2009年7月19日日曜日

不安ぬぐえぬ現役世代 少子高齢化で妙手なく 「どうする社会保障 衆院選を前に」公的年金【1】

(2009年7月15日 共同通信社)

「これで生活できるのかな」
社会保険庁から、「ねんきん定期便」を受け取った男性(41)は、
思わず不安を口にした。
定期便の記入例に沿って、将来の年金額を試算した結果は、
現在の年収の3分の1にも満たなかった。

男性のように、具体的な年金見込み額を知り、
予想外の少なさに驚く現役世代は多い。
少子高齢化のもとで年金財政を維持するため、
給付水準は2012~38年度まで抑制され、実際の受取額は
定期便の見込み額から目減りする見通し。
保険料負担は、17年まで段階的に引き上げられる。

厚生労働省の試算では、来年70歳の厚生年金受給者は、
納めた保険料の6・5倍の年金を受け取れ、30歳の世代は2・3倍。
保険料の半分は会社負担で、それを含めれば1・15倍に。

政府は「百年安心」をうたうが、根拠とする「年金の給付水準は、
現役世代の収入の50%を維持」という約束も、
年金積立金の4・1%のプラス運用などの前提に基づく。
「甘い試算」との批判は根強い。

制度を持続させるため、政府、与党は基礎年金の給付費に
投入する税金の割合を、3分の1強から2分の1に引き上げる
改正国民年金法を、今国会で成立。

厚労省は、低所得者の保険料を一部補助して、将来の年金を
最低限保障する仕組みや、25年の最低加入期間の短縮など、
現行制度の手直し案を提示。

信頼回復に躍起だが、支給開始年齢の引き上げや
保険料アップなどが将来再び行われる可能性も。

自民党は厚労省案を踏まえ、衆院選マニフェスト(政権公約)に
盛り込む年金政策を検討中。
民主党は国民、厚生、共済年金をすべて一元化する改革案。

民主党案の特徴の一つは、所得比例年金に最大月7万円を
上乗せする全額税負担の最低保障年金。
上乗せ額について、07年参院選で「現役時代の年間所得で、
約600万円から徐々に減額し、約1200万円を超える層はゼロにする」

今回は、減額する所得水準を明らかにしていない。
ある厚労省幹部は、「年間所得300万円から減額しないと、
財政的に成り立たない」

「その点は、具体的な制度設計の中で示したい。今は詰めていない」
党年金調査会長の古川元久衆院議員は、記者会見でそう答えるだけ。
 × × ×
急激な少子高齢化を背景に、年金や医療、介護など制度の
ほころびが指摘されて久しい。
07年参院選では、年金問題が争点となり、自民党が惨敗。
衆院選でも、社会保障の在り方が問われそう。
現在の制度が抱える問題点を探った。

※公的年金

日本の制度は、全国民共通の基礎年金(国民年金)が土台、
2階部分に厚生、共済両年金、3階部分に企業年金という構造。
現役世代の保険料で、高齢者らへの給付を賄う
「保険方式」、「賦課方式」を基本。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/15/104354/

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