(日経 10/4)
IOC総会で、2016年夏季五輪の開催地に、
ブラジルのリオデジャネイロが選ばれた。
鳩山由紀夫首相が登壇した東京も、招致実現に努めたが、
2回目の投票で落選。
昨年6月の1次審査では、立候補していた7都市で
東京は最高の評価。
南米初の開催を訴え、財政面や治安の不安をぬぐった
リオに軍配が上がった。
1988年大会でソウルに敗れた名古屋、
08年大会で北京に負けた大阪に続き、
日本の夏季五輪招致はこれで3連敗。
五輪は、都市が主役とはいえ、国家間の競い合いの様相が
ますます強まるなかで、五輪への世論の支持が低い点が
東京の足かせになったのだろう。
東京五輪は夢に終わり、多額の招致経費は露と消えた。
だが、名乗りを上げた意義は小さくない。
東京の計画の特徴は、再生可能エネルギーを最大限活用し、
地球環境に配慮した点。
国に先駆けて、温暖化ガスの排出量取引を
来年4月から始める東京ならではの計画。
都が五輪開催に向けて06年に策定した「10年後の東京」という
都市構想でも、「水と緑の回廊の復活」を第1の課題に。
都市の景観と快適さを重視し、環境先進都市への再生を目標。
街路樹や都市公園によるサッカー場1500面相当の緑の創出、
東京湾上の「海の森」整備、無電柱化の推進などが柱。
こうした事業は、五輪抜きでも進めるべき。
戦後復興の姿を世界に示した半世紀前の五輪は、
道路建設を急ぎ、東京から貴重な水辺空間や緑を奪った。
その反省が今回、生かされている。
五輪を観光立国への転換点にできない点は残念だが、
少子高齢化が急速に進む日本が豊かさを維持するためにも、
観光振興は欠かせない。
首都・東京が、歴史や伝統と調和した魅力ある空間に変わることが、
その条件のひとつ。
国際競争力の強化に向けて、羽田空港の拡張や
東京外郭環状道路の整備も急務。
五輪だけが夢ではない。
未来に向けて、東京が乗り越えなければならない課題は山積。
立ち止まっているときではない。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20091003AS1K0300103102009.html
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