2008年1月19日土曜日

理系白書シンポジウム・東京&大阪:新しい価値の創造、多様性の尊重から(その1)

(毎日 1月4日)

理系白書シンポジウム「イノベーションを育む風土とは」が開催。
基調講演では、黒田玲子・東京大大学院教授が、
イノベーションの源は基礎研究の多様性や人材育成が鍵を握ると指摘。
パネルディスカッションでは、第一線の研究者らが新たな価値やシステムを
生み出すための課題を討議。
(コーディネーター:斗ケ沢秀俊・毎日新聞科学環境部長、
塩満典子・お茶の水女子大教授、吉田均・ブラザー工業プリンシパル)

◇失敗恐れず、挑戦する意欲を後押し

斗ケ沢 まず、イノベーションをどう定義すべきか?

塩満 技術革新だけではなく、さらに広く、壁を壊し新しい価値を創造すること。
企業では製品開発、研究では科学的真理の発見。
支援面の制度改革を含め、現場からのニーズに対応した、
新しいもの、アイデア、方法を作り出すこと。

吉田 企業としては、技術、製品の革新は、生き残りに必要。
会社寿命の長い企業は、社会変化に合わせ、技術開発や収益性の高い分野に
集中するなど、常に自己革新を試みている。

井手 大学は、特許など知的財産を生み出さねばならないが、どうやるかが問題。
イノベーションとは、TLO(技術移転機関)へのお金のばらまきのように感じる。
米国のまれにしかない成功例を見た大学発ベンチャーは、ほとんど失敗。
イノベーションは、その延長線上で使われている。
大学でのイノベーションとは、物づくりや製品開発だけでなく、
教育と密接に結びつくべき。

斗ケ沢 イノベーションのとらえ方は同じではない。
核になるのは、創造的破壊を伴う新しい価値の創造。

永山 価値も、幅広い。
科学ってとても面白い、ドキドキする、楽しいという観点も含めてほしい。

斗ケ沢 人材育成はどうしたらよいか?

井手 学生には、「教えることはできない。本人が学ばねばならない」と。
私の役割は、「学ぶ」場を作ること。
いろいろな専門、国籍の学生を、同じテーブルでコミュニケーションをとる。
まず、隣の人と話すこと。
日本では、同じ教科書を使い、先生も同じ教科書を使う。
これでは、均一なレベルの学生は育っても、多様性は育たない。
法人化後も、大学の先生は文部科学省の言葉をそのまま受ける。
大学の先生の意識改革も必要。

塩満 企業側の求める人材と、大学で育てる人材でミスマッチがある。
博士号取得者は、大学での研究職を目指すが、需給にギャップが。
社会には、イノベーションを必要とする分野は多い。
博士で得た専門知識や思考力は、社会でも生きる。
科学を伝えられる研究者が育つことが、現状打破に必要。
大学院教育は、イノベーションの土台。

斗ケ沢 再挑戦とはどのようなものか?

吉田 私の最初のプロジェクトは、失敗だった。
インクジェット複合機に搭載する計画で、高性能ヘッドの開発を進めたが、
性能やコスト面で折り合わず、当初の目標の複合機搭載は断念。
その後、作り方、構造をがらっと変えた。
追い詰められたら、知恵が出た。
失敗を反面教師として、どうして駄目だったか原因を見極めた。
失敗すると、「なぜ?」がたくさん出てくる。
課題への対応能力、解決に導く力も生まれる。
そうした力をどう身につけるか?やはり場数だろう。
研究開発の過程には、いろいろなステップがあり、
部下の一人一人に課題を見つけさせ、定められた期間で解決させる。
課題解決には前向きな姿勢と、やり切る強い意志が必要。

斗ケ沢 イノベーションにとって科学技術が重要だが、理科離れが指摘。

永山 とても根源的な問題。
科学・技術に対する印象を変え、存在感を高めるよう意識変革すべき。

吉田 ブラザー工業は、「親子ものづくり教室」を開催。
当社製品のラベルプリンターを親子で組み立てたり、
ハンダ付けしてものづくりを体験してもらう。
技術者の父が、職場で何をしているか、子どもたちに見てもらう。
自分たちでできる身近なことから取り組んでいる。

斗ケ沢 次に、多様性をどう生かせばよいか?

井手 京都大工学研究科に、女性教授はゼロ。
社会システムが不十分なため、女性研究者の活動には障害が多すぎ。
しかし、研究の世界への女性進出で、日本の競争力の質は高まる。
解決方法としては、職場や大学に女性研究者雇用義務を課す。
大学では、女性教授を2割以上にしないと、研究費を出さないというのは。

塩満 同じタイプの人ばかりで議論しても気付かないことは多い。
米国の論文数が多いのは、世界各国から優秀な人材が集まるのも一因。
日本では、研究機関の外国人はまだまだ少ない。
「女性は科学に向かない」と発言した米ハーバード大のサマーズ学長は
すぐ退任したが、日本は女性研究者の活用や育成に消極的。
文理融合も含め、多様性こそイノベーションを育むと認識し、方向転換が必要。
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◇変化に柔軟な対応--吉田均・ブラザー工業プリンシパル

プリンシパルは、高度な専門知識・技能を持ったプロの管理職。
私は、自動車メーカーを経て入社。
ブラザーは非常に自由な職場で、入社直後、上司から
「あなたの席はここです」と言われただけで、何をしろという指示もない。

そこで、一人で各事業部の開発チームを回り、コンピューターを設計段階で
生かすCAEという解析技術を使った製品開発に取り組んだ。
その後、プリンターのヘッドの解析をやり、開発全般に携わるようになった。

ものづくり企業のイノベーションとは、社会情勢の変化に柔軟に対応して、
付加価値の高い新製品をタイムリーに提供していくこと。
もし、当社がミシンだけにこだわっていたら、今のような成長はなかった。

イノベーションを生み出すのは当然、人である。
何が問題なのかを考える人、前向きに解決案を考え行動する人、
意欲と勇気を持っている人。いわゆる自律型人間だ。

では、そのような人間を育む企業風土とは何か?
失敗しても再挑戦でき、成果のみを評価しない制度、
社員一人一人に合った仕事を提供すること。

◇前例主義を超えて--塩満典子・お茶の水女子大教授、学長特別補佐

イノベーションには、創造性が重要。
創造性の三つの重要な要素は、創造的な思考ができる方法論を持っているか、
専門知識が十分か、意欲を育てているか。

創造的な集団には、明確な目標があり全員がそれを認識している、
締め切りがある、上下や先例で縛らない、多様性を容認するなどの特徴。
日本には、前例主義、集団思考、長いものには巻かれろ、という言葉があり、
かつては創造性を発揮するのは難しかった。
しかし、イノベーションを育むためには、ここを変えていかなければ。

私は、多様性を許容するという観点から話したい。
女性研究者の活躍や人材の国際性という点。
日本では、女性研究者の割合が低く、職位が上がるほど少なくなる。
外国からの留学生の割合も、
経済協力開発機構(OECD)平均の半分以下の2・8%。


多彩な人材が集まることによる知的触発が大切。
人材を量質ともに確保することが重要。
量や質が一定以上にならなければ、イノベーションは育めない。
異なる価値観、意見、性別、国籍、年齢などの多様性に寛容で、
それを奨励することが必要。
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◇よしだ・ひとし
名古屋大大学院修士課程機械科修了。自動車メーカー勤務を経て、
ブラザー工業入社。流体シミュレーションソフト開発、製品の構造解析に従事後、
インクジェットプリンターヘッドの開発を担当。
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◇しおみつ・のりこ
東京大理学部卒業。ハーバード行政院修士。科学技術庁に入り、
ライフサイエンス、原子力政策などを担当。
奈良先端科学技術大学院大教授、内閣府男女共同参画局参事官など歴任、
07年7月から現職。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/01/04/20080104ddm010040064000c.html

第2部・地球からの警告/2 北極で資源争奪戦

(毎日 1月3日)

北極の資源争奪戦が激化している。
温暖化で氷が解け、採掘や輸送がしやすくなった。
温暖化に悩む先住民たちは、開発の是非という新たな問題にも直面。

「通行不能だった念願の近道が開いた」。
欧州宇宙機関の昨年9月の発表が世界の注目。
大西洋から北極海を抜けて太平洋に至る「北西航路」が、
氷に阻まれずに航行可能になったことが衛星観測で確認。
日本-ニューヨーク間が、パナマ運河経由より数千キロ短縮できる夢の航路で、
8月11日から約5週間、氷がなくなった。

北極の海底は、天然資源の宝庫
世界の埋蔵量の約1割の石油や天然ガスが眠るとの推計。
北西航路が開けば、開発も進めやすい。

まず、ロシアが動いた。
潜水艇を北極点直下に潜行、海底にチタン製の国旗を立て、
「北極点は自国の大陸棚にある」と開発権を主張、示威行動に。
米国は、「北極海は新たな監視エリア」として、アラスカ州バローに
沿岸警備隊の基地新設を計画。
カナダは、「北西航路は国内航路だ」として、管理権を主張。

活発化する各国の動きについて、バローの先住民、
ユージン・ブラウワーさん(59)は苦々しげに、
「温暖化が進んでいるからさ。
この夏は見たことない国の船が海を行き交っていたよ」

「私が職にある限り、開発には反対する」。
昨年11月、アラスカ州カクトビック村の集会所。
エドワード・イッタ郡長が、沖合で計画される油田開発への反対を表明。
カクトビックやバローのノーススロープ郡には、全米有数の石油資源が眠る。
ブッシュ政権は、ロイヤル・ダッチ・シェル社に沖合での油田試掘を認めた。

だが、先住民らは「海への影響が心配だ」と反発。
郡や環境団体は、開発差し止めを求めて連邦裁判所に提訴。
審判は今も続いている。
イッタ郡長は、「私たちの生活様式を守る闘いだ」。

一方で、陸上の油田開発には、カクトビックの先住民の多くが賛成。
ブッシュ政権は05年、野生生物保護区での石油開発解禁を提案。
民主党議員などの反対で実現してないが、フレッド・アイシャナ村長(40)は、
「村の施設の建設や維持に、新たな油田開発は欠かせない」。
プルドーベイ油田は全米最大で、州の歳入の4割を石油税が占めるが、
州の石油産出量は今後20年で3分の1に落ち込む見通し。

しかし、反対も人口の2割の60人以上。
油田で働いたこともあるシェルドン・ブラウワーさん(39)は、
「我々は自然に依存して生きてきた。
海でも陸でも、自然を壊してはいけないのは同じだ」。
先住民の人権保護運動に携わるシーラ・ワットクルティエさん(54)は、
「氷があれば、こうした動きは起きなかった。
化石燃料の開発が進めば、更に氷は解け、資源の奪い合いを強める。
国同士の摩擦を北極に持ち込まないでほしい」

http://mainichi.jp/life/ecology/select/news/20080103ddm002040016000c.html

身体活動度と卵巣老化に伴うストレスの軽減は関連する

(Medscape 1月3日)

身体活動度が高いと卵巣老化に伴うストレス、不安、うつが軽くなるが、
血管運動症状は軽くならない、という研究結果が明らかに。

テンプル大学(ペンシルバニア州フィラデルフィア)のDeborah B. Nelsonは、
「身体活動は、閉経に関連する血管運動症状、不安やうつなどの
精神症状の予防緩和によいと言われてきたが、
身体活動の効果に関する根拠が多様化してきた。
身体活動の血管運動症状の予防緩和効果を検討した研究は様々あるが、
うつ、ストレス、不安に対する身体活動の役割を評価した研究は少ない」。

Penn Study of Ovarian Aging studyは、
1週間に消費したカロリー(kcal/週)を目安とする身体活動度が
閉経症状のリスク低下に関連するかどうかを、
アフリカ系アメリカ人および白人女性で調べた研究。

ほてり、うつ、不安、ストレス、血管運動症状、生理的症状、身体症状などの
閉経症状と身体活動度について、8年間で女性401人を評価。
身体活動度で女性を3群に分割した場合、週当たりの消費カロリーは
上位群1450 kcal以上、中間群644潤オ1450 kcal、下位群644 kcal未満。

共変量およびホルモン濃度で補正した回帰モデルにより、
精神症状および血管運動症状に対する身体活動の独立効果を推定。

結果は閉経状態、人種、喫煙状況により層別化。
全体的解析では、自覚ストレスのみが身体活動度と関連。
活動度下位群の女性と比べて、中間および上位群の女性は
ストレスの平均レベルが低かった。

閉経段階による解析では、活動的でない閉経女性に比べて
活動的な閉経女性は不安、ストレス、うつ症状の平均レベルが持続的に低い。
ホルモン変化のばらつきについての補正後、身体活動度とほてりに
明らかな関連性はみられなかった。

「8年間追跡した結果、地域住民女性コホートにおいて、
身体活動度の高さと、ストレスの低さは関連があった。
同じ閉経女性群でも、あまり動かない女性と比べて、
体をよく動かす女性は不安、ストレス、うつが最も軽度」。

同研究の限界は、現在うつ症状がある女性の率が低いこと。
サブグループにおける閉経症状と身体活動との関係の検出力が十分でない。
8年間の追跡期間で、身体活動の評価は約2年毎に実施。
身体活動とほてりの報告が患者の自己申告であった、
1週間に消費したカロリーを推計する身体活動の質問数が限られていた、
身体活動と閉経症状の評価が横断的であった、
現在の身体活動のほてり重症度に対する影響を評価できなかった、
神経症傾向や対処行動の型など性格に関するデータが不足していた、
他の補完代替療法の利用について補正できなかった、などの限界。

「この結果は、閉経移行期および閉経後に体を動かし続ける、
または活動量を増やすことが、不安、ストレス、うつなど
様々な精神症状の軽減の一助となる可能性を示唆。
血管運動症状に及ぼす身体活動の影響に関して、
文献の研究結果が異なっているのは、
定期的運動によって変動する内因性生殖ホルモンの差が原因。

この仮説を検討するには、最終月経の前後に幅広い強度の身体活動を
行うことで、血管運動性閉経症状にどのような影響があるか、
生殖ホルモン測定などで研究する必要がある」。

Med Sci Sports Exerc. 2008;00:000-000.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=65526

2008年1月18日金曜日

もっと知りたいエコロジー:火のあるくらしを見直そう 木から生まれるバイオマス

(毎日 1月11日)

阪神大震災、ライフラインは止まり、人々は寒さに震えていた。
灯油缶に廃材がくべられ、皆なんとなく集まり暖をとった。
そのたき火の、なんと有り難かったことか。
火は時に脅威ともなるが、同時に人の心を慰める生きもののような存在。

昭和30年代頃までは、日本でも薪や炭が利用。
家庭には七輪があり、お風呂や炊事にも木から火がつくられた。
木や火は、日常の一部分として存在していた。
現在、この薪や炭は木質バイオマスなどと呼ばれ、木材燃料資源の総称。

この冬、ガソリンや灯油の値段があがり庶民の生活を直撃。
現代の暮らしは、化石燃料に頼り切っている。
石油がなくなれば、暖房や電気、ガス、水道すべてに支障を来す。
化石燃料にだけに依存するのではなく、木質バイオマスを見直したい。

木材素のままの薪、間伐材や木材加工時に出る端材を破砕したチップ、
おがくずや端材を粉砕して圧縮成型した固形燃料のペレット、
おがくずを棒状に圧縮成型したオガライト、
木材を炭窯の中で蒸し焼きにした木炭など。

特に、昔から現代に至るまで活躍しているのが木炭
木炭は、炭化した際にたくさんの孔という穴があく。
その孔に湿気や汚れ、悪臭成分などを吸着する働きがある。
最近では、農業用土壌改良材や化学物質を吸着する建築資材としても注目。

また、焼き鳥などの焼き物を炭火で焼くとおいしい。
炭火は、ガスと違い燃焼しても水分が出ない。
赤外線による遠火の強火が食材に行き渡り、
表面はからりと、中までじっくりと焼くことができる。

もうひとつ、炭を必要としている日本の文化が、茶道である。
現代の茶の湯でも、湯を沸かす燃料として炭は欠かせない。
茶道の普及により、炭の消費量が増え、
より優れた炭をつくるための研究と技術がのびていった。
しかし、これら一部の高級品以外は、林業、炭産業の衰退後、
そのほとんどを中国からの輸入に。

2004年、中国政府は森林保護政策として中国産の木炭を全面輸出禁止。
関係者は慌てたが、これは国産の薪炭に目を向けるきっかけに。
国内の薪炭を取り戻すことで、森林を育てるきっかけを作る活動
「日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーン」事務局団体の一つ、
(株)森のエネルギー研究所スタッフの大野さんは、
「今の時代、化石燃料なしでは人々の生活は成り立ちません。
でも、これらはいつかなくなってしまう。
代わりになる資源を準備しておかねばならない。
木質バイオマスはその一つです。
炭焼きは、ほとんど担い手もいないし衰退してますが、
中国の輸出規制により国内で生産していこうという動き。
森林に人の手が入るようになれば、
ペレットや他の木質バイオマス生産にもつながり、
木を燃料としたストーブなどが今よりも手軽に使える」

資源としての木質バイオマスもさることながら、
その木から生まれる火はなんとも魅力的。
おいしい料理や団らんを作り、さらに森林とのつながりも。
火のある暮らしを忘れて久しい現代人に、懐かしい温かさを思い出させる、
そんな木質バイオマスの普及を願っている。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080111org00m040017000c.html

第2部・地球からの警告/1(その1) 氷が消えれば私たちも

(毎日 1月1日)

細る氷河、巨大化するハリケーン、頻発する大規模森林火災。
相次ぐ異変は、温暖化にさいなまれる地球からの警告。

冒険家の故植村直己さんが北極点単独行(78年)や
北極圏1万2000キロ踏破(74~76年)を成し遂げてから30年。
米アラスカ州北部で、植村さんの足跡をたどる。

1万2000キロ踏破で植村さんがアラスカに入ったのは、76年3月。
「アラスカの旅が始まった。(中略)西から吹きつける風はマイナス33度
とは思えないほど、冷たく痛い」(「北極圏一万二千キロ」文芸春秋刊)
3月22日、植村さんはこう書いた。

カナダとの国境に近い先住民族「イヌピアット」の村、
カクトビック(人口約300人)到着3日前。
「マイナス33度とは思えない」との記述が、当時の寒さを物語る。
記者がカクトビックを訪ねた昨年11月末の気温は、
3月末と同程度だが、氷点下20度を下回ることはない。

「親しみやすくていい人だった。犬ぞりの犬一頭ずつに名前をつけて、
いつも犬と一緒だったな。楽しい思い出だよ」
シェルドン・ブラウワーさん(39)が、植村さんを覚えていた。
村の顔役だった父親の招きで、自宅に数日泊まったという。

ブラウワーさんは、イヌピアットの伝統捕鯨で重要なモリ打ち役を
務めているだけに、気候の変化には敏感。
「この30年、すべての面で変わった。温暖化が進み、波も高くなった。
漁には、以前より大きなボートが必要」。

カクトビックの観光ガイド、ロバート・トンプソンさん(60)の案内で
北極海を望む海岸に出た。
海は凍っておらず、高さ3、4メートルのがけが続いている。
がけは所々で崩れ、海岸線はギザギザに。
海岸を保護していた海氷の減少で、浸食が進んだ。
かつてはなだらかな斜面で、浜辺もあった。

植村さんは、北極海の海氷上を犬ぞりで走ってカクトビックに入ったが、
これでは、海氷上を縦横無尽に走ることはできない。
植村さんの冒険も、今なら成り立たない。

鯨やアザラシと並ぶ食糧源のカリブーにも、異変が。
カリブーの冬場の餌は、コケや地衣類。雪を掘って懸命に探す。
ところが、冬場に時折雨が降るようになり、事情が変わった。
降った雨が凍ると雪が掘れず、餌も食べられない。

数年前には、それで数十頭ものカリブーが餓死。
カクトビックの西約500キロにあるイヌピアット最大の町バロー
(人口約4000人)も温暖化に悩まされていた。
11月25日の正午前。
北極海に面した海岸で、猟銃を手にしたハンターがつぶやいた。
ノー・アイス、ノー・エスキモー(氷が消えれば、エスキモーも消える)」

バローでは、11月下旬から1月下旬まで太陽が昇らない。
ハンターらは薄明かりの中、アザラシを探していた。
アザラシは氷上を好むが、海に氷はほとんどない。
気温は氷点下7度。平年(同20度程度)を上回る日が続く。
「暖かすぎる。氷上に出たいが、氷があっても薄く危険だ」。
ハンターは肩をすくめた。
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イヌピアット

極北のツンドラ地帯にはアラスカ、カナダ、グリーンランド、ロシアに
計約15万人の先住民がいる。
アラスカ北西部に住み、狩猟や漁労を生活の糧としてきた民族が、イヌピアット。
かつては、極北の先住民全体が「エスキモー」と呼ばれた。
「生肉を食べる者」を意味するとも解釈され、侮べつ的だとの認識が広まり、
カナダでは「人々」を意味する「イヌイット」が呼称。
極北先住民全体をイヌイットと総称する傾向があり、
イヌピアット自身は、英語で「イヌピアット・エスキモー」という呼称。

http://mainichi.jp/life/ecology/select/news/20080101ddm001040003000c.html

PPAR-γはマウスの破骨細胞形成を制御する

(nature medicine 12月号Vol.13 No.12 / P. 1496 - 1503)

破骨細胞は、単球-マクロファージ系列の造血前駆細胞に由来する骨吸収細胞。
破骨細胞機能の制御は、骨粗鬆症、関節リウマチ、大理石骨病などの
骨疾患を理解する上できわめて重要。

PPAR-γ(peroxisome proliferator-activated receptor-γ)は、
骨芽細胞の分化を抑制することが示されているが、
破骨細胞における役割は、あるとしてもまだ不明。
インスリン感受性増強薬に属するチアゾリジンジオンなどの
PPAR-γアゴニストは、ヒト患者で骨折率を増加させることが報告され、
これは臨床的に重要な問題。

我々は、PPAR-γが骨芽細胞にはあるが破骨細胞では欠損している
Tie2Cre/floxマウスモデルを用い、
PPAR-γの破骨細胞形成促進作用を明らかにする。
このマウスは、骨量の増加、骨髄腔の狭小化、脾臓における髄外造血を
特徴とする大理石骨病を発症。

これらの異常は、破骨細胞の分化障害とRANKL
(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)
シグナル伝達異常の結果生じ、骨髄移植により救済できる。
ロシグリタゾンを用いたPPAR-γのリガンドによる活性化は、
破骨細胞の分化を受容体依存的に増強。
PPAR-γは、破骨細胞形成の重要なメディエーターであるc-fos発現の
直接の制御因子として機能することが示唆。
したがって、PPAR-γとそのリガンドは破骨細胞分化と骨吸収の促進に
今まで明らかにされていなかった役割をもつ。

[原文]PPAR-γ regulates osteoclastogenesis in mice

Yihong Wan1, Ling-Wa Chong1 & Ronald M Evans1 1 Howard Hughes Medical Institute, Gene Expression Laboratory, Salk Institute for Biological Studies, La Jolla, California 92037, USA.

Osteoclasts are bone-resorbing cells derived from hematopoietic precursors of the monocyte-macrophage lineage. Regulation of osteoclast function is central to the understanding of bone diseases such as osteoporosis, rheumatoid arthritis and osteopetrosis1. Although peroxisome proliferator-activated receptor-γ (PPAR-γ) has been shown to inhibit osteoblast differentiation2, 3, its role, if any, in osteoclasts is unknown. This is a clinically crucial question because PPAR-γ agonists, "such as thiazolidinediones-" a class of insulin-sensitizing drugs, have been reported to cause a higher rate of fractures in human patients4, 5. Here we have uncovered a pro-osteoclastogenic effect of PPAR-γ by using a Tie2Cre/flox mouse model in which PPAR-γ is deleted in osteoclasts but not in osteoblasts. These mice develop osteopetrosis characterized by increased bone mass, reduced medullary cavity space and extramedullary hematopoiesis in the spleen. These defects are the result of impaired osteoclast differentiation and compromised receptor activator of nuclear factor-κB ligand signaling and can be rescued by bone marrow transplantation. Moreover, ligand activation of PPAR-γ by rosiglitazone exacerbates osteoclast differentiation in a receptor-dependent manner. Our examination of the underlying mechanisms suggested that PPAR-γ functions as a direct regulator of c-fos expression, an essential mediator of osteoclastogenesis6. Therefore, PPAR-γ and its ligands have a previously unrecognized role in promoting osteoclast differentiation and bone resorption.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200712/nature_medicine/10.html?Mg=6132b7dfaacf4d8ce6a50223e0c0749a&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

2008年1月17日木曜日

ミラノ:市中心通過の車から通行料 温暖化対策などで

(毎日 1月3日)

イタリア第2の都市で、経済の中心地ミラノで、
市中心部を通過する車に通行料を課す制度が始まった。
温暖化対策と渋滞緩和が目的。
同様の制度は、2003年にロンドンで始まったが、イタリアでは初めて。

中心部の商店主らからは、早くも「車での買い物客が減り、商売に影響する」
と批判する声が上がっている。

ドライバーが、あらかじめ「エコパス」と呼ばれるカードを購入。
中心部を通過する際にカードの表示を義務づけ、
表示のない車からは罰金を取る仕組み。

カードの料金は、車種ごとに1日当たり2ユーロ(約320円)~10ユーロ。
「定期券」もある。

課金する時間帯は、午前7時半~午後7時半(土日を除く)。
中心部に通じる道に設置したカメラで違反者をチェック。

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20080103k0000e030005000c.html

特集:MOTTAINAI アイデアいっぱい 大きく広がる(その2止)

(毎日 1月5日)

全国一の焼き物の里で愛知、岐阜両県にまたがる東濃地区から、
MOTTAINAIマグカップセットが誕生。

全国の消費者から、「捨てるのはもったいない」と送られてきた使用済みの
お皿や茶わんを砕いたリサイクル素材を、2割混ぜ込んで焼き固めた。
世界中から集めている焼き物用の土を節約できる上、
ごみを出さずに済むのが売り物。

MOTTAINAIマグカップを作ったのは、食器の加工販売「アイトー」。
リサイクル素材を使ったマグカップやお皿、
ふた付きスープマグカップや小鉢などをセットで販売。
デザインは、陶器の白地を基調に、MOTTAINAIロゴをあしらった。

瀬戸市や多治見市は、美濃焼の里として有名で、
和洋食器は国内生産量の半分以上のシェアを持つ。
低い丘陵を背に、製陶工場の煙突が伸びる風景は
日本人の心をなごませる風景だが、
その焼き物の里にも時代の流れが押し寄せている。

コンビニエンスストアや百貨店で総菜を買ってそのまま食べる
「中食」や外食が一般化して陶磁器を使う機会が減り、
陶磁器中心だった結婚式の引き出物が多様化したことに加え、
海外からの洋食器が増えたことで、
国内の生産量は95年の3500トンをピークに、1200トンまで激減。
窯元が閉鎖したり、規模縮小に。

欧州メーカーと差別化し、消費者に購入してもらうため、
地元企業などが中心となって練り上げたのが
環境に配慮し、資源循環を実現する「うつわの再生」プロジェクト

グリーンライフ21」と名づけられたこのプロジェクトは、
使用済み食器を全体の2割程度まで粗く砕いて混ぜ込み、
土と一緒にして7~8マイクロメートルに粉砕。
再生した食器は、新たな土だけで作るよりも環境負荷が少ない。
この製品は、01年度のグッドデザイン賞「エコロジー・デザイン賞」などを受賞。

使用済み食器を受け入れている「ヤマカ陶料」によると、
全国の消費者から送料を自己負担して送られてくる使用済み食器は
年間40~50トンに上り、年々増える傾向。
中には、「ありがとうございました」の手紙と共に菓子を同封する消費者も。

食器のリサイクルを嫌がる消費者はいないのか?
加藤誠二副社長も、当初は心配だったが、
あるイベントで出展していたら、お客さんからラーメン屋を引き合いに
「前の人が食べたどんぶりでみんな食べるんだから、大丈夫」。

一般消費者と同じぐらい問い合わせの多いのが、
ごみの処分に頭を悩ませる地方自治体。
一般廃棄物最終処分場の残余年数は、05年度に14・8年となり、
リサイクル量は増加しているものの頭の痛い問題。

加藤副社長は、「土を粉砕する装置はあるので、追加コストは全くない。
製品が消費者に認知されれば、陶磁器の需要増につながるのでは」。

アイトーは、これまでも独自の資源循環型ブランドを持ち、
百貨店などでのイベントの際には使用済み食器を持参してもらい、
金券などと引き換えたりしていた。
社会貢献の一環として食器作りのノウハウを生かし、
お年寄り向けの食べやすい食器の開発も。

「これまでも社会的に意味のあることにチャレンジしてきた。
マータイさんが主導するMOTTAINAIキャンペーンは
誰にも分かりやすくメッセージ性がある取り組み。
我々の製品が広く認知されることで、資源循環型社会が構築されるよう期待」。
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日本最大級の環境展示会
「地球と私のためのエコスタイルフェア~エコプロダクツ2007」が開かれ、
MOTTAINAIキャンペーン商品を展示するブースも出展。

商品は、イオンが独自展開するプライベートブランド「セルフ+サービス」が
開発したリサイクル素材のバッグやジャケット、ブックカバーなど。
イオンはキャンペーンに賛同し、06年から店頭で買い物客から古着を回収し、
リサイクルする同ブランドを全国の約50店舗で展開。

ラップソング「MOTTAINAI」が大ヒット中のルー大柴さんが
イオンブースを訪れ、ペットボトルだけでなく、
ウールやフェルトのリサイクル商品をみて、「グッドだねえ」。

エコプロダクツ展は、環境に配慮した製品やサービス、
研究を紹介する展示会で、9回目。
07年は約600社・団体が出展し、16万人以上が来場。
MOTTAINAIブースは、「進化するエコストア」(イオン特別協賛)内に設置、
エコバッグやTシャツの関連グッズを展示・販売。
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地球の歩き方」が、ケニアのマータイさんが進める植林活動
グリーンベルト運動」を体験するMOTTAINAIツアーの参加者を募集。

旅行を通じて人的ネットワークを広げるとともに、
MOTTAINAI精神を通じた社会貢献活動の第一歩として活用してもらうのが狙い。
ツアーは、2~3月の週末に出発し、4日間かけて
グリーンベルト運動の一環としてナイロビ周辺で植林活動や
フェアトレード商品の工場見学などを実施。
その後、ナクル湖国立公園でサファリ観光を経て帰国する8日間。
料金は、航空運賃や宿泊費込みで40万円前後。

「参加者の皆さんに、現地での交流により世界的運動である
グリーンベルト運動を体験してもらうとともに、
参加者同士のネットワークを今後の活動に生かしてもらいたい。
ツアーに参加することで、その一部を運動のために寄付することができます」。
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MOTTAINAIキャンペーン事務局は、
キモチを表す卵のような形をモチーフにした新しいロゴをあしらった
オーガニックコットン製のMOTTAINAIキャンペーンオフィシャルTシャツを発売。

Tシャツは、農薬や化学肥料をほとんど使用せずに栽培された
オーガニックコットンを使用し、襟ぐりをしっかりと縫製したり、
すそを二重にしたりして長く着られるように設計。

Tシャツの内部にあることが多いネームタグを、
外側につけて肌に優しい作りに配慮。
Tシャツは税込み3900円。S、M、L、キッズサイズ。
MOTTAINAIショップ http://mottainai-shop.jp/。

MOTTAINAIロゴをあしらったかわいい弁当箱が登場、話題を呼んでいる。
弁当箱は、プラスチック製でプッシュボタンで開閉できる仕組み。
中皿があって、お箸をしっかりと収納できるのが特徴。

現在、8品目で主な商品はランチボックス650円、お箸520円、
きんちゃく袋付きランチボックスが1400円。
問い合わせ:オーエスケーお客様相談室(06・6797・3546)。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080105ddm010040151000c.html

一村一品運動:アフリカ諸国の貧困対策に適用、支援

(毎日 1月5日)

政府は、大分県を発祥とする地域おこしの手法である「一村一品運動」を、
アフリカ諸国の貧困対策として本格的に適用、支援していくことを決めた。
特産品販売を通じ、アフリカの貧困解消や女性の地位改善につなげる狙い。
今年5月に開かれる「第4回アフリカ開発会議」(TICAD4)でもアピール。

一村一品運動は79年、当時の平松守彦大分県知事が
「町村で全国的評価にたえる特産品を掘り起こそう」と提唱。
シイタケやカボスなど、付加価値の高い特産品販売で
地域活性化に効果を上げ、その後は中国やタイなどでも実践。

外務省と国際協力機構(JICA)が連携し、
05年からアフリカ南部・マラウイの村で牛乳やパンなどの特産品販売を指導。
ガーナでは、シアバターと呼ばれる油脂をせっけんとして製品化、
06年から日本に輸出。

外務省はTICAD4を控え、今年からエチオピアとセネガルを
手始めに対象国を拡大する方針。
アフリカ諸国で活動する青年海外協力隊員らを通じ、
地区や村単位での特産品掘り起こしを目指す。

平松前知事は、「貧しい農村が多いアフリカは、インフラ整備などの援助よりも、
一村一品運動による支援が貧困解消に効果的だ。広がりに期待したい」。

http://mainichi.jp/select/today/news/20080105k0000e040059000c.html

2008年1月16日水曜日

16年五輪招致が本格化、東京の売りは「五輪パーク」

(読売 1月15日)

2016年夏季五輪招致に名乗りを上げている東京、シカゴなど7都市が、
国際オリンピック委員会(IOC)に申請ファイルを提出。
本格的な招致レースの幕が開いた。
IOCは、競技会場配置、財政、交通など25の質問項目に分かれた
申請ファイルの内容を吟味、6月の理事会(アテネ)で、
五輪開催能力に基づく第1次選考を行い、数都市に絞る。

「いよいよスタート、という感じ」。
2016年東京五輪招致委の河野一郎事務総長は、
IOCに提出した申請ファイルを公表。
「改善点はあるだろうが、現段階としては十分な準備ができた。
五輪を招致するに値する力を(東京は)持っていると思う」。

東京の計画の最大の特徴は、「大都市の真ん中で行う五輪」。
東京の都心全体を「オリンピック・パーク」と名付け、
都市活動と五輪体験との共存をうたう。
都市に五輪を浸透させ、一体的な雰囲気を作り出すと同時に、
「環境など大都市の課題を先取りした、(先進的な)モデルも示す」。

競技会場は、1964年東京五輪の「遺産ゾーン」と、
臨海地区に新設する「東京ベイゾーン」、
その間に位置する五輪スタジアムなどの「結びクラスター(会場群)」に大別。
遺産ゾーンは代々木と皇居周辺、
東京ベイゾーンは夢の島と海の森周辺に分かれるため、
全部で五つの会場群を持つ。

「パーク」は、既存施設の利用で分散しがちとなる会場群を、
逆手に取った発想。
発想自体は目を引くが、実態を伴わないとの印象を与えないためには、
斬新なプロジェクトや継続的な活動で、
五輪体験が「息づいている」ことをアピールする必要。

現時点での招致レースは、最右翼のシカゴを東京とマドリードが追う展開。
競技会場配置を軸にした各都市の招致計画の比較では、
二つの会場群に集約したマドリードのコンパクトさと、
ミシガン湖岸に沿って展開するシカゴの簡潔さが、
分散型の東京をやや上回る。
交通、警備面も含め、分散配置では計画が複雑になりがち。

シカゴは、IOCの財源を握る米国の、20年ぶりとなる夏季五輪開催をアピール。
マドリードは、連続の欧州開催という逆風を受けるが、
前回招致で培った人脈や評価を生かせる強み。
東京も、投票が北京五輪の翌年となるため、
「なぜまたアジアか」の問いに、明快な回答の準備が必要。

リオデジャネイロやドーハは昨年のパンアメリカン大会、
一昨年のアジア大会で使用した施設の再利用が核で、分散配置型。
計画や社会インフラの質では、前出の3都市とは開きがある。
ただ、リオは南米初、ドーハはイスラム圏初の五輪開催という
政治的意義を前面に出せる強みがある。
同じアジア圏のドーハが1次選考を突破すれば、東京には厳しい展開。
プラハとバクー(アゼルバイジャン)は、開催能力面で圏外。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/news/20080115iew7.htm

特集:MOTTAINAI アイデアいっぱい 大きく広がる(その1)

(毎日 1月5日)

今年、MOTTAINAIキャンペーンは3周年を迎える。
05年にノーベル平和賞受賞者でケニアの副環境相だった
ワンガリ・マータイさん(67)は、「もったいない」の日本語に共鳴し、
翌3月、キャンペーン名誉会長となって始まった。

地球温暖化の危機の中で、多くの人のライフスタイルに変化を生み出し、
国連とのタイアップにも広がっている。

割り箸の使い捨てをやめて、自分の箸を持ち歩く「マイ箸運動」を広める
全国行脚の旅を続けている名古屋市出身の神谷芝保さん(24)。

神谷さんは、05年6月に知人のマイ箸を見て衝撃を受けた。
「その人が見せびらかしていたお箸はすごくかっこよくて、
まさに『シャキーン』という感じでした」

割り箸の大半が中国から輸入され、いろいろな国の木材を使っていることや
工場で防腐剤が使われていることなどが分かってきた。
日本人1人が1年間に使う割り箸は、約200ぜん。
国内で約260億ぜん分の割り箸が年間に消費。

割り箸を使わないことが資源の浪費を防ぐためにも
健康のためにもいいと思い、マイ箸運動を広めようと決意。

神谷さんは、全国行脚のことを「マイ箸かけ箸の旅」と名づけた。
全国各地の環境問題に関心のある人々と交流し、
マイ箸の普及の運動の輪を広げるのが狙い。
マイ箸を持つことが、いかに森林資源を守ることになるかを説明する
自作の紙芝居と、市民団体「HAPPYまるけ
(「まるけ」は、名古屋弁で「だらけ」の意味)などで作った
マイ箸セット約200ぜん分を携え、自転車で名古屋を旅立った。

5月中旬に東京に到着し、知人のお寺で紙芝居。
6月23、24日に青森県六ケ所村で開かれたアースデーに参加。
札幌市のカフェで紙芝居をし、旭川市や帯広市をめぐって8月に青森へ。
秋田県で手足がぴりぴりしてきて「おかしいな」と思ったら熱中症に。
「東北で熱中症にかかるなんて、やっぱり地球温暖化の影響?」

10月、塗り箸の生産量で日本一の産地、福井県小浜市に到着し、
村上利夫市長や市幹部を前に紙芝居を披露。
京都府や山陽地方を抜けて11月に福岡、12月に鹿児島入り。

「いろんな人と知り合えて、マイ箸の大切さを訴えることができた。
いつも使っているお箸が自分に届くまでの過程を知れば、
無駄遣いも減るはず。みんながマイ箸を通じてつながり、
ハッピーになればいいですね」。
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国連広報センター(東京)所長の幸田シャーミンさんは
「今、地球温暖化防止は国連にとって最重要課題。
日本からマータイさんと一緒に発信しているMOTTAINAI精神を大切にしたい」。

国連総会議長のスルジャン・ケリムさん(マケドニア)は
親日家で昨夏来日し、日本語「もったいない」に関心を持った。
幸田さんは、「ありがたいという感謝の気持ちを込めた言葉」と説明。

幸田さんは、シンポジウムを通じてマータイさんの包容力、行動力に魅了。
リデュース(ゴミ減量)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)と
リスペクト(感謝の心)を込めたMOTTAINAIが存在感を主張し、
改めて多くの人たちに感銘を与えている。

「私自身、生活全体で環境に負荷をかけないよう心がけている。
自宅はソーラー発電、窓はペアガラスなど高断熱で
エネルギー消費の節減と節水、移動はできるだけ公共交通機関を使う。
自分にとってのムダを省きたい」。
幸田さんは、マニキュアをしていない。

今、焦眉の急は地球温暖化問題。
7月には、環境を主要テーマとする北海道洞爺湖サミットがある。
「ケリム議長、潘基文(バンギムン)事務総長らが全力で取り組んでいる。
安全保障理事会でもテーマとなり、世界の安全保障の問題に」。

昨年のノーベル平和賞をアル・ゴア前米国副大統領とともに受賞した
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長、パチャウリさんは
「事務総長から温暖化防止の熱意がひしひしと感じる」。
それだけに、国連広報の日本担当者として責任は重い。

一方でMOTTAINAIキャンペーンは、昨春からキャッチフレーズ
MOTTAINAIが地球温暖化を止める」を強く打ち出した。

来月、国連シンポジウム「地球が危ない!人間が危ない!
ストップ・ザ・地球温暖化」が行われる。
「政府、市民、マスメディア、研究者、企業らがグローバルな視点で
取り組んでいかなければならない。
日本は、環境関連技術が先進的なので、それを世界に役立てていけるし、
MOTTAINAIでキャンペーンを展開することはとても有用だ」。
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風の音や虫の声、水のせせらぎなど暮らしの中から姿を消しつつある
懐かしい「音」を集めて紹介する新コーナー
MOTTAINAI SOUND」が、
MOTTAINAIオフィシャルウェブサイト(http://mottainai.info/)に登場。

このコーナーは、ミュージシャンの守時タツミさんが
「100年後になくなってしまうかもしれない地球上の音を残しておこう」と発案。
さまざまな場所で収録した自然の音や画像に、
守時さん自身のピアノの演奏を加えて表現。

第1弾として、観音崎海岸の波の音と上賀茂神社のセミの声をアップ。
ピアノの演奏で引き立つ自然の音を楽しむことができる。

守時さんは、音と日本古来の童話を組み合わせた絵本を発表する予定。
「普段の暮らしでなかなか接することができない自然の音を楽しんでほしい」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080105ddm010040150000c.html

ドライアイ:自動診断装置を開発 愛媛大の研究グループ

(毎日 1月5日)

愛媛大大学院医学系研究科視機能外科学(眼科)の大橋裕一教授(57)、
山口昌彦助教(43)らのグループが、目が乾いて不快感を生じる
「ドライアイ」の自動診断装置(TSAS)を国内で初めて開発。

診断が出るまで5分以上かかった従来の方法に比べ、
時間も10秒以内に短縮。
現在は約8割の精度で診断でき、
山口助教は「精度を上げて時間も短縮したい」。

従来の診断法は、ろ紙を目に挟むなど患者の苦痛を伴ったり、
目に触れない場合でも医師の主観が入るなどの課題。

グループは、角膜の形を測定する既存の装置に新開発のソフトウエアを導入。
角膜上に広がる涙の層が薄くなって拡散する様子を測定することで、
ドライアイかどうかを判定できるようにした。
自動式のため、医師以外の検査員でも扱える。

装置は、名古屋市の医療機器メーカー「トーメーコーポレーション」と
共同開発し、同社が昨年11月から販売。

京都府立医科大大学院の横井則彦准教授=視覚機能再生外科学=は、
「ドライアイの患者は、全国で推定800万~1000万人。
実際に使ってみたが、改良が進めば確固たる診断法になりそう」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080105k0000m040115000c.html

2008年1月15日火曜日

ドイツ:ベルリンなど3都市に「環境ゾーン」設置

(毎日 1月5日)

ドイツのベルリンなど3都市に、有害物質を排出する
旧式ディーゼル車などを締め出す「環境ゾーン」が設置。
東京などの排ガス規制とほぼ同レベルの基準が設けられ、
環境ゾーンへの乗り入れには車のフロントガラスに適合シールを張る必要がある。

連邦環境庁によると、第1弾となるベルリン、ハノーバー、ケルンの3都市の他、
国内17都市が12年までの環境ゾーン導入を決めている。

適合シールは、96年の欧州新車排ガス基準(EURO2)
満たすディーゼル車か、排ガス対策装置のあるガソリン車だけに発行。
違反者には、40ユーロ(約6400円)の罰金。

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20080106k0000m030048000c.html

JISS-仙台大・スポーツ情報戦略連携の可能性

(JISS in Action 2007年12月19日) 和久貴洋(スポーツ情報研究部)

平成19年11月、仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所設立
準備会議が、仙台大(学長;向井正剛)にて開催、
研究所構想のフレームワーク(目標とミッション、事業、運営など)が話し合われた。

国立スポーツ科学センターが設置されて以降、
我が国そして世界のスポーツは大きく変化。
平成18年、遠藤前文部科学副大臣は「スポーツ振興に関する懇談会」を設置、
翌年「『スポーツ立国』ニッポン~国家戦略としてのトップスポーツ~」と題した、
我が国のトップスポーツの育成・強化を国策とする価値があるとの報告書を発表。

自民党内に「スポーツ立国調査会」が設置され、スポーツ立国に向けて、
「通常国会におけるスポーツ立国宣言」、「新スポーツ振興法の制定」、
「スポーツ省(庁)の設置」、「スポーツ担当大臣の配置」について検討。
この動きが、2016年オリンピック招致にも深く関連。

一方で、世界のスポーツも進展。
IOCは、グアテマラで開催された第119回IOC総会において、
14~18歳を対象としたユースオリンピックの2010年創設を決定
(冬季ユースオリンピックは2012年)。

IOCジャック・ロゲ会長は、「次世代、次々世代の若者のスポーツ離れ、
体力問題、スクリーン病などの課題解決、スポーツやオリンピックの価値を
深めるための若者への投資」。

さらに、スポーツ界に蔓延するドーピング問題に関しても、
その取締りと防止強化は世界の政府レベルで進められている。
ドーピング防止対策は、オリンピックや世界選手権大会等の
国際大会の招致においても、その位置付けが高い。

体育系大学は、これまで体育学の発展と、体育・スポーツに関わる
人材育成に重要な役割を担ってきた。
スポーツ振興基本計画においても、JISS運営体制の充実の面で
体育系大学との連携が重要。

近年の大学改革等の社会情勢の変化の中で、
体育系大学にも新たな役割が求められている。
研究拠点化(COE)をはじめ、研究機能の向上やFD制度の導入に見られる
教育機能の充実、地域・社会貢献など。

JISSは、我が国の国際競技力向上を、スポーツ医・科学・情報の側面から
支援することを目的として、2001年に設置。
(1)トップアスリートへの情報・医・科学支援、
(2)国際競技力向上のための実践的研究の推進体制の構築、
(3)国際競技力向上のスポーツ情報戦略機能の構築
が、主な役割(スポーツ振興基本計画)。

しかし、行政改革等の社会情勢の変化、またNTC設置、
2016年オリンピック招致、国策化、といった国内スポーツ界の動きの中、
JISSに新たな役割も求められてくる。
時代の流れや動きの中で、自己のポジションや立ち位置を見定め、
それに応じた価値観や存在意義、役割を見出していくことが重要。

平成19年10月、JISSはスポーツ情報戦略研究の推進において、
スポーツ情報マスメディア学科を新設した仙台大学と相互協力協定を締結し、
仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所設立に向けた検討がスタート。

仙台大学とJISSの内部環境の分析結果に基づけば、
スポーツ情報戦略に携わる人材育成と研究・教育充実の場の創出が、
我が国のスポーツ情報戦略分野の研究の発展のカギ。

仙台大
(強み)
・スポーツ情報マスメディア学科 
・次世代、次々世代の人材
・教員
・教育プログラム
・研究活動
・組織の柔軟性
(弱み)
・国際スポーツ社会との関係
・国際的視点からの戦略
・ビジネス機会の範囲と頻度
・実践教育の場と機会

JISS
(強み)
・国立の機関としての位置付け
・情報戦略事業(ビジネス)
・国内外の情報コンテンツ
・地域、体育系大学、JOC、競技団体、学会、世界等とのネットワーク
・研究活動
・行政的裏付け(プロフェッショナル/職業)
(弱み)
・タイトなマンパワー
・キャリアパスの保障
・スタッフの時限性
・人材育成の機会

人材交流による研究・教育の充実、研究・教育協力、
業務分担による効率的ビジネス展開、実践教育の機会創出等が戦略に。
しかし、人事体制や業務体制の整備、研究課題の価値、
地域貢献・社会貢献の面では課題が。

課題解決の方策として、教育研究機関としての仙台大学と
政策執行機関としてのJISSの間のハブ拠点としての研究所設立。

仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所のねらいと戦略。
1 学内センターをハブとした人材の還流・育成=研究・教育充実の
刺激研究所という柔軟な人事体制が可能なハブを設立、
仙台大-JISS間の人材の還流・育成が活性化し、
研究・教育・ビジネスを充実させる刺激を生む。

2 学内センターでのビジネス展開による実践教育の場と機会の創出、
教育機会の充実、
人材育成研究所は、JISSや地域などの外部機関との窓口となり、
大学の教育の枠組みの中で対応しにくいビジネスを展開、
実践教育の場や機会を創出し、教育機会の充実と人材育成を図る。
このことはビジネスの効率的展開を生む。

3 人材の還流による研究発想力の強化・拡大
社会のニーズに即した実践研究研究所を通した人材還流の活性化と、
研究所ビジネスを通した地域やスポーツ界のニーズの把握は、
社会のニーズに即した実践研究を促進し、研究発想力の強化や拡大を促す。

4 社会からの情報・人材のエントランス
開かれた大学、地域貢献、社会貢献研究所が社会からの情報や
人材のエントランスとして機能することは、開かれた大学、地域貢献、
社会貢献という体育系大学に求められる役割を果たす。

第1回設立準備会議を実施したことで、
JISS-仙台大連携による研究所構想の実現の第1歩を踏み出した。
今後も、設立準備会議を継続し、研究所の目的、ミッション、事業内容、
運営体制、リソースなどのビジネスフレームについての検討が
具体的に進められていく。

研究所設立が、JISSと大学が効果的に連携する象徴の一つとなってほしい。
研究所構想の実現に向けて、両者が有する資源を出し合う仕組みと過程が、
異組織間連携のキーファクター。
互いの資源を活用し合う過程に連携が生まれる。

Partnership is not a posture, but a process. John F. Kennedy

ミカンを救うのはあなた次第

(毎日 12月21日)

冬になるとおいしいミカン。あたたかい部屋で食べるミカンは格別な味。
しかしこのミカン、実は栽培が低迷している果物のひとつ。

神奈川県小田原市は、日本でも有数のミカン産地であった。
現在、耕作を放棄された農地が約234ヘクタール、その大半がミカン畑

原因は、他の農業でも同じ後継者不足と、農産物の貿易自由化。
ジュースや缶詰製品の輸入が増え、生果としてのミカン消費量が減少。
市場に出るものは、見た目のきれいな、糖度の高いミカンを要求。
ミカン農家の廃業はあとを絶たず、放置されたミカンの木があちこち。
放っておけば、つる草がからみつき、木はだんだん弱り、
5年もすれば死んでしまう。せっかくつけた実も落ちて腐っていく。

このミカンをなんとか甦らせることはできないかと、
2005年から"持続可能な社会"をテーマとして掲げる
NPO法人・ビーグッドカフェが、
オレンジ・プロジェクト」と称し、ミカン農園の再生活動。

小田原市では、「都市農業成長特区」が認められ、
市内の農地を企業やNPO法人に貸し出すことができる。

ビーグッドカフェでは、「アグロフォレストリーコミュニティーガーデンづくり
として、このミカン農園復活を考えている。
アグロフォレストリーとは、畑で作物を育てつつ樹木を植え森にしていくこと。

ここでは、作業を通して土に親しみ、同時に緑も増やしていく。
ミカン畑を、コミュニケーションや憩いの場として活用、
参加する人が気持ちよく作業できるようにとの意図も。

月に一度集まっては雑草やつる草を取り除き、ハーブの種まき、
ミカン摘み、作業場や雨水ダンクをつくるなどやることはいっぱい。
畑作業のあと、オーガニックランチをみんなで食べてくつろぐ、というお楽しみも。

個人向けに活動を呼びかけてきたが、今年から法人向けのプロジェクトも。
日本経済新聞社と(株)都市デザインシステムと合同で、
これからの環境・CSR活動のあり方を考える研究会」発足。
放置農園の支援を企業に呼びかけ、CSR活動として考えてもらうとの趣旨。
毎回、多分野の講師をゲストに話を聞き、その後は畑仕事を行う。

オレンジ・プロジェクトでは、二つの農園を借りている。
その一つを一般向けに、一つを法人向けに、と分けて作業を進めている。
ゆくゆくはいろいろな人や企業に参加してほしい、
救えるミカン畑が増えることを目指すが、
まずはこの二つの農園を生き返らせようと奮闘中。

ミカンの木の再生と一口にいっても、そう簡単なことではない。
放って置かれた木は、長年の肥料のやりすぎや農薬による影響で弱っている。
今年は、実を全部とって木を休ませるようにした。
農薬をやめ、肥料も抑える。
まずは、一度薬漬けになった体をリニューアルさせる。

こうして出来たミカンは、ほんのり甘酸っぱい味がする。
ミカン栽培の低迷は、消費者の好みにより甘酸っぱいミカンが
売れなくなったことも要因のひとつ。
これまでのミカンは甘さを追求し、
ホルモン剤や肥料をたくさん与える農法が主流。
薬をたくさん使っても甘い味がいいのか?
それとも健康に自然のまま育ったミカンの味がいいのか?

これは私たちに問われている宿題でもある。
小田原のミカンの木は、山の斜面に立っていることも多い。
木が弱れば、それだけ地場も弱くなり、
土砂崩れなどの災害を引き起こす危険も。

地元の農家の人たちからも、こうしたプロジェクトに期待。
小田原で有機農業を25年間手がけてきた石綿畝久さんは、
「ミカン畑が全滅するかどうか、いま瀬戸際の状態。
ミカンの木が生き残るかどうかは、関わってくださるみなさん次第です」。

始まったばかりだが、いろいろな人、企業の人に関わってもらいたい。
実際にミカンの木にふれてみることで、土地の大切さや、
口に入る食べ物のことを知るようになる。
まずは、"きっかけ"なのである。

http://mainichi.jp/life/ecology/mottshiritai/news/20071221org00m040003000c.html

2008年1月14日月曜日

対談:IPCCパチャウリ議長×小宮山宏・東大学長 温暖化防止には分野超えた連携を

(毎日 12月24日)

国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)
ラジェンドラ・パチャウリ議長=インド・エネルギー資源研究所長=と
小宮山宏・東京大学長が、東京大で対談。

パチャウリ議長は、「日本は世界の温暖化防止の重要な役割を果たしている」
と、学界や経済界などと議論するために来日。
両氏は、地球温暖化防止や持続可能な社会の実現には、
学問や文化など既存の枠を超えた取り組みが重要。
その実現に向けて、人材育成と交流を活発化させていくことなどを語り合った。

小宮山 IPCCは、温暖化問題の重要性と重大さを、説得力をもって伝えた。
20世紀後半の気温上昇について、90~95%の確率で
人間活動だと結論づけた意味は大きい。

パチャウリ 100年間に地球の平均気温は0・74度上昇
原因は、人間が排出した温室効果ガスの効果と自然変動の両方。
観測網が充実し、気候変動を再現するコンピューターシミュレーションの
進歩で両者を区別でき、専門家が議論して90%以上と判断。
地球温暖化防止バリ会議でも、IPCC報告書を尊重した議論を展開。

小宮山 大気中の温室効果ガス濃度の上昇を止めることができても、
海面上昇などの温暖化影響はその後も続く。

パチャウリ 海面の上昇は、モルディブなどの島国だけの問題ではない。
東京やニューヨークなど大都市の活動にも大きな支障をもたらす。
バングラデシュは、洪水や暴風雨に見舞われる一方、干ばつも深刻化。
水は、生命活動を支えるのに必須。
安全な水を確保できないことは、貧困や健康、紛争の火種に。

小宮山 地球規模の問題解決には、各地の文化の多様性を考慮。
東大は、持続可能な社会へのビジョンを示すため、国内11大学でつくる
サステイナビリティ学連携研究機構という研究教育ネットワークを発足。
国や地域の枠を超えて、個々の学問のネットワークを構築。
科学的知識を再構築する「知の構造化」が必要

パチャウリ ノーベル賞受賞で、IPCCには約90万ドルが贈られた。
アフリカなど温暖化に対する知識が普及していない地域で、
大学などに財政支援し、研究活動とともに人材育成を図りたい。
温暖化研究や対策で、日本はアジアの代表。
東大などと連携を強化していきたい。

小宮山 来年、北海道洞爺湖サミットが開催。
G8各国に、中国やインド、ブラジルと大学サミットの開催準備を進めている。
大学間ネットワークをさらに進めたい。

パチャウリ 温暖化問題の解決には、自然科学、社会科学、人文科学と
分野を超えた連携が重要。G8から、重要な知見が出されるのを期待。

小宮山 私の自宅では、太陽光発電を利用。
できることから率先して取り組みたい。

パチャウリ 国際会議参加のため、頻繁に航空機を利用することが私の課題。
たくさん植樹して、排出した二酸化炭素を吸収させたい。
必要な物しか買わない質素な生活を心がけている。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20071224ddm016040006000c.html

地域医療確保に追われた政府・与党_医師不足解消の転換点になるか

(じほう 2007年12月28日)

産科や小児科に代表される地域医療の勤務医不足問題で、
医療界が大揺れに揺れた1年だった。
「医療崩壊」の危機が叫ばれ、政府も医師確保対策の充実を最重視した。

「医療崩壊」(小松秀樹著)の出版は、2006年5月。
07年は、氏の警鐘が現実のものとなり、
内科などの基本診療科でも休止・撤退が相次いだ。

福島県立大野病院の産婦人科医師が、業務上過失致死と医師法違反に
問われた大野病院事件の初公判も07年1月にあった。
若手医師をはじめ、産科医不足を決定付けたこの事件の公判手続きは、
来年5月に終了する見通し。
地域医療崩壊を防ぐことは、政府も喫緊の課題と位置付け。

5月の「緊急医師確保対策」は、
<1>国レベルの臨時医師派遣システム構築
<2>勤務医の過重労働の解消
<3>女性医師らの職場環境の整備
<4>臨床研修病院の定員見直し
<5>医療リスクに対する支援
<6>医師不足地域に勤務する医師の養成
という短期や中長期的な6項目の施策を明記。その後の方向を決定付ける。

08年度の政府予算編成では、次期診療報酬改定で技術料に相当する
本体部分を8年ぶりに引き上げることが決まった。
「決して十分とはいえないが、勤務医の疲弊、産科・小児科・救急医療の危機が
少しでも救われることを期待したい」(日医会長の唐澤祥人氏)。

厚生労働省の08年度予算案も、医師不足対策予算として
倍増に近い約161億円を確保。
財務省の回答が、要求を3000万円上回る異例の予算編成。

一方、県立大野病院事件は司法が医療の現場に過剰に介入しがちな
現状を改善すべきという議論を喚起する契機に。
4月に「診療行為に係る死因究明等の在り方に関する検討会」が設置、
10月に政府(厚労省の第2次試案)、12月に与党(自民党検討会の報告)が、
死因究明を行う新制度の骨格を提示。

死因究明と再発防止を医療者自らが行う新制度の創設を、
「医療従事者が委縮することなく医療を行える環境を整えることは、
医師不足対策の一環としても重要かつ喫緊の課題」(自民党検討会)。

厚労省は08年度、医師不足対策予算の柱に掲げた主要項目
(医師派遣システムの構築21億円、病院勤務医の勤務環境整備等53億円、
女性医師等の働きやすい職場環境の整備21億円など)を推進。

医師不足問題解消に向けたターニングポイントとなった年。
07年が後にそう評価されるよう期待したい。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=65266

2008年1月13日日曜日

学校教育における『環境』と『地学』の位置は?

(サイエンスポータル 2007年12月19日)

環境問題に関心の深い研究者、教育関係者などが参加する
公開シンポジウム「環境教育 明日への提言」が開催。
日本学術会議の環境学委員会環境思想・環境教育分科会が主催。

「学校教育に教科として『環境』を位置付け、専門教員を養成」を柱とし、
「幼児、小、中学生に自然体験を徹底させるべきである」という提言案が
合意を得るまでには至らなかったが、現状認識については多くが同意。

大人(先生)も子ども(生徒)も、自然体験が恐ろしく希薄、
という事実に対してである。

環境という科目をつくるべきか否か、という議論が交わされている一方、
既存の科目が存亡を問われかねない状況にあることが、
「地質ニュース」(産業技術総合研究所・地質調査総合センター編)。

開発などによって、「危機にある地形」や「保存すべき地形」をまとめた
「日本の地形レッドデータブック」(古今書院)の編者でもある
小泉武栄・東京学芸大学教授によると、地球環境問題に加え、
地震をはじめとする大規模自然災害への対策を考えても、
政治や経済に加え、地学や自然地理学の研究の進展が大きな役割。

にもかかわらず、地学研究者の層はますます薄く、
野外で調査にあたる地質学者や地形学者は、
後継者を育てることすら難しい、と警鐘。

研究者の不足以上に、大きな問題として小泉氏が挙げているのが
学校教育における地学関連の教育の不振」。

経済の高度成長は、安価な原料を海外から大量に輸入する傾向を強め、
国内での鉱産物生産の必要性は小さく、学校教育における地学の軽視、
小中学校の教科書における地学、自然地理関係の内容の著しい減少に。

地学教育の地盤沈下に比べ、環境教育の方がよほど重視されている。
「環境教育は、学校教育におけるすべての教科で、
機会をとらえて実施することになっている」。

しかし環境教育の結果、「子供たちは 地球環境の問題点ばかりを、
繰り返し学習することになってしまった」。
小泉氏は、「小学校や中学では、地球環境問題の学習より先に、
地球や自然のすばらしさを学習すべきである」と主張。

地球環境問題についての勉強は、
「地球のすばらしさを発見させ、子供たちは地球に生まれてきたことの
幸せを感じることができ」た後に行った方がよい。
地学を教えられる機会が激減していることの影響、対応策を考える場合、
「環境」を独立の科目にすべきという議論とのすりあわせ、
協働といったものは考えられないものだろうか?

「大人(先生)も子ども(生徒)も、自然体験が恐ろしく希薄になっている」
という危機意識は、両者に共通すると思われる。

http://scienceportal.jp/news/review/0712/0712191.html

次期診療報酬改定は本体0.38%引き上げ 実に8年ぶりの本体プラス

(じほう 2007年12月28日)

次期診療報酬改定は、8年ぶりの本体0.38%引き上げ。
年明けから中医協で、診療報酬点数の配分論議が始まる。
病院勤務医の過酷な勤務実態などに照らし、
特に小児、産科、救急医療などを手厚く評価する予定。
諮問とパブコメを経て、2月中旬以降に改正案を厚生労働相に答申。

次期診療報酬改定をめぐっては、中医協が11月21日の総会で
「本体部分に関しては、マイナス改定を行う状況にない」
とした意見具申を了承し、舛添要一厚労相に提出。

12月4日には、自民党の社会保障制度調査会医療委員会と
厚生労働部会が「プラス改定を図り、必要な医療費財源を確保する」との
決議文を採択するなど、診療報酬本体引き上げへの気運が高まり。

2008年度予算案の編成作業では、
社会保障費の自然増圧縮分2200億円の財源確保が焦点。
その結果、まず政管健保の国庫負担肩代わりとして
健保組合から750億円、共済組合から250億円の協力を取り付け。
薬価・材料の引き下げで960億円、後発医薬品の使用促進で220億円など、
2504億円を確保、2200億円を上回る304億円を診療報酬本体の引き上げに。

本体の引き上げは、実に8年ぶり。
ただ、薬価・材料が1.2%引き下げられるため、全体では0.82%の引き下げ。
本体の配分は、医科・歯科・調剤が1:1:0.4。

年明けからの点数配分をめぐる中医協での議論では、
医師不足問題や勤務医の負担軽減、
地域医療の要である小児・産科・救急医療への重点配分が検討される見通し。

中医協の今後のスケジュールは、
1月16日に厚労相より改正案作成の諮問を受けた後、
1月下旬にかけて国民から広く意見を募るパブコメを実施。
その結果を踏まえ、中医協の中で個別点数ごとの議論を行い、
2月中下旬に改正案を答申する運び。
3月上旬には新点数が告示され、4月1日から実施。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=65265

郵便局利用し遠隔健康診断 2月に旭川医大が実験へ

(共同通信社 2007年12月28日)

旭川医科大(吉田晃敏学長)は、
郵便局の高速通信網や局内のスペースを利用した、
遠隔地での健康診断「一坪健康センター」(仮称)の実証実験を、
来年2月に道内で始めると発表。
増田寛也総務相の了解も既に得ており、全国初の試み。
同大は、将来的には診察にも応用したい考え。

郵便局内に健康診断用の機器を設置。
検診者が体重や体脂肪率などを量ると、郵便局の高速通信の
ネットワークを通じて大学側にデータが届く仕組み。

北海道では、通信インフラの整備の立ち遅れが問題となっているが、
同大は郵便局の高速通信網に注目。
現金自動預払機(ATM)と同じ回線をもう1回線敷設し、
専用回線として利用する。

郵便局会社が、道内の約1000の郵便局の中から、
実験に協力できる10局を来年2月に決定。

吉田学長は、「郵便局を利用する人は相当数いる。
郵便局に立ち寄ったついでに利用してもらえるはずだ」と
実験、実用化の意義を強調。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=65240