2010年8月28日土曜日

家庭で新聞活用(4)記事の「切り抜き」宝物

(読売 8月14日)

「ママ、この記事切ってもいい?」、
「まだ読み終わってないから待っててね」

春日部市の公務員唐木千恵子さん(46)宅。
夕食後のだんらんで、その日の読売新聞を切り抜くのが日課。
長女の小学4年映里花さん(10)は、くらし面の「こどもの詩」、
解説面の「日本語日めくり」がお気に入り。
長男の小学3年秀徳君(8)は、都道府県や世界各国を
紹介する記事が好き。

みんなが記事を切り抜くので、新聞は穴だらけに。
姉弟は切り抜いた記事を、授業で使い切ったノートに張る。
たまったスクラップ帳は、言葉と情報の宝庫。
何度も読み返している。
「楽しいから続けています。
新聞を読むのが好きになりました」と映里花さん。

「学ぶ楽しさを日々、体験しています」
「夏休み親子新聞教室」にゲストとして参加した際、
母親千恵子さんは、新聞の魅力をこう語った。

唐木さん親子は2年前、この「新聞教室」に参加したことが
きっかけで、新聞作りにのめり込んだ。
旅行記や五輪、皆既日食などをテーマに新聞作りを続けている。

昨年、「日本の食料自給率は40%」という記事に驚いて作った
新聞では、「食料輸入が止まったら、10人のうち4人しか
生きられない」と問題提起。
店で買ってくる魚や野菜の産地を、
半年間記録した結果も同時に紹介。

作品は、地元新聞社のコンクールで優秀賞に輝いた。
作文コンクールにも挑戦し、姉弟ともに入賞を果たした。
千恵子さんは、「基本はスクラップ作り。
親子で楽しむことが一番大事ですね

「こんな記事があったよ」。
平塚市の主婦浅田智代子さん(38)は、夕食時、
4人の子どもに気になった記事を読み聞かせている。
学校や生活の悩みなどに答える、読売新聞くらし面
「人生案内」や地域のニュースなど。

「心にとまった話を伝えたい」と智代子さん。
中学2年の長女直子さん(13)と2年前、「新聞教室」に参加。

直子さんは今、コラム「編集手帳」を切り抜き、
知らない言葉を学ぶことが楽しみ。
小学生の弟たちは、漫画や恐竜の記事が気になる。

母親が、新聞を読む姿を見て育ったという智代子さん。
「そんな姿をいつも見せていれば、子どもも自然と読む習慣が
身に着くのだと思います」。
親の思いを子世代へ、新聞が橋渡しもしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100814-OYT8T00118.htm

三陸旧家の歴史に光 大船渡で研究者が古文書調査

(岩手日報 8月23日)

大学教員らで組織する三陸古文書調査会
(代表・高橋美貴東京農工大准教授)は、
大船渡市三陸町綾里の「砂子浜の大家」千田家の古文書を
現地で調べている。

江戸時代から海商、網元として隆盛し、行政的機能や
文化拠点の役割を果たした旧家の様子をひもといている。
現地調査は、2005年から毎年実施。

今回は10人の調査会メンバーに、地元の市民らが協力。
蔵に保存されていた古文書を、デジタルカメラで1枚ずつ撮影。
撮影枚数は、6年で10万枚以上。

古文書は元禄年間からで、1750年代以降の宝暦・天明が中心。
日誌や帳簿から、当時のカツオなどの漁獲や、
持ち船で魚を仙台や銚子に、加工品を江戸へ出荷していたこと
などがうかがえる。

同調査は、今回が最終年度となる可能性が高い。
事務局長の斎藤善之東北学院大教授は、
「豪商、漁家のほか、地域の公共機能や文化も担う複合的な存在。
論文集として報告をまとめたい」

14代当主の千田基久兵衛さん(82)は、
「資料が研究に少しでも役立てば、ご先祖さまも喜んでくれるだろう」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100823_15

だるさ・食欲不振・無気力…夏バテを科学する 特集ワイド

(2010年8月19日 毎日新聞社)

毎日、うだるように暑い。
体がだるい、食欲もうせ、ボーッとして気力がわかない、
なんていう人も多いのでは。
そもそも夏バテとはどんな症状?
なぜ夏は体調を崩しやすいの?

Q 暑いと、体がだるく、食欲がなくなったり、やる気が低下したり、
夏バテの状態になる。なぜ、夏は体調を崩しやすいのか?

A 夏バテには、はっきりとした定義はない。
北陸大学薬学部臨床薬学教育センターの中川輝昭教授によると、
いくつかの特徴的な症状がみられた場合、夏バテといわれる。

(1)体温調節の不調。
ヒトは、体温が36~37度の時が一番活動しやすい。
暑くなると、血管が拡張して汗を出し体温調節を行うが、
湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ、熱が体内にこもり、
疲れやすくなる。
冷房の利いた室内と、暑い屋外との温度差が大きいと、
体温を調節するリズムが乱れ、自律神経失調症を起こしやすい。

(2)体内の水分・ミネラル不足。
気温が上がり、たくさん汗をかくと、体内の水分と一緒に、
ミネラル分も排出され、体内の電解質バランスが崩れ、
脱水症状を起こす。
体調に異常を起こしてしまう。

(3)食欲低下、栄養不足。
暑さが続くと、胃の消化機能が低下し、栄養の吸収が悪くなり、
食欲不振を起こす。
栄養の吸収が悪いと、ビタミン類やたんぱく質、ミネラルなど
体に必要な栄養素も不足がちになり、だるく感じたり、
根気が続かなくなったりする。
冷たい物ばかり取ると、胃腸が冷え、胃の消化酵素の働きが低下し、
消化不良を起こし、食欲がなくなるという悪循環に。

Q 夏は、なぜ寝苦しいのか?

A 快適に眠るためには、室温が25度前後、湿度は40~60%が最適。
エアコンの風に直接当たると、体温が奪われ、健康には良くない。
室温は、多少高くても除湿をすれば、寝苦しさは多少解消。
寝付かれないとき、牛乳をコップ1杯飲むと良い。
牛乳のカルシウムには、鎮静作用がある。

Q 平熱の高低や、太っているかなどで、暑さの感じ方は違うの?

A 夏に強いか弱いかは、感覚や環境などの要因も関係。
体温や体形で、一律に判断はできない。

自律神経失調症の人は、体温調節がうまくできないため、
夏バテになりやすい。
自律神経失調症気味の人には、体温の低い人が多い。
体温の高い人は夏に強い、と言われるのかも。

Q 女性と男性で、冷房の感じ方が違うのはなぜ?

A 体温は、内臓や筋肉の活動により作られる。
女性の方が、男性より筋肉が少ないため、
同じように熱を作れず、冷えに弱い。
夏もスーツを着用している男性の快適温度は約20度、
薄着の女性は約28度。
8度もの差がある。

Q 「夏」風邪と、わざわざ呼ぶのはどうして?

A 風邪のほとんどは、ウイルスの感染が原因。
ウイルスの数は、200種類以上。
ウイルスは、インフルエンザウイルスなど、寒くて乾燥した
環境を好むものが多いが、暑くて湿度の高い夏のような
環境が好きなウイルスも。

アデノウイルスは、のどの痛みや頭痛を訴え、
39度以上の高熱が続く、俗に「プール熱」と呼ばれる症状や
結膜炎、急性胃腸炎を引き起こす。
エンテロウイルスに感染すると、手のひら、足裏、口内に
水疱が出る手足口病や、高熱とのどの痛みのある
ヘルパンギーナなどになる。

ウイルス感染した場合、インフルエンザなど冬の風邪と
区別する意味で、「夏風邪」と呼んでいる。
「夏風邪」は、冬の風邪に比べ、胃腸障害を伴うことが多い。

Q のどが渇いたとき、冷たい物を飲む方がいい?

A のどが渇いた時、すでに脱水症状が起きている。
冷たい飲み物の方が温かい飲み物より、胃から腸への
到達時間が短いので、渇きが早く潤す。
あまり冷たい物ばかり飲んでいると、消化不良などの
原因にもなるので、飲み過ぎは良くない。

Q 水分補給はビールでも大丈夫?

A ビールに含まれるアルコールには、利尿作用があるため
尿の量が増え、水分がたくさん出て水分不足に。
効果的ではない。

Q 夏に増える怪談話。聞くと涼しくなるの?

A 怖い話を聞いたり、恐ろしい体験をしたりすると、
背筋がゾゾゾッとして寒気がし、体がひんやりする。
冷や汗をかいたり、鳥肌が立ったりすることによる。
その時、皮膚は冷たくなっており、皮膚の血管が収縮するなど
寒い時に起きる反応と同じなので、涼しく感じる。

Q 夏によく食べる物で、ウナギと梅干し、天ぷらとかき氷、
あるいはスイカ--などは食べ合わせが悪いと言われるが、どうして?

A 現代医学と漢方の両面から、食べ物の研究をしている
「東医食治研究会」会長で薬学博士の田村哲彦さんによると、
「ウナギは脂っこさと、梅干しの酸味が刺激しあって、
消化不良を起こすことがある」
一部、「梅干しを食べるとさっぱりするので、
つい食べ過ぎてしまいおなかをこわす」からとの説も。
ウナギと梅干しは、現在の栄養学の観点から見れば、
決して悪くはない。

天ぷらとかき氷も、かき氷やスイカなど、
水分の多いものを大量に取ると、胃液が薄まり、
天ぷらのような油ものを消化しにくくする。

食べ合わせでいけないものとは、胃腸があまり強くない人が、
気をつけたほうがいい組み合わせ。
「胃腸が丈夫な人は、何を食べても大丈夫」だ。

Q 体に悪い食べ合わせは夏に多い気がするが、夏だけなのか?

A 衛生上、食中毒や疫病は夏場に起こりやすい。
食べ物から気をつけようということ。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/19/124222/

北海道大の研究グループ、がん攻撃細胞を活性化させるワクチン

(2010年8月18日 読売新聞)

北海道大遺伝子病制御研究所の西村孝司教授らの
研究グループは、がん細胞を「異物」と認識して攻撃する
免疫細胞を活性化させるワクチンで、
転移性のがんの病巣を消失させたり、縮小させたりする効果が
臨床試験で確認。
国際免疫学会で発表。

人は、「ヘルパーT細胞」という免疫細胞が指令を出し、
「キラーT細胞」と呼ばれる別の細胞が、
がん細胞を攻撃する免疫の仕組みを備えている。

西村教授らは、がん患者から採取したヘルパーT細胞、
キラーT細胞の一部を培養し、人工的に合成したワクチンを作った。

これを、がん患者に投与することで、両細胞の働きを高め、
免疫力そのものを強化するためで、北大と近畿大で
治療を受けているがん患者11人にワクチンを投与。

その結果、4人の患者でヘルパー、キラーとも、
細胞の活性化が確認できた。
乳がんが転移して、首の部分のリンパ節にできたがん細胞が
完全に消失したケースや、大腸がんの転移病巣の拡大を防ぐ
ケースなど、治療効果が認められるものも。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/18/124156/

2010年8月27日金曜日

「疲れないサングラス」の効果をバスの運転手がテスト

(日経ヘルス 8月25日)

8月14~29日までの16日間、大阪市営バスの運転手が、
特殊なレンズの入ったサングラスを着用して運転する
実証実験を行っている。
路面からの照り返しなどの光を遮ることで、
運転時の疲労感が軽減されるかを検証するのが目的。
抗疲労産業の育成を目指す大阪市が、産学の連携をサポート。

実験では、大阪市営バスの40~50歳代の男性運転手約20人が、
9~18時までレンズを着用して勤務、自覚する疲労感を
VAS法(Visual Analog Scale、心理状態を視覚化する一手法)で記録。
レンズを着用した日としなかった日で、疲労感の度合いを比較。

今回の実験に用いたレンズは、タレックス光学工業の
「ザ・レンズTALEX」。
薄さ0.03mmの偏光フィルターを、2枚のレンズで挟んだ構造で、
路面からの照り返しやビルの反射光、紫外線といった光をカット。
レンズは、すでに商品化され、ドライバーやゴルファーが使っているが、
ヒトで疲労軽減効果を実証するのは、今回が初めて。

動物での試験は済ませており、同社と
大阪市立大学大学院医学研究科の井上正康教授との共同研究で、
マウスで疲労軽減効果があることを確かめている。

偏光フィルターが疲労を軽減するメカニズムは、
「雑音の多いところで、何かを聞き取ろうとすると疲れるのと同じで、
必要な視覚情報をとらえるときにも、乱反射する光のような
“雑光”があると、ストレスが大きくなり疲労が増大する。
偏光フィルターは、必要な光以外を遮るので、
ストレスを軽減できる」と井上教授。

「ザ・レンズTALEX」には19色の製品があり、
今回用いたのは、晴天の屋外向けでグレーの“トゥルービュー”という
色のもの(価格は2枚1組、6300円から)。

屋内でのPC作業などに向く、無色透明に近いレンズもあり、
こちらの疲労軽減効果についても、
井上教授らが現在、動物試験で確かめている。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20100825/108304/

家庭で新聞活用(3)調べる意欲を育む手段

(読売 8月13日)

「選んだ記事をもとに親子で話しあい、
どう表現するかやってみましょう」

私立聖心女子学院初等科で、6年生の児童・家族48組
約100人を集め、新聞を使った課外授業が行われた。

指導したのは、岸尾祐二教諭。
読売新聞主催「夏休み親子新聞教室」でも講師陣に加わり、
指導にあたった。
来年度から使われる、新しい社会科の教科書を執筆した一人。

参加家族ごとに当日の新聞のほか、切り取った記事を張ったり、
感想を書き込んだりできる白い紙が渡された。
教諭が、「記事を読んで、思いついた四字熟語や
ことわざを書き出しましょう」と説明。

「念には念を入れる」、「石橋をたたいて渡る」といったことわざを
思いついた児童が選んだのは、他の動物が入り込んで
天然記念物のトキが襲われないようケージを再度、
補強するという記事。

出来事を知るという目的だけでなく、思考のきっかけにしたり、
国語の力を伸ばしたりするために、新聞は使える」と岸尾教諭。
児童が楽しめるよう、さまざまな手法を考え、
授業に取り入れている。

熱心に新聞を読んでいたIさん(11)は、
「何気なく新聞を読んでいると、なるほどと思っただけで
終わってしまう。
授業で新聞を使う時、取りあげられた人がどんな気持ちでいたのか、
といったことを考えさせられ、おもしろい」と笑顔。

新聞を使う学習で、必ず用意するのが、辞典などの参考書類。
今回の催しは、学校の図書室で行った。
子どもたちは、そうした本を新聞の脇に並べ、ページをめくった。
パソコンで、インターネットを使いながら、
新聞を広げた親子もいた。
こうした環境だと、知らない言葉だけでなく、
興味のわいた事柄も調べることができる。

「サッカーW杯なら、参加国の文化を調べたり、
主催国南アフリカにかつてあったアパルトヘイト(人種隔離政策)を
取りあげてもいい。
話題をどんどん広げていくことが、新聞活用で大事な点

保護者も交えたこうした課外授業を定期的に行うのは、
家庭でも日頃から新聞の教育的な活用を意識してもらうため。
大人向けに書かれた新聞は、難しい表現も多い。
親のサポートも大事。
助け舟を出すことはもちろん、自分から調べる意欲を
育てるようにしたい。

記事で紹介された場所を親子で訪れたりすれば、
子どもはもっといろんなことを知りたくなる。
「昔と比べ、保護者は忙しいとは思いますが、
子どもの世界を広げる手段として、新聞をぜひ活用してほしい」と
岸尾教諭は呼びかけている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100813-OYT8T00351.htm

科学の話、出前します「研究の理解者増やしたい」

(2010年8月24日 読売新聞)

科学者がカフェなどで話をしたり、
実験教室を開いたりする動きが盛ん。
研究成果を社会に生かそうという試みで、国を挙げての取り組み。
「理科は苦手」、「難しい」と敬遠しがちだが、参加してみると、
意外と楽しく、暮らしとの接点が見つかりそう。

「ガリレオ・ガリレイ」(名古屋市)は、科学をテーマに、
昨年6月にオープンしたイタリアンレストラン。

店内で天体の立体映像が楽しめるほか、第一線で活躍する
科学者を招いた「サイエンスカフェ」を、週末に開いている。

今月8日、早稲田大学の竹山春子教授が、
「遺伝子情報って役に立つの?」と題して、
最前線の遺伝子研究を紹介。
親子連れなど、約30人が耳を傾けた。
参加費はランチ、ドリンク付きで大人2000円。

名古屋市の会社員谷川有美さん(37)は、
「難しい所もあったけれど、ランチのついでに、
研究現場の雰囲気がわかって面白かった」

この店を運営する「ナノオプト・メディア」(東京)は、
環境エネルギーの専門家の藤原洋さん(55)が、
科学技術の情報発信を掲げて設立した会社。

「科学に、関心も興味もない層が増えた。
科学離れを食い止めるには、先端の科学者と触れ合う場が必要」

科学者が気軽な雰囲気で、一般市民と話し合うサイエンスカフェは、
1990年代にヨーロッパで始まり、日本でも各地に広がっている。

独立行政法人「科学技術振興機構」では、
サイエンスカフェの情報をホームページ「サイエンスポータル」に掲載、
2008年の掲載件数は589件。
今年は、8月上旬までで719件に増えた。
主催者も企業や大学、NPO、個人など様々。

有機化学の研究者で東邦大学名誉教授の岩村道子さん(69)は、
退職後の08年4月から、住まいのある東京・高輪で、
サイエンスカフェを始めた。

教会を会場に、2か月に1度、「子どもたちの健康と環境」などの
話題を選んで講師を招く。
「大学とは違い、身近な場所で開くので、いろんな人に来てもらえる」

実験を通じて、科学を伝える試みも盛ん。
バイオ関連の企業や研究者らがかかわるNPO法人
「くらしとバイオプラザ21」(東京)の主席研究員佐々義子さん
各地で開いているのは、台所から科学を学ぶ
「キッチンサイエンス」の教室。

ブルーベリーの成分「アントシアニン」が、レモン汁や重曹で
色が変わる化学反応を、ケーキ作りで知る。
「台所は、化学・物理反応の宝庫。
科学が縁遠いものではない、と知ってもらえれば」

科学を伝えるこのような試みは、
「サイエンスコミュニケーション」と呼ばれる。

子ども向けに博物館などで行われていたが、
大人向けに多様な形で街に広がってきた。
サイエンスライターで、「科学との正しい付き合い方」の著者、
内田麻理香さんは、「科学技術がブラックボックス化して、
『よくわからない』、『なんとなく怖い』と思われている。
研究への理解者を増やしたい、という思いが科学者側にある

大学の独立行政法人化や事業仕分けをきっかけに、
科学技術予算に厳しい目が向けられ、
社会に成果をアピールする必要が増してきたという事情もある。

◆研究成果 社会に訴え

国も、「サイエンスコミュニケーション」を重視。
第3期科学技術基本計画(2006年度から5か年)に、
「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」を盛り込み、
科学と社会との橋渡し役となる「科学技術コミュニケーター」などの
人材養成に乗り出した。

北大、東大、早稲田大の三つの大学のほか、
国立科学博物館などでも、理科系の大学院生などを対象に、
科学を説明する能力を磨くコースを設けている。

06年から養成講座を始めた国立科学博物館では、
すでに39人の「認定サイエンスコミュニケータ」が誕生、
企業や大学などで科学技術の広報活動に携わっている。

今夏、総合科学技術会議が年間3000万円以上の
公的研究費をもらう研究者に、「国民との科学・技術対話」を
求める方針を打ち出した。
該当する研究者数は、少なくとも2000人を超え、
今後、様々な形で科学者が研究成果を発表する機会が増えそう。

国立科学博物館の「サイエンスコミュニケータ養成実践講座」の
講師を務める独立行政法人「科学技術振興機構」の渡辺政隆さんは、
「サイエンスコミュニケーション」の狙いを、
「理科や科学と聞いただけで、シャッターを閉じるように
敬遠してしまう風潮をなくすこと」と解説。

食の安全が揺らぐなど、何を信じたらいいかわからない
不安感が高まっている。
それにつけ込むように、科学を装って効果や効能をうたう
「インチキ科学」も後を絶たない。
「自分で必要な情報を集めて、判断することが求められている。
専門家と一緒に、科学について考える場が役に立つ」

現状のサイエンスカフェなどの中には、
「科学者から一方的に研究成果を伝えるだけで、
一般人にはわかりづらいものもある」と指摘。
「科学に関心を持つ人を増やせるかどうか、
伝え方が問われている」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/24/124415/

釣りゲームでリハビリ 札幌医大、ハドソンと開発

(2010年8月16日 共同通信社)

厳しいリハビリも、ゲーム感覚で-。
札幌医科大(札幌市)の金子文成保健医療学部准教授らの
グループが、ソフト制作のハドソン(東京)と連携し、
ゲームの楽しさを取り込んだリハビリ用のソフト開発を進めている。

試作第1弾は、同社の市販ソフト「めざせ!!釣りマスター」の
プログラムを、金子准教授らが開発した
リハビリ機器で操作できるよう改修した。

パソコンにつないだリハビリ機器の棒状ハンドルを、前後左右に操作、
画面上の仕掛けを動かして魚を誘い、掛かった魚を
一定時間決められた位置に保てれば成功。
魚は、イワナやコイなど6種類、種類によって引きが違い、
釣り上げる際の手応えは本物さながら。

部品を取り換えて、脚のリハビリにも活用できる。
脳卒中の後遺症などで、手足にまひが残る患者の利用を想定。

これまでも、サッカーのシュートを打つソフトがあったが、
変化のパターンが少なかった。
ゲーム会社との連携により、
飽きにくくリハビリ意欲を高めるソフトを目指す。

金子准教授は、「サポートする理学療法士がいない時間にも楽しめ、
全体的なリハビリ量を増やせる。
効果を検証した上で、普及版の研究開発を進めたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/16/124024/

2010年8月26日木曜日

家庭で新聞活用(2)自作紙面 切り口様々

(読売 8月12日)

「ホームラン 三本打って気もちいい」
東京都葛飾区の小学3年生は、巨人のラミレス選手が
ガッツポーズする写真と記事をスクラップ帳に張り、
そこに自作の句を大きな字で書いた。

サッカーで失点し、悔しがるゴールキーパーの写真には、
「ごめんなさい 同点ゴール入れちゃった」と添えた。

壇上の小学3年生は満面の笑みで、
「記事の登場人物の気持ちを、うたにしました」と、
制作の狙いを語ってくれた。

読売新聞東京本社で開かれた「夏休み親子新聞教室」では、
参加者の中から選ばれた親子5組が、壇上で自作の新聞を披露。
気になる記事や写真を切り抜き、独自の視点で味付けした
「自分新聞」を手にした子どもたちの説明に、会場が盛り上がった。

東京都江戸川区の小学4年生は、
紙面で見つけた笑顔の写真に感想を加え、
「ハッピーニュース」を作った。
選んだのは、自作の弁当を見せる中学生や
W杯決勝トーナメント進出を決めたサッカー日本代表の選手たち。
小学4年生は、「みんなの笑顔が気に入りました」
父親(41)は、「ハッピーなニュースが少ない中、
見つけることができ、すごく良かったなと思います」

神奈川県海老名市の小学5年生と父親(43)は、
別々に新聞を作った。
小学5年生は「鍾乳洞」、父親は「エンジン」がテーマ。
父親が、「互いの新聞を見比べ、コミュニケーションを取ろうと思う」と、
大きな拍手が起きた。

新聞づくりのための切り口は様々。
会場では、新聞を使った授業を実践している先生方の報告も行われ、
参加者たちが熱心にメモを取っていた。

越谷市立東越谷小の中山正則教諭は、
野菜の栽培記録「夏やさい新聞」を紹介。
小学2年の児童が育てたナスや枝豆などの観察日記を、
カラフルな1枚の新聞に再編集。
日記を読み返して内容を絞り、見出しを付けて紙面を作ることが、
書くことへの自信につながっている。

八王子市立元八王子中の林彩教諭は、
新聞の写真とその解説や感想を組み合わせた
「フォトストーリー」を提案。
テーマは、初夏やゲリラ豪雨、サッカーW杯など。
「写真に注目すると、新聞が楽しく読めるようになる」

「はがき新聞」を指導したのは、
さいたま市立馬宮中の小谷野弘子教諭。
はがき大の紙に、生徒たちが好きな本や映画の紹介、
職場見学の体験記などを、見出しを付けてまとめた。
「はがきなので、言葉は短く、まとめやすい。
お世話になった人に出せば、喜ばれますよ」とアドバイス。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100812-OYT8T00237.htm

ルービックキューブ、20手以内で必ず完成!

(読売 8月17日)

立方体の6面の色をそろえるパズル「ルービックキューブ」は、
どんな局面でも20手以内で完成できることを、
米独の科学者らが証明、30年にわたる研究の歴史に決着。

米オハイオ州のケント州立大学のモーリー・デビッドソン准教授(数学)ら
研究チームはまず、4325京(京は兆の1万倍)通りある
パズルの開始局面を、上下逆さまにすれば同じになる
局面などを除いて絞り込んだ。

同州のスーパーコンピューター研究所に、
大型コンピューターの使用を申請し却下されたものの、
米検索大手グーグルが、社内のコンピューターの空き時間を提供、
数週間にわたり全局面を計算。

その結果、各面の色がどんなにばらばらでも、
20手あれば必ず完成できることが分かった。
20手が必要な局面は、3億通りあると推定。

ルービックキューブは、1974年にハンガリーの建築学者が発明。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100817-OYT1T00501.htm

自家用車で高齢者送迎 「地域の足」を確保・北上

(岩手日報 8月23日)

北上市口内町のNPO法人くちない(昆野先男理事長)は、
自家用車を活用して有償の乗客運送を始めた。

市中心部から10kmほど離れ、高齢化も進行する口内地区。
通院利用などで、交通手段の確保が難しい高齢者らの
利便性向上に一役買う。

新たな「地域の足」に、利用者から「便利なので助かる」と歓迎の声。
「バス停から家まで歩いて1時間半かかる。本当に助かります」
昆野ミキさん(68)は、市中心部への通院の帰り、
最寄りのバス停から自宅までの約2・2kmを利用し、笑顔を見せた。

ドライバーの昆野助男さん(70)は、
「まずは安全運転が第一。
相手の様子を見ながら会話もして、気持ちよく乗ってもらいたい」

市東部に位置する口内地区は、人口約1780人。
高齢化率は40%に迫る。
公共交通機関は、県交通のバス1路線だけ。

同法人は、08年度から運送の社会実験や関係者との協議を進め、
岩手運輸支局に自家用車有償運送の登録を申請。

利用は会員制で、地区内でバス停、金融機関などへの区間を
運行する「過疎地運送」、身体障害者、要介護認定者らを
中心部の病院や官公庁に運送する「福祉運送」―の2種類。

地区内の8人がドライバーを務める。
登録者数は、「過疎地」が約100人、「福祉」が13人。

先月29日のスタートから利用は数件だが、
広報紙を発行するなどして周知を図る。

同法人の菅野甚一事務局長は、
高齢化が進む地域で、暮らしやすさについて
一つ一つ考えていかなければならない。
この運送を活用した日常生活用品の調達なども検討したい」

原則土、日、祝日を除き午前8時~午後6時まで運行。
運賃は、「過疎地」が年会費千円を支払った場合、
1回100円、それ以外は初乗り(1・5kmまで)300円から。
「福祉」は800~1200円。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100823_11

アルツハイマーにうまい予防法…食べるワクチン

(2010年8月16日 読売新聞)

アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質を含む
ピーマンを食べると、病気の予防につながる効果があることを、
東京大学の石浦章一教授らがマウスの実験で確認。
「食べるワクチン」として臨床応用が期待。
米科学誌に発表。

アルツハイマー病の患者の脳(大脳皮質)には、
アミロイド・ベータというたんぱく質が沈着・凝集し、
老人斑ができている。
これが、認知機能の低下などを起こすと考えられている。

免疫の働きを利用し、素早く大量の抗体を作り出して
このたんぱく質を除去させるため、
米国でアミロイド・ベータをワクチンとして注射する臨床試験が
行われたことがあるが、過剰な免疫反応による副作用が問題となり、
中止になった。

石浦教授らは、注射でなく食べて腸から吸収すると、
副作用が起こりにくいことに着目。

アミロイド・ベータの遺伝子を組み込んだピーマンを作り、
その青葉を青汁にして、アルツハイマー病を発症するように
遺伝子を操作したマウスに与えた。

何も与えなかったマウスは、発症して1年ほどで死んだが、
青汁を与えたマウスは16か月以上生存、
脳に老人斑は見られなかった。
副作用も少なかった。

石浦教授によると、アミロイド・ベータを含む米などを作れば、
人間が食べやすくなる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/16/124032/

2010年8月25日水曜日

国際水準に達した国内学術誌は可能か

(サイエンスポータル 2010年8月9日)

日本学術会議の学術誌問題検討分科会が、
国内の研究者が海外の学術誌を自由に読めなくなっている
現状に対し、早急な対応を求める提言を発表。

研究者のボランティア活動や公的支援に頼っていた日本と、
いち早くビジネスモデルづくりに成功した海外大手出版社との
違いに加え、IT化が決定的な差をつくったことが指摘。
提言から、日本の学術誌、研究者の苦境を示す実態を見てみたい。

20世紀半ば以降、海外の大手商業出版社は、
学術誌の市場を大きなビジネスチャンスととらえ、
学術誌の出版権を次々に入手するとともに、
市場の独占を進めていった。

学術誌の電子媒体化の加速的進行により、
学術誌商業出版社は巨大なプラットフォームを構築し、
多くの学術誌を同時かつ瞬時に処理できるようになり、
出版権の拡大をより容易にした」

これに対し、日本の学術誌はどうか?
「(1)学術団体が独自に出版、
(2)制作・広報・販売など部分的に国内外の出版社に委託して出版、
(3)制作・広報をJST(科学技術振興機構)や
NII(国立情報学研究所)など公的支援を受けて出版、
という3つに大別。
JSTやNIIが、電子ジャーナル化やパッケージ・ポータル化を推進、
いまだ学術誌による発信力が国際水準に達していないのが現状

JSTは、J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)により
電子化を支援、583の国内学術誌が電子ジャーナルとして刊行、
そのうち449誌が無料で閲覧。

NIIも、NII-ELS(学術団体が刊行する学術誌を電子化し、
蓄積・提供する電子図書館)によって、1,069の国内学術誌が電子化、
そのうち583誌は無料で一般公開(2009年現在)。

大手商業出版社や大手学会出版が、主導的な役割を果たしている
海外とは、だいぶ様相が異なる。

結果として、「学術誌による発信力が、国際水準に達していない」
現状を招いてしまった。
提言は、理由の一つとして「学術全体もしくは各学術団体が
それぞれの分野の発展の姿に合わせて、
学術情報発信システムを自ら設計・推進することに対し、
科学者視点に立ち、合理的かつ効果的に支援する場が
無かったこと

現状の改善が容易でないことを伺わせる、さらに具体的な記述。
「学術誌にとって、掲載されている論文の質を高めることが
最重要であることは論を待たない。
欧米では、編集長はその学術誌の顔であり、
人選は慎重に行われ、学術誌によっては専任の編集長を置く。
その責任をまっとうするため、任期も長い。

わが国では、2~3年で交代することが多く、
学術誌の顔となること、編集長のリーダーシップによる
戦略的な将来設計を行うことが難しい。

欧米では、編集長もしくは編集委員をサポートする人材として、
学位取得者のスタッフが雇用されることが多く、
人材には相応の責任と待遇が与えられている。

わが国では、一部に専任編集長の雇用や、
編集長の任期長期化の試みが見られるものの、
基本的に短期間で交代するため、
長期的な戦略性が見られることは少ない。
編集スタッフは、学術団体の会員で構成される編集委員会の
お手伝い的な編集事務の扱いにとどまっていることが多い。
わが国では、学術の進展と変化に応じ、世界に伍して
編集を牽引できる専門家がほとんど存在していない」

一般向け科学雑誌の編集長が務まる人材は、日本にもいる。
学術誌の編集長を本業にしたいという人が、果たしてどのくらいいるか?
日本の研究者、基礎研究者の多くが、
「ネイチャー」、「サイエンス」などに欧米の著名科学誌に
論文が載ることを望んでいる。

提言が求める「国際的に通用するリーディングジャーナルの育成」
一つとっても、実現は容易でない。

http://www.scienceportal.jp/news/review/1008/1008091.html

家庭で新聞活用(1)自分好みにスクラップ

(読売 8月11日)

新聞を教材として生かし、子どもたちの知識や応用力を
高めることをめざすNIE(新聞活用教育)。

来年度、小学校の教科書に幅広く取り入れられることから、
家庭でも関心が集まっている。

読売新聞東京本社で開かれた
「自由研究に役立つ夏休み親子新聞教室」。
113組250人の親子連れが詰めかけた。

参加者には、サッカーW杯の日本戦や小惑星探査機
「はやぶさ」の地球帰還などを報じた朝刊、夕刊のほか、
新聞1ページをそのまま張ることができる
大型のスクラップ帳が配られた。

好きなテーマを決め、気に入った記事や写真を切り取り、
スクラップ帳に張り付け、意匠を凝らした「自分新聞」に仕上げる。
どのように進めるか、会場では新聞を見ながら熱心に話し合う
親子の姿があった。

作業に当たり、元中学校教師の鹿野川喜代美・
読売新聞NIE企画デザイナーが、
写真を集めてコメントを書き込んだり、
4コマ漫画にタイトルや感想を添えるなどの手軽な方法を紹介。
「テーマは、食べ物でもスポーツでも何でもいい。
記事を読んで、気に入ったものを集めるだけで読む力がつく」

「はやぶさ」の写真と記事を張り付けたのは、
千葉県八千代市の小学6年生。
「遠いところから帰ってきたのがすごい。
写真がドーンと新聞に載っていたから、
それを中心に自分でまとめたい」

W杯のことに関心を持った子も多かった。
東京都江東区から来た小学3年生は、
サッカーJ1のFC東京が開いているスクールに通っている。
同チームから代表に選ばれた、長友佑都選手に注目。
同選手の姿をとらえた写真を新聞から集め、
試合のコメントなどとともに張り付けた。
「海外に移籍し、スタジアムで応援できなくなるのは残念。
頑張ってほしい、という気持ちを込めました」

夏休みの宿題に「新聞作り」が出され、
「やり方を知りたい」と参加した親子も。
小学校に次いで、中学校の教科書でも、
再来年度から新聞を取り入れた学習が入ることになり、
そうした課題も今後増えそう。

鹿野川デザイナーは、「テストに出るから、といって取り組むと、
子どもは萎縮してしまう。
じっくり楽しみながら続ければ、着実に力がつき、
世界が広がってくる」

記事を話題に、会話が弾む。
新聞は、家庭でコミュニケーションの道具になる。
子どもの育ちに役立てようと、親世代も理解を深めつつある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100811-OYT8T00400.htm

中高年、ウオーキングに注意

(2010年8月16日 読売新聞)

猛暑の中でウオーキングする時、熱中症を防ぐために、
中高年は若い世代の1・7倍の水分補給が必要なことが、
滋賀県立大学の寄本明教授(運動生理学)の調査でわかった。

寄本教授は、年代の異なる約200人を対象、
様々な温度や湿度でウオーキングした時の発汗量を測定。
熱中症予防には、発汗量の8割の水分補給が必要、
1時間のウオーキングに求められる水分量を計算。

その結果、中高年(40~79歳)は汗をかきやすく、
35度以上の猛暑では、男性は1060ml、女性は890mlの
水分を必要とすることがわかった。
18~39歳の男性の620ml、女性の520mlに比べ、
それぞれ1・7倍。

寄本教授は、「中高年のウオーキングは、若者のジョギングに
相当するような発汗をもたらす。
目安の量を何回かに分け、こまめに補給してほしい。
暑さが厳しい時は、運動を中止するべきだ」

健康のため、長い距離を歩くウオーキングは、
中高年を中心に約4000万人が取り組んでいると推定、
夏も多くの大会が開かれている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/16/124047/

「子どもの才能」「肥満タイプ」判定、遺伝子検査ビジネス横行

(2010年8月14日 読売新聞)

インターネット通販で、手軽に受けられる遺伝子検査が増えている。
がんやアルツハイマー病のリスクが分かるとするものや、
子どもの「才能」が分かるとうたうものまで。
科学的根拠は、必ずしも明確でなかったり、
説明が十分でなかったりするものも多く、
日本人類遺伝学会や専門医らは、
「利用者に、大きな誤解と不安を与える恐れがある」、
「遺伝情報は、血縁者にも影響がある重大な個人情報。
専門家のカウンセリングなしの検査は危険」と警鐘。

◆ネットなど330業者

経済産業省の調査では、遺伝子検査を行う業者は330。
インターネット通販やクリニックなどで販売、
肥満のタイプや生活習慣病のリスクのほか、
がんやアルツハイマー病のリスク判定をうたったものなど。
健康食品などの販売につなげる例や、肥満や骨粗しょう症の
遺伝子検査を客に受けてもらい、結果に応じ、
エステメニューの提案に利用するエステサロンも。

子供の「才能」がわかるとするものも登場。
説明会を開いた会社は、遺伝子検査で知性、運動、芸術など
6分野の「才能」がわかるという商品を販売。
綿棒で、ほおの内側の粘膜をぬぐい取ったものを、
開発元の中国企業へ送り、遺伝情報を解析した結果を知らせる。

知性分野なら、記憶力、理解力など6能力について、
「優秀」、「良好」、「一般」、「不利」の4段階に評価。
料金は5万8000円。
6月からインターネットで販売を始め、約200件の申し込みが。

「世界中の論文を基にしていると聞いた。
科学的根拠はあると判断している」と同社社長。
北里大臨床遺伝医学講座の高田史男教授は、
「説明文書を読んでも、遺伝子の機能の説明と、
それが人間の潜在能力にどう影響するかという解釈に、
非論理的な飛躍がある」と疑問。
別の会社では、同じ商品を「才能占い」と名付けて販売。

遺伝子検査ビジネスには、「科学的根拠が十分でないものや
結果の解釈が確立されていないものも少なからずある」(高田教授)。
経産省は2004年、客観的データの明示や専門医らによる
カウンセリング体制の整備を求める指針を作成、強制力はない。

日本人類遺伝学会は、00年に注意を呼びかける勧告を発表。
08年、消費者が直接買える商品について、
公的機関の監督を求める見解を出しているが、規制はない。

◆「究極の個人情報」認識が希薄

「21世紀は遺伝子の時代」と言われ、医療現場では、
遺伝性がんの診断や抗がん剤の副作用予測など、
遺伝子検査が続々と実用化。
これらは、大規模な臨床研究に基づいている。

健康志向など、現代人の欲求に応える形で、
評価の定まっていない研究などを基に増えているのが
遺伝子検査ビジネスだ。

医学界が懸念を強めるのは、科学的根拠が乏しいからだけではない。
遺伝情報が生涯変わらず、本人だけでなく血縁者も含めた
「究極の個人情報」だとの認識が希薄。

専門家のカウンセリングが不可欠だが、
北里大などの調査では、クリニックが窓口になっている場合でさえ、
約半数が口頭による事前説明すら行っておらず、
結果を郵送や受付で返却するだけの施設も。

国は、「今は産業として育成する段階」(経済産業省)、
「医療行為に踏み込まなければ監視の範囲外」(厚生労働省)と
事実上、黙認。

福嶋義光・日本遺伝子診療学会理事長(信州大教授)は、
「十分な予備知識のないまま、検査結果を知らされることは、
利用者の人生に重大な影響を及ぼす可能性がある。
放置は危険」と、法的規制の必要性を強く訴える。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/16/124042/

2010年8月24日火曜日

海外出版社の学術情報独占への対策提言

(サイエンスポータル 2010年8月9日)

日本学術会議の学術誌問題検討分科会は、
学術情報が海外の学術誌商業出版社や大手学会出版に独占、
研究活動に支障が出ている問題を解決するため、
科学者、学術団体、政府・評価機関、図書館、学術情報流通の
専門家などによる横断的統合組織の設置を求める提言。

具体的な対策として、国内で複数の公的機関が持つ
学術誌閲覧提供機能の統廃合や、国内学術誌アーカイブ、
電子ジャーナル事業など、日本の学術情報受発信体制の
一本化と強化を求めている。

研究成果の発表の場となっている学術誌は、
学術活動の維持、発展に欠かせないもの。

提言によると、20世紀半ば以降、海外の大手商業出版社が、
学術誌の市場をビジネスチャンスととらえるようになった。

IT化により、学術誌の電子媒体化が急激に進み、
海外の大手商業出版社は、学術誌単体ではなく、
パッケージ契約を導入し、拡大する販売戦略を進めている。

この結果、学術誌の購読料は高騰し、中小規模の学術研究機関の
中には、高額なパッケージ販売の電子媒体学術誌の購入を
断念するところも出てきた。
電子媒体学術誌の契約を中止すると、過去に利用できていた
学術誌にアクセスすることができなくなる問題。

提言は、「電子ジャーナルの網羅的・安定的・継続的な供給を実現」、
「日本の優れた研究活動を国内外に力強く発信し、
かつ持続性と競争力を持った流通基盤を提案、構築する」など
課題を挙げ、新しく設置する横断的統合組織
「包括的学術誌コンソーシアム」で、
これらの課題解決策を探るよう求めている。

科学技術振興機構と国会図書館の学術誌閲覧提供機能を
統廃合することや、科学技術振興機構のJ-STAGE、Journal@rchive
国立情報学研究所のNII-ELSの統合による
国内学術誌アーカイヴに対するワンサイトの受発信体制の実現、
J-STAGEと国立情報学研究所のSPARC JAPANなどの統合による、
国際的に通用する電子ジャーナル総合プラットフォーム作りなども提言。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1008/1008091.html

化学物質に対する周知度の差は

(サイエンスポータル 2010年8月20日)

内閣府が、「身近にある化学物質に関する世論調査」の結果を公表。
「化学物質」という言葉についての印象について、
「危ないもの」69.7%、「現在の生活になくてはならないもの」25.5%。

最初の質問は、「化学物質」という言葉の周知度を見たもの。
「よく聞く」57.5%、「あまり聞かない」42.5%。
この数字を、どう見るべきなのだろうか?

「あまり聞かない」と答えた人たちが、
「化学物質とは何か、実はよく分からない」人たちだったとすると、
こちらの方こそ心配では。

そうした懸念が取り越し苦労ではないかも、と思わせる数字も。
住んでいる地域や男女による回答の差はほとんどないのに対し、
年齢による差は大きな違いがある。

60歳代で65%、70歳以上で60.3%が、化学物質という言葉を
「よく聞く」と答えているのに対し、20~29歳は際だって低く、
「よく聞く」36.8%しかいない。
「よく聞かない」63.2%、はるかに多くなっている。
30~39歳も「よく聞く」(50.4%)、「よく聞かない」(49.6%)。
若い層ほど、「化学物質」という言葉を「よく聞かない」人が多い。

「化学物質」という言葉についての印象について、
20~29歳は「危ないもの」62.6%、
「現在の生活になくてはならないもの」25.7%、
それ以上の年齢層を加えた平均値である69.7%、25.5%と
それほど乖離は見られない。

ゆとり教育の是非が大きな問題となり、小学校・中学校の
新学習指導要領が08年告示。
小学校は11年度、中学校は12年度から完全実施、
授業時間の削減が続いていた小・中学校の理科と数学の
授業時間増が図られる。

理科の授業時間が減り出したのはいつからか?
小学5、6年の理科の授業時間削減が始まったのが80年度、
中学1、2年で81年度。
92年度には小学1、2年生の理科がなくなり、社会科もなくなり、
代わりに生活科という科目が新設。

生活科を履修した、小学1、2年で理科がなかった最初の人々が、
今年度に25~26歳に。
80年度と81年度に初めて小学5、6年と中学1、2年で、
理科の授業時間削減を経験した人たちが、今年度に41~43歳に。

「化学物質という言葉をよく聞かない」人たちが、
20~29歳で急に増え、30~39歳も40代、50代、60代、
70歳以上の各年齢層に比べ、7~14ポイント増になっていること、
小・中学時代の理科の授業時間削減は関係ないと言えるか?

理科や数学の授業時間が増える新学習指導要領でも、
小学1、2年生の生活科はそのままに。

http://www.scienceportal.jp/news/review/1008/1008201.html

2事業への交付決定住田の町づくり補助金 菜種油活用と自然DVD

(東海新報 8月18日)

住田町が、町民による地域づくり事業を支援する
「みんなでできる町づくり事業補助金」の交付先が、
このほど決まった。
菜種油を通じた地域活性化、住田の自然美を映像化して
発信する2事業で、取り組みは今後本格化。

同事業は、平成21年度を初年度とする3カ年継続事業。
分野は特に問わず、地域課題解決などに向けた
非営利の事業に対し、30万円を上限に事業費を補助。

本年度、5人以上の町民組織か拠点を町内に置き、
活動する団体を対象に申請を募っていた。

「花と香りの里恵山婦人部会」(小野ちか子代表)、
「すみた森の案内人ビデオカメラ部会」(菊池賢一代表)の2団体。

審査会は、町生活改善センターでこのほど開かれ、
両団体による事業内容説明を公募委員や
町産業振興課職員が点数評価。
その結果、新規応募の恵山婦人部会に満額の30万円、
継続事業である森の案内人ビデオカメラ部会には
11万2000円の交付が決まった。

恵山婦人部会は、「なたね油を学んでつくろう地域の輪事業」と銘打ち、
遊休農地対策として近年行っている菜の花栽培をもとに、
菜種油の特性を知る栄養教室や研究会開催、
手づくりおやつなどメニュー開発を展開する計画。

森の案内人ビデオカメラ部会は、
すみたの自然の良さをDVDで紹介する事業」とし、
種山ケ原や五葉山麓など、町内の自然PRのためのDVD制作を計画。
これを活用し、種山と五葉への来訪者を、1200人程度増やしたい。
学校などにも贈り、環境保護意識高揚にもつなげていく。

町では本年度、今回に先立ちチェーンソーアートを通じた
地域活性化、住民レベルで町の情報発信を目指す
テレビ番組づくりの両事業への補助も採択、
今後の取り組み成果が期待。

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年8月23日月曜日

遺族にDNA保存呼び掛け 戦没者の遺骨と照合 「終戦65年」

(2010年8月13日 共同通信社)

太平洋戦争で激戦があった沖縄などで、
今も発見される日本兵らの遺骨のDNA照合に役立てようと、
戦没者遺族に市販のキットを頒布して、自身のDNAを保存するよう
呼び掛ける活動を、佐賀県のNPO法人が始めた。

戦没者の遺骨収集に取り組むNPO法人「戦没者追悼と平和の会」
(佐賀県みやき町)は、市販のDNA採取キットを2千円で頒布。
スポンジ付きの棒で、ほおの内側の粘膜を採取、
保存袋に入れ冷蔵庫で保管すれば、100年程度は保存。

遺骨のDNA鑑定は、歯や骨の髄から抽出したDNAを、
遺族から取った検体と照合して、血縁関係を判定する仕組み。

厚生労働省は2003年以降、シベリア抑留者を中心に、
遺骨のDNA鑑定で約770人の身元を確認。

自身も、父親を太平洋戦争末期の沖縄戦で亡くした
同会の塩川正隆代表理事は、
「(DNAの保存呼び掛けは)本来、国がやるべき仕事だが、
血縁関係の濃い遺族が高齢化し、会として取り組むことに」

キットの問い合わせは同会事務局、電話0942(89)5135。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/13/123987/

喫煙と循環器疾患が肺年齢の老化促進 ファイザー調査

(2010年8月13日 毎日新聞社)

40歳以上の会社員を対象に、肺年齢と実年齢の違いを
チェックしたところ、喫煙歴と循環器疾患がともにある人は、
実年齢よりも平均14.8歳老化が進んでいることが、
製薬会社、ファイザーの調査で分かった。

健診機関の協力を得て、2月8日~3月5日に健診を受けた
657人(平均年齢53.9歳)の測定結果と喫煙歴・治療中の
疾患などのアンケートをあわせて解析。

その結果、喫煙歴・循環器疾患ともにある人は同14.8歳、
喫煙歴あり・循環器疾患なしは同11.9歳、
喫煙歴なし・循環器疾患ありは同8.5歳、
喫煙歴・循環器疾患なしは同6.7歳、
それぞれ実年齢より老化が進んでいた。

同社は、喫煙が老化を加速することは知られているが、
循環器疾患があることで、肺年齢の老化が進みやすいことが示唆。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/13/123995/

胃粘膜を修復する2酵素を特定…都研究所チーム

(2010年8月13日 読売新聞)

胃の粘膜を修復する働きがある酵素を、
東京都臨床医学総合研究所などの研究チームが
マウス実験で突きとめた。
胃潰瘍などの治療や予防への応用が期待。
米学術誌プロス・ジェネティクスに発表。

胃は、細菌や胃液などから粘膜を防御したり、
修復したりするため、粘液を分泌。
出血性の胃疾患は、粘液の成分などに問題があると生じる。

研究チームは、胃粘膜表面の粘液分泌細胞がつくる酵素
「カルパイン8」、「同9」に着目。
これらの酵素を作れないように遺伝子操作したマウスに、
アルコール濃度40%の溶液を飲ませたところ、
胃粘膜に損傷がみられた。

酵素を作れるマウスに、同じ濃度のアルコール溶液を飲ませても、
胃はほぼ正常だった。
2種類のカルパインは一体となって、
傷ついた胃粘膜を修復すると考えられる。

チームの反町洋之参事研究員は、
遺伝子のわずかな個人差で、酵素の効き方が異なるため、
体質に応じた胃疾患の診断や予防につながる

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/13/123975/

2010年8月22日日曜日

どんな抗生物質も効かない細菌の感染者見つかる 英研究チームが発表

(2010年8月13日 共同通信社

英カーディフ大学を中心とする国際研究チームは、
アジア諸国や英国で、どんな抗生物質も効かない
細菌の感染者がいることを突き止め、
11日発売の英医学専門誌ランセットに発表。

この細菌は、NDM―1と呼ばれる新しい遺伝子を持ち、
現在、最も強力といわれるガルバペネム系抗生物質にさえ
耐性を示す。
研究チームは、07~09年にインドの病院と英国の医療機関の
患者から採取された細菌の中から、この遺伝子を見つけた。

調査の結果、インド南部のチェンナイで44人、
北部のハリヤナで26人、英国で37人、
その他バングラデシュやパキスタンなど他の地域で
計73人の感染者が見つかった。

研究を指導したカーディフ大学のウォルシュ氏によると、
英国の患者は、インドやバングラデシュなどで美容整形手術を受け、
各国から治療費の安いアジア諸国を訪問する人が
増えることにより、抗生物質が効かない細菌が
世界中に広がる恐れがある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/13/123991/

メタボ指導、効果てきめん…受けた人は腹囲スリムに

(2010年8月13日 読売新聞)

生活習慣病予防のためのメタボ健診(特定健診)で、
食事や運動などの保健指導を受けた人は、
その後1年間で体重が2kg近く減るなどの効果。

日々の食事をメモや写真で記録してもらうなど、
熱心な指導をするほど、効果が大きくなる傾向、
今井博久・国立保健医療科学院疫学部長は、
「効果は予想以上。保健指導は積極的に受けてほしい」

調査は、2008年度に健診を受けた8都道府県の
国民健康保険加入者を対象に実施。
腹囲などが基準を超えて、保健指導の対象となった6万1000人のうち、
健診結果が判明後、保健指導を受けた1万2000人と、
受けなかった4万9000人で、
1年後の体重などの変化に違いがあるか調べた。

その結果、保健指導を受けた人の場合、
体重が男性で平均1・65kg、女性で平均1・79kg減少。
腹囲も、男性が2・01cm、女性は2・48cm減った。

指導を受けなかった人も、体重は健診後に減ったが、
減少幅は男性が0・49kg、女性は0・61kgだけ。
腹囲の減少は、男性が0・71cm、女性は0・96cmに。
保健指導で、血糖値や中性脂肪、血圧も改善した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/13/123993/

「笑顔度」測定します オムロン、接客や面接対策

(2010年8月12日 共同通信社)

「(あなたの)笑顔度は95%」。
カメラに顔を向けると、笑顔の度合いを測定して数値で示す、
オムロンの「スマイルスキャン」。

昨年2月の発売以降、ホテルなどサービス業の接客訓練や、
就職の面接対策などに利用が広がっている。

接客、面接では、さわやかな笑顔が武器になるが、
通常の研修ではうまく身に付かない人も。
「笑顔じゃないと指摘されても、納得できない人は多いが、
数値だと受け入れやすい」とオムロンの担当者。

専用装置とカメラ、ソフトのセットで価格約60万円から、
初年度は目標の100セットを販売。
来年1月までに200セットに届く勢い。

オムロンは、約100万人分の顔の画像データを基に、
カメラに写った人の性別や年代を判定する技術を持つ。
この商品は、百貨店から「販売員の笑顔を測定する製品はないか」
との要望があり、開発を始めた。

「笑顔度」は、専用装置とカメラを自前のパソコンにつないで測定し、
目尻や口角の形などから0~100%の数値で表示。
「深呼吸してみよう」などのアドバイスも画面に出る。

購入先は、飲食店や鉄道会社、病院など、人と接する業種が多い。
約50のスポーツクラブを運営するザ・ビッグスポーツ(大阪市)は、
4月からインストラクターの研修会に利用。
江本紀代美専務は、「笑顔を保つ意識が高まり、表情が良くなった」
と効果を認める。

授業や就職の面接対策に使うのは、京都ノートルダム女子大。
6月中旬に開いたホスピタリティー(もてなし)を学ぶ授業では、
学生が測定器の前に座り、笑顔のトレーニング。
参加した吉田真実子さん(19)は、
「自分では笑顔のつもりでも、実際は違うと分かった」

北海道大空町の「道の駅」では、ドライバーが利用できるよう
昨年春から設置し、好評を得ている。
導入した担当者は、「笑顔を作ることで、ドライバーの心に余裕ができる」、
安全運転にも一役買っているよう。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/12/123961/