2008年7月26日土曜日

理科再興(7)実験工夫、物理を体感

(読売 7月16日)

物理の世界を、実験で面白く伝える教員がいる。
「ピーッ」、「パン」、「チーン」――。
千葉県柏市立手賀中学校で、1年の理科の授業は、
松丸敏和教諭(53)が笛やトライアングルを鳴らして始まった。

授業のテーマは、「音の正体はなんだろう」。
「振動?」という生徒の答えに、
「きょうは、それを実験をして確かめたいと思います」。

両手で持ったペットボトルの口に、ストローで横から息を吹いて音を出し、
ボトルの振動を手で体験する。
発泡スチロールの粒を乗せたビニールに音叉をつけ、
振動がビニールに伝わって粒がはねることを確かめる。
ワイングラスの水に、音叉を入れ、水の表面が細かく波打つ様子に驚く。
紙コップ、磁石、ラジオも登場し、授業中に音の振動を体感した実験は
9種類に上った。
音叉以外は、生活でなじみの深いものばかり。
生徒は、「小学校よりも楽しい。テストでクラスの理科の平均点は79点」。

東京の国立科学博物館に5年間務めた松丸教諭は、
博物館で市民向けに演じた科学実験をアレンジし、理科の授業で実践。
「『音は振動』と机の上で教わるのと、体感するのでは理解が違う。
実験で興味を引きつけてから、計算などの基礎学習や、
科学の用語などを身につけるように工夫」

学校を離れて、物理を体感させる工夫もある。
岩手大教育学部の八木一正教授(58)は、盛岡市の遊園地
「岩山パークランド」で毎夏、体験学習会を開く。
「遊園地は、巨大な科学実験室」がキャッチフレーズ。
今年は来月8日の予定。

小学3年以上の約200~300人の子供が参加。
学習テキストには、遊具ごとに速さや周期などを調べる
実験課題や考察が記されている。

ジェットコースターに乗った時に体が感じる力の大きさを、
ペットボトルで作った加重力の測定器を使って測ったり、
三角比を利用して観覧車の高さを測ったり。
子供たちは遊具で遊びながら、テキストの空欄の数字や言葉を埋める。
「家族と遊びながら勉強もできる。子供たちの目の輝きが違う」

振り子、円運動など、さまざまな力学の要素が登場する遊園地は、
欧米では高校生の物理学習にも使われ、
遊園地の物理学を研究する学会まである。
都内で長く高校教員を務め、物理嫌いが多い高校生に、
物理を楽しく伝える方法を考えてきた八木さんは、海外の取り組みも研究、
2001年、岩手大に移ったのを契機に、遊園地学習会を始めた。

「高校でも、実験授業が楽しくなった生徒は、自発的に勉強するようになる。
物理の面白さは、できれば10歳までに体験してほしい。
遊園地学習会も、盛岡から未来のノーベル賞学者を出す、という意気込み

「子供たちを物理嫌いにさせたくない」。
その思いの強さが、教員の情熱を支える原動力になっている。

◆実験・観察授業の環境

日本理科教育振興協会が2004年に実施した調査では、
公立小中学校2461校のうち、小学校の77%、中学校の88%が、
顕微鏡など理科設備品が十分でない。
必要なのに老朽化して使用に堪えない設備品があるという回答も、
小91%、中95%。
実験の定期的な研修をする学校は、小4%、中10%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080716-OYT8T00201.htm

アスタキサンチンの抗炎症メカニズム判明炎症を上流で断ち、 COX2の特異的な阻害も

(日経ヘルス 5月29日)

「炎症」は、腫れや痛みといった“症状”を引き起こすばかりでなく、
内臓障害やアレルギー、生活習慣病、加齢性の疾患などを引き起こす原因。
動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病が、サイトカインやエイコサノイド
といった炎症性メディエーターによって起こる「慢性の炎症」によるもの。

生活習慣病予防や進行の抑制、アンチエイジングのため、
炎症をいかに抑えていくかが重要。

ヤマハ発動機の研究で、炎症が起こる過程で「アスタキサンチン」
その上流の複数のプロセス抑えることがわかってきた。

アスタキサンチンは、サケ、イクラ、マダイ、エビ、カニなどに含まれる
赤からオレンジを呈する天然の色素成分。
βカロチンやリコピンと同じカロチノイドの一種。
強力な抗酸化作用がある。
ヘマトコッカス藻が、最も高濃度にアスタキサンチンを含み、
機能性食品としてのアスタキサンチンの多くは、ヘマトコッカス藻から生成。

炎症では、物理的刺激や化学的刺激、薬物といった
イニシエーターの刺激により、脂肪細胞やマクロファージなどから
炎症性メディエーターが放出、組織障害が引き起こされる。
炎症性メディエーターには、サイトカイン、エイコサノイド、ヒスタミンなど。

インターロイキン(IL)も、サイトカインの一種。
IL-6は、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患に関与し、
IL-8は、非感染性の炎症疾患に関与する。

ヤマハ発動機では、アスタキサンンチンがインターロイキンの放出に及ぼす
影響を見るため、ヒト末梢単核細胞を、グラム陰性菌の細胞壁表層にある
リポ多糖類であるLPSと、たんぱく質・コンカナバリンA(ConA)で刺激し、
アスタキサンチンを添加して培養し、放出されたインターロイキンを測定。

その結果、IL-6、IL-8ともに濃度依存的に細胞からのインターロイキンの
放出が抑えられ、アスタキサンチンがIL放出を抑える。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20080529/101845/

アスタキサンチンに脳の認知行動能力を向上させる可能性運転やスポーツでの判断力・敏捷性・注意力などのアップに期待

(日経ヘルス 6月6日)

ヤマハ発動機ライフサイエンス研究所は、
順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座の白澤卓二教授と
アンチエイジングサイエンス社との共同研究で、
「アスタキサンチン」に脳の認知行動能力を改善する
可能性があることを確認。

今回の研究では、認知症などの脳機能障害には該当せず、
加齢に伴う物忘れ傾向を自覚している50歳以上69歳以下の
健常男性10人を対象。

アスタキサンチン(ヤマハ発動機社製 ソフトカプセル)を
1日12mg、12週間摂取してもらい、摂取の前、摂取6週後、摂取12週後
それぞれで認知機能検査を実施。

その結果、摂取12週後には、反応の早さ、正確さ等の各種指標が改善。
記憶力の向上なども認められた。
第8回日本抗加齢医学会総会 (http://www2.convention.co.jp/8jaam/)

◆炎症の元を抑える天然色素成分

アスタキサンチンは、サケやイクラ、エビ、カニ、オキアミなどに
多く含まれる天然の色素成分で、海洋性のカロテノイドの一種。
一重項酸素の持つエネルギーを受け取り、
安定した三重項酸素にする強力な抗酸化作用を持つ。
その作用は、ビタミンCの90倍、ビタミンEの25倍とも。

疲労回復や肌の老化を抑える作用、抗炎症作用など、
幅広い機能があることも知られている。
アルツハイマー病の発症予防に対する効果なども期待され、
動物試験では記憶や学習に関する改善効果が報告。

ヤマハ発動機は、生活習慣病や老化への関連が指摘されている
炎症性サイトカインなどの生成を特異的に阻害し、
「炎症」を元から抑える。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20080605/101899/

花巻発着の関空、那覇線運休へ 日航

(岩手日報 7月23日)

本航空(JAL)は、花巻空港と関西国際空港を結ぶ路線(1日1往復)を
来年2月から、花巻―那覇線(例年3月の季節運航)を来年から運休

燃料価格高騰を背景にした不採算路線見直しの一環。
同社と全日本空輸(ANA)は、地方発着の路線を中心に、
今秋以降の減便や休止を検討。

県は、地域経済や観光客誘客に影響を及ぼしかねないとして、
路線や便数の維持をJALに要望する方針。

JALの安嶋新経営企画室部長らが同日、県庁を訪れ、
佐藤文夫県土整備部長らに運休の方針を示した。
運休の方針を固めた2路線について、
「ともに収益率が悪く、燃料高がなくても不採算路線と見ている」

2007年度の花巻空港定期便の利用者数は、約38万6000人。
花巻―関西空港線の利用者数は約5万4000人、利用率は47・8%。
花巻―那覇線(3月の18日間、1日1往復)の利用者数は約3300人で、
利用率は64・2%と比較的高いものの、
割引率の高い団体利用が多いため、収益率は低くなる。

花巻空港では昨年10月、福岡線(週3往復)が運休になったが、
同社は代替案として関西空港での乗り継ぎを示していた。

花巻―関西空港線が運休になった場合、
関西方面への便は大阪国際(伊丹)の1日2往復となるが、
ダイヤの組み直しは未定。

航空大手は、JALが福島空港の国内路線から撤退するなど、
東北地方を発着する路線を中心に大幅な見直しを進めている。

宮舘寿喜副知事は、「昨年の福岡線に続く運休。
観光やビジネス、海外への乗り継ぎ機能などに影響がある。
達増知事と対応策を協議し、早急に日本航空本社に要望したい」。

◆花巻空港とは

1964年に滑走路1200メートルの第3種空港として開港し、
同時に東京便が開設。大阪、札幌、名古屋、福岡線を開設。
東京線は85年、福岡線は昨年運休。
現在の定期便は、1日2往復の大阪国際(伊丹)、中部国際(名古屋)、
新千歳(札幌)、1日1往復の関西国際空港(大阪)、
3月季節運航の沖縄(那覇)。

路線別の利用率は伊丹線が71・8%、名古屋線が50・0%、
札幌線が49・3%、関西空港線が47・8%、沖縄線が64・2%。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080723_3

週末はダイエットをぶち壊す

(WebMD 7月9日)

セントルイスの研究者らによれば、土曜日と日曜日は祝祭日と同様、
ウエストラインに対する大いなる脅威となりやすい。
多くの人の体重は、祝祭日、特に感謝祭から新年にかけての期間に
数ポンド増える傾向にあるが、これは摂食が増えるのに運動が減るため。

週末におけるライフスタイルの変化も、体重の増加や減量の遅滞を招き、
大幅な減量状態を維持するうえで問題。
厳密な食事療法と運動プログラムを実行している高齢成人では、
週末のほうが平日よりも摂取カロリーが増える傾向にあることを、
ワシントン大学理学療法・医学科助教のSusan B. Racetteらが明らかに。

「減量を試みている人の中に、週末が問題となっている人がいるのでは、
と考え、介入前や介入中の知見に一貫性が認められたことは意外であった」
「食事療法群の被験者の体重は、平日には減ったが、
週末には食べ過ぎのため、減量が滞った」

Racette博士らの目的は、週末の食事パターンや活動パターンの
変化によって、減量が促進されたり妨害されたりするかを調べる。
CALERIE(エネルギー摂取量の抑制による長期効果の包括的評価
[Comprehensive Assessment of Long-term Effects of Reducing Intake of Energy])
試験に参加した50-60歳の高齢成人48例を対象。

CALERIE試験は、2年間のカロリー制限により老化作用を遅延させたり、
特定疾患のリスクを低減することができるかを検討する試験。
試験開始時に、被験者の運動習慣や食習慣、肥満度指数(BMI)を記録。
肥満と判定された被験者はいなかった。
大部分の被験者では、カロリーの大部分を土曜日に摂取。

被験者を3群に分けた。
第1群では、毎日の摂取カロリーは20%少なく、活動レベルは変えない。
第2群では、毎日の運動計画は増やし、食事は変更せず、
エネルギー削減量が第1群と同程度。
第3群では、食事も活動レベルも変更しなかった。

1年間にわたり被験者を追跡。
食事日記、定期的な体重測定、加速度計による運動の測定が
経過の追跡に有用。

試験開始時点では、各被験者の総摂取カロリーの約36%は
土曜日に摂取した脂肪に由来、
土曜日以外に摂取した高脂肪食に由来するものは35%未満。

試験開始時点で典型的にみられた週末の体重増加は、
年間約9ポンドの体重増加につながる。
食事と運動への介入後でも、ライフスタイルパターンは変化しない。
カロリー制限群では、週末の減量が停滞。
運動増強群では、土曜日の摂食が増え、週末には体重増加がみられた。
多くは、週末がダイエットに不向きであることに気付いていなかった。

Racette博士は、「この知見に、一貫性がみられるとは意外であった。
週末が、減量を遅滞させ続ける、という目を見張る経過にも驚いた

学術誌『Obesity』に掲載されているいくつかの知見から、
多くの研究における減量の割合が比較的低い理由と、
減量の維持に問題を抱える人が非常に多い理由を説明することができる。

慎重に計画すれば、週末のせいで減量の努力が無駄にならないようにできる。
健康に良い食べ物を持ち歩けば、売店の誘惑から逃れるのに役立つ。
1回量の調節も重要である。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77375

毎日の運動を考え直す:メタボリックシンドロームには、毎日は行わない高強度運動インターバルトレーニングがもっとも有効

(Medscape 7月10日)

有酸素インターバルトレーニングを含めた運動療法が、
メタボリックシンドロームの者にベネフィットがあるらしいという
小規模パイロット試験の結果が出た。

ノルウェーの研究チームが、2種類の運動療法の処方を比較、
メタボリックシンドロームのリスク因子のほとんどが高強度運動で改善。
16週間の運動プログラム終了時には、患者のほぼ半数が、
食事内容はいっさい変化していないにもかかわらず、
メタボリックシンドロームから脱していた。
定常的な中強度の運動では、これほど印象的な成果は得られなかった。
2006年アテローム性動脈硬化症国際シンポジウムで発表。

今回、1日に30分間の中強度運動を推奨する標準的推奨
(米国心臓協会[AHA]やその他の団体が支持している)が、
特定の高リスク群には不十分である可能性を示唆。
Arnt Erik Tjønna(ノルウェー科学技術大学)らの研究は、
『Circulation』2008年7月7日号オンライン版に掲載。

Ulrik Wisløff(ノルウェー科学技術大学)は、
今回の運動処方は、週に3回で総時間120分。
「この試験は、メタボリックシンドロームの心血管系に、
運動強度が及ぼす実際の効果を比較する初めてのもの。
行った運動は、それぞれ強度は異なるが、1回の運動セッションで
消費するエネルギーは同じ。」

メタボリックシンドローム32例をランダム化し、中強度の連続運動、
有酸素インターバルトレーニング、運動なしのいずれかに割り付けた。
16週間の試験期間と追跡検査を完了したものは、全部で28例。

中強度運動群の被験者は、インターバル群よりも運動時間を若干長くし、
エネルギー消費量は群間で差がないようにした。

週3回の運動を16週間行ったところ、2つの運動群の体重と胴囲は、
対照群に比べ、同じ程度に減った。
インターバル群の被験者のほうが、内皮機能、血圧降下、インスリン感受性、
空腹時血糖値、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール、
ミトコンドリア形成(活動のための燃料を細胞が産生する能力)が大きく改善。

16週間終了時に、メタボリックシンドロームの基準に該当しなくなった者は、
インターバル群では46%、中強度運動群では37%。
対照群は、全員が追跡時もメタボリックシンドロームの基準に合致。

著者らは、高強度インターバルトレーニングが一定した中強度運動よりも
優れているのは、インターバルトレーニングのほうが
高い心拍数を必要とすることに関係がある。
インターバル群は、酸素吸収能が35%向上、
中強度運動群の酸素吸収能は16%しか向上しなかった。

Wisløff博士によれば、ひとつの運動推奨で万人に合わせるのは
とうてい無理だということを示している。
「運動トレーニング/身体活動の処方は、メタボリックシンドロームの者と
非活動的な者とでは違う。
現行の推奨の効果を見てください。
たいして効いておらず、推奨される量の運動を人々にさせられていない。
むしろ、肥満してメタボリックシンドロームになる人間の数のほうが増えている」

メタボリックシンドロームの者のほとんどは、過去5年から10年以上、
日常的な運動をしておらず、現行の運動推奨を順守すること自体が大きな壁。

「トレーニングを、1週間の大半の日に行うのは困難だと多くの人は感じ、
現行の推奨はやる気を起こさせるというより、うざったいものでしかない。
そうした人々は、インターバル運動を週に2回、10~14週試してほしい。
運動強度を、運動時間数で代替することは不可能であることを、明らかにした。
健康を増進し、心血管系リスク因子を正常化(ないし予防)するには、
短めで強めのトレーニングセッションが優れた療法だ」

AHA運動ガイドラインの著者、Barry Franklin(ウィリアム・ボーモント病院)は、
運動の総エネルギー消費量を一定にした場合、より激しく強い運動の方が、
中強度の運動よりも、心血管系に対するベネフィットが大きいことを示した研究は、
今回のものが始めてではない。

「これまで身体を動かさなかった者が、中強度の運動を心地よく感じられるなら、
有害な徴候や症状なしで維持・達成できる範囲で、
もっと激しい運動を目標に据えるべき」

Wisløff博士らは、心不全患者および冠動脈疾患患者を対象に、
同様の運動試験を実施。
どちらの場合でも、心臓、血管、筋骨格機能に対する効果として、
有酸素インターバルトレーニングのほうが中強度運動よりも優れていた。
「メタボリックシンドロームを対象にした今回の結果と合わせ、
内科医は、有効な治療戦略を真剣に取り入れる必要がある」。

「SmartEX試験」という多施設試験を開始、
この運動プログラムの安全性と生存率のデータを現在調べている。
「2~4年後には価値のある情報が得られるものと期待」。

出典
Tjønna AE, Lee SJ, Rognmo O, et al. Aerobic interval training versus continuous moderate exercise as a treatment for the metabolic syndrome. A pilot study. Circulation. 2008

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77376

2008年7月25日金曜日

理科再興(6)支援員活躍、実験面白く

(読売 7月15日)

学校外の人材が、小学校の理科授業を手助けしている。
「ジャガイモの葉から、緑色を抜く方法を説明します」
担任教諭の発言の後、東京理科大大学院修士課程2年の
松本安純さん(26)が、子供たちを教壇の周りに集めた。
「色を抜くアルコールは、80度より低い温度で使ってね。
沸騰したアルコールを吸うと、気分が悪くなることがあるから、注意して」

東京都北区の滝野川小学校で、6年生が取り組んだのは、
植物の葉がデンプンを作る働きを調べる実験。

松本さんは、担任と手分けして理科室を回り、児童に実験を指導。
「お湯に気をつけて、温度計を倒さないように」などと細かく助言。
松本さんは、4月から北区の理科支援員として、同小で週1回働いている。
中学か高校の教員を志望しているが、
「理科嫌いになる前の小学生の現場を見たかった。勉強になります」。

小学校は、実験・観察などの理科の授業力の低下が問題に。
林四郎校長(60)は、「理科が苦手な教員のサポートだけでなく、
準備や後片づけも引き受けてくれるので、
教員が空いた時間を他の教務に振り向けられる。
支援員の姿勢が、教員の成長を促し、子供の理科への興味も増す」。
準備室に死蔵されていた備品を使えるようにした支援員も。

理科が苦手な先生が委縮してしまう例や、雑用ばかりを任せる学校も。
そこで鍵を握るのが、支援員と教育委員会、学校の橋渡し役となる
「コーディネーター」の調整力
支援員を選んだり、学校の配置を決めたりするほか、
学校と支援員のトラブルを仲裁し、支援員を支える役割も。

北区でコーディネーターを務めるお茶の水女子大
サイエンス&エデュケーションセンター講師の宮本康司さん(32)は、
学校の要望と、支援員の希望や能力をよく考慮することが大事。
全国で支援員の質に差があることも課題で、
どこの学校でも機能するような制度を考えることも必要」。

学生などを確保しやすい都会に比べると、
地方では科学や学校教育に詳しい人が支援員になるとは限らない。
同センターは、社会人向けに理科支援員養成プログラムの授業を開講し、
科学技術振興機構と協力して、東京以外での研修も計画。

新潟大で理科教員の養成に取り組み、この事業に詳しい
小林昭三同大名誉教授(65)は、
「教員志望の学生にとって、学校現場の実態を学ぶいい機会。
ぜひ挑戦してほしい」。
自治体には、「取り組み方や熱意に差がある。
コーディネーターの役割や支援員の活用法などの情報を交換し、
制度を工夫してほしい」。

始まって2年目。
支援員は、理科に強い学校を作るとともに、
外部に開かれた学校を作る試金石にもなりそう。

◆理科支援員

小学校5~6年の理科の授業で、観察や実験の手伝い、準備や後片づけ、
実験や授業計画の立案などを行う人材で、
教育委員会が公募で選ぶケースが大半。
教育学部や理系学部の学生、退職教員、主婦が多い。
科学技術振興機構が2007年度に事業化し、2762校3715人が選ばれた。
今年度は約4300校の見込み。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080715-OYT8T00246.htm

ビタミンC不足が老化と皮膚トラブルを促進する

(日経ヘルス 7月9日)

第8回抗加齢医学会総会で、
「美しい肌のために~年を重ねていくために今すべきこと~」と題した
ランチョンセミナーが開催。

ビタミンCの効用をテーマに、東邦大学薬学部の石神昭人准教授
藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座の赤松浩彦教授
それぞれ講演を行った。

石神准教授の講演テーマは、「ビタミンCと老化」。
人間は、ビタミンCを体内で合成できないが、
人とサル以外の動物のほとんどが、体内でビタミンCの合成が可能。
石神准教授は、ビタミンCを合成できるマウスの遺伝子を操作することで、
体内でビタミンCを合成できない(SMP30遺伝子ノックアウト)マウス
を作ることに成功。
このマウスを使った実験で、体内でのビタミンC不足が体にどのような
影響を及ぼすのかを科学的に検証。

SMP30遺伝子ノックアウトマウスに、ビタミンCをまったく与えずに育てると、
マウスは壊血病で死亡。
1日必要量の2.5%という、わずかなビタミンCを与えて育てた場合、
体重が減少し、骨を構成する組織がぼろぼろになるという
老化の症状が現れた。

SMP30遺伝子ノックアウトマウスの臓器を調べたところ、
「小脳や膵臓などの臓器に比べ、皮膚はビタミンCが不足しやすい」。
皮膚の老化を予防するためには、肌に直接塗ることで、
抗酸化作用や抗炎症作用などを促すのがいい。

新たに、ビタミンCが合成できないヘアレス(体毛を除いた)マウス
開発に成功した。
石神准教授は、「ビタミンCが不足した場合、角層がボロボロになり、
ターンオーバーも遅れた様子が観察できた」。

ヘアレスマウスは、皮膚科研究の評価・観察に多用される。
今後、化粧品の成分評価などへの応用も期待できそう。

ビタミンCの摂取方法に質問が及ぶと、
「食事でとるのが一番だが、サプリで補給する場合は食間、食後に
のむように。過剰摂取は避けて、1日1gまでを目安にするといい」。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20080708/102154/

新しい認知症スクリーニングツールが登場

(WebMD 7月2日)

おばあちゃんは、めったに鍵の置き場所を忘れない。チェック。
おばあちゃんは、最近ジョーおじさんがした悪ふざけについて
楽しく話しながら、好きな料理をさっと作ることができる。チェック。
おばあちゃんは、駐車した場所をいつも覚えている。
あなたが駐車した場所も言うことができる。チェック。

高齢者の日常作業能力を調べる基本的質問に答えていくと、
認知症を知らせる初期兆候の発見に役立つ。
これまで、日常生活能力を評価する方法は限られていた。

最近、Everyday Cognition (ECog) という手っ取り早く簡単な
スクリーニングツールが開発。
高齢者の身近にいる人が記入し、高齢者の基本知能の時間的変化を
明らかにすることができるツール。
成人した子供が親について回答してもいいし、配偶者同士でもいい。

カリフォルニア大学のSarah Tomaszewski Fariasらは、
77歳前後の成人576名のデータを評価、認知症患者に取り組んでいる
医療従事者にインタビューを行って、新しい質問表を思いついた。

ECogのアイデアは、特定の作業をある認知能力と結びつけることによって、
様々な日常生活領域の能力を評価するというコンセプトをヒントに。

Farias博士らは、主な認知機能領域として、記憶力、言語能力、
事実の知識(語義)、視覚空間能力、計画力、組織力、注意分割力の
7つを特定し、最終的に39項目の質問を考え出した。

◆チェックリストの仕組み

信頼できる情報提供者、高齢者と一緒に住んでいる人や、
その高齢者をよく知っている人が、その人の特定の作業能力について
10年前と今を比較する。
高齢者の能力は良くなったか?問題があるか?
少し低下したか?かなり低下したか?

例:「10年前と比べ、以下の事柄について何か変化はありましたか?」
・物の置き場所を覚える
・物の名前を忘れる
・一般的な言葉の意味を思い出す
・地図で初めての場所にたどり着く
・よく知っている近所を好きなように歩く
・買い物で立ち寄る順番を計画する
・生活や仕事の空間をきちんと整理しておく
・お金に関する記録をきちんと整理しておく
・料理や仕事をしながらおしゃべりする

Farias博士らは、信頼できる情報提供者に、
新しいスクリーニングツールを検証してもらった。
質問表に記入した人は、約45年間高齢者のことを知っていて、
週75時間は一緒に過ごしていた。
情報提供者は、配偶者、成人した子供、家族、友人など。
ほとんどは女性。

情報提供者は、臨床医や患者自身よりも率直に、
高齢者の機能的能力を具体的に説明することができる。
認知症の人は、自分の問題に対する意識がない。
医療従事者は、毎日そばにいることがほとんどないので、
ピーナツバターとジャムのサンドイッチをつくるなどの
複雑な作業を評価するのは無理。

新しいスクリーニング質問表が、
「高齢者の日常生活能力測定に有望なツール」であることを示した。
ECogは、初期の機能変化に感度が高いとみられ、
認知機能が正常な人、軽度障害のある人、
認知症の人を区別することができた。

「ECogは、認知症発症リスクの高い人を見つける便利な
スクリーニング評価尺度として期待。他の認知機能テストと同じように、
スクリーニング結果が教育の役割による強い影響を受けない」。

掲載論文の背景情報によれば、ECogスクリーニングテストは、
認知症症状がしばしば診断されないプライマリケアの診察で役立つだろう。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77101

ネットで介護予備軍を判定 日常生活の注意点も

(共同通信社 2008年7月10日)

放っておくと介護が必要となる恐れがある介護予備軍かどうか、
高齢者や家族が自宅からインターネットで気軽に判定できる
サービスが始まった。

厚生労働省は、「閉じこもりがちな高齢者が、
介護予防に取り組むきっかけになれば」と期待。

判定ができるのは、長寿科学振興財団(愛知県東浦町)が運営する
「健康長寿ネット」のサイト。
画面右上の「介護予防生活機能チェック」をクリックすると、質問が始まる。

サイト上(http://www.tyojyu.or.jp/net/)で、
「バスや電車で1人で外出していますか」、
「お茶や汁物などでむせることがありますか」など25の質問に答えていくと、
コンピューターが運動機能の低下や認知症の可能性などについて判定。

日常生活の注意点のほか、相談が必要な人には
最寄りの介護予防の窓口も紹介。
一部の市区町村へは、結果と連絡先を本人から担当者へ送信することも可能。

検査を受けて、医師に介護予防が必要な「特定高齢者」と正式判定されれば、
筋力トレーニングや栄養指導など、介護予防サービスを受けることができる。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77153

感染症予防は国家の命令 鳥インフル対策は後手に 北京五輪企画「五輪の風-世界が見る中国」

(共同通信社 2008年7月10日)

中国・四川大地震発生から3日目の5月14日。
四川省都江堰市の聚源中学の生き埋め現場で、再び目を開くことのない
わが子にすがって泣き叫ぶ母親ら家族の周辺に、
噴霧器を背負ったマスク姿の男性らが黙々と消毒液をまき続けていた。

仮設の遺体安置所は、強い死臭と消毒液で、目まいがするほどの
臭気が充満。悲しみの場で、異質の雰囲気を放つ衛生当局者は、
「感染症予防は国家の命令。あらゆる手段を尽くす」。

中国政府は、感染症の発生に神経をとがらせている。
2度目の被災地入りをした温家宝首相は、復興支援とともに
「感染症予防が最重要課題だ」。
1万人以上の防疫要員を現地に投入。
北京五輪に向け、被災地で大規模かつ徹底的な消毒活動を繰り返すのは確実。

「新型肺炎(SARS)の衝撃が中国を変えた」。
SARSが猛威を振るった2003年春、中国は患者隠しや過少報告を行い、
国際社会の不信感は極度に高まった。

当時、北京の日本大使館で医務官をしていた勝田吉彰は、
衝撃をばねに中国が情報開示へ転換していったのを肌で感じた。

中国は、鳥インフルエンザで人への感染を確認すると、
世界保健機関(WHO)への報告と同時にネットで公表。
「こうしたシステムの構築は素早かった。既に日本の先をいっている」(勝田)

一方で、手付かずの課題もある。
英医学誌ランセットは、鳥インフルエンザ変異による新型インフルエンザが
拡大した場合の死者数を日本約15万人、中国約1060万人と予測。
危機感は中国も共有しているが、地域格差や官僚主義が
新型インフルエンザ予防の前に立ちはだかっている。
「地方の病院で、風邪の症状を訴える患者に
インフルエンザ検査をすることはない」。

北京の外国大使館で医療問題を扱う担当官は、
人口の約7割が生活する農村部の遅れた医療に懸念を示す。
潜伏期間も考慮すると、「1人の新型発症者を確認した時点で、
既に広く拡散している可能性」は高く、情報キャッチが大きく遅れる恐れ。

一党独裁の下、硬直した行政システムも阻害要因。
地方政府は、保身から中央政府に「見栄えのいい報告」を上げる傾向が根強く、
正確な状況把握の障害に。
中央政府内では「縦割り」が強く、情報共有は不十分なまま。

日本は、厚生労働省のシミュレーションに基づき、
インフルエンザ治療薬タミフルを2500万人分備蓄。
中国もこうした態勢づくりに興味を示しているが、
たたき台となる試案の作成はまだ緒に就いたばかり。

ある専門家は、「中国がシミュレーションを作成したら、
『2億人分のタミフル備蓄が必要』との数字がはじき出される可能性も。
パニックを恐れ、公表を控えるのでは」
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チベット暴動、聖火リレー妨害、四川大地震と耳目を集めるニュースに
事欠かないオリンピックイヤーの中国。
世界が強い関心を寄せる中国の人権、環境、感染症などの問題をめぐる
中国内外でのせめぎ合いや変わる中国観を、
インド・ダラムサラ、米国からのリポートを交えて報告。
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※鳥インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる鳥類の病気で、
感染が拡大しているのは毒性が強いH5N1型。
鶏などが感染すると呼吸器、消化器に症状が現れ、大量死することも。

鶏肉や鶏卵を食べて人に感染した例は報告されていないが、
生きた鳥との接触による人への感染が起きている。
ウイルスの遺伝子が変異し、人から人への感染力が高い
新型インフルエンザが北京などで流行すれば、
五輪開催自体が不可能になると指摘。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77166

新型インフルエンザウイルス増殖に必要なたんぱく質、東大チームが特定

(毎日 2008年7月10日)

世界的な大流行(パンデミック)が懸念される
新型インフルエンザウイルスなどの増殖に必要なヒトのたんぱく質を、
東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)の研究チームが
世界で初めて特定、英科学誌ネイチャーに発表。

研究チームは、ヒトの遺伝子と共通点の多いショウジョウバエの
ゲノム(全遺伝情報)を分析。
ハエの持つ遺伝子の9割に当たる1万3071個が作るたんぱく質から、
インフルエンザウイルスと反応する110種類を見つけた。

このうち、ヒトが感染している強毒性鳥インフルエンザ(H5N1型)と、
Aソ連型(H1N1型)のウイルスの増殖を助け、
ヒトに共通する3種類のたんぱく質を突き止めた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77145

2008年7月24日木曜日

理科再興(5)生活を意識 天気予報

(読売 7月12日)

生活実感を意識した授業法の実践研究が進んでいる。
東京都千代田区立番町小学校の5年1組は、理科で学んできた
「天気と気温の変化」の単元の最終日を迎えた。

天気図や、インターネットで調べた雲の画像、学校で観測した
温度や湿度などの記録を基に、「明日の天気予報」を
グループごとに発表。
予報と合わせ、「校庭で遊べるか」、「長靴やかさは必要か」、
「トイレはいつ行けばよいのか」など、天気とかかわる身近な話題も。

「沖縄に近い雲が、東京に向かっています。
明日は雨で、洗濯物は部屋干しがよいでしょう」、
「今は晴れですが、湿度が高い日の翌日は雨が降ります。
寒くなる前の休み時間にトイレを済ませましょう」。
テレビとは、ひと味違った予報に。

番町小は2年前から、区教委や国立教育政策研究所の研究校として、
新学習指導要領の方向性を踏まえた授業法を探っている。
伊勢明子主幹(47)は、「理科の知識を、どうやって生活の中で
生かせる本物の知にするか。
過去2年間の授業研究で指導が弱いと感じた部分を、
今年度のテーマに設定した」。

5年生の研究単元に選ばれたのが、小学校で教えにくいとされる天気。
変化の要因が複雑で、法則性や科学性を理解させることが難しい。

現行の指導要領は5年で、天気が西から東へ変わる規則性、
気象データを使った変化の予想を学ぶことになっているが、
新指導要領では、雲の量や動きを観察し、雲と天気の変化の関係を
理解させることが加わった。
データだけでなく、天気の変化を生活で実感させる指導がポイント。

5月に指導案を作った。
「予報がゴールなら、天気の知識の習得を先にすべきだ」、
「単なる予報で終わらないよう、生活と関連したテーマを考えさせた方がいい」
担任の意見を取り入れ、12回の授業計画を練り上げた。
「教科書の内容を超えた天気の学習指導は初めて。
毎日の観測結果を授業で生かせるよう、構成を工夫した」
1組担任で学年主任の中井一雄教諭(37)。

授業では、「トイレ予想」などユニークな発表があった反面、
予報は雲の画像などから「西に雲があるので曇りか雨」といった、
画一的な結論が目立った。

授業後の研究会では、「雨雲が6時間でここまで動くから明日は雨、
といった論理的な分析が少ない」、「実際の空を見て、雲が東から西に
動くような疑問に子供が気づいてもいいはず」といった指摘。
中井教諭は、「自分の観測でわかったことや肌で感じたことを、
予報に生かす指導が難しかった」。

授業時間数は増えるが、知識の詰め込みに終わらない授業を、
どう作るのか。教師の奮闘が続いている。

◆小学校で増える学習内容

来年4月から前倒し実施となる新学習指導要領の理科では、
小学3年で「風やゴムの働き」、「物と重さ」、
4年で「人の体のつくりと運動」、6年で「電気の利用」などが加わる。
「電流の働き」は6年から5年に、「てこの規則性」は5年から6年に移行。
選択項目だった「振り子の運動」、「動物の誕生」は、5年で必修。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080712-OYT8T00223.htm

[第3部・中国](下)四川復興へ 今は練習のみ

(読売 7月11日)

「川妹子(チュワンメイズ)(四川娘)、またも勝つ」。
テニス・ウィンブルドン選手権女子シングルスで、
1メートル64の小柄な鄭潔が、1メートル80を超える女子選手たちを
次々と倒す快進撃に、中国人の関心が集まった。
アジア勢としては、伊達公子以来の四大大会4強という快挙。

25歳の鄭潔はすでに、ダブルスで四大大会2冠の実績があるが、
これまで以上の注目を集めたのは、
彼女が四川大地震の被災地・成都出身だったから。
「私は四川で生まれ育ち、家族も友人もいる。
被害にあった人たちが早く、新たな家を建てられますように」。
鄭潔は、今回の賞金19万5500ポンド(約4100万円)のほとんどを
震災地に寄付すると宣言。

四川省から1000キロ以上離れた、広西チワン族自治区の南寧。
地元の体育訓練基地で、レスリング・グレコローマンスタイルの
四川省代表20人が練習。
省内の練習施設は震災で大きな損害はなかったが、
各競技の四川省の選手たちは、練習に集中するため、
四川体育局の手配で、国内15都市の訓練施設に受け入れ。

55キロ級の謝洪全(22)は、壊滅的な被害を受けた茂県の出身。
震災の5月12日は、成都で練習中。
実家には、父母ら家族7人がいた。
携帯電話で連絡を取ろうとしても、全くつながらない。
現地から伝わってくるのは、悲観的な情報ばかり。焦りが募った。

それでも、練習は続けられた。
鄭拉格コーチ(36)は、「きっと大丈夫だ。今できるのは、
練習に集中することだけだ」と励まし、練習中は、
代わりに実家へ電話を入れ続けてくれた。
1週間後、ようやく連絡がついた。家は全壊したが、家族は無事。

しかし、そのまま5月25日に南寧に移り、テント生活を送る家族を
見舞うことはできずにいる。
「本当は、故郷でボランティアなど手伝いをしたい。
しかし、自分は選手で、国と省のために練習をするのが本分だから」。

謝洪全は、2006年全国2位で、北京五輪代表の有力候補。
しかし、昨冬に右腕を負傷、五輪出場は夢と消えた。
7月からは、好敵手だった代表選手のスパーリングパートナーを
務めるため、北京に赴く。

震災以来、北京五輪関連のイベントには必ず、
「四川頑張れ」のスローガンが加わるようになった。
北京五輪の中国選手団は、600人規模。
四川省の選手は、約70人が加わる見通し。

四川大地震による死者は7万人近く、行方不明者は1万8000人以上。
国民の間で複雑な思いが交錯する北京五輪は、8月8日に幕が上がる。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080711.htm

「日本丸」「飛鳥2」世紀の共演 大船渡港

(東海新報 7月24日)


全国規模の海の祭典「海フェスタ」は、大船渡港に
豪華客船『飛鳥2』が入港。

同港では、帆船『日本丸』が出港し、両船が湾内で“共演”を果たした。
ふ頭には多くの見物客が訪れ、豪華さ溢れる光景を目に焼き付けていた。


『飛鳥2』の大船渡港寄港は、例年通り
「横浜花火大会、釧路・三陸クルーズ」によるもの。
乗船客は830人、乗組員480人で訪れた。


午前9時過ぎ、曇り空をバックに大船渡湾内に姿を見せた。
大漁船団が迎える姿をひと目見ようと、大船渡町の野々田ふ頭には
多数の見物客が訪れた。


ふ頭では、大船渡海洋少年団員と広田小マリンキッズ隊の児童らが
手旗信号を送って出迎えた。


その直後、激しい雷雨に見舞われ、歓迎の市民らはテント内に避難。
『飛鳥2』のデッキからも、乗船客が心配そうに空を見上げた。
数十分で雨は止み、同ふ頭で歓迎セレモニーを開催。

甘竹勝郎大船渡市長の歓迎の言葉に続き、『飛鳥2』の末永守船長が
「霧が濃いため入港が危ぶまれましたが、皆さんの歓迎と
私たちの願いが天に通じた」。


茶屋前ふ頭では、19日から寄港していた帆船『日本丸』の
出港セレモニーが開かれた。
ふ頭には多数の市民らが詰めかけ、午後2時ごろ汽笛とともに出港。


穏やかな波間をゆっくり進んだ『日本丸』。
野々田ふ頭に接岸していた『飛鳥2』と重なるような形で“共演”を果たし、
「海フェスタ」ならではの光景で市民らを魅了。
『日本丸』が湾内を離れると、名残を惜しむかのように再び雨模様。


夕方には、『飛鳥2』の出港セレモニーが開かれ、
来年以降の“再会”を約束。午後5時ごろ、大船渡港を出港。

豪華客船『飛鳥2』の一般公開では、県内外の150人が船内を見学、
船旅の気分を堪能した。
見学者は、8倍の競争率の中、抽選で幸運を引き当てた人たち。

スタッフの案内でレストラン、ラウンジ、バー、シアター、プール、
ショップなどをエレベーターで移動して見て回り、
ふかふかのじゅうたんやまばゆいばかりの内装、調度品の美しさにうっとり。

親子で乗船した大船渡町の佐野多鶴子さん(48)は、
「まるでホテルのようですね」、二男の壮くん(11)も
「こんなに豪華な船があるなんて思いませんでした」。


http://www.tohkaishimpo.com/

一部産業のサイエンス型化顕著に

(サイエンスポータル 2008年7月14日)

自動車、航空機、産業用運搬車両産業が、
技術提携など学会を利用する傾向を近年顕著に強めていることが、
科学技術政策研究所の調査研究で明らかに。

「イノベーション測定手法の開発に向けた調査研究」は、
効果的なイノベーション政策を進めるために、科学技術がイノベーションに
与える効果を測定、評価する手法や指標を開発し、構築したデータベースを
基に実際に3,000社の企業レベルで分析するのが目的。

従来の静的でマクロな指標では、イノベーションのダイナミズムを
十分にとらえられないとの認識。

質問票による調査の結果、自動車、航空機、産業用運搬車両産業は、
科学の知見を積極的に取り入れ、産業自体を変革させていることに加え、
学会を商談、人材獲得、買収、パートナー探しといった活動の場として
利用する「サイエンスを重視する傾向を近年強めている」
日本の代表的な産業になっている。

10年前には、自動車、航空機、産業用運搬車両産業以上に、
サイエンス重視の産業だった化学(医薬品など)産業も強めているが、
自動車、航空機、産業用運搬車両産業ほどの変化はない。

10年前からすでに自動車産業ほどサイエンス重視ではなくなっている
電気機器・情報通信産業について、学会を論文発表などの
「知の共有地」としてとらえる見方が強く、
サイエンス(学会)との距離はこの10年でむしろ離れている。

ただし、海外学会の併設展示会は重視する傾向がある。
かつてサイエンス型産業の代表例と見られ、学会発表も多かった
電気機器・情報通信産業は、SIDなどディスプレー関連学会で、
日本の発表件数が韓国に抜かれたことなど、
学会発表を抑制している傾向が示唆された。

http://scienceportal.jp/news/daily/0807/0807141.html

国際生物学五輪:日本勢は銀3と銅1

(毎日 7月21日)

インド・ムンバイで開かれた高校生の国際生物学オリンピックで、
日本代表の4人が銀メダル3個、銅メダル1個を獲得。
05年から参加した日本にとって、今回が最高の成績。

銀メダルを獲得したのは、東葛飾高(千葉県)3年、内海邑さん、
筑波大付属駒場高(東京都)3年、海老沼五百理さん、
麻布高(同)2年、大河原健太郎さん。
銅メダルは、藤島高(福井県)3年、水野俊一郎さん。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080721ddm041040086000c.html

洞爺湖サミットは日本の温暖化政策の分水嶺に?

(サイエンスポータル 2008年7月11日)

洞爺湖サミットの成果については、いろいろな見方があるが、
温暖化問題に積極的にかかわっている研究者、評論家から、
評価する言葉が聞かれる。

「安全工学シンポジウム2008」で特別講演をした
山本良一・東京大学生産技術研究所教授は、
「6月、7月で、日本の基本政策は明確に変わった」と、
福田首相の温暖化対策への取り組み姿勢を評価し、
洞爺湖サミットでも、「大変な役割を果たした」と合格点を与えていた。

山本教授とともに、日本の進める温暖化対策に積極的にかかわっている
三村信男・茨城大学教授(地球変動適応科学研究機関長)も、
「米国を含め、2050年に温室効果ガスの50%排出削減という長期目標を、
世界で共有しようという意志を示したのは前進だ」。

番組「ラジオあさいちばん」に登場した寺島実郎・日本総合研究所会長は、
「後から今回のサミットを振り返って、日本の温暖化政策の分水嶺だったと
いわれるかもしれない」と、日本が果たした役割について、
これまた及第点を与えていた。

寺島氏は、今回のサミットを任期が残り少なくなった、
「ブッシュ米大統領のフェアウェル・サミット」と表現し、
イラク戦争で疲弊している米国の力の低下、特に対ユーロに対する
急激なドル安を、「パリのアメリカ人」と揶揄。
欧州に行くと、おみやげも買えなくなってしまっているという意味。
こうした状況の中で、議長国として日本の果たした役割は評価してもよい、
ということだろう。

ただし、地球温暖化対策の行く手が極めて厳しいという認識は、
寺島氏も含め3人とも同じ。
「地産地消」の考え方に切り替えないと、エネルギーの消費減もかなわない。
日本にとって、カロリー換算で39%しかない食糧自給率を、
まず50%位に上げる必要がある、と寺島氏は提言。

農政の大きな変更を必要とするわけで、地球温暖化対策が、
「制度、システム、哲学のイノベーション」(山本良一教授)なしには
成り立ち得ないことを示している。

山本教授は、日本の基本政策が変わったという判断の根拠として、
自民、民主を初めとする政党が低炭素社会を目指す法律の実現に
動き出したことや、福田首相が6月9日に、
「2050年までに、国内の温室効果ガス排出量を現状より60-80%削減する」
ことなどを盛り込んだ福田ビジョンを発表したこと。

反対に、産業界の対応については、
「大企業には、二酸化炭素(CO2)の排出量の報告が義務づけられ、
7,500社の合計排出量は年間6億トン。
鉄鋼、化学、電力といった22社だけでこのうちの半分、年間3億トンを排出。
経団連と経済産業省は、22社の3億トンを何とか守ろうと政策を展開、
それではあらゆることが進まない」と批判。

洞爺湖サミットが終わり、内外の厳しい視線はどこに向くのだろうか?

http://scienceportal.jp/news/review/0807/0807111.html

カルシウム不足:骨折リスク高く 女性で最大2倍に--厚労省研究班調査

(毎日 7月4日)

カルシウム不足の女性は、腰椎骨折を起こす危険性が最大で2倍に
高まることが、厚生労働省研究班の疫学調査で分かった。
カルシウム不足は、骨粗しょう症のリスクを上げることは知られているが、
実際に骨折の危険性も高めていることが裏付け。

研究班は、90年から4年間、全国の男女約7万6000人(40~69歳)の
カルシウム摂取量を調査。
その後の10年間の追跡から、交通事故などを除き364人が
腰椎骨折していたことが判明。

摂取量を4群に分けると、女性では最も少ない群(1日350mg未満)
骨折率は、最も多い群(同700mg以上)に比べ、2・1倍も高い。

男性では関連性が見られなかった。
男性の方が、骨密度が高いためとみられる。

30~60代の日本人女性の摂取目安量は、1日600~700mg。
中村和利・新潟大准教授(予防医学・疫学)は、
「日本人は、乳製品を多くとる欧米人に比べ、カルシウム摂取量が少ない。
骨折防止のために、若いうちから意識してとってほしい」。

http://mainichi.jp/life/health/archive/news/2008/07/20080704ddm013100193000c.html

2008年7月23日水曜日

理科再興(4)副教材作り 指導力向上

(読売 7月11日)

授業に、副教材を上手に取り込ませる工夫がある。
千葉県船橋市立飯山満中学校で5月に開かれた、
市内の中学校理科教員の研究会では、
約20人がA4判の野草カードを手に校庭を見て回った。
「オランダミミナグサはハコベと似ていますが、
全体に毛が生えています。ハコベはつるつるです」。

カードの作成者、千葉県立中央博物館の上席研究員、
斎木健一さん(46)が説明。

カードで紹介された野草は、21種類しかない。
日当たりと水はけがよく、年に数回は雑草として刈り取られてしまう
校庭の野草は、日本列島の北と南の端以外、あまり違いがなく、
種類も少ない。
カードの野草は、都会でも地方でも大半が見つかる。

教員にとって、春に多い自然観察は難題の一つ。
新クラスを受け持ってから時間がなく、子供の質問に答えられないと
恥ずかしいという思いがある。
図鑑は種類が多すぎて、植物の分類などを知らなければ
正解にたどりつけない。

斎木さんは、博物館で植物担当だが、専門は化石。
市民の自然観察に同行した際、「この花は何?」という
素朴な質問に答えられなかった苦い経験を持つ。
教員にも同じ悩みがあると知り、野草カードという副教材作りを思い立った。

カードは、県内の希望する教員に配布しているほか、
博物館のホームページで作り方や利用法を解説。
博物館では、季節や葉の形、特徴から約200種類の野草を
検索できるデータベースも作った。

新学習指導要領は、小学3年で「身近な自然の観察」を加えるなど、
観察や日常生活と関連した理科を重視。
斎木さんは、「全国の教員が、自信を持って自然観察授業が
できるようになってほしい」と願う。

地域密着型の「副教本」を独自に開発したのは、愛知県犬山市。
5年前から小3~小6の各学年で作っている「理科だいすき」。
現行の指導要領で、理科の内容が大幅に減らされたことに、
市教委や市内の理科教員らが抱いた危機感が原動力に。

「犬山の地層」、「木曽川へ行こう」など、地元の自然を学び、
市内の日本モンキーセンターでサルを観察するなど、
地域性を生かしている。
「骨格模型を作る」など、指導要領から外れていても教員が重要と
考えた内容も盛り込んでいる。

副教本作りは、中学校の理科教員も参加、中学の学習内容との連続も意識。
掲載写真の大半は、教員の撮影。
毎年6月ごろから、翌年の副教本作りが始まる。
前年の副教本について、授業で使いやすかった点や悪かった点を評価、
原則として毎年改訂。
「編集担当の教員は、常に最新情報の調査や資料集めをする。
こうしたことが、教員の力量を高めることに」と、
昨年の副教本の編集に当たった市立東小学校の相沢陽一校長(60)。

◆副教材

副読本、地図、資料集、実験器具など教科書を補助する教材。
検定を受ける教科書と違い、教材・教科書会社、教育委員会、
学校などが独自に作る。
犬山市では、算数と理科の教材を準教科書的な意味で、副教本と呼ぶ。
国は、新学習指導要領への移行に伴って、
新たに指導が必要な内容の教材を制作中で、これは補助教材。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080711-OYT8T00239.htm

漢方や薬膳料理にご用心 ドーピング禁止成分含有も

(共同通信社 2008年7月22日)

漢方薬や中華の薬膳料理で、ドーピングの禁止成分を摂取する
可能性があるとして、中国を訪れる北京五輪の日本代表選手に、
国立スポーツ科学センター(JISS)が注意を呼び掛け。

JISSの非常勤医師で、日本選手団の医務担当役員を務める
赤間高雄・早稲田大教授によると、漢方薬や食材のうち
麻黄(まおう)、馬銭(マチン)、鹿茸(ろくじょう)などは
世界反ドーピング機関(WADA)の定める禁止成分が含まれている恐れ。

風邪薬やぜんそく薬に使われる麻黄は興奮作用があるエフェドリンを、
胃腸薬などになる馬銭も興奮剤の成分を含むとされ、
過去に選手が服用してドーピング検査で陽性になった例。

北京市内の老舗の薬店では、禁止成分が含まれる薬を置いた売り場に
赤い字で、「運動員慎用」(選手は控えて)と書いたステッカーを張った。
薬の箱にも同様のシールを付け、
「外国人選手が来店した時には、シールに気付いてもらうようにしている」。

鹿茸は、生え始めのシカの角で、強精剤や高級食材として知られる。
宮廷料理を扱うレストランの一部では、
会席料理「満漢全席」で出されることがあり、
「試合前にスタミナをつけよう」と食べるには注意が必要。

JISSは、北京日本人会に依頼して市内の薬店も調査した。
赤間教授は、「基本的に選手村以外での食事は奨励されておらず、
何の保証もない」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77500

「足のむくみ予防研究会」が発足ウオーキング、低圧の弾性ストッキングに予防効果

(日経ヘルス 6月9日)

夕方になると、足首が痛くなる程むくむ。
朝は、普通に履けた靴が夜になるとキツくなる。
女性なら、こんな「脚のむくみ」を経験したことがある人は多いはず。

こうした脚のむくみの予防、解消に関する情報提供を目的とした
研究会「足のむくみ予防研究会」がこのほど発足。

代表世話人には、東海病院下肢静脈瘤・リンパ浮腫・血管センターの
平井正文医師、広田内科クリニックの広田彰男院長、
東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の中村正人准教授らが就任。
発表会当日は、代表世話人の一人である平井医師が
「血流のメカニズムとむくみの正体」をテーマに講演を行った。

むくみとは、皮膚の下に余分な水分がたまった状態のこと。
人間は、両脚で立つという状態によって、
血液やリンパ液などの液体が重力によって、脚に落ちてしまいがち。
本来、脚の筋肉や皮下組織がポンプのように働き、落ちてきた血液などを
押し上げることで循環が生まれる。

しかし、脚のポンプの力が弱いと、余分な水分が脚にたまり、
むくみやすくなる。

平野医師は、脚の周径を画面上に再現して計測する、
三次元形状計測装置(格子パターン投影法)を使って、
周径の変化でむくみ具合を評価。

女子大学生を対象に、90分間椅子に座ったとき、座ったままの状態と、
20分ごとにつま先を上げ下げする足関節運動を10回やった場合の
むくみ具合を調べた。
運動をしないときに比べ、足関節運動をした場合はむくみが抑えられた。

運動によるむくみ解消の効果を測定。
実験では、10分間の空中自転車こぎ、歩行、脚を挙げる、という
三つの動作を行った後に、足の周径を計測。
むくんだ状態の周径から、どの程度引き締まったかを調べた。

結果、空中自転車こぎによって、むくみが最も解消された。
「ただし、立って歩くことは、自らの体重も圧力となって、
水分を押し戻す脚のポンプ作用が強くなる。
普段から、歩くことを意識することがむくみ予防の一番の近道」。

脚の部位ごとに圧力を変えた「弾性ストッキング」のむくみ予防作用にも注目。
健常者であれば、ごく弱い圧迫(8mmHg)であっても、
むくみを予防する効果があることを実験で確かめた。

平野医師は、「むくみ予防を考えた場合、一般人は10mmHg前後、
立ち仕事やむくみやすい人は、20mmHg前後の弾性ストッキングを
着用するのがお薦め。
病的なむくみや、うっ血性心不全や糖尿病、高齢者の使用には、
医師と相談して着用する必要がある」。

同研究会は、今後もシンポジウムやセミナーなどの開催を予定し、
むくみに悩む女性たちへの情報提供を行っていく方針。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20080604/101890/

「海フェスタ」記念式典 秋篠宮さまがお言葉

(東海新報 7月23日)

全国規模の祭典「海フェスタ」記念式典が、
大船渡市民体育館で開かれた。
秋篠宮、同妃両殿下がご臨席し、秋篠宮さまがお言葉を述べられ、
各種表彰が行われた。

アトラクションでは、郷土芸能や地元小学生が熱演を披露し、
三陸らしさに溢れる雰囲気の中で、海の恩恵を未来に残していく
大切さを全国に発信した。

記念式典には来賓、市内外の関係者ら約680人が出席。
オープニングアトラクションとして、同市大船渡町の笹崎鹿踊り、
日頃市町の川内梯子虎舞がそれぞれ披露され、盛大な拍手を浴びた。

秋篠宮、同妃両殿下のご入場では、出席者全員が起立して歓迎。
主催者として、甘竹勝郎大船渡市長が
「海に親しむ心、海に感謝する心を育み、この三陸から全国に発信したい」、
達増拓也県知事が歓迎あいさつを行った。

秋篠宮さまはお言葉の冒頭
岩手・宮城内陸地震で亡くなられた方に哀悼の意を表しますとともに、
被災された方々のご苦労に心からお見舞いを申し上げます」、
一日も早い復興への願いも込められた。

海フェスタについては、「素晴らしい自然環境と世界有数漁場の
三陸地域で開催されることをうれしく思います」と、
開催を通じて海への理解向上に期待を寄せられた。

福田康夫総理大臣のメッセージ紹介に続き、
松島みどり国土交通副大臣があいさつ。
海事関係功労者、絵画コンクール表彰が行われ、
地元関係者も多数受賞。

エンディングアトラクションでは、末崎小6年生が「末小ソーラン」を披露。
児童らは、大漁旗をなびかせながら元気いっぱいの舞を熱演し、
会場を三陸らしさ溢れる歓迎の雰囲気に包んだ。

海事関係功労者表彰者は、次の通り。
▽国土交通大臣表彰=山口三郎(山和商店(有))、
中野利弘((有)大船渡ドック)、小松賀壽文(大嶋電気工業(有))、
中野昭二((有)大船渡ドック)、前田富壽朗(木戸浦造船所(株))、
畠山洋志((株)小野寺鐡工所)、畠山均((株)親和エンジンサービス)、
小野寺剛((株)臼福本店)、麒麟麦酒(株)仙台工場
▽同感謝状=勝倉敏夫、
▽東北運輸局長表彰=福士之雄(宮城県造船鉄工(株))、
吉田博((株)小野寺鐡工所)、高橋一路(石川電装(株))、
今野時夫(同)、伊藤清((株)小野寺鐡工所)、津島直彦(同)、
小松輝男((有)ティーアンドティージャパン)、高橋朋勝(大島汽船(株))、
中村宝市(同)、佐藤昭吉((有)新栄水産)、伊藤英雄(同)、
▽東北地方整備局長表彰=佐藤芳久((株)及川工務店)、
福士雄策(同)、山口弥市(山口建設(株))、小澤勤((株)小澤組)、
(株)佐賀組、さんご島をきれいにする会、高田高校生徒会、
▽第二管区海上保安部長表彰=橋爪幸平(東北汽船港運(株))、
倉澤重司(大槌町漁協)、佐々木戝(広田湾漁協)、中嶋久吉(越喜来漁協)

むくみ:足動かし、解消 長時間同じ姿勢・女性・高齢者……要注意

(毎日 7月4日)

夏は案外、足や顔などにむくみが起きやすい。
長時間のデスクワークや立ち仕事の多い職場では、特に生じやすい。
むくみの解消法を知っておきたい。

◆夏の発症多く

体をあまり動かさないと、動脈側の毛細血管から染み出た水分が
静脈側で再吸収されず、細胞と細胞の間にたまったままに。
その結果、足や顔などの皮膚にたるみが出てくる。これが、むくみだ。

夏にむくみやすいのは、気温が上がり血管が開きやすくなるため。
足で起きやすいが、顔でも生じる。
上まぶたを縦につまみ、つまんだ跡が残るようなら、むくみの兆候。

どんな人に生じやすいのか?
東海病院下肢静脈瘤・リンパ浮腫・血管センターの平井正文センター長は、
(1)同じ姿勢で長時間、作業をしている人、
(2)下着を強くしめつけている人、
(3)やせている人、
(4)女性、
(5)高齢者
で目立つ。

◆昼が効果的

むくみを解消するには、細胞間にたまった水分を血管に押し戻す必要。
最も効果的なのが、足の筋肉を動かすこと。
平井さんは90分間、じっとすわったままでいて、むくみの生じた人に、
さまざまな運動を試みてもらった。

その結果、効果的だったのは、
(1)すわったままの姿勢で足首を上下に動かしたり、回したりする
(2)足を上げて、自転車をこぐようにひざの関節を動かす、
という運動。
この運動後には足の太さが、ふくらはぎをマッサージする場合に比べて、
数ミリ細くなり、むくみの解消効果が確認できた。

平井さんは、「足の筋肉を動かした効果で、細胞間にたまっていた水が
静脈に戻されたのではないか」。

むくみは夕方~夜がひどい。
昼間に足を動かし、むくみを軽くしておくと翌朝にもちこさなくて済む。
足首の運動は、飛行機の長旅で生じるエコノミークラス症候群
(静脈血栓塞栓症)にも有効。

平井さんは女性10人を対象に、弾性ストッキングを着用した場合と
しない場合で足の太さを測った。

その結果、ストッキングをした方が着用しないより足首が数ミリ細い。
むくみやすい人は、弾性度の強いストッキングがお勧めで、
今年4月から、医師の指導料や弾性ストッキングの着用に健康保険が適用
糖尿病が原因で、血行障害を招いている可能性がある人は、
ストッキング着用で血行が悪化する恐れ。
使用前に、主治医と相談するのが賢明。

◆病気の場合も

病気が原因で生じるむくみも。
広田内科クリニックの廣田彰男院長によると、
(1)朝になってもむくみがとれない、
(2)むくみに加え息切れがしたり、尿が出にくい、
(3)体重が増える、
(4)足だけでなく、顔や手にもむくみが出る、
などの症状がある場合には要注意。

腎疾患や肝硬変などの原因が考えられる。
乳がんなどの手術後には、リンパ浮腫というむくみが足に起きる場合も。
「いつもと異なるむくみが現れたときには、内科を受診してほしい」。

http://mainichi.jp/life/health/archive/news/2008/07/20080704ddm013100192000c.html

心筋梗塞:15年で2倍 都市部の中高年男性、ご注意 外食、ストレス増え

(毎日 7月6日)

都市部の働き盛りの男性で、心筋梗塞の発生率が80年代末からの
約15年間で、2倍以上に増えたことが、
大阪府立健康科学センターの疫学調査で分かった。
都市部の女性や農村部の男女に増加傾向はなかった。

心筋梗塞は、ストレスのかかる管理職に多い病気とされるが、
都市部で広く中高年男性に増えている実態が浮き彫りに。
性別や居住地に応じた健康対策が求められそう。

人口や産業形態などから、都市部の代表に大阪府八尾市の一地区、
農村部の代表に秋田県井川町を選び、64~03年の40年間の住民
延べ約16万人の健診データを解析。

その結果、都市部の中高年(40~69歳)の男性で
心筋梗塞を発症したのは、88~95年の8年間で人口10万人当たり56人、
96~03年の8年間では2・3倍の同127人。

心筋梗塞の危険因子の喫煙率は、地域や性別などに関係なく
横ばいまたは減少。
都市部の中高年男性では、別の危険因子である総コレステロール値や
肥満度の目安の体格指数(BMI)が5~7%悪化、発症の危険性が高い。

センターの北村明彦医師(循環器疫学)は、
「外食を取る機会の多い都市部の中高年男性は、食環境の欧米化に伴い、
脂肪分や高カロリーの食材を取りやすい。
労働環境が厳しくなり、ストレスも高まっている」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/06/20080706ddm041040081000c.html

2008年7月22日火曜日

理科再興(3)環境学習に校外パワー

(読売 7月10日)

環境学習に、学校外の知識や人材の活用が進む。
「排ガスから、本当に酸性雨ができるのか?」。
岐阜県池田町立池田中学校での、県先端科学技術体験センター職員
による今年最初の出張授業は、こんなテーマ。
3年生の選択理科の時間を使っている。

内田道伸教諭(44)が、「前回は酸性水溶液を勉強しました。
きょうの授業をしっかり見て、『何が起きているんだろう』と考えてください」、
同センターの宮西祐治さん(42)に教壇を譲る。

生徒は、宮西さんの指示で大きなビニール袋を持って、
学校の駐車場に行き、内田教諭の乗用車と、センターのディーゼル車から、
ガソリンとディーゼルの排ガスを集めた。
窒素酸化物(NOx)で赤くなる試薬を入れて、袋を何度も振ると、
ディーゼルの排ガスの方が、より赤く染まった。

「次は、酸性雨を作ってみよう」。
水蒸気でいっぱいになった理科室の大きな水槽に排ガスを送り込む。
水槽の底のシャーレには、酸性で黄色く染まる試薬が入っている。
やがて水蒸気が冷えて水滴になり、シャーレに落ちた。
「あっ、黄色い」。
水槽に顔をつけて見つめていた生徒が、思わず声を上げた。
「排ガスを集めた時、他に何か感じたことは?」、「熱かった」。

宮西さんは、「車で駐車場を出る時、後ろに植物があれば、
熱もかかっている。環境問題は、私たちがあまり気づかない一つ一つの
行動が積み重なっているんです」と授業を結んだ。

同中への出張授業は、年4回。
環境は、モデル実験が難しい学習内容。
学校の設備だけでは、酸性雨を作るのも大変です」と内田教諭。
センターの協力は、2002年から続く。
過去には、周辺の水質調査なども手がけたが、ここ3年は、
生徒の関心の高い地球温暖化など、環境やエネルギー問題を中心。

環境教育は系統化された教材がなかったため、科学館や企業、NPOなどと
連携し、出張授業を試みる学校は少なくない。
見せる側の都合で用意された一過性のイベントに終わる可能性もある。

内田教諭と宮西さんは、出張授業が、年間の授業計画や前後の授業と
連続性を保つよう、事前の打ち合わせを欠かさない。
学習の狙いを明確にしてきたことが、両者の協力関係を長続き。
「短い時間で実験や講義がスムーズに進むのは、
事前の授業で生徒がよく理解しているから」と宮西さん。
今年は、菜種油からバイオディーゼルを作る実験もする予定。

新学習指導要領は、授業時間を増やしつつ環境教育を重視。
同中は、1学年が8学級と県内最大規模。
これまでは選択理科だけでよかったが、3年生全体に増やすことは難しい。
横山公一校長(57)は、「生徒全体の環境問題への関心や科学的知識の
底上げをどう図るか?学校としてのもうひと工夫が必要」。
学校外の教育資産の上手な活用がカギ。

◆中学理科の環境教育

新学習指導要領では、3年で選択して学ぶことになっていた
「科学技術と人間」、「自然と人間」を必修化し、
「自然環境の保全と科学技術の利用」を新設し、
太陽光発電など自然エネルギーの利用法も学ぶ。
地球温暖化や外来種の問題も詳しくなった。
環境問題について、実生活で何ができるかの判断能力を育てる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080710-OYT8T00189.htm

難しい高度技術者定着 県・大学・高専が意見交換

(岩手日報 7月16日)

高度技術者の地元定着を推進する意見交換会は、県庁で開かれた。
ものづくり産業の担い手を育成する岩手大、県立大、一関高専の関係者と
県の12人が出席。

「受け皿が県内に少ない」、
「優秀な学生は首都圏の大手企業に流出する」など、
技術者が根づきにくい現状が示された。
産業人材の確保に向け、産学官連携による戦略の必要性が浮き彫りに。

県内の高校、大学、高専卒業者の県内製造業就職の割合は、
就職者全体の20%程度。
岩手大の堺茂樹工学部長は、「県内に高度技術を発揮できる職場が少ない」。
県立大の伊藤憲三副学長も、「優秀な学生は大企業志向」とし、
待遇改善や遅れがちな求人への対応、
製造業に対する親の理解醸成などを課題。
「中高生は、全国的に情報技術への興味が乏しい」。

県立大の菅原光政ソフトウェア情報学部長は、企業と連携した人材育成を要望。
学生が力を発揮できるような企業誘致を求める意見も。
県内には、優秀なものづくり企業があるが、教員や学生、保護者の認識は低く、
一関高専の丹野浩一校長は開発型企業のニーズ調査、
即戦力となるUターン人材確保を促した。

堺学部長は、「学生のレベルが加速度的に落ちている」とし、
小中学校での理科教育の充実を注文。
出席者から、
▽高度技術に精通する教員が少ない、
▽大学側が開発型人材育成の仕組みを構築できるか、
などの課題も。

県商工労働観光部の廣田淳部長は、
「人材育成はそれぞれの分野でやっているが、互いに情報提供し、
連携していきたい」と産学官連携を強化する方針。

◆県内の産業人材とは

就職者のうち県内就職割合は、高校が製造業分野で29%(1320人)、
岩手大工学部15%(44人)、県立大ソフトウェア情報学部18%(20人)、
一関高専18%(22人)。
県内の出生数は07年度1万481人、
少子化で数年後には1万人台を割る可能性が高く、
産業人材の確保が課題。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080716_8

「アジアの頭脳」16か国でデータベース化…競争力強化で構想

(読売 7月6日)

政府は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に日本、中国、インド、韓国、
オーストラリア、ニュージーランドを加えた「ASEANプラス6」の16か国間で、
科学技術研究者の交流を促進する「アジア頭脳循環構想」を策定。

アジア地域の底上げを図り、米国、欧州連合(EU)に次ぐ第3勢力として、
日本主導で国際競争力の強化を進める考え。
フィリピンで開かれる16か国によるアジア地域科学技術閣僚会合で、
岸田科学技術相が提案。

この構想は、16か国で進められている科学技術プロジェクトに参加する
大学・研究機関の研究者情報を集約した統一データベース
「アジア科学技術人材情報プラットホーム」を構築。

各国の政府や研究機関に、他国からの人材確保の手段として活用し、
アジア地域内での共同研究を加速させる。
政府は、研究人材情報を手始めに、研究事業の概要、研究から生まれた
知的財産などもデータベース化していく方針。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080706-OYT1T00014.htm

地球と暮らす:/52 環境リレーションズ研究所 森林再生をプレゼント

(毎日 7月8日)

「秋は新潟県佐渡島で木を植え、トキの復活を支えたい」。
NPO「環境リレーションズ研究所」の鈴木敦子理事長(38)は、
4年目に入った独創的な植林事業「プレゼント・ツリー」の進化を目指す。

この事業は、市民が植林を代行してもらう代金を払い込むと、
指定した贈り先に同研究所から「植林証明書」が送られるサービス。

05年から今年3月末まで、インドネシア・カリマンタン島や
北海道幌加内町など国内外4カ所で計1万6134本を植え、
延べ2万858人が植林の証明書をプレゼントする形で事業に参加。

木の本数や参加者を詳細に把握できるのは、樹木を1本ずつ、
識別番号で管理している。
植林後はそれぞれの木を10年以上、維持管理していく方針で、
枯れてしまったら同じころに植えた元気な木と交換。

「自分の樹木」に愛着を感じてもらい、長期間にわたる森林再生活動を
共に支える仕組みを作り上げた。
「関係者にそこまで厳密にやるのかといわれ、大変だった」。
鈴木さんは、事業を始めたころの苦労を振り返る。

しかし、市民の大切なお金を使い、行政や企業と協力して事業をするには、
妥協するわけにはいかなかった。
地道な努力は評判を呼び、今では「自分たちの地域にも木を植えてほしい」と
声がかかるまでに。
活動を続ける中で、日本人の環境意識、感度の高さをしばしば感じている。

一方、その感度を環境保護に役立つ行動に結びつけるにはどうしたらいいのか、
考え続ける日々。
団体名の「リレーションズ」には、そんな「感度」と「行動」をつなぐ思いも込めた。
「プレゼント・ツリー」事業はその一つの結果。

鈴木さんは、環境NPOが直面する「誤解」を解かなければ、と思う。
「収益事業をやってはいけない」と勘違いされていること。
NPOだからこそ、事業を手間ひまかけて実施し、信用を得ないといけない。
労働力も、コストもかかる。対価を受け取ることは、当然の権利だ。
だから「持続可能な環境活動は、ビジネスとして成り立つ側面も大切だ」。

今後も、市民の「感度」と「行動」を結び、経済的にも自立できる
環境活動に全力投球する。
==============
◇環境リレーションズ研究所

NPO法人化は03年で、事務所は東京都千代田区。
「プレゼント・ツリー」のほか、市場調査やセミナー、ワークショップなど
さまざまな事業を手がける。
http://www.env-r.com/index.php

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/08/20080708ddm016040105000c.html

胎児の生物時計:母の食習慣が影響 東北大助教、ラットで確認

(毎日 7月13日)

ラットの胎児の体内で、約24時間周期のリズムを刻む「生物時計」が、
昼夜の日照の変化ではなく、妊娠中の母親ラットがいつ食事をするか
という「食習慣」の影響で決まることを、
東北大病院周産母子センターの太田英伸助教(発達生理学)らが発見。
多くの生物は、生物時計を刻む時計遺伝子を持っている。

太田助教らは、胎児の生物時計が母親から受ける影響を調べ、
人工照明で12時間ずつ昼夜が交代する環境を作り、
妊娠中のラット10匹を飼育。

5匹は1日1回、照明の点灯から5~9時間後にだけえさを与え、
残る5匹はいつでも自由に食べられるようにした。
後者の5匹は、夜行性の習性で自然と暗くなってからえさを食べた。

母親と胎児の脳と肝臓で時計遺伝子「Per1」の発現と、
日照を受けた情報を伝えるホルモン「メラトニン」の分泌リズムを調べた。

母親は、昼に食べたグループも、夜に食べた方も全く同じリズム。
胎児は、母親が昼型の食事をしているとリズムのピークが昼だが、
夜型だとピークも夜に変化した。

母親の生物時計は、人間が太陽を浴びて時差ぼけを治す時のように、
日照の変化で決まるが、胎児は日照以上に、
母親の食事スケジュールの影響を強く受けている。
胎児も生まれた後は、日照リズムに合わせて生物時計が調整される。

太田助教は、「生物時計の仕組みは人間でも共通で、
妊娠中のお母さんの生活リズムが赤ちゃんの成育に重要だと再確認できた。
この成果を元に、早産の赤ちゃんの生物時計をきちんとコントロールできる
保育器の開発などに生かしたい」。
米国のオンライン科学誌「プロス・ワン」で発表。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/13/20080713ddm016040048000c.html

男性の肥満は精子に悪影響、英研究者が生殖医学会で発表

(CNN 7月10日)

肥満の男性は、標準体重の男性に比べ、精子の状態が悪くなるという
研究結果が、ヨーロッパ生殖医学会で発表。

英アバディーン大学の研究チームは、
スコットランドの男性約5000人の精子を分析、
体重を身長の2乗で割った肥満度を表すBMIとの関係を調べた。

結果、BMIが標準値の20─25の男性は、太りすぎまたは肥満の男性に比べ、
正常な精子の割合が高かった。

肥満の男性は、精液量減少の確率が60%高くなり、
精子に何らかの異常がある確率も40%高かった。

やせ過ぎの場合も、肥満と同様の問題が出るとみられるが、
スコットランドにはやせ過ぎの男性はあまりいない。

子供ができにくくなるなどの影響があるかどうかは不明だが、
別の研究者によれば、女性の場合は肥満で妊娠しにくくなり、
男女とも肥満のカップルは問題かもしれない。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200807100014.html

2008年7月21日月曜日

理科再興(2)実験前 考え練り討論

(読売 7月9日)

実験を通して、論理的な思考力を育てる授業がある。
埼玉県川口市立仲町小学校で、学級担任を持たない理科専科の
池田和夫教諭(58)は、二つの集気びんにそれぞれ、
二酸化炭素と酸素を満たし、ガラス板でふたをした。
次に、酸素のびんを逆さまにして、二酸化炭素のびんの口に重ね、
ガラス板を静かに抜いた。

「二酸化炭素を入れたびんの中で、ろうそくの火は燃えるのか」。
池田教諭の出した課題に、6年1組の児童は、一斉に結果を予想して
ノートに書き込む。指名されると、次々にそれを読み上げていく。

「燃えると思います。二酸化炭素も、酸素があれば燃えるからです」、
「燃えないと思います。びんの中をかき混ぜていないからです」

予想には、根拠をつけるのがルール。
次は、討論の時間。
「なぜ混ざらないと思いますか」、
「酸素より二酸化炭素の方が重いからです」、
「二酸化炭素が下に集まるなら、地面の小さな生き物は死んでしまう」、
「地球は、風で空気が動いています」……。
相手の意見を整理した上で、自分の最終予想をノートにまとめる。

「では、やってみよう」と池田教諭。
ろうそくの火は、二酸化炭素を満たしたびんの中に入れても燃え続け、
子供たちから「おーっ」と歓声が上がった。

子供たちはまたノートに向かい、目の前で起きた実験結果を書き、発表。
気体の分子が、猛スピードで飛び回ることを説明したプリントが配られ、
全員で音読。
池田教諭が、「かき混ぜなくても、混ざるのが気体の性質」
と解説して授業を締めた。

子供たちは、何度も考え、それをまとめて書き、
意見と理由を発表することを繰り返す。濃密な45分間。
こうした授業法は、「アクティブラーニング」と呼ばれ、大学にも広がっている。
実験を見せて、「なぜ」を問うのではなく、
実験が「どうなるか」を徹底して考えさせる。
そうすることで、知識の確実な定着を狙っている。

根拠をつけて予想するには、過去の学習内容や生活の知識などを
動員して考えるしかない。
考えは書くことで頭の中で整理され、討論によって
他の意見との葛藤が起きる。
最後に印象的な実験を見せ、全員の思考が「気体は混ざり合う」という
科学知識に、自然に到達する仕組み。
児童のノートは、3か月でいっぱいになる。

理科の新学習指導要領では、論理的な思考力の育成と、
小中高と続く学習内容の系統性が強調。
気体の分子運動は、中学以降の学習内容。

「順序立てて思考を進めれば、小6でも次に
『なぜ気体は自然に混ざってしまうの?』という疑問に行き着く。
今覚える必要がなくても、子供が知りたい時に回答を用意することは、
学習の積み重ねと系統性で大事なこと

授業は、科学者の新発見が「仮説、考察、論争、検証」と経るのと、
同じ順序をたどってもいる。
知を発展させる人間の営みが、思考力を育てる子供の授業のヒントに。

◆アクティブラーニング

能動的学習や参加型学習と訳される。
教師が知識を説明し、生徒が受け身になる学習ではなく、
生徒の自発的で論理的な思考や討論などを通して、
分析や意思決定をしたり、正解にたどりついていく学習。
欧米の大学で注目され、
東京大学などが授業モデルの研究や実践を進めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080709-OYT8T00240.htm

[第3部・中国](中)引退後は夫婦で企業家

(読売 7月10日)

5月の胡錦濤・国家主席訪日の際、福原愛(ANA)とともに
卓球の相手を務めた彼女の名を、中国で知らない人はいない。

北京五輪で、中国女子で初の3大会五輪出場を果たす王楠(29)。
19歳の郭躍、26歳の張怡寧に次ぐ3人目の代表に滑り込んだ。
だが、ソウル五輪以来、シングルスの金メダルを独占してきた
「女子エースの系譜」を伝える者として、
「一姐(イージエ)」(一番上のお姉さん)と呼ばれる。

中国選手では珍しく、すでに夫がいる。
山東省で不動産業を営む郭斌さん(37)で、派手なパフォーマンスで
卓球女王の心を射止め、2005年10月に結婚。
アテネ五輪の事前合宿中の王楠を、BMW約10台を仕立てて激励。
世界選手権で王楠がベスト16で敗退すると、
その夜のうちにバラ10001本を贈った。
バラの本数には、「1万人の中で一人だけ」という意味。

そんな華やかな夫妻は、「王楠ブランド」スポーツウエアの起業を計画中。
北京五輪後の引退を表明し、王楠は富豪夫人兼企業家の座が待っている。

中国にとって、卓球は特別なスポーツ。
1950年代から強化が進められ、中国選手は世界選手権、五輪を
席巻してきた。
国民的スポーツとしても定着、国家体育総局によると、
ほとんどの小中学校に卓球台が配備。

世界選手権や五輪などで活躍した卓球選手たちには、
地位と名誉が与えられる。
草創期に、世界選手権3連覇を果たした荘則棟さんは、
33歳で国家体育運動委員会(現・国家体育総局)主任(大臣に相当)。
王楠も、昨年の中国共産党大会に党員代表の一人として参加。

市場経済化が進む中国スポーツ界で、選手が手にすることが
出来るのは、名誉にとどまらない。
米経済誌フォーブスの08年中国版有名人長者番付で、
米プロバスケットボール協会(NBA)の姚明、
07年世界陸上大阪大会男子百十メートル障害王者の劉翔が、
芸能人を抑えて1、2位を占める時代。

バルセロナ、アトランタ両五輪で女子シングルスを連覇した
トウ亜萍さんの故郷、河南省鄭州。
40台の卓球台が並んだ体育学校で、9歳の貝貝が、
年上の子とボールを打ち合っていた。
河南省チームのコーチの娘で、“金の卵”だ。
「私も、トウ亜萍や王楠になりたい」という貝貝も、
将来、巨万の富を手にするのだろうか。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080710.htm

豊かな海の秘密満載 陸前高田・博物館企画展

(岩手日報 7月20日)

陸前高田市海と貝のミュージアム(菅野久平館長)の
夏季特別企画展「奇跡の海・三陸~その豊かさの秘密に迫る」は、
同市高田町の同館で始まった。
同日開幕した「海フェスタいわて」の協賛事業。
北里大海洋生命科学部(大船渡市三陸町)の学生と同館が共同で企画。

導入部は、「三陸の貝塚」。
陸前高田、大船渡の両市は、考古学史上貴重な縄文時代の
貝塚遺跡が集中している。
質、量ともに国内最高という出土品の中から、
釣り針やマグロの骨、貝などを紹介。

縄文人の生活を支えた三陸の海の豊かさの秘密は、
親潮と黒潮がぶつかり合う環境にあることを解説。
北里大の学生が、北と南から来る多様な魚類の模型を製作。

「しんかい6500」が、三陸沖で撮影した東北初公開の映像や
採取標本などを展示。
稚魚の餌場や隠れ家になる波打ち際の重要性を、
立体模型や水槽を使って解説。
総展示数は、500点に及ぶ。

同大大学院の内田博陽さん(水産学研究科修士課程2年)は、
「今回のために、ヨシキリザメなどのはく製を作った。
サメ肌の感触など、実際に触れてみてほしい」。
母親と会場を訪れた一関市東山町田河津の小野寺航輝ちゃん(3)は、
「貝のスタンプを押したりするのが楽しかった」。

同展は10月31日まで。
入館料は高校生以上500円、小中学生300円。
同市立博物館では9月14日まで、夏季特別展
「漁具展~漁を支えた先人の知恵」を開いている。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080720_4

ボートの日本代表と交流 いわてスーパーキッズ

(岩手日報 7月20日)

トップアスリート輩出を目指す「いわてスーパーキッズ発掘育成事業」
(県教委、県体協主催)のスペシャルスクールは、
花巻市東和町田瀬の東和B&G海洋センターで開かれ、
スーパーキッズの児童生徒が、田瀬湖で合宿中の
北京五輪ボート日本代表チームと交流。
練習を間近で見て、トレーニングを体験、
五輪選手が鍛え抜く姿を肌で感じた。

約70人が参加。
モーターボートで選手のボートに伴走したり、
陸上トレーニング用器具を体験するなどした。

艇庫で行われた交流会では、盛岡市の北松園小6年上浜理子さんが
「わたしたちも将来のオリンピックを目指し、頑張って練習します」。

日本代表の武田大作選手が、競技用ボートの特徴や構造を説明。
浦和重選手は、「自分たちは、勝利を信じて頑張ってきます」
と意気込みを述べた。

岩本亜希子選手、熊倉美咲選手は、「みんなは可能性の塊だ。
人よりも多く、努力を重ねてほしい」とエールを送った。

選手から児童らに、記念のバッジが贈られた。
練習を終えたギリシャ代表チームとも対面できた。

奥州市水沢区の水沢南小6年小野寺峻一君は、
「選手はとても苦しい練習をしていた。自分も頑張りたい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080720_11

海の「白鳥」大船渡寄港 海フェスタいわて

(岩手日報 7月21日)

大船渡市など沿岸南部3市2町で開かれている「海フェスタいわて」は、
目玉イベントである世界最大級の練習帆船「日本丸」のセイルドリルが、
同市の茶屋前埠頭で披露。
セイルドリルは、日本丸の巨大な帆を広げる訓練。
日本丸に乗り込む91人の実習生の腕の見せどころとあって、
埠頭には多くの観客が詰め掛けた。
実習生と乗組員計110人が、高さ40メートル以上のマストに登り、
徐々に純白の帆を広げた。
重さが約2トンある帆のロープを力を合わせて引くと、
畳1673枚分という巨大な帆が現れた。

実習生の躍動感ある動きに、観客からは大きな拍手。
一戸町一戸の主婦坂本章代さん(36)は、
「日本丸は本当にきれい。あんなに大勢の人が一生懸命帆を
広げている姿に感動した」。
海の日の21日は、日本丸の船内一般公開などが行われる。

子供の肥満対策、果物と野菜を無料で学校へ EU

(CNN 7月9日)

欧州連合(EU)は、子供たちの肥満解消に向け、
果物と野菜を学校に無料で配布する方針を明らかにした。
年間9000万ユーロ(約152億円)をかけ、EU域内の学校に配布。

計画実施には、EU加盟国の承認が必要。
EU域内には、約2200万人の肥満児童がいる。
EUは肥満の原因について、食生活の乱れと判断。
医学的な治療が必要な肥満度の高い子供は500万人以上、
その数は年々40万人増えると予測。

肥満率を減少させ、将来の心疾患リスクを下げるためにも、
食生活の改善が重要だとして、果物と野菜を多く取り入れた食事を提供するため、
無料配布の方針を決めた。

世界保健機関(WHO)は、1人当たり1日に果物と野菜400グラムを
摂取するよう推奨。
しかし、欧州人の多くはこの基準を満たしていない。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200807090024.html

2008年7月20日日曜日

理科再興(1)農作業・実験実習「教えたい」を養う

(読売 7月8日)

教員の自然体験や生活体験不足が、理科の指導力低下につながる。
梅雨曇りの空の下、女子学生が慣れない手つきで、
畑にクワを振り下ろす。
ぬれた土がはね、ズボンや腕、顔を容赦なく汚していく。

畑は、大妻女子大狭山台キャンパスの中にある。
同大は、野菜の栽培や理科実験、料理などを体験する
「児童学基礎体験演習」を、家政学部児童学科の1年生の必修。
小学校や幼稚園の教員、保育士をめざす学生が多く、
野菜作りは、生命をはぐくむ力や命の大切さを学ぶと同時に、
土遊びや植物の栽培、自然観察などに、心理的な抵抗感をなくすことも狙い。

岡健准教授(45)は、「理科や生活科を教える以前に、
自然や生活体験が乏しく、子供とうまく向き合えない学生が増えている」。
農作業や土いじりが、「意外に楽しい!」と笑顔を見せる学生たちに、
「虫は大丈夫?」と尋ねると、一斉に「きらーい」。

農作業を終えた学生は、金属の成分を炎に入れ、
様々な色が付くことを経験する炎色反応の実験に取り組んだ。
照明を消した実験室で、ホウ酸を溶かしたアルコール溶液から
緑の炎が上がると、学生が「すてき」、「ディズニーランドみたい」。

小学校教員を目指す学生は文系が大半で、
もともと理科の知識や実験、観察の体験が少ない。
小学校は、全教科の授業力が必要になるため、
理科の関連授業は、他教科と同じ2科目4単位で修了することが多く、
実験の指導まで十分に手が回らないのが実情。

「今は理科が嫌いでも、小学校までは好きだったという学生が多い」と
小学校教員の経験が長い石井雅幸准教授(49)。
「実験室の加熱器具や薬品を安全に扱う技術を覚えるだけでも、自信に」。
実験を見せるだけに終わらず、実験の科学的な意味を理解し、
実験で何を学ばせるか、を意識できる教師を教壇に立たせるのが目標。

「自分が感動すると、子供に教えたいという思いも強く抱く。
教員の養成課程で、生活体験や理科の実験を、意識して仕組む必要」

千葉県は昨年、「児童生徒の理科離れ対策事業」を始め、
小学校の新任教員を対象にした夏の校外研修で、
理科の観察や実験を学ぶ実習を必修。

しかし、昨年の研修や学校からの報告で、「虫にさわれない」、
「ガスバーナーやメスシリンダーが使えない」、
「顕微鏡のネジを逆に回してねじ切った」、「マッチがすれない」、
「ザリガニをはしでつかもうとする」といった実験以前の弱点。

県は、理科授業を得意とする教員43人を、「サテライト研究員」に委嘱、
県内5地区14会場で講師として研修を指導。
子供の興味を引き、思考力を高める実験の技術を直接、学ばせる。
「実験器具の扱い方など基本の指導を、昨年より入念にすべき」。

かつては小学校のベテラン教員が、放課後に若い教員に実験を指導。
しかし、放課後も教務が忙しくなり、
授業技術を後輩に伝える機会が減っている。
県総合教育センターの高安礼士・カリキュラム開発部長は、
「子供の理科離れは、教員の苦手意識も一因。
団塊教員の退職が進む中、県独自に理科に強い教員を育てる必要がある」

技術立国の看板の陰で進んできた、子供の理科離れ。
理科教育の再興には、理科に強い教員の育成が鍵を握る。

小中学校の新学習指導要領は、理数教育の充実を図っている。
完全実施は、小学校は2011年度、中学は12年度だが、
小学校理科は来年度からほぼ全面的に前倒し実施され、
年間総授業時間は350時間から405時間に増える。
新しい理科は、観察・実験や自然体験を通じた
「実感を伴った理解」を強調。

しかし、科学技術振興機構の05年度の調査では、
理科を苦手と答えた小学校教員は61%。
理科授業の課題に、「準備・片づけに手間がかかる」(66%)、
「教材作成等の工夫が必要」(55%)、
「実験に失敗するなど教科書通りに教えられない」(51%)。

大学時の専攻は、教育系66%、文学・経済・法学系が12%。
理学系と工学系は各1%。

小5~中3の児童生徒を対象にした国立教育政策研究所の
03年度の調査では、「理科が好き」と答えたのは、
全学年で、国語、社会、算数・数学、英語を上回った。
しかし、「受験に関係なくても大切だ」は、
理科が軒並み低く、中3は55%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080708-OYT8T00201.htm

[第3部・中国](上)家族恋しい「金の卵」

(読売 7月9日)

湖北省黄石市の程立皋さん(47)一家の自宅は最近、
以前の3倍の広さとなった。
仕事も、妻の徐春香さん(41)がレイオフ(一時解雇)された後、
400元(約6000円)の月収で家計を支えてきた港湾関係の
会社勤めから、スポーツくじの販売店経営に。
月収は、2倍以上に増えた。

すべては、一人娘の活躍による。
中国のお家芸、女子体操のエース程菲(20)。
2005年に編み出した跳馬の高難度オリジナル技は、
「程菲跳び」と名付けられた。
北京五輪で金メダル有力候補と期待されるスター選手の両親として、
市の仲介により、新居と条件の良い仕事が与えられた。

以前の住まいは、壁がはがれ、レンガがむき出しになった
38平方メートルのアパートの一室。
11歳で省のチームに入った程菲は、寄宿舎住まいで、
13歳でナショナルチーム入りしてからは、実家に戻ったことはない。

衣食住は、省と国が保証する。
省の代表選手となってからは、1000~2000元の月給。
その給料は欠かさず、父母に送り続けてきた。
徐春香さんが専用に作った銀行口座の残高は、数万元に上る。

新居は、2LDK128平方メートルの高級マンション。
娘が足を踏み入れたことのない寝室のベッドの上には、
程菲の大きな肖像写真が飾られている。
母は、「好きな服とか、自分のために使いなさいと言うのに、聞かないの。
結婚費用にでも充てようかしら」。

社会主義国独特の選手育成システムは、
才能ある子供とその親にとって貧しさから、はい上がる手段。
幼い程菲が、「体操をやめたい」と言い出した時、
父は厳しくしかって思いとどまらせた。

広州市の「広東省体操後進人材基地」。
暗い練習場の片隅で、レオタード姿の林思揺ちゃん(8)が泣いていた。
昨年から、300キロ以上離れた汕頭から寄宿舎に入っているが、
半年ぶりに見学に訪れた祖父母の顔を見るなり、ホームシックに。

全国屈指の「体操どころ」である広東省で、
13か所の「基地」に入るだけでも並大抵ではない。
コーチ陣は、「レッスン」の名目で地方の小学校を回り、
身体能力や反応力に優れ、足や腕がピンと伸びた、
体操向きの子をスカウト。

子供たちは、まだ親が恋しい年ごろ。
張稼強コーチ(48)は、「ホームシックになる子は、本当に多いんだ」
とため息をついたが、
「将来は世界、五輪チャンピオン」と期待する祖父は心を鬼にして、
「おうちに帰りたい」と涙を流す孫を説き伏せた。
「林家の栄光のために、頑張りなさい」

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080709.htm

豊かな三陸、願い込め 海フェスタ開幕

(岩手日報 7月19日)

「三陸の豊かな海にたくす夢」を大会標語に、
「第6回海フェスタいわて」(同実行委主催)は19日、開幕。
大船渡市盛町の市民体育館では約650人が出席して
開会式が行われ、フェスタの成功を誓った。
沿岸南部3市2町を会場に、27日までの9日間、
100を超す多彩なイベントが繰り広げられる。
午前9時40分からの開会式には、国内の海事関係者や国、県、
地元関係者らが出席。
地元の前田子ども鹿踊りが披露され、開幕を元気に宣言。
主催者を代表して実行委員会会長を務める甘竹勝郎市長は、
「今フェスタは、海洋基本法が施行されて初の開催。
3市2町が一体となって、海に感謝する心をここ三陸から全国に発信したい」

宮舘寿喜副知事、国土交通省東北運輸局の木場宣行局長が祝辞。
大会標語の作者の田村靖彦さん(奈良県三宅町)、
シンボルマーク作者の海老原章さん(静岡市)らをそれぞれ表彰。
開催地の大船渡、陸前高田、釜石、住田、大槌の5首長が
ステージ中央にそろってがっちりと握手。
フェスタの成功に向けて、思いを新たにした。
世界最大級の練習帆船「日本丸」(2570トン)が入港。
大船渡湾をゆっくりと進み、大船渡海洋少年団のメンバーらが
手旗信号で出迎える中、茶屋前埠頭に接岸。
広田マリンキッズの菅野智楠さん(広田小2年)は、
「日本丸は、とても背が高くてびっくり。
船員さんは、私たちの手旗信号にちゃんと応えてくれた」と大喜び。
大船渡港には、護衛艦などの大型船が4隻入港し、
フェスタの開幕を祝福。
入港歓迎セレモニーなどが行われ、早くも家族連れらでにぎわった。

血流を促すNO(一酸化窒素)の生理活性を発見したルイス・イグナロ博士が来日

(日経ヘルス 6月9日)

一酸化窒素(NO)が血管内皮細胞で生産され、血管の平滑筋組織に
働きかけて血管拡張に作用することを発見、
1998年にノーベル賞生理学賞を受賞したルイス・イグナロ博士が来日。

イグナロ博士は、米国や欧州、日本などで肥満や糖尿病予備軍が
増え続けていること、米国ではここ15年で心疾患で死亡する人間が
倍増したことを指摘。

NOは、血流を促すだけでなく、動脈硬化や高血圧の予防、
脳の記憶中枢にも働きかける。
特に生活習慣病の疑いがある人は、NOの重要性を知ってほしい」

現代人は、精神的なストレスのほか、身体的ストレスもためこんでいる。
不規則な生活スタイルや乱れた食生活で、体にストレス負荷がかかると、
体内でフリーラジカル(活性酸素)が生まれる。
フリーラジカルが、脂肪酸を攻撃して過酸化脂質に姿を変えると、
細胞や体内に入りこんでダメージを与える。

NOは、フリーラジカルを相殺するが、NO本来の働きが打ち消され、
結果、血流が滞ってしまう。
この状態が続くと、内臓脂肪の蓄積や血圧の上昇などの症状が重なり、
生活習慣病のリスクが高まる「メタボリックシンドローム」に結びつく。
ガンや心疾患、脳梗塞などの病気にもつながる。

こういう事態を避けるため、イグナロ博士は、
「体内でNO産生がスムーズに行われることが重要。
それには、次の三つ生活習慣に気をつけて欲しい」。

一つがバランスのとれた食生活、二つめは心拍数を上げる運動、
最後がサプリメントによる成分補給。

体内でのNO産生に重要なカギを握っている抗酸化物質は、
本来ならば食事から摂取すべきだが、
「現代人の生活では、食物だけで十分な抗酸化物質を摂取するのは難しい。
いざ摂取しようとすれば、食べ過ぎのリスクも。
それを避けるために、足りない分はサプリメントで補給するといい」。

推奨される抗酸化成分は、ベータカロチン、リコピン、ビタミンE、CoQ10など。
「NOの原料となるアミノ酸、Lアルギニンと、腎臓のサイクルで
アルギニンに変化するLシトルリンを摂るのもいい。
シトルリンを摂るときは、アルギニンと一緒に摂取するのがベスト」。

イグナロ博士は、現代女性の生活スタイルにも触れ、
15年前に比べて、女性を取り巻く社会環境は大きく変化した。
男性と同様にパワフルに働くようになった結果、睡眠不足、タバコを吸う、
食べ過ぎるといった状況に陥りがち。
意識して、生活スタイルを改善することを心がけてほしい」。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20080604/101888/

当世留学生事情(15)伊藤嘉明さんに聞く…優秀な研究者 呼び水に

(読売 7月5日)

シンガポールに移った元京都大教授は日本をどう見るか?

「ここでは、いい研究さえしてくれればいいと言ってくれ、
研究費も潤沢。研究に集中できる」。
シンガポール国立大医学部腫瘍学研究所長で、
シンガポール分子細胞生物学研究所教授を兼ねる伊藤嘉明さん(69)。

京大時代に、白血病や胃がんの発症に関する遺伝子を発見、
定年退官で研究が止まるのを嫌って、シンガポールに移った。
助手や大学院生ら9人を引き連れての移籍で、
研究室丸ごとの人材流出と騒がれた。
あれから6年。
国家目標に「バイオ立国」を掲げたシンガポールの研究所群
「バイオポリス」の一角で研究を続ける。

「黙っていたら、海外からは人材は来ない。
この国は、一流の人材の集め方が徹底している」。
潤沢な研究費を約束し、2年契約や、1年のうち3か月だけ同国に滞在
といった条件で教授を招くことも多い。
研究者の妻ごとリクルートする例も。
がん抑制遺伝子の発見で知られるデビッド・レーン氏(英)ら、
ノーベル賞級の教授を次々に招いた。
一流の研究者を慕って、優秀な学生も海外から集まってきている。

「短期でも、まず来てもらうことが重要。
その教授のつながりで、後任に良い教授が来る、
付随して若い研究者も来るという良い循環が生まれている」

日本でも、動きはある。
世界最高水準の自然科学系研究・教育機関を目指し、
政府が構想を進める沖縄科学技術大学院大学
世界一流の主任研究者を50人以上そろえる計画を持つ。
シンガポールのバイオ立国構想を指揮したノーベル生理学・医学賞受賞者、
シドニー・ブレンナー氏を準備組織「沖縄科学技術研究基盤整備機構」の
理事長に招いた。

しかし、検討が始まった2002年当初に予定していた06年開学が
延び延びになっている。
「ブレンナーはワンマンかもしれないが、実績がある。
日本の官僚は、彼の流儀についていけていないのでは」

シンガポールでは、学生の招請にも積極的。
同国の科学技術研究庁長官を務めたフィリップ・ヨー氏が、
今でも各国を回り学生勧誘に努める。
「米ハーバード大だって、学生勧誘のために旧ソ連諸国に行っている。
今はそういう時代だ」

人材流出にも警鐘を鳴らす。
研究がこれからという時期に定年になった自身の経験から、
「画一的な定年制は無意味。
日本は、教授に事務が集まりすぎて、研究する時間が限られる」。

「日本のあの研究所、研究室で勉強したいという研究者は世界に多いが、
非常に閉鎖的で、国際的に過小評価されていてもったいない」。
子供の教育、住宅事情、英語講座の増加など
受け入れ環境の整備も必要。

「日本人は均質だけに、質の違う人が入れば、刺激されてより発展する。
一流の人材のリクルートと環境整備を並行して進めていかなければ、
日本はじり貧だ」。
英米での留学経験も踏まえた最後のひと言に重みがあった。

◆いとう・よしあき
東北大助手、京大ウイルス研究所教授、同所長などを経て、
2002年から現職。医学博士。69歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080705-OYT8T00243.htm

転倒予防医学研究会 「健脚度」介護重症化、死亡の予測ツールに

(じほう 2008年7月14日)

転倒予防医学研究会らは、高齢者の移動能力評価法
「健脚度」測定の有効性に関する報告書をまとめた。
健脚度を測定した高齢者を、7年間追跡調査したところ、
健脚度のレベルが、その後の要介護状態、介護の重症化、死亡への移行に
影響を与えていることが分かった。

健脚度の3段階評価で「低い」と判定された高齢者は、
普通と判定された高齢者に比べ、5年後に要介護状態となる危険性が2.50倍、
要介護2以上でも2.26倍。

調査報告書は、「運動器の10年日本委員会」が進める
健康寿命の延伸に関わる調査研究事業の一環。
研究題目は、「要介護状態への移行を予測するスクリーニング、
及び運動器の重要性を啓発する手法としての高齢者移動能力評価法
『健脚度測定』の有効性に関する研究」。

◆健脚度総合得点は3段階で解析

調査対象となったのは、2000年に長野県北御牧村(現東御市)在住の
65歳以上の高齢者で、健脚度測定の参加者786人のうち、
移動能力測定値が欠損していた高齢者を除く630人。

健脚度測定は、<1>10m全力歩行、<2>最大1歩幅、<3>40cm踏み台昇降、
<4>つぎ足歩行の4項目、それぞれの項目を3段階で評価。
評価の良い順に2点、1点、0点に点数化、4項目の合計点数を
健脚度総合得点(8-0点)とした。
総合得点は「高い」(8-6点)、「普通」(5-3点)、「低い」(2-0点)の
3つのカテゴリーに分けて解析。
エンドポイントには、「要介護状態」、「要介護2以上」、「死亡」を設定、
観察期間は00年4月から07年10月まで。

◆健脚度低い高齢者は、要介護状態2.50倍、要介護2以上2.26倍

コックスの比例ハザードモデルとKaplan-Meier法による解析結果をみると、
健脚度総合評価の3段階では、すべての転帰で有意な関連性が認められた。
健脚度の総合点数が低ければ要介護状態、要介護2以上、死亡といった
3つのエンドポイントの危険度が高まり、逆に高ければ危険度は低くなる結果。

健脚度が「低い」と判定された高齢者は、「普通」と判定された高齢者に比べ、
要介護状態となる危険性が2.50倍、要介護2以上は2.26倍、死亡1.88倍。
総合評価で健脚度が「高い」と判定された高齢者では、普通に対して、
要介護状態で0.47倍、要介護2以上は0.39倍、死亡0.65倍と危険性が低くなる。

健脚度総合評価の3分類の累積生存率では、
すべての転帰で評価段階ごとの差が確認。
5年後に「要介護状態」にならない確率(5年生存率)は、
総合評価が「高い」91%、「普通」82%、「低い」60%。
低いと判定された高齢者では、7年後に39%まで減少。

健脚度が低いと判定された65歳以上の高齢者10人のうち4人が、
5年後に要介護状態、7年後には6人以上が要介護状態となる計算。
要介護2以上にならない率(5年生存率)は、「高い」96%、「普通」91%、「低い」81%。
死亡しない率(5年生存率)は、「高い」93%、「普通」89%、「低い」81%。

毎年実施する健脚度測定に継続的に参加した群と参加していない群に
分けての解析も行った。
結果、継続して参加することと有意な関連がみられたのは、女性の歩幅のみ。
「この違いは顕著で、継続的に参加している高齢者の歩幅は
ほとんど低下していなかった」。
年1回の限られた時間での情報提供のみで、7年後も変化がなかったとして
「健脚度測定を活用した働きかけの有効性を示す結果といえる」。

◆「老化は脚からを示すエビデンスに」

研究代表者を務める岡田真平氏(身体教育医学研究所)は、
今回の成果について、「健脚度の総合評価が低ければ低いほど、
要介護状態、要介護2以上、死亡の発生率が高まる。
今後、健脚度測定を活用した介護予防の取り組みを進める上で
有益なデータとなりうる。
『老化は脚から』が具体的なエビデンスとして示された」。

継続的に健脚度測定に参加することで、
「移動能力の低下を抑えることができる」。
健脚度測定が運動器の重要性を啓発し、
「結果として、介護予防に資する指導手法として有効である可能性を示した」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77264