2010年9月25日土曜日

「老」に定義なし 目指せ“好”齢者 特集ワイド

(2010年9月14日 毎日新聞社)

20日は「敬老の日」。
お年寄りを敬い大切にする日だが、高齢者の所在不明も問題に。
「老」の字に抵抗を覚える向きもあるが、
そもそも老いるとはどういうことだろう?

◇生物学的には学者の数だけ説 「規格」は今や崩壊

「敬老の日」の発祥の地は、兵庫県野間谷村(現・多可町)。
1947年、当時の門脇政夫村長が、
「日ごろの苦労を癒やしてもらい、お年寄りの知恵を大切に、
村づくりをしていこう」と、農閑期の9月15日に、
村主催の敬老会を催し、「としよりの日」としたのが始まり。

その後、門脇村長らの働きかけで66年、
「敬老の日」として国民の祝日に。
ハッピーマンデー法により03年から、9月第3月曜日に。

「敬老」に、抵抗感を抱く人もいる。
知人の女性(64)は、孫の運動会で敬老席に案内され、
「おばあちゃん扱い」と怒った。
野間谷村での最初の敬老会に招待されたのは、55歳以上。

世界保健機関(WHO)の定義では、高齢者とは65歳以上。
昨日まで64歳だったのに、誕生日を迎えた今日から
「高齢者=老人」と言われても、ピンとこない。
生物学的な「高齢者」の定義はあるのか?

創薬研究を行っているジーンケア研究所元副所長で、
「細胞寿命を乗り越える」(岩波科学ライブラリー)などの著書がある
サイエンスライターの杉本正信さんによると、
「老いとは、加齢とともに、特に生殖期以降、
肉体的、精神的に衰えること」。

杉本さんは老いの原因について、「細胞の機能の衰え」を挙げる。
私たちは生きている間、細胞分裂を繰り返している。
分裂するたびに、テロメアと呼ばれる染色体の端部分が短くなり、
ある長さに近づくと細胞は分裂できなくなり、やがては死ぬ。

この危機的状況をうまく利用して、がん細胞に移行するものも。
高齢者にがんが多いのは、その確率が高い。

「なぜ老化するのかは、学者の数だけ学説がある」、
東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム
研究部長の田中雅嗣さんは、「細胞の老化には、
ミトコンドリアが関係している」という説。

「テロメアは、酸化的ストレスで短くなる。
その酸化的ストレスの大本が、ミトコンドリアだ」

ミトコンドリアは、細胞内の小器官の一つで、酸素を使い
体内のエネルギー通貨と呼ばれる物質アデノシン三リン酸(ATP)を
つくり出すため、ミトコンドリアからは酸素がもれやすくなる。
もれた酸素が、鉄と結びつき活性酸素となり、
細胞のたんぱく質や脂質、テロメアを攻撃する。

「細胞にさびができるようなもの。
女性は、貧血気味で体内の鉄分が少なく、酸化的ストレスも少ないので、
男性の方が老化が早い、とも言われる」

人が老い始めることについて、杉本さんは、
「閉経が老化への大きな節目」。
閉経は女性だけだが、「生殖を終えた後」という解釈で、
男女ともに45~50歳から老化が始まる。

「昔は、老化という考えはなかった。
野生動物は、肉体的に衰えれば命を落としやすくなる。
老化する暇もなく、死に至る。
人間も同じ。
老化は、文明の進歩によって、クローズアップされてきた問題」

田中さんも、「遺伝子的に考えれば、生物は次の世代を残せば、
個体としては消えてなくなってもいい。
生殖をしなくなってからの期間(後生殖期)が長いのが、人間の特徴」

それはなぜか?
「おばあちゃん仮説」というのがある。

子育て期間が長いヒトの場合、娘が出産の際に死んでも、
おばあちゃんが健在であれば、孫を育てられる。
長老の知恵により、群れ全体の生存が可能になる。
こうして子孫の繁栄に貢献するため、
長寿の遺伝子が選択されたという考え。

田中さんは、「老化現象が表れてくる60歳ぐらいまでは、
遺伝子の『保証期間』。
その後の『保証期間外』を、いかに上手に生きるかが老後」

◇定年後の10年は「黄金」--作家・堺屋太一さん

「江戸時代には、『老』という言葉は非常にいい意味だった」、
作家で元経済企画庁長官の堺屋太一さん(75)。
江戸時代には、「年寄」、「老中」、「大老」、「老女」などは
若くても偉い人に付けられたし、中国語の「老(ラオ)」、
英語の「old」も同じく良い意味を持っていた。
「好老社会」だったのだ。

戦後の高度経済成長で、規格大量生産の近代工業社会となり、
「好若嫌老社会」に。
「経験や思考よりも、新しい技術を吸収する学習能力や、
みんなと同じことが素早くできる身体能力が大切にされるように」

工業製品ばかりか、街も、教育も医療も規格化。
人間の人生も規格化され、教育を経ると、終身雇用の職場に勤め
貯金をして結婚。
2人の子どもをもうけて、マイホームを建てる。
60歳で定年退職したら、5年くらいで『老人』。
これは、規格大量生産を効率的にするために官僚が決めたこと。

今は、近代工業社会が崩壊しつつある。
老人であるか否かは、自分で決めればよい。
敬老の日は、自分を老人だと思う人が敬ってもらえばいい」

定年退職後の10年間を、「黄金の10年」と呼ぶ。
「世間の目を気にせず、好きなことを見つけて打ち込める。
10年かけて修業すれば、その分野での名物人材になれる。
70歳以降、趣味の仲間の長老的存在となり、
豊かな時を過ごすことができる」

「今の日本は、近代工業社会から『知価』社会へ移行する
苦しみの中にある」と堺屋さん。
知価社会とは、情報や芸能、サービスなど物を作らない
産業を重視する社会。
職種や能力により、40代で盛りを過ぎる人がいる一方、
70~80代になっても職種や趣味によっては現役でいられる人も。

47~49年生まれの世代が、間もなく65歳。
この世代を、「団塊世代」と名付けたのは堺屋さん。
圧倒的な数の力を持つ世代だからこそ、
今後も新しい時代を開拓する力を秘めている。

「これまで子ども向けの産業はあっても、高齢者向けはほとんどない。
団塊世代が好きなことをすれば、それがマーケットとなり、
供給も拡大する。
近代工業社会から脱し、子孫に『好老社会』を残すのが、
これからの高齢者の権利であり、責任

高齢者には、「好齢者」として頑張ってほしい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/14/125595/

「平泉は宝」町民一つ 世界遺産へ熱い思い

(岩手日報 9月10日)

世界遺産は町民の願い-。
2011年の世界遺産登録を目指す「平泉の文化遺産」の
国際記念物遺跡会議(イコモス)による現地調査が終わった。

08年の「登録延期」から2年。
町民の間には古里平泉を見直し、歴史と文化に理解を深める
活動が続けられてきた。
登録への重要な節目に、町民それぞれの熱い思いがあふれた。

古都ひらいずみガイドの会の岩渕洋子さん(70)は、
2年前の登録延期を、「皆、登録を願っていたので、
涙が出る思いだった。登録実現は悲願」と強調。
「町の魅力を伝える喜びを、若者にも引き継ぎたい」と、
世界遺産登録後を見据え活動の充実を誓う。

藤原清衡の平和思想を形にしようと活動する平泉夢灯りの会の
代表升沢博子さん(59)も、「住民が草の根で、登録への機運を
盛り上げていきたい」と、イコモスの調査を機に思いを強くする。

世界遺産登録を願う気持ちは、子どもたちも一緒。
毛越寺周辺の環境美化や、地域の歴史に理解を深める
学習を行う平泉小
児童会長の佐々木美羽さん(6年)は、
「どうやって清衡が平泉を平和にしたか勉強し、
自分の町が好きになった。
藤原氏が眠る金色堂が好き。
今度こそ、世界遺産になってほしい」と笑みを広げる。

総合学習に、「平泉学」を取り入れる平泉中のPTA会長
菅原政俊さん(42)も、「子どもたちは、平泉学を通し、
郷土愛をはぐくんでいる。
イコモスの調査にも関心が高く、登録実現を皆、期待している」、
生徒の喜ぶ顔を思い浮かべる。

中尊寺の「不滅の法灯」に使う菜種油の奉納を目指す、
平泉なのはな会事務局長の畠山勝彦さん(45)は、
「まちづくりは、世界遺産登録の可否にかかわらず大切」と
冷静に受け止める。

「登録延期は、住民が自分たちの町の魅力に気付くきっかけに。
町民の意識は、前回調査時とは全然違う」と2年間を振り返り、
自分たちが大切にしているものが、世界遺産として
評価されることは誇りになる」と力を込める。
世界遺産の町を願う町民の心は一つ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100910_6

学習院の夏合宿(1)砂漠化の怖さ 植林で体感

(読売 9月17日)

照りつける太陽の下、靴がもぐる砂にスコップを突き刺して穴を掘る。
バケツリレーで水を注いでも、数十秒後に姿を消す水たまり。

「すぐ蒸発するので、水を注いだら、わらで周りを囲って」
民間団体「内モンゴル沙漠化防止植林の会」代表の
ボリジギン・セルゲレンさん(38)の指示に、
学生らが噴き出す汗をぬぐいつつ、耳を傾ける。

8月、学習院が中国・内モンゴル自治区で約2週間、
合宿「学習院グリーン元気プロジェクト」を行った。
その手始めが、砂漠化が進む同自治区東部、
「ホルチン沙地」での植林ボランティア。

参加した高校生2人、大学生17人、大学院生3人らの一行は、
首都・北京から空路約1時間の通遼市へ、
さらに車で2時間以上かけ、この地へやってきた。

「砂漠化で、私の村のコミュニティーは壊れた」と話す
セルゲレンさんは、同地の出身。
狩猟と放牧が生業の草原地帯で、暮らしていた。
移民急増による過剰な農地開墾などで、特に1990年代、
砂漠化が急速に進行し、家族で移転を余儀なくされた。

1年で60cmの砂が積もり、家が埋まり、湖が消滅する惨状。
2000年、植林に取り組み始めたセルゲレンさんは、
「現状を知って」と、かつての留学先で、
今は客員研究員を務める学習院に協力を求めた。

一行は、3日間、モンゴル族の現地住民や、通遼市にある
内蒙古民族大学の学生らと一緒に作業。
苗が風で飛ばされないよう、トウモロコシのわらを2m四方に植えた
「草方格」約170個を設置し、そこに乾燥地帯でも生息する
グミ科の木・サジーの苗を4本ずつ植えていく。
別の場所には、マツの苗約260本を植林。

途中で体調を崩しつつも、参加し終えた大学4年関佑子さん(22)は、
「何もなかった場所に、大勢で力を合わせてこんなにできた」
大学3年の菊池優規さん(21)は、厳しい自然の中で
無事に育つかどうかはわからないという現実に、
「こんな重労働をしても、成果が出るとは限らないとは、
地味な取り組み。遠くからの資金援助だけではわからない」

「野外学習などを通じて体力、社会性を養ってほしい」と始まった
学習院グリーン元気プロジェクトは、一昨年のロシア・サハリン、
昨年の小笠原諸島に続いて、今年が3回目。
内モンゴルで、学生たちは何をつかみ、どう成長したかを、
3回にわたって紹介する。

◆草方格

砂の移動を抑え、草や木の苗の定着を促す緑化技術の一つ。
砂地にわらなどを差し込んだ柵で囲い、中に苗を植える。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100917-OYT8T00232.htm

2010年9月24日金曜日

新食品開発にやりがい 気仙の障害者授産施設

(岩手日報 9月8日)

気仙地域の障害者授産施設の利用者が調理した新商品試食会は、
大船渡地区合同庁舎で行われた。

地元食材を利用したお菓子など、食品6品をお披露目。
参加者の反応も上々だった。
もともと工賃倍増を目的とした事業だが、
やりがいを感じる利用者の「笑顔倍増」にもつながっている。

盛岡市の食品開発プロデュース、メグミプランニングの
小野寺恵代表が指導。
大船渡市の星雲工房は、みそを使った和風菓子を開発。
ほのかに、みその香りや味も楽しめる「みそプリン」のほか、
みそパン、みそクッキーを作った。

陸前高田市のあすなろホームは、同市の「北限のユズ」を使った
シフォンケーキとクッキーを開発。
同市米崎産のワカメ粉末を練り込んだ「わかめうどん」には、
同市の八木澤商店のオリジナルめんつゆを添えるなど、
地産地消を随所に織り交ぜた。

約50人が試食。
「プリンがとろけるようでおいしい」、
「ユズの風味が効いたシフォンケーキが最高」など好評。

県のけせんチャレンジ・アップ作戦(工賃倍増支援)
モデル事業として実施。
気仙地域の月当たり平均工賃は1人約2万3千円、
来年度に2万7700円とすることを目標。

施設側から、「工賃以上に、利用者が笑顔になってうれしかった」、
「他のことにも、積極的に取り組めるようになった」との効果も報告。

小野寺代表は、「また食べたくなる味を目指した。
みんなが楽しく力を付けることが目標。
さらにバージョンアップしていきたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100908_13

スポーツ政策を考える:長田渚左・ノンフィクション作家

(毎日 9月18日)

1980年のモスクワ五輪ボイコットは、
「スポーツが政治に屈した事件」として記憶。

日本政府は、補助金打ち切りをちらつかせながら、
JOCや各競技団体に不参加の圧力をかけた。

財政的な自立を目指して、JOCは1989年、
日本体育協会から分離独立した。
今でも、JOC予算の3分の1は国庫補助。
この30年、何も変わっていないのではないかという思いが強い。

今回、文部科学省がスポーツ立国戦略をまとめた。
国とスポーツ界との関係について言えば、
文科省がこう言っているから、スポーツ界もこうしようという
関係が続くとすれば、好ましくない。

互いの関係を、もう一度確認しておく必要がある。
国は財政的な援助をするが、介入、支配はしない。
スポーツ側は、公費をもらっている以上、公共の福祉のために
貢献できることをやっていく。
立国戦略には、互いに対等であるというパートナーシップの原則を
盛り込まなければならない。
そうでないと、30年前の出来事が繰り返されてしまう。

ボイコット後、各競技団体は、社会の中でスポーツはどうあるべきか、
ということを考えて活動してきたのだろうか?
企業から支援を受ける際、税金が免除もしくは軽減されるような
取り組みをすべきだった。
税制上の優遇措置があれば、企業はもっとお金を出しやすくなるし、
国にばかり頼るようにはなっていなかった。

スポーツに対する人々の知識は増えたが、
社会におけるスポーツの地位は依然として低い。
テレビのニュースキャスターをしていたころ、
突発的な事件が起きると、スポーツニュースだけがカットされた。
政治や経済のニュースは飛ばない。
天気予報も、重要な関心事だから飛ばない。

スポーツは、高級で高尚なものになる必要はない。
ただ、もっと理解が深まってほしい。
牛乳は栄養があると言った時、疑問を持つ人はいない。
それくらいの位置に、スポーツも行きたい。

スポーツは本来、だれもが楽しめる、取っつきやすいものなのに、
いくつものハードルがある。
スポーツは、やる人がやって、やらない人はやらないでは、
大きなうねりにならない。

年間3万人が自殺するこの国で、スポーツができることは
もっとないのだろうか、と常々考えている。
生きていて苦しくなることはあるが、ジョギングをしたり、
泳いだりすると、気が紛れて、あした考えようとなる。

30年後、スポーツは変わっているのか?
トップダウンではなく、それぞれの領域を超えた横のつながりを
大事にしながら変えるんだ、という気概を持って努力していきたい。
==============
◇おさだ・なぎさ

1956年生まれ。桐朋学園大卒。
スポーツゴジラ編集長、NPO法人スポーツネットワークジャパン代表理事、
早大講師。「『北島康介』プロジェクト2008」など著書多数。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/09/18/20100918dde035070030000c.html

フロンティア:世界を変える研究者/10 奈良先端科学技術大学院大・高橋淑子さん

(毎日 9月14日)

「なんかおかしい」
細胞を離ればなれにする遺伝子「エフリン」が、
脊椎動物の背骨の形成にどう働くかを、
ニワトリの胚で観察している最中のこと。
背骨の元になる「体節」の表面にある細胞が、
滑らかな状態に変化していた。

仮説では、エフリンが体節を切り分けることは想像。
切り口を滑らかにすることは、想定外。
「細胞をビシッと切る『はさみ』の役目と、断面を滑らかにして
組織を整える『上皮化』の両方の働きがあった。びっくりした」
成果は昨年4月、米科学誌に発表。

今年5月、自然科学分野の女性研究者に贈られる「猿橋賞」を受賞。
「一般の方々も、私の研究テーマにおもしろさを感じてくださった。
基礎の研究者としては願ってもないこと」

たった1個の卵細胞が分裂し、さまざまな器官を形作って個体となる。
高橋さんは、発生の際の形作りの研究に取り組んできた。
根底には、「体の中で起きていることを直接見たい」という
強烈な好奇心がある。
それをはぐくんだのは、少女時代。
広島市の中心部で育ったが、休みになると、
祖父の住む田舎で、ひたすら野山を駆け回って遊んだ。
「水を張った田んぼに落っこちたり。
そこから自然への興味が身に着いたかも」

学生にも自らにも、「エンブリオ(英語で『胚』)の声を聴け」と
言い聞かせる。
大学時代、ワンダーフォーゲル部で活動した経験から、
「自然を征服しようと思ったらやられる」
「エンブリオは、私たちが思っている以上のことをやってくる。
すべての答えは生き物の中にあるのだから、謙虚にならないと」

今、注目しているのは、「細胞移動」。
発生の際、分裂した細胞は胚の中を移動して血管などの
器官を形作る。
08年、脊椎動物の背側で体節細胞が、最初に作られる
小さな血管に引き寄せられるように移動し、大動脈ができていく
仕組みを、世界で初めて解明。

この成果は、がん転移の解明に役立つかもしれない。
がん細胞も、神経や血管などと同様、移動(転移)する。
「医者じゃないけれど、病気の原因になる仕組みを知りたい」
研究を通して、がん治療に貢献したいと意欲。

「エンブリオの謎を見ていくと、そこには進化のロマンがある」
謎が一つ解けると、次の好奇心が頭をもたげる。
「大変なんですよ。200歳まで死ねへんなあと思って」
==============
◇たかはし・よしこ

広島県出身。京都大理学研究科博士課程修了。
専門は分子発生生物学。05年から現職。
学内のバレー部に所属。
「体を動かすとリラックスし、すこんとアイデアが出る」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/09/14/20100914ddm016040115000c.html

2010年9月23日木曜日

熱中症予防 有効だけど…スポーツ飲料 学校「ダメ」!?

(2010年9月11日 読売新聞)

熱中症予防に効果があるとされるスポーツ飲料を、
指導上の理由などから、「持ち込み禁止」とする
小中学校が少なからずある。

文部科学省も防止に有効としていて、2学期も続く猛暑で、
保護者から、「持たせたいのに」との声も上がるが、
学校の判断はまちまち。

兵庫県三田市のある小学校は、2学期が始まった
今月1日発行した保健だよりで、熱中症予防のために持ってくる
飲み物として、「水かお茶、もしくはお茶に塩を入れた水筒」を挙げた。
スポーツ飲料は不可。

熱中症予防には、水分だけでなく、塩分やミネラルの補給も必要、
文科省などが学校向けにまとめてウェブサイトで公表している
予防策の中でも、スポーツ飲料は有効な例として推奨。

同校は、「糖分を含む製品が多く、成分も様々なので」と、
飲み過ぎた場合の影響を心配、禁止したと説明。
同校に子供を通わせる母(35)は、
「炎天下で運動会の練習をするから、持たせたい。
同じ市内でもOKの学校もあるのに」と首をかしげた。

大阪市立小中学校も原則禁止。
市教委担当者は、「ジュースと同じ嗜好品で、家庭の経済事情で、
持って来られる子とそうでない子の差がついてしまう懸念がある」

兵庫県川西市立多田中では、運動会がある23日までOK。
教頭は、「健康管理面を考えると、禁止する理由がない」。

千葉県船橋市立薬円台小も、涼しくなるまで認めると決めた。
「子供の健康には細心の注意を払いたい」と校長。

文科省は一律の基準を示す予定はなく、
「自治体や各校の実情に応じて判断してもらうしかない」

教育評論家の尾木直樹・法政大教授は、
「効果は科学的に認められているのだから使えばよいのに、
ダメというのは、学校のルールを変えるのが面倒臭いだけなのでは。
どうして、もっと柔軟に考えられないのか」と疑問。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/13/125518/

学習塾は今(8)新聞、英検…独自の補習

(読売 9月16日)

「日本の食料自給率が下がった原因は何かな?」、
「自給率が低いと、どんな問題が起こるの?」

講師の様々な問いかけに、辞書を引きながら新聞を読んでいた
子どもたちが、思い思いの意見を述べている。
学習塾「京葉学舎」(千葉市)。
小学校高学年の5人が、新聞を活用した夏期の特別授業。

京葉学舎は、学校の勉強を補う補習塾。
現在、地元を中心に千葉市近隣から小学4~6年生31人が通う。
いずれも1クラス5人前後の少人数指導で、5、6年生は週2日、
国語、算数など4教科を学んでいる。
1日の授業時間は、午後5時から2時間弱と、
大手進学塾の半分程度。

近年、積極的に進めているのが、NIE(新聞活用教育)。
「言語力や読解力などの国語力は、どの教科でも必要。
その手法として、NIEに力を入れている」、皆倉宣之塾長(68)。
「中小の補習塾が生き残っていくためには、
独自色を打ち出していかなくてはならない」とも明かす。

画一化しがちな公教育には限界があり、それを補うのが
学習塾の重要な使命」、全国20余りの中小塾でつくる
塾教育研究会代表でもある皆倉塾長。
「学校での勉強に、悪影響を及ぼしかねない行き過ぎた受験指導は、
本来あるべき塾の役目を逸脱している」と批判。

補習塾として英語教育を取り入れているのが、
朝日学習館(川口市)。
小学1~6年生65人の塾生のうち、全学年から計40人が
国語、算数に加え、英語の授業を受けている。
英検受験指導も行い、5~6年生時点で半数が同4級に合格。

「補習に加え、将来必ず役立つ英語力を早い段階から磨く場を
提供することが、塾のカラーを鮮明に」と、梶原賢治塾長(60)。
「地域の小学校に、指導のノウハウを提供するなど連携していきたいが、
公教育側からの歩み寄りがなく、なかなか難しいのが現状」

中学受験人気を背景に、大手進学塾が注目を集める中、
中小の補習塾の模索が続いている。

◆メモ

全国学習塾協会によると、子どもの塾通いは1970年代前半に
目立つようになったが、当時は地元にある中小の補習塾が中心。
80年代、校内暴力やいじめ問題による公立校不信と
私立中学受験熱の高まりなどを背景に、進学塾が勢力を伸ばし始めた。
進学塾は、その後もゆとり教育への不安などを追い風に、
事業の拡大が続いた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100916-OYT8T00217.htm

脳には学習・運動が不可欠…ホルモンを取り込み

(読売 9月11日)

細胞の成長や保護に重要な栄養素となるホルモンが、
脳の活動が活発な部分だけに血液中から取り込まれることを、
征矢英昭・筑波大教授と西島壮・首都大学東京助教らの
グループが発見。

脳機能を維持するのに、学習や運動などが不可欠であることを
実証したもので、将来、認知症予防など脳を健康に保つための
プログラム開発につながると期待。
科学誌ニューロン最新号に掲載。

グループは、筋肉の新生や機能の維持に重要な役割を持つ
ホルモン「IGF―1」が、脳神経にも作用することに注目。

血管と脳の間には、「血液脳関門」という関所があり、
このホルモンが脳に取り込まれる仕組みは謎。

ラットの実験で、ヒゲを刺激すると、神経活動が活発になる
脳の部分だけに、血中からIGF―1が移動することを確認。
神経活動が高まり、脳の血流量が増えることが引き金となり、
特殊な酵素がIGF―1の分子を小さくして、
脳の関所を通りやすくすることも突き止めた。

征矢教授は、「脳の神経活動そのものが強力な栄養素を取り込み、
さらに脳機能が強化される好循環を生む」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100911-OYT1T00322.htm

2010年9月22日水曜日

学習塾は今(7)「熱血」長時間みっちり

(読売 9月15日)

「過酷な受験勉強を乗り越えた者だけが、
灘中合格を勝ち取るんや。絶対にあきらめたらあかんぞ」

中学進学塾「希学園」十三本部教室(大阪市)で行われた
「プレ灘中入試」。
試験終了後の集会で、「克己」と記された鉢巻きを巻いた講師らが
大きな声で檄を飛ばすと、塾生たちの表情に闘志がみなぎってきた。

関西を中心に、14教室を展開する希学園は、
関西の私立の名門・灘中学をはじめ、難関校に高い合格実績を誇る。
プレ灘中入試は、小学6年生を対象に、毎年3回実施。
緊張する入試で全力を出し切るための重要な訓練と位置づけ、
時間割も問題形式も本番と同じ。
「合格」発表も行われる。

「日ごろの受験勉強はもちろん、試験当日まで、長く深い付き合いの中で
叱咤激励しながら、塾生たちの成長を見届けている」、
灘中コース統括責任者の鳥居輝良講師(39)。

指導の最大の特徴は、自習時間をカリキュラムに組み入れ、
家庭学習にあたる時間を塾で設けている点。
このため、拘束時間が長く、小学6年生の場合、多くは週6日通い、
平日は午後5時過ぎから4~5時間(うち自習1~2時間)、
日曜日は午前9時から約11時間(同約5時間)を塾で過ごしている。

黒田耕平学園長(35)は、「中学受験は、子どもにとって
プレッシャーが大きいが、自ら学ぶ自主性や精神面のケアも含めて、
家庭学習よりも塾で面倒を見るほうが効率的」と狙い。

スローガンは「克己」。
自身の欲望や怠け心に打ち勝ち、入試で力を発揮するためにも、
塾での長時間学習は欠かせない。

「塾で勉強するほうが集中できるし、自習時間も先生が
質問に対応してくれるので、受験に向けて自信がついた。
仲間と刺激し合えるのもいい」、
プレ灘中入試で「合格」した井上怜音君(12)。
母親(42)も、「塾にいる時間があまりに長くて最初は心配したが、
息子がどんどん学力を伸ばしていく姿を目の当たりにして、
希学園に任せてよかったと思う」

希学園は、04年に東京に進出。
09年までに、横浜を含めて3教室に増やした。
関西で中学受験者数の減少傾向が顕著な中、塾関係者には、
希学園の首都圏進出を新たな需要開拓と見る向きもあるが、
黒田学園長は、「首都圏でも、『希流』熱血指導へのニーズは高く、
手ごたえを感じている」と力を込めている。

◆メモ

日能研関西進学情報室によると、近畿2府4県の統一入試日の
中学受験者数を、小学6年生の人数で割った受験率
(国立、公立中高一貫校を除く)は、04年をピークに横ばい状態、
08年から減少、今年は9.52%(前年比0.58ポイント減)。
背景には、不況のほか、一部の私立中が付属小学校の開校で、
募集定員を減らしたことなどがある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100915-OYT8T00174.htm

三陸沖の海水温、高いと猛暑…予測精度向上

(読売 9月17日)

太平洋の三陸沖を中心とした海域で、6月以降の海水温が高いと、
日本が猛暑になりやすいことを、
海洋研究開発機構の中村元隆・主任研究員らが突き止めた。

猛暑になった今年も、6月上旬から海水温が高かった。
海水温の異常は、6月ごろから現れるため、
猛暑や冷夏を2か月前に予測する精度の向上に役立ちそう。

研究チームは、1957年から45年間の海水温のデータを分析。
三陸沖から北海道東方沖の数千キロ・メートルの帯状の海域で、
夏の海水温が平年より高い年は猛暑になる傾向があった。

高い海水温が大気の状態を変えた結果、
日本上空の偏西風の流れが北側にずれ、暖かい南風が
入り込みやすくなっていた。
海水温が低い年は、偏西風が南側にずれるため、
冷夏になることが多かった。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100917-OYT1T00006.htm

ハンドブック がんと働くコツ 経験者らがまとめる

(2010年9月10日 毎日新聞社)

「会社には、自分ができること、できないことを明確に伝えよう」--。
がん経験者が、職場で働き続けるコツをまとめたハンドブック
「がんと一緒に働こう!」(発行・合同出版)が出版。

がん患者の就労は、患者の3割が失職に追い込まれるほど深刻。
がん経験者ら32人が筆者となり、
同僚とのコミュニケーション方法などを紹介。

本をまとめたのは、がん経験者らのグループ
「CSR(キャンサー・サバイバーズ・リクルーティング)プロジェクト」。

グループ代表の桜井なおみさん(43)は、会社員だった04年、
乳がんを発症。
いったん復職したが、手術の後遺症や居づらさを感じ始めて、
06年に転職を余儀なくされた。

東京大学医療政策人材養成講座に参加し、
がん患者の就労状況を調査したところ、
仕事継続を願うがん経験者の3割が失職している実態が判明。
患者仲間らとCSRプロジェクトを結成し、解決策を探り始めた。
今回のハンドブックもその一環。

執筆者32人の大半はがん経験者で、企業の人事担当や
社会保険労務士もいる。
働く権利、治療で利用できる休職制度、解雇時の相談先なども盛り込み、
解決の具体策をイラスト入りでまとめた。
同僚にどこまで告げるか、本では「最初から話しておいた方が互いのため。
秘密は、自分を不自由にする」と勧めている。

桜井さんは、各地のがん啓発セミナーで、本を紹介する日々。
神戸市であったセミナーでは、医療関係者から意見も聞かれた。
ある女性看護師は、「医師や看護師は、患者が退院後にどうなるのか、
情報を持っていないし、そういう教育も受けていない

桜井さんは、「仕事に復帰しようにも、受け皿がないのが現実。
患者だけでなく、医療や企業の人にも読んでもらい、実態を知ってほしい」

◇診断後失職3割

桜井さんが参加した東大医療政策人材養成講座実施の
「がん患者の就労・雇用実態調査」では、
治療中や治療経験のあるがん患者403人から回答。
その結果、がん体験者の76%が「がんと診断された時、
それまでの仕事を続けたいと思った」と回答。
31%にあたる95人が、診断後に解雇や退職で失職。

内訳は、解雇14人、依願退職23人、廃業8人など。
仕事を継続するうえで、がんが大きな障害になっている実態が浮き彫り。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/10/125436/

2010年9月21日火曜日

学習塾は今(6)親身・綿密 小規模の良さ

(読売 9月11日)

中学進学塾「啓進塾」の金沢文庫校をのぞくと、
小学6年の男子塾生たちが国語の問題と格闘。
「麻布や栄光では、必ず出る記述式問題。さあ、しっかり解けよ」。
講師で教務部長の高林範明さん(41)が、厳しい表情で活を入れる。

解説の時間になると、緊迫した雰囲気は一転。
高林さんは、塾生を下の名前やニックネームで呼び、
時にジョークを交えながら、問題を正確に解くコツを指導。
塾生からは、次々に質問が投げかけられていた。

啓進塾は、横浜市内に2教室だけの比較的小規模な塾だが、
栄光学園を始めとする地元神奈川の難関校だけでなく、
東京の私立の名門・麻布中学への合格実績でも知られている。
曽根嘉浩塾長(55)は、「塾生一人ひとりの性格や可能性を
講師が見極め、情熱を持ってとことん付き合う『職人型塾』。
大手塾とは違い、講師と塾生の距離がとても近い」と、
面倒見の良さを強調。

使われる教材は、ほとんどがプリント形式で、講師が毎年、
塾生の学力などに応じて作り替える。
問題作りから採点まで、すべて手作業。
授業時間外の指導は日常的に行われ、学力面だけでなく、
精神面のケアも重視する。
取材中も、授業の合間や終了後に、講師と塾生が
1対1で向き合う姿がよく見られた。

学習塾の講師は、一般的に学生アルバイトも含め、
非正社員が占める比率が高いケースが少なくないが、
同塾の講師は、全員が正社員。
塾の指導理念に沿って、講師を育てていることも特徴。

その理念とは、受験勉強を通して子どもたちの思考力や
感受性を磨き、豊かな人間性を育むこと。
これは、麻布中の教育方針と共通する点もあることから、
おのずと麻布合格に向けた指導にも力が入る。

小学4年から同塾に通う横浜市の小学6年男子(11)は、
「受験勉強にくじけそうになった時、先生が自分の経験を交えながら、
やる気を引き出してくれた。
学力も伸びたし、精神的にも強くなったように思う」

同塾の様々なこだわりは、公教育への疑問が出発点。
学校は、『教育の平等』のもとに、他人との差に気づく機会を
奪っている。
受験をきっかけに競い合うことで、子どもたちは自分を発見し、
自己を鍛える目標を見つけることができる」と曽根塾長。

◆メモ

全国学習塾協会が05年、全国の学習塾を対象に実施した調査によると、
講師に占める非正社員の比率は平均56.9%。
非正社員の内訳は、大学生が42.9%と最も多く、
主婦(15.9%)、その他兼業者(10.3%)の順。
講師の確保が難しい理由は、「勤務時間帯が遅い」、
「勤務時間が変則的」、「賃金水準が低い」などが上位。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100911-OYT8T00178.htm

地域主体で高齢社会対応を 新研究開発プログラムスタート

(サイエンスポータル 2010年9月17日)

世界でも例を見ない速さで到来した高齢社会に対応するため、
科学技術振興機構 社会技術研究開発センターが、
新たな研究開発プログラム「コミュニティで創る新しい
高齢社会のデザイン」を立ち上げた。

新プログラムの研究開発課題として、
「在宅医療を推進する地域診断標準ツールの開発」
(研究代表者:太田 秀樹・医療法人 アスムス理事長)、
「新たな高齢者の健康特性に配慮した生活指標の開発」
(同鈴木 隆雄・国立長寿医療研究センター研究所長)、
「ICTを活用した生活支援型コミュニティづくり」
(同小川 晃子・岩手県立大学社会福祉学部・地域連携本部教授)、
「セカンドライフの就労モデル開発研究」
(辻 哲夫・東京大学高齢社会総合研究機構教授)の5つ。

在宅医療に関する研究開発課題では、
在宅医療が普及している自治体と遅れている自治体を比較し、
よりよい普及の仕方を、客観・科学的に明らかにすることなどを通じ、
全国への在宅医療の普及を図る。

高齢者の生活指標に関する課題では、
新たな社会生活への対応能力、ボランティアらの社会参加など、
今後の団塊の世代を中心とした活力ある高齢社会に向けての
新たな「活動能力指標」の開発と普及を目指す。

高齢社会の対応として岩手県では、高齢者の安否と見守り情報を
家庭用電話機から発信する先駆的な取り組みが行われている。

「ICTを活用した生活支援型コミュニティづくり」では、
岩手県の取り組みを基盤として、認知レベルに応じた
安否発信方策を検討し、地域特性を生かした多様な
見守りサブセンターや休日・夜間センターの設置など、
地域の互助機能を組織化することにより、
高齢者の異変への対応や生活支援をコミュニティで行う方策を
開発し検証する。

セカンドライフの就労モデルについては、
柏市で、東京大学、柏市、UR都市機構、地域住民が一体となって、
「農」、「食」、「支援」の3つの側面から、生きがい就労ビジネスモデルを
創造し、今後特に高齢化が急速に進む都市近郊地域における
セカンドライフモデルづくりを目指す。

プログラム全体を領域する秋山 弘子・東京大学
高齢社会総合研究機構特任教授は、
「日本は世界の最長寿国で、2030年には65歳以上の人口が
総人口の3分の1になる。
世界のどの国も経験したことのない超高齢社会の課題に挑戦し、
世界に先駆けてモデルを創っていくことが急務」と、
研究開発の意義を話している。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009171.html

秋の鼻水、花粉症かも 主体は草花、河原や空き地避けて 秋の花粉症

(2010年9月10日 毎日新聞社)

「お盆過ぎから、少しずつ来院する患者さんが出始めた」
西端耳鼻咽喉科を開業する西端慎一医師。
スギ花粉が猛威をふるう春に比べ、人数は10分の1以下だが、
秋も、「くしゃみや鼻水が止まらない」症状を訴える患者が増える時期。
一部は、ブタクサやヨモギ(いずれもキク科)などの花粉による
「秋の花粉症」だ。

花粉症は、アレルギー性疾患の一種で、異物を排除しようとする
人体の免疫システムが過剰に反応するために起こる。
体内に異物が入ると、それに対応した抗体ができる。
再び同じ異物が侵入すると、抗体が反応し、ヒスタミンなどの
刺激物質が作られ、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどを引き起こす。

全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした大規模な調査によると、
08年の花粉症の有症率は29・8%、
10年前に比べると約10ポイント増。
山梨県や高知県では40%を超え、「現代の国民病」とも呼ばれる。

原因植物として、春のスギが有名だが、NPO法人「花粉情報協会」の
佐橋紀男・東邦大理学部訪問教授(植物分類形態学)によると、
日本で最初に報告された花粉症はブタクサによるもので、
宅地開発が相次いだ60年代には関東地方で大きな問題に。

ブタクサやヨモギのほか、イネ科のススキやメヒシバ、
キク科のセイタカアキノキリンソウ(セイタカアワダチソウ)、
アサ科のカナムグラなどが、秋の花粉症の原因。

佐橋さんは、「これらの草は、今夏の猛暑や日照りでかなり枯れ、
今年の秋は花粉が少ない可能性はあるが、注意は必要」

秋の花粉症は、気温が下がり出す季節の変わり目に起こるだけに、
風邪と間違われやすい。
西端さんは、「風邪の場合、2~3日すると色の付いた
粘り気のある鼻水に変わる。
水っぽい透明な鼻水が5日以上続いたり、目のかゆみを伴う場合は、
花粉症を疑った方がよい」

西端耳鼻咽喉科のスギ花粉症患者約400人を調べたところ、
1~2割程度はカモガヤ(イネ科)やブタクサなど、
夏から秋にかけて花粉を飛ばす植物の花粉にも
反応する抗体を持っていた。

やっかいな花粉症だが、最大の予防法は原因物質に近寄らないこと。
高い樹木で、遠方にまで花粉をまき散らすスギと異なり、
秋の花粉症を引き起こすのは、ブタクサやヨモギなどの草花が主。

「花の咲く位置が低く、よほどの強風でなければ、遠くまでは飛ばない。
症状のある人は、河原や空き地など、雑草の多い場所に行かないこと」。
マスクやメガネで、花粉の侵入を防ぐのも効果的。
東京都は春だけでなく、夏から秋にかけても
花粉の飛散状況を調査し、ウェブサイト
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kanho/kafun)に掲載。

治療は、基本的にスギ花粉症と同じで、悪さをするヒスタミンを抑える
抗アレルギー薬(抗ヒスタミン剤)を服用したり、
炎症を抑えるステロイド薬を鼻の穴に噴霧するといった
薬物治療が一般的。

西端さんは、「最近は、眠くならない抗ヒスタミン剤もある。
種類も多く、体質によって効き目や副作用の表れ方が違うので、
医師と相談して自分に合う薬を見つけることが大切」

レーザーで鼻の粘膜を焼いて、アレルギー反応を起こす
場所自体をなくす治療もある。
花粉が飛散する時期の前に実施しておけば、
シーズン中は薬を飲まなくても済むが、完治するわけではなく、
2年ほどで効果が薄れる。
何度もレーザー治療を受けた場合の安全性は、
まだ分かっていないことも多い。

アレルギーの原因物質(アレルゲン)を薄めて少しずつ注射し、
徐々に体を慣らして体質を変え、アレルギー反応を起こさせなくする
「減感作療法」は、今のところ唯一完治する可能性のある治療法。

花粉症患者の約3割にはこの治療法が効かず、
治療用のアレルゲンはスギやブタクサなど
種類が限られているなどの課題も。

西端さんは、「いずれの治療を選ぶにせよ、
アレルゲンを特定することが重要。
ハウスダストが原因なら、窓を開けて換気をよくすることが必要、
もし花粉症なら逆効果になる」

耳鼻科などでは、4000~5000円の自己負担による血液検査で、
アレルゲンを調べることができる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/10/125412/

2010年9月20日月曜日

学習塾は今(5)「個別」「大手」かけ持ちも

(読売 9月10日)

個別指導進学塾「トーマス」の高田馬場校。
畳3畳ほどのホワイトボード付き個室で、
塾生の小学6年男子児童(11)が、講師と1対1の授業に臨んでいた。

算数の和差算の問題に取り組む男子児童のペースに合わせ、
講師が質問に答えたり、解説したり。
男子児童は、「疑問があれば丁寧に教えてくれ、
理解してから次に進むので、力がついた」

「苦手な算数を、夏場に集中して指導し、秋から志望校対策に
移れるよう工夫した」と、カリキュラム作りを担う
教務担当の北原義文さん(39)。
首都圏1都3県に64校を展開するトーマスでは、
塾生1人に対し、講師1人の完全個別指導で、
個々の塾生に対応したカリキュラムやオリジナル教材を作成。

個別指導塾の人気が高まっている。
矢野経済研究所によると、学習塾・予備校市場全体が
縮小傾向にある中、個別指導塾は02年度に3000億円台を突破、
08年度、3690億円に。
学習塾・予備校全体(9240億円)の約4割を占める。

トーマスを運営する「リソー教育」の伊東誠専務(47)は、
「大切な時間を無駄にせず、確実に合格を目指す受験生の間で、
集団指導では難しいきめ細かな指導へのニーズが高まっている

男子児童は、小学6年春から、大手進学塾とかけ持ちで
トーマスに通っている。
「小学4年生から学んでいる大手塾では、集団指導に
十分についていけなかったり、宿題が多すぎて負担になったりして、
受験勉強に不安があった」、母親(44)。
塾のかけ持ちに否定的な大手塾には内緒。

塾生の半数は、最初からトーマスだけに通い、
3割は大手塾からの移籍組。
残る2割が、大手進学塾とのかけ持ち。

塾をかけ持ちすると、月謝などの負担が増える。
ある小学6年生の場合、トーマスが月8回(1回1時間半)で6万7000円、
大手塾が月12回(1回約3時間)5万8000円、
合計12万5000円に跳ね上がる。

通塾や授業の時間が長くなるなど、子どもの負担も相当重い。
冒頭で紹介した男子児童は、週に4日は大手塾、
残りの3日はトーマスと、毎日塾に通い、
夏も大手塾の授業がないお盆休みなどにトーマスに通うといった具合。

8月上旬に同校を訪れた際、塾生からあまり疲れは感じられなかった。
リソー教育の桑野臣紀・教務企画局次長(42)は、
個別指導で弱点を克服することで、受験勉強に臨むモチベーションを
高めている」、二つの塾に通う子どもの姿をみる。

過熱する中学受験は、ひとつの進学塾では満足できずに
かけ持ちするという新たな現象を生み出している。

◆個別指導塾

1対1の個人指導のほか、2、3人の少人数指導もある。
トーマスのような専門塾のほか、大手学習塾・予備校が
個別指導部門を併設するケースも増えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100910-OYT8T00152.htm

ミツバチ減少に関連か?体内温度センサー発見

(サイエンスポータル 2010年9月16日)

ミツバチが、温度と嫌いな物質を敏感に感じ取るセンサーを
持っていることを、名古屋大学大学院と自然科学研究機構
生理学研究所の研究者が突き止めた。

門脇辰彦・名古屋大学大学院生命農学研究科准教授と
富永真琴・自然科学研究機構 生理学研究所教授が発見した
センサーは、AmHsTRPAと呼ばれるイオンチャネルで、
ミツバチの触覚の中に見つかった。
34℃付近で、AmHsTRPAが活性化することが確かめられた。

このイオンチャネルは、遺伝子重複により
ミツバチが進化の過程で獲得したと見られる。

ミツバチは変温動物で、個体間の協調により巣箱内の温度を
常に35℃付近に保つことができる。

これによって、巣箱内の卵、幼虫、さなぎの発生や成長が保たれ、
どのようにして巣箱内外の温度を感じているのかは、
これまで分かっていなかった。

この数年、世界各地でミツバチが急激に減少する現象が見られ、
果樹栽培農家などが受粉のために購入するミツバチの価格急騰や、
ミツバチそのものが手に入りにくくなるという深刻な事態。

AmHsTRPAの働きを阻害する物質が巣箱内にたまると、
ミツバチは巣箱内の温度を感知することができなくなり、
巣箱内の温度を一定に保てなくなる結果、
卵、幼虫、さなぎが死んでしまう。

活性化する物質が巣箱内に蓄積しても、
ミツバチは巣箱を放棄してしまう可能性があることから、
AmHsTRPAの働きに影響を与える物質が、
ミツバチ減少の要因となっている可能性も考えられる。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009161.html

スマートフォンで迅速対応/脳血管疾患救急時の情報共有 慈恵医大と富士フイルムがシステム開発

(2010年9月10日 Japan Medicine(じほう))

脳卒中や脳梗塞の患者が、救急搬送されてきたとき、
専門医が病院外にいても、そのアドバイスを受けながら
院内のスタッフで素早い対応に当たりたい。

東京慈恵会医科大と富士フイルムが、iPhoneやiPadを利用した
システム開発に取り組んでいる。
来年1月をめどに、システムを完成させたい。

慈恵医大で開発に取り組んでいるのは、
脳神経外科学講座の高尾洋之医師。
脳卒中や脳梗塞など、脳血管障害を発症した患者は、
適切な薬剤投与や血管内治療を手掛ける時間が早いほど、
後遺症が軽くなる可能性が高い。

ベテランの専門医が、院内に24時間常駐する体制を整備するのは
容易ではない。
高尾氏は、院内の患者が脳血管障害だと判明した段階で、
院内外の医療スタッフに緊急事態だと伝え、
患者の診断画像や治療状況を共有できるシステムを構想。

システム名は、「i-Stroke」。
富士フイルムは、医療用画像処理などで培った技術で、
システム実現化に協力。

現在、慈恵医大病院の脳外科医、放射線科医、放射線技師ら
25人がiPhoneを持ち、一部のスタッフはiPadも所有する。
患者が脳血管障害だと分かった時点で、緊急を告げる
メッセージがiPhoneに送信され、各医療スタッフは患者の
性別、年齢のほか、脳の3次元画像、医療行為の状況、
発症後の時間などをリアルタイムで把握できる。

iPadでも、情報を知ることが可能。
専門医が院外にいても、院内スタッフに適切な指示を出しやすくなり、
医療行為を複数の目でチェックすることにもつながる。

7月中旬から試験運用を始め、9月7日までに5回の活用事例があった。
高尾医師は、運用結果に手応えを感じている。
「早急な対応ができれば、患者を救えるし、医療行為を複数が見ることで
医療スタッフ全員の責任感も高まる。
新しいメディカルインフォメーションの手段として確立させたい」と高尾医師。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/10/125427/

2010年9月19日日曜日

健診でストレスチェック うつ兆候あれば面接 企業に義務付け

(2010年9月8日 共同通信社)

企業が実施する職場の定期健康診断で、
職場に起因するストレスを調べる方法を、
厚生労働省の検討会がまとめた。

医師の問診で、うつ病の兆候を確認し、所見があれば
従業員が産業医などと面接、精神疾患が疑われる場合、専門医を受診。
近く労働政策審議会に報告し、早ければ2011年度中に
必要な法改正を目指す。

仕事のストレスが原因の精神疾患が悪化したり、自殺を防ぐのが狙い。

定期健診に併せ、「食欲がない」、「よく眠れない」、「憂うつだ」、
「イライラしている」などの質問をするよう義務付ける。
医師が問診で必要と判断した場合、本人に通知し、
従業員は産業医と面接する。
プライバシーに配慮し、事業者には症状や不調の状況を知らせない。

面接の結果、精神疾患の疑いがある時は、
産業医などが専門医を受診するよう本人に勧める。
本人が同意した場合に限り、産業医は事業者に配置転換や
時間外労働の制限、要休業などを助言、
事業者が働く環境の改善につなげる。

企業の健康診断は、労働安全衛生法で年1回の実施が義務付けられ、
血圧や肝機能など、検査する項目が規則で定められている。

「食欲がない」などの質問は、現在でも身体の不調を診るため
盛り込まれているが、ストレス反応を浮き彫りにするため、
質問項目を増やしたり、期間や重症度などを具体的に聞いたりする。

政府は、2020年までに「メンタルヘルスに関する措置を受けられる
職場の割合100%」との目標。
厚労省の07年の調査によると、仕事に関して強い不安、悩み、
ストレスがあるとする労働者の割合は約58%、
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、約34%。

厚労省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が、
自殺防止対策をまとめ、検討会で議論。

※職場の定期健康診断

労働安全衛生法は、原則として1年に最低1回、
従業員の定期健康診断を事業主に義務付け。
違反すると、50万円以下の罰金。
労働者にも受診義務はあるが、罰則はない。
身長や体重の測定、血糖検査、尿検査など実施すべき項目は、
労働安全衛生規則で定められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/8/125217/

高めが長生き、コレステロール下げなくていい?

(2010年9月8日 読売新聞)

日本脂質栄養学会が、
「コレステロール値は、高めの方が長生きで良い」とする
指針をまとめた。
これまでの常識を覆す内容だが、
コレステロールは下げなくてもいいの?

コレステロールには、LDLとHDLがある。
全身の組織に運ばれるコレステロールがLDL、
全身から回収される余分なコレステロールがHDLで、
それぞれ「悪玉」、「善玉」と呼ばれる。

生活習慣病の専門家が集まる日本動脈硬化学会は、
LDLが高すぎると、心臓病の要因になるため、
食生活の改善や薬の服用により下げるべきだ。

同学会は2007年、高脂血症(脂質異常症)と診断される
コレステロールの基準値を、男女ともLDL140(mg/dl)以上、
またはHDL40(同)未満と定めた。

基準値作りにかかわった滋賀医大の上島弘嗣・名誉教授は、
「これまで国内外の研究から、LDLが高くなるにつれ、
動脈硬化が進み、心臓病の発症率が上がることが分かっている。
心臓病を起こしやすくなるLDL140以上を、妥当と判断」

日本脂質栄養学会の指針をまとめた
富山大学和漢医薬学総合研究所の浜崎智仁教授は、
「心臓病だけでなく、がんや肺炎などすべての死亡原因を含めると、
現在の基準値の140より高い方が、死亡者が少ない」と反論。

指針では、新たな基準値を示していないが、
その根拠となる研究報告を複数紹介。

伊勢原市の男女約2万6000人を、8年間追跡した研究では、
男性はLDL100~160で死亡率が低く、100未満で上昇。
女性は、LDLによる影響は少なかったが、
120未満で死亡率が上昇。

全国の脳卒中患者1万6850人を調べた別の調査では、
高脂血症の人の方が、脳卒中による死亡率が低く、症状も軽かった。

浜崎教授は、「コレステロールは、細胞の膜やホルモンを作る
大事な成分。食事や薬で、むやみに数値を下げるのはよくない」

LDLの数値には、男女差もある。
佐賀県武雄市の田中裕幸・ニコークリニック院長(循環器科)は、
「女性は、閉経するとコレステロールが急激に上がるが、
動脈硬化の進行や心臓病の発症には影響しない。
少なくとも女性にコレステロールの基準値は必要ない」と主張。

今回の指針をきっかけに、男女の差や個人の病気のリスクに
合わせた治療が広がってほしい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/8/125234/

学習塾は今(4)公立一貫 新たなニーズ

(読売 9月9日)

「論理パズル系の問題を解くときはまず、考えを表などにする」
「栄光ゼミナール」日暮里校で行われた、「公立中高一貫校対策コース」
都立小石川中等教育学校対策ゼミ。
ストップウオッチを押す講師の合図で、塾生たちは問題に取りかかった。

小学生から高校生までが通う栄光ゼミナールが、
小学5、6年生対象の公立中高一貫校コースを、
大手進学塾で先駆けて設けたのは2004年。
都立初の公立中高一貫校の白鴎高校付属中学校が開校する
前年のことで、補習コースの塾生の保護者からの要望がきっかけ。

現在は、首都圏1都3県の全教室数の6割にあたる
約180教室で開設。
横田保美・広報室長(59)は、「新たなニーズに迅速に対応するのが
塾の役目。予想以上に希望者が多かった」

公立一貫校の開校は、これまでとは異なる中学受験層を生み出した。
中学受験情報誌「進学レーダー」の井上修編集長(43)は、
安い学費でいい教育を受けられるのならと、
受験を考えていなかった層が公立一貫校を目指すようになった。
特に首都圏では、近年の中学受験の『カジュアル化』に
拍車をかけている」と分析。

私立受験と異なり、「公立一貫校を受けるために、
塾通いをする子どもは少ない」。

栄光ゼミナールで、公立一貫コースを担当する宮田篤史講師(33)は、
「小学校で学んだ内容では、太刀打ちできない。
特別な勉強が不可欠」

公立一貫校の入学者選抜で実施される適性検査(入学試験)は、
特定の科目の知識を問う問題ではなく、読解力や数的処理力、
記述力など論理的思考力を問う傾向が強い。

各校独自の教育方針があり、出題にも特徴がある。
入試は、おおむね高倍率で、合格する確率は低い。
「身に着けた力は、中学校での学びや高校受験にも役立つと、
保護者には説明している」と、栄光ゼミナールの横田室長。

森上教育研究所の森上展安代表(57)は、
東京で初の公立一貫校の生徒が、来年大学受験を迎える。
その実績いかんで、公立一貫校全体の人気が収まる可能性もあり、
どの塾も先行きを見極めかねているようだ」

公教育の変化が、受験動向に影響をもたらし、
進学塾での指導を変えている。

◆メモ

公立中高一貫校は、1999年学校教育法改正により、
設置が認められた。
今年度、中等教育学校と併設型の公立中高一貫校を合わせて
全国に96校。
首都圏1都3県では、東京都11校、神奈川、埼玉、千葉各県に2校ずつ。
都立10校の平均受験倍率は、6.83倍。
受験競争の低年齢化を招かないよう、学力テストは行わず、
適性検査などが実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100909-OYT8T00297.htm