2009年1月31日土曜日

漢字力=企画力 一言の妙、仕事に応用

(日経 1月6日)

漢字を使いこなす能力が、ビジネスに必要な素養だとわかっていても、
日ごろから意識的に漢字力を磨くのは意外に難しい。

昨年、漢字の誤読を連発し、求心力が低下したといわれる
麻生太郎首相の姿は記憶に新しいが、
人のことを笑えなくなる場面はビジネスの世界にもありそう。
日本漢字能力検定(漢検)に合格したビジネスパーソンの経験をもとに、
漢字力を養うことでどんなスキル向上が可能かを探った。

博報堂のクリエイティブセンターに勤務するデザイナーの小塚泰彦氏(30)は
漢検2級の合格者。
最近、アパレルの顧客企業からCI(コーポレートアイデンティティー)戦略を
立案する依頼を受けて、「生活の補助線」というコンセプトを提案、即採用に。

「生活」と「補助線」。
簡単な漢字の組み合わせだが、小塚氏の漢字に対する感度の高さが
顧客企業を満足させた成功例。

補助線とは本来、幾何学の用語。
図形に線を書き加えることで、今まで見えていなかった解を導き出せる。
こんな意味合いを込めて、衣類から今まで見えていなかった
新しい生活スタイルを提示する企業の姿勢を一言で表現。
「生活の補助線」という言葉が決まると、企業のロゴマークや衣類を売る
店舗のインテリアも次々にイメージがわき、CI戦略の仕事は順調に進んだ。

どんな企業でも、事業の戦略をまとめる会議などで、
戦略の方向性を一言で表現できる能力が求められる場面は多い。
「軽・薄・短・小」は「軽い」、「薄い」といった商品が売れ筋になるという
消費の傾向を、端的に漢字四つで表現した経済誌の造語。
「新商品の特徴を一言で言えば○○です」などとプレゼンテーションするとき、
聞き手の心に届く言葉を使いこなすには、相当な漢字力も求められる。

人材紹介業務でも、漢字力を使って「企画力」を高めようとする人がいる。
人材紹介のジェイエイシージャパンで、人事部担当の
高井理香アシスタントマネージャー(32)。

人材紹介の業務では、人材の履歴書に添える推薦文などを書く機会が多く、
「この人物をなぜ紹介するのか。どんな魅力を持った人物なのかを
表現しなくてはならない」
漢字力を磨けば、質実剛健など、紹介する人物の特徴を
短く的確に表現する能力が高まるのが利点。

高井氏は自ら漢検二級を取得し、人材育成の一環として
漢検を社内に広げようとしている。
イントラネットで漢字問題を配信するなどの支援策が奏功し、
2級合格者は全社員の1割を超え102人に。
新入社員は、合格水準に達しないことも少なくないが、
準2級を1年以内に取得するように指導。

三井住友海上火災保険の船橋南保険金お支払いセンターに勤める
照屋博之主任(30)も、漢検2級の合格者。
自動車事故に関連した保険金支払いについて説明するのが仕事で、
事故にあった人には対人賠償保険と搭乗者傷害保険の違いなどを
説明する文書を週に2—3本は作成。
「受け取れる保険金の趣旨がそれぞれ違うことなどの要点を整理し、
分かりやすく書く表現力の幅が広がった

3人のような合格者は、どのように漢検をクリアしたのだろうか。
照屋氏が2級に合格したのは、2007年夏。
通勤や昼食の時間を活用して、漢検用の参考書を使って1カ月程度、
集中的に勉強した。
合格後は、「言葉に対する注意力が増して、こまめに辞書を引く習慣がついた」

小塚氏は、「言葉の感性を磨くには、詩を読むとよい
西脇順三郎や瀧口修造といった詩人の作品を愛読していると、
漢字を使った表現力も向上した。

高井氏は、実際に漢字を書いてみることが重要。
相談にくる社員には、「自分は電車の中でメモ帳に漢字を書いて覚えた。
任天堂の携帯型ゲーム機で、漢検のソフトを使ってペン入力で書いてみてもよい」

「検定ブーム」が続くなかで、漢字検定は検定の横綱だ。
日本漢字能力検定協会によると、2007年度に漢検の志願者数は
過去最多の271万人に達し、受検者は国内の検定試験としては最大規模に。
中高生が中心、20代後半、30代の志願者も3割以上増加、
社会人にも浸透している。

社会人として養っておきたい漢字力は、漢検2級の水準。
2級の検定では、社会生活で一般的に使われる漢字の目安である
「常用漢字表」の1945字のほか、戸籍に記載できる人名用漢字についての
知識が問われる。
出題数は120で、試験時間は60分。8割程度の正答率が合格圏。

出題傾向をみると、漢字の読み書きは全体の半分近くで、
同訓異字や同音異義語についての問題のほか、
誤字の訂正、四字熟語の能力なども幅広く問われる。
「言葉の運用力が試される」
(日本漢字能力検定協会の多和泰美・東京事務局次長)と覚悟して、
試験に臨む必要がありそう。

公開会場での検定は年3回。
日曜に実施するが、平日に同協会などの準会場に出向いて、
パソコン画面に回答を入力する「漢検CBT」でも受検は可能。
自信がついてきたところで、手軽に腕試しすることもできそう。

年初めに一段のスキルアップを狙う気構えができたら、
ビジネスの基礎体力を養成するスタンスで、
漢検を活用してみるのも手かもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090106.html

グリーンITの本命「超電導送電」

(日経 2009-01-23)

ITが社会に浸透すれば、煩雑な仕事を効率化でき、
省エネにつながるという話は誤解を含んでいる。
パソコンが普及するにつれ、社会の中にまた新たに仕事が発生。
扱うデータも、文字から写真、動画へと大容量化し、
エネルギー消費量は増加の一途をたどる。

インターネット総合研究所(IRI)の藤原洋所長は、
「インターネットのデータを預かるデータセンターでは、
電気代の負担が最大の悩みだ。
電力会社からは大口顧客として表彰されたが、
電気使用量を減らす技術開発が急務だ」

そこに、救世主として登場したのが高温超電導直流送電
液体窒素で冷やすと、電気抵抗がゼロになるケーブルを使う。
データセンターの電気使用量を40%も減らしてくれる。
テレビが全面的に「地デジ」に変わる2011年7月より少し前に、
この送電システムが世界に先駆けて日本のあるデータセンターで使われる。

藤原所長は昨年7月、世界で唯一、高温超電導の直流送電を研究開発する
中部大学に、5年間で6億円の自己資金を出すことを決めた。
天体望遠鏡の部品を作る目的で、05年に設立したナノオプトニクス研究所の
新規事業として予算を投じた。

発電所で作る交流の電気は、交流で送るのが当たり前。
電力会社は、高温超電導ケーブルを使えば省エネになると期待するが、
金属ケーブルを高温超電導ケーブルに交換して交流を送ることを検討。
東京電力は、住友電気工業、前川製作所などと組んでこの技術を開発。

しかし、高温超電導送電を研究している中部大の山口作太郎教授は、
「直流にしないと、高温超電導の良さを最大限に生かせない」
電力会社にいくら直流の利用を勧めても、まったく受け入れてもらえない。

電力会社は、直流の良さは認めつつ、これまでの交流中心で敷かれた
インフラを、直流に変えるには周辺機器や技術もすべて見直す必要。
山口教授もその事情は理解し、いきなり数千キロメートルの長距離送電に
直流を勧めるのは時期尚早。

そこで、変電所とデータセンターを結ぶ300-400メートルの短距離送電。
データセンター内の主要な配線も併せて置き換えると、
データセンターの電気使用量を一気に40%も削減。
従来の送電による交流損失と、データセンター内で発生する
熱を冷ます空調を、大幅に削減できるため。

藤原所長は、高温超電導直流送電の事業化に賭けた。
実用的なシステムが完成すれば、自分の会社も助かる上、
システムを国内と海外で販売できる。

山口教授は07年、20メートルの設備を作って送電実験に成功。
住友電工が開発した高温超電導ケーブルを使い、
ケーブルを液体窒素温度に保つ断熱鋼管はJFEスチール、
冷却システムは前川製作所が開発に協力。

中部大は、ナノオプト研からの資金提供を受け、
学内に200メートルの送電システムを作って実験に着手。
データセンターと変電所の間に400メートルのシステムを設置し、
11年3月末までには利用開始を目指す。

データセンターに続く用途も、すでに考えている。
藤原所長と山口教授らは、太陽電池に高温超電導直流送電システムを
つなぐ構想を持っている。
タービンを回して交流を作る発電所と違い、太陽電池や太陽熱発電、
燃料電池は直流を発生する。
「直流は、直流のまま機器に流す方がよいに決まっている」(山口教授)。
発電所の無い山で、太陽電池と天体望遠鏡をつなぎたいとも考えている。

高温超電導物質は、1986年に発見されたが、
なかなか実用化に結び付かなかった。
直流送電が導火線になるかもしれない。
世界に誇る日本発の省エネ技術と言えるだろう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090122.html

現場再訪(10)地域に愛着 自前教師

(読売 1月22日)

自治体が自前で教師を養成するには、工夫が必要になってきた。

スーツ姿の教師の“卵”たち23人が昨年12月、
現役教師の話に熱心に耳を傾けていた。
東京都杉並区が始めた「杉並師範館」。
修了すれば、区の小学校教師として採用。
3期生は、この日は「特別活動の指導」をテーマに約7時間かけ、
18人の教師から指導法を伝授。

教員の人事権は都教委にある。
優秀な教員もいずれ転出してしまう。
自前で手をかけた人を自前で採用したいと区が始めた師範館の卒塾生は、
この2年で46人が教壇に立つ。
学生より、現場を経験して入塾した人の方が多い。
富士通出身で、独立行政法人「メディア教育開発センター」特定特任教授の
山村弘塾長(62)は、「塾生はどこに出しても恥ずかしくない」

卒塾生の1人、川上真理子さん(24)は昨春、区立杉並第六小学校で
2年生の担任になった。
「師範館で学んだ子供への接し方を生かしている。
区の教師になることで、地域に愛着がわき、熱意を持って続けられる」と
地域密着の効果を語る。
鈴木清子校長(60)は、「教育を重視する区の願いから生まれた先生たち。
その思いを感じて頑張ってほしい」

自前で養成する分、教師の配置は手厚くなり、区教委は今年度から
都内では初めて、30人程度学級を始めた。
4期生まで巣立てば、その数は約100人に。

それ以降は未定。
区が全額負担する給与は、100人で年約5億円にもなり、負担は退職まで続く。
応募者も、最初2年は200人を超えたが、その後はやや減っている。

東京都教育委員会による大学生対象の「東京教師養成塾」は、
杉並区より2年早く始まった。
4年間で367人が修了し、都内の公立小で教師に。

都教委では2007年、卒塾生が勤める約100校の校長に、
他の同年代の教師と18項目で比較する調査を実施。
その結果、特に「熱意と使命感」、「授業づくりへの意欲」、
「初任者研修等での若手のリーダー役」などで卒塾生の評価が高かった。

今年度からは、募集枠を50人増の150人に増やした。
都内15校からの推薦に限っていた対象大学も、他県を含む19校に拡大。

「新人でも、いじめや不登校で、保護者や児童への実践的な対応が求められている」
(都教職員研修センターの古屋真宏主任指導主事)として、
選抜方法も、これまでの個人面接から集団面接と小論文に変え、
コミュニケーション能力や課題解決力の高い教師を増やそうとしている。

都の教員採用試験の競争倍率は、小学校ではピーク時の15・3倍(1996年度)
から今年度は2・2倍にまで下がった。
杉並区や横浜市など、近隣自治体でも同様の塾ができた。
効果をもたらす教師の囲い込みには、工夫や財源が必要に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090122-OYT8T00263.htm

ガリレオのDNAを鑑定 失明の原因など解明へ

(共同通信 2009年1月23日)

イタリア中部フィレンツェの光学研究所は、同国出身の天文学の父、
ガリレオ・ガリレイ(1564-1642年)が、長年苦しみ最終的に失明に至った
眼病の原因などを探るため、埋葬地から遺体を取り出し
DNA鑑定を行うと発表。コリエレ・デラ・セラ紙が伝えた。
ガリレオの眼病は、若い時期に発病し徐々に進行、遺伝性を疑われている。

同研究所は、原因解明と病状特定により、望遠鏡を使った天体観測に
眼病がどの程度影響を与えていたかも知ることができる。

同研究所は、今年がガリレオの天文観測開始から
400年に当たることを記念し、調査を決定。
英ケンブリッジ大の眼科医やDNAの研究者らも参加、
フィレンツェのサンタクローチェ聖堂に埋葬されている
遺体の組織の一部からDNAを採取する。
調査費は、30万ユーロ(約3500万円)の予定。

ガリレオは望遠鏡を製作し、木星の衛星や月の海を発見。
その後、観測を基に地動説を唱えたことから、
ローマ法王庁(バチカン)の宗教裁判で有罪とされ軟禁生活となり、晩年に失明。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/23/86962/

人の細胞で立体ミニ人形 再生医療に役立つ可能性

(共同通信 2009年1月23日)

培養した人の細胞を立体的に組み上げ、
身長約5ミリのミニ人形を作ることに、
東京大生産技術研究所のチームが成功。

この技術を応用すれば、複雑な構造の人体器官や組織をつくれる
可能性があり、将来の再生医療に役立つ成果。

チームは、ゼリー状のコラーゲンを直径約0.1ミリのボール状にし、
外側を特定の種類の細胞で包んだカプセルを約10万個作製。
これを微細加工技術で作った鋳型に流し込んで、
身長約5ミリ、厚さ約1ミリの人形にした。
人形の内部の細胞が生きていることも確認。

培養した細胞は通常、ある程度の大きさ以上の塊にすると、
栄養が内部まで届かずに死んでしまうが、カプセル構造にすることで、
生きたまま立体構造にできた。

チームはカプセルに、人の肝臓の細胞を閉じ込め、細胞が働くことも確認。
竹内昌治・同研究所准教授は、「何種類もの細胞を組み合わせて、
生体のように機能する組織をつくりたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/23/86967/

2009年1月30日金曜日

国際オリンピック委員会(IOC)~スポーツ関連宣言文Vol.2 『スポーツ・フォー・オール ― フォー・ライフ最終宣言』

(09.01.28 SSF)

世界スポーツ・フォー・オールコングレスは、開催国オリンピック委員会主催、
IOC、IOCスポーツ・フォー・オール委員会の後援により開催。
1986年より2年に1度開催、各国スポーツ・フォー・オール関係者が
集まる最大の会議。
笹川スポーツ財団は、1998年の第7回バルセロナ大会より毎回出席。

日本からは、ポスター発表が2題。
1題は、佐賀大学文化教育学部の木村靖夫教授による
「運動習慣が女性高齢者の骨と精神状態へ与える影響」。
もう1題は、笹川スポーツ財団「日本における青少年のスポーツ参加状況」

2010年ユースオリンピックの広報活動、
2016オリンピック・パラリンピック招致活動も行なわれていた。
東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が出席、PR活動を行っていた。

【テーマ】スポーツ・フォー・オール―フォー・ライフ
【サブテーマ】
1. 青少年のための身体活動
2. IT界におけるスポーツ・フォー・オールの役割
3. 高齢化社会とスポーツ・フォー・オール
4. スポーツ・フォー・オールと社会主義
5. オリンピックとスポーツムーブメントに対するスポーツ・フォー・オールの主導権
【開催期間】2008年11月3日~7日
【参加者数】95カ国から505名、各国オリンピック委員会(NOC)、
教育・文化機関、政府・非政府組織等
【日本からの参加者数】18名、JOC、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会、
日本オリンピック・アカデミー(JOA)、笹川スポーツ財団他
【内容】全体会議、分科会、一般発表、ポスター発表
一般発表件数:61件「健康促進のためのスポーツプログラム」、
「発展途上国におけるスポーツ・フォー・オールの供給」、
「都会と田舎における、性別による小学生の身体能力の差」等
ポスター発表件数:33件
「イタリアにおけるスポーツ・フォー・オールの現状」、
「駅伝による社会的融合の振興」、
「SUDOKU:精神的スポーツ・フォー・オール―フォー・ライフ」等

本コングレスは、世界保健機構(WHO)が協力、
身体活動が与える健康面への影響に関する発表が目立った。
特に肥満との関係を重要視。

◆第12回世界スポーツ・フォー・オールコングレス
「スポーツ・フォー・オール ―― フォー・ライフ」最終宣言

本会議は、各国政府、公共団体に対し、以下のことを求めた。

1)運動・スポーツの重要性を健康政策の主要な要素として重視
2)政策立案の際、運動・スポーツへの参加促進が公衆衛生、社会経済に
与える利益を考慮。
3)コミュニティスポーツおよび運動の重要性を認識。
4)スポーツ・フォー・オールを、経費負担や労力的負荷ではなく、投資と考える。

1. 運動・スポーツの促進には以下のような利点がある。
1)健康の増進(精神的および肉体的)
2)地域社会における社会文化的統合、公平、調和、団結。
特に民族グループ、障害のある人々、移民の融合の促進
3)社会交流、社会的一体性、社会参加能力の強化、
運動・スポーツの精神と価値観がもたらす恩恵
4)運動・スポーツの教育的役割
5)政府、地域社会が負担する健康・福祉費用の減少

2. 「食と運動と健康に関するWHO世界戦略」、2008年アクションプラン、
非伝染性疾患の予防と管理に関する提言の実施を全面的に支持。

3. 本会議は以下について確認。
1)運動不足は世界的に非伝染性疾患(NCD)―心臓血管疾患、糖尿病、
肥満、一部のガン―の独立危険因子となり、毎年200万人近くの死亡原因。
NCDによる死亡は、毎年全世界の死亡のおよそ6割を占め、
3,500万人の死亡者のうち66%は途上国の国民。
運動不足の傾向が最も強いのは、都市部の貧困地域。
2)子供の肥満は深刻化。
5歳未満の約2,200万人、学齢期(5~17歳)の1億5,500万人(10人に1人)は
過体重で、およそ3,000万~4,500万人が肥満。
3)貧困など、社会経済的事情が肥満の重要な要因。
4)食習慣や都市化のほか、自然環境、テクノロジーの利用、交通、職場環境の
変化など様々な生活要因が、座りがちな生活スタイルの増加や運動量の低下に。

4. 国内オリンピック委員会、国際競技連盟、その他のスポーツ団体が、
各国の保健、教育、スポーツを管轄する政府機関とともに、
運動・スポーツ・教育プログラムの策定、普及、調整を図り、
その重要性とメリットを考慮するよう強く推奨。

1)スポーツを通じた教育―文化と環境―に対するIOCの重視。
スポーツ・フォー・オールの価値観を広め、オリンピックやユースオリンピックを
通じて、青少年を運動・スポーツに引き寄せる上で独自の基盤を提供。
2)すべての年齢層、運動能力に対応した、開放的、低コストで、
利用しやすい地域密着型のプログラム
運動・スポーツ施設(空き地を含む)、適切な近隣環境条件
3)課外プログラムなど、学校や青少年を対象にしたプログラム。
質の高い時間、包括的なカリキュラム、楽しさの要素を多く取り込んだ
「保健体育」プログラム。
勉強と運動のバランスを重視し、十分に保つことができる教育システム
4)コミュニティクラブ、スポーツクラブ、その他地域組織の全体の参加
5)障害のある人々に固有のニーズへの対応
6)情報技術など最新の技術を利用し、スポーツの価値や利点に関して、
地域社会、特に青少年を教育、啓発、支援。
あらゆる層からの参画を促進、奨励。
運動・スポーツ指導者・専門家を対象にした訓練・指導・組織化
その他の支援に最新の技術を導入。
7)スタート基準を低く設定した、軽度で適度な運動・スポーツプログラムの
普及や確立。
青少年のスポーツへの関心を引き寄せ、維持するための、
必要に応じたスポーツプログラムの普及
8)運動・スポーツプログラムの優良モデル、ケーススタディの普及・導入に
向けた団体間での最大限の知識移転
9)優秀なアスリートの力を借り、地域社会での運動・スポーツに
刺激、励ましを与え、模範を示すこと

5. 第12回世界スポーツ・フォー・オールコングレスでの推奨、
「生き生きとした社会(Moving towards an active society)」に焦点をあてた
取り組みや研究について、2009年IOCコングレス委員会が検討するよう提案。

6. 地域社会でのスポーツ・体育プログラム、フォローアップ活動
(特に優良モデルとケーススタディの導入と調整)の進捗報告を、
フィンランドのユヴァスキュラで2010年6月14日~17日に開催、
次回の世界スポーツ・フォー・オールコングレスに盛り込むよう提言。

http://www.sfen.jp/column/ioc/02.html

井戸水汚染が原因か 中国淮河「死の川」に 環境NGO霍氏が告発

(共同通信 2009年1月21日)

汚染で白く泡立ち、死んだ魚が大量に打ち上げられた川を見ながら、
霍岱珊(かく・たいさん)(55)は怒りにふるえた。

中国の黄河と長江の間を流れる主要河川、淮河。
少年時代、水は澄みきり、フナやコイがたくさんとれた。
きらめく川面を真っ赤な衣装の花嫁を乗せた小舟が静かに渡っていく。
そんな面影は既になく、「死の川」に変わり果ててしまった。

10年前、霍は中国河南省の地元紙写真記者の職を辞し、
同省内の淮河支流の汚染調査を始めた。
「みんなのため、わしらが生まれ育ったこの地の汚染を調べてほしい」。
胃がんで死んだ幼なじみの町長、倪安民が残した言葉がきっかけ。

中国は、30年間の改革開放政策の下、経済高成長を果たしたが、
公害は全国各地で深刻化し、淮河も工場排水や家庭の下水で汚れきっていた。
霍は流域をくまなく巡り、汚染状況を1万5000枚の写真に撮った。

川沿いの農村地帯で、がん患者が多発する「がん村」の存在。
がん村は、河南省沈丘県内で二十数カ所も見つかった。
胃、食道、大腸など消化器がんが多く、乳幼児の死亡や
先天的な障害も少なくない。
同県杜営村の人口は約1700人だが、187人ががんで死んでいた。
どの村も貧しく、十分な治療はできなかった。

がんの多発は、淮河からの灌漑で、飲用の井戸水が汚染されたためと推定。
井戸水には、がんを引き起こす硝酸性窒素や大脳に影響するマンガンなどの
有害物質が多く含まれていた。

霍は2003年、淮河の汚染対策と被害者救済を目指す非政府組織(NGO)
「淮河衛士」を設立、妻や息子2人と家族ぐるみでボランティア活動を始めた。
汚染企業の排水口を監視し、汚染実態を映した写真を展示する
キャンペーンを全国各地で開いて、がん村の存在を知らせた。

地元政府や汚染企業はうろたえた。
汚染のひどさは、公害対策が不十分な結果。
利潤を追求する企業は、対策に金をかけたくない。
地元政府にとって、企業は税収源であり、住民の雇用先。
両者は癒着し、公害取り締まりは手ぬるかった。

霍は度々、匿名の脅迫電話を受けた。
汚染企業を調査した帰り、後をつけてきた数人の男たちに殴られ、
カメラを壊されたことも。一時は精神的にかなり追い込まれたが、踏ん張った。

寄付金を募り、汚染の少ない深層水をくみ上げる井戸を掘り、浄水器を設置。
農民、李豊泉(57)は、「以前の井戸水は濁って臭かったが、
とてもおいしい水になった」

やがて政府も予算を組み、すべてのがん村に深層水井戸か浄水器が設置。
国の汚水排出規制も罰則が強化され、
主な汚染企業もようやく対策に本腰を入れ始めた。
霍は、「私たちNGOが先に立ち、政府を動かしたのだ」と胸を張った。

霍は07年末、国家環境保護総局(現環境保護省)などが主催し、
その年環境保護に貢献した人物を表彰する「年の人」に選ばれた。
地元政府を飛び越し、中央政府の支持を得たのだ。
「あれ以来、圧力や妨害は少なくなった」。

霍は08年10月、初めて外遊し、日中韓の環境NGOが新潟で開いた
シンポジウムに中国NGO20人で参加。
かつて工場排水の有機水銀で汚染され、新潟水俣病が発生した
阿賀野川を見学し、患者や支援者と交流した。
「私たちも、患者の人権を守るため同様に活動している。
日本の経験に学びたい」

水俣病患者を37年間も支援してきた旗野秀人(58)は、
先鋭化し仲間割れも起きた運動の苦い経験から
「明るく元気に楽しく、息の長い運動を続けてほしい。裁判が最善ではない。
新潟では患者への差別が生まれ、地域のきずながずたずたになった

霍の次の目標は、被害者のために補償を勝ち取ることだが、
一党支配の中国では司法の独立や執行力は不十分。

霍も企業と対決する裁判は避け、和解を目指す。
「旗野さんの言葉はとても温かい励ましになった」。
寄付金は足りず、生活は楽ではないが、粘り強く運動を続けていく。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/21/86822/

細胞の働き利用するPET検査 Dr.中川のがんを知る 実践編63

(毎日 2009年1月20日)

PET検査(ペット、陽電子放射断層撮影)をご存じでしょうか。
放射性物質を含む薬剤を注射し、がんに集まる放射性物質から出る
放射線を検出する装置。

がんの診療では、ブドウ糖に放射性物質を化合させた薬を注射。
がん細胞は、ブドウ糖をエネルギーにして増殖、
放射線を出す薬剤はがん細胞に集まる。
体から出てくる放射線を検出すれば、がんの有無をチェックできる。

このPETは、今やがん診療の現場には欠かせない存在。
CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)といった
最新の画像検査もあるが、これらは「病巣の形」にもとづく診断。
PETは、栄養を必要とするといった「細胞の働き」を利用して診断。

実際、腫瘍が疑われる場合の悪性か良性かの区別、治療の効果の判定、
治療後の再発の有無や転移の広がりの評価など、
がん診療の多くの場面でPETは役立つ。
放射線治療でも、放射線を照射する範囲を決めるためPETは欠かせない。

しかし問題も。
一番難しいのは、がんがすべてPETで検出できるとは限らないこと。
胃、腎臓、膀胱、肝臓、胆道、前立腺など多くのがんでは、
がん病巣が存在してもPETでは見つけられないことが多い。
同じ乳がんでも、患者さんによって陽性になったり陰性になったり。
PETだけでは、がんがあるかどうかの判断はできない。
特に、陰性になった場合、「がんがない」と言いきれない。

がんのPET診断が一時ブームになったが、
「PETで陰性だから安心」とは言えない。
実際、がんのPET診断は、欧米では、ほとんど行われていない。

一方、一度陽性と分かったがんについては、
治療の効果の判定や再発の有無の判断に、とても便利な道具。

がんと診断された場合は、治療前に一度PETを受け、
がんが陽性と検出されるかを確認しておくことをお勧め。
(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86590/

ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?

(共同通信 2009年1月20日)

タバコの根で合成されたニコチンが、葉に運ばれて蓄積される仕組みを、
京都大の矢崎一史教授らのチームが解明し、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

ニコチンは、導管を流れる水と一緒に根から葉に向けて移動。
NtJATというタンパク質がニコチンを取り込み、
葉の細胞内にある液胞という袋にため込んでいた。
この働きを邪魔すれば、ニコチンを含まない品種のタバコが開発できそう。

矢崎教授は、「吸った気分はそのままに、ニコチン中毒からの脱却を助ける
禁煙用たばこができるかもしれない」

チームは、タバコの葉で活性化している遺伝子を調べ、
このタンパク質を見つけた。
ニコチン以外の有機化合物を運ばせるのも可能とみられ、
矢崎教授は「植物を使って、抗がん剤などを効率良くつくる手法が期待できそう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86615/

2009年1月29日木曜日

国際オリンピック委員会(IOC)~スポーツ関連宣言文Vol.1 『釜山宣言』

(08.12.25 sfen)

第6回IOCフォーラムが、第4回釜山TAFISA World Sport For All Gamesの
日程に合わせ、韓国の釜山市内コンベンションセンター(BEXCO)で開催。

TAFISAとは、1991年に設立した世界的なスポーツ・フォー・オールの
推進を目的として活動する組織。
国際トリム・フィットネス生涯スポーツ協議会(TAFISA=タフィサ)。

【テーマ】現世代のためのスポーツと教育
【開催期間】2008年9月25日~27日
【参加者数】約600名、各国オリンピック委員会(NOC)、
各競技の国際スポーツ連盟(IF)、オリンピック実行委員会、教育・文化機関、
政府・非政府組織等
【日本からの参加者数】日本オリンピック委員会(JOC)、
東京オリンピック・パラリンピック招致委員会、
日本オリンピック・アカデミー(JOA)、笹川スポーツ財団他
【内容】全体会議、分科会、パネルディスカッション、一般発表。
一般発表件数:52件 「オリンピズムの継承」、
「アフリカ等でのオリンピック教育実践紹介」、「2010年ユースオリンピック」、
「オリンピック招致国の取り組み」等

『釜山宣言』がなされ、“釜山アクション”が採択。
“釜山アクション”の実施には、全関係者の支援と積極的な参加が必須。
IOCが、今後のスポーツ振興に対して、どの様なスタンスなのかを
把握するには一番の資料。

韓国の釜山市で国際会議等が行われたことについて、
2020年のオリンピック招致を見据えている。
一方で、セキュリティー問題やアクセスの問題等、
オリンピック招致に向けての問題点も浮き彫りに。

◆釜山アクションプラン

青少年をスポーツの未来と位置づけ、あらゆる機会・手段を活用して
スポーツ、文化、オリンピック教育の融合を進める必要がある。
この目的のため、以下の7つの機会が確認。

1. 青少年
世界各地から集った若者らによるセッションが行われ、
教育・スポーツ面での彼らのニーズ、勉学かスポーツかの葛藤、
勉学とスポーツの両立、いずれかの選択のため、
時に厳しい決断を迫られる状況について語られた。

a. 国際オリンピック委員会(IOC)、オリンピック・ムーブメント、
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が協力し、体育を通常のカリキュラムの
一部として義務付けるよう、政府に働きかけることを決議。
b. 青少年に関わる分野、活動に関する意思決定に青少年自身を参加させる、
という考え方を会議にも拡大することを決議。
c. 青少年がさらに発言力を得、自らの考えや体験談を語ることができるよう、
IOCに対し、青少年を継続して招待するよう求める。

d. 優れた青少年を模範として見いだし、活躍する機会を高めるよう求める。
e. スポーツへの関心が薄れているのは、「現代の若者文化」のためと、
批判することに警告。真の原因は、スポーツをする機会の減少。
運動場、予算、コーチの不足、地域社会・学校・クラブのプログラムの減少が
世界の多くの都市で危機的状況に。

2. ユースオリンピック
IOC、オリンピック・ムーブメントが組織的な形で世界の青少年の生活に
直接影響を与えることができる絶好の機会。
ユースオリンピックの教育・文化プログラムの発展に、ユネスコなどが参画。

a. IOC会長、オリンピック・ムーブメントがユースオリンピック創設を歓迎。
b. プログラムの内容が、オリンピックの価値観を表し、
参加者にとっては教育上の経験となるよう留意。
c. ユースオリンピックのプログラムに、スポーツ、異文化、価値に関する教育が
スポーツ競技と同等の重要性を与えられる。

d. IOC、国際競技連盟他すべての関係者に対し、プログラムによる恩恵が
大会に直接参加した者だけにとどまらない。
e. ユースオリンピックの教育プログラムの内容を、大会間で継続させる。
f. ユースオリンピックが活気ある華やかな雰囲気の維持に努め、
他のスポーツ団体もこれに追随するよう奨励する。

3. 普遍性(ユニバーサリティ)
「普遍性(ユニバーサリティ)」の意味を、広義に解釈することの必要性を認識し、
先進国・途上国間の格差は、男女格差による問題と同程度に
オリンピック教育の共有にとって障害となる。

a. スポーツに関わる教育・異文化機会が、文化的アイデンティティと多様性、
真のジェンダー平等、障害のある人々への機会提供を尊重。
b. IOC、パートナー団体に対し、オリンピック教育が途上国の青少年の
唯一の教育機会であり、プログラムから最大限の恩恵を得られるよう、
各国のオリンピック委員会や当局と緊密な協力関係を築く。

4. 競技引退後の生活
競技生活引退後も、充実した生活が保障されるために、
スポーツ界全体で対策を取るよう求めた元競技者からの訴えを聞き、
多くの競技者が競技生活を終えた後に厳しい状況に直面。

a. IOC、IOCアスリート委員会が職業訓練や資格取得を目的とした
特別プログラムを創設。
b. 国内オリンピック委員会、国内競技連盟、国際競技連盟に対し、
学位取得を目指す競技者のための新たな支援プログラムの設置を検討。
c. このような機会が、参加国すべてに広く告知。

5. オリンピック組織委員会、国内オリンピック委員会の教育・文化プログラム
オリンピック組織委員会で、大規模な教育プログラム(北京大会で若者4億人が参加)
を企画、この分野に対する投資が国内オリンピック委員会間で格差がある。
すべてのオリンピック開催都市で「文化オリンピック」も開催されるが、
宣伝や資金の不足が多いことから注目されない。

a. プログラムがすべての国、独自に企画する力を持ち合わせていない国に普及
b. プログラムが、特定の大会に関連するイベントにならず、
継続的なプロセスになるよう強く提案。

c. 「文化オリンピック」の認知度を高め、多くの宣伝を行い、
大会参加者に出席を促す。
d. 教育プログラム、文化オリンピックがともにレガシー(財産)、
知識移転システムの一部となるよう提案。

6. パートナーシップ
オリンピック・ムーブメントは、特にスポーツを介した社会の発展、
青少年および地域社会教育、平和の実現を目指す上で、
志を同じくする団体と協力することを常に誇りとしてきた。
IOC会長による非スポーツ団体の招聘、
スポーツ・ムーブメントとユネスコとの連携は、
「スポーツにおけるアンチ・ドーピングに関する国際条約」を世界各国が批准。

a. スポーツを介した発展、若者の動員、教育の実現に国連、政府が協力
b. 世界アンチ・ドーピング機関、提携機関が、労働安全衛生の他の分野で
すでに実施されている周知活動を精査、教育と防止活動を拡大。

7. オリンピック・コングレス
2009年コペンハーゲンで開催されるオリンピック・コングレスは、
スポーツ界全体にとって、今後のスポーツ・異文化教育の方向性に影響。

a. 教育者、研究者、青少年、一般市民に対し、この機会を利用して
コングレスに議題を提案。
b. IOCが、開設しているバーチャル・オリンピック・コングレスに参加。
c. 若者たちが青少年とオリンピズムに関する討議に参加できるよう、
IOCに対し、コングレスに若者も招く。

大韓民国・釜山2008年9月27日

http://www.sfen.jp/column/ioc/01.html

科学立国の明日(2)原石の発掘 「目利き」次第

(読売 1月18日)

京都大の山中伸弥教授が作製したiPS細胞は、ノーベル賞級の成果とされ、
2006年の発表以来、世界中で研究競争が続いている。
山中教授がいち早く実現できた背景には、
将来性を鋭く「評価」した「目利き」の存在がある。

6年前、科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業(CREST)」で、
採択の審査をしていた大阪大の岸本忠三・元学長は、
ある申請書の題名に目を留めた。

「真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立」。
「真に」とは、今までの研究はまるで役に立たないと言わんばかりの
大胆で挑戦的な表現。
名前倒れにもなりかねないが、幹細胞研究の重要性を意識していた
岸本元学長は、内容に「キラリと光るもの」を感じた。

面接で本人の能力と熱意を確認し、「百に三つも当たれば」と採択、
年間約5000万円を5年間支給。
研究は一気に進展、「千に三つ」の成果に大化けした。

当時、まだ目立つ業績をあげていない山中教授は、
年間1000万円の研究公募にも落選していた。
山中教授は、「面接の最後に『言い残したことはないか』と聞かれ、
採用は無理だと思った。研究は一生をかける覚悟だった」と振り返る。

岸本元学長は、今年のクラフォード賞を受賞する免疫学者だが、
同じCRESTで、ウイルス研究で著名な東大の河岡義裕教授も見いだした。
「名伯楽」とも呼ばれる。

研究費の審査の多くは合議制で、無難な結果になりがち。
研究者本人の情報があって、一定の成果が見込める有名大学や
著名な研究室の出身者が有利に。
大化けの可能性のあるダイヤの原石は埋もれかねない。
神戸大を卒業し、大阪市立大、奈良先端科学技術大学院大と
地方大学を歩んだ山中教授も、研究費の面では恵まれてはいなかった。

CRESTは、原石を拾い上げるため、一人が責任をもって選び、
「良いと思ったら少々強引でも採用できる」(北沢宏一・JST理事長)のが特徴。

目利きは、いま“ブーム”だ。
最先端の基礎研究から、技術の製品への応用まで、活躍の場は幅広い。
政府は新年度、先端技術の開発動向や進展を常に把握し、
意見を聞くために、60~70人程度の目利きを配置。
経済界も、企業の研究所長といったエース級の人材を推薦するなど、期待は大きい。

野球に10割打者がいないように、絶対確実な目利きもいない。
米国は、目利き先進国と言われるが、インターネットの巨人「グーグル」でさえ、
創業前はいくつもの企業に売り込んだが相手にされず、結局独立した経緯を持つ。

目利き養成に王道はない。
「よく勉強し、人に話を聞くこと」と岸本元学長は語る。
将来性を見抜く人材を育て、権限と待遇を与え、敬意も払う「目利き文化」を、
日本でも根付かせたい。

http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090118.htm

クルーズ・オブ・ザ・イヤー 大船渡市が特別賞に客船事業振興委

(東海新報 1月27日)

日本外航客船協会(会長・松平誠郵船クルーズ(株)会長)内に
設置している客船事業振興委員会による「クルーズ・オブ・ザ・イヤー」で、
大船渡市が特別賞を受賞
これまで市一丸となった形で展開している客船誘致活動が評価。

この表彰制度は、同協会の創立20周年に向けたイベントの一環で、
同委員会が今年度の新規事業として行った。
旅行業界の健全な発展に寄与した旅行商品や、日本のクルーズ市場への
拡大に貢献した企業・団体などを顕彰することで、
さらなるクルーズの充実を図ろうと企画。

同協会や後援した日本旅行業協会の会員企業が、
昨年実施したクルーズ商品を対象に募集を行ったところ、
23点の旅行商品などの応募、推薦があった。
その中からグランプリ1点、優秀賞2点、特別賞3点が決定、
「ベスト・クルーズカップル・オブ・ザ・イヤー」も選出。

特別賞を受賞した大船渡市は、郵船クルーズから客船誘致に
積極的な市として推薦。
毎年の『飛鳥2』寄港をはじめとしたクルーズの周知、歓迎行事など、
市を挙げての取り組みが高く評価。

グランプリは、『にっぽん丸』による「飛んでクルーズ北海道」。
優秀賞には、JALチャーター直行便を利用した「『サファイア・プリンセス号』
で行く、ゆったり優雅な夏のアラスカクルーズ10日間」と、
『ぱしふぃっくびいなす』のチャータークルーズ
「春の瀬戸内海と九州一周クルーズ8日間」が受賞。

大船渡市と並ぶ特別賞には、「せとうち・感動体験クルーズ」と
「阪神タイガース応援謝恩スペシャル!エバー航空直行便で行く陽光の
メキシカン・リビエラクルーズ11日間」が選ばれた。

ベスト・クルーズカップルには、俳優の高橋英樹・美恵子夫妻が選出。
授賞式は2月2日(月)に東京都で行われる。

http://www.tohkaishimpo.com/

見つめ合いでホルモン上昇 人と犬、きずな強める

(共同通信 2009年1月26日)

愛犬に見つめられると、相手への信頼感やきずなを強める働きのある
ホルモン「オキシトシン」が飼い主の体内で増加することを、
麻布大と自治医大の研究グループが確認。

オキシトシンは、哺乳類の母子関係や夫婦のきずな形成に
関係しているとされるが、異種間での作用が確かめられたのは初めて。
「見つめる」という行為が、オキシトシン増加を招くことについて、
永沢美保・麻布大助教(比較認知科学)は、
「『目は口ほどに物を言う』と言われるが、
人間と犬の間でも視線が重要なのだろう」

研究グループは、55組の飼い犬と飼い主で実験。
室内で1組ずつ、30分間触れ合ってもらい、実験前後の飼い主の尿に含まれる
オキシトシンの濃度を測定。

事前アンケートで、犬との関係が「良好」と判断された飼い主13人では
実験後に濃度が大きく上昇したが、「普通」の42人では変化が無かった。
良好群の実験後の濃度は、普通群の約1.5倍と高かった。

良好群の実験を撮影した映像を分析すると、
犬が「遊ぼうよ」と飼い主を見つめたのをきっかけに交流した回数が多いほど、
実験後の濃度が高くなっていた。

一方、犬に顔を見せないよう飼い主が壁を向いたまま触れ合う実験では、
55組すべてで濃度変化は表れなかった。

◆菊水健史・麻布大准教授(行動神経科学)の話

オキシトシンを利用すれば、なかなか飼い主に懐かない犬を懐かせる
薬の開発につながる可能性がある。
しかし、オキシトシンは人間だけでなく、散歩や餌やりなどを通じて
犬の体内でも少しずつ分泌されるようになると推測。
薬を使って懐かせるより、犬を思いやって大事に面倒を見てやることが大切。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/26/90433/

2009年1月28日水曜日

科学立国の明日(1)ILC「ノーベル賞」で急加速

(読売 1月11日)

ノーベル賞の「日の丸」4本は、久しぶりの明るいニュース。
未曽有の経済危機の中、未来を切り開く科学技術への期待は高い。
科学技術創造立国・日本の抱える課題を、科学研究の「評価」という視点で
とらえ、明日を展望することから、連載を始めたい。

長さ40キロもある直線の地下トンネルで、光速近くまで加速した
電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生の「ビッグバン」を再現する――。
国際リニアコライダー(ILC)は、世界の素粒子物理学者が構想する
次世代の大型加速器。
質量の起源となるヒッグス粒子の性質を突き止め、宇宙の進化の謎を解くと期待。

ILCの建設費は、現在の見積もりで8000億円。
米国は一時期、誘致に前向きだったが、巨費に二の足を踏む。
文部科学省もILCには消極的。

日本の素粒子分野の3氏が、物理学賞を独占した昨年のノーベル賞は、
ILCを巡る状況を大きく変えた。
「物質の起源を探るILC建設に、日本政府として本格的に取り組む時が来た」。
ノーベル賞の興奮がさめやらぬ、発表翌日の10月8日。
河村建夫官房長官は、唐突にILCの国内誘致に前向きな姿勢を表明。
与謝野馨経済財政相は、「日本の得意分野を強化するため、
総理にもぜひ理解いただきたい」

ILCは、2020年頃の稼働を目指し、誘致の決定はまだ数年先。
文部科学省に、事前の話はなく寝耳に水。
政府中枢の政治家が、一つの科学計画に立て続けに言及するのは異例で、
影響力は大きい。
ILCが一躍脚光を集めたことは、皮肉なことに、
科学の大型計画をどう「評価」し「選択」するのか、システムの不在を浮き彫りに。

与謝野経財相や、河村官房長官、鳩山由紀夫民主党幹事長らは昨年7月、
国の動きに先駆けて、ILC誘致を推進する超党派の議員連盟を結成。

素粒子物理学者たちは、議員側と接触を重ねていた。
議員を加速器施設の見学に招いたり、若手研究者と議員秘書らが、
誘致についてひざをつきあわせ、議論を重ねたりしていた。
働きかけは功を奏しつつあった。
素粒子分野のノーベル賞は、河村官房長官がILC誘致を提起して、
議論を巻き起こす絶好の機会。

駒宮幸男・東京大素粒子物理国際研究センター長は、
「若い人に夢を与え、派生技術が日本に残る。
何より、世界の頭脳が日本に集まる。
実現には、政治家のイニシアチブが必要

昨年6月、三菱重工業、東芝、日立製作所などが参加した
先端加速器科学技術推進協議会も発足。
産業界にも期待が広がる。
大型計画は、科学研究の大義とは別に、巨大な公共事業という側面も持つ。

だが、未曽有の経済危機で、研究費全体の伸びが期待できない中、
科学者たちも「他人の財布」に無関心ではいられない。
「一部の研究者が政治家を頼って、公共工事のようにILCを進めたら、
素粒子以外の予算が削られ、影響は避けられない。日本の科学は崩壊する」

一方、文科省でも、研究者が政治家に頭越しに働きかけたことへ反発が残る。
政官学の思惑がバラバラな中、大型計画を幅広い視野から評価し、
より公平に選ぶための模索も始まった。

「学者同士が、学術的な必要性を本気で議論してこなかった。
分野を超えて大型計画を比較し、メッセージを発していくことが大切」
日本学術会議の金沢一郎会長は、過去の反省を込めてこう語る。

同会議は昨年10月、「大型研究計画検討分科会」を設けた。
メンバーの大垣真一郎・東京大教授(都市工学)は、
「巨額な税金を投入する大型研究の推進には、社会の理解が欠かせない。
透明で中立的な立場で全体を見据え、国民や政治家が、
正しく判断できる材料を提供したい」
だが、早くも「批判合戦では科学全体がダメになる」と懸念の声も。

社会への説明責任がこれまで以上に問われる中、
科学者の世界を代表する機関の意義も問われている。

http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090111.htm

理系白書’09:挑戦のとき/2 高エネルギー加速器研究機構助教・多田将さん

(毎日 1月18日)

茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)
4月から稼働する巨大な実験装置「ニュートリノビームライン」
の設計を任された。

素粒子ニュートリノを毎秒1000兆個、約295キロ離れた
岐阜県の観測装置「スーパーカミオカンデ」に打ち込み、
その変化をとらえようという壮大な実験(T2K実験)に使われる。

稼働すれば、装置は強力な放射能を帯び、
一部の部品は取り換えがきかなくなる。
設計・建設に間違いは許されない。

米軍がイラクで使ったという薄茶の迷彩服姿に肩まである金髪。
物理学者のイメージとは程遠いいでたち。
迷彩服とおそろいのヘルメットをかぶり、無数のパイプが走る
全長約100メートル、高さ約10メートルの実験装置の建設現場を飛び回る。

実験の目的は、他の物質とほとんど反応せず、物体を通り抜けてしまうなど
謎の多いニュートリノの性質を調べること。
装置の案内役も買って出る。
見学者に、難解な物理学の理論を振りかざすのは大嫌いだ。
「納税者である皆さんはスポンサー。お金の使い道を知りたいと思って当たり前」
装置責任者として、公用車や作業服の手配も多田さんの仕事。

04年4月、J-PARCに赴任して最初の仕事は、
ゼネコンの現場監督との工事に関する交渉。
「細かいこともやらないと、結局は一番大事な仕事がうまくいかなくなる。
嫌いなことから逃げてはダメ。
好き嫌いではなく、その仕事が全体の中で必要かで判断するのが
プロフェッショナルでしょう。ぼくはプロの学者になりたい」

4人きょうだいの末っ子。
一家の中で、4年制大学を卒業したのは多田さんだけ。
両親に勉強のことを言われた記憶はない。
自動車整備士だった父親は、
どんなことでも徹底する大切さを背中で教えてくれた。

「やるからにはトップを目指す」
多田さんの目標は、T2K実験のような素粒子物理学の巨大プロジェクトを
率いるチームリーダーになること。
「T2Kで働く400人の研究者の中で、物理の勉強では
ぼくは400番目かもしれない。
でも細かい仕事でもきちんとやることで、全体を見渡せる人間になりたい」。
目前に迫った実験の成功こそが、大きな目標の達成につながると信じ、
今日も地道な仕事に励む。
==============
◇ただ・しょう

大阪府摂津市出身。01年、京都大大学院理学研究科物理学・
宇宙物理学専攻博士課程修了。
同大大学院非常勤講師を経て、04年4月から現職。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/18/20090118ddm016040018000c.html

朝食食べれば元気アップ 体力向上との相関を強調

(共同通信 2009年1月22日)

「朝食を食べ、よく眠れば元気アップ」、「運動部に入ると体力向上」。

文部科学省は、全国体力テストの結果分析で運動、生活習慣と
体力向上との相関関係を強調、子どもの健全育成に向けて啓発を進める
「早寝・早起き・朝ごはん」の流れに沿う内容が目立った。

テスト結果で、朝食の摂取状況と体力合計点(80点満点)の関連をみると、
「毎日食べる」とした小学生男子の平均が54.4に対し、
「毎日食べない」児童は50.8にとどまった。
女子も毎日食べる児童は55で、3.4ポイント上回った。

小中学校の男女とも、朝食を毎日食べる子どもが食べない子に比べ、
肥満の割合が少ないことも指摘。

運動部やスポーツクラブに所属している中学生女子の体力合計点平均は52.1、
未所属の女子を10.6ポイント上回った。
男子も、未所属の生徒より9.7ポイント高い42.5。
学校単位でみても、小中学校とも加入率が男子で80%以上、
女子で70%以上になると、平均点が大幅に上昇。

一方、睡眠時間が1日に「8時間以上」とする小学生の平均は
男子が54.7、女子は55.1。
「6時間未満」とした男子は51.8、女子は52.5で、
文科省は「睡眠時間の差が体力にも反映している」と分析。
ただ、中学生では男女ともに「6時間以上8時間未満」の平均が最も高くなった。

▽全国体力テスト

正式名称は「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」。
小5と中2のすべての児童生徒を対象に実施。
小学校は、全体の71%約1万5600校の計約78万人、
中学校は、70%約7600校の計約77万人が受けた。
実技は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、50メートル走、
立ち幅跳びのほか、小学生はソフトボール投げと20メートルシャトルラン、
中学生はハンドボール投げとシャトルランか持久走
(男子1500メートル、女子1000メートル)を選択。
児童生徒の生活・運動習慣や学校への調査も行った。
事業費は約1億9000万円。

▽従来の調査で十分 

正木健雄・日本体育大名誉教授(体育学)の話

日本は1964年以降、子どもから大人を対象に体力と運動能力を抽出調査、
この分野では世界でも例がないほど統計資料が充実。
だが、その調査で判明した背筋力と柔軟性の低下、という問題には
何ら有効な対策を講じておらず、膨大なデータを活用できていない。
新たに全国一斉・全員対象の調査をしても、
同じようなデータが増えるだけで底上げには役立たない。
やるべきことは従来の調査で分かっているのだから、
大切な予算は指導の充実に使うべきだ。

▽体力向上の手掛かりに

西嶋尚彦・筑波大大学院准教授(健康体力学)の話

体を動かす習慣が身についている子どもや、体力づくりに熱心な学校は
良い結果が出ており、小中学校や教育委員会が体力向上を
どうやったら実現できるかという手掛かりが見えた。
調査対象が学年全員なので、参加した子どもは自分の水準を知り、
運動や食事といった生活習慣を見つめ直すことができる。
大事なのは、各地域が結果を活動に反映させることだが、
今回は約3割の学校が参加していない。
足並みがそろうまで、あと数年は続けるべきだ。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/22/86919/

女性は空腹を抑えにくい? 米チームが脳解析

(共同通信 2009年1月20日)

女性は、男性に比べて空腹感を抑える能力が低いとの研究結果を、
米ブルックヘブン国立研究所などのチームが、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

空腹時に好きな食べ物を見てもらい、脳の活動状態を調べた。
研究チームは、「女性に食べ過ぎてしまう傾向が強いという過去の研究と
矛盾がなく、女性のダイエットが成功しにくいことの根拠になるかもしれない」

実験に参加したのは、20-40代の健康で標準的な体格の男女計23人。
実験前夜の食事から17時間以上たった空腹状態で、
サンドイッチやピザなど、それぞれの好物を見たりにおいを確かめたりした。

その直後に、陽電子放射断層撮影装置(PET)で脳の状態を調べると、
男女とも通常より脳は活性化していた。

しかし、食べ物を無視したり別のことを考えたりして
空腹感を抑えるよう求めると、男性は女性と比べて感情の働きなどに
関係する「扁桃体」などの領域の活動が大幅に低下。
実際に感じる空腹感も、男性の方が少なくなっていた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86616/

2009年1月27日火曜日

現場再訪(9)「大都市圏で教師」続く

(読売 1月21日)

地方の大学から大都市圏の教員をめざす傾向が続いている。

東北出身の先生たちは評判が良く、校長が欲しがります。
皆さんの先輩がいい実績を上げてくれている。
ぜひ続いて、埼玉の子供たちに力をつけてほしい」

津軽平野に初雪が降って間もない昨年11月下旬、
埼玉県教育委員会小中学校人事課管理主事の本荘真さん(44)が、
弘前大学教育学部の学生ら約40人を前に熱弁をふるっていた。
「埼玉も田舎。関東の子供も東北と違わない」と、先入観を取り払い、
「地元と併願で、第1志望でなくてもいいから」と必死。

同大には、相前後して、さいたま市、千葉県、栃木県の各教委が説明に。
今月には、神奈川県内の学校に勤務する卒業生との懇談会も開かれた。

弘前大では2005年から、教員採用試験を受ける学生に
チャーターバスを出すなど、学生の首都圏受験を積極的に後押し。
その結果、1都3県4政令市での大学院生を含む合格者は、
05年37人、06年36人、07年45人、08年55人と近年、急増。

採用者は、06年春33人、07年春25人、08年春32人で、
急増した分、辞退者も多い。
今春もこの傾向は続く見通し。
試験に合格しても、東北地方を中心にした地元の学校で臨時講師になったり、
民間企業に就職したりする学生が多い。
同学部就職対策委員会委員長の宮崎秀一教授(55)は、
「受験自体への抵抗感は薄れてきているようだが、
最後の決断への壁は依然厚い」と痛しかゆしの表情。

説明会に出席していた片方麻衣さん(21)(3年)も、
「先輩も多く就職しており、(試験日程がずれている)出身地の岩手と
併願を検討したい」と言いつつ、「関東への抵抗感はある」と認める。

青森県の08年度教員採用倍率は16・5倍で、全国で3番目に高い。
縁故採用汚職が発覚した大分県をわずかながら上回る。
地方での正規教員就職は夢のまた夢、という状況が続いている。

一方、大量退職時代を迎えている大都市圏の倍率は、
川崎市(3・5倍)、大阪市(3・7倍)、千葉県(4・5倍)、埼玉県(5・6倍)と低い。
今春、3000人規模の採用が予想される東京都教委。
来春に向けて来月、都内の小学校を見学するバスツアー
「東京の先生になろう」を初めて開く。
東北地方の教員志望者に向けた企画。
都教委では、「大量退職はあと5年くらいは続く」

しかし、売り手市場は期間限定的でもある。
大都市圏では、私大を中心に教員養成課程の定員を増やす動きが目立つ。
児童生徒数の減少もあり、一時的な教員不足は、やがて解消されると見られ、
大都市圏でも将来、パイの奪い合いになっていく可能性がある。
「都会に行けば先生になれる」――そんな夢も、いずれは、
揺らいでしまうことになるかもしれない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090121-OYT8T00293.htm

インタビュー・環境戦略を語る:サッポロビール・市川淳一取締役常務

(毎日 1月19日)

サッポロビールは、製品の生産から消費までの二酸化炭素(CO2)排出量を
「カーボンフットプリント」として缶に表示した定番商品
「サッポロ生ビール黒ラベル」を、2月から北海道で試験販売。
ビール業界では世界初となる見込み。
担当の市川淳一常務に環境問題への取り組みを聞いた。

-地球温暖化問題への対応はいつから?

94年に「環境行動指針」を定め、CO2排出量を2010年までに
90年比で12%減らす目標。
03年にはそれを達成し、更に04年には「06年までに25%削減」という
新目標を設定し、クリアした。
現在の目標は、05年に掲げた「10年までに総量で50%、
原単位(単位生産量あたりのCO2排出量)で40%削減」。
総量は既に達成したが、原単位で40%減らすのは相当高いハードル。

-どうやって減らしてきたか。

◆工場が中心。
コージェネレーション(発電で出る熱を有効利用する)システムの導入、
廃水を微生物で分解してメタンガスを発生させ、燃料として使うといった
取り組みで、エネルギー効率を高めてきた。
容器の製造段階で出るCO2排出が多いので、
従来より小さくて軽いアルミ缶への切り替えを進めている。
物流面では、昨年から北海道でキリンビールと共同配送を始めている。

業界唯一の「協働契約栽培」も環境と関係が。

◆麦やホップを生産する国内外の農家約2100戸と契約し、
16人の社員が出向いて栽培方法などを取り決め。
あくまでも安全性と品質のためだが、農薬使用の削減など、
環境に優しい農法につながる面も。
カーボンフットプリントの前提となる「ライフサイクルアセスメント」
(原料生産から製品の消費・廃棄までの一貫したCO2排出量算出)
可能なのも、100%の協働契約栽培を行っているから。

-フットプリントの本格導入は?

◆時期は未定だが、試験販売を通じてお客様の反応や
購買行動への影響を調べ、本番に備える。
カーボンフットプリントは国全体の流れですが、消費者の認知度はまだ高くない。
取り組みを通じて関心を高め、環境問題に貢献する姿勢をアピールしたい。

-ビール事業以外では?

◆タイで製糖工場から出るサトウキビの搾りカスなどから
バイオエタノールを作る共同事業に参加。
静岡市では、おからやジャガイモの廃棄物からエタノールを
生産する事業を昨年から始めた。
未来のエネルギー源として期待される水素を、パン工場の廃棄物から
作り出す技術も、広島大学と共同研究。
==============
◇いちかわ・じゅんいち

早大政経卒、70年サッポロビール入社。
経営本部長などを経て07年3月から現職。
経済産業相が認定する消費生活アドバイザーの資格も持つ。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/19/20090119ddm008020030000c.html

最大のたんぱく質の構造解明 感染症・がん新薬に期待

(朝日 2009年1月16日)

兵庫県立大、大阪大のグループは、生物の細胞内で最大のたんぱく質
「ボルト」の構造を、大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)で解明
ボルトは、細菌に対する免疫や、抗がん剤が効かなくなる仕組みに関係、
治療薬の開発に応用が期待。米科学誌サイエンスで発表。

ボルトは、1986年にネズミの肝臓から発見されたラグビーボール形の
輪郭をもつたんぱく質。脊椎動物などの細胞内にある。
分子量は、一般的なたんぱく質の100~1千倍ほどにあたる約1千万で、
知られている細胞内のたんぱく質としては最大で、詳しい形はなぞ。

兵庫県立大の月原冨武特任教授らは、
スプリング8の非常に強いX線を1分間あてることで構造を解明。
ひも状の分子が上下39本ずつ計78本寄り集まり、
つるを編み込んだ籐籠のような形に。

ボルトは、人間が緑膿菌に感染したとき、体内の免疫が菌を殺すのを助ける。
複数の抗がん剤が効かない多剤耐性のがん細胞は、
ボルトの部品であるひも状分子を大量につくることが知られている。
今回、構造が特定されたことで、ボルトの機能の研究が進み、
感染症やがんの治療効果を高める薬の開発に結びつくと期待。

http://www.asahi.com/science/update/0115/OSK200901150083.html

2009年1月26日月曜日

リンカーン大統領の功績

(サイエンスポータル 2009年1月21日)

オバマ米大統領就任をめぐるニュースの中で、
リンカーン大統領をいかに尊敬しているかを示す事例が何度も紹介。
フィラデルフィアから鉄道でワシントン入りしたのも、
リンカーン大統領にならい、宣誓の時に使った聖書も同じ、などなど。
奴隷解放をめぐり国内を二分する南北戦争で勝利し、
その後いち早く国内融和に努めたリンカーン大統領に、
新大統領が特段の敬意を払うのは、十分理解できる。

リンカーン大統領が、米国の科学者、工学者を代表する機関である
全米科学アカデミーを設立した業績についてはあまり報道されていない。
全米科学アカデミーのホームページには、
設立の経緯が次のように書かれている。

全米科学アカデミーは、南北戦争のさなかの1863年3月3日、
「Act of Incorporation」にリンカーン大統領が署名し、発足。
以来、科学(science or art)に関するいかなる政府機関からの要請に対し、
研究、調査、審議、実験をして報告する任務を果たしてきた。

全米科学アカデミーは、米政府の最大でかつ最も信頼される
シンクタンクの役割を担ってきた、と自認。
オバマ大統領が、既に打った手の中で政府機関要職への科学者の重用が
挙げられている。

全米科学アカデミー自身も、6人の科学アカデミー会員が
新政権の要職にオバマ大統領から指名されたことを誇らしげに伝えている。
6人とは次の人々(かっこ内は、指名時の職)。
スティーブン・チュー・エネルギー省長官
(ローレンス・バークレー国立研究所長、ノーベル物理学賞受賞者)
ジョン・ホールドレン大統領科学顧問・科学技術政策局長(ハーバード大学教授)
ジェーン・ラブチェンコ海洋大気局長(元・国際科学会議(ICSU)会長)
ローレンス・サマーズ国家経済会議(NEC)委員長(元・ハーバード大学長)
ハロルド・バーマス大統領科学技術諮問委員会共同議長
(元・米国立衛生研究所(NIH)長、ノーベル医学生理学賞受賞者)
エリク・ランダー大統領科学技術諮問委員会共同議長(ハーバード大学教授)

こうした全米科学アカデミーの実績、役割と比較して、
日本学術会議と政府との関係はどうだろうか。

首相、主要閣僚、日本学術会議会長を含む有識者から成る
総合科学技術会議が、科学技術政策の優先順位を決めるという
仕組みはできている。

しかし、議論のもとになる調査・審議データはだれがつくっているのか。
各省がそれぞれ一本釣りした研究者たちでつくる審議会などで
検討したものを参考に、それぞれの省が用意したものが
基礎資料になっているのが実情。
各省が、自分たちの都合で集めた人たちから成る審議会は、
真の第3者機関とは言えまい。
各省の意向に真っ向から反する審議結果は出しにくいはず、と
国民の多くが思うのは当然。

政府が政策決定に必要とする研究、調査、審議などは原則、
第3者的色合いがはっきりしている日本学術会議が引き受けるべき。
全米科学アカデミーと米政府との関係のように。

金澤一郎・日本学術会議会長の答えは、
「今さまざまな審議会が果たしている役割は、
学術会議が引き受けるのが本来の姿だとは思うが、
いま、すべて学術会議にやってほしい、そのための予算も付ける、
と言われたら対応できない。相当大変な作業になるから」

60年前に学術会議ができたときに、当時の文部省は
文教予算の配分を学術会議に任せた。
その後、文部省の下に学術審議会ができ、
学術会議と文部省も仲違いしてしまった。
いろいろな審議会ができてきたのも、予算の配分権が
学術会議から離れたころから―という過去の経緯について
説明があったうえで述べられた現状認識。
「鶏が先か卵が先かという話」(金澤会長)で、
一挙に現状を変えるのは困難。
現在の仕組みを一挙に変えるのは難しいが、
改善する必要があるものの一つに、大きな予算を必要とする研究課題。

宇宙開発や大型加速器を必要とする素粒子研究といった研究分野に、
どこまで国の予算をつぎ込むか、
具体的に提案された研究プロジェクトが
日本として本当にやる価値があるかどうか。

こうした問題について、その分野の研究者だけでなく、アカデミーとして
もっと意見を言うべきではないか。
金澤会長が認めるように、結局、大型プロジェクトをやりたい研究者は
直接政治家に直談判した方がよい結果を得る早道となっている現実がある。
この分野だけにそこまで国費を投入する必要はないのでは、
という声が他の分野の研究者からは出てこない、
出そうと思っても出す場がないということ。

一方、科学技術政策を立案、決定するうえで大きな役割を果たしてきた
官僚側には、現状の日本学術会議に対する期待は非常に小さいのが現実。
研究者主導で、科学技術政策の立案、調整、優先度付けなどできるわけがない、
と恐らく思っている。

例えば宇宙開発についてなら、宇宙開発委員会が自ら分科会を設けるなどして、
十分、審議、検討しているから問題ないと言うだろう。

しかし、分科会の構成などは、宇宙開発委員と事務局である官僚が決める。
真の第3者機関といえるか疑わしい。
アカデミーがもっと影響力を持つべきだと考える一般国民は多い。
日本学術会議の役割を大きくすることを、
学術会議自身は当然のこととして、皆がもっと考えてよいのではないか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0901/0901211.html

現場再訪(8)児童獲得 一定の効果

(読売 1月17日)

学校選択制で新入生ゼロを経験した学校は、どう変わったのか。

緑豊かな山々に囲まれた大分県豊後高田市立臼野小学校
昨年12月中旬、5、6年生25人が月1回のクラブ活動に取り組んでいた。
その輪の中に、地域サポーターと呼ばれる住民の姿が見える。
「創作活動」、「ダンス」、「野外活動」の3班に各1~2人ずつ、
忙しそうに動き回っている。

「創作活動」の班でビーズ作りを教えていた主婦瀬口亜紀さん(35)は、
「子供のために力になりたいと思って」と、趣味のビーズ作りで協力を申し出た。
作品を見せに来る児童に、「いまいちかな」、「上手上手」と声をかける。

野外活動担当の遠山小次郎さん(69)は、
「卒業生が道端で、『遠山のおじちゃん』と声をかけてくれるのがうれしくて」
と笑顔を見せる。

サポーターは30~70代の20人で、ほぼ全員が卒業生とあって、
「『自分の学校』という意識で支援してくれる。ありがたい」と大嶽由美子校長(59)。
図工や家庭科の授業にも参加する。

同小は、旧真玉町が2005年に豊後高田市と合併したことで、
学校選択制の波にのみ込まれた。
初年度の入学者はゼロ。
校区内にいた5人の対象者全員が、規模が大きい隣の市立真玉小を選んだ。
サポーター制は翌06年度から導入。

同年度以降は対象者6人中2人、5人中4人、7人中4人が臼野小に入学。
「迷う親に、地域サポーターが声かけをしている。
その一定の効果はあったのだろう」と大嶽校長は振り返る。

それでも、現児童数は35人。
もう少し大きい学校で学ばせたい、という保護者の希望は強い。
このため、規模の大きい学校に児童が出向く共同学習の時間を設け、
テレビ電話での他校との交流も企画する。

国立中や私立中が多い東京都文京区。
地元の区立小学校から区立中に進むのは、半数という土地柄。
区立第七中学校の生徒数33人は、島嶼部を除く都内で生徒が最少
学校選択制の導入2年目の04年度には、新入生がゼロに。

当時、保護者による学校支援組織ができて、
学校紹介のミニコミ紙を作る活動もした。
だが、今春には生徒数111人の区立第五中学校と統合されて
音羽中学校になる。
七中の鶴見保憲校長(58)は、「学校がなくなるというより、
リニューアル(刷新)だから」と前向き。

新校では、数学、理科、英語での習熟度別の少人数授業の実施や、
お茶の水女子大学と連携した授業など、特色ある教育活動が計画。
生徒会は、ひと足早く合同で発足し、音羽中をPRするニュースの発行や、
近隣小学校への訪問活動も展開。

こうした活動も功を奏し、入学希望者は、予想の2倍を超える約230人。
最終的に何人が音羽中を選ぶかはわからないが、
「地域やPTAと協力して特色を出していくしかない」。
鶴見校長はそう強調した。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090117-OYT8T00233.htm

ジストニア筋収縮症状の原因メカニズム解明

(サイエンスポータル 2009年1月20日)

体の筋肉が勝手に収縮を起こし、意思通りに体を動かすことが
できなくなってしまう神経難病「ジストニア」は、
大脳基底核から発する信号の異常によって起きることを、
自然科学機構・生理学研究所の研究者たちが突き止めた。

知見聡美・助教、南部篤・教授と米マウントサイナイ医科大の
プラニパリ・シャシドハラン博士らは、
ヒトのジストニアの原因遺伝子を組み込んで新たに開発したモデルマウスを使い、
脳の中の神経細胞の働きをマウスが覚醒した状態で調べた。

正常なマウスは、運動の司令塔である大脳皮質運動野から
適切なタイミングと強さの信号が出ることで、筋肉が正常な動きをする。
この運動野の働きを調節しているのが大脳基底核で、
運動野の活動を抑える信号の強さを変えることで、
運動野が出す運動の指令の強さやタイミングの調節を行っている。

モデルマウスによる研究の結果、大脳基底核からの信号に異常が見つかり、
不必要で意図しない筋肉の運動を抑える仕組みが弱まっていた。
研究チームは、これが本人の意図しない筋収縮を生じさせる
根本的なメカニズムとみている。
モデルマウスによる研究をさらに進めれば、
新たなジストニアの治療法開発につながる。

ジストニアは、国内で約2万人の患者がおり、薬物や手術による治療が
行われているが、根本的な治療法はまだ見つかっていない。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0901/0901201.html

2009年1月25日日曜日

現場再訪(7)いじめ 教委「変わった」

(読売 1月16日)

いじめ苦による自殺が起きた教育委員会は、どう変わったのか。

「きちんと受け止めて、対応していかなくてはならない」
北海道滝川市の教育委員会議で、若松重義委員長(68)が呼びかけた。
いじめを苦にした自殺で亡くなった小学6年生の女児(当時12歳)の母親が、
市と道を相手に提訴したという報告を受けた言葉。

女児は2005年9月9日、いじめを訴える遺書を残して自殺を図り、
06年1月に亡くなったが、市教委は同年10月の本紙報道まで
いじめの記述があったことを隠していた。
「当時は委員になったばかりで受け身だった。
深く追及できず、反省している」と篠島恵理子さん(58)。
当時から唯一残る委員で、地元の医院の事務長。
問題発覚後に、教育長と委員長が辞任するなど、他の委員4人は交代、
07年10月には「委員会を活性化したかった」(小田真人教育長)として、
中学生の生徒を持つ40歳代の保護者が加わった。

「委員会は変わった」と篠島さんは感じている。
年間で小中学校1校ずつだけだった委員の学校訪問は、全11校に拡大。
事務局の提案の追認になりがちな教育委員会議の後、
自由な意見交換ができる「協議会」も開く。
各校から毎月、いじめの報告も。
「いじめは、どこでも起こりうると考えないといけない。
今は、最善の努力をさせてもらっている」と若松委員長。

女児の祖母の兄、木幡幸雄さん(61)は
「形を整えただけで、本質的には変わっていない」と厳しい見方を崩さない。
訴訟では、市がいじめを防ぐ義務を怠った、真相解明が不十分などと訴えている。

06年10月11日には、福岡県筑前町立三輪中学校2年の
森啓祐君(当時13歳)が自殺した。
遺書の中でいじめを訴え、後に1年時の担任の言動が
生徒間のいじめに発展したことも判明。

「学校では、いじめ対策が漫然となされており、町教委にも努力が欠けていた」
町教委の調査委員会の最終報告書は、
学校の責任とともに町教委の責任について触れた。
中原敏隆教育長(69)は、「結果的に周りは誰も気付かなかった。
教育の充実した学校と評価していたが、対策が足らなかった」と戒める。

昨年12月、町は「子どもの権利条例」を制定した。
いじめなどの問題が起きた場合、弁護士らによる救済委員会を作り、
解決にあたる。指導主事1人が増員され、昨春には、いじめの相談窓口などを
設けた「こども未来センター」も開所。
町全体で、いじめをなくす姿勢を示している。

教育委員も、月1回程度は学校訪問するようになるなど、
「真剣に学校現場に向き合うようになってきた」と
内装業を営む柿原紀也委員長(47)。

父親の森順二さん(42)は、「真実を見ようとしないといじめはなくならない」とし、
具体的ないじめの内容が、今も分からないことに釈然としない思いを抱く。

教育委員会には、尊い命をなくしたことに
本気で向き合い続ける姿勢が求められている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090116-OYT8T00288.htm

スポーツ21世紀:新しい波/290 武道の必修化/8

(毎日 1月17日)

国体実施競技の再編で、なぎなたは13年の東京国体から
「隔年実施」に決まった。
日本体育協会が、各競技の競技者数など多くの要素を得点化し、
ランク付けをした結果、下位のなぎなた、銃剣道、軟式野球、
トライアスロンが隔年競技となった。
新競技のトライアスロンを除けば、3競技は事実上の「格下げ」。

「スポーツの祭典である国体は、競技を広く知ってもらう大切な場。
隔年実施となることを、私たちは深刻に受け止めている」
全日本なぎなた連盟で技術委員などを務める福田啓子さん(皇学館大非常勤講師)。
なぎなたは、女性の武道として発展してきたが、
近年、中高生の競技人口は漸減傾向に。

昨年7月に秋田県で開かれた全国中学生大会の参加者は、
前年より109人少ない229人で、過去16大会で最少。
全国高校体育連盟のなぎなた専門部に登録している人数も、
昨年は過去10年で最少となる1401人(175校)。

少子化が進む中、12年度から始まる中学校1、2年生の武道必修化は、
競技普及のきっかけになり、男性競技者の拡大にもつながると期待。

しかし、新学習指導要領は武道の授業は柔道、剣道、相撲の中から
選択すると定め、なぎなたなど他の武道は学校や地域の実態に応じて
選択することができる、と位置づける。
学校に選んでもらわなければ、授業では実施されない。

全日本なぎなた連盟では、武道必修化に向けたプロジェクトチームを組み、
競技団体としてどう取り組むかを話し合ってきた。
福田さんは、「なぎなたの指導者がいる中学校を連盟がチェックし、
その学校の校長に授業で採用してもらえるようアピールする必要がある。
男女別や年齢別での指導法の確立や、
連盟から学校への指導者派遣も求められる」

次代を担う若者への普及は、競技の将来を左右するだけに、
学校の正課になる意義は大きい。
学校教育の枠を超え、競技団体も本腰を入れ始めている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

宇宙医学が骨粗しょう症患者を救う

(日経 2008-11-07)

若田光一さんは、日本人宇宙飛行士として初めて宇宙ステーションに長期滞在。
今回は3カ月以上となる見通し。
これは、“ 宇宙の骨粗しょう症”予防など宇宙医学の新たな挑戦。

宇宙飛行士たちの元気な笑顔を見ると、
厳しい訓練を経てようやく行ける世界であることを忘れがちだが、
宇宙空間は人体に様々な影響を及ぼす、やっかいな場所。

深刻なものの1つが、国内患者数1200万人ともいわれる骨粗しょう症の宇宙版
骨からカルシウムが抜けて弱くなる骨量の減少。
カルシウム排出が増えて尿路結石になる恐れも。

長期滞在で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米航空宇宙局(NASA)は
初めて薬による予防効果を調べる。
その最初の参加者が若田さん。

骨は、一部を壊し、新しく作り直すというスクラップ・アンド・ビルドを繰り返し
壊す係は破骨細胞、作る係は骨芽細胞。
閉経後の女性に多い地上の骨粗しょう症は、女性ホルモンが減った影響で
破骨細胞が活発になるなどして、作るよりも壊す方が多くなって起きる。

宇宙の微小重力環境では、体の重みが骨にかかる力の刺激が
ほとんどなくなる影響で、作るよりも壊す方が多くなる。
骨に力をかけることは、カルシウムの沈着に必要な刺激。
地上の骨粗しょう症でも、予防には運動が大切。

宇宙では筋肉も弱くなるので、宇宙飛行士は自転車エルゴメーターや
トレッドミルなどによる運動が欠かせない。
それでも骨量の減少は激しい。

JAXA・宇宙医学生物学研究室の大島博主幹研究員によると、
地上の骨粗しょう症では骨量が年に1—1.5%ほど減るのに対し、
宇宙ではこれが毎月、12倍ものペースで進む。
宇宙に6カ月滞在した場合、地上に帰ってから骨が元の状態に
回復するまで3—4年かかる。

予防効果を調べるのは、「ビスフォスフォネート」という薬。
破骨細胞の働きを抑制する、地上の骨粗しょう症治療ではもっとも有力な薬。
今回は、週に1回服用する飲み薬の予定。
より長期間効果が続く注射薬も、将来試される可能性がある。

長期滞在ではもう1つ、心電図を24時間取り続ける携帯型の医療機器、
ホルター心電計を使う遠隔医療の実験にも取り組む。
将来は、生体リズムの研究につなげる計画。
宇宙ステーションは約90分で地球を1周しており、
地上のような太陽の強い光による昼と夜の24時間周期がない。
これが体調に影響している恐れがある。

薬にせよ、心電計にせよ、地上と同様に宇宙でもうまく働く保証はない。
薬の作用が違うかもしれないし、精密な医療機器は打ち上げ時の振動や
強い宇宙線に耐えなければならない。

宇宙医学の積み重ねの先には、一般的な医療への幅広い応用が見込み。
骨粗しょう症は、「宇宙では時間を加速してテストしているようなもの。
薬や運動による効果の知識を地上の予防医学に生かせる」
大島主幹研究員は期待。
高齢者や長時間勤労者の健康管理、ストレス対策、医師不足に対応した
遠隔地医療や災害医療などへの応用も期待。

一般の人でも気軽に安全に宇宙旅行を楽しめるようになる—
というのは気が早いが、日本の宇宙実験棟「きぼう」では
医学・生物学的な実験も予定。
この分野がどのぐらいの可能性を秘めているのか、科学的な興味は尽きない。
宇宙は、医学でもフロンティアを開くだろうか。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec081105.html