2009年3月10日火曜日

身の回りの熱を電気に変えよう

(日経 2009-02-27)

暖房器具は、体だけ暖めてくれればいいのだが、
そんなに都合良くはいかない。
ほとんどの熱は、周りに捨てられる。実にもったいない話。
日本企業が開発中の技術が、この問題を解決しようとしている。

身の回りに捨てられていた熱を、もう一度電気に戻す「熱電発電」。
読んで字のごとく、熱を電気に変える技術。

静岡県磐田市にあるヤマハの豊岡工場
新製品開発を進めるプロダクティブテクノロジー事業戦略推進部の
堀尾裕磨部長に、大手の住宅やサニタリーメーカーから問い合わせが。
堀尾部長らが開発した、室温付近の熱も電気に変えられる熱電発電技術。

「身の回りに捨てられている低品位の廃熱も逃さない」と、
開発中の技術を4年前から講演や技術誌で紹介。
低品位とは、利用しにくいという意味。
100度を超える高温なら、水を沸騰させてタービンを回して発電する手がある。
室温付近の熱を電気に変える実用的な技術は無かった。

ヤマハは、2種類の材料を接合して電気を流すと吸熱・発熱する
「ペルチェ効果」を使う製品開発には、長年の実績。
精密機器を温度制御する素子を販売。
ペルチェ効果とは反対に、材料の接合部を加熱したり冷却したりすると、
電気が流れる「ゼーベック効果」を使う熱電発電の研究。
05年、実用的に使える熱電発電技術を開発。

住宅関連メーカーは、この技術に注目。
利用できる場所は、床暖房。
暖房は、床の上にくる熱を利用するが、実は熱は床の下にも逃げる。
お風呂やトイレも、無駄に捨てている熱だらけ。
これらを電気に変えれば、省エネにつながる。
ヤマハと各社との間で、実用化に向けた共同開発の話し合い。

原子力や火力、水力など、様々な種類の巨大な発電設備を手がける東芝も、
熱電発電の開発に取り組んでいる。
実験場は、湯治場で知られる群馬県の草津温泉。
95度の源泉の熱を電気に変える。
05年、運転を始めた商品第1号は3年以上たった現在も、
150ワットの電気を発生し続けている。

「太陽電池に比べ、同じ面積なら発電量は6倍」
東芝電力システム社の環境・機能性材料開発担当の新藤尊彦主査は、
草津の発電能力を試算。

熱電発電の普及のカギを握るのは、価格。
100度近い温泉で使う装置の価格は、今のところ太陽電池の数倍。
個人経営の温泉宿や個人宅では、まだ導入しにくい。
草津温泉では、価格が高くなった理由がある。
お湯は、水素イオン濃度(pH)は2という強い酸性のため、
それを通すのに高価なチタン合金の管を使った。

中性やアルカリ性のお湯なら、安価なステンレス管を使える。
普及すれば、量産効果で装置の価格が下がる。
今後は、全国の温泉地を歩いて地道に営業活動をすすめる考え。

熱は、身の回りの様々な場所で捨てられている。
国内で、産業によって排出される150度以下の熱は、
年間で1000億カロリーという試算データも。
これらをすべて熱電発電で電気に変えることは不可能だが、
利用する価値はある。

応用の余地はいくらでもあるだろう。
ゼーベック効果を示すハイテク繊維を作れば、
体温で発電する衣類や寝具も作れる。
電気は、フレキシブルな二次電池に蓄えて再利用できる。
熱電発電の基本的な技術は、すでに開発されている。
子供から大人まで、様々な利用のアイデアが求められる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090225.html

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