2009年12月8日火曜日

縮減の波紋:/上 「自己負担」選手に重く 「体育」と「文化」の差?

(毎日 12月4日)

政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で、
JOCに対する27億1400万円の選手強化事業費など、
民間スポーツへの補助金32億9200万円は、
「縮減が妥当」と判定。
12年ロンドン五輪への影響を危惧するJOCや、
強化の最前線にいるアスリートたちに広がる波紋を追った。

アーチェリー界の大ベテラン、47歳の山本博(日体大女短大教)
には、若いころの苦い思い出が。
初めての海外遠征で自宅に届いたのは、35万円の振込用紙。
遠征にかかる自己負担金。

04年、アテネ五輪で銀メダルを獲得、
今も「自己負担」がなくなったわけではない。
「団体でメダルを獲得した今年の世界選手権も、
韓国までの5万円の負担金。
21年連れ添っている妻に、五輪選考会に出るたびに
頭を下げて参加しないといけない。
ほかの国の選手たちに話すと、びっくりする」と内情。

全日本アーチェリー連盟によると、以前よりは負担が減ったものの、
選手たちは五輪出場権を得るまでの海外遠征に関しては、
欧米遠征なら15万円程度の自己負担。

島田晴男・事務局長は、「観客動員力がないマイナースポーツは、
スポンサーもつきにくいので、どこも台所事情は苦しい

事業仕分けでは、仕分け人がボブスレーとリュージュの
名前を挙げ、マイナー競技に補助することを疑問視。
補助しても成果が期待できない、というニュアンス。

日本ボブスレー・リュージュ連盟の担当者によると、
そりの輸送費に多額の費用がかかり、各選手は
年間100万円近い負担。
補助金の有無は、国際舞台への参加に大きく影響。

JOCは、昨年の北京五輪までの1年間に各国が投じた
選手強化費を調べた。
ドイツ274億円、米国165億円、英国120億円、中国120億円。
日本は27億円。

JOC幹部は、「日本では、『体育』という教育の一環として
発展してきたスポーツが、欧米では文化であり、
国民の福利厚生ととらえられている。
健康増進、医療費削減の面からも重視されている」

16年五輪招致で予算拡充を狙ったJOCにとって、
招致失敗に続く予算縮減は悪夢に違いない。
JOCの上村春樹・選手強化本部長は、
「27億は、諸外国と比べてむしろ少ない。
縮減されると、ロンドンまでの強化体制がパーになる」と苦渋。

「国際競技力向上」というアピールでは、理解を得られない日本。
スポーツ文化への認識の違いが、この問題の根底に横たわる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/12/04/20091204ddm035050057000c.html

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