(読売 7月4日)
東京都の高校改革で生まれた学校は、
「分かる授業」で意欲につなげる。
校内の小さな畑で、1年生約30人が、2人の市民講師の指導を
受けながら、スコップでジャガイモを掘り出していた。
東京都立蒲田高校で行われた農業の体験学習。
地域住民と交流して様々な体験を積むため、1年生だけにある授業。
1年生の数学の授業で、クラスの生徒は習熟度で2つに分かれ、
「30分授業」を受けていた。
「多くの生徒が、中学の時は低い学力で自信がない。
授業がわからないと、生活の荒れにつながる。
最初のステップは低くしている」と宮崎三喜男教諭(31)。
数学では、分数の計算から始める。
ペースはゆっくりで、通常の学校が1年で教える内容を2年かける。
こうした授業は、同校が2007年度にエンカレッジスクールに
なったことで始まった。
エンカレ校は、学び直しができる学校。
安心して学べるよう、生活指導は厳しい。
自由な校風が特徴だったが、以前は行き過ぎた自由も見られた。
授業中でも、廊下で車座になってトランプをしたり、
教室でドライヤーで髪を整えたり、ラーメンを食べたり――。
移行当初はそんな状況で、06年度の中退率は約15%(91人)。
入学前、茶髪・金髪禁止を説明。
指導を守らない生徒には、担任だけでなく、学年主任や副校長など、
段階的に指導する体制を取った。
移行前に入学した在校生には、「自由だからこの高校を選んだのに」
という不満もあり、在校生には頭髪や化粧の自由を認めた。
今春、3学年ともエンカレ校生になった。
生徒が落ち着いて、授業を受けることが当たり前の光景となり、
中退率も昨年度は5・5%(28人)に下がった。
移行当初から見てきた教務主任の笠原聡教諭(50)は、
「やはり授業が分からないことに、意欲はわかない」
同校に入学してくる生徒は、授業への拒否反応が強い。
学び直せるため、勉強ができなくても認めてくれるし、
周りには同じ事情の生徒がいる。
教師も、できるだけその場で質問に答える。
「『先生が待っていてくれる』と分かると、生徒も授業に参加してくれる」
他のエンカレ校でも、中退率が軒並み下がるなど効果は表れているが、
「社会に出て、十分に通用する知識・技能になっているかどうか」
(笠原教諭)という不安。
入試では学力検査がなく、中間・期末テストもない。
競争のない学校生活と、競争のある実社会の間には、ズレもある。
来春、同校のエンカレ校1期生が卒業する。
学校が根気よく生徒と向き合うことが、
社会で生きる力につながるはず。
◆エンカレッジスクール
小中学校で、力を発揮できなかった生徒を対象にする高校、
2003年度に始まった。
生徒の意欲を見るため、入学試験に学力検査はない。
30分授業や体験学習、2人担任制などが主な特徴。
足立東、秋留台、練馬工業、蒲田の4校が指定。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090704-OYT8T00253.htm
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