」

※心のケアチーム

地震や津波などの被災地で、災害のストレスによって心身に不調を来した
住民や、受診先がなくなった精神障害患者への対応をする医療チーム。
精神科医や看護師、保健師、精神保健福祉士などの専門家が、
数人単位で避難所や被災住宅、在宅患者を巡回。
継続的な診療を要する場合、地域の医療機関を紹介し、
必要な時には投薬も行う。
東日本大震災では、厚生労働省が災害対策基本法に基づき54チーム、
計2450人を岩手、宮城、福島3県に派遣。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/27/138481/

2011年7月7日木曜日

養護教諭(5)悩みのサイン捉える

(読売 5月4日)

保健室のベランダで、1人の男子生徒が弁当を食べ始めた。
毎日ここで食べているという。

全日制と定時制(3部制)の生徒835人が通う
千葉県立生浜高校の昼休み。
保健室に次々やって来る生徒たちは、体の不調を訴えるわけではないが、
鵜沢京子・養護教諭(46)は、すぐには追い返さない。
「保健室の来室は、生徒のSOSサインの一つ」と考えているから。

不登校気味だった女子生徒が、ふらっと保健室を訪れたことが。
「久しぶりだね」と迎え入れて、会話を交わすうち、
交際相手の家に外泊を続けていることが分かった。
すぐにはとがめず、なぜ自宅に帰らないのかを尋ねると、
最初は言葉を濁していたが、「父親が怖い」と口を開き、
やがて、父親から暴力を受けていたことを打ち明けた。
校長に話し、児童相談所に虐待として通報。

身長を測りに度々訪れていた男子生徒は、
「親が帰って来ない。
たまに冷蔵庫にスーパーの総菜が入っているけど、
何もなくて食べずに寝ることもある」と漏らした。
鵜沢教諭は、「食材を買って、ご飯を作ってみようよ」と元気付け、
簡単なレシピを教えた。

同校のキャッチフレーズは、「やり直しのきく学校」。
中学時代、いじめや不登校を経験した生徒や、
複雑な家庭環境で育った生徒もいるが、
教職員の励ましと本人の頑張りで、有名企業への就職や
大学進学も果たしている。
「その陰に、本校の要ともいえる保健室の存在がある」と
関晶子副校長(54)。

同高の保健室には2010年度、延べ7219人の生徒が来室。
うち半数以上の4145人は、体調不良を訴えず、
「なんとなく来室」した生徒たち。

千葉大学教育学部養護教諭養成課程の岡田加奈子教授(50)は、
「生徒たちが、明確な理由なく保健室に来る状況は全国的に見られる。
家庭事情や友達関係に悩む生徒は少なくなく、
保健室に助けや居場所を求めている」

生徒たちの悩みに気付くのは簡単ではない。
ある生徒は、親が生活費を渡さずに家を空け、
1人で数か月間暮らしていた。
教材費などの支払いが滞り、心配した教員が生徒の自宅を訪ねて
事態が発覚した。
生徒は休まず登校し、まじめな態度で授業に参加。
保健室では、親に食事を作ってもらったことなどを
明るく話していたといい、生徒の真意を見抜けなかった。

子どもたちは、そう簡単には悩みを話さない。
だから、少しの変化にも気づけるようアンテナを張り、
理解して受け止めるよ、というサインも送り続けなければならない」

生徒たちを包み込み、耳を傾ける。
養護教諭の支援は、悩みの発見から始まる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110504-OYT8T00116.htm

「8020運動」は幼児期から=山根源之 口福学入門/2

(2011年6月27日 毎日新聞社)

病気になってから診療所や病院に行く、というのが従来の考え方。
病気にかからない努力も、かなり前から進められている。
不老不死は無理としても、アンチエージング(抗加齢)についての
話題には事欠きません。

年をとると視力が低下し、耳が遠くなり、歯が抜け落ちるのは
当然と思われていた。

現在では、歯が抜け落ちることは老化現象から
仲間外れになりつつある。

89年に始まった80歳で20本の歯を残そう、とする
「8020(ハチマルニマル)運動」は、大きな成果を上げている。
達成者は、全国平均(05年度歯科疾患実態調査)では20%を優に超え、
調査年の本年ではかなり高い値が期待。

老年期に近づいてから、口腔に関心を持っても間に合わないことが。
私たちは、病院の母親学級に歯科の立場で積極的に参加。
妊婦に対して、妊娠中の歯と口腔衛生の重要性を説明し、
誕生後の赤ちゃんのための実習も。

一昔前は、妊娠すると歯がだめになり、1人出産するごとに
歯を1本失うといわれた。
現在は、出産数が少ないので目立たないだけなのか?
そうではない。
つわりの時、刺激の強い歯磨剤を使うと、
気持ち悪くなって磨けない人が多く出て、口腔内が不潔になる。
そういう方には、小さな歯ブラシに水だけつけて、
体調の良いときに磨くことをお勧め。

赤ちゃんには歯が生える前から、授乳後に口の周りをふきながら
口の中も指で触り、慣れさせると、乳歯が出た後も歯磨きを嫌がらない。
少し大きくなれば、親の歯磨きを見て、子どもたちが毎食後磨くようになる。

幼児期の親の愛情は、子どもにとって一生の宝。
子どもの口腔衛生状態を気にかけないことは、ネグレクトの一つで、
多数の虫歯や重症の歯肉炎が見られることがあり、
口の中を診ると、児童虐待の有無が想像できる。

親の管理下にある12歳の永久歯の平均虫歯数は、1・4本。
親の思いが子どもの心に残り、多くの人は口腔のケアが習慣になり、
一生を通じて歯を残すことにつながる。

◆やまね・げんゆき=東京歯科大名誉教授

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/27/138520/

大船渡魚市場、震災後初待望の水揚げ、活気あふれ 銀ザケ主体に25トン

(東海新報 7月2日)

大船渡魚市場に1日、銀ザケを主体に約25㌧の水揚げ。
まとまった量の水揚げは、東日本大震災後初めて、
関係者らも「待ってました」と言わんばかりに笑顔。

場内には市職員や仲買人、漁協関係者が訪れ、
魚市場の記念すべき再スタートを祝っていた。

吉浜漁協所属の第十八吉浜丸(17㌧)が、吉浜の沖合約350㍍にある
横沼漁場で漁獲した銀ザケなど、約14㌧を水揚げ。
陸送で、約11㌧が運ばれてきた。

同魚市場には、午前8時ごろ吉浜丸が着岸。
タンクから銀ザケが網で水揚げされると、場内の仲買人や市職員、
漁協関係者らが一斉に詰めかけ、銀色に輝く魚体に見入っていた。

東邦博漁労長は、「漁師を30年以上やっているが、本当にうれしい。
沖から来る時、大船渡湾を見てきたが、涙がでた。
船の新人8人も頑張ってくれた」と、満面の笑み。

水揚げされた銀ザケは、ベルトコンベヤーで運ばれ、
市場職員らの手で計量。
鮮度保持タンクの中で氷漬けにされ、仲買人らが真剣な目つきで魚体を吟味。

入札の結果、水揚げされた銀ザケには㌔339円から331円の値。
同魚市場の千葉隆美専務は、「再開に向け、いいスタートが切れた。
多くの関係者のご支援と努力で、ようやくここまでこぎ着けることができた。
これから一歩ずつ、乗り越えていきたい」と感謝。

吉浜漁協の庄司尚男組合長は、
「定置の水揚げを見て感無量。
この日の水揚げを復興の第一歩として、一日も早く漁業生産が
軌道に乗れるように取り組みたい」と気を引き締めていた。

http://www.tohkaishimpo.com/