(読売 7月1日)
合宿や体育の授業で、集団づくりを徹底する。
広島県立安芸高校の体育の授業には、
30項目以上のルールがある。
「シャツは出さない」、「指示・伝達を聞く」――。
細かいルールは、集団としての行動やマナーの順守などを
教えるためでもある。
昔は、体操着に暴走族のような名前を書いたり、
点呼を取る教師の後ろでけんかをしたりする生徒がいたが、
今は違う。
校庭で行われた1年生の体育の授業。
着崩しもなく、整然と並ぶ生徒らに対し、三木仁司教諭(45)が、
「普段の生活でも役立つ。いい習慣を身につけよう」
同校は、1990年代初めまで、生徒数が1000人を超えていた。
不本意に入学した生徒たちに、十分な指導ができなかったことなど、
100人近くが中退する年もあり、入学者も減少。
98年、普通科から総合学科に変わったが、
2004年度には中退率が約16%(78人)、
生徒数は300人台にまで落ち込んだ。
05年度、「集団づくり」をテーマに改革を始めた。
「集団での規範意識を高め、まとまりを作りたかった」と、
須藤薫校長(54)。
授業の規律強化から始め、2年前からは、1年生を対象に、
瀬戸内海にある山口県の周防大島で合宿を始めた。
メーンは、全員が力を合わせないと進まない大型ボートで、
約15キロの海を進む訓練。
危険と隣り合わせの海で、集団行動の大切さを実感。
「下を向いたり、落ち着かなかった生徒が、
合宿から帰る時には目線がまっすぐ向くようになる」
合宿先の「大島青年の家」職員の斉藤祐子さん(26)は、
生徒が変化していくのを感じる。
問題を起こす生徒には、それぞれ異なる事情がある。
「家庭の悩みから、問題を起こす生徒も。
生徒の内面に迫らないと、根本的な解決にならない」
改革開始当時、同校に生徒指導主事として勤め、
現在は県教育委員会職員の斉藤賢二さん(44)。
入学直後から問題行動を繰り返し、
「学校をやめる」と言う女子生徒がいた。
希望の学校でない上、指導は厳しく、勉強がわからないから。
斉藤さんは、生徒に何度も話を聞いた。
1年の終わり頃、斉藤さん自身が学生時代に苦労した話をした。
すると、女子生徒は「私やっぱり頑張る」。
その後は授業態度がまじめになり、今春卒業した。
「厳しすぎる」、「もっと学校は楽しくていい」
保護者からはそんな意見も出る。
生徒指導主事の紙谷豊治教諭(55)は、
「学校には伸び悩んでいる子も来るが、
我慢ができれば伸びる要素を持っている」
学校が落ち着くに従い、合唱祭などの行事で生徒に運営を任せる
機会が増えてきた。
「厳しい分、生徒の自治を増やす形で返していきたい」。
須藤校長はそう考えている。
◆総合学科
普通科や専門学科と並ぶ新たな学科として、1994年度から導入。
国語や数学などの普通科目から工業や商業などの専門科目まで、
自分の進路や興味に応じて幅広く学べる。
全国で334校(08年4月1日現在)がある。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090701-OYT8T00257.htm
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