2011年7月23日土曜日

コロンビア中部の貧困の村、見えぬ恐怖 アルツハイマー病遺伝子、6人に1人

(2011年7月14日 毎日新聞社)

南米コロンビアの中部アンティオキア州に、村民の6人に1人が認知症の
アルツハイマー病を引き起こす遺伝子を引き継ぐ村がある。

新薬開発に取り組む世界中の医学者や製薬会社が、「天然の実験場」と期待。
遺伝子を保有する村民の発症時期や病状を観察することで、
どんな薬をいつ使えば効果が出るか、分かる可能性がある。
「自分には間に合わなくとも、子どもたちが発病する前に、
新薬ができるかもしれない」
政府や地方自治体の公的援助が十分に行き届かない中、
住民はわらにもすがる思いで、治療薬の臨床試験に協力。

アンティオキアの州都メデジンから、車で北に約3時間行くと、
人口約1万2000人の農村アンゴストゥラ。
道中、馬に乗った農夫たちとすれ違う。
農家のほとんどが、遺伝する家族性アルツハイマー病の患者を抱える。
国内で遺伝子を引き継ぐ25家族約5000人のうち、
約1800人が村に暮らしている。

患者の一人、ハビエルさん(59)は、「あー」と声を出す。
2年前から、意味の通る会話はできない。
発症したのは、バスの集金係をしていた10年前。
運賃を受け取ったのを忘れて、乗客と言い争うようになり、職を失った。
母親は認知症だった。
兄弟姉妹15人のうち、3人が認知症の末、死亡、3人に症状が出ている。

アンティオキア州出身者は、スペイン語で「パイサ」と呼ばれ、
村の患者が持つ遺伝子は、「パイサ遺伝子」と名付けられた。
平均44~49歳で発症、通常のアルツハイマー病よりも進行が早い。
片親が遺伝子を持っていれば、子どもは50%の確率、
両親なら75%の確率で受け継ぐ。

「未来が描けるのは40歳まで。その先は、病気になるかもしれない」。
ハビエルさんの次男エマーソンさん(21)。

一家の年間収入は、エマーソンさんが看病の合間に畑で作る豆の売り上げ
55万ペソ(約2万5000円)だけ。
最低賃金1カ月分(53万5600ペソ)と大差ない。
6人暮らしの家には、毛布が2枚しかなく、下水道整備率26%の
アンゴストゥラ村の中でも困窮世帯。

患者を抱える家族が貧苦にあえぐ背景には、
社会保障システムの未発達もある。
公的医療保険制度はあるが、腐敗と非効率な運営が障害となって、
きちんと機能していない。
エマーソンさんは、「政府や村からの公的な援助は一切ない」

アンゴストゥラ出身で、現在はメデジンに暮らすカルロスさん(54)は、
7年前に認知症と診断。
祖父と父親は、認知症を患った後に他界、兄弟16人のうち
カルロスさんを含む4人が発症。
1年前には、歩いたり笑ったりできたカルロスさんだが、
今は話すこともできず、自宅のベッドに横たわる。

夫の世話をする妻ネリーさん(43)の母親も認知症となり、昨年亡くなった。
50歳の姉は3年前、認知症と診断。
48歳の姉はスープの作り方を忘れ、46歳の姉は子どもが金を盗んだと言い出した。
「同じ遺伝子を持っているかもしれないと思うと、恐怖にさいなまれる」

ネリーさんは看病に専念するため、自営していた食料品店を手放した。
看護師になった長女のナタリアさん(23)が、家計を支える。
「看病の苦労を、子どもにさせたくない。
『発病したら老人ホームに入れて』と言ってある」
医療知識のあるナタリアさんは、「子どもは産まない」
見えない発病の恐怖が、人々の心に巣くっている。

◇ゲリラから血液サンプル死守--来年秋から新薬開発本格化

アンゴストゥラ村では長年、家族性アルツハイマー病は

「ボベラ(痴呆)」と呼ばれていた。
「魔女の呪い」とされたり、「特別な木に触った」、「洞窟に入った」ことなどが
理由との迷信が流布。
遺伝性の病気との認識がないまま、近親者間の結婚・出産が繰り返され、
患者が増えた形。

パイサ遺伝子を発見したのは、アンティオキア大の
フランシスコ・ロペラ教授と看護師ルシア・マドリガルさん(55)。
マドリガルさんが、患者のいる家族や親族を戸別訪問して血液を集め、
ロペラ教授が患者の診察や血液の検査を続けた。
地道な調査が実り、95年に原因となる遺伝子の変異を突き止めた。

村や近隣一帯は、数年前まで左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)の
実効支配下にあった。
マドリガルさんは99年、採取した血液を持ち帰る途中、ゲリラに拉致され、
1週間、小屋に監禁。
「血液を冷やしておいて。さもないと、だめになってしまう」とゲリラに訴え、
貴重な血液サンプルを死守した。

マドリガルさんも、ロペラ教授も近隣の出身で、病気は人ごとではない。
「患者がいるというので訪ねると、小学校時代の友人のこともある」
ロペラ教授は、母親が認知症。
「認知症が、私を(研究者に)選んだ」と感じている。
「運命と諦めていた村人は、病気だと納得すると、献血に協力してくれた」

ロペラ教授は、米国の国立衛生研究所やバーナー・アルツハイマー研究所と
協力して、12年秋から治療薬の臨床試験を開始する予定。
治験には、パイサ遺伝子の保有者と非保有者それぞれ200人の参加。

アルツハイマー病で、薬の効きが悪い理由の一つは、
投与時期が遅すぎるためと推測。
パイサ遺伝子の場合、症状が出る数十年前から脳の状態に
変化が出るかどうか観察できる。

「いつから認知症の原因となるたんぱく質が脳に蓄積するのか、
いつ薬の投与を開始すれば最も効果的かを調べることができる」(ロペラ教授)。

パイサ遺伝子を持つ家族にとって、新薬開発や治療法の研究は「命綱」。
健康被害のリスクを伴う治験に尻込みせず、積極的に協力する。
ネリーさん一家も、全員が参加を望んでいる。
「一刻も早く治療法を確立してほしい。
夫のためには間に合わなくても、子どもたちの役に立てばいい」(ネリーさん)
との思いがあるからだ。
………………………………………………………………………………
◇アルツハイマー病

1901年、ドイツの精神科医アルツハイマー博士が発見した認知症。
脳内に、たんぱく質の一種である「アミロイドベータ」や「タウ」が
蓄積することで、引き起こされる。
パイサ遺伝子のように、遺伝子が発症を決定する症例は全体の数%、
多くの場合、リスクを高める遺伝子と環境の複合要因で発症。
患者数は、世界で約2400万人。
20年後には倍増すると予測。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/14/139376/

横断軸道路も早期整備 復興事業で国交省検討

(岩手日報 7月18日)

国土交通省は、10年後をめどに完成させる三陸沿岸の
高速道路に加え、東北横断自動車道釜石秋田線など、
沿岸と東北自動車道をつなぐ横断軸の道路も早期整備する方向。

政府の復興構想会議が、横断軸の重点的な事業化を提言したことを受け、
未事業化区間のルート確定などを急ぐ。
今後は、整備スケジュールの明確化、財源確保が課題。

大畠章宏国交相は、仙台市―八戸市の三陸縦貫自動車道など
3路線について、おおむね10年後をめどに完成させる意向を表明。
既にルート案を本県などに示し、8月末のルート確定を目指す。

県内の横断軸道路は、東北横断自動車道釜石秋田線(県内分79・3km)と
地域高規格道宮古盛岡横断道路(国道106号、100km)の2路線。
県は、三陸縦貫自動車道などと共に、
「復興道路」として早期完成を国に働き掛けてきた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110718_3

やる気の秘密(6)チーム研修 教師に自信

(読売 5月19日)

「分からない、と子どもが素直に言える学級づくり。
これは大事な課題ですね」

東京・荒川区立尾久第六小学校。
教師たちが科目ごとにチームに分かれ、手慣れた様子で議論。

この日は、年度最後の研究会。
30分ほどで次年度の目標をまとめると、
各チームの代表が模造紙を前に発表を始めた。

同小が、ワークショップ形式の校内研修会を始めたのは5年前。
教員が、50代と20代に偏った年齢構成で、教員同士の
コミュニケーション不足を懸念した長谷川秀紀校長(62)が、
南部昌敏・上越教育大教授(63)に協力を求めたのがきっかけ。
「良い授業は、先生自身が自信を持って授業ができることが第一」と、
南部教授が提案したのは、「チーム」による研修。

3、4人から7、8人のチームで、授業の計画づくりからチームで取り組む。
研究授業は、チームの代表として交代で行う。
教科を問わず、校長以下全員で同じ授業を見る。
この結果、反省点が個人の批判に終わらず、
一緒に課題に取り組む姿勢が共有できる。

鶴田裕子前副校長(53)は、「良い点に注目していくので、
最初は『ぬるい』と感じた」
ベテランも若手も、対等に活発な意見を交わす姿を見て、考えが変わった。
「年齢や経験差を超えた絆が生まれたことで、逆に問題点についても
深く議論できる関係ができた」

「受け入れられている」という安心感が意欲を生むのは、子どもも大人も同じ。
そのことに気付いた先生たちは、子どもたちの様子に、
これまで以上に目を配り、ほめ上手になった。
年10回以上学校に通うという南部教授は、「先生たちも含め、
学校全体で成長を支え合う雰囲気が生まれている」

職員室で、「ちょっと次の授業見に来て」と気軽に声を掛け合う。
この協力体制が生かされた良い例が、昨年4月、同区で全教室に
導入された電子黒板の活用。

ハイテク装置が得意でない先生ももちろんいたが、
「実物投影機」でお手本を書きながら、ノートの使い方を指導したり、
手元で実験を見せたり。
アイデアを共有し、都内で有数の先進校に急成長した。

「同僚に助けられた。今は電子黒板なしには授業ができないほど」と、
昨年度6年生担任の野沢一代教諭(43)。
職員室の風通しのよさが、活気を呼び込んでいる。

◆尾久第六小の校内教員研修

〈1〉教科部会で授業づくり(当初は低・中・高の学年部会で)
〈2〉部会の代表者が授業。授業を見た人全員が教師、
  子どもそれぞれに「良い点」、「改善点」について付せん紙に意見を書く
〈3〉授業の検討会は、意見を模造紙上で整理しながら議論する
  ワークショップ形式。結果を図にして発表、意見交換する。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110519-OYT8T00268.htm

2011年7月22日金曜日

再生エネルギー普及へ意欲 江田環境相が葛巻視察

(岩手日報 7月18日)

江田五月環境相は、葛巻町の再生可能エネルギー施設と
東日本大震災で被害を受けた宮古市を視察。

エネルギー自給率100%を超える葛巻町の取り組みを評価した上で、
「葛巻町でできることが、日本全体でできない理由がない」と、
再生可能エネルギーの導入促進に意欲。

江田氏は葛巻町で、間伐材で発電する木質バイオマスガス化施設や、
冷暖房を地中熱で賄うゼロエネルギー住宅、葛巻中に設置した
太陽光発電、風力発電施設などを視察。

案内した鈴木重男町長は、「山村には、再生可能エネルギーが豊富にある。
規制を緩和してもらえれば、どんどん増える」と訴えた。

江田氏は、「エネルギー自給率が、100%を超えているのはすごい。
(再生可能エネルギーを普及させるためにも)法案を通してもらわないと」と、
再生エネルギー特別措置法案の成立を急ぐ考えを示した。

宮古市では、田老地区でがれき撤去の状況を確認し、浄土ケ浜を視察。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110718_7

老老介護世帯の増加顕著 在宅は女性に負担重く

(2011年7月13日 共同通信社)

国民生活基礎調査では、要介護の高齢者を、同居する高齢の家族が
介護する「老老介護」世帯の増加が浮かび上がった。

75歳以上の要介護者がいる世帯のうち、75歳以上の家族が
主に介護している世帯は25・5%と、過去最高。

団塊世代が60歳代に到達した影響で、60歳代同士の老老介護世帯も
62・7%と過去最高に。
65歳以上同士は45・9%、厚生労働省は「次回調査時には、
団塊世代が65歳に達し、老老介護世帯の割合はさらに増加するだろう」

介護の負担が、女性に重くのしかかっている現状も浮き彫りに。
主に介護を担当する「介護者」を、要介護者の同居家族が務めている
ケースが64・1%、うち約7割を女性が占めた。
介護時間が、「ほとんど終日」という介護者も、72・8%が女性。

居宅介護サービスの利用状況を見ると、要介護者がいる65歳以上の
高齢者世帯の20・6%が、「利用しなかった」と回答。
訪問サービスや短期入所を利用しなかった理由では、半数以上の世帯が
「家族介護で何とかやっていける」と答え、「他人を家に入れたくない」、
「利用者負担が払えない」などの理由も。
在宅介護サービスの拡充を目指す、介護保険制度の定着の難しさも垣間見えた。

※国民生活基礎調査

厚生労働省が政策の基礎資料とするため、世帯ごとの平均所得や
人員構成など、国民生活の基礎的事項を調べる調査で、
1986年から毎年実施。
全国から無作為に対象を抽出し、調査員が各世帯を訪問して、
前年の状況を聞き取る。
2011年、保健や医療、福祉、年金などの分野を3年に1度調べる
大規模調査の公表年に当たっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/13/139263/

やる気の秘密(5)頭のなか 描いて整理

(読売 5月18日)

津軽半島北端に近い青森県中泊町立小泊小学校で、
2月上旬に行われた6年生の社会科の授業。

子どもたちが、模造紙を囲んでカラーペンを走らせ、
「マインドマップ」と呼ばれる樹形図を作っていた。
「いい感じで枝が伸びてるな」。
担当する教務主任の前多昌顕教諭(41)が声をかけた。

マインドマップとは、ものごとの関連づけや発想の広がりを、
色やイラストなどを使って視覚的に表現したもの。
21人の児童は、韓国、ブラジルなど、グループごとに選んだ国について
調べ上げた特徴で、マップを作成。
これを見ながら、各国の概要を140字の文章でまとめた。

独学でマインドマップを始めた前多教諭は、思考を練り上げる
「道具」としての可能性を感じ、2008年、前任校で授業に本格導入。
小泊小では、昨年度から6年の社会で使い始めた。

歴史のように、記憶する知識が多く、苦手な子が増える科目では
特に有効と感じた。
大切なのは、何を成し遂げるかだと考え、マップの描き方だけでなく、
文章で再構成する作業も取り入れた。

「思考を、すぐに言葉にするのが難しくても、
マップを使えば表現の幅が広がる。
授業に参加できない『お地蔵さん』がいなくなった」と前多教諭。
担任の中谷美穂教諭(38)も、「作文嫌いが確実に減り、構成力もついてきた」

道具は、使いこなせなければ意味がない。
マップが、子どもたちの血肉になるように気を配った。
まず、言葉をつなげて枝を広げる作業に慣れるため、
教科書から単語だけを抜き出す練習から開始。
慣れたら予習として、教科書の内容から簡単にマップを描く。

授業では、先生が大きな模造紙にマップを描きながら説明、
テストのまとめにも使う。
「平安時代」なら、中心に描いたキャラクターは十二ひとえ姿といった具合。
「内容が覚えやすい」、「落書きみたいで楽しい」と、
授業以外で使いこなす子も増えてきた。

マップの「効果」は、前多教諭自身も実感。
ネットを通じて、実践を紹介したところ反響を呼び、人脈も視野も広がった。
同僚にも活用の輪ができ、県内への普及会も発足。
「将来、教育の場で当たり前に使われるようになるのが夢」。
教師の発信力が、周囲を巻き込んだ力になりつつある。

◆マインドマップ

イギリスの教育者トニー・ブザン氏が考案した思考整理法。
日本では2006年頃、まず企業が注目。
07年発足の「ブザン教育協会」(東京)が教員向けに研修などをしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110518-OYT8T00244.htm

2011年7月21日木曜日

東北大に女性科学者特別賞 震災後も活動と評価

(2011年7月13日 共同通信社)

優れた成果を出した若手の女性科学者に贈る
「ロレアル・ユネスコ女性科学者日本奨励賞」の今年の受賞者に、
名古屋大の植田桐加さん(25)=有機化学=ら4人が選ばれ、
東北大の「サイエンス・エンジェル」事業が特別賞に選ばれた。

サイエンス・エンジェルは、理系の大学院生の女性が
小中高校に出張セミナーなどを行い、科学の面白さを伝える活動。
参加した大学院生は延べ約230人、震災後も活動を続けていることが評価。

代表して表彰状を受け取った小谷元子東北大教授は、
「受賞によって、復興への大きな力をもらったように感じている」

奨励賞には、物質科学分野に、植田さんとお茶の水女子大の竹原由佳さん
(26)=ソフトマター物理=の2人。
生命科学分野に、東大の水沼未雅さん(25)=神経薬理学=と、
広島大の森田真規子さん(26)=細胞生物学=の2人が選ばれた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/13/139268/

やる気の秘密(4)職員会議やめ授業研究

(読売 5月14日)

「教師の説明量が多かった」、
「子どもの学び合いが発表会になっていた」。

東京・東村山市の市立大岱小学校の校長室。
1時間前に行われた小林由佳教諭(27)の音楽の研究授業に対し、
次々と課題が指摘。

教師たちは、付箋に書いた課題点を読み上げ、書記担当の教師が
それらをグループ別に分類。
書記担当が、そのグループの主題をピンク色の短冊形の紙に
書いて模造紙に貼る。

続いて改善策。
「板書を効果的に生かしてはどうでしょう」、
「学び合いの時間を増やしては」。
今度は、青色の短冊が貼られていく。
小林教諭はすぐさま、黄色の短冊に書いておいた改善プランを
貼りながら発表。

「説明が多かったので、掲示物で代替します」、
「発表会にしないよう、学びを深めさせるための手だてを考えます」

時間にしてわずか30分。
普通の学校で見られる、良い点の評価などは一切ない。
小林教諭はその後、改善プランの論文をすぐ書き上げ、
模造紙は児童や保護者らも読めるように校内に掲示。

研究授業と、その後のこうしたワークショップ型研究会は年に約40回。
教師1人につき年2回以上。
教える側のこうした努力があって初めて、大岱小の
「児童が主役の授業」は成り立っている。

教師が、こうした研究や授業改善により多くの時間を割けるような工夫も。
その一つが、職員会議の廃止。
2004年度から段階的に縮減、全廃。
通常の学校では、教師数人で担当する校務を1人の責任制にするなど、
校務をスリム化。
「DCAPサイクル」と名付けた同小独自の仕組みも実行し、
教師はより一層、子どもに寄り添う時間を確保できる。
西留安雄・前校長(61)は、「改革には、学校の常識を見直さなければならない」

鳴門教育大学の村川雅弘教授(教育工学)は、
特に職員会議の廃止が独創的だと評価し、こう解説。
「何かを削らなければ、日々の改善も無理が生じて続かなくなる。
子どもから最も離れたものは、何かを考えての結果」

こうした取り組みは、ほかの学校でも可能か?
村川教授は、「授業、研究、経営のそれぞれの改善を連動させることが必要。
異動のある公立校では、市・県単位での努力が求められる」と指摘。

◆DCAPサイクル

運動会の場合、Do(実行)したら、その日のうちにCheck(検証)と
Action(改善)をし、翌年の運動会のPlan(計画)を作ってしまう。
翌年のPlanにかかる時間を大幅に減らす。
通常のPDCAサイクルだと、「Pの比重が大きく、時間がかかる割に、
CとAがつながりにくく、循環が回らないことがある」という反省から、
こうした取り組みが始まった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110514-OYT8T00164.htm

政府の「医療イノベーション」推進

(2011年7月12日 読売新聞)

「ドラッグ・ラグ」が問題になっているけれど、
解消に向けた取り組みは進んでいるのだろうか?

ドラッグ・ラグとは、日本では新薬の承認が欧米より遅く、
海外では一般的に用いられる薬でも、
国内の患者がなかなか使えない状態を指す。

2007年の世界売り上げ上位品目について、医薬品産業政策研究所が
調査会社IMSのデータを基に分析した報告では、
新薬が世界で初めて発売された時点から、日本で発売されるまでの
平均期間は4・7年。
世界で最初に発売される薬が、近年多い米国の1・2年などと比べ、
大幅に遅い。

日本では、薬の効果や安全性を調べる臨床試験や、
その結果を基にした公的な審査に時間がかかる。
製薬企業側も、審査が早い欧米で先に臨床試験に着手しがちに
なっていることなどが、遅れの原因として指摘。
その結果、経済的な面でも、医薬品や医療機器の分野は大幅な輸入超過。

こうした状態を解消しようと、政府は「医療イノベーションの推進」に
力を入れ始めた。
産学官が連携し、がんや認知症などの画期的新薬や新しい治療法を
世界に先駆けて開発しようという構想。
国内の患者に、新薬などを早く届けると共に、
医療分野で国際競争力を高める狙いもある。

政府は昨秋、新成長戦略に基づいて「医療イノベーション会議」を設置、
6月に決定した社会保障・税一体改革案にも推進方針を盛り込んだ。

同会議は、基礎研究から実用化まで切れ目ない支援をするため、
大胆な予算投入と規制改革を行う方針。
重点分野には、
〈1〉医薬品、
〈2〉医療機器、
〈3〉失った体の組織や機能をよみがえらせる「再生医療」、
〈4〉一人一人の体質に合わせて治療を選ぶ「個別化医療」--を挙げている。

すでに薬の審査に当たる職員の増員は始まり、
臨床試験の拠点病院を、3年以内に15か所指定する方針。

東日本大震災などで財政が厳しい中、どれだけ重点分野に
予算を投入できるかは不透明。
新薬発売を急ぐあまり、安全性が軽視されることもあってはならない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/12/139239/

2011年7月20日水曜日

やる気の秘密(3)言語能力高める工夫

(読売 5月13日)

45分のうち、わずか約8分。
東京都東村山市立大岱小学校6年2組の社会の授業で、
池田守教諭(30)が話した時間。
残り37分間を進めたのは、ほかならぬ児童33人。

テーマは国連。
冒頭、目的や流れなどが示されると、児童は独自に事実や意見を調べ、
2~3人のグループで内容をまとめ、それを板書。
黒板の前で発表者を相互に指名し、書かれた事実や意見を
確認したり、議論を深めたりした。

「『1945年設立。56年日本加盟』とありますが、何で分かったことですか?」
「設立は辞書に、加盟は資料集に書いてありました。
では、次に○○君、何か意見などはありますか?」

「△△さんの、『なぜ紛争・戦争が起こるのか』というのは疑問なので、
意見だと思います。
その答えですが、資料集に、今も宗教や民族の対立などが原因で
紛争が起きている、と書いてあります」
「そろそろ誰かまとめてください」

この間、池田教諭は発表を聞いて、板書を加えていくだけ。
大岱小の目指す、児童主体の、児童で学び合う授業は
スムーズに進んでいった。

こうした授業を可能にする背景には、独自の取り組みがあり、
それが児童のやる気につながっている。

独自教科書の「まなブック」。
資料や教科書の調べ方のほか、「つまり~ということですか?」など、
学び合いの際に使う言葉「言語わざ」が書かれ、児童は常に活用。

質問や確認をできたら「レベル5」、自分たちで授業を進められたら「レベル7」
というような独自の基準「言語星」があり、
児童たちは今のレベルを認識でき、更に上を目指そうとする。

授業を通じて成長したり気付いたりしたことを、

ノートに書いて提出する「振り返り」、
児童の手によるノートコンクール、独自の算数ドリル・漢字検定、
放課後補習などの取り組みもある。

成果は数字でも証明され、2010年度の全国学力・学習状況調査
(全国学力テスト)で、全国や東京都の平均を上回った。
「思考」や「表現・処理」の観点で分析すると、
全国平均より約20ポイント高かった。

7年かけて授業改革を主導した西留安雄・前校長(61)(3月で退職)は、
「教師が話すだけの授業はつまらない。
仕組みさえあれば、子どもたちは自ら学ぶ。
塾に行かなくても、成績は上がる」

◆言語星

大岱小学校での言葉の使い方に関する規律。
レベルは1~7。
授業前に、日直が目標レベルを宣言する。
各レベルは次の通り。
〈1〉「はい」という返事を大きな声で言える
〈2〉「です、ます」と最後まで丁寧に話せる
〈3〉相手に聞こえる声で、最後まで話せる
〈4〉相手の目を見て話したり聞いたりできる
〈5〉質問や確認をできる
〈6〉わけを添えて意見を言える
〈7〉まなブックを使って、自分たちの力で授業を進められる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110513-OYT8T00224.htm

県の復興基本計画案を説明 住宅再建や仮設などで意見要望 「多重防災型」に異論なく

(東海新報 7月17日)

県が、東日本大震災津波で策定した「復興基本計画(案)」の
地域説明会が、大船渡、陸前高田両市で相次いで開かれた。

高台移転や避難ビルで、「多重防災型まちづくり」を進める計画案の
考え方について異論は出なかったが、住宅の再建に対する支援や
土地利用などに関しての提言のほか、仮設住宅の入居者から
要介護者を抱える家族などに配慮を求める要望。

県は、9月議会に提出する復興基本計画に、県民の意見を反映するため、
地域説明会を各地で開催、廣田淳副復興局長らが概要を説明。

基本計画案は、津波対策の基本的な考え方として、
多重防災型まちづくりを掲げ、暮らし再建、なりわい再生の10の柱を設定。

復興に向けたまちづくりでは、
▽都市再生型
▽都市再建型
▽集落移動型
の三つの復興パターンをデザイン画で示しながら説明。

大船渡会場で開かれ、高校生を含む市民約50人が出席。
住宅移転に関連して、「農地の宅地転用に2カ月かかる。
スピーディーに行うようにすべき」という提言、
県は農地転用の手続きが短縮できるよう、国に特区を設けることを要望中。

特区に関する質問もあり、県はまちづくり、土地利用、二重債務、
漁業再生など九つの特区を国に提言、「人命を二度と失わないよう、
早く防災計画を作るべき」との意見に対し、
計画の見直しを同時に進めていると説明。

岸壁が地盤沈下し、漁船が係留できない現状を訴える漁業者は、
「漁船の係留場所を確保してほしい」と要望。
計画案に盛り込まれた復興教育の具体的な内容を問う質問もあり、
「防災文化を次世代に伝え、いま支援の手が差しのべられている
『つながり』を保ち広げていく」との考え。

陸前高田会場には約100人が参加、要望や提言が続出。

民間で住宅団地を計画している人から、
「100戸規模の建設を計画、土地の売買、造成に対する補助や
相談窓口を設けてほしい」と要望。
実家を流失した被災者は、「住宅再建に対する支援をもっと国にアピールすべき」

住宅再建の支援策について県は、「新潟地震の時に適用された
防災集団移転事業では、用地取得や造成の補助があるが、
住宅建築は利子補給のみ。
住宅の建築資金への補助が無いので、国に要望

浸水地域の私有地について、「地権者に補償したうえで、市や県、国の
宅地造成計画に対して協力するような法改正が必要」、
「土地を嵩上げする時、史跡を残し平泉と一体の観光を進めてほしい」

被災した学校などの公共施設のがれき撤去に、国の補助が無く、
「市の復興の支障になっている」という声に、
県としても国に対応してもらう方向。

仮設住宅の入居者から、家族構成に配慮した住宅の割り当てを求め、
要介護者を抱える人は、「仮設での高齢の母親の介護に不安を持っている」、
要介護向け仮設の建設や仮設間での移動可能を求め、
県では市とも今後検討。

廣田副復興局長は、「早くまちづくりの姿をはっきりさせてほしいとの
皆さんの意見と受けとめ、県としても生活の安定と復興の道筋が
できるように頑張りたい」

計画期間は、平成23~30年度までの8カ年計画。
「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」
を目指す姿。
計画案について、今月末まで県民の意見を募集するパブリックコメントも実施。

http://www.tohkaishimpo.com/

スポーツを考える:高橋豪仁・奈良教育大教授(スポーツ社会学)

(毎日 7月16日)

スポーツの魅力の一つは、物語性にある。
人間は、意味を求めずには生きていけない動物だから。
では、どうやって物語は作られるのか?
スポーツには、スポーツならではの物語の作られ方がある。

92年夏の甲子園、星稜の松井秀喜選手が明徳義塾戦で
5打席連続敬遠され、一度もバットを振らせてもらえずに敗れた。
あの時、スタンドの観客は怒ってブーイングをしたり、
「帰れコール」をしたりした。
打たれる確率が高くても、真っ向勝負をするものだという
物語の枠組みが出来上がっていたからだろう。

阪神大震災から3年半後の98年7月、オリックスの活躍によって
勇気づけられたかを球場に来た人たちにアンケートしたことがある。
神戸在住者の97%が、「勇気づけられた」と回答。

市民球団の広島カープが75年に初優勝した時、
当時のオーナーが球団の歩みと、原爆で壊滅した町の復興とを
重ね合わせて語っている。

感動を呼ぶ出来事(プレーや試合)をメディアが切り取り、
強調することで物語が作られている。
出来事と物語の循環によって、物語が強化・再生産される。
そこでメディアの果たす役割は大きい。

01年に発生した9・11同時多発テロの時、米国に滞在。
大学フットボールでは、試合前に犠牲者に祈りをささげ、
ヤンキースタジアムに行くと、第二の国歌と言われる
「ゴッド・ブレス・アメリカ」が歌われた。
国民としての凝集性を高めるのは、スポーツの政治的な機能で、
物語性と関係している。
いい悪いは別にして、これも有事にスポーツが果たす役割。

今回の東日本大震災では、阪神大震災の時と同じように、
災害からの復興を映し出す鏡として、スポーツが位置付けられている。

日本一になったオリックスのように、うまくはいかないかもしれないが、
被災者は楽天やベガルタ仙台をはじめ東北のチームの戦いぶりに、
つかの間、自分たちの生活を重ね合わせ、勇気づけられるだろう。
阪神が強くなかった時でも、ファンは「出来の悪い息子みたいなものだ」
という物語を作って応援。
勝てばすべていいのではなく、勝敗の絶対性が揺らぐような物語が作られる。

今後は、スポーツ情報を批判的に読み解くメディアリテラシーが必要。
メディアは、明るい前向きな話題の方がニュース価値があり、
読者や視聴者の同意を得やすいと考え、その文脈から外れる
厳しい現実やスポーツの限界は取り上げようとしない。

受け手は、こういう文脈だから、こういうメッセージをメディアが発していると
自覚的に受け取る能力を磨かなければならない。
==============
◇たかはし・ひでさと

1962年生まれ。スタジアムにおける観戦者行動の調査など。
近著「スポーツ応援文化の社会学」(世界思想社、2011年)

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/16/20110716dde007070061000c.html

2011年7月19日火曜日

親が受けたストレス、子に遺伝…理研グループ

(2011年7月11日 読売新聞)

外からのストレスで遺伝子の働きが変化する仕組みを、
理化学研究所の石井俊輔主任研究員らのグループが明らかに。
遺伝子の「働き」の変化は、子に遺伝することもわかった。
米科学論文誌「セル」に発表。

遺伝情報は、「塩基」とよばれる物質の並びとして、DNAに刻まれている。
トウモロコシの実の色は、基本的にはこの塩基の並び方で決まる。
気温や日照時間の異常といったストレスが加わると、
遺伝子の働きが変化し、ストレスが取り去られても、
その影響が子に伝わることが知られている。
だが、その変化の仕組みがわかっていなかった。

DNAは、ヒストンというたんぱく質の塊に巻き付いている。
石井さんらは、塩基の並びに変化がなくても、その巻き付き方の違いで、
遺伝子が働いたり働かなかったりする仕組みに着目。

白い目のショウジョウバエの卵を、お湯につけてストレスを与えると、
「ATF2」というたんぱく質が活性化し、DNAの巻き付きが緩むことを発見。

緩んだ結果、赤い色素を作る遺伝子が働くようになり、
生まれてくるハエは目が赤くなった。

巻き付きの緩さは、子に遺伝した。
目が赤くなったショウジョウバエの子も、目が少し赤くなったが、
孫の世代では白い目に戻った。
親と子に続けてストレスを与えると、
目の赤さは孫、ひ孫、やしゃごまで残った。

石井さんは、「ストレスが、生活習慣病や精神疾患を引き起こす
メカニズムをあきらかにして、病気の予防などにつなげたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/11/139181/

やる気の秘密(2)ボードに意見、課題解決

(読売 5月12日)

「今日は、最後のホワイトボード・ミーティング。
ファシリテーター(進行役)は、メンバーが力を発揮できるように支えてね。
この経験は今後、どんなチームに所属しても使えるよ」

埼玉県狭山市立堀兼小学校の4年2組。
担任の岩瀬直樹教諭(40)が呼びかけた。
「子どもが主役の授業」を実践するこのクラスでは、ホワイトボードが大活躍。

この日の学級活動は、「お悩み相談室」。
一人の悩みをグループで話し合い、交代で進行役を務め、
みんなの意見をボードにひたすら書く。
どんなつぶやきも、否定しないのがルール。
出された意見を線で囲んで整理、解決策につなげる。

この方法を始めて約3か月、話を引き出す質問も、
あいづちも板についてきた。
ある子は、「ケンカのとき、ホワイトボードで話を聞くと解決が早いんだ」
「勉強時間が短い」との悩みに、
「じゃあ一緒にチェックリストを作ろう」と、支援策も生まれた。

岩瀬教諭は近年、異年齢の遊び集団が少ないためか、
人とかかわるのが苦手な子が多いのを感じていた。
自ら学ぶ姿勢を育てるには、教師だけが努力しても効果が薄い。
企業で注目される会議法など、学校外の知恵も積極的に求め、
子ども同士の交流が生まれる参加型の授業に切り替えた。

1冊の本を分量を決めて読み、グループで話し合う「文学サークル」
3学期は、約150ページある児童文学『テラビシアにかける橋』を読了。
疑問や感想を持ち寄り、約30分も話が盛り上がる。
読書が苦手な子も、長編を読み通す自信をつけた。

「作家の時間」と称した作文の時間は、自由な題材で書いた「作家」が、
「作家の椅子」に座って発表。
全員が読者になって、ファンレターを返す。
こうした日々の積み重ねが、どの子も安心して
授業に参加できる雰囲気を作った。

子どもたちが毎日書く「振り返りジャーナル」(日記)には、
「きょうの授業は、みんなが意見を言えて良かった」など、
クラス全体を見渡した記述が多い。
「意欲というのは、他の人と一緒に取り組んだ時に生まれることを、
実感します」と岩瀬教諭。

3月末でクラスは解散した。
ある子は、最後の日記にこう書いた。
「5年になっても、(中略)大人になっても、クラスの友達が
一緒じゃなくても、自分の力でチーム、クラスをつくる。
イワセン(岩瀬先生)、いままでありがとう!」

◆ホワイトボード・ミーティング

「人まちファシリテーション工房」(大阪市)代表のちょんせいこさんが提唱。
ファシリテーターを中心に意見を出し合う「発散」、
課題を見つける「収束」、解決策につなげる「活用」の3段階に沿って、
黒、赤、青の色ペンを使い分け、議論の過程を可視化する。
合意形成や課題解決がしやすく、企業などで活用。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110512-OYT8T00226.htm

JOC:都内で100周年シンポ 「スポーツ宣言日本」採択

(毎日 7月16日)

日本体育協会(体協)とJOCの創立100周年を記念した
シンポジウムが15日開かれ、スポーツの過去100年の成果や教訓を踏まえ、
今後100年に果たすべき使命を集約した「スポーツ宣言日本」を採択。

体協とJOCの前身となる大日本体育協会は1911年、
柔道の創始者、嘉納治五郎氏によって創立。

趣意書には、「国民体育の振興とオリンピック競技大会参加のための
体制整備」と記されたが、今回のスポーツ宣言は、趣意書の志を継承しつつ、
「21世紀における新たなスポーツの使命」と題し、
各地で行ったシンポジウムなどの意見も参考にまとめられた。

宣言では、
(1)公正で福祉豊かな地域生活の創造に寄与する
(2)環境と共生の時代を生きるライフスタイルの創造に寄与する
(3)フェアプレーの精神を広め、深めることを通じて平和と友好に
満ちた世界を築く--の3点を柱。

◇IOC会長講演

シンポジウムでは、IOCのジャック・ロゲ会長が特別講演を行い、
「スポーツ界は、ドーピングや人種差別、不正などさまざまな危険に
さらされているが、今こそスポーツの意義を有効に活用しなければならない
などと強調した。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/16/20110716ddm035050116000c.html

2011年7月18日月曜日

やる気の秘密(1)児童が教室レイアウト

(読売 5月11日)

教室に入ると、一風変わった景色が広がっていた。
埼玉県狭山市立堀兼小学校の4年2組。

黒板の脇には「おしゃべりスペース」、後方の窓際には
約1200冊の本が並ぶ畳敷きの図書コーナー、
先生の机は、教室後方の出入り口の横に。

担任の岩瀬直樹教諭(40)(現・同市立入間野小学校教諭)は、
担任になった昨年4月、子どもたちに「教室リフォーム」を呼びかけた。
自分たちが、居心地がよくて勉強したくなる教室。
殺風景だった部屋が、数時間で変わった。
その後も、整理棚や教室の掲示を、自分たちで工夫するのが日常に。

机の配置は、4人組が向かい合う形。
先生が話す時間より、子どもたち同士で話し合ったり、
教え合ったりする場面が多いため。

どの授業でも、その日のテーマや目標をはっきりと先生が伝えて共有。
算数などは、ポイントを先生が教えるが、その後は少人数に分かれ、
教室内で移動してもOK。
畳コーナーにも、輪ができる。

最後の5~10分は、必ず「振り返り」に使う。
目標が達成できたか、改善すべき点はあるかなどを確認しあい、
ミニテストにも使う大切な時間。

学習の「目標設定」と「振り返り」の先には、4月に数時間、
話し合って決めた「ニコニコハッピークラス」というクラス目標。
「男女の別がない」、「前向きなプラスの言葉をつかう」、「協力しあう」
といった話し合いの過程の付箋がついたまま、教室に掲げてある。

昨年7月のある授業の後、「クラスの力が一段上がった」と感じた
岩瀬教諭は、授業の振り返りに時間をとり、
出された意見を模造紙に書きこんだ。

「全員で分かろうとしてた」、「燃えた」、「できない人を放っておかない」、
「教える人も教わる人も集中!」。
いい授業はみんなの力で作るもの、という意識が次々に表れた。

岩瀬教諭は約10年前まで、「面白い授業で喜ばせる」ことに
必死になっていた。
自分が担任を離れた後で、子どもたちの様子を見て、
「ただ口を開けておいしいものを待つ、受け身の子どもたちを
育てていたのか」とがくぜんとした。
「学習の主役は子どもたちのはずだ」。
改革は、その思いから始まった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110511-OYT8T00177.htm

大船渡復興屋台村が始動 10月開業目指す 野々田地区に仮設20店舗

(東海新報 7月17日)

大船渡市大船渡町の商店街再興に向け、地元飲食店主たちが、
同町野々田地区に大船渡復興屋台村をオープンさせる計画。

大船渡飲食店組合(及川雄右組合長)が、仮設店舗を一つのエリア
(約400坪、20店舗予定)に集め、復興屋台村として
開業・運営するもので、10月上旬の開業を目指す。

3月11日の大震災による大津波で、大船渡飲食店組合に加盟する
60店舗のうち、57店舗(95%)の飲食店が津波で流された。

同組合では、港町・大船渡を支えるもう一つの顔である飲食店の賑わいを
取り戻そうと、4月に大船渡復興屋台村プロジェクトを立ち上げ、
屋台村オープンに向けて準備を進めていた。

中小企業基盤整備機構(中小機構)の認可を申請中で、
認可が下り次第ただちに建物を着工し、10月初旬の開業を目指す。

建設予定地は、同町野々田の民有地で、
敷地面積は1321平方㍍(約400坪)。
飲食屋台(1店舗当たり約8坪)と共同トイレ2棟を設置。

出店業種は、居酒屋系、ショットバー、ラーメン、そば、寿司、焼肉、
洋食、和食、中華、スナック、バーなど原則不問。
運営形態は、大船渡屋台村協同組合とし、店舗数は20店舗を予定。

1次募集は、大船渡飲食店組合加盟店が対象(募集期間、25日~31日)、
2次募集は、市内に在住、店舗があった人が対象(同、8月1日~10日)、
3次募集が、気仙管内に在住、新規参入者が対象(同、11日~20日)。
定員になり次第締め切る。

募集要項によると、契約者本人が営業することが原則、
契約期間は3年間。
出店者負担費用は、付帯設備の配線工事費(20~30万円程度)。
毎月のテナント料・家賃はなく、共益費が月1万5000円。

及川組合長は、「屋台村を、飲食店街の復活と市街地の活性化、
復興への幕開けの象徴とし、大船渡の人たちの元気を取り戻し、
復興に向けてがんばっている姿を全国に発信したい


出店者募集説明会は、20日午後3時からオーシャンビューホテル丸森で。
問い合わせは、及川さん(℡090・3362・7712)。

http://www.tohkaishimpo.com/

OCA:スポーツで世界は一つに フォーラムで室伏らが講演

(毎日 7月13日)

日本体育協会と日本オリンピック委員会(JOC)の
創立100周年記念事業として招致した、
アジア・オリンピック評議会(OCA)の会議が12日始まった。
13日は理事会、14日は総会が行われる。

この日は、午前のアスリート委員会に続いて、
「アジアアスリートフォーラム」が行われ、国際オリンピック委員会の
フランク・フレデリクス選手委員長(ナミビア)や、
陸上の室伏広治(ミズノ)ら7人が講演。

講演で、フレデリクス委員長は、競技生活中も引退後のことを考え、
高い教育を受けることの重要性を力説。

室伏は、自作の映像を駆使して、東日本大震災の被災地を
訪問した時のエピソードなどを披露し、
「世界は、スポーツを通じて一つになれる」と訴えかけた。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/13/20110713ddm035050113000c.html

2011年7月17日日曜日

復興計画8月末以降に 地区別図案に課題多く 「二線堤」構想に唐突感も

(東海新報 7月16日)

大船渡市は、市災害復興計画の策定時期が
8月末以降にずれ込む見通し。
国の復興施策審議が予想よりも遅れる中、市では再度地区別に
懇談会を開催、住民の意向把握を進める考え。

土地利用の「たたき台」として復興方針図案を示したが、
かさ上げする道路の高さや居住可能区域の範囲など、議論の余地を多く残す。
市が強調する「復興のスピード感」と、住民の合意形成を得た
将来像確立との両立に向け、正念場を迎えている。

県内被災地自治体の中でいち早く、復興施策づくりに着手した大船渡市。
震災から12日後の3月23日、庁内に災害復興局を新設。
4月以降、住民意向調査の実施や復興計画策定委員会の開催など、
早期策定を目指して積極的に取り組んできた。

各種施策の指針となる復興計画骨子は、住民懇談会や
復興計画策定委などによる議論を経て、今月上旬にまとまった。
具体的な事業内容を盛り込む復興計画は、今月末の策定を目指していた。

市では、計画策定時期を8月末以降。
計画実施に国の予算支援が欠かせない中、復興施策の財源となる
第3次補正予算が秋以降に。
国の動向を判断しながら、策定作業を進める。

この間、再度地区別の住民懇談会を開く。
住民の意向を、再度把握しなければならない課題も。

第3回復興計画策定委で初公表した、復興方針図案。
図案はあくまでも、議論に入る前段階の「たたき台」として用意。
今後、図案内容が大きく変更する可能性も。
半面、この認識の裏を返せば、現段階では甘さや問題点が多い。

これまで、「再び津波が来ても人が亡くならない、
住居が流されないまちづくり」を掲げ、
その一つとして高台に住居移転する構想。
復興図案でも、高台移転の候補地を示しているが、
浸水域の多くが居住可能な地域。

浸水域の住宅を守る機能として盛り込まれたのは、道路のかさ上げ。
沿岸部を通る道路を盛り土などで高くすることで、
津波を食い止める「二線堤」の考え。

今回、末崎町の船河原海岸沿いに位置するJR線の線路が
「防波堤」となり、山側に広がる住居地域の被害を軽減。
道路自体の浸水被害も抑え、交通アクセス確保も期待できるが、
実現化には議論の余地を多く残す。

道路のかさ上げは、復興計画策定委員からも「唐突では?」
先月の市議会定例会では、国道45号のかさ上げに言及した
当局答弁はあったが、海側の道路には踏み込んでいない。

二線堤による減災対策は、東日本大震災復興構想会議が
菅直人首相に答申した提言に盛り込まれた。
この提言や国の動向をふまえた上で、市内では“初披露”。

図案でのかさ上げは、主要地方道大船渡綾里三陸線、
県道丸森権現堂線、門之浜海岸沿いを通る市道高清水鶴巻線、
県道崎浜港線が検討候補に。
高さの具体的な数値はなく、「さらに山側の線路や国道が
検討対象になる可能性もある」

2巡目の住民懇談会では、道路や土地利用のあり方が議論の柱に。
どの道路をかさ上げするかで、居住可能区域は大きく変わり、
住民生活にも大きく影響。
計画策定から、スムーズな事業着手に入るためには、
住民の合意形成が欠かせない。

多くの住民がマイカーを持ち、道路位置のあり方は、
まちづくりや商業地図にも大きく影響。
今後、数十年を見据えた地域社会形成の視点と防災の両立が
求められる中、計画策定時期を8月末以降に延ばしたとしても、
残された時間は決して長いと言えない。

さらに計画策定を遅らせれば、復興ムードの醸成や経済活動の
再開にも支障をきたすことが予想。
これからの1カ月半が、市内復興の正念場となりそう。

http://www.tohkaishimpo.com/

東日本大震災:IOCのロゲ会長、被災者と対面

(毎日 7月15日)

国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長が14日、
東京都内で東日本大震災の被災者と面会した。

日本オリンピック委員会(JOC)が、ユニホームなどの衣料を届け、
医療チームなどを派遣してきた岩手県大船渡市の9人が参加。

同市にある本増寺の木村勝行住職が、
「JOCのみなさんから、オリンピックの精神である元気、健康、
スポーツの精神をいただいた」とあいさつし、
ロゲ会長に、津波で自宅が流されていく写真、復興の印として特産品の
ワカメなどが手渡された。

ロゲ会長は、「大惨事に耐え、勇気を持って立ち上がる皆さんに敬服する」
などと話した。

ロゲ会長はこの日、日本外国特派員協会で行った講演で、
東京が立候補に意欲を示している20年の夏季五輪招致について、
「大陸間で開催地を巡回するというルールはない。
18年(冬季大会)が平昌になったが、東京が立候補すれば、強い候補地である」
と東京の立候補を歓迎する意向を示した。

*****
これに私も参加しました。
ロゲ会長が、被災者に気を配っていただいたことは、本当にうれしいことです。
スポーツの多くの試合会場や競技会場で、エールを送ってくれたことは、
私たちを大いに励ましてくれました。
今後も、アスリートを派遣してくれるとのこと。
スポーツで、多くの人たちを励ましてほしいです!!
そのくらい、スポーツにはパワーがあります。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/07/15/20110715ddm035040078000c.html

生殖細胞の性決める遺伝子 ショウジョウバエで発見

(2011年7月8日 共同通信社)

生殖細胞が雄、雌どちらの性別になるかを決める遺伝子があることを、
自然科学研究機構基礎生物学研究所の小林悟教授(発生学)らの
研究チームがショウジョウバエを使った実験で発見、
米科学誌サイエンス(電子版)に8日付。

生殖細胞の性別が決まるメカニズムは明らかになっておらず、
生殖細胞そのものに性別を決める遺伝子があることを証明したのは初。

雄の生殖細胞は精子に、雌の生殖細胞は卵になる。
生殖細胞の性別はこれまで、体細胞から出るタンパク質の刺激を受けて
決まると考えられてきたが、体細胞の性別が変わっても
生殖細胞の性別が変わらない事例が多数あることから、
チームは、生殖細胞そのものに性別を決める遺伝子があると考えた。

生殖細胞が、精巣や卵巣になる「生殖巣」という袋に入ると、
体細胞の影響を受けるため、袋に入る前の「始原生殖細胞」に着目。
性別に関係しそうな遺伝子を選んで分析し、
卵(雌)を形成する細胞だけに、「Sxl」という遺伝子が
活性化していることを発見。

精子(雄)になる始原生殖細胞のSxl遺伝子を人為的に活性化させ、
雌の生殖巣に移植すると、卵となることを確認。
Sxl遺伝子が活性化していない始原生殖細胞を、
そのまま移植しても卵にならず、Sxl遺伝子が生殖細胞の性別決定に
関わっていると結論。

小林教授は、「他の動物における生殖細胞の性別を決める仕組みを
明らかにする第一歩」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/7/8/139113/