2009年10月7日水曜日

「マクロ」押さえ予測力を磨け

(日経 9月16日)

経営環境が大きく変化し、景気やビジネスの先行きを
見通すのは難しい。
「今後はこうなるだろう」と、自分なりの予測を立てなければ、
相手を納得させられる提案はできない。
どうすれば精度の高い予測ができるのか?
JPモルガン証券のシニアアナリストで、電機業界を担当する
和泉美治さんの話をもとに、秘訣をまとめてみた。

「どのような予測でも、まずマクロの流れをつかむことが最も重要」
と和泉さん。
ビジネスパーソンにとって大きな流れとは、景気動向。

景気の現状を把握するには、主な経済指標を押さえておく。
検索サイトを使えば、政府の各省庁や日銀のサイトにアクセスできる。
月例経済報告や日銀短観、国内総生産(GDP)、完全失業率、
鉱工業生産指数など、主要な経済指標のデータが収録。

経済指標を定期的に載せている新聞も。
忘れずにスクラップしておくと、自然とデータが頭の中に入ってくる。
すぐにデータを調べられるので、リポートを書くときに便利。

詳しい情報を知りたければ、各省庁の白書が便利。
行政活動の現状や今後の展望について、
詳細なデータを駆使しながら書いている。

景気を読み解くには、内閣府の経済財政白書や厚生労働省の
労働経済白書、中小企業庁の中小企業白書が役立つ。
白書は、各省庁のサイトからダウンロードでき、
政府刊行物サービスセンターや大規模な書店で購入できる。

データを集めたら、次に何をすべきか?
「過去のパターンやトレンドを自分なりに読み取ってほしい」
主要な経済指標をいくつか並べてみると、相関関係が見いだせる。
機械受注が、民間企業の設備投資を先導して動いていたり、
景気ウオッチャー調査の景気動向指数(DI)が、
日経平均株価に先んじて変化したりする。

景気は今、上昇局面にあるのか、下降局面にあるのかを
予測してみる。
大事なのが、他人の受け売りではなく、自分で考えること。
著名なエコノミストの見方をおうむ返しに言っても、
聞く人に強い印象を与えられない。

経済全体の流れをつかんだら、自分の担当分野・業界に
関するデータを集めよう。
業界団体のサイトをみると、業界全体の市場規模や需要動向、
生産数量などのデータが公表。
大半は、無料なので便利。

もっと詳しい情報が必要であれば、調査会社を利用するのも手。
データリソースやグローバルインフォメーション、
矢野経済研究所、富士経済などが有名。

グローバルインフォメーションは、世界の主要調査会社と提携、
海外の詳細な市場調査分析資料を豊富に取りそろえている。

証券会社に口座を持っていれば、アナリストが書いた
リポートを入手できる。
個人で入手するには、値が張る場合もあるので注意。

担当分野・業界という限られた範囲での動きは時として、
経済全体の流れに逆行しているようにみえる。
これが、単なる一時的な現象(ノイズ)なのか、
新しいトレンドを指し示すサインなのか、見極めるのは難しい。

過去の似たような局面ではどうなったのかを検証するとともに、
なぜこのようなデータになったのかを考える。
こうした訓練を、日ごろから積み重ねると、
役に立つ情報とそうでない情報を見極める力が備わる。

予測を立てたら、必ず検証することも忘れてはならない。
誤っていたら、その理由を突き止めて、自分の考えを修正する。
こうした習慣を身につけておけば、
精度の高い予測を立てられるようになるだろう。

◆目的明確に 納期意識を

予測する力を鍛えるには、「目的をはっきりさせることが重要」
政府系シンクタンク、機械振興協会経済研究所の
研究主幹の井上弘基さん。
何のために予測するのかを明確にしないと、
余分な情報に惑わされてしまう。

長期のトレンドか、短期のトレンドを読むかもはっきりさせたい。
短期トレンドを読むのに、長期の過去のトレンドを振り返っても
あまり意味がない。

予測力を磨くのに重要なのは、「納期だ」と井上氏。
締め切りという時間の制約を意識するかしないかで、差が出る。
時間があればあるほど、余分なデータに惑わされる危険が多い。
逆に時間がないときほど、信頼度の高い情報を見いだす能力が
自然に身に付く。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090916.html

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