2010年10月27日水曜日

インサイド:広州アジア大会1カ月前 巨大祭典の底流/1

(毎日 10月13日)

16回目を迎える、4年に1度のアジアスポーツの祭典
「アジア競技大会」は、11月12日の開幕まで1カ月を切った。

中国・広州で開かれる大会には、45カ国・地域から1万人を超える
選手が参加、史上最多の42競技476種目が実施。
肥大化を続ける大会は、今後どんな発展を目指すのか?
スポーツでも「大国」として勢いづく中国の存在、緊張する日中関係--。
開幕を控えた巨大祭典の底流を探った。

◇影落とす日中緊張

8日、JOC市原則之専務理事が広州から帰国。
訪中の目的は、アジア大会の団体球技の抽選会出席だったが、
大会まで1カ月に迫った地元の様子を視察する意味も。

9月、尖閣諸島で起きた中国漁船と海上保安庁巡視船の
衝突事件をめぐり、閣僚級の交流を停止するなど、
日中関係が一時緊迫。

市原専務理事は、事件後も「スポーツ界は、独立して交流を続けている。
大会参加には、何も心配していない」との姿勢、
現地通訳の話を聞いて、胸をなで下ろした。

「大きな大会を開催しようとしているのに、北(北京)の人の思惑は分からない」
そんな言葉に、政府と現地との温度差を感じた。

◆盛んなスポーツ交流

中国南部に位置する広東省の省都、広州。
香港に近く、昔から経済などでの外交が盛んな土地。
日本の自動車メーカーも日産、トヨタ、ホンダなど大手が
現地に生産販売拠点を持っている。

JOC幹部は、「中国の中でも、日本との関係が深い場所。
北京五輪は、政府の規制下で大会運営が進められたが、
広州では市民が盛り上げようとしている」

スポーツ界での日中交流は盛ん。
日中や米中関係の改善に寄与した卓球の「ピンポン外交」、
中国が強豪のバドミントンなどは、ジュニア世代からの交流を盛ん。
中国の昆明は、高地トレーニングの合宿地として、
陸上や水泳の選手たちが頻繁に訪れる。

日本体育協会は、国交正常化35周年の07年、
市民レベルでの交流活動を始めた。

今回の尖閣騒動の最中に開かれたバドミントンのヨネックスオープンでは、
中国代表の監督が、来日を突然キャンセルする不穏な動きもあったが、
日本側は、中国のコーチや選手を食事に招いて交流を図った。

◆「過剰反応せず参加」

気をもむような事件も起きた。
中国で開幕したサッカーの19歳以下(U19)アジア選手権の
日本対アラブ首長国連邦戦。
試合開始前の国歌演奏の際、観客の男がグラウンドに乱入、
日の丸を奪い取った。

04年、中国で開催されたサッカー・アジアカップでも、
小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝で反日感情が高まり、
日本対中国の決勝後、会場から出ようとした日本公使の車の
ガラスが割られたり、日の丸が燃やされたりするトラブル。

今回、日本サッカー協会は、アジアサッカー連盟(AFC)と
大会組織委員会に抗議文を提出。
AFC側もチームに謝罪に訪れ、早急に事態を収束させる姿勢。

小倉純二会長は、「中国協会は、アジアカップのようなことはやめようと
努力してきたので、すごく残念に思っていると思う。
せっかくスポーツを通じて努力してきたことが、一から出直しになった」

尖閣諸島問題は、日中首脳会談で収まりつつある。
世界的なスポーツ大国になった中国にとって、アジアの中では、
韓国とともに日本もライバル。
アジア大会のサッカー男子1次リーグでは、
日本と中国が同じ組になるなど、楽観できない状況も。

市原専務理事は、「過剰反応をせず、相手に敬意を表して参加するだけ。
アジア大会を通じて、中国だけでなく、すべての国の選手と交流を図り、
国際力をつけてもらいたい」と期待。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/10/13/20101013ddm035050067000c.html

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