(読売 1月27日)
国際化という文脈の中で、伝統文化を学ぶ。
1分間の沈黙の後、華道の授業が始まった。
講師の説明を聞きながら、生徒たちが、慣れた手つきで
マツやセンリョウを順番に生けていく。
東京都中野区の女子校、東京文化中学・高校。
全授業で行われている1分間の沈黙は、
初代校長の新渡戸稲造(1862~1933年)が、
国際連盟の事務次長時代、様々な宗教の国が参加する
国際会議の際に行い、会議効率を高めたことに由来。
同校では、こうした精神のもと、日本の伝統文化体験と
異文化体験を両輪にした、国際理解教育を実践。
きっかけは、「これからは国際化の時代」として、
1978年に始めた希望者対象の海外語学研修旅行。
新渡戸が校長在職中に病死したカナダで、
夏休み中の3週間を過ごし、ホームステイなどを体験。
そのお礼のパーティーで、生徒たちが茶道や書道を
披露したところ、ホストファミリーがとても喜んでくれた。
以来、国際交流には日本の伝統文化が不可欠だとして、
教育に取り入れている。
華道は中2で、茶道は中1で、いずれも週1回、
総合学習の時間を利用して教えている。
中学の音楽で三味線を学習し、中高で、江戸時代から伝わる
思いやりのある所作、「江戸しぐさ」を学ぶ時間も。
2003年度からは、カナダを訪ねる中3の修学旅行を実施。
生徒たちは、書道やよさこいソーランなどを披露。
国内大学の外国人留学生を招いて話を聞く会なども。
「日本との文化の違いが分かるから、外国の人と話すのは楽しい。
来年の修学旅行も楽しみ」と、中2の生徒たち。
「違いを認め合う心」を、新渡戸は大事にした。
その精神は、14歳の少女たちにも確かに受け継がれている。
京都市左京区のノートルダム学院小学校では、
2001年度から、全校生徒が茶道を通じて、礼法を学ぶ。
カトリックの同校とは意外な取り合わせだが、
「茶道のおもてなしの心や感謝の心は、キリスト教の精神に通じる。
日本文化を知ることは、日本人として国際社会で
生きていく上でも大事」と行田隆一教頭(55)。
礼法の授業は、6、12、2月に設けた年3回の「礼法週間」、
総合学習の時間を利用し、クラスごとに行う。
畳敷きの礼法教室で、茶道の作法に加え、
畳の歩き方や正座の仕方を身につける。
茶道をたしなむ教員も加わり、担任をサポート。
1年生には、約160人の児童が一斉に茶をたて、
家族をもてなす「大茶会」もある。
昨年12月の茶会では、サツマイモを使ったお菓子を
前日に児童が作り、お茶とともに出した。
同校の華道クラブの児童が花を生けて、会場に色を添えた。
宗教を超えて、和の心が広がる。
◆国際理解教育
国際平和の実現のために、国連教育・科学・文化機関
(ユネスコ)が提唱。1953年発足の「ユネスコ協同学校計画」
(現ユネスコ・スクール)に文部省(当時)が参加、
日本でも次第に広まりだした。
2006年改正の教育基本法は、「伝統と文化の尊重」とともに、
「他国の尊重」、「国際社会への寄与」を教育目標のひとつに。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100127-OYT8T00277.htm
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