2008年8月9日土曜日

北京五輪:開幕 スポーツ愛、胸に 集う選手、競う力

(毎日 8月9日)

1964年東京、88年ソウルに続く、アジアで3度目の夏季五輪、
北京大会が8日夜に開幕。
メーンスタジアムの国家体育場(愛称・鳥の巣)で、華やかな式典。

1896年にギリシャで開催された第1回大会から、
29回目(戦争で中止の大会を含む)の今回は、
過去最多の204カ国・地域から選手1万1193人が参加。
イラクの参加が直前に決まったが、
ブルネイが選手団を派遣しないことで、
国際オリンピック委員会(IOC)の加盟国・地域すべてがそろうことはなかった。
28競技302の実施種目数も過去最多、
開催国・中国の国家を挙げた巨大なスポーツの祭典に。
日本も、過去最多となる576人の選手・役員を派遣。

◇北京五輪組織委員会・劉淇会長

五輪を支持してくれた人々に感謝したい。
五輪は中国の100年の夢。
7年前に約束したことを、私たちの努力で誠実に守ってきた。
中国が良い印象を残すことを期待。

◇国際オリンピック委員会・ロゲ会長

中国が、五輪への扉を開けるという長い間の夢が実現。
「一つの世界、一つの夢」が実現した。
ドーピングや不正を拒絶して、友情と尊敬という五輪精神を大切に戦ってほしい。

◆実るか、日本の強化策

中国流に漢字の画数にしたがって決められた日本選手団は、
23番目で入場行進。
先頭には、旗手を務めた卓球女子の福原愛(ANA)。
観客を見ながらにこやかに歩いていると、
プラカードを持った女性との距離が開き、慌てて小走りで追いかける場面も。
日本選手団主将で柔道男子の鈴木桂治(平成管財)もリラックス。
4年に1度の祭典が幕開けすれば、主役は選手たち。
その表情は、みな生き生きとしていた。

日本選手団の役員を除いた参加選手数339人(男170人、女169人)は、
1964年東京五輪の355人(男294人、女61人)に次いで2番目。
前回のアテネ五輪では64年東京五輪と並び、16個の金メダルを獲得。
銀9個、銅12個を含めたメダル数37個は、過去最多。
今回、金メダル数は「2ケタが目標」(福田富昭選手団長)と
厳しい戦いを予想するが、総メダル数では「アテネ超え」を目指す。

今回は、国営の強化拠点となる「ナショナルトレーニングセンター」(NTC)が
オープンして初めての大会。
日本オリンピック委員会(JOC)選手強化本部は「チームジャパン」を掲げ、
NTCでの強化合宿を通じて横の連携を図ってきた。

けん引役として期待されるのが、柔道、レスリング、陸上、水泳、体操。
本格的に競技が開始する9日からは早速、柔道女子48キロ級で
谷が3連覇の偉業に挑む。
メダルラッシュにわいたアテネ大会と同様、序盤戦から勢いをつけたい。

JOCはアテネ五輪後に、長期的な目標として
「2020年五輪までに、メダル争いで世界のベスト3」を掲げた。
それに呼応するように、政界の議論も本格化。
国際競技力の向上を掲げて昨年、自民党にスポーツ立国調査会が発足。
欧米のスポーツ大国並みに、国を挙げて振興に取り組むため、
スポーツ基本法(仮称)の制定、スポーツ省・庁の創設など中間報告。

国を挙げて取り組むことは、今後の競技環境の向上につながることが
期待される一方、選手や競技団体にかかる責任が大きくなる。
北京五輪は、21世紀の日本のスポーツのあり方を議論する第一歩に。

◆繰り返される膨張とひずみ 解決の道、考えながら

「スポーツの祭典」はどこに行くのだろうか?
北京五輪は、そう問いかけている。
アスリートたちの躍動への期待は高まるが、どこか晴れない気持ちも。
その理由を、中国だけに求めるのはたやすい。
しかし、ここはスポーツ界が自ら決めた開催地である。

北京五輪は、01年に国際オリンピック委員会(IOC)総会で開催が決まった。
モスクワ五輪が行われた80年から21年間IOC会長を務め、
五輪の商業主義化を積極的に推進したサマランチ氏(現IOC名誉会長)が
勇退する歴史的な節目。

モスクワ大会と、4年後のロサンゼルス大会は、
旧ソ連軍のアフガニスタン侵攻に端を発した東西両陣営の政治対立の影響で、
両陣営がボイコット合戦を繰り返した。
IOCは、政治に翻弄された「負の歴史」が、
社会主義国家での大会の成功で払拭されることを期待。

人口13億という中国は、現代の五輪運動を支えるスポンサー企業に
とっても大きな魅力。
サマランチ氏は、一貫して北京を支持、
その思いをそんたくしたIOC委員の投票結果が「北京」開催に。

それから7年。
中国は、IOCの基準に応じ、大会運営、会場建設費、インフラ整備に、
約4兆8500億円の巨費を投じた。
国家の強い意思がなければ、実現できるはずもない。
運営や会場群は、過去の五輪と何らそん色はなく、
「過去最大の大会」を前面に、自信に満ちあふれている。

それを見て思うのは、五輪がカネに任せた国威発揚の機会に
戻ったことへの危機感。
そうした考え方のひずみが、地方での暴動やテロなどを引き起こす
原因をつくって死傷者が出たのなら、
「この五輪が本当に、中国国民のためになったのか」。

サマランチ氏の後継者、ロゲ会長のIOCは、
中国の準備を称賛することはあっても、聖火リレーでの混乱から始まり、
食の安全性、大気汚染、ネット規制と懸案が山積するにもかかわらず、
明確な意思表示はしなかった。
その姿は、膨張した五輪を制御できずに手をこまねいているよう。

五輪は、多くの危機を乗り越えた歴史の繰り返し。
新たに問題点が出たのならば、スポーツを愛する者が自らの意思で
解決に向けて考えていくほかはない。
我々には、16年夏季五輪招致という格好の素材がある。

http://mainichi.jp/enta/sports/08olympic/archive/news/2008/08/20080809ddm035050027000c.html

合併問題を考える集い開催 市議の考えを聴取

(東海新報 8月5日)

陸前高田市各種女性団体連絡会(村上末子会長)主催の
合併間題を考える市民の集い。
大船渡市との先行合併間題について、
陸前高田市議会(西條廣議長、議員20人)の議員一人ひとりから
考えを聴取。出席した議員16人のうち、推進派と慎重派がほぼ同数、

市民からは「議員には、もっと市民の声を聞く機会を設けてほしい。
あまりにも動きが遅い」

会場には、市民と市議ら約150人が出席。
村上会長は、「合併問題をめぐり、市は市政懇談会を開催したばかり、
有権者の3・7%ほどの出席率で、男性が多い。
その中で出された意見が市民の総意かというと疑問であり、
男女共同参画の時代を迎え、より多くの人の生の声を
市議会議員に聞いてほしいと企画。有意義な集いに」

西條議長は、「議員は全体の奉仕者であり、市民の代弁者として
声なき声に耳を傾け、今後の議員活動にいかしていきたい」

市内有志が大船渡市との合併協議会設置に向け、
中里長門市長に直接請求、
中里市長が甘竹勝郎大船渡市長を訪ねて、
合併協設置を市議会に付議するかどうか意見照会。
今後、甘竹市長が「付議する」と回答すれば、
気仙両市議会で設置案件が審議されることに。

出席した議員16人から、大船渡市との先行合併の意見を聞いた。
推進の議員から、「市町村合併はまちづくりの手段であり、
今後のまちづくりを考える機会にすべき」、
「少子高齢化による税収減など、今後も単独市でやっていけるか」、
「合併協設置イコール合併ではなく、協議しながら地域づくりの検討を」、
「地域活性化のためにも合併協での協議が必要」といった意見。

慎重の議員から、「広域連携を進める上で、現在の広域連合で十分では」、
「住田町を除いた先行合併は疑問」、
「気仙三市町に溝をつくってはいけない」、
「すでに合併した地域の検証を行うことが先決、拙速な合併は避けるべき」

いずれの議員も「気仙は一つ」を強調、合併の是非については、
「市民の合意が必要」との考えで一致。
共通して市民の意見に耳を傾けていく姿勢。

市民からは、「大船渡市民の中には、『気仙の中心地は大船渡市』
といった考えが。平等な立場で合併問題を話し合っていけるのか」。
議員は、「大船渡市の高飛車な態度が、これまでの合併協議を
阻害してきた一因]。
「子どもは希望そのもの。どのようなまちづくりをしていけばいいか。
合併問題よりも、子どもを安全安心に育てるまちづくりを考えてほしい」、
「合併して、『三陸市』の名称で名産品販売を」、
「合併によって市民生活の負担が増すようであれば損、
そのようなことにならないよう検討を」、
「合併問題に、市民はメリットやデメリットを十分理解していない。
何か詳しい資料などの公表を」

市民から、「議員は今後も市民から話を聞いていくというが、
どのように聞いていくのか。動きが遅すぎる」
西條議長は、「これから市民との話し合いのために足を運び、
メリットやデメリットを説明していきたい」

村上会長は、「合併問題や市政課題に、
女性や市民がもっと参画できるような機会がほしい」。

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年8月7日木曜日

市民の誇り「世界」に 早池峰神楽無形遺産登録へ

(岩手日報 7月31日)

花巻市大迫町の早池峰神楽が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の
「無形文化遺産」国内候補に選ばれた。

500年以上とも伝えられる長い間、地域で脈々と伝えられてきた。同神楽は市民の誇り。

「世界の早池峰神楽だ」、「伝承への大きな励みになる」。
舞い手らは、伝承への責任感を強くしている。
大償、岳両神楽の保存会は、8月1日の早池峰神社例大祭での
神楽奉納準備に忙しい。
大償神楽保存会は、花巻市大迫町内川目の「神楽の館」で練習。
約15人が気合のこもった表情で、演舞に打ち込んだ。
佐々木裕会長は、「舞う場一つ一つが勝負。
今後も緩みなく芸を磨いていくのみだ」と真摯に受け止める。
岳神楽保存会の小国朋身会長は、「早池峰信仰の下、生活する人があって
神楽は成り立つ。支えてくれる地域の人たちと喜びを分かち合いたい」

両神楽とも、公演は年間50-70回に上り、
西日本や関東などに出向くことも多い。
近年は、米国や欧州、韓国など海外公演も成功させ、各国メディアから絶賛。
大石満雄花巻市長は、「無形文化遺産となれば、国内のみならず
世界的に価値を認められる。より国際的な観光や交流の促進につながる

市民にとっても、早池峰神楽はなくてはならない存在。
長年、神楽の公演に足を運んでいる花巻市南万丁目の小原順次さん(73)は
神楽は心が揺さぶられる。
伝統が生む華麗さ、重厚さは世界でも類を見ないと思う

保存活動に助力する早池峰神楽保存会の佐藤共成会長も
「住民にとって、神楽は生活の一部であり、誇り。
子どもたちへの伝承も充実しており(登録は)、今後の大きな励みになる」

平均寿命が最高 女性85.99歳で23年連続世界一 男性79.19歳

(日経 7月31日)

日本人の平均寿命は、女性が85.99歳、男性79.19歳、
男女ともに過去最高を更新。
厚生労働省の2007年「簡易生命表」で分かった。

女性は0.18歳、男性は0.19歳、前年より延びた。
女性は、23年連続で長寿世界一。
男性は06年の2位から3位に下がった。

厚労省人口動態・保健統計課は、「日本人の三大死因である
がん、心臓病、脳卒中の治療成績が向上したことが
平均寿命の延びに影響」

女性の2位は香港の85.4歳(07年)、3位はフランスの84.1歳(06年)。
男性の1位はアイスランドの79.4歳(07年)、2位は香港の79.3歳(07年)。

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1G3103G%2031072008&g=MH&d=20080731

eラーニングワールド2008:iPodで看護実習支援、病院研修をデジタル教材化など、IT活用法を紹介

(毎日 7月30日)

コンピューターやインターネットを活用した人材育成の手法や教材を
紹介する「eラーニングワールド2008」が、東京ビッグサイトで開幕。
日本eラーニング大賞の表彰式が実施、
「iPod Touch」を利用した学生の実習支援や、
病院の研修を独自のデジタル教材化した事例などが紹介。
eラーニングワールドは、国内外から84社が出展。

日本eラーニング大賞の
▽経済産業大臣賞には全日本空輸とアーネット
(eラーニングシステム開発、東京都町田市)、
▽文部科学大臣賞には大阪大学工学研究科、
▽総務大臣賞にはホーマック(ホームセンター経営、札幌市)、
▽厚生労働大臣賞には横浜市立大付属市民医療センターが受賞。
審査委員特別賞は島根大医学部。

横浜市立大付属市民総合医療センターは、
センター内ネットワークを使った全職員対象の研修について発表。

患者確認の方法や心肺蘇生、災害・事故時に患者に着ける札
「トリアージ・タッグ」の使い方などで、
同センターの方針を共有することに役立っている。

産休中の職員や、実習生、他施設から移ってくる医師などが
事前に見られるようにシステムを整備したい。
地域の医療施設との連携も視野に。

島根大学医学部は、医学科と看護学科の地域実習の際、
学生に「iPod Touch」を持たせている。
看護実習では、地域の人たちを集めて健康教室を開いたり、
乳幼児のいる家庭を訪問する保健師に同行。

大学の講義で学んだ内容を、現地で復習する必要があり、
教科書を持ち運ぶ代わりに、モバイル端末を使うことに。
「iPod Touch」は、教科書だけでなく、ビデオや写真の教材を保存でき、
インターネットに接続できなくても有効なほか、
携帯電話と比べて画面が大きく見やすい利点。

島根県は山間部が多く、実習前にしり込みする学生が多かった。
だが行かせてみると、楽しんで帰ってくる。
以前は理由が分からなかったが、実習後に出すレポートとは別に、
現地から教員にメールで感想を送らせるようにしたことで、
「健康教室で、参加者にほめられてうれしかった」、
「漁に連れて行ってもらって、漁師の過酷な生活が分かった」など、
レポートには表れない学生の思いを教員が把握。
感想を学生に公開したところ、実習前の学生も楽しみにするようになった。

九州大学歯学部は、「間違い探し」教材の作成を進めている。
1年生向けの文章の間違い探しから、上級学年向けの
画像、動画の間違い探しまで。
歯科の治療の動画では、処置の方法や手順などの間違いを探す。

同大では「正解を覚えるのは簡単。科学的根拠に基づき、
間違いを指摘できることで、診療の現場で問題点に気づく洞察力を育てたい
09年から、学生の自習用に利用する予定。

http://mainichi.jp/life/edu/archive/news/2008/07/20080730mog00m100043000c.html

2008年8月6日水曜日

バラスト水:生態系かく乱する、船に積む海水 処理難しく遅れる国際規制

(毎日 7月28日)

船体の安定のため取り込むバラスト水が移動し、貿易相手国の生態系を
遺伝子レベルでかく乱する実態が徐々に分かってきた。
生態系保護のため、バラスト水処理を義務づける国際的な規制が
来年から始まる予定だったが、処理装置の開発の遅れなどで
開始時期はずれ込む見通し。

「予想より海の生態系が乱されていた」。
バラスト水が生態系に与える影響を研究している
神戸大内海域環境教育研究センターの川井浩史教授は、
自身の調査結果をみてそう話す。

バラスト水は、タンカーなどの船舶を安定させるために出港時に積み、
相手国の港やその沖合で荷物と引き換えに捨てられる海水。
世界中の年間移動量は100億トンとの推定、
特に資源輸入国の日本は大量のバラスト水輸出国として問題視。
出港地の生物が運ばれ、相手国の生態系を乱す恐れ。

欧州の貝が、米国・五大湖で大繁殖した例や、南米でのコレラ大流行が、
バラスト水の移動と関連。

バラスト水の影響を明らかにするため、川井教授らは、
日本や貿易相手国で採取したワカメ、アオサ・アオノリ類、シオミドロ類の
海藻などの遺伝子を調べ、生物が他国に移動しているかどうかを調べた。

その結果、米カリフォルニアやメキシコ、豪州タスマニアで採取した
ワカメは、本州から運ばれた可能性が高かった。
ニュージーランドの北島と南島では、遺伝子のタイプが異なり、
南島では韓国・中国タイプと北日本タイプの遺伝子が交雑。

三河湾や大阪湾の海域によって、アオサ・アオノリ類で、
国内でこれまで確認されなかった種類が優勢に。

川井教授らは、微生物調査によりバラスト水タンクで生物が
移動できる場合があることも確認。
「世界の貿易は活発になる一方。
早急に手を打たないと、生態系にとって手遅れになってしまう」

◆条約の批准進まず

バラスト水の被害を防ぐため、国際海事機関(IMO)が04年に
採択したのが、バラスト水管理条約
09年から一部の新造船で、17年からすべての国際船舶で、
処理装置の設置を義務づけ。

条約がいつ発効するか、見通しが立たない状態に。
「30カ国が批准し、合計商船積載量が世界の35%以上」が
発効の要件だが、4月までの批准国はスペイン、ノルウェーなど14カ国、
積載量3・55%に過ぎない。

批准が進まない最大の理由は、処理装置の開発の遅れ。
日本政府も、「処理装置が市場に供給できない状態では、批准できない」。
処理基準は植物、動物のプランクトンやコレラ菌、大腸菌などの
細菌ごとに決められており、基準以下に抑えられる技術だと
証明できなければ、IMOや締約国から処理装置として認可されない。

出港直後に薬剤やろ過で処理したとしても、
長い航海の間に細菌類が再増殖する危険性がある。
船の中を無菌状態にはできない。

逆に、貿易相手港で処理すれば物流に影響する。
バラスト水の処理には時間がかかるため、
港湾で待機する時間が長くなる。

東京大の福代康夫・アジア生物資源環境研究センター教授は、
「素早く処理するために強い薬剤を使えば、周囲の環境に影響が出る。
海水に含まれる生物が相手なので、一筋縄ではいかない」と
技術開発の難しさを説明。

IMO関係者の間では、規制の開始時期を1~2年程度、
先送りせざるを得ないとの意見が強い。

◆処理装置の開発急ぐ

課題を克服した処理装置が開発されつつある。
日立プラントテクノロジーと三菱重工は、プランクトンや菌類を薬剤で凝集し、
さらに磁気分離技術を組み合わせて処理する装置を開発、
IMOから基本承認。

今後、船上試験などを経て、来年中にはIMOと国から
それぞれ製品化前の最終的な承認を得られる見通し。

三井造船と日本海難防止協会などのグループが、
別方式で基本承認を取得。
海外では、独やノルウェーが既にIMOの最終承認を得た装置を開発。

日立プラント社によると、バラスト水処理装置は今後、
世界で1兆~2兆円規模の市場が見込めるといい、
担当者は「各国、各メーカー間の競争が激しくなるだろう」。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2008/07/20080728ddm016040019000c.html

牛乳などのカルシウム食品、脳卒中を起きにくく…厚労省調査

(読売 7月30日)

ヨーグルトや牛乳などのカルシウムを含む食品を多く食べる人ほど
脳卒中になりにくいことが、厚生労働省研究班
(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の
調査でわかった。

摂取量の多いグループは、そうでないグループより発症率が3割少。
対象者は岩手、秋田など4県の40~59歳の男女約4万人。
脳卒中などの病気と食事との関連を13年間調べ、
カルシウム摂取量に応じ、対象を5グループに分けて分析。

その結果、摂取量が最も少ないグループ(1日233ミリ・グラム)と比べ、
最も多いグループ(同753ミリ・グラム)は脳卒中の比率が30%少なく、
3番目に摂取量が多い中間のグループ(同439ミリ・グラム)でも21%低。
心筋梗塞などの心臓病は、関連が見られなかった。

研究班の磯博康・大阪大教授は、
「カルシウムが血圧を安定させ、脳卒中を起きにくくしている可能性がある」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080730-OYT1T00672.htm

スギ花粉症ワクチンの臨床試験前研究開始

(サイエンスポータル 2008年7月31日)

スギ花粉症ワクチンの実現に向けて、大きく前進する橋渡し研究を、
理化学研究所がスタート。
この研究は、臨床試験までを見据えたもので、
厚生労働省が定める患者への投与基準を満たしたワクチンの
製造・毒性試験を開始。

アレルギー疾患に対しては、体内に特定のアレルギー物質(抗原)を
低濃度から高濃度へ少しずつ投与する減感作療法
古くから知られている。

スギ花粉症は、天然スギ花粉から抽出した標準エキスが、
スギ花粉抗原と反応してアナフィラキシーショックと呼ばれる障害を
起こす恐れが高く、減感作療法も使えない。

理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの
石井保之ワクチンデザイン研究チームリーダーらが、
独自に開発したスギ花粉症ワクチンは、2種類のスギ花粉主要抗原を
遺伝子工学的手法で合成したものを用いており、
動物実験で顕著な効果が確かめられている。

アナフィラキシーショックの危険性も少なく、
根本的な治療薬としての期待が高まっている。
薬品として認可されるまでには、臨床試験という大きな関門が控えているが、
理化学研究所の橋渡し研究は、これまでの研究成果を
臨床試験につなぐ役割をもつ。

今後、医薬品や医薬部外品の製造管理と品質管理の基準を満たす
ワクチンの製造を行い、毒性試験などの橋渡し研究
(トランスレーショナルリサーチ)非臨床研究を終了。

秋田大学など7大学や相模原病院などと構成する
アレルギー臨床ネットワークを介して、患者を対象とした
橋渡し研究臨床研究に進む計画。

根本治療薬がなく、対症療法しかないアレルギー疾患は、
日本ではこの50年間で患者が10倍増。
国民の20-30%が悩まされている花粉症の中で、
最も多いのがスギ花粉症で、国民の13-16%が罹患。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0807/0807311.html

地域づくり塾始まる 青年層30人が参加

(東海新報 7月31日)

住田町の「地域づくり塾」は、町農林会館多目的ホールを会場に始まった。
次世代の地域リーダーを育成しようとの講座で、
11月まで全6回にわたって、地域づくり活動のノウハウを学ぶ。

講座は、行政と住民が協働した地域自治の基盤づくりを図ろうと
町が今年度導入した、(財)東北開発研究センターによる
「コミュニティ自立支援プロジェクト」の一環。
町内の20~40代の男女30人が参加。

小泉きく子副町長が、「塾を機会に、町総合計画基本構想の
『安心してずっと暮らすことのできる地域』実現のための
さらなる取り組みに期待したい」。

講師は、同プロジェクトサポートメンバーで、宮城大副学長の山田晴義さん、
せんだい・みやぎNPOセンター代表理事の加藤哲夫さん、
高崎経済大地域政策学部地域づくり学科准教授の櫻井常矢さん、
宮城大事業構想学部助教の鈴木孝男さん。

櫻井さんが、「これからの地域づくりに求められるもの」と題して講演。
「地方分権が進む中、地域づくりはこれまでの行政主導から、
住民ができること、できないことを考え提案していく形に変える必要。
皆さんには、俯瞰で住田町を見てもらったうえ、
課題や何をすべきかを考えてみてほしい」

参加者たちが、次回からのグループワークの予習として、
三点にポイントを絞っての自己紹介や講演で気付いたことの発表などを
和気あいあいと行い、今後の講座に向けて意欲を高めていた。

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年8月5日火曜日

三鉄に国の重点支援を 沿線自治体など協議

(岩手日報 8月1日)

三陸鉄道の沿線自治体などで構成する
沿線地域等公共交通活性化協議会(会長・山口公正宮古市副市長)は、
宮古地区合同庁舎で初会合を開いた。

三陸鉄道への重点支援が期待できる国の
「鉄道事業再構築事業」申請に向け、協議を始めた。
県、沿線市町村、有識者、住民代表ら約30人が出席。

鉄道事業再構築事業の採択には、自治体が線路や橋りょう、
線路下の土地などを保有し、第三セクターなどの民間が運行する
「上下分離方式」の形態が条件。
経営安定化を図ることが目的。

三陸鉄道の橋りょうやトンネルなどは、既に沿線市町村が保有、
線路下の土地は同社所有のため、
今後これらの土地を市町村に無償譲渡する。

採択になれば、これまで原則5分の1だった国からの補助率が
3分の1にかさ上げされるなど、手厚い支援が受けられる。

同協議会は、9月中旬に経営改善策や地域支援のあり方などを
盛り込んだ実施計画の素案をまとめ、
パブリックコメントなどを経て、12月上旬に国に計画を提出。
2009年度からの補助を目指す。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080801_10

特集:洞爺湖サミットと今後の国際交渉(その2止) 温暖化防止、新たな枠組みへ

(毎日 7月30日)

京都議定書に定めのない13年以降の温室効果ガス削減の
新しい枠組みづくりは、来年12月にコペンハーゲンのCOP15で合意
今年12月にポーランドでのCOP14で、
中長期の「ビジョンの共有」という重要テーマの協議に入る。
先進国と新興国の溝が埋まらない中、厳しい交渉が予想される一方、
米国の地球温暖化政策が政権交代後に大きく変わることが確実視、
その影響がどのように表れるかが注目。

09年1月に始まる次期政権の座を争う共和党マケイン氏、
民主党オバマ氏の両候補は、いずれも中長期の具体的な数値目標を示す
温暖化対策の法案を議会に提出、
産業界が嫌う排出量取引などの削減策にも熱心。

来夏に伊マッダレーナ島で開かれるサミットは、COP15を控え、
欧米が削減目標や対策メニューを競い、排出量の極めて少ない将来の
「低炭素社会」実現に向けて、主導権争いを強める可能性が高い。
新興国を交えたMEMの第2回首脳会合も、併せて開催。

ある環境省幹部は、「このままでは、日本は温暖化対策の抵抗勢力と
みなされるか、合意形成に必要不可欠な国ではないと無視される恐れも」

日本は、今回のサミットでの「調整役」のような立場にとどまらず、
現状を打開する対策を唱え、独自の存在感を示せなければ、苦しい立場に。
「温暖化対策に不熱心な米国」の陰に隠れて、
批判の矢面から逃れることはもはやできなくなる。

昨年、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した警告を、
政治がどう受け止め、温暖化を防止するのか?
COP15に向け、日本に強い指導力と決断が求められている。

◇中期目標、今すぐ議論を--環境エネルギー政策研究所副所長・大林ミカさん

--サミットの評価は。

新聞の論調がおおむね好評だったことが、NGOにとっては意外。
京都議定書に参加している国々は、IPCCが気温上昇を2度以内に
抑えるために必要な「20年までに25~40%削減」というシナリオを
織り込んだ合意文書をまとめている。
今回のサミットで議長国日本は、率先して中期目標を発表することにより
サミットを前向きにする義務があった。

気候変動枠組み条約事務局や国連機関の方々は、
「日本は中期目標を出すべきだ」と。
日本がそれをしなかったことは、世界のNGOにとって失望。
日本が中期目標を出さず、宣言文でもなかったことは、後退に近い。

米国も含めて長期目標に賛成したとしたら、小さいけれども前進。
国連の交渉プロセスを重視し、温暖化の影響を強く受ける最貧国や
島しょ国が参加していないMEMは、補完的なものだと確認したことも評価。

--成果と不十分な点があったということですか。

全体的な評価は否定的ですね。
世界の注目を集め、国民的な関心も高まっていたのに、
サミットが近づくにつれて期待値が下がり、その程度の結果しか出なかった。
日本は、リーダーシップを発揮できなかった。

福田首相が、気候変動を政策の中心課題に据えて考え始めたことは良いが、
福田ビジョンは経済産業省がつくったシナリオ通りの数値が入っている、
といった問題がある。
私たちNGOも含めて、環境に取り組む勢力の力不足を感じる。

--今後の課題は。

COP15までの1年半の間に、国際的に通用する高い目標を
どのように出すのかが重要課題。
政府は、来年のしかるべき時期に中期目標を決めると言っていますが、
来年では遅い。
国内で議論しているところがない。
中央環境審議会でさえ、議論していない。
すぐに議論を始めなければなりません。

日本の不幸は、温暖化対策とエネルギー対策を切り離していること。
両者は表裏一体。
エネルギーには手をつけず、小手先の排出部分の対策だけやろうとした結果、
対策は破綻して排出量が増えている。
排出量取引や環境税の議論は重要ですが、
まずエネルギー政策を根本的に変えるべき。
自然エネルギーの開発・普及を強力に進めなければなりません。
ドイツ型の自然エネルギーの固定価格買い取り制度などの政策により、
市場を形成することが必要。
==============
◇福田ビジョン

サミット前の6月に、福田首相が明らかにした温暖化防止の方針で、
正式名称は「『低炭素社会・日本』をめざして」。
日本の二酸化炭素(CO2)排出削減の長期目標は、
「50年までに現状から60~80%削減」、
中期目標は、「来年のしかるべき時期に総量目標を発表する」。
具体的政策では、排出量取引の「国内統合市場」を今秋に設ける方針。
再生可能エネルギー、特に太陽光発電の導入に、前向きな姿勢。

◇気候変動枠組み条約

地球温暖化防止を目指す国際的な枠組みを設定した条約。
92年に採択、90年代末までに温室効果ガスの排出量を
90年の水準に戻すことを目標。
しかし、削減に強制力がなく、97年に京都で開かれた
第3回締約国会議(COP3)で、先進国に排出削減を義務付ける
京都議定書が採択。
09年12月にコペンハーゲンで開かれるCOP15で、
議定書に定めのない13年以降の枠組みづくりを決める。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/30/20080730ddm010010135000c.html

特集:洞爺湖サミットと今後の国際交渉(その1) 先進国・新興国、溝は埋まらず

(毎日 7月30日)

主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が7月7~9日、
洞爺湖畔のザ・ウィンザーホテル洞爺で開かれた。
地球温暖化という人類が直面する危機を回避するため、
首脳たちは何に合意し、どのような道筋を付けたのか。
日本は、議長国としての役割を十分に果たせたのか。
サミットを振り返りながら、来年12月の国連の気候変動枠組み条約
第15回締約国会議(COP15)に向けた今後の国際交渉を展望。

サミット首脳宣言は、世界全体の温室効果ガス排出量について、
「2050年までに、少なくとも50%の削減を達成する目標」を
中国、インドなど新興国を含む各国が共有し、
京都議定書に定めのない13年以降(ポスト京都)の
新たな削減枠組み交渉で採択するよう呼びかけた。
実現に向け、先進国が「野心的な中期の国別総量目標」を設定。

福田康夫首相は、「主要8カ国(G8)の中でもいろいろな立場があり、
違いを乗り越えながら共通の認識を示し、国連交渉に弾みをつける
貢献ができた」、数値目標設定に否定的な米国の譲歩を促した成果を強調。

各国の環境NGO(非政府組織)から、
「先進国自らがより高い目標を設けて、温室効果ガス削減を先導する
姿勢を示さなかった」と批判。

昨年の独ハイリゲンダム・サミットは、先進国の中期目標について言及せず、
「50年半減」という長期目標も、「真剣に検討する」との表現。

今回は、昨年の合意内容をいかに前進させ、新たな温室効果ガス削減の
枠組みを決める国際交渉に弾みを付けることができるか注目。

首脳宣言に、「G8が50年半減に合意した」と明確に盛り込まれず、
NGOから「米国の合意に、明言を避ける玉虫色の解決」と批判。
福田首相は、「米国を含むG8の合意を、当然の前提としている」。
中期目標について、具体的な数値に触れず、失望感が広がった。

サミットには、中国やインド、南アフリカ、ブラジルなど排出量の多い
新興国も招待参加し、地球温暖化問題で発言力を強めた。
メキシコを含む5カ国が、札幌市内で新興国首脳会合を開催、
「先進国としての努力姿勢が見られない」、
先進国に「50年に90年比80~95%減」などの高い目標を求める
「政治宣言」を発表。

ブッシュ米大統領が、世界の温室効果ガス主要排出国計16カ国を集めた
「主要経済国会合」(MEM)の首脳会合を、サミットに併せて開催。
しかし、新興国を含めた形で「50年半減」の長期目標に合意できず。
ブッシュ大統領は、排出量増加が著しい新興国の参加がなければ、
実効性がないと主張。

インドのシン首相は、「新興国といってもいまだ貧困問題を抱えている。
先進国が率先して責任を果たすべき」。
温室効果ガス増加について、産業革命以降、エネルギーを大量消費してきた
先進国に大きな責任があるとの立場。
先進国と新興国の溝が埋まらない現状に、潘基文国連事務総長は
「さらに前進が必要だ」と指摘。

01年の大統領就任の年に、京都議定書を離脱するなど
地球温暖化自体を否定していたブッシュ米大統領が
首脳宣言に合意したことについて、「8年間でここまで変わったのか」と
感慨深く語る日本政府関係者も。

◇「途上国参加」認識に意義--東京大先端科学技術研究センター教授・澤昭裕さん

--サミットの評価は。

先進国に共通する目標は、中国を中心とした成長途上国を何らかの形で
排出削減に関与させること。
先進国が一体となって、京都議定書に続く次期枠組みでは
途上国を加える決意表明をしたことがサミットの最大のポイント。

長期目標や中期目標に進展があるかどうかは、今回の本質ではない。
途上国参加の後に来る話。
途上国が貢献することで、初めて長期目標が達成できるという認識が共有され、
文書に入ったことは意義が大きい。
先進国間に分裂がない状況を作ることが大事、それができただけでも成功。

福田首相は、粘り腰の外交を展開し、よくまとめた。
国際的にもこうした見方が大勢。
環境派の人から見れば全く足りないが、環境・経済の両立派から見ると、
パーフェクトに近い出来。

--途上国は削減の枠組みに参加するでしょうか。

中国やインドにとって、省エネやエネルギー生産性の向上は国益にかなう。
排出総量に枠をはめることはのまないが、先進国の技術支援と資金を
引き出せ、生産性も上がることは、やってもいいと思い始めている。
産業部門に限定した形ならば、乗ってくる可能性はある。

--国内排出量取引制度が導入される方向に進んでいますが。

日本には、石油・石炭税という事実上の環境税があり、省エネ法がある。
欧州連合(EU)は、環境税導入に失敗し、省エネ法はない。
だから、排出量取引制度が作られた。
米国も税、省エネ法ともない。
日本は二つとも持ち、自主行動計画もある。
まずは既存の制度の強化で対応できないかを優先的に検討すべき。

排出量取引を導入すると、最終的にはエネルギー価格に転嫁。
低所得層の人たちにとって、光熱費の割合は高い。
所得の低い人ほど負担が大きいという逆進性の高い政策に。
低炭素社会のために月々いくら負担してもよいかという質問に、
6割の人が1000円未満と答えており、全く負担したくない人も2割弱。
導入に伴う国民負担の増加が明らかにならなければ、
国民は正確な判断ができない。
政府や政党の説明責任が問われている。

--日本が提案したセクター別アプローチをどう考えますか。

セクター別アプローチは、データを集めるのが難しい。
国連の組織として、日本に省エネデータセンターを設置するよう提案。
これまでの抽象的な提案から、交渉方式や新議定書の具体案を出す時期。
国内対策、国際交渉を全体として俯瞰できるスタッフを、
首相の周りに集めることが必要。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/30/20080730ddm010010120000c.html

2008年8月4日月曜日

トランス脂肪酸:米加州で禁止 肥満などの危険性

(毎日 7月27日)

米カリフォルニア州は、州内レストランでの揚げ物用の調理油などに
含まれる「トランス脂肪酸」(TFA)使用禁止を決めた。
ニューヨーク市などが同様の規制をしているが、州レベルでは初めて。

シュワルツェネッガー州知事が、州法案に署名。
米メディアによると、10以上の州が規制を検討。

新規制は、2010年にスタートし、レストランや総菜店などで、
マーガリンなどTFAを含む油脂類の使用ができなくなる。
11年には、ケーキや焼き菓子などでの使用も禁止。

違反した場合、25~1000ドル(約2700~10万8000円)の罰金。
TFAは多量に摂取した場合、血中の悪玉コレステロールを増やし、
肥満や動脈硬化などの危険性を高める。

http://mainichi.jp/life/health/news/20080727ddm041030053000c.html

もっと知りたいエコロジー:目指すは森林・林業日本一~岩手県気仙郡住田町の取り組み~

(毎日 7月30日)

京都議定書では、「適切に森林経営されている森林」が
二酸化炭素の吸収源として認められている。
しかし、国産材の自給率はここ数年、微増にとどまっており、
林業の復興は決して順調ではないのが実態。

林業に明るい日が差し始めた地域もある。
その一つ、岩手県気仙郡住田町を訪ねた。

住田町は、町の90%を森林が占める山村。
かつては林業が財政基盤を支え、地方交付税の不交付団体に
なりかけた時代もある。
しかし、外材の普及は住田町にも影を落とした。
国産材の価格が低迷し、山からの運賃を乗せると採算割れ。
住田町は、林業の復興をあきらめなかった。
住田町の多田欣一町長は、「先人が血と涙と汗を流して育てた木が、
何の価値のないものとして捨てられようとしているのは許されない。
先人の思いを、価値のあるものに結び付けるのが、我々の役目」

林業復興のシンボルが、「木材加工団地」。
製材工場の「協同組合さんりくランバー」と、
集成材工場の「三陸木材高次加工協同組合」、
プレカット・加工工場の「けせんプレカット事業協同組合」で構成。
山から切り出した木を集成材にした後、住宅部材などに加工して出荷する
一環システムが構築されている。

木材加工団地は、バイオマス活用の研究・実践基地としての顔も持つ。
平成13年に木屑焚きボイラーを設置し、廃材から得た熱を、
各工場の暖房や材木の乾燥に使い始めた。
平成14年からは、おがくずなどからのペレット(固形燃料)生産を開始。
以降、ペレットストーブの普及にも努めてきた。
平成19年、ボイラーの蒸気を利用し、発電を行う木質バイオマス発電所を建設。
発電所の排熱(温水)を利用した、イチゴなどのハウス栽培にも取り組み。
廃材たりとも無駄にしないのが住田流。

無垢材信仰が根強い中、住田町では集成材を林業復興の中軸。
当初は、無垢材から始めたが、無垢材は乾燥が難しく、
あるレベルまで乾燥が進むと、必ずと言っていいほど割れや狂いが生じた。
何とか曲がっていないようなものに仕上げても、大工からはじかれた。

関係者らは、「無垢では、とてもじゃないが対応できない」と、
構造的に狂いにくい集成材に転換。
強度も無垢材より約1.5倍優れ、付加価値も高くなる。
日本国内で初めてスギの集成材化にも成功するなど、
集成材は住田町の十八番に。

「オール集成材で家を建てたい。責任は全部自分が持つ」。
平成10年、集成材化の立役者で、けせんプレカット事業協同組合の
専務理事を務める泉田十太郎さんは、
宮城県仙台市のハウスメーカー、スモリ工業に提案。

当時の同社は、「山の職人さんを守りたい」という思いから、
国産の無垢材を使い始めていた。
しかし、「バリバリと音がする」と言った顧客からのクレームが相次いでいた。
その原因は、材木にあった。

高気密・高断熱な家にもかかわらず、当時の材木業者からは
十分に乾燥されていない無垢材が納入。
そのため、完成後の住宅内で構造材などの乾燥が進み、割れや狂いが生じた。

クレームの解決策を模索していたスモリ工業は、泉田さんの情熱にも共感し、
以降は住田町産の集成材に切り替えた。
それが、住田町の林業復興を後押しし始める。
スモリ工業の工法は、通常の木材住宅よりも材木使用量が多く、
工法への人気も高く、着工数が順調に伸びた。

住田町の木材加工団地では、多くの若者が働く。
平均年齢は20代なかば。
これにも、スモリ工業が絡んでいる。
同社では、職人が育ちにくい時代であることを見越し、
住宅部材をパーツ化するなど、“建築技術のいらない工法”を開発。

部材の加工~組み立てまでのすべてを、けせんプレカット事業協同組合に
委託するシステムをつくりあげた。
同事業協同組合に、どんどん若者が入社するようになった。

住田町とスモリ工業は、「森林を守りたい」という思いを共有し、
川下で家を建てることにより、川上に雇用とキャッシュフローを生みだし、
林業復興も目指す仕組みを形づくってきた。

若者雇用の例でも見られるように、相手のメリットを追究しあってきた。
林業復興の大きな鍵になるのでは。

太陽光発電機普及へ、半額目指す…「低炭素」行動案

(読売 7月26日)

温室効果ガス排出を大幅に減らすため、
「低炭素社会づくり行動計画」案が明らかになった。

2050年の排出量を、現状から60~80%削減する長期目標を掲げた
「福田ビジョン」の達成に向けた具体策を示したもので、
太陽光発電機器の価格を3~5年後に半額程度にする施策。
火力発電所や製鉄所から排出される二酸化炭素(CO2)を、
地中に閉じ込める「CCS(炭素回収・貯留)」の実用化へ。

日本の太陽光発電の導入量は、04年までは世界一だったが、
05年にドイツに抜かれた。
行動計画では、「世界一の座を再び獲得する」ことを目指し、
「思い切った支援策」を講じる。
05年度に打ち切った個人住宅での購入費補助の復活や、
電力会社が買い取る太陽光発電の電力量を増やすことを検討。

住宅向け太陽光発電機器の普及を図ることで、
現在200万~300万円の価格が3~5年後に半額程度に。
導入量は、20年に現在の10倍、30年には40倍に。

温室効果ガスを大幅削減する「革新的技術」として期待がかかるCCSは、
来年度に大規模実証実験をスタートさせ、20年までの実用化を目指す。

原子力発電所の建設についても、着実な実現を目指すとし、
新規建設を計画している13基の原発のうち、17年度までに9基を新設

エアコンなどの家電製品や自動車ですでに導入され、
エネルギー効率が最良の製品を業界の基準とする
「トップランナー方式」を、来年4月から建売住宅にも導入。
企業間で、温室効果ガスの排出枠を取引する排出量取引制度は
10月から試行を始める。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20080726-OYT1T00035.htm

エイズによる死者は減少、アフリカ以外で感染者が増加 国連合同エイズ計画

(共同通信社 2008年7月30日)

国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2007年の年次報告を発表、
世界全体のエイズによる死者は約200万人と推定、
2005年の約220万人から減少。

2007年には、世界全体で約3300万人がHIVウイルスに感染、
特にエイズ流行の中心であるサハラ以南諸国が全感染者の約67%、
死者の72%を占めた。

サハラ以南諸国以外では、麻薬使用者や同性愛者、セックス産業の
従事者などが主な犠牲者。
エイズ治療を受けている人数は、2003年の約30万人から
2007年には約300万人と10倍も増えた。

しかし、数百万人の患者が高価な治療薬を入手できないでいるほか、
新たな感染者が中国、ドイツ、インドネシア、ロシア、英国など
アフリカ以外の諸国で増加。

2007年に、新たに感染した人数は約270万人、
数年前の約500万人から比べると減減しているが、
エイズについて心配する必要がなくなったと言うのは時期尚早。
国際援助組織「国境なき医師団」の当局者は、
エイズ関連の死者数の減少が鈍いことが特に懸念される。

米政府は、今後5年間に世界全体でのエイズ撲滅計画に、
これまでの3倍の480億米ドルを投入することに合意。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=77851

2008年8月3日日曜日

スポーツ21世紀:新しい波/276 ロッテ集客作戦/中

(毎日 7月26日)

「地域との融合」と目標を掲げるプロ野球のロッテ球団にとって、
子どもたちとのつながりは欠かせない要素。
一つは、少年を対象にした野球教室「マリーンズ・アカデミー」。
若い女性が華やかに応援を繰り広げる球団のチア・パフォーマー
「M☆Splash!!」を動員したダンスの指導にも乗り出した。

ダンス教室は、中日のチアダンサーが文化センターなどで
指導している例もあるが、ロッテは球団が主体で行う。
小学生を中心に、約220人が指導を受けており、
メンバーはほとんどが女子。

担当する振興部の久世幸郎ディレクターは、
「プレーする人と応援する人がいてこそ、野球は盛り上がる」。

受講生に示す目標は、「プロのチアダンサー」。
千葉マリンスタジアムの観客の前でチアダンスをするなど、
発表の場も用意されているから、教室にも活気がある。

男子を対象とした野球教室は、球団側がボランティア的に開いていたが、
「単なるイベントに終わっている」、
「指導技術が足りない」などの声が出て内容を充実。

ロッテのOB選手らが、子どもから大人までを対象に、
マリンスタジアムなどで、野球技術を教えるとともに、
少年野球チームなどの指導者を対象に「コーチング」も教える。
基本的には有料。

コーチング指導では、実際にマリーンズで行っている打撃や守備などの
練習方法を指導するとともに、「子どもをやる気にさせる方法」、
「楽しく練習させる方法」といった、メンタル面まで教える。
シーズンオフには、バレンタイン監督によるセミナーも計画。

振興部の丸山一仁シニアディレクターは、
「将来、アカデミーの出身者がプロに入って活躍してくれれば、
地域との融合がより進む」。

こうした教室を開設する目的について、球団側は
「子どもたちに野球のプレーも、応援も好きになってもらうこと」。
球団が持つ人材やノウハウを生かしながら、野球好きを増やし、
将来のファン拡大に期待をかけている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

自殺予防へ先生育成 岩手医大、初の講座

(岩手日報 7月27日)


「シルバー先生の“こころ”と“いのち”に関する啓発事業」
公開講座(岩手医大神経精神科学講座主催)が初めて開かれた。
退職教諭や民生児童委員ら88人が参加し、
自死遺児支援や中学生を対象とした自殺予防に理解を深めた。

同事業検討委員で特定非営利活動法人(NPO法人)自殺対策支援
センターライフリンクの藤原匡宣さん(25)は、
「遺児を対象とした取り組み」と題して講演。

中学生の時に、母親を自殺で亡くした経験から、
「自死遺族は特別視されることも、励まされることも望んでいない。
ただ、残念な気持ちに寄り添ってほしい。
共感するための一言目は、『そうなんだね』。
それから『うん、うん』とうなずいて話を聞いてもらうだけでいい」。

同講座の智田文徳医師は、本県の自殺の実態と精神疾患について講演。
日本の自殺者が交通事故死亡者数の5倍以上の約3万3000人、
本県の自殺率が高いことを示した。

「精神科に来る子どもは増えており、大人が考えている以上に
子どもにとって自殺は近い。10年、20年先、苦しくなった時に
思い出してもらえる授業をし、少しでも自殺率を下げられれば」。

同講座の川村祥代臨床心理士は、2月に行ったモデル授業を紹介し
「みなさんの力、経験を生かして『シルバー先生』になってほしい」。

今後は、シルバー先生として活動したい人を対象に養成講座を開催。
希望する市内の中学校を調査し、豊かな人生経験を持つシルバー先生と
岩手医大の専門家が授業を行う予定。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080727_10

公共交通利用促進へ「実験」 盛岡と滝沢

(岩手日報 7月28日)

県は、公共交通機関の利用促進に向けた社会実験を始める。
2年計画で、盛岡市の青山、渋民地区、滝沢村の住民を対象に、
「モビリティ・マネジメント(MM)」と呼ばれる施策を導入。

アンケートを複数回実施するなどして、
マイカーから公共交通機関への転換を目指す。
バスカードで、IGR青山―盛岡駅間を乗車できる実験も行う。
29日に事業主体となる地域協議会を立ち上げる。

MMは11月から、盛岡市の青山、渋民地区でそれぞれ
500―1000世帯を対象に行う。
滝沢村では、2009年度にIGR巣子駅周辺の住民を対象に行う。

▽アンケートで、公共交通の利用実態や移動手段を調査
▽経済、環境、健康面から公共交通と車を比較した資料を配布、
公共交通の利点をPR―などの活動を実施。

一定期間を置いて、再びアンケートを行い、
▽移動手段が変わったかを調査
▽一連の取り組みを通して「賢い車の使い方」を考えてもらう、
といった手順で意識改革を促す。

調査結果は公表し、県の施策に反映させるほか、
効果があれば他市町村にも取り組みを広げたい考え。

MMに詳しい東京工業大の藤井聡教授(交通計画)は、
「MMは全国120カ所で行われ、地方都市でも効果を上げている。
平均で1、2割の人が車の利用を減らしており、
岩手の公共交通を再生させる可能性は十分にある」。

バスカードの共通利用実験は、10~12月まで盛岡、青山両駅に
バスカードの読み取り機を設置し、IGRを利用。
アンケートで需要を調べ、双方の連携方法を探る。

2つの取り組みは、環境省の「低炭素地域づくり面的対策推進事業」を活用。
本年度は、本県を含め全国25自治体が採択。
事業費は2年間で2500万円を見込む。

事業主体として立ち上げる「盛岡地域地球温暖化対策地域協議会」は
県、IGR、バス事業者、商業団体で構成。
今後、具体的な取り組みを協議する。

◆モビリティ・マネジメントとは

利用者に対し、公共交通の利用が環境、安全、健康などに良い影響を
もたらすことや、公共交通の便利な利用方法などを効果的に
情報提供することで、マイカーから公共交通の利用へ
自発的な転換を促すコミュニケーション施策の総称。
過度に自動車に依存するライフスタイルの見直しを目指す。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080728_12

理科再興(15)科学実験 文系学生も

(読売 7月26日)

科学に対する視野を、文系の大学生に広げる取り組みが続く。

赤、黄、紫、黒。
色とりどりの液体が入った容器が並んだ。
東北大学が開講する「文科系のための自然科学総合実験」の授業。
対象は、文、教育、経済、法学部の1年生。

液体の正体は、学生が持ってきたトマトジュース、ショウガ、ナス、しょうゆ。
学生たちは、食品などに含まれる色素を表面に塗布することで、
より多くの電気を発生させる色素増感型太陽電池を作り、
どの材料が一番多くの電力を生み出せるかを調べる。
賞品も用意され、学生たちもおのずと力が入る。

大学も、新たに器材を購入するなど、講義全体で約5000万円を
投じる力の入れよう。
太陽電池だけでなく、地球温暖化や胚性幹細胞(ES細胞)など
現代的テーマが並び、理系教員19人が
「とことん、文系学生の視点で練り上げた」と自負。

エネルギーがテーマの今回は、資源の少ない日本が、
世界有数の太陽電池生産・利用国であることを紹介。
DNA鑑定の回は、「コメの産地偽装は可能か」、
受精の瞬間を顕微鏡で観察する回では、
「体外受精や遺伝子治療はどこまで許されるか」と問いかけ。

「毎回、社会問題について考えさせられる。
生命の誕生は、法律とも関係が深く、貴重な経験になった」と
法学部の葛西彩子さん(19)。
須藤彰三教授(53)は、「現代社会の基盤である科学的手法を知り、
それぞれの専攻で役立ててほしい」。

今年度の受講者は50人。
設備や費用の面から、受講は文系学生の1割に当たる80人が限界。

慶応大学日吉キャンパスでは、1949年の新制大学移行以来、
文系学生に実験講義をしている。
受講者は、現在約3000人。
文、商、経済、法の4学部の1年生の7割に当たり、他大学をはるかにしのぐ。
物理、化学、生物のどれかを選び、講義と交互に隔週で実験に挑む。
毎日、どこかで実験が行われており、指導する教員らスタッフは
総勢160人と、大学挙げての取り組み。

試験管の中をガラス棒でかき混ぜた文学部の女性は、
「実験は高1以来」と緊張した様子。
手つきはぎこちなかったが、サケの卵細胞のDNAがガラス棒に絡みつくと
「きれい」と目を輝かせた。
法学部の男性は、電卓を片手に実験データとにらめっこ。
指導を受けながら、なんとか公式通りの計算結果を導き出し、
思わずガッツポーズを決めた。

費用と手間をかけた実験講義には、
「専門教科を教えることに力をいれるべきだ」という声もあるが、
講義を統括する表實教授(64)は、
「学生に伝えたいのは、科学的な視野や思考方法だ」と反論。
「実験を通して科学を知ることが、文系学生の財産になる」。
両大学の思いは同じだ。

◆広がる文系学生向け実験講義

慶応大が2006年、全国の4年制大学729校を対象に行った
調査では、94.2%が、文系学生が履修できる自然科学系講義を開設。
うち「実験講義がある」は25.2%(国立28校、公立7校、私立39校)。
調査後にも茨城、東北、山梨大などが実験を含む講義を文系向けに開講。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080726-OYT8T00227.htm