2010年5月1日土曜日

スポーツ立国 第1部 支援(2)選手強化 企業依存の限界

(読売 4月23日)

2月のバンクーバー五輪スピードスケート男子500m、
銀の長島圭一郎と銅の加藤条治が表彰台に。
その2人を支え続けたのは、長野県下諏訪町にある
「日本電産サンキョー」。

「欲しいものがあったら、何でも言え」
廃部の危機に立たされた7年前、会長に就任した永守重信
スケート部の存続を決め、世界で勝つための
環境整備に乗り出した。
専属トレーナーを雇い、コーチも増員。
トリノ五輪の時、移動用にビジネスクラスの航空券を用意。
五輪メダルの報奨金制度も設けた。
バンクーバーの銀は1000万円、銅は600万円。
半額は会社が負担、残りは永守のポケットマネーで賄った。

そこまでして支援するのはなぜか?
永守は言い切る。
「このままでは、日本の冬季競技はダメになる。
誰かがこだわらんといかん」

こんな恵まれた環境は、今の日本スポーツ界では例外。
長引く不況は、スポーツ界を支える企業の力を奪っている。
昨年12月、社会人野球の日産自動車が50年の歴史に幕を下ろした。
日本一を決める都市対抗を2度も制し、
多くのプロ選手を輩出した名門も、休部に。
野球部員26人は、全員が正社員。
14人がユニホームを脱ぎ、スーツ姿の生活を選んだ。

選手の強化を企業が担う――
日本の特長である、「実業団」の仕組みは崩れつつある。
「景気が良くなり、野球部が復活する日が来ると信じている」
最後の監督となった久保恭久は願う。

企業チームの休・廃部は、野球だけではない。
スポーツマーケティング企業のアイシーティースポーツによると、
1992年~2009年の間、約320の企業チームが消滅。
野村総合研究所上級コンサルタントの三崎冨査雄は、
「企業は、コストのかかる団体競技から撤退する傾向にある」

企業の支援形態も変わった。
選手の雇用を、正社員から契約社員の扱いに変更したり、
チームを持たずに大会の運営に資金を提供するだけになったり。

文部科学省は昨年、実業団のような形でスポーツを支援する
企業の税制優遇を検討。
「文化や芸術もあるのに、なぜスポーツだけか」という
論議がネックとなり、実現は難しい。
日本スポーツ界は土台から、大きく揺れ始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/rikkoku/ri20100423_01.htm

親と向き合う・2(4)すれ違い 減らす工夫

(読売 4月22日)

連載に寄せられた読者の声に、
保護者と教師を隔てる溝の正体が見えてくる。

先生は、聖職という座にあぐらをかいている」と批判、
石川県の小学生の母親(38)。
長女が4年生だった昨年、学校で男子からちょっかいを出され、
何度かあざを作ってきた。
心配して、連絡帳でベテランの担任に相談したら、
「たまたまです」、「気にし過ぎです」との返事ばかり。
母親は、「もっと愛情を持って接してほしい」と訴えた。

昨年4月、小学4年になった長男の担任が新人だったという
長野県内の母親(45)。
熱心な先生だったが、保護者から厳しい要求を受けていた。
子どもを教える難しい職業に、大学卒業直後から
一人前であることを求めるのは間違っていると思った」

教師の置かれた状況に、理解を示す声も。
10年前、小学校のPTA会長を務めた宇都宮市の
長谷川道夫さん(57)は、親から担任に強い要望があった場合、
その内容をPTA総会で紹介。
多数の支持があれば、学校の課題とした。
問題が起きた時、『担任―保護者』の図式に持っていかない。
そうすることで、担任に考えるゆとりが生まれた

保護者は、なぜ、自分たちと教師との間に意識のずれを感じるのか。
その疑問に、切り込む研究がある。

親の意識について、親の苦情を四つに分類する
日本大学の佐藤晴雄教授(社会教育学)は、
モンスター・ペアレントの要求のように、実現性も正当性も低い
要求を、「イチャモン系」と定義。
この要望を当然とする親の行動を分析したところ、
「あまり学校を訪問せず、学校のことを理解していない傾向が強い」
という姿が浮かんだ。

教員の意識面から、保護者との関係づくりを探る大阪大学の
小野田正利教授(教育制度学)が、
「先生と呼ばれて、尊敬されていると思う意識が大きいほど、
自らの非を認めたがらず、トラブルに動揺しやすい」と分析。

小野田教授は、学校そのものにも改善の余地はあると指摘。
教科指導や学級運営など、膨大な仕事を日常的にさばきながら、
1年目にする初任者研修。
「子どもと向き合う中で、問題は見えてくる。
2年目からの方がいいのでは」と提案。

すれ違いを減らすためのカギが、少しずつ明らかになっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100422-OYT8T00198.htm

脳内ホルモン「オキシトシン」重度知的障害の自閉症に効果 金沢大発表

(2010年4月24日 毎日新聞社)

脳内ホルモンの一種「オキシトシン」の投与で、
重度の知的障害のある自閉症患者の症状が改善したと、
金沢大・子どものこころ発達研究センターが発表。
主治医の棟居俊夫・特任准教授は、
「知的障害のある患者で、効果が確認された例は初めて」

オキシトシンは、出産時に大量に分泌され、
子宮や乳腺の収縮などに作用、陣痛促進剤などとして使わている。
他者を認識したり、愛着を感じる機能に関係するとの
研究結果も最近出され、知能の高い自閉症の
アスペルガー症候群で、効果が実証。

同センターに通院する20代の男性患者の両親が、
08年、オキシトシンの点鼻薬を輸入し、数カ月服用したところ、
(1)主治医の目を見て話す、
(2)対話で笑顔を浮かべる、
(3)IQテストが受けられるようになる--など症状が改善。
10カ月間投与し、改善状態の持続も確認。

男性は、3歳で自閉症と診断、服用前は他者と目を合わせず、
質問におうむ返しの反応しかできなかった。

これまで、重度の知的障害がある自閉症患者への
オキシトシン投与例がなく、今後、どのような患者に
効果があるかを見極め、必要な投与期間や量、対象年齢などを
突き止めるのが課題。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/26/119440/

花巻で大規模和牛肥育 宮城の農業生産法人

(岩手日報 4月27日)

花巻市と宮城県石巻市の農業生産法人うしちゃんファーム
(資本金1千万円、佐藤賀一社長)は、
同社が花巻市東和町で、大規模な和牛肥育事業を本格展開。

今秋、同町東晴山に畜舎を増築し、県内有数の肥育規模となる
計1150頭の飼養を計画。
県産子牛を積極導入、将来的に最大50人規模の新規採用を見込む。
地域の農業振興や畜産分野の就職先が少ない中での
雇用効果が期待。

大石満雄市長、佐藤社長らが記者会見。
同社は昨年12月、同町東晴山地内の民間の遊休畜舎(3棟)、
草地など計15万8千平方メートルを取得。
「岩手新花巻楽園」の事業所名で、
肥育事業(250頭規模)を始めている。

今回、規模を拡大して本格的に事業展開するため、
計900頭を飼養する畜舎2棟(計6615平方メートル)を増築。
新畜舎は、10月の完成、来春の全面稼働を予定、
肥育規模は計1150頭まで増強。
総事業費は約5億円。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100427_3

2010年4月30日金曜日

スポーツ立国 第1部 支援(1)選手環境 世界に見劣り

(読売 4月21日)

日本スポーツ界が、変革を迫られている。
長引く不況の影響で、企業のスポーツ離れが進み、
野球など一部の競技を除き、国際競技力は低迷。
バンクーバー五輪では、メダル争いでライバルの韓国に
大きく水をあけられた。
再び世界で輝くため、民間から国による強化へと進む日本スポーツ界。
その針路を探る。

“韓国ショック”――
バンクーバー五輪で、韓国が14個のメダルを獲得したのに対し、
日本は約3分の1の5個。
国の手厚い支援を受けて躍進したライバルの姿に、
五輪選手団長を務めた橋本聖子は、危機感を口にした。
「このままでは世界で取り残される」

スポーツ大国の支援を見ると、選手への強化費支給と
練習環境の整備、という2本柱が整っている。
日本は、両方とも心細い。
2008年北京五輪陸上男子400メートルリレーで、
銅メダルを獲得した朝原宣治は、
「日本には、一貫したスポーツ政策がない」

学校のクラブ活動の中で走り始めた朝原。
高校で陸上部に入り、大学3年の時に100mの日本新記録。
その後、選手としての自分を支えたのは、国ではなく、企業。
大阪ガスに入社後、5年間のドイツ留学を許された。

外国人指導者の下で競技力を磨いた朝原は、
スポーツが置かれた環境の違いを感じた。
練習拠点のスポーツクラブには、天然芝のグラウンドが広がり、
国や州の資格を持ったプロのコーチやスタッフがそろっていた。
「選手が、簡単に指導者を交代できるのに驚いた」
恵まれているのは、トップ選手だけではない。
「小学生から80歳代のお年寄りまで、
誰もがスポーツを楽しむ環境があった」と訴える。

朝原がトップ選手へと成長する過程で、国の支援は少なかった。
JOC強化指定選手になった時、年間で約200万~300万円を
受け取るぐらい、大学や企業のグラウンドを走り続けるしかなかった。

朝原が引退する約1年前、トップ選手の練習拠点がようやく誕生。
文部科学省が、370億円をかけて整備した、
ナショナルトレーニングセンター(NTC)。
屋根付きのトラックが完備され、栄養士などサポート体制も充実。

橋本は、「利用料がかかるなど、まだまだ使い勝手が悪い」
日本でNTCを使う場合、利用料は競技団体が負担するが、
韓国では代表選手の使用は無料。
1日数千円の手当が支給されるなど、
日本よりも「選手に優しい」環境が整っている。

「スポーツを文化として根付かせたい」との思いから、
橋本は政治家に転身。
以来15年。
その願いは、まだ実現していない。
悔しいのは、16年東京五輪招致の失敗。
東京の基本理念は素晴らしかったが、世論の支持率は56%止まり。
招致失敗の知らせを聞いた瞬間、
「国民の理解が得られなかった」と無念で涙があふれた。

昨年行われた政府の事業仕分けでは、財政難に苦しむ中、
税金を投入してまで五輪のメダルが必要なのか、と問われた。
結局、メダル獲得数が伸び悩むJOCへの補助金は、4%も削減。

国から競技団体に渡される金額をみると、
今年度の国の予算約92兆円のうち、JOCへの補助金は約26億円。
わずか0・003%。
「日本人は、五輪で日本選手の活躍を期待するが、
それを支える環境にはあまりにも無関心」と橋本。
国民の理解が深まった時、スポーツ立国への道が見えてくる。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/rikkoku/ri20100421_01.htm

親と向き合う・2(3)「苦情は宝」若手育てる

(読売 4月21日)

始業前の午前8時過ぎ、東京都東村山市立大岱小学校
職員室内に、教員たちの声が響きわたる。
「集金袋は教卓に置かない」、
「集金は、その場で中を確認する」――。

毎週水曜日に開く、若手向けの研修会。
教職6年目までの教員が朝の5分間、仕事の基本を点検。
春先は、集金の機会が多く、回収のトラブルを防ぐことを確認。

この研修に活用するのが、同校がまとめたOJT(職場内訓練)ノート。
作成を指揮した西留安雄校長(60)は、OJTのアルファベットの
頭文字から、「大岱常識手帳」と名付けた。
教員が身につけるべき常識について、「社会人・学校人」、「学級経営」など
11章に分けて、全736項目を掲載。

同校は、「苦情は宝」を合言葉に教員を育てる。
2月に掲載したシリーズ「親と向き合う」では、
保護者からの指摘を列記し、職員室に張り出す実践を紹介。
手帳には、これらの内容も盛り込んだ。

例えば、運動会。
「アンカーには、ゼッケン・たすきを掛けさせる」とある。
リレーの最終走者が目印をつけていないと、観戦する保護者や
地域住民の多くにとって、勝敗の結果が分かりづらい。
そんな苦情がベースにある。

「手帳にある項目の半分ぐらいは、保護者から指摘されたこと。
意外と、学校が気づいていないことが多く、それらを視覚化し、
共有するのが大事」と西留校長。

校長自身、過去に苦い経験がある。
別の学校で校長だった10年ほど前、保護者から苦情が。
あまり言い分を聞かず、部下の教員を守ろうとする気持ちから、
「学校としてはこうですよ」と答えていた。
やがて気づいた。
「理にかなった指摘もあるかもしれないのに、学校優位の考えで、
保護者に責任を押しつけていたのでは」

4月に教職に就いた永井佑樹教諭(22)は、
「常識手帳を活用し、社会人のマナーや謙虚さを身につけていきたい」
西留校長は、「過去の失敗を、若い教員にはさせたくない。
誰からも信頼される、プロフェッショナルな教師を育てていきます」
手帳に載せる項目は、必要に応じて追加する。

「学校の常識は、世間の非常識」と言われる。
その言葉を打ち消そうと、現場が一丸となって変わろうとしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100421-OYT8T00347.htm

自殺対策で連携強化 仙台弁護士会と医師会

(2010年4月22日 共同通信社)

多重債務やリストラなどが理由とみられる自殺が増えている
ことを受け、仙台弁護士会は宮城県医師会と連携して、
防止対策に乗り出した。

弁護士が医師から、自殺との関連が深いうつ病など
精神疾患の基礎知識を学ぶほか、共同で自治体に提言。

宮城県の2009年の自殺者数は658人(暫定値)。
弁護士の間では、「債務整理の相談に来た会社経営者の
様子がおかしいと思ったが何もできず、自殺してしまった」、
「法廷で尋問した相手が自殺し、後でうつだったと聞いた。
どう聞けばよかったか」など、切実な悩みが広がり、
医療の専門家である医師に協力を求める声。

3月中旬、東北大大学院医学科の教授が、
うつの基本知識などを伝える講演会を開き、
同弁護士会所属の弁護士約330人中、100人近くが参加。

教授が、「最初から、精神科を受診するように言うのは難しい。
うつには不眠など、必ず別の身体症状があるので、
まずはそちらを治そうと通院を勧めて」とアドバイス。

今後、弁護士会と医師会はシンポジウムや相談会を共同して
開催することも検討、情報交換をさらに進めていく。
弁護士会で連携を担当する土井浩之弁護士は、
「弁護士と医師は専門家同士、通じるものがあるはず。
弁護士と医師が、気軽に"つなげ合う"関係になれば」と期待。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/22/119358/

採掘スタートは「未定」国内需要減の影響濃く 太平洋セの袰下山開発環境アセスは年度内完了へ

(東海新報 4月24日)

住田町上有住の袰下山(ほろしやま587)への新規鉱山開発
計画している太平洋セメント㈱大船渡工場(相良安廣工場長)は、
環境アセスメント評価書の前段階となる準備書の縦覧を、
5月中旬から始め、周辺4地域での住民説明会を開始。
手続きが順調に進めば、本年度内にアセスメントが完了する見通し。
計画公表当初は、平成年度ごろとしていた採掘開始時期について、
近年の国内セメント需要激減などから、「現時点では未定」。

同工場では現在、大船渡市2カ所と住田町1カ所の計3カ所に
鉱山を設けている。
近年のセメント原料採掘は、年220万トン、
残鉱量はおよそ10年程度との見通し、
100年規模の採掘ができ、鉱量が見込まれる袰下山開発を計画。

国内セメント需要が、平成2年のピーク時8628万トンに比べ、
昨年はほぼ半減の4470万トン、落ち込みが顕著に。
同社は、3工場の閉鎖や738人の人員削減などを展開中。

袰下山の出鉱開始は計画公表当初、26年度ごろとの見通し。
開始時期は不透明な状況となったものの、環境アセスメントについては
本年度内完了を目指して進めている。

初回の説明会は、坂本自治公民館で開かれ、住民20人が出席。
あいさつに立った藤井茂樹大船渡工場業務部長は、
「環境アセスメントは年度内完了予定だが、
セメント需要減に対応する見直しを全社的に進め、
以降のスケジュールは現時点では未定としかいえず、心苦しい状況」

環境アセスメントは、県環境影響評価条例に基づくもので、
事業者が環境に及ぼす影響を事前に調査、予測、評価し、
その結果を公表して意見を聴き、
環境に配慮した事業計画を作成する仕組み。

同工場では、第1段階となる環境影響評価方法書縦覧を
一昨年に終え、今回の準備書では、この環境影響評価結果に
基づく水質や生態系、景観の保全騒音粉じん対策などについての
考え方をまとめた。

出席住民から、「狭い沢があるので、洪水調整池からの放流量に
気を配ってほしい」、「井戸水への影響はどの程度になるか」など、
開発期や操業後の水質についての意見や質問が聞かれた。

住民説明会は、大型連休明けにかけて下有住新切、上有住両向、
同恵山の3地域でも開催。
準備書縦覧は、5月中旬から1カ月間大船渡工場などで予定、
同月中の説明会開催も計画。

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年4月29日木曜日

食物アレルギー、幼児の14% 10年前から倍増 「食生活の変化一因」

(2010年4月23日 毎日新聞社)

東京都が、3歳児を対象に実施しているアレルギー疾患に
関する調査で、食物アレルギーに罹患したことのある
子どもの割合が、09年は14・4%、99年の7・1%から倍増。
厚生労働省によると、未就学児の大規模な定点調査で、
食物アレルギーの増加傾向が裏付けられたのは初めて。

調査は、99年から5年ごとに行い、10月の3歳児健診で
保護者に調査票を配布。
昨年は、7247人を対象に、ぜんそくや食物アレルギー、
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの症状について尋ね、
2912人(40・2%)から回答。

3歳までに、何らかのアレルギー疾患と診断された子どもは、
99年36・8%、04年36・7%、09年38・8%--と横ばい。
食物アレルギーと診断された子どもは、99年が7・1%、
04年は8・5%、この5年で急増。
原因食物は、卵が83・9%で最多。
牛乳36・3%、小麦12・9%が続いた。

今回は、都内の認可・認証保育所と幼稚園を対象にした
調査も初めて実施。
配慮が必要な食物アレルギーの子どもがいる施設は、68・1%に。
過去3年に急性のアレルギー反応を起こした
子どもがいた施設も、12%に。

東京都アレルギー性疾患対策検討委員の
松井猛彦・荏原病院小児科部長は、「原因は単純ではないが、
添加物や加工食品の増加など、食生活の変化も一因。
昔は食べなかった食品が食べられるようになったことや、
離乳食の開始の早期化なども考えられる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/23/119400/

W杯でエイズ拡大懸念 売春合法化求める声も

(2010年4月21日 共同通信社)

サッカーのW杯が開幕する南アフリカは、
世界で最もエイズウイルス(HIV)感染率が高い国の一つ。
W杯期間中、推定約45万人の外国人が訪れると見込まれ、
無防備な売春が横行し、エイズ感染が外国人訪問客らに
広がる懸念が指摘。

地元の非政府組織(NGO)は、「売春婦に対する感染防止の
啓発活動を徹底させるため、売春を合法化し、
地下に潜らせないようにすべきだ」と主張。

南アのHIV感染者数は、推定約570万人、世界最多。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、感染率(15~49歳)は
約18%に達し、売春婦に限れば、感染率は約50%。

W杯期間中、近隣諸国や東欧などからも、
約4万人の売春婦がやって来ると予測。

売春婦の権利向上や教育支援を行うNGO「SWEAT」
(本部・ケープタウン)のダイアン・マサウェさんは、
「売春が違法のため、売春婦はこっそり仕事をしなければならないし、
エイズ感染防止に向けた教育や治療も受けられない」
売春を合法化すれば、感染防止の取り組みが可能だと主張。

SWEATは、合法化に向け国会議員へのロビー活動を展開中。
宗教団体などからの反対も根強く、W杯までの合法化は
簡単ではなさそう。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/21/119296/

がん転移させる酵素、脳の成長担う…大阪バイオサイエンス研が解明

(2010年4月21日 読売新聞)

がんの転移にかかわる酵素が、脳を成長させたり
修復したりする働きを担っていることを、
大阪バイオサイエンス研究所の榎本和生・研究部長らが
ショウジョウバエを使った研究で明らかに。
20日付の米科学誌ディベロップメンタル・セルに発表。

幼児期の脳は、音や光に反応して神経回路の再編を繰り返し、
複雑なネットワークを作り上げる。

榎本さんらは、この再編が起こらない突然変異の
ショウジョウバエを発見。
細胞を取り巻く物質を溶かす「Mmp」という
酵素を作れないことを突き止めた。
この酵素は、神経線維が通るべき場所を作り、
ネットワークを完成させていた。

人間のMmpは、がん細胞が病巣から飛び出して、
別の場所へ転移する際に働く。
てんかん発作や血流の低下で、脳がダメージを受けた時にも、
Mmpが検出されていたが、役割は不明。
榎本さんは、「脳のMmpの異常は、精神疾患などにつながると
考えられ、詳しく調べれば診断や予防に役立つ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/21/119307/

経験や知識、学校に新風 特別選考の3高校教員

(岩手日報 4月23日)

スポーツ分野で、優れた実績のある人や社会人経験者らを
対象にした、県教委の「特別選考枠」で採用された3人の高校教員は、
4月から新たな教師人生のスタート。
豊かな経験や高度な専門知識を生かした指導を行い、
学校現場に清新な風を吹き込んでいる。

◆楽しい物理伝える 藤井教諭(盛岡一)

盛岡一高で物理を教える藤井俊介教諭(33)=兵庫県出身=は、
東京工業大大学院理工学研究科で、宇宙物理学を専門に学び、
2009年に博士号を取得。
芝浦工業大の特別任用講師を1年間務め、
「専門の物理を生かした仕事をしたい」と制度を利用。

「生徒は、苦しいだけじゃ伸びない。
物理の授業を楽しむには、『なぜ』と問い続けること」、
藤井教諭は授業中、生徒たちに何度も「なんでや」と問いかける。

千葉研二校長は、「医師を志望する生徒が多いが、
人類の平和のためには学問を追究する人も必要。
最先端の学問の面白さを伝えてほしい」

◆船員養成情熱注ぐ 千野教諭(宮古水産)

千野和史教諭(32)=山梨県出身=は、三重県の実習船「しろちどり」の
指導教官を8年間務め、宮古水産高に赴任。
前任地では、高校生と共にカツオの一本釣り実習で、
2カ月間マリアナ沖へ航海し、船員の心構えを教えた。

宮古水産高は、日本でも一番の伝統校。
あこがれの学校で、船員養成にチャレンジしてみたい」、
新天地での意気込みを語る。

同校では、船舶のエンジン関係の指導に当たり、
担任する学年が実習船に乗船する際、共に航海に赴く。
「自分が培った経験を基に、船での仕事がいかに素晴らしいかを
分かってもらいたい」と船員養成へ情熱を燃やす。

◆母校で陸上部指導 高橋教諭(盛岡南)

盛岡南高に赴任した高橋徳江教諭(33)は、同校卒業生。
在学時、陸上競技・やり投げで国体2連覇、
高総体優勝を果たした実績を持つ。
いろいろな人との縁のおかげで、母校で指導ができる。
感謝の気持ちを持って、生徒たちと歩みたい

横浜市の中学教員として、特別支援学級などを担当したが、
「岩手と陸上部指導への思いが、頭から離れなかった」、
固い決意で試験を受けた。

教科は保健体育で、1年5組の担任、陸上競技部顧問を務める。
「生徒が夢に向かって、本気を出すきっかけをつくりたい」と初志を貫く。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100423_14

2010年4月28日水曜日

柔道整復師:誰もが悩む慢性的な痛み 治癒力、高めよ /兵庫

(2010年4月20日 毎日新聞社)

人類共通の悩みの一つが、慢性的な痛み。
肩こり、腰痛、手足などの痛みやむくみ……。
その痛みは、何年も続くことが多い。
こうした痛みに立ち向かう柔道整復師の覚野寛也さん(31)は、
「人間には本来、自然に治癒する能力がある。
治癒力を高めれば、痛みから解放される」と力説。
治癒力を高める術とは----。

覚野さんが柔道整復師を志したのは、高校時代。
中学、高校で柔道に熱中。
高校時代、山梨県で開かれた高校総体に県代表として
柔道60キロ級に出場した実力の持ち主、
「手に職をつけ、痛みに悩んでいる人を助けたい」と
高校卒業と同時に、柔道整復師を養成する3年制の専門学校へ。

柔道整復師の国家資格を得て、山口県で修業を5年半積み、
1日に40-50人の体と心をほぐしてきた。
この間も柔道を続け、山口県代表に選ばれ、富山国体に出場。
その語り口はソフトで、柔道の猛者というイメージからほど遠い。

覚野さんは、「慢性的な肩こり、腰痛などはリンパ、血液の流れが
低下し、代謝が落ちたサイン。
リンパや血液の流れを統括しているのが、筋肉。
全身の筋肉が硬くなると、血液などの流れが低下。
全身の筋肉をほぐすと、流れが戻る」

肩こりなどの痛みは、病気になる一歩手前を知らせる未病の状態。
それを痛みとして伝えている。
慢性的な痛みを、治らない持病と思い込んであきらめてしまう。
そんな人が多い。
私は、そんな方を一人でも助けたい」

慢性的な痛みを抱える人の多くが、何年も同じ症状を訴える。
例えば、肩こり。
肩のマッサージを受けると、その場では、痛みは緩和されるが、
後日、再び肩こりが再発。そしてマッサージ……。

覚野さんは、「痛みと緩和を繰り返す人は、
マッサージなどの受け方に問題。
人間には、治癒力がある。
全身の血行が良くなれば、治癒力も高まり、肩こりも緩んでくる。
肩こりは、深い部分と関連している。体全体を見なければ」

覚野さんは、興味深い例を話す。
「心身とも健康ならば、老化は穏やかに進む。
同じ70歳でも、若く見えたり、年齢以上に見えたりする。
理由は、血液の健康状態。
血液は、健康の土台で、細胞に元気を与える。
血液の流れをマッサージなどで促し、本来の状態にすることで、
老化現象を遅らせることができる」

問い合わせは、ロイヤルマイスター(078・331・5075)。
プロ、アマのスポーツ選手のコンディションづくり、
ケアなどの相談にも応じている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/20/119257/

鈴木寛・文科副大臣 「高度な看護師」の必要性を訴える

(2010年4月21日 Japan Medicine(じほう))

再来年度、亀田医療大学(仮称)の開学を目指す
千葉県鴨川市の学校法人鉄蕉館(亀田省吾理事長)は、
「地域における医療者育成」をテーマとしたシンポジウムを開いた。

同大学は、看護学部単独でスタートを切る予定、
講演した鈴木寛・文部科学副大臣は、
高度な看護師を養成することは、「国家的命題」だと強調。
メディカルツーリズムの観点から、鴨川市が海外の患者を
受け入れる上で、最適の地であるとの認識を示した。

鈴木副大臣は、国内の医師や看護師が不足しているとの考えを示し、
「(医師が足りない中で)医者に言われた通り、
的確に処置をする高度な看護師が必要。
(現在の)看護師と医者の間ぐらいの、技だけで言えば
医者を凌駕するような『スーパー看護師』を養成するのが、
この国の国家的命題」

学校法人鉄蕉館を支える亀田メディカルセンターには、
看護師を育成する能力や教育人材がそろっているとし、
「モデルケースをやってもらいたい」と期待感。

鈴木副大臣は、亀田メディカルセンターが国際的な病院品質基準
JCIを取得したことや、成田空港からのアクセスの利便さを挙げ、
鴨川市が、メディカルツーリズムの最適な受け入れ地になる。

亀田医療大学は、2012年4月の開設を目指している。
統合される市立鴨川中学校の跡地が、市から無償貸与され、
定員80人の看護学部を設置する予定。
総工費は、16億円程度を見込む。
すでに運営している亀田医療技術専門学校は、そのまま存続。

亀田理事長は、「亀田メディカルセンターにとっても、
看護師の充足は最重要課題。
地域が幸せであるためにも、医療者の育成は欠かせない。
(新設大学では)幅広い形での医療者育成を考えている」と抱負。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/21/119287/

脳トレ、効果に疑問…英で1万人実験

(2010年4月21日 読売新聞)

コンピューターを利用した脳トレーニング(脳トレ)は、
健康な人の思考力や記憶などの認知機能を高める効果は
期待できないことが、ロンドン大学などの1万人以上を
対象にした実験で分かった。

脳トレは、世界的ブームになっているが、
大規模な検証はほとんどなかった。
英科学誌ネイチャーで21日発表。

18~60歳の健康な1万1430人を、三グループに分け、
英国で販売しているコンピューターゲームをもとにした脳トレを、
1日10分、週3日以上、6週間続けてもらい効果を調べた。

最初のグループは、積み木崩しなどを使った論理的思考力や
問題解決能力を高めるゲーム、
もう一つのグループは、ジグソーパズルなどを使った
短期記憶や視空間認知力を高めるゲームをした。
残り一つは、脳トレとは無関係のゲームを行った。

その結果、脳トレを続けたグループでは、ゲームの成績は向上したが、
論理的思考力や短期記憶を調べた認知テストの成績は
ほとんど向上せず、3グループ間で差がなかった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/21/119313/

初挑戦で最高位に 大船渡高出身の西村さん、ブルクハルト国際音楽コンピアノ部門で第1位

(東海新報 4月24日)

有能な演奏家の発掘をめざす
「第7回ブルクハルト国際音楽コンクール」のピアノ部門で、
大船渡高校出身の西村元希さん(23)が最高位の第1位に。

昨年、東京の音大を卒業した西村さんは、各種オーディションや
ピアノコンクールで、多数の入賞歴を誇る新進気鋭のピアニスト。
現在、東京を拠点に活動、夏には県内で開かれるコンサートに
〝凱旋出演〟する予定。

同コンクールは、ピアノ、声楽、歌劇、室内楽、管弦楽の作品を
作曲し、クラシック音楽界に貢献したスイスの作曲家、
ウィリー・ブルクハルトの功績を記念し、平成18年から開催。
有能な演奏家を発掘・育成し、音楽文化の発展向上に
寄与することを目的に、ピアノ・弦楽器・管楽器・声楽・室内楽の
5部門で実施。

第7回コンクールのピアノ部門には、全国から43人が出場。
8分以内の自由曲演奏による予選を経て、32人が
昨年10月30、31日に行われた本選に進み、
12分以内の自由曲で演奏技術や表現力を競った。

ピアノ部門は、過去6回のコンクールで2回しか第1位受賞者が
出ていないというレベルの高さ。
今回も第2位、第5位が「該当者なし」となるなど、
出場者の実力が厳しく審査。

西村さんは本選で、リストの「ハンガリー狂詩曲第12番嬰ハ短調」を演奏。
前打音を強調した力強い主題やテンポの遅い即興風の主題などで
構成された楽曲を、緩急自在の巧みな鍵盤さばきで華麗に弾きこなし、
同コンクール初挑戦で、見事第1位を獲得。

今月10日、東京都のムーブ町屋コンサートホールで、
表彰式と入賞者による演奏会が行われ、西村さんはショパンの
「英雄ポロネーズ」など2曲を披露。

西村さんは、花巻市生まれ。
音楽好きの母親の勧めもあり、同市内の自宅近くにあった
ヤマハ音楽教室で、6歳からピアノを始めた。

小学5年生の時、父親の実家のある三陸町越喜来に転居し、
以後、大船渡高校を卒業するまでの間、同市の教室に通い続けた。
この間、ショパン国際コンクールで最優秀演奏賞を受賞、
小澤征爾氏ら著名指揮者との協演を重ねている
有森博氏(東京芸大准教授)、末松茂敏氏(フェリス女学院講師)らに
師事し、個人レッスンを受け、腕を磨いた。

高校卒業後、東京音楽大学ピアノ科に入学、
鈴木恭代さんに師事。
在学中、専攻実技選抜演奏会や卒業試験上位者による
ピアノ卒業演奏会に出演、岩手県芸術祭ピアノ部門で
第60回記念賞(特別賞)を受賞するなど、才能を開花。

卒業後、東京芸術国際協会主催の第45回新人オーディションで、
奨励賞を受賞。
昨年行われた第10回ローゼンストック国際ピアノコンクールでは
審査員賞を受けている。

岩手県内各地で開催されたヤマハ音楽教室などの発表会に、
ゲストとして多数出演。
現在、東京を拠点に活動中、楽器店などのコンサートに
ソロ、ジョイントで出演。

今回の第1位獲得について西村さんは、
「非常に光栄なこと。1位の栄誉に恥じないよう今後も精進し、
岩手にもクラシック音楽を広げていきたい」

西村さんが〝凱旋出演〟する東京音楽大学岩手支部
第8回コンサートは、7月16日(金)に盛岡市民文化ホールで。
8月22日(日)、奥州市文化会館Zホールで有森氏と共演する
コンサートも予定、県内クラシックファンの注目を集めそう。

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2010年4月27日火曜日

「医療は連携」実践教育

(2010年4月20日 読売新聞)

医療の高度化に伴い、様々な専門職が連携して診療にあたる
「チーム医療」の必要性が高まっている。
医学生のうちから、チームで医療を行う大切さや技術を学ぶ
取り組みを見た。

「ヤバいよ……。どんどん患者が重症化してる!」
「看護師役の俺たちじゃ診察できないし、医師役はどこに行ったんだ?」
日本医科大の大教室。
感染防御用のマスクやガウンに身を包んだ医学生二十数人が
走り回っていた。

この日行われたのは、学生が医師役1人、看護師役2人、
看護助手役1人の計4人でチームを作り、病棟を担当する体験型授業。
強毒性の新型インフルエンザが、世界的に大流行する
「パンデミック」が起きたと想定。
同大医療管理学教室の秋山健一助教を中心に、
米 ピッツバーグ大で感染症危機管理教育として導入された
演習をもとに、日本の事情に合ったプログラムを開発、
今年初めて実施。

「感染症への対応という、医療の基本を身につけるとともに、
チーム医療の大切さを理解してもらうのが狙い。
体験型授業では、学生が身をもってその重要性を学ぶことができる」

授業の仕組みはこうだ。
大教室を病院に見立て、「病棟」、「集中治療室」、
「ナースステー ション」、「霊安室」などのスペースに区切る。
病棟スペースには、幾つもイスを並べ、
その上に人の上半身を描いた厚紙を置く。
胸ポケットの部分に、教員が「医師の診察」、「食事」など
患者の状態や必要な処置を記した札を入れていく。
学生は、患者と同じ札をナースステーションに取りに行き、
胸にある札に重ねると、処置が終了。
すると、新たな札が入れられて、患者の状態は刻々と変化していく。

この日は、「点滴」が足りなくなったり、「集中治療室」が満床と、
学生は大苦戦。
死亡診断など、医師にしかできない処置が多いため、
他職種の手が空いていても対応できない患者がたまり、
重症化させる例が目立った。

15分間の演習後、各チームが対策を検討。
「医師は、医師にしかできないことに専念する」、
「『嘔吐』など、看護助手にできる札が出たら声掛けをする」など、
役割分担やコミュニケーションに工夫が図られ、
後半はスムーズに対応できるチームが増えた。
授業後のアンケート(2、3年生約200人)でも、
「他職種とのチームワークの重要性を実感した」と回答する
学生が最も多かった。

チーム医療の教育に取り組む動きは、他にもある。
文部科学省、「がんプロフェッショナル養成プラン」事業では、
全国94の医療系大学が参加。
がんの専門医や専門看護師などの養成を目指し、
大学院で、多職種連携の実践型教育を始めている。

「日本ではスローガンばかりで、教育手法の開発が不十分」、
各国の医学教育に詳しい長谷川敏彦・同大教授は指摘。
米国ではここ数年、膨大な知識を詰め込むだけでは
実地医療に役立たないとして、学生が主体的に参加し、
考えられる模擬訓練型の教育プログラムの開発・導入が盛ん。

長谷川教授は、「チーム医療を推進するには、
多職種の医療スタッフが連携し、患者と一緒に問題を考え、
解決していくという医療の姿を明確にする必要もある

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/20/119261/

採血せずに尿素測定…岡山理大教授ら開発

(2010年4月20日 読売新聞)

医療機器メーカー・協和ファインテック(岡山市東区、橋本明典社長)
は、透析治療を受けている患者の排液中にある尿素を、
リアルタイムに測定する装置を、
岡山理科大の中川益生教授らと共同で開発。

透析治療では、効果を確認するため、一般的に患者から
透析前と透析後に採血を行うが、同装置を使えば、
採血なしでも効果が分かり、患者の負担軽減にもつながる。

中川教授らと、3年前から共同研究を始めた。
尿素が、塩素や臭素などからできた特殊な試薬で化学発光する
原理を応用し、装置を透析機に接続。
排液と試薬を反応させ、発する光を電気信号に変換し、
尿素の濃度を測定する。

透析治療中に尿素濃度が下がったことが分かり、
治療の効果が確認できる。
透析時間を短縮することも可能。
測定は、最小2分間隔。
同社は、薬事法による医療機器としての承認を受け、
3年後をめどに製品化する方針。

尿素が試薬に反応しての発光は、50分の1秒という短時間で終わり、
装置が光を正確にとらえるためにも、安定して発光させる
技術の開発が課題。
中川教授は、試薬をタイミング良く排液に混ぜるシステムを
開発することで、課題を解決した。

同社は、「透析機も作っており、今後、測定装置を広めて、
医療機器事業を拡充したい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/20/119258/

街に活気、市日幕開け 奥州・江刺の蔵町モール

(岩手日報 4月22日)

奥州市江刺区の「えさし蔵まち水曜市」
(奥州商工会議所江刺支所主催)は、同区中町と南大通りの間の
歩行者専用道路「蔵町モール」(約100m)で始まった。
新鮮な野菜や総菜などが店頭に並び、
多くの来場者で活気にあふれた。

水曜市には農家をはじめ、沿岸の海産物販売、衣類、日用品などの
販売業者ら32個人・業者が登録。
初日は、約30店が出店、オープニングイベントとして
ティッシュペーパーの先着プレゼントや、
もちの無料振る舞いが行われ、盛り上がった。

同区岩谷堂の菊地クリさん(85)は、「野菜、もち米、花など購入した。
みんなの顔を見ながら、会話するのが楽しい」と
今年の幕開けを喜んだ。

水曜市は、2002年にスタート。
今年は、11月24日まで計32回を予定。
時間は、4~9月が午後1時から同5時まで、
10、11月が午後1時から同4時まで。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100422_7

宇宙に「声」届いた!吉浜小児童が参加 野口飛行士との交信イベント

(東海新報 4月24日)

国際宇宙ステーションに長期滞在している
宇宙飛行士・野口聡一さんとの交信イベントが22日夜、
大船渡市民文化会館・リアスホールで行われた。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)の施設があった
吉浜小学校の5、6年生18人が、テレビ会議システムを使って会話。
多くの市民らが見学に訪れ、宇宙を身近に感じていた。

交信イベントに参加したのは、「銀河連邦共和国」に加盟している
大船渡市をはじめ、北海道大樹町、秋田県能代市、
神奈川県相模原市、長野県佐久市、鹿児島県肝付町の
計6市町の子どもたちと各首長。
今回のイベントは、新たに気球観測所が整備された
大樹町の加盟を記念し、JAXAなどが主催。

JAXAは一昨年まで、三陸町吉浜にあった気球観測所で
各種実験を行ってきた。
閉所後も、宇宙科学の普及活動などについて
大船渡市と連携を進めることにしており、同市は、
「サンリクオオフナト共和国」として、現在も銀河連邦に加盟。

国際宇宙ステーションに滞在している野口宇宙飛行士と6共和国は、
専用回線で結ばれた。
リアスホールでは、吉浜小学校の5、6年生児童18人と
甘竹勝郎市長らが参加。
大ホールは、一般住民の見学用にも開放、
親子連れら約100人が詰めかけた。

テレビ会議システムのカメラを前に、吉浜小の子どもたちは
やや緊張した表情を見せていたが、宇宙ステーションにいる
野口さんの姿がスクリーンに映され、6会場全員による
あいさつの声が野口さんに届くと、歓声が上がった。

交信中は、各会場の子どもたちが順番に質問。
吉浜小を代表し、6年生の赤坂亜美さんは、
「宇宙に行って、素晴らしいと感じたことは何ですか」と問いかけ、
野口さんは、「本当に地球は美しい。
地球は、毎日生きている素晴らしい生命体だな、と感じました

6年生の東玲人君は、「宇宙に絶対に持っていってはいけない
飲食物はありますか」と質問。
野口さんは、国際宇宙ステーションに持ち込んだ刺身や
お好み焼きなどを見せた上で、「炭酸飲料は広がっちゃうのでダメ」

野口さんは、「あと1カ月ほど滞在します。
地上に帰ったら、何らかの形で皆さんとお話ししたいですね」、
再会に期待を寄せた。
野口さんとの親近感を深めた児童は、交信が終わるまで
手を振り続け、国際宇宙ステーションでの任務にエールを送っていた。

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年4月26日月曜日

Muse細胞:第3の多能性幹細胞、皮膚から発見 がん化恐れ低く

(2010年4月20日 毎日新聞社)

大人の皮膚や骨髄の中に、さまざまな細胞になる能力を持つ
多能性幹細胞があることを、東北大と京都大などの
研究チームが発見。分離・培養も成功。

胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)に続く
多能性幹細胞の可能性があると、「Muse(ミューズ)細胞」と命名。
既知の2種類に比べ、増殖率は劣るが、がん化の恐れは低く、
医療への応用が期待。
成果は、19日付の米科学アカデミー紀要に発表。

研究チームは、ヒトの骨髄や皮膚に含まれる細胞中に、
ごくまれに現れるES細胞に似た細胞に着目。
濃縮・培養すると、神経や筋肉、肝臓などの細胞に分化。
無限に増えるES細胞やiPS細胞と違い、2週間ほどで増殖が止まった。

マウスの損傷した皮膚や筋肉、肝臓に投与すると、
それぞれの組織の細胞になった。
精巣に移植すると、ES細胞では8週間後に腫瘍ができたが、
Muse細胞は半年たっても腫瘍化しなかった。

研究チームの出沢真理・東北大教授(幹細胞生物学)は、
「元々、生体内にあり、安全性が高い可能性がある。
自分の細胞を移植する、といった医療に応用できるのではないか

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/20/119255/

トランス脂肪酸:消費者庁が含有量表示へ指針

(2010年4月19日 毎日新聞社)

マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸が、
心臓疾患などのリスク要因として注目。
消費者庁が、その情報開示のガイドラインづくりに乗り出した。
たんぱく質、炭水化物など、基本的な栄養成分の表示さえ
義務化されていない。
その段階でなぜ、トランス脂肪酸だけが優先されるのか?
「まずは栄養成分の表示を」という声。

トランス脂肪酸は、マーガリンのほか、菓子パン、クッキー、ドーナツ、
ケーキ類などに多く含まれる。
サクサクした食感が出るメリット。
欧米では、とり過ぎると悪玉コレステロールが増え、動脈硬化など
心臓疾患のリスクが高くなるとの報告。
03年、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の
合同専門家会議が示した目安。
「1日の総エネルギー摂取量に占めるトランス脂肪酸の比率を、1%未満に」

日本人の摂取量はどの程度か?
食品安全委員会によると、1日平均摂取量は国民健康・栄養調査の
食品摂取量から推定0・7g、総エネルギーに占める比率は0・3%。
米国では、1日平均摂取量が5・8g、同比率は2・65%、
注意目安の1%未満を超えている。
EUでも、日本人より摂取量は多い。

福島瑞穂消費者担当相は今夏をめどに、食品中に含まれる
トランス脂肪酸の含有量を、企業に自主開示させる
ガイドラインづくりをする方針。
消費者団体や専門家から、疑問の声が出始めた。

日本生活協同組合連合会(約500生協加盟)の
鬼武一夫・安全政策推進室長は、「トランス脂肪酸表示は、
生協連の中でも優先度は高くない。
欧米では当たり前の栄養成分表示こそが重要

心臓疾患のリスクを高める要因は、バターや肉類などに多い
飽和脂肪酸やコレステロール、塩分、アルコールの取り過ぎ、
喫煙、高血圧、肥満など。
トランス脂肪酸は一要因に過ぎない。
日本では脂肪、炭水化物、たんぱく質、食塩、食物繊維など、
基本的な栄養成分の表示すら義務化されていない。

畝山智香子・国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第3室長は、
消費者庁主催の公聴会で、「日本では、トランス脂肪酸の摂取が
心臓疾患の死亡を増やしているデータはない。
塩分の取り過ぎや高血圧に気をつけることの方が重要

トランス脂肪酸の含有量だけを開示させると、
別の健康リスクが生じる可能性が。
パーム油が原料のショートニングを使えば、トランス脂肪酸は減る。
飽和脂肪酸が増えてしまい、健康へのリスクは高くなる。

川端輝江・女子栄養大教授は、「日本人は、飽和脂肪酸の
取り過ぎの方が問題」と指摘、「摂取量の少ないトランス脂肪酸の
含有量を開示しても、健康増進にはほとんど寄与しない」

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の
蒲生恵美・食生活研究会代表は、「トランス脂肪酸だけを悪者にすると、
『これさえ控えれば大丈夫』と消費者をミスリードしかねない」と懸念、
「食品の栄養成分を、総合的に判断できるような表示が
優先されるべきだ」
……………………………………………………………………
◇トランス脂肪酸

植物油は常温で液体だが、水素を加えると、
マーガリンのように固体になる。
そのプロセスで生成される。
牛乳やバターなど天然の乳製品にも含まれるが、企業の技術開発で
含有量は減っている。
家庭用マーガリンでは100g当たり平均含有量は1・8g、
4年前に比べ約4分の1(日本マーガリン工業会調べ)。
ミスタードーナツでも、ドーナツ1個あたり約0・2g、
3年前に比べ8割近くも減らしている。
……………………………………………………………………
■主な食品中のトランス脂肪酸含有量 (100gあたりの量。単位g)

食品        平均      最小~ 最大
ショートニング  13.6     1.15~31.2
マーガリン     7.00    0.36~13.5
クリーム類     3.02    0.01~12.5
バター        1.95    1.71~ 2.21
ビスケット類    1.80    0.04~ 7.28
マヨネーズ     1.24    0.49~ 1.65
チーズ        0.83    0.48~ 1.46
ケーキ類      0.71    0.26~ 2.17
菓子パン      0.20    0.15~ 0.34
※クリーム類は、クリームや乳を原料とする加工食品や
コーヒー用のクリーミングパウダーなど

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/19/119182/

免疫学者、エッセイストの多田富雄氏が死去

(2010年4月21日 読売新聞)

世界的な免疫学者で、エッセイストとしても知られた
多田富雄さんが21日、前立腺がんで死去。76歳。

偲ぶ会は6月18日午後6時30分、東京会館。
喪主は妻、式江さん。

茨城県生まれ。千葉大医学部で学んだ。
免疫の仕組みで重要な働きをするサプレッサー(抑制)T細胞を発見、
1971年の国際免疫学会で発表、ノーベル賞級の業績と評価。
国際免疫学会連合会会長などを歴任。
84年、文化功労者。

免疫学を土台に、独自の生命論、文化・社会論を展開、
文筆業でも活躍した。
93年、「免疫の意味論」で大佛次郎賞、
2000年、「独酌余滴」で日本エッセイスト・クラブ賞を受けた。

01年、脳梗塞で倒れ、右半身まひとなったが、
左手だけでパソコンを操り、多数の著作を刊行。
08年、闘病の日々を描いた「寡黙なる巨人」で、小林秀雄賞。
新作能の作者としても知られ、相対性理論を題材とした
「一石仙人」などを発表。

06年、リハビリテーション医療に日数制限を設けた医療保険の
診療報酬改定に抗議、制限撤廃を求める44万人分の署名を
厚生労働省に提出。
最晩年まで、社会に積極的に働きかける姿勢は変わらなかった。

◆解剖学者、養老孟司さんの話

「自然科学は一種の美的感覚だが、多田さんは文章でも日常生活でも、
美しいものに対する感性が優れていた。
彼の文章は、冗舌な現代には珍しい、削り込んだ言葉の表現。
能の美しさに引かれたのも、同じ感性から。
病気をしていなければ、もっと活躍できた人だった」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/22/119354/

スポーツ立国戦略:ヒアリング終了 地域振興にも配慮

(毎日 4月20日)

長期的な国のスポーツ施策の方向性を示す
「スポーツ立国戦略」を策定するため、文部科学省が実施した、
5回に及ぶスポーツ関係者からのヒアリングが終了。

民主党に政権交代後、初めての予算編成は
トップスポーツ重視の色合いが濃かったが、
今回のヒアリングでは、地域スポーツに配慮する方向性も垣間見えた。

10年度予算では、チーム「ニッポン」マルチサポート事業に、
前年度の6倍近い約18億8400万円が計上、
国際競技力向上を目的とする事業が優先された形。
もともと民主党は、09年「政策集インデックス」で、
地域スポーツを重視する方針。

鈴木寛副文科相は、ヒアリングの席で
「すそ野が広がれば、トップは強くなる。
トップが強くなれば、すそ野は広がる」として、
元トップ選手が地域の総合型スポーツクラブの指導者となれる
体制づくりの必要性などを指摘。

出席者からも、「受け皿がなければ、安心してトップを目指せない」
(北京五輪陸上銅メダリスト、朝原宣治氏)、
現役引退後のセカンドキャリアの充実を求める声が相次いだ。

トップの強化に関して、バンクーバー五輪で、
韓国がスケート競技を集中的に強化して躍進したことを受け、
鈴木副文科相が、「韓国は(強化する競技の)『選択と集中』を
やっているという話を聞く」

JOCの市原則之専務理事は、「育てる部分も必要」と
理解を求めたが、文科省は既にこの3月、幹部が韓国を視察。
メダルが有望な競技を重視する方針を打ち出す可能性も。

文科省は、来年度予算に反映させるため、
今夏までにスポーツ立国戦略の方向性を打ち出す予定。
スポーツ振興における国の役割を定める「スポーツ基本法」や、
スポーツ行政を一元化するために設置が検討されている
スポーツ庁の在り方も検討。

◇ヒアリングの主な出席者

朝原宣治・08年北京五輪陸上銅メダリスト
平尾誠二・元ラグビー日本代表監督
古田敦也・前プロ野球・ヤクルト監督
山下泰裕・84年ロサンゼルス五輪柔道金メダリスト
岡部哲也・92年アルベールビル五輪スキーアルペン代表
河合純一・96年アトランタ、00年シドニー、04年アテネパラリンピック競泳金メダリスト
市原則之・日本オリンピック委員会専務理事
岡崎助一・日本体育協会専務理事
梅村和伸・全国高体連専務理事
飯田稔・全国体育系大学学長・学部長会会長
伍藤忠春・日本障害者スポーツ協会副会長

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100421k0000m050081000c.html

2010年4月25日日曜日

研究費1千万円→市民講座を年1回 研究者に義務化?案

(朝日 2010年4月19日)

国から1千万円の研究費をもらったら、年1回、子どもや市民に
自分の研究をわかりやすく説明する――
来年度以降、研究者がこんな必要に迫られる可能性。

政府の総合科学技術会議の調査会で、
2011年度から始まる科学技術基本計画の素案が示され、
「1千万円以上の研究費を得た研究者には、
小中学校や市民講座でのレクチャーなどの
科学・技術コミュニケーション活動への貢献を求める」との文言。

発表する研究論文には、一般向けにもわかりやすい
数百字程度の説明を添付することも求める。

内閣府の津村啓介政務官(科学技術担当)は、
「これから研究費を交付する方に、お願いすることを考えている」、
具体的な制度の検討に入った。

内閣府によると、英国では一部の研究費で1年に1回、
一般向けに内容を説明することを求めている。

総合科学技術会議の地方開催で傍聴者から、
こうした制度の導入の必要性が指摘、検討するきっかけに。

文部科学省の科学研究費補助金だけでも、
年5万人の研究代表者に平均300万円支給、
データベースによると、1千万円以上の支給が採択された研究が
年間1万件前後あり、対象は相当数に上りそう。

昨年の事業仕分けで、科学事業に厳しい判定が相次ぎ、
科学界からは反発を招いた。
津村政務官は、「科学者と国民のコミュニケーション不足を痛感」、
「民主党の科学政策が見えないとの批判があるが、
面白いアイデアはすぐに実行に移している」とアピール。

http://www.asahi.com/science/update/0419/TKY201004190202.html

遺伝資源:開発利益どう配分? 途上国と先進国の根深い対立

(毎日 4月19日)

医薬品や化粧品、食品は、私たちが生活するのに
欠かせない存在だが、その多くは「遺伝資源」と呼ばれる
動植物や微生物などを利用して開発。
そこで浮上した課題が、企業などが遺伝資源を使って
利益を得た際、提供側に利益をどう公平に配分するか。

各国は、その枠組みとなる議定書を、10月に名古屋市で
開かれる国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)
採択することを目指す。
遺伝資源を提供する途上国と、科学技術を生かして
遺伝資源を利用する先進国の対立は根深い。
「名古屋議定書」の行方は不透明。

この問題をめぐる交渉は、01年「ABS(遺伝資源へのアクセスと
公平な利益配分)作業部会」が設置されて本格化。
9回目となる作業部会は、コロンビアで3月22~28日に開かれ、
各国の政府代表や非政府組織(NGO)など約500人が出席。

直前には、「遺伝資源を提供する国に、利益が確実に
配分されるよう、締約国は国内法を整備する」、
「法的拘束力のある議定書の採択を目指す」などとした
議定書素案が各国に提示。
交渉の進展が期待されたが、対立解消の兆しはなかった。

途上国は、先進国に遺伝資源の出所の明記など、
原産国から持ち出された遺伝資源が最終的に製品化されるまでを
追跡できる仕組みが必要と主張。
先進国は、出所の開示は議定書の規定ではなく、
個別契約による柔軟な対応を提案。
提供国側の国内法整備と透明性確保を求めた。
多くの途上国は、法的整備が進んでいない。

遺伝資源から得られる利益についても、途上国はその対象を、
微生物が作り出した化合物に手を加えた「派生物」に拡大するよう
訴えたが、先進国は「個々の契約で対応すべきだ」と対立。

26日、南アフリカ代表が仕切り直しを求めて席を立ち、交渉が中断。
議定書の原案だった文書には、「議定書の原案は交渉しておらず、
今後も各国が修正する」との注釈を付けて閉幕。
この作業部会は、COP10前の最後の交渉の場として設定。
このままでは、COP10で議定書採択の見通しが立たなくなるため、
6月に再開することで、何とか議論継続が決まった。

交渉を見守ったバイオインダストリー協会の
炭田精造・生物資源総合研究所長は、
「途上国と先進国の隔たりは、依然大きい。
COP10は、困難な交渉となる」

遺伝資源をめぐる対立の歴史は長い。
条約が発効する93年以前、遺伝資源を利用するための
国際ルールはなく、誰でも自由に利用できた。

遺伝資源探索企業「ニムラ・ジェネティック・ソリューションズ」(東京)の
二村聡社長は94年、マレーシアで開かれた
国際シンポジウムでの出来事が忘れられない。

米国の研究者が、抗がん剤を植物から探す共同研究を、
東南アジアと実施していると成果を発表した直後、
バイオパイレーツだ」と非難。
バイオは生物、パイレーツは海賊を意味する英語。

02年、ABSの手続きの大枠を定めた自主的指針
「ボン・ガイドライン」ができたが、途上国は法的拘束力のある
枠組みが必要と主張。

「先進国は、我々の資源を使って収益を上げている」と途上国は強調、
先進国も、「この分野では、途上国に利益を還元しにくい事情がある」
医薬品の場合、開発に十数年要することも珍しくなく、
成功しないことすらある。
遺伝資源の利用に厳しい制限がかかると、資源開発自体が進まず、
先進国は、「途上国への利益配分もできなくなる」と理解を求める。

今回の作業部会で、途上国は議定書の適用時期について、
生物多様性条約発効前までさかのぼるよう主張。
アフリカの一部から、「大航海時代(15~17世紀)まで
さかのぼってほしい」との声。

二村さんは、「植民地支配を受けた途上国が、資源を収奪された、
という思いが根強く、今も変わっていない。
歴史的な背景を理解する必要がある」と解説。

◇独立行政法人通じた連携強化 「相手国との信頼が大切」

現在、国内の企業や研究機関は、どのように遺伝資源を探索し、
途上国との連携をどう強化しているのか?

飲料メーカー「カルピス」は07年、モンゴルの遊牧民族の
約40家庭を訪れ、伝統食品の発酵乳などを集めた。
発酵乳の味を作り出す乳酸菌と酵母を取り出すのが狙い。
分離した乳酸菌118種、酵母111種はすべて既知だったが、
同じ種でもたんぱく質の分解力などに違いのあることが分かり、
将来の新商品開発に役立つと期待。

この調査は、独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」
が公募した官民共同プロジェクトの一つ、
モンゴルとの事前交渉は、独立行政法人
「製品評価技術基盤機構(NITE)」が担当。

カルピス健康・機能性食品開発研究所の安田源太郎主任は、
企業が事前交渉すれば、膨大なお金と時間がかかる。
今回は、応募から実施まで半年足らずで済んだ

NITEが、モンゴルの研究機関と結んだ契約によると、
遺伝資源の所有権はモンゴル側にある。
発酵乳の収集やそこから乳酸菌などを取り出す「分離」という
技術力の育成に協力する。
遺伝資源は、NITEとモンゴルの研究機関で保管し、
カルピスは1年契約で借りて研究。
今回の利用料は1株500円、NITEを通してモンゴルに支払われる。
将来、カルピスが商業利用した場合、
売り上げの一部をモンゴルに支払う。

NITEは、ボン・ガイドラインができた02年以降、
モンゴルだけでなく、インドネシアやベトナムなど資源国と、
微生物資源の保全と持続的利用に関する覚書を交わした。
現地の研究機関と共同研究契約を結び、
微生物の収集・保全に取り組んでいる。
集めた微生物約1万9000株は保管され、年間契約を結んだ
日本企業に提供。
安藤勝彦・参事官は、「地道に信頼関係を築くことが大切」

財団法人「バイオインダストリー協会」と経済産業省は、
途上国と協力が円滑に進むよう、ボン・ガイドラインに基づいた
「遺伝資源へのアクセス手引」を作成。
独自に、海外の遺伝資源取得に取り組む国内企業や大学などの
相談窓口も設けている。
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<遺伝資源をめぐる動き>
92年 5月 生物多様性条約採択
93年12月 条約発効
02年 4月 COP6でABS指針「ボン・ガイドライン」を採択
     8月 環境・開発サミットで、新たなABSの枠組み交渉開始を決定
06年 3月 COP8でCOP10までに枠組みの結論を出すと決定
10年 3月 作業部会で議定書原案を協議
     6月 再開作業部会
    10月 COP10
*COPは条約締約国会議、それに続く数字は開催回を指す
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◇生物多様性条約

生物多様性の保全と持続可能な利用を目指し、92年に採択。
気候変動枠組み条約とともに、「双子の条約」と呼ばれる。
現在の締約国は、193カ国・地域。
米国は、遺伝資源の利用に規定を設けることはバイオ産業への
影響が大きいなどとし、批准していない。

◇ボン・ガイドライン

「遺伝資源へのアクセスと公平な利益配分(ABS)」の手続きの
大枠を定めた自主的指針。
企業などが遺伝資源を持ち出す場合、先住民や地域社会に
事前同意をとることや、公平な利益配分をするための
基本的な考え方や奨励手続きを規定。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100419ddm016040008000c.html

目指せ「世界ジオパーク」各地で取り組み活発化

(読売 4月19日)

地球の成り立ちを知るうえで貴重な地形などを保護し、
自然公園として活用する「世界ジオパーク」を目指す
動きが活発化。

室戸(高知)など8地域が、国内で初認定を受けた
昨年の糸魚川(新潟)などに続こうと準備を進め、
秩父(埼玉)など、20地域で推進協議会が発足するなどの
動きが出ている。

これまで、国内で世界ジオパークに認定されたのは、
大断層で知られる糸魚川と、地殻変動の跡が観察できる
洞爺湖・有珠山(北海道)、火砕流の猛威を伝える
島原半島(長崎)の3地域。
認定証の授与が、マレーシアで行われた。

これに続くと期待されているのが、
室戸や山陰海岸(京都、兵庫、鳥取)、阿蘇(熊本)など、
「日本ジオパーク」の認定を受けた8地域。

日本初の認定でジオパークが知られるようになり、
世界遺産のように観光客誘致にもつながるとの期待から、
活動に弾みがついている。

室戸では、地震隆起の跡や太古の地層があることを
知ってもらおうと、案内板を整備。
今年度に海岸部の遊歩道を整備するなど、
積極的な姿勢を示し、「世界」で認定を受けようと
取り組みを加速させる。

「日本ジオパーク」認定機関の日本ジオパーク委員会などによると、
秩父、下仁田(群馬)、磐梯山(福島)など、少なくとも20地域も
「世界認定」を目指し、推進協議会や研究会をつくるなど。

秋田県八峰町は、白神山地が「世界自然遺産」になっているが、
世界ジオパークの認定も目指す。

町の担当者は、「『世界』の冠が二つそろえば、
世界レベルの自然公園と肩を並べることができ、
観光客誘致に弾みがつく」

認定のための審査は、地質や地形の価値に加え、
地域が普及・教育活動をいかに活発に進めているかが、
重要なポイント。

糸魚川では、市が大断層「フォッサマグナ」を、
観光や学校教育に活用する取り組みを進めてきた点が高く評価。
日本ジオパーク委員会事務局の渡辺真人さんは、
「各都道府県で、最低1地域は日本ジオパークに認定されるよう、
地域を支援していく」

◇世界ジオパーク

貴重な地形や地層が残る地域を、国際的に認定した地質遺産公園。
国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の支援する
「世界ジオパークネットワーク」(パリ)が認定。
19か国の64地域が登録。
普及活動が少ないと、認定取り消しも。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100418-OYT1T00327.htm

若年性パーキンソン病:ミトコンドリアの異常蓄積が原因

(2010年4月20日 毎日新聞社)

20-30代で発症する神経難病「若年性パーキンソン病」が
起きる原因を、東京都臨床医学総合研究所の
田中啓二所長代行と松田憲之研究員らが突き止めた。

二つの遺伝子が働かず、細胞内の小器官「ミトコンドリア」の
不良品が蓄積することで発症している可能性が高い。
19日付の米科学誌ジャーナル・オブ・セル・バイオロジーに発表。

国内のパーキンソン病の患者は約15万人。
大半は高齢になって発症するが、若くして発症する
若年性パーキンソン病もある。
研究チームは、若年性パーキンソン病の特徴を持つマウスから
採取した細胞と、正常マウスで遺伝子などの働きを比較。

その結果、正常マウスでは、ミトコンドリアに異常が起きると、
2種類の遺伝子が関連して働き、異常ミトコンドリアが分解。
病気マウスの細胞では、遺伝子が働かず、
異常ミトコンドリアが細胞内に蓄積。

これらの2遺伝子が異常になると、若年性パーキンソン病が
起きることが知られているが、具体的な働きは分かっていなかった。

高齢患者の発症と若年性は症状が似ているため、
発症原因には共通性があると考えられている。
松田さんは、「二つの遺伝子が、ミトコンドリアの品質管理に
不可欠であることが分かった。
この発見が、パーキンソン病全般の新たな治療法につながってほしい」

J Cell Biol. 2010 Apr 19;189(2):211-21.
PINK1 stabilized by mitochondrial depolarization recruits Parkin to damaged mitochondria and activates latent Parkin for mitophagy.

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/20/119224/