2009年3月14日土曜日

細胞内の掃除、仕組み解明 がん治療に応用も

(2009年3月9日 共同通信社)

細胞内の老廃物や異物を"掃除"して、細胞の健康を維持する
「自食作用」と呼ばれる仕組みの一端を、
大阪大の吉森保教授らのチームが解明、
英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に発表。

自食作用を促進する物質と、ブレーキをかける物質があるのを発見。
このバランスが崩れると、がんなどの異常が起きる可能性。
吉森教授は、「より詳しい仕組みが分かれば、
がん治療に応用できるかもしれない」

チームは、自食作用を担うタンパク質の一種「ベクリン」に着目
これに、Atg14Lという物質がくっつくと作用が強まり、
ルビコンという別の物質がくっつくと、ブレーキがかかるのを突き止めた。

2つの物質は、複雑な仕組みでバランスを取っているとみられ、
チームはこれが細胞のがん化を防ぐのに不可欠。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/9/93307/

ダライ・ラマ、チベット動乱50周年で声明

(CNN 3月10日)

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は、
チベット動乱50周年にあたる10日、チベット亡命政府が置かれている
インド北部ダラムサラで声明を発表、中国政府がチベット人の生活を
「この世の地獄」にしたとの認識を表明。

ダライ・ラマは、「この50年間はチベットの地と住民に、
多大な苦しみと破壊をもたらした。(チベットの)宗教や文化、言語や
アイデンティティは、今日消滅に近づいている。
手短に言えば、チベット人は死に値する犯罪者のように見なされている

ダライ・ラマは、50年間に様々な出来事があったとしたうえで、
「チベット問題は生きており、国際社会の関心が高まっているという事実は、
確かに成果だ。われわれが真実と非暴力の道を歩み続ければ、
チベットの大義の正当性は優勢になると、わたしは確信している」

中国当局は、ダライ・ラマが中国からの独立を求めていると非難。
ダライ・ラマはチベットの独立ではなく、純粋な自治を求めているとして、
中国の主張を否定。

http://www.cnn.co.jp/world/CNN200903100018.html

学士力(1)「楽勝科目」なし 4年で卒業47%

(読売 3月4日)

「国際教養人」の養成を強力に進める大学がある。

静かな銀世界に包まれた国際教養大学(秋田市)。
教室のドアを開けた途端、英語でまくしたてる声が聞こえた。

「この像から、古代日本人のどのような思考が読み取れるか」
埴輪のスライドを見せながら、英国人教員が日本人学生に問いかける。
古代の遺物から現代の漫画まで、幅広い文化財を教材に
日本人の死生観などを考えさせる授業。
学生たちは頭をひねりながら、「死への恐怖」、「祈り」などと英語で答える。
別の教室では、英語で近代日本の外交政策の歴史を語る講義に、
日本人学生が必死に耳を傾けた。

日本語で行われる「時事問題を読む」の授業は、
学生数(約730人)の1割強を占める留学生向け。
毎回、日本の新聞を教材。
この日は、豪州や韓国の学生らが、オバマ米大統領の就任演説への
論評の違いを話し合った。

「“地球村の住民”にまず必要なのは、お互いの違いを理解すること」
佐野ひろみ准教授(60)が、こうした授業の狙いを強調。

同大は5年前の開学時、教育目標に、大学名と同じ
「国際教養人の育成」を掲げた。
「何をできるようにするか」を明示する海外の大学を、強く意識したため。
弾力的な組織運営や教育を展開できる全国初の公立大学法人として発足、
次々に斬新な教育手法を打ち出してきた。

日本人対象の授業はすべて英語だが、内容は、2年次まで
日本の歴史や文化、政治、経済をテーマにした教養教育に重きを置く。
「国際人に必要なのは、単なる語学力ではない。
日本人としての自己認識が異文化への敬意を生み、
真のコミュニケーション能力を育てる」と中嶋嶺雄学長(72)。
入学式の式辞で毎回、新渡戸稲造の「武士道」を必読書として紹介。

1学年を100人程度に限定し、少人数教育を徹底。
新入生には、外国人留学生と一緒の寮生活を、全学生に1年間の海外留学を
義務づけ、日常的に異文化が体験できる工夫。

成績評価も厳密。
GPA(各科目の評定の平均値)が、3期連続で一定の成績を下回ると、
退学勧告の対象。
これまで勧告は出ていないが、「楽勝科目はありません。とにかくハード」と女子学生。
1期生のうち、4年間で卒業できたのは47・1%。
この数字が苦笑を裏付ける。

厳しい目は、教員にも向けられている。
専任教員49人(半数は外国人)は全員、3年契約の年俸制。
学期に1回、全員が学部長や同僚教員らの授業参観を受け、
教材の選び方や授業の進め方など、細かくチェックを受ける。
この結果を基にした評価と学生の評価を組み合わせて、
翌年度の年俸が決まる。
評価が基準を満たさず、契約が更新されなかった例は少なくない。

“品質”に対する大学側の姿勢は、卒業生の受け入れ先に信頼感を与えている。
採用担当者がキャンパスに足を運んで入社試験をし、
その場で内定を出す例も。
語学力や交渉力が生かせるとして、海外拠点を持つ商社やメーカーの
注目を集め、昨春卒業の1期生は全員、「希望の就職・進学先に進めた」
(キャリア開発室)。留年した学生も今春、希望通りの進路を選べそう。

受験生や保護者らの認識は、企業ほどには広がっていない。
玄関を入って、すぐに目に飛び込んでくるよう張り出されているのは、
国際教養大が上位にランクされた予備校作成の難易度ランキング。
「まだまだ、偏差値が高いことを強調しなければならない。
新設大学のつらさですよ」。中嶋学長は苦渋をにじませた。

◆GPA(グレード・ポイント・アベレージ)

授業科目ごとの成績評価を数値化し、その平均値が一定の水準を
満たしているかどうかで、進級や卒業の可否を認める制度。
文部科学省の2007年の調査では、全大学の約4割、294校が導入、
必ずしも厳密な成績評価にはなっていない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090304-OYT8T00197.htm

2009年3月13日金曜日

ヒトiPSで血小板 東大教授ら作成、献血頼らぬ供給に道

(2009年3月9日 毎日新聞社)

さまざまな種類の細胞に分化できるヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)
から、止血作用がある血小板の作成に、
東京大の中内啓光教授(幹細胞生物学)らが世界で初めて成功。

血小板は、手術の止血のほか、血が止まりにくい出血性の病気の治療に
不可欠だが、長期保存できない弱点。
実用化すれば、献血に頼らず、血小板を安定供給する道が開ける。
日本再生医療学会で発表。

中内教授らは、山中伸弥・京都大教授が開発した方法で作った
ヒトiPS細胞と、骨髄中の細胞を培養。
複数のたんぱく質を加え、血小板のもとになる細胞「巨核球」に分化。
巨核球から、形状や機能が通常と同じ血小板ができるのを確認。

iPS細胞は、皮膚など体細胞に特定の遺伝子を入れて作るのが一般的だが、
遺伝子の副作用でがん化の危険。

血小板は、遺伝子が存在する核がなく、その影響を受けない。
血小板異常の患者のiPS細胞を作り、遺伝子治療をしてから血小板を作り、
移植するという治療法も現実的に。
血小板は冷蔵保存できず、通常4日ほどで廃棄される。

中内教授は、「赤血球など他の血液成分を作成できる可能性もあり、
献血不要の社会を実現したい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/9/93250/

ビタミンDに筋力を高める働き発見魚からたくさんDをとろう

(日経ヘルス 3月4日)

ビタミンDには、カルシウムとともに骨を丈夫にするだけでなく、
筋力を高める働きもあることが確認。

研究は、英国の12~14歳の女性99人を対象に、
血液中のビタミンDの濃度と、ジャンプ力との関係を調べた。
ジャンプ時の動きと力を解析した結果、血中ビタミンD濃度が高い人ほど、
ジャンプは高く、速く、筋力も高いことが示された。
「筋肉や骨のカルシウムとリンの調節や、たんぱく質合成の促進など、
ビタミンDの様々な働きによるものだろう」

ビタミンDの1日当たりの目安量は、12~14歳では4μg、成人は5μg。
ビタミンDは、日光に当たると皮膚で合成されるが、
食品では魚、キクラゲなどのキノコ類に多い。

100g当たりにクロカジキなら38μg、シロサケで32μg、カレイで13μg、
春カツオで4μgのビタミンDが含まれている。
魚を食べて、骨も筋力も強くしよう。

(J. Clin. Endocrinol. Metab.;94,559-563,2009)

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090304/103227/

中原誠名誉王座・十六世名人が引退表明

(日経 3月11日)

名人15期などの記録を打ち立て、将棋界に一時代を築いた
中原誠名誉王座・十六世名人(61)は、現役を引退すると発表。
2008年8月に脳出血で倒れ、公式戦を休んで療養。

中原氏は、「復帰に向けてリハビリに励んできたが、元通りとはいかず、
これまで以上にいい成績やいい棋譜を残すのは難しいと判断。
十分に勝負を堪能したので、悔いはない」

中原氏は宮城県出身。1965年、四段に昇段しプロ棋士に。
早くから将来を嘱望され、「棋界の太陽」と称された。
72年、24歳で大山康晴十五世名人を破って名人となり、
78年、大山氏に次ぐ史上2人目の5冠を達成。

大局観に優れ、「自然流」と呼ばれるおおらかな棋風が持ち味。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090311AT1G1103311032009.html

2009年3月12日木曜日

「あきらめない姿、見て」 1型糖尿病の岩田稔投手 WBC、侍ジャパン支え

(2009年3月9日 共同通信社)

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の「侍ジャパン」に、
相手チームだけでなく、1型糖尿病とも闘う左投手がいる。
阪神タイガースの岩田稔選手(25)。
今も1日4回のインスリン注射を続ける。

全国の1型糖尿病患者は推定5万-10万人。
「あきらめずに頑張れば、何でもできる」
同じ病気を抱える子どもらをマウンドでのプレーで励ますつもり。

大阪桐蔭高校の野球部時代、ウイルス感染がもとで1型糖尿病を発症。
1型は、肥満など生活習慣が原因の「2型糖尿病」とは違い、
インスリン注射で普通の生活を送ることができるが、
完治できる治療法はまだない。

社会人野球チームから採用を断られ、野球をやめようと思ったが、
家族や友人の支えで関西大に進学。
2005年、阪神に入団。昨年、初勝利を挙げ10勝。
178センチ、85キロ。最速150キロの直球とカーブが武器。
投手の球数制限があるWBCでは、"生命線"とされるリリーフを担う。

1型糖尿病の研究を助成する基金を設立している患者団体
「日本IDDMネットワーク」(事務局・佐賀市)。
昨年12月、患者の子どもたちを集めて名古屋市で開いた
クリスマス会に、岩田投手の姿があった。
自身の闘病体験を交え、子どもたちの質問に一つ一つ答えた。

シーズン中、患者の子どもたちを甲子園に招いたこともある岩田投手。
以前から親交があったネットワークの井上龍夫理事長(56)に、
「子どもたちのために何かしたい」と常々語っていた。
自主トレ中の沖縄県で、「シーズン中、1勝するごとに10万円を寄付したい
今シーズンの目標は15勝。

「1型糖尿病の選手でもこれだけ活躍できる、と世界にアピールしてほしい」
井上さんは登板を心待ちにしている。

▽1型糖尿病

IDDM、インスリン依存型糖尿病とも言われ、自己免疫によって起こる。
血糖を下げる作用を持つ必須ホルモンであるインスリンを、
体内で作れなくなってしまう病気。
現在、完治のための効果的な治療法はなく、
生涯にわたり血糖測定をしながら毎日数回のインスリン自己注射または
ポンプによるインスリン注入を続けることが必要。
糖尿病患者の99%を占める2型(成人型)とは、
原因も治療法の考え方も異なる。
1988-89年、巨人で計21勝を上げたガリクソン投手も1型

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/9/93341/

「選択と集中」の限界

(日経 2009-03-03)

自動車、電機といったわが国を代表する製造業が苦境に。
電機は、大手が2009年3月期に軒並み巨額の赤字を計上。
1980年代後半のバブル後の「失われた10年」を、
各社は不採算部門からの撤退とそれに伴う人員削減で乗り切ってきた。
経営者たちは、改革の過程でしばしば「リストラ」というネガティブな
表現の代わりに、口当たりの良い言葉を探した。
その結果、経済界で流行語になるほど多用される言葉が登場。
それが「選択と集中」である。

最も早く「選択と集中」という言葉を使った経営者は、おそらく石油化学品大手、
東ソーのトップだった山口敏明氏(2000年死去)。
1988年、シリコンウエハー事業からの撤退を迫られ、
赤字事業や将来性のない研究テーマを切り捨てる方針を
説明する標語として、これを掲げた。
強気の経営と奔放な性格で、「タイガー山口」との異名を持つ
名物トップだっただけに、事業撤退の悔しさを自ら癒やす狙い。

経営戦略のスローガンとして、「選択と集中」を唱えたのは、
1992-96年に東芝社長を務めた佐藤文夫・現相談役。
社長就任早々、全商品分野の3分の1を対象に
事業を見直す方針を打ち出し、93年には東証2部上場の子会社だった
東芝鋼管の新日本製鉄への譲渡、約7割出資していた
音響機器製造会社オンキヨーの売却(正式な株式譲渡は95年)など。

この路線は、西室泰三・現相談役(社長在任1996-2000年)、
岡村正・現会長(2000-05年)、西田厚聡・現社長(05年-)と、
佐藤氏以後の歴代トップが受け継いだ。
東芝が、「『選択と集中』の優等生」と呼ばれてきたのは、
4代にわたる社長が舵を取ってきた一連の改革の蓄積。

2000年、「ITバブル」がはじけて以降、
3つの過剰(設備・雇用・債務の過剰)の解消が喫緊の経営課題となった
大手電機各社に対し、証券アナリストたちは、「選択と集中」の進ちょく度を
企業や経営者の評価の物差しとしてきた。

赤字垂れ流しの元凶とされたDRAMやコモディティー(汎用品)化が進んで、
採算が厳しくなったAV(音響・映像)機器などの再編
(撤退や他社との事業統合)が進み、その過程で洗濯機や冷蔵庫などの
白物家電から原子力発電までを網羅する「総合電機」という
業態呼称は半ば死語と化した。

ところが、「選択と集中」の神通力がにわかに失せた感がある。
「選択と集中」の優等生、東芝、シャープ、NEC、パイオニアなどが、
09年3月期に最終損益は赤字に転落。
最終赤字の金額もNEC2900億円、東芝2800億円、パイオニア1300億円、
シャープ1000億円と、途方もない水準。

優等生だけが危機に瀕しているのではない。
アナリストから「選択と集中」の遅れを指摘されてきた日立製作所は7000億円、
HDD(ハードディスク駆動装置)事業の売却・再編で「優柔不断」といわれてきた
富士通も500億円の最終赤字を計上。

昨今の日本のエレクトロニクスメーカーの業績急降下の局面で、
「選択と集中」が進んでいようが遅れていようが、結果に大差はなかった。
進ちょく度はさして意味を持たなかったのではないか。

問題はこれからだ。
「選択と集中」を進めてきたメーカーは、事業見直しの手を緩める気配はない。
パイオニアは構造改革案で、プラズマテレビから完全撤退し、
カーナビゲーションなどカーエレクトロニクス事業への傾斜を一段と強める方針。
家庭用オーディオ分野で、「Pioneer」の名門ブランドがやがては消える予感。

縮小均衡を目指す「選択と集中」の追求の果てに、
日本のエレクトロニクスメーカーは未来を見いだせるのか?
実をつけなくなった枝を、次々に切り落としていったのが「選択と集中」の経営、
数少なくなった選りすぐりの枝の葉に勢いがなくなってきたのが現状。
実を結ばない枝を切り落とし続ければ、
いずれは枝そのものが消えうせてしまうのではないか。

「選択と集中」が間違っているとは誰も言わない。
その追求には限界がある。
優等生の東芝では1990年代半ば、原子力事業を他社との統合・再編の
候補として検討したことがあった(最有力候補はライバルの日立製作所)。
当時、国内の原発新設計画は先細り、海外でも1979年のスリーマイル島
原発事故をきっかけに、米国の新規立地凍結などにより需要は減退。
原子力事業の先行きは視界不良。

米ブッシュ政権の原発凍結見直しや2003年のイラク開戦前後からの
原油価格高騰で、様相は一変。
06年、東芝は米原子力大手ウエスチングハウス(WH)を買収、
一気に事業拡大へと路線転換。

東芝の09年3月期の部門別営業損益予想をみると、
原子力事業を含む社会インフラ部門は353億円の黒字。
電子デバイス部門(1978億円の赤字)や家庭電器部門(154億円の赤字)の
不振とは際立った対照。
巨額の半導体投資が裏目に出た西田社長にとって、
乾坤一擲のWH買収はまさに干天の慈雨。
不作為や偶然の産物だったとしても、原子力事業の芽を摘まなかった
歴代社長の経営判断は評価されていい。

「選択と集中」だけでは、企業は存続はできても成長は難しい。
エレクトロニクスメーカーのような、ものづくりの先端技術を事業基盤とする
企業にとって、次世代をにらんだ事業の芽は不可欠。
業績回復の道筋が見えない閉塞状況が続く中で、
あえて新芽を育む逆張り経営を問いたい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090226.html

細胞内のたんぱく質、生体での観察に成功…京大教授ら

(2009年3月5日 読売新聞)

人の細胞内にあるたんぱく質の様子を、生きたまま観察する手法を
京都大学の白川昌宏教授らが開発、免疫機能に関係するたんぱく質に
免疫を抑える薬がとりつく様子を観察することに成功。

たんぱく質に対する薬の働きを、実際の生体反応として確認できる成果。
英科学誌ネイチャーに発表。

たんぱく質の構造は、そのたんぱく質に付けた「安定同位体」という
元素に注目して分析
これまでは、人の生きた細胞に、安定同位体を付けたたんぱく質を
取り込ませる方法がなかった。

白川教授らは、たんぱく質を細胞の表面に集めたうえで、
細胞内に引きずり込む手法を開発。
実際に、免疫抑制剤が目標のたんぱく質にとりついた様子が観察。

別の観察では、生体内でのたんぱく質の動きや安定性が、
試験管の実験とは異なる可能性もわかった。
白川教授は、「我々の手法だと、薬が実際に生体内で働く様子を
確認しながら、新薬を開発することができる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/5/93122/

立体的心筋細胞づくり成功 形自由、再生医療に応用へ

(2009年3月5日 共同通信社)

九州大は、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)を基にした
心臓の細胞だけから、心臓と同様に拍動する立体的な
心筋細胞の構造体をつくることに成功。

これまでは、シート状のものしかつくれなかった。
形も自由にできるため、将来は軟骨や臓器など
幅広い再生医療への応用が期待。

九州大の中山功一特任助教(整形外科)らのグループが、
ばらばらの細胞が約1万個単位に集まった塊を、
血液代わりの培養液の中で針や糸に付着させて特定の位置に
24-48時間固定、立体的な構造体をつくる技術を新たに開発。

立体的な構造体をつくるには、別の生体材料との組み合わせが必要。
細胞のみで立体構造体をつくろうとすると、厚みのために培養液が
浸透しなくなり壊死していた。
希望通りに形づくれる新技術では、網状や筒状に立体化させて
内部にすき間を多数つくることで生存率を高めた。
厚さ約1ミリのハート形構造体を、培養液内で積み上げると拍動が確認。

将来は患者自身の細胞だけを使い、
移植のための臓器をつくることも理論的には可能。
研究成果は、日本再生医療学会で発表。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/5/93129/

2009年3月11日水曜日

減量のための身体活動ガイドライン改訂

(2009年3月3日 Medscape)

米国スポーツ医学会(ACSM)は、成人の減量および体重再増加予防の
ための適切な身体活動(PA)に関するガイドラインを改訂。
2001年ACSM勧告の改訂版で、
『Medicine & Science in Sports & Exercise』2月号に掲載。

2001年の勧告では、減量を必要とする成人の同定、推奨体重減少量、
食事制限、レジスタンス・エクササイズの実施、薬物療法の使用、
行動療法などが取り上げられた。

ASCMのJoseph E. Donnellyらは、
「改訂の目的は、新しい情報より、2001年のガイドラインの推奨量よりも
多くのPA量が必要な可能性がある。
今回は、National Weight Control Registry(NWCR)、米国医学研究所(IOM)
による体重管理に必要なPA量に関する情報を受けて改訂」

過体重や肥満は、さまざまな慢性疾患に関連する。
成人の66%以上が過体重、肥満で、体重管理のガイドラインが必要。
米国立心臓肺血液研究所(NHLBI)のガイドラインは、
肥満者に対し、10%の減量を推奨、3%-5%の減量で健康上のリスクが減少。

体重増加の予防、減量、体重再増加の予防のため、
軽度の身体活動は1.1-2.9METS、中等度の身体活動は3.0-5.9 METS、
強度の身体活動は6 METS以上と定義。

2001年のACSMガイドラインは、過体重および肥満の成人に対し、
健康改善のために中等度のPAを週150分以上、
長期減量のために週200-300分行うよう勧めていたが、
改訂ガイドラインは、週150-250分の中等度PAは体重増加の予防に有効、
減量にはあまり効果的ではない。

PA量が多い場合(週250分以上)に、体重減少。
適度な食事制限で、週150-250分の中等度PAは減量に有効。
週250分以上のPAは、減量後の体重維持に有効、
PAが減量後の体重再増加の予防に有効かの確認試験は行われていない。

レジスタンストレーニングは体重減少を促進しないが、
健康上のリスクを減少、除脂肪量を増加、脂肪量減少を促進。
持久PAやレジスタンストレーニングは、体重減少がなくても、健康上のリスク減少。
PAが、体重増加の慢性疾患リスクを予防するかは、エビデンスが不十分。

65歳以上を対象とした研究はほとんどないが、
高齢者の体重減少は、除脂肪量減少、骨量減少を引き起こす。
体重増加の予防、減量、体重維持のためのPAの効果は個人差がある。

AIDS、1型糖尿病など、体重に影響を及ぼす併存症を有する患者を対象、
薬物療法を用いた試験は除外、
高血圧、心血管疾患、2型糖尿病など薬剤を使用している患者を
対象とした試験は検討の対象。

具体的な臨床勧告、支持するエビデンスのレベルは次の通り。
1)体重増加の予防に、週150-250分(1200-2000kcal/週)のPAが
3%以上の体重増加を予防(エビデンスレベルA)。


2)PA量が多いほど減量効果が高く、体重減少量は、
週150分未満のPAでわずか、週150分以上では約2-3kg、
週225-420分以上では5-7.5kg(エビデンスレベルB)。

3)減量後の体重を維持に、週約200-300分のPAが体重再増加を
最小限に抑えるのに有用、「多ければ多いほど良い」。
体重再増加の予防に必要なPA量のエビデンスはない(エビデンスレベルB)。

4)ライフスタイルPAは、あいまいな用語で、
肥満につながるエネルギーのアンバランスの改善(エビデンスレベルB)。

5)厳しい食事制限ではなく、適度な食事制限を行った場合、
PAは減量を促進する(エビデンスレベルA)。

6)レジスタンストレーニングは、食事制限の併用の有無にかかわらず、
減量に無効。エネルギー制限時、除脂肪量の増加・維持、体脂肪の減少を促進。
高比重リポ蛋白コレステロール低値、低比重リポ蛋白コレステロール高値、
インスリン感受性、血圧など慢性疾患のリスク因子を改善(エビデンスレベルB)。

「ACSMは、体重増加の予防、関連慢性疾患リスク因子の改善に、
中等度のPAを150分/週以上行うよう勧めている」
「肥満者に対し、PA量が多いほど効果が高く、中等度のPAを
約250-300分/週(約2000kcal/週)で、大きな減量効果、
体重再増加予防効果が得られる」

米保健福祉省(Department of Health and Human Services:HHS)
米国人のための身体活動ガイドライン
(Physical Activity Guidelines for Americans)の 勧告と一致。

出典Med Sci Sports Exerc. 2009;41:459-471.

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/3/3/92944/

万能細胞で心筋梗塞改善 阪大がマウス実験で

(2009年3月4日 共同通信社)

さまざまな組織に成長できる新型万能細胞「iPS細胞」を使い、
マウスの心筋梗塞の症状を改善させる実験に、
大阪大の沢芳樹教授(心臓血管外科)と大学院生三木健嗣さんらの
グループが成功。日本再生医療学会で発表。

グループは、マウスのiPS細胞を心筋の細胞に成長させ、
直径約1センチのシート状にした。
これを、人工的に心筋梗塞にしたマウス計8匹の心臓の患部に
張り付けたところ、4匹で血液を送り出すポンプ機能が改善。

残る4匹は、移植した細胞が良性の腫瘍を形成。
安全性を高める工夫が必要なことも明らかに。

iPS細胞は、未分化なまま移植すると、腫瘍になる恐れがある。
グループは独自開発の培養法を用いて、iPS細胞の99%以上を
心筋細胞に分化させていた。

わずかに残った未分化細胞が腫瘍になったらしい。
三木さんは、「実用化には、さらに高純度の心筋を得る技術が必要

沢教授らは2007年、心臓病患者の太ももの筋肉を培養して
シート状にしたものを心臓に張り、心機能を回復させることに成功。
人のiPS細胞からつくった心筋シートを、臓器の大きさなどが
人と近いブタに移植する実験を始める計画。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/4/93049/

花粉症対策、地域で差 関東はマスク派

(2009年3月9日 毎日新聞社)

関東人はマスク好き?
ウェザーニューズが、男女約2万5000人を対象に実施した
花粉症対策の調査で、マスクで対処する人が関東地方に集中。
他の地方では、薬や食べ物で対応する人が多かった。

同社の携帯サイト利用者に対して、花粉症対策(複数回答)と
それにかける費用を尋ね、回答者の居住地ごとに集計。

「マスク」を挙げた人が最も高かったのは、茨城で61・4%。
神奈川61・1%、千葉60・8%、東京58・6%、静岡57・7%と、
上位に関東の各都県が入った。
「薬」は鳥取、「目薬」「食べ物」「飲み物」はいずれも秋田が1位。

対策費用が最も高かったのは青森で、1カ月あたり2380円。
隣の秋田は1091円で最下位。
同社は、「両県の花粉の飛散量は22位と23位でほぼ同じだが、
かける金額が違うのは県民性の違いではないか」と分析。

同社は、全国約500地点での計測データをもとに、
花粉の飛散量と予報をインターネット上の「花粉チャンネル」
http://weathernews.jp/pollen/)で提供。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/9/93279/

シャープの「第2世代薄膜太陽電池モジュール」

(日経 2月18日)

日経優秀製品・サービス賞 2008優秀賞
◇シャープの「第2世代薄膜太陽電池モジュール」

優秀賞のシャープの第2世代薄膜太陽電池モジュールは、
太陽光を電力に変える変換効率がモジュールベースで業界トップクラス。
海外で増えている大規模な太陽光発電施設向けの戦略商品。

第2世代薄膜太陽電池モジュールでは、
縦横1メートル×1.4メートルのガラス基板を採用。
2005年、量産を始めた第1世代薄膜太陽電池モジュールに比べ、
基板面積は2.7倍に拡大、生産コストを引き下げられる。
変換効率は、モジュールベースで9%と薄膜太陽電池では業界トップクラスで、
1枚のモジュールで128ワットの高出力を実現。

ガラス基板の上に厚さ2マイクロメートルのシリコンの薄膜を形成、
シリコンをおよそ200マイクロメートルの厚さにスライスして作る
結晶型太陽電池に比べ、シリコン使用量が100分の1で済む。
材料節約と基板の大型化で、生産コストを引き下げる。

薄膜太陽電池の性能は、シリコン膜を形成するプラズマCVD
(化学的気相成長法)装置によって決まる。
シャープは装置を自社開発し、その装置の中で技術革新。

今回は、大面積のガラス基板に高品質な膜を「高スループット」、
均質な膜を短い時間で形成できる技術を確立して、
太陽電池としての性能を高められるように工夫。
今後は、膜を多層化することで変換効率を引き上げていく。

現在は、アモルファス(非結晶)シリコンと微結晶シリコンの薄膜を重ねる
「タンデム」構造。
10年3月までに稼働させる堺市の新工場では、
アモルファス2層と微結晶1層の「トリプル」構造に切り替え、
変換効率も10%に高める予定。

薄膜型太陽電池は、結晶型に比べ大きさがかさばるデメリットがあるが、
住宅の屋根ではなく平地に設置する大規模な太陽光発電施設に適している。
技術を進化させ、「メガソーラー」時代を切り開いていきたい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/award2008/awa090219.html

2009年3月10日火曜日

高気圧カプセル"解禁" JADA「禁止しない」

(2009年3月4日 共同通信社)

ドーピング違反にあたるなどの疑いから、
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の使用自粛要請の対象になった
「高気圧カプセル」が、国内スポーツ界で使用を再開できる見通し。

JADAの理事会で、河野一郎理事長が「高気圧カプセル」について、
「世界反ドーピング機関(WADA)が、現時点で使用効果が
はっきりしないから禁止しないとし、それに従う」との見解を初めて示した。

この問題で、昨年12月に約10億円の損害賠償を求めて提訴する方針を
示した米国の販売業者、オキシーヘルス社の幹部は、
「JADAが高気圧カプセルに関して正式に見解を示せば、提訴を取り下げる」

一般的にいわれる「酸素カプセル」は、酸素濃度と気圧の両方を高める
医療機器の「高圧酸素カプセル」と、酸素濃度を変えずに空気圧を高める
健康器具の「高気圧カプセル」の2種類。

後者は、けがの治癒や疲労回復に効果があるとされ、
サッカーのイングランド代表ベッカムや夏の高校野球で優勝した
当時早実の斎藤佑樹投手(早大)が使用して話題。

JADAは、北京五輪前に医療機器の「高圧酸素カプセル」の
使用自粛を呼び掛けた。
十分な説明が不足し、現場では「高気圧カプセル」の使用をめぐって混乱。

今年に入り、業者には箱根駅伝や春の選抜高校野球の関係者から
「カプセルを使いたいけど使えない」との問い合わせが殺到。
業界団体の日本国際健康気圧協会は、
「使用自粛で打撃を受けた業者が多く、解禁は大歓迎。
JADAは途中から見解をすり替えた」と批判。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/4/93067/

若手研究者支援NPO発足

(サイエンスポータル 2009年3月4日)

ポスドクを初めとする若手研究者が、知的能力を発揮する場の拡大や、
市民や子どもたちの科学に関する関心を高めることを目指す
NPO 法人「知的人材ネットワークあいんしゅたいん」が発足。

「知的人材ネットワークあいんしゅたいん」は、
博士号を持つ物理学者の働く場を広げる活動を続けて来た
坂東昌子・愛知大学名誉教授らが中心になって設立。
法人設立を機に、物理学者だけでなく若手科学者全体に対象を広げて、
支援活動を活発化することを目指す。

理事長の坂東昌子さん、名誉会長の佐藤文隆・京都大学名誉教授らは、
NPO法人の当面の目標として、
「ポストドクターなどのキャリアアップのための情報提供・啓発」、
「メディアを活用した科学教材などの開発」、
「科学映像教材の教育諸機関への普及」、
「市民・子供たちの科学に対する興味・関心の向上」、
「女性がいきいきと働ける環境づくりのための啓発・支援」などを挙げた。

人を育てることの大切さ、2009年度から実施される
「教員免許更新講習制度」の重要性を指摘し、
学校教員と大学教員・研究者の双方に対して、
教員免許更新講習制度を互いの交流の場の創造に、
積極的に活用することを呼びかけるアピールを出した。

坂東理事長は、京都大学大学院博士課程時、自身の子育てと研究を両立し、
同じような研究者も支援することを目的に、
京都大学内に保育園を作ったことでも知られる。

「今日まで研究者として、女性として、母として、子どもたちを通して、
さまざまな縦糸・横糸でつながったネットワークの中で
たくさんの仲間と知り合い、目標に向かってともに歩んできた。
知的人材、特に次代を担う若い人たちがその持てる力を発揮できる
環境づくりのため、科学を万人のものにするためのさまざまな取り組みを、
蓄積してきたネットワークを基礎に、皆さんと一緒になって
希望の持てる未来へ向かって協力しあいたい」

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0903/0903041.html

身の回りの熱を電気に変えよう

(日経 2009-02-27)

暖房器具は、体だけ暖めてくれればいいのだが、
そんなに都合良くはいかない。
ほとんどの熱は、周りに捨てられる。実にもったいない話。
日本企業が開発中の技術が、この問題を解決しようとしている。

身の回りに捨てられていた熱を、もう一度電気に戻す「熱電発電」。
読んで字のごとく、熱を電気に変える技術。

静岡県磐田市にあるヤマハの豊岡工場
新製品開発を進めるプロダクティブテクノロジー事業戦略推進部の
堀尾裕磨部長に、大手の住宅やサニタリーメーカーから問い合わせが。
堀尾部長らが開発した、室温付近の熱も電気に変えられる熱電発電技術。

「身の回りに捨てられている低品位の廃熱も逃さない」と、
開発中の技術を4年前から講演や技術誌で紹介。
低品位とは、利用しにくいという意味。
100度を超える高温なら、水を沸騰させてタービンを回して発電する手がある。
室温付近の熱を電気に変える実用的な技術は無かった。

ヤマハは、2種類の材料を接合して電気を流すと吸熱・発熱する
「ペルチェ効果」を使う製品開発には、長年の実績。
精密機器を温度制御する素子を販売。
ペルチェ効果とは反対に、材料の接合部を加熱したり冷却したりすると、
電気が流れる「ゼーベック効果」を使う熱電発電の研究。
05年、実用的に使える熱電発電技術を開発。

住宅関連メーカーは、この技術に注目。
利用できる場所は、床暖房。
暖房は、床の上にくる熱を利用するが、実は熱は床の下にも逃げる。
お風呂やトイレも、無駄に捨てている熱だらけ。
これらを電気に変えれば、省エネにつながる。
ヤマハと各社との間で、実用化に向けた共同開発の話し合い。

原子力や火力、水力など、様々な種類の巨大な発電設備を手がける東芝も、
熱電発電の開発に取り組んでいる。
実験場は、湯治場で知られる群馬県の草津温泉。
95度の源泉の熱を電気に変える。
05年、運転を始めた商品第1号は3年以上たった現在も、
150ワットの電気を発生し続けている。

「太陽電池に比べ、同じ面積なら発電量は6倍」
東芝電力システム社の環境・機能性材料開発担当の新藤尊彦主査は、
草津の発電能力を試算。

熱電発電の普及のカギを握るのは、価格。
100度近い温泉で使う装置の価格は、今のところ太陽電池の数倍。
個人経営の温泉宿や個人宅では、まだ導入しにくい。
草津温泉では、価格が高くなった理由がある。
お湯は、水素イオン濃度(pH)は2という強い酸性のため、
それを通すのに高価なチタン合金の管を使った。

中性やアルカリ性のお湯なら、安価なステンレス管を使える。
普及すれば、量産効果で装置の価格が下がる。
今後は、全国の温泉地を歩いて地道に営業活動をすすめる考え。

熱は、身の回りの様々な場所で捨てられている。
国内で、産業によって排出される150度以下の熱は、
年間で1000億カロリーという試算データも。
これらをすべて熱電発電で電気に変えることは不可能だが、
利用する価値はある。

応用の余地はいくらでもあるだろう。
ゼーベック効果を示すハイテク繊維を作れば、
体温で発電する衣類や寝具も作れる。
電気は、フレキシブルな二次電池に蓄えて再利用できる。
熱電発電の基本的な技術は、すでに開発されている。
子供から大人まで、様々な利用のアイデアが求められる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090225.html

新しい波/294 市民マラソン熱/2

(毎日 2月28日)

ジムで走り始めて1年余りの大手電機メーカー勤務、高橋裕輔さん(37)は
昨秋から週に2度、退社後に皇居外周などで行われる
ランニング教室に参加する。
主催は、「セカンドウィンド・アスリートクラブ」。
実業団女子の資生堂を率いた川越学監督(46)が退社後、
07年4月に設立したクラブチーム。

昨年の東京国際女子2位の加納由理、北京五輪6位のマーラ・ヤマウチら
トップ選手をはじめ、サポーターも含めて約600人がチームに所属。
約300人が、選手やスタッフから指導を受ける。
フルマラソン3時間半以内の上級者から初心者まで、
4段階に分けて設定された教室には、毎回約50人が集まる。

川越監督は、90年代後半以降の相次ぐ企業スポーツ部の休廃部で、
仲間が走る場を失っていく様子に危機感。
「景気や業績に左右されない道はないものか」と思案した末、
欧州のサッカークラブの運営も参考に、クラブ発足に踏み切った。
大きなスポンサーを持たず、トップからビギナーまで幅広く網羅する
運営形式は国内で異例。

クラブで指導を受けるには、サポーター(年会費8400円)に入会した上で、
教室参加費(月額6300円)が必要。
運営費とトップ選手の強化費を賄う。
川越監督は、「市民と接点を持つと、誰の指導も受けずに
走っている方が多いのに驚いた。ノウハウを持っている立場として、
役割を果たしていける」と確信。

ランニングブームの追い風を受けて、教室参加者は右肩上がり。
川越監督は、「トップ選手を効率よく強化し、世代交代を図っていくかが難しい。
安定してサポーターを確保するためにも、シンボルである選手の強化に
ウエートを持っていきたい」

最近、高橋さんは初心者ランナーから一つレベルを上げた。
トップ選手から指導を受けられる機会なんて、通常はありえない。
こんな組織が別にも生まれていけば、日本のランニングの底辺も広がっていく」
目標は、今年中のハーフマラソン完走だ。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20090228ddm035050100000c.html

2009年3月9日月曜日

家庭の省エネ、ファンケルの教訓

(日経 2009-03-02)

2月2日付「『個の環境感度』が試される」で、ファンケルが
家庭で電気やガスの使用量を大幅に削減した社員に報奨金を出す
制度を導入したことについて触れた。
「エコチャレンジ」第1弾(実施期間、昨年7—11月)の最終集計がまとまり、
削減目標の達成者を集めた表彰式が同社で開かれた。

社員2000人(派遣含め、従業員数約3600人)のうち、
電気で削減目標を達成したのは33人、ガスは34人。
達成者数は、参加者の1.7%にとどまった。

制度の概要は、昨年6月の使用料金を同月の全国平均(家計調査の数値)
で割った値が基準。
基準値が1以下なら、7—11月の5カ月平均で10%以上の削減が目標。
基準値が1を上回っていたら20%以上。
基準値が1.13の人は、5カ月の使用料金の合計を同期間の全国平均の合計で
割った値が0.90(1.13×0.8=0.904)以下になれば目標達成。

日本全体の家庭からのCO2排出量は、2007年度に1990年度より41%増。
06年度比でも8%増。
パソコン、エアコンなど製品個々の省エネは進んでいるが、
家にある電化製品自体の数が増えている。

尺度が使用料金という違いはあるにせよ、
ファンケルの10%削減や20%削減という目標設定は、文字通り挑戦的。
それが超難関になった原因の1つで、12月から始めたエコチャレンジ第2弾
(3月まで4カ月間)では、参加者全員の削減目標を
「わずかでも基準値を下回ればいい」という線に軌道修正。
第1弾でも、この目標なら4割が到達。

過大な目標設定で、「大山鳴動してねずみ1匹」に終わった——。
第1弾の結果は皮肉な見方もされかねないが、教訓を残している。
難関を突破した目標達成者に、省エネ術を聞いてみよう。

〈早川知佐さん(本社社長室)=電気の削減目標0.89→結果0.52〉

「朝晩のシャワー後、湿気をとるために浴室乾燥機を使っていた。
水滴を軽くぬぐった後、窓を開けておけば乾く。
冬は、エアコンで部屋全体を暖めるのをやめている。
遠赤外線の暖房機にして、自分がいるところだけを暖かくする」

〈香川誠志さん(ファンケル発芽玄米長野工場)=ガス削減目標1.51→結果1.10〉

「朝晩浴びていたシャワーを晩だけにし、使う時間も5分間に。
寒くなってからは、浴びたお湯をペットボトルに受け、
タオルで巻いて湯たんぽ代わりに。
朝に、ボトルの中身を凍った自動車のフロントガラスにかけて溶かす」

成松義文社長は昨夏、週末には家でエアコンを使わない我慢の暮らし。
田多井毅副社長はテレビ、温水洗浄便座など
冷蔵庫以外のコンセントはまめに抜く。
削減目標の高いハードルに跳ね返された。
目標を達成した社員の体験談を耳にして、
「頑張るだけでなく、知恵を出さないといけないと感じた」と成松社長。

エコに無関心だったという早川さんは、
「少しの工夫で(電気代を)減らせると分かって、途中から面白くなった」
実践中の部分暖房は、「西欧のセントラルヒーティング型から、
必要な時に必要なところに必要なだけというコタツ型への転換が課題」
(安井至・国際連合大学名誉副学長)と指摘する環境問題の専門家の発想に
自然体で到達した。

CO2削減を地に足が着いたものにするには、
政府や企業だけでなく、個人の参加が欠かせない。
エコバッグの活用や省エネ家電への買い替えはしても、
ライフスタイルの見直しなど、頭を使うところまで浸透していないのが実情。

「企業の環境への取り組みを、社員1人ひとりの活動の集合体に」(成松社長)。
エコチャレンジ第1弾は、個人レベルで省エネに挑戦させ、
実体験させるきっかけ作りとして一定の成果があった。
企業が、工場やオフィスを越えた広い範囲に温暖化防止を働き掛けることが
できる可能性を持っていることも示唆。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090226.html

新しい波/293 市民マラソン熱/1

(毎日 2月21日)

「荒川市民マラソン」の事務局がある七島晴仁・スポーツ振興課長は、
日々急激な勢いで増えていく申込数に驚いた。
第12回大会は、昨年10月2日に募集を始めたが、
フルマラソン部門は早々と定員の1万5000人を満たし、
設けた申込期限の1カ月前に締め切った。

同マラソンは、実行委員会を組む国土交通省荒川下流河川事務所の
補助打ち切りで、参加費を5000円から6000円に値上げ。
参加者減少を心配した大会事務局は、
1週間後に開かれる東京マラソンの事務局に、
抽選結果を伝える申込者あてのメールに、
「荒川」の大会情報を添えてもらうよう頼んだ。
「荒川」の申し込みは、フルマラソンの競争率が7・5倍となった
「東京」の抽選結果が送信された後の11月10日ごろから急増。

七島課長は、「あまりの勢いに驚いた。東京マラソンと同じ7時間制限という
共通性もあって、外れた方が殺到したようです」
第43回青梅マラソンも、30キロ(定員1万5000人)の申込数が、
12月1日の期限前にオーバーし、11月20日に締め切った。

05年11月。
青梅マラソン主催者の青梅市は参加者減少を心配し、
東京マラソンを主催する東京都と日本陸連に、
同じ2月の開催に抗議する文書を提出。
ふたを開けると、期せずして訪れたブームで共存共栄の形が定着した。

青梅市体育課の地引静雄課長は、
「共栄の形になったのは喜ばしいが、東京とはコースの特徴も歴史も違う。
お互いにいい部分を取り入れつつ、あくまで独立独歩で歩んでいきたい」と
ブームに左右されないあり方を模索する。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20090221ddm035050030000c.html

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは…ワタシ」筋肉が丸見え

(読売 2月27日)

人間の筋肉の動きを同時進行で透視できる「魔法の鏡」を、
東京大学IRT(情報ロボット技術)研究機構の
中村仁彦教授らのグループが開発。

モデルが体を動かすと、テレビ画面の透視画像も鏡のように同時に動き、
使われている筋肉だけが黄色から赤に変化する。
動きが止まると、黄色に戻る。

筋肉の活動度を測る筋電計16個を体に付け、
周囲に設置した10台のカメラで体の動きを撮影。
足にかかる力を床で計測。
これらのデータをまとめてコンピューターで瞬時に解析し、
筋肉の動きをテレビ画面に映し出す仕組み。

中村教授は、「さらに技術開発を重ねて装置を簡略化し、
スポーツジムやリハビリテーションセンターに設置したり、
テレビゲームに応用できるようにしたい」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090227-OYT1T01080.htm

ほめられる子は思いやりも育つ…科学の目が初めて証明

(読売 2月28日)

乳幼児期に親からよくほめられる子供は、
他人を思いやる気持ちなどの社会適応力が高くなることが、
科学技術振興機構の長期追跡調査で明らかに。
育児で「ほめる」ことの重要性が、科学的に証明されたのは初めて。

筑波大の安梅勅江(あんめときえ)教授(発達保健学)らの研究チームは、
2005~08年、大阪府と三重県の計約400人の赤ちゃんに対し、
生後4か月、9か月、1歳半、2歳半の時点で成長の度合いを調査。
調査は、親へのアンケートや親子の行動観察などを通して実施。
自ら親に働きかける「主体性」や相手の様子に応じて行動する「共感性」など、
5分野25項目で評価。

その結果、生後4~9か月時点で、父母が「育児でほめることは大切」と
考えている場合、その子供の社会適応力は1歳半時点で高い。
1歳半~2歳半の子供に、積み木遊びを5分間させたとき、
うまく出来た子供をほめる行動をとった親は半数程度いたが、
その子供の適応力も高い。

調査では、〈1〉規則的な睡眠習慣が取れている
〈2〉母親の育児ストレスが少ない
〈3〉親子で一緒に本を読んだり買い物をしたりする――ことも、
子供の適応力の発達に結びつくことが示された。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090228-OYT1T00545.htm

2009年3月8日日曜日

盛岡市長「20億円負担」 国体主会場誘致で表明

(岩手日報 3月4日)

盛岡市の谷藤裕明市長は、県営運動公園陸上競技場の
第1種公認に向けた整備について、
「われわれが求める形で方向性が固まるならば、応分の負担として
(総事業費の)2割程度、約20億円を負担する」と表明。
2016年の2巡目岩手国体の主会場誘致に向けた強い決意。

谷藤市長は、福井誠司氏(盛友会)の一般質問に答弁。
負担割合の理由について、「長崎県など他県では、
総事業費の1―2割程度を負担。整備後は、
盛岡市民が一番利用する機会が多く、2割程度の負担があっていい」

県営運動公園陸上競技場は、現状のままだと日本陸連の新基準で
第3種公認競技場となり、第1種公認が条件の国体陸上競技は開催できない。

県は、09年度当初予算案で、県営運動公園陸上競技場について
第2種公認として整備する事業費を計上。
園内には、ドーム型の練習施設も整備する。
ドーム型の施設整備により、県営運動公園は建ぺい率がいっぱいとなり、
第1種公認の陸上競技場整備は不可能。

谷藤市長は、「ドーム整備は要望していたが、県営運動公園内への建設を
望んだことは一度もない」と不快感を示し、
「盛岡南公園や旧競馬場跡地など場所はいろいろあり、
盛岡広域市町村でも求めている所はある。
違う場所をわれわれも一緒に探したい」

谷藤市長が示した「約20億円」の負担額は、
総事業費を約100億円以上と見積もった場合の試算。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090304_5

「安全運転」支援 世界標準は夢か

(日経 2009-02-26)

交通事故の未然防止などを目的とした「ITS(高度道路交通システム)」
の公開実証実験が始まった。
官民一体で公道において実施する日本初の大規模実験で、
国内の自動車・電機メーカー約40社に加え、独メーカー3社も参加。
ITSは、日本が世界をリードしているが、
メーカー間の規格争いや所管官庁間の足並みの乱れが指摘。
袋小路に入らないためには、オープンな取り組みが重要。

今回の実証実験は、「ITS—SAFETY2010」と呼ばれ、
内閣官房や関係する4省庁、民間団体のITSジャパンなどで組織する
「ITS推進協議会」が主催。

開会式には、野田聖子IT(情報技術)担当大臣や
豊田章一郎ITSジャパン会長らが出席。
日本科学未来館を起点に、副都心周辺を回る50分コースと、
首都高速道路の新宿線を走る140分コースの2通りで実験。

実験内容は、高速道路での安全運転支援を目的とした「スマートウェイ」、
衝突防止などを狙った「ASV(先進安全自動車)」、
信号の見落としなどを防止する「DSSS(安全運転支援システム)」の3つ。

スマートウェイは、高速道路のETC(自動料金収受システム)に使われる
「DSRC(狭域無線)」技術を使った路車間通信がベース。
ASVはDSRCによる車車間通信、
DSSSは光ビーコンを使った路車間通信技術を使っている。

実験では、様々な無線車載機を搭載した実験車をトヨタ自動車やホンダ、
日産自動車などが約30台提供。
マスコミや自動車関係者など、約300人に試乗。
記者も早速、50分コースを体験。

実験車は公道を走るため、第三者からも一目でわかるように
「ASV」といったロゴを大きく表示し、一部はボディー全体を黄色に塗り替えた。
車内には、実験用に改造されたカーナビゲーションシステムが搭載、
ブレーキを踏まずに交差点に差し掛かると、信号の所在を文字や音で知らせ、
別の実験車が近づいたことをカーナビの地図上に表示。

現行のカーナビシステムに比べ、受信できる情報量が5倍あり、
安全走行に必要な様々な情報を素早く入手。

公道で大規模な実証実験ができたのは、2006年1月に政府が定めた
「IT新改革戦略」に、ITSの推進が初めて盛られた。
自動車メーカーなどで構成する民間団体のITSジャパンを中心に、
実証実験や普及活動を進めてきたが、
新たに官民共同のITS推進協議会を設置。
所管官庁も国土交通省や警察庁、総務省、経済産業省が
別個にITSジャパンに協力してきたのに対し、
新戦略では内閣官房に事務局を置き、4省庁が一体的に協力できる体制。

実証実験や展示会に参加してみると、官民一体とはいうものの、
同床異夢の様相も否めない。
スマートウェイは国交省の道路局、ASVは国交省の自動車交通局、
DSSSは警察庁の交通局が進めてきたプロジェクト。
技術展示が別であり、車載機もそれぞれ別個の装置が載せられ、
実験車の開発コストは1台あたり2000~5000万円。

カーナビ画面も、実験内容が変わるたびに切り替わり、
ドライバーの視点から見ると、縦割り開発の域を出ていない。
自動車メーカーも、実証実験には各社の技術者が手弁当で参加し、
連携体制をとってはいるが、肝心な戦略技術の話になると、秘密主義に。
実験には、メルセデス・ベンツ日本やフォルクスワーゲングループジャパンなども
参加し、企業間の競争を考えれば仕方がない面も。

日本が、ITSの分野で世界標準を勝ち取り、市場をリードするには、
メーカー間の共同技術開発や規格の共通化などももっと進める必要。
ITSにおける国際的な協力活動は、1990年代半ばから始まり、
日本でも97年に横浜、04年に名古屋で世界大会が開かれた。
ITSジャパンなど、各地域の推進団体が持ち回りで開く同大会は
13年には再びアジア地域で開かれる。

大規模実験を臨海副都心で行ったのは、16年のオリンピック招致を狙う
東京都の意向が反映され、公開実験を大規模に行った意義は大きい。

日本では、携帯電話の「ガラパゴス現象」に象徴されるように、
技術や機能を国内メーカー同士が競った結果、
世界の需要とは異なる方向に技術が進化し、
海外市場への販路を失ってしまったという問題。

値段が30万円もする日本の高機能カーナビについても同様。
安全対策が目的のITSも、日本の道路事情を前提に
特殊な技術を開発すれば、ガラパゴス現象をさらに助長しかねない。

政府は03年、小泉政権のもとでITSを推進する理由として、
「12年までに交通事故死者数半減(5000人以下)」という目標。
安倍、福田、麻生政権と続く政治的混迷の中で、
IT政策やITS計画に対する日本政府の取り組みは後退。

今回の実証実験に対する取り組みでも、国交省の腰がひけている印象。
ITSの分野で、日本が世界を本当にリードしていこうというなら、
官民がもっと協力して新技術の開発や標準化などを進めていく必要。
世界需要の急激な落ち込みに苦しむ日本の自動車産業の屋台骨を
強めることにほかならない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt090225.html

(下)深層循環 急停止も

(読売 2月16日)

顕微鏡の中の見覚えのあるプランクトンに、
北海道大学大学院生の松野孝平さんの目はくぎ付けに。
昨年9月、海洋研究開発機構の調査船「みらい」で向かった、
北緯76度の北極海でのこと。
ネットですくい上げたこのプランクトンは、太平洋産のカイアシ類の一種
アラスカ―シベリア間のベーリング海峡から来る海水で運ばれたもの。

松野さんを指導する北大准教授の山口篤さんによると、
プランクトンは海洋生態系の変化を探るカギを握ると同時に、
海水の流れを追跡する目印の役割。
例年なら、海氷に覆われている高緯度海域に紛れ込んだ太平洋産の生物。
その存在は、北極海の奥に流れ込む暖水の流れが
勢いを増していることをうかがわせた。

アラスカ沖の北極海の9月の表層海水温は、この10年で5度上昇。
温暖化と、この暖水の影響が相まって、
太平洋側の北極海は、氷が形成されにくい海に変わりつつある。

北極海の海氷の動きには、二つの大きな流れ。
一つは、カナダからアラスカ方向に時計回りに動く「ボーフォート環流」、
もう一つはベーリング海峡から北極点周辺を通り、
グリーンランド東岸に沿って大西洋に抜ける「極横断漂流」

極横断漂流の出口にあたるグリーンランド沖の海域は、
地球全体を巡る「深層循環」の出発点
ここで沈み込む北大西洋深層水(NADW)は、
深層循環を回すエンジンの役割を担っている。

海氷が出来ると、周辺の海水の塩分は高くなる。
海水が凍るときには水だけが凍り、塩分は氷の外に押し出される。
水が主体の海氷が解けると、周囲の海水は薄まって塩分は低くなる。
海水は、冷たく塩分が高いほど重い。

グリーンランド沖の海域で、海水が高温になったり、
急激に海氷が解けて塩分が薄まった海水が大量に流れ込んだりすれば、
海水は軽くなり、NADWの沈み込みが弱まる可能性。

海洋機構研究員の菊地隆さんによると、NADWが沈み込む海域の塩分は、
1970年代から30年間にわたって低下を続けてきた。
2000年以降、低下は止まったとの観測もあるが、
いつまた低下し始めるかわからない。

菊地さんは、「塩分低下の主な原因は、北極海の海氷減少と、
北極域とその周辺での降水の増加だと考えられる」

深層循環が止まったらどうなるか?
東北大学教授の花輪公雄さんによると、深層循環は南北の気候の差を
緩和する役割
を果たし、その影響は地球全体に及びかねない。

大西洋では、底層を南下する冷たいNADWと入れ替わるように、
表層の「ガルフストリーム」という海流が、赤道近くの暖かい海水を北に運ぶ。
その流れが止まれば、欧州の気候は寒冷化すると予想。

温室効果ガスを増加させた状態の気候を、コンピューターで予測する
「温暖化実験」の多くは深層循環の弱まりを予想するが、
実際の海洋ではまだ、その兆候は観測されていない。

01年、ノルウェーの研究者らがNADWの沈み込みが過去50年で
20%減少していると発表して注目、調査はその後、間違っていたことが判明。
07年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書も、
「深層水の形成量に大きな変化は見られない」と結論。

花輪さんは、「急激な海氷減少が今後も続き、低塩分の海水供給が増えていけば、
深層水の沈み込みが急に止まってしまう可能性もある」

北極の温暖化で、深層海流はどう変わるのか?
その影響を探る研究が注目される。

◆深層循環

海水の温度と塩分の違いによる密度差を駆動力として流れる海洋循環。
熱塩循環とも呼ばれる。
全体を動かす原動力は、グリーンランド沖で沈み込む北大西洋深層水と、
南極大陸周辺でできる南極底層水。
北大西洋深層水は、インド洋や太平洋で表層の循環とも交わりつつ、
最終的には出発地点のグリーンランド沖に戻る。

今から1万年前に約1000年続いた寒冷期には、
深層海流が実際に止まっていたとの説が有力。
当時、北米大陸を覆っていた氷河が温暖化で大西洋に崩れ落ち、
これが解けて塩分が低下したため。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kaihyou/ka090216_01.htm

生活習慣病とメタボ腹「関連強くない」

(読売 3月1日)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準は、
腹囲が男性85センチ以上、女性で90センチ以上あることを
必須条件としているのに対し、単に腹囲が大きいだけでは
生活習慣病の危険要因としては不十分という調査結果を、
下方浩史・国立長寿医療センター研究所部長を班長とする
厚生労働省研究班がまとめた。

メタボ基準を巡っては、男性の腹囲が女性より厳しいことなどについて
異論が続出しており、今回の結果も見直し論議に一石を投じそう。

研究班では、愛知県内の40~82歳の男女3253人について、
内臓脂肪の断面積をコンピューター断層撮影法(CT)で計測。
内臓脂肪面積が100平方センチ以上の肥満の人とそれ未満の人で、
2000年から6年間、心臓病や脳卒中を引き起こす動脈硬化の進み具合を、
心臓の冠動脈や脳血管の梗塞の有無など6項目で比較。

肥満の人は、そうでない人に比べ、動脈硬化のある人の割合が、
心臓の冠動脈は女性では約1・2倍だが男性では差がみられず、
脳内の細い血管は男性は約1・2倍だったが、
女性では差はあまりなかった。
6項目すべてで、差は1・5倍未満にとどまり、
「全体として関連はそれほど強くない」(下方部長)

メタボの基準では、内臓脂肪面積が100平方センチ以上の場合に
危険が高まるとして、該当する腹囲(男性85センチ以上、女性90センチ以上)
が定められた。
今年度始まった「特定健診」(メタボ健診)では、腹囲が基準を超えていなければ、
血圧、血糖値、脂質のすべてに異常があっても、指導の対象にならない。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090301-OYT1T00042.htm