2008年11月7日金曜日

考える力(10)「論理力」磨く法学部生

(読売 11月1日)

大学も、学生の思考力を高める必要性に迫られている。

法曹を多数輩出してきた中央大学法学部の多摩キャンパス。
法律・政治学科に2004年から開設された科目「導入演習」は、
文章や資料を読み解く力、論理的な思考力や分析力を育てる少人数授業。
1年の選択科目だが、履修率は98%。

橋本基弘教授(49)(憲法学)は、後期から演習でディベートをさせている。
学生を3人ずつ6班に分け、毎週2班を指名。
「竹島問題」、「東京五輪を招致すべきか」など、
毎回、社会性の強いテーマを選ぶ。

10月22日は、「学校選択制を容認すべきか」。
「学区制度が廃止されれば、学校や教員の競争意識が向上する」、
「教員は多忙で、学校間格差を埋める余裕はない」、
「選択制を導入して良かったと評価する教育委員会が3分の2ある」、
「集団下校ができず、安全面の問題から制度を縮小する所も出てきた」

学生は、1週間で集めた新聞記事やデータを基に意見を戦わせた。
1時間あまりの討論を、残る学生が多数決で判定する。
この日は容認派の勝利。

橋本教授が「相手の主張を想定して、反論を用意しておくことは、
法律の議論でも大事だ」と締めくくった。

橋本教授は、「今の学生は議論に慣れておらず、
特に予期しない反論への対応に弱い。
法律家は、相手と論理的に議論する力が必要となる。
裁判員制度が始まれば、その傾向はさらに強まる」と見る。

導入演習を始めたのは、法科大学院がスタートした年。
井上彰法学部長(59)は、「高校や予備校で、読んだり書いたりする
経験が少ない学生は、討論を含めた基本的な力が足りない。
法科大学院設立後の法学部の役割を考えた時、
必要な力の基礎を1年のうちから鍛えるべきだと考えた」

新司法試験でも合格率を維持し、司法改革にも柔軟に対応できる、
質の高い法曹が求められているだけに、
「読解力や思考力は本来、学生が自主的に学んできてほしい力だが、
大学が進んで学生に身につけさせなければ、法科大学院制度に対応できない」

導入演習は専任教員73人が一つずつ担当し、すべて、学生は20人以下。
演習の内容は教員に任されており、新聞記事や本を精読したり、
要約を発表したり、討論を行ったりする。
教員間で演習の内容を情報交換し、他学部からディベート指導の専門家を
呼ぶなどの教員研究会も定期的に開いている。

演習導入から5年目。
3年の専門ゼミで議論が活発になり、論文を書くことを苦にしない
学生が増えたという声も、教員から出始めた。
教員の負担増への対応という課題もあるが、2年生でこうした演習を
導入することも視野に入れている。
読解力と思考力の育成を補う授業は今や、大学教育でも必須となりつつある。

◆法科大学院

司法制度改革の目玉として、2006年に始まった新司法試験の受験に
修了が必要な学校。米国のロースクールがモデルで、74校が認可。
当初は修了生の7、8割が合格する見込みだったが、
今年度の合格率は33%。3校は合格者がいないなど、
学校間格差も目立ち、規模の縮小を求める声が強くなっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081101-OYT8T00225.htm

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