2010年10月25日月曜日

発達障害の学生支援(1)対人関係 語り合える場

(読売 10月13日)

秋晴れの日ざしが差し込むカーペット敷きの部屋。
昼食を手にした学生たちが、女性カウンセラーを囲んで
次々と席に着いていく。

「グループ討議のリーダーに指名されたのに、うまくできなかった…」、
男子学生が落ち込んだ表情で語り始めた。
すかさず別の学生が、「リーダーに指名されたのは、
できると思われている証しだよ」とフォロー。
悩みを打ち明け、励まし合うのは、ほとんどが発達障害の診断、
または疑いのある学生たち。
福岡大学で、週に1回開かれるサポートグループの集まり。

同大で、発達障害の学生の相談が目立ってきたのは、約10年前。
当時の学生相談室を、ヒューマン・ディベロップメント・センターへと改組
不登校なども含めた心の健康の支援を始めていた。

サポートグループは、発達障害の学生らを対象に実施された
対人関係などの心理教育プログラムの参加者から、
「このまま別れるのは寂しい」と声が上がり、9年前に発足。
現在は約10人が参加、同センターのカウンセラーに助言を受けながら、
一緒に卒業や就職を目指している。

人とのかかわりが苦手な発達障害の学生が、うつなどの
二次障害にならないよう、自由で安心していられる居場所が必要。
同じ悩みを抱える仲間との交流を通し、障害が軽くなることもあり、
コミュニケーションを取る練習の場にもなっている」
カウンセラーの屋宮公子さん(55)。

法学部4年の山下明さん(24)(仮名)は、対人関係につまずき、
自宅に3年間引きこもった。
アスペルガー症候群と診断されたことを、
サポートグループでだけ打ち明けている。
「友達ができないのは、努力が足りないからではなく、
障害のためなんだと気が楽になった。
人間関係のストレスがたまらないここは、一番居心地がいい場所」

「サポートで、学生が変わる瞬間がある。
山下君も、他人からノートを借りられるようになり、目標だった
卒業見込みも取れた」と屋宮さん。

同じ悩みを抱えた仲間に、アドバイスを与える経験が自信につながり、
それぞれの成長を促していく。

「大学全入時代」の到来で、入学生が多様化し、
発達障害の学生が増えている。
小・中・高校での特別支援教育を経て、進学してくる学生を、
大学でどう支えていけばよいか、実践事例を通して考えたい。

◆発達障害

知的発達の遅れを伴わない脳機能障害。
読み書きなどの習得が困難な学習障害(LD)、衝動的に行動しがちな
注意欠陥・多動性障害(ADHD)、対人関係が苦手な高機能自閉症など。
日本学生支援機構の調査によると、発達障害と診断された学生は、
2008年5月現在、全国の122大学に237人が在籍。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101013-OYT8T00351.htm

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