(読売 8月13日)
「『秋草鶉図屏風』は、ススキの穂の様子をよく見ると、
左端は秋と夏が入れ替わっていることがわかります。
以前の修復の時に、間違えたのではないかと言われています」
名古屋市博物館の一室。
津田卓子学芸員(31)が十数人の学生を前に、
同館で始まった特別展「新たな国民のたから」の見所を説明。
学生たちが同館をPRするのに役立ててもらうため。
若者の来場者低迷に悩む博物館と、
博物館を大学教育に生かしたい大学。
両者の思惑が一致しての連携が活発化。
PR役を担う主要メンバーの一つが、椙山女学園大学の
山田真紀・教育学部准教授(39)率いる「チーム博物館」。
将来、教師として子どもたちを博物館に引率する時に困らないよう、
博物館の使い方を今から学んでおこうと、
希望者が集まって今年4月に発足。
学芸員の解説を聞き、自分の目で作品を鑑賞した感想も交え、
手製の「博物館かわら版」を作成。
大学のウェブサイトに載せたり、大学、銀行などの掲示板に張って
同館をPRしている。
同大2年の守永光希さん(20)は、「学芸員から裏話を聞くと、
見るだけではわからない作品のイメージが広がる。
来ると楽しい、という感じを伝えたい」
鳥居和之学芸係長(54)は、「ライバルの動物園、科学館、美術館、
映画館に比べて、博物館に若い人があまり足を運んでくれない。
アピールするには、同世代の誘いが一番」と期待。
名古屋市立大学の阪井芳貴教授(52)らのグループは、
「なぜ博物館に人が来ないのか?」という社会調査。
同市内の大学生約500人に聞いたところ、
75%が同館に行ったことがないという衝撃の結果。
「近くでも足を運ばないのは、興味をひく情報が少ないから」
来年早々、改善のための提言をまとめる。
京都造形芸術大学の芸術表現・アートプロデュース学科では、
学生たちが美術館調査を始めて、今年で4年目。
学芸員など美術関連の職種の志望が多く、
「何のため」、「誰のため」の美術館なのか、
存在意義を再確認するのが狙い。
国内外の美術館の入館料を比較したり、学歴、年収、やりがい度などを
尋ねて、学芸員の平均像を明らかにしたり、
学生目線での素朴な疑問から発した調査を次々に実施。
同学科専任講師の山下里加さんは、
「学生は美術館のいい面、悪い面を知って視野を広げ、
美術館は、反省材料に使ってくれたりする。
双方にプラスの効果を生んでいる」
PRを手伝ったり、改善案を練ったり……。
学生が学びを通じて博物館の未来を開く。
◆名古屋市博物館
特別展「新たな国民のたから」は終了、
企画展「小栗鉄次郎―戦火から国宝を守った男」を開催中。
◆京都造形芸術大学
美術館調査の報告書は、実費と送料で配布。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090813-OYT8T00330.htm
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