2010年10月30日土曜日

ストレス対処の仕組み解明 化学物質が神経活動抑制

(2010年10月20日 共同通信社)

脳の中で、カンナビノイドという化学物質が神経の過剰な活動を抑え、
ストレスに対処している仕組みを解明したと、
放射線医学総合研究所と米ハーバード大のグループが、
19日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表。

海外では、脳の中のカンナビノイド濃度を高める薬を使い、
ストレスなどが原因で起きる不安障害を治療する臨床研究も
行われているが、カンナビノイドがなぜ効くかは不明。

人などの脊椎動物は、恐怖のようなストレスを感じると、
脳の扁桃体の神経活動が活発になり、
神経細胞の結合部で情報伝達が盛んになる。

同研究所の辛龍文主任研究員らは、ラットの脳の扁桃体を調べ、
カンナビノイドが関与する情報伝達経路があることを突き止めた。

通常は、ストレスを受けてもカンナビノイドが放出され、
結合部での過剰な情報伝達は抑えられているとみられ、
研究グループは、脳のカンナビノイド濃度を高める
薬の有効性を示すものだとしている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/20/127138/

トップアスリートに学ぶ! 勝つための集中力(上)

(日経 2010/9/3)

米女子ゴルフツアーで勝利を重ね、世界ランキング上位を
キープしている宮里藍。
絶好調の背景には、メンタルコーチの存在がある。
最高の力を出し切るにはメンタル面を強化し、集中力を発揮することが
必須だと、トップアスリートたちは身に染みて感じている。
その集中力は、実は「おまじない」で、コントロールが可能。
トップアスリートたちの手法を学んで、ビジネスに生かそう。

イチロー、北島康介、テニスのラファエル・ナダル…。
これらの選手に共通する強さの秘訣は、“おまじない”──。

厳しいトレーニングで、肉体と技術を磨いているトップアスリートが、
おまじないをするとは、ちょっとイメージに合わないかもしれない。
その効果は、臨床スポーツ心理学の研究によって実証、
多くのアスリートたちが効果を上げている。

おまじないの効果とはズバリ、集中力のコントロールだ。

鹿屋体育大学の児玉光雄教授は、
集中力は、対象が自分の内面か外部のものか、
一点に集中するか広範囲に集中するかで、4つに分けられる


◆4種類の集中力をビジネスに生かそう!

野球選手が、バッターボックスに立つ時は、ピッチャーが投げる
ボール一点に神経を研ぎ澄ます。
つまり、「狭く外的な集中力」を発揮。

テニスプレーヤーは、相手やボールの動きを把握しながら状況を判断し、
臨機応変にゲームを展開させていかなければならない。
これには、「広く外的な集中力」が求められる。

狭く内的な集中力」は、自分が成功している姿をイメージすることで、
パフォーマンスを向上させる力。
本番直前に頭の中で、リアルに想像することがカギとなる。

広く内的な集中力」は、どのような戦略で物事を進めるか、
事前に計画を立てたり、過去のプレーを振り返ったりする時の集中力を指す。

外部の一点に向けて集中力を絞り込んでいく、「狭く外的な集中力」。
イチローは、この集中力に長けている。
その秘密は、打撃の瞬間までに「決め事」を作っておいて、
それをこなすこと。

イチロー選手は、打つ瞬間までの動作がいつも同じ。
毎度寸分たがわず、意識的にやっている。

毎度行うこの動作を、「プリショットルーチン」と呼ぶ。
「細かい動きとその順序は、イチローが何万回も行っていること。
パブロフの犬の実験のように、行動(ここではバッティング)の前に行う
動きを、脳に刷り込んでおく。
これで、毎回同じように集中力を高めることができる」(児玉教授)。

「並の選手は、ピッチャーがボールを投げた瞬間から
バッティングが始まりますが、一流選手はそのずっと前から始まっている」

これは、仕事にも応用できる。
会議に出る前、プレゼンを行う前の決め事をあらかじめ設定しておく。
「会議の前、ネクタイを結び直す」といったものでいい。
会社の中の同じ場所(いつも行くトイレなど)で、同じ手順で、
同じリズムで行う。
何度も実践して脳に刷り込むほど、効果は高くなる。
自分にしっくりくる方法を、いろいろ試してみることも必要。

「イチローは起床時間も、朝食のメニューも決めている
(以前はカレーライス、今は讃岐うどん)」。
朝起きた瞬間から、仕事のためのフォームを組み立てられれば、
準備はより万全になる。

【イチローに学ぶ「おまじない」活用のポイント】

◎バットを構えるまでの動きはいつも同じ。
1.ウエーティングサークルで、入念にストレッチを行う。
2.バッターボックスでは土をならしながら、右手でバットをぐるっと1回転。
左手でユニホームの右肩をちょっとつまんでから、バットを構える。

◎効果
「ここ一番」で行う決め事を、あらかじめ脳に刷り込んでおけば、
どんな時でもその動作を行うことにより、呼吸や精神のリズムを整えられる。

◎ビジネスに応用
気合を入れて挑む仕事の前、いつも通りの決まり事を作る。
営業職の人が、外に出かける時、必ず右足から踏み出すとか、
大事な会議の前にネクタイを結び直すなど。
意識的に同じ所作、リズムで行うようにする。

イチローの集中力が、「狭く外的な集中力」なのに対し、
パンパシフィック選手権で優勝、見事な復活を遂げた
水泳の北島康介は、「狭く内的な集中力」。

「狭く内的な集中力」とは、自分自身の内面にある記憶や感覚などに
焦点を当てる集中力。
具体的には、「メンタルリハーサル」という方法で行う。
サッカー選手が、フリーキックをける前にボールの軌跡をイメージ。

北島康介は本番前、入念なメンタルリハーサルを行うことで、効果を上げている。
レース直前、ロッカールームにこもって、ヘッドホンで音楽を聴きながら
集中力を高めていくが、「100m平泳ぎで1分、200mなら2分くらい、
競技本番と同じ時間をかけて、水温や水をかく感触まで再現。
人間の脳は、リアルに思い描いたことを実現する力があるので、
本番直前、メンタルリハーサルを行うことは非常に効果がある」(児玉教授)。

◆「うまくいく」ことを想像する

仕事では、大事なプレゼンの前など、メンタルリハーサルをやるべき。
相手の前で自分が堂々と話し、見事にコンペを勝ち抜く姿をリアルに思い描く。

ポイントは、練習でうまくいった時の様子や、過去の成功例を、
映像としてイメージすること。
成功後に喜んでいる自分の姿でもいい。
五感を総動員して、できるだけ具体的に思い描く。
リアルなほど集中力は高まり、本番のパフォーマンス向上につながる。

周りが騒がしくて集中できない時、「ガラス瓶テクニック」を使うと、
自己暗示的に喧騒をシャットアウトできるので、併せてやってみよう。

周りが騒がしい状況で集中したい時、ガラス瓶の中に
自分が閉じ込められた状態をイメージすると、不思議と気にならなくなる。
メンタルリハーサルの時に使うと効果的。

【北島康介に学ぶ「おまじない」活用のポイント】

◎レース直前に頭の中でリハーサルを行う
泳ぐ直前、ロッカールームにこもり、ヘッドホンで音楽を聴きながら、
自分が泳ぐ姿を鮮明にイメージする。
実際のタイムと同じ時間をかけて、水をかく感触や、水の温度までも
具体的に頭の中で思い描く。

◎効果
人間は、頭の中に思い描いたイメージを、その通りに実現する力がある。
五感を総動員して具体的にイメージするほど、その能力は高まる。

◎ビジネスに応用
大事なプレゼンの直前、もう一度頭の中でリハーサルをする。
話している自分の姿、自分の息遣いや声のトーンまで、
具体的にイメージすること。
成功した瞬間の自分の姿をイメージするのもよい。

◆児玉光雄氏

鹿屋体育大学教授。1947年生まれ。京都大学工学部卒業。
20年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、
プロフェッショナルの思考・行動パターンを分析。
メンタルコーチとして活躍中。
近著『イチローの「成功習慣」に学ぶ』(サンマーク出版)。

http://www.nikkei.com/biz/skill/article/g=96958A9C93819499E2E3E2E29B8DE2E3E2EBE0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2EAE2E3E0E2E3E2E1E6E1E4

インサイド:広州アジア大会1カ月前 巨大祭典の底流/4

(毎日 10月16日)

広州汽車集団、中国移動通信、王老吉--。
広州アジア大会のスポンサーには、中国企業が並ぶ。
広汽集団は自動車、中国移動通信は携帯電話、
王老吉は飲料分野における今大会の協賛社。

最も高額のスポンサー料を支払う「プレステージ・パートナー」には、
これら7社が選ばれたが、海外企業は韓国のサムスン電子だけ。
その下の四つのカテゴリーに入る42社でも、
中国以外の企業は、台湾ビールやマクドナルドなど数えるほどで、
今大会のスポンサーは、中国企業がほぼ独占している状態。

◆地元志向に逆戻り

大会の主催者であるアジア・オリンピック評議会(OCA)は、
98年のバンコク大会から五輪方式のスポンサー制度を採用、
積極的な商業化路線にかじを切った。

IOCは、多国籍企業を相手に、1業種1社の公式スポンサー制度を
導入して成功を収めた。
OCAも、アジア大会にグローバルビジネスを取り入れ、
前回のドーハ大会はサムスンのほか、日本の大塚製薬など
各国企業が名を連ねた。

今回のスポンサーを見ると、再び地元志向に戻ったような感。
この状況について、大会のマーケティング権を持つ
電通の高橋惣一・国際スポーツ業務部長は、
「前回までと、マーケティングに対する考え方は変わっていない。
今回は、地元の組織委員会に任せていたところ、資金力があり、
海外展開を狙う中国企業が集まった」

高橋部長によると、アジア大会の魅力は大きく2点。
一つは、五輪とは異なって、会場に看板広告を出せること。
これが、テレビなどを通じてアジア各地に流れ、宣伝効果が上がる。
もう一つは、参加するほとんどの国が、何らかの競技で
メダル争いができること。
前回のドーハ大会では、参加した45カ国・地域のうち、
38カ国・地域がメダルを獲得。

高橋部長は、「五輪競技でないスポーツも実施されるため、
かなりの国がメダルを取る可能性を持つ。
日本では、あまりメディアで取り上げられない競技でも、
ほかの国ではアピールができる構図になっている」

◆広島大会の5倍規模

スポーツマーケティングの世界では、五輪、サッカーW杯、
自動車のF1レースが3大イベントと呼ばれる。
電通は、アジア大会をそれに次ぐクラスと位置づけ。
今後は、アジア市場を狙う欧米の企業にも、
アジア大会の協賛セールスをかける方針。

高橋部長は、「アジアマネーの中心はかつて日本だったが、
韓国、中国が入り、今では中東や東南アジアなどいろんな国に広がった。
それらの企業が競争して白熱している」

広州アジア大会の協賛金は、昨年の段階で20億元(約240億円)を突破。
これは、94年の広島大会の5倍近い規模。

景気低迷の中、日本企業は元気がないが、オイルマネーをバックに、
スポーツへの投資に積極的な中東湾岸諸国や、
10月に英連邦大会を初開催したインドなど、
経済活動が活発な地域はまだある。

今大会は、地元の中国企業が席巻した形だが、アジアスポーツをめぐる
ビジネス市場は、今後も肥大化の道を進むのだろうか。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101016ddm035050097000c.html

発達障害の学生支援(6)親と面談 理解を促す

(読売 10月21日)

「友だちとのかかわりを通して、成長した息子を見ると、
大学進学はむだではなかったと感じている」
大手前大学(西宮市)の健康相談室。
現代社会学部3年、椎名篤さん(20)(仮名)に優しい視線を向けながら、
椎名さんの母親(51)が、きっぱりと言いきった。

椎名さんの母親が、椎名さんの発達障害を大学に伝えたのは、
指定校推薦入試に合格し、入学が迫った1月。
「学習障害のある息子が社会に出る前、
大学で多くの人と交わってほしかった」

相談を受けた大学側は、椎名さんが入学後、入部を希望した
運動系サークルの部員に、「話を理解するまで、
ちょっと時間がかかるけれども、受け入れてほしい」と
働きかけるなどして協力を要請。
キャンパスに、椎名さんの居場所を作り、学生生活を支援。

学習面では、発達障害の早期支援のため、学習支援センターを開設。
スクールカウンセラーを常駐させ、履修登録や授業の課題でつまずく
学生のフォローを始めた。

「お菓子を食べる会など、学内で人間関係を築ける場も提供」、
学生課の安井敏裕課長(52)。

これらの支援を受け、サークルやゼミでは友達ができ、
学習面でも大きな成長を見せている椎名さん。
「課題が難しかったり、リポートが書けなかったりして
落ち込んでしまっていたが、最近はひとりで心を落ち着かせて
解決できるようになった」と笑顔。

同大は2年前から、学生に発達障害が疑われる場合、
積極的に親との面談を持つようにしている。
親が子どもの発達障害を受け入れなかったり、理解できなかったり
することで、苦しむ学生が目につくようになったから。
入学させた以上、大学側はきっちり4年間で卒業させ、
就職まで面倒を見て当たり前、と考える保護者もいる。

「発達障害を申告してくれれば、教員に授業時の配慮を依頼するなど、
スムーズに支援体制を取れる。
保護者が、我が子の障害を受け入れず、
4年間での卒業にこだわり過ぎれば、ゆっくり成長していく
発達障害学生の可能性を狭めてしまうかもしれない」と安井課長。

効果的な支援には、学生のありのままの姿を受け入れることが欠かせない。
大学と保護者が手を携えることから始めなければならない。

◆学習障害

基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、
聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力の習得と使用に
著しい困難を示す状態。
LD(Learning Disabilities)とも言われる。
特に、読み書きが困難な場合、ディスレクシア(読み書き障害)と呼ぶ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101021-OYT8T00188.htm

2010年10月29日金曜日

ぜんそく発作に強く関係、新たな物質突き止める

(2010年10月19日 読売新聞)

ぜんそくの発作に強く関係している新たな物質を、
国立成育医療研究センター研究所と東京大の研究チームが突き止めた。

この物質は、アレルギー性疾患の主な原因とされる
免疫物質(IgE抗体)がない状態でも、発作を引き起こすもので、
新しい治療法の開発などに役立つ成果。

アレルギーの多くは、異物に対するIgE抗体の過剰反応で起こる
炎症性疾患とされる。
ぜんそく患者も炎症が見られたことから、発作は、ダニなどの死骸に
IgEが反応して起きると考えられていた。

同研究所の大保木啓介研究員らは、ぜんそく患者の体内で
IL33という物質を作る遺伝子が多く発現していることに着目。
この遺伝子を壊したマウスは、皮膚炎などIgE抗体による
アレルギー症状を呈したが、
ダニには反応せず、大量吸入しても発症しなかった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/20/127173/

豊かな表情で場を和ませる 新型の人型ロボット

(2010年10月18日 共同通信社)

笑顔や悲しげな顔など、豊かな表情を作り出す人型ロボットを、
産業技術総合研究所や大阪大などが15日までに開発。
人同士のコミュニケーションを手助けできるロボットの実現を目指し、
病院や高齢者施設で実証実験を重ねる予定。

実在の若い女性がモデル。
皮膚はシリコーン製で、パソコンと連結したカメラで
オペレーターの顔を認識し、同じ表情をつくる。
首を振ったりうなずいたりもできる。
オペレーターの声は、若い女性の声に変換される。

病院での実験の際、医師の診察に同席させ、笑顔など患者の表情に
同調するよう設定したところ、「不安が減った」などの声が寄せられた。

同研究所の松本吉央主任研究員は、
医師には無愛想な人もいるので、診察の場を和ませることができる。
今後は、高齢者や認知症の人の反応も見たい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/18/127046/

インサイド:広州アジア大会1カ月前 巨大祭典の底流/3

(毎日 10月15日)

大会まで1カ月となった12日、北京で聖火リレーがスタート。
聖火は、空路で開催地の広州に一度入り、
黒竜江省、吉林省などを回り、広州に戻る。
開催年にちなんで、2010人がリレーする予定。

スタートの式典には、中国の胡錦濤国家主席や、
アジア・オリンピック評議会(OCA)のアハマド会長(クウェート)らが出席。
アハマド会長は、「中国では90年に北京で、今回は広州で
アジア大会が開かれる。
この20年間で、アジア大会は著しい発展を見せ、IOCからも
最も活発な地域だと認められるようになったことを誇りに思う
」と胸を張った。

◆郊外に新しい町出現

広東省の省都でもある広州は、戸籍を置かない流入人口を含めると、
人口は1000万人を超える。
香港や東南アジアに近い地理的条件から経済的に発展し、
北京、上海に次ぐ中国第3の都市。
大会が近づくにつれ、街路や公園などには植物が植えられ、
別名の「花城」を思わせるように、花で選手たちをもてなそうとしている。

今回のアジア大会は、中国国内での広州の威信をかけた
イベントといわれている。
北京では2年前に五輪があり、上海では今年5月から
国際博覧会が開かれている。
在広州日本総領事館の小松道彦首席領事は、
「広州は、アジア大会を今年の最重要行事と考え、
ものすごく力が入っている。
省エネや環境面を訴え、北京五輪とは違う大会を開こうとしている」

広州の中心部から南東に約20km離れた郊外に、新しい町が出現。
「亜運城(アジア大会タウン)」と呼ばれる施設群。
約264万平方メートルの広大な敷地に、体操などが開かれる
総合体育館や選手村、メディアセンターなどが整備、
アジア大会の一大拠点になる。

日本オリンピック委員会理事で、OCAの理事も務める荒木田裕子さんは、
「(オイルマネーに支えられた前回の)ドーハ大会の時もすごいと思ったけど、
今度の広州はもっとすごかった」と驚きを隠さない。

◆地下鉄整備に8400億円

広州は、アジア大会を社会資本整備の好機ととらえ、
8年前までわずか1路線18kmだった地下鉄を、
開幕までに8路線約230kmに延伸。
大会の会場のほとんどが地下鉄で結ばれるようになり、
地下鉄だけの総事業費でも700億元(約8400億円)。

大会終了後、亜運城一帯は人口10万人を超す
巨大ニュータウンに変身させる計画。

中心部にも、高さ600mのタワーがそびえ立ち、
高級ホテルが相次いで進出。
市内では、「アジア大会」ではなく、「アジアの五輪を開く」という触れ込み。
首都以外での開催は、94年広島、02年釜山に続いて3度目になるが、
「中国でなければできない」という声が上がるほどの
巨大プロジェクトが展開。

経済誌「フォーブス」が発表した、今年の中国商業都市ランキングで、
広州は上海を抜いてトップ。
世界的な景気低迷の中にあっても、広州は昨年の経済成長率が11・5%、
今年の上半期は13・6%にも達した。
数字を押し上げたのが、アジア大会の開催。
拡大を続ける中国経済。
その「バブル」は、広州にも確実に反映されているようだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101015ddm035050060000c.html

発達障害の学生支援(5)「生き抜く力」有料指導

(読売 10月20日)

「どんな仕事に興味を持ちましたか」と書かれたプリントを前に、
学生が真剣な表情で求人情報誌のページを繰っている。
手元をのぞくと、「顧客対応なしで、データ入力がメーンの一般事務」と
書かれている。

明星大学が、発達障害の学生を対象に開く「STARTプログラム」。
3・4年生クラスの講座は、仕事の探し方がテーマ。

2008年度、教職員のボランティアで始まった同プログラムが、
大学の正式な取り組みとなったのは09年度から。
今年度は27人の学生が、授業料とは別に月2万円を払い、
年間30コマのプログラムを受講。

「保護者の要望が強く、確実に活動を継続していくため、
受益者負担が望ましいとの結論に至った」、
村山光子・学生サポートセンター長(41)。

同プログラムの最大の特徴は、対人関係を積極的に営む技能である
「ソーシャルスキル」よりも、社会や学生生活で困った場面を
乗り切るために使う、最低限の実践的スキルの獲得を目指している点。

小中学生までは、ソーシャルスキルトレーニングが重要だが、
対人関係の苦手さを克服できない場合も。
こうした大学生に求められるのは、人と仲良くしなくても
社会で受け入れられ、自立していくための『サバイバルスキル』だ」、
プログラムを開発した小貫悟准教授(42)。

広汎性発達障害である情報学部4年生の川島豊さん(22)(仮名)は、
2年生からプログラムに参加。
「楽しみながら、社会人としての基礎が身につくここは、居心地のいい場所。
授業中、パニックになって騒ぐこともあったが、
先生に質問するタイミングが分かり、落ち着いて学習できるようになった」

プログラムに参加した4年生5人のうち、4人の進路が決定するなど、
就労面でも成果が表れている。
川島さんも、外食産業で働くことが決まり、就業体験と卒業論文に
精を出す日々を送っている。

大学生活への適応と就労との間には、高いハードルがある。
そこをクリアするのに必須なのが、自分の障害を受容すること」と村山さん。
同じ障害がある仲間と自己理解を積み上げていく経験が、
社会で生き抜く力であるサバイバルスキルを身につけることにつながっていく。

◆STARTプログラム

Survival skills Training for Adaptation,Relationship,Transition
の略称。大学適応(アダプテーション)、対人関係(リレーションシップ)、
就労準備・社会自立(トランジション)の3領域を中心に、
社会の中でより過ごしやすくなるため、
必要なスキルの獲得を目標としたトレーニング。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101020-OYT8T00209.htm

2010年10月28日木曜日

低料金で外国人客呼び込む 所得増、高齢化もにらみ 競争激化する医療観光

(2010年10月15日 共同通信社)

低料金で質の高い医療を提供し、観光を兼ねた外国人客を
呼び込む「医療観光」をめぐり、アジア各国の競合が熱を帯びている。
最先端医療を掲げるシンガポール、もてなしを前面に押し出すタイ。
多剤耐性菌拡散への関与も指摘されたインドは、"激安"で勝負。

▽国民のため

シンガポール中心部のマウント・エリザベス病院は、
近隣国の元首相や米ロック歌手らも訪れる。
制服姿のコンシェルジュが応対、ビザ取得や家族のホテル手配まで、
至れり尽くせりのサービス。

世界の医師約1100人と契約、ロボット手術システムなど最新技術も導入。
「診断から手術終了まで、48時間以内」というスピードも売り。
スリランカから肝臓治療に来た50代男性は、
「安くはないが、五つ星ホテル並みの施設で最先端医療が受けられる」

2008年、シンガポールを訪れた医療観光客は、
前年比約13%増の64万6千人、
収入は19億シンガポールドル(約1190億円)。
12年には、年間100万人を目指す。

高度医療が、欧米の2~3割の費用で受けられるのは、
国民が低料金で、質の高い医療を求めていることが背景。
政府の医療関連支出が、GDP比約4%と米国の4分の1にすぎず、
「医療は個人の責任」との考えが浸透、病院は料金を自由裁量で決め、
競争原理が働く仕組み。
外国人も、医療費は変わらない。

医療観光が医療費高騰を招いている、との指摘もあるが、
政府当局は「シンガポールは小国。
外国人患者を受け入れなくては、医療水準が向上しない。
医療観光推進は国民のため」と言い切る。

▽通貨危機が転機

タイは、政府推進の「メディカルハブ構想」の下、
08年に140万人を誘致、640億バーツ(約1739億円)を稼いだ。

医療観光が注目されたのは、1997年の通貨危機がきっかけ。
4割が外国人患者、というバンコクのバムルンラート病院の
メイズ部長は、「経営危機を脱する方法は、バーツ安を逆手にとった
外国人誘致だった

「米国並みの医療が破格の料金で受けられる」と評判、
01年の米中枢同時テロ後、渡米が困難になった中東諸国から、
患者が押し寄せた。

心臓バイパス手術の費用は、米国の約5分の1。
12カ国語に対応する通訳サービスや患者の嗜好に合わせた食事など、
「ほほ笑みの国」タイならではのきめ細かいもてなしも前面に出す。

▽市場拡大

インドの場合、競争力の源泉は圧倒的な低コスト。
人件費を安く抑え、新薬に比べ、開発費の負担が少ない
ジェネリック薬を利用できるからだ。

「優秀な医師をそろえているが、費用はシンガポールの3分の1、
タイの半分」というニューデリーの民間病院マックス・ヘルスケア協会では、
2年前に比べ、外国人患者数は4倍増。
インド全体の07年の総数は、45万人。

各国の外国人患者の数は、マレーシアが34万人(07年)、
フィリピンが10万人(09年)、韓国が6万人(同)など、
日本も流れに乗ろうと、医療観光推進を新成長戦略に盛り込んだ。

高成長が続くアジアでは、所得増に伴う医療支出増大は確実で、
20年以降、マレーシアやベトナムなどが相次いで高齢化社会に突入。
外国人患者の争奪戦は一層激化しそう。

※医療観光

医療機関での受診を目的に外国へ行き、観光なども兼ねること。
インターネットの普及や国際交通網の発達を背景に拡大。
現在、約50カ国が受け入れ、2008年の推計利用者は約600万人。
欧米や中東から、低料金で質の高い医療を求めて、
アジアの病院を訪れる人が増加。
07年、アジアの主要国が年間約300万人を受け入れたというデータ、
一大拠点となりつつある。

外貨獲得の手段として、タイやシンガポールは、
ビザ取得要件を緩和するなど国を挙げて誘致政策を展開。
多剤耐性菌の移動への関与も指摘。

日本でも、高度な医療技術を産業として海外に売り込もうと、
政府が新成長戦略に盛り込んでおり、健康診断や検診を中心に
市場規模は5500億円。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/15/126940/

自然と共存、合意目指す 多様性条約会議始まる 「美しい地球、次世代に」 遺伝資源で厳しい対立も 「生物多様性会議」

(2010年10月18日 共同通信社)

世界規模で進む自然環境の破壊を押しとどめ、
さまざまな生きものと共存した暮らしの在り方を話し合う、
生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が、名古屋市で始まった。

議長を務める松本龍環境相は、
「生物多様性は、取り返しがつかない地点の近くに来ている。
美しい地球を次世代につなげるのは、各国共通の願い。
意欲的で現実的な目標に合意し、国際社会で一致した行動を起こそう

2010年以降の国際的な保全目標や、薬の開発に役立つ遺伝資源の
利用の議定書づくりが主な議題。
先進国と発展途上国が激しく対立し、交渉は難航しそうだが、
各国が互いの利害を乗り越えて合意できるかが注目。

会議は29日まで。
27日から、環境相らが閣僚級会合を開き、難しい議題で政治的決着を探る。

ジョグラフ条約事務局長は、「これから数百万年の多様性がどうなるかは、
今後数十年に人類という一つの種が取る行動によって決まる」と強調、
将来に向けて思い切った保全策を求めた。

全体会合で、保全目標や遺伝資源の利用、海や山の生態系、
地球温暖化への対応などを議論する作業部会を設置。
難航が予想される、遺伝資源の利用に関する非公式協議グループも置いた。

12月の国連総会決議に向け、各国の保全姿勢も確認。

開会式では、しの笛演奏に乗せて、日本の四季折々の風景や
動植物を表現した影絵をスクリーンで上映。
会議の名誉大使を務める歌手のMISIAさんが、
生物多様性をテーマにした曲を歌った。

これまでの交渉では、植物や微生物といった遺伝資源からつくった医薬品や
健康食品の利益を、資源の原産国に還元する議定書をめぐって各国が対立。
保全目標でも意見が分かれ、合意の見通しは不透明に。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/18/127043/

インサイド:広州アジア大会1カ月前 巨大祭典の底流/2

(毎日 10月14日)

東京都内のホテルで、アジア大会に出場する
ダンススポーツの日本代表選手団の壮行会。

中央にダンス用のフロアが張られ、周りを観客のテーブルが取り囲む。
代表選手が演技を披露し、観客と一緒に踊るアトラクションも。
JOC幹部も招かれた中、斉藤斗志二・日本ダンススポーツ連盟会長は、
「正式競技となったアジア大会に、初めて日本チームが挑戦する。
最強の6組を送り込むので、たくさんのメダルを取ってほしい」と気勢を上げた。

今大会で、新競技として採用されたのが、ダンススポーツ、近代五種、
クリケット、ローラースポーツ、ドラゴンボートの5競技。
チェス競技の一つに位置付けられた囲碁や7人制女子ラグビーなども
新種目として加わる。

前回のドーハ大会は39競技。
同大会終了時、アジア・オリンピック評議会(OCA)は、
35競技程度に縮小する方針を見せたが、広州や新加入を目指す
競技団体の意向を反映させ、逆に3競技が増える形。

◆史上最多の42競技

51年、第1回ニューデリー大会は6競技。
実施競技は増加の一途をたどり、再びニューデリーでの開催となった
82年の第9回大会で20競技を超え、
その後に武術太極拳やカバディといった民族競技も加わった。

今大会は、史上最多の42競技が行われ、
28競技の08年北京五輪を凌駕する巨大イベント。

当然のように、肥大化には問題も出てきた。
開催地の負担は大きくなり、「資金力、運営面でも、
開催できる都市が限られてくる」(JOC幹部)という危機感。

広州に決まった10年大会には当初、マレーシア、韓国、ヨルダンも
招致に名乗りを上げたが、OCA総会前にいずれも立候補を断念。
広州の招致活動がリードしていた面も大きいが、
短期間では資金や施設面で準備が整わなくなってきたことも指摘。

派遣する側の負担も大きい。
JOCによると、選手の派遣費用は、02年の釜山大会が2億6200万円、
長距離の移動費用がかさんだ06年ドーハ大会が5億3000万円。
1000人以上を派遣する今回も、約3億8000万円の予算を計上。
同じ中国で開催された北京五輪は、570人余りの派遣で2億4500万円。
JOCの平真事務局次長は、「普及や強化のために、
派遣しなければならない」と話すが、その規模は五輪を上回る。

◆抑制の動きに異論も

OCAには、膨張するアジアスポーツを整理しようという動き。
05年アジア室内大会、08年アジアビーチ大会、
09年格闘技を集めたアジアマーシャルアーツ大会の
三つの総合大会を始めた。

夏季、冬季のアジア大会に、これらの大会を加え、
実施競技を分散する方針。
14年、韓国・仁川で開催する次回アジア大会は、
五輪実施競技の28に、アジア特有の競技を最大7とする
計35競技程度に絞ることが検討。

ダンススポーツで、今回の選手団長を務める
仲野巽・日本ダンススポーツ連盟専務理事は、
「五輪に次いで注目されるアジア大会に出場する意義は大きい。
メダルを取って、あわよくばスター選手が出てくれば、
若い人たちにもダンススポーツが広がってくる」と訴える。

肥大化抑制を目指すOCAと、普及のきっかけにしたい競技団体。
広州では、それぞれの思惑が交錯する。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101014ddm035050152000c.html

発達障害の学生支援(4)入学前に調査、早期発見

(読売 10月16日)

自己評価を引き出す質問に、「障害者、きもいと言われます」と
記されている。
書かれている文字も、大学生にしてはあまりにも稚拙で、
行からはみ出しそうだ。

聖学院大学(上尾市)が、入学前準備講座で行っているアンケート調査。
同大総合研究所助教で、学生相談室室長補佐の竹渕香織さん(37)は、
「発達障害の疑いあり」と目を光らせた。

発達障害の学生には、早期発見と早期支援が欠かせないが、
自分自身では障害に気づいていない場合が多い。
同大は、入学後の学生生活ガイダンスで、全学生を対象に、
不安傾向などが分かるUPIテストを実施。
合宿形式の新入生オリエンテーションでも、
学生相談室のカウンセラーらが気になる学生をチェック。

入学前準備講座でのアンケート調査は、2006年から導入。
2~3月にかけて行う準備講座で実施、
より早期の発見を目指そうというもので、
学生相談室とラーニングセンターが開発。

自己評価を引き出す設問では、
「私はよく人から」という書き出しだけ示し、
その後に思いつくことを自由に書かせる。
「当てはまるものに丸をつけるUPIテストと違い、
友人関係などについて文章を書いてもらうことで、
発達障害の発見につながる」と竹渕さん。

同大を3年前に卒業した小林哲郎さん(26)(仮名)は、
オープンキャンパスに訪れた時から、教職員の目にとまっていた。
入学後、病院で検査を受けて高機能自閉症と診断、
親も交えて学生生活の送り方を話し合った。

この結果、カウンセラーの個人面談、教員による学習面での
配慮だけでなく、所属する音楽サークルの部員によるサポートを、
支援の3本柱の一つとすることに。

相談室から、小林さんの障害について知らされた音楽サークルの
部員たちは、小林さんがトラブルを起こす度、竹渕さんを訪ね、
支援の仕方を相談。
そんな部員の気持ちに応えるように、小林さんも相手と
視線を合わせられるようになっていった。

「音楽を作り上げていく過程で、自分も役割を担っているという
達成感が自信となった。
教職員やカウンセラーとは違う同級生、先輩・後輩との人間関係が
精神的な安定を生み、自分にできないことを
受け入れられるようになった」と竹渕さん。

早期に発見することで、仲間とのふれあいが、
発達障害学生の成長につながった。
早期発見の体制が整った同大では、
今度は、学生支援グループの組織化を目指している。

◆UPIテスト

1960年代、全国大学保健管理協会の学生相談カウンセラーと
精神科医が中心になって作成した学生向けの心理テスト。
正式名称は「University Personality Inventory」。
60の設問で構成、特に心身症・神経症の早期発見に効果がある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101016-OYT8T00216.htm

2010年10月27日水曜日

ヘルペス感染の仕組み解明 予防薬開発に道

(2010年10月14日 共同通信社)

くちびるの周りに、赤い水ぶくれができる口唇ヘルペスなどの
原因となる単純ヘルペスウイルス(HSV)が、
人に感染する仕組みを解明したと、東京大医科学研究所の
川口寧准教授(ウイルス学)らが14日付英科学誌ネイチャーに発表。

ウイルスの表面にある糖タンパク質の結合する相手が、
人間の細胞側の特定のタンパク質であることを突き止めた。

川口さんは、「このウイルスは、いったん感染すると潜伏感染し、
頻繁に再活性化する。
従来の抗ウイルス薬は、感染を防ぐことはできなかったが、
今回分かったメカニズムは、感染を防ぐ薬の開発につながる」

HSV粒子の表面にある「糖タンパク質B」が、
人の細胞側のどこと結合するかが謎だったが、
川口さんらは、その相手が「非筋肉ミオシンIIA」という
タンパク質だと解明。

このタンパク質は、通常は細胞表面にはなく、
HSVが侵入しようとすると表面に出てくる。

表面に現れるのは、特定の酵素が働くためと分かり、
マウスの実験で、この酵素の働きを薬で抑えると、
HSVの感染を防ぐことができた。

HSVは、唾液などを介して粘膜で感染、さまざまな病気を引き起こす。
日本人の10人に1人は、口唇ヘルペスにかかったことがある。
脳炎は、特に病状が重く、後遺症がある場合や死に至ることも。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/14/126875/

遺伝資源めぐり本格交渉 途上国強硬、難航も予想 「生物多様性会議」

(2010年10月14日 共同通信社)

医薬品開発に役立つ植物や微生物など、
遺伝資源の国際的な利用に関する議定書づくりを進める
生物多様性条約の特別作業部会が、名古屋市で始まった。

論点ごとの本格的な交渉に入ったが、発展途上国が、
遺伝資源の利益配分の対象をどこまで広げるかをめぐり、
強硬姿勢を示し、今後の協議の難しさを予想させる展開。

議定書策定は、第10回締約国会議(COP10)の主要議題。
遺伝資源の商業利用の利益を、原産国に公平配分する
ルールづくりを目指す。
多様性の保全や持続的な利用を促す狙いもあるが、
交渉は難航、採択の見通しは不透明だ。

作業部会の冒頭、ホッジス共同議長は、
「みなさんは、将来の世代にも責任を負っている」と交渉の進展を促した。

遺伝資源の利益配分の対象を広くしたい途上国が相次いで、
過去の議論の流れを無視する形で主張を展開、先進国が反発。

ワクチン開発で、利益が見込まれるウイルスを、
製薬企業が途上国で入手する場合など、
病原体の利用も集中的に討議したが、
新型インフルエンザ流行などの緊急時には柔軟な対応を求める
先進国に対し、途上国は難色を示した。

交渉は、議定書発効前に途上国から持ち出した
遺伝資源も対象にするのか、などが大きな対立点。

作業部会は15日まで、16日にまとめの会合が開かれる。
一部途上国は、遺伝資源の議題を、もう一つの主要議題である
多様性保全の国際目標と絡めて交渉する構えで、
議論は締約国会議の最終盤にもつれこみそう。

作業部会のカサス共同議長は、協議の進展に自信を見せる一方、
「今会合の終了時、保留状態の項目が残るかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/14/126890/

インサイド:広州アジア大会1カ月前 巨大祭典の底流/1

(毎日 10月13日)

16回目を迎える、4年に1度のアジアスポーツの祭典
「アジア競技大会」は、11月12日の開幕まで1カ月を切った。

中国・広州で開かれる大会には、45カ国・地域から1万人を超える
選手が参加、史上最多の42競技476種目が実施。
肥大化を続ける大会は、今後どんな発展を目指すのか?
スポーツでも「大国」として勢いづく中国の存在、緊張する日中関係--。
開幕を控えた巨大祭典の底流を探った。

◇影落とす日中緊張

8日、JOC市原則之専務理事が広州から帰国。
訪中の目的は、アジア大会の団体球技の抽選会出席だったが、
大会まで1カ月に迫った地元の様子を視察する意味も。

9月、尖閣諸島で起きた中国漁船と海上保安庁巡視船の
衝突事件をめぐり、閣僚級の交流を停止するなど、
日中関係が一時緊迫。

市原専務理事は、事件後も「スポーツ界は、独立して交流を続けている。
大会参加には、何も心配していない」との姿勢、
現地通訳の話を聞いて、胸をなで下ろした。

「大きな大会を開催しようとしているのに、北(北京)の人の思惑は分からない」
そんな言葉に、政府と現地との温度差を感じた。

◆盛んなスポーツ交流

中国南部に位置する広東省の省都、広州。
香港に近く、昔から経済などでの外交が盛んな土地。
日本の自動車メーカーも日産、トヨタ、ホンダなど大手が
現地に生産販売拠点を持っている。

JOC幹部は、「中国の中でも、日本との関係が深い場所。
北京五輪は、政府の規制下で大会運営が進められたが、
広州では市民が盛り上げようとしている」

スポーツ界での日中交流は盛ん。
日中や米中関係の改善に寄与した卓球の「ピンポン外交」、
中国が強豪のバドミントンなどは、ジュニア世代からの交流を盛ん。
中国の昆明は、高地トレーニングの合宿地として、
陸上や水泳の選手たちが頻繁に訪れる。

日本体育協会は、国交正常化35周年の07年、
市民レベルでの交流活動を始めた。

今回の尖閣騒動の最中に開かれたバドミントンのヨネックスオープンでは、
中国代表の監督が、来日を突然キャンセルする不穏な動きもあったが、
日本側は、中国のコーチや選手を食事に招いて交流を図った。

◆「過剰反応せず参加」

気をもむような事件も起きた。
中国で開幕したサッカーの19歳以下(U19)アジア選手権の
日本対アラブ首長国連邦戦。
試合開始前の国歌演奏の際、観客の男がグラウンドに乱入、
日の丸を奪い取った。

04年、中国で開催されたサッカー・アジアカップでも、
小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝で反日感情が高まり、
日本対中国の決勝後、会場から出ようとした日本公使の車の
ガラスが割られたり、日の丸が燃やされたりするトラブル。

今回、日本サッカー協会は、アジアサッカー連盟(AFC)と
大会組織委員会に抗議文を提出。
AFC側もチームに謝罪に訪れ、早急に事態を収束させる姿勢。

小倉純二会長は、「中国協会は、アジアカップのようなことはやめようと
努力してきたので、すごく残念に思っていると思う。
せっかくスポーツを通じて努力してきたことが、一から出直しになった」

尖閣諸島問題は、日中首脳会談で収まりつつある。
世界的なスポーツ大国になった中国にとって、アジアの中では、
韓国とともに日本もライバル。
アジア大会のサッカー男子1次リーグでは、
日本と中国が同じ組になるなど、楽観できない状況も。

市原専務理事は、「過剰反応をせず、相手に敬意を表して参加するだけ。
アジア大会を通じて、中国だけでなく、すべての国の選手と交流を図り、
国際力をつけてもらいたい」と期待。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/10/13/20101013ddm035050067000c.html

発達障害の学生支援(3)教員と心理職 二人三脚

(読売 10月15日)

色鮮やかなビー玉やサイコロなどが盛られた皿をはさみ、
割りばしを手にした学生が、教員と向かい合っている。

「最初はサイコロ、次は貝殻」。
教員の指示で、学生は器用なはしさばきでつまみ上げ、
別の皿へと移す。
「先生よりうまくなったんじゃないか」。
教員が言うと、学生の表情が大きくほころんだ。

大阪産業大学の学生相談室で、目にした光景。
学生相談室長で、カウンセラーの瀬島順一郎教授(63)に、
マンツーマン指導を受けていたのは、アスペルガー症候群と
軽度の学習障害の診断がある工学部4年の渡辺真さん(21)(仮名)。

同大では、発達障害の学生には、教員と学生相談室が連携し、
学習と生活を支援する体制を整えている。
渡辺さんは、苦手な科目の単位がなかなか取れずに悩んだ末、
2年生の時、学生相談室を訪れた。

渡辺さんは、力の出し方をコントロールしたり、場面に合わせて
声の大きさを変えたりすることができなかった。
そこで、上手な会話の仕方など、社会生活や対人関係を営む
技能である「ソーシャルスキル」を、
学生相談室でトレーニングすることになった。
はしの練習も、その一環。

「うまくできたらほめ、ちょっとでもいいところを伸ばす。
自分の行動が認められることで、自信が強まっていく」と瀬島教授。

学習面では、丁寧に補習をするようにした。
学生相談室から連絡を受けた当時の工学部長、
中村康範教授(62)は、「授業後に、積極的に質問するなど
学習意欲は旺盛だが、相手の気持ちを考えずに
しゃべり続けてしまうところがあり、発達障害ではないかとすぐ気づいた。
先輩が、後輩に勉強を教えるピアサポートのシステムの活用を考えた

「学習の支援は教員にしかできないし、学生生活の中で生じる問題は
心理職が専門。
両者が密接に連携しないと、発達障害学生の支援はうまくいかない」
学生生活支援コーディネーターの松岡信子さん(40)。

大学の支援で、大きく成長した渡辺さんが今、直面しているのは、
就労の問題。
コミュニケーションが苦手という自身の特性を、企業に理解してもらうため、
療育手帳を取った。
知的障害を伴わない広汎性発達障害者の就労には、
学習と同様、周囲の理解と支援が欠かせないが、壁は高い。

◆療育手帳

知的障害者に、都道府県・政令市から交付され、
各種福祉サービスが受けられる。
手帳取得により、一定割合の障害者雇用を義務づけられた企業に
採用されやすくなるというメリット。
精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳があるが、
発達障害に特化した手帳を求める声もある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101015-OYT8T00200.htm

2010年10月26日火曜日

京都府立医大の松原教授ら、動脈硬化の仕組み解明 抗老化たんぱく質不足で

(2010年10月19日 毎日新聞社)

京都府立医大の松原弘明教授と草場哲郎研究員らのグループは、
抗老化たんぱく質「クロトー」が不足することで、血管が老化し、
動脈硬化につながるメカニズムを解明。
近く米アカデミー紀要(電子版)で発表。

グループは、動脈硬化で心筋梗塞や脳卒中となる患者は、
腎臓から分泌されるクロトーが少なくなっていることに着目。
生まれつきクロトーを持たないマウスを用いた実験で、
血管内側の細胞(血管内皮細胞)内のカルシウム濃度が
極めて高くなっていることを突き止めた。

このカルシウム濃度上昇で、細胞が死んで血管壁にすき間が生じ、
血しょうが侵入することを発見。
入り込んだ血しょう成分が、血管を石灰化して、
老化が導かれることを解明。

松原教授は、「血管病の予防や治療に向けた新たな戦略を
開発できる可能性がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/19/127113/

日本の1人当たり医療費は、OECD加盟31ヵ国中20位

(2010年10月19日 WIC REPORT(厚生政策情報センター))

厚生労働省は、医療保障制度に関する国際関係資料について発表。

(1)2008年におけるOECD加盟国の医療費の状況
(2)2007年の、G7諸国における総医療費(対GDP比)と
高齢化率の状況
(3)2007年時点の、医療分野についての国際比較
(4)主要国の医療保険制度概要。

(1)のOECD(経済協力開発機構)加盟国における医療費の
状況を見てみると、日本は総医療費の対GDP比は8.1で、
31ヵ国中22位、1人当たり医療費は2729ドルで31ヵ国中20位。

総医療費(対GDP比)、1人当たり医療費とも、1位はアメリカで、
それぞれ16.0、7538ドル。

(3)の国際比較から、「人口1000人当たり総病床数が際立って多い」、
「病床100床当たり医師数・看護職員数は逆に非常に少ない」、
「急性期、医療全体で見ても、平均在院日数は極端に長い」、
「1人当たり外来診察回数が多い」などの特徴が
日本の医療には存在することが分かる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/19/127121/

スポーツ政策を考える:榊原孝彦・NPO法人ソシオ成岩スポーツクラブ

(毎日 10月16日)

スポーツをしたいと思った子どもが、自転車で通える場所にあり、
いつでも使えるというクラブが理想。
文部科学省が、総合型地域スポーツクラブの全国的な展開を
目指すなら、ある程度の定型を示した方がいいのでは。

スポーツをしたい人が集まり、参加者が運営する従来のクラブと、
総合型地域スポーツクラブは違う。
我々は、スポーツをする人、クラブ運営を担う人、運営を支える側の
3者が分かれていると考え、機能させている。
運営は我々が担い、会員が競技を楽しみ、
主に行政や企業が評価しながら支えてもらう。

行政が支えるのは、単に体育館などを建てることではない。
博物館に学芸員、図書館に司書がいるように、
スポーツクラブには専門員が必要。
そこに行けば、年齢にかかわらず、何も知らなくても、
興味のあるスポーツができるようにすることが、
「スポーツ立国戦略」にある、社会全体でスポーツを支える
基盤整備につながる。

愛知県半田市成岩地区で、総合型地域スポーツクラブとして
活動を始め、15年。
サッカー、野球など12種目のスポーツスクールを開く。

今春の東京六大学野球で、無安打無得点を達成した
慶大の竹内大助投手(2年)は出身者で、子どもたちの励みに。

個人会員もいるが、地域で子どもたちを育てるという趣旨から、
主に家族で会員になってもらっている。
会員数は、住民の約13%にあたる2700人超。
昨年の会費収入は約2000万円。

7年前の成岩中体育館新築時、半田市が学校だけでなく、
社会体育の施設として整備し、クラブハウスができた。
体育館のほか、屋上には人工芝のコートもある。

官民一体の運営が成り立つそもそもの始まりは、
90年代から段階的にスタートした学校週5日制がきっかけ。
週末に時間の空白ができる子どもたちの、地域の受け皿として
総合型地域スポーツクラブに着目。

当時、成岩中の生徒指導担当だった私は、
地域の青少年健全委員会にあたる「少年をまもる会」の
事務局を担当、町内会やPTAと繰り返し話し合い、
学校と地域が一体となってスポーツに親しむ環境を作る
「成岩スポーツタウン構想」をまとめた。

96年クラブ発足時、成岩中では当時の校長が、
週末の部活動停止を決断。
保護者から「やってほしい」という声もあったが、
この構想と連動させることで、理解を得ることができた。

地域で活動する際、中心となるのは学校。
部活動は、全国で盛んに行われている。
週末は、地域でスポーツをする仕組みを作ってもいい。
==============
◇さかきばら・たかひこ

1959年生まれ。早大大学院修了。
中学校教員を経て、ソシオ成岩のマネージングディレクター(運営責任者)。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/10/16/20101016dde035070029000c.html

発達障害の学生支援(2)「共育」で理解深める

(読売 10月14日)

授業が半ばを過ぎたころ、四重に重ねた半透明のシートが配られた。
「弱視の見え方や心理を考えてみて」。
講師の言葉にうなずきながら、学生たちはシートを目の前にかざし、
必死にテキストの文字を読もうとする。

東北公益文科大学で、「インクルージョン社会論」の授業。
15人の学生が、視覚障害者の移動介助や、点字の名刺作りなどを体験。

「指で点字が読めるのを、『すごい!』と言う人がいるけれども、
視覚障害者にとっては平仮名を読むのと同じこと。
そこが分からないと、すべての人々が排除されることなく、
幸せに生きられるインクルージョン社会は実現しない」。
自らも視覚に障害がある講師が訴えると、
学生たちの表情がぐっと引き締まった。

「インクルージョン社会をめざした大学づくり」を掲げた同大の取り組みは、
2007年度の学生支援GPに選定。
発達障害など、特別なニーズを持つ学生と共に学び成長していく
「共育」に力を入れ、授業はその一環。

学生たちは半年間かけて、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、
発達障害と精神障害について理解を深め、その支援方法について学ぶ。

「特別なニーズを持つ学生が、当たり前に過ごせるキャンパスを整備し、
そうした環境で育った学生を社会へと送り出す。
市民向けの公開講座も開き、インクルージョン社会への理解と活動を
促している」
学生共育支援室長の伊藤眞知子教授(57)。

発達障害学生への支援では、板書や資料を使って、
より丁寧に説明するようにするなど、
授業のユニバーサルデザイン化を進めている。
言葉で話すだけでは理解が難しい、という障害の特性に配慮。

この結果、発達障害のある学生だけでなく、
障害のない学生からも、「分かりやすい授業になった」と好評。

支援を的確に判断するため、サポートの必要度を5段階に分類した
「支援スケール」を開発、用いているのも同大の特徴。
手取り足取りの支援では、本人の力がつかず、
自立へとつながらない
副室長の田中和代さん(59)が、苦い経験を振り返る。

「能力がないのに卒業させてしまうのは、高等教育機関として違う」
と伊藤教授。
支援と学位授与方針との間で揺れながら、
「客観的合理性のある配慮」を探る同大の模索が続く。

◆学生支援GP

正式名称は、「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」。
文部科学省の事業で、学生の支援に立った独自の工夫や努力による
優れた取り組み(Good Practice)を、4年間財政支援。
大学の発達障害学生支援では、東北公益文科大のほか、
富山大、信州大、プール学院大が選定。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101014-OYT8T00199.htm

2010年10月25日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:トステム・大竹俊夫社長

(毎日 10月18日)

アルミサッシや建材、住宅設備機器製造大手のトステムは、
2015年までに冷暖房エネルギーを、90年比で新築住宅で50%、
既存住宅で25%削減する製品の創出、普及を目標。
大竹俊夫社長に、同社の環境戦略を聞いた。

--環境対策にどのように取り組むか?

◆産業界ではここ数年、CO2排出量削減が進んだが、
家庭での排出量は、家電の普及により90年比で約35%増。
「照明・家電」、「車」、「冷暖房」が排出量トップ3。

住宅の断熱性能を上げ、少ないエネルギーで生活できる家を
つくるのが、我々の仕事。
熱が外に逃げている窓の性能を上げることが手っ取り早いので、
内窓「インプラス」、高断熱サッシ・玄関、太陽光発電パネルの
普及促進に努めている。

--「うれしいエコ」を企業コンセプトに掲げている。

◆寒い時も空調を使わず、自動車にも乗らないような
「苦しいエコ」では、長続きしない。
25%削減という政府の数値目標だけでは、将来にもつながっていかない。

太陽光発電で売電し、請求書が来るのではなく、請求書を出す家にする。
電気ではなく、バイオ燃料が使えるような暖炉をいれ、
家族のだんらんが生まれるようなイメージ。
格好良く、楽しくCO2が減らせる生活を提案できたら、素晴らしい。

--新築だけでなく、既存の住宅向けにも対策が必要。
どう普及を図るか?

◆既存の住宅向けには、住宅版エコポイント効果で、
内窓「インプラス」が好調。
売上高は、前年比5倍の年100億円に。
断熱材を入れるには時間も費用もかかるが、インプラスは
数時間で取り付けられ、暖房費が95%減った例。

9月、「パシフィコ横浜」で初めてイベントを開き、
2日間で1万3000人に来場。
大半が家族連れで、商品展示だけでなく、どうやったら家に
風や光が通るのかを実験してみせたり、窓断熱に取り組むヒーロー
「インプラスマン」のアニメを作って、3Dシアターで上映。
子どもたちにも、環境について考えてもらえた。

--今後取り組むべき課題は?

◆アルミサッシで国内トップ、アルミにこだわってはいない。
材料を、国内産の木材に代えられないか。
見た目の温かみもあり、何より環境にいい。
日本の森林資源は、持続可能性のある材料でありながら、
コストの面からうまく活用できていない。
少し時間がかかるが、活用できれば技術力を世界にアピールできるし、
地域産業の掘り起こしにもつながる。
==============
◇おおたけ・としお

69年東京理科大工卒。同年、東洋サッシ(現トステム)入社。
取締役、リビング建材事業部長、建材商品事業本部長などを経て、
10年4月から現職。東京都出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/18/20101018ddm008020039000c.html

発達障害の学生支援(1)対人関係 語り合える場

(読売 10月13日)

秋晴れの日ざしが差し込むカーペット敷きの部屋。
昼食を手にした学生たちが、女性カウンセラーを囲んで
次々と席に着いていく。

「グループ討議のリーダーに指名されたのに、うまくできなかった…」、
男子学生が落ち込んだ表情で語り始めた。
すかさず別の学生が、「リーダーに指名されたのは、
できると思われている証しだよ」とフォロー。
悩みを打ち明け、励まし合うのは、ほとんどが発達障害の診断、
または疑いのある学生たち。
福岡大学で、週に1回開かれるサポートグループの集まり。

同大で、発達障害の学生の相談が目立ってきたのは、約10年前。
当時の学生相談室を、ヒューマン・ディベロップメント・センターへと改組
不登校なども含めた心の健康の支援を始めていた。

サポートグループは、発達障害の学生らを対象に実施された
対人関係などの心理教育プログラムの参加者から、
「このまま別れるのは寂しい」と声が上がり、9年前に発足。
現在は約10人が参加、同センターのカウンセラーに助言を受けながら、
一緒に卒業や就職を目指している。

人とのかかわりが苦手な発達障害の学生が、うつなどの
二次障害にならないよう、自由で安心していられる居場所が必要。
同じ悩みを抱える仲間との交流を通し、障害が軽くなることもあり、
コミュニケーションを取る練習の場にもなっている」
カウンセラーの屋宮公子さん(55)。

法学部4年の山下明さん(24)(仮名)は、対人関係につまずき、
自宅に3年間引きこもった。
アスペルガー症候群と診断されたことを、
サポートグループでだけ打ち明けている。
「友達ができないのは、努力が足りないからではなく、
障害のためなんだと気が楽になった。
人間関係のストレスがたまらないここは、一番居心地がいい場所」

「サポートで、学生が変わる瞬間がある。
山下君も、他人からノートを借りられるようになり、目標だった
卒業見込みも取れた」と屋宮さん。

同じ悩みを抱えた仲間に、アドバイスを与える経験が自信につながり、
それぞれの成長を促していく。

「大学全入時代」の到来で、入学生が多様化し、
発達障害の学生が増えている。
小・中・高校での特別支援教育を経て、進学してくる学生を、
大学でどう支えていけばよいか、実践事例を通して考えたい。

◆発達障害

知的発達の遅れを伴わない脳機能障害。
読み書きなどの習得が困難な学習障害(LD)、衝動的に行動しがちな
注意欠陥・多動性障害(ADHD)、対人関係が苦手な高機能自閉症など。
日本学生支援機構の調査によると、発達障害と診断された学生は、
2008年5月現在、全国の122大学に237人が在籍。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101013-OYT8T00351.htm
(サイエンスポータル 2010年10月19日)

鈴木章、根岸英一両氏のノーベル化学賞受賞で、
久しぶりに科学記事が連日、新聞紙面をにぎわしている。
科学記事が科学欄以外に載る比率は、政治、経済、社会などの
記事に対し、非常に少ないから、余計に目立つ。

鈴木章、根岸英一両氏の業績をたたえる記事がほとんどだが、
両氏を含め、2000年以降にノーベル賞を受賞した日本人10人の
業績が1980年代以前のものばかりではないか、という指摘。
浮かれてばかりでよいのか、ということ。

こうした指摘と、最近よく言われる日本人の科学リテラシー低下、
理工系学部希望者の激減、といった科学技術立国の掛け声に
反する現実があいまって、日本の科学、技術の現状あるいは
将来に対する悲観論が一方で根強く聞かれる。

このような“世論”に、真っ向から反論する人も。
北澤宏一・科学技術振興機構理事長がその1人。

日本の大学の力量は、論文、特許などの数から見ても、
かつてより大幅に向上、論文被引用数で世界のトップになる
研究者も相次いでいる。
日本の基礎研究はここ数年、むしろ十分な成果を出している。

問題は、日本企業の元気がなく、これらの基礎研究成果に
投資しないことだ、という。
昔の研究成果しか評価されていない、という指摘に対し、
日本の代表的な競争的研究資金制度、ERATO、CREST、さきがけ
という科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業がスタートしたのは、
1995年以降(ERATOの前身「創造科学技術推進制度」発足は81年)。
これらに支援された研究者たちが、ノーベル賞を受賞するのは
これからの話、というわけ。

こうした論議が起きるのはなぜか?
新聞の基礎研究に関するニュースに、成果重視の傾向が強いことが、
一つの理由。
ノーベル賞は別格として、研究成果が発表されたとき以外、記事になりにくい。

「サイエンス」、「ネイチャー」といった権威ある雑誌に論文が載ると、
記事になりやすい。
こうした記事ばかりでは、今、基礎研究の分野で、
何に研究者の関心が向き、何の解明、答えが追求されているか、
普通の人には分からない。
さまざまな領域にわたる研究成果を、散発的、断続的では、
基礎研究の世界の大きな流れをとらえることはできない。

科学技術振興機構が、戦略的創造研究推進事業「ERATO型研究」で
今年スタートする新規研究領域と研究総括を発表。
一般の新聞に、ニュースとして取り上げられることもなく、
発表の仕方も、文部科学省の記者クラブに資料を持っていくだけ
(説明がない資料だけの発表を、業界用語で「投げ込み」)。

発表資料には、「卓越したリーダーのもと、多様なバックグラウンドを持つ
若手研究者が結集し、時限的なプロジェクトの中で、
新しい科学技術の源流を生み出すことを目的として、
独創性に富んだ探索研究(研究期間:5年程度 研究費総額は
最大15億円程度)を実施する」、というERATOの目的。

こうした説明に、執筆意欲をかきたてられる記者はいなかった。
ことしは、変化が起きた。
山形新聞が、16日朝刊1面で取り上げた。

新たに選ばれた5人の研究総括の1人である
東山哲也・名古屋大学大学院教授(研究領域:ライブホロニクス、
戦略目標:生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出)
が、山形県出身(県立鶴岡南高校卒)で、
科学技術振興機構の提供資料を基に、東山教授に取材。

この記事を読んだ県内の読者が、技術につながる可能性がある分野として、
生命システムの研究が重視されていることに関心を持ち、特に鶴岡南高校の
同窓生や後輩たちなど、東山氏と縁のある人々に科学を身近に感じてもらう、
といった効果を同新聞は期待。

こうした報道が普通になるには、新聞側だけでなく、発表側にも
積極的で、きめの細かい情報提供が必要。
今後、このような動きが広がり、新聞の科学報道が
“成果重視“から、研究者の人となりにも焦点を当て、
科学、技術のより大きな流れもよく分かるようなものに
徐々に変わるなら、読者にも歓迎される。

<新規ERATO研究領域・研究総括(東山教授以外)>

・彌田 智一 東京工業大学 資源化学研究所教授
(広島県立三津田高校、京都大学卒、研究領域:創造時空間、
戦略目標:最先端レーザー等の新しい光を用いた物質材料科学、
生命科学など先端科学のイノベーションへの展開)

・香取 秀俊 東京大学 大学院工学系研究科教授
(茨城県立土浦一高、東京大学卒、研究領域:創造時空間、
戦略目標:最先端レーザー等の新しい光を用いた物質材料科学、
生命科学など先端科学のイノベーションへの展開)

・竹内 昌治 東京大学生産技術研究所准教授
(山梨県立甲府南高、東京大学卒、研究領域:バイオ融合、
戦略目標:プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製)

・村田 道雄 大阪大学 大学院理学研究科教授
(大阪府立豊中高校、東北大学卒、研究領域:脂質活性構造、
戦略目標:生命システムの動作原理の解明と活用のための基盤技術の創出)

http://www.scienceportal.jp/news/review/1010/1010191.html

2010年10月24日日曜日

宮古島で東北大学がモバイル遠隔医療の実証実験

(サイエンスポータル 2010年10月15日)

医師不足が最も深刻な地域で、携帯電話を利用した診療支援を
可能にする遠隔医療システムの実証実験を、
東北大学が沖縄県宮古島で始める。

このモバイル医療情報通信システムは、「電子診療鞄」と名付けられ、
医師の代わりに看護師が患者宅に持参し、
病院や診療所の医師に、患者の高画質映像や生体情報を
オンラインで送ることができる。
へき地や離島のほか、救急車、災害現場などでの活用が期待。

東北大学の山家智之・加齢医学研究所教授、
吉澤誠・サイバーサイエンスセンター教授らが、
ソニー、フクダ電子、オムロンヘルスケア、本多電子、
ウィルコム,ネットワンシステムズ、スリーリンクスなどと共同で開発。

既に、第1号試作器を用いた模擬実験を、仙台市の在宅医療現場で
実施済みで、このほど改良型第2号試作器の完成を機に、
沖縄の離島、宮古島のうむやすみゃあす・ん診療所で、
実証実験に取りかかる。

在宅療養者を訪問した看護師から、携帯電話で送られてくる
動画像データと生体情報を基に、診療所にいる医師が
在宅療養者を診察、必要に応じて看護師に適切な指示をする。

電子鞄の中身は、送信パソコン、モバイルカード、12誘導心電計、
血圧計、超音波診断装置、ビデオキャプチャボックス、
ウェブカメラなどから成る。

厚生労働省が発表した「病院等における必要医師数実態調査の概況」
によると、全国の医療機関が必要とする医師の数に対し、
現在の医師数は約9割しかいない。
地域による医師不足の程度も、大きな差があることが明らか。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1010/1010151.html

蚊の遺伝子組み換えでデング熱撲滅へ マレーシアで計画、アジア初

(2010年10月13日 共同通信社)

マレーシアのナジブ首相は、同国で感染が拡大している
デング熱撲滅のため、遺伝子を組み換えたオスの蚊を自然界に放ち、
メスと交尾させ、寿命の短い新種の蚊を発生させる計画を実施したい。

実施されれば、アジア初の試みになる見込み。
マレーシアの専門家によると、実験室では成功しているが、
一部の環境専門家は、遺伝子を組み換えた蚊は、
予期しない結果を招く可能性があるとして懸念。
同首相は、「まだパイロット計画だが、成功を期待している」

デング熱は、蚊の媒介によりアジアや中南米で流行し、
感染の兆候は高熱、関節痛、吐き気など。
ひどい場合は、内出血、肝臓肥大、呼吸器疾患などを引き起こし、
最悪の場合は死亡する。

保健省によると、今年のマレーシアにおけるデング熱感染者は
3万7000人超、死者は117人、前年同期に比べ、
それぞれ17%増および65%増。

マレーシア保健当局は、遺伝子を組み換えた2000~3000匹の
オスの蚊を、2カ所の原野に放つ計画、
実施に当たっては閣議決定が必要。

WHOの西太平洋地区責任者は、計画を歓迎すると述べたが、
自然界への新種導入になるので、環境への配慮が必要。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/13/126848/

広がる色のバリアフリー 受付パネル、リモコン... カラー化から色弱者守る

(2010年10月13日 共同通信社)

一般の人とは色の見え方が異なる色弱者に配慮し、色の使い方などを
工夫する「色覚バリアフリー」が徐々に広がっている。

鮮やかな色合いで、直感的にメッセージが伝えられる
カラー化の波が押し寄せる中、公共施設や交通機関、日常生活で
触れるさまざまな製品で取り組みが始まっている。

月曜日の早朝。
いつものように会社に出勤すると、職場は閑散として同僚が誰一人いない-。

色弱者である団体役員、谷一郎さん(54)=仮名=は、
コンピューター開発会社に勤めていた数年前、度々こんな経験。
「まさかと思い、壁のカレンダーを確認したが、確かに祝日ではない。
でも、実際は休みだった」

谷さんの色弱のタイプは、鮮やかな紅色が黒ずんで見えるP型強度。
カレンダーで、休日を表す赤色の数字が、
平日と同じ黒に見えたため、識別ができなかった。

こうした色弱者は、男性の20人に1人、女性では500人に1人の
割合でいるといわれ、国内全体では300万人超。

金融機関などの窓口で、受付の番号を知らせる電光パネル。
定番だった赤色発光ダイオード(LED)の数字が、白色に。

先鞭をつけたのは、金融機関の自動窓口受付システムで
5割のシェアを持つビルコン(川崎市)。

5年前、郵便局から寄せられた苦情をきっかけに、業界で初めて
色弱者でも識別可能な、白色数字を取り入れた。

開発を担当した同社の太田隆司さんは、
「当時、主流になってきたLEDは特許紛争中で、
赤から白に替えるには10倍のコストがかかると分かり、難航した」
液晶を代用することで、費用面の問題をクリア。
3年前に導入が始まった白い数字のパネルは現在、業界の主流。

色弱者の立場に立った製品に、お墨付きを与えるのが、
NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」。

デジカメの充電ランプやテレビのリモコン、カーナビや地球儀などの
日常品をはじめ、空港や高速道路の電光掲示、
地下鉄の路線図にも早くから導入、
現在、約270の企業・団体が認証を取得。

カジュアル衣料品店「ユニクロ」では、販売する全商品約600点の
値札に、「dark gray」などと色名を表示。

品ぞろえが豊富で、色も分かるので、おしゃれをしたい色弱者には
欠かせないアイテム。
ユニクロでは、「表示は、商品を管理するための工夫。
結果的に役立っているのはありがたい」

同機構の伊賀公一副理事長は、「使いやすさを追求した製品が、
色弱者には逆効果になる場合も。
色の組み合わせや文字情報など、少しの工夫でデザイン性を
損なわずに、認証が取れることを知ってほしい」と訴えている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/13/126845/