2008年11月5日水曜日

考える力(8)批評し合い養う読解力

(読売 10月30日)

教科書の文章を批評することが、読み解く力の定着につながる。

鹿児島県南部の進学校、県立加世田高校(南さつま市)
浜田秀行教諭(34)は、1年生の国語総合の時間で、評論文の授業に臨んだ。
教材は教科書にある多木浩二氏の「世界中がハンバーガー」。
ファストフード産業が、世界の食習慣を均質化していくことに警鐘を鳴らした文章。

生徒たちは1週間前のテストで、この評論文の要約を200字程度で書いている。
浜田教諭は、班ごとに、テストで書いた同級生の要約文を評価するよう指示。

評論文は問題提起、問題の背景、影響、問題解決の糸口の
4要素から構成される。友達の要約に、要素が入っているかを分析して。
グループで話し合ってもいいぞ」

生徒は互いに、「この要約は問題提起の部分が入っていないよね」、
「背景の部分が不必要に長く見えるけど、どうかな?」などと批評し合った。
その結果は、個々の要約文に書き添え、筆者に返された。

次に浜田教諭が出した課題は、評論文そのものの批評。
1学期に学んだ別の評論文とも比較しながら、「主張の明確さ」、
「文や段落のつながり」、「表現の工夫等」など5項目それぞれに、
5点満点で点数をつけさせた。

国語の授業は従来、教科書にある評論文の内容を的確にくみとったり、
小説の登場人物の感情を読み取ったりする読解力を育てることに、
重点が置かれてきた。

浜田教諭が教員になったのは、現在の高校学習指導要領が
告示された9年前。
国語の目標に「伝え合う力を高める」という表現が加わり、
意見を論理的に述べたり、相手の考えを尊重したりする力を
育てる方向性が示された。

そこで、教科書の教材文を単なる「お手本」に終わらせず、
論理構成を考えつつ、生徒に批評させる指導に力を入れた。

「論理的に話せと指導をしても、何が論理的な文章なのか、
高校生は十分に理解していない。
高校では文章を読み取った上で、自分はどう思うかを考え、
論理的に表現するまでつなげる授業が大事」

1学期には、芥川龍之介の小説「羅生門」でも、
論理を重視しながら批評を書く授業を行った。

「『狐狸がすむ』という描写から何がわかるか」、
「登場する下人や老婆はどのような存在で描かれているか」など、
作品を読み解くための50以上の文章を引いて、
解釈しながらグループで討論させた。

友達と自分の解釈がどう違うのか、それはなぜか。
徹底的に話し合った生徒たちは、
「意見には根拠が必要で、考えながら読むことが大事だと感じた」、
「最初は小学生のような感想を書いていた自分が、
最後には批評を書けるようにまでなった」と授業の感想文を寄せた。

常に批評する観点を研ぎ澄ますことで、自分の意見を練り上げ、
他の意見を尊重する姿勢を学ぶ。
批評を大切にする授業は、読解力や思考力を身につける王道だ。

◆論理的な表現能力育成の新科目

文部科学省の中央教育審議会は1月の答申で、高校の国語に
「社会人として必要な国語能力の基礎」を身につけるよう求めた。
現行の「現代文」をAとBに分け、Bは「読んだことをもとに考え、
判断・評価し、論理的に表現する能力の育成」までを狙いとした。
高校の新学習指導要領は今年度中に示される。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081030-OYT8T00213.htm

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