2009年8月29日土曜日

HV車や秋田杉弁当箱…高額エコ商品が好調

(読売 8月19日)

深刻な不況が続く中で、400万円近い高級乗用車など、
高額なエコ商品が売れ行き好調だ。

背景として、多少出費がかさんでも、環境問題への貢献を
アピールしたいという消費者意識がある。
エコが格好いい、という風潮も手伝って広まるエコブーム。
これを弾みに、本物のエコ意識が定着するだろうか?

トヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」で、
初のハイブリッド専用車として売り出された「HS250h」の注文が、
販売店に殺到。
発売から1か月間の注文は1万台に達し、
目標の月間500台を20倍も上回った。

排気量2・4リットルエンジンながら、ガソリン1リットルあたり23キロ
という燃費性能が売り物のHS250h。
販売店「レクサス小石川」では、春先から予約が入り、
すでに約70台が売れた。

1台の価格は、最も安いタイプで395万円。
エコカーなどへの買い替えに優遇税制が適用されるエコカー減税を
利用しても、370万円を超える。
同店マネージャーの川本美恵さんは、
「比較的年齢の高いお客様が多い。
高くても、『エコ』や『ハイブリッド』に価値を見いだす人が増えた

2005年のアカデミー賞授賞式。
レオナルド・ディカプリオさんら多くのハリウッドスターが、
トヨタのハイブリッド車「プリウス」で、次々と会場に乗り付けた。
「米国のセレブの間では、エコカーがステータスの象徴」と話題に。

財団法人日本自動車研究所の荻野法一・主任研究員は、
「あの姿を見て、日本の富裕層がエコカーへの関心を高めたのでは」

10月に発売予定の三洋電機の電動ハイブリッド自転車
「エネループ バイク」の新商品。
炭素繊維をフレームに使っているため、
希望小売価格は62万7900円。
同社には、カタログの請求が引きも切らない。
40歳以上の男性が多い。

東京の日本橋三越本店では、高級な秋田杉で作った
1万円の弁当箱が月に80個も売れている。
「長く使えるエコ商品として注目されている」と、
同店の広報担当者は人気の理由。

環境に配慮した製品の購入や普及を進める
グリーン購入ネットワーク(東京)の麹谷和也事務局長も、
エコへの取り組みが、自分のステータスを高めることになるという
意識が、企業の役員などの間で定着してきた表れ」

意地悪く言えば、見えから生まれた風潮なのかも。
このブームが定着すれば、地球のためになるのは間違いない。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090819-OYT1T01090.htm

宇宙では子づくり困難?微小重力が受精卵に影響

(2009年8月25日 共同通信社)

国際宇宙ステーションや米スペースシャトルのように、
無重力に近い環境では、マウスの受精卵の成長が抑えられ、
出産率も大幅に低下することを、
理化学研究所と広島大のチームが突き止め、
25日付の米科学誌プロスワンに発表。

同じ哺乳類の人類も、宇宙空間で子孫をつくることが難しい可能性。
理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の
若山照彦チームリーダーは、「受精卵の成長に、
どの程度の重力が必要かを調べれば、月面基地などでの子づくりが
可能かどうかが分かるかもしれない」

チームは、実験容器を回転させることで、地上の千分の一という
微小重力環境をつくり出す特殊な装置を使い、
マウスの体外受精や出産に与える影響を調べた。

その結果、受精は正常に起きるが、受精卵が分裂を繰り返すうち、
胎盤側に集まる細胞数が通常より少なく、
成長速度が遅くなることが判明。
雌マウスの子宮に入れると、正常なマウスが生まれたが、
出産率は半分程に低下する。

過去に行われた宇宙実験では、魚類や両生類は正常に成長。
チームは、「哺乳類の特徴である胎盤の発育に、
重力が関係しているのかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/25/106324/

自民「残念」民主「評価」 医学部長会議が公約比較

(2009年8月27日 共同通信社)

国立大学医学部長会議(委員長・安田和則北海道大医学部長、
42大学)は、自民、民主両党の衆院選マニフェスト(政権公約)の
医療・教育分野を比較、評価結果をまとめた。

自民党には、「医療崩壊を止める施策が見えないのは残念」
厳しい見方を示し、
民主党には、「具体的施策が盛り込まれ大いに評価できる」

評価結果によると、自民党については、
医師確保の目標数を明記していないことから、
「マニフェストとはいえない」と指摘。
「評価できる」としたのは、大学病院の医療体制整備ぐらい。

民主党については、2006年に閣議決定され、
医療費抑制につながった社会保障費2200億円削減の撤回などを
打ち出した点を評価、
「国民が納得する医療が実現できる可能性を感じさせる」
大学病院が抱える借入金への対応が記載されていないことは不十分。

医学部長会議は、医師不足の現状を踏まえ、
医学部定員増と教育の質向上に必要な教員確保や予算増を
例年、政府に要請。
政府側の対応は不十分とし、要望内容を基準に今回、
主要2政党のマニフェスト評価に踏み切った。

安田委員長は、「教育や医師の質の確保について、
明確な記述はまだ不足している」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/27/106488/

2009年8月28日金曜日

NIE20年(2)社会学べる「職業探し」

(読売 8月19日)

中学校では、新聞を使った職業探しや投稿で、
生徒の社会への関心を高める。

テレビでおなじみの北村晴男弁護士や、宇宙飛行士の毛利衛さんの
新聞記事がスクラップ帳に。
さいたま市立岸中学校で、「職業探し」をテーマに、
1年生の総合学習の授業。

「プロ野球選手」、「国会議員」、「作家」――。
生徒はスポーツや政治、人物紹介の記事を切り抜き、
横にその職業や感想を書き込む。
ピアノを習う松本祐介君(12)は、今年6月に
国際的なピアノコンクールで優勝した辻井伸行さん(20)の
記事を張り、「(辻井さんは)人の支えで優勝できた。
人を支えてあげられるような人になりたい」と夢を書き添えた。

同校では、3年間を通して新聞を活用、
1年生ではまず新聞に親しむ。
「職業探し」を進めるのは、たいていの記事に職業が含まれ、
見つけやすいからだ。
年間で、10個の職業を探すことを目標。

「様々な職業を意識していくうちに、向いている
職業に気付くこともある」と所孝子教諭(52)。
スポーツなら人気の「サッカー選手」に目が行きがち。
それを支える裏方やコーチなど、世の中には色々な職業があり、
自分の適性もある。

2年生では、投書欄などを活用し、社会には様々な意見が
あることを学んだり、ディベートをしたりする。
3年生では、興味のある記事をスクラップし、
最後に原稿用紙5枚程度の「卒業論文」にまとめている。
所教諭は、「自分がどんなことに興味があるのかを意識しながら、
高校や大学に進んでほしい」

生徒の自由な意見や川柳を新聞に投稿する――。
高松市立高松第一中学校の前野勝彦教諭(43)は、
2000年からそんな取り組みを続け、約3000点を投稿、
約1000点が掲載。

始めたのは、生徒の表現力や書く力に物足りなさを感じたため。
投稿で進学成績が上がった高校の話を知り、
中学でもできると考えた。

「素直な気持ちを書く」、「うそは書かない」、「個人を中傷しない」、
「原則匿名は受け付けない」の4点がルール。
内容は、部活や友人の話のほか、環境問題やいじめについての
意見を書く生徒も。
そうした問題に関心のなかった生徒も、身近な友人の投書に
刺激を受け、問題を考えるきっかけに。

掲載されると書く意欲につながるし、教師にとっては
指導の手がかりになる。
約5年前、一人の生徒が自ら投書を持ってきた。
義兄の事故死を受け止め、精いっぱい生きていくという内容。
課題を抱える生徒だったが、成績やイメージでは分からない
一面を知ることができた。

今年度も、道徳の時間などで新聞投稿を進めている。
「純粋に喜怒哀楽を感じたり、社会に目を向ける生徒になってほしい」
前野教諭はそう願っている。

◆読解力向上に効果も

京都教育大付属桃山中学校の神崎友子教諭が3年間、
新聞記事を使った授業を行い、計16回の読解力テストを行った。
その結果、1年目の最初には約13%だった無回答の率が、
3年目の最後にはほぼ半減。
全国学力テストでも、読解力に関する記述問題で
正答率が全国平均(約61%)を上回る約93%に上った。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090819-OYT8T00390.htm

2009年8月27日木曜日

NIE20年(1)情報の見極め 新聞通し学ぶ

(読売 8月18日)

小学校では楽しくおもしろく取り組むのが、NIEのポイント。

浜松市立船越小学校は、社会科で山形県の穀倉地帯、
庄内平野の米作りを学んだ。
同小で新聞を活用した授業を実践する山崎章成教諭(51)が、
新聞作りを指導。

学習を重ね、この日は「記事の見出しをどうするか?」
「昔と今の田起こしの変化」、
「びっくりぎょうてんカントリーエレベーター」、
「種まきじいさんを大発見!」、「『はえぬき』の誕生」……。
子どもたちから色々な案が出てきた。

「見出しは、どういう点に気をつけたらいいでしょうか」と山崎教諭。
子どもたちから、「見つけてもらいやすいよう字を大きくする」、
「忙しい人にも理解しやすいよう、簡単なひと言にする」などと意見。

「では、いい見出しだとどのように感じるか、班ごとに話し合って、
いい見出しを選んでみよう」
「何にびっくりしたのか、中身を読んでみたくなるのがいいよ」、
「機械でお米をどうするのか続きを知りたくなる」など、
気に入った見出しの特徴を思い思いに言いあっていた。

山崎教諭が、読み手を意識し、分かりやすく、読みたくなるような
工夫が、大事なことを作品を比較しながら説明。
「次は本物の新聞を見て、面白そうな見出しを探してみよう」
てきぱきした授業の運びに、新聞学習への習熟ぶりがうかがえた。

NIE歴が長い山崎教諭は、教材化に悩む先生の声を聞き、
ワークシートを独自に作成するようになった。
A4の1枚紙の表に、「外来語を探してみよう」、
「秋を感じる写真を集めよう」など、子どもたちが親しみやすい形で
課題を載せ、裏には、指導にあたる先生や親に向けた注意事項を記載。
「初めの一歩」と題したシートは、この2年ですでに60号を超えた。
求めに応じ、メールでも送っている。
「どんどん使ってもらい実践者を増やしたい。反応も楽しみ」と山崎教諭。

夏休み前の練馬区立旭丘小学校
5年生の教室は、朝の会「ニュースキャスターになろう」が始まる。
当番の子どもが新聞から好きな記事を探し、
それについてみんなの前で3分ぐらいで発表。
要約と感想を書いた用紙は発表後、教室に掲示。

「みんなの発表を聞いたり見たりすることで、自分もタイムリーで
心に残るものを探そうという気持ちになる。
単純ですが、取り組みやすいNIEの入り口ですね」と藤平咲雄校長(59)。

新聞を通した学びで、子どもたちは社会に生きることを実感、
情報を見極め、主体的に判断するようになる。

各地の教員の創意工夫でNIEが今、様々な展開を見せている。

◆NIE(Newspaper in Education)

新聞を生きた教材として活用した学習のこと。
新聞界と教育界が協力し、試験的に学校に新聞を提供し、
NIE運動をスタートしてから、ちょうど20年。
改定された小中学校の新学習指導要領でも、
新聞に関する多くの記述が入り、言語活動の育成に
新聞の活用が求められている。

◇「生きる力」つける中核―文科省主任視学官 田中孝一氏

――教育における新聞はどのような位置づけか?

田中 経済協力開発機構(OECD)が各国で実施している
国際学習到達度調査(PISA)などを受け、子どもたちに
「生きる力」を身につけさせることが課題。
物事をしっかり理解し、考え表現する「言語活動の充実」は、
どの教科にも重要。
その手だてとして、新聞の活用も有効。

――新しい学習指導要領にも反映。

田中 小学5、6年の国語科に、「編集のしかたや記事の書き方に
注意して新聞を読むこと」と明記、中学国語に初めて「新聞」が入った。
社会科でも、「平素から親しみ適切に活用すること」

――NIEは、「総合的な学習の時間」に行われ、
新指導要領ではその時間が減らされる。

田中 週1時間だけ減るが、いっそう重視する立場。
習得、活用、探求という「生きる力」をつけるための中核に。
今後は、探求を中心に据え、習得、活用は各学科で行う。
NIEは、どちらでも行っていい。

――事務的業務が増え、教材研究の時間が限られるとの現場の不満が。

田中 調査、照会類は回数や項目を減らすよう、
昨年省内に呼びかけ、各教育委員会にもお願いした。
先生が、子どもと向き合う時間を確保できるようにするのは重要。

――今後のNIEに期待することは?

田中 物事や情報の判断ができるようになるのに有効な手法、
なお意識の差がある。さらに意義を周知してほしい。
実践校がもっと増えるべきだし、編集面では今後発生しそうな問題を
提示するのも大事。
古い事象を検証し、改めて整理した記事、連載企画などを
後でブックレット風にまとめてくれると学校で役立ちます。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090818-OYT8T00294.htm

国際陸連、トップ120選手から血液データ

(読売 8月18日)

国際陸連(IAAF)のドール医事・反ドーピング局長は、
選手の血液データを長期的に蓄積し、ドーピング行為による
異常な赤血球の増減などを突き止める
「血液パスポート」制度のテストケースとして、
すでに約120人のトップ選手を対象に、
ベルリン世界選手権期間中も含めた血液データ取得を進めている。

ドール局長は、国際陸連が世界選手権で、
血液検査に特に力を入れていることを明かし、
「血液パスポートの対象ではない選手にも広く網をかけ、
異常値が出た場合はその後狙い撃ちの(尿)検査の対象とする」

血液パスポート制度は、持久力を高めるエリスロポエチン(EPO)
薬物の使用や、現在検査が確立されていない自己血液を用いた
血液ドーピングなどの摘発に有効で、
世界反ドーピング機関(WADA)が本格導入に動いている。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20090818-OYT1T00323.htm

「ご当地体操」が盛ん 地元の名物や独自の動きを取り入れ

(2009年8月21日 毎日新聞社)

柏市の大型商業施設「ららぽーと柏の葉」の屋外広場、
親子連れら近所の住民約50人が集まった。
「ハイ、頭で考えながら動いて」

指導員の声が掛かると、参加者はゆったりとした音楽に合わせ、
右手と右足、左手と左足と同じ側の手足を同時に前に出して歩く
「なんば歩き」や、腰を少しひねりながら腕を前に伸ばすなどの
いっぷう変わった体操を始めた。

05年、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅近隣の企業や
大学、公共機関などで作る実行委員会が、昨年考案した
「はっぱっぱ体操」の体験会の一こま。

毎日朝晩2回、この体操をしている60歳代の平川和江さんは、
「主婦は、前かがみの姿勢での仕事が多いので、
体操して汗をかくと気持ちがいい。
動きがなかなか難しく、頭を使うせいか朝もすっきり目が覚める」

柏の葉駅周辺は、元々ゴルフ場だった場所で、
駅の開業後にマンションなどの建設が進む新しい街。
はっぱっぱ体操は、東京大生涯スポーツ健康科学研究センターや
千葉大環境健康フィールド科学センターが立地する利点を生かし、
健康をキーワードにした地域づくりと、
住民同士の交流を目的に開発。

監修した小林寛道・東京大名誉教授(スポーツ健康科学)は、
「ラジオ体操が関節の可動性を重視しているのに対し、
はっぱっぱ体操は日ごろあまり使わない、
体の内側の筋肉を意識して動かす動作を多く取り入れた」

なじみのない動作が多いのが特徴で、
曲調がゆったりしているのは、頭で意識しながら筋肉を使うため。

代表例が、なんば歩き。
同じ側の手足を同時に動かす動作は、日本古来の動き方とされ、
武道などには残っているが、現代の生活では失われている。

小林名誉教授は、「普段と違う筋肉を動かすには、
普段使っていない神経を働かせる必要。
これを意識してやっていると、転倒した際にとっさに手をつくといった
動作が高齢者でもスムーズにできる」

自分で動作を創作するパートも取り入れ、
5月には10チームが参加してコンテストを開いた。
実行委員会にも参加、街づくりを担う
柏の葉アーバンデザインセンターは、「体操によって、
健康づくりと同時に住民交流も促進し、
住んでみたいと思われる地域にしたい」と、普及に力を入れている。

◇厚労省要望きっかけ 著名人協力も

「ご当地体操」の隆盛は、厚生労働省が00年に策定した
「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」で、
各地域での取り組みを求めたことがきっかけ。

青森県は05年、スコップで雪をすくって放り投げる動作や
背中などを伸ばすストレッチを取り入れた「健康雪かき体操」を作った。
「冬は運動不足になる。
雪を逆手にとって、けが防止や健康づくりに活用しようと考えた」と
県スポーツ健康課。
雪かき前の準備運動としても有効。

「伊賀忍者の里」という地域性を生かし、「忍にん体操」を
考案したのは、三重県伊賀市
指で十字を切ったり、忍者の横走りの動きを取り入れ、
バランス感覚を養い足腰を鍛える。
市の担当者は、「子どもからお年寄りまで楽しめる」

徳島県「阿波踊り体操」、島根県安来市「どじょうすくい体操」は、
地元の有名な踊りの動作を織り込んだ。
「みんなでそろばん体操」(兵庫県小野市)は、
特産品のそろばんを手に体操する。

新体操元五輪選手の秋山エリカさんが振り付けを担当した
「くにたちオリジナル体操」(東京都国立市)、
歌手のさだまさしさんの曲を使用する「がんばらんば体操」(長崎県)
など、ゆかりのある著名人が協力しているケースも。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/21/106109/

2009年8月26日水曜日

学びの情報基地(11)市民研究家が「懸け橋」

(読売 8月15日)

博物館を拠点に研究を進める市民が、地域と館をつなぐ存在。

「この骨は、今年4月に亡くなったうちのネコ。
こっちは、3年前の忘年会で鍋で食べたトリの骨」

滋賀県立琵琶湖博物館。
企画展「骨の記憶」で、大津市の学習塾講師永野麻也子さん(52)が、
自ら作った骨の標本を説明。

人間や動物の骨約200点を展示したこの企画展では、
会場の約3分の1が、同館と連携する市民グループの一つ、
「ほねほねくらぶ」のスペース。
メンバーが同館の支援を受けながら、作った骨の標本や剥製などが
展示、メンバーは求めに応じて解説を行うことも。

ほねほねくらぶ会長の会社員山中裕子さん(45)は、
「博物館に、『トリの剥製を作りたい』と言えば、材料を用意、
わからないことがあれば質問できる。素人研究家にはありがたい」

同館と連携する市民の登録制度は、2000年に制度化。
博物館との橋渡し役になってほしいという願いを込め、
縁を取り持つ人といった意味を持つ「はしかけさん」と名付け。
現在は、「近江昔くらし倶楽部」、「田んぼの生き物調査グループ」、
「里山の会」など15グループ354人が活動中。

博物館の理念や利用ルールなどを同館の講座で学べば、
はしかけさんとして登録、グループ単位で様々な研究に取り組める。
日常的に学芸員に相談でき、適当な学芸員がいない場合は、
他の博物館の専門家を紹介。
自分たちでイベントなどの企画や運営もできる。

山川千代美専門学芸員(45)は、「学芸員だけではカバーしきれない
館外での活動も含め、地域の人たちに、琵琶湖の自然や暮らしとの
かかわりを見つめ直すきっかけを作ってもらえれば」

02年に発足したほねほねくらぶは、小中学生を含む28人が
月に1、2回集まり、博物館での学術資料には使えない
動物の死体などを譲り受け、皮をはぎ、解剖し、標本にする作業。
今回は初の本格展示。

はしかけさんグループの中でも、一番古株の「うおの会」(村上靖昭会長)は、
魚とその生息環境を定期的に調査。
04年、地域に呼びかけ、「琵琶湖お魚ネットワーク」を結成する原動力。
同ネットが05~07年、1万以上の地点で行った
琵琶湖水系魚類調査の結果は、7月から同館で公開。

高橋啓一・同館総括学芸員(52)は、
「ここでは、むしろ私たち学芸員がボランティア。
はしかけさんが、どんどん博物館を“卒業”し、研究分野を深め、
地域に広げていってほしい」と期待。

地域とつながることで、博物館自身がよりよい学びの場として成長。

◆琵琶湖博物館
 琵琶湖をテーマに、その成り立ち、人間とのかかわりを表す
 資料や模型、周辺に生息する淡水魚などを展示。
 触れて体感できるハンズオン形式の展示物も多い。
 企画展「骨の記憶」は、11月23日まで。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090815-OYT8T00271.htm

うま味成分でがん予防? 広島大、貝や酒に含有

(2009年8月17日 共同通信社)

広島特産のカキや日本酒でがん予防?
貝類や日本酒に含まれる、うま味成分の一種、
コハク酸にがん細胞の増殖を抑える効果があるとの結果を、
広島大の加藤範久教授(分子栄養学)らがまとめた。

コハク酸は、カキや酒かすに含まれるが、
機能性についてはあまり注目されていなかった。
加藤教授は、「貝汁に含まれる程度の濃度でも、
抑制効果が期待できる。
コハク酸を日常の食事で取ることで、がんが予防できるかもしれない」

加藤教授は、コハク酸がある環境で大腸がんや胃がん細胞を
培養すると、増殖が半分程度に抑えられるのを確認。

ラット実験で、がんの増殖を促すとされる血管新生が
起きにくくなることも確かめた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/17/105820/

保健師教育の選択制11年4月から 文科省/大学での看護人材養成

(2009年8月21日 Japan Medicine(じほう))

文部科学省は、「大学における看護系人材養成の在り方に
関する検討会」(座長=中山洋子・福島県立医科大看護学部長)の
第1次報告を公表。

保健師教育を、看護系大学の卒業要件から外し、
選択制とする方向性を示した。
保健師教育を選択制とするためには、保健師課程の必修科目を
選択科目とするなど、カリキュラム改正が必要。
文科省は、「来年4月からは時間的に難しい」と、
選択制は2011年4月の入学生から適用される見込み。

看護系大学では、4年間で看護師教育と保健師教育を行う
「統合カリキュラム」を導入、
「保健師教育に必要な実習施設が確保できない」、
「カリキュラムが過密」などの問題点が指摘。

第1次報告では、
▽看護系大学の保健師教育に選択制を導入、
▽学士課程を看護師教育のみとする、
▽保健師教育を含める、
▽学生が保健師教育を選択できる、
などは大学が決める方向性。

助産師教育は、引き続き選択制とし、専攻科や大学院など、
社会のニーズに応じた充実化を図るべき。

第1次報告では、6月末の会合で提示した案に
教養教育に関する記述を追加。
大学教員については、学術研究上の実績と成果に裏付けられた
質の高い教育実践が求められると指摘。
看護系大学は、職業教育の性格も併せ持つとした上で、
「教養教育の基礎の上に立ち、理論的背景を持った
分析的・批判的見地から取り組まれるもの」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/21/106116/

2009年8月25日火曜日

学びの情報基地(10)博物館PR 大学生も

(読売 8月13日)

「『秋草鶉図屏風』は、ススキの穂の様子をよく見ると、
左端は秋と夏が入れ替わっていることがわかります。
以前の修復の時に、間違えたのではないかと言われています」

名古屋市博物館の一室。
津田卓子学芸員(31)が十数人の学生を前に、
同館で始まった特別展「新たな国民のたから」の見所を説明。
学生たちが同館をPRするのに役立ててもらうため。

若者の来場者低迷に悩む博物館と、
博物館を大学教育に生かしたい大学。
両者の思惑が一致しての連携が活発化。

PR役を担う主要メンバーの一つが、椙山女学園大学の
山田真紀・教育学部准教授(39)率いる「チーム博物館」。
将来、教師として子どもたちを博物館に引率する時に困らないよう、
博物館の使い方を今から学んでおこうと、
希望者が集まって今年4月に発足。

学芸員の解説を聞き、自分の目で作品を鑑賞した感想も交え、
手製の「博物館かわら版」を作成。
大学のウェブサイトに載せたり、大学、銀行などの掲示板に張って
同館をPRしている。

同大2年の守永光希さん(20)は、「学芸員から裏話を聞くと、
見るだけではわからない作品のイメージが広がる。
来ると楽しい、という感じを伝えたい」

鳥居和之学芸係長(54)は、「ライバルの動物園、科学館、美術館、
映画館に比べて、博物館に若い人があまり足を運んでくれない。
アピールするには、同世代の誘いが一番」と期待。

名古屋市立大学の阪井芳貴教授(52)らのグループは、
「なぜ博物館に人が来ないのか?」という社会調査。
同市内の大学生約500人に聞いたところ、
75%が同館に行ったことがないという衝撃の結果。
「近くでも足を運ばないのは、興味をひく情報が少ないから」
来年早々、改善のための提言をまとめる。

京都造形芸術大学の芸術表現・アートプロデュース学科では、
学生たちが美術館調査を始めて、今年で4年目。
学芸員など美術関連の職種の志望が多く、
「何のため」、「誰のため」の美術館なのか、
存在意義を再確認するのが狙い。

国内外の美術館の入館料を比較したり、学歴、年収、やりがい度などを
尋ねて、学芸員の平均像を明らかにしたり、
学生目線での素朴な疑問から発した調査を次々に実施。
同学科専任講師の山下里加さんは、
「学生は美術館のいい面、悪い面を知って視野を広げ、
美術館は、反省材料に使ってくれたりする。
双方にプラスの効果を生んでいる」

PRを手伝ったり、改善案を練ったり……。
学生が学びを通じて博物館の未来を開く。

◆名古屋市博物館
 特別展「新たな国民のたから」は終了、
 企画展「小栗鉄次郎―戦火から国宝を守った男」を開催中。

◆京都造形芸術大学
 美術館調査の報告書は、実費と送料で配布。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090813-OYT8T00330.htm

優れた抗体、短時間で作製 富山大が新手法開発

(2009年8月17日 共同通信社)

人の血液からウイルスや細菌の感染阻止に優れた抗体を、
短期間で作製する新たな手法を、
富山大大学院医学薬学研究部の村口篤教授、岸裕幸准教授らが
開発、16日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表。

村口教授は、「副作用の少ない抗体医薬の分野で、
開発効率を飛躍的に高める技術につなげたい」

新しい手法は、これまで数カ月を要した抗体作製期間を、
1週間に短縮。
ウイルスや細菌と強く結び付き毒素を弱める力に優れた、
特定の抗体を選別できる。

抗体を作る細胞は、血液中にごくわずかしか含まれていないため、
検出が難しかったが、村口教授らは特殊なシリコン基板を用い、
わずか数時間で20-30種類の細胞を検出することに成功。
その中から、より優れた抗体を作る細胞を特定して、
遺伝子を取り出し、抗体を作製する方法を開発。

今回の手法で得られた抗体は微量だが、
薬剤として利用するには大量の抗体が必要。
臨床研究への応用には、低コストで増殖させる技術が課題。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/17/105819/

歯周病はいろいろな生活習慣病に関係している

(2009年8月14日 毎日新聞社)

葛飾区の主婦(60)は、糖尿病が急激に悪化し、
主治医から日本大歯科病院を紹介。
歯ぐきが真っ赤で、歯がぐらぐらし、歯周病との関係を指摘。

歯周病の治療を受けた結果、過去1-2カ月の平均的な血糖の状態を
示す、血液検査値「HbA1c」の値が大幅に改善。
主婦は、「歯周病と糖尿病は、相互に関係していると説明」

歯周病は、虫歯と並ぶ「歯科の二大疾患」、
歯や歯と歯ぐきの間に存在する細菌による感染症。
プラークと呼ばれる細菌の固まりが、歯肉に炎症を起こし、
腫れたり出血したり、重症化すれば最終的に歯が抜け落ちる。

同大歯学部の伊藤公一教授(日本歯周病学会理事長)によると、
歯周病患者は糖尿病になりやすく、
糖尿病患者はそうでない人に比べ、2倍以上の確率で
歯周病にかかりやすい「相互関係」がある。

最近は、「網膜症」、「腎症」、「神経障害」などに続く
糖尿病の6番目の合併症といわれる。
「糖尿病の状態が改善されない人は、ぜひ口腔内をチェックし、
歯周病治療を受けてほしい」

東京医科歯科大の和泉雄一教授(歯周病学)は、
「生活習慣病の黒幕-それは歯周病!」(東京顕微鏡院主催)の講演で、
糖尿病以外にも、感染性心内膜炎、心臓・循環器疾患、
早産・低体重児出産、細菌性肺炎--など、
歯周病が全身の病気に影響している現実を報告。

歯周病の原因細菌やその破片が、歯ぐきの傷口から
血中に入り込むことなどで、血管に血栓がつくられ、
心筋梗塞や狭心症などを引き起こす一因。

伊藤教授は、「中-重度の歯周病患者では、炎症を起こしている
(歯と歯肉の間の溝を指す)歯周ポケットの表面積は、
手のひらの面積に相当する55~72平方センチ。
口の中にそれだけの(細菌や毒素の)入り口がある」

歯周病の予防や治療は、全身の健康や、妊娠・出産を通じて
子孫の健康にも関係していると認識することが大切。
歯周病の予防には、毎日の歯磨きが欠かせない。

東京都歯科衛生士会によると、きちんと手入れするには、
歯ブラシ1本だけではなく、歯間ブラシやデンタルフロス(糸)で
歯と歯の間の汚れを落とし、奥歯を清掃しやすい部分みがき用の
ワンタフトブラシも使い、丁寧にケアをする必要。
歯ブラシは、「毛先が平面で、3列に並んでいるのが使いやすい」

歯磨き粉を用いて磨くと、さわやかな気分になるが、
ブラシをきちんと当てないと汚れは落ちないので注意。
歯ブラシの柄をペンのように持ち、力を入れすぎないように
歯に対して直角に当てる。

力任せに磨くより、細かく振動させる方が汚れは落ちる。
奥歯は磨きにくいが、手鏡を使って歯ブラシが届いているか確認。

1カ所につき、「数字でゆっくり10数えるくらいしっかり磨いてほしい」
定期的に、かかりつけの歯科医で口腔内をチェックし、
歯磨きのアドバイスを受けたり歯石を除去してもらうことも大切。
…………………………………………………………………………
◆歯周病チェック(和泉教授の講演資料から)
□歯ぐきがむずむずしてかゆい
□歯ぐきが浮いた感じがして腫れぼったい
□冷たいものがしみる
□歯を磨くと歯ぐきから出血する
□朝起きたとき口の中がネバネバして不快である
□歯ぐきを押すと血やうみが出る
□口臭を指摘された(自分で口臭があると感じる)
□歯ぐきの色が赤黒い、歯ぐきが腫れている
□歯と歯の間に食べ物がはさまりやすい
□☆歯を押すとぐらぐらする
□☆歯ぐきが下がり、歯が長くなった感じがする
□☆このごろ、歯並びが変わったような気がする

◆判定
0-2個 健康
3-4個 歯周病の可能性あり
5個以上 歯周病
選んだ中に☆の三つが該当 重度の歯周病

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/14/105748/

2009年8月24日月曜日

支える:バンクーバー冬季五輪、あと半年/4 宇宙開発の技術も導入

(毎日 8月21日)

「シャーレ」と呼ばれる座席部分を軽く、
スチール製の刃の周辺は重くする。
重心が低くなれば、直線でもコーナーでも安定感が増す。
リュージュ日本チームのソリに関する基本的な考え。

単純なアプローチだが、しっかりした理論に支えられている。
ソリの形状は、3年前から宇宙航空研究開発機構(JAXA)と
共同で取り組んできた風洞実験のデータを基に設計。

ソリの開発は、「航空機の部品やスーツケースの開発に役立つ」、
JAXAの産学官連携事業に採択、ソリの素材の開発研究に着手。
トリノ五輪時、グラスファイバー製だったシャーレを、
航空機や人工衛星などに使われる炭素繊維強化プラスチック製に
変えることで、大幅な軽量化が可能。
規定重量内で、刃の部分を重くできる。

「リュージュ」とは、フランス語で「木ゾリ」の意味。
現在の開発競争は、そんな牧歌的なイメージとかけ離れている。
強国のドイツやイタリアは、自動車メーカーの協力を仰いでいる。

理論を実践する役割を担うのは、札幌市の町工場。
曲線が多く製造の難しいユニットバスの型などを作っている
「遠藤木型」の遠藤貞幸社長が、ソリを設計。
遠藤社長は、「新しいソリは、従来より空気抵抗が8%減る。
重心が低くなると、ソリの上下の間が狭くなり、
強度面でもメリットがある」

日本チームは過去、1台約30万円のイタリア製ソリを使ってきた。
バンクーバー五輪では、エースの原田窓香(信州大)が、
1000万円以上の開発費をかけた国産の新型ソリに乗る。
試作品の試乗を終えた原田は、「扱いやすくなった」

リュージュの最高速は、男子130キロ前後が一般的、
バンクーバーのコースは直線が多く、男子が最高速150キロ、
女子も同140キロを超える。
日本の技術の粋を集めた国産ソリで、「超高速」コースに挑む。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/08/21/20090821ddm035050176000c.html

学びの情報基地(9)博物館 文化の伝承役

(読売 8月12日)

失われつつある伝統文化を、次世代に受け継ごうと取り組む博物館。

北海道平取町の「萱野茂 二風谷アイヌ資料館」。
アイヌの伝統家屋「チセ」が復元された広場に、
地元の小中学生8人が集まってきた。

「イランカラプテ(こんにちは)!」
元気にあいさつした子どもたちは、スケッチブックを広げ、
チセの絵を描き始めた。
北海道アイヌ協会平取支部が開く、「アイヌ語教室子どもの部」

同資料館は、トゥキ(杯)、テクンペ(手袋)など、
伝統の民具にあふれ、アイヌの言葉や文化を学ぶには格好の教室。
講師の関根真紀さん(37)が時折、生徒を連れて来る。

「建物の特徴をよく見て描いてね」と声をかける関根さん。
子どもたちはスケッチしながら、アイヌ語を学んだ。

アイヌ語を取り巻く現状は厳しい。
アイヌ民族は道内に約2万4000人、関東などにも数千人が暮らす。
アイヌ語を授業で教える小中学校はほとんどない。
同協会が14市町で教室を開くが、
子ども・親子向けの教室は平取町と旭川市だけ。

「日常会話ができる人は道内に数人。存続が危ぶまれる言語」
同資料館長の萱野志朗さん(51)は嘆く。

「言葉は、生活や文化の中にあって初めて生きてくる。
子から孫へと伝えられてきた文化の伝承役として、
資料館の役割は大きい」と関根さん。

豊臣秀吉が城を築いた400年以上前から伝わる
滋賀県長浜市の「曳山まつり」。
その花形の「子ども歌舞伎」も、旧市街地の空洞化など、
年々運営が難しくなりつつある。

同市曳山博物館は、子ども歌舞伎教室を始めた。
慣習により、「旧長浜町の男児」に限定されていた後継者の対象を
広げようと、4月のまつりとは別に、11月に公演。
広く参加を呼び掛け、女児を含む小学生10人が参加。

「名作の剣とあらば、武士の尊むところー」、
「はい、そこ大きく。イチ、ニー!」

同博物館で、浴衣姿の児童が、名作「梶原平蔵誉石切」の
けいこに打ち込む。
地元の商店主、川村和彦さん(53)の指導は厳しい。

主役の梶原平三を演じる西島功祐君(11)は、
「歌舞伎の化粧はかっこいいし、見えを切るところが好き」

「子ども歌舞伎により、人情や礼儀作法など、
大切なものを子どもたちに教えることができる」と川村さん。

長崎歴史文化博物館で、小中学生に長崎の歴史や文化に
触れてもらう、「れきぶんこどもクラブ」が始まるなど、
各地で同様の活動が始まっている。

文化の継承に、博物館が中心的な役割を果たしている。

◆萱野茂 二風谷アイヌ資料館
 アイヌ文化伝承に尽力した萱野茂氏が収集・製作した
 民具約1000点を展示。

◆長浜市曳山博物館
 曳山(山車)の実物やまつりの映像が見られる。

◆長崎歴史文化博物館
 「れきぶんこどもクラブ」は長崎県内の小中学生対象。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090812-OYT8T00282.htm

「北限のタケノコ」プロジェクト 特産品化「夢ではない」

(東海新報 8月18日)

「北限のタケノコ」を気仙の特産品にしようと、
県大船渡地方振興局(高橋克雅局長)は、良質なタケノコを
生産、加工するためのプロジェクト事業を進めている。

間伐を行うモデル竹林を近く設定、水煮加工の商品化、
販路開拓などに力を入れる。

気仙は、モウソウ竹や真竹の自生の北限とされ、
竹林面積は117ヘクタール。
内訳は、陸前高田市66ヘクタール、大船渡市41ヘクタール、
住田町10ヘクタール。

管理の手が及ばない所では、竹やぶ化が進み、
豊富な竹林資源が宝の持ち腐れ状態。

北限のタケノコ特産品プロジェクト事業は、
国産志向の追い風に乗せ、北限のタケノコを売り出そうというもの。
事業費は、地域振興推進費90万円。
気仙地方林業振興協議会(会長・甘竹勝郎大船渡市長)が実施主体。

事務局の振興局農林部によると、肥培管理した場合の
タケノコの生産量は0・1ヘクタール当たり1トン、
間伐をすると太くなる。
安定生産を目指し、竹林を整備し、モデル竹林を設定。
間伐や施肥を実施する。

陸前高田市竹文化振興協会を通じ、竹林所有者の参加を呼びかけ、
現地検討会を開催、チラシを作成し間伐、施肥の技術を広める。
タケノコの集荷システムの構築や加工品の販路開拓、
消費拡大のための料理研修会にも取り組む。

タケノコの生産、加工の現状は、生で産直に出すか、
自家消費が中心で、加工分野は後進地。
プロジェクトで、先月は長期保存が可能な水煮などの
加工法の研修会を実施。

水煮タケノコの国産品が欲しいという声が関係者に寄せられ、
官民有志の「三陸の食卓をおすそわけ実行委員会」が、
今秋実施する東京での販売イベントに水煮を出品、
中華の食材のキクラゲとセットでレストランヘの販路を開拓。

間伐した竹の利用法(竹細工、門松、竹炭、チップ)も調査し、
家畜の敷料となるチップ(おが粉化)では、
民間業者による移動チッパーによる試験を実施。

気仙は、モウソウ竹が5、6月、真竹が7月下旬まで採れ、
3、4月に生出荷される西日本の産地と出荷時期が重ならない利点。
県大船渡地方振興局農林部の漆原隆一林務課長は、
「竹やぶ状態になっている所が多く、竹林所有者がタケノコ生産に
興味を持ってもらえれば。
北限のタケノコが特産品となることも夢ではない」

http://www.tohkaishimpo.com/

2009年8月23日日曜日

「温度差発電」手応え 奥州の千田精密工業

(岩手日報 8月13日)

新たな発電法として注目を集める「温度差発電」の公開実験が、
奥州市の千田精密工業(千田伏二夫代表取締役)で行われた。
研究の第一人者、慶応義塾大の武藤佳恭教授が実験。

温度差発電は、温度差を与えると発電する「ペルチェ素子」という
半導体を利用した発電法。
まだ研究段階だが、地熱や温泉を活用した発電への発展など注目。

実験では、氷水と湯を入れたコップを二つ用意。
ペルチェ素子に、「ヒートパイプ」と呼ばれる熱を伝える管を
接続した装置を、コップの中に入れるとライトが光った。

課題は、温度の伝達。
ヒートパイプとの接続部分などで、温度が半導体に伝わる前に
逃げてしまうと、十分な発電ができない。

半導体や部品加工を手掛ける千田精密工業が、
接着剤を使わない接着技術やヒートパイプの開発で協力し、
発電効率の向上を図る。

武藤教授は、「千田精密の技術を活用し、接着剤が不要になれば、
伝達は大幅に向上する」
千田代表取締役は、「温泉での利用など、夢のある発電法。
岩手発の技術で貢献したい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090813_9

遺伝子が睡眠の必要性を低減する

(2009年8月19日 WebMD)

69歳の女性は、1日に6時間以上睡眠をとったことはなく
昼寝もしないが、健康であり大抵の人々よりもはるかに活動的。
44歳の娘も、休暇中でも午後10時に就寝し、午前4時に起床。

二人には、DEC2という稀な遺伝子変異があった。
この変異のある人々は、必要な睡眠時間が少ない。
遺伝子とヒトの睡眠行動との関連が示されたのは、これが最初。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のYing-Hui Fuら。
「最も興味深いことは、この遺伝子変異がヒトの行動特性に
つながるということ。
遺伝子組成が、我々の行動に影響することは明らか。
睡眠の必要性の制御に、何が関与しているのか?
これは、この探究を始める道を開く」

ローザンヌ大学の遺伝学者、睡眠研究者であるMehdi Taftiは、
「睡眠を、決定的および劇的にコントロールする遺伝子が
ヒトで見つかったのはこれが初めて。
遺伝子変異が、睡眠の量を劇的に変化させることが
可能だというエビデンスを手に入れた」

多くの人々は、ベッドに入ってからわずか6時間後には
起きるように目覚まし時計をセット。
体調を維持するため、日中に「仮眠(power nap)」をとっていると、
Kathryn Severyns Dement睡眠障害センター(ワシントン州)の
Richard Simon Jr.は、
「一晩に6時間しか睡眠をとらない人々の大部分は、
最後には疲れ切ってしまう。
6時間しか睡眠を必要としない人々は少数派」

DEC2変異の影響が発見されたことは重要な知見、
複雑な睡眠過程の一部にしか影響しない。
DEC2は、おそらく極めて稀な変異。
60家系のうち、1家系にしか見出されなかった。
この変異では、短時間睡眠者の1%程度しか説明できず、
全容の解明にはほど遠い」

遺伝子が睡眠の必要性に影響することを証明するため、
Fu博士らは遺伝子組み換えによって、
ヒトのDEC2遺伝子を有するマウスを作製。
そのマウスは、睡眠時間がより短く、起きている時間がより長かった。

マウスから睡眠を剥奪したとき、変異マウスは
休息をとることが許されたときに回復するのに要した
睡眠時間がより短かった。
「これらのマウスは、それほど多くの睡眠を必要としない」

それはなぜか?
Fu博士は、変異遺伝子が、マウス、人間が睡眠の必要性を
乗り越えるのを何らかの形で手助けし、
健康を維持するのに足る長さの睡眠をとることを可能にする。

DEC2変異と、全く同じ作用をする薬剤が開発されたとしたら、
何が起きるだろうか?
「DEC2と同様の効果を示す薬剤があったとしたら、
それはかなり安全である可能性がある。
そのヒトは、その変異があっても無事だからである」

Tafti博士は、DEC2に似た薬剤を開発しようと試みる前に、
今後の研究で睡眠の必要性に影響する、
より多くの蛋白質が同定されるだろう。
「その結果、この経路に影響を与えて、
睡眠を増やしたり減らしたりすること、睡眠をより深いものにすること、
睡眠剥奪からの回復をより良好にすることが可能に」

Fu博士の研究、Tafti博士と同僚のHyun Horによる論説は
『Science』8月14日号に掲載。

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/8/19/105960/

学びの情報基地(8)びっくり実験 科学の目

(読売 8月11日)

ユニークな実験メニューを考え、人気を集めている科学館がある。

「せーの、吸ってー、吐いてー!」
垂直に立てられた透明な筒の底に、
16ポンド(約7・2キロ)のボウリング球。
上部から延びた8本のチューブで、
子どもが力いっぱい空気を吸うと、球がグーンと浮き上がった。

「エーッ」、「うそみたい!」子どもたちは目を丸くする。
球の上下の気圧差を利用した教具。
球が最上部に達すると、全員が「すごーい」と拍手に沸いた。

京都市の市青少年科学センター。
市立大藪小学校6年生が、「見えない空気の不思議な力」の
実験授業に訪れた。
山田海斗君(11)は、「もっとほかの授業も受けたい」と目を輝かせた。

「うちの自慢は、オリジナルの教材・教具なんです」、
同センターの八木陸郎・首席指導主事(59)。
中学校の理科教諭や元教諭らによる講師陣が知恵を絞り、
開館後40年間で約320種類の実験メニューを考えてきた。

同市立小中学校254校の小学6年と中学1年は年1回、
必ず同センターで授業を受ける仕組みに。
同小の河原雅春教諭(37)は、
「子どもを引きつける授業展開は、我々にも勉強になる」

同センターでは、小学校教員などを対象に、
実験指導の研修を行っている。
子どもの理科離れが進んでいるとも言われるが、
理科が苦手な教員も少なくない。
小学校教員の養成課程は、基本的に文系で、理科の楽しさを
子どもに伝えられるほど深く理解するのは容易ではない。

科学の不思議に魅了される子どもは、決して少なくない。
岐阜県瑞浪市のサイエンスワールド
(同県先端科学技術体験センター)は、大型連休には1日3000人、
年間9万人が訪れる人気施設。
常設展示物が、ほとんどないのが特徴。

小中学生・高校生の授業や、親子、主婦向けの科学工作など、
約200種類の実験メニューを用意。
ほぼ毎週、実施内容を入れ替えるため、
いつ行っても新しいテーマが学べる。

同施設のモットーは、「意外性」
バナナがクギを打てるほど凍る液体窒素に手を入れさせるなど、
危険を伴う実験も、理科教諭歴20年前後のベテラン職員の下で行う。
小中学校の授業でも、
〈1〉子どもに、「先生」と呼ばせず「おじさん」と呼ばせる
〈2〉なるべく教えず自分で考えさせる
〈3〉頭の良しあしで評価しない――など、
自由な雰囲気も子どもたちの心を開放的に。

「英語の『ワンダフル』は、『不思議と驚きでいっぱい』の意味。
感性の土台に積み上げられた知識こそ、生きた知識になる」と
日比野安平館長(61)。
いつの日か、ここからノーベル賞学者が生まれる日を夢見ている。

◆京都市青少年科学センター
 親子など2人1組で実験・工作を行う「楽しい実験室」を開催。
 望遠鏡作りなど26テーマ。

◆岐阜県のサイエンスワールド
 夏休みの科学研究相談を行っている。
 テーマ選択や実験方法などを助言。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090811-OYT8T00320.htm