2009年7月18日土曜日

スポーツ21世紀:新しい波/309 Back Softball/2

(毎日 7月11日)

ソフトボール界は今、野球界と行動を別にする。

6月のIOC理事会での16年五輪復帰に向けた
プレゼンテーションでも、国際ソフトボール連盟(ISF)の
ドン・ポーター会長は、「我々は野球の一部ではない」と強調。

両者は、05年のIOC総会で、12年ロンドン五輪での除外が決まった。
野球は、米大リーグの選手が出場しないことやドーピング問題が指摘。
野球より1大会遅れて、96年アトランタ五輪から正式競技となった
ソフトボールは、「野球の女性版」ととらえられる向きもあり、
野球の巻き添えになったとの見方も強い。

日本ソフトボール協会も、1949年の独立まで
全日本軟式野球連盟に併置されていたように、
両者は「縁戚関係」にあったが、今回の復帰運動ではライバル関係。

「野球と一緒に復帰を目指すとなると、ドーピングの問題で引っかかる。
大リーグも独自で検査し、改善されてはきているが、
世界反ドーピング機関(WADA)の検査は厳しい。
メジャーリーガーを五輪に出せと言われても、難しいのではないか」と
日本協会の鈴木征広報委員長。

ISFは今、野球と組織をともにする欧州各国に、
分離・独立を呼びかけている。
両者には温度差もある。五輪を失う打撃の大小からくる。

野球界は、プロ組織による資金力も、栄誉を求めるなら、
独自の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」もある。
プロ野球のある球団幹部は、
「WBCだけでも、選手を(代表に)出すのは大変。
球団側にも見合ったメリットがないと」と、
むしろペナントレースに重きを置く声も。

ソフトボール界は深刻だ。
五輪3大会に出場した太陽誘電の山路典子監督(38)は、
指導で高校生に会う中で異変に気付いている。
「次の五輪がないからでしょう。
最近、学生から『五輪』という言葉が出てこない。
以前は、『五輪に出るために実業団で鍛えたい』と。
卒業後も続ける選手が減りはしないか」と案じている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/07/11/20090711ddm035050009000c.html

がんペプチドワクチン研究 創成事業(文科省)に採択

(2009年7月10日 読売新聞)

久留米大医学部の「がんペプチドワクチン」研究を核とする
産学官連携の取り組みが、文部科学省の
「知的クラスター創成事業」に採択。
県と久留米市が発表。
5年にわたって、年間約3億円の委託費が支給。

同大によると、がんペプチドワクチンは患者の免疫細胞を活性化し、
がん細胞を攻撃。副作用が少なく、各地で研究が進められている。

事業には九州大、九州産業大、県生物食品研究所など
産学官の27機関が参加。

▽肺がん、肝臓がん、膀胱がん向けの実用化研究
▽ワクチンの効果、副作用を遺伝子レベルで予想する技術の開発
▽DNAやたんぱく質に印を付ける蛍光試薬などの開発--の3テーマ。
人材の育成にも力を注ぐ。

「久留米バイオカレッジ」と銘打って、大学や企業で講座や実習を開き、
遺伝子解析などのバイオ関連技術を教え、
海外のがん医療研究拠点との交流も進める。

ペプチドワクチンを研究している久留米大医学部の
伊東恭悟教授(免疫治療学)は、「21世紀はワクチンの時代。
治療法を確立し、世界の患者に提供できるようにしたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/10/103987/

ソニーの高野瀬調達本部長 「調達の集約で交渉力を強化」

(日経 7月9日)

ソニーは、年間2兆5000億円に上る部品や資材の調達コストを、
2009年度に約2割削減。
部門ごとに分散していた調達機能を集約し、10年度末をメドに、
2500社ある取引先も、半分以下の1200社程度に絞り込む。
調達戦略見直しの背景や狙いについて、
新設された調達本部の高野瀬一晃本部長(55)に聞いた。

——調達機能を一元化する狙いは何か?

「従来も、プロキュアメント(調達)センターはあったが、
各事業本部にも調達機能があり、デジタルイメージング
(DI、デジタルカメラやビデオカメラ)ならDI、ゲームなら
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、
自分の部門分だけで部品メーカーと個別に交渉・調達。
製品単価が下がる一方、部品の購入額はさほど増えない。
調達を集約することで、量をまとめて交渉力を高める

——取引先の絞り込みも、コスト削減が狙いか?

「取引先の数は減らすが、残った取引先との取引量は増える。
その分は、コスト面で協力をお願い。
短期コストだけみて、競争力のない製品を作っても仕方ない。
中期的には、提案力のある部品メーカー、差異化技術をもった
部品メーカーに増えてほしい。
従来は、取引先を『サプライヤー』と呼んでいたが、
今後は『パートナー』と呼ぶ

——一元化をどう進めるのか?

「調達本部を設けたといっても、魔法が使えるわけではない。
部材調達の専門部署、3年程度先の商品を見据えた
部品開発の担当部署、1年程度先をみた具体的な機種設計の
担当部署が、三位一体となって、部品や取引先の選定を進める。
縦の事業部と密に連絡をとりながら、プロバイヤーも育てたい」

——製造面では社外委託が進んでいるが、
調達業務も含めた委託は進むのか?

「汎用部品の調達なら、EMS(受託製造会社)の購買力は強いが、
重要な部品になると、部品メーカーがEMSに直接売るのを嫌がる。
ソニーとしても、おさえておきたい部品もある。
製造委託したとしても、全部丸投げにはしない。
大規模集積回路(LSI)やメモリーなどリードタイムが長く、
高コストで生産能力にも、制約があるような部品は戦略的に調達、
一定の購買力を確保する。部品ごとに考える」

——部品の標準化はどの程度進めるのか?

「テレビだけで、現在2000種類くらいの部品。
メーン基板でいえば、07年で12程度を、11年には3つに。
種類を減らし、1種類当たりの数量を増やすが、
標準化や共通化は調達本部の力だけではできない。
事業部の設計者に協力してもらうことが必要。
独自仕様で、過剰な性能を持つ部品を使うのではなく、
設計段階から『デザイン・トゥー・コスト』という意識で協力。
この活動は、テレビ事業本部で展開し、今年度は全社に横展開」

——既存の取引先と条件見直しを進めるのか?

「コスト削減は、毎年お願いしている。
今年度の製品に使う部品は決まっているが、業績面で相当厳しい。
例年に増して、コスト削減を進める必要。
パートナーの部品メーカーには、今年度も協力してほしいとお願い。
10、11年度の部品選定に反映していきたい」

——取引価格の見直しはいつから実行?

「第2四半期(7~9月)から実施。
エレクトロニクス製品は、(年末商戦に向けた)調達・生産のピークを迎える。
ピークを過ぎた後、コスト削減をしても仕方ない」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090707.html

市民力を鍛える(1)体験し考えて社会人の素養

(読売 7月7日)

社会で生きていく力を身につけてもらうため、
独自の授業を行う学校が増えている。

17人の中学3年生が、教室でコーヒーの作付けを巡って交渉。
「慎重にやりたいから、2区画というのは譲れない」、
「男だったら、決断して全部コーヒーにしようよ」

広島市佐伯区の鶴学園広島なぎさ中学校で行われた
「グローバル・ラーニング」の授業。
生徒たちは、コーヒーを売買する多国籍企業の社員と
生産農家という役割に分かれ、4年間でいかに多くの収益を
上げるかを競っていた。

多国籍企業の社員は、多くの農地を穀物栽培から
コーヒー畑に転換させないと解雇されてしまう。
農家は、子どもを学校に行かせるための資金が欲しい。
コーヒーは、収益率の高さが魅力だが、市場価格の変動がリスクとなる。
こうした設定で、生徒たちは自分の利益を得るために知恵を絞る。

約500ドルの黒字を確保し、最後の年にすべてをコーヒー栽培に
転換したところ、市場が暴落して借金生活になってしまった
農家役の男子生徒。
授業の最後に、「もうかるからと企業に押し切られた。
自分の意思を持つことが必要だと思った」と発表。
「自分の利益と、相手の利益を考えるのは難しかった」と話す女子生徒。

授業を行った野中春樹教諭(56)は、
「企業や農家という立場になることで、社会と自分との関係や、
他人との関係の作り方を学ぶことができたはず」

中高一貫の同中学校は1994年、社会人としての基本的な素養を育む
シチズンシップ教育を行うため、「人間科」という教科を創設。
グローバル・ラーニングのほか、「人間」(中学1年~高校3年)、
「グローバル・シティズン」(高校1年)、「国際理解」(高校3年)を必修化。
責任、豊かさ、勤労観など16テーマについて、
ゲームや討論、外部講師の講演などを通じて6年間で学ぶ。

97年から授業作りに参加している野中教諭は、
自分自身を肯定的に評価する自己理解、コミュニケーションに
より人間関係を築く能力、社会の一員であるという実感――の
3点が重要だと強調。
「本当に理解し、自分自身の問題として意識するには、
体験して考えさせること」

高校の「人間」の授業では、自宅出産を手がける助産師や
終末医療に携わる医師を招いて話を聞いたり、
実際に緩和ケア病棟を訪問したりすることで、
生と死について考えるきっかけ作りに。

課題は、時間数の確保。
受験勉強に直接必要な内容ではなく、逆に受験科目の授業時間数が
減るため、手放しで歓迎されるわけではない。

公立校でも、シチズンシップ教育を試みる学校が目立つ。
品川区は2006年度から、道徳と総合的な学習、特別活動の時間を
活用し、区立の小中学校すべてに「市民科」の時間を作った。
神奈川県教委は07年度から、シチズンシップ教育実践研究校に
県立高校8校を指定し、現代社会や政治経済など
既存の授業の中での充実を図っている。

松沢成文・同県知事は、シチズンシップ教育をさらに広げるため、
全県立高校で来年夏の参院選に合わせて模擬投票を行い、
11年度には法教育も全校に導入する意向を表明。

一方で、授業の進め方に苦慮している学校も。
小中一貫校の熊本市立富合小学校・中学校は、
構造改革特区制度を利用し、04年に新科目「生き方創造科」を創設。
水俣病の現地学習を実施したり、先進的な性教育を試みたりしたが、
「シチズンシップ教育ならではの内容、方法まで高まっていない」と、
同校関係者は打ち明ける。
生みの苦しみが続いている。

◆シチズンシップ教育

個人が、社会に参加していく際の能力を身につけるための教育。
欧米を中心に導入され、「市民教育」などと訳される。
社会の仕組みの理解に重点を置く「公民教育」とは異なり、
具体的に社会参加する方法を、体験を通して学ぶ。
英国は2002年、日本の中高生に相当する生徒に必修化。

◆具体的手法確立には時間

シチズンシップ教育が注目される背景には、
経済成長により国民が物質的な豊かさを獲得し、
価値観が多様化したこと。
この結果、進路の選択肢が増える一方で、ボランティア活動などで
精神的な豊かさを求めることも一般化し、
社会にかかわる力がより求められる。

こうした力の多くは、企業内教育の一環として育成されてきたが、
長引く景気の低迷で、今や企業にはゆとりがない。
経済同友会は今年2月、18歳までに社会人としての基礎を
身につけるよう、学校教育に求める提言。

具体的な手法の確立には、時間がかかりそう。
教員養成大学などではカリキュラム作成に向け、
付属校で試験的な授業を行っている段階。
文部科学省の特例校制度を活用、独自の教科を作っている例もあるが、
その多くが手探りを続けている。

「市民力」をキーワードに、個人と社会をつなぐ教育の試行錯誤は、
今後も続きそう。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090707-OYT8T00262.htm

「ALS」「若年性認知症」、原因抑える物質発見

(読売 7月12日)

筋肉が動かなくなる難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、
若年性認知症の治療につながる物質を、
東京都精神医学総合研究所の野中隆主席研究員らの
研究グループが見つけた。

これまでの研究で、ALSや若年性認知症を発症した患者の
脳や脊髄には、TDP43と呼ばれるたんぱく質が異常を起こして
蓄積していることがわかっており、
これが細胞の死滅や病気発症の原因。

研究チームは、人の神経細胞に異常なTDP43を作り出す
遺伝子を組み込み、患者の細胞を再現。
この細胞を使って、様々な薬の効果を確かめたところ、
ロシアでアレルギーなどの治療に使われていた医薬品と、
国内でも市販されている薬剤とを併用することで、
細胞内に蓄積した異常たんぱく質を80%以上減らせる。

ALSは、往年のメジャーリーガー、ルー・ゲーリッグ選手が
発症したことで知られる難病、治療法はまだ開発されていない。
40~65歳で発症する、若年性認知症も治療法がない。

野中主席研究員は、「すでにある薬を使って、ALSなどの進行を
大幅に抑えることができる可能性がある。
早急に治療薬開発につなげたい」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090712-OYT1T00032.htm

2009年7月17日金曜日

親の15%が幼児にサプリ 6割、栄養補給が目的 過剰摂取「有害の恐れ」

(2009年7月6日 共同通信社)

幼稚園や保育所に通わせている保護者の15%が、
ビタミンなど特定の成分を濃縮した健康食品のサプリメントを、
子どもに与えていることが、国立健康・栄養研究所の調査で分かった。

保護者の6割は、「栄養補給」が利用目的と回答。
食生活に何らかの改善が必要と感じて、サプリに頼る実態が浮かんだ。

研究所は、幼児への有効性や安全性など検証したデータは乏しいとし、
「身体に必要な成分でも、安易に与え続けると過剰摂取につながり、
幼児に有害な作用が出る恐れがある」と注意喚起。

調査は、2007年5~9月、青森、山形、茨城、栃木、埼玉、千葉、香川の
7県の幼稚園や保育所計21カ所で実施。
子どもの年齢は6歳まで、保護者2125人のうち1533人から回答。

結果によると、口の中で溶ける錠剤や粉末、カプセルなどのサプリを、
15%に当たる228人が子どものため利用。

利用者のうち、68%の154人が、「ビタミンやミネラルのみ与えている」
32%の74人は、「そのほかも利用」、
33人は、脳の発達に良いなどと宣伝されるドコサヘキサエン酸(DHA)を
含有する魚油系のサプリを利用。
次いでプロテイン、キシリトールが各7人、ハーブが6人。

利用目的(複数回答)では、「栄養補給」が140人で最多。
「健康増進」58人、「病気予防」42人、「体質改善」27人。
106人が、「たまに利用」と回答。
「以前に利用」が90人、「毎日利用」は32人。

使い始めた時期で最も多かったのは、
ビタミンやミネラルは3歳からが59人、
DHAなどそのほかのサプリは1歳からが19人。
購入商品は、「幼児用サプリ」が多いが、成人用を使っているケースも。

▽サプリメント

ビタミンのほか鉄、カルシウムといったミネラルや、
特定成分を濃縮した錠剤やカプセルなどの総称、医薬品ではない。
健康食品の一つで、スポーツやダイエット、滋養強壮など
さまざまな分野の商品があり、子ども用から高齢者向けまで。
1996年度以降、医薬品の範囲見直しに伴い、
ビタミンなどの栄養素は錠剤などの形状で販売できるよう規制緩和、
流通量が増えている。

コンビニやインターネットで買え、市場が拡大したサプリメント。
商品の宣伝や表示をめぐっては、「1週間でやせる」といった
誇大広告が増加傾向にある。

サプリを含む健康食品分野は大手の食品、製薬会社のほか
中小メーカーも参入、市場規模は7千億円超。

医薬品でないため、効果や効能を表示できないが、
「体脂肪が減る」、「がんに効く」、「身長が伸びる」と宣伝する商品も。
ネット上では、子ども向けも「集中力や学力UP」などと紹介。

表示や販売手法をめぐり、国民生活センターには昨年だけで、
約1300件の相談や苦情が寄せられ、誇大広告は増加傾向。
公正取引委員会も、体臭を消すとの効果に根拠がないとし、
7社に排除命令を出した。

日本健康・栄養食品協会は、成分や表示を
審査、認定する制度を設置。
全体的な基準はなく、厚生労働省の専門検討会は昨年、
製造業者らで統一の基準を定めるよう求めた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/6/103712/

越喜来の旧家にあった馬頭観音像 南北朝時代の懸仏と判明

(東海新報 7月15日)

大船渡市の旧家にあった銅製の馬頭観音像が、
南北朝時代の懸仏であることが分かった。

盛岡大学の大矢邦宣教授によると、
県内で馬頭観音の懸仏が出てきたのは初めて。
この仏像が納められていた厨子には、
「天文十一年三月十三日馬頭観世音横澤平重持」の墨書、
未解明部分が多い気仙の中世史を繙くうえでも注目される資料。

馬頭観音像を所蔵しているのは、地方公務員・上村弥さん(55)。
叔父にあたる上村民雄さん(62)によると、
仏像はかなり以前から、奥座敷の床の間に木箱に入ったまま
飾られていた。

馬頭観音像を、県文化財保護審議会委員で、
大船渡市文化財調査委員でもある大矢教授が注目。
調査の結果、この仏像は鋳銅製の馬頭観音座像の懸仏
(高さ8・7㌢、台座幅5・3㌢)であることが判明。

懸仏は、丸い鏡の中心に仏像を配置した仏具で、
寺社に奉納され、壁にかけて信仰されていた。
平安時代から造られはじめ、中世に盛んに製作。

大矢教授は、「県内では、300体ほどの懸仏が見つかっているが、
いろいろな仏像がある中で、馬頭観音の懸仏は初めて。
しっかりとしたつくりで、顔の表情もいい。
鋳造年代は、南北朝から室町時代、西暦1400年前後では」

馬頭観音の懸仏は、鏡のない仏像部分で、
ハスの台座部分が一部欠損。
形状は頭上に馬頭をいただき、炎髪で顔は三面。
正面のみ鼻や口がついて、胸前に馬頭印という手の組み方。
内側が空洞で、頭上に取付の突起があり、銅鏡と一体だった。
大矢教授は、仏像の表面に金メッキをしていた可能性が強い。

仏像が納められていたスギ製の厨子(高さ16・8㌢、幅9・2㌢)の
箱書きにあった天文11年(1542)と、横澤平重持という名前に注目。

『気仙古記』などによると、平重持は葛西氏の金山係で、
越喜来に来て熊野堂(現・新山神社)を建立。
同神社に、重持が納めた「天文十一年の順礼札」(県指定文化財)、
その年号が厨子の墨書と付合。

熊野信仰や重持のルーツ、葛西統治下で気仙郡の砂金採掘りとの
かかわりも興味深いが、仏像について
「天文11年の年号よりも、この馬頭観音像は古いことは間違いない」

弥さんの妻、江美子さんは、「かつて銅鏡の部分も家にあった、
と聞いています。思っていたより古い仏像だったので、驚きました。
これからも大切にお守りしたい」

粗食は長寿、がん・心疾患・糖尿抑制…サルで実証

(2009年7月10日 読売新聞)

カロリー摂取量を大幅に減らすと、がんや心疾患、糖尿病など
加齢に伴う病気の発症を抑えられることが、
アカゲザルを使った20年間の追跡調査で明らか。

霊長類で、こうした効果が実証されたのは初めて。
米ウィスコンシン大などのチームが、
10日付の米科学誌サイエンスに発表。

チームは、7歳から14歳の大人のアカゲザル
(飼育下の平均寿命27歳)30匹使って、1989年に研究を開始。
94年には46匹を追加。
2つのグループに分け、片方のカロリー摂取量を30%減らし、
血圧や心電図、ホルモン量などを測定。
死んだ場合は、解剖で死因を詳しく調べた。

カロリー制限しないグループでは、5匹が糖尿病を発症、
11匹が予備軍と診断、制限したグループでは兆候は見られなかった。
がんと心疾患の発症も、50%減少。
脳は加齢とともに、萎縮することが知られ、制限したグループでは、
運動や記憶などをつかさどる部分の萎縮が少なかった。

白沢卓二・順天堂大教授(加齢制御医学)は、
「カロリー制限が、長寿や高齢者の認知機能維持にも
役立つ可能性を示すもので、大変興味深い」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/10/104018/

フィアット33歳副会長の野望

(日経 2009-07-07)


イタリアの自動車大手フィアットが、米クライスラーや
ゼネラル・モーターズ(GM)子会社の独オペルの経営再建問題で
脚光を浴びている。

フィアットは、かつてGMとの資本提携に失敗、
どん底からの再出発を迫られた。


33歳の若さで、その創業一族を率いるジョン・エルカン副会長は、
世界規模の自動車危機を好機とみて、
グローバルプレーヤーとして名門復活に挑む。

オペル買収交渉のさなかだった5月上旬、
エルカン氏の姿はスイス東部ザンクトガレンに。
「長期的な展望を持った、強い自動車メーカーを作る」
現地では、「ミニ・ダボス会議」と呼ばれる学生らのセミナーに出席、
珍しくリップサービスをしてみせた。

クライスラー、GMとの交渉の表舞台に立つのは、
セルジオ・マルキオーネ最高経営責任者(CEO)。
クライスラーに続いて、オペルもグループに加えようと
縦横無尽に動き回った。

オペル買収は、カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルが
合意にこぎ着けたが、マルキオーネCEOは、
フィアットの計画の利点を説き続けている。

本拠地のトリノで、株主総会を取材したことがある。
エルカン氏は、フェラーリ会長も兼務するモンテゼモロ会長、
マルキオーネCEOと記者会見のひな壇に並んだ。
記者の爆笑を誘う「ショーマン」の会長と、
仕事のことを淡々と答える実務派CEO。
若いエルカン氏からは、欧州メディアが書くように「恥ずかしがり屋」の印象。

やり手のマルキオーネ氏に、フィアットの将来を委ねたのは、
まだ20代だったエルカン氏その人。

第2次世界大戦後のフィアット中興の祖で、
「アヴォカート(弁護士)」と呼ばれ、イタリア経済界の重鎮だった
ジャンニ・アニェリ氏。
その長女マルゲリータと作家のアラン・エルカン氏の長男。

アニェリ家は、傘下の投資会社EXORを通じ、フィアットに約30%出資。
EXORの投資先には、世界的な検査・認証大手SGS(スイス)や
サッカーの名門ユベントスも名を連ねる。
エルカン氏は、EXORの会長にも就任、一族の実力者となった。

祖父ジャンニの後継者候補には、長男のエドアルド、
おいのジョバニーノがいたが、2人とも若くして急逝。
ジャンニが指名したのが、孫のエルカン氏。
サッカー選手を夢見てブラジルなどで暮らし、
トリノで学生生活を送りながら、フィアットの現場を巡っていた時期。

フィアットは、2000年にGMと提携。
自動車事業は、欧州メーカーの競合激化で提携も実を結ばず、
赤字の山を築く。

03年、ジャンニが死去。
弟のウンベルト・アニェリ氏も他界した04年、
三日三晩考えたエルカン氏は、SGSのCEOだったマルキオーネ氏を
フィアットに迎え、アニェリ家も久々に経営に本格復帰。

フィアットは05年、GMへの乗用車部門売却を断念、
自らの手による再建の道を選ぶ。
若手を登用し、新車開発を抜本的に見直し、
06年12月期には6期ぶりに水面上に浮かんだ。
エルカン氏は、「最初の2年は社内の抵抗も強かったが、
我々は常に対話し、成功へと導いた」


昨年末、マルキオーネCEOが、「生き残るメーカーは6つ」と宣言。
クライスラーやオペルを傘下に、世界市場でトヨタ自動車や
独フォルクスワーゲンを追うというフィアットの野望は、
伝統メーカーのV字回復をなし遂げたモンテゼモロ、エルカン、
マルキオーネの「トロイカ体制」の産物。

米国での「フィアット」、「アルファロメオ」ブランド車の生産・販売などを
実現し、世界の「600万台グループ」の1角として存在感を高められるか?
今後のエルカン氏の会長就任と、フィアットの完全復活に、
イタリア国民は期待。
愛称「ヤキ」で呼ばれる青年の一挙手一投足から、目が離せなくなりそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090703.html

高校再生(8)「分かる授業」で中退減

(読売 7月4日)

東京都の高校改革で生まれた学校は、
「分かる授業」で意欲につなげる。

校内の小さな畑で、1年生約30人が、2人の市民講師の指導を
受けながら、スコップでジャガイモを掘り出していた。
東京都立蒲田高校で行われた農業の体験学習。
地域住民と交流して様々な体験を積むため、1年生だけにある授業。

1年生の数学の授業で、クラスの生徒は習熟度で2つに分かれ、
「30分授業」を受けていた。
「多くの生徒が、中学の時は低い学力で自信がない。
授業がわからないと、生活の荒れにつながる。
最初のステップは低くしている」と宮崎三喜男教諭(31)。

数学では、分数の計算から始める。
ペースはゆっくりで、通常の学校が1年で教える内容を2年かける。
こうした授業は、同校が2007年度にエンカレッジスクール
なったことで始まった。

エンカレ校は、学び直しができる学校。
安心して学べるよう、生活指導は厳しい。

自由な校風が特徴だったが、以前は行き過ぎた自由も見られた。
授業中でも、廊下で車座になってトランプをしたり、
教室でドライヤーで髪を整えたり、ラーメンを食べたり――。
移行当初はそんな状況で、06年度の中退率は約15%(91人)。

入学前、茶髪・金髪禁止を説明。
指導を守らない生徒には、担任だけでなく、学年主任や副校長など、
段階的に指導する体制を取った。
移行前に入学した在校生には、「自由だからこの高校を選んだのに」
という不満もあり、在校生には頭髪や化粧の自由を認めた。

今春、3学年ともエンカレ校生になった。
生徒が落ち着いて、授業を受けることが当たり前の光景となり、
中退率も昨年度は5・5%(28人)に下がった。
移行当初から見てきた教務主任の笠原聡教諭(50)は、
「やはり授業が分からないことに、意欲はわかない」

同校に入学してくる生徒は、授業への拒否反応が強い。
学び直せるため、勉強ができなくても認めてくれるし、
周りには同じ事情の生徒がいる。
教師も、できるだけその場で質問に答える。
「『先生が待っていてくれる』と分かると、生徒も授業に参加してくれる」

他のエンカレ校でも、中退率が軒並み下がるなど効果は表れているが、
「社会に出て、十分に通用する知識・技能になっているかどうか」
(笠原教諭)という不安。
入試では学力検査がなく、中間・期末テストもない。
競争のない学校生活と、競争のある実社会の間には、ズレもある。

来春、同校のエンカレ校1期生が卒業する。
学校が根気よく生徒と向き合うことが、
社会で生きる力につながるはず。

◆エンカレッジスクール

小中学校で、力を発揮できなかった生徒を対象にする高校、
2003年度に始まった。
生徒の意欲を見るため、入学試験に学力検査はない。
30分授業や体験学習、2人担任制などが主な特徴。
足立東、秋留台、練馬工業、蒲田の4校が指定。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090704-OYT8T00253.htm

2009年7月16日木曜日

脳の働き:潜在的、人の好みを左右 無自覚な認知に違和感も

(毎日 7月7日)

あるタレントの顔が好みなのはなぜか?
コンビニに並ぶ同じ種類の商品の中から、
ひとつを選んで購入するのはどうしてか?

自分では意識的に決めているつもりだが、
そうとばかりは言えないことが最近の研究で分かってきた。
人の好みは自分でも気づかない、脳の潜在的な活動にも
左右されているらしい。
人の脳では、膨大な量の情報が処理されている。
そのほとんどは意識に上らない。

米・カリフォルニア工科大の下條信輔教授(認知神経科学)リーダー、
「戦略的創造研究推進事業・潜在脳機能プロジェクト」は、
こうした無自覚な脳の働きが、意思決定などに結びつく仕組みの
解明に取り組んでいる。

◆見るから好きに?

研究の発端は、顔の好き嫌いの判断と視線の関係を調べる実験。
2枚の顔写真を並べて、好きな方を選んでもらうと、
選ぶ1秒程前から選ばれる方に視線が偏ることがわかった。

「長く見ている方を好きと判断する」と解釈できるが、
「好きだから長く見ているのではないか」との反論も。

下條さんらは、のぞき窓から顔が一部ずつしか見えない条件を作った。
実験の協力者は、一部ずつを見比べながら顔全体をイメージし、
好きな方を選んだが、選ぶ7~8秒前から視線の偏り。
「見比べている間は意思決定していないのに、
視線は片方にすり寄っている」

あらかじめ二つの顔を見せ、15分以上後で好きな方を選んでもらうと、
15分前の段階でその判断を予測できる脳活動が見られた。
自分でも気づかないうちに、第一印象で
好き嫌いが決まる可能性を示している。

◆見慣れた顔が好き

過去に接した記憶は、好き嫌いにどう関係しているのか?
下條さんらは、顔、自然風景、幾何学図形のそれぞれに、
二つから好きな方を選んでもらった。
その際、片方は毎回同じものを見せ、残りは新しいものを見せた。
その結果、顔は「なじみのある方が好き」、
風景は「新しい方が好き」という傾向。
特に、なじみのある顔を好む傾向は、条件を変えても揺るがなかった。

「CM戦略で言えば、見たことのない風景に、
なじみのある人物を配するのが成功の秘訣かも」

◆消費者は自由か

こうした実験で注目されるのは、「なじみのある顔」や
「より長く注視した顔」を選んでいることに、
被験者自身は気づいていない点。
人の好みが、無自覚な認知に左右されているのだとすると、
消費者が商品を選ぶ行動や、選挙で有権者が候補者を選ぶ行為は、
自由意思による決定といえるのだろうか。

「自由意思が働いていないわけではないが、
自由に選んでいると感じながら、広告戦略などに左右される部分が
現代社会では増えている。
その仕組みを、科学的に解明していきたい」

◇停止エスカレーターに乗ると…自然に上半身は前傾姿勢

止まっているエスカレーターを上り下りする時、
奇妙な違和感を経験した人は多い。
この違和感の理由は何か?

潜在脳機能プロジェクトの一員である五味裕章・NTTコミュニケーション
科学基礎研究所主幹研究員らが実験で探った。

実験協力者に、止まっているエスカレーター、動いているエスカレーター、
エスカレーターに似せた木の階段を上ってもらい、
違和感や体の動きを調べた。
木の階段では、違和感があまり感じられず、
見た目が違和感に関係していることが示された。

停止エスカレーターに踏み出すまでの体の動きは、
木の階段に踏み出すまでと同じ。
動いているエスカレーターに乗る前のように、
歩く速度が上がったり体が前傾する傾向はなく、
被験者の脳も体も「停止している」と正しく認識。

停止エスカレーターに乗り込むと、急激に体が前傾。
これは、動いているエスカレーターに乗ったときの動きと同じ。
木の階段では、こうした前傾は見られなかった。
違和感は、上半身の前傾と関係。

五味さんは、「エスカレーターが停止していることは
よくわかっているのに、足を踏み出すと、自動的に
『動いているエスカレーター用のプログラム』が作動してしまうのでは。
自分で、その理由が分からないことが違和感につながっている」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/07/07/20090707ddm016040089000c.html

昼間眠くてぼーっとする。解消する方法は?

(2009年7月10日 毎日新聞社)

就寝が毎晩午前1時過ぎと遅い、男性会社員(37)は、
昼過ぎになると、耐え難い眠気に襲われるのが悩み。
数年前に短時間の仮眠を取り入れて以来、頭はスッキリ。
午後の仕事も、支障なく続けられるように。

健康被害の少ない睡眠時間は、成人で6時間半から8時間。
国民全体の平均睡眠時間は7時間22分(05年)、
約半世紀で50分近く減った。

インターネット使用者の平日の睡眠時間は、
10代後半から40代までの約2人に1人が6時間未満、
10人に1人が5時間未満。

睡眠不足が健康被害を招く、とする研究事例は多い。
米研究チームが、健康な成人を対象に眠気や作業効率から
アルコール摂取量と睡眠不足との関係を調べ、
必要な睡眠より2時間不足する人(体重60キロ)は、
缶酎ハイ(180ミリリットル)4~5本程度を飲みながら
仕事をしていることに相当。

国立保健医療科学院の研究者らの調査では、
睡眠不足の労働者は、病欠の危険性が1・89倍、
人間関係の悪化2・44倍、
事故で加害者や被害者になる確率は1・48倍。
前夜に十分な睡眠を取っても、午後になると強い眠気に襲われた
経験を持つ人は多い。

国立精神・神経センターの白川修一郎・客員研究員(睡眠学)は
昼食の消化に伴う脳貧血が原因ではなく、
人間の生理現象によって、就寝時間の15時間後に眠気が強くなる。

眠気の解消と、脳のリフレッシュに効果があるのが、仮眠。
白川客員研究員は、「15~20分程度の短い時間の仮眠がいい
短時間仮眠は、脳の機能回復に役立つ。
15分の仮眠で、判断処理にかかる時間が15%近く、
注意力が2倍近く改善。
20分の仮眠で、眠気や疲労感が顕著に低下。

高齢者にとっても短時間の仮眠は有効で、
1時間未満の昼寝をする習慣のある高齢者は、
アルツハイマー病発症の危険率が5分の1に低下。

仮眠は有効だが、睡眠時間の長さには注意。
人間は寝始めると、深い眠りの「ノンレム睡眠」が現れる。
眠りの深さにより、1-4段階に分けられ、
3、4段階まで進むと容易には起きられない。
仕事をする能力が低下し、眠気が覚めず、居眠り事故を誘発する危険。
1、2段階で目覚めることが必要。
眠り始めてから15-20分に相当。

午後に2時間など長い仮眠を取ると、
夜間の睡眠で深い睡眠量が減少し、かえって有害。

短時間仮眠を導入する企業も現れた。
JR東海は07年、新幹線の運転士や車掌に搭乗約1時間前、
約20分間の仮眠が取れるように仮眠室を設けた。
運転の安全性維持が狙い。
導入後は、「頭がすっきりして集中力が高まった」、
「体が楽になり、事故防止の意識が高まった」などと好評。
同社東京広報室は、「効果をみて、他にも広げるか検討したい」

白川客員研究員は、「眠気を強く感じるのは、思考する上で重要な
脳の前頭葉の機能が低下している証拠。
短時間仮眠で、仮眠後2-3時間は脳がすっきりし、
判断ミスが減り、社会にも貢献する。
企業は、仮眠を積極的に導入すべき」と提言。
………………………………………………………………………
◆短時間仮眠の上手な取り方

▽首や肩が凝らないよう、頭の位置が固定できる安楽椅子などを使用。
背もたれの角度は60度以上。
横になっての仮眠は目覚めにくく、睡眠から覚せいへの切り替えが困難。

▽足を伸ばすと楽に眠れ、足のむくみも解消。

▽直射日光が当たる場所、騒音の多い場所、暑過ぎる・寒過ぎる場所、
臭気の強い場所、振動の多い場所は避ける。

▽仮眠前に目覚ましをセットする。

▽目覚めをよくするため、お茶やコーヒーなどカフェイン入りの飲料を
仮眠前に飲む。仮眠後は簡単な体操や、冷たい水で顔を洗う、
ミントなど覚せい系の香りをかぐのがよい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/10/104014/

運動などの継続が課題 筋トレマシンは普及せず

(2009年7月10日 共同通信社)

要介護度の悪化や心身の衰えを防ぐ介護予防が、
2006年度に介護保険に導入されてから3年。
筋力向上トレーニングなどの成果は出たのか?
参加した後、いかに継続できるかも課題。
現状などを調べた。

高知市の西原喜美子さん(71)は、「いきいき百歳体操」に
通い始めてから、ひざの痛みが軽くなり、
できなかった正座ができるようになった。

体操は約1時間。
主にいすに座って、手や足に重りをつけて体を動かす。
以前、医師に勧められた体操教室は続かなかったが、
「痛みを気にせず、座って気楽にできるのが自分に合った。
絶対に続けていきたい」

いきいき百歳体操は、高知市が米国の事例などを参考に、
高齢者が無理なくできる体操として独自に考案。
要介護認定の有無に関係なく、参加できる。
市内の231カ所で実施、約5千人が参加、全国にも広がりつつある。

担当者は、「行政の押し付けでなく、自主的にやってもらうのが
続けるポイント。体が動きやすくなったと好評で、
住民の交流にもつながっている」

介護予防は、将来の要介護高齢者と介護給付費を減らす狙いで、
要介護度の軽い「要支援1」、「要支援2」を対象に導入。
デイサービスでの体操や筋トレのほか、口腔ケア、低栄養にならない
ための栄養指導などが中心。

介護予防効果について、厚生労働省が要支援1の認定を受けている
1000人を対象に1年間、追跡調査、
要介護度が悪化した人が16%減り、
1人当たりの費用は約10万7千円削減。
65歳以上の1人当たり給付費も、06年度には減少。

介護予防の取り組みが、必ずしも成功したとはいえない。
「給付費減少は予防効果ではなく、制度変更で軽度者が
介護サービスを使えなくなったため」

介護予防として注目された筋トレだったが、
マシンの費用が高い上、やめると元に戻る人が少なくなかった。
「今も筋トレマシンに力を入れている所は、ほとんどないのではないか」
筋トレの指導者養成が進まないため、
効果が不明なレクリエーション的な介護予防のほか、
閉じこもりで本当に介護予防が必要な人にどう参加してもらうか、という課題。

淑徳大の結城康博准教授は、「予防は保険の枠外でやるべきもので、
保険給付に入れるべきではなかった。
(次期予定の)2012年度の制度改正で、軽度者を保険から外すことと
介護予防がからめて議論される懸念がある」

適度な運動やかむ力を保ち、バランスの取れた食事をすることは、
高齢者の生活に多くのメリット。

将来、介護予防が介護保険から外れたとしても、
国の政策に踊らされず、自治体が無料で開いている教室などを
うまく利用し、長く続けられる自分なりの介護予防法を見つけるのが賢明。

※介護予防

2006年4月の介護保険制度改正で、新たな認定区分に加わった
要介護度の軽い「要支援1」、「要支援2」の人を対象にしたサービス。

要介護度が進まないよう、身体の機能を向上させたり、維持したり
するために、施設で体操や筋力トレーニングなどをする
運動器の機能向上、食事などの栄養改善指導、歯を清潔に保ったり、
飲み込む力をつける口腔ケアなど。

将来的に要介護状態になる恐れがある「特定高齢者」や、
一般の高齢者も市町村の地域支援事業の介護予防対象者で、
介護保険からも事業費が拠出。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/10/104029/

高校再生(7)母校愛 改革の原動力

(読売 7月2日)

卒業生の思いが、学校改革を支えている。

千葉市動物公園。
ラジオDJのKOUSAKUさん(41)が、集まった高校生27人に
「よろしくね」とビブス(袖なしシャツ)を配る。
「はい」と、元気よく答える高校生たち。
来場者に向かって、「ペットボトルのキャップを集めています」と
声を張り上げた。

高校生は、千葉県立浦安高校の生徒たち。
同校で開かれた講演会で、卒業生であるKOUSAKUさんから、
環境保護活動の話を聞き、月1回の浦安市内のゴミ拾いなどに
参加するようになった。

KOUSAKUさんは、「『浦高』に活気が出れば、地元も元気になる。
地元密着の学校だから」

浦安高は1973年、旧浦安町で初めての県立高校として誕生。
漁師町にできた待望の高校に、地元の中学生の多くが進学。
市役所で卒業生100人以上が働くなど、地元に根ざした学校。

生徒数の急増に伴って、意欲に欠ける生徒も増え、
十数年後には問題行動が目立つ。
地元の信頼は失われ、「浦安高の出身」とさえ言いづらい状況に。

改革に火を付けたのは、卒業生だった。
94年、野球部OB会が中心となり、部活動の充実や学科の新設などを
求めて、署名活動を実施。
予算の制約で実現しなかったため、今度は
「学校の中から改革してほしい」と、同高3期生の野球部OBで、
隣接する中学校で教えていた大塚知久教諭(49)を送り込むよう
関係者に働きかけた。

中高の人事交流により、OB会の希望通り浦安高で教えることになった
大塚教諭は、赴任した2003年4月、母校の変わりように驚いた。
「授業中に菓子を食べたり、ロッカーの上で寝たり。
とにかく好き勝手していた」

空き時間ごとに受け持ちの教室に行き、
ごみ拾いや落書きを消すことから始めた。
03年11月、千葉県教育委員会の「自己啓発指導重点校」に指定、
温度差があった教員たちが改革に向けて動き出した。

翌04年1月、全教員が校門前に立ち、髪を染めた生徒を自宅に帰す
指導を初めて実施。
2日間で80人以上が指導を受けた。
これを機に、生徒の意識が変わり、卒業式には、
茶髪や金髪は見られなくなった。

「『浦高生』としての誇りと自信を持ってもらおう」と、07年度から、
社会で活躍する卒業生を招いた講演会や講座を始めた。
昨年度、18人が青春時代や仕事、後輩への期待などを語り、
KOUSAKUさんもその一環で招かれた。

今では、部活動や行事も活発になった。
昨年度の退学率は3・1%と、02年度の11・1%から大きく改善。
進路決定率は83・6%。

「卒業生の支えが、浦安高の強み」と菅井悟校長(59)。
母校への愛が、地域に愛される学校の原動力に。

◆自己啓発指導重点校

中退者や長期欠席者の多い高校向けに始めた
千葉県教委の支援制度。
きめ細かい学習、生活指導を行うため、県内の中学、高校から
意欲ある教員を公募でき、基準より多い教員の割り当てを受けられる。
03年度に浦安、姉崎高が指定、
09年度は両校含め、4校に広がっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090702-OYT8T00227.htm

上半期ビジネス書 売れ筋から読み解く 自分磨き不況克服

(日経 7月7日)

深刻な不況の中で始まった2009年も、すでに半分。
今年上半期のビジネス書のベストセラーランキングを、
人事・組織分野の有力コンサルタント3人に解説、
ビジネスパーソンが何に関心を持っているのかを探った。

ランキングに数多く顔を出しているのが、
「読書は1冊のノートにまとめなさい」
(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)に代表される自己啓発本

マーサージャパンの長谷川直紀さんは、
「雇用情勢の悪化が背景にある」と分析。

会社にとって欠かせない人材になるため、スキルを高めたい。
こうした思いが、ビジネスパーソンに自己啓発本を手に取らせている。
長谷川さんは、「職を失うことへの危機感が強まっている」

自己啓発本を、2つに分けている。
1つが、スキルアップの方法論を解説した「ハウツー本」
2、3時間で読み終えられる手軽さが特徴。
代表格として、「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」
(大和書房)と「8595原式スピード思考力」(幻冬舎)の2冊。

もう1つが、科学的な知見を基盤にしたグループ。
特に目立つのが、「『脳にいいこと』だけをやりなさい!」(三笠書房)、
「脳を活かす生活術」(PHP研究所)など、
脳科学の研究成果を理解したうえで、自己啓発を目指す本。

長谷川さんは、「内容が深く、自分のあり方を考え直すきっかけに」
こうした本のランキング入りは、不況を機にビジネスパーソンが
内省的になっていることを表している。

雇用情勢の悪化は、企業経営を主題にしたビジネス書の売れ筋に影響。
リンクアンドモチベーションの麻野耕司さんは、
「従業員を大事にする企業や経営者を取り上げる本が売れている」

その象徴が、「日本でいちばん大切にしたい会社」(あさ出版)、
「俺は、中小企業のおやじ」(日本経済新聞出版社)の2冊。
麻野さんは、「このような経営者のもとで働きたいという、
一種のあこがれを投影したものでは」

景気がよい時期には、大企業や有名企業を取り上げた本に
人気が集まる傾向。
ビジネス書のランキングの変化に目を凝らせば、
景気の先行きが見通せる。

会社にしがみつかず、自立しようとする意識も感じられる。
マーサーの長谷川さんは、「史上最強の人生戦略マニュアル」
(きこ書房)を例に、「自分のキャリアを戦略的につくり上げていこう、
というビジネスパーソンが一定数いる」
不況を、前向きに乗り切ろうという覚悟ができつつある、と分析。

◆若手育てる意識、気迫に

「ビジネスパーソンから、部下を育てる余裕が消えつつあるのでは」
レジェンダ・コーポレーションの藤波達雄さん

今年春、新卒で入社した人たちは、「ゆとり教育世代」と呼ばれ、
コミュニケーション能力や忍耐力、基礎学力に難がある、
といわれることが多い。
「本来なら、彼らを一人前に育てるための本が
ランキングに入っていてもおかしくない」はずだが、
実際には、自己啓発を目的とした本が大半。

成果主義型の人事制度の副作用で、
部下や同僚を手助けする機運が薄れている。
雇用環境悪化が追い打ちをかけ、
「新人を含めた若手社員を、育成する意識が希薄になっている」

◆出版科学研究所の綾部二美代さんの話

昨年秋のリーマン・ショックを境に、ビジネス書の売れ筋は変わった。
外国為替証拠金取引(FX)などの投資を勧める本が上位を占めたが、
今年の上半期は完全に鳴りを潜めた。

代わって、グローバル資本主義や金融危機、米国経済の問題点を
分かりやすく解説しようとする本。
多くの要素が複雑に絡み合っているテーマなので、
多くのビジネスパーソンが真相を知りたい。

自己啓発本も、多くランクインしたことも特徴の1つ。
出版社のマーケティング担当者が売れる本を模索した結果、
学生や主婦なども手に取りやすいノンフィクション的な読み物が、
ビジネス書に分類。
ビジネス書の定義が、拡大しているのかもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090707.html

2009年7月15日水曜日

アロマで認知症改善予防 鳥大医学部と東京の会社、ハーブの精油開発

(2009年7月4日 毎日新聞社)

鳥取大医学部内に設立された「ハイパーブレイン社」
(資本金500万円)は、認知症の改善・予防につながる
ハーブ類の精油(エッセンシャルオイル)を開発。
8月にも全国発売。

脳神経疾患・認知症が専門の浦上克哉教授の研究成果を、
認知症のアロマセラピーに応用。

米子市内で、会社設立記念式典があり、
能勢隆之学長ら関係者約150人が出席。事業概要が発表。

浦上教授は、認知機能障害がアロマセラピーで
治療可能であることを実証した認知症研究の第一人者。

嗅覚に着目した点が発見に。
ラベンダーやローズマリー、レモンオイル、オレンジオイルを
患者にかがせたところ、症状が改善。
芳香が脳に働きかけた結果。

精油は、浦上教授の研究成果に基づき開発。
名前は、社名と同じ「ハイパーブレイン」
東京のアロマ関連商品販売会社と提携して製造、販売。
価格は、1本5000円前後で調整中。
医薬品でないため、薬事法の規制はない。

同大が支援する起業は8例目で、「一番もうかりそう」(能勢学長)。
噴霧器具も、岩美町の会社と提携して開発、
市販されている器具も使用できる。

原料となるラベンダーなどのハーブを、
日野郡内で無農薬栽培できるよう、同社は県などと協議中。
地域農業の活性化にも役立てる。

元銀行マンの加藤豊実社長は、「浦上教授の研究による
裏付けがあるのが強み。問い合わせが次々と来ている」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/6/103631/

頑張らないのが安定の秘訣  直立姿勢の仕組み解明

(2009年7月9日 共同通信社)

人が二本足で安定した直立姿勢を保っていられるのは、
体をわずかに揺らしながら、適切なタイミングで重心を
調整しているためとする研究結果を、
大阪大などのチームがまとめ、米科学誌プロスワンに発表。

ロボットのような固い姿勢ではなく、
頑張り過ぎずに関節を柔軟にして、
脳が控えめな運動指令を時々出しているらしい。

阪大の野村泰伸教授は、「健康な人の姿勢制御の仕組みが分かれば、
運動障害のリハビリや神経疾患の診断に応用できそうだ」

チームは、立っている人の重心移動を精密に分析し、
常に体が微妙に揺れているのを確認。
重心がある程度ずれた時点で、足首のアキレスけんにつながる
「ひ腹筋」に、脳が運動指令を送り、平衡を保っている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/9/103931/

16年夏季五輪:東京招致、計画見直し不可避か 「条件付き賛成」 都議選で民主躍進

(毎日 7月14日)

東京都議選で、16年夏季五輪の東京招致に、
「条件付き賛成」の民主党が第1党に躍進したことで、
東京の開催計画も変更を迫られる可能性が出てきた。

開・閉開式、陸上競技、男子サッカーの決勝を行う
新設のメーンスタジアムは、収容規模10万人、建設費931億円の計画、
民主党は過大投資だとして見直しを求めてきた。

開催地が決まる10月2日IOC総会に向けて、
東京都の関係者は、「現時点ではこの線でやっていくしかない」、
計画の見直しを求める声が強まるのは避けられない状況。

次期衆院選の結果次第では、立候補ファイルに盛り込まれた
政府の「財政保証」を巡って、議論が再燃する可能性も。

当初、政府の財政保証を明確にした形で、
国会の招致決議を実現しようとしたが、
民主党は決議に応じなかった。

最終的に、「日本国政府及び東京都知事が、別添の通り、保証している」
と記載されたが、財政保証の具体的な中身は不明確なまま。

◇竹田恒和・JOC会長

民主党も、基本的には(東京五輪)招致に賛成。
(JOCとしては)これまでと変わりなく招致活動をしたい。
民主党の意見も聞きながら、全党一致でというのが理想。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/07/14/20090714ddm035050110000c.html

検索道を極める 基本・応用・奥の手

(日経 7月1日)

◆基本 ―― 情報絞込み 「-」記号で除外単語指定

インターネットで情報を探す際、欠かせないのが検索サイト。
企業や官公庁が公表している資料や統計を、
手早く手に入れるためのスキルを紹介。

基本を確認しておきたい。
「日本の出生率の推移を示すグラフを探したい」
こう思ったとき、みなさんはどうするか?

「出生率」、「日本」、「グラフ」といった、求める情報に関係する
言葉を、検索語ボックスに入力するのがオーソドックスなやり方。
その際、言葉と言葉の間にスペース(空欄)を入れることを忘れない。

検索サイトが、出生率・日本・グラフの3つのキーワードを含む
情報を、ネットから集めてくれる。
その中から、求めている内容に最も近い情報を選べばよい。
キーワードを増やせば、情報は絞り込まれ、
探している情報にたどり着く時間は短くなる。

検索語ボックスに、どのような言葉を追加すればよいか分からない時。
最近の検索サイトは、キーワードを提案してくれる機能がある。

「出生率」だけで検索すると、結果表示の最上段に
「出生率 2009」、「出生率 グラフ」などの表示。
これらは、出生率と一緒に検索語ボックスに入力された言葉の
組み合わせ例。
これらの表示をクリックするだけで、情報の絞り込み検索ができる。

「iPhone」、「アイフォーン」、「アイフォン」の、
どれを検索語にしても、米アップルの携帯電話端末の情報を得られる。
検索サイトが、「カタカナ語の元になっているアルファベットのつづりや、
表記違いの同じ言葉を関連付ける辞書を充実」
(ヤフー検索事業部企画部の服部英一氏)

情報を効率的に絞り込む上で、知っておきたいのがマイナス記号を
使った「除外検索」。
出生率の検索語に続いて、「−世界」と単語の前方に
マイナス記号を付けると、「世界」という言葉を含んだ情報を
検索候補から取り除ける。

◆応用 ―― ドメイン指定  「go.jp」「PDF」追加

複数のキーワードを使って、情報を絞り込めるようになったら、
「ドメイン指定検索」をマスターしてみよう。

ドメインを訳すと、「領域」、「所有地」になるので、
「インターネット上の住所」と定義。
情報を探してくる範囲(ネット上の住所)をあらかじめ限定するのが
ドメイン検索。

検索語ボックスに、「出生率」と入れた後、
「site:nikkei.co.jp」と書き込むと、日本経済新聞社「NIKKEI NET」
の中から出生率に関する情報が表示。
この方法は、信頼性のあるサイトに検索対象を絞るのに有効。
公的機関であれば「go.jp」、教育機関であれば「ac.jp」。

経済指標を探したいとき、例えば「GDP site:go.jp」と検索すれば、
内閣府や総務省統計局の国内総生産(GDP)に関する情報に
すぐにたどり着ける。

文書の種類を指定すれば、企業の新製品のリリースや
調査会社のリポートを、ネットから探しやすくなる。
キーワードの後、米アドビシステムズ社が開発した電子文書の
フォーマット(体裁や型)を示す「PDF」と入れると、
そのキーワードを含むPDF形式の文書の一覧を表示。
「デジタルカメラ PDF」と入れると、デジカメの顧客満足度ランキングや
新製品の資料などが出てくるといった具合。

分からない言葉に出くわしたときに役立つ検索語が、「とは」。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)という言葉の意味が
分からなかったとする。
検索ボックスに、「クレジット・デフォルト・スワップ とは」と入れれば、
CDSを解説しているサイトを探し出せる。

これに、ドメイン指定検索を組み合わせて、
信頼の置けるサイトだけに検索対象を絞り込めば、急場をしのげる。

◆奥の手 ―― 聞く  質問サイトに投稿

情報に関する言葉を組み合わせても、
欲しい情報が探せない場合はどうするか?
ウェブ製作会社、ブルー・バンブー(東京・渋谷)の社長で、
検索技術に関する著書もある笠井登志男さんは、
「欲しい情報があるページに、どのような言葉が並んでいるのか、
想像するとよい」

紙幣に肖像画が採用された人物を調べたい場合、
「過去 紙幣 人物」と指定してもうまくいかない場合が多い。
「過去」と「人物」は、多くのページで使われている頻出単語。
この場合、「お札 歴史 肖像」と指定すると、
日本の紙幣や肖像を扱ったページがより多く表示。

それでも必要な情報が見つからない場合は?
「他人の知恵を借りるのが最も効率的」(笠井氏)。
「ヤフー!知恵袋」や「教えて!goo」などの質問投稿サイトでは、
検索サイトでは探せなかった情報の在りかを教えてもらえる例。
奥の手として活用しても良いだろう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090630.html

高校再生(6)「集団づくり」規範徹底

(読売 7月1日)

合宿や体育の授業で、集団づくりを徹底する。

広島県立安芸高校の体育の授業には、
30項目以上のルールがある。
「シャツは出さない」、「指示・伝達を聞く」――。

細かいルールは、集団としての行動やマナーの順守などを
教えるためでもある。
昔は、体操着に暴走族のような名前を書いたり、
点呼を取る教師の後ろでけんかをしたりする生徒がいたが、
今は違う。

校庭で行われた1年生の体育の授業。
着崩しもなく、整然と並ぶ生徒らに対し、三木仁司教諭(45)が、
「普段の生活でも役立つ。いい習慣を身につけよう」

同校は、1990年代初めまで、生徒数が1000人を超えていた。
不本意に入学した生徒たちに、十分な指導ができなかったことなど、
100人近くが中退する年もあり、入学者も減少。
98年、普通科から総合学科に変わったが、
2004年度には中退率が約16%(78人)、
生徒数は300人台にまで落ち込んだ。

05年度、「集団づくり」をテーマに改革を始めた。
「集団での規範意識を高め、まとまりを作りたかった」と、
須藤薫校長(54)。

授業の規律強化から始め、2年前からは、1年生を対象に、
瀬戸内海にある山口県の周防大島で合宿を始めた。
メーンは、全員が力を合わせないと進まない大型ボートで、
約15キロの海を進む訓練。
危険と隣り合わせの海で、集団行動の大切さを実感。

「下を向いたり、落ち着かなかった生徒が、
合宿から帰る時には目線がまっすぐ向くようになる」
合宿先の「大島青年の家」職員の斉藤祐子さん(26)は、
生徒が変化していくのを感じる。

問題を起こす生徒には、それぞれ異なる事情がある。
「家庭の悩みから、問題を起こす生徒も。
生徒の内面に迫らないと、根本的な解決にならない」
改革開始当時、同校に生徒指導主事として勤め、
現在は県教育委員会職員の斉藤賢二さん(44)。

入学直後から問題行動を繰り返し、
「学校をやめる」と言う女子生徒がいた。
希望の学校でない上、指導は厳しく、勉強がわからないから。
斉藤さんは、生徒に何度も話を聞いた。

1年の終わり頃、斉藤さん自身が学生時代に苦労した話をした。
すると、女子生徒は「私やっぱり頑張る」。
その後は授業態度がまじめになり、今春卒業した。

「厳しすぎる」、「もっと学校は楽しくていい」
保護者からはそんな意見も出る。
生徒指導主事の紙谷豊治教諭(55)は、
「学校には伸び悩んでいる子も来るが、
我慢ができれば伸びる要素を持っている」

学校が落ち着くに従い、合唱祭などの行事で生徒に運営を任せる
機会が増えてきた。
「厳しい分、生徒の自治を増やす形で返していきたい」。
須藤校長はそう考えている。

◆総合学科

普通科や専門学科と並ぶ新たな学科として、1994年度から導入。
国語や数学などの普通科目から工業や商業などの専門科目まで、
自分の進路や興味に応じて幅広く学べる。
全国で334校(08年4月1日現在)がある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090701-OYT8T00257.htm

2009年7月14日火曜日

スポーツ21世紀:新しい波/308 Back Softball/1

(毎日 7月4日)

スイス・ローザンヌで6月に開かれた
国際オリンピック委員会(IOC)理事会。
国際ソフトボール連盟(ISF)のドン・ポーター会長らは、
16年五輪での実施競技復帰へ向けたプレゼンテーションで、
普及面の説明に時間を割いた。

北京五輪で、延べ18万人の観客を動員し、
日本が米国を破った決勝のNHKの瞬間最高視聴率が47・7%
(関東地区、ビデオリサーチ調べ)に達したことや、
男子や車いす利用者にも競技者が広がっている点に加え、
アフリカや中東で、子どもや女性にチームスポーツの機会を
提供していることも強調。

五輪競技から外された一因は、国際的な普及に疑問符が付いたから。
ISF加盟国・地域は、96年アトランタ五輪での導入が決まった
91年の66から現在127に倍増したが、
国際大会では大差の試合も多く、上位国の顔ぶれは一定。
欧州では、野球とソフトボールで一つの協会を構成する国も多い。
ISFは、IOC総会がある10月までに、加盟数を150、
競技人口を1250万人に拡大したい意向だが、簡単ではない。

一方で明るい兆しも。
元日本代表監督の宇津木妙子さん(56)は、
日本協会の普及委員長として、アフリカ西海岸のガンビアを訪れた。
ガンビアは新しく協会を設立し、本格的な強化に乗り出している。
スポーツ指導者や教師、婦人警官らに実技指導した宇津木さんは、
そこで胸が熱くなる言葉を聞いた。
「北京での日本の戦いを見て、『このスポーツだ』と決めた。
国技として取り組みたい」
同国ソフトボール協会会長で、IOC委員である
ビートライス・アレンさんはそう話した。

IOCは、8月の理事会を経て、10月の総会で
16年五輪の実施競技を決める。
残された時間は少ないが、宇津木さんは
「ガンビアでは、歴史的スタートに立ち会えた。
各国が一枚岩となって、地道にやっていくしかない」と希望をつないでいる。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

虫歯予防、水道水に適量のフッ化物が効果 埼玉・歯科医らで構成する推進協発足

(2009年7月4日 毎日新聞社)

虫歯予防に効果があるとされる、
水道水フロリデーション(フッ化物濃度調整)を実現するため、
吉川市は、市内の歯科医や自治会長、市議らで構成する
フロリデーション推進協議会(会員数12人)を発足。

健康への影響を心配する市民もおり、今後PRや啓発活動を展開。
市担当者によると、フロリデーションへの取り組みは県内初で、
全国的にも珍しい。

市は、日大松戸歯学部や日本口腔衛生学会と
学術・技術支援協定を締結。
協議会顧問の小林清吾日大教授(社会口腔保健学)によると、
フッ素は、安全性の高いミネラル元素で、
通常の水道水にも微量に含まれる。

世界保健機関(WHO)や国際歯科連盟も、
水道水に適量のフッ化物(フッ素の化合物)を混ぜる
フロリデーションを推奨。

本格的な導入は、米国が1945年から始め、
現在、フロリデーション水の給水人口は61カ国約4億人。
日本では、「体に蓄積されないか心配」といった市民の声もあり、
実際に導入している自治体はまだない。

吉川市は06年、健康福祉部と政策室がフッ化物応用研究会を結成。
虫歯予防の観点から、水道水フロリデーションを
市民の歯科保健を向上させる有効な手段と位置付け、
積極的に取り組む方針を打ち出した。

市保健センターと市内の歯科医院4カ所に、
フッ素を添加した水を入れた給水器を常設。
多くの市民や患者に試飲体験。
体験者へのアンケートでは、フロリデーションの早期実現を
希望する意見が多い。

協議会は今後、夏祭りなどのイベントで市民に添加水を試飲、
大学教授らが出前講座を実施して効果や安全性を説明。
推進協議会会長の戸張英男・吉川歯科医師会長は、
「フロリデーション水が虫歯予防に効果があることは、
学術的に結論が出ている。
キャンペーンを通じ、導入実現に向け市民の理解を求めていきたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/6/103602/

アルツハイマーをES細胞で再現

(2009年7月4日 読売新聞)

さまざまな細胞に変化する能力をもつ、人の胚性幹細胞(ES細胞)
から、家族性アルツハイマー病と筋萎縮性側索硬化症(ALS)の
病状を再現した細胞を作ることに、
京都大学やNPO法人幹細胞創薬研究所などが世界で初めて成功。

病気のメカニズム解明や薬の開発を大きく進める成果で、
中辻憲夫・同大教授が発表。

研究チームは、アルツハイマー病患者の遺伝子をES細胞に組み込み、
大脳の神経細胞に変化させた。
数週間後にできた細胞には、患者の脳に蓄積されるのと同じ
異常たんぱく質の断片が、健常者の脳に比べ、2倍の割合で生成。

ALS患者の遺伝子を用いて運動神経の細胞に変化させたところ、
自発的に死を迎える細胞が2割弱できた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/6/103731/

GEは廉価品でどうもうけるのか

(日経 2009-07-02)

ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルト会長に、
会う機会があった。
さすがのGEも、世界的な金融危機で、
一時資金繰りがヒヤリとしたことなどを率直に語ってくれたが、
GEの未来戦略で、最も興味を引かれたのは、研究開発の方向転換。

GEの製造業部門は、これまで高付加価値をつける「プレミアム戦略」が
基軸だったが、この方針を修正し、廉価品にも力を入れる。
イメルト会長が、一時直接指揮したことがある
ヘルスケア(医療機器)事業では、「ヘルシーマジネーション」という
新たなイニシアチブを打ち出した。

眼目は、医療サービスへのアクセスの拡大。
先進国では、病院で高度な治療を受けられるのが当たり前だが、
途上国では医療施設が不十分で、簡単に病院にも行けない。
「そんな地域でも使えるような、簡便で廉価な医療機器を開発すれば、
社会の福利が高まる」

そこで開発されたのが、例えば持ち運びできる心電図計測装置。
GEが、中国に持つ研究開発部門が開発し、評判がいいので、
米国など先進国にも展開する。

「これまで高付加価値路線を追求してきた会社が、
急に廉価品にかじを切るのは難しいのでは?
エンジニアは、“安もの”の開発を嫌がらないか」と聞くと、
「だから、違う人にやってもらう」という答え。

中国の研究開発拠点の事例は、その先駆。
これまで高級車を開発していた人に、
「20万円カーをつくれ」といってもできない。
新たな開発拠点を別につくり、そこで開発させる。そんな発想。

このやり方は理にかなったもの。
イノベーション理論の古典になった感のある
クレイトン・クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』では、
従来の延長線上にない「破壊的(ディスラプティブ)イノベーション」を
どうやって生み出すか、解決策の一つとして「独立組織」を提案。

既存の研究所や事業部は、従来の技術を否定するような
研究開発には、陰に陽に抵抗がある。
それらとは全く隔離された別組織に、新技術の開発を委ねる。
汎用機全盛時代のIBMのパソコン開発などが、成功事例として引用。

「廉価品対応」というGEの課題は、日本のIT産業や製造業全般にも
共通する課題。
パナソニックの大坪文雄社長は、5月31日付の日本経済新聞で、
「今回の経済危機が収まった後、購買力が高まるのは新興国。
この地域で求められるボリュームゾーンから逃げたのでは、
当社の成長はない」

だが、その地域に適した廉価品をだれが開発するのか?
日本の電機産業は1985年の円高以降、四半世紀にわたって
「高付加価値路線」を唱え続けた。
この路線が成功したとは言いがたいが、「高付加価値化」という方向性が
技術者の発想にすり込まれた。

発想を逆転し、機能をそぎ落とした廉価品を開発するには、
単なる経営者の掛け声だけではなく、新たな組織が必要。
イメルト会長の話からは、そんなメッセージが伝わってきた。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt090701.html

高校再生(5)地域住民が「応援団」に

(読売 6月30日)

地域から疎んじられていた学校に、地域住民による“応援団”ができた。

愛知県立内海高校の放課後、学校前の通りを花で彩るための
草刈りが行われた。
生徒と一緒に汗を流していた「内海高校サポーターの会」会長の
内田敏明さん(62)が、生徒らに問いかけた。
「君らの捨てたごみがあると思うか」

かごいっぱいに集まったごみを見て、生徒らがうなずく。
「『捨てるのはやめよう』と、みんなに広めていかなきゃな」と諭した。

サポーターの会は昨年9月に発足、通学路の草刈りのほか、
部活動の試合の応援にも駆け付ける。
約60人の会員は、内田さんの知人やOBら地域の大人たち。
「3年前、会社を辞めて地元に戻ると、茶髪だった生徒が様変わり。
学校を変える先生はすごいなと思った。今度は我々が応援する番」

生徒会長の栃沢直人君(17)は、
「試合に応援に来てくれてうれしいし、感謝している」

知多半島の南部にある学校が荒れたきっかけは、
1989年、県立高校の入試が複合選抜方式に変わったこと。
地元の生徒が、半田市などの都市部を目指し、
都市部からは課題のある生徒が集まってきた。

「空き教室で消火器を噴射したり、水道を流しっぱなしにして
下の階まで水浸しにされたり。非常ベルも毎日のように鳴らされた」と、
西山けい子教頭(57)は振り返る。
90年代前半、一部生徒の指導に追われ、
学校全体がマヒするような状態。

学校が改革を始めたのは、2001年。
県教委が、知多半島の学校を対象に統廃合の検討を始め、
学校が危機感を抱いたため。

授業の規律を守ることから始めた。
「授業中に飲食をしない」、「ゲーム等で遊ばない」など、
9項目のルールを決めて各教室に張り出し、
同じ授業時間内で3回注意されると、補習を受けさせた。
頭髪や服装の指導を強めると、保護者から反対の恐れがあったが、
授業の規律徹底には、誰も異論がなかった。

身だしなみの指導にも取り組み、茶髪やピアス、化粧を禁止、
制服を一新した。
最初は、反発する保護者も多かったが、次第に理解してくれるように。

学年間のトラブルを懸念して、中断していた体育大会は05年に復活。
学校祭でも、生徒会を前面に出すなどして、
生徒に自信を持たせていった。
「おとなしくさせるだけでは教育ではない。生徒はやらせればできる」と
北川寿比己校長(58)。

統廃合は、2年前に見送りが決まった。
「必要な学校だとアピールできれば」と内田さん。
地域の過疎化が進む中、定員割れが続き、
中退率も約12%(08年度)と高いが、
地域に見られているという意識を生徒が持てば、
学校は良くなると信じている。

◆複合選抜方式

愛知県教育委員会が1989年から始めた入試方式。
県立高校の一般入試は1校しか受験できなかったが、
受験機会の複数化のため、2校まで受験できる。
推薦入試や2次募集を含めると、計4回受験できる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090630-OYT8T00228.htm

2009年7月13日月曜日

理系白書’09:挑戦のとき/13 海洋研究開発機構研究員・阿部なつ江さん

(毎日 7月7日)

1月から約2カ月間、海洋地球研究船「みらい」で、
日本から南米チリまで太平洋を斜めに横断。

海底の地形や地球の内部構造を観測する、
研究者約40人を束ねる首席研究者。
洋上観測は悪天候などで、予定変更が日常茶飯事だが、
各研究者の要望を聞いて、
全体計画への影響を最小限にとどめるのが仕事。

初の大役を終え、「研究者や研究支援員、乗組員の協力で、
当初計画の90%以上は達成できた」と満足そう。

阿部さん自身は、地球の体積の8割以上を占める
マントルの主成分である「かんらん岩」を研究。
マントルの最上部は、十数枚の大きな岩板(プレート)となって
地球を覆っており、マントルの対流によってプレートはゆっくり動く。
プレートが別のプレートの下に潜り込んだりすることで、
地殻変動や地震が起こる。

かんらん岩を調べれば、化学組成や含有鉱物の違いで、
プレート誕生時の温度や圧力など地下深くの様子が分かる。
海底は、マントルを覆う地殻の厚さが数キロと薄いため、
かんらん岩が露出している場所がいくつかある。
深海は、地形を知るにも一苦労で、まだほとんど調べられていない。

「深海底は、月より遠い気がする。
でも、未開拓なだけに調査のたびに新発見がある」と阿部さん。
三陸沖で新しいタイプの小さな海底火山を見つけ、06年に発表。
このタイプの火山では、プレートの岩石そのものが採取できる
可能性があり、注目。

6歳上の兄が天文ファン。
影響されて天文学者を志したが、大学受験で数学や物理が難しく、
「自分は天文学には向いていない」と進路を変更。
「地球を研究しよう」と地学科に入学。
指導教官の勧めで手にした、緑色のかんらん岩の美しさに魅せられた。

大学院では、いろいろな産地のかんらん岩を詳細に分析し、
日本で採れたものは、大陸や海底で採れたものと
組成が違うことを突き止めた。
「論文をまとめた後、2日ほど興奮して寝られなかった。
これで研究者としてやっていけそうと自信がついた」

高校時代から英語が大の苦手。
大学では単位を落とし、留年。
「研究を続けるには不可欠」と一念発起。
好きなディズニーアニメの音声だけをカセットテープに録音し、
テープが伸びるまで聞いた。
中学の教科書の音読や書写も繰り返し、
今では国際プロジェクトでも不便は感じない。

人類史上初めて、海底地殻をマントルまで掘り抜く
地球深部探査船「ちきゅう」のプロジェクトにも携わる。
「好きなことを突き詰めれば、いつか道が開ける。
あと10年はかかるだろうが、マントルの岩石を手にしたい」
==============
◇あべ・なつえ

神奈川県横須賀市出身。97年、金沢大大学院博士課程修了。
東京工業大技官、豪マッコーリー大研究員などを経て、03年から現職。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/07/07/20090707ddm016040094000c.html

厨房廃水の油効率よく分解する技術開発

(サイエンスポータル 2009年7月7日)

厨房からの廃水中に含まれる油分を、効率よく分解する技術を、
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と
名古屋工業大学が開発、実証実験に成功。

業務用厨房からの廃水には、大量の油分が含まれ、
一部は下水に流される前に、グリーストラップと呼ばれる阻集器で回収、
産業廃棄物として処理。

これまで、微生物製剤を使って現場で処理する試みも成されているが、
製剤自体、雑多な微生物を含むことから効率が悪く、
グリーストラップには常に大量の廃水が流入するため、
これら微生物がすぐに流出してしまう問題。

今回の方法は、油を分解する微生物の中から見つけた2種類の微生物、
リパーゼ分泌細菌、グリセロール分解酵母を用いる。
これらの微生物は、弱酸性であるグリーストラップの環境下で
共生関係にあり、ともに高い油脂分解能力を持つ。

グリーストラップに、これら2種類の微生物を投入、
さらに微生物が流出しないような工夫を組み込んだ実証実験の結果、
油分が効率よく分解されることを確認。

日本全体の廃水処理には、電力消費量の1%を占めるほど
多くのエネルギーが使われ、処理後に出る汚泥などの廃棄物は、
全産業廃棄物の2割を占める。
新しく開発された技術は、食品工場のような大型油処理施設や
清掃用の油脂分解洗剤などへの利用拡大が期待。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0907/0907071.html

正しい知識知り、正しくシラミ予防 枕など共用しない/月1回は頭髪点検

(2009年7月5日 毎日新聞社)

保育所や幼稚園、小学校でプールが始まった。
子どもの頭髪に寄生するシラミが気になる保護者も多いが、
感染ルートなどについては誤解も。
予防のため、正しい知識を身につける必要がある。

シラミのうち、小学生以下の子どもの頭髪に寄生して血を吸うのは、
主にアタマジラミ。

かゆみが出るが、戦中戦後にはやったコロモジラミと異なり、
病気を運ぶことはまずない。
保育所などの集団生活で発生するケースが多いが、
「プールの水を経由して寄生する」というのは誤解。

長年、アタマジラミの相談を受けてきた池袋保健所の矢口昇さん
(環境衛生担当)は、「プールの水を経由して感染することはない。
ロッカーやかごの中で、脱いだ衣類を通じて感染する可能性。
衣類は、個別の袋に入れるなどして管理する必要がある」

帽子やブラシを貸し借りしたり、枕や布団、シーツなどを
共用した場合も感染の恐れがある。
子ども同士が固まってマンガを読んだり、ゲームをするような場面も要注意。
清潔にしていても、感染する可能性は十分ある。

寄生したアタマジラミは、どうやって見つけるのだろうか?
「鈴の木こどもクリニック」(品川区)の鈴木博院長は、
「アタマジラミは、うなじや側頭部(耳の上周辺)に寄生しやすい。
そこを中心にチェックしてください」

アタマジラミの卵は、髪の毛にしっかり張り付いている。
フケのようなものがついていたら、髪を払って落とすが、
それでも取れずに残っているようなら、卵の疑いがある。
卵は約0・5ミリなので見つけにくいが、目を凝らせば
「涙のしずく」のような形をして、髪にへばりついている。

シラミの親も、卵の周辺にいる可能性が高い。
親は2-3ミリなので、比較的見つけやすい。
感染した子どもに兄弟や姉妹がいる場合は、
全員の頭髪をチェックする必要。

駆除の手っ取り早い方法は、殺虫剤のスミスリンを含んだ
市販のシャンプーを使用、目の細かいシラミ対策用のクシですきとる。
矢口さんは、「家にあるベビーオイルやリンスを使う方法も。
普通のクシでも、斜め向きにすきとれば効果がある」

普段からのケアも大切。
小学生程度なら、スキンシップを兼ねて月に1、2回、
頭髪をチェックする機会を作るのもいい方法。

東京都環境衛生課のまとめによると、アタマジラミに関する相談件数は、
07年度に過去最高の1935件、08年度はほぼ半減。
同年、啓発用のパンフレットを配布したことが奏功した。

祖父母世代と異なり、親世代にシラミの知識が乏しいことも、
近年の増加傾向の一因。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/6/103649/

「どんな細胞も万能化」 山中教授が英誌に考察

(2009年7月2日 共同通信社)

さまざまな組織に成長する万能細胞として期待される
iPS細胞に変化する能力は、限られた一部の体細胞にだけ
備わっているのではなく、あらゆる体細胞に備わっているとの考察を、
京都大の山中伸弥教授が、2日付の英科学誌ネイチャーに発表。

iPS細胞を再生医療に応用するには、
均質でがん化の心配がない作製手法を開発し、
標準的な方法として確立することが課題。

山中教授は、「さまざまな体細胞で多くの手法を試し、
医療への応用に向けた最良の組み合わせを見つける必要」

山中教授は、各国のチームによる研究報告を分析。
その結果、あらかじめ決まった体細胞だけがiPS細胞になるのではなく、
ほとんどすべての体細胞が万能細胞になる能力を備えているとの結論。

遺伝子操作の手法や化学的な環境などによって、
iPS細胞の品質や個性に違いが生じると指摘。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/2/103350/

10分で完売、ワイン愛好家の狂騒

(日経 2009-06-27)

高級ワインの市場で、「異例」の事態が。
毎年、春から夏にかけて実施される仏ボルドーの先物予約販売
「プリムール」。

トップクラスのシャトーの2008年産のワインが、
1本2万数千円という価格にもかかわらず、あっという間に売り切れ。
「こんなことは、数年前にプリムールの担当になって初めて」
ワイン輸入販売大手のエノテカ・田村透氏は目を細める。

インターネットの販売サイトに専用コーナーを設け、
5月20日に株主と会員限定で申し込みの受付けを始めたところ、
「シャトー・ラフィット・ロートシルト」、「シャトー・ラトゥール」の
2大銘柄がわずか10分で完売。

当初の価格は、1本26500円(税抜き、12本購入の場合)。
5月21日に約8%値上げして追加販売、その日の内に売り切れ。
現在、ラフィットとラトゥールに並び称されるトップ銘柄
「シャトー・マルゴー」も「在庫なし」。

他の販売会社でも、売れ行きは同様に好調。
ヴィノラム(東京・中央)が運営するサイトでは、
ラフィット、ラトゥールともに第1期、第2期の売り出しが早々に完売、
第3期の現在は第1期のほぼ2倍の価格に値上。

「プリムール」とは、ボルドーで広く行われているワインの販売手法、
樽で熟成中のワインを、市場に出回る約2年前に予約販売。
ワインの販売会社が商品を仕入れるのも、同じタイミングの場合が多く、
その一部が一般消費者に売り出される。

人気沸騰の背景に、昨年までの異常なワインの値上がり
04年産まで、1本1万円台で推移していたトップシャトーの
プリムール初出価格は、05年産から7万円前後に急騰。
05年のぶどうの出来が並外れて良かったことも影響したが、
06年産も7万円台、07年産も5万円台と高止まり。

中国、ロシアなどの新興国の富豪たちが、高級ワインを買いあさり、
世界の高級ワインの需給が逼迫。
値付けをする醸造元が強気になり、円安・ユーロ高も
円ベースの価格高騰に拍車をかけた格好。

昨秋のリーマンショック以降、高級ワインの売れ行きが世界中で鈍化。
円高・ユーロ安も進み、この春のプリムールは
前年の半値以下で売り出された。

08年産のトップワインには、影響力の大きいワイン評論家の
ロバート・パーカー氏が90点台後半から100点満点の高い評点
付けたことも人気を後押し。

高額で予約販売された06年産と07年産のワインはどうなるか?
06年産は、この春から市場に出回り始めた。
06年産のラフィットは、ネット販売で最低5万円前後で販売。

パーカー氏の評点は、予約価格の安い08年産の方が上だが、
ワインショップの多くはプリムール時の価格近辺で商品を仕入れ、
08年産の初出価格並みに値下げするのは困難。
「06」と「08」は別物と訴えてみたところで、
消費者は受け入れてくれない。

ボルドーのトップシャトーは、プリムールの過去の購入実績によって、
販売会社への商品の割り当ての数を決める。
どんなに高い価格を提示されても、仕入れ続けなければ、
必要な量を確保できなくなる。
販売会社が、トップシャトーのワインを販売し続けるには、
醸造元の条件をのむ以外にない。

08年産の価格がここまで抑えられたのは、
最初に手ごろな価格で売り出して人気を盛り上げ、
徐々に06年産や07年産並みに価格を引き上げていく、
といった醸造元の戦略。

安くなったといっても、2000年前後の水準と比べ、ほぼ2倍。
そこに飛びついてしまうワイン愛好家の金銭感覚は、
今でも浮世離れしたままなのかもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo090625.html

2009年7月12日日曜日

19年度までに大学誘致 奥州市・方針案提示

(岩手日報 7月3日)

奥州市は、第3回大学誘致検討懇話会を開き、
策定に取り組む大学誘致基本方針の素案を示した。

若年層の定着と産業力の向上などを目的に、
2019年度までの誘致達成を掲げる。

同市は、大学誘致を総合計画の
「知識集積型都市・高度教育都市構築プロジェクト」として位置付け。

目的は、若年層の定着による持続可能な都市づくり、
大学との連携による産業力強化など。
地域の活力再生、学生らの居住による経済効果、
地域イメージの向上などを期待。

現状課題として若年層の流出、県平均を下回る大学進学率など。
19年度までに開設し、15~29歳人口を5年で660人、
10年で1000人超増加。大学進学率の40%到達も目標。

誘致大学を理工系、社会科学系、農学系の学系ごとに
シミュレーションし、学生規模、面積、用地所得費などを算定。
経済効果として、開設後10年で約50億円が期待。

誘致への環境づくりとして、産学公民連携の事業
「奥州シチズンカレッジ」構想も掲げた。

ビジネスや伝統文化など、各分野の講座を開設し、
市民が学ぶ「地域大学」として事業を展開。

大学教授や経営専門家らで構成する懇話会は、
10月に提言を取りまとめ、市の検討組織が提言を基に
基本方針を策定。

相原正明市長は、「ハードルは高いが、可能性はある。
大学にも積極的に声をかけていきたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090703_5

「髪の元」細胞で神経修復

(2009年7月2日 読売新聞)

人間の髪の元になる細胞を使って、
切断されたマウスの足の神経を修復することに、
北里大など日米の研究チームが成功。

脊髄損傷や事故で切断された手足の再生治療に応用が期待、
米専門誌に発表。

同大の天羽康之講師(皮膚科学)らは、体毛の周囲にあり、
毛のほか神経や筋肉、皮膚の細胞に変化する能力を持つ
「毛包幹細胞」に着目。

この細胞を、髪のそばから取って増やした後、
マウスの末梢神経の切断部分に移植した。

その結果、8週間後、切れた神経はつながり、
足の付け根から電気刺激を与えると、足が動いた。
自然治癒にまかせたマウスに、電気を流しても足は動かなかった。

毛包幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)や新型万能細胞(iPS細胞)に
比べ、変化できる器官は限られ増殖能力も低いが、
人間に移植した際のがん化の危険性は少ない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/7/2/103382/

“Drブレイン”利根川教授の憂い

(日経 2009-06-26)

国内随一の脳研究拠点、理化学研究所脳科学総合研究センターの
3代目センター長に、ノーベル生理学・医学賞受賞者の
利根川進・MIT教授が就いた。

「脳科学は始まったばかり」と、この分野の重要性を強調する一方、
日本の研究環境はまだ不十分だとの認識。
46年間、海外で研究を続けた目から見た日本の“甘い部分”は、
早急に改善しなければいけない。

もう「第〇次ブーム」と数えられないほど、脳への関心は高まっている。
米国が、1990年から「脳の10年」と、大規模な研究支援を始め、
先進各国が競い合うように様々なプロジェクトを推進。
脳の内部を、外部から観察する先端計測機器が相次いで登場し、
ゲノム解読を受けて、神経細胞と情報伝達物質との関係や機能を、
遺伝子のレベルで調べる研究も盛ん。

1)カネボウ化粧品
(茂木健一郎氏との共同プロジェクト。ATRプロモーションズが協力)
素顔と化粧後の顔を見たときの、女性の脳の活動状態を観察。
化粧は、自分を客観的に見つめ直す行為、
化粧によって社会的な顔を演出し、他人とのコミュニケーションを
活発にしている役割をもつとの認識を深めた。
より魅力的な化粧品の開発やブランドの育成などにつなげる。

2)東海光学NTTデータ経営研究所
遠近両用眼鏡レンズを装着したときの快適さを、脳波計測から評価。
不快感を減らしたレンズの設計に反映。

3)竹中工務店
(東京大学の加藤伸介教授ら大学と共同研究)
1人ひとりが最適と感じる空間を、脳波の計測や脳活動の測定などの
データをもとに解明するのが目標。
(1)空間デザインの影響
(2)光や熱、音などの影響
(3)人や環境をセンシングし環境を制御する技術
(4)創造性など人の活動を評価する技術--の4分野で研究を推進。

産業界で、脳研究を新製品開発やサービス改善などに
生かそうという動きも。
まだ初期的な段階だが、今後、大きなうねりになる可能性を感じる。
得られた成果を、分かりやすく社会に発信する機運も醸成され、
シンポジウムや講演会が開かれ、あまたの関連書籍が書店に。
テレビドラマの主題にも取り上げられるほど。

それでもやはり、脳は不思議の塊。
私たちの体の動きを制御し、出来事を記憶し、知性や感情を生み出す。
その仕組みや原理は、謎に包まれている。
利根川センター長は、「私たちはまだ脳全体の数%しか分かっていない」
広大な未知の領域が残っている状況を解説。

理研センター長への利根川教授の起用は、初代センター長を務め、
小脳の運動モデルの研究で著名な伊藤正男・東京大学名誉教授や、
野依良治・理研理事長らの悲願。
まだまだ研究を続けたい利根川教授は、MITの研究室を残したまま、
時間を半分ずつ分けて、理研でセンター運営にかかわる予定。

6月、理研で就任会見した利根川氏は、
「脳を研究することは、人間を研究すること」と、
脳研究への思いを熱く語った。
現在はまだ、自然科学の対象分野との印象が強いが、
将来は、文学や芸術、経済や社会制度などとの関係も深まるとし、
「人文・社会科学の関連分野を抱合する学問になる」と展望。

なのに、日本の研究体制は非常に弱いのではないかと、注文。
政治家の一部に、「脳研究はもういい」という声に対し、
「奇異に感じる」と、ライフサイエンス分野に占める
脳研究費の比率が下がっている状況を憂慮。

MITは、15年前に脳科学科を新設、学際的な研究推進体制を整え、
日本では病気の原因や治療を目指した医学分野の研究が中心、
偏りがあると分析。

現時点で、米国の脳研究予算は日本の20倍に達し、
このままでは日米格差は広がる一方。
日本が進めるべき脳研究の戦略は、利根川氏を含めて練ってもらい、
研究の推進体制に対する課題は、以前から日本の弱点。

学際領域が弱い、大学院での研究者育成が遅れている、
大学と他の研究機関との連携が乏しい、などなど。
これらの改革に、誘因が働かない問題を解決しないと、
脳研究だけでなく、新しい科学技術で日本は存在感を発揮できなくなる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090625.html

ウォルト・ディズニー・ジャパンのキャンドランド社長 「BS、大人の女性を想定」

(日経 7月2日)

BSデジタル放送のチャンネル追加など、
外資メディアはどう対応するのか?
ウォルト・ディズニー・ジャパンのポール・キャンドランド社長に聞いた。

——新BSに免許申請したが、チャンネル獲得には至らなかった。

「申請段階で、多数の視聴者にインタビュー。
具体的な番組表を示したところ、前向きな反応が多く、大きな手応え。
それだけに失望は否めない。
外資に、参入のチャンスが与えられたことは有り難い」

——どのようなチャンネルの構想だったのか?

主な視聴者を、大人の女性であるF2(35歳—49歳の女性)層に設定。
ドラマや映画で編成する無料チャンネル。
ターゲットを明確にして、差別化する戦略」

「BSデジタルは、極めて高い可能性を秘めた放送基盤。
すでに複数の民放系無料チャンネルもあるなかで、
多様な視聴者層を狙った総合編成では、成り立たせるのが難しい」

——総務省は審査で、日本での実績や事業計画の実現可能性を重視。

「『東京ディズニーランド』が25年以上も成功するなど、
ディズニーはファミリー・エンターテインメント・カンパニーとして、
日本で約50年の実績を重ねてきた。
CS『ディズニー・チャンネル』も、開局して6年近く。
保有するCSの2チャンネルの合計視聴世帯は900万に」

「ディズニーのテレビ部門は、08年度の連結売上高で43%、
利益の56%を稼ぎ出した。
テレビ事業を世界で手がけてきた経験から、
日本でも十分成功できる自信を持っている」

——広告収入を前提とする無料放送での申請が不利に働いた。

無料放送でも、F2層に的を絞れば、ディズニーのほかの事業との
シナジー効果が期待。
チャンネル単独でも、十分な広告収入を上げる自信。
海外では、無料放送と有料放送、混合型も運営し、
その経験を日本でも生かせるはず」

「広告収入の実績も皆無ではない。
テレビ東京系などで、30分のアニメーションの放送枠を
週3枠持っているが、10億円弱のCM収入。
約2兆円の広告市場に占めるBSのシェアは2%。
民放系のBS全局が黒字化。
BSという放送基盤は、それだけ効率が高い。
地上波のシェアを奪えれば、成長余地が大きくなる」

——総務省は来年5月、BSなどで新たなチャンネルを追加募集する。
再挑戦するか?

「詳しい話を聞いてない。現段階では何も言えない」

——日本でも無料放送が不可欠で、基盤はBSデジタルが有力。

BSはディズニーにとって、日本のメディア事業で欠けた
パズルのピース。
日本での顧客の柱は2つ。子供と大人の女性。
女児や男児向けのCSの有料チャンネルを2つ運営。
BSがあれば、F2層に効果的にコンテンツを届けることができる。
携帯電話事業『ディズニー・モバイル』は、契約者の70%以上が
大人の女性。テーマパークの利用者も、70%以上が大人の女性」

「BSに参入できれば、ディズニーの映画事業にも利点が大きい。
日本の地上波テレビ局は、映画制作を強化し、
自らのチャンネルで盛んに宣伝。
(無料放送は)ディズニーの事業全体にとって重要な意味を持つ」

——「ディズニー・モバイル」の実績には満足しているか?

「すべて予定通り。
大量の契約者を想定して参入したわけではない。
ディズニーの体験をファンに、日常的に届けるニッチ(すき間)事業
として始めた。持続的に成長できればいいと考えている」

——テーマパークや関連ホテルも含め、放送を除けば
日本では必要な事業基盤がおおむねそろった。今後の課題は?

ローカルコンテンツ(情報の内容)をさらに増やすこと。
人気アニメ『スティッチ!』では、沖縄県の島を舞台にした
日本版を制作、放送を始めた。
東映アニメーションなどと組み、短編アニメも制作。
ディズニーの海外のネットワークでも放送が始まるなど、
日本製アニメの輸出も始まっている」

◆ポール・キャンドランド

米ワシントン生まれ。ブリガム・ヤング大卒、
ペンシルべニア州立大大学院で経営学修士(MBA)取得。
日本ペプシコーラ代表などを経て2002年、ディズニー日本法人の
テレビ事業部門マネージングディレクター就任。
「ディズニー・チャンネル」などを立ち上げ、07年から現職。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090701.html

サハラ砂漠を太陽発電基地に

(日経 2009-07-03)

日本の技術力を使えば、石油や石炭、ウランなどの燃料を使う
発電所を、世界からすべて撤去することができそう。

地球上の砂漠の約4%の面積に、太陽電池を設置し、
太陽電池同士と人の居住地を、送電時に電気が減らない
超電導ケーブルで結ぶ。
日が照る場所は季節や時間帯で変わるが、
送電網の中は常に電気で満たされる。
燃料を補給する必要はなくなる。

日本学術会議で、「サハラソーラーブリーダー(SSB)計画
と題する公開シンポジウムが開かれた。
会場には、科学者や技術者、企業関係者など約200人が集まった。

SSB計画は、アフリカのサハラ砂漠を皮切りに、
日本と現地の産業と科学、政府関係者が協力して、
砂漠に太陽電池工場を建設し、工場周辺に太陽電池を設置する計画。

砂漠の砂には、シリコンの原料となる酸化シリコンが豊富に含まれる。
砂漠の工場で高純度のシリコンを精製し、太陽電池まで作ってしまう。

サハラに続いて、他の地域の砂漠にも同様の設備を造る。
仕上げは超電導ケーブルでの接続。
2050年までに、CO2排出量を今の半分にすることを目指す。

荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、実はこの計画は、
イタリアのラクイラで開く主要国首脳会議(サミット)に先立ち、
学術会議の金沢一郎会長と唐木英明副会長が、
麻生太郎首相と野田聖子・内閣府特命大臣に伝えた。

唐木副会長は、「個人用資料として持参したSSB計画書を
首相に手渡したところ、野田大臣まで『私にもいただけませんか』と、
2人ともたいへん興味を持ってくれた」

ローマでのアカデミー会合。
「エネルギーと気候変動」という内容に関し、
学術会議の連携会員でSSB計画の立案者である
物質・材料研究機構の鯉沼秀臣特別顧問が内容を説明。
「参加者から賛同を得た」
唐木副会長が総理に手渡したのは、この資料。

アカデミー会合で決まった参加国の共同声明文に、
SSB計画について触れられていない。
声明文に、CO2削減の具体的技術も書いてない。
一体どうやってCO2を減らすのか、触れられていないのは
どう考えてもおかしな話。

シンポジウム後の懇親会では、「日本の隠し玉として、サミット本番で、
麻生首相の口からSSB計画の内容を紹介してほしい」と期待。

SSB計画のベースは、三洋電機の桑野幸徳元社長が
1989年に提案した「GENESIS計画」。
内容はほぼ同じだが、スタート地点にサハラ砂漠を選んだことで
「SSB計画」と名づけられた。

東京大学理学系研究科は、サハラ砂漠でなく、南米チリのアタカマ砂漠で
同様の計画「SolarTAOプロジェクト」を今年スタート。
学術会議のシンポジウムでは、SolarTAO計画の責任者、
東大の吉井譲教授が講演。
「SolarTAOでベースをつくって、SSBにつないではどうか」と提案。

SSB計画とSolarTAOプロジェクトでは、
太陽電池と超電導の関係者が相当に重なっている。
「両方同時に進めようとすれば、両方とも中途半端になるかも」、
世界の砂漠を早く獲得し、日本の高い技術力を示すには、
もたもたしてはいられない。

専門の科学者、技術者を総動員してでも同時にスタートすべき。
アフリカと南米にまず拠点を作り、オセロゲームのように
世界中の砂漠に、日本製の太陽電池と超電導ケーブルを
張りめぐらせてほしい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090702.html