2011年7月22日金曜日

やる気の秘密(5)頭のなか 描いて整理

(読売 5月18日)

津軽半島北端に近い青森県中泊町立小泊小学校で、
2月上旬に行われた6年生の社会科の授業。

子どもたちが、模造紙を囲んでカラーペンを走らせ、
「マインドマップ」と呼ばれる樹形図を作っていた。
「いい感じで枝が伸びてるな」。
担当する教務主任の前多昌顕教諭(41)が声をかけた。

マインドマップとは、ものごとの関連づけや発想の広がりを、
色やイラストなどを使って視覚的に表現したもの。
21人の児童は、韓国、ブラジルなど、グループごとに選んだ国について
調べ上げた特徴で、マップを作成。
これを見ながら、各国の概要を140字の文章でまとめた。

独学でマインドマップを始めた前多教諭は、思考を練り上げる
「道具」としての可能性を感じ、2008年、前任校で授業に本格導入。
小泊小では、昨年度から6年の社会で使い始めた。

歴史のように、記憶する知識が多く、苦手な子が増える科目では
特に有効と感じた。
大切なのは、何を成し遂げるかだと考え、マップの描き方だけでなく、
文章で再構成する作業も取り入れた。

「思考を、すぐに言葉にするのが難しくても、
マップを使えば表現の幅が広がる。
授業に参加できない『お地蔵さん』がいなくなった」と前多教諭。
担任の中谷美穂教諭(38)も、「作文嫌いが確実に減り、構成力もついてきた」

道具は、使いこなせなければ意味がない。
マップが、子どもたちの血肉になるように気を配った。
まず、言葉をつなげて枝を広げる作業に慣れるため、
教科書から単語だけを抜き出す練習から開始。
慣れたら予習として、教科書の内容から簡単にマップを描く。

授業では、先生が大きな模造紙にマップを描きながら説明、
テストのまとめにも使う。
「平安時代」なら、中心に描いたキャラクターは十二ひとえ姿といった具合。
「内容が覚えやすい」、「落書きみたいで楽しい」と、
授業以外で使いこなす子も増えてきた。

マップの「効果」は、前多教諭自身も実感。
ネットを通じて、実践を紹介したところ反響を呼び、人脈も視野も広がった。
同僚にも活用の輪ができ、県内への普及会も発足。
「将来、教育の場で当たり前に使われるようになるのが夢」。
教師の発信力が、周囲を巻き込んだ力になりつつある。

◆マインドマップ

イギリスの教育者トニー・ブザン氏が考案した思考整理法。
日本では2006年頃、まず企業が注目。
07年発足の「ブザン教育協会」(東京)が教員向けに研修などをしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110518-OYT8T00244.htm

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