2009年11月21日土曜日

総合学科高校(2)職場訪問 生き方考える

(読売 11月11日)

多様な科目選択で、生徒は社会に触れて進路を考えている。

女子高生の“取材”が始まった。
「ケーキ作りの仕事をしていて楽しいことは?」、
「つらいことはありますか?」

大分県日田市内のケーキ店で、県立日田三隈高校1年の
田辺紗季さん(15)が、パティシエの佐藤奈々美さん(18)に質問。

「先輩から褒めてもらえるとうれしい」、
「時間がかかったり、ケーキを壊してしまったりした時は悔しい」と
答える佐藤さん。
佐藤さんが作ったケーキをごちそうになった田辺さんは、
「仕事のやりがいを聞けたり、お店の様子を見ることができて良かった」

総合学科で、1年の原則履修科目「産業社会と人間」。
同校がその授業の柱にするのが、「この人に学ぶ」。
1年の生徒全員がそれぞれ、関心のある職業の人を訪問、
インタビューし、仕事を学ぶ。

この日は、男子生徒3人も日田市役所を訪れ、職員2人に話を聞いた。
「色々な職業の人と知り合えるのがやりがい」、
「今のうちに市のことを知っておくと役立つ」
職員からアドバイスを受けた三苫直繁さん(15)は、
「想像以上に市役所の仕事を知ることができた」。

2、3年での科目選択につなげるため、
1年で進路について考える「産業社会と人間」は、
総合学科の根幹となる授業。
教科書はなく、各校のやり方に成否がかかっている。

日田三隈高の「この人に学ぶ」では、今年、1年の生徒約160人が
美容師や介護福祉士など、100か所程度を訪問。

「同じ職業でも、人により人生観、職業観は違うため、
インタビューで返ってくる答えも様々。
生徒がいろんな意見や職業を知ることで、自分に合ったものが
見つかるかもしれない
当初の授業づくりにかかわった県立日田高校の宇野公是校長(59)。

生徒はそれぞれ、訪問先への約束を取り付け、事前に質問も考え、
生徒だけで訪問する。
その結果を、クラスや学年で発表したり、冊子にまとめたりしている。
自分で調べたり、発表したりする力を養うことを狙う。

1996年、総合学科になった日田三隈高の1期生は、もうすぐ30歳。
来年、「30歳のレポート」と題し、1期生などの卒業生に
高校での学習で生きたことや、学んでおけば良かったことなどを報告。

各地を視察し、教員で議論しながら「産業社会と人間」の授業を作り、
当初と変わらぬ内容で続けてきた。
「時代も変化している。同じ内容でもやり方や視点を変え、
より良いものにしたい」と宮脇和孝教諭(31)。

「自分がどう生きるかを考えさせるのに大事な科目」
高木啓次校長(54)。
科目選びだけでなく、将来の生き方まで考える授業づくりが
これからも問われている。

◆産業社会と人間

総合学科高校で原則として履修する科目、体験的な学習などを通し、
将来の職業選択につなげる能力の育成を狙う。主に1年で学習。
授業内容は各校それぞれで、社会人講師の講演、
職場見学や体験、大学の見学など。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091111-OYT8T00352.htm

廃虚から立ち上がる米国

(日経 2009-11-09)

先月、米国発で注目すべきニュースが2つ。
1つは、ゼネラル・モーターズ(GM)が閉鎖した工場を、
自動車ベンチャーが買い取り、プラグインハイブリッド車を生産。
もう1つは、スマートグリッド(次世代送電網)の構築に、
米政府が34億ドル(3100億円)を拠出。
米国は、いよいよ廃墟から立ち上がろうとしている。

GMから工場を買い取るのは、フィスカー(Fisker)という
自動車ベンチャー。
同社は、2007年に創業者のヘンリック・フィスカー氏が、
クライナー・パーキンスやカタール政府系投資ファンドの資金で設立、
テスラ、アプテラ、コダなどと並ぶ、
米国で最も注目される自動車ベンチャーの1つ。

電気自動車(EV)やハイブリッド車のベンチャー企業といえば、
ショールームの裏庭にしつらえた工房で組み立てたり、
車体生産を自動車メーカーに丸ごと委託したりと、
零細経営が目立っていた。
フィスカーが画期的なのは、GMの旧工場を活用すること。
ベンチャーが、いよいよ量産メーカーになろうとしている。

同社をバックアップしているのは、オバマ政権。
工場売却は、政権が直接働きかけ、税制面での優遇措置を提供。
米政権は、EVやハイブリッド車などエコカー購入への
税額控除などを検討、フィスカーが12年に発売する新型車は
4万ドル弱、現行スポーツ車の価格の半分程度。

電気自動車では、高額なスポーツカーを手がけてきたテスラが、
11年にファミリーカー「モデルS」を立ち上げる。
同社の場合も、量産モデルの実用化は政府のインセンティブが後押し、
アプテラ、コダなどが同様の計画を打ち出すことが決まっている。

雇用とグリーン産業育成を掲げるオバマ政権。
自動車と両輪をなしている目玉が、スマートグリッド。
オバマ大統領が拠出を決めた34億ドルは、
電力網の整備に向けられる公共投資の規模で過去最大。
インフラ網の整備ほか、「スマートメーター」の普及を通じて、
数十万~数百万人規模の雇用を生み出す効果がある。

こちらも、民間は「大歓迎」(ゼネラル・エレクトリックのイメルト会長)、
官民蜜月関係ができあがっている。
オバマ演説の直前、GEとワールプールが中心になり、
スマートグリッドが温室効果ガスの削減に貢献する
可能性があることをアピールする業界団体を立ち上げた。
「スマート・グリーン・グリッド・イニシアティブ(SGGI)」。

米メディアでも脚光を浴び始めた同団体への加盟企業・団体は20、
グーグル、スマートメーターの大手イトロンなど。
12月、コペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国
会議(COP15)の前後では、SGGIがさまざまなイベントを催し、
米政府と一体で米国製スマートグリッド技術を世界に売り込む。

少しずつ見えてきた米国の環境技術戦略と主役に座る企業群。
日本はこうした動きをどうとらえ、世界で戦っていくか。
1つ気になったのは、SGGIの20社に韓国・LG電子が。
米国とともに、隣国の動向にも目が向いてしまう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091105.html

ポートサイド女子マラソン 力走、七恵さんに届け

(東海新報 11月17日)

大船渡市などが主催する
「第22回大船渡ポートサイド女子マラソン」は、
市民体育館前を発着点とするコースで行われた。

今年6月に急逝した同市日頃市町出身の
永田(旧姓・佐々木)七恵さんを顕彰する大会に、
市内外から多数の女性ランナーが集結、
天国の七恵さんに力走をはなむけた。

スタート時の気温が20度と、例年になく暖かい気候に
恵まれた今年の大会。

開会式では、大会長の甘竹勝郎市長が、
「天国の七恵さんが昨日までの雨を払いのけ、
天気にしてくれたのだと思う」と述べ、
同市からの出場ランナー・佐々木泰子さん(ミス散るおおふなと)が、
出席した七恵さんの夫・陽美さんと長女・陽香さんに花束を手渡した。

レースは13部門、市内外から出場した300人以上が続々とスタート。
3㌔中学生では、ほぼ同着でテープが切られ、白熱のデッドヒート。
各ランナーとも必死でゴールを目指し、七恵さんに健脚ぶりを披露。

七恵さんの母校、日頃市中から出場した伊藤真瑠実さん(2年)は、
「自分は3㌔でも心が折れそうになった。
七恵さんはもっと長い距離を走り切っていて、
改めてすごさを実感しました」と大先輩に感服の表情。

http://www.tohkaishimpo.com/

運転下手は遺伝子のせい? 米神経学者の研究

(CNN 11月9日)

車線を守れずにはみ出したり、角をうまく曲がれなかったり――。
「運転が下手」と言われる人は、遺伝子に原因があるとの説を、
米カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームが発表。

同大の神経学者、スティーブン・クレーマー教授らが、
大脳皮質に関する研究の専門誌に報告。
脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる脳の成長因子に注目。
これが、運転の技能にどうかかわっているかを調べた。

BDNFには、神経細胞の成長や細胞間の情報伝達を促進し、
学習能力、記憶力などを向上させる働き。
同教授らによると、ある型の遺伝子を持つ人々の脳内では、
BDNFが不足する傾向。

被験者29人の遺伝子を調べ、BDNF不足型の7人と、
通常の遺伝子を持つ22人に分け、運転技能のテストを実施。
被験者は全員、シミュレーター上で急カーブなどを含むコースを
15周回り、4日後に同じテストを繰り返した。

その結果、BDNF不足型のグループの得点は、
通常型のグループの70%弱に。
「1回目のテストでは学習能力、2回目では記憶力をみるのが目的。
BDNF不足型のグループは、どちらも通常型に及ばなかった。
最初からミスが多く、学習したことも時間がたつと忘れやすい」

クレーマー教授らによると、米国人のうち、
BDNF不足型の遺伝子を持つ人は全体の約3割に上ると推定。
「交通事故を起こす率を比較しても差が出るのではないか」。
この遺伝子型を簡単に検査する方法は、実用化されていない。

Cereb Cortex. 2009 Sep 10. [Epub ahead of print]
BDNF Val66Met Polymorphism Influences Motor System Function in the Human Brain.
McHughen SA, Rodriguez PF, Kleim JA, Kleim ED, Crespo LM, Procaccio V, Cramer SC.

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200911090025.html

2009年11月20日金曜日

恐怖の記憶消す脳の仕組み解明

(2009年11月13日 読売新聞)

脳が短期の記憶をとどめる部分では、神経細胞を次々に作り出し、
恐怖などの記憶を消し去っていることを、
富山大学の井ノ口馨教授らが動物実験で突き止めた。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療につながる成果。
13日発行の米科学誌「セル」に発表。

記憶は、脳の「海馬」と呼ばれる部分に保存された後、
整理され、マウスは1か月、人間は半年-3年で大脳皮質へ移り、
長期の記憶になるとわかっているが、詳しい仕組みは不明。

井ノ口教授らは、海馬で神経細胞の新生が盛んなマウスと、
そうでないマウスを実験に用い、恐怖を感じる程度の
電気ショックを加え、記憶を調べた。

その結果、細胞新生が少ないと恐怖の記憶が海馬にとどまり、
細胞新生が盛んだと、移りやすい。
恐怖などの記憶が、いつまでも海馬にとどまっていると、
何かにつけて思い出しやすく、PTSDの症状が長引く。

井ノ口教授は、「海馬の神経新生を活発にする薬剤を
開発すれば、PTSDの治療に役立つ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/13/111084/

総合学科高校(1)実力つける 科目選び模索

(読売 11月10日)

「自分の時間割」で学べる総合学科高校が登場し、今年で15年。

教室ごとに、生徒が多様な授業を受けていた。
東京都立つばさ総合高校の教室。
3年の山本麻代さん(17)が、選択「素描」の授業で、
石こうデッサンに取り組んでいた。
描き終えた後、教員による作品の講評。
「もう少し明暗をはっきりと」、「まだ表情が出ていない」。
作品への指摘に、山本さんら約30人が真剣に聞き入った。

午後は、「ビジュアルデザイン」の授業。
「大学に進み、ゆくゆくはデザイン関係の仕事に就きたい」と、
山本さんはこの日、6時間のうち4時間が「美術・デザイン系列」の授業。

別の教室では、体育教師を目指す3年の稲葉美有さん(18)が、
「点字実習」の授業で、点字カレンダーを作製。
「教師になれば、障害のある生徒と接する場合もある」
時間割の表には、体育系や手話実習など
「スポーツ・福祉系列」の科目が多く並んでいた。

自分の興味に応じて、科目を選べる総合学科は、
「バイキング形式」の学校と言われる。

7年前、普通科と工業科の2校が統合、総合学科に変わった同校。
美術やスポーツ、テクノロジーなど、5つの系列の科目があり、
その中から時間割を作る。

1年は、国語や英語などの必修科目がほとんど、
2年では週30時間のうち最大14時間、3年で22時間が選択。
「中学の時から体育教師が目標で、この学校を選んだ」と
稲葉さんは満足そう。

時間割は、前年度の秋までに作る。
計12時間のガイダンスを行い、担任と個人面談して決める。
方向性があいまいな生徒もいるため、時間をかけて取り組む。

自由に選べる一方、おいしい科目の“つまみ食い”ばかりになると
生徒の力にならない。
同校では、柱となる系列を中心に選択するように指導。

担当の本城慎二教諭(49)は、「試験のない科目など、
楽な科目を選ぶ例が少なからずある」
楽な科目の情報も、先輩から伝わってくる。

科目選びに、制約を設ける学校も目立つ。
国立教育政策研究所によると、約37%の学校で、
選んだ系列内の科目から選択。

全国で初めて総合学科になった7つの学校の一つ、
筑波大学付属坂戸高校。
03年度から、科目選択に一定のしばりを加えた。

かつて、柱となる系列を選ぶよう指導し、モデルとなる時間割を示し、
系統だった学習になるようにしてきた。
年々進学希望者が増え、好きな科目だけでは
大学受験に必要な科目を履修できないケースも。

系列を一つ選び、その中から科目を選ぶようにし、週約30時間のうち、
系列に関係なく選べるのは2年で週4時間、3年で10時間に。
変更当初は、総合学科の理念に反するといった批判も。

「確かに選択の幅は狭くなったが、失敗もなくなった。
進路の実現のため、自分で考えて決める総合学科の
根本の理念は揺らいでいない」と、小林美智子副校長(55)。

食べやすいが力にならない「おかゆ学科」との批判的な見方もある
総合学科で、生徒に力をつけさせる努力が続く。

◆「偏差値偏重」打破の期待も

普通科、専門学科に次ぐ「第3の学科」として、
総合学科が導入された背景に、高校進学率が90%を超え、
学力や進路などが多様化する生徒への対応が必要。
主体的な学びを促し、偏差値偏重の教育を打破したいという期待も。

文部科学省によると、全国に344校あり、全体の約6%まで増えた。
500校まで増やす考え。
少子化などによる学校再編に伴い、設置する自治体が目立つ。

早稲田大学の菊地栄治教授(教育社会学)は、
「教員が改革意識を持ち、行政も支援しているところは成果を上げている。
進学者が多い学校は、進学対応のため科目を減らし、
普通科と変わらなくなっている」と、現状が二極化している。

生徒の意識も変化している。
国立教育政策研究所によると、生徒が総合学科を選んだ理由は、
「やりたい勉強ができる」(約53%)、
「自由に科目を選択できる」(約49%)が上位、
いずれも1999年と比べ、10ポイント以上減少。

同研究所の屋敷和佳・総括研究官は、
「高校教育の閉塞感を打ち破った意義は大きい。
自治体の財政は厳しく、それに見合う成果かどうか検証する必要」

◆総合学科高校

国語や数学などを学ぶ「普通科」と、工業や農業などの「専門学科」の
両方の科目が学べる新しいタイプの高校として、1994年に始まった。
入学後に進路を考え、自分で科目を選ぶことができる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091110-OYT8T00188.htm

寄稿『科学技術に事業仕分けは向いていない』

(サイエンスポータル 2009年11月17日)

行政刷新会議による事業仕分け作業が、大きな関心。
新聞、テレビなどの扱いも、仕分け作業をおおむね好意的。
科学技術関係に関し、仕分け作業に要する時間が十分だろうか?
中村直樹・科学新聞記者からの寄稿。

◆「科学技術に事業仕分けは向いていない」

科学技術関連予算の事業仕分けが行われ、
ほとんどの事業について予算を縮減。
地域科学技術振興や産学官連携、理科支援員等配置事業は
廃止という結論。

一事業、一群の事業を、1時間で説明・議論し結論を出す、
という強引な方法で、仕分け人の多くが基本的な事業の内容や
意義について、十分な理解さえしていない。

競争的資金(先端研究)は、科学技術振興調整費
(革新的技術推進費、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成)、
科学研究費補助金(特別推進研究、特定領域研究、
新学術領域研究、基盤研究(S))、戦略的創造研究推進事業、
戦略的イノベーション創出推進事業、先端的低炭素化技術開発、
戦略的基礎科学研究強化プログラム、という6事業を
1つの区分として、1時間の枠の中で「予算の縮減」との結論。

仕分け人側は、科学研究費補助金を獲得したことのある
名誉教授などが中心、ほとんどの議論が科研費に集中。
数人の仕分け人が、科研費制度全体への不満を言うだけで、
各研究種目の違いなど、ほとんど議論されない。
その他の競争的資金は、議論の対象にすらならないものも。

制度全体の話として、間接経費を縮減すべきだという意見も、
基盤を支える運営費交付金などの経常経費が減っているという
前提について、理解ができていない。

競争的資金(若手研究育成)では、科学技術振興調整費
(若手研究者養成システム改革)、科学研究費補助金
(若手研究(S)(A)(B)、特別研究員奨励費)、
特別研究員事業を、一群として取り扱い、「予算の縮減」と結論。

驚いたのは、これらの事業をポスドクの雇用対策であるという
認識を示したこと。
特別研究員に選ばれる若手は、支援終了後5年間で9割以上が
常勤職を得られる優秀な人材で、若手研究者養成システム改革の
テニュアトラックに採択される若手研究者は、国際公募で選ばれ、
非常に選別された優秀な人材。
科研費の若手研究に採択されるのは、きちんと職を得ている
若手研究者で、論点そのものがずれている。

地域科学技術振興・産学官連携(知的クラスター創成事業、
都市エリア産学官連携促進事業、産学官民連携による
地域イノベーションクラスター創成事業、産学官連携戦略展開事業、
地域イノベーション創出総合支援事業)の評価は、「廃止」。

この日の議論で、最もその内容を理解してもらえなかった事業。
地域の大学や自治体、共同研究相手の企業にとって
使いやすい制度にするため、徐々に細かいメニューを設定、
地方にとっての「使いやすさ」も、仕分け人から見たら
「わかりにくさ。使いにくさ」と見えた。

これらの事業をまとめて一群にしたことから、
最初から「廃止」の結論ありきではなかったか、と。

何かを判断する場合、事業の内容や趣旨を理解すること、
判断の理由を明確にするということが、当然。
科学技術に関する限り、事業仕分けという仕組みが適切ではない。
総合科学技術会議の優先度判定などで、毎年評価を行い、
加えて事業仕分けすること自体が行政の無駄ではないか。

13日の事業仕分けに対する評価とその詳細は次の通り。

次世代スパコンプロジェクトは、縮減の内容は半額以上。
計画の凍結、来年度の予算は、「見送りに限りなく近い縮減」。
大型放射光施設(Spring-8)は、「3分の1~2分の1程度予算の縮減」、
植物科学研究事業は、「3分の1程度予算の縮減」、
バイオリソース事業は、「3分の1程度予算の縮減」。
深海地球ドリリング計画推進は、「1割から2割の予算要求の縮減」。
地球内部ダイナミクス研究は、「少なくとも来年度の予算の計上は見送り」
と「予算要求の半額縮減」の両案併記。

競争的資金(先端研究)の予算は、
「若手研究者への資金配分にも力を入れてほしい」、
「コスト削減が必要」とのコメントを付し、
「整理して縮減することが求められている」。
制度について、一元化を含め、制度をシンプル化し、
使い勝手の良いものにするよう求めた。

競争的資金(若手研究者育成)は、「予算要求の縮減」。
コメントに、「ポスドクの生活保護のようなシステムはやめるべき。
本人にとっても不幸」、
「教員免許を、ポスドクに付与する政策を検討すべき」などの意見。

世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラムは、「予算要求の縮減」
学術国際交流事業は、「予算要求の縮減」。
地域科学技術振興・産学官連携について、
必要性を認めないわけではないが、国としてはやる必要がなく「廃止」。
理科支援員等配置事業は、「廃止」。
日本科学未来館は、「予算要求の縮減」。

http://scienceportal.jp/news/review/0911/0911171.html

中高年の体の硬さと動脈の硬さに相関関係あり

(日経ヘルス 11月10日)

前屈したときの体の硬さに、中高年以降の動脈の硬さが
表れていることが、国立健康栄養研究所などの
研究グループによって明らか。
動脈が硬いと、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高い。

男女526人が対象。
床に脚を伸ばして座り、前屈をして指先の位置から柔軟性を調べた。
動脈の硬さは、腕と足首で「脈波伝播速度(PWV)」を測定。
PWVは、動脈の硬さの指標で、動脈が硬いほど速度は速くなり、
正常値は1400m/秒以下。

年齢層別に、体の柔軟性によって2群に分け、
どの年齢層でも、体が硬く柔軟性が低い群の方が
PWVは速く、動脈が硬かった。

40~59歳と60~83歳では、柔軟性とPWVの値に負の相関があり、
体が硬い人ほど、動脈も硬いことが示された。
20~39歳で、柔軟性が高い群の平均は47cm、低い群は32cm、
40~59歳では各々46cm、31cm、60~83歳は41cm、26cmと、
年齢が上がるほど柔軟性は低かった。
60~83歳で柔軟性が低い群の平均PWVは1485m/秒と速く、
正常値以上。

Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol.; 297,1314-1318, 2009

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091110/104795/

2009年11月19日木曜日

動物と生きる(8)解剖体験 未来への糧

(読売 11月7日)

カエル解剖などを体験し、動物と生きる将来を考える
子どもや若者がいる。

「心臓がぴくぴくしている」、
「これが肝臓、これが胃、黄色いのは脂肪だね。よく観察してごらん」、
「あ、動いた、ごめーん」、
「それは脊髄反射だよ」

静岡大学理学部で行われた「動物実習体験」で、
公募で集まった中高生ら男女20人が、
アフリカツメガエルの解剖に挑戦。
1日体験は、日本動物学会の特別企画。
実際に動物に触り、組織標本などを観察し、先端の研究を行う
大学の雰囲気も味わってもらうのが狙い。

同理学部修士1年の佐藤脩示さん(23)ら学生14人がそばに控え、
説明や指導を担当。
中高生らはカエルの解剖のほか、ウサギやラット、マウスなどの
実験動物を観察したり、電子顕微鏡で細胞を見たりした。

中学2年の水沢雅子さん(13)は、「実験のため、
動物が犠牲になるのに罪の意識はあるけれど、
今の医療、今の生活が成り立つためと思う」

「電子顕微鏡で、細かいリボソームまで見えたのはすごい。
将来は獣医師などの道に進みたい」、高校2年の角田真帆さん(17)。
加藤学園暁秀高校の久保田真教頭(59)は、
「学校ではなかなかできない貴重な機会」

田中滋康・同大教授(58)は、「興味を持ってもらい、
将来の研究者が育つとうれしい」と期待。

同学会は、全国大会の際、
高校生の生物研究ポスター発表を実施。
岩手、熊本、新潟、岡山などから20校の生徒が、研究成果を説明。
カタツムリの研究を発表した大津拓紘君(18)
(神奈川県立西湘高校3年)は、「大学の先生から助言をもらえて刺激に。
将来は、再生医療の道に進めれば」

将来の研究者や獣医師などを目指す大学生たちの動きも活発。
富山大学で開かれた日本野生動物医学会富山大会では、
同学会学生部会が、台湾や韓国の学生らを招いた集会
「東アジアの学生との交流」などを企画。
興味のある動物や国ごとの動物園の事情の情報交換などを行った。

学生部会は、帯広畜産大学、麻布大学、北里大学など
獣医学科を持つ全国の16大学から、学会登録者だけで
約180人が集まり、野生動物の研究に関する情報を交換。

部会代表の日本大学獣医学科4年鈴木裕さん(23)は、
「特に野生動物については実践できることは限られ、
現実を知って対処するためにも交流は重要」

動物と生きる未来への模索は、今後も続いていく。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091107-OYT8T00267.htm

小さなボールが環境への大きな脅威に ゴルファーに警鐘

(CNN 11月15日)

ゴルフ場などでなくなったり捨てられたりしたボールは、
自然に分解されるまでに100―1000年もかかり、
その過程で大量の有害物質を放出するとの研究結果が、
デンマークで発表。
ゴルフボールによる環境汚染については、
英国などでも懸念が強まっている。

国内150カ所余りのゴルフ場などで構成する
デンマーク・ゴルフ連盟は、ゴルフボールが環境に及ぼす
影響を調べるため、いくつかの実験を実施。

その結果、土の上で分解されるゴルフボールから、
長い年月のうちに大量の重金属などが放出される。
ボールに注入される合成ゴムから、危険なレベルの亜鉛が検出。
水中に沈めると、土壌を通して周囲の動植物に害を及ぼす。

同連盟ゴルフコース管理部門の
トーベン・カストラップ・ベテルセン氏は、
「ゴルフボールによる環境汚染は、これまで研究されてこなかった」
今後は、問題の全ぼうを探るため、米国の環境専門家らと協力して
さらに実験を行う」

英スコットランドでは、北部ハイランド地方で、
「ネス湖の怪獣」が存在する証拠をつかもうと調査していた潜水艇が、
湖底を覆い尽くす何十万個ものゴルフボールを発見。
地元住民や観光客らが、湖をゴルフ練習場に使っていた。
スコットランド議会のパトリック・ハービー議員は、
「(アポロ14号のシェパード船長がゴルフのパフォーマンスをした)
月面からネス湖の湖底まで、ゴルフボールは
人間がへんぴな場所に捨てるごみの代表例だ

湖や林で、途中まで分解しかけたボールを別の場所へ移しても、
環境破壊がさらに進むだけという場合が多い。
ハービー議員はゴルフ愛好者らに、
「問題を解決するため、ボールを見失わないようにするか、
環境への負担が小さい生分解性のボールをしようするか」

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200911150013.html

ネギ抽出物にインフルエンザウイルスの増殖抑制効果

(日経ヘルス 11月10日)

佐々木食品工業(豊後高田市)は、ネギ抽出物に
インフルエンザウイルスの増殖抑制効果があることを明らかに。
富山大学大学院医学薬学研究部の林利光教授との共同研究。

マウスに、A型インフルエンザウイルス(H1N1)を鼻から感染、
ネギの熱水抽出物をウイルス感染の1週間前から
感染の1週間後までの2週間、経口投与。

その結果、ネギ抽出物を投与したマウスでは、
比較対照群である水を投与したマウスに比べて、
気道におけるウイルスの増殖を抑制する高い効果が。

ウイルスの体内への侵入を阻止するために、
気道の粘膜で産生される分泌型IgA抗体の量と、
血中や気道におけるウイルスを中和する抗体の量が、
いずれも顕著に増えていた。

ネギに含まれる機能性成分として、ツンとする刺激臭をもたらす
硫黄化合物のアリシンが知られている。
ネギが属するユリ科の植物であるタマネギ、ニラ、ニンニクなど
にも含まれているが、その中ではネギの含有量は低かった。

今回の研究の有効成分は、この硫黄化合物のアリシンとは別。
「細胞実験で、ネギ抽出物の中で、特に高分子の水溶性成分に、
強いウイルス増殖抑制効果があることを確認。
硫黄化合物以外のものが有効成分」(同社研究室の高野美耶さん)。

今回、細い葉ネギと呼ばれる品種を用いているが、
「白ネギ(長ネギ)でも同様の効果があること確かめている」

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091110/104792/

所得格差で2万人超が死亡 日本でも健康に悪影響か 15カ国で154万人と推定

(2009年11月11日 共同通信社)

所得格差の拡大につれ、人が早く死ぬ危険が高まり、
格差が原因で1年間に増える死者数(過剰死亡)は、
日本で約2万3千人、日米など15カ国で154万人。

推定結果を、山梨大医学部の近藤尚己助教らと
米ハーバード大などの研究グループが英医師会誌に発表。

所得格差が大きくなると、社会的ストレスが強まって
健康に影響することは知られていたが、
世界中で多くの人命を奪っていることが示されたのは初めて。
近藤さんは、「健康対策の面からも、格差問題を考えるべき」。

グループは、多数の論文の内容を分析して結論を導く「メタ分析」で、
所得格差と健康に関する世界中の論文のうち、
信頼性の高い31の論文を解析。
約6千万人が調査対象。

格差の指標となるジニ係数が0・3を超えて格差が大きくなると、
個人の所得水準や年齢、性別にかかわらず、
健康への悪影響が出始めていた。
ジニ係数が、0・3から0・05上がるごとに、
早期死亡の危険が9%ずつ増加する傾向。

経済協力開発機構(OECD)加盟の30カ国のうち、
ジニ係数が0・3以上の国は日本を含め15カ国。
15カ国のジニ係数から、所得格差による各国の過剰死亡を
推定すると、米国が88万人と最多で、
ジニ係数が高いメキシコやトルコが続いた。
日本は、約2万3千人と4位で英国のほぼ2倍。

研究グループの山縣然太朗・山梨大教授は、
「悪影響を受けるのは、貧困者だけではない。
格差社会で余分のストレスを受けて、すべての人々に
生活習慣病やうつ病などのリスクが高まるのではないか」

◆橋本英樹・東京大大学院医学系研究科教授(臨床疫学)の話

多くの論文の結果を、メタ分析できれいにまとめていると評価。
ジニ係数が0・3以上で、健康影響や死亡が増加する傾向も
多分正しい。
政策に訴える力はあるが、医療や社会経済制度などの違いも
反映するので、ジニ係数だけから所得格差による
過剰死亡数まで出せるか、議論は必要。

▽ジニ係数

所得格差の指標。
完全に平等なら「0」、1人がすべての富を独占すると「1」。
0・2~0・3が目安として、「通常の配分型」。
0・3以上で「格差が広く意識されだす」、
健康への悪影響が出始めるという今回の結果と符合。
総務省の全国消費実態調査によると、
日本は長く0・3以下、2002年に0・308、04年に0・314に増え、
OECD加盟国の平均を超えた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/11/110967/

2009年11月18日水曜日

炭水化物抜くと憂うつに ダイエットで精神面に影響

(2009年11月13日 共同通信社)

パンなど炭水化物を減らす「低炭水化物ダイエット」を続けると、
気分が憂うつになったり、怒りっぽくなったりする-。

オーストラリアの研究チームが、
米医学誌「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」に発表。

炭水化物を極端に減らすダイエットは、腎臓障害をもたらすなど
問題点が指摘、精神面にも影響を及ぼすことが分かった。

研究は、24~64歳の肥満の人106人を対象、
(1)肉、乳製品などタンパク質や脂質を中心にし、
パンなど炭水化物を抑える「低炭水化物」組
(2)炭水化物を多く取る「高炭水化物」組
の二つの減量グループに分け、体重や精神状態を1年間調べた。
カロリー摂取量は同じ。

両グループとも、1年後の体重減少は平均13・7キロで変わりないが、
精神状態では、「高」組にダイエット前と比べ、改善がみられ、
「低」組は気分の落ち込みや不安を示す。

炭水化物を多く含む食品が、感情をコントロールする
脳内物質に、良い作用を及ぼすのが一因では。

Arch Intern Med. 2009 Nov 9;169(20):1873-80.
Long-term effects of a very low-carbohydrate diet and a low-fat diet on mood and cognitive function.
Brinkworth GD, Buckley JD, Noakes M, Clifton PM, Wilson CJ.

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/13/111095/

たった1個の遺伝子の違い、人間に高度な言語能力?米大学発表

(2009年11月12日 読売新聞)

たった1個の遺伝子の違いが、チンパンジーにはない
高度な言語能力を人間にもたらす、大きな原動力となった
可能性を、米カリフォルニア大などが突き止めた。

この遺伝子は、他の様々な遺伝子の働きを調節、
脳で言語能力をつかさどる部分の発達にも影響。
12日付の英科学誌ネイチャーに発表。

「FOXP2」という遺伝子で、
その異常は遺伝性の言語障害を引き起こす。
人間とチンパンジーでは、この遺伝子で作られる
たんぱく質がアミノ酸2個分だけ異なる。

人間の培養細胞で、両者のFOXP2を働かせてみたところ、
人間のFOXP2はチンパンジーに比べて、
61個の遺伝子を活発化、逆に55個の遺伝子の働きを
抑えることが分かった。
実際の脳組織でも、こうした働きの違いを確認。

これらの遺伝子が、神経回路の構築などを通じて、
文法の理解や発話の能力に影響する。

人間とチンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)の差は、
わずか1・2%、それが知性や言語能力の大きな違いを
どう生み出したのか、これまで謎だった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/12/111042/

肥満が「がん」誘発、年間10万人以上と 米研究

(CNN 11月6日)

肥満で誘発された「がん」を発症する患者が、
年間10万人を超えているとの研究報告を、
米国がん研究財団(AICR)が発表。
肥満とがん患者の数を、具体的に調査した研究は初めて。

肥満と関係が深い7種類のがんを調べ、
肥満によって引き起こされたと考えられる実際の症例数を計算。

その結果、子宮内膜がんの49%が、
脂肪過多によって引き起こされていた。
食道がんの35%、脾臓がんの28%、腎臓がんの24%、
胆のうがんの21%、乳がんの17%、大腸がんの9%が、
それぞれ肥満が原因だと見られる。

過多の脂肪がなぜ、がんリスクを高めるかという理由は、
科学的には解明されていない。
脂肪組織が作る女性ホルモン「エストロゲン」量の増加や、
脂肪が増加することにより活性酸素で酸化性ストレスが生じることが
原因ではないか。

米国がん協会(ACS)も、今回の調査報告を評価。
肥満とがんの関連研究については、まだ最初の一歩を
踏み出したばかりだが、人々が自分の体を気遣った食生活を
送ることが必要。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200911060007.html

肥満男性、30%切る 3年ぶり、健康志向高まり

(2009年11月10日 共同通信社)

20~60代男性のBMI指数が25以上の割合が、
2008年は29・6%、3年ぶりに30%を下回った。
厚生労働省の国民健康・栄養調査。
40~60代女性の肥満者は21・7%、前年より1・3ポイント下降。

厚労省は、「00年以降の男性の肥満割合は、
それ以前の5年間に比べ、増加傾向にあるが、伸び率は鈍化」。
運動習慣のある人は男性33・3%、女性27・5%、
男女とも5年前より4ポイント近く上昇、
国民の間で健康志向が高まりつつある。

男性の肥満者が年代別で最も多いのは、40代で35・9%。
50代(32・4%)、30代(29・5%)。
女性の肥満者は、70歳以上の26・8%が最多。

「自分が太っている」、「少し太っている」と考える男性は、
10年前より4・0ポイント上がり、47・0%。
体重を減らそうと思う人は、男性で40・5%、女性51・6%、
肥満男性の約3割は、「減らそうと思っていない」と回答。

40~74歳の中高年男性のほぼ半数が、
メタボリック症候群の該当者か、予備軍。
女性は約2割、男女とも07年調査と同じ水準。

厚労省は、腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、
高血圧、高脂血、高血糖の二つ以上に当てはまる人を、
メタボリック症候群の該当者、一つの場合は予備軍。

◆国民健康・栄養調査

国民の身長・体重、腹囲や食品の摂取状況、飲酒や喫煙、
運動習慣など、健康面全般に関する厚生労働省の調査。
毎年実施し、生活習慣病対策などの基礎資料。
対象は、全国各地から抽出した3千~4千世帯。
1952年、「国民栄養調査」として始まり、健康増進法施行を機に、
2003年から現在の名称。
質問内容は、喫煙のように毎年継続調査する項目、
社会状況に応じて数年おきに実施する項目。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/10/110832/

2009年11月17日火曜日

電気刺激によって喘息発作を緩和

(2009年11月13日 Medscape)

喘息患者が、突然の重症発作中に一息つくのに役立つ
ショッキングな方法が発見。
頸部の皮下に、微弱な電気刺激を与える。

米国の研究者らが、従来の薬剤が無効の急性喘息発作中、
電気刺激を用いて安全に気道を開放できることを見出した。
米国には現在、約2300万人の喘息患者がいる。

被験者は、中等症から重症の喘息発作で救急治療室を受診、
吸入薬と強力な抗炎症薬(ステロイド)を使用しても改善せず、
意識があり反応を示す、26~58歳の成人患者4例。

患者が深く息を吸った後、肺から吐き出す空気の量を測定した
肺機能検査のスコアが70%以下の場合、治療を無効。
これが努力呼気量、FEV
1秒間の努力呼気量がFEV1。

電気刺激技術は、患者が覚醒した状態で行われる低侵襲手技。
麻酔薬を頸部に投与後、医師が頸動脈と迷走神経の
周辺組織まで、電極を皮下挿入。
超音波検査のライブ画像で、電極の位置を確認しながら挿入。
3時間、1~12ボルトの弱い、連続的な電気パルス刺激を与えた。

症状が改善するか、刺激が筋肉の痙攣、不快感を誘発するまで、
電圧を上げた。
刺激前に測定した呼吸機能の値を、刺激中30分おきに測定した値、
刺激の完了後に測定した値と比較。

30分間治療を行うと、患者は大きく息を吸った後、
より多くの空気を肺から吐き出すことができた。
FEV1スコアは、治療終了後30分間、上昇した状態を維持。

電気刺激は、重症喘息発作時に薬剤を使用せず、
気流に依存しない方法で気道を開放する方法となる可能性がある。

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/11/13/111114/

歴史は3千年、効能は多岐 "本場"のアーユルベーダ

(2009年11月10日 共同通信社)

少なくとも3千年の歴史を持つといわれる
インド伝統医療「アーユルベーダ」。
サンスクリット語で、「生命科学」の意味を持つこの医療は、
病気だけでなく美容やストレス解消にも効果。
各種ハーブから作る薬を用い、オイルマッサージなどによって治療。

本場インドの首都ニューデリー郊外に、
本格的なアーユルベーダ治療院がある。
もともとはジャイナ教の僧侶らの修行道場(アシュラム)だったが、
道場に引き取って世話をしている孤児の生活費などを捻出するため、
1995年に治療院を始めた。
評判が広がり、日本人観光客らも治療に訪れる。

現在は、3~18歳の約30人の孤児が生活、
治療の説明を受けていると、小学生ぐらいの子供たちが、
「ナマステ(こんにちは)」と笑顔で集まってきた。

簡素な個室に案内され、服を脱いで治療台でうつぶせになって
待っていると、セラピストのソニさん(20)が入ってきた。
持っているのは、鉄のフライパンとガスボンベ。

ハーブなどを布で包んだ作りたての「ハーバルボール」と、
オイルに熱が加えられると、甘酸っぱいハーブの香りが室内に広がる。
市販のオイルより若々しい植物の香りがより強い。
ここで使うハーブなどの成分は、「企業秘密」。

リズミカルな動きで背中から肩、首にハーバルボールを押し当てながら、
オイルを肌に浸透させていく。
熱いと感じる時もあるが、30分もしないうちに体がじんわり温まり、
いつの間にか眠ってしまった。

治療が終わると、血のめぐりが良くなり肩こりが和らいだ気がする。
「即効性はないけれど、治療を重ねれば、
あらゆる病気やけがに効果がある」と、ソニさんが再来院を勧めた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/10/110834/

中国、深刻な高齢化 家族観も急激に変質 「大型サイド」

(2009年11月6日 共同通信社)

中国は、生活水準の向上や一人っ子政策の影響で、
急速に高齢化が進んでいる。

政府の社会保障政策は、医療や失業が優先で、
高齢者対策まで十分に手が回らず、経済発展とともに
伝統的な家族観が崩れ始めたことも事態を深刻化。

中国は、『未富先老』(豊かになる前に高齢化社会になる)で、
先進国になってから高齢化した日本とは事情が違う」

日中韓首脳夕食会。
胡錦濤国家主席が、鳩山由紀夫首相らに語った話題は
高齢化問題に集中、指導部が問題を重視している。

65歳以上の人口は1億956万人(2008年)、
総人口の8・3%を占め、国連基準で高齢化社会にある。
先進国は、1人当たり国内総生産(GDP)5千~1万ドル
(約45万~約90万円)レベルで高齢化社会入りするが、
中国が高齢化に突入した00年の1人当たりGDPは
900ドルに満たなかった。

人口は、30年代半ばにピークの約15億人に達し、
以降は高齢化が加速、生産力にも影響を与えると懸念。

北京市西城区の高齢化モデル地域の住宅街にある
公営老人ホーム「月壇街道敬老院」。
「子どもは仕事で忙しくて、私は独り暮らし。
食事もつくれなくなったので、ここにきた」と
入居中の姚同春さん(79)。

北京市の65歳以上人口の比率は13%で、
上海と並んで全国トップクラス。
37人が入居しているが、30人以上が入居待ちの状態。
入居料は、月約2千元(約2万6千円)。

中国は、「孝行」を尊ぶ伝統が根強く、憲法も子どもによる
父母の扶養義務を規定。
北京市は、「9064」と呼ぶ高齢者福祉戦略モデルを推進。
高齢者の90%を家庭ケアで対応し、6%を地域で、
4%を施設でケアするという数値目標。

民間で介護ビジネスを手掛ける女性は、
「急速な市場経済化に伴う家族観の変質で、
個人主義が広まっており、施設ケアの比率4%は少なすぎ」

高齢者のうち、独居や老夫婦だけの世帯は都市部では既に50%超。
30年には、90%に達するとの予測。
北京でも、富裕層を対象にした「高齢者マンション」が建ち始めた。

「中国では医療、年金保険の次は介護保険も必要との議論が
専門家の間で始まり、日本の動向に注目」と
南開大学(天津市)の出和暁子講師(社会福祉学)。

中国は、医療保険の普及を急いでいる段階。
年金保険制度も都市部だけで、人口の6割が住む農村部では
まだ試行段階。介護保険は先の話。
貧困層支援団体の女性は、「農村部は若者が都市に流出し、
残された老人であふれている。
老人ホームもあるが、不衛生で環境は劣悪」と
高齢者問題の深刻さを訴えている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/6/110618/

2009年11月16日月曜日

スポーツ政策を考える:出雲輝彦さん 国際競技力、指標示せ

(毎日 11月7日)

◇東京成徳大教授(スポーツ政策学)出雲輝彦さん

政権交代は、日本のスポーツ政策を転換するチャンス。
私が最も関心を寄せているのが国際競技力
で、
日本は1964年の東京五輪をピークに長期低落傾向が続いていた。
2004年のアテネ五輪では、女子選手らの活躍で
東京五輪をしのぐ成績を残したが、
その後のトリノ五輪や北京五輪、国際大会を見ると、
必ずしも日本の国際競技力が上昇に転じたわけではない。

自公政権下で、文部科学省を中心に
日本オリンピック委員会(JOC)や日本体育協会が
さまざまな取り組みをしてきたにもかかわらず、
結果が出なかったのは、日本の競技スポーツが
目指すべき方向が不明確だったから。

まず、日本の競技スポーツのあり方、理念を掲げることが
政策転換のカギ。
重要なのは、国際競技力をどう定義するか。
今まで、五輪や世界選手権での金メダル数や
メダル獲得率だけを指標に論ずる傾向。

国際経営開発研究所(IMD)が、300以上の尺度をもとに
国際競争力ランキングを発表しているように、
メダル数だけでなく、多数の尺度を取り入れて、
その国のスポーツの総合的な国際競技力を示す指標を
早急に作りたい。

カテゴリーごとにポイント化し、レーダーチャートを作る。
現状が把握でき、政策課題が明確になる。
球技系と採点系が強いとか、個人系が弱いとかが分かり、
日本の目指すべき方向が見えてくる。
メダル有望競技に特化するのか、
幅広く競技スポーツを振興させていくのか。

これが土台となって数十年後、日本は国際的な地位を
占めることができるだろうし、国際舞台で活躍する日本人が
多くの競技で増えてくれば、日本独自のあり方を
世界に示すことができる。

日本の人口は少子化の影響もあり、2050年には
4000万人も減るという統計。
人口減少は、国力の低下につながる。
国内総生産(GDP)だけでなく、産業も経済も停滞。
その時、諸外国から尊敬され、国際的な発言力を持つためには、
人口8000万~9000万人に見合った国家像、制度、仕組みを
今から整え、あらゆる分野での国際競争力を
できるだけ高めておくのが重要。

スポーツは自主的、自発的に行うもので、国が関与すべきではない。
文化・芸術の中でも、スポーツの世界的な広がり、存在感、
影響力は大きい。
スポーツは、国力の一つの要素であり、
向上可能な国際競争力として、日本の将来にとって
重要だという明確なメッセージを伝えれば、
国民の了解は得られると思う。
==============
◇いずも・てるひこ

1964年生まれ。筑波大卒業。
主な研究テーマは国際競技力(ICS)指標の開発と応用、
カナダのスポーツ法と政策。日本体育・スポーツ政策学会理事。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/11/07/20091107dde035070033000c.html

スポーツ政策を考える:間野義之さん 民間の活力導入せよ

(毎日 10月24日)

◇早稲田大教授(スポーツ政策論)間野義之さん

日本のスポーツ政策は遅れている。
科学的なエビデンス(根拠)を欠いたまま、
自民党や民主党も含め、みんな印象や経験でものを言っている。
スポーツが医療費削減につながるというが、
データは少なく、実証されていない。
スポーツをすると、どういう効果があるのか、
エビデンスに基づいたスポーツ政策が求められている。

アンケートをとると、成人の4割から5割が、
スポーツをしたいができない、と回答。
早稲田スポーツビジネス研究所の調査では、
GDP(国内総生産)に占めるスポーツ産業の割合が、
日本は他の先進国に比べて低い。
2003年は約9・6兆円、約1・9%。
国民のニーズがあるにもかかわらず、サービスが不足。

音楽や芸術、旅行、カラオケなど、他の娯楽との競争に勝つために、
どうやって民間企業の活力を導入していくか。
ニュー・パブリック・マネジメントという考え方に立てば、
国民にとっていいことで国民が望むのであれば、
民間企業のように国民を顧客ととらえ、効率的で質の高い
サービスを提供して、国民の満足度を向上させていく。
その一つが、公共スポーツ施設の管理運営を民間に任せること。

スポーツには三つの間、時間、空間、仲間が必要。
時間が限られている中で、空間と仲間をどうやって整備していくか。
空間と仲間をマネジメントできる人材の養成が急務。
日本体育協会や日本サッカー協会が取り組んでいるが、
合わせても年間60人程度。
2010年までに、全市区町村に総合型地域スポーツクラブを作る、
という文部科学省の目標に対し、圧倒的に足りない。
早期に大量に育成するのが政策課題。

昨年1年間留学した英国では、スポーツは生活に根付き、習慣化。
今の日本では、草の根から自発的に生まれてくるのを
待つ余裕はないし、条件も整っていない。
国がある程度、おぜん立てをしないといけない。
その場合、国の持ち出しは施設整備などハード中心にして、
運営は住民が自主自立で行うのが良い。

愛知県半田市の成岩スポーツクラブのように、
公共施設を活動拠点にして、NPO法人格を持った
総合型クラブが自主自立の運営をする。
そこから将来トップアスリートが誕生する。
そんなケースを増やしていく。
校庭の芝生化も大事だが、ばらまきではなく、
効果が検証されたモデルに対して重点支援する。
それを見て、隣の校区や市町村がほしいと思うようなものを
作ることが大事。
==============
◇まの・よしゆき

1963年生まれ。横浜国立大卒業後、東大大学院修士課程、
91年、三菱総合研究所入社。2002年から早大へ。
文科省、地方自治体、競技団体の委員や理事。
著書「公共スポーツ施設のマネジメント」など。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091024dde035070021000c.html

男性の喫煙率、過去最低 36・8%、5年で10ポイント下降

(2009年11月10日 共同通信社)

習慣的に喫煙している男性の割合(喫煙率)が、
2008年は36・8%、1986年の調査開始以降で
最も低くなったことが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」。
女性は9・1%、1割を下回ったのは2001年以来。

全体の喫煙率は21・8%、5年間で5・9ポイント下降。
男性は、10・0ポイントも低下。
喫煙者のうち、「禁煙したい」と考えるのは
男性28・5%、女性37・4%で、男性は5年前に比べ3・9ポイント上昇。

厚労省は、「諸外国に比べると、喫煙率はまだ高いが、
たばこが健康に悪影響を与えることへの認識が定着しつつある。
成人識別カードtaspo(タスポ)導入も影響」。

調査は、無作為に抽出した約3800世帯を対象。
喫煙率に関しては、約8千人からの回答を分析。

男性の喫煙率は、調査開始時に59・7%、下降傾向が続き、
最低となったのは05年の39・3%以来3年ぶり。

年代別で喫煙率が最も高いのは、男性が40代で51・9%。
次いで30代(48・6%)、20代と50代(いずれも41・2%)。
女性は、30代が18・0%で最も高く、20代(14・3%)、40代(13・4%)。

禁煙を試みたことのある喫煙者は男性52・1%、女性は57・0%、
厚労省は「5年前と大きな変化はみられない」。
20歳未満で喫煙を始めた人の割合は、
男性29・1%(03年は43・8%)、女性16・5%(03年は26・9%)で
5年前より大きく減った。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/10/110831/

脱「仕事メタボ」で筋肉質に

(日経 10月30日)

長時間働いている割に、思うような成果をあげられない——。
こうした状況を、「仕事メタボ」と名づけたのが、
産業能率大学総合研究所の新井幸子プロジェクトリーダー。
どうすれば、仕事メタボから脱却できるか?

大手食品メーカーの営業担当のAさん。
スーパーへの新商品の提案書作成、在庫確保、
ライバルメーカーの動向視察など、仕事が次から次へと舞い込む。
時間内には終わらないため、サービス残業。
Aさんは疲れ切り、成果も出ず、仕事へのやる気も失ってしまった。

仕事メタボから脱する秘訣は、
「生産性の高い仕事の進め方」を実践すること。

4つのポイントの頭文字を並べた言葉、「ECRS(イクルス)」
まず、「E=エリミネイト(排除する)」
すべての仕事をまんべんなくやろうとしたら、
いくら時間があっても足りない。
優先順位の高い仕事に注力し、そうでない仕事は後回し。
ビジネスパーソンにおける「選択と集中」。

仕事の優先順位は、重要度と緊急度で判断。
Aさんの例では、大口顧客であるスーパーが関係していたり、
納期が迫っていたりする仕事を、
重要かつ緊急性が高いと判断、優先的に着手。
ライバルメーカーの動向視察などは、時間ができたときに処理。

2つめのポイントは、「C=コンバイン(結合する)」
一緒にできる仕事を、可能な限り同時に片づけること。
仕事には、共通性の高いものがある。
これらを同時に進めれば、時間短縮が図れる。

Aさんは、在庫確保に、顧客ごとに手配するのではなく、
全体の必要数を計算してから一遍に取り掛かる。
スーパーB社に出した企画書のうち、ほかにも転用できる部分が
あれば、百貨店C社への企画書にも採り入れる。

後回しにできなかったり、ほかと一緒に片づけられない
仕事ばかりでは、どうすればよいか?
ポイントは、「R=リアレンジ(交換する)」
やり方を変えるのも大切だが、ここでは人を替える方が重要。

ライバルメーカーの動向視察は、マーケティングが得意な
同僚のDさんに頼んだり、商品のセールスポイントのアピールの
仕方を商品企画部門のEさんに考えば、Aさんの負担は減る。
自分が得意な分野であれば、人の仕事を引き受ける。
企画書作りに自信があるなら、同僚の代わりに用意してあげる。
こうすれば、職場全体の生産性向上にもなる。

最後のポイントが、「S=シンプリファイ(単純化する)」
定型化された仕事のマニュアルを作ったり、
資料のひな型(フォーマット)を用意。
その都度考えず仕事を進められ、時間や労力を節約できる。

在庫確保なら、必要量をはじき出すための計算式を作る。
企画書でも、プレゼンテーションの流れに沿ったひな型があれば、
ムダな労力をかけずに済む。

「ECRS」を実践するには、流されるまま仕事をしていてはダメ。
事前に段取りを決めておくことが大切。
段取りの手順は、
(1)ゴールを明確にする
(2)必要な作業を洗い出す
(3)作業工程図を描く——。

ゴールを明確にするには、
「3W1H(何のために、何を、いつまでに、どのように)」で整理。
ゴール達成への作業を過不足なく洗い出し、
どう進めるのかを図にまとめる。

どの仕事を排除(後回し)すればよいかがわかる。
統合した方がよい、誰かに代わった方がよい仕事も浮かび上がる。
何回か繰り返さなければならない仕事があれば、単純化しておく。
こうした工夫が、生産性向上に役に立つ。
仕事の進め方をコントロールし、効率をあげる手法は数多くある。
コントロールの手法を身につけただけでは不十分。

仕事の進め方をモニタリング(監視)し、どこに問題点があるか、
はっきりさせることが必要。

モニタリングには、どのような時間で、
何の仕事を片付けたのかを、数週間にわたって記録。
自分の記録を分析すると、「こんな無駄なことをやっていたのか」、
「こんなことに多くの時間と労力をかけていたのか」と、問題点に気づく。
気づいたことを改善ポイントにし、様々なコントロール手法を駆使する。
モニタリングとコントロールが車の両輪のように機能すると、
仕事メタボから脱出できる。

◆あらい・さちこ
2000年産業能率大学に入職、社会人教育事業に携わる。
人的資源管理や教育体系構築などの調査・研究、
多くの企業や公共団体にコンサルティング。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz091106.html

2009年11月15日日曜日

クローズアップ2009:トヨタ、F1撤退 メーカー参戦、色あせた意義

(毎日 11月5日)

トヨタ自動車が、F1世界選手権からの撤退を正式に表明。
昨年末、ホンダがF1、富士重工(スバル)とスズキが
世界ラリー選手権(WRC)から撤退、
四輪モータースポーツの世界選手権から、
日本メーカーが完全に姿を消す。
世界不況や、ハイブリッドカー(HV)のヒットに象徴されるエコ志向、
若者のクルマ離れ……。
逆風の中、日本のモータースポーツは、かつてない冬の時代。

◇巨額経費、人気も低下

トヨタのF1撤退の理由が、「今の経済状況」(豊田章男社長)
にあるのは間違いない。
自動車メーカーにとって、年間数百億円もの経費がかかる
「金食い虫」であるF1の魅力が、欠けてきているのも確か。

F1は近年、コスト削減を目的にハイテク技術を締め出す傾向。
エンジンは開発が凍結され、技術力をアピールする場としての
魅力は急速に薄れつつある。
興行的にも、08年のシンガポール・グランプリ(GP)で、
ルノーチームがエースドライバーに勝たせるため、
セカンドドライバーにわざと事故を起こさせた事件など、
スキャンダルが続発。

今季は、コスト削減案を巡り、主管する国際自動車連盟(FIA)と
チーム側の間で分裂騒ぎが起き、F1のブランドイメージは失墜。

日本メーカーが、F1やWRCに参戦する理由の一つは、
モータースポーツ人気の高い欧州での知名度アップ。

その点では、トヨタも目的を達した部分があるが、
日本でのモータースポーツ人気は低下傾向。
フジテレビが、87年から中継しているF1日本GPの視聴率は、
アイルトン・セナ(ブラジル)やアラン・プロスト(フランス)が活躍していた
91年に最高の20・8%、今年は5・1%と過去最低。
日本自動車連盟(JAF)によると、モータースポーツ参加に必要な
競技用免許の取得者は、92年の8万人超をピーク、
08年は約4万7000人と最盛期の約4割減。

国内の自動車市場も、スポーツ性よりエコ性重視。
幕張メッセで開かれたモーターショーは、
ハイブリッドや電気自動車などエコ技術一色。
かつてショーの華だったレーシングカーなどの展示は、
ほとんど見られなかった。

豊田社長は、「地域に根ざしたモータースポーツ活動は続ける。
車を鍛え、人を育てる自動車文化の一つにしたい」、
少なくとも国内では、モータースポーツのあり方、
メーカーとのかかわり方を見直す時期に。

トヨタのF1チーム代表を務める山科忠専務取締役は、
今後の活動について、「エコカーだけのレースでワクワクするか。
金をかけず、一般人も参加できる中に解決策があるのでは?」

◇エコカー開発に集中

豊田社長は、「ファンのことを考えると身につまされるが、
今は商品を軸とした経営に資源を集中すべきだと考えた」

08年のホンダ撤退後も、「12年まで継続」の旗を降ろさず、
悲願の初優勝を射程圏内にとらえるところまでチームは成長。
国際C級ライセンスを持ち、自らもレースに出場してきた
豊田社長の言葉の端々に悔しさがにじむ。

今年6月に就任した豊田社長の「公約」は、
09年度で2期連続となる赤字決算から、11年3月期に脱却。
「プリウス」など、HV人気で新車販売が復調傾向にあり、
09年9月連結中間決算で、営業損失は従来予想の
4000億円から大幅に縮小する見通し。
もうけの大きい高級車、大型車の不振が響き、
巨額赤字の解消にはほど遠い。

「経営資源を次世代環境車に投入する」として、撤退したホンダは、
レーシングカーの開発を担当していた約400人の技術者の
ほぼ全員を、HV関連技術などの開発にシフト。
今年2月発売のHV「インサイト」などを持つエコカー部門を強化。
「走り」のイメージから、エコカーなど環境技術を中核とする
企業への転換を進めるホンダは、
10年3月期の営業利益を1900億円と予想。
業績回復でトヨタに先んじている。

「100年に1度の大変革期」(豊田社長)を迎えた
新車市場を勝ち抜くには、資金や人材など経営資源を
エコカー開発に集中しなくてはならない。
中間決算が固まるにつれ、トヨタ社内では、
「F1を続けていては、株主に説明がつかない」との声が強まり、
F1撤退をこれ以上、遅らせるわけにはいかない状況。
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◇F1世界選手権

F1は、フォーミュラワンの略称。
国際自動車連盟(FIA)が主管する世界最高峰の自動車レース。
1人乗りのフォーミュラカー(四輪が露出したタイプのレーシングカー)
で競われ、今季のマシン規定では排気量2.4リットルの
V8エンジンを積み、最大出力は900馬力以上。
最高時速は300キロ超。
1950年に始まり、今季は16カ国で全17戦が開催。
五輪、サッカーワールドカップと並び「世界3大スポーツ」。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/11/05/20091105ddm003050098000c.html

(岩手)県立病院 医療クラーク増員

(2009年11月7日 読売新聞)

県立病院の医師確保が緊急の課題となる中、
県医療局は、県立病院の勤務医の負担軽減を図るため、
医師の仕事をサポートする医療クラークを51人増員、
151人態勢に。

2010年度からの採用予定を前倒しするもので、
医療クラークが配置される20病院が、
12月から来年1月にかけて募集、採用。

県は、07年度途中から大船渡、遠野、千厩の3病院で
試験的に医療クラークを配置、08年度からは本格導入。
現在は、東和病院(花巻市)と沼宮内病院(岩手町)を除く
19病院で、100人の医療クラークが働いている。
配置状況は、中央病院(盛岡市)に14人、
中部病院(北上市)に11人など。

県立21病院と5地域診療センターの常勤医の数は、452人。
4月以降22人減り、医師不足に歯止めはかかっていない。

県立病院離れの要因の一つとなっているのが、
医師の過酷な労働環境で、現場の医師からは
膨大な事務作業の軽減を求める声が上がっている。

県医療局は、医療クラークの採用が雇用対策にもなると、
前倒しで実施することに。
2008年度から、救急病院などに医療クラークを配置した場合、
人件費を診療報酬に加算できるようになったことも、
県にとっては追い風に。

新たに採用される51人は、5地域診療センターと、
来年度から地域診療センターになる見通しの
沼宮内病院を除く20病院に配置。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/9/110810/

肥満で時計遺伝子に異常 減量すれば正常化

(2009年11月9日 共同通信社)

肥満の人は、体内時計を制御している時計遺伝子の働きに
異常があるとの研究結果を、日本大医学部などの
研究グループがまとめた。

大幅に減量すると、正常化することも確認。
メタボリック症候群や糖尿病、肥満症などの治療に結び付く成果。

同大の上野高浩准教授らは、代表的な時計遺伝子
「ピリオド1」に注目。

体格指数(BMI)が25以上の肥満男性12人(平均体重約91キロ)と、
25未満の肥満でない男性15人(同約64キロ)とを比較。

午前9時~午後9時までの遺伝子の働きを調べると、
肥満でない男性は朝が活発だったが、肥満の人は変動がない。
BMI30(体重約82キロ)から24(約63キロ)に減量した
30代男性は、遺伝子の働きが肥満パターンから
肥満でないパターンに変わった。

グループは、「肥満が原因で、遺伝子の働き方がおかしくなった。
遺伝子異常によって、内臓脂肪の蓄積が促進、
脂質や糖質の調節もうまくできなくなるのではないか」と、
遺伝子の働きを正常にする物質を研究。

時計遺伝子は、人を含む生物が24時間周期で
生命活動のリズムを刻むのに中心的な役割を果たし、
体内の脂質や糖質の調節にも関係する。
これまでに10種類以上見つかっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/9/110787/

オリエンタルランドの加賀見会長兼CEO「舞浜で第3のパーク研究」

(日経 11月10日)

世界経営者会議には、消費不振といわれるなかでも、
果敢に成長戦略を描く経営者の発言が相次いだ。
東京ディズニーリゾート(TDR)を運営する
オリエンタルランドの加賀見俊夫会長兼最高経営責任者(CEO)
そんな1人。同氏に、今後のビジネス展望を聞いた。

——2009年度下期以降の国内のレジャー需要の見通しは?

「大きく成長することはなく、横ばいになる。
様々あるレジャーの中で、テーマパークや遊園地に絞ると、
大都市と地方で差が出る。
東京や大阪はプラスだが、地方はマイナスに。
地方景気の回復テンポがにぶいからだ」

——地方のテーマパークや遊園地の生き残り策は?

「リピーターの獲得が大切で、その対策にハード・ソフト両面で
どれだけ投資できるかにかかっている。
他社のことをあれこれと言えないが、当社はスピードを重視。
いったん整備したものでも、ゲスト(入場者)の反応を見て、
必要と判断したらすぐに変更を加える。
ショーの観客から見えづらいとの指摘があったら、
次の日には座席の位置を変えるなどして対応」

——オリエンタルランドの今後の長期的な方針は?

「舞浜地区を中心に据えることは間違いない。
中身はまったくの白紙だが、東京ディズニーランド(TDL)、
東京ディズニーシー(TDS)に次ぐ、第3のテーマパークを
どうするかも長期的な研究課題。
実現させるとすれば、もちろん米ウォルト・ディズニーと組んでやる」

——舞浜地区で土地を確保できるのか?

平面駐車場を立体化すれば、いくらでも土地は手当てできる。
08年開業した東京ディズニーランドホテルも、駐車場を立体化し、
駐車台数を減らさずに土地を捻出。
第3のテーマパークの具体化はなかなか難しく、時間がかかる」

——ディズニーとは別のビジネス展開は?

今後実施する事業として、スポーツ施設など。
08年完成した『シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京』
コンセプトは、ディズニーとはまったく違い、
TDR全体としての魅力を高めている。
ゲストに足を運んでもらい、テーマパークとの相乗効果を
出すことが重要で、それはディズニーも了解」

「映画やアニメといったコンテンツビジネスへの参入は、
私の時代ではできないだろう。
興味はあるが、当社にはノウハウがなく、
マーケットの読み方が分からない。
難しいが、経験のある他社と組んで乗り出すこともあるかも」

——テーマパーク経営のポイントは?

現場と採算の両面に気を配る必要。
より良いアトラクションやショーを作ろうとする現場が強すぎると、
投資が膨らみ採算が悪化。
コストをかけなければ、魅力がなくなる。
この2つに折り合いはない。
足して2で割っても、多数決でも良いものはできない。
最終的には、経営者の責任で判断する。
現場に出てゲストの声を聞き、常にゲストに近づけるよう
感性を磨いておく必要がある」

長期的な視点で経営することも重要。
受け入れ能力を超える入場者を入れれば、その瞬間は当然もうかる。
混雑し、不快な経験をしたゲストは2度と来場しない。
当社は、年数回入場を制限している。
1年間を通じた決算は重要だが、短期的な収益については
過度に気にしないよう社員に言っている」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091109.html