2009年12月12日土曜日

規則正しい食事やはり健康によい証拠

(サイエンスポータル 2009年12月3日)

規則正しい食事は、筋肉の代謝を促し、血糖の上がりすぎを
防止することを、生理学研究所などの研究チームが
マウスを使った研究で明らか。

自然科学研究機構・生理学研究所の箕越靖彦教授らは、
人工甘味料をマウスに与えたとき、脳内のホルモン
「オレキシン」がどのように働くかを調べた。

人工甘味料を与えられると、まず脳の視床下部にある
オレキシン細胞が活性化、オレキシンを分泌。
オレキシンによって、筋肉での糖の利用が促進。
人工甘味料を3日間、決まった時刻に与えるという訓練を施された
マウスは、オレキシン細胞がより活性化する。

糖を口から与えた時と、直接腹に注入した時の30分後の
血糖値を比較、口から糖を与えられたマウスの方が
血糖値が低く抑えられる。
これらの結果から、オレキシン細胞の活性化には、
味覚も大きな役割を果たし、規則正しい食事によって
肥満防止など健康にもよい結果が得られる。

オレキシンは、1998年に今回の研究の共同研究者でもある
柳沢正史・米テキサス大学教授、桜井武・金沢大学教授らの
研究グループによって発見、これまでの研究で
摂食活動のほか睡眠をコントロールする役割を果たしている。

Cell Metab. 2009 Dec;10(6):466-80.
Hypothalamic orexin stimulates feeding-associated glucose utilization in skeletal muscle via sympathetic nervous system.
Shiuchi T, Haque MS, Okamoto S, Inoue T, Kageyama H, Lee S, Toda C, Suzuki A, Bachman ES, Kim YB, Sakurai T, Yanagisawa M, Shioda S, Imoto K, Minokoshi Y.

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0912/0912031.html

「高大連携」へ協定 専大北上高と石巻専修大

(岩手日報 12月5日)

専大北上高(高木敬蔵校長、生徒852人)と
石巻専修大(坂田隆学長)は、「高大連携」に関する協定。
専大北上高3年生の希望者に、同大の単位認定となる授業を
2010年度から実施、1、2年時には大学での
特別授業や施設見学も行う。
相互交流を深め、高校生が大学の授業などを
体験することで、学習意欲の向上を図る。

協定調印式は専大北上高で行われ、
高木校長と坂田学長が協定書に署名、調印。

2010年度から実施を予定するのは、
▽同校3年生対象の単位認定型授業、
▽全1年生対象の大学特別見学会・特別授業、
▽自動車科2年生対象の整備実習特別授業、
▽北上市―同大間の通学支援バス運行―など。

単位認定型授業は、同大への進学希望生徒らを対象、
90分15回の授業を行う。
10回程度を同校で、残りを同大で実施し、
同大の教授らが講師を担当。
出席率や試験の結果を踏まえ、同大に進学した際は
「総合科目」の単位として認定。

1年生全員は、同大で施設見学や授業に参加。
自動車科2年生は、同大理工学部の自動車工学センターで
整備実習などを行い、高度な技術に触れる。

同校の小井塚義則教頭は、「高大連携により、
生徒は大学の施設や授業を知ることができる。
狭い知識だけではなく、幅広い職業観や人生観を身に付ける
きっかけとなれば」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091205_8

特別支援教育(4)中学から情報、指導充実

(読売 12月5日)

入試という大きな壁を超え、中学から高校へ支援を引き継ぐ。

福島県立川俣高校で、特別支援コーディネーターを務める
高井麗子教諭(53)にとって、3月末の数日間は、
1年で最も多忙を極める時期。
今年は、入試の最終的な合格発表が3月25日、
27日がオリエンテーション。
高井教諭は25、26日の2日間で、
入学する生徒の出身校を駆け回った。

「担任が新年度に異動することもあるから、
3月いっぱいが勝負」と高井教諭。
発達障害のある生徒など、配慮の必要な子に関する情報を
できるだけ収集し、新学期からの授業に備えるのが目的。

「授業のペースについていけず、生徒がパニックになって
しまったこともあった。
事前に中学から情報を得ていれば、防げたのに……」。
高井教諭が苦い表情で振り返る。

発達障害のある生徒が充実した高校生活を送るには、
個別の指導計画など、中学での支援情報を円滑に
高校に引き継ぐ必要。
入試で不利になることを懸念、情報を伝えない中学も少なくない。
公立の場合、市町村立の中学と、都道府県立の高校とでは、
学校設置者が異なることもネック。

同校は2005年、発達障害のある生徒の高校での
指導のあり方など、高校では初の研究開発学校として、
文部科学省から指定を受けた。
幼稚園、小、中学校のコーディネーターが集まる連絡会に
高井教諭も参加、幼児期からの一貫した支援体制の整備に
力を注いでいる。

「英語の単語を区切らずに書く生徒のノートに、
教員が単語ごとに蛍光ペンを引いて色分けするなど、
発達障害の子にも分かる丁寧な指導を、
すべての生徒に対して心がけてきた。
その結果、学校全体としての学力も向上した」。
高井教諭は、特別支援教育に取り組んだ成果。

滋賀県立日野高校は、高校卒業後の支援にも力を注ぐ。
本人と保護者の了解を得た上で、
高校での支援に関する情報を、大学や企業に提供。

特別支援教育コーディネーターの山口比呂美教諭(51)は、
「年に3~4回、大学での様子を担当者に尋ね、
本人にも電話を入れる。
本人が困っている場合は、こちらから大学に連絡することも」
発達障害のある子が自立するには、
「保幼小中高大企(保育園、幼稚園、小、中学校、高校、大学、企業)」
が連携し、早期発見と生涯にわたる支援が欠かせない。

同校が取り組むのは、障害理解教育。
発達障害への偏見をなくし、正しく理解してもらうため、
生徒への啓発や、保護者、地域の人々、企業にも公開した
研修会を重ねている。
「障害をその人の個性や特性と受けとめ、
お互いを認め合えるようになってほしい」と山口教諭。

教諭たちが思い描くのは、「発達障害」や「特別支援教育」という
言葉を、もはや必要としない社会。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091205-OYT8T00378.htm

流産:妊娠中の授乳と「無関係」 浜松の産科医が論文

(毎日 12月6日)

授乳をすると、子宮が収縮し流産になるとして、
明確な根拠がないまま、国内の産科医療機関で
中止を指導されることの多い妊娠中の授乳について、
浜松市の産科医が、授乳は流産と無関係とする論文を、
日本産科婦人科学会の学会誌に発表。

石井第一産科婦人科クリニックの石井広重院長は、
96~00年に、同院で第2子の妊娠が確認された
20~34歳の女性のカルテをもとに分析。
第1子が満期産(妊娠37週以上42週未満に出産)で
流産の経験がない人で、授乳中だった110人と、
授乳していなかった774人を比較。

授乳群で、流産は全体の7・3%に対し、
授乳しない群は8・4%、有意な差はなかった。
石井院長は、「母乳育児は母子双方にメリットがあり、
禁止はすべきでない」

日本赤十字社医療センターの杉本充弘周産母子・小児
センター長は、「データに基づき、無関係とはっきり示した
論文は、国内では初めて。
中止を指導していた施設は、方針転換した方がよい」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/12/06/20091206ddm003040130000c.html

2009年12月11日金曜日

IT活用で安全安心なコミュニティづくり実験

(サイエンスポータル 2009年12月2日)

大都市、中小都市を問わず元気がなくなっている
商店街の活力向上や子育て世代の応援を目指す
ユニークな取り組みが、慶應義塾大学、IT企業、
青森市の協力で行われる。

この「コミュニティ形成支援」の試みは、地域に住む人々と
一緒になり、最先端の情報・通信・移動体の技術を
活用しているところが特徴。

慶應義塾大学コ・モビリティ社会研究センターを中心に、
大日本印刷、KDDI、青森市、青森市中心市街地活性化協議会が
協力して実施。

子育て世代を取り巻く生活向上に着目、
「中心市街地の魅力の発信と共有」、
「子を連れた親の移動に対する、物理的、心理的負担の減少」が
重要という観点から、「子育て商店街ツアー」という企画。

青森市の中心街で行われるツアーに参加する母親たちは、
KDDIから貸与される携帯端末を持ち、
3グループに分かれて商店街の探索を楽しむ。
端末には、大日本印刷が開発した「情報クリッピングシステム」と
KDDO開発の「実空間透視ケータイ」が搭載、
現在地に関連する写真やコメントが表示。

ツアーに協力するまちなかマーケティング市民委員会や
子育てサークル「こもも」のメンバーが作成した
「まちなかのお薦めスポット情報」も組み込まれ、
お薦めの場所に来ると携帯が振動し、
お薦め情報があることを伝える機能もついている。

慶應大学「コ・モビリティ社会の創成プロジェクト」
(担当責任者・金子郁容 慶應義塾大学大学院政策・
メディア研究科教授)の研究者たちは、
青森市での取り組みで得た成果をもとに、
「子どもから高齢者までが盛んに交流でき、
自由に移動できる安心安全で活発なコミュニティを作ることを
目指した、社会基盤の構築に取り組んでいきたい」

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0912/0912021.html

自殺リスク判別法開発 生活者サポートセンター

(岩手日報 12月7日)

NPO法人いわて生活者サポートセンター(阿部和平理事長)
が開発を進めていた、経済的な理由で自殺に傾きそうな人を
早期発見するスクリーニングツール(判別手法)が完成。

今月から、盛岡市の同センターと県消費者信用生協の相談窓口で
試験的に使い、来年以降は行政機関の窓口での活用も目指す。
消費生活と精神保健分野が連携を強化し、自殺予防につなげる。
一定の基準ができ、相談員の精神的な負担軽減も図られそう。

ツールは、開発検討委員会(委員長・黒沢美枝県精神保健福祉
センター所長、委員5人)で、自殺リスクが高い人を
判別するための項目を決めた。
▽経済的問題への不安度合いと自殺危険度
▽精神健康度
▽自殺の危険因子―の3分野、計18項目。
窓口で用紙を配り、相談者に記入してもらう。

相談員は利用の手引を参考に、項目ごとに点数を合計。
高リスクと判断した人に対しては、
精神科病院や心の健康に関しての相談窓口を紹介。

例えば、「死んでしまいたいという考えが持続している」、
「自殺をする具体的な計画がある」などの項目は、
一つでも当てはまる場合、受診につなげるよう努め、
応じない場合は地域の保健師らへの情報提供も検討。

消費相談に来る人の中には、経済的に行き詰まり、
自殺を口にする人もいる。
従来は、各相談員が経験によって判断していたが、
精神保健の専門家でないため、受診を勧める判断は難しく、
踏み込めないケースも。

相談者が自殺した場合、相談員が受けるショックが大きいため、
判別手法が求められていた。
開発は、厚生労働省の自殺防止対策事業の
全国12先駆事業の一つとして採択。

ツールは、項目などを精査した上で、来年から盛岡市の
県民生活センターや振興局の消費生活相談、
同市消費生活センターなどでも活用する予定。
これらの窓口を合わせると、年間約8千人の相談。

サポートセンターの藤沢俊樹事務局長は、
「判断基準ができることで、相談員も安心して対応できる。
消費生活相談と精神保健の担当者同士が一層連携し、
自殺防止につなげたい」

問い合わせは、いわて生活者サポートセンター(019・604・8610)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091207_14

特別支援教育(3)教師の卵 心もサポート

(読売 12月3日)

教員志望の大学生を、学習支援ボランティアとして活用する高校。

「質問をしても、答えが見つかるまで話さない。
長い沈黙に特徴がある子だな、と戸惑いも」
京都教育大学大学院で教職を目指す修士課程2年の
池田純さん(23)は、高杉大輔君(仮名)(20)との出会いを振り返る。

池田さんが、京都府立朱雀高校の高大連携事業の一環として、
同校の学習サポートアシスタントになったのは2007年夏。
放課後に個別指導したのが、当時3年生の高杉君。

高杉君は、考えを頭の中で整理するのが苦手で、
言葉にするまでに時間がかかる。
答えにたどり着かないと、途中経過を話さないので、
どこでつまずいたのか分からない。
市販の問題集は役に立たないと思い、
小さな問いを積み重ねる形式の教材を自作。

粘り強く話しかけた結果、高杉君の沈黙は次第になくなった。
「高杉君は明るくなったねと、養護教諭から声をかけられたのが
うれしかった。授業のポイントを学べ、貴重な体験だった」と池田さん。
高杉君は、「頼れるお兄さんって感じで、気軽に話せた。
勉強も一対一で分かりやすかった」

全日制、定時制、通信制を併設する同校が、
特別支援の取り組みを始めたのは10年前。
学習障害(LD)と疑われる生徒が入学してきたのがきっかけ。
専門家を講師に招いて研修を重ね、
発達障害への理解を深めていった。

「教員がスキルアップした結果、人間関係を築くのが苦手な子など、
それまでは見過ごしていた『気になる子』に気づくように。
なぜできないのかと怒るのではなく、
どうすればできるようになるだろうと、
生徒への意識も大きく変わった」と、滋野哲秀校長(55)。

学習サポートアシスタントは元々、進路指導のために導入。
地方自治体の財政難で、特別支援教育支援員が削減方向だが、
特別支援教育にも応用できると同校は考えた。

「学習面でのつまずきをフォローするだけでなく、
身近な存在としてメンタルな部分でも寄り添ってもらっている」と
進路指導部の高田法彦教諭(48)。

年間30日以上欠席した生徒を対象に、06年度から導入した
長期欠席者特別入学者選抜も、特別支援教育を深化させる契機。
「気になる子」の情報を共有し、複数の目を注ぎながらも、
決して特別扱いはしない。
それが、普通科の中でのあるべき特別支援教育と考えている。

入試というハードルを越えた以上、特別扱いは自尊心を傷つけ、
障害のレッテル張りにも。
大切なのは、その子を含めて誰にでも分かる授業をすること」と
元養護教諭で、現在は非常勤講師の佐藤友子さん(62)。

そんな実践を、同校は「特別でない特別支援教育」と呼ぶ。

◆特別支援教育支援員

障害のある生徒に対して、介助を行ったり、学習活動上の
サポートを行ったりする。
公立幼稚園、小・中学校では国の地方財政措置があるが、
高校では各自治体の自主財源に頼るしかなく、
財政事情の悪化から、その数は減少。
公立高校の活用状況は、2007年度278人、08年度224人、
今年度219人。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091203-OYT8T00278.htm

インタビュー・環境戦略を語る:オリックス・梁瀬行雄社長

(毎日 12月7日)

リースや投融資、不動産など事業の多角化を進めるオリックス
環境面でも、廃棄物の処理・リサイクルや自然エネルギー発電など
多様な展開をし、新規ビジネスの開拓にも意欲的。
梁瀬行雄社長に、これまでの取り組みや環境への思いを聞いた。

--環境ビジネスに取り組んだきっかけは?

◆オリックスは、日本で初めてリース業を始めたが、
リース期間が終わった物品の処理が課題。
90年代、産業廃棄物やリサイクルへの関心が高まる中、
廃棄物の分別回収、焼却、再資源化のシステムを作った。
他社からも廃棄物を受け入れて、手数料収入を得るビジネスに
仕上げ、自社で廃棄物処分場も建設。
原油価格高騰や地球温暖化がテーマになると、
融資先企業などへの省エネ施設の提案などを進めている。

リースは、物を「所有して捨てる」のではなく、
「長く効率的に使う」という環境にフレンドリーな発想。
環境対応は、オリックスのDNAとして染みついている。

--社長自身の環境問題への危機意識も強い。

◆07年、ゴア元米副大統領の映画「不都合な真実」を見て、
温暖化問題は待ったなしだと大きな衝撃。
社内有志にゴア氏の著作も配布し、部長級会議では
必ず環境をテーマにすることをルール付けて、参加意識を醸成。
昨年9月、新規の環境ビジネスの創造に携わる
横断的な組織を設置し、「気候保護責任者」を意味する
“CPO”も設置。

環境活動に熱心な地方自治体との連携も進めている。
企業なので、目に見える成果を毎年出すことが鉄則で、
来年度からは利益に貢献させたい。

--将来の目指す姿は?

◆オリックスは、60万台以上の自動車をリース、レンタル、
マンション事業では傘下の大京も合わせて、販売戸数はトップ。
ハイブリッド車や電気自動車の普及、建物の省エネ化を
促進することができる。
事業を中心に、環境によい製品や技術を消費者・顧客に提供する
環境サービス業「エコサービスインテグレーター」を確立したい。

--産業界はCO2削減などへの取り組みが消極的とも。

◆国際競争上不利益を被ることが問題なのであって、
地球がこれ以上環境負荷に耐えられないという認識は共有。
リーマン・ショック後、世界経済が縮小する中、
環境分野は新たな成長のチャンス。
日本の優れた省エネ技術が世界中に普及すれば、
問題が解決するとの見方すらある。
政府も、企業活動を規制するような環境税の導入より、
エコポイントのように、逆に促進する仕組み作りを進めてほしい。
==============
◇やなせ・ゆきお

早大第一法学部(現法学部)卒、68年旧埼玉銀行
(現りそなホールディングス)入行。旧あさひ銀行(同)頭取などを
経て、03年オリックスに入社、08年1月から現職。
埼玉県出身。65歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/12/07/20091207ddm008020014000c.html

2009年12月10日木曜日

路上生活者に愛の手 県立大の支援チーム

(東海新報 12月6日)

県立大学生有志のホームレス支援チームは、
日本航空から寄付された毛布を、
盛岡市内のホームレスに届け、対話を深めた。
貧困問題や福祉に関心がある高校生も、初めて参加し、
「貧困をなくすため、若い力が欠かせない」と思いを深めた。

同大ボランティアセンター・ホームレス支援プロジェクト
学生13人が、市内の北上川河川敷付近に集まった8人に、
毛布や手袋を袋に入れた「ぽかぽかパック」を手渡した。
四ツ家教会の関係者が作った食事も配った。

受け取った60代男性は、手袋を着けると、
「とても暖かい。ありがとう」と感謝。

盛岡市内の高校に通う生徒4人も、自主的に参加。
支援活動の中心となるチームREDの触沢陽介代表(4年)らが
「信頼関係を築くことから、支援は始まる」

大学進学が決まり、福祉を学ぶ盛岡白百合学園高3年の
及川智仁佳さんは、「寒空の下で暮らす人がいる状況は社会問題。
解決へ若い力が欠かせない」

高校で、多重債務問題について学んだ盛岡市立高3年の
佐々木悠介君と徳差一樹君は、「大学生と話す人の笑顔を見て、
きずなの大切さを感じた」

日航から、11月28日に毛布100枚が寄贈。
支援の申し出も増え、同プロジェクトの山川裕香代表(3年)は、
「支え合いの輪が着実に広がっている」と笑顔を見せた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091206_4

特別支援教育(2)心理学で学ぶ対人関係

(読売 12月2日)

対人関係を上手に築けるよう、心理学を必修で学ぶ高校。

「怒り、落ち込み、不安はどこからくるんだろう?」
教壇から問いかける女性教諭に、生徒の視線が注がれた。

開かれた教科書には、「思考楽々シート」の文字。
「問題の出来事」、「そのときの心のつぶやき」、「感情」、
「楽になるための考え」が、順を追って記入。

「ケータイの待ち受けを見たら、自分のじゃなかった。
だれが私のを持ってるの?ゲキ不安!
さっさと見つけようと行動に移す!!」。
女子生徒が、笑顔で自分の「答え」を発表。

「怒り、落ち込み、不安になったら、心のつぶやきに耳を傾け、
柔らかく考えてみて」
教諭はそう言って、45分間の授業を締めくくった。

茨城県鹿嶋市の県立鹿島灘高校は午前、午後、夜間の
3部制を取る定時制。
不登校など多様な生徒を受け入れ、「フレックススクール」。
小中学校時代の友人関係のトラブルから、
心に問題を抱える子もいる。

発達障害のある子の3割が不登校になり、
不登校の3割に発達障害があると言われる。
同校には、発達障害の診断を持つ子はいないが、
疑いのある子を含め、集団生活で苦戦しやすい子を支援するため、
学校設定科目として「心理学」を設定。1年次に必修。

元々の障害を「一次障害」というのに対し、
周囲の無理解などによって失敗体験が重なり、
自尊心が低下して起きる様々な症状を「二次的障害」。
「高校生の年代に表れる症状は、両方が複雑に絡み合い、
どこまでが発達障害によるものとは言いづらい。
発達障害を見つけて選別するよりも、学校生活で苦戦する
生徒たちとして指導する方が有効」
筑波大学の石隈利紀教授(59)(学校心理学)。

授業は、ロールプレイング(役割演技)などのゲーム的要素も
取り入れ、楽しみながら社会スキルなどを学べるように構成。
「相手と自分の気持ちが、よく分かるようになった。
社会に出てからも、きっと役立つはず」と男子生徒(16)。
「自分は、なんてマイナス思考なんだろうと気づき、
つらくなるときもある」と、表情を曇らせる女子生徒(15)も。

「自分の内面と向き合う授業だから、心にふたをして
閉ざしてきたつらい出来事をほじくり出されると感じるときも。
心の傷を少しずついやしてほしい」
授業を担当する鴨志田和子教諭(51)。

今年度の中退者数は、2007年度の約1割で推移。
自己を発見し、理解する授業が、実を結びつつある。

ほかの人と同じようにできない自分を責めるのではなく、
ありのままの自分を受け入れ、自尊感情を取り戻せるように
背中を押す。
そこから、本当の特別支援教育が始まる。

◆学校設定科目

学習指導要領により、各学校が地域、学校、生徒の実態、
学科の特色等に応じ、独自に設けることが認められた科目。
文部科学省の私的諮問機関がまとめた報告書では、
発達障害のある生徒の自立にも資する教科・科目を開設し、
通級指導教室のような形態で実施することも考えられる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091202-OYT8T00251.htm

縮減の波紋:/下 強化策、政権と距離感 社会への還元、課題に

(毎日 12月6日)

民主党政権下で、選手強化事業費約27億円が縮減される
可能性が出てきたJOCが駆け込んだのは、自民党本部。

同党の文部科学部会には、JOC幹部と
88年ソウル五輪男子レスリング金メダルの
佐藤満・日本レスリング協会男子強化委員長が出席。

佐藤氏は、「レスリングで2番でもいいと考えていたら、
五輪にさえ出られない。
世界には金メダルを取りたい人間がたくさんいる」と
激しい口調で訴えた。

政府の行政刷新会議の事業仕分けで、
蓮舫参院議員(民主)が、文部科学省所管の
スーパーコンピューターの開発予算に関連して、
「世界一になる理由は何ですか。2位じゃダメなんでしょうか」
と迫ったことを意識しての発言。

自民党側は麻生太郎、森喜朗といった歴代首相が
部会に顔をそろえ、スポーツ予算の確保、拡充を求める
決議を採択し、JOCを援護射撃。

JOCの元幹部は、「JOCは、自民党に予算確保で世話になる
代わりに、参院比例代表に集票力のある五輪メダリストを
送り込んできた」と打ち明ける。

民主党政権批判は、政争に巻き込まれる危険もはらむが、
スポーツ界はそこまで切羽詰まっている。

民主党とは、「インパクトのあるパイプがない」
(市原則之JOC専務理事)のが現状。

民主党は、「政策集INDEX2009」で、
地域密着型の拠点づくりや地域スポーツリーダーの育成など
底辺の充実を打ち出し、
「トップを目指した指導者がいるからこそ底辺が広がる」
(福田富昭JOC副会長)と、トップレベルの強化優先を訴える
JOCとは根本理念でも距離感。

五輪メダリストらの共同会見で、08年北京五輪男子
フェンシング銀メダリストの太田雄貴(森永製菓)が、
示唆に富む発言。

国民の税金で、競技をやらせてもらっていることを認識し、
感謝の気持ちを持ちたい。
競技だけやっていればいいというのでなく、
一人間、一社会人としての責務がある」

スポーツ予算の恩恵を授かったトップアスリートが、
社会に何を還元していくか?
その筋道を、競技団体と選手が一体となって考える時代。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/12/06/20091206ddm035050148000c.html

2009年12月9日水曜日

冬の肌荒れ、寒さも敵 バリアー機能高めるたんぱく質、働かず

(2009年12月4日 毎日新聞社)

皮膚表面で温度を感知するたんぱく質が、
肌の乾燥に深くかかわっていることが、
自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンターと
ポーラ化成工業の研究で分かった。

冬の肌荒れの原因は、空気の乾燥だけでなく、
気温低下にもあることを示す結果で、
日本研究皮膚科学会で発表。

このたんぱく質「TRPV4」は、体内のさまざまな場所にあり、
温度や筋肉の緊張などの刺激を感知する働きがある。

ポーラ化成の木田尚子研究員(皮膚科学)らは、
TRPV4が温度によって活性を変えることに着目。
皮膚でどんな働きをしているかを調べた。

TRPV4が不活発になるセ氏24度で、人の表皮細胞を培養すると、
適温の室内での皮膚温度(33度)で培養した場合と比べ、
細胞同士の接着が緩み、すき間から水分などの物質が
通り抜けやすくなった。
TRPV4を活性化する試薬を加えたところ、物質の透過が抑制。

低温が、TRPV4の活性化を妨げることで、
皮膚のバリアー機能が低下し、
水分が失われて肌の乾燥が進むと推測。

木田さんは、「入浴で肌が潤うことは経験的に知られているが、
これには湿度だけでなく、温度も関係していることが
細胞レベルで分かった。
温めることによって、肌荒れを改善するなど
新しい方法につながるかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/4/112565/

松原球場を大規模改修へ 関係予算を市議会に提案

(東海新報 12月5日)


陸前高田市は、平成28年の岩手国体開催を見据え、
高田松原第一球場の大規模改修事業に着手。
スコアボードを電光表示とし、内外野ともラバーフェンスを設置、
公式大会が誘致できる環境を整える。
関係予算の事業費を、市議会に提案。

同球場は、本格的な球場としては気仙地区でいち早く、
昭和43年に総工費約4000万円で建設。
こけら落としを、高松宮殿下をお迎えして
高松宮賜杯第12回全国軟式野球大会を開催。
45年、岩手国体の一般軟式野球の部が開かれた歴史。

63年、ナイター施設が整備、市民スポーツの拠点として
市内外の多くの野球愛好者が利用。
平成16年、1万9666人の利用、
ここ数年は年間1万人前後の利用状況。

建設後40年が経過、老朽化が目立ち、グラウンドの水はけ悪化。
鉄骨むき出しのフェンスやさび付いたスコアボード、
基準に満たないグラウンド内の広さなどの改修について、
10年前から市野球協会(及川邦夫会長)が、市に対し要望。
市は、国の「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」を活用、
大規模改修に着手。

▽グラウンド内の土を全面入れ替え、暗きょ排水や給水設備を整える
▽内野を除くグラウンド全体に芝を張る
▽両翼を90・5㍍(現90㍍)、センター120㍍(同113㍍)に拡張
▽内外野ともラバーフェンスを設置
▽内野スタンドにFRP製のベンチシートを設置。
▽バックネットの新設
▽スコアボードを電光表示式にし、バックスクリーンを新設
▽三塁側に高さ15㍍の防球ネットを新設
▽本部席とダッグアウトを改修、管理室や更衣室を新設
▽西側駐車場は雨水対策の側溝を入れて全面舗装とする
―などの内容。
収容人員は、グラウンド拡張などに伴い、
これまでより100人ほど少ない3700人。

設計と工事の期間は、来年1月から23年3月まで。
来年の各種野球大会の開催になるべく配慮。
事業費は、3億8316万4000円、
国からの地域活性化・経済危機対策臨時交付金600万円、
地方債(保健体育施設整備事業債)3億7710万円、
一般財源6万4000円。

岩手国体を控えて大規模改修することについて、
中里長門市長は、「気仙広域としては、岩手国体での
高校軟式野球大会の開催を誘致。
今後も県に強く働きかけるなど、ぜひ実現したい」

及川市野球協会長は、「球場の改修は、待ちに待っていた事業。
建設当初、他市町村の野球関係者からうらやましがられたが、
最近は老朽化し、公式大会も開けないほどの現状だったので、
大変うれしい」

http://www.tohkaishimpo.com/

特別支援教育(1)発達障害の子 普通科で自立

(読売 12月1日)

発達障害のある生徒を、積極的に受け入れる高校がある。

詩のプリントを、生徒たちが食い入るように見つめている。
「好きな詩を朗読し、どこが心に響いたか発表してもらいます」
女性教諭の声が教室に響き、2年生の現代文の授業は始まった。

順番が回ってきたのに席を立たない男子が。
すかさず周りから、「頑張れ」と声がかかる。
「よし!」。自らほおをたたいて気合を入れ、壇上に向かう男子。
時折つっかえながら、しっかりとした声で最後まで詩を読み上げた。

だれの朗読が良かったか、教諭が決を採る。
自分の名を呼ばれた男子が、「はい!」と手を挙げて立ち上がると、
教室は大きな笑いに。

福岡県八女市の西日本短期大学付属高校。
普通科の中に「発達支援クラス」を設け、
学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など、
従来の特殊教育では対象とされなかった発達障害の子を、
全国に先駆けて受け入れてきた。

「前身となる情緒障害クラスを設けたのが、20年前。
計算はトップクラスでも証明問題が解けないなど、
発達のアンバランスさが目立つ生徒が増えてきた。
こうした子を支援し、自立させる教育へのニーズが高まっている」
森田修示校長(58)が、クラス設置の狙い。

発達支援クラスに在籍するのは9人。
詩を読み上げた真也君(仮名)もその一人。
対人関係を築くのが、苦手な高機能自閉症。
学力の遅れが目立つ教科は、発達支援クラスで少人数指導、
その他の教科は通常のクラスで「交流授業」に参加。
発達支援クラスには、問題が起きれば避難所となるような機能も。

「発達障害とそうでない子を分離するのでなく、
なるべく同じクラスで共に学ぶ統合教育を目指す。
トラブルを一つひとつ解決していった経験が、
社会に出てからの自立につながる」。
発達支援クラス担当の福島文吾教諭(56)。

同様の試みは、佐賀県でも。
県立太良高校は、2011年度から、発達障害の子らを
対象にした枠を設ける。

県教委の調査で、発達障害がある生徒の約3割が、
全日制高校に進学していなかった。
「不登校、中途退学者も含め、既存の全日制では
対応できない生徒に、教育機会を拡大する必要」と
県教委学校再編・新太良高準備室の古賀信孝参事(53)。
白水敏光校長(54)は、「発達障害の子を支える指導の
ノウハウを確立し、県下の高校に返していきたい」

真也君は中学時代、特別支援学級に。
母親は、特別支援学校への進学を考えたが、
本人が普通高校を志望。

一人前の男になりたいんだ、という気持ちが強い。
苦手な集団生活の中に入り、交流授業に参加しているのが
自信になっている」と母親。

授業中に弁当を食べ始めたり、バスの中で大声で歌ったり……。
空気を読むのが不得手な真也君の行動に、
当初はクラスメートも戸惑い。
発達障害の特性を理解していくに従い、
彼を見守っていこうという雰囲気が醸成。
突然大声を出した真也君を、隣の席の子が
口の前に指を立て、優しく諭す姿が印象的。

「真也君が変わっていく姿を見ていると、
自分も頑張らなければという気持ちに」と男子生徒。
「彼と出会って、自分の視野や考え方が広がった」と女子。

真也君は今年2月、米国で開かれた知的障害者の
スポーツの祭典「スペシャルオリンピックス冬季世界大会」の
スピードスケートで、三つの金メダルに。
「北京の北島康介、トリノの荒川静香、そして
スペシャルオリンピックスの真也! 頑張りました!!」。
メダルを首から下げ、大きな拍手を浴びながら報告した
真也君は、発達支援クラスからの“お客様”ではなく、希望の星。

発達障害の子が通常のクラスに入り、
お互いが個性を認め合いながら共に成長していく。
そこに、統合教育の醍醐味がある。

◆取り組み遅れる高校

発達障害の子も、教育ニーズに応じて支援する、
特別支援教育が本格的に始まってから、3年目。
校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名など、
ほぼ体制整備が整った小・中学校に対し、
高校など義務教育後の取り組みは大きく遅れている。

文部科学省が、中学3年生の進路状況を分析した結果、
高校進学者の約2・2%に発達障害等の困難がある。
課程別に見ると、全日制の推計在籍率1・8%に対し、
定時制14・1%、通信制は15・7%。
学科別では、普通科2・0%、専門学科2・6%、総合学科3・6%。

高校で特別支援教育が進まない理由として、
「選抜試験を経て入学してきたのに、できないのはおかしい」とする
教員の意識や、中学との連携不足からそれまでの支援が
途絶えてしまうケースが多い。

文科省の私的諮問機関がまとめた報告書では、
通常の学級に在籍しながら必要に応じて別の場で指導を受ける、
通級による指導の制度化などが提言。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091201-OYT8T00359.htm

縮減の波紋:/中 くじ収益頼みに懸念 民間資金も厳しく

(毎日 12月5日)

「予算要求の縮減ということで、まとめさせていただきました」
行政刷新会議の「事業仕分け」。
JOCの選手強化事業27億1400万円を含む
文部科学省のスポーツ予算10年度概算要求は、
わずか20分余りの議論の末、
とりまとめ役の蓮舫・参院議員(民主)にそう結論。

スポーツ助成は、国庫補助金のほか、
政府出資250億円と民間寄付44億円を原資に、
90年度に創設された「スポーツ振興基金」の運用益、
「スポーツ振興くじ(toto)」の収益からの助成が3本柱。

予算縮減の背景には、国庫補助金を分配する文科省と、
基金やくじを扱う独立行政法人「日本スポーツ振興センター」
という二つのルートがあり、
無駄が生じているのではないかという指摘。

仕分け人から、「それぞれの事業で重複があるのでは」、
「スポーツ予算を一本化すべきだ」の声。

JOCにすれば、国庫補助金で不十分な部分を、
基金やくじで補ってきただけに、
「予算カットの結論ありきだ」との恨み節。

不況でスポンサーの撤退も相次ぎ、
民間資金だけでは厳しい時代。
totoは、06年9月スタートの「BIG」のヒットで、
昨年度は過去最高の897億円を売り上げたが、
それまでは伸び悩み、廃止も検討されたほど。

仕分け人から、「totoの収益をもっと活用すべき」との案も示され、
JOCの市原則之専務理事は、
「totoの収益は、いい時も悪い時もある。頼るのは危険」

予算編成の過程が公開され、今まで以上に税金の使途に
国民の厳しい目が注がれている。
06年トリノ五輪後、日本スケート連盟の元会長が
大会開催をめぐって裏金を作り、私的に流用していた事件が発覚。
スケート界の不透明なカネの流れが問題に。

原田宗彦・早大スポーツ科学学術院教授は、
「大切なのは、アスリートに必要なおカネが流れること。
各競技団体は、自前のマーケティング力をつけるとともに、
カネの使い道に対する監査をより高いレベルで
行うことが必要」と指摘。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/12/05/20091205ddm035050155000c.html

2009年12月8日火曜日

科学者と軍事研究の微妙な距離感

(日経 2009-11-27)

日本の科学技術戦略を語る際、回避されるテーマがある。
軍事部門とのかかわり。
日本人は、特にこの問題に敏感で、
平和利用に徹する姿勢を貫いてきた。
世界に目を向けると、米国をはじめ軍事研究への投資が
相当部分、大学や企業の基礎研究に回っている。
関係を深めることは推奨しないが、実は100%否定することも難しい。
付き合い方のルールを固める必要がある。

核廃絶を唱えるオバマ政権になって影を潜めているが、
同時多発テロが発生した2001年以降、
米国防総省の研究開発担当者が頻繁に、
日本の大学の研究に食指を動かす時期が続いた。

半導体センサーを研究している西日本の国立大学教授。
学会発表を聞いたという米軍関係者が、
制服姿で研究室を訪問、億円単位の資金提供を申し出た。
危険な化学物質の検出に、高感度なセンサーを応用できないか
という着想、この教授は即座に拒否。

リハビリテーションなどを支援するロボットを研究している
関東の大学教授のもとに、米国から航空券が。
研究内容を聞きたいという話だが、現地を訪れてみると
軍関係者から研究支援を提案。
米国では、軍の研究費がロボット研究に投じられることは普通、
日本ではあり得ない。
自身の研究理念にも反すると、同教授は丁重に断り、無事帰国。

まっとうな科学者や技術者ならだれしも、
自分の成果が戦争や犯罪に利用されることなど望んでいない。
平和利用など極めて当たり前な条件で、
議論の対象にはならないという意見。

先端的な研究は時に、ノーベル賞の創設資金にもなった
ダイナマイトを例に挙げるまでもなく、社会の発展に役立つと
同時に、悪用される恐れも。
高度な情報通信技術は、個人情報の盗み見に利用でき、
ナノテクノロジーを駆使して極微な医療機器を開発する一方、
ひそかに人を傷つける武器の開発も可能。

逆のケースもある。
マラリアの感染予防はその代表例、米軍にとって解決したい課題。
これは、アフリカの途上国なども悩む人類共通のテーマで、
軍が蓄積しているノウハウはワクチン開発などに役立てられる。
四国地方の大学や、4大学の研究者が設立した
バイオ系のベンチャー企業は、米軍傘下の研究機関と協力。

米国には、軍事研究費を受け入れている大学は多く、
学術の公開・公正性との兼ね合いや研究倫理が常に議論。
科学技術政策に詳しい鈴木達治郎・東京大学客員教授は、
「基礎的な研究では、(軍など)外部からの介入を拒否する
意見が必ず通る」
それが許されない特殊な場合にのみ、キャンパス外の施設を使い、
大学の研究と一線を画す工夫を凝らしている。

資源・エネルギーの枯渇や食糧の不足、気候変動など
わたしたち人類に及ぶ地球規模の課題は、
なんら解決策が見いだされていない。
難題に科学技術を総動員すべき時代に、反社会的な利用に対し、
科学者や技術者は強く抗議しなければいけない。
負の側面に目をつぶりながら、研究を進めることも許されない。
日本の研究者はこの点、世界的にも優れた倫理観を
備えているのではないか。
その姿勢は誇るべきものだし、高い理念を保ち続けなければ。

同時に、これまで個々人の対応に委ねられていた
軍事研究との協力について、対応するルールを
明確にしておく必要がある。
組織的な枠組みを設けておけば、透明性を高められ、
誤った判断も減らせる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec091125.html

うつ病100万人超す…10年で2.4倍に

(2009年12月4日 読売新聞)

抑うつなどの症状が続くうつ病の患者数(躁うつ病を含む)が、
初めて100万人を超えた。
長引く不況などが背景とみられる一方、
新しい抗うつ薬の登場が患者増につながっていると指摘。

患者調査によると、うつ病が大半を占める「気分障害」の患者数は、
1996年に43万3000人、99年は44万1000人と
ほぼ横ばいだったが、2002年調査から71万1000人と急増、
今回の08年調査では、104万1000人に。

10年足らずで2・4倍に急増、
杏林大保健学部の田島治教授(精神科医)は、
うつ病の啓発が進み、軽症者の受診増も一因」と指摘。

うつ病患者の増加は、新しいタイプの抗うつ薬が
国内でも相次いで発売された時期と重なる。

パナソニック健康保険組合予防医療部の冨高辰一郎部長は、
「軽症のうつは、自然に治るものも多い。
日本ではうつを早く発見し、薬を飲めば治るという流れが続き、
本来必要がない人までが、薬物治療を受けている面があるのでは」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/4/112539/

高田高校の味発信 サンマで「おさかな定食」結カフェ(一戸町)で提供

(東海新報 12月6日)

陸前高田市にある県立高田高校(高橋廣至校長)
水産技術科が開発、製造したサンマの加工品を使った
「高田高校おさかな定食」が、一戸町の「結カフェ」で提供。

県ふるさと食品コンクール・高等学校の部で優秀賞を受賞した
サンマつみれ缶詰などが用いられ、同カフェで開かれた
お披露目会では、地域住民らから大好評。
〝高高の味〟が広く発信される機会となりそう。

結カフェは、株式会社・結(福祉事業所 奥中山高原 結、
山舘章子代表)が運営。
ハンディキャップがある人の就労支援もし、
定食や菓子などを提供。

定食誕生のきっかけは、10月に行われた同コンクール。
会場で、同校のサンマつみれを試食した山舘代表が
その味に感動し、生徒や教員らの熱意にも心を打たれ、
後日メニューへの使用を打診。

同校では、この依頼を快諾し、つみれ缶詰と合わせて
開発中であるしょう油ベースの特製だれに漬けた
サンマのヅケなども提供。
盛岡農業高校が栽培したあきたこまちの白飯、
地元野菜を使った副菜や漬物が並ぶ
「高田高校おさかな定食」が完成。

販売に先駆けたお披露目会には、地域住民や
二戸地方振興局の職員ら10人が出席。
同校から、生徒代表の佐々木翼くんと水戸保弘教諭が参加。

つみれは、ふわふわの食感、ヅケ焼きは生臭みがなく、
頭と尾以外はすべて食べられるとあって、出席者らからは大好評。
「おいしいから食べられた」と完食も目立った。

メニュー説明にあたった佐々木くんは、
「海のものを食べる機会が少ないところなので、
とてもいい定食だと思う」と笑顔。手応えを感じていた。

カフェでは、お披露目会での反応やスタッフによる検討の末、
「定食を定着させたい」として、500円台の価格で
今週中をメドに提供開始の予定。
100食余りの限定になるが、次は同校の新巻きザケなどを使った
「サケ定食」も考案中。

山舘代表は、「魚メニューが充実していなかったので、
今後も高田高校の協力を得て旬のメニューを提供していきたい。
低価格での提供をきっかけに、人が人を呼ぶ形になれば」

結カフェは日曜、祝日を除く午前10時から午後6時まで営業。
住所は、一戸町中山字大塚116の2、
問い合わせ先は℡0195・35・2882。

http://www.tohkaishimpo.com/

縮減の波紋:/上 「自己負担」選手に重く 「体育」と「文化」の差?

(毎日 12月4日)

政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で、
JOCに対する27億1400万円の選手強化事業費など、
民間スポーツへの補助金32億9200万円は、
「縮減が妥当」と判定。
12年ロンドン五輪への影響を危惧するJOCや、
強化の最前線にいるアスリートたちに広がる波紋を追った。

アーチェリー界の大ベテラン、47歳の山本博(日体大女短大教)
には、若いころの苦い思い出が。
初めての海外遠征で自宅に届いたのは、35万円の振込用紙。
遠征にかかる自己負担金。

04年、アテネ五輪で銀メダルを獲得、
今も「自己負担」がなくなったわけではない。
「団体でメダルを獲得した今年の世界選手権も、
韓国までの5万円の負担金。
21年連れ添っている妻に、五輪選考会に出るたびに
頭を下げて参加しないといけない。
ほかの国の選手たちに話すと、びっくりする」と内情。

全日本アーチェリー連盟によると、以前よりは負担が減ったものの、
選手たちは五輪出場権を得るまでの海外遠征に関しては、
欧米遠征なら15万円程度の自己負担。

島田晴男・事務局長は、「観客動員力がないマイナースポーツは、
スポンサーもつきにくいので、どこも台所事情は苦しい

事業仕分けでは、仕分け人がボブスレーとリュージュの
名前を挙げ、マイナー競技に補助することを疑問視。
補助しても成果が期待できない、というニュアンス。

日本ボブスレー・リュージュ連盟の担当者によると、
そりの輸送費に多額の費用がかかり、各選手は
年間100万円近い負担。
補助金の有無は、国際舞台への参加に大きく影響。

JOCは、昨年の北京五輪までの1年間に各国が投じた
選手強化費を調べた。
ドイツ274億円、米国165億円、英国120億円、中国120億円。
日本は27億円。

JOC幹部は、「日本では、『体育』という教育の一環として
発展してきたスポーツが、欧米では文化であり、
国民の福利厚生ととらえられている。
健康増進、医療費削減の面からも重視されている」

16年五輪招致で予算拡充を狙ったJOCにとって、
招致失敗に続く予算縮減は悪夢に違いない。
JOCの上村春樹・選手強化本部長は、
「27億は、諸外国と比べてむしろ少ない。
縮減されると、ロンドンまでの強化体制がパーになる」と苦渋。

「国際競技力向上」というアピールでは、理解を得られない日本。
スポーツ文化への認識の違いが、この問題の根底に横たわる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/12/04/20091204ddm035050057000c.html

2009年12月7日月曜日

乾電池で動く「マイクロ人工筋肉」

(日経 2009-12-04)

コピー用紙より薄いフィルムに乾電池をつなぐと、めくれ上がる。
高分子材料の新機能開拓と応用研究を手掛ける
イーメックス(瀬和信吾社長)は、モーターも歯車も無くても
動く樹脂フィルムを開発。
駆動装置の新しい動力源として、カメラ用オートフォーカスなどへの
利用を目指している。

開発したのは、広さが最大A4サイズ、厚さが最小25マイクロメートルの
一見、何の変哲も無いフィルム。
乾電池2本(3ボルト)から引き出した配線が、
両面に触れると生き物のように動く。
サンプルとして幅5ミリメートル、長さ2センチメートルに切り取った
付せん形のフィルムは、電圧の向きをスイッチで周期的で
切り替えると、魚のヒレのようになる。

「なぜ動くのか」、「何に使うのか」。
動く仕組みはややこしいので後回しにし、
まずは同社が考えている使い道から紹介。

「実は、既に携帯電話の部品メーカーとオートフォーカス(AF)
モジュールを試作した」と、フィルム開発を担当した一人の
伊東謙吾研究員。
現在の携帯電話用デジタルカメラには、AFモジュールに
スピーカーの原理を応用したボイスコイルモーターと呼ぶ
駆動装置が組み込まれている。
磁力でコイルを振動。

コイルに代えて、新開発のフィルムを使ったことで、
AFモジュールの構造をさらに単純に。
同程度の性能が得られた。
「AFモジュールの価格を、3分の1以下にできるのでは」と、
伊東研究員は予想。
「AFより大きく動かすズームレンズにも挑戦したい」(伊東研究員)

では、どうしてこんな薄いフィルムが乾電池で動くのか?
フィルムの断面を見ると、樹脂の上下を厚さが
約10分の1の金の皮膜が覆っている。
皮膜で挟まれた部分に動くミソがある。
ここは、フッ素系イオン交換樹脂の中に、
4級アンモニウム塩とリチウムの陽イオンが溶けた
ポリエチレングリコール(PEG)が染み込んでいる。

両面の金被膜に電極をつなぐ。
電圧を与えると、負極側に陽イオンが移動する。
それに引きずられて、溶媒のPEGも動く。
負極側のPEGの分量が増えて膨張するので、
フィルムは正極側に曲がる仕組み。

電気化学の基本的な原理を利用しているだけなので、
中高生でも作れるように思える。
「専用の電解液の開発、金皮膜の作り方、電気に対する
感度を高めるなど、ここまで足かけ5年かかった」と伊東研究員。

フィルムは量産も可能。
広幅にして、連続生産してロール状にする。
厚さや感度など別に反物のように棚に入れ、
「10尺ちょうだい」といった注文に応じられるようになる。
精密な切断技術を使えば、幅が1ミリメートル以下の糸状や、
複雑な形にも加工できる。
工夫によっていろんなものを動かせる。

伊東研究員らは、このフィルムを「マイクロ人工筋肉」と呼ぶ。
人体に直接埋め込むことは難しいが、手術用機器には使える。
フィルムを積層すれば力は増すので、
介護用のパワーアシストや医療以外への応用も期待。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec091202.html

考えるだけで義手動かす 伊など研究チームが成功

(2009年12月4日 共同通信社)

イタリアのカンプス・ビオメディコ研究所などの
国際研究チームは、前腕が切断された人の残された腕の
神経に手術で電極を差し込み、精巧な機械式の義手と結び、
考えただけで義手を動かすことに成功。

義手の5本の指を自由に動かし物をつかむことに成功、
被験者は物をつかんでいるとの感覚も感じた。
同様の実験はこれまでにも行われたが、
これほど複雑な指の動きを実現できたのは初めて。

被験者のイタリア人男性(26)は、3年前の自動車事故で左腕を切断。
実験は約1カ月間行われ、男性は実験開始数日後にはこつを覚え、
全体の95%で考えた通りに義手を動かせた。

今後2、3年のうちに、電極を差し込んで義手を動かす期間を
長期化し、考えるだけで動かせる義手の実用化にめどを付けたい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/4/112530/

火の玉野球“殿堂入り” 甲子園にユニホーム大高S59センバツ旋風評価

(東海新報 12月2日)

昭和59年春のセンバツ甲子園で初出場ながら
ベスト4進出を果たし、〝火の玉野球〟と称された戦いぶりで
全国に衝撃と感動を与えた大船渡高校。

その活躍が、長い高校野球の歴史の中でも際立っていたと、
当時のユニホームなどが、来年阪神甲子園球場にオープンする
甲子園歴史館の「高校野球の歴史」コーナーで展示。

全国各校を網羅した常設展施設はこれまでになく、
〝高校野球の殿堂〟への仲間入りに、
地元関係者は喜びに沸いている。

同館は、甲子園球場全面改装の一環として、
来年3月にオープン予定。
同球場外野スタンド下に、約1200平方㍍の展示面積を持つ
施設として建設、「高校野球の歴史」、「阪神タイガースの歴史」
などの各コーナーが設けられる。

「高校野球の歴史」コーナーは、
▽甲子園での名勝負、名場面、
▽高校野球の歴史、
▽著名な選手―などのブースで構成、
それぞれを当時の映像や写真、貴重な品々を交えて紹介。

『旋風校コーナー』として、各大会で優勝は果たせなかったものの
大きなインパクトを残したチームの活躍を紹介するブースも設営。
〝火の玉〟旋風を巻き起こした大船渡高の史料も、
ここに展示される予定。

史料は、同館が全国の約150校に寄贈、寄託を呼びかけ、
300点ほど収蔵される予定。

本県では大船渡高と、今年の春夏甲子園で活躍した
花巻東高の二校が提供を依頼。

大船渡高が提供するユニホーム上下、ストッキング、帽子などは、
甲子園出場当時の監督だった佐藤隆衛さん(68)が
保管していた自身のもの。
当時製作された記念誌も提供。

佐藤元監督は、「選ばれたのは光栄で、歴史館にも
ぜひ足を運んでみたい。
大船渡のユニホームは、甲子園出場前からほとんど変わっていない
伝統あるもので、同じユニホームが展示されていることを、
今の選手が名誉に思ってくれたらうれしい」と喜ぶ。

先輩の活躍の殿堂入りに、現役部員も感慨深げ。
金野和希くん(1年)は、「先輩たちが輝かしい歴史を
作ってくれたおかげ。自分たちも引き継いでいきたい」
日頃市中出身の新沼鉄平くん(同)は、
「父も隆衛先生の教え子だし、地元の方のユニホームが
飾られるのは縁を感じる。自分も励みにしたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

2009年12月6日日曜日

ネットに潜む20代消費の鉱脈

(日経 2009-11-28)

消費市場で、20代は「沈黙の世代」というレッテルをはられ、
期待感は薄い。
20代の消費行動を追うと、消費の構造変化につながるような
異状が見えてくる。

消費不振は、深刻さを増している。
クレジットカードのショッピング取扱高は、2009年5月以降、
5カ月連続で前年同月の実績を下回った。
決済市場では、一貫してキャッシュレス比率が高まり、
マイナスが続くのはかつてなかった。

不振が目立つのは、百貨店・スーパー。
景況の影響が増幅して出やすい飲食店の落ち込みが顕著。
「その他」とひとくくりにされている利用の中に、
成長分野が隠れている。

「通信販売」と「公共料金」。
この2項目の取扱高を支えているのが、20~30代男女。
クレジットカード業界は最近、この変化に着目。

公共料金は、クレジットカードで決済する習慣が
若い世代に普及したという背景。
携帯電話の利用料の支払いを、コンビニエンスストアや
携帯電話ショップからクレジットカードに切り替えるだけで、
1人当たり10万円以上、取扱高を底上げ。

通信販売は、消費の構造変化の一端につながっている。
20代向け限定のカード発行を始めたJCBによると、
インターネット通販で若年層が他の世代に比べ、
突出して多く利用するのは、ファッション関連と音楽関連。

新カード発行のため、数年かけて20代の消費行動を分析した
同社によると、20代は「興味がある分野にだけは、
案外、カネをつぎ込む」。

アンケート結果とカード利用の場所などを合わせて分析すると、
「店で見て、ネットで買う」という行動がファッション分野で定着。
若者に人気のファッションブランドでは、
ショールームのような店を1、2店構えて、
売り上げ構成は「ZOZOタウン」などネット上のファッションモールに
出した店に依存する、という売り方。

20代は、リアル店舗ではあまり買い物をしないし、
ブランドの知名度にはこだわらない。
「支出意欲が乏しい」というのは誤解かもしれない。
10万円を超える靴や5万円を超える服であっても、
気に入れば買っている。
買いたくて我慢しているものもたくさんある。

消費意識の機微は、主要統計からは漏れがち。
彼らの消費意識を分かりにくくしている要因として、
必ずしも新品にこだわらないこと。
ネット上では、ショップの商品もオークションへの出品も、
それほど分け隔てなく見比べる。

デザインや値段に比べ、新品か中古品かはたいした要素ではない。
リアルの世界でも、「ハンジロー」などの古着専門店が
意外なほど若い男女の関心を呼んでいる。

正社員の若者でさえ、雇用不安を口にする環境だけに、
20代に消費の爆発力があるわけではない。
好奇心や価値観をそれなりに持っていて、消費もしている。
実像が見えにくいのは、供給側が提供し得ていない領域で、
彼らが消費行動をしているせい。

ネット上にみられる多品種少量流通と中古品流通。
この領域を「ゲリラ戦」と見下していたら、
貴重な消費鉱脈を見逃してしまいかねない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo091127.html

車いすラグビーで取り戻した自信と希望 脊椎損傷の米青年

(CNN 11月23日)

コートの中をボールが素早く移動し、激しい声が飛び交う。
試合に臨む選手たちの表情は、真剣そのもの。
引き締まった肩が、日ごろの鍛錬の成果を物語っている。

タルボット・ケネディさん(24)は、強豪チーム
「スマッシュ・ラグビー」のリーダーの1人。
チームメートとともに、車いすを鮮やかに操ってボールを追う。

ウィルチェアーラグビー(車いすラグビー)は、手足にまひなどの
障害を持つ選手によるスポーツで、パラリンピックの公式種目。
スマッシュ・ラグビーは、ジョージア州アトランタの
リハビリテーション病院、シェパードセンターで結成されたチーム。
週に数回、夜間に集まって練習し、全米トーナメントにも出場。

ケネディさんが、車いすで生活するようになったのは、
高校卒業を目前にした時期。
男子チアリーディングの競技で活躍し、奨学金で大学へ
進むことも決まっていたケネディさんは、卒業式の直前、
チア練習場のトランポリンで、友人をまねて
慣れない技に挑戦、頭から転落。
脊椎損傷で、胸から下がまひする重傷。
進学の夢は消え、「この先、自立した生活ができるのか。
やりたかったことができるようになるのか」と途方に暮れた。

将来に希望が持てないまま、シェパードセンターで
リハビリに取り組んでいた3年前のある日、
ケネディさんは車いすラグビーの試合を目に。
全力で動き回り、ぶつかり合う選手たちの姿に勇気がわいた。

チームの選手は、それぞれ前向きな生活を送っていた。
一人暮らしや結婚生活、子育てを実現させているメンバーも。
「スポーツはもともと好きだったし、自分と同じ境遇の仲間と
一緒に過ごすだけで、明るい気持ちになれた。
チームは、いまや第二の家族のようなもの」

チームのコーチを務める作業療法士のエミー・ボーンさんは、
「自分がひとりではないと感じ、仲間のたくましさを
見ることによって希望が生まれる。
体が鍛えられることで、自立した日常生活も可能になる」
「車いすラグビーを通し、選手たちは新たな人生に
足を踏み出すことができるようになる」

ケネディさんは現在、一人で生活しながら、
体育教育の学位取得を目指して大学へ通う。
「車いすラグビーと出会わなければ、今の自分はなかった」――
そう語る笑顔は、スポーツマンとしての自信に満ちていた。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200911230016.html

沿岸南部クリーンセンター 7億円の負担減へ新制度適用目指す

(東海新報 12月1日)

気仙三市町と釜石市、大槌町の廃棄物処理を担う
岩手沿岸南部広域環境組合議会定例会が開かれ、
20年度決算などが認定。

来年度内の完成を目指す岩手沿岸南部クリーンセンターの
整備状況が示され、建設に伴う各市町負担を
合計7億円程度削減するよう調整を進めている。

議会には構成議員に加え、組合事務局や各市町関係者ら
約30人が出席。
管理者の野田武則釜石市長は、5月から本格着工となっている
クリーンセンターの進捗状況を報告。

クリーンセンターの建設場所は、釜石市平田地内で稼働している
「岩手オートリサイクルセンター」付近の約2万1000平方㍍。
基礎工事が完了、現在は鉄骨の立ち上げと一部外壁の
取り付けに着手し、年内には一部機械も搬入される予定。
野田市長は、「これといった問題もなく、工事は進んでいる」。
従来の予定通り、22年内の工事終了を予定。
試運転を経て、23年3月までの本稼働を目指している。

高効率発電施設を対象に、今年度から新たに国からの
交付税率が引き上げられる制度が設けられた。
制度適用に向け、現在県や環境省と協議を進めている。

センター建設費は約100億円、五市町の負担額は約70億円。
負担割合は、各市町からの処理量などによって算出。
長期的な効率性を目的として進められている事業だが、
整備による各市町の財政負担の影響が建設前から注視。
交付税引き上げが適用となった場合、各市町の
財政負担軽減額は、合わせて約7億円の見込み。

野田市長は、「環境省からは、一部事業の見直しを行えば、
基本的には適用できるのではないか」と報告。
厳しい財政状況の中、構成市町の財政負担軽減に
つながることから、今後は適用に向け、一部設計変更を含めた
見直しを行う方針。

この日提出された議案は、組合条例の一部改正と
20年度決算認定など。
いずれも原案通り可決、承認。

20年度の歳入は、5億4624万円、歳出は5億4471万円、
実質収支額は153万円の黒字。
歳出の大半は工事請負費、監理業務委託料。
組合条例の一部改正は、各市町村と同様、県人事委員会の
勧告に基づき、期末手当などの削減を盛り込み。

http://www.tohkaishimpo.com/