2009年7月25日土曜日

市民力を鍛える(6)法教育 法曹から助言

(読売 7月23日)

ルールがなぜ作られるのかを教えることで、規範意識を育む。

「証人は被告の親友だから、かばいたくなるんじゃないかな」、
「被告も証人の話も疑わしいけど、それだけじゃ有罪にできないよ」

福井市の福井大学付属中学校で、3年生の授業として
開かれた模擬裁判
森田史生教諭(41)が時間切れを告げても、
判決を検討する議論はやまなかった。

模擬裁判は、30歳代の男性が福井市内の電器店で
人気のゲームソフトを盗んだ疑いで逮捕、起訴されたという設定。
生徒たちは、「裁判官・裁判員」、「検察官」、「被告・弁護士」など
役割ごとに八つの班に分かれ、男性のアリバイや警察に
自供した点などを争点に裁判を進めた。

結審後、班ごとに結論を発表したが、「有罪」としたのは
「傍聴人」の二つの班だけで、他の班はいずれも無罪。

模擬裁判の指導役で、福井市内で開業する井上毅弁護士が、
「皆さんの顔に正解はどっち?と書いてあるけど、
この話に正解はありません。
自分たちが、人を裁くことについて考えるのが大切です

被告役を演じた藤井大君(14)は、「みんなに囲まれて緊張したし、
被告の気持ちが少し分かった。
自分が裁判員になったら、そこまで考えて判決を出したい」

森田教諭や井上弁護士は、福井法教育研究会に参加。
模擬裁判で使ったシナリオも、研究会が作ったもの。
法教育の目的は、法律の知識を学ぶのではなく、
法的なものの考え方を身に着けることに主眼を置いている。

中心メンバーの橋本康弘・福井大准教授は、
背の小さい人が常に前に並ぶ背の順のルールの是非を考える授業や、
廊下を走らない、人の悪口を言わない、給食を残さないの
三つの決まりに優先順位をつける授業などを、身近な法教育として例示。
「生徒がルールの意味を理解し、納得した上でルールを
受け入れることが重要だ」

法的なものの考え方に慣れていない学校の先生が多く、
学校で法教育を行う難しさを感じている。
背の順のルールを取り上げてはと提案すると、
「議論することによって、生徒たちが整列しなくなると困る」と
難色を示す教師もいた。

今年5月に始まった裁判員制度をきっかけに、
検察官や裁判官が模擬裁判に参加するなど、
法の世界と一般との接点が増えた。
井上弁護士のように、学校現場に足を運ぶ人もいる。
授業の進め方についても、法曹関係者の助言を期待する声は強い。

授業時間の確保も課題。
森田教諭によると、同大付属中は模擬裁判も含め、
年に10時間を法教育に割くが、一般的に、社会科の中で
法教育に該当する部分は3、4時間しかない。
森田教諭は、「公立の中学校でも、社会科の時間に
法教育ができるようにしたい」と、内容を圧縮した授業モデルを検討。

◆裁判員制度

殺人や強盗傷害などの重大な刑事事件の裁判に、
抽選で選ばれた20歳以上の国民が参加する制度。
今年5月21日に始まった。
裁判員6人と職業裁判官3人の構成で、有罪か無罪かの事実認定と
有罪の場合の量刑を多数決で決める。
8月3日にも、最初の裁判員裁判が開かれる予定。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090723-OYT8T00258.htm

浴衣で演出、まちに風情 盛岡でファッションショー

(岩手日報 7月20日)

盛岡市の「ゆかたのまち盛岡」推進事業実行委
(実行委員長・佐藤光彦商工観光部長)は、
浴衣のミニファッションショーを開いた。

子どもや親子連れらが、色とりどりの浴衣で個性を競い合い、
さわやかな城下町の風情を演出。

外国人を含む13組、21人が参加。
佐藤部長が、「さんさ踊りや七夕など、浴衣の季節が近づいた。
クールビスにもなる浴衣を着て、盛岡の街を盛り上げよう」

参加者は、黄や紫などカラフルな浴衣で登場し、
着こなしのポイントなどをアピール。
母親が手作りした水玉模様の浴衣で「京藤賞」を受賞した、
小原碧ちゃん(5)と、中田千滉ちゃん(4)は、
「さんさ踊りにも浴衣で行く。今度はピンクの浴衣がいいな」と笑顔。

市内の専門学校生ら約130人も浴衣姿で、日ごろの活動などを紹介。
盛岡ヘアメイク専門学校の伊藤朝さん(18)と熊谷美貴子さん(18)は、
「授業で着付けを習い、自分で着られるようになった。
花火大会などで、たくさん浴衣を着たい」

同実行委は8月16日まで、「ゆかたのまち盛岡」キャンペーンを展開。
161協賛店で、浴衣着用者限定の割引サービスなどが受けられる。

▽ほのぼのファミリー賞 小川竜介さん、望さん、咲希ちゃん一家
▽ユーモア賞 高屋幹夫さん、りささん親子
▽保守本流賞 川村まき子さん

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090720_4

混迷続く魚市場役員問題 注目される臨時総会市と経営陣で主張平行線

(東海新報 7月19日)

株主総会における新取締役選任を巡り、混迷が続く大船渡魚市場。
筆頭株主である市の臨時総会開催請求を受け、臨時株主総会を開催、
市側と現経営陣の認識の隔たりが埋まる様相はみえない。
市の基幹産業の拠点である魚市場を巡る問題とあって、
事態の行方に市民や水産関係者の関心も高まっている。

魚市場では、先月12日に通常総会を開催。
任期満了に伴い、経営陣から新取締役案が提出。
この案は、事前の役員会で意見がまとまったとして提出、
一部取締役や出席した株主が異議を唱えた。

16日、総会で示した新取締役(当初案の13人から1人辞退)による
役員会を開き、互選により鎌田和昭社長の再任も決まったとして、
総会決定事項の報告として各株主に通知。

これに納得しない市は、会社法に基づき、早期に臨時総会を求める
請求書を、魚市場取締役らに郵送。

市側は、新取締役人事案は役員会で承認を得られておらず、
新取締役の選任は総会での承認を得られていないとの見解。
臨時総会の開催は決まったが、案内文書の決議に
「取締役選任の承認確認」とあり、すでに役員が決まったとの認識が
記されているとして修正も求めている。

市側がこうした動きを見せる背景の一つは、
各漁協組合長を務める魚市場取締役から受け取った要望書の存在。
要望書では、現経営体制における取締役の経営倫理などを問題視し、
「透明性、公平性を確保するため、人事の一新の断行を」
と望んでいるほか、現在の代表取締役再選にも懸念。

透明性や公平性の指摘は、今年4月まで水崖会社社長で、
現在も代表権を持つ魚を「買う側」が、
「光る側」の魚市場社長を務めている現状を問題視。
水産関係者の中には、「所有する漁船の水揚げに関して、
売る側と買う側が同じという不透明な部分があるのではないか」

市が誘致を進める気仙沼市の大手水産加工会社について、
鎌田社長は当初、反対意見を展開。
最終的に賛成したが、同社長が水産会社経営の立場で、
大手参入による入札激化を懸念したとみられた。
鎌田社長が再任された場合、新規参入であるこの大手加工会社の
買参権(購入する権利)を推薦しないのでは、といった憶測。

魚市場買い受け人の一人は、
「鎌田社長に反対姿勢があったのは確かだが、
市から誘致企業について我々地元業者に説明会を開いてほしかった。
市の発展のためには、企業誘致はやむを得ないが、
鎌田氏が我々の思いを代弁している側面もある」

鎌田社長らは、総会での取締役案は拍手によって承認されたとの認識。
定時総会の開催前、取締役会でない場で市関係者も加わった形で
役員人事協議が進められた動きを問題視し、
「私を辞めさせようとしている」と不信感。

現在の鎌田代表取締役は、2年前に就任。
昨年度水揚げ実績は、数量6万7853トン、金額79億6996万円、
開設以来2番目の好業績。
各漁協などが運営する定置網の好実績に加え、
サンマやカツオも前年を上回る実績。

2年間の運営に紀室輝雄副市長は、「評価はおのおのとは思うが、
会社であるからには、取締役等が十分な議論をしてやっていくのが筋。
そうでない部分が見受けられる」
24日の臨時総会を控え、役員間で新取締役案を十分審議するよう求め、
臨時総会の場でも、本来の議決法に沿った形で
株の割合による採決を望んでいる。

魚市場で水揚げする漁船団の中には、
「歴代の魚市場社長で、我々が入港しても声をかけてくれた人は
皆無だったが、(鎌田社長は)生産者の立場を熟知し、
我々の話にも真摯に耳を傾ける。
続投が叶わないなら、受入態勢に大きな懸念を持たざるを得ない」、
再任を要望する動きも。

これから盛漁期を迎え、施設改築も控える大船渡魚市場。
役員問題のあおりで、同市漁協組合長の任期途中交代という事態まで発生、
現状では市側と現経営陣の主張は平行線。
24日の臨時総会でどう決着するか、不透明な情勢が続いている。

http://www.tohkaishimpo.com/

民主党政策集の要旨…マニフェストの基

(読売 7月23日)

【内閣】
▽靖国神社の首相公式参拝は問題。国立追悼施設を設置
▽危機管理庁創設
▽在日米軍による沖縄負担を軽減
▽北方4島を早期返還

【子ども・男女共同参画】
▽月額2万6000円の子ども手当支給
▽55万円の出産助成金支給
▽選択的夫婦別姓導入

【行政改革】
▽与党議員100人以上が大臣や副大臣などで政府に
▽行政刷新会議を設置
▽国家公務員の天下り禁止
▽独立行政法人などは原則廃止
▽国家公務員の総人件費を2割以上削減

【分権改革】
▽基礎的自治体(市町村)を強化
▽補助金を一括交付金化
▽財政格差是正の新制度創設
▽地方負担金制度廃止
▽国と地方の協議を法制化

【政治改革】
▽企業・団体献金を3年後に廃止
▽政治家の世襲制限
▽衆院比例定数を80削減
▽参院選挙制度を改革
▽永住外国人に地方選挙権付与
▽地方自治体首長の4選禁止

【郵政】
▽郵政事業の抜本的見直し

【法務】
▽容疑者の取り調べを可視化
▽終身刑の導入検討

【外務・防衛】
▽新時代の日米同盟確立
▽日米地位協定の改定を提起
▽米軍再編や在日米軍基地の在り方見直し
▽中国と友好協力促進
▽北朝鮮に追加制裁を含む断固とした措置
▽拉致問題は国の責任で解決
▽海賊対策は海上保安庁の責務だが、自衛隊派遣も容認

【財務・金融】
▽基礎的財政収支を黒字化
▽政治家主導で予算編成

【税制】
▽与党税制調査会廃止
▽配偶者控除や扶養控除廃止(高校生・大学生らを対象とする
特定扶養控除と老人扶養控除は除く)。
給与所得控除の適用所得に上限を設定
▽消費税5%を維持し、全額年金財源化。将来は最低保障年金、
医療費などセーフティーネット(安全網)のための財源化。
税率は社会保障制度抜本改革を前提に、引き上げ幅や使途を
明らかにし、国民の審判を受けて具体化
▽ガソリン税暫定税率廃止
▽道路特定財源を一般財源化

【文部科学】
▽高校授業料を無償化

【厚生】
▽後期高齢者医療制度を廃止
▽医学部定員1・5倍増

【年金】
▽「消えた年金」問題に集中的取り組み
▽月額7万円の最低保障年金創設を柱とする制度改革

【労働】
▽労働者派遣法見直し
▽最低賃金平均1000円

【農林水産】
▽農家への戸別所得補償導入
▽食料自給率を20年後に60%に

【経済産業】
▽中小企業支援予算3倍増

【国土交通】
▽高速道路を原則無料化
▽川辺川ダムなど中止

【環境】
▽温室効果ガスを2050年までの早期に1990年比で60%超削減

【憲法】
▽改正は慎重かつ積極的に検討

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090722-OYT1T01255.htm

2009年7月24日金曜日

免疫力を高める乳酸菌:健康インフォメーション

(2009年7月11日 毎日新聞社)

細胞壁の厚い「プロテクト乳酸菌」が、人の免疫力を高めたり、
インフルエンザの感染予防になる可能性があることが、
サントリー健康科学研究所とサントリー乳酸菌研究所の試験。
日本食品免疫学会で発表。

免疫効果が確かめられたのは、
京漬物から発見された植物由来の乳酸菌。
通常の乳酸菌に比べ、細胞壁が厚く固いため、
プロテクト乳酸菌と名付けられた。

30~60代の男女25人を三つのグループに分け、
(1)5億個のプロテクト乳酸菌、
(2)15億個のプロテクト乳酸菌、
(3)偽のプロテクト乳酸菌(プラセボ)を、
それぞれ2週間摂取後、採血。

その結果、15億個のプロテクト乳酸菌を摂取したグループは、
プラセボを摂取したグループに比べ、ウイルスなどを殺す
免疫細胞(ナチュラルキラー細胞)がより活性化。

インフルエンザウイルスを感染させたマウスの実験では、
プロテクト乳酸菌を摂取させた群で、生存率が高かった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/13/104058/

市民力を鍛える(5)模擬投票で政治に関心

(読売 7月22日)

選挙は、大人と同じ立場で政治を考える機会を、子どもに与えてくれる。

都議選の投票日を目前に控えた7月8日、
東京・町田市の玉川学園の空き教室に、
模擬選挙の投票所が設けられた。

中央には銀色の投票箱、奥には両脇を仕切った投票記載台が置かれ、
正面には立候補者の名簿が張ってある。
9年生(中学3年生)の約150人は、入り口で投票用紙を受け取ると、
次々に都議選町田市選挙区への投票を済ませた。

本物の投票所の雰囲気を醸し出しているのは、
町田市選挙管理委員会からすべて本物を借りているから。
投票用紙は本物ではないが、ほぼ同じ書式で印刷。
準備したソ合宗隆教諭は、「生徒が大人と同じ目線に立つためには、
雰囲気作りも大切」。(ソは石へんに「夾」)

ソ合教諭は、2003年の衆院選から国政選挙や都議選のたび、
授業を利用して模擬投票を行ってきた。
今回は、「現代の社会」という授業の一環。
これまで、政府や国会の仕組みを習ってきた集大成と位置づけ。

生徒は投票の直前、20歳代の投票率が極端に低いことなどの
説明を受け、選挙公報を読んでどの候補者に投票するか議論。
「顔がソ合先生に似ている」と直感で選ぶ生徒がいたり、
「病院を充実させる人がいい」という政策重視の生徒がいたりで、
投票直前の教室は意見を交わす生徒でにぎやかだった。

模擬投票の動きを全国に広げようとしている団体がある。
そ合教諭も参加する、「模擬選挙推進ネットワーク」。
国政選挙のたび、各地の選管から本物の投票箱や選挙公報を借りたり、
各政党に依頼して、授業で使う選挙ポスターや
政権公約(マニフェスト)をもらったりしてきた。

事務局長の林大介さんは昨年10月、米大統領選に合わせて
全米の学校で行われた模擬投票を視察。
インターネット投票を含めると、約500万人が参加。
林さんの活動で最も多かったのは、07年の参院選の約8000人。

衆院選での模擬投票を準備している林さんの苦労は、
若者の政治への無関心に加え、活動への無理解。
特定の政治団体を支援する活動と誤解を受けることもあり、
代表の山崎武昭さんは、名刺に「特定の政党・宗教団体の
影響下にない『公平・中立・公正』な組織です」という断り書き。

神奈川県の県立高校のある教諭は、
「政治家を各党から呼んで生徒と議論してもらう授業をやりたいが、
県教育委員会や校長に難色を示された」と、
理解を得ることの難しさを打ち明ける。

投票が、多くの学校が夏休み中である8月30日に
行われることも頭が痛い。
選挙が終わってから模擬投票をやっても、
生徒の関心を引きつけることは難しいからだ。

夏休み期間中、渋谷など、若者が集まる繁華街で
模擬投票ができないか――林さんはそう思案している。

◆政権公約(マニフェスト)

選挙後、達成度を検証できるように政策の数値目標や実施期限、
財源などを具体的に明示した政党の公約のこと。
抽象的なスローガンや政策の羅列ではない。
公職選挙法で、政党の公認候補の選挙事務所内や演説会場内、
街頭演説の場所などに限って配ることができる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090722-OYT8T00295.htm

最先端の反ドーピング研究所、来春にも開設

(読売 7月18日)

2016年東京五輪招致のレガシー(遺産)の一環として、
文部科学省所管の財団法人、日本分析センター(上原哲理事長)に、
新たにドーピング薬物の公的な研究機関が開設。

日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の要請を受け、
同分析センターが都内に研究所を設置、
来年3月末までに薬物分析用の機器をそろえ、研究体制を発足。

開設されるのは、ヒト成長ホルモン(hGH)や遺伝子ドーピングの
検査方法など、最先端の研究を視野に入れた「アンチ・ドーピング研究所」

世界反ドーピング機関(WADA)公認分析機関である
三菱化学メディエンスで、長年薬物分析に携わった第一人者の
植木真琴氏を、今月、アンチ・ドーピング研究所開設準備室長に迎えた。

検査分析を軸とする三菱化学に対し、
薬物分析法の研究に軸足を置き、補完し合う狙い。

五輪招致の機運が盛り上がる中で、
反ドーピングへの取り組み強化を目指すもの。
研究所が、薬物研究に必要な機器や人材を整え、
将来的に五輪開催などで必要性が生じた場合、
公的機関が競技の検査分析でも協力できる体制が整う。

日本分析センターは、国などの要請を受け、
北朝鮮の地下核実験後の環境放射能調査や、
栄養剤に含まれる禁止薬物の分析などを行ってきた専門機関。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20090718-OYT1T00122.htm

(岩手)応援診療 待機時間も報酬

(2009年7月16日 読売新聞)

釜石市は、県立釜石病院に1人しかいない消化器科医師の
不在時に、応援診療にあたる地元医師の待機時間についても
報酬を支払うことを決めた。
臨時市議会に、関連予算80万円を含む補正予算案を提出。

釜石医師会は6月から、1人しかいない釜石病院の消化器科の医師が、
出張などで不在の際、緊急の患者が発生した場合には、
地元の開業医らが応援診療に駆けつける当番制をスタート。

当番医が患者を治療した場合、釜石病院から医師に処置料は支払われる。
当番医が自宅などで待機している時間は、
事実上の拘束時間となっていても、手当は支払われていなかったため、
市は当番医の負担を軽減するため、待機時間への手当て支給を検討。

補正予算案が市議会で可決され次第、
当番医には1日当たり2万円の待機料が支払われる。
同医師会の小泉嘉明会長(63)は、「協力してくれた市に感謝する。
地域医療の連携がより強まる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/17/104497/

女性の平均寿命86・05歳 24年連続で世界一 08年、男性は79・29歳

(2009年7月17日 共同通信社)

日本人の2008年の平均寿命は、女性が86・05歳、男性79・29歳、
いずれも3年続けて過去最高を更新。
厚生労働省が公表した「簡易生命表」

女性は24年連続で長寿世界一、男性は前年の3位から4位に。
07年に比べ、男性が0・10歳、女性が0・06歳延びた。

厚労省は、平均寿命が延びた理由について、
医療水準の向上などにより、三大死因とされるがん、心臓病、脳卒中の
死亡率が下がったことが大きな要因。
交通事故の死者数が減ったことも影響」

平均寿命の男女差は、6・76歳。
国際比較では、女性の2位は香港で85・5歳、3位がフランスで84・3歳。
男性の1位はアイスランドで79・6歳、2位は香港、スイス(07年)が79・4歳。

08年生まれの赤ちゃんが何歳まで生きるかの試算では、
75歳まで生きる人の割合は、女性が86・0%、男性は71・2%。
90歳までは女性44・8%、男性21・1%。

将来死亡する原因として、最も可能性が高いのは男女ともがんで、
それぞれ29・98%と20・49%。
三大死因による将来の死亡確率は、
男性55・14%、女性が52・36%。

三大死因が克服されれば、平均寿命は男性で8・10歳、
女性で7・00歳延びるとみられる。

▽簡易生命表

各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、
平均してあと何年生きられるかの期待値を表す「平均余命」について、
厚生労働省が毎年公表している指標。
0歳児の平均余命が、日本人の平均寿命を表す。
日本人の推計人口や人口動態統計を基に、
その年の各年齢に当たる人の死亡率が今後も変化しないと仮定して算出。
厚労省は、国勢調査による日本人の確定人口をもとにした
完全生命表」も、5年ごとに公表。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/17/104467/

2009年7月23日木曜日

火力発電最前線:/下 CO2削減への姿勢、問われる電力会社

(毎日 7月13日)

家庭の温室効果ガス排出量は、90年からの17年間で41%増。
電力使用が約6割を占める。

節電や省エネ家電への買い替えなど、家庭の努力が大事だが、
家庭分として算入される発電時の排出を減らす
電力会社の姿勢も問われる。

現在、火力発電の中で、世界で最も高い発電効率を誇るのが、
川崎市にある天然ガスを使う東京電力川崎火力発電所。
旧発電所の貯炭場跡に、1号系列3基(出力計150万キロワット)が完成。
環境影響評価の準備書を、同月提出した関西電力姫路第2(兵庫県)の
建て替えで効率は、1ポイント抜かれるが、
東電は「計画中の2号系列で抜き返す」と息巻く。

効率は、燃料を燃やして出る全エネルギーを100とした時、
電気として取り出せた比率で表す。
東電全火力の平均は42%、川崎火力は53%。
同社全体で1ポイント上がれば、年間180万トン、
国内排出量の0・14%のCO2削減になる。
残りのエネルギーは、蒸気の冷却排水や排気として捨てられている。
川崎火力は、燃料使用量やCO2排出量が従来の25%少ない。

石炭ガス化複合発電(IGCC)と同様、川崎火力も蒸気とガスの
2機のタービンを同時に回す「ダブル発電」方式。
石炭より簡単な仕組みで、ジェット機のエンジンに似た装置で
空気を吸入・圧縮して燃料の天然ガスと混合燃焼し、
噴流でガスタービンを回す。
同時に、高温の排気で蒸気を作る。

3基で、1時間に約190トンの液化天然ガス(LNG)と
約660万立方メートルの空気が使われる。
気温が上がると、空気の密度が下がる影響で、
夏場の発電量が1割減る。

発電所広報の三浦文雄さんは、「少しでも効率アップをと、
暑い日は空気取り入れ口に水をまいて冷やす」と
最新鋭機の意外なローテク努力を語る。

効率は、ガスタービンを高温にできるほど上がる。
約20年前の導入初期は1100度で効率43%だったが、
川崎火力は1500度。1700度の開発も進む。
材料の金属が溶けないよう、無数の小さな穴から蒸気を通して
「空気の膜」で保護したり、セラミックで覆うなど数々の工夫の結晶。
高温化は、副生物の窒素酸化物が増えるなどの限界に直面。

◇排熱利用の挑戦

タービンを回した後、まだ熱い蒸気を捨てずに生かすことで、
効率の限界を破る「電力会社初の大規模な試み」(東電)が始まった。

川崎火力の周囲約3キロの企業10社に、年間30万トンの蒸気を供給、
各社のボイラーが不要になることで、年間2・5万トンのCO2削減ができ、
発電所の効率も2ポイント上がる計算。
今年度末の開始に向け、配管の敷設が進行中。

排熱利用という点では、今年度から国の補助制度が始まった
家庭用燃料電池(エネファーム)が競合相手に。
都市ガスなどから水素を作り、酸素と化学反応させて電気を生む
超小型の化学プラントのような装置で、
同時に出る熱を給湯や暖房などに使う。

発電効率は現在33%程度だが、排熱利用を含めれば約80%に。
発電所のような大規模な配管敷設は不要だが、
1台320万~340万円とまだ高め。

国際エネルギー機関によると、世界の天然ガス需要は、
30年に06年の1・5倍に増える。
LNGの貿易量は、この10年間で2倍に増え、
日本は39%を占める最大輸入国だが、
国内の天然ガス発電所は17年度までに32基、
出力は1186万キロワット増える見込み。

CO2排出量は、新鋭機で石炭の半分、石油の3割減とされ、
生産地でガスを氷点下162度に冷やす液化や輸送にも
エネルギーを使う弱点。

イタリアで開催された主要8カ国(G8)首脳会議は、
「先進国全体で、50年までに温室効果ガス排出量を80%以上削減」
という目標。
大幅削減には、さらに飛躍的な技術開発が急がれそう。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2009/07/20090713ddm016040034000c.html

火力発電最前線:/上 石炭燃料ガス化、CO2削減に期待

(毎日 7月6日)

世界中で増える電力需要を賄うため、
石炭や天然ガスなど化石燃料依存は強まる。
「待ったなし」の地球温暖化問題にどう応えるのか?
エネルギーと環境のバランスを考える際、
人類が直面する最重要課題の一つ。
火力発電の技術開発の最前線を2回に分けて報告。

◆10年の遅ればん回

「炭鉱のまち」といわれた福島県いわき市。
各国が開発を競う、新技術の石炭ガス化複合発電(IGCC)の施設
出力は、25万人分の電力相当の25万キロワット。
6月、来年1月までの世界最長の耐久性試験を始めた。
石炭は、1時間に70トン燃やす。

粉末にして、屋内貯炭場から道路越しに空中配管で運ぶため、
周囲に石炭の気配はない。

石炭発電は、CO2排出が石油の1・3倍、天然ガスの1・6倍多い。
価格が安く、埋蔵量も多い。
国際エネルギー機関などによると、世界の石炭発電は
30年に05年の1・8倍に増え、総発電量の45%を占める。

従来の石炭発電(汽力発電)は、石炭をボイラーで燃やし、
蒸気を作って発電機のタービンを回す。

IGCCは、石炭を蒸し焼きにして水素などの可燃性ガスを発生、
これを燃やしガスタービンを回す。
蒸し焼きの熱で、蒸気を作ってタービンを回す。

2段階発電で、エネルギー損失を減らす。
実証機の発電効率は、汽力新鋭機並みの42%だが、
25年に50%に向上する見込み、CO2排出量は石油発電並みに改善。

実証機は、欧米の4基と異なる「空気吹き」が特色。
ガス化炉を1800度に加熱するため、欧米方式は酸素を吹き込むが、
酸素製造に大きな電力がいる。
空気吹きはその分がなく、発電効率が3~5%高まる。

空気の主成分の窒素が不燃性で、高温を作りにくく、
開発は着手した82年から難航。
橋本貴雄・三菱重工技師長は、「最初は全然うまくいかず、
理論的に難しいとも言われて苦しんだ」

欧米から10年遅れの07年末、運転を開始。
1年目、信頼性の目安の連続2000時間運転を世界で2基目に達成。
斉藤鉄夫環境相が、小名浜火力発電所(仮称)への環境影響評価で、
「IGCC並みの対策をしてほしい」と語るまでに成長。

◆注目の地中貯留

豪クイーンズランド州は、既存の計画を破棄し、
日本の技術導入を決めた。
州の出資法人が、資金約43億豪ドル(約3300億円)を調達。
出力53万キロワットで、15年に稼働する計画。

CO2を放出せず、地下に埋め戻す「回収・貯留(CCS)」技術も、
同時に実証する世界初の商業規模の事業。
CO2が65%回収され、今回の最新技術が導入できれば、
排出は天然ガス発電の新鋭機並み。
石炭発電の限界への挑戦。

日本の経済産業省も、「クリーンコール政策」で排出ゼロの
石炭発電構想を発表、実証機でも福島沖の枯渇ガス田でCCSを行う。

◆狙いは海外市場

実証機を運用する、クリーンコールパワー研究所の石橋喜孝副社長は、
「国内で商用化し、初期不良をこなしてから輸出したい」、
国内は、石油危機後の比較的新しい石炭発電所が多く、
建て替えの動きは乏しい。
商業用のIGCC計画は、中国電力三隅2号機(40万キロワット)の
17年度稼働のみ。

米国や中国の老朽機建て替えに、温暖化対策と販路の両面から期待。
豪の事業を受注した三菱重工は、従来の石炭発電の2倍程度に
コストを抑えるのが課題、年間新設10基、
30年に最大80兆円市場を見込む。
福江一郎副社長は、「(温暖化交渉の過程でも)ダークホースとして注目」
IGCCには通常のボイラーでは、質の悪い石炭ほど使いやすく、
特に使い道のなかった褐炭への応用が期待。

「資源獲得競争の中、技術を磨かなければ、生産地から相手にされない」
と経産省の担当者は強調。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2009/07/20090706ddm016040003000c.html

米国が太陽電池で狙う国家安全保障

(日経 2009-07-10)

米政府が、太陽光関連の技術開発を加速。
米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)など
エネルギー省傘下の研究機関が、次世代太陽電池から蓄電池、
次世代送電網(スマートグリッド)まで総合的に担う。

先行していた日本を追い抜き、振り切る勢い。
背景には、エネルギーの安定的な確保を安全保障の要に据える
明確な戦略がある。

オバマ米大統領が、エネルギー長官にノーベル物理学賞受賞者の
チュー博士を任命して以来、エネルギー省は
再生可能エネルギーや省エネのプロジェクトを相次ぎ拡充。
太陽光関連の技術開発と普及策は、その大きな柱。

7月14~17日、チュー長官はロック商務長官とともに訪中。
再生可能エネルギーやCO2回収・貯留技術(CCS)などで、
協力強化を確認する見通し。
中国市場の開拓も狙う。
訪中は、京都議定書後の枠組みを決めるポスト京都の国際交渉を
有利に進めるための地ならしの意味もありそう。

◆ソーラー・アメリカ・シティーズ計画の概要
・全米約25カ所で実施
(NY、フィラデルフィア、オーランド、オースティン、SFなど)
・1カ所あたり20万ドルの金融支援と25万ドル相当の技術支援
・専門家による特別チームが設置場所の特性を考慮してきめ細かく支援

△サンフランシスコの例
・温暖化ガスを、2020年までに1990年比20%削減
・2012年までに再生可能エネルギーによる発電を3万1000キロワット
・今後1年間、太陽光関連で5000人の雇用を創出

エネルギー省は、学者をトップに据えたため、
日本からは研究主体の役所のように見えるかもしれない。
実際には、国防総省や国務省と並んで、
国家安全保障の一端を担う重要な組織。

地下核実験などを含む「核エネルギー」を扱っているという
理由からだけではない。
中東の不安定化が、石油高騰に結びつき、
米経済に打撃を与えたことからも、
エネルギーが国の安全と繁栄の鍵を握るという考え。

再生エネルギーの利用促進も、電気自動車の開発も、
「エネルギー安全保障」の確保が大きな目的。

米国が太陽光に力を入れることが、国際社会における
力のバランスを、大きく変えうる効果を持つ。

エネルギー消費大国の米国が、太陽光の利用を急拡大し、
原油の輸入を減らせば、産油国の力が低下するのは明白。

中国など新興国に対して、技術供与という武器を持つことができる。
エネルギー関連技術は、ITバブル崩壊、金融危機で、
国際的な影響力が低下した米国が、再び巨大な力をつける
きかっけを与えてくれる可能性がある。

2010会計年度、米エネルギー省エネルギー効率向上・再生可能
エネルギー局(EERE)は、太陽エネルギー関連予算として、
前年度比1.45倍の3億2千万ドル(約305億円)を要求。
大部分はNREL向け。

NRELのクロポスキ主任グループマネジャーは、
「(太陽光を電気に変える変換効率の高い)次世代太陽電池の
開発などに力を入れる」
送電系統の安定的な運用へ向けた規格作りなどにも取り組む。

太陽光、蓄電池などと、スマートグリッドの実用化へ向けた
送電系統の技術規格の制定も並行して進める。
規格作りを急ぐ背景には、米国の産業界に有利になるように
率先して、国際標準を決めてしまいたいという意図。

エネルギー省は、市場構築の起爆剤とするため、
全米25の市で「ソーラー・アメリカ・シティーズ」計画も進め、
技術・資金面で太陽電池設置に手厚い支援。

日本は、太陽光関連技術の開発で世界をリード。
優れた研究者も多い。
それをエネルギー安全保障の観点から国家戦略に組み込み、
国際社会で国としての存在感を高めることに
生かせているとは言い切れない。

NRELに対応する日本の機関は、
恐らく産業技術総合研究所の太陽光発電研究センター。
04年度に発足、期限付きで10年度で終了。
「せっかく開発してきた技術が、十分に生かせないまま
失われてしまうのでは」と危惧する研究者も。
年間予算は、米エネルギー省EEREの太陽光関連予算の10分の1以下。

次世代太陽光発電など多くの研究テーマは、
様々な組織に引き継がれるのだろう。
しかし、本気で世界をリードしエネルギー技術を国益に
つなげることを考えるなら、「日本版NREL」とも言えるような
総合的な研究機関兼シンクタンクがあってもよい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090708.html

2009年7月22日水曜日

牛乳の栄養 手軽にカルシウム補給 「毎日飲むと太る」は誤解

(2009年7月11日 毎日新聞社)

牛乳にまつわる誤解は多い。
「小魚に比べて、カルシウムの吸収が悪い」、「毎日飲むと太る」など
根拠のない話が独り歩きしている。
牛乳の栄養について改めて考えた。

日本人は、以前からカルシウムの摂取不足が指摘。
栄養学的にみて、健康維持に必要なカルシウムの摂取量は、
成長期の10代で、目安量の7-8割程度しか達成されていない
(厚生労働省公表の「日本人の食事摂取基準」05年)。

カルシウムは牛乳のほか、イワシやサクラエビ、ヒジキ、
野菜ではコマツナやモロヘイヤなどに多い。
100g当たりに含まれるカルシウム量は、
牛乳が約110mg、コマツナ約170mg、シラス干し約210mg、
干しヒジキ約1400mg。
牛乳が一番高いわけではない。

カルシウムの多い食品を食べても、
すべて体内に吸収されるわけではない。
吸収率では、牛乳が約4割と高く、小魚約3割、野菜は約2割。
食品により差がある。

◆1本で100ミリグラム摂取

牛乳1本(200ml)に、約230mgのカルシウムが含まれ、
毎日1本飲めば、100mg程度のカルシウムが摂取。
同じ程度のカルシウムを、シラス干しから取ろうとすると、
毎日、約150g食べなければならない。

阿久澤良造・日本獣医生命科学大学教授は、
「吸収の良さと、気軽に食べられる点から、
カルシウム補給には牛乳やチーズなど乳製品が手っ取り早い」
阿久澤さん自身、毎日乳製品を取っている。

◆カゼインが吸収促進

「高温で殺菌した牛乳は、カルシウムが不溶化し、吸収率が悪い」
といった、まことしやかな話も流布。
阿久澤教授は、「それは誤解」
人の腸管に入ったカルシウムは、リン酸と結合して不溶化し、
吸収されにくくなる。

牛乳の場合、たんぱく質の約8割を占めるカゼインが、
胃腸内の酵素の働きで、カゼインホスホペプチド(CPP)となり、
カルシウムとリン酸の結合を抑えて不溶化を阻止、吸収を促す。
この吸収メカニズムは、チーズやヨーグルトでも同様。

◆栄養価は変わらず

牛乳の殺菌にも、誤解がある。
市販の牛乳の大半は、120-130度の高温で2-3秒間殺菌。
63-65度や72度以上など、低・中温で殺菌された牛乳も流通。
「高温殺菌の牛乳は、栄養価が低い」、
「低温殺菌こそ本物だ」といった説もあるが、「これも誤解」

牛乳に限らず、魚でも肉でも、加熱すればたんぱく質は壊れる。
栄養価が変わるわけではない。
阿久澤教授は、「たんぱく質が壊れた方が、消化・吸収されやすい。
食べものを加熱し、加工・調理することは、
人類がずっとやってきたことで、おいしく食べる方法の一つ」

加熱の温度で、風味は変わる。
高温か低温かは好みの問題。
低温殺菌の場合、菌の死滅率が低いため、
開封後の温度管理をしっかりする必要。

◆骨粗鬆症の予防にも

「牛乳を飲むと、骨が弱くなる」というのも誤解。
上西一弘・女子栄養大学教授(栄養生理学)らは、
全国の中・高校生計2040人を4年間追跡、
牛乳の摂取と骨量の関係を調べた。

その結果、牛乳の摂取が多いほど、カルシウム摂取量や骨量も
多いことが分かった。
高校3年時の女子の体脂肪率を見たところ、
牛乳を多く取った子ほど、体脂肪率が低かった。

「成長期に骨量が少ないと、将来、骨折や骨粗鬆症になる
リスクが上がる。牛乳を飲んで太ることはない」

◆栄養素を効率的に

牛乳には、たんぱく質、脂質、ミネラル、必須アミノ酸が
バランスよく含まれ、栄養素を効率的に摂取できる。
管理栄養士の小山浩子さんは、自らの調査結果を基に、
「牛乳1本に相当する栄養価を、他の食材で調達しようとすると、
牛乳1本の価格より高くなる」
食事に、1本の牛乳を加えるだけで、食費の節約になる。

牛乳は、「完全食品」ではないし、サプリメント(栄養補助食品)の
代わりになるわけでもない。
鉄分やビタミンC、食物繊維の補給には向かない。
阿久澤教授は、「栄養バランスの優れた食品の一つとして、
牛乳や乳製品を活用して」とアドバイス。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/13/104061/

続々・燃料電池がウチにキター!

(日経 2009-07-13)

昨年11月末、自宅に家庭用燃料電池コージェネレーション
(熱電併給)システム「エネファーム」のモニター機を設置、
燃料電池実用化推進協議会(FCCJ、西室泰三会長)から
ステッカーが送付されてきた。
「No.2868」と記されている。
FCCJによると、国内で動くエネファームのうち、2868台目の装置。

No.2868が6月上旬、2度目の故障。
前回と同じ、エラーメッセージを表示して停止。
2回のエラーメッセージは、いずれも電圧が異常値であることを示し、
安全のために機器が自動的に止まった。
前回と同じく、遠隔操作で再起動をかけると解消し、再び動き始めた。

同様の事例が、他のモニター機でも発生。
対策を講じた改良版の制御プログラムを、同じ機種のすべてに
再インストールする。
電圧と電流のバランスが狂わないよう、プログラムを3回書き直した。
現在は、「バージョン3.0」の制御プログラムでモニター機は作動。

最初の連絡では、プログラムの書き換えだけだったが、
当日になって新たな作業が加わった。
システムの心臓部である発電装置の「セル」を新品に更新、
「全熱交換器」という部品を改良型と交換。半日がかり。

モニター機は、固体高分子型燃料電池(PEFC)。
取り外したセルは、メーカーで分解して内部の固体高分子や電極、
セパレーターなど、劣化が起きていないかを確認。
熱交換の性能を向上させた全熱交換器は、配管の形状も変わっていた。
取り付けやメンテナンスなどを楽にする狙いも。

作業のため、カバーを取り外し、ソフトを書き換え、
セルや全熱交換器を交換する様子を眺めていて、気が付いた。
回路基板が、何だかレトロな雰囲気をたたえている。
大きなコンデンサーや抵抗などがはんだ付けされ、昔懐かしい
ジャンパー線が基板と部品をつないでいた。
約20年前に見た、廉価版VHSビデオデッキを思い出した。

モニター機は、試作で数量が出ないため、専用ICを作れない。
その分、回路基板に手作り感が出ていた。
実際、販売する商用機は大幅な改良を施しているはず。
ポンプなどが動く時のかすかな音を軽減する緩衝材なども開発中。

PEFCモニター機の内部は、改質器の大きさが気になる。
PEFCは、発電時の作動温度が低く、扱いやすいのが売り物。
都市ガスから水素を抽出する際、高温が必要で、
温度を上げる仕組みが付属している分だけ大きくなる。
固体高分子は、COを嫌うため、除去する装置も必要。

これらマイナスを解消できるのが、固体酸化物型燃料電池(SOFC)。
発電時の作動温度が高く、この熱を使って
改質器で水素を抽出するため、機構が簡素化できる。
固体酸化物はCOも発電に使うため、除去する装置も不要。
SOFCは発電効率が45%、PEFCの33〜39%より高いのも売り物。

燃料電池は、「発電する給湯器」と呼ばれることも。
温水をつくる際に発電し、発電と給湯の合計で高いエネルギー効率を実現。
SOFCのように、発電効率が上がってくると温水を気にせず、
常時稼働の発電装置として使うケースも出てくる。
大阪ガスの担当者は、「常時稼働なら、発電効率は3ポイント上がる」
集合住宅に設置した8台の燃料電池を、相互接続し電力を融通する
「マイクログリッド」について実証試験、
「6.4ポイントの改善効果があった」と大阪ガスは明らかに。
今後、常時稼働やマイクログリッドなど、SOFCの新しい運用方法を
検討する必要があるかもしれない。

トヨタ自動車とアイシン精機は、大阪ガスが京セラと共同で進めている
SOFC開発プロジェクトに加わると発表。
トヨタの担当役員は、「SOFCは、部品点数がPEFCの半分で済む」と利点。
トヨタ式の生産技術は、燃料電池の生産コスト削減に大きく貢献すると
大阪ガスなどは期待。

FCCJのステッカー配布は、2008年度いっぱいで終わった。
最後は「No.3508」。
ステッカーには、水素を示すH2をあしらったカギ形のマークが付いている。
「水素社会実現のカギ」という期待を込めて。
09年度から、実証試験ではなく実際のビジネスが始まる。

自宅の燃料電池を生産したENEOSセルテック(群馬県大泉町)は、
7月1日に商用機を初出荷。
初年度2500台の販売を目指す。
パナソニックや東芝燃料電池システムの燃料電池も販売。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090709_2.html

天才・船木、サマージャンプで復活かける

(読売 7月18日)

「ミスター・エレガンス」と称された、体とスキー板が平行になる
美しいフォームが帰ってきた。

船木が1回目97メートル50で、伊東に次いで2位。
そして2回目。
会心の踏み切りから飛距離をぐんぐん伸ばし、最長不倒に並ぶ
99メートル50の大ジャンプ。
着地の瞬間、「ウォー」と、雄たけびが上がった。
重圧を受けたのか、伊東は98メートルまで距離を伸ばしたものの転倒。

船木の優勝が決まった。
「(雄たけびは)当然でしょう」。声が弾んだ。

長野五輪で、審判員全員が20点満点をつけた美しい飛型。
だが、長野五輪後のルール改正に対応できず、
岡部や葛西ら年上の選手が世界で戦い続ける中、代表から外れた。

資金難で、自らスポンサー探しに回り、競技を続ける。
いま使っている板やスーツは、昨シーズン仕様のもの。

復調を感じ始めた今年、この大会にすべてをかけて調整。
「ここでアピールしないと、冬はない」
海外遠征組から外れている船木が、有力な五輪候補たちと
同じ土俵で戦えるのは、サマージャンプしかない。
「(海外遠征組に)勝ったとは思っていないが、
近づいていることは確認できた」

最後まで五輪をあきらめない。
かつて天才と言われた34歳の必死さが、カッコいい。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20090718-OYT1T00790.htm

千葉の高3・大月君、国際生物学五輪「金」

(読売 7月18日)

世界の高校生が、生物分野の知識や実験技術を競う、
第20回国際生物学オリンピック(読売新聞社など後援)が、
つくば市で開かれ、日本代表の4選手のうち、
大月亮太選手(千葉・県立船橋高3年)が、日本初の金メダルに。

中山敦仁(兵庫・灘高2年)、谷中綾子(東京・桜蔭高2年)、
山川真以(同3年)の3選手も、銀メダルを獲得、
日本代表全員が入賞を果たす快挙。

大会には、1990年の初開催以来最多となる56か国・地域から、
221人の選手が参加。
果物の構造から形作られる過程を考察する、といった実験と理論の
試験に取り組んだ。

成績上位約6割の選手にメダルが授与され、
今回は金23、銀46、銅68。
大月選手は、実験と理論の両方で高得点を獲得、
全選手中6位の好成績を挙げた。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090718-OYT1T00740.htm

市民力を鍛える(4)街づくり 進んで参加

(読売 7月11日)

子どもが地域に目を向けるよう、学校が橋渡し役を務めている。

琉球大学教育学部付属中学校で、
3年生21人が、机いっぱいに広げた模造紙に向かっていた。
指導役の大学生が、「自分で調べて気づいたことを書き出してみよう」
と指示を出す。選択社会科の授業の風景。

毎年、自分たちでテーマを決め、大学生の指導を受けながら調べ、
改善策を作って市役所などに提案。

今年のテーマは、「モノレールの延伸と国道の渋滞緩和」
中学生たちは、モノレールの終着駅周辺の状況や、
沿線の国道が渋滞している様子を観察。

大学生は、同大の島袋純教授(48)のゼミ生たち。
授業を始めたのは、島袋教授がある研修会で、
「20歳になったから、いきなり判断しろと言われても、
投票なんか行けない」と言われたことがきっかけ。

社会科の教科書を調べると、政治の仕組みは分かっても、
政治的な判断力や行動力に発展する内容ではなかった。

中学生にも分かるように、「政治」を身近な「地域づくり」にとらえ直し、
授業を始めたのが2005年4月。
06年3月、授業を基に中学生の社会科の副読本を作り、
県内すべての中学校に配布。
副読本の中では、改善策を選挙の立候補者に政策提言したり、
議会に誓願や陳情を行ったりする方法を記述。

授業は、中学生が興味を持たなければ成り立たない。
昨年は、米国人と沖縄の女性との間に生まれた「アメラジアン」と
呼ばれる子どもの教育をテーマにしたが、
問題を提起するところまで議論が深まらなかった。
島袋教授は、「失敗を繰り返しながら、授業も生徒も成長していく」と前向き。

広島県竹原市の中心部。江戸時代の町並みを残す一角に、
国立広島商船高等専門学校の生徒が毎週日曜日に開く
喫茶店「Cozy Cafe」がある。

担当する岐美宗(みちよしつかさ)教授(47)が、
空き家となった民家を借りて、喫茶店を始めたのは05年5月。
授業で学んだ在庫管理など、経営を実践する場としてはもちろんだが、
地域の人が生徒を育てる環境を作ることも狙っていた。

「街づくりは人づくりである」(岐美教授)という信念。
毎年、地元の観光ガイドボランティアや街おこしの活動をしている
団体などと協力、街おこしにつながる活動をしてきた。
昨年から、地元に江戸時代から伝わる料理「魚飯」を普及させようと、
市内で魚飯を出す店を紹介するパンフレットを作った。

「最初は、地元の知らない人たちに緊張したけど、
今は親近感がわくようになった」と高専3年の柳井智里さん(17)。
周囲にすっかり溶け込んでいるようだ。

地域の人と一つの課題に挑戦することは、
市民としての意識を高めるための何よりの訓練になる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090711-OYT8T00264.htm

2009年7月21日火曜日

プラ系家庭ごみをセメント燃料に 大船渡市が実験へ

(岩手日報 7月13日)


大船渡市は、廃ペットボトルなどプラスチック系(プラ系)家庭ごみを
分別し、太平洋セメント(相良安廣工場長)の燃料・原料として
活用する社会実験を、今秋にも始める。

モデル地区で試験的に行い、資源の有効利用や輸送コスト削減を狙う。
世界不況の影響で、廃ペットボトル引き取り価格が暴落するなど、
安定したリサイクルシステムが確立していないだけに、効果が注目。

同市は現在、ペットボトルや包装などプラ系の一般廃棄物は、
釜石市の施設で溶融処理するため、可燃ごみとして回収。
モデル地区では、可燃ごみとプラ系ごみを分別。
モデル地区は、1500世帯程度を想定、
秋からの試行を目指して調整を進める。

分別回収したプラ系ごみは、太平洋セメント大船渡工場で、
石炭の代替燃料として使用。
1500度の高温焼却で、ダイオキシン発生の心配はない。
灰は、セメント原料の一部として使用。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090713_2

世界トップを目指す人、課題とは?

(サイエンスポータル 2009年7月13日)

世界をリードし、トップを目指す課題に、研究開発費を集中投入する
「最先端研究開発支援プログラム」の選定作業が始まった。

最先端研究開発支援ワーキングチームの初会合で、
野田聖子・科学技術政策担当大臣は、
「『これこそ次の日本の研究開発だ』というものを選んで、
国民を鼓舞してもらいたい」

委員から、どのような課題を選ぶか、さまざまな意見が出た。
産業界の委員からは、「研究のための研究ではなく、
日本の技術力、産業力の強化につながるものでなければならない」、
「確かな社会還元につなげていくために、
プログラム終了後のフォローアップが重要」、
「産業競争力の強化につながる課題に重きをおくべき」

基礎研究分野の委員からは、「中心研究者の創造力が重要で、
提案課題の中に創造力が盛り込まれているかどうか」、
「適正規模があり、最低30億円ということでなく、
提案によっては小さいものもよいのでは」、
「中心研究者に、国内外の大型プロジェクトの運営経験を求めると、
年寄りしか応募できないのでは」

独創的な研究成果は、思わぬきっかけから生まれることが多い。
これらの研究が、すべて最初から高額の研究開発費、大人数の
研究スタッフを必要とするわけでもない。

基礎研究分野の委員からの意見は、見通しがついた課題にのみ
研究開発費が集中すると、これら独創的な研究の芽を摘みかねない、
という危ぐに基づくもの。

3~5年間で世界をリードし、トップを目指す人と課題を、約30選ぶ。
最先端研究開発支援ワーキングチームに課された任務は、相当に重い。
プログラムに対する認識や選定に関する考え方が、
基礎系と産業系では大きく異なるのも、最初から予想されたこと。
選定作業の最終段階まで、議論は続く。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0907/0907131.html

日本IBMの北城最高顧問 「IT産業の魅力向上を」

(日経 7月14日)

クラウドコンピューティングが、“旬”のキーワードとなっているIT業界。
足元ではどのような変化が起きているのか?
経済同友会の終身幹事も務める
日本IBMの北城恪太郎・最高顧問に見方を聞いた。

——足元のIT業界の景況は?

「事業規模の縮小で、情報システムの能力に余剰が生じ、
ハードウエアへの新規投資は減っている。
相対的に、製造業の顧客が苦しく、新規投資を控える姿勢が鮮明。
日本IBMが得意とするサービスの領域では、
長期間継続する運用受託などが多く、ある程度は需要も安定。
個別企業から、『厳しいからこそ、コスト構造改革に取り組む』
という声も多く、景気低迷の中でも需要はある

「サーバーなどハードの技術進歩は著しく、台数削減によって
運用コストを抑えることが可能。
日本IBMでは、自分が社長を務めた時代、沖縄県の拠点や海外に
営業支援などの間接業務をまとめて移管した。
集中処理による効率化の余地も大きい」

——クラウドコンピューティングの動きをどう見るか?

現段階ではイメージ先行の部分はあるが、
大きな流れになるのは間違いない。
信頼性への要求水準の高い企業が十分に活用できるほどには、
まだ進化していない。
ネット全体で、サービスを共有する仕組みなので、
災害やハッカーからどう身を守るかといった課題は多い」

セキュリティーなどの面で、実用に耐える実例を作ること。
実績を積めば、次の課題も明確になり、解決のための技術も進歩する。
IT業界は、新しい概念にすぐ飛びつき、すぐ放り出す癖がある(笑)。
そんな風にはクラウドを扱いたくない」

——IT業界にとっての課題は何か?

各社が知恵を絞り、あらゆる産業のインフラであるIT産業の魅力を
高める必要がある。
『仕事がきつい』といわれるため、若い人材が手薄になりつつある。
システム構築手法の高度化により、作業量の多寡で
仕事を請け負う発想を改めねばならない」

「『何がシステムに必要か』の要件定義を綿密に行い、
作業工程を管理する仕組みが重要。
質の高い仕事を手掛けられるなら、若者も働きがいを感じてくれる。
業界全体の課題である中小企業需要の開拓を考えても、
投資に敏感な顧客に対し、コストに見合うシステムを安定供給する上で、
高度で効率的な手法は欠かせない」

「日本の大学では、中国やインドの大学と違い、
高度な発想や手法を教えていない。
竹やりを振りかざして、体力で勝負するかのような流儀は、
日本が進むべき道ではないはずなのに、なかなか状況は変わらない」

——日本の教育現場のどこが問題なのか?

企業との連携が決定的に足りない。
米国などとは対照的だ。
中国やインドの優秀な人材は、米国留学で米国IT産業の開発手法を
身につけ、母国での教育にも生かしている。
システム構築の高度化には、高度な人材を育てるための変革が
教育現場に必要。
それが、日本の産業の競争力を高めることに。
基本的に研究第一である日本の大学では、教育に対する取り組みが
正当に評価されることがまず少ない」

語学も問題。
グローバルなビジネスでは、英語は必須。
英語を操れる人材がいなければ、世界の優秀な人材を
引き付けることもできず、競争力は鈍ってしまう。
中国IBMでは、外国に行ったこともないのに、
滑らかな英語を話す社員が多い。
IBMの社員だからというわけではなく、日本IBMでは苦労している(笑)。
やはり教育に欠陥があるのだろう」

——企業はどんな手を打てばよいのか?

「ビジネスの最前線は、勝ち抜くための変革を日々追求している。
独自の発想を基に挑戦し、変革を起こせる一方、
高い倫理観を持つ人材が求められている。
教育界は、旧態依然の点数至上主義。
そのような学校でいくら優秀でも、ビジネスのリーダーとして
活躍できるとは限らない。
経営者が教育の現場に足を運び、企業の変化を伝えることが重要。
自分も毎月のように実践している」

「日本IBMの業務の中核であるサービス部門を例に、
顧客企業の経営にどう貢献するかが問われる以上、
人材の質が仕事の質を左右。
優秀な人材を採用して、世界に通用する人材に育てることが
企業にとって必要だからこそ、そうした人材が生まれやすいように、
教育現場にも働きかけるべきだ」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090713.html

市民力を鍛える(3)「お金」学び 人生設計

(読売 7月9日)

お金の入りと出を教えることは、大人になる前に
生き方を具体的に考えるきっかけに。

東京都立淵江高校の剣道場。
車座になった3年生約80人の前に教師が立ち、
「あなたの今回の職業はこれです」と言いながら、生徒にボードを示した。

ボードには、「職業・コンビニ店員、稼ぎ方・時給制、働き方・フリーター」
別のボードに、「あなたの月収は15万円」と書いてある。
それを見ながら生徒たちは、月に何時間働くのか、
自分の時間はどれだけ取れるのか、などを専用の紙に書き込んだ。

この授業は、金融教育プログラム「マネーコネクション」のひとつ。
若者の就業支援を行っているNPO法人「『育て上げ』ネット」と、
金融機関の新生フィナンシャルが共同開発。
社会人が必要な生活費がいくらで、
そのためにどのような働き方があるのか知ってもらうのが目的。

「育て上げ」ネット理事長の工藤啓さんによると、
高校生の多くは、自宅の家賃や食費、光熱費など、
生活費がいくらかかっているかを知らない。
例外は通信費で、「携帯電話の費用を自分で払っているためか、
全国平均の金額を書き込んでいる」

この日の授業では、「正社員で月収30万円」、
「契約社員で月収15万円」など、6通りの働き方をボードに提示。
結婚して子どもができたり、マイホームを持ったりしたら
生活できるかなどを、生徒たちに考えてもらった。

「正社員はお金をもらえるけど、自分の時間がないことが分かった」と、
自分の紙を見直していたのは大友美穂さん(17)。
小嶋冬子さん(17)は、「派遣社員や契約社員では、
お金が足りないと感じた。結婚相手は正社員を選ばないと」

金融教育は近年、関心の高まっている分野。
日本銀行が事務局の金融広報中央委員会は、
学校で金融教育を行うための教材を作っているほか、
全国約150か所の学校を研究校に指定して普及に努めている。
金融商品や株式投資について、中高生に教える授業もある。

工藤さんが取り組みを始めたきっかけは、
支援をしてきたフリーターの「お金の話をした方がいい」という一言。
学校を出るまでは親の保護があり、お金に苦労することは少ないが、
社会に出た途端、お金に苦労して後悔する人が多い。
そんな実態を、NPOの活動を通じて感じた。

「フリーターが、一概にだめとは言わない。
正社員になってしまえば、多くの時間を会社に拘束され、
望まぬ転勤などもあることを知ってもらいたい」

金融教育は、社会に出た後の人生設計を考えるきっかけ作り。
お金もうけのための勉強ではない。
授業の依頼は進学校からが多いが、本当に必要なのは
就職する生徒の多い学校。
「だから今は、金融教育がなぜ必要なのか広く知ってもらいたい」と
工藤さんは願っている。

◆金融教育

金融や経済の仕組みを学ぶ教育。
お金の使い方を教えることで、貯蓄や投資の意義についての理解を
促すほか、金融犯罪被害の防止や多重債務に陥らないための
心構えを説くなど、消費者教育の側面も持つ。
大学や金融機関が、教科書や授業内容を考案する例が多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090709-OYT8T00245.htm

2009年7月20日月曜日

七恵さんの志忘れない 女子マラソン名須川選手誓う

(岩手日報 7月14日)

女子マラソンの魂は受け継がれていた―。

東京マラソン優勝で、国内トップランナーの仲間入りをした
奥州市出身の那須川瑞穂選手(29)=アルゼ、花巻南高出=は、
5月中旬にかけた一本の電話を忘れない。

相手は、6月27日に53歳で急逝した大船渡市出身の
永田(旧姓佐々木)七恵さん。

二人が交わした会話は、後にも先にも一度きり。
七恵さんは、「焦らないで、頑張って」と何度も繰り返し、
古里の後輩の飛躍を心から願っていた。

虫の知らせだったのか。
3月の東京マラソン後、那須川選手は
「本当に偉大な方で面識がなかったけど、どうしてもお話ししたくなった」
知人のトレーナーを通じて、七恵さんの連絡先を聞いた。

マラソンに、ずっと二の足を踏んでいた。
5年前、初マラソンで2時間29分台の好タイムを出したが、
2度目のレースの失速が頭から消えなかった。
苦しい時の壁が越えられない。

早くから転向を勧めた小出義雄監督に抵抗。
「自分はトラック種目で、世界を目指します」が口癖。
5000メートル、1万メートル、3000メートル障害…。
「トラックに執着したのは、マラソンに自信がなかったからかも」
すべて器用にこなした。

専門種目がない自分にいら立った。迷いが走りにも出た。
小出監督の「練習の一環で出てみて」の言葉で、
重圧なく東京マラソンに出た。
2時間25分台の好記録の優勝に、胸のつかえが取れた。

マラソンに絞ろう。
そう思った時、雲の上の存在だった先輩に会ってみたくなった。

電話した。
七恵さんは、「マラソンにたどり着いて良かったね」と祝福。
那須川選手のレース結果も、手に取るように知っていた。
「見ていてくれたの?」
感激で頭は真っ白。ただ、胸に響く一言は覚えている。
「今までよく頑張ったね。これからは、体と心に相談しながら走りなさい」

七恵さんは、女子マラソンの草分け。
国内初優勝は27歳と遅かった。
五輪出場の翌年、29歳で引退。
努力型で、ランナー晩年に好記録を出し、岩手を原点に持つ
「遅咲き」の二人の共通項を重ね合わせた助言。

それから1カ月半後、那須川選手は突然の悲報に、
身を引き裂かれる思いを味わった。
合宿明けの夏には、食事をする約束も。
胸が痛かった。
感謝とともに、七恵さんの遺志を受け継ぐことを誓った。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090714_15

出光興産の天坊会長 「非石油の新規分野を拡大」

(日経 7月11日)

出光興産のトップが、7年ぶりに交代。
2006年、創業以来の方針を転換、株式上場を果たすなど、
経営改革を進めてきたが、石油需要の減少で先行きの厳しさも。
社長から会長に就任した天坊昭彦氏に、
これまで7年間の成果と今後の課題を聞いた。

——7年間を振り返って自己評価は?

「社長就任の2年前、株式上場の方針が決まっており、
経営改革が最大の課題。
兵庫と沖縄の製油所閉鎖などリストラを実施し、
化学分野では三井化学と包括提携。
上場後、ベトナムでの製油所建設を決めるなど、
事業面の変革はほぼ思い通りに進めてこられた

収益面では、未達成といわざるをえない。
原油価格高騰と景気後退、地球温暖化問題の進展など、
石油事業の厳しさは増してきた。
ピーク時、2兆5000億円に達した有利子負債は、
1兆円以下に減り、財務内容は改善したが、
まだ自己資本の積み増しは不十分」

——今後はどんな追加対策が必要か?

社内で、高付加価値事業と呼ぶ非石油の新ビジネスを伸ばす。
薄型テレビなどに使う有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)材料や、
微生物農薬などのアグリバイオ、地熱や風力といった
新エネルギーなど、新規事業のタネをまいてきた。
まだ収益への貢献度は低いが、将来は石油精製販売、海外資源、
新規事業で、3分の1ずつ利益を稼ぐ姿が理想」

「当社の事業分野は広がってきており、
今後はすべて自前でというわけにはいかない。
事業の選択と集中を進めると同時に、
スピードとリスク分散のため、事業ごとに適切なパートナーを探す

——新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合を決めたが、
業界再編への考え方は?

「国内の石油需要の減少は、2年ぐらいで加速。
1日あたり400万バレル程度の国内需要に対し、
製油所の能力は100万バレル近くが過剰。
5年もたてば、100万バレル分が余る可能性も。
過剰生産の解消は避けられない課題」

過剰能力を減らすため、再編が最適な手段かは疑問。
当社が、千葉県で工場が隣接する三井化学と提携したように、
“地縁”を軸にした連携で、競争力を高める動きは進むだろうが、
会社同士の統合は難しい」

——出光興産は、歴史的に「自由奔放」、「猛烈主義」とも
言われる独特の企業文化があったが、“出光イズム”はどうなる?

「私が若いころは、社員の権限が今より大きく、
自分でやりたい仕事をやって、後から上司の承認を得ることも。
今は、『仕事をやれ』と言われるまで動かない、
待ちの姿勢が増えてきたのでは。
上場を経て社内体制は整ってきたが、社員の覇気や積極性が
失われてしまえば、企業の成長力は縮小してしまう」

創業者の理念の1つである『大家族主義』は、
社員を甘やかすのではなく、親が子を思うような厳しさで社員を育て、
成長を促すことを意味。
不況のどん底からどうはい上がるかは、
社員と会社にとってともに大きな課題。
縮小した理念研修を再び強化し、会社の成長力につなげたい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090710.html

うつ病、血液検査で診断 白血球の遺伝子反応に着目

(朝日 2009年7月11日)

血液検査で、うつ病かどうかを診断する方法を、
厚生労働省の研究班(主任研究者・大森哲郎徳島大教授)が開発。

うつ病患者と健常者で、白血球の遺伝子の反応が
微妙に異なることを利用。数年後の実用化を目指す。
問診と併せて、数値化できる簡便な診断法が使えれば、
患者の見逃しが減ると期待。

研究班は、白血球の遺伝子がストレスで変化することに着目、
それをうつ病の診断に使えないか調べた。

約3万個の遺伝子の中から、神経伝達や免疫などに関連する
24の遺伝子が、うつ病患者と健常者で
異なる働き方をすることを突き止めた。

医師の面接によって、うつ病と診断された17~76歳の患者46人と
健常者122人を分析した結果、うつ病患者の83%(38人)、
健常者の92%(112人)で、特定の遺伝子が突き止めた通りに反応、
正しく判定できた。

治療薬による影響で、遺伝子が反応する可能性を除くため、
うつ病の患者はまだ治療していない人を対象。

2年間、対象を増やして診断し、実用化できる精度か確かめる。
うつ病以外の精神科の病気と、見分けることができるかも調べる。
実用化されれば、患者の血液2.5ミリリットルを処理した液を、
遺伝子チップという分析器具で反応させて、診断できる。

厚労省の調査で、うつ病など気分障害と診断された人は、
05年で92万4千人。6年で倍以上に急増。
うつ病は、医師が患者と面接し、症状から診断。
うつ病と他の病気との境目があいまいな例も多く、
専門医でも診断に迷うことが少なくない。

大森教授は、「血液検査による診断法が実用化されても、
医師の面接による診断は必要。
血液検査が実用化、普及すれば、一般の医師が診察する際に、
これまで見過ごされてきた患者を、治療に結びつける」

◆国立精神・神経センターの樋口輝彦総長(気分障害薬理生理学)

今回の診断法が、高い確率でうつ病を見分けられれば、
診断の手法として有効な方法といえるのでは。
可能性は十分にある。
今後、白血球の遺伝子の変化と、うつ病の原因とされる脳内の変化との
関係がわかれば、うつ病の原因究明にもつながる。

http://www.asahi.com/science/update/0710/OSK200907100164.html

市民力を鍛える(2)生徒が「社員」 企画・販売

(読売 7月8日)

学校行事を会社の事業に見立て、働き方を教える学校。

広島県尾道市の市立原田中学校。
生徒数21人の山あいの学校で、生徒たちが学校周辺で
落ち葉を集めて作った腐葉土の販売会が開かれていた。
「いらっしゃいませ。株主の方でしょうか」

訪れる保護者や地域住民の一部が握りしめている紙片を見て、
生徒の一人が声をかけた。

紙片は、学校の腐葉土販売活動に出資した“株主”に対し、
配られた腐葉土の割引券。
5キロ500円の腐葉土が100円引きに。

準備した約400キロの腐葉土は、30分足らずで売り切れた。
3年生で“社長”の粟津達生君(14)は、
「予想外の売れ行き。今日の反省を生かして次につなげたい」
と安心した表情を浮かべた。

腐葉土作りは、約35年前、学校行事として始まった。
かつては近所に無料で配ったり、学校で使ったりしてきた。

販売を始めたのは、2005年。
生徒たちに自信をつけてもらうのが狙い。
達成感を味わう舞台として、「ナチュラル・リサイクル・コーポレーション」
という架空の会社を設立。

地域住民から、1株100円の出資を募るようになったのは2年目。
「本当の会社にしたい」という2代目“社長”の一言。
「職業観を育む教育」にもなる、と考えた教師たちは
“会社設立”を承認。
腐葉土作りで指導を仰いでいた地元の造園会社の協力で、
会社活動の基本となる社是や定款を作った。
保護者のほか、一般住民も募集に応じ、84人が株主。

腐葉土と花の種のセット販売といった商品企画をする「企画課」や、
生徒を動員して腐葉土を作る「生産課」など5課の組織とし、
3年生に社長と課長、2年生に課長補佐という役割を任せた。
毎年2月、株主総会を開いて収支決算の報告や新役員の選出を
行うなど、本物の会社とほとんど変わらない活動ぶり。

会社活動のもう一つの狙いは、コミュニケーション能力の向上。
生徒たちは、隣接する原田幼稚園、原田小学校と
エスカレーター式に進学、幼少時から同じ人間関係しか経験していない。
木村好江校長は、「外の世界との接触に、戸惑いを感じる生徒も少なくない」

昨年から、広島市中区の市町村情報センター「ひろしま夢ぷらざ」での
販売を始めたのも、外に出る一環。
看板やチラシ作りを担当する“営業販売課長”の佐藤仁美さん(14)は、
「原田ブランドを知っている、地域の顔見知りの人に売る時とは違う。
売り込み方法や商品を工夫しないといけない」

今年は入学式の後、初めて入社式をし、
“社長”から辞令の交付が行われた。
新入生たちに、“社員”としての自覚を持ってもらうため。

「生徒たちは卒業する頃、自分の意見をはっきりと言い、
将来の目標を持つようになる。今後も活動を続けたい」と、
木村校長は期待。

◆職業観を育む教育

子どもが主体的に自分の進路を選択、決定できる能力を
身に着けたり、働き方や目標とする職業を
具体的に考えたりするための教育。キャリア教育とも呼ばれる。
社会人の仕事に関する講演を始め、農業体験や職場で
実際に仕事を手伝うインターンシップなどの方法がある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090708-OYT8T00259.htm

2009年7月19日日曜日

報酬上げで利用負担増も 職員待遇改善へ難問 「どうする社会保障 衆院選を前に」介護保険【3】

(2009年7月15日 共同通信社)

2000年、介護保険制度のスタートから来年で10年。
高齢化の進展で、07年度にはサービス利用者は363万人、
給付費は6兆円超。

介護業界は、重労働や低賃金による人手不足が深刻で、
職員の待遇改善を図れば、利用者の負担増につながりかねない、
という難問に直面。

政府、与党は4月の介護報酬改定で、介護事業者に支払われる
報酬の3%引き上げを実施。

民主党など野党4党が、10%引き上げを図る法案を国会に提出、
09年度補正予算で、職員1人当たり月1万5千円程度の
賃上げ相当額を、賃金増を確約する事業者に交付することを決めた。
10月から2年半の時限措置。

報酬改定の効果について、東京都社会福祉協議会が行った
アンケートでは、55・2%が「収入が増えた」と回答。
「基本給を上げた」のは37・2%など、職員の待遇改善を図った
事業者は一部にとどまった。

理由の一つは、各種サービス単価が一律に引き上げられず、
ベテラン職員が多いなど、一定の条件を満たした事業者が
料金を割り増しできる「加算」を中心としたため。

利用者にしてみれば、受けるサービスの内容は変わらないのに、
加算に伴い、自己負担分も値上げされることに。

社協のアンケートでは、「加算したくても、利用者に説明しづらい」
などの不満、「加算や交付金のような不安定な財源では、
待遇改善は困難」と指摘する声。

3月、群馬県渋川市で起きた老人施設「たまゆら」の火災では、
東京都墨田区の生活保護受給者ら10人が死亡、
都心の介護施設不足という背景も指摘。

慢性疾患の高齢者が長期入院する、介護型療養病床の
11年度末廃止を決めるなど、厚生労働省が進めてきた
社会保障費抑制策にも批判。

たまゆら問題も踏まえ、政府、与党は09年度補正予算で、
特別養護老人ホームなどの施設整備に、
3年間で約3千億円を充てることを決めた。
施設入所者が増えれば給付費が増え、いずれ保険料にはね返る。

09年度から3年間の65歳以上の保険料は、
特例交付金の創設などで全国平均で月4160円に抑えられたが、
厚労省幹部は、「3年後は5千円を超えかねない」

舛添要一厚労相は、「日本は、低負担で中福祉を実現してきたが、限界」
必要なサービスと負担のバランスをめぐる議論は、避けて通れない。

※介護保険制度

40歳以上の人が保険料を納め、65歳以上の高齢者を中心に
介護サービスを利用できる社会保険制度。
費用は、利用者が1割負担し、残りは保険料と税金で半分ずつ賄う。
事業者に支払われる介護報酬は公定価格で、
厚生労働相が3年ごとに改定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/15/104356/

課題山積、ネックは財源 高齢者医療や国保 「どうする社会保障 衆院選を前に」医療保険【2】

(2009年7月15日 共同通信社)

自民党の衆院選マニフェスト(政権公約)づくりをにらみ、
若手議員が中心の「後期高齢者医療制度での75歳年齢区分の
撤回を求める会」が、園田博之政調会長代理に要望書を提出。

昨年4月、後期医療制度のスタート直後から批判が噴出した
75歳での年齢区分を改め、同制度を市町村運営の
国民健康保険(国保)と統合し、都道府県単位に再編する。
こんな見直し案を、マニフェストに明記するよう求めたが、
園田氏は「参考にします」と答えただけ。

「求める会」の呼び掛け人には、古賀誠選対委員長らも名を連ね、
先月下旬の設立総会に出席した議員は十数人。

参加を見送った議員は、「今更あんな会合を開かなくても」と渋い顔。
党内の大勢は、「後期医療制度への批判は収まりつつある」
「衆院選前に、寝た子を起こすな」というわけ。

自民、公明の与党は、制度見直しの基本方針をまとめている。
衆院選後の課題として、
(1)「後期高齢者」、「終末期医療」の名称変更
(2)健康保険組合などの加入者だった人は、元の健康保険に継続加入。

「求める会」が要望した年齢区分見直しについて、
「安定的な財源の確保と併せて検討を進める」と位置付け、
消費税率引き上げが想定される2011年度以降に議論を先送り。

与党の多くが、後期医療制度の見直し以上に重視するのが、
危機的状況にある国保財政の立て直し。

国保は、もともと自営業者向けの制度だが、
退職した高齢者や所得が低い非正規労働者の加入増加に伴い、
保険料未納が増えるなど、収入が低迷。

07年度、市町村の国保財政は7割が赤字に。
低所得者が多い自治体への支援策が、09年度末に期限切れに、
厚生労働省は支援策の延長を検討し始めた。

来年度、2年に1度の診療報酬改定の年。
医師らの技術料の「本体部分」と薬価の合計で、
「10年ぶりのプラス改定実現を」と、日本医師会。

02年度から4回連続のマイナス改定が、
「医師不足に象徴される医療崩壊を招いた」との指摘。
民主党の鳩山由紀夫代表は、「2割上がるくらいでないと厳しい」

今後も高齢化に伴い、医療費は増え続ける。
「どの課題も、巨額の財源を必要とするのがネック。
何を優先して着手するべきか」

※高齢化と医療費

国民医療費は、高齢化と医療技術の進歩により、
毎年3~4%増えていく。2006年度、約33兆円。
70歳以上の医療費が、約13兆円と4割を占め、
将来的には5割を超えると予測。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/15/104355/

不安ぬぐえぬ現役世代 少子高齢化で妙手なく 「どうする社会保障 衆院選を前に」公的年金【1】

(2009年7月15日 共同通信社)

「これで生活できるのかな」
社会保険庁から、「ねんきん定期便」を受け取った男性(41)は、
思わず不安を口にした。
定期便の記入例に沿って、将来の年金額を試算した結果は、
現在の年収の3分の1にも満たなかった。

男性のように、具体的な年金見込み額を知り、
予想外の少なさに驚く現役世代は多い。
少子高齢化のもとで年金財政を維持するため、
給付水準は2012~38年度まで抑制され、実際の受取額は
定期便の見込み額から目減りする見通し。
保険料負担は、17年まで段階的に引き上げられる。

厚生労働省の試算では、来年70歳の厚生年金受給者は、
納めた保険料の6・5倍の年金を受け取れ、30歳の世代は2・3倍。
保険料の半分は会社負担で、それを含めれば1・15倍に。

政府は「百年安心」をうたうが、根拠とする「年金の給付水準は、
現役世代の収入の50%を維持」という約束も、
年金積立金の4・1%のプラス運用などの前提に基づく。
「甘い試算」との批判は根強い。

制度を持続させるため、政府、与党は基礎年金の給付費に
投入する税金の割合を、3分の1強から2分の1に引き上げる
改正国民年金法を、今国会で成立。

厚労省は、低所得者の保険料を一部補助して、将来の年金を
最低限保障する仕組みや、25年の最低加入期間の短縮など、
現行制度の手直し案を提示。

信頼回復に躍起だが、支給開始年齢の引き上げや
保険料アップなどが将来再び行われる可能性も。

自民党は厚労省案を踏まえ、衆院選マニフェスト(政権公約)に
盛り込む年金政策を検討中。
民主党は国民、厚生、共済年金をすべて一元化する改革案。

民主党案の特徴の一つは、所得比例年金に最大月7万円を
上乗せする全額税負担の最低保障年金。
上乗せ額について、07年参院選で「現役時代の年間所得で、
約600万円から徐々に減額し、約1200万円を超える層はゼロにする」

今回は、減額する所得水準を明らかにしていない。
ある厚労省幹部は、「年間所得300万円から減額しないと、
財政的に成り立たない」

「その点は、具体的な制度設計の中で示したい。今は詰めていない」
党年金調査会長の古川元久衆院議員は、記者会見でそう答えるだけ。
 × × ×
急激な少子高齢化を背景に、年金や医療、介護など制度の
ほころびが指摘されて久しい。
07年参院選では、年金問題が争点となり、自民党が惨敗。
衆院選でも、社会保障の在り方が問われそう。
現在の制度が抱える問題点を探った。

※公的年金

日本の制度は、全国民共通の基礎年金(国民年金)が土台、
2階部分に厚生、共済両年金、3階部分に企業年金という構造。
現役世代の保険料で、高齢者らへの給付を賄う
「保険方式」、「賦課方式」を基本。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/15/104354/

ポスト京都、新日鉄のうらみ節

(日経 2009-07-06)

日本政府が、2020年に温暖化ガスの排出を、
05年比15%減らす目標を掲げたのに対し、
企業別の排出ランキングで上位を独占する高炉大手が反発。

今の高炉法では、排出削減が限界に近づき、
切り札になる水素製鉄も、実用化は30~40年先になる見込み。
鉄スクラップを原料に使い、温暖化ガスの排出が少ない電炉が
急速に存在感を増す可能性。

07年度の企業別温暖化ガス排出は、新日本製鉄が1位、
JFEスチールが2位、高炉大手が上位を独占。
石炭を蒸し焼きにしたコークスで、鉄鉱石を還元するとき、
鉄鉱石に含まれる酸素とコークス中の炭素が結合。
大量のCO2発生は避けがたい。

日本の高炉の生産効率は世界最高水準で、
「温暖化ガスを、今以上に減らす余地はほとんど無い」(鉄鋼大手幹部)
日本鉄鋼連盟の宗岡正二会長(新日鉄社長)は、政府の目標について、
「国際競争にさらされる(鉄鋼のような)産業には大変厳しい」

石炭からコークスをつくるコークス炉の全面更新が、
一つの対策として考えられる。
新型コークス炉は、新日鉄が昨年、大分製鉄所で初めて導入。
石炭を蒸し焼きにして、コークスをつくる時間を、
従来の18時間から13時間に短縮。
消費エネルギーが少なく、これまでのコークス炉に比べ、
CO2排出を年40万トン減らせる。投資額は370億円。

新日鉄のコークス炉は国内に17あり、寿命が来ていない炉も含め、
すべて切り替えるには莫大な投資が必要。
中国の鉄鋼業界が、温暖化対策に同程度のコスト負担をしなければ、
「日本の鋼材は、価格競争で全く太刀打ちできなくなる」

高炉の温暖化ガス削減の切り札は、各社が経済産業省などと協力、
開発を進める水素製鉄
高炉で還元材料として使うコークスを水素に代替すれば、
排出されるのはCO2ではなく水に。
水素を大量に安定調達するのは難しく、コストも高い。
どんなに頑張っても、20年までに水素製鉄の実用機をつくるのは難しい。

そこで注目を集めるのが、これまで高炉の陰に隠れがちだった電炉。
電炉は、鉄スクラップを溶かして不純物を取り除き、粗鋼を生産。
炭素の固まりであるコークスを使わない。
最大手の東京製鉄によると、鉄1トン生産するときに排出する
CO2は、高炉の4分の1ですむ。
現在、国内の粗鋼生産のうち、高炉は7割強で、電炉が3割弱。
米国は電炉比率が57%、欧州は43%で、
「日本は先進国の中では著しく低い」

ある高炉大手の幹部は、今3割弱の電炉比率が遠くないうちに
4割に上がるのでは、と危惧。
温暖化ガスの排出を6~8割減らす50年へ向け、
注目度はさらに高まる可能性がある。

課題は、品質との指摘も。
電炉メーカーは否定するが、高炉メーカーは
「電炉材は、原料のスクラップに含まれる不純物などの関係で、
高炉材に比べると、強度や加工性など品質が劣る」
これまで電炉材は、自動車向けほど品質が問われにくい
建材向けが主体。
最近は、東京製鉄が高炉製品に迫る品質の鋼材を開発、
高炉大手の牙城だった自動車用鋼板の分野にも進出。

電炉でつくった鋼板を使う自動車は、
表面の仕上げなどで、高炉材ほどの高級感を出しにくいかも。
環境対策のためならそれでよい、という消費者が増える可能性も。

モータリゼーションが始まって日が浅い中国などの発展途上国では、
スクラップの発生量が十分でなく、世界的に当面は
電炉原料の量に制約がある。
急激に電炉比率が増えると、スクラップ価格の高騰を招く恐れ。
10年後、廃車が急増し、スクラップの供給が増えてくるとの見方。

高炉大手も、指をくわえて見ているわけではない。
新日鉄などは、電炉メーカーへの出資を拡大するなど、布石を打つ。

高炉でなければ、生産できない高級鋼材の分野は
相当程度、残るだろう。
電炉メーカーが台頭してくれば、高炉が中心だった
鉄鋼業界の地図はすいぶん変わるかもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090702.html