2007年10月27日土曜日

「賢い患者になる」「健康食品」 <3>

(共同通信社 2007年8月14日)

今年2月、スギの花粉を加工した健康食品(カプセル)を飲み、
和歌山県の女性が全身性アレルギー反応によるショック症状に。

厚生労働省が成分などを分析したところ、
医薬品の成分が検出され、和歌山県は薬事法に基づいて
山形県の製造販売会社に販売停止と回収を指導。

また、ここ数年、インターネットを通じて中国から手に入れた健康食品を
食べた人が相次いで頭痛や下痢などを訴えたほか、死者も出た。

1兆円とも3兆円ともいわれる健康食品の市場規模。
国民の健康志向が高まるのに伴って、市場は拡大傾向にあるが、
健康被害やトラブルも確実に増えている。

「『食品だから』との安易な気持ちが、深刻な事態を招く原因に」
と国立健康・栄養研究所は警告。

日本には、法令上"健康食品"という定義はない。
メーカーなどが、「健康に良い食品」という意味で使っているにすぎない。
欧米に比べ、健康食品に対する国の取り組みは遅れ気味だ。

それでも2001年、国は安全性や有効性などに基づいて
他の食品との差別化を目指す保健機能食品制度をスタート。
健康食品による被害やトラブルの急増に対応するためだけではなく、
市場拡大を期待する食品業界から強い要望があったため。

制度によると、保健機能食品は、体の生理的な機能に働き掛けて
特定の効果が期待できる「特定保健用食品」(特保)と、
不足しがちな栄養成分を補給できる「栄養機能食品」に大別。

現在、特保は約700品目あり、虫歯になりにくくするといわれる
キシリトール入り食品などが知られている。
販売するには、安全性や有効性の審査をパスすることが必要。
約2年前には、「条件付き特保」が追加。
栄養機能食品は、カルシウムやビタミンなどの栄養素を表示して販売。
審査はないが、国の規格基準をクリアしていることが条件。

これとは別に、低タンパク食品や乳幼児用調製粉乳など
特別の目的をもつ「特別用途食品」があり、
特保と同様、国の許可がなければ表示できない。

「メディアから健康食品の情報が連日流されているが、
視聴者が誤解してしまうような情報も少なくない。
健康食品に対する正確な理解が不可欠。
おかしいと思ったら最寄りの消費者センターで相談を」。

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条件付き特保

一般の特保ほど有効性に科学的根拠はないが、
一定の有効性が確認されている食品のこと。
中性脂肪の減少が期待される商品が出た。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=52372

「賢い患者になる」「健康食品」 <2>

(共同通信社 2007年8月14日)

医療の場で治療効果を高め、回復を助ける食品こそ、
本来の健康食品といえる。
藤田保健衛生大七栗サナトリウム(津市)の東口高志教授は
「栄養管理はすべての治療の基本となる医療」。

医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、検査技師らの
栄養サポートチーム(NST)が、患者のデータが表示されたパソコンを囲み、
今後の栄養管理の方針を確認。
大学病院初の緩和ケア病棟など、
計218床の全患者についてNSTが栄養状態を把握。
必要な栄養をどうやって摂取していくか計画を立て、
病状や回復程度に合わせて細かく調整していく。
東口教授は、「NSTが栄養管理をすることで患者の回復が早く、
入院日数が短縮される。その結果、医療費も削減できる」。

入院してくる患者には、タンパク質などの栄養素が不足していることが多く、
特に高齢者に栄養不良が多い。
栄養不良の状態では治療の効果がうまく現れなかったり、
手術後に感染症などの合併症になる率が高い、
床ずれができやすいなど、多くの問題がある。

しかし、治療の初めから患者が必要な栄養を摂取することで回復が早まり、
患者の生活の質(QOL)も高まる。

早く口から栄養をとることも重要。
「入院したら点滴で栄養補給」というイメージがあるが、
点滴よりも腸から栄養を吸収することで腸の機能が維持され、
全身の状態がよくなる。
患者に合わせて、成分や濃度の異なる医療用栄養剤などを使い、
早く通常の食事ができるようにしていく。

バニラ味、コーヒー味など味に工夫した医療用栄養剤、濃厚流動食など、
さまざまな製品が開発されているほか、
国外からは特定の疾患治療や予防用の栄養剤などの導入も。

「高齢社会では、特に栄養管理が重要だ」と指摘。
高齢者は、食事の量が不足したり、好みの偏り、嚥下障害などで
気付かぬうちに栄養不良に陥りやすい。
「地域の医療、介護を通して高齢者の栄養管理を支援する仕組みが必要」。

がん患者には、いわゆる「健康食品」の利用者が多い。
「米食品医薬品局が認可しているものから、成分不明のものまである。
摂取して栄養素が過剰になったり、逆に不足することもあるので、
医師やNSTに相談してほしい」とアドバイス。

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栄養サポートチーム(NST)

日本では、1998年に全入院患者を対象とするNSTが初めて本格的に導入。
昨年、栄養管理に診療報酬が認められたことにより、
現在では1000以上の施設に設置。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=52371

2007年10月26日金曜日

「賢い患者になる」「健康食品」 <1>

(共同通信社 2007年8月14日)

一口に「健康食品」といっても、
怪しげなものから「特定保健用食品(特保)」まで、
さまざまなものが出回っている。
患者として、どうしたらうまく利用することができるのだろうか?

代表的な健康食品であるサプリメントについては、医師の間でも意見が分かれる。
「上手に使えばプラス」と言うのは、
稲毛病院(千葉市)ビタミン外来の佐藤務医師。
「今は食物素材の栄養素低下が甚だしく、サプリメントの必要性が高まっている」
ただ、サプリメントを取るときは、いろいろなタイプがあることに注意が必要。
同じ1粒でも、一方は栄養素、もう一方は薬理作用の場合があり、リスクを伴うことも。

佐藤医師は、「取る場合は、必要性と安全性の高いものから。
ベースは栄養素。少量をバランス良く、まんべんなく取る必要がある」。
優先順位の第1は、ビタミン、ミネラル、タンパク質。

サプリメントで一番問題なのは、頭では薬ではないと分かっているのに、
実際には薬と同様に、取るだけで効くと思い込んでいること。

「サプリメントは、ただ取るだけでは体内で働かない。
どうしたら体内で働くのかを考えないと病気のケアにつながらない」。
サプリメントを働かせるためには、食事、運動、睡眠などの生活習慣の改善が必須。
「食事を主体に改善し、取り切れない部分はサプリメントで取り、
バランスを整えた上で、新陳代謝をよくしていく。まず食事が大事」

まず始めるのは、体をつくること。
新陳代謝を促進し、髪の毛や肌、つめなどをきちんとつくると、体が動けるようになる。
「新陳代謝がしっかりしてくると、体が変わってくる。
例えば『つめが割れなくなりました』と患者さんが言うようになる。
そうすると、無理なくエネルギー代謝が進むようになり、
免疫系や内分泌系、神経系など全身のネットワークが強化され、
精神面も安定し、症状の改善が見られるようになる」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=52370

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サプリメントを効果的に使用するためには、
まずは自分の体調を把握すること。
食事や運動、ストレスといった日常生活に乱れが出ていては、
いくらサプリメントを取っても効果はありません。
サプリメントは、あくまでも「補助」食品でしかないのですから。
本末転倒にならないように、気をつけましょう。

2007年10月22日月曜日

卵子2つから作られた「二母性マウス」が誕生!

(nature Asia-Pacific 

東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科 河野友宏教授

ほ乳類には、雄と雌の2つの性がある。
生物学者は、その理由を
「多様な遺伝子の組み合わせをもつ方が生存に有利だから」、
「細菌やウイルスなどの有害遺伝子を排除するため」などと説明してきたが、
いずれも確証は得られていない。

河野教授は、有性生殖の進化やその制御メカニズムを解く鍵になると
思われる大きな成果をあげた。
精子を使わず、卵子2つから確実にマウスを誕生させることに成功。

ほ乳類では、雄の精子と雌の卵子が受精して、
両者のゲノムからなる2倍体の次世代が誕生する。
子はその遺伝子を、父親と母親から等しく半分ずつ譲り受ける。
ただし、その発生過程では、精子と卵子からの遺伝子が
同じようにはたらくわけではない。
使われない方の遺伝子は、「メチル基」が付加されることで
不活性化されている(メチル化)。
こうした遺伝子の発現調節は、「ゲノムインプリンティング」とよばれ、
発生学の重要な研究テーマに。

「精子と卵子のゲノムインプリンティングが、いつ、どのように成立し、
個体の発生にどう影響しているのかを検討したいと考えた」。
研究を進めるには、卵子の遺伝子だけから発生するマウス(二母性マウス)を
作ってみるのがよいと確信、
卵子(卵母細胞)と精子のゲノム中で、どのような遺伝子が
インプリンティングされているかを調べ、
卵子のパターンを「精子のパターン」に変換するシステムを開発。
「マウスの未成熟な卵母細胞のゲノムを精子のパターンに変換し、
それと成熟卵子の細胞を融合させて、13.5日まで胚発生させることに成功」。

精子のパターンに変換した未成熟卵母細胞のゲノム中で、
7番染色体のメチル化領域(父性メチル化インプリント領域)を欠損させると、
成熟卵子と細胞融合させた際の成長率が高まることを突き止め、
2004年に第1号の二母性マウスを誕生させることに成功。
「日本人なら誰でも知っている女性の名前で、
ロマンを感じさせるものをと考え、かぐや(KAGUYA)と名付けた」。

2007年には、7番染色体とともに12番染色体の父性メチル化インプリント領域を
欠損させると、ほぼ確実に個体にまで発生させることが可能に。
「生まれた二母性マウスはやや小ぶりだが、生体機能はまったく正常で、
通常の交配で子どもを産めることも確認」。
現在までに、27匹が誕生しているという。

インプリンティング遺伝子は200以上もあると考えられ、
精子側(精子アレル)と卵子側(卵子アレル)から発現する遺伝子が、
それぞれ約40ずつ明らかに。
「インプリンティングがなぜあるのかは不明だが、
単為発生を防ぐことで母体を保護している可能性などが考えられる」。

ヒトでは、インプリンティング遺伝子の異常による疾患が多く知られている。
今回の成果は、インプリンティングの制御機構の理解を促すだけでなく、
疾患の解明や治療法開発の糸口にもなりうる。
「ヒトに応用することは許されないし、技術的にも全く不可能」。
ただし、一連の研究が再生医療や不妊治療の基礎的な情報を提供しうる。
謎の尽きないテーマに、どこまで迫ることができるか?

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=53

2007年10月21日日曜日

女性の腹囲は80センチを基準に メタボ診断で、東北大発表

(共同通信 2007年10月19日)

東北大大学院薬学研究科の今井潤教授らのグループは、
メタボリック症候群の診断基準になっているウエストサイズ(腹囲)について
「男性87センチ、女性80センチが適切な基準値」と発表。

厚生労働省は、腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、
さらに高脂血、高血圧、高血糖の2つ以上に当てはまるかを基準に。
女性の腹囲を男性よりも大きく設定していることには、異論も出ていた。
研究グループは、「女性の腹囲は引き下げが必要ではないか」と指摘。
日本高血圧学会で発表する予定。

2000-06年にかけて、岩手県花巻市大迫町の男女約400人(平均63歳)に
健康診断を実施。血圧などの健診データを分析し、
メタボリック症候群の該当者を見つける上での最適な腹囲の値を導き出した。

現行の診断基準は、日本高血圧学会などが作成、05年に発表。
その後、国際糖尿病連盟が「男性90センチ、女性80センチ」を
発表するなど諸説出ている。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=58284

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現行の、「男性85センチ、女性90センチ」というのは、
どうもピンとこないですね。
なぜ、体格の小さい女性の方が男性よりも5センチ大きいのか?
女性の方が脂肪量が多いことは確かですが。
まあ、基準は今後も変わりうる可能性がありますが、
少なくともウエストが85センチというのは、
スポーツ選手でない限り、メタボリック症候群の危険性が高いことは
確かですね。私もそろそろやばい・・・。

血液検査で早期診断 アルツハイマー病で米研究

(共同通信 2007年10月16日)

アルツハイマー病の初期症状や将来の発症について、
血液検査で診断・予測する方法を発見したと、
米スタンフォード大などの国際チームが発表。

アルツハイマー病は、健忘症状などを初期症状とするが、
初期段階や発症前の診断は困難。
早期診断に成功すれば、進行を遅らせる治療が効力を発揮する可能性が。

チームは、脳が信号を伝達するタンパク質の放出を通じて
体の機能を制御していることに着目。
信号伝達に関する既知のタンパク質120種類について、
アルツハイマー病患者とそうでない人の血液試料を調べたところ、
患者には18種類のタンパク質が多く含まれていることが判明。

これら18種類のタンパク質を指標に、92人の血液を調べると、
約90%の確率で患者かどうかを判別できた。
軽度の健忘を示した47人を追跡調査した結果、
約80%の確率で、2~6年後の発症を予測。
さらに症例を増やして、数年後の実用化を目指すという。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=57900