2010年2月6日土曜日

和文化を知る(6)華道・茶道通し国際理解

(読売 1月27日)

国際化という文脈の中で、伝統文化を学ぶ。

1分間の沈黙の後、華道の授業が始まった。
講師の説明を聞きながら、生徒たちが、慣れた手つきで
マツやセンリョウを順番に生けていく。
東京都中野区の女子校、東京文化中学・高校。

全授業で行われている1分間の沈黙は、
初代校長の新渡戸稲造(1862~1933年)が、
国際連盟の事務次長時代、様々な宗教の国が参加する
国際会議の際に行い、会議効率を高めたことに由来。
同校では、こうした精神のもと、日本の伝統文化体験と
異文化体験を両輪にした、国際理解教育を実践。

きっかけは、「これからは国際化の時代」として、
1978年に始めた希望者対象の海外語学研修旅行。
新渡戸が校長在職中に病死したカナダで、
夏休み中の3週間を過ごし、ホームステイなどを体験。
そのお礼のパーティーで、生徒たちが茶道や書道を
披露したところ、ホストファミリーがとても喜んでくれた。
以来、国際交流には日本の伝統文化が不可欠だとして、
教育に取り入れている。

華道は中2で、茶道は中1で、いずれも週1回、
総合学習の時間を利用して教えている。
中学の音楽で三味線を学習し、中高で、江戸時代から伝わる
思いやりのある所作、「江戸しぐさ」を学ぶ時間も。

2003年度からは、カナダを訪ねる中3の修学旅行を実施。
生徒たちは、書道やよさこいソーランなどを披露。
国内大学の外国人留学生を招いて話を聞く会なども。
「日本との文化の違いが分かるから、外国の人と話すのは楽しい。
来年の修学旅行も楽しみ」と、中2の生徒たち。

「違いを認め合う心」を、新渡戸は大事にした。
その精神は、14歳の少女たちにも確かに受け継がれている。

京都市左京区のノートルダム学院小学校では、
2001年度から、全校生徒が茶道を通じて、礼法を学ぶ。
カトリックの同校とは意外な取り合わせだが、
「茶道のおもてなしの心や感謝の心は、キリスト教の精神に通じる。
日本文化を知ることは、日本人として国際社会で
生きていく上でも大事」と行田隆一教頭(55)。

礼法の授業は、6、12、2月に設けた年3回の「礼法週間」、
総合学習の時間を利用し、クラスごとに行う。
畳敷きの礼法教室で、茶道の作法に加え、
畳の歩き方や正座の仕方を身につける。
茶道をたしなむ教員も加わり、担任をサポート。
1年生には、約160人の児童が一斉に茶をたて、
家族をもてなす「大茶会」もある。

昨年12月の茶会では、サツマイモを使ったお菓子を
前日に児童が作り、お茶とともに出した。
同校の華道クラブの児童が花を生けて、会場に色を添えた。
宗教を超えて、和の心が広がる。

◆国際理解教育

国際平和の実現のために、国連教育・科学・文化機関
(ユネスコ)が提唱。1953年発足の「ユネスコ協同学校計画」
(現ユネスコ・スクール)に文部省(当時)が参加、
日本でも次第に広まりだした。
2006年改正の教育基本法は、「伝統と文化の尊重」とともに、
「他国の尊重」、「国際社会への寄与」を教育目標のひとつに。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100127-OYT8T00277.htm

デル氏に薦めるユニクロ社長の1冊

(日経 2010-01-21)

パソコン大手、米デルが経営不振から抜け出せない。
2009年8~10月期決算は、純利益が1年前から半減。
調査会社ガートナーによると、09年10~12月期の
世界パソコン販売台数の伸び率は、
前年同期比5.7%と上位5社で最低。

米ヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ、シェア2位の座を
台湾のエイサー(宏碁)に奪われて以降、
失速に歯止めがかからない。
マイケル・デル最高経営責任者(CEO)の苦悩は深い。

そんな悩めるカリスマ創業者に薦めたい本。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、
09年に出版した『成功は一日で捨て去れ』。
勝ち組ユニクロの経営の極意がまとめてあり、
ビジネス書のベストセラー。

デルとユニクロ。2社には共通点が多い。
テキサス大の学生だったデル氏が、1000ドルの資金で
デルコンピュータ(現デル)を設立したのは1984年。

この年、柳井氏は
「ユニーク・クロージング・ウエアハウス(ユニクロ)」1号店を
広島市にオープン、父親が創業した洋服販売会社
(現ファーストリテイリング)の社長に。

世間の注目を集めるきっかけが、「安さ」だったのも同じ。
デルは90年代初め、パソコンの価格破壊メーカーとして台頭。
日本でも、10万円を切る製品を売り出して有名に。
01年、世界シェア首位に躍り出た。

ユニクロは98年、1着1900円のフリースが爆発的にヒットし、
全国区企業の仲間入りを果たす。

デル氏、柳井氏ともに、経営トップの座からいったん退いたが、
経営の変調を受け、復帰した経歴もダブる。

2010年。両社の経営は、見事に明暗が分かれている。
デルとは対照的に、ユニクロは今月8日、
10年8月期の業績予想を上方修正。
売上高、営業利益とも、前年同期より2割増えると発表。
国内外で、新商品の売れ行きが好調に推移。

勝因は何か?
柳井氏の著書からヒントを探せば、「従来の衣料品小売業界で
一般的であった委託販売方式を取らず、自社で商品企画開発、
製造、販売を一気通貫で行っていること」に行き着く。

ユニクロは、SPA(製造小売業)という業態。
柳井氏は、「顧客ニーズを本当につかんで、自分自身で企画し、
商品開発を行い、タイムリーなマーケティングとともに、
お客様に商品の良さを伝えて、自分自身の手で売っていく」と
自社のビジネスモデルを解説。

顧客にぴたりと寄り添うことで、売れる商品を繰り返し生む。
デル氏がこうしたくだりを読めば、「全くその通り」と
ひざを打つことだろう。

デル躍進の原動力も、顧客密着型のビジネスモデル。
電話やネットで、顧客から好みのパソコンの注文を受け、
自ら組み立てたうえで直接、顧客に届ける。
パソコン、アパレルという分野の違いはあるが、
両社の経営の基本思想は極めて似通っている。

なぜ、デルだけが置いてきぼりを食らったのか?
突き詰めれば、顧客密着モデルの形骸化が原因。

09年、米ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ司法長官は、
半導体最大手、米インテルが世界で約8割のシェアを握る
MPU(超小型演算処理装置)の販売で、
独禁法に違反する行為をしたと同社を裁判所に訴えた。

多額のリベートを与える見返りに、ライバルである
AMD製のMPUを買い控えるよう、パソコンメーカーに圧力。
電力消費が少ないAMD製品は評価され、パソコンへの普及が
進んだが、最後まで動きが鈍かったのがデル。

デルは、唯一のMPU調達先であるインテルとの安定した
取引関係にこだわり続け、AMD搭載パソコンの投入が遅れ、
商機も逃した。

長官がインテルの不正の「証拠」として示した資料には、
05年、デル氏がインテルのポール・オッテリーニCEOに
送ったとされる電子メールが含まれている。
「(AMD搭載パソコンがないために)性能競争で負けている」。

顧客ニーズより、取引先を優先する経営の行き詰まり。
デル氏本人がいらだつほど、デルモデルは機能不全に。
企業へのデスクトップパソコン販売に依存し、
市場拡大をけん引する個人向けノートパソコン事業で
つまずいたのも痛かった。

「顧客が、効率重視の犠牲になった」とデル幹部。
顧客の生の声を聞く絶好のチャンスであるカスタマーサポートの
電話応対は、できるだけ短い時間で切り上げるのが良しとされた。

顧客を驚かせ、その目を自社に向けさせるための技術開発も、
デルは手薄かもしれない。
直近の四半期決算でみると、売上高に占める
研究開発費の比率は1.2%。
パソコンで競合するHP(2.3%)、米アップル(3.6%)と
比較しても低い。

デルにとって、最大の商品である「ウィンテルパソコン」は、
研究開発費がともに売上高の15%に達する米マイクロソフト、
インテルによって定期的に技術革新がなされてきた。
デル自身は、多額の研究開発費を投じなくても、
顧客に「この商品は最先端」とアピールできた。

IT業界の主戦場が、パソコンからスマートフォン(高機能携帯電話)や
ネットに移ると、ウィンテルの技術力も一時期ほどの輝きは失った。
デルの武器だったはずの「安さ」も、低価格ノートである
ネットブックの普及とともに、際だった特徴とはいえない。

ユニクロはどうか?
「世界一の技術力をもつ東レさんなどと組んで、技術力を活かしつつ、
着心地のよさ、風合い、適度なファッション性を入れ込んで、
高機能で高品質、手ごろな価格のカジュアルウェアを作り続けていく」

柳井氏は、安さだけでは顧客をつなぎ留められないと先を読み、
商品開発に力点を置いてきた。
タンクトップやキャミソールに、ブラジャーのカップをつけた
「ブラトップ」や、発熱保温肌着の「ヒートテック」。

ここ数年のヒット商品は、地道な商品改良のたまもの。
「アパレルはローテク」のイメージを覆し、情報収集も兼ねた
R&Dセンターを東京やニューヨークなどに持つ。

デルもじっとしてはいない。
09年秋、39億ドルを投じて情報処理サービス会社の
ペロー・システムズを買収すると発表。
米AT&Tと組み、米国でスマートフォン事業に参入すると表明。

いずれもライバルの後追いの印象が強く、新鮮味はない。
個人客を取り込もうと直販専門の看板を降ろし、
家電量販店などでのパソコン販売に力を注ぐが、
顧客との接点が一段と減るリスクも否めない。

1990年代末、デル氏が書いた『デルの革命』は、
急成長企業の秘密を探ろうという多くのビジネスマンに読まれた。
現時点で、デル復活の具体的な道筋は見えにくいが、
仮に実現すれば、その物語は経営立て直しの格好の教科書に。
ベストセラーになるのは確実だが、果たしてそういう日が訪れるか。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt100120.html

2010年2月5日金曜日

スポーツ21世紀:新しい波/333 ゴルフ世界戦略/4止

(毎日 1月30日)

年の瀬も押し迫った昨年12月。
東京駅近くのホテルに高校、大学生の男女トップゴルファーが集結。
日本ゴルフ協会(JGA)が、毎年暮れに開く日本代表チーム慰労会。
いつもの光景と違ったのは、ゴルフ関連4団体の会長が
初めて顔をそろえた点。

安西孝之JGA会長、日本プロゴルフ協会の松井功会長、
小泉直・日本ゴルフツアー機構会長、
樋口久子・日本女子プロゴルフ協会会長の4人は、
慰労会の前に会談。

主要テーマの一つが、「ジュニア育成」。
富田浩安JGAジュニア育成委員長は、
「2016年に五輪という目標ができた。
これからは、各団体で情報やノウハウを共有して取り組もう、という話」

五輪競技復帰をきっかけに、日本ゴルフ界がプロ、アマの
垣根を越えて、初めて統一的方針を示した意義深い日。

石川遼、宮里藍らの登場で、
JGA登録のジュニア会員(6~18歳)は急増。
小学生の08年の登録者数(5342人)は、10年前の約6倍。
ジュニア育成には、多くの課題が横たわる。

有望選手の発掘。
地方のジュニア大会などを視察員が見て、
「第2の遼クン」を探すにも限界がある。
「原石」を探すには、既に発掘・指導システムを持つ
プロ側と情報交換が欠かせない。

強化面でも、指導員として各地のティーチングプロを
ネットワーク化したり、練習場所としてゴルフ場を
開放してもらうことも必要。

親の経費負担について、JGAが「強化選手」に認定することで
軽減を図る方法を模索。

JGAが、日本代表チームに専門トレーナーをつけたのは07年。
シドニー、アテネ五輪でシンクロナイズドスイミング日本代表
チームのトレーナーを務め、片山晋呉の指導でも知られる
白木仁・筑波大教授がその任に当たる。

白木教授は、「ゴルフのジュニア育成システムで、
日本は世界より20年遅れている。
基礎体力をつけることから始めなければならない」と指摘。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

聖なるガンジス川で「水がめ祭」、環境汚染の懸念拡大 インド

(CNN 1月13日)

インド北部ウッタルプラデシュ州北部ハリドワールを流れる
ガンジス川で14日から、ヒンドゥー教の水がめ祭
「クンブ・メーラー」が始まる。
数百万人の巡礼客が訪れて水を浴び、体を清める祭り、
ガンジス川の汚染が懸念。

クンブ・メーラーを前に州政府は、祭の注意事項を伝える
一面広告を掲載。
水質汚染の原因となる洗剤や石けんを使わないよう通告。
分解されずにゴミとなるポリエチレンやプラスティック製品を
流さないよう警告。

環境保護団体など、汚染の拡大を懸念。
インドの中央公害管理委員会によれば、ガンジス川の有機物濃度や
細菌汚染は深刻な状態。

ガンジス川は、聖なる大河として、インドの人々の生活や人生に
大きくかかわっている。
沐浴する人が集まるだけではなく、
生活用水として使われ、遺灰も流される。

水質汚染問題は、かなり以前から問題化。
インド政府は、1985年から水質浄化にむけ対策を実施。
現在ではインドの20州で、支流なども含めて38の河川で
浄化計画が進んでおり、2020年までには
水質汚染問題を解決する。

現実的問題解決にはほど遠く、環境保護団体などは
計画は失敗していると指摘。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN201001130022.html

和文化を知る(5)職人の技 学ぶ意欲刺激

(読売 1月26日)

専門のコースを設け、和文化を広く教える学校がある。

広々とした実習室。
作業台には、江戸後期から続くガラス工芸品、
「江戸切り子」専用の研磨機が据えられている。
男女9人の生徒が作業台に向かい、高速で回転する研磨機に
直径約16cmの平皿をあて、模様を彫っていく。

東京都立大江戸高校は、2004年、不登校の経験者や
他校の中退者など受け入れる都のチャレンジスクールとして、
江東区に開校。
午前、午後、夜間の3部がある定時制で、
下町文化が残る地域の特色を生かそうと、当初から
江戸の文化を中心に学ぶ「伝統・文化」のコースを設けている。

前・後期制をとっており、江戸切り子は、
選択科目「伝統工芸実践」の後期授業で学ぶ。
前期は、べっ甲細工を体験。
選択科目は、木彫や押し絵羽子板などの「伝統工芸入門」、
和太鼓などの「邦楽」、「陶芸」、「茶道・華道」など、
各科目とも2コマ連続で実践的な授業をしている。

伝統工芸関連の授業では、学校の委託を受けた
プロの職人が講師を務める。

江東区の無形文化財に指定される小林淑郎さん(59)は、
同校で江戸切り子を教えて4年目。
授業には手応えを感じている。
「作業を始めると、子どもたちは1時間以上でも無心で続ける。
素直で、教えがいがある」

伝統工芸を目当てに、入学する生徒も。
テレビの特集を見て、職人の姿や作品の美しさにひかれたという
3年生の女子(18)は、「本物の職人さんに教わるなんて、
普通は経験できない。この学校に来て、得した気分」

東京都教育委員会は、「国際社会で生きる上で、
日本の伝統と文化を理解することは大切」、
05年、アニメなど現代文化を含めた
「日本の伝統・文化理解教育」の普及を推進。
独自教科として開設する学校に対し、講師への謝礼を支援、
年間のカリキュラムや教材集などを作成し、導入の便宜を図っている。

今年度、高校や特別支援学校など都立46校が、
「伝統・文化」を開設。
将棋や紙すき、日本舞踊、津軽三味線など、様々な実践。
定時制課程での開設は、大江戸高校も含めて10校に上る。

同校の岡昇校長(57)によれば、伝統・文化の授業には、
生徒の好奇心や挑戦意欲を刺激する効果がある。

「生活との関連性を説明しているので、
小中で学びに興味を持てなかった子も、関心を持ちやすい。
伝統工芸の授業では、ものをつくることで達成感が味わえ、
前向きな気持ちがわいてくる」

伝統工芸を体験し、将来の目標を定める生徒も。
江戸切り子を受講する、3年の男子(17)は、
「手元に作品が残るので、うれしい。
将来は、ぜひとも工芸の道に進みたい」
伝統・文化が行く道を照らし、生徒たちは前へ進む。

◆チャレンジスクール

不登校や中退経験のある生徒を積極的に受け入れ、
社会に出る挑戦を後押しするため、東京都が設置した
3部制(定時制)の単位制高校。
幅広い科目選択が可能な総合学科で、入試に学力試験はなく、
作文や面接で合否を決める。
2000年、第1号が誕生。現在は5校ある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100126-OYT8T00219.htm

シナリオ不在で安値続く軽油価格

(日経 2010-01-27)

トラック用燃料などに使う、軽油の相場が上向かない。
景気低迷で物流量が落ち込み、需要が振るわないため。
消費者や企業にとって、物流コストの引き下げ効果が
期待できるが、軽油を供給する側の元売り各社は、
原油精製にかかるコストを回収できない状況。

このまま、アジア市場の暖房需要が期待できる
寒波のピークを超せば、ガソリン、灯油に比べた
軽油の独歩安が定着する公算が徐々に強まっている。

「軽油需要が上向くイメージが浮かばない」——。
都内のある燃料商社の幹部は、半ばあきらめ顔。
2009年11月の軽油の国内販売量は、約271万kL。
前年同月を3.3%下回った。

軽油はこの1年間、ガソリンや灯油と違って
特需に沸くことがなかった。
ガソリンの場合、09年3月下旬から始まった「1000円高速」が
需要を下支えした。
同年9月、秋の大型連休「シルバーウイーク」が重なり、
この時期に販売量を伸ばした給油所も多かった。
灯油は、09年12月中旬から予想外の寒波に襲われ、
販売量が全国的に増加。
需給は一気に引き締まった。

軽油の需要を左右するのは、国内の景気動向。
この1年間、物流量の増加に結びつくほど景気は回復せず、
軽油の内需は低空飛行。

リーマン・ショック後、08~09年の13カ月間で、
軽油の国内需要が前年同月を上回ったのは、わずかに3回。
販売の現場では、「ずっと前年同月を
下回り続けているような感覚」(燃料商社)。

新日本石油など元売り各社は、減産強化による需給の適正化に
懸命だが、「需要の落ち込みが減産分を上回っている」(商社)。
需給を敏感に反映するスポット(業者間転売)市場では、
軽油の上値が重い。

足元では、灯油を1L当たり2~3円程度下回る50円前後で取引。
原油精製コストが回収できない低水準だが、
「製油所の稼働維持のため、これ以上の減産は難しい」(燃料商社)。

打てる手が限られるなか、国内相場が上向くという
シナリオとして、元売りが期待するのが、アジアの石油取引の
中心地であるシンガポール。

軽油は、国内外の市場の価格の連動性が高いだけに、
シンガポールの相場が上昇すれば、元売りの輸出採算が改善し、
輸出が国内の需給調整弁の役割を果たすとの構図を描く。

頼みのシンガポールも、各国の輸出拡大で軽油在庫が
すでに過去最高水準に積み上がり、その解消が遅れている。
東アジアの寒波で、軽油需要が増えるとの観測もあったが、
世界的な景気の減速のマイナスの影響が上回ったもよう。

低迷する軽油相場の先行きは、依然として視界不良。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/shikyou/shi100126.html

2010年2月4日木曜日

和文化を知る(4)相撲・武道で礼節育む

(読売 1月23日)

相撲や剣道に全校で取り組み、慈しむ心と礼節を育む。

校庭の隅に設けられた土俵で、素足の小学1年生が
男女に分かれ、順番に相撲を取る。
「がんばれ、がんばれ」。
みんなが夢中で声援を送る。
東京都武蔵村山市の市立第十小学校は、
体育の授業の一環として、子どもたちに相撲を教えている。

相撲を導入したのは、2007年度から。
きっかけは、都の「伝統・文化理解教育」の推進モデル地域に、
学区が指定されたこと。
同小の学級担任として相撲を教えた経験がある
榊尚信校長(55)が、安全で礼儀を学べるスポーツとして、
相撲を授業研究のテーマに提案。

初年度は、大相撲見学などを実施。
2年目から、少年相撲道場の立川練成館などの協力のもと、
全学年の体育の授業に、年間3時間の相撲を取り入れた。

勝ってもガッツポーズはせず、負けて泣いても
相手への礼は忘れない。
勝敗に関係なく、「がんばった、がんばった」と言って肩をたたき、
健闘をたたえる――。
榊校長は、「今の子どもは、遊びの中で友だちの体に
触れることがない。相撲を通じて人の温かみや重みを体で感じ、
相手を慈しむ心が育っている

08年、土俵が完成。
昨年4月には、校内に相撲クラブが誕生。
「もっと強くなりたい」と、少年道場に通い出した児童も。
ゲーム世代をもひきつける力が、相撲にはあるようだ。

体育館を埋めた約800人の生徒が、
女子の居合道の演技を静かに見つめる。
男子の剣道の試合は、一転、声援合戦になった。
全学年で武道を必修とする神奈川県相模原市の県立橋本高校で、
昨年12月半ば、全生徒が参加して、
恒例の武道大会が3日間にわたり行われた。

男子の剣道は、1978年の開校当時から。
女子の居合道は、91年に文部省(当時)の武道指導推進校に
なったのを機に始めた。
「伝統文化や礼儀作法、節度ある態度、集中力など多くを学べる」
として、現在は週1回、体育で教えている。
生徒の本気度は高く、例年、100人以上が段・級を取得する。

武道大会も、良い刺激に。
開催前の3日間は、自主参加の朝げいこを実施。
今回は連日、約180人が参加。
「大会の日は、学校が一つになる。
その盛り上がりを見て、大会後に急に熱心になる1年生が多い」と、
八木興造校長(54)。

学校説明会で居合を見て感激し、入学してくる女子も。
保護者もまた、武道教育を承知の上で子どもを入れている。
大会の応援にかけつけたPTA役員の男性は、
「武道のおかげで、姿勢が良く礼儀正しい子が多い」

「髪を染めた生徒も、自分なりに礼を守って
武道の授業に取り組んでいる」と八木校長。
武道の心に触れ、規範意識が磨かれていく。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100123-OYT8T00266.htm

太陽電池シェア争い オムロンが鍵

(日経 2010-01-25)

家庭用の太陽光発電市場が熱い。
政府の手厚い補助策によって、国内需要が拡大し、
シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機の国内大手4社が
寡占してきた市場に、昭和シェル石油やホンダの子会社、
中国サンテックパワーなど海外勢が続々と参入、
シェアを食い合っている。

安値を武器に参入する海外勢の勢いはすさまじく、
2008年度の出荷実績ほぼゼロから、
09年度は上半期のシェアは12%に。
攻勢をかける海外勢が国内メーカーのシェアを奪い続けるか——。

群雄割拠の大競争を左右するカギを、
実は意外な企業が握っている。
基幹部品「パワコン」の輸入事業者への供給を、
一手に引き受けるオムロンだ。

オムロンはパワコンを増産するのか、しないのか、
するならいつか?
その決断が、競争環境を大きく変えることになる。

家庭に太陽光発電システムを導入すると、
屋根に乗せる太陽光発電パネルだけでなく、
屋内に弁当箱のような長方形の機器を設置。
この地味な機器が、「パワコン(パワーコンディショナー)

太陽光発電パネルが日光を浴びて作る電気は、
コンセントから流れる電気と性質が異なり、そのままでは使えない。
パワコンは、電気の性質を変更し、家庭で使える電気にして供給。
安全性の維持など、様々な役割を果たし、
太陽光発電システムに欠かすことのできない部材。

パワコンに求められる品質は、各国によって異なる。
国内で使われるパワコンの品質は、
電気安全環境研究所(JET)が厳しく管理、JETの認証を
得ていることを示すラベルがはられていない製品は使えない。

日本の水準は非常に厳しく、検査項目は30にも及ぶ。
いくつかの海外メーカーが「受験」に臨んだが、
JET認証の壁に阻まれ、国内販売できなかったケースも。
技術が世界標準化した太陽光発電パネルは、
多くの海外製品が国内市場に流入、
海外パワコンの国内販売への壁は高い。

割安な海外製太陽光発電パネルを輸入しても、
パワコンがなければ商品にはならない。
輸入事業者は、国内パワコンメーカーに供給を依頼、
その選択肢は限られている。

国内のパワコンメーカー4社のうち、シャープ、三洋電機、
三菱電機は自らパネルも製造し、国内販売。
各社とも国内販売を伸ばし、パワコンを他社に供給する余裕は乏しい。
余裕があったとしても、ライバルとなるニューカマーに
わざわざ塩を送るような選択はしない。

自らパネルを製造・販売していない唯一の
パワコン大手メーカーであるオムロンに注文が集中。
オムロンは、京セラ向けのパワコンを中心に生産、
輸入パネル向けにも積極的にパワコンを供給。

熊本県内の子会社の工場では、昨夏までにほかの製品と
共用だった生産ラインを専用にし、生産人員も2割増強。
昨夏、今年度の出荷量見込みは前年度比倍増の10万台。
「この好調さは3年くらい続くのでは」というほど、
生産増強をしたばかりなのに、さらに新しいラインの設置を
視野に入れていた。

昨年11月、家庭向け太陽光発電の補助が拡大された前後、
多くの事業者が輸入太陽光発電の販売を始めた。
多くの事業者が一気に参入、オムロン製パワコンは
急速に不足し始めた。

「オムロンからのパワコン供給数が制限され、
思ったように販売数量を増やせない」、
「大切な立ち上げ時期、パワコンの供給が間に合わないのは痛い、
春先に増産するとのうわさに期待するしかない」
商機ととらえ、こぞって参入した輸入事業者は、
ボトルネックとなったパワコンの調達に四苦八苦。

供給先の声に応え、オムロンはいつ増産に踏み切るのか——。
割安な輸入太陽光発電パネルが、オムロン製パワコンの
潤沢な供給を受けて市場を席巻すれば、
国内勢は大幅にシェアを食われかねない。
市場の構造が大きく変容する可能性があるだけに、
オムロンのパワコン増産とそのタイミングに、高い関心。

輸入事業者は、オムロン頼みのビジネスではあまりにも不安定。
別の道を探り始める動きも始まっている。
シャープから受託してパワコンを生産している田淵電子工業
現在、月5000台程度をシャープ向けに製造、
最近、「パワコンを分けてくれないか、との連絡が多い」。
生産人員を増やし、ラインの稼働時間を延長すれば増産は可能、
「(シャープ以外の)他社向けにパワコンを供給することもあるかも」

海外からの輸入を目指す動きもある。
1月6日、JETのパワコン認証を韓国LS産電が取得。
海外製パワコンが認証を得たのは、2社目。
LS産電が作る太陽光発電パネルを販売するサニックスは、
1月中にオムロン製パワコンをLS産電製パワコンに切り替え、
サニックスブランドを付けて販売。

多くの海外製品を跳ね返してきたJETの壁だが、
「LS産電は、かなり研究を重ねた跡がうかがえ、
質の高い製品にしてきた」(JET幹部)。
試験期間わずか2カ月のスピード合格。
海外製パワコンは、もう1社が試験中。
別の2社の製品の試験も始まる直前のほか、
2~3社が認証取得を目指して動いている。
長期的には、海外製パワコンも確実に国内市場に広がりそう。

成長市場と期待される太陽光発電市場。
日を浴びて目に付く発電パネルの商品性だけでなく、
日陰に置かれるパワコンの調達力が、
シェア拡大のポイントになりつつある。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan100122.html

地サプリ 青森で元気に 県産の恵み、ふんだんに 産学官と農商工、連携

(2010年1月29日 毎日新聞社)

青森の海や山、畑の恵みを使って昨年7月、販売を開始した
健康食品のサプリメント「地サプリ」が注目。

産学官と農商工を連携した「あおもり『地サプリ』プロジェクト」
(事務局・21あおもり産業総合支援センター)によるもので、
キャッチフレーズは「青森で元気になる。青森が元気にする」。

支援センターは、「地域産業が元気になり、
食べる人も健康になってくれれば」と期待。

健康志向が高まる中、気軽に栄養価の高いものを取れると
人気のサプリメント。
「あおもり『地サプリ』」は、県産素材を前面に打ち出した
健康食品で、海、山、畑の素材を使っている。
「青森の目利きが選んだ」というコンセプトで、
生産者の顔が見えるよう工夫。

「サメ軟骨」は、サメ加工を一筋とする青森市の水産加工業
「田向商店」が、近海で取れたサメを使って製造。
コンドロイチンやコラーゲンが含まれている。
ガマズミの生産が盛んな三戸町の醸造業「小野寺醸造元」は、
ポリフェノールや食物繊維がたっぷりの「ガマズミの実」を製造。
「琥珀にんにく」は、田子町のニンニク加工業
「田子かわむらアグリサービス」が低温で熟成させる製法で製造。
いずれも、県産業技術センターや県立保健大が研究開発を支援。

プロジェクトは、企業や大学などの技術と豊かな地域資源を
活用して、医療・健康福祉分野での新産業づくりを目指す、
県の「あおもりウェルネスランド構想」の一環。

支援センターがプロジェクトのマネジャーとなり、
事業化に苦戦する中小企業の販売戦略を打ち立てた。
地域発の商品は、一過性で行き詰まることが多いため、
販売は販路拡大やリピーター獲得を得意とする
弘前市のインターネット販売事業者「かめあし」
(電話0172・31・3190)が担う。

商品のコンセプトなども顧客に伝えるため、
県内のデザイナーが統一のデザインを考えた。
PR効果を高め、コスト削減にもつながっている。
支援センターの中館洋一主査は、
「素材の広がりに期待できる。ビジネスモデルとして
他地域の参考にもなる」

地サプリは、いずれも50粒(10日分)1260円、
150粒(1カ月分)3150円で、インターネットのほか、
県物産協会アンテナショップや一部のスーパーなどで買える。
支援センター(電話017・777・4066)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/29/115211/

フレンチ・パラドックスのメカニズムを解明

(2010年1月28日 読売新聞)

フランス国立保健医学研究所の研究者グループが、
フレンチ・パラドックスのメカニズムを解明。

フレンチ・パラドックスとは、赤ワインをよく飲むフランス人は、
脂肪摂取量が多いにもかかわらず、
動脈硬化などの心臓疾患が少ないこと。

フランス食品振興会によると、赤ワインに含まれるポリフェノールが、
動脈壁の細胞に一酸化窒素を作り出し、
血管を拡張させる効果がある。

研究者グループは、ポリフェノールが動脈を拡大させるには、
エストロゲン受容体が必要であることを証明。
ポリフェノールの分子が、結合している
エストロゲン受容体アルファを通している。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/29/115245/

2010年2月3日水曜日

廃瓦 砕いて緑化土壌に

(読売 1月25日)

家屋の解体時や屋根のふき替えなどの際に出る廃瓦
粘土を窯で焼いたものが主流だが、これが植物の生育を促す
土壌に活用できることが最近わかってきた。

京都市伏見区の瓦リサイクル会社「國陽」。
敷地内に積み上げられた廃瓦がショベルカーですくい上げられ、
次々に破砕機で砕かれる。
砕いてはふるう工程を繰り返すと、廃瓦は0・5~5mmの粒状に。
「植物と相性がいい、と気付いたのは偶然だったんです」と
社長の新井貴史さん(58)。

産業廃棄物処理業を営んでいた2004年、
次々と持ち込まれる廃瓦を見て、再利用を考えた。
「千年たっても風化しない瓦を、埋め立てに使うだけではもったいない。
再利用すれば、産廃を減らすことにもなる」

砕いて土に変える実験を重ねていた05年、
その土を置いていた一角に生えた雑草を何気なく引き抜くと、
根が30cmにも伸びていた。

これはと思い、京都大工学部の米田稔教授(都市環境工学)
分析を依頼して確証を得た。
「瓦そのものに、ミクロン単位のすき間が多く、
砕いてできた粒子の間にも、ミリ単位のすき間ができる。
この二重のすき間が、水や養分を適度に保ち、
踏んでも固まらない性質を生む」と米田教授。

緑化土壌として製品化し、昨年は約5000トンを生産。
公園や道路の植樹帯などに使われた。
今年は、約8000トンの生産を予定、一般小売りも力を入れる。

搬入先の一つに、京都府立植物園がある。
桜の名所で、ソメイヨシノや枝垂れ桜約200本があるが、
花見客に土を踏み固められて、樹勢が衰えていた。
廃瓦の土壌を導入した担当の小倉研二さん(48)は、
「土が沈まなくなった。
3~5年後に桜にも効果が出てくれれば」と期待。

國陽へは大阪、京都、滋賀の3府県から
廃瓦が持ち込まれる。
新井さんは、「風雪から寺院や家屋を守ってきた瓦で、
植物を元気にしたい」

◆瓦のリサイクル

廃瓦は、舗装材やコンクリート骨材にも再利用、
「詳しいデータはない」(業者)。
全国の瓦の65%を生産する愛知県では、
県陶器瓦工業組合が不良品を粉にして、瓦の原料粘土に混ぜ、
月6000トンを「再利用」、
「廃瓦までは手が回らず、今後の課題」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/saizensen/20100125-OYT8T00716.htm

和文化を知る(3)書道で養う静かな心

(読売 1月21日)

心の教育を目的に、新たな教科を設ける学校がある。

32人の小1の児童が、2列に並んで書道室へと向かう。
着席すると、日直の合図に合わせて、
「お願いしまーす」と元気な声が弾んだ。

国語の書写で毛筆を学ぶのは、学習指導要領では3年から。
静岡県伊東市の同市立南小学校では、2006年度から
「書道科」を設け、年間34~35時間、
1、2年生に書道を教えている。

同市が「書道教育特区」に認定され、
市の研究開発校になったのが始まり。
今年度から、教育課程特例校として続けている。

重きを置くのは、字の上達でなく、書道の作法を通じて、
伝統文化への関心や落ち着いて物事に取り組む姿勢、
思いやりの心を育むこと。

「基礎や書道に対する態度を正しく学ぶには、
専門家の力が不可欠」として、授業には毎回、市の委託を受けた
日本書道芸術専門学校の講師が加わる。
児童が書くことに専念できるよう、準備や後片づけも講師がする。

この日、挑戦したのは、漢数字の「八」。
「2画目が滝の流れに似ていると思う」、
「両方を見ると、人の首筋みたいです」

国語との関連性を意識し、漢字への関心が高まるよう、
筆を持つ前に、字のかたちから連想するものを児童に答えさせ、
その上で字の由来を説明。

腕全体を筆に見立てて、1画ずつ筆の運び方を練習。
書く直前、黙想して心を落ち着かせる。
つけ過ぎた墨は、すずりの縁で払うよう教えており、
墨で半紙をひどく汚す児童はいない。

書き上げるたび、隣の席の児童とお互いの書の良い点を
たたえ合うが、それ以外は私語を交わすことなく、最後まで集中。

「来校者から、『しっとりとして落ち着きがある』と評される。
他の授業でも、1年生の態度に問題はない」と道下幸夫校長(54)。

その教育効果を見て、市内の他の小学校や、同県長泉町、
裾野市などにも、低学年の書道教育は拡大。
課題は、講師任せにしないこと。
1時間ごとの狙いを明確にした学習計画を作り、
担任と講師が役割分担をして指導するよう努めている。

思いやりの心の育成や規範意識の確立を狙いに、
福岡県八女市は、教育課程特例校制度を利用し、
今年度から、「礼節・ことば科」を小中一貫教育校の
上陽北ぜい学園に設けた。
小学1、2年は年間20時間、3年以上は40時間をあてる。

あいさつと礼儀作法の「礼節」、敬語の使い方が中心の「ことば」、
「実技体験」の三つで構成。
実技は、地域で盛んな剣道と茶道を採用。
男女とも小学3、4年は茶道、5、6年は剣道を、
中学生は茶道と剣道の両方を学ぶ。

同校小学部の枦山俊朗校長(56)は、「男子も女子も、
実技を楽しみにしている。目上に対する言葉遣いが良くなった」
新教科が導いて、子どもたちは少し大人の顔になる。

◆小中一貫教育校

小中9年間を一体的にとらえ、連続性を持たせて行う教育のこと。
従来の6・3制を、4・3・2制に組み替えているところも。
正式な制度ではないが、教育課程特例校制度などを活用し、
公立校の一貫化を推進する自治体が増えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100121-OYT8T00289.htm

闘病する子どもを激励 東北楽天の山崎選手

(2010年1月29日 共同通信社)

東北楽天イーグルスの山崎武司選手が、
仙台医療センターの小児病棟を訪れ、
入院する子どもたちを激励した。

病気の子どもや家族を支援する仙台市のNPO法人
ワンダーポケットが企画。

山崎選手は、2008年にも仙台市の東北大学病院を訪問。
小児病棟の一室に集まった子どもに対し、
山崎選手は、「ご飯をいっぱい食べて、早く元気になって下さい」
病室を回って、サイン入りのボールを手渡していった。

ボールを受け取った宮城県利府町の青木駿くん(7)は、
「おうちに飾ります」と、うれしそうに元気な声で話した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/29/115208/

発達障害の子どもが増えたのは大人のせい?

(サイエンスポータル 2010年1月26日)

「京都からの提言 これからの社会のために-
子どもたちに伝えたいこと」というフォーラム。

「分数ができない大学生」(共著、1999年)で、
大学生の基礎学力低下にいち早く警鐘を鳴らした、
西村和雄・京都大学経済研究所長が中心。

西村教授が近年、大きな関心を持っているのが、
非行の低年齢化。
原因が、道徳心(モラル)の荒廃にあると考えた同教授は、
2008年、「子どものモラルに関する研究委員会」をつくり、
「子どものモラル育成を推進する4Mネットワーク」運動を始めた。

子どもたちが守るべきマナーとして掲げた4M(4つの指針)が、
「人に親切にしよう」、「うそをついてはいけない」、
「法律を守ろう」、「勉強をしよう」。

東京で開かれたフォーラムも、この指針を普及する活動の一つ。
大学教授が始めたユニークな運動にふさわしく、
フォーラムも京都大学卒新進落語家の落語あり、
運動のためにつくられた数々の歌の合唱ありと、型破り。

京都大学出身、現役の教授たちによるパネルディスカッションも、
「自主の東大に対し、自由の京大」(パネリストの1人、
鎌田浩毅・京都大学大学院人間・環境学研究科教授)。

西村教授たちが掲げる4つの指針に対し、
最初から「ご無理ごもっとも」などといった発言は、
なかなか出てこない。
教科書的でない発言も、ふんだんに飛び交う刺激的な内容。

パネルディスカッションで出た発言を一つだけ紹介。
今の子どもたちが置かれた状況の一端と、
この運動が生やさしいものではなさそう、ということだけは
伝わるかもしれない。

発言の主は、日本赤ちゃん学会理事長で
同志社大学赤ちゃん学研究センター教授の小西行郎氏。
発達障害の子どもが15%、ひどいところでは30%もいる異常さに、
まず疑問を呈し、こうしたあり得ないような数字が出てくるのも、
大人がそうしてしまっているからだと切り捨てた。

「子どもが発達障害と診断されると、先生が喜ぶ。
自分の教え方が悪いからではない、と考えてのこと。
母親までも、自分の育て方が悪いためではない、と喜ぶ」。

氏の発言を再現すると、おおよそそういうこと。
発言の真意は、「子どもが発達障害と診断されると、
ホッとする先生や母親が増えている。
自分の教え方が悪い、あるいは育て方が悪いせいではなかった、
という責任逃れの気持ち。
こういう大人たちのせいで、子どもたちもおかしくなっている」

そのように解釈したとしても、やはり不気味な指摘だ、
と感じる人は多いのではないだろうか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/1001/1001261.html

2010年2月2日火曜日

CO2排出量取引へ手続き 宮古・川井林業

(岩手日報 1月25日)

宮古市の製材・木材加工業川井林業(沢田令社長)は、
国のCO2国内排出量取引の試行制度「国内クレジット制度」
への参加手続きを進めている。

雫石町の同社雫石工場は、木材製品の乾燥にボイラーを使用。
燃料は、製造時に出る木質資源を利用する資源循環型の施設、
化石燃料のボイラーに比べ、CO2を年間約3千トン削減。
参加が認証されると、削減量は県内最大。

川井林業雫石工場は、2008年5月に稼働。
主に宮古市川井の第三セクター、ウッティかわいが生産する
集成材の基になる木の板(ラミナ)を製造。

工場新設時に導入したボイラーは、製造時に出る
木の皮(バーク)を燃料とし、主にラミナの乾燥に利用。

雫石工場では、月に1万~1万2千立方メートルの
スギやカラマツからラミナを製造、その5~8%に当たる
500~960立方メートルがバークとなる。

通常バークは、水分を多く含み、燃えにくいため廃棄されるが、
工場稼働時から資源循環型の工場にすることを目的に、
木質資源を燃料とする大型ボイラーを導入。

バークのほか、おがくずは小岩井農場をはじめ、
畜産農家などに販売、県内でも先進的な取り組みを実践。

川井林業は現在、年間約3千トンの削減量の買い手との
交渉を行っている。
交渉が成立すると、排出削減事業計画を策定し、
国内クレジット認証委員会に申請。

沢田社長(62)は、「本県は、資源の宝庫。
化石燃料から変更する企業が増え、国のCO2削減目標の
達成につながればと思う

クレジットの「相場」は、1トン当たり千円前後、
同社はCO2の排出権取引で得た金は、
植林や間伐など森林整備に還元する方針。

県林業振興課によると、計画が認証されると、
県内では最大の削減量で、全国的にも大きい量。
同課の木村経三林業担当課長は、
「川井林業には、県内企業の先導的な役割を担ってほしい」

国内クレジット制度とは 中小企業などが大企業から
資金や技術の提供を受けるなど、CO2排出削減に取り組み、
その削減量を売却できる制度。

大企業などが購入したCO2排出権は、
自社の削減量としてカウント。
08年4月以降に導入したボイラーや太陽光発電設備などが対象。
09年5月の申請分から購入した排出権は転売できる。
09年12月末現在、県内では5団体6件が
排出削減事業計画を申請。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100125_6

新しい波/332 ゴルフ世界戦略/3

(毎日 1月23日)

日本ツアー史上最年少賞金王をかけ、
石川遼と池田勇太が争っていた昨年11月。
世界のゴルフ界の目は、隣国の中国に注がれた。
世界選手権シリーズに格上げされたHSBC選手権が上海で、
国・地域別対抗戦ワールドカップが広東省・深センで開かれた。

HSBC選手権には石川、池田も出場。
世界ランキング1位のタイガー・ウッズ、
2位のフィル・ミケルソン(ともに米国)ら、
冠にふさわしい参加者が集まった。

関係者を驚かせたのは、米プロゴルフ協会の
ティム・フィンチェム・コミッショナーが姿を見せたこと。
狙いは、最終日の記者会見で明らかに。
「中国ゴルフ協会から将来、中国での米ツアー開催を打診された。
その可能性に向け、我々は十分に協議する用意がある」。
事実上、米ツアーの中国進出を示唆。

中国で、最初にゴルフコースができた84年以来、
コースは500余りに増えたが、競技人口は約30万人。
約2400コースを抱え、約1000万人がプレーする
日本とは格段の差がある。
ワールドカップの会場、深セン・ミッションヒルズGCでは、
既に18年までの開催が決定。
日本に先駆けて世界選手権開催を実現し、急速に追い上げる。

その後、日本に立ち寄ったフィンチェム氏は、
日本ゴルフツアー機構(JGTO)の小泉直会長と会食。
米ツアーを日本で開催する可能性も示唆するなど、
アジアでのさらなる市場拡大を模索。
既に中国、マレーシア、韓国に進出した欧州ツアーも、
日本の昨季最終戦「日本シリーズJT杯」に、
グループ・マーケティング部長のスコット・ケリー氏を派遣。
日本との連携を強めたい意向。

「リーマン・ショック」以降、米ツアーを支えた自動車、金融、
IT通信事業などの巨大スポンサーが相次いで撤退。
ツアー維持のため、米国がアジアを
新たなターゲットにとらえ始めた。
アジアで中心的役割を果たしてきた日本が、
(米側との連携の)旗振り役にならなければ」。
小泉会長は、現状をチャンスととらえる。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20100123ddm035050057000c.html

和文化を知る(2)礼儀作法 児童に根づく

(読売 1月20日)

礼儀作法を柱に、広く伝統文化を教えている。

22人の児童が、畳に正座する。
背筋は伸び、両手はひざに。
黙想し、呼吸を整え、心を落ち着かせる。
畳に手をついて、対戦相手に深々と頭を下げた後、
百人一首が始まった。

宮城県石巻市の市立石巻小学校が、
実践研究に取り組む伝統文化教育。
教員に交ざり、百人一首をテーマにした2年生の研究授業を見学。

子どもたちは、前回の授業で、上の句と下の句のつながりを
語呂合わせで覚える方法を学習。
各自、自分なりの覚え方を考えてきて、この日の対戦に臨んだ。
担任が上の句を読み上げただけで、
すかさず札に手を伸ばす児童も。

実践研究は、2005年度、国立教育政策研究所の
「伝統文化を尊重する教育」の研究校に指定されてスタート。
学校が特別に設けた時間で、各学年とも年間10時間の
「かしわタイム」を中心に行われている。
百人一首のほか、礼儀作法、伝承踊り、折り紙・風呂敷、
茶道など六つのテーマを設けている。

礼儀作法に関しては、日頃から繰り返し指導。
その成果は、随所に見て取れた。
研究授業でも、挙手する際は指先までぴんと伸ばし、
発言する時は、両足のかかとをつけて「気をつけ」の姿勢で話す。
休み時間に廊下に出た時も、すれ違う全員が、立ち止まって
両手をももにやり、こちらの目を見ながら、
「こんにちは」とお辞儀をしてくれた。

礼儀作法の指導では、研究開始初年度に作った
「石巻小礼儀作法指南書」と題した教員用マニュアルが、
大きな武器に。
もともと知識のある教員は皆無。
マナーのDVDや本などを参考にし、
研究担当の教員が協力して作った。

イラスト付きで、礼や呼吸法、ドアの開け閉めの作法などを記し、
相手への気遣いなど、それぞれの「型」に込められた
意味も説いてある。
指南書のおかげで、異動してきた教員もすぐに対応できる。

「騒ぐ児童はなく、スムーズに授業を進められるので、
勉強がはかどる」と福原俊幸校長(59)。

古典の暗唱や音楽の和太鼓、総合学習のわらじ作り、
クラブ活動の生け花、武道など、
広く伝統文化の要素を取り入れている。
給食の時間には、はしの持ち方なども指導。

給食の後、全校児童で一斉に掃除に取りかかった。
トイレやげた箱など、手分けしてどんどんきれいにしていく様子は、
見ていて小気味よい。
「昔から、掃除や後始末を大事にする学校だった」と、
同小の卒業生でもある福原校長は目を細める。

着任して7年になる女性教員は、
「以前からまじめな子の多い学校だったが、
伝統文化に取り組むようになり、態度はさらに良くなった。
登下校時の町の人へのあいさつも定着してきている」

伝統文化の力が、子どもたちをまっすぐに育てる。

◆学校が特別に設けた時間

学習指導要領に定められた各教科・活動の年間標準時数を
確保した上で、学校は余剰時数を補充的学習や
独自の教育活動にあてることができる。
正式名称ではないが、これを学校裁量の時間と呼ぶ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100120-OYT8T00287.htm

インタビュー・環境戦略を語る:森ビル・森稔社長

(毎日 1月25日)

東京・六本木や表参道などの再開発を手がけ、
近年は中国・上海に超高層ビルも建設した森ビル。
「ヒルズ族」の流行語に象徴される派手なデベロッパーの
イメージもあるが、森稔社長の街づくりの原点は、
「生まれ育った古都の自然と歴史遺産」。

「空に希望を。地上に緑を。地下に喜びを」をコンセプトにした
都市再生への取り組みを聞いた。

--理想の都市像として、「ヴァーティカル・ガーデン・シティ
(垂直の庭園都市)」を提唱。

◆緑に覆われ、環境に優しいコンパクトな都市。
職、住、遊、商、学、文化などの都市機能を集積し、超高層化。
細分化された土地をまとめあげ、容積率を高めることで、
建ぺい率を抑える。

緑化できる土地が増え、職住近接にもつながり、
豊かな生活空間と時間が生まれる。

--これまでの成果は?

◆都内で手がけた主要プロジェクトのうち、01年完成の
「愛宕グリーンヒルズ」は、全敷地面積に緑が占める割合
(緑被率)が44・4%。
植え込んだ木々は成長するので、アークヒルズでは
90年に23・3%だった緑被率が、06年には37・5%に上昇。

地域にふさわしい生物多様性を守り、四季を感じられるように
することが大切と考え、常緑樹だけでなく、落葉樹を植える配慮。
六本木ヒルズの屋上庭園には、カエルやメダカが生息。

--各種施設が一極集中することで、
かえってエネルギー消費が増加しないか?

むしろ、エネルギー効率は向上。
六本木ヒルズでは商業棟、住居棟などに送る電気や
冷暖房用のガスタービン設備が1カ所に集約。

各棟が個別に設備を運用した場合に比べ、CO2を18%削減。
配電ロスも少なく、中低層の建物が分散した市街地より、
空調などに必要なエネルギーを減らせる。

--環境重視の街づくりを進めるため、今後、
どのような手を打っていくか?

◆グローバル化が進む中、国家ではなく、都市が競争する
時代を迎えている。
東京が勝ち残るには、緑による再生が不可欠で、
世界にアピールできる大きな魅力。

森ビルの将来像を描き出す経営企画室を、昨年12月に新設。
私も、社長業が長い。
後継者を育て、私は会長になりたいと思っている。
早ければ来年でもいい。
世界に「垂直の庭園都市」を広めたい。
社業としてだけでなく、地球環境に貢献できれば。
==============
◇もり・みのる

東大教育学部卒、59年森ビル設立と同時に取締役。
常務、専務などを経て93年1月から現職。京都府出身。75歳。
著書に「ヒルズ 挑戦する都市」(朝日新聞出版)

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/25/20100125ddm008020004000c.html

2010年2月1日月曜日

効果検証、まきストーブ 釜石で企業が農家向け開発

(岩手日報 1月27日)

釜石市の市郷土資料館(佐々木寿館長)に、

市内企業が開発したまきストーブが設置。
ビニールハウスでの使用を見込んで、
農家向けに開発された製品。
公共施設など、広いスペースの暖房にも有効と考えた企業が
無償提供し、ひと冬、実用のための試験。

ストーブは、石村工業(石村真一社長)が開発。
鉄製で、高さが約140cm、重さが150kg。
本体の上に、まきを投入する円筒(直径約50cm)を
斜めに取り付けた。

この微妙な傾斜が、効率の良い燃焼のポイント。
長さ1mほどの丸太(直径10~20cm)を垂直に数本
入れることで、8時間以上連続で燃焼し、
手間が掛からないのが利点。
下から徐々に燃えていくため、一定の燃焼が保たれる仕組み。

丸太は、釜石地方森林組合(曽根哲夫組合長)が、
間伐材を無償提供。

同館はこれまで、同じ場所に石油ストーブを置いていた。
石村社長は、「燃費は3分の1以下になると試算。
焼き芋もできる。
いい試験結果が出ることを期待したい」と結果を待つ。

同館は天井が高く、暖房設備も不十分で、
冬場の寒さは悩みの種。
佐々木館長は、「入館者が、『寒い』と入り口で引き返したことも。
ゆっくり見学できる快適な空間がつくれる」と感謝。

同館は、午前9時半から午後4時半まで。火曜日休館。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100127_11

サッカーW杯でHIV感染拡大の恐れ、対策は売春の合法化

(CNN 1月8日)

サッカーW杯が約半年後に迫る南アフリカは、
世界で最もHIV感染率が高い国で、W杯開催期間中に
HIV感染拡大の恐れがあると懸念。
同国で、売春婦を支援をする団体が、違法となっている売春を
合法化することで、感染拡大が防げると主張。

南アフリカのHIV感染者は推定570万人、
感染率は世界で最も高い。
米ミシガン大学が2005年に実施した調査では、
最大都市ヨハネスブルクで、性産業に従事する女性の46%が、
HIV感染者。

ケープタウンに本拠を置いて、売春婦の教育支援などを行う
SWEATの代表、エリック・ハーパーさんは、
「需要があるところに供給が生まれると」して、
世界中から集まったサッカーファンが売春婦などと関係を持ち、
新たなHIV感染者が増える恐れを指摘。

南アでは現在、売春が違法となっており、性産業従事者は
隠れた状態で仕事をしている状態。

ハーパーさんは、感染拡大を防ぐため、売春を合法化して
性産業従事者におけるHIV感染状況を正確に把握し、
適切な教育を徹底することが近道だと強調。

2006年大会が開かれたドイツでは、売春は合法、
大きな社会問題とはならなかった。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN201001080020.html

和文化を知る(1)美しい日本語 身に着く授業

(読売 1月19日)

日本語の美しさを学び、伝統文化を知る。

さよなら三角また来て四角。四角は豆腐。豆腐は白い……。
新潟県新発田市の市立五十公野小学校の1年生の教室、
かわいらしい歌声が聞こえてきた。
2人ひと組で考えた、しりとり歌を発表する「日本語」の授業。

「四角は」から始め、10以上の言葉をつなげて、
「ひかるはみんなの笑顔だよ」で終えるのがルール。
前回までの授業で、思い浮かんだ言葉を画用紙に書き出し、
うまくつながるよう整理。
ひと組ずつ順番に歌い、歌い終わるたび、ほかの児童が、
「サメが出てきたのが面白い」などと気づいたことを述べていた。

新発田市では今年度、文部科学省の教育課程特例校制度を
利用し、独自教科の「日本語」を新設。
市内の全小中学校で、年間20~35時間を教えている。

狙いは、古典作品などを通じて日本語の美しさに触れ、
表現力やコミュニケーション力を養うとともに、
日本の文化や伝統に誇りを持つ心を育てること。
市教委が作成した教科用の図書には、
論語や俳句、短歌が数多く並ぶ。

子どもたちがあきずに「楽しく」学べるよう、
各校で授業を工夫している。

同小の6年生の授業を見学すると、児童が机を向かい合わせにし、
「長久安全」、「至誠一心」などの4文字熟語が書かれた
10枚の札を、カルタのように取り合うゲームをしていた。

これらの言葉は、2004年の新発田城の復元に際し、
町の繁栄を願って選ばれた「願文」。
ゲームを終えると、この日の主題の、自分たちの願いを
漢字4文字にまとめるオリジナルの願文作りに取り組んだ。

各学年とも、授業では、各自が感じたことや思いを発言したり、
文章にしたりする機会を設けている。
「作文などでも、難しい漢字を使い、こった表現をする児童が
増えています」と、同小の研究主任の鈴木真史教諭(45)。

意欲の証しのひとつは、廊下の壁に並べられた児童作の
五言絶句の漢詩。
「金木犀」「鶯」など、学校で習わない字が多く見受けられた。

新発田市が参考にしたのは、東京都世田谷区の取り組み。
同区では、「日本語は、思考や表現の基盤。
日本文化の理解に不可欠」として、03年度から俳句作りや
百人一首大会など、小中各校で日本語を重視した
授業や行事を取り入れてきた。
日本語教育特区の認定を受け、07年度からは
教科「日本語」の授業(年間35~70時間)を全小中学校で導入、
教科用図書を作成。

区立船橋小学校の1年生の授業。
冒頭に、全員で宮沢賢治の詩や論語を暗唱した後、
山上憶良の短歌の学習に入った。
意味も説明するが、目的はリズムや響きを味わうこと。
一首だけだが、授業の終わりには、
多くの児童が暗唱できるようになっていた。

小学校は、古典や現代詩などの朗読・暗唱が主だが、
中学の「日本語」は、三つの領域に分かれる。
現代文などを読んで意見交換したりする「哲学」、
ゲームの説明書作りなどにも取り組む「表現」、
衣食住や伝統芸能などの知識を深める「日本文化」。

「自分の言葉で徹底的に考え、表現させています。
受験の論文や面接にも役立つはず」と
区立八幡中学校の君島光司校長(61)。
言葉を友とし、子どもたちは明日への力を身につける。

◆教育課程特例校制度

学習指導要領によらず、学校や地域の特色を生かした
教育課程を編成できるようにする制度。
内閣府が認定していた教育特区に替わるもので、
手続きの簡素化を図り、08年度から文科省の指定に。

◆見直されはじめた伝統

茶道や和楽器、郷土芸能、古典の朗読など、
伝統文化を重んじた学習に力を入れる学校が増えている。
「和文化教育研究交流協会」理事長の
中村哲・兵庫教育大教授(61)によれば、
小・中・高で全国1000件以上に上る。

きっかけは、現行の学習指導要領(小中は1998年告示、
高校は99年告示)に、総合的な学習の時間の設置や
中学音楽の和楽器の必修化が盛り込まれたこと。
06年の教育基本法改正で、教育目標の一つに
「伝統と文化の尊重」が掲げられ、新学習指導要領に
伝統や文化に関する教育の充実がうたわれたことから、
動きは活発化した。

「戦後社会の行き詰まりで、教育界が長く遠ざけていた
日本文化が見直され始めた」と背景を説明、
中村教授は、「大事なのは、単に過去の遺産を継承するのでなく、
現代社会との関連性を踏まえ、新たな文化の創造へとつなげること。
そうした視点を持った教員の養成も必要で、
国の後押しに期待したい」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100119-OYT8T00219.htm

iN細胞:皮膚から神経細胞 iPS使わず--米マウス実験

(毎日 1月28日)

マウスの皮膚の細胞に、3つの遺伝子を導入し、
神経細胞を作り出すことに、米スタンフォード大の研究チームが
成功、「(人工的に)誘導された神経細胞」を意味する
「iN細胞」と名付けた。

ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のように、
どんな細胞にも変化できる「万能細胞」を使わず、
体細胞から直接、形質が全く異なる細胞を狙い通りに作成した
成果として注目。
27日付の英科学誌ネイチャー(電子版)で発表。

研究チームは、神経細胞のみが光るように遺伝子改変した
マウスの胎児の組織や新生児の尾から、
皮膚中でコラーゲンなどを作る「線維芽細胞」を採取。

神経細胞への変化に関係する19の遺伝子のうち、
3つをウイルスに乗せて導入すると、5~8日で光る細胞ができ、
神経細胞として働くことが確認。

iPS細胞を作成するには数週間かかり、
神経、筋肉、心筋などの目的の細胞に分化させる必要。
移植の際、分化しきっていない細胞が混じれば、
がん化する可能性もある。

今回の方法は、iPS細胞を使う場合に比べ、
より簡単かつ短期間でできる。
iN細胞は、それ以上変化しないため、
がん化の可能性も低いと考えられる。

チームの一員で同大再生医学研究所のリサーチアシスタント、
国分優子さんは、「将来的には、患者本人の細胞から
がん化の可能性や移植時の副作用が少ないiN細胞を
作成することで、移植治療の臨床応用の可能性を
広げることができるのでは」

◆iN細胞 安全性の検証必要

米スタンフォード大が成功した体細胞を直接、
目的の細胞に変化させる試みは、
「ダイレクト・リプログラミング」と呼ばれ、
iPS細胞研究と並んで世界的に研究が進みつつある。

米ハーバード大の研究チームが08年、マウスの膵臓の膵液を
作る細胞に、3つの遺伝子を組み込み、インスリンを作る
ベータ細胞を作成した例。

インスリンは、元々膵臓で産出されるのに対し、
米スタンフォード大の研究は、採取が簡単な皮膚の細胞を使い、
元の細胞とは性質も形態も全く異なる細胞を作り出した点で、
これまでにない成果。

岡野栄之・慶応大教授(再生医学)は、
「いつかは、このような研究がなされるだろうと予期していたが、
ついに出たという感がある」と評価。
体細胞に複数の遺伝子を導入して別の細胞に誘導する発想は、
もともと山中伸弥・京都大教授らがiPS細胞の作成で示し、
「今回の研究も、iPS細胞研究の延長線上にあると言える」

iN細胞は、元の細胞の形質が完全に消えているかどうかなど、
未知の点も多い。
iPS細胞と同様、再生医療での利用には、
特に安全性の詳細な検証が必要。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100128ddm001040013000c.html

2010年1月31日日曜日

万能細胞分化で体内時計 阪大、再生医療に活用も

(2010年1月26日 共同通信社)

体のリズムを約24時間周期で刻む体内時計が、
胚性幹細胞(ES細胞)や新型万能細胞(iPS細胞)から
さまざまな組織に分化する過程で形成されることを、
大阪大の八木田和弘准教授らがマウス実験で突き止め、
米科学アカデミー紀要電子版に25日発表。

ES、iPS細胞では、体内時計は発生していなかった。
八木田准教授は、「未分化のがん細胞は、
体内時計に異常があることが多い。
今回の成果は、再生医療の際、危険のある細胞を見分ける
基準になる可能性がある」

体内時計が完成していない胎児期に、母体にストレスや
生活リズムの乱れがあると、子どもの体内時計に
どう影響するのかの解析にも役立ちそう。

実験では、細胞の体内時計が振動すると反応して光る
遺伝子を指標に、体内時計を観察できるES細胞を作製。
ES細胞では振動がなかったが、培養して分化させると、
約2週間で約24時間周期の振動が現れた。
体内時計ができた細胞からiPS細胞をつくると、再び振動が消え、
そこから分化させた細胞ではまた周期的な振動が始まった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/26/115040/

接客マナーに8割不満 岩手経済研調査

(岩手日報 1月28日)


接客マナーに8割が「不満」―。
岩手経済研究所(永野勝美理事長)が実施した
「接客マナーに関するアンケート」で、多くの県民が、
県内業者の接客態度に不満を感じていることが分かった。


不快を感じながらも、店側に伝えない人が8割に上り、
顧客の不満が店側に伝わりにくい実態も。

「観光立県」を掲げる本県だが、観光産業のさらなる発展へ
接客する側、される側とも意識の向上が求められそう。

調査は、2009年11月に実施。
04年に続く2度目の調査で、県民1千人を対象に
県内小売業・サービス業などの接客マナーに対する思いを聞いた。
回答率は53・2%。

「接客マナーに不満を感じたことがあるか」の問いは、
「時々感じる」が70・8%と最多。
「感じる」11・7%と合わせると82・5%で、
前回調査(83・8%)とほぼ変わりなかった。
「あまり感じない」は12・7%、「感じない」は4・8%。

「接客マナーが悪いと感じる業種」(複数回答)は、
営利を目的としない「市町村役場などの公的機関」46・5%、
「医院・病院」31・0%の順。
前回と順位は変わらなかったが、
2業種ともポイントは低下し改善がみられた。

「接客マナーが良いと感じる業種」(同)は、
マナー教育を重視する「ホテル・旅館」48・7%と
「デパート」44・4%が、群を抜いて高い評価を受けた。

「接客マナーが悪いと感じるとき」(同)は、
「態度が乱暴・不誠実」、「笑顔がない」など。
「良いと感じるとき」(同)は、「あいさつが良い」、
「態度が丁寧・誠実」などが理由。

「接客マナーの良さで店を選ぶか」の問いには、
「考慮する」が39・5%、「時々考慮する」が49・2%で、
計88・7%を占め、接客マナーの重要性を示した。

不愉快な思いをした場合の対応については県民性なのか、
82・4%の人が「不快感を伝えない」と回答。
店側は現状を踏まえ、苦情を拾い上げる工夫が求められそう。

観光業界のサービス競争は激しさを増しており、
顧客の意識も高まっている。
同研究所の藤原誠徳主任研究員は、
店側は業務知識を磨く、顧客は言うべきことを言うなど
互いに意識を高め、みんなでマナーの見直しを図っていくことが、
岩手全体のレベルアップにつながる」と助言。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100128_14

理系白書’10:挑戦のとき/21 九州大助教・正岡重行さん

(毎日 1月26日)

ほぼ無尽蔵にある水を、太陽光で分解し、
エネルギーを作り出す。
究極のクリーンエネルギーの一つとして、
人類が追い続けている夢。

植物が光合成という一連の反応の中で、太陽光を使った
水の分解を軽々とこなしているにもかかわらず、
人類はこの反応を実用化できていない。

正岡さんは、植物の葉緑素と似た金属錯体
(金属と有機物の複合体)を利用、「人工光合成」に挑んでいる。

光を吸収して、水を水素と酸素に分解する光触媒自体は、
60年代に藤嶋昭・東京大特別栄誉教授(67)らによって発見。

半導体などを触媒に使った方法で、研究が進んできたが、
太陽光の主成分である可視光を十分に使えないなど、
効率がなかなか上がらないのが現状。

正岡さんが使う金属錯体では、まだ水を完全には分解できない。
水素は取り出せるが、同時に酸素も発生させない限り、
反応を継続するには外から電子を供給する必要。
電子の供給に電気を使ったのでは、
エネルギー問題として意味がない。
酸素を発生させる触媒に、課題がある。

正岡さんは、「何億年もかけた進化の過程で、
試行錯誤した植物が金属錯体を選んでいる。
植物に匹敵する機能を実現するには、
こちらが有利なのではないか」との見立て。

小学生時代、昆虫少年だった。
「特に他人の知らない虫が好きで、カブトムシより、
石をめくってハサミムシを探していた」
高校生になると、「アルバイトと遊びに明け暮れ、
遅刻回数は学年トップ。勉強は嫌いだった」

優等生の多い研究者としては、異色の生活を送った。
「先生が好きで、これだけは勉強した」という
化学1教科の試験で、同志社大に推薦入学。
ここで学問に目覚めた。
「教科書に書いてあることは、10年くらいでどんどん
塗り替わるもので、その新しいことを作り出すのが
大学だと分かった。
世の中にない現象や物質を見つけたかった」

08年3月、従来の定説では考えられない構造の金属錯体が、
酸素発生触媒として働くことを日本化学会で発表。

当初、学会は「君、それは間違いだよ」と冷ややかだったが、
80年代以降大きな進展のなかったこの分野に、
新しい風を吹き込み、今や主流のアイデアとなって
世界的な競争が起きている。

「大学院では違う研究をしていて、あまり知らずに
水の分解の研究に入ったのがよかったのかもしれない。
ゼロから何かを作るところに、研究者の面白さがある。
これまで誰も考えなかったような領域、概念を作り出したい。
飽き性だと怒られるかもしれないが、5年くらいの間隔で
いつも新しいことをやっていたい」
==============
◇まさおか・しげゆき

77年、大阪府枚方市生まれ。同志社大工学部卒、
京都大大学院修了。英リバプール大研究員を経て05年から現職。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100126ddm016040131000c.html

私立幼稚園児の保護者学習費負担年約54万円

(サイエンスポータル 2010年1月28日)


子どもを私立幼稚園に通わせる親の支出額は、
年間約54万円に上り、公立の小学、中学、高校に
通わせるより高いことが、
2009年度「子どもの学習費調査」で明らか。

私立幼稚園児のため、保護者が支出する
学習費総額のうち大半を占めるのは、
授業料、入学金、学用品などの学校教育費。
この額は、年に約40万円、学校給食費が約28,000円、
学校外活動費(けいこごとや学習活動、スポーツ・文化活動など)
約14万4,000円。

給食費は、公立の小、中学校、学校外活動費は、
公立小・中・高校よりいずれも少ない。
学校教育費は、小・中・高校よりも高額であるため、
学習費総額になると、公立の小学校(約31万円)、
中学校(約48万円)、高校(約52万円)を上回る結果。

経済開発協力機構(OECD)が公表した「図表で見る教育2009」
によると、教育支出に占める私費負担割合が、
日本の場合、33.3%とOECD平均を倍以上、
上回っている(日本より上は韓国41.2%だけ)。


負担率が高いのは、就学前教育(幼稚園など小学校入学前の
家庭外機関による教育)と、大学・大学院・短期大学・
高等専門学校など高等教育とされ、就学前教育における
日本の私費負担は56.6%、OECD加盟国平均の19.3%を
大幅に上回っている。

国内の幼稚園のうち、私立は約6割。
公立幼稚園の保護者の学習費負担は、
年間約23万円と私立の約4割。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1001/1001281.html