2008年11月8日土曜日

海フェスタ実行委員会 決算見込み額約8600万円

(東海新報 11月6日)

第6回海フェスタ実行委員会(会長・甘竹勝郎大船渡市長)は、
7月19日から9日間にわたって大船渡市、陸前高田市、住田町、釜石市、
大槌町の5市町で開催した「海フェスタ」の決算見込み額をまとめた。

実行委としての総支出は約8600万円で、
財源は大船渡市や日本海事広報協会の補助金、さんりく基金を充てた。
期間外の協賛事業を含めた8月末までの来場者数は、73万4000人。
事業費決算額は、実行委総会の場で示された。

甘竹会長が、「開催の勢いを次年度以降にも引き継ぎ、
広域でできるものを考えていきたい」とあいさつ。
国土交通省東北運輸局の村上玉樹次長も来賓として祝辞を述べた。

議事では、20年度の事業報告と収支補正予算の専決処分、
収支決算見込みを協議し、いずれも原案通り承認。
同日付で、実行委を解散することも確認。

収支補正予算による6月時点での予算額は、1億360万円。
決算見込み額は収入、支出ともに8621万円。

大船渡市からの補助金収入が5655万円、全体収入の3分の2。
同市補助金には、県からの市町村総合補助金1000万円も充当。
日本海事広報協会も、1000万円を補助。
三陸地域の振興に向けた自主的な取り組みを支援する
財団法人・さんりく基金も、「いわて三陸広域連携事業」として1800万円を助成。

支出では、大船渡市内の主催事業運営を担った海フェスタ同市実行委に対し、
約2000万円補助。
記念式典には2277万円、ポスターといった宣伝広告費に1246万円、
三陸海岸観光物産展への880万円などを事業費として処理。

さんりく基金を活用した形で、物流活性化推進事業300万円を盛り込んでいる。
海フェスタ後の“脱一過性”を図るもので、
港湾や観光など開催市町が連携した形での事業を今後行う。
余剰金が発生した場合は、大船渡市に戻し入れる。

こうした事業費は主に、海フェスタ実行委の主催事業運営費に使われたもので、
協賛事業として開催された大船渡ロックフェスティバルや
チャオチャオ陸前高田道中踊りなどの総額経費は含まれていない。
開催市町の各団体も、協賛事業ごとに新規企画を織り交ぜるなど
盛り上げを図り、海フェスタによる経済効果は50億円程度と試算。

海フェスタ事業は、期間外開催の協賛事業も含めて102事業を実施。
実行委では、来場者数を73万4065人と発表。
三陸大船渡夏まつり、釜石よいさといった「港・海・川のフェスティバル」で
約48万2000人、寄港船の見学や体験航海で21万7000人が訪れた。
中心会場の大船渡市が最も多く、57万5000人と約8割を占めた。
陸前高田市が6万3000人、釜石会場が8万5000人、住田町は5000人、
大槌町は6000人。

http://www.tohkaishimpo.com/

大陽日酸が北上進出 北東北の需要見込む

(岩手日報 11月7日)

東証一部上場で産業ガス製造販売の国内最大手、
大陽日酸(東京都品川区、資本金270億3900万円、松枝寛祐社長)が、
北上市村崎野に本格進出。

来春着工予定の東芝北上新工場に伴う需要増を見据えた対応とみられるが、
半導体に限らず、宮城県北を含む北東北エリアの各種産業を対象。
総投資額は80億円。
従業員は20人程度を採用する計画、2009年11月の操業開始を目指す。

大陽日酸は、国内の産業ガスメーカーで、3分の1のシェアを占める最大手。
半導体のほか、自動車産業などが集積する北東北エリアの
今後の可能性を見越し、各種産業にエネルギーを供給する拠点となりそう。

新工場は、医療向けなどの酸素や半導体生産に使われる窒素、
自動車溶接に必要なアルゴンの3種類の産業ガスを製造、販売。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081107_3

マッサージが進行癌患者の疼痛を緩和し、気分を改善する可能性

(Medscape 9月24日)

マッサージが進行癌患者の疼痛と気分を即時的に改善する可能性を示す
多施設共同ランダム化試験の結果が、
『Annals of Internal Medicine』9月16日号に報告。

コロラド大学デンバー校医学部のJean S. Kutnerらは、
「様々な質の小規模試験において、マッサージ療法が疼痛や他の症状を
緩和する可能性が示唆されている」

「進行癌に伴う疼痛は、身体的・精神的苦痛の原因となり、
患者の機能的能力とQOLを低下させる。
マッサージは、セラピストによる介入(存在感、コミュニケーション、
治療効果を得たいという欲求)、リラクゼーション反応の誘発、
血液・リンパ循環の亢進、鎮痛作用の増強、炎症と浮腫の低減、
人の手による筋けいれんの解放、内因性エンドルフィンの放出増加、
疼痛シグナルを無効にする競合的な感覚刺激を通じ、
苦痛のサイクルを遮断する可能性がある」。

本研究の目的は、マッサージが進行癌患者の疼痛と苦痛症状を低減し、
QOLを改善する効果について評価すること。
地域集団を対象としたPalliative Care Research Networkを通じ、
中等度、重度の疼痛を伴う進行癌の成人患者380例を
マッサージ群(30分間のマッサージを6回を行う)、対照群(身体に簡単に触れる)に
無作為に割り付け、2週間の試験を実施。

主要評価項目は、Memorial Pain Assessment Cardを用い、
0-10ポイントの尺度でスコア化した疼痛の即時的変化と、
Brief Pain Inventoryを用い0-10ポイントでスコア化した疼痛の持続的変化。
副次的評価項目は、Memorial Pain Assessment Cardで
測定した気分の即時的変化、60秒間の心拍数・呼吸数、
McGill Quality of Life Questionnaire(0-10ポイント)で測定した
QOLの持続的変化、Memorial Symptom Assessment Scale(0-4ポイント)で
測定した不快な症状、鎮痛薬の使用(モルヒネ非経口製剤に換算した用量[mg/日])。

即時的効果に関する項目は、各治療セッションの直前と直後に測定、
持続的効果に関する項目はベースライン時と3週間にわたり毎週測定。
治療を受けなかった参加者は82例、37例はマッサージ群、45例は対照群。

両群において、疼痛(マッサージ群:-1.87ポイント、対照群:-0.97ポイント)、
気分(マッサージ群:1.58ポイント、対照群:0.97ポイント)の即時改善が認められた。
対照群に比べ、マッサージ群の方が疼痛および気分の即時的改善が顕著
(平均差はそれぞれ0.90ポイントと0.61ポイント)。

持続的な疼痛(Brief Pain Inventory平均的な疼痛:0.07ポイント、
Brief Pain Inventory最悪の疼痛:-0.14ポイント)、
QOL(McGill Quality of Life Questionnaire:0.08ポイント)、
不快な症状(Memorial Symptom Assessment Scale不快指数:-0.002ポイント)、
鎮痛薬の使用(モルヒネ非経口製剤に換算した用量:-0.10 mg/日)、
群間に有意な平均差は認められなかった。

本研究の限界として、即時効果を測定したセラピストが盲検化されず、
報告バイアスと有用性の過大評価が生じた可能性があること、
あらゆる進行癌患者に本結果を一般化できる確実性がないこと、
通常ケアの対照群がなく、身体への簡単な接触とマッサージ療法の
有用性の差について、結論が出せないこと。

マッサージは、進行癌患者の疼痛と気分を即時的に改善する可能性がある。
持続的な効果がないことと、両群で改善がみられたことから、
患者への気配りと簡単な身体への接触という手法が、
本患者集団に有用である可能性も検討すべきである」。

Ann Intern Med. 2008;149:369-379.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=82600

成人T細胞白血病、発症予防へ食品開発 沖縄の産学官

(日経 10月29日)

沖縄科学技術振興センター(那覇市)は、
琉球大学医学部や地元中小企業と共同で、
成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスに感染している人のうち、
発症するリスクの高い人向けの予防食品の開発に乗り出す。

これまでの研究で、沖縄産の海藻モズクから抽出した成分に、
ウイルスに感染した細胞が増えるのを抑える効果などがあることを確認。
それを基に、発症予防効果がある食品の実用化をめざす。

開発には、金秀バイオ(糸満市)、トロピカルテクノセンター(うるま市)、
バイオ21(同)など企業数社が参加する。
大分大学、福岡大学などの協力も得る。

http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20081104AT1S2100128102008.html

2008年11月7日金曜日

三陸町崎浜地区と花巻市東和町浮田地区農水省モデル事業

(東海新報 11月5日)

大船渡市三陸町の崎浜地区と花巻市東和町の浮田地区が、
農水省のモデル事業で今年度から5年計画で農山漁村交流を展開し、
まちづくりを推進する。

山海の郷土料理や歴史伝承活動などの事業交流を通じて、
地域活性化を図っていく。

漁村と農村という異なるエリアの両地区は、
崎浜の海産物と念仏剣舞、浮田の農産物と神楽など、
対照的な物、人、文化の交流が見込まれることから
今年度、農水省の農山漁村地域力発掘支援モデル事業に認定。

この事業は、「農山漁村活性化と自立」をキーワードに、
それぞれの地域資源とそれを活用して地域づくりを行う人材を地域力とし、
これを発掘し、その立ち上がりを直接支援する。

事業は5年間(20~24年度)で、1年目は100万円の事業費で計画づくり、
2年目から毎年200万円ずつの事業費で各種事業を展開。
8月に設立した浮田・崎浜地域振興協議会が実施主体。

崎浜公民館で崎浜地区の公益会、老人クラブ、婦人会、PTA関係者と、
浮田地区の関係者、NPO法人いわて地域づくり支援センター、
岩手大農学部の学生ら約30人が集い、
交流プログラムの作成に向けてワークショップを開いた。

海の暮らしの暦づくりを実施。
歴史伝承、食育、子どもの遊びをテーマに3班に分かれて、
地域の自慢として浮田の人に紹介したい崎浜の暮らしや
文化などについて話し合った。

今年度は、それぞれの地域にある人的資源や物的資源を共有しながら、
交流を基本とするふるさとづくり計画を作成。
来年度以降に具体的な取り組みを開始する。

花巻市浮田振興センターの藤井正昭局長は、
「子どもたちの交流による伝統芸能の継承や、お互いの特産品を使った
共同の特産品開発などで地域活性化につながれば」と話す。

崎浜公益会の遠藤喜隆会長は、
「崎浜とは暮らしも文化も異なる浮田との交流は、
物の考え方ひとつ取っても刺激になる。
物や人、文化の交流で地域づくりに弾みをつけたい」、
今後の事業の展開に期待。

http://www.tohkaishimpo.com/

環境に配慮した産地づくり探る 盛岡でシンポ

(岩手日報 11月3日)

県環境と共生する産地づくりシンポジウムは、
いわて県民情報交流センター(アイーナ)で開かれた。
消費者や生産者ら約90人が参加し、
環境に配慮した農業の在り方について理解を深めた。

農業者や消費者団体などでつくる県環境と
共生する産地づくり運動推進協議会の主催。

科学ジャーナリストの松永和紀さんが、「食卓の安全学」と題し基調講演。
松永さんは、「無農薬であれば安全と考えるのは間違い」と指摘し、
「食の安全、環境負荷軽減について多様な情報を収集し、
総合的に判断してほしい」と呼び掛けた。

一関市と平泉町、藤沢町の生産者で組織する、
いわい農産研究会の葛西信昭副会長が、
減農薬やGAP(農業生産工程管理手法)の取り組みなどを紹介。

葛西副会長は、「家庭などでの食育につながるような
環境保全型農業を進めたい」と主張。
同日は、優良団体の元村農業振興推進組合(滝沢村)、
いわい農産研究会を表彰。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081103_1

考える力(10)「論理力」磨く法学部生

(読売 11月1日)

大学も、学生の思考力を高める必要性に迫られている。

法曹を多数輩出してきた中央大学法学部の多摩キャンパス。
法律・政治学科に2004年から開設された科目「導入演習」は、
文章や資料を読み解く力、論理的な思考力や分析力を育てる少人数授業。
1年の選択科目だが、履修率は98%。

橋本基弘教授(49)(憲法学)は、後期から演習でディベートをさせている。
学生を3人ずつ6班に分け、毎週2班を指名。
「竹島問題」、「東京五輪を招致すべきか」など、
毎回、社会性の強いテーマを選ぶ。

10月22日は、「学校選択制を容認すべきか」。
「学区制度が廃止されれば、学校や教員の競争意識が向上する」、
「教員は多忙で、学校間格差を埋める余裕はない」、
「選択制を導入して良かったと評価する教育委員会が3分の2ある」、
「集団下校ができず、安全面の問題から制度を縮小する所も出てきた」

学生は、1週間で集めた新聞記事やデータを基に意見を戦わせた。
1時間あまりの討論を、残る学生が多数決で判定する。
この日は容認派の勝利。

橋本教授が「相手の主張を想定して、反論を用意しておくことは、
法律の議論でも大事だ」と締めくくった。

橋本教授は、「今の学生は議論に慣れておらず、
特に予期しない反論への対応に弱い。
法律家は、相手と論理的に議論する力が必要となる。
裁判員制度が始まれば、その傾向はさらに強まる」と見る。

導入演習を始めたのは、法科大学院がスタートした年。
井上彰法学部長(59)は、「高校や予備校で、読んだり書いたりする
経験が少ない学生は、討論を含めた基本的な力が足りない。
法科大学院設立後の法学部の役割を考えた時、
必要な力の基礎を1年のうちから鍛えるべきだと考えた」

新司法試験でも合格率を維持し、司法改革にも柔軟に対応できる、
質の高い法曹が求められているだけに、
「読解力や思考力は本来、学生が自主的に学んできてほしい力だが、
大学が進んで学生に身につけさせなければ、法科大学院制度に対応できない」

導入演習は専任教員73人が一つずつ担当し、すべて、学生は20人以下。
演習の内容は教員に任されており、新聞記事や本を精読したり、
要約を発表したり、討論を行ったりする。
教員間で演習の内容を情報交換し、他学部からディベート指導の専門家を
呼ぶなどの教員研究会も定期的に開いている。

演習導入から5年目。
3年の専門ゼミで議論が活発になり、論文を書くことを苦にしない
学生が増えたという声も、教員から出始めた。
教員の負担増への対応という課題もあるが、2年生でこうした演習を
導入することも視野に入れている。
読解力と思考力の育成を補う授業は今や、大学教育でも必須となりつつある。

◆法科大学院

司法制度改革の目玉として、2006年に始まった新司法試験の受験に
修了が必要な学校。米国のロースクールがモデルで、74校が認可。
当初は修了生の7、8割が合格する見込みだったが、
今年度の合格率は33%。3校は合格者がいないなど、
学校間格差も目立ち、規模の縮小を求める声が強くなっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081101-OYT8T00225.htm

1型糖尿病の発症における自然免疫と腸内細菌叢

(nature 2008年10月23日号Vol.455 No7216 / P.1109-1113)

1型糖尿病の発症における自然免疫と腸内細菌叢

[原文]Innate immunity and intestinal microbiota in the development of Type 1 diabetes

Li Wen1,7, Ruth E. Ley2,7,8, Pavel Yu. Volchkov3,7, Peter B. Stranges3,4, Lia Avanesyan3,4, Austin C. Stonebraker4, Changyun Hu1, F. Susan Wong5, Gregory L. Szot6, Jeffrey A. Bluestone6, Jeffrey I. Gordon2 & Alexander V. Chervonsky3,4

1.Section of Endocrinology, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut 06520, USA 2.Center for Genome Sciences, Washington University School of Medicine, St Louis, Missouri 63108, USA 3.Department of Pathology, University of Chicago, Chicago, Illinois 60637, USA 4.The Jackson Laboratory, Bar Harbor, Maine 04609, USA 5.Department of Cellular and Molecular Medicine, School of Medical Science, Bristol University, Bristol, BS8 1TD, UK 6.Diabetes Center at the University of California San Francisco, San Francisco, California 94143, USA 7.These authors contributed equally to this work.8.Present address: Department of Microbiology, Cornell University, Ithaca, New York 14850

1型糖尿病(T1D)は、T細胞がインスリン産生β細胞を破壊することで発症する、
消耗性の自己免疫疾患である。

先進国におけるこの病気の発症率が、過去数十年間に増加していることは、
ヒトがもつ微生物環境を含めた環境変化が
疾患の病因に影響している可能性を示している。

非肥満糖尿病(NOD)マウスにおける自然発症性T1Dの発症率は、
飼育施設の微生物環境や、マイコバクテリウムあるいは
各種の微生物製品の投与のような、微生物刺激への曝露によって
影響を受けることがある。

今回、MyD88タンパク質(微生物刺激を認識する複数の自然免疫受容体に
対するアダプター分子)欠損NODマウスで、特定の病原体を含まないものは、
T1Dを発症しないことを明らかにする。

無菌のMyD88欠損NODマウスは、強い糖尿病を発症するが、
この無菌MyD88欠損NODマウスにヒトの腸内に通常存在する
微生物門に相当する特定の微生物群を定着させると、T1Dが軽減するため、
この作用は共生微生物に依存している。

MyD88の欠損によって、腸遠位部の微生物叢の構成が変化すること、
特定の病原体を除去したMyD88欠損NODドナーマウスの微生物叢に、
無菌NODレシピエントマウスを曝露するとT1Dが軽減されることを示す。

これらの知見は、腸内微生物と自然免疫系との相互作用が、
T1Dの素因に影響を与える重大な後成的因子であることを示している。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200810/nature/7216/01.html

2008年11月6日木曜日

米大統領選:バラク・オバマ氏勝利演説全文

(毎日 11月6日)

やあ、シカゴのみなさん。
ここにもし、米国では何でも可能だということを疑い、
建国者の夢が生き続けていることに疑問を持ち、
私たちの民主主義の力に疑念を抱く人がいるなら、今夜がその「答え」だ。

その「答え」を示したのは(投票所の)学校や教会にできた、3時間、4時間も
(投票を)待った人々の列だ。
彼らの多くには人生で初めての経験だったが、
「今回は違うだろう、今回は私たちの声によって変えられる」と信じて票を投じた。

「答え」を出したのは、若者や高齢者、裕福な人や貧しい人、
民主党員や共和党員、黒人、白人、ヒスパニック、アジア系、ネイティブアメリカン、
同性愛者とそうでない人、身体障害者やそうでない人たちだ。
米国人は、我々が決して個人の寄せ集めや、単なる赤色の州(共和党)と
青色の州(民主党)の集まりではないというメッセージを世界に発信した。
我々は今も、そしてこれからも、アメリカ合衆国そのものだ。

その「答え」は、何かを達成できることなど冷笑し、恐れ、疑えとあまりにも
長い間、言われ続けてきた人々を、歴史の円弧に手をかけて向きを変え、
もう一度、より良い明日のための希望へと導くものだ。

ここまで来るのに長い時間がかかった。
しかし今夜、我々がこの日の選挙で成し遂げたこの瞬間、米国に変革が訪れた。

今朝早く、マケイン上院議員から、たいへんな丁重な電話をもらった。
マケイン氏は、長く苦しい選挙戦を戦ってきた。
しかし彼は愛する国のため、もっと長く苦しい戦いを続けてきた。
米国のため、にわかには想像できないほどの自己犠牲に耐えてきた。
彼のような勇敢で私心のない指導者のおかげで、
我々はよりよい暮らしを享受している。

私は彼と、(副大統領候補だった)ペイリン(アラスカ州)知事の
これまでの業績を祝福する。
この国の新たな約束を果たすため、私は彼らと共に働くことを楽しみにしている。

私は、この選挙を心底から共に戦ったパートナーに感謝したい。
彼は、スクラントン通りで育ち、デラウエアの自宅へ帰る電車に揺られるような
普通の人々のために演説をしてきた。
合衆国副大統領に選ばれたジョー・バイデン氏だ。

そして、16年間私に献身し、友情をはぐくみ、家族の要となり、
愛情を惜しみなく与えてくれた彼女なしにはここにいられなかった。
次のファーストレディーとなるミシェル・オバマだ。
サーシャ、マリア。想像できないほど君たちを愛している。
君たちは、手に入れたかわいらしい子犬と一緒に
新しいホワイトハウスに行くことになる。

そして、もはやこの世にいないものの、私を今日あるように育ててくれた祖母が、
家族とともに見つめていることを知っている。
今夜、彼女たちの姿を見られないのは寂しく、計り知れないほど恩を感じている。
マヤとアルマをはじめとする兄弟姉妹たちへ。
私に与えてくれた支援をありがとう。彼らには本当に感謝している。

この選挙戦を縁の下から支えてくれた陰の英雄、マネジャーのデビッド・プロフ氏。
彼はこの国の歴史に残る、最高の政治キャンペーンを張ってくれた。
そして、最高戦略責任者のデビッド・アクセルロッド氏。
あらゆる場面で私とともにいてくれた。
史上最高の選挙チームがこの日の勝利をもたらした。
私は、彼らがこの日のために身を粉にして働いてきたことに対してずっと感謝する。

しかし何よりも、私はこの勝利が本当は誰のものなのか決して忘れない。
それはあなたたち。あなたたち国民だ。

私は、有力候補ではなかった。
資金も支持もあまりないところから始めた。
選挙戦は、ワシントンのホールから始まったのではない。
デモインの裏庭、コンコルドの居間、チャールストンの玄関からだった。
労働者のみなさんが決して多くない貯金の中から5ドル、10ドル、20ドルと、
資金を工面してくれた。

運動は、若い人たちが加わってうねりとなって行った。
「無関心な若者」という迷信を拒否し、家と家族から離れ、睡眠時間を削り、
わずかな報酬で働いてくれた。
さらに、決して若くはないが、ひどい寒さや焼けるように暑い日、
勇気を持って見ず知らずの家のドアをノックし続けた人々もいた。
自発的に組織を作り、「人民の、人民による、人民のため政治」
(リンカーン大統領の言葉)が決して地球上から滅びていないことを、
2世紀後に実証した何百万人ものアメリカ人が力を与えてくれた。

これは、あなたたちの勝利だ。
あなたたちが、選挙に勝つためだけに行動したのではないことを私は知っている。
私のためでもないことも。
あなたたちは、これからの仕事の大変さを理解しているために行動をしてくれた。
今夜は祝うにしても、明日からの課題は、私たちの生涯のうちで
とてつもなく大きなものであることを私たちは知っている。
それは2つの戦争であり、危機的状況にある地球であり、
今世紀で最悪の金融危機である。

私たちが今夜ここに立つ一方で、イラクの砂漠やアフガニスタンの山地で起床し、
私たちのために、自らの命を危険にさらす勇敢な米国人がいることを知っている。
ローンや医療費、子どもたちを大学に進学させる学費をどうひねり出そうかと、
子どもたちが眠りについた後も、横たわったまま起きて考えている父母がいる。

新しいエネルギーを活用し、新たな雇用を創出し、新しい学校を建設し、
恐れに立ち向かわなければならない。
同盟関係を修復しなければならない。

目の前に続く道は長い道のりだろう。
私たちが直面する坂は急だろう。
1年間、いや1期では、そこまでたどり着けないかもしれない。
しかし、アメリカよ、私たちがそこにたどり着くため、
今夜ほど大きな希望を持ったことはない。

私は約束する。
私たちは国民としてそこに到達できることを。

妨げや、フライングもあるかもしれない。
私の大統領としての決定や政策に、賛同できない人も多くいるだろう。
政府があらゆる問題を解決することはできないことも、私たちは知っている。
しかし、直面する困難な課題について、私は常に、あなたたちに正直でいる
意見が食い違った時こそ、私はあなたたちの声に耳を傾ける。

国を立て直す仕事への参加をお願いしたい。
そのための唯一の方法は、221年間やってきたように、
こわばる手でブロックやレンガを1枚1枚積み上げていくしかない。

21カ月前、冬の最中に始まったことは、この秋の夜に終わることはない。
我々は、この勝利だけを求めていたのではない。
この勝利は、我々が求める変革を成し遂げるための一つの機会に過ぎない。
そしてその変革は、かつての道に戻っては遂げることができない。

あなたたちがいなければ、また新たな奉仕や犠牲の精神なくしては、
変革をもたらすことはできない。
だから、新たな愛国心を呼び起こし、我々一人一人が自分のことだけでなく、
互いを気遣い、懸命に努力する責任精神を呼び起こそう。

覚えておこう。
もしこの金融危機から学ぶことがあるとすれば、
「大通り」が苦しんでいる間は、ウォールストリートの繁栄もあり得ないということ。

この国では、我々は一つの国家、一つの国民として高揚し、凋落もする。
我々の政治を長い間、毒してきた党派主義や、狭量さや、未熟さに
退行しようとする誘惑にあらがおう。

思い出そう。
自己信頼と個人の自由、国家の融和という価値に基づいた党である
共和党の旗を、最初にホワイトハウスに掲げたのは、この州出身の人物だった。
これらは、我々すべてが分かち合う価値観だ。
民主党が偉大な勝利を収めた今夜、我々もまた謙遜と決意を持って、
我々の前進を妨げてきた隔たりを解消するために、その価値観を共有しよう。
リンカーン(元大統領)が、今よりずっと分裂していた国家に語ったように、
我々は敵ではなく、友人同士だ。
情熱が緊迫しても、我々の感情の結びつきを破壊させてはならない。

私を支持してくれなかった米国の人々の票を、私は今夜、
得られなかったかもしれない。
しかし、私はあなたたちの声も聞く。
私には、あなたたちの助けが必要だ。
私は、あなたたちのための大統領にもなる。

海外や、議会や宮殿で今夜の様子を見守る人々、世界の忘れられた街角で
ラジオの周りに集まって聴いている人々へ。
我々の物語は個々のものだが、我々は運命を共有している。
米国の新しい指導力の夜明けは、すぐそこだ。

世界を引き裂こうとする人々へ。我々はあなたたちに勝つ。
平和と安全を求める人々へ。我々はあなたたちを支援する。
そして、米国のかがり火は、まだ明るく輝いているのだろうかと考えている
すべての人々へ。
我々の国家の真の強さは武力でも富の力でもなく、
永続的な理想の力にあることを今夜、我々は改めて証明した。
それは民主主義であり、自由であり、機会であり、確かな希望である。

これが本当の米国の英知だ。米国は変われる。
我々は完全に団結できる。
既に我々が成し遂げたことが、我々が明日できること、
やらなければならないことへの希望を示している。

今回の選挙では、何世代にもわたって語り継がれるだろう
初めての出来事や物語がたくさんあった。
しかし今夜、私の頭に浮かんでいるのは、アトランタで投票したある女性のことだ。
彼女は、ある一つのことを除いて、自分たちの声を届けようと
投票所で並んだほかの数百万の人々と変わらない。
彼女--アン・ニクソン・クーパーさんは106歳

彼女は、奴隷制度時代のわずか一世代後に生まれた。
道に車はなく、空に飛行機はない時代。
彼女のような人が、二つの理由で投票することができなかった時代。
その理由は、女性であるということと、肌の色だった。

今夜私は、米国の1世紀の間に彼女が見てきたすべてのことに思いをはせる。
その心痛と希望、戦いと進展、「我々にはできない」と言われていた時代、
そして米国の信念を断行した人々のこと。
そう、「我々にはできる」ということを。

女性が声を上げられず、希望が打ち砕かれた時代を彼女は生き抜き、
女性が立ち上がって声を上げ、投票によって自分たちの声を
届けようとする姿を見た。そう、我々にはできる。

彼女は、(1930年代に米国を襲った)砂嵐や、大恐慌(1929~)で
国中が絶望した時にも、ニューディール政策で新たな雇用や
新たな共通の目標を作り出し、国が恐怖に打ち勝つ姿を見てきた。
そう、我々にはできる。

爆弾が我々の湾に落ち、専制政治が世界を脅かしたが、
ある世代が立ち上がり、民主主義が守られるのを彼女は目撃した。
そう、我々にはできる。

(黒人解放の契機となったアラバマ州)モンゴメリのバス(ボイコット運動)も、
(警察がデモ隊を消火ホースによる散水で抑圧しようとした同州)バーミンガムも、
(参政権を求める黒人が州警察などに暴行を受けた同州)セルマの橋も、
彼女は知っている。
アトランタから来た(キング)牧師の、「我々は勝利する」という言葉も彼女は聞いた。
そう、我々にはできる。

人類が月に到達し、ベルリンの壁が崩壊し、
世界は我々の科学と想像力によって結ばれた。
そして今年、この選挙で、彼女は(電子投票機の)画面に指が届き、1票を投じた。
なぜなら106年後の米国で、一番良い時と一番悪い時を通じ、
米国は変われると知っているからだ。
そう、我々にはできる。

アメリカよ、私たちはここまで来た。多くのものを見てきた。
しかし、やるべきことはまだたくさんある。
だから今夜、自分たちに問いかけよう。
我々の子どもたちが来世紀を見、私の娘たちがアン・ニクソン・クーパーさんの
ように長生き出来たら、彼女らはどんな変革を見るだろうか。
我々は、どんな進歩を遂げているだろうか。
今は、その問いに答える機会だ。
これは私たちの瞬間だ。

人々を仕事場へと戻し、子どもたちのための機会の扉を開ける時だ。
繁栄を取り戻し、平和の大義を促進し、アメリカンドリームを再生し、
我々は一つであり、息をするように希望を持つのだという
基本的な真実を再確認する時だ。
我々にはできっこないと皮肉を言い、疑う人に出会ったら、
人々の精神を集めた不朽の教義で答えよう、「我々にはできる」と。

ありがとう。
あなたたちに神の加護がありますように。
そして、アメリカ合衆国に神の加護がありますように。

http://mainichi.jp/select/world/presidential/news/20081106mog00m030056000c.html

玉山金山遺跡活用推進協議会 金山サミットin陸前高田開催

(東海新報 11月4日)

陸前高田市竹駒町の産金地「玉山金山」の歴史的価値を再認識しようと、
今春組織した玉山金山遺跡活用推進協議会(上部修一会長)は、
高田町の市ふれあいセンターで、初の「金山サミットin陸前高田」を開いた。

平泉の黄金文化とつながりがある気仙や宮城県北地域の金山関係者が
それぞれの遺跡を紹介。
今後の地域振興策として、平泉文化の世界遺産登録を支援していくことを確認。

サミットは、金山遺跡を今後の地域振興策にいかに役立てていけるかを
探るもので、市内外から約230人が参加。
上部会長は、「これを機に金山のある地域が連携し、
観光振興につなげていこう」とあいさつ。

中里長門市長は、「平泉の世界遺産登録延期は残念だが、
今後につながるサミットに」と歓迎。
県大船渡地方振興局の高橋克雅局長は、
「3年後の世界遺産登録に向けて協力を」と語った。

記念講演では、玉山金山と縁のある塩釜神社の元禰宜で、
現在は京都の平野神社で宮司を務めている尾崎保博さんが、
「平泉黄金文化と気仙」と題し登壇。
講師は、砂金採集をアドバイス。
「気仙地域のどこの川でも砂金が採れることが分かれば、
産金の歴史を証明することになり、ひいては平泉文化ともつながってくる」、
世界遺産登録を実現させるためには、砂金を採ること」と強調。

県埋蔵文化財センターの相原康二所長のコーディネーターによる
リレートークでは、大船渡市の今出山金山(元同市収入役・中村隆男さん)、
玉山金山(陸前高田市立博物館専門研究員・細谷英男さん)、
住田町の蛭子館金山(町教育委員・千葉英夫さん)をはじめ、
一関市(磐井郡)の諸金山、宮城県気仙沼市の鹿折金山
本吉町の大谷金山についての関係者や研究者が遺跡を紹介。

いずれの金山もすでに閉山したものの、
地域の産業や経済の発展に大きく貢献してきたことを説明。
陸前高田市の細谷さんは、今後の遺跡活用について
「平泉文化との結びつきが伝えられる岩手県南地域と宮城県北地域の
金山遺跡を歴史的な地域資源として、点から面へと発展させ、
地域間交流の促進を」と訴えた。

竹駒地区の青壮年有志で組織する竹駒21の会の佐々木金雄会長が、
▽金山遺跡を大切に保存し、調査を進めて後世に引き継ぐための活動を推進、
▽金山遺跡を貴重な地域資源ととらえ、地域活性化に役立つ活動、
▽金山遺跡にかかる諸活動を通じて「平泉文化の世界遺産登録」を支援する、
と大会宣言案を読み上げ、満場の拍手で承認。

上部会長は、「多くの人に参加してもらい感謝している。
今後は、竹駒地域の振興や活性化につなげたい」。

サミットの関連行事として行われた史跡散策会「玉山金山遺跡ツアー」には、
定員の20人が参加、千人坑跡や和右衛門坑跡、玉山神社を訪れて
往時に思いを馳せたほか、サミット会場では玉山金山に関する写真や資料を
並べた「遺跡展」が開かれた。

http://www.tohkaishimpo.com/

考える力(9)司書教諭「問う力」指導

(読売 10月31日)

図書館で「読書科」の授業を続ける私立高校がある。

授業の場所は、図書館の中の教室。
図書館の使い方や論文の書き方を学びながら、研究テーマを決め、
3年かけて論文1本を仕上げる。
私立関西学院高等部では、そのための週1回の「読書科」の授業が伝統。

3年生は、論文の提出期限まで残り3週間という時期を迎えていた。
冒頭、宅間紘一教諭(64)が、「たとえ一般論でも、他人の文章は、
全面的に自分の文章に書き直すこと。
結論はテーマに対する答えで、充実させること」などと、短く指示。

生徒はすぐ図書館に散り、本を調べ直して注釈を書いたり、
添付する資料や図表を探したりし始めた。
「3年になると、自分でどんどん調べていきます」。
論文は、400字の原稿用紙に直せば、20~50枚分ほどになる。

宅間教諭は同高で約30年間、司書教諭として読書科の授業を担当。
本を読む力と調べる力を一体として育て、自分で知識を身につける
方法を学ばせるのが狙い。

宅間教諭は、学力を「問う力、答える力、発表する力」と考える。
受験で重視されるのは、知識を基に解答を導く「答える力」。
しかし、「課題を自分で発見し、研究に値する適切なテーマを設定する
『問う力』は、学力の土台なのに、軽視されている

読書科の指導で最大のポイントは、研究テーマの設定。
「環境問題」などの漠然としたテーマで、論文は書けない。
社会の動きや時代と関連させつつ、具体的で独自性のある切り口が必要。
「自分は何を調べたいのか」を徹底的に考えさせ、テーマを引き出す指導がいる。

去年の3年生のテーマは、「土方歳三にとって、『武士』とはどのようなものか」、
「妖怪は時代によってどのように変わってきたか」、
「自由な校風にすることにはどのような意味があるのか」など。
確かに具体的でユニークだ。

ある年、「図書館で検索しても資料が見つからない」とこぼす生徒がいた。
生徒が選んだテーマは、「ポイ捨て」。
具体的に調べたいことを聞くと、「ごみ問題」と答える。
「ごみ」や「環境」で探すよう指導した。
生徒は、多くの本が見つかって喜んでいたが、
「この本は少し役立つけど、何か違う」と言い始め、やがて気づいた。

「先生、僕はごみを平気で捨てる日本人の心に、興味があったんです」
「『テーマを変えたい』、『資料が見つからない』と言ってきた時がチャンス」と宅間教諭。
「ここでの教師との問答は、生徒が自分の心と問答をすることと同じ。
だから答え過ぎないことが大事。
自力で乗り越えれば、問題を見つける力がつく

ここ数年は、ネットで情報が引き出しやすくなった分、
「いかに自分の言葉で語らせるか」に心を砕くという。
調べ学習も、的確なリードがあって初めて、生徒の生きた力になる。

◆司書教諭

学校図書館を利用した読書教育、図書館の管理などを行う。
昨年5月時点で、小中高校の約6割に当たる2万5000校に配置。
教員免許に加え、司書教諭課程の履修が必要。
学校図書館法で1953年に誕生したが普及が進まず、97年の法改正で、
小中高校とも12学級以上の学校は、5年以内の配置が義務。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081031-OYT8T00252.htm

自殺原因63%は健康 精神科医療に重点 政府対策白書

(共同通信社 2008年10月31日)

政府は、「2008年版自殺対策白書」を決定。
07年の自殺原因は、健康問題の63・3%が最多とのデータを紹介。
対策として、「心の健康づくり」に重点を置き、
うつ病などに関する精神科医療の充実や職場でのメンタルヘルス強化を挙げた。

自殺対策白書は、昨年に続き2回目。
年間自殺者が10年連続で3万人を超えたことに危機感を示し、
昨年策定した自殺総合対策大綱を踏まえ、2016年に05年時点より
自殺死亡率を20%減らす政府目標の早期達成を掲げた。

昨年の自殺者3万3093人のうち、自殺原因を特定できた2万3209人を分類。
健康問題に次いで経済・生活(31・5%)、家庭(16・2%)、勤務(9・5%)、
男女(4・1%)の各問題が原因。
年代、男女別でみると、30~60歳代までは男性の比率が70%を超えた。

自殺総合対策会議(会長・河村建夫官房長官)では、
「自殺対策加速化プラン」を決定。

プランには、
(1)硫化水素の製造方法など有害情報をインターネットから
削除する活動に取り組む民間団体への支援、
(2)市町村に対し自殺問題の担当部局の設置を働き掛け、などを明記。

▽自殺総合対策大綱

自殺対策基本法に基づき、昨年6月に策定した国の指針。
自殺を経済状況や健康状態などにより、
「心理的に追い込まれた末の死」と位置付け、
相談・支援態勢の整備はじめ社会的な取り組みによる防止を打ち出した。
重点施策に多重債務や過労への対策、民間団体支援などを挙げ、
2016年の自殺死亡率を05年より20%減少させる目標を明記。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82332

2008年11月5日水曜日

第2部 かけ橋として/5止 「面白さ」、より身近に

(毎日 11月2日)

「わ、浮いてる」
スペースシャトルをかたどった模型が磁石の上から数ミリ浮き上がると、
見ていた高校生たちから声が上がった。
低温になると、電気抵抗がゼロになる超電導現象を利用し、
リニアモーターカーの原理を説明する実験。

「中の超電導体はどんなものですか」、
「なぜ超電導が起こるのですか」と質問が飛び、
解説役の大学生が紙に図を書きながら説明。

福島県の郡山市ふれあい科学館で、同館と新潟大工学部が共同で開いた
科学教室に、県立福島高校の1、2年生約30人が訪れた。
同校は昨年、理数教育を重点化する文部科学省の
「スーパーサイエンスハイスクール」に指定

希望する生徒向けに週1時間、理科や数学の発展的な授業や実験をする
「探究クラス」を、1、2年生に設けている。
その一環として、生徒による科学教室を同館で開く計画を立てた。
1年生を担当する橋爪清成教諭(理科)は、
「生徒たちには、常に外の社会を見る姿勢を身に着けてほしい。
地域にも貢献したい」と、狙いを話す。

先輩格の新潟大の取り組みに「弟子入り」した高校生たちは、
環境中の放射線を測定したり、地震で起こる液状化現象を再現する
実験などを体験。

科学館の職員や大学生らに「科学を伝えるコツ」を尋ねて回った。
超電導の実験で熱心に質問していた1年の男子は、
「どんな質問にも答えられて、すごい。準備が大切だと思った」。
別の1年の男子は、「写真や図を使い、難しい言葉を使わずに
説明すると伝わりやすい。なんとかできそう」と自信を持った様子。

橋爪教諭も、学生に同行した今泉洋・新潟大工学部副学部長から
「相手によって、説明の仕方や使う言葉を変えなくてはいけない」と
アドバイスを受けた。
「小学生に分かる説明ができればいいと思っていたが、
それだけじゃだめなんだ」とうなずいた。

こうした取り組みに、科学館側も「幅広く科学の面白さを知ってもらえる。
相手が高校生なら気軽に質問できる利点もあるのでは」(厚海一夫事業課長)と期待。
科学館と中学校や高校との同様の連携は、
静岡県や岡山県などでも行われている。

福島高校の生徒たちのデビューは12月。
橋爪教諭は、「将来的には、学校のある福島市内でも科学教室を
定期的に開きたい」と意気込んでいる。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20081102ddm016040055000c.html

考える力(8)批評し合い養う読解力

(読売 10月30日)

教科書の文章を批評することが、読み解く力の定着につながる。

鹿児島県南部の進学校、県立加世田高校(南さつま市)
浜田秀行教諭(34)は、1年生の国語総合の時間で、評論文の授業に臨んだ。
教材は教科書にある多木浩二氏の「世界中がハンバーガー」。
ファストフード産業が、世界の食習慣を均質化していくことに警鐘を鳴らした文章。

生徒たちは1週間前のテストで、この評論文の要約を200字程度で書いている。
浜田教諭は、班ごとに、テストで書いた同級生の要約文を評価するよう指示。

評論文は問題提起、問題の背景、影響、問題解決の糸口の
4要素から構成される。友達の要約に、要素が入っているかを分析して。
グループで話し合ってもいいぞ」

生徒は互いに、「この要約は問題提起の部分が入っていないよね」、
「背景の部分が不必要に長く見えるけど、どうかな?」などと批評し合った。
その結果は、個々の要約文に書き添え、筆者に返された。

次に浜田教諭が出した課題は、評論文そのものの批評。
1学期に学んだ別の評論文とも比較しながら、「主張の明確さ」、
「文や段落のつながり」、「表現の工夫等」など5項目それぞれに、
5点満点で点数をつけさせた。

国語の授業は従来、教科書にある評論文の内容を的確にくみとったり、
小説の登場人物の感情を読み取ったりする読解力を育てることに、
重点が置かれてきた。

浜田教諭が教員になったのは、現在の高校学習指導要領が
告示された9年前。
国語の目標に「伝え合う力を高める」という表現が加わり、
意見を論理的に述べたり、相手の考えを尊重したりする力を
育てる方向性が示された。

そこで、教科書の教材文を単なる「お手本」に終わらせず、
論理構成を考えつつ、生徒に批評させる指導に力を入れた。

「論理的に話せと指導をしても、何が論理的な文章なのか、
高校生は十分に理解していない。
高校では文章を読み取った上で、自分はどう思うかを考え、
論理的に表現するまでつなげる授業が大事」

1学期には、芥川龍之介の小説「羅生門」でも、
論理を重視しながら批評を書く授業を行った。

「『狐狸がすむ』という描写から何がわかるか」、
「登場する下人や老婆はどのような存在で描かれているか」など、
作品を読み解くための50以上の文章を引いて、
解釈しながらグループで討論させた。

友達と自分の解釈がどう違うのか、それはなぜか。
徹底的に話し合った生徒たちは、
「意見には根拠が必要で、考えながら読むことが大事だと感じた」、
「最初は小学生のような感想を書いていた自分が、
最後には批評を書けるようにまでなった」と授業の感想文を寄せた。

常に批評する観点を研ぎ澄ますことで、自分の意見を練り上げ、
他の意見を尊重する姿勢を学ぶ。
批評を大切にする授業は、読解力や思考力を身につける王道だ。

◆論理的な表現能力育成の新科目

文部科学省の中央教育審議会は1月の答申で、高校の国語に
「社会人として必要な国語能力の基礎」を身につけるよう求めた。
現行の「現代文」をAとBに分け、Bは「読んだことをもとに考え、
判断・評価し、論理的に表現する能力の育成」までを狙いとした。
高校の新学習指導要領は今年度中に示される。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081030-OYT8T00213.htm

がん撲滅に10万ドル寄付 黒田投手、日米で慈善活動

(共同通信社 2008年11月4日)

米大リーグのドジャースは、黒田博樹投手(33)が、
がん撲滅運動などの球団の慈善事業基金に
10万ドル(約980万円)を寄付したと発表。

両親をがんで亡くしている黒田投手は、
「この病気を撲滅する助けになりたい」。

2002年に母親の靖子さん、昨年8月に元南海の選手だった
父親の一博さんを、がんで亡くした。
自分を支えてくれた両親が、病床で苦しむ姿を見てきただけに
「がんで苦しむ家族を看病する大変さは、痛いほど分かる。
そういう人たちを元気づけたくて頑張ってきた」。

広島時代から、両親を亡くした施設の子どもたちを広島球場に招待してきた。
大リーグに移籍した今も、それは続いている。
「今の自分がいるのは、両親のおかげ。
こういう活動を続けることが、両親への恩返しになると思う」。

大リーグでは、慈善活動に熱心な選手にロベルト・クレメンテ賞
贈りたたえるなど、社会貢献の意識が高い。
黒田投手の感謝の思いと活動は、日米で続いている。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82416

2008年11月4日火曜日

スポーツ21世紀:新しい波/282 ビデオ判定/5止

(毎日 11月1日)

心臓の鼓動音のような重低音が、スタジアムに響く。
緊張感に包まれた観衆の高揚感をあおる演出の一つ。
このBGMに乗せて、トライかどうかを判定する4方向からの映像が
大型ビジョンに流され、歓声がわき上がる。
07年秋のラグビー・ワールドカップ(W杯)フランス大会で
何度も目にしたシーン。

ラグビーのプロリーグが発展した欧州や南半球では、
エンターテインメント性の向上に力を注ぐ。
ビデオ判定は、ショーアップ策の一環として位置付けられ、
リプレー映像はテレビ放送でも流れる。
放映権料のアップを期待する競技団体側、
演出効果で視聴者を引きつけたいテレビ側の思惑が一致。

ラグビーのプロレフェリーとして国際経験が豊富な平林泰三さん(33)は、
「世界では興行の面が強く、観客の満足が一番の目的に。
16台のカメラを設置し、視聴者が16個の映像を切り替えて
楽しむサービスを提供した放送局もあります」。
プレー判定の枠を超え、ビジネスに活用されている。

今季からトップリーグの一部の試合で導入する日本では、
正確性を求める声に応え、W杯誘致を視野に国際基準に合った
レフェリング体制を確立するのが目的で、ショーアップは想定外。
平林さんは、「アマチュアリズムの伝統がある日本は、土台が違う。
プロ競技なら積極的に活用すべきかもしれませんが、
どこで一線を引くかは難しい」。

スポーツの産業化とメディアの影響などを研究する
川口晋一・立命館大産業社会学部准教授は、
「例えばテニスでは、ビデオ判定を要求する選手の行動や表情が
スポーツ番組の当たり前の中身になり、
選手がどこで権利を使うかとか、そこに楽しみを見いだすのでは」と、
競技の新しい見方を広げたと指摘。

ビデオ判定導入の取り組みが進むにつれ、
スポーツから「あいまいさ」が消え、競技の楽しみ方を変えつつある。
試行錯誤の先に何があるのか?
今はまだ変革の序章に過ぎないのかもしれない。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

国際宇宙ステーションの米国での評価

(サイエンスポータル 2008年10月29日)

読売新聞朝刊国際面に興味深い記事が載っている。
ワシントンの増満浩志記者が、米大統領選がらみで
米科学振興協会(AAAS)のアルバート・タイク科学政策プログラムディレクター
にインタビューした記事。

AAASは、科学誌サイエンスの発行元としてもよく知られる大きな非政府組織。
タイク氏は、ブッシュ政権の科学政策に批判的で、
不幸を味わってきた科学者たちが、「選挙を通じて事態を改善するため、
両候補に公開質問状を送るなど、さまざまな運動を展開」していることを紹介。

両候補のどちらが当選しても、現在よりよくなるとの見通しとともに、
どちらが大統領になっても宇宙開発について
「厳しい決断を迫られる」と言っている。

特に国際宇宙ステーションについては、
「多くの科学者が投資に見合う価値がないと思っている」。

国際宇宙ステーションは、日本の宇宙開発でも大きな位置を占めている。
当サイトに掲載した【国際宇宙ステーションは必要】の中で、
澤岡昭・大同工業大学学長が、自由民主党宇宙開発特別委員会において、
国際宇宙ステーション建設の費用対効果の議論が行われていることを
明らかにしている。

澤岡学長は、国際宇宙ステーションの重要性を明確に主張しているが、
この問題についてはもっと多くの人々が意見を発信し、
議論の中身をもっと一般の国民にも分かりやすい形で
明らかにしていく方がよいのではないだろうか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0810/0810291.html

中高進学に従い向上 本県児童生徒の体力

(岩手日報 10月25日)

本県の児童生徒の体力は、中学、高校と進むにしたがって、
強くなる傾向があることが、県教委の2007年度体力・運動能力調査
(新体力テスト)で分かった。

中高生の体力向上は、全国トップクラスの運動部加入率が背景に。
小中高とも、50メートル走の記録低下が顕著で、
「瞬発力の弱さ」が依然、課題。

新体力テストは毎年度、県内小中高全学年を対象に実施。
07年度は、約13万4000人の握力や反復横跳びなど8種目を調査。

全国の06年度調査と本県の07年度を比較すると、
小学生で全国平均を下回る種目が5年男子で5項目、4年女子で3項目。
女子は、全国平均をやや上回るが、男子は全体的に全国平均を下回る。

中学生になると、改善傾向がみられ、高校生では2年男子、1年女子で
全種目が全国平均を上回った。

背景の一つに、高い運動部加入率が挙げられる。
県高体連によると、08年度の県内高校生は男子77・5%(全国57・3%)、
女子43・1%(同28・3%)が加入、どちらも全国トップ。
県中体連の調べでは、中学校も男子93・1%、女子73・2%と高く、
男女合わせた平均加入率は83・4%(全国67・9%)。

ほぼ毎日部活動があるという盛岡市・下小路中の
女子バスケットボール部1年の熊谷彩さんは、
「小学生でもミニバスをやっていたが、中学になって練習は倍以上に増えた」
と運動量の増加を実感。

課題は瞬発力。
小中学校の全学年男子で50メートル走、立ち幅跳びが全国平均を下回る。
07年度の5年男子の50メートル走は平均9・64秒で、
1989年度から0・37秒も下がった。
親世代(81年)と比較しても、女子は小中学校全学年で記録が下回るなど、
低下傾向が顕著だ。

県教委は対策として08年度から、小学校の体育の授業を
大学生や地域住民がサポートする「実技アシスタント」を配置。

スクールバスで通学する児童生徒の実態把握など、
10項目の生活に関する調査も行い、結果を見ながら、体力向上策を進める。

◆作山正美岩手医大教授(スポーツ科学)の話

本県の小中学生は、筋力とスピードを合わせた「筋パワー」の向上が課題。
速く考え、速く動く力を身に付ける必要がある。
瞬発力は児童生徒のほか、競技選手も弱い。
通学手段や、運動量と食事のバランス、冬季の運動環境との関連が考えられる。
中高生は部活動のほか、地域で運動する機会が増えているのでは?

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081025_3

考える力(7)鶴亀算 答えより解き方

(毎日 10月29日)

戦前の教科書を見直し、考える力を育む試みがある。

「消しゴムはいらないからね。鉛筆だけ出して」
東京都千代田区立お茶の水小学校の黒木公一教諭(52)は、
6年2組の児童に、間違っていいことを強調してから、
黒板に旧かなづかいの算数の文章題を張り出した。

「鶴ト龜ガ合ハセテ二十匹ヰル。足ノ數ハ合計五十二本デアル。
鶴ト龜トハソレゾレ何匹ヰルカ」

1935年から10年近く使われた小学校算術の国定教科書で、
6年下巻の応用問題の一つ。俗に「鶴亀算」と呼ばれる。
表紙の色から、「緑表紙」と名の付いたこの教科書は、
その斬新さから当時の教育界で大きな反響を呼んだ。

その執筆者が、後に教科書作りを担った出版社「啓林館」(本社・大阪)は、
伝説の教科書を見直すことが、「考える力」を育てるのに有効だと
昨秋、そっくり復刻。
その話を知った黒木教諭が、1組担任の栗原由紀子教諭とともに、
子供たちに「考える算数」を経験させたいと特別授業に臨んだ。

「塾でやったことあるかもしれないけど」。
黒木教諭の言葉に「ある」、「ある」と何人かが反応する。
「でも、自分が問題を解ければいいというわけじゃないよ。
全員がなるほどと納得する授業をしたいんだ」。
問題文を何度か読ませる間も、黒木教諭は
「読むことイコール考えることだからな」、
「算数にも国語の力が必要だぞ」と繰り返した。

その後、1人でこの問題を考えて答えを文章にする時間が15分。
「書いたことは消さないで。頭の中で考えたことの証拠だから」と
消しゴム不要の理由が明かされた。

まず丸を20書く子、表を作る子、問題をじっと見つめる子……
子供たちの考える時間は様々。
その後は、何人かの児童が、解き方を発表した。

「みんなの頭の中が見えるようにするのが目的だから、
ほかの子が間違っていても、かつての自分だと思うこと」、
「答えが出るのと、よくわかっていることは違う。
間違っていても、ずっと考える子が伸びるんだ」と黒木教諭。

アッという間の2コマ分の授業後、子供たちは、
「今日ほど『なるほど』と言葉を発したことはなかった」、
「考えるのが楽しかった」、
「答えは一つでも考え方はたくさんあるとわかった」と感想を記した。

茨城大学付属小学校の佐藤雅記教諭(41)は、
別の応用問題の一つを使って、7月に研究授業をやった。

「今の子は、書くことや考えることが弱いと言われるが、
教師も、計算など見える力にシフトしがち。
授業の中で考えさせることを大切にしていかなければ」、
「『緑表紙』には、色々な学年に使える良問が含まれている。
これからも単元と単元の合間の発展的な問題として取り組んでみたい」

新しい学習指導要領は、考える力の育成のために、算数的活動を重視。
緑表紙の応用問題は、まさにこの活動につながる。
伝説の教科書が、時代を超えて教師たちを刺激している。

◆鶴亀算

連立方程式を考える前段階の問題として知られている。
現在の小学生にも、「変わり方の決まりを見つける」といった指導はされているが、
啓林館の教科書を例に取ると、少なくとも1970年代以降、
「鶴亀算」そのものの記述はない。
現行では、中学2年で連立方程式を学ぶ際、コラムの中で触れられている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081029-OYT8T00184.htm

2008年11月3日月曜日

「かけはし交流」未来へ 種もみ増殖15周年で記念碑

(岩手日報 10月27日)

岩手・沖縄かけはし交流協会(本部・奥州市江刺区、高橋洋介会長)
来年1月、沖縄県石垣島に種もみ緊急増殖事業15周年を記念して石碑を建立。

本県が大冷害に見舞われた1993年度、
同島で水稲の種子を確保するために行われた増殖事業。
当時、県職員として派遣され、今年6月に65歳で死去した
菅原邦典さんが担ったプロジェクトの功績と、
事業を機に始まった「かけはし交流」のきずなを語り継ぐ。

「何とか成功させたいとの思いだった」。
当時、県農政部長だった高橋会長は、
種もみ緊急増殖事業の重さをあらためてかみしめる。

93年の冷害は、作況指数「30」の大凶作。
当時を知る大浜長照石垣市長(61)は、
「気温も風土も違う中、困難な計画を成し遂げたのは菅原さんの
指導力があったからこそ。石垣の農業技術向上への功績も大きい」

石碑建立のきっかけは、菅原さんが亡くなったのを機に、
高橋会長らが、事業の意義を風化させてはならないと、
岩手・沖縄かけはし交流協会会員らに呼び掛けて実現。

石碑は高さ70センチ、幅90センチ、厚さ8センチで重さは140キロ。
盛岡市玉山区産の花こう岩「姫神小桜」で制作。

表に、「岩手県水稲品種『かけはし』 種籾緊急増殖事業記念碑 
菅原邦典君を讃えて」と刻字。
裏に、事業の経緯と菅原さんの業績を紹介する文面を記した。

船便でコンテナに積み込み、石垣島へ輸送。
当時、かけはしが植えられた石垣市平田原に土台を設置し、
石垣島マラソンが行われる前日の来年1月24日に除幕式を行う。

記念碑の制作費や土台設置費、輸送費など計85万円は
会員の寄付金などで賄う。

除幕式への参加を予定する菅原さんの妻郁子さん(65)=一関市花泉町=は
「あらためて大変な仕事をしたんだな、と感じる。
きっと主人も喜んでくれると思う」と感謝。

本県と石垣島の交流は、北上マラソン、石垣島マラソン大会への相互参加や、
姉妹校となった八重山高と盛岡四高の生徒の交流など現在も続く。

大浜市長は、「これからも末永くお付き合いしたい。観光や芸能の交流もしたい」と
今後の結びつきの発展を期待し、
高橋会長は、「当時を知る県職員や石垣の農家の方も引退している。
菅原さんの遺志を引き継ぎ交流を続けたい」

◆種もみ緊急増殖事業とは?

本県の作況指数が「30」の大冷害に見舞われた1993年、
翌年の水稲種子確保策として進められた。
後に「かけはし」になる岩手34号、「ゆめさんさ」になる岩手36号を、
冬の沖縄県石垣島の水田50ヘクタールに作付け、
本県の田植えに間に合うよう翌年5月までに種もみを確保。

当時、県盛岡農業改良普及所岩手町駐在主任だった菅原邦典さんが
石垣島の農家に栽培を指導。
岩手から送られた2トンの種もみは、116トンに増えて帰ってきた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081027_16

世界はエコロジーでも信用危機に

(サイエンスポータル 2008年10月29日)

世界を揺るがす金融危機同様、世界は「エコロジカルな信用危機」に
向かって突き進んでいる、と世界自然保護基金(WWF)が公表した
「生きている地球レポート2008年版」の中で警告。

世界の人口の4分の3以上が、エコロジーの視点からは
赤字の状態にある国に暮らしている。

つまり、その国の消費が、国内の生物生産力を超えてしまっている状態。
地球の「生物生産量」を、人類1人あたりの面積換算で示した
「グローバルヘクタール」は、2.1。
これに対し、1人あたりの生活を支えるのに必要な生物学的に生産可能な
土地・水域を示すフットプリントは、既に2.7グローバルヘクタール、
地球の生物生産量を30%近く超過。
野生生物の個体数の推移を見た「生きている地球指数」は、
1970年に比べ30%近い個体数の減少。
熱帯の森林伐採や土地利用の転換が大きく影響しており、
熱帯地方の「生きている地球指数」は、50%も低下。

WWFインターナショナルのリープ事務局長は、
「地球環境に対する人類の需要が、現在と同じペースで伸びていけば、
2030年代の半ばまでには、ライフスタイルを維持するために
地球が2個分必要になる」。

新たに算出された水フットプリントは、
商品に形を変えて取引される水の量を示している。
1人あたりの年間平均水消費量は、オリンピック用水泳プールの半分の量に等しい
124万リットルに上り、約50の国が中程度から強度の水ストレスに直面している。

考える力(6)図工で自己表現育む

(毎日 10月28日)

図画工作が、子供の読解力や表現力、社会性を育てる。

東京都江戸川区立篠崎小学校のホームページには、
児童の作品がふんだんに紹介。
ネットで公表することで、他校やデザイン会社、芸術家などから、
感想や反響が寄せられるようになった。

仕掛け人は、図工の専科教員、川島真紀雄教諭(58)。
社会に受け入れられる作品を意識することは、社会を学ぶことにもつながる。
子供が社会と結びついた表現活動ができるのも、美術分野ならではの成果」

川島教諭は、パソコンを使って図工の授業を充実させてきた。
6年生のアニメーション作りが佳境を迎えていた。

子供たちは、自分で物語を考え、コマ割りをしたスケッチを元に、
パソコンで自由に絵を描いていく。
マイクで、声を吹き込むこともできる。
「必ず音楽か声を入れて。音を入れると、漫画がアニメや映画になるんだ。
友達に声優を頼んでもいいよ」

子供たちは、数分の小作品に恋愛、SF、メルヘン、戦争、環境問題など、
自由な発想で描いていく。
早い時間に完成した作品は、授業中、教室のスクリーンで発表。
「音がユニークだ」、「キャラクターが面白い」。教室に笑いが響いた。

図工の授業は、ただ創作させるのではなく、
授業の狙いを明確にすることが大事だと川島教諭は考えている。

同小では、6年生が抽象画を勉強する。
最初は、ピカソなどを題材に歴史を学び、抽象画の色彩や形、バランスなどの
法則性を理解してから、パステルクレヨンやパソコンを使った創作に入る。

「創作活動は一見、自由なようだが、例えば版画は白黒しか使えない。
制約の中でどう自己表現するかを工夫し考えることも、
子供が自主的に課題を解決しようとする力を育てることになる」

図工は、2002年実施の学習指導要領で、小学校高学年の
年間標準授業時数が70時間から50時間に削減。
危機感を覚えた教員らが、06年に結成した
「がんばれ!図工の時間!!フォーラム」の委員長、
藤幡正樹・東京芸術大学教授は、「小学校の図工は美術教育の入り口ではない。
正解がなく、言葉や数字を使わず、素材に直接触れて体験する表現活動は、
すべての授業や学力の基礎になる教科だ

図工の専科教員を置く自治体は少なく、すべての教科を担当する
小学校の教員が図工に力を入れるのは容易ではない。
「図工は、知識重視の教育の中で、効率が悪い教科かも知れないが、
図工の創作体験を国語の授業で作文にするなど、
先生が工夫をすれば教科横断的な指導ができる」(藤幡教授)

篠崎小の川島教諭の場合、俳句にパソコンで絵をつける「俳画」にも取り組む。
教科横断型指導の好例。
豊かな表現力と思考力は、国語や算数だけで得られるものではない。

◆図画工作の専科教員

2004年の文部科学省学校教員統計調査によると、
授業を受け持つ小学校教員で、図工を専門に教えている教員は、
全体の0.5%(約2000人)。
同省教職員課の06年度の集計によると、小学校で図工を専門に教えている
教員のうち、中学や高校の美術の教員免許を持っているのは全国で1021人。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081028-OYT8T00179.htm

グーグルの「世界を良くする」アイデアに15万件の応募

(CNN 10月23日)

インターネット検索最大手のグーグルが創業10周年を記念し、
多くの人々の役に立ち、より良い世界を作るアイデアを募集した
「プロジェクト10の100乗」に、全世界から15万件の応募。

この中から、賞金100万ドルが贈られる最優秀アイデアが選ばれる。
グーグルは9月24日から、このプロジェクトを開始。
専用サイト(http://www.project10tothe100.com/)を立ち上げ、
世界を良くするためのアイデアを、25カ国語で10月20日まで受け付け。

選ばれる基準は、どれくらい多くの人々に、高い費用対効果で、
短期間で実現可能かどうか、などとなっている。
非常に専門的なアイデアでも、シンプルで簡単なものでも構わない。

グーグルは来年1月27日までに、集まった15万件の中から、
上位100件のアイデアを選ぶ。
この作業は、世界50カ所以上にあるグーグルのオフィスで、
約3000人以上の社員が行う。

来年1月27日から、選ばれた100件をインターネットで公表。
2月2日までオンラインで、全世界から投票を受け付けて上位20件に絞り、
この20件から審査員が5件を選ぶ。

来年5月に、最終的に残った5件の中から、
優秀なアイデアに賞金1000万ドルを分配。
もしも5件ともが同程度に優秀であれば、5等分した200万ドルが
それぞれに贈られ、2件が良いと判断されれば、
それぞれに500万ドルずつが分配。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200810230028.html

2008年11月2日日曜日

脳血管疾患、血液検査で早期発見 岩手医大教授

(岩手日報 10月29日)

岩手医大解剖学講座の人見次郎教授(50)は、
血液検査で、脳卒中や脳梗塞などの脳血管疾患の危険性を
発見する技術を確立。

血管が詰まる血栓になる前の段階でリスクを突き止めることで、
予防につながるとともに、合併症などの早期対処も可能。

人見教授は、医薬品開発メーカーなどと共同研究を進めており、
3年後の2011年の実用化を目指す。
実用化されれば、日本人に多い脳血管疾患を予防する
国内初の技術として注目を集めそう。

人見教授は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の
イノベーションサテライト岩手の育成研究報告会で、この技術を発表。

人見教授は、JSTの助成を受け2006年から研究をスタート。
脳梗塞の主因の一つで、内頸動脈硬化症の患者を対象に、
血液中のタンパク質と血液細胞の遺伝子を解析。

この結果、臨床検体を収集し88検体の病理標本を作製、
臨床情報を加えデータベースを構築した。
内頸動脈硬化症患者と、健常者を区別する血清中の分子(診断マーカー分子)を
発見し、今年9月に特許を出願。

血液細胞中から、内頸動脈硬化症患者と健常者を区別する
72の遺伝子も見つけ、現在、特許取得の準備を進めている。

人見教授は、「脳卒中など脳血管異常はこれまで、磁気共鳴画像装置(MRI)などで
血栓を発見してきたが、今回の研究はMRIなどに比べて医療費が安い検診により、
血管異常のリスクを把握できる」と強調、
「今後は大手診断薬企業に入ってもらい、診断薬試作、臨床試験、
製造販売を目指す」。

研究は、岩手医大、医薬品研究開発のバイオス医科学研究所(神奈川県)、
東北化学薬品の生命システム情報研究所(盛岡市)、
試験薬・分析機器メーカーのバイオ・ラッド ラボラトリーズ(東京都)の
4者で進めてきた。

バイオス医科学研究所の浦上研一社長は、
「(この技術・特許は)国内での競合は存在しない。
現在、脳血管にかかわる診断薬はなく、100億円市場と予測。
診断薬を来年にかけ試作し、岩手医大で臨床試験を行い、3年かけ事業化したい」

◆小笠原邦昭・岩手医大脳神経外科学講座教授の話

血栓が飛ぶかどうかの可能性を、早期に判別できることが画期的。
手術前に脳血管の異常が分かれば、
現場としては合併症を防ぐための対処ができる。

本県の脳血管疾患の状況とは 厚生労働省の人口動態統計によると、
脳梗塞のほか、脳内出血やくも膜下出血などを含む脳血管疾患の死亡率は
全国1位(2005年)。06、07年も2位と高い。
脳梗塞で亡くなった人数は、近年は05年の1404人をピークに1300人台。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081029_3

政策提言それとも陳情

(サイエンスポータル 2008年10月27日)

NPO法人サイエンス・コミュニケーションの代表理事、榎木英介氏(医師)が、
メールマガジン「SciCom News」で、「科学技術政策提言市場を作る」という論を展開。
「科学技術政策に関して、その動向をウォッチし、提言を作ることを
大きな目標として掲げている」NPOとして、その役割をいかにしたら果たせるか、
いろいろ悩みながら活動を続けていることが伺える内容。

その中に次のような記述がある。
「以前、行政の方とお話をしたときに、
『政策提言とやらが、陳情とどう違うのか』と言われたことがある」
榎木氏の相手がどういう人か分からないが、自分の属する役所外の意見を
行政官がどう見ているか、推し量る材料になるかもしれない。

「SciCom News」は、榎木氏のEditorialとは別の個所で、
2008年10月21日付レビュー【日本学術会議への期待】についてコメント。
日本学術会議には、科学コミュニティの代表として大変期待しているが、
そもそも内閣府の所属という位置づけでは、独立性もないのではないか、
とうがった見方をしてしまう。
私たちのような草の根の意見も取り入れて、提言を実行にもっていく力を
見せていただけたら嬉しいが…」

日本学術会議の「独立性」となると、さまざまな議論がこれまでも交わされた。
政府から完全に独立した機関となって、今のような活動が続けられる
うまい方法があるだろうか?

日本学術会議の大きな役割の一つを、行政からの求めに応じ、
科学、技術に関する調査、分析を行い報告、提言することにあると考えるなら、
いずれにしろ公的な資金が注入されない限り、存続自体が難しい。

独立性が十分に保証され、かつ資金的にも存続可能な組織の在り方となると、
少なくとも現在、投入されているのと同等の公的資金が、
調査、分析、報告、提言などの活動に対する委託費として
行政側から日本学術会議に入ってくる仕組みが必要となる。

各府省が、それぞれ審議会あるいはそれに類する組織を抱える
今の仕組みを根本から変え、日本学術会議が窓口になって
ほとんど引き受ける形にする。

もしこのようなことが可能であれば、日本学術会議も
「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、
行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする」
(日本学術会議法第1章第2条)機関にふさわしい機能を発揮できそうに見える。

問題は、研究者自体がどう考えているかではないか。
府省が、それぞれ審議会のような提言組織を抱える今のシステムで不都合がない。
そう考える研究者が多いとなると、このアイデアも途端にしぼんでしまいそう。

http://scienceportal.jp/news/review/0810/0810271.html

考える力(5)歴史の大きな流れ 読む

(毎日 10月25日)

歴史の大きな流れを理解する過程が、思考力の育成につながる。

明治政府に人材を多く輩出した山口県。
防府市の華陽中学校2年で、歴史授業のテーマは、近代の条約改正。

佐藤淳教諭(35)は、1871年に欧米訪問に出発した岩倉具視使節団と、
陸奥宗光、小村寿太郎の3枚の写真を黒板に張った。
岩倉は、不平等条約の改正に失敗したが、
陸奥が1894年に治外法権の撤廃、
小村が1911年に輸出関税自主権の回復に成功。

「今日のテーマ。なぜ40年で日本が条約改正に成功したのかを考えてください」。
佐藤教諭が指示すると、生徒が一斉に、教科書や資料をめくり始めた。
40年分の近代史は、教科書で20ページ近い。
生徒は、課題の答えを探しながら読み込み、ノートに書きとめていく。

「いつものように班で考えて」。
生徒は机を動かして、4~5人の班で討論する。
「日露戦争に勝ったから」、「日本が国会や憲法を整えたから」。
佐藤教諭は、出てきた生徒の意見を、日本の外交力と、国内の政治事情の
二つに整理した上で、生徒に矢継ぎ早に質問を投げかける。

「岩倉の時は、国内がどうだった?」、「政治体制が整っていなかった」、
「どこに比べて?」、「欧米諸国」、
「不平等条約はどっちに不利?」、「日本」、
「欧米の立場だったら、どっちがええ?」、「改正しない方がいい」……。

「なぜ有利なのに、外国は条約改正したの?
日露戦争に勝ったからって、わざわざ改正するかな?」。
生徒が首をひねり始めた時に、終業のチャイムが鳴った。

新学習指導要領では、中学校の歴史分野について、
歴史の「大きな流れ」の理解を重視する姿勢が強まっている。
佐藤教諭は、県の中学校社会科教員の研究会で、
同僚と新しい歴史授業のあり方を研究する中、
歴史を古代、中世、近代の大枠に分け、
生徒が自主的に時代を研究するよう仕向け、
特徴をつかませる「時代調査」という授業を始めた。

授業のポイントは、生徒が自分で考えて討論すること、
教師が生徒の言葉を使いながら進めること。
例えば条約改正について、教科書だけでは背景の説明が不十分。

教科書や資料を手がかりに、生徒自身が歴史で出てくる知識の関連を考え、
欧米諸国の変化が日本に大きな影響を与える近代の特徴に気づく作業が、
歴史の「読み方」を理解する一助。

授業では、古代、中世、近代などそれぞれの時代の比較、
郷土史と時代の関連、現代社会との違いなどを織り交ぜることで、
歴史を現代につながる生きた知識として、育てていく。

各時代の授業の最後に、生徒が抱く時代観が、「深まった」と実感できれば成功。
「歴史を学ぶことで、今の時代がどう動いているかを理解し、
判断する力をつけてほしい」と佐藤教諭。

暗記に偏りがちな歴史教育も、思考力を鍛える教材にすることができる。
問われるのは、教師の創意と工夫だ。

◆新学習指導要領の歴史教育

中学校では、各時代の共通点や相違点に着目させて
時代の特色をとらえさせる方向性を明記した。
近代と現代を分けて近現代史教育の充実を図ること、
日本の伝統や文化への関心を高めること、
世界史と日本史の関連性を理解させること、などを重視。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081025-OYT8T00192.htm

もっと知りたいエコロジー:生ごみの堆肥化で循環型生活

(毎日 10月29日)

家庭から出る生ごみも、堆肥化すると貴重な資源。
集合住宅でも気軽にできる方法もあり、できた堆肥をガーデニングや
家庭菜園に活用すれば、低炭素社会に向けた資源循環型生活の一歩に。

◆発泡スチロール箱やジッパー付き袋

「生ごみリサイクルの輪を広げよう」と、
市民グループ「江戸川区生ごみ堆肥化実践クラブ」(東京都江戸川区)では、
事務局長の江原春美さん(58)ら有志が講習会を開き、
堆肥化の普及に取り組んでいる。

テキストにはコンポスト容器をはじめ、発泡スチロールの箱や
「ジッパー付き袋」を使ったオリジナルの方法も紹介。
「コンポストは庭のある家が前提ですが、私もマンション住まいなので、
家では発泡スチロールの箱でつくっている。
きちんとやれば臭いもなく、虫もわかない」

基礎編として、発泡スチロールの箱と、1箱分の土を用意。
箱の底に土を敷き、1晩置いて水を切った生ごみを入れる。
土を足して混ぜ合わせ、水分を取るために新聞紙を上に置いてふたをする。
「ごみが出たらその都度、これを繰り返す。
中身がいっぱいになったら、多めに土をかぶせてふたをして熟成させる。
半年ほどで堆肥ができあがる」

堆肥化とは、土のなかの微生物の働きを利用して有機物を分解すること。
「悪臭が発生するのは、腐ったごみを入れたか、水分が多いため」
初心者は、野菜のくずや茶殻、コーヒーの残りかすなどから始め、
「慣れるまでは、発酵促進剤として米ぬかや種菌となる堆肥を混ぜると失敗が少ない」

ジッパー付き袋を使った方法はこの応用編で、
メンバーの疋田ひろ子さん(58)が発案。
水を切った生ごみをこの袋に入れ、米ぬかをまぶして
空気を抜いてジッパーを閉じる。
最初のごみを入れて1週間たったら、約5倍の土と混ぜる。
あとは基礎編と同じ要領。
「袋の中で一次発酵、土と混ぜて二次発酵。手間はかかるが堆肥化が早くなる」

子育てが終わり、夫婦2人暮らしの江原さんは、
「野菜はなるべく食べ切るようにしている。
生ごみは分解されると量が減っていくので、20リットル程度の箱だと
1カ月半から2カ月はもつ」。
堆肥は学校菜園などで効果を確かめている。

同クラブでは04年秋から毎年2回講習会を実施し、
これまでの受講者数は約500人。
江戸川区民の可燃ごみの排出量は一人1日当たり約390グラム(5月現在)。
「全員が実践しているとすれば、かなりの生ごみが資源として
リサイクルされたことになる」と江原さん。

◆「自分流」のやり方で

東京都文京区のNPO「緑のごみ銀行」理事長、松本美智子さん(62)は、
米ぬかと市販の容器を用いた手軽な方法で堆肥をつくり、
自宅マンションでのベランダ菜園やガーデニングに利用。

台所の足元の棚から取り出したのは、
プラスチックのぬか漬け容器(8リットル入り)。
「やり方は簡単です。容器にビニールを敷いて生ごみを入れ、
上からぬかをかけてざっと混ぜ、空気を抜いて容器のふたをする」。
これを繰り返す。

生ごみ処理には3つのポイントがあり、
1)濡らさない、
2)細かく切る、
3)腐ったものやかびたものは入れない。

「私の場合、ジャガイモやタマネギなども洗わないまま皮をむいてます」
容器がいっぱいになったら、コンテナの土と混ぜ、虫よけにネットをかける。
夏場は2~3カ月、それ以外は半年をめどにベランダに置き、
時折かき回すと「ふかふかの堆肥になる」。
「キャリアでいえば12年。『手間をかけない、お金をかけない』を合言葉に
試行錯誤を続け、いまの方法に落ち着いた」

同NPOでも、この夏から地域で生ごみ減量講座をスタート。
松本さんが「自分流」のつくり方を紹介。
「ごみを乾燥させて土に入れる人もいれば、私のようにぬかにあえる人もいる。
初めは面倒かもしれないが、自分のやりやすい方法で続けていけば楽しくなる

NPO「有機農産物普及・堆肥化推進協会」事務局長の会田節子さん(63)は、
「食材を買い過ぎない、料理をつくり過ぎない、食べ残しをしないなど
限りなく生ごみを出さない生活を心がけてほしい。
そのうえで、余ったものを堆肥にして暮らしに役立てて」と勧めている。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20081029org00m040008000c.html