2009年11月16日月曜日

スポーツ政策を考える:出雲輝彦さん 国際競技力、指標示せ

(毎日 11月7日)

◇東京成徳大教授(スポーツ政策学)出雲輝彦さん

政権交代は、日本のスポーツ政策を転換するチャンス。
私が最も関心を寄せているのが国際競技力
で、
日本は1964年の東京五輪をピークに長期低落傾向が続いていた。
2004年のアテネ五輪では、女子選手らの活躍で
東京五輪をしのぐ成績を残したが、
その後のトリノ五輪や北京五輪、国際大会を見ると、
必ずしも日本の国際競技力が上昇に転じたわけではない。

自公政権下で、文部科学省を中心に
日本オリンピック委員会(JOC)や日本体育協会が
さまざまな取り組みをしてきたにもかかわらず、
結果が出なかったのは、日本の競技スポーツが
目指すべき方向が不明確だったから。

まず、日本の競技スポーツのあり方、理念を掲げることが
政策転換のカギ。
重要なのは、国際競技力をどう定義するか。
今まで、五輪や世界選手権での金メダル数や
メダル獲得率だけを指標に論ずる傾向。

国際経営開発研究所(IMD)が、300以上の尺度をもとに
国際競争力ランキングを発表しているように、
メダル数だけでなく、多数の尺度を取り入れて、
その国のスポーツの総合的な国際競技力を示す指標を
早急に作りたい。

カテゴリーごとにポイント化し、レーダーチャートを作る。
現状が把握でき、政策課題が明確になる。
球技系と採点系が強いとか、個人系が弱いとかが分かり、
日本の目指すべき方向が見えてくる。
メダル有望競技に特化するのか、
幅広く競技スポーツを振興させていくのか。

これが土台となって数十年後、日本は国際的な地位を
占めることができるだろうし、国際舞台で活躍する日本人が
多くの競技で増えてくれば、日本独自のあり方を
世界に示すことができる。

日本の人口は少子化の影響もあり、2050年には
4000万人も減るという統計。
人口減少は、国力の低下につながる。
国内総生産(GDP)だけでなく、産業も経済も停滞。
その時、諸外国から尊敬され、国際的な発言力を持つためには、
人口8000万~9000万人に見合った国家像、制度、仕組みを
今から整え、あらゆる分野での国際競争力を
できるだけ高めておくのが重要。

スポーツは自主的、自発的に行うもので、国が関与すべきではない。
文化・芸術の中でも、スポーツの世界的な広がり、存在感、
影響力は大きい。
スポーツは、国力の一つの要素であり、
向上可能な国際競争力として、日本の将来にとって
重要だという明確なメッセージを伝えれば、
国民の了解は得られると思う。
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◇いずも・てるひこ

1964年生まれ。筑波大卒業。
主な研究テーマは国際競技力(ICS)指標の開発と応用、
カナダのスポーツ法と政策。日本体育・スポーツ政策学会理事。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/11/07/20091107dde035070033000c.html

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