2010年8月27日金曜日

科学の話、出前します「研究の理解者増やしたい」

(2010年8月24日 読売新聞)

科学者がカフェなどで話をしたり、
実験教室を開いたりする動きが盛ん。
研究成果を社会に生かそうという試みで、国を挙げての取り組み。
「理科は苦手」、「難しい」と敬遠しがちだが、参加してみると、
意外と楽しく、暮らしとの接点が見つかりそう。

「ガリレオ・ガリレイ」(名古屋市)は、科学をテーマに、
昨年6月にオープンしたイタリアンレストラン。

店内で天体の立体映像が楽しめるほか、第一線で活躍する
科学者を招いた「サイエンスカフェ」を、週末に開いている。

今月8日、早稲田大学の竹山春子教授が、
「遺伝子情報って役に立つの?」と題して、
最前線の遺伝子研究を紹介。
親子連れなど、約30人が耳を傾けた。
参加費はランチ、ドリンク付きで大人2000円。

名古屋市の会社員谷川有美さん(37)は、
「難しい所もあったけれど、ランチのついでに、
研究現場の雰囲気がわかって面白かった」

この店を運営する「ナノオプト・メディア」(東京)は、
環境エネルギーの専門家の藤原洋さん(55)が、
科学技術の情報発信を掲げて設立した会社。

「科学に、関心も興味もない層が増えた。
科学離れを食い止めるには、先端の科学者と触れ合う場が必要」

科学者が気軽な雰囲気で、一般市民と話し合うサイエンスカフェは、
1990年代にヨーロッパで始まり、日本でも各地に広がっている。

独立行政法人「科学技術振興機構」では、
サイエンスカフェの情報をホームページ「サイエンスポータル」に掲載、
2008年の掲載件数は589件。
今年は、8月上旬までで719件に増えた。
主催者も企業や大学、NPO、個人など様々。

有機化学の研究者で東邦大学名誉教授の岩村道子さん(69)は、
退職後の08年4月から、住まいのある東京・高輪で、
サイエンスカフェを始めた。

教会を会場に、2か月に1度、「子どもたちの健康と環境」などの
話題を選んで講師を招く。
「大学とは違い、身近な場所で開くので、いろんな人に来てもらえる」

実験を通じて、科学を伝える試みも盛ん。
バイオ関連の企業や研究者らがかかわるNPO法人
「くらしとバイオプラザ21」(東京)の主席研究員佐々義子さん
各地で開いているのは、台所から科学を学ぶ
「キッチンサイエンス」の教室。

ブルーベリーの成分「アントシアニン」が、レモン汁や重曹で
色が変わる化学反応を、ケーキ作りで知る。
「台所は、化学・物理反応の宝庫。
科学が縁遠いものではない、と知ってもらえれば」

科学を伝えるこのような試みは、
「サイエンスコミュニケーション」と呼ばれる。

子ども向けに博物館などで行われていたが、
大人向けに多様な形で街に広がってきた。
サイエンスライターで、「科学との正しい付き合い方」の著者、
内田麻理香さんは、「科学技術がブラックボックス化して、
『よくわからない』、『なんとなく怖い』と思われている。
研究への理解者を増やしたい、という思いが科学者側にある

大学の独立行政法人化や事業仕分けをきっかけに、
科学技術予算に厳しい目が向けられ、
社会に成果をアピールする必要が増してきたという事情もある。

◆研究成果 社会に訴え

国も、「サイエンスコミュニケーション」を重視。
第3期科学技術基本計画(2006年度から5か年)に、
「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」を盛り込み、
科学と社会との橋渡し役となる「科学技術コミュニケーター」などの
人材養成に乗り出した。

北大、東大、早稲田大の三つの大学のほか、
国立科学博物館などでも、理科系の大学院生などを対象に、
科学を説明する能力を磨くコースを設けている。

06年から養成講座を始めた国立科学博物館では、
すでに39人の「認定サイエンスコミュニケータ」が誕生、
企業や大学などで科学技術の広報活動に携わっている。

今夏、総合科学技術会議が年間3000万円以上の
公的研究費をもらう研究者に、「国民との科学・技術対話」を
求める方針を打ち出した。
該当する研究者数は、少なくとも2000人を超え、
今後、様々な形で科学者が研究成果を発表する機会が増えそう。

国立科学博物館の「サイエンスコミュニケータ養成実践講座」の
講師を務める独立行政法人「科学技術振興機構」の渡辺政隆さんは、
「サイエンスコミュニケーション」の狙いを、
「理科や科学と聞いただけで、シャッターを閉じるように
敬遠してしまう風潮をなくすこと」と解説。

食の安全が揺らぐなど、何を信じたらいいかわからない
不安感が高まっている。
それにつけ込むように、科学を装って効果や効能をうたう
「インチキ科学」も後を絶たない。
「自分で必要な情報を集めて、判断することが求められている。
専門家と一緒に、科学について考える場が役に立つ」

現状のサイエンスカフェなどの中には、
「科学者から一方的に研究成果を伝えるだけで、
一般人にはわかりづらいものもある」と指摘。
「科学に関心を持つ人を増やせるかどうか、
伝え方が問われている」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/24/124415/

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