2009年10月10日土曜日

ノーベル賞:物理学、カオ氏ら3人に 大容量通信網、基礎築く

(毎日 10月7日)

09年のノーベル物理学賞を、元香港中文大学長の
チャールズ・カオ博士(75)=英・米国籍、
元米ベル研究所研究員のウィラード・ボイル博士(85)=カナダ・米国籍=、
ジョージ・スミス博士(79)=米国籍=の3氏に授与。

授賞理由は、カオ博士が光ファイバーによる情報通信への貢献、
ボイル、スミス両博士がCCD(電荷結合素子)センサーの発明。

今日のネットワーク社会の基礎を築いたことなどが評価。
賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億3200万円)の半額を
カオ博士、4分の1ずつをボイル、スミス両博士が分け合う。

カオ博士は、細いガラス繊維で光を伝送する「光ファイバー」の
理論的研究に取り組んだ。
当時の光ファイバーは、20メートルの距離しか信号を送れなかった。
カオ博士は66年、不純物を限界まで減らすことで、
100キロ以上の通信が可能だと推計。

ボイル、スミス両博士は69年、CCDセンサーを発明。
アインシュタインが解明した「光電効果」(21年ノーベル物理学賞)を
応用し、物体がどう見えるかという光の情報を、
電気信号に置き換える技術で、
現在はデジタルカメラなどに広く使われている。

3氏の業績は、世界中が大容量の通信網で結ばれる
ネットワーク社会の基礎となるもの。
カオ博士は、96年に日本国際賞を受賞。

◇「光通信の父」受賞逃す

アカデミーは、カオ博士に先立つ基礎研究の一つとして、
西澤潤一・元東北大学長(83)の業績にも触れた。

西澤さんは20~30代、光通信の3要素
(半導体レーザー、光ファイバー、受光素子)を考案。
「光通信の父」と言われ、国内外の著名な賞を多数受けた。
世界最大の学会である米電気電子学会(IEEE)は、
こうした業績をたたえ、「20世紀の天才の一人」と絶賛し、
ニシザワ・ジュンイチ賞を創設。

西澤さんが所長を務めていた東北大電気通信研究所の
矢野雅文所長は、「カオ博士より、西澤先生の方が
早く業績を上げ、国際的にも認められている。
選考委員会の評価の仕方が違うのだろうか。
残念の一言に尽きる」
西澤さんは、「基本的なことは我々が成し遂げた。
(カオ博士に)おめでとうと言いたい」

http://mainichi.jp/select/science/news/20091007ddm003040084000c.html

100歳まで生きるのがあたりまえに?

(2009年10月7日 WebMD)

富裕国で、2000年以降に生まれた子供のほとんどは、
100歳まで生きることがかなりあたりまえに。

「過去200年間の先進国での平均寿命の伸びが、
そのままのペースで21世紀も続くとすると、
フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国、カナダ、日本といった
長寿国での2000年以降の出生児のほとんどが、
100歳の誕生日を祝うことになる」
『The Lancet』に警報されたこの報告。

南デンマーク大学のデンマーク加齢研究センターの
Kaare Christensenら。
ほとんどの先進国において、平均寿命が延び続け、
その伸びが鈍る気配はない。
増えつつある肥満によって、平均寿命の伸びにブレーキが
かかるかどうかはまだわからない。

Christensen博士らは、人生を構成する3つの時期
(子供期、大人期、高齢期)という、現在の社会における
考え方は変わり、「高齢期」を「第3年齢期(前期高齢期)」と
「第4年齢期(後期高齢期)」とに分けて考えるようになる。

「長寿命は、遠い未来の世代の特権ではない。
長寿命は、先進国に今生きている人の大部分にも
十分起こり得る運命なのだ」

人々は、「第4年齢期」を健康で暮らせるのか?
その答えが分かるのにはまだ時期尚早。

Christensen博士らによれば、85歳以上の年齢層での健康に関する
データは、「まばら」にしかない。
博士らは、がんや心疾患といった多くの疾患の発見が早くなり、
治療が改善されていることも指摘。

世界でもっとも長寿の国は日本で、世界保健機構(WHO)によれば
2007年の出生児の平均寿命は83歳。
米国の2007年の出生児の平均寿命は、
CDCの予備的データによれば77.9歳。

living-to-100-to-become-common

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/10/7/108847/

イグ・ノーベル賞を受賞した北里大名誉教授の田口文章さん

(2009年10月6日 共同通信社)

「見た目かわいいパンダですが、実に大量のふんをします。
しかし臭くない。研究上は助かりましたね」

人を笑わせ、考えさせる科学研究などに贈られる
イグ・ノーベル賞の生物学賞を受賞。
パンダのふんから、家庭用生ごみの90%以上を分解する
菌を分離した研究が受賞対象。

「科学的にはそれほど価値はないが、ふんからごみ処理という
地球環境にやさしい点が評価された」

賞の主催者も、「ことしの各賞の中で一番面白い」と絶賛、
受賞スピーチではパンダの人形を手に
研究内容をユーモラスに語り、大きな拍手が寄せられた。

「もともとの専門は微生物。ウイルス一筋です」
北里大の前身の北里衛生科学専門学院を卒業後、米国留学。
1977年に同大教授、以後はインフルエンザやエイズなどの
研究に取り組んできた。

90年代、生ごみを菌で分解して水素を取り出す研究を
本格的に開始。
強力な菌を探すうち、大量のササを消化するパンダの腸内菌に着目。
当時パンダがいた上野動物園に頼み込み、
バケツに大量のふんをもらい、実験を繰り返した。

ようやくそれらしい菌を見つけたが、実証が必要。
「近くのスーパーで、生ごみを大量にもらい実験すると、
95%以上が水と二酸化炭素に。この分解力には驚きましたね」

2003年退官、友人と事業を立ち上げるなど多忙な毎日。
3人の子どもは既に独立、神奈川県相模原市の自宅に
夫人と2人暮らし。埼玉県出身、72歳。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/6/108714/

2009年10月9日金曜日

医学生理学賞に米の3氏 テロメア構造を解明 細胞の老化、がん化に関連

(2009年10月6日 共同通信社)

スウェーデンのカロリンスカ研究所は、
2009年のノーベル医学生理学賞を、
細胞の老化やがん化にかかわる染色体のテロメア構造と
酵素テロメラーゼを発見、
エリザベス・ブラックバーン米カリフォルニア大サンフランシスコ校
教授(60)ら米国の3氏に贈ると発表。

授賞理由は、テロメアとテロメラーゼによる染色体の保護機構の発見。
他2氏は、キャロル・グライダー米ジョンズ・ホプキンズ大教授(48)、
ジャック・ショスタク米ハーバード大教授(56)。

ブラックバーン、グライダー両氏は女性で、
自然科学3賞で女性2人が同時に受賞するのは初めて。

テロメアとは、染色体の末端にあり、塩基配列を繰り返している部分。
染色体は、細胞分裂のたびに短くなるが、
ブラックバーン氏とショスタク氏は、原生動物や酵母を用いた実験で
テロメアが染色体の端を保護していることを発見、1982年に発表。

ブラックバーン氏の研究室の大学院生だったグライダー氏は84年、
分裂の際に短くなるテロメアを継ぎ足して
長さを元に戻す酵素テロメラーゼを発見。

3氏は実験で、この酵素がないとテロメアの長さが戻らず、
細胞の寿命が短くなることや、逆にこの酵素を働かせると
寿命が延びることを実証。

テロメアの長さが、細胞や生体の老化を決める要素の
一つであることを突き止めた。

活発に細胞分裂するがん細胞では、
この酵素が盛んにつくられており、がん治療の標的に。
血液の難病、再生不良性貧血などにもかかわっており、
臨床への影響も大きい。

山中伸弥・京都大教授が開発した万能細胞の
人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも、テロメラーゼが
活性化しているのが判明、再生医療の発展に役立つ可能性。

授賞式は、12月10日にストックホルムで開かれ、
賞金1千万クローナ(約1億2800万円)を3氏で分ける。

▽テロメア

生物の細胞の中にある染色体の両端で、
同じパターンの塩基配列が繰り返されている部分で、
染色体の端がほぐれないように保護する役割を持つ。
細胞が分裂するたびに短くなり、短くなりすぎた細胞は
分裂できなくなって死ぬことから、細胞分裂の「回数券」に
例えられることも。
際限なく分裂を続けるがん細胞などでは、
テロメアを継ぎ足す酵素「テロメラーゼ」が働いている。
老化やがんに密接に関係、多くの研究が進められている。

◆エリザベス・ブラックバーン氏
オーストラリア生まれ、60歳。
英ケンブリッジ大で博士号を取得。
90年、米カリフォルニア大サンフランシスコ校教授。
99年度、慶応医学賞、06年、ラスカー賞受賞。生物学、生理学。

◆キャロル・グライダー氏
米国生まれ、48歳。米カリフォルニア大でブラックバーン氏に
師事し、博士号を取得。97年、米ジョンズ・ホプキンズ大教授。
06年、ラスカー賞受賞。分子生物学、遺伝学。

◆ジャック・ショスタク氏
ロンドン生まれ、56歳。米コーネル大で博士号取得。
米ハーバード大教授。06年にラスカー賞受賞。遺伝学。

▽がんや老化の研究に功績

石川冬木・京都大教授(テロメア研究)の話

テロメアとテロメラーゼは、がん細胞や生殖細胞、老化などと
関連が深く、ノーベル賞にふさわしい成果。
がん細胞では、テロメラーゼが活発に働いているため、
薬で働きを止めてがんの増殖を抑えたり、
老化の症状を和らげたりする研究が進んでおり、成果が期待。
iPS細胞でも、テロメラーゼの果たす役割が大きい。

ブラックバーンさんは、テロメア研究の大御所。
多くの弟子がいて、スケールが大きい研究者。
グライダーさんはその教え子で、若いころから頭角を現していた。
大量の細胞から酵素を集めるなど、根気のいる作業を担当。
ショスタクさんは、テロメアの働きが明らかになる前から
仮説を立て、この分野の理論を構築。

▽再生医療分野でも注目
松浦彰・千葉大教授(分子細胞生物学)の話

3人は、テロメア研究の先駆けとして大きな成果を挙げ、
遅かれ早かれ受賞すると考えられていた。
再生医療の分野でも、テロメアは注目。
iPS細胞も、テロメアが伸びている。
幹細胞で、テロメアがどう制御されているかが分かると、
より効率的に幹細胞を作ることができるかもしれない。
この分野は、先駆者がブラックバーンさんら女性のためか、
研究者に女性が多く、学会でも前の方の席は女性で占められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/6/108712/

循環器疾患の危険、「生活楽しむ」男性は低い

(2009年10月2日 毎日新聞社)

生活を楽しんでいる意識の高い男性は、
脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患を発症したり、
死亡する危険性の低いことが、
厚生労働省研究班の約9万人を対象にした調査で明らかに。

研究班は、「前向きの心理の人は、ストレスを感じにくかったり
上手に対処できることが影響しているのではないか」と分析。
女性は、心理状態で差はなかった。

調査は、8県に住む循環器疾患などを持たない
40-69歳の男女約8万8000人が対象。

調査開始時の「自分の生活を楽しんでいると思いますか?」との
アンケートに、「はい」と答えた人を
「生活を楽しんでいる意識が高い群」、
「いいえ」を「低い群」に分け、約12年間追跡。

その結果、男性の循環器疾患の発症危険性は、
低い群が高い群の1・2倍。
死亡する危険性は、低い群が1・6倍。
脳卒中で死亡する危険性は低い群が1・8倍、
心筋梗塞で死亡する危険性は低い群が1・9倍。
生活を楽しむ意識を持てる男性は、
運動習慣がある傾向も目立った。

研究班の白井こころ琉球大准教授(社会福祉学)は、
「女性は心理面に関係なくストレスに強く、
差が出なかったようだ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/2/108589/

ドクターヘリ、岩手県内導入の可能性 死亡率低下に期待

(2009年10月4日 毎日新聞社)

医師らが同乗して、患者に救命医療をしながら搬送できる
「ドクターヘリ」の県内への導入の可能性を巡る議論が進んでいる。
山間地が多く、地理的に不利な条件がある県内では、
導入によって搬送時間を大幅に短縮でき、死亡率の低下が期待。
一方で、費用面や冬季の運用方法など課題も山積。
導入に向けた県内の現状を探った。

ドクターヘリは、消防機関などの要請があれば、
ヘリポートから5分以内に発進できる速さが特徴。
県が設置した有識者会議では、導入した場合、
岩手医科大を拠点病院とし、基地ヘリポートを
同大矢巾キャンパスに置くことを最有力に検討を進めている。

片道30分でほぼ県内全域をカバーし、救命救急センター
(岩手医大、県立久慈、大船渡病院)に搬送する構想。

県の調査では、3カ所の救命救急センターで119番通報から、
救急車の搬送を経て、医師が患者に接触するまで平均62分。
厚生労働省の調査では、ヘリを導入した他県は、
接触までの時間が平均27・2分短縮、死亡率が50%低下。

県医療国保課の千田利之医療担当課長は、
「面積が広大で、山間部が多い県内で導入すれば、
大きな効果が期待できる」

県は08年度以降、年間300万円の調査費を計上、
ヘリポートや格納庫などの施設整備、医師や看護師の
人員確保などの調査を実施。

現段階で浮かび上がっている課題の一つが経費。
民間業者への運航委託費は、年間約1億7000万円と試算。
国の補助制度など、実質的な県負担は年間約4300万円程度。
ヘリポートや格納庫などの整備にかかる数億円に、国の補助はない。

有視界飛行が前提のヘリの出動は、天候に左右される。
特に奥羽山脈沿いの豪雪地帯や、やませが発生する沿岸部では
現場まで到達できない可能性もある。
08年1月、東北で初めて運用を始めた福島県立医科大でも、
天候不良による出動断念が08年度は29件。

北海道では、悪天候の現場から離れた地点に着陸し、
そこで患者を救急車から引き継ぐ形で、対応。

山間地が多い県内では、着陸場所の確保が難点。
同じ事情を抱える福島では、学校グラウンドなど483カ所の
緊急ヘリポートを確保し、市町村や消防機関の協力を得て着陸。

有識者会議では、今月下旬にこれらの課題も含め、県に提言。
県側は、提言を元に導入検討を本格化。
県高度救命救急センター長で、有識者会議座長の
遠藤重厚・岩手医科大教授は、「岩手の場合、
近くに小規模病院しかない山間地でも、難しい疾患に
対応できるのがヘリ導入の最大の意義」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/5/108637/

2009年10月8日木曜日

「楽しい」は健康のもと 脳卒中リスク低、男性だけ

(2009年9月30日 共同通信社)

生活を楽しんでいる意識が高い男性は、
脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患の発症、
死亡リスクが低いとの調査結果を、
厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎
国立がんセンター予防研究部長)が発表。
40~69歳の男女約8万8千人を、約12年間追跡調査。

開始時点のアンケートへの回答から、生活を楽しんでいる
意識が「高い」、「中程度」、「低い」の3グループに分け、
循環器疾患の発病や死亡との関係を分析。

意識の高いグループを基準にすると、中程度グループの
発症リスクは1・20倍、低いグループは1・23倍、
死亡リスクはそれぞれ1・15倍と1・61倍。

女性では関連はなく、男性の方がストレスの影響を
受けやすいためではないか。

意識の高いグループは、運動習慣のある人が多く
喫煙者が少ないなど生活習慣の違いも。

病気の影響で楽しいと感じなくなる場合もあるため、
そうした可能性がある人を除外してさらに分析し、
心理的要因が発病、死亡に影響を与えると判断。

琉球大法文学部の白井こころ准教授(社会福祉学)は、
「ストレスの多い社会だが、生活を楽しもうと意識し、
楽しむ方法を自分なりに見つけることが大切だ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/30/108424/

命は人のために使いなさい 97歳 日野原さん

(2009年9月29日 読売新聞)

聖路加国際病院理事長の日野原重明さん(97)を招いた
読売新聞創刊135周年記念スペシャルフォーラム
「強い心で、自分らしい生き方を」が開かれ、
現役内科医の熱弁に約1300人が熱心に聴き入った。

講演で、まず強調されたのは「命の大切さ」。
10歳の児童を対象にした「命の授業」活動を長年続け、
「命は心臓にあるのでなく、見えないところにある。
命は自分だけでなく、人のために使いなさいと指導している

はつらつと元気な日野原さんは、
「1日18時間仕事をしている」と来場者を驚かせ、
「うつぶせで寝て、2分間で熟睡」、
「知ったふりをしないで好奇心を」など
心と体の健康の秘訣を披露。

「誰かのために時間を使うことで、人生が安らかになる。
耐えることと上を向いて歩こう」と持論を展開。

サービス精神旺盛で、「年をごまかしてジェットコースターに乗ったが、
達成感があった」などと語ったり、
ダンスのステップを踏んだりして会場を盛り上げた。

「元気な先生のように、私も大きな声を出し、
好奇心を持って暮らしたい」と
蓮田市から来た吉野玲子さん(73)。

さいたま市の平野寛さん(81)は、
「97歳とは思えないパワフルさとユーモアがあり、有意義だった。
英会話とパソコンを習っているが、もっと頑張ろうと刺激になった」

著書「十歳のきみへ 九十五歳のわたしから」を
小学6年の頃に読んだという中学1年馬場雅弓さん(12)の家族が
講演後、日野原さんに雅弓さんの手紙を手渡した。
著書に刺激され、将来は医療の道へ進んで、
人に感動や勇気を与えられる人間になりたいと考えるようになった。

母親の睦子さん(41)と弟の智大君(10)が手紙を渡すと、
日野原さんは「ありがたいねぇ-」と顔をほころばせた。
睦子さんは、「温かい人柄がにじみ出ていた。娘も喜ぶと思う」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/29/108359/

エコ化する米スポーツ界

(日経 09/06/15)

◆山口日出夏
環境エネルギー政策研究所研究員。デラウェア大学大学院
環境エネルギー政策センター博士課程終了。
横浜国立大学工学部 建築学修士修了。
フランス生まれの横浜育ち。
バージニア工科大学大学院建築学交換留学を機に渡米。在米10年。

昨今の米国内での環境問題への積極的な姿勢を受け、
米スポーツ界にもエコ風が吹き始め、
新しい環境市場が動き出してきた。
エコとは関係なさそうなスポーツ界も、エコと深くかかわり始めた。

◆ファンを巻き込むリサイクル活動「ファンカンズ」

エコとスポーツ。
サイクリングや登山など、アウトドアスポーツならエコを連想しやすいが、
野球にアメフト、バスケットなどのプロスポーツが
エコと聞いてもなかなかピンとはこない。
「ファンカンズ(Fan Cans)」のニュースを知るまで、
少なくとも私はその1人。

ファンカンズとは、新しいスタジアム用の缶・ペットボトル用
リサイクル回収箱。
チームのロゴ入りヘルメットをかぶった
ユニークなリサイクル回収箱。
素材の50%が再生プラスチックでできており、
廃棄後は100%リサイクル可能。

飲料水の販売会社がペットボトルや缶の回収率を上げ、
自社の環境面でのポイントを上げるための方策の1つとして、
スポーツ界と手を組んだ。

ドリンクのゴミがたくさん出るスタジアムなどで、
応援するチームのロゴが入ったリサイクル回収箱なら、
ファンが楽しんでリサイクルに協力してくれるだろうとの思惑。
このようなスポーツ業界とエコ活動の結び付き、実は少なくない。

◆省エネ、クリーンエネルギー ――メジャーリーグとエコ

日本人選手の活躍が目立つメジャーリーグ。
その米プロ野球界も、エコと関係がある。

先駆的存在は、サンフランシスコ・ジャイアンツと
そのホームスタジアムであるAT&Tパーク・スタジアム。
2007年のオールスターゲームで、イチロー選手が
オールスター史上初のランニングホームラン記録を
打ち立てたスタジアム。

サンフランシスコ市は、環境に配慮して、
スーパーでのプラスチック・レジ袋の無料配布廃止を
米国内でいち早く実践し、米国内では環境先進都市。

サンフランシスコ市が、07年オールスターゲーム開催に先駆け、
サンフランシスコ・ジャイアンツのスタジアムのエコ化を実現。

このプロジェクトでは、特にエネルギー利用の改善に焦点をあて、
約590枚(総120キロワット)のソーラーパネルをスタジアムに配し、
省エネ電球やモーションセンサー(人体検知赤外線センサー)
付きライトを積極的に導入し、省エネを図った。

プロ野球スタジアムに、ソーラーパネルを敷設したのは
米国で初めての試み。
07年は、メジャーリーグでの日本人選手の活躍だけでなく、
米プロ野球界とエコの連結においても記念すべき年。
AT&Tパーク・スタジアムを契機に、現在では様々な
野球スタジアムで、エコ化を試みている。

ピッツバーグ・パイレーツのホームである
PNCパーク・スタジアムでは、スタジアム内のドリンク容器の
リサイクル率の向上と、環境に配慮した使い捨て容器の
利用・促進に力を入れている。

フィラデルフィア・フィリーズのホーム、
シチズンズ・バンク・パーク・スタジアムでは、
08年、2000万キロワット時のクリーンエネルギーを
購入することを発表。
シーズン中の全試合を100%クリーンエネルギーで運営、
エネルギー面で、メジャーリーグで最もクリーンなスタジアムに躍進。

ニューヨーク・メッツの新ホームスタジアム、シティ・フィールドでは、
建設における環境負荷の軽減を図った。
鉄骨全体の95%をリサイクルされた鉄骨にし、
リサイクルされた石炭燃焼生成物(火力発電所で石炭を燃やした際、
発生する燃焼灰、飛灰など)を積極的に利用し、
約800トン余りの二酸化炭素の排出を削減。
低流量配管システム導入により、1年間で約1500万リットルの
節水を可能にする。

◆プロ野球に続け、バスケット、アメフトにもエコの波

プロ野球のスタジアムで見られたエコ化は、NBAやNFL界でも同様。
中でも際立っているのは、ホームスタジアムの
リンカーン・フィナンシャル・フィールドを風力エネルギー100%で
運営している、NFLのフィラデルフィア・イーグルス。

リサイクル率向上に力を入れ、再生紙の使用、環境負荷の少ない
使い捨て容器の利用なども進めている。
最近では、新たにソーラーパネルも設置、その活動は多岐に。

「イーグルス・フォレスト」という森林を所有、
そこにはファンが購入した1500本余りの樹木が茂る。
この森林では、子どもが選手と一緒に植林ができる
プログラムなどもあり、教育面も力を入れている。

フィラデルフィアが、持続可能な未来の創造に大きく貢献したと
思われる活動に賞する
「フィラデルフィア サステナビリティー アワード」も受賞した
イーグルスは、NFLの中だけでなく、プロスポーツ界全体において
環境活動においてリーダー的な存在。

NFLでは、スーパーボールを、100%クリーンエネルギーで
運営するという取り組みを、08年から実施。
グリーンベイ・パッカーズのホームアリーナの
ランボー・フィールドは、リサイクルの強化や環境負荷の
小さな使い捨ての食器の利用促進を進め、クリーンエネルギーを購入。

スーパーボールのチケットを販売するチケット会社の
スタブハブ(StubHub)は、この会社を通してチケットを購入すると、
チケット1枚につき1本の植林をする
「チケット・フォー・ツリーズ(Tickets for Trees)」という
ユニークなプログラムを立ち上げ、
プロ・フットボール界におけるエコ活動をサポート。

NBAも、NFLやMLBのいい影響を受けている。
日本人初のNBAプレーヤー、田臥勇太選手が在籍した
フェニックス・サンズも、09年オールスターゲーム開催に向け、
ホームアリーナのUSエアウェイズ・センターに、
194キロワットのソーラーシステムを導入
開催用に、1500 メガワット時相当のクリーン・エネルギーを購入。

◆拡大するスポーツ界のエコ化

昨今の景気悪化により、環境に対する活動を縮小する分野が
多い中、米プロスポーツ界のエコ化は、景気低迷による
ネガティブな影響を見せず、反対に年々勢いを増して元気。

メジャーリーグでは、MLB全体で連携・協力して環境活動を
行えるように、チーム・グリーニング・プログラムを、
昨年に打ち立て本格的に動き始めた。

NBAでは、プロバスケ界で初めてのグリーンビルディングの
基準となるLEED認証
(The Leadership in Energy and Environmental Design)
認定を受けたアリーナ(アトランタ・ホークスの本拠地である
フィリップス・アリーナ)を誕生。

NFLは、スーパーボールでの優勝チームのロゴ入りTシャツを、
100%オーガニック・コットンで製作する、斬新な取り組み。

スポーツグッズ市場も追随。
ナイキは、環境負荷を減らしたシューズ「エア・ジョーダンXX3」を販売、
米服飾メーカーのアメリカンアパレルや、ヨガ用品の小売業の
プラナ(prAna)は、オーガニック・コットンを利用したウェアを
販売すると発表。
パタゴニアは、商品全てにリサイクル可能な素材を利用する
プロジェクトを立ち上げ、アウトドアブランドのザ ノース フェイスは、
1メガワットのソーラーパネルを設置。

年々強まる米スポーツ界とエコのつながり。
MLBは全30チーム、NBAは30チーム、NFLは32チームで構成、
三大スポーツ界全体に、エコ活動が浸透するだけでも
大きなインパクトが見込まれる。

カレッジ(大学)スポーツも、プロに負けないほどの人気。
プロでのエコへの取り組みが、将来的にカレッジにも
浸透するのは時間の問題。

国内のみならず、全世界で絶大な人気を誇る米プロスポーツ。
プロスポーツがエコ活動においても同様に、
全世界に向けて積極的な情報発信ができれば、
エコに対して新しい大きな原動力になることは間違いない。

経済力、信用の失墜に頭を抱える米国がこれを機に、
スポーツという分野を通して、今までの環境分野での遅れを
取り戻し、環境先進国の仲間入りを果たす。
この新しい分野で、世界の主導権を握るような国に
生まれ変われればと期待が高まる。

あまり興味のなかったプロスポーツではあったが、
これからは野球観戦も環境に貢献する1つの形となると知った今、
すぐにでもメガホン持って応援に駆けつけたい――
そんな気持ちに駆られてしまったのは私だけであろうか。

http://eco.nikkei.co.jp/column/yamaguchi_hideka/article.aspx?id=MMECzc000012062009&page=1

2009年10月7日水曜日

携帯プレーヤーの音量規制 EU、難聴予防へ安全基準

(2009年9月29日 共同通信社)

EUの欧州委員会は、イヤホンを使う携帯音楽プレーヤーを
高音量で長時間使用した場合、難聴になる恐れが強いとして、
プレーヤーの音量を規制するEUの安全基準策定に乗り出した。
基準が採択されれば、メーカー側は順守を求められる。

欧州委によると、適用対象は携帯プレーヤーや
その機能を備えた携帯電話。
メーカーに対し、出荷時に音量を安全な水準に
設定するよう求める。

利用者が設定変更して、音量レベルを上げることはできるが、
メーカーに高音量の危険性を十分説明するよう義務付ける。

クネワ欧州委員(消費者保護担当)は、
特に若者が高音量で長時間利用していると指摘。
「難聴は、数年で症状が現れる。その時は既に手遅れだ」
早期の規制導入を訴えた。

EUによると、イヤホンを使って高音量で毎日1時間以上
音楽を聞く習慣を長年続けていると、
「聴覚を失う恐れ」がある。

域内では利用者の約5~10%、最大1千万人が
こうした危険にさらされている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/29/108354/

「マクロ」押さえ予測力を磨け

(日経 9月16日)

経営環境が大きく変化し、景気やビジネスの先行きを
見通すのは難しい。
「今後はこうなるだろう」と、自分なりの予測を立てなければ、
相手を納得させられる提案はできない。
どうすれば精度の高い予測ができるのか?
JPモルガン証券のシニアアナリストで、電機業界を担当する
和泉美治さんの話をもとに、秘訣をまとめてみた。

「どのような予測でも、まずマクロの流れをつかむことが最も重要」
と和泉さん。
ビジネスパーソンにとって大きな流れとは、景気動向。

景気の現状を把握するには、主な経済指標を押さえておく。
検索サイトを使えば、政府の各省庁や日銀のサイトにアクセスできる。
月例経済報告や日銀短観、国内総生産(GDP)、完全失業率、
鉱工業生産指数など、主要な経済指標のデータが収録。

経済指標を定期的に載せている新聞も。
忘れずにスクラップしておくと、自然とデータが頭の中に入ってくる。
すぐにデータを調べられるので、リポートを書くときに便利。

詳しい情報を知りたければ、各省庁の白書が便利。
行政活動の現状や今後の展望について、
詳細なデータを駆使しながら書いている。

景気を読み解くには、内閣府の経済財政白書や厚生労働省の
労働経済白書、中小企業庁の中小企業白書が役立つ。
白書は、各省庁のサイトからダウンロードでき、
政府刊行物サービスセンターや大規模な書店で購入できる。

データを集めたら、次に何をすべきか?
「過去のパターンやトレンドを自分なりに読み取ってほしい」
主要な経済指標をいくつか並べてみると、相関関係が見いだせる。
機械受注が、民間企業の設備投資を先導して動いていたり、
景気ウオッチャー調査の景気動向指数(DI)が、
日経平均株価に先んじて変化したりする。

景気は今、上昇局面にあるのか、下降局面にあるのかを
予測してみる。
大事なのが、他人の受け売りではなく、自分で考えること。
著名なエコノミストの見方をおうむ返しに言っても、
聞く人に強い印象を与えられない。

経済全体の流れをつかんだら、自分の担当分野・業界に
関するデータを集めよう。
業界団体のサイトをみると、業界全体の市場規模や需要動向、
生産数量などのデータが公表。
大半は、無料なので便利。

もっと詳しい情報が必要であれば、調査会社を利用するのも手。
データリソースやグローバルインフォメーション、
矢野経済研究所、富士経済などが有名。

グローバルインフォメーションは、世界の主要調査会社と提携、
海外の詳細な市場調査分析資料を豊富に取りそろえている。

証券会社に口座を持っていれば、アナリストが書いた
リポートを入手できる。
個人で入手するには、値が張る場合もあるので注意。

担当分野・業界という限られた範囲での動きは時として、
経済全体の流れに逆行しているようにみえる。
これが、単なる一時的な現象(ノイズ)なのか、
新しいトレンドを指し示すサインなのか、見極めるのは難しい。

過去の似たような局面ではどうなったのかを検証するとともに、
なぜこのようなデータになったのかを考える。
こうした訓練を、日ごろから積み重ねると、
役に立つ情報とそうでない情報を見極める力が備わる。

予測を立てたら、必ず検証することも忘れてはならない。
誤っていたら、その理由を突き止めて、自分の考えを修正する。
こうした習慣を身につけておけば、
精度の高い予測を立てられるようになるだろう。

◆目的明確に 納期意識を

予測する力を鍛えるには、「目的をはっきりさせることが重要」
政府系シンクタンク、機械振興協会経済研究所の
研究主幹の井上弘基さん。
何のために予測するのかを明確にしないと、
余分な情報に惑わされてしまう。

長期のトレンドか、短期のトレンドを読むかもはっきりさせたい。
短期トレンドを読むのに、長期の過去のトレンドを振り返っても
あまり意味がない。

予測力を磨くのに重要なのは、「納期だ」と井上氏。
締め切りという時間の制約を意識するかしないかで、差が出る。
時間があればあるほど、余分なデータに惑わされる危険が多い。
逆に時間がないときほど、信頼度の高い情報を見いだす能力が
自然に身に付く。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090916.html

2016年に岩手国体 気仙3市町で行動へ競技誘致でスクラム

(東海新報 10月3日)

「気仙は一つ・三首長会議」が行われた。
大船渡市の甘竹勝郎市長、陸前高田市の中里長門市長、
住田町の多田欣一町長の三首長が出席、7年後に予定されている
岩手国体の会場地誘致に向け、「三市町開催」を目指して
行動する方向性を確認。

現在、3市町で開催が決まっている種目はなく、
今後県や各市町の体育協会などと検討しながら進め、
年度内には誘致する競技を決定したい考え。

三首長会議は、昨年12月に設置、会談は8月以来。
気仙の広域連携を推進しようと、
さまざまな地域課題解決の場として設置。
会議の会長を務める甘竹市長が、会談内容について説明。

主な話題は、2016年岩手国体の競技会場地。
国体県準備委員会では、9月までに30競技の開催地を選定。

残りの競技については、年度内に決定したい意向。
会場地がまだ未定となっているのは、
サッカー(成年男子、女子)やテニス、軟式野球、ソフトボール、
弓道、ボウリング、高校野球(軟式)など12競技。

約7割の競技が決定、気仙三市町は開催地に選ばれていない。
県内13市の中で、開催地に選ばれていないのは気仙両市。

今後は、県や各市町の体育協会などと検討の場を設ける。
甘竹市長は、できるだけ早い段階で気仙三市町として
開催できる競技をまとめ、実現に向けて行動したい姿勢。

気仙の野球関係者らからは、軟式野球の開催を望む声が。
開催には、ナイター設備のある球場が少なくとも6施設必要、
気仙三市町としても難しさがある。

陸前高田市内では、老朽化が進む市営松原球場の
整備充実を求める声。
大船渡市内でも、立根町などに用地取得した
市総合運動公園整備への期待があるが、
現段階では既存施設を生かした形でできる競技にネライ。

甘竹市長は、「気仙でも何もしなくてもいいのか、との思いがあり、
三市町による行動をもちかけた。
国体開催には、地域の競技力向上や全国への情報発信、
宿泊などの経済効果も見込まれる。
開催が決まれば、もてなしの心で迎えたい

政権交代に伴う地方行政への影響・変化なども話題に。
合併に関する話題はとくに出なかった。

http://www.tohkaishimpo.com/

2009年10月6日火曜日

途上国での医療活動、本に ミャンマーで働く小児科医

(2009年9月28日 共同通信社)

発展途上国の子どもを救う活動を展開する国際医療団体
「ジャパンハート」代表で、小児外科医の吉岡秀人さん(44)が、
自らの取り組みを記した「飛べない鳥たちへ」(風媒社)、
「死にゆく子どもを救え」(冨山房インターナショナル)
2冊を出版。

設備も不十分な途上国で診療に当たる苦労や喜びを記し、
話題になっている。

吉岡さんは、国内の病院勤務を経て、
1995年からミャンマーでの国際医療活動に携わり、
2004年にジャパンハートを設立。

ミャンマー中北部の町で、寺院が所有する病院の一角を借り、
ボランティアの日本の若い医師や看護師と、
貧しい患者の治療をしている。
治療費には寄付金を充てている。

著書では、十分な麻酔設備もなく頻繁に停電が起こる状況で、
多くの重症患者の手術をしてきた体験を紹介。
「死にかけていた人が、ふたたび人生を生きていく。
私の幸せと患者の幸せがつながっている」

国際医療を志す若い医師らには、
「経験を愚直に積み重ねていくことの大切さを知ってもらいたい」
「まず一歩を踏み出せ」と訴える。

吉岡さんと親交があり、出版を勧めた医療雑誌「ラティス」編集長の
七沢英文さん(44)は、「人の命がそれぞれに尊いことを、
彼の活動を通してあらためて教えられる。
ぜひ多くの人に読んでほしい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/28/108265/

ヤマハの梅村社長「ネット時代が楽器を変える」

(日経 9月26日)

ピアノなど楽器市場の低迷が、国内外で長引きそう。
昨秋リーマン・ショック後、趣味材と言える楽器は
もろに打撃を被った。
音楽は日常生活に根付き、パソコンや携帯情報端末を使うなど、
新しいスタイルで楽しむ動きも広がった。
消費者のニーズをどのように取り込み、成長への道筋を描くのか?
ヤマハの梅村充社長に聞いた。

——国内の消費は冷え込んでいるが、楽器、音楽市場をどうみるか?

「日欧米で楽器、AV機器の販売は減り、
在庫削減に取り組んでいる。
音楽が日本の生活に今後、ますます身近になってくると確信。
プレスリーやビートルズの演奏に親しんだ団塊の世代が
定年退職し、楽器を持とうとする動きがある。
子供、孫と3世代にまたがって演奏や鑑賞をする
ファミリーアンサンブルを提案。
問題は、それをどうビジネスに結びつけるか。
簡単ではないが、ヤマハが伝統として培ってきた価値創造の分野。
楽しみながら需要を掘り起こし、市場を拡大したい」

——音楽ソフトの分野にも力を入れている。

音楽ソフト市場として、アジアを視野に入れて開拓。
次世代に活躍する有望な若手ミュージシャンを生み出すための
音楽コンテスト、ミュージックレボリューションなどを通じ、
新しいミュージシャンを発掘。
新しいレーベルをどんどん生み出そうと、社内に向けて言っている」

——ネットワーク時代を迎えて、楽器の楽しみ方も変わってきたが。

「自動演奏機能付きのアコースティックピアノ『ディスクラビア』のように、
インターネットを通じて楽曲のデータを取得し、
自宅やレストランなどで生の演奏を楽しめる。
今や自分で演奏するだけでなく、楽しみ方も多様に。
楽器のデザインも重要になる」

——中国などアジア市場開拓もこれからだ。

中国をはじめ、子供の教育に熱心なアジアは市場として有望。
中国の教育機関とは、エレクトーンの提供などを通じて
長く付き合いがあり、ヤマハ音楽教室の指導者候補を養成。
7月、上海に大規模な教室を開いた。
上海のほか、北京、広州などに教室があり、
現在の生徒数は約3000人。
指導者の育成が前提となるが、2011年3月までには
1万人に増やしたい。
楽器をはじめとして、新興国でのビジネスを伸ばして
会社全体の成長につなげる考え」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090924_2.html

社内運動会で親交、幹事準備に汗 競技種目に配慮を

(日経 9月10日)

従業員同士の親交を深める手段として、
社内運動会が見直されている。
幹事役は、何に留意すべきなのか?

運動会用具を含めたイベント用品をレンタルしている
ダスキンのレントオール事業部の犬童祐治さんに、
成功させるための5つのポイントをまとめてもらった。

まずは、場所の確保。
運動会には屋外のイメージがあるが、天候に左右されない
屋内での開催を検討する企業が増えている。
体育館だけでなく、大型の展示場も選択肢に入れておくとよい。

予約するとき、駐車場の有無や駐車台数、飲食物や
火気の持ち込みの可否、利用できる機材や設備の状況、
使用後の清掃義務などを確認。
特に、機材や設備が会場にある場合、
設置・運搬の手間が省ける利点。

屋外の場合、荒天時のキャンセルの規定を確認する必要。
施設によっては、前日に基準以上の雨量があると、
グラウンドの状態を維持するため、当日晴れていても
利用できないといった規定がある。

次に、プログラム。
小中学校のプログラムをそのまま利用するのも手だが、
注意点がある。
---------------------------------
◆運動会成功のためのチェックリスト

(1)会 場
・トイレ設備有無の確認
・ゴミ収集のルール確認と回収業者手配
・会場内の電源(電気容量)の確認

(2)競 技
・子供向けプログラム作成
・運動会の気分を盛り上げるBGMの準備
・各競技のタイムスケジュールや競技自体に無理はないか?

(3)手配・依頼
・大会中の飲み物の手配
・最寄り駅から会場入り口への誘導
・昼食(弁当)の手配
・競技備品手配
・役員や主催者へスピーチの依頼

(4)制 作
・各競技ごとの簡易レイアウト、競技備品
・担当者とその動きを記入したマニュアルの作成
・開会式と閉会式の台本作成
・大会本部掲出用のタイムスケジュールの作成

(5)決定事項
・雨天時の開催中止のための連絡網
・次競技の参加者招集の方法決定
・当日の参加者の人数把握の方法決定

(6)大会当日
・個人の荷物・貴重品の管理方法や盗難の注意喚起
・大会中のけが・熱中症などの予防アナウンス
・会場利用にあたっての禁止事項のアナウンス
-------------------------------------
参加者の年齢や運動量を把握すること。
デスクワーク中心の中高年が大半を占める運動会であれば、
徒競走やリレーなどは控えた方が無難。
会場が狭いと、コーナーが急になり転倒しやすくなる。

チーム対抗にするのなら、借り物競争や障害物競走など、
運動能力以外の部分で勝敗が決まりやすい競技がよい。
体を動かすことにこだわらなくてもよい。
全員参加の「○×クイズ」、観客も楽しめる景品争奪の
「フルーツバスケット」、日ごろのうっ憤を晴らす「大声コンテスト」など
盛り込んでおくと、飽きられない。

3つめのポイントは、参加者への告知。
効果的な告知方法にはどのようなものがあるのか?

まず、社内メールや朝礼などで開催日時をできる限り
早く知らせるのが基本。
そのうえで案内状を配ると効果的。
運動会のプログラムや家族も参加できるアトラクションを紹介、
記念品がもらえる抽選券を付けておくと、注目度はぐっと高まる。

案内状の一部を参加申込書にし、切り離して提出してもらえば、
当日にどれだけの人が来るのかが事前にわかる。

4つめのポイントは、家族連れ対策。
参加率を上げるには、小さな子どもを持つ従業員にも
楽しめるようにするのが欠かせない。
子どもが飽きないようにするには、どのように工夫すればよいか?

会場に、キッズコーナーを設けておくとよい。
屋外であれば、日よけ用のテントを設置し、
その下にタイルマットなどを敷き詰める。
簡単な遊具やアニメの本などを準備しておくだけでもかなり効果。

予算に余裕があれば、縁日コーナーや大型のエア遊具などを
設置すれば、大人も一緒に参加できるアミューズメントコーナーとなり、
楽しさを演出できる。
子どもを預かるのであれば、十分に管理できるスタッフが必要。

最後に、忘れてはならないのがけが人や病人への対応。
競技に張り切りすぎて、思わぬけがをしてしまう人も。
天気によっては、熱中症にかかる人も。

けがを防ぐには、準備体操を念入りに行う必要。
プログラムに、必ず準備体操の時間を設けたい。
懐かしのラジオ体操を社内の担当者が行っても、あまり意味がない。

フィットネスクラブからエアロビクスのインストラクターを呼んで、
明るい音楽と軽快なトークで運動。
会場の雰囲気も良くなるし、特にけがをしやすい
アキレスけんなどを重点的にほぐせる。

屋外開催の場合、熱中症対策として、水分補給のための飲み物を
十分に準備し、テントを設置して日陰を設けておく。

万が一の事態に備えた対策も必要。
会場の最寄りの医療機関と相談し、看護師に常駐してもらうのがベスト。
救急箱や氷、担架は準備。
通院や手術が必要なけがに備え、傷害保険にも加入しておくべき。

多くの参加者から、「また開催してほしい」といわれる運動会に
するのは大変。
事前準備をきっちり行っておけば、楽しい運動会になるだろう。

◆いんどう・ゆうじ

約9年間にわたりイベントの企画に携わった経験を生かし、
ダスキンのレントオール事業部のプロモーション業務を担当。
総合情報サイト「オールアバウト」で、「イベント・幹事のコツ」の
ガイドとして連載記事を執筆。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090909.html

「世界のカグラ」に歓喜 早池峰神楽の無形遺産決定

(岩手日報 10月1日)

「世界のハヤチネカグラだ」
花巻市大迫町の早池峰神楽(岳神楽、大償神楽)が、
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に決定、
県民から神楽衆へ歓喜と祝福の声が上がった。

500年以上の長い間、霊峰早池峰の麓に生きる人々が
守り紡いできた「祈りの舞」。
舞い手たちは決定を厳粛に受け止め、
永遠の伝承に表情を引き締めた。

登録の可否を決めるユネスコの政府間委員会の同日の審議は、
日本時間で夕方とみられた終了時刻が大幅に遅れた。
大石満雄市長のほか、文化財課の担当者ら約20人が
居残り「今か今か」と県教委からの朗報を待った。

「決定」の一報は午後9時すぎ。
大石市長は直後に会見し、「確信はしていたが、正直、ほっとした」と
安堵の思い。

神楽が伝わる大迫町内川目地区の住民の喜びはひとしお。
保育士佐々木美幸さん(24)は、
「生活の中にある神楽が世界に誇れる文化なのだと感じた」

観光面への期待も増す中、花巻観光協会の今井洋一会長(67)は、
大切なのは、末永い保護と後継者の育成。
市民全体にそうした意識が醸成すれば、
観光への寄与は自然と出てくる」と、地に足の付いた振興策を願う。

県民俗芸能団体協議会の平舘良孝会長(71)は、
「若者や一般の人の伝統芸能への関心が高まるはず」と、
県内の民俗芸能全体の活性化を予想。

早池峰神楽を継ぐ神楽衆は現在、岳16人、大償18人の男たち。
同夜、岳神楽は家族や神社関係者らと祝いの宴、
大償神楽は週1回の練習に汗を流した。

岳神楽保存会の小国朋身会長(50)は、
「感動をみんなで味わえた。
地域が生活の中で神楽をはぐくんできた姿を、今後も継承していく」

大償神楽保存会の佐々木裕会長(67)は、
「長い間の先輩たちの努力が今につながった。
『無形文化遺産』の名に恥じないよう、一層頑張っていく」と
責任の重さをかみしめた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091001_5

2009年10月5日月曜日

社説2 五輪開催の夢は終わったが

(日経 10/4)

IOC総会で、2016年夏季五輪の開催地に、
ブラジルのリオデジャネイロが選ばれた。
鳩山由紀夫首相が登壇した東京も、招致実現に努めたが、
2回目の投票で落選。

昨年6月の1次審査では、立候補していた7都市で
東京は最高の評価。
南米初の開催を訴え、財政面や治安の不安をぬぐった
リオに軍配が上がった。

1988年大会でソウルに敗れた名古屋、
08年大会で北京に負けた大阪に続き、
日本の夏季五輪招致はこれで3連敗。

五輪は、都市が主役とはいえ、国家間の競い合いの様相が
ますます強まるなかで、五輪への世論の支持が低い点が
東京の足かせになったのだろう。
東京五輪は夢に終わり、多額の招致経費は露と消えた。

だが、名乗りを上げた意義は小さくない。
東京の計画の特徴は、再生可能エネルギーを最大限活用し、
地球環境に配慮した点。
国に先駆けて、温暖化ガスの排出量取引を
来年4月から始める東京ならではの計画。

都が五輪開催に向けて06年に策定した「10年後の東京」という
都市構想でも、「水と緑の回廊の復活」を第1の課題に。
都市の景観と快適さを重視し、環境先進都市への再生を目標。
街路樹や都市公園によるサッカー場1500面相当の緑の創出、
東京湾上の「海の森」整備、無電柱化の推進などが柱。
こうした事業は、五輪抜きでも進めるべき。

戦後復興の姿を世界に示した半世紀前の五輪は、
道路建設を急ぎ、東京から貴重な水辺空間や緑を奪った。
その反省が今回、生かされている。

五輪を観光立国への転換点にできない点は残念だが、
少子高齢化が急速に進む日本が豊かさを維持するためにも、
観光振興は欠かせない。
首都・東京が、歴史や伝統と調和した魅力ある空間に変わることが、
その条件のひとつ。

国際競争力の強化に向けて、羽田空港の拡張や
東京外郭環状道路の整備も急務。

五輪だけが夢ではない。
未来に向けて、東京が乗り越えなければならない課題は山積。
立ち止まっているときではない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20091003AS1K0300103102009.html

【五輪遠く】(下)施策残った東京都と展望描けないJOC

(産経 2009.10.5)

「もはや一刻の猶予もない。次の世代に、より良い環境を
残すためにも、今から手を打たなければならない」

9月30日、IOC総会が開催されたコペンハーゲン市内のホテルで、
石原慎太郎都知事が訴えると、海外メディアから
「日本を(五輪開催地に)選ばなければ、地球が消滅して
2016年以降の五輪はありえないのか」と問われた。

知事は、「そうじゃない。このまま温暖化が進行すると、
五輪どころじゃなくなる。世界的なイベントで、
環境問題に対する意識を作るような選択をしてもらいたいんだ

知事の環境への思いは強い。
五輪招致には失敗したが、都は20年までに00年比で、
25%の二酸化炭素の排出削減を目標、
都市整備は中期計画「10年後の東京」に沿い、
停滞することはないとみられる。

16年までに、街路樹を現在の倍の100万本にしたり、
学校の校庭を芝生化するなど、1000万平方メートルの緑を
新たに生み出す方針も変わらない。
電気自動車など低公害車導入も拡大され、
家庭用電源から充電できる「プラグインハイブリッド車」などを
約5年間で約1万5千台導入する方針で普及を図る。
パラリンピック関連についても同様に、
昨年末で69%の整備率だった都道のバリアフリー化も、
11年度までに76%に向上させる方針。

五輪招致活動を通じて訴えてきた施策は、今後も生きていく。

一方、スポーツ界はどうか-。
JOC幹部の脳裏には、ある光景が浮かんだ。

07年12月、スポーツ施策に対する予算折衝で、
陳情を繰り返した日々のこと。
翌年1月開所を控えた味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)
の関連施策に対する最初の財務省案では、
JOCが目玉に据えた3事業に対し、2事業で「ゼロ回答」。

中でも、有望ジュニア選手をNTCに寄宿させて
長期育成するエリートアカデミー事業は、
卓球とレスリングで08年4月の開講を予定、何としても復活させたい。

JOCでは、長期強化計画「ゴールドプラン」で、
東京五輪開催を前提に、金メダル獲得順位で世界3位
(北京五輪では8位)になるという目標を掲げ、
その中核ともいえる強化事業。
陳情を繰り返した理由だった。

現在、同事業はフェンシングを加え、3競技。
五輪招致に成功していれば、段階的に増やす構想もあった。
五輪開催を梃子に、選手強化費の拡充、
環境整備を見込んだスポーツ界。

03年度以降、1000億円を超えている文化庁予算に対し、
09年度の文部科学省のスポーツ関連予算は約225億円。
JOCの福田富昭副会長は、「12年ロンドン五輪を控える
英国の強化予算は年間120億円、JOCは27億円。
国策で強化を図らねば、メダル獲得は覚束ない」と
国の支援を訴えてきたが、追い風は期待できなくなった。

前提が崩れた以上、「ゴールドプランも見直す」方向で、
スポーツ行政を一元化するスポーツ庁設置構想を含む
「スポーツ基本法」制定への機運にも影響は出かねない。

招致でタッグを組んだ東京都は招致表明以降、
07年4月には教育委員会内にあった生涯スポーツ部を
合わせる形で、生活文化局を生活文化スポーツ局に発展、
スポーツ振興事業を増加させてきた。

今後について、都幹部は「手の平を返したように
(スポーツ事業が)できなくなるとは思わないが、
不況で税収も伸びない中、スポーツ事業だけ別格扱いはされない」

資金力に欠け、各競技団体の連合体であるがゆえに、
指導力にも限界のあるJOC。
五輪開催という起爆剤を失ったいま、今後の展望をどう描くか、
改めて問われる。

http://sankei.jp.msn.com/sports/other/091005/oth0910052028017-n1.htm

【五輪遠く】(中)「JOCは強くならないと」再挑戦も厳しい

(産経 2009.10.4)

2016年夏季五輪開催地を決めるIOC総会を終え、
コペンハーゲンから帰国途中のチャーター便の機内放送に、
突然、石原慎太郎都知事の声が流れた。

「遠いところまで、応援に駆けつけてくれた日本のみなさん、
本当に本当にありがとうございました。
残念な結果となりましたが、みなさんの気持ちは十分に伝わりました…」

チャーター便には、1泊4日の“弾丸”日程で、
東京の応援に駆けつけた約240人。
放送後、知事は客席を回り「ありがとう」、「お疲れさま」と
声をかけると、逆に大きな拍手で励まされ、
目に涙を浮かべてこれに応えた。

「同胞の熱い心のきずなを久しぶりに感じ、
気持ちのいい涙を流した」
強いリーダーシップで招致活動を牽引しただけに、
感情的になった一面を見せた知事。

だが、これからの都政運営では多くの課題が待ち受ける。
直面するのは、今回の招致活動の総括。

五輪招致活動費150億円のうち、100億円は公費。
都議会で、招致活動の実態が追及されることは必至で、
知事は「当然、都民の前に明らかにするのは最低限の責任」、
検証に前向きな姿勢を示した。

中央区晴海のメーンスタジアム建設予定地と、
都が積み立てた4000億円の五輪開催基金をどうするかも、
「頭の痛い重大な問題」(都幹部)。
20年五輪への再挑戦の判断がつかない中、
担当者は「土地は都有財産で、これ以上、
遊ばしておくわけにいかない」

土地の活用法について、知事は「民間企業の知恵を借りる」と
話したが、詳細は未定。

都議会では、第1党に躍進した民主が先月、
新銀行東京の経営責任追及と、築地市場の現地再整備を
再検討する2つの特別委員会を設置。
都幹部は、「五輪招致の前向きなムードが終わり、
知事が守勢に回る場面が増えるのでは」
知事は、求心力維持に手腕が問われる場面を迎えることに。

3年間に及ぶ招致活動を通し、得たものも少なくない。
知事は、「新しいフルーツにはならなかったが、苗を植えた」と、
新たな政策の構築に言及。
深刻化する地球の環境問題を国内外にアピールできたことは
その最たるもので、IOC総会に出席した鳩山由紀夫首相を、
「オバマ(米大統領)よりはるかに良かった。
またとない助っ人になってくれた」と持ち上げ、
「環境の東京」を訴えられたからにほかならない。

東京都の環境対策は、知事がプレゼンテーションで訴えたように、
今後、港湾施設などで太陽光発電の活用を拡大。
マウンテンバイクなどの会場となるはずだった
江東区青海沖の埋め立て地は、「海の森」として植樹を進める。

JOCをはじめ、スポーツ界は、「東京以外に勝てる都市はない」と、
再挑戦を願う思いは根強い。
「JOCは、もっと強くならないと。
推進力のある人間をIOCに送り込まない限り難しいなと痛感」と知事。

JOC理事でもある招致委の河野一郎事務総長は、
「手の届かないエリアが確かにあった。
そのエリアをどう狭めていくか」と受け止めるしかなかった。

IOCに太いパイプを作ることは容易ではない。
しかし、知事の指摘に答えを出せなければ、「夢」の実現は難しい。

http://sankei.jp.msn.com/sports/other/091004/oth0910042016017-n1.htm

【五輪遠く】(上)すべて後手…外交力の限界を露呈

(産経 2009.10.3)

落選後の石原慎太郎都知事の言葉は、
日本のスポーツ外交に突きつけられた皮肉とも受け取れた。

「誰に聞いても、東京のプレゼンテーションは
圧倒的に良かったと言う。
だけど、結果はリオに決まった。
そういう(IOCの)力学をもっと勉強しなければならない」

招致演説や開催計画がどんなによくても、
IOC委員106人に対するロビー活動を展開しなければ、
票には結びつかない。
リオデジャネイロの招致委会長のヌズマン氏はIOC委員でもあり、
その肩書きを生かした人脈をフル活用したのとは対照的。

かつての日本には、IOCに顔の利く人物がいた。
JOC元会長の堤義明氏
サマランチ前IOC会長との親交は有名で、
98年長野冬季五輪招致では、スイス・ローザンヌに
五輪博物館を建設したいサマランチ氏の意向に沿い、
日本からの寄付のとりまとめを約束。
「ピンポン外交」に尽くした国際卓球連盟の
故・荻村伊智朗元会長も、国際スポーツ人脈に長けた1人。

「自分がIJF(国際柔道連盟)理事なら、1年の3分の1が海外。
もっと幅広い活動ができたのに…」
こう肩を落としたのは、柔道金メダリストの山下泰裕氏
2年前のIJF理事選に完敗。
「柔道の母国」といえども、発言力は衰えている。

日本スポーツ界のこうした状況が、
「情報戦」において後手に回る遠因。

マイナス要因としてつきまとった開催支持率の低さも一例で、
招致委はIOCが実施した支持率調査の時期を読み違えていた。
ある招致委関係者は、「3月ごろだと予想していた」、
招致本部幹部は、「招致委は4月以降と予測していたはず」
過去の例から、現地調査の2カ月前の2月に行われるとの予測も。
実際には2月に実施、「この読み間違いがなければ、
支持率はもっと上げられていた」。後の祭りとなった。

東京の戦略のミスも。
招致委から招致大使に任命された山下氏の述懐。
「海外でIOC委員に会った際、
『私と会ったことは、あなたのスケジュール帳から削除してくれ』と。
招致大使になったがために、IOCの招致ルールに抵触しかねず、
個人的な動きが制約されてしまった」

9月、中南米を訪問したJOCの福田富昭副会長は、
帰国後、表情をゆがめて、
「どこへ行ってもリオが先取りしている。厳しい戦いだ」と漏らした。
前回敗退の経験を踏まえ、「南米初」という大義を掲げて
精力的にロビー活動を展開したリオ。

ルラ大統領は、「ブラジルは、GDP世界10位の経済国。
五輪を開催する準備は出来ている」と訴えた。
昨年の北京、14年のソチ(ロシア)に続き、
ブラジルが五輪開催権を手にした。
「BRICs」新興国の台頭に比べ、日本の存在感は低下している。
    ◇
IOC総会で、2016年夏季五輪の開催地は、
「南米での初開催」を掲げるリオデジャネイロに決まった。
東京は2回目の投票で敗れ、1964年五輪以来、
2度目の開催は実現しなかった。
日本は名古屋、大阪、東京と大都市で3連敗。

「スポーツの外交力」の限界を露呈した形で、
五輪開催は遠のくばかり。
招致から見えた日本の敗因と課題を探る。

http://sankei.jp.msn.com/sports/other/091003/oth0910032350110-n1.htm

2009年10月4日日曜日

社説:東京落選 五輪の夢語り続けよう

(毎日 10月4日)

2016年の夏季五輪・パラリンピックの開催地が、
ブラジル・リオデジャネイロに決まった。
南米大陸で初めての開催で、
五輪に新たな歴史が刻まれることを歓迎したい。

52年ぶり2度目の五輪を目指した東京は、
2回目の投票で落選。
1988年の五輪招致で名古屋がソウルに大敗し、
08年五輪招致では大阪がわずか6票で早々と姿を消した。
夏季五輪招致の3連敗を免れようと、
切り札の首都・東京で挑んだが、またしても夢はかなわなかった。

敗因はさまざまあろう。
今回の東京招致は、石原慎太郎東京都知事の独り芝居で、
それが墓穴を掘ったという印象をぬぐえない。

「日本で再び夏季五輪を」の声が、スポーツ界から上がったのは、
金メダル16個を含むメダルラッシュに沸いた04年アテネ五輪後。
JOCは、さらなるスポーツ振興と国際競技力向上につなげるため、
夏季五輪の招致を国内主要都市に呼びかけた。

08年五輪の北京開催が決まっていたため、
JOCが目指したのは20年五輪。
名古屋と大阪の失敗を踏まえ、「1回の立候補で当選は難しい」と、
16年五輪にも立候補し、実績を積む作戦を立てた。

国内招致都市争いで福岡を破った東京は、
石原都知事の強力なリーダーシップのもと、
16年五輪の実現に向け一気に突き進む。
9月に77歳になり、すでに4選不出馬を表明している
石原都知事にとって、任期中に五輪招致を勝ち取るには
16年五輪しかなかったのだろう。

この結果、東京の五輪招致は、「北京五輪の8年後に、
なぜ同じアジアの東京なのか」というアキレスけんを、
スタートから抱えこむ。
「なぜ」に答えが出せないまま、
招致活動は上滑りした状態で投票日を迎えた。

五輪招致は失敗したが、東京の提案が
すべて無駄だったとは思えない。
コンパクトな会場配置や財政、治安問題などで高い評価。
「環境に配慮した五輪」という理念は今後、
ますます必要性が高まり、平和の祭典としての五輪に
新たな使命として書き加えられるべき。

東京招致に費やした150億円の巨費も、
詳細に使途を明らかにすることで、今後の五輪招致に当たり
貴重な資料として役立てることもできよう。

名古屋と大阪は、1度の惨敗で五輪への夢を
語り続けることをやめた。
訴えた理念は、その場限りの作文だったと自ら認めたようなもの。
今回は同じ轍を踏むべきではない。

2日の最終プレゼンテーションで、
「地球の将来のための環境五輪」を訴えた15歳の三科怜咲さんや、
その後の世代のためにも、
日本は五輪の夢を語り続けなくてはならない。

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20091004k0000m070110000c.html

「落選」都政、一転難局に 巨額招致費・用地処理

(朝日 2009年10月4日)

東京が、16年夏季五輪の招致レースに「落選」、
石原慎太郎知事の求心力が低下。

招致活動だけで100億円もの税金を投入。
五輪会場予定地の新たな使い道も見通せない。
スポーツ界は、20年五輪招致に期待するが、
知事は2年後の知事選に立候補しない意向で、行く末は不透明。

IOC総会後、石原知事は招致失敗の引責辞任について
「絶対ない」と強調。

五輪招致は、知事の3期目の選挙公約。
都庁内には、「今後は何を目的にするのか。
知事の存在感はさらに低下する」

3年間の招致活動に投入した税金100億円の使途も問われる。
招致機運を盛り上げる費用として、都内全62区市町村に
年1千万円を上限に分配、世論支持率は候補4都市で最低。
五輪開催に向けて積み立ててきた4千億円の使途も
決まっていない。

第1党になった民主党の幹部は、
「招致費用はどれだけ効果があったのか疑問。
無駄遣いかどうかを追及する」

五輪用地の処理が宙に浮く恐れも。
臨海副都心にある選手村予定地(江東区)は31ヘクタール。
750億円をかけ、05年に造成した都有地。
「早く売ってしまいたいが、不況で買い手がつくかどうか」

石原知事は、20年以降の五輪招致に再挑戦する可能性に
含みを残したが、課題は多い。

不況で都税収は落ち込み、新たに巨額の招致費を支出するのは
簡単ではない。
新銀行東京の経営悪化や、築地市場の移転予定地で
有害物質が検出された問題もあり、
石原知事の支持率は一時ほど高くはない。
五輪再挑戦に、世論の支持を得られるかは不透明。

石原知事は、任期満了する11年春で引退する意向。
20年五輪の招致活動が本格化するのは、石原知事の引退後。
次の知事が引き継ぐかどうかは見えない。

「五輪招致の看板をいきなりは降ろせないのだろう。
再挑戦するにしてもしないにしても、
知事の厳しい状況は変わらない」

国内のスポーツ界は、20年招致を東京に期待。
IOC総会で敗れた直後、JOCの福田富昭副会長は、
「20年も東京に立候補してほしい」と言った。

JOCは、「言質」を取っているとの思い。
3年前の夏、東京と福岡市が国内候補都市を争った場で、
16年に失敗した場合の再挑戦について聞かれた石原知事は、
「もちろん、やりますよ」と明言。

世界を見渡すと、ローマ市長が20年への立候補を表明。
12年五輪の招致でロンドンに敗れたパリ、モスクワなども
再挑戦する可能性が高い。

JOCの竹田恒和会長は、
「(今回の招致レースで得た)財産、ノウハウをそのまま使える。
勝つための方程式を考えなきゃいけないが、
同じことをするだけで次は勝つかもしれない」

http://www.asahi.com/national/update/1004/TKY200910030362.html

五輪決定のリオ、14年にはW杯…治安維持が課題に

(朝日 2009年10月3日)

IOC総会の投票で、16年夏季五輪の開催地は
リオデジャネイロとなり、東京の夢はかなわなかった。

招致表明から4年、環境を前面に押し出したが、
IOC委員の心はつかみきれなかった。
日本の夏季五輪招致は、名古屋、大阪に続いて3回連続で失敗。

南米初の五輪開催という歴史に名を残すことになった
リオデジャネイロだが、課題は少なくない。

サッカーの14年W杯も控える中、最大のハードルは治安維持。
犯罪の温床であるスラム街「ファベーラ」は、市内各地に点在、
その数は1千程度。
競技会場は海に近い場所、内陸部など主に四つの地域に分かれ、
会場の近くにもファベーラがある。
リオ市の人口の6分の1に当たる100万人がその住人。

そのため、躍起になって治安回復に取り組んでいる。
リオ当局は、昨年11月から日本をモデルにした
リオ風の交番を設置。
犯罪の多いファベーラでギャングを一掃し、
24時間体制で警察官が常駐。
日本で1カ月、交番の研修を受けた者も。

警察官は、住民と人間関係を築き、子供にサッカーなどの
スポーツも指導。
この試みは、犯罪発生の抑制に一定の成果をあげ、
IOCの評価報告書でも評価。

08年、リオデジャネイロ州で起きた殺人事件は5717件、
警察とギャングの撃ち合いの巻き添えなどで1137人が死亡、
治安がどこまで保障されるのか不透明。

もう一つの宿泊施設の不足は、大型のホテルを3つ新設、
2つを拡張するなどして補う。
リオの招致委は、「IOCから必要とされた4万部屋を
30%上回る5万2800部屋が確保できる見通しになった」

交通アクセスも懸念、開催期間中に学校を休校し、
一般車両を制限、地下鉄の延長などで対応する。
インフラ整備も欠かせない。

http://www.asahi.com/sports/spo/TKY200910030004.html