2011年3月5日土曜日

インサイド:トヨタとスポーツ/3 アスリートの特別待遇 「複線型」雇用で支援

(毎日 2月24日)

団体競技で重点強化部を設けて、トップを目指すトヨタ自動車。
個人競技では、世界の頂点を目指すアスリートを特別待遇で支える。

昨年末、フィギュアスケート全日本選手権を制し、
世界選手権で頂点を狙う、小塚崇彦と安藤美姫。
14年ソチ五輪では、メダル獲得への期待が大きい。

2人は、全日本選手権の練習で、
「TOYOTA」のロゴ入りジャージーを着ていた。
観客席では、トヨタ社員が横断幕を掲げ、声援を送った。
小塚は、「支援してくださるトヨタ自動車さんに恩返しできた」

◆出社は月に1回

ともに名古屋市出身で、人事部所属の嘱託社員。
海外での練習や国際大会出場が多いため、
出社は月1回程度で、競技結果などを報告。

オフには、小塚が昨夏の都市対抗野球で、
東京ドームで応援席のロープ張りを手伝うなど、
社内イベントの設営準備も行い、
安藤も、07年都市対抗の応援に駆けつけ、ステージで拡声機を握った。

けがの際の医療費などは、一般社員と同じ保険が適用。
社内留学制度を使って中京大に通い、
ナショナルトレーニングセンターに認定された学内のリンクで練習。
マネジメント会社と広報などの委託契約を結ぶ。

支援目的を、人事部の藤原睦行主査は、
「広告宣伝効果などはあるが、世界で活躍する地元選手のために
環境を整えようという考え」
小塚は、「社員として、支援に対し、『結果を残さなければ』と引き締まる」

こうした雇用のさきがけは、女子柔道の谷亮子。
谷は、バルセロナ五輪に出場した92年から、
トヨタのCMに出演した縁もあり、98年に嘱託社員として入社。
参議院議員選挙出馬表明前の昨年3月末まで在籍。

主に首都圏で練習し、00年シドニー五輪では
トヨタ所属選手初の金メダルを獲得。
トヨタ本社がある愛知県豊田市内をパレード。
04年アテネ五輪で2連覇した直後、都市対抗野球の舞台、
東京ドームで応援、シンボル的存在だった。

「単なるスポンサー契約ではなく、同じ社員の選手が
世界の舞台で頑張って活躍すれば、社内の一体感も高まる」と藤原主査。
重点強化部の活躍は、国内トヨタの士気高揚に結びつき、
五輪選手の活躍は、「TOYOTA」のブランド力アップにつながる。
小塚や安藤の活躍は、地元貢献も強調できる。

◆社員としても育成

同じ五輪選手でも、スケート部ショートトラックの選手は、
他の運動部と同じ正社員で雇用。

今月、名古屋市内での硬式野球部の日本選手権優勝祝賀会。
背広姿で来賓誘導する寺尾悟監督の姿があった。

豊田市生まれで、94年リレハンメル五輪から4大会連続出場。
この間、98年長野五輪後に入社、社業に従事しつつ、
競技を09年まで続けた。
後輩社員には、昨年のバンクーバー五輪出場組の
高御堂雄三(愛知県一宮市出身)、伊藤亜由子(浜松市出身)両選手。
寺尾監督は、東海地区出身選手を大舞台へ飛躍させる役も担う。

メディア露出の大きい選手は、プロに等しい契約をする一方、
取り上げられる機会の少ない競技でも、現役中から社員教育し、
競技引退後も社業に戻れるようサポートする。

対外的には地元密着のアピールになり、
選手側には愛社精神が育つ。
体力のある大企業だからこそできる、複線型の雇用で選手を支える。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/24/20110224ddm035050033000c.html

英単語…難しいと右脳、簡単なら左脳

(2011年2月24日 読売新聞)

難しい英単語を聞くと、右脳の活動が高まり、
易しい単語の時には左脳が活発に働くことが、
首都大学東京の萩原裕子教授らが、
小学生約500人の脳活動を計測した研究でわかった。

右脳は、音のリズムや強弱の分析にかかわっているとされ、
研究結果は、英語を覚えるにつれ、右脳から左脳に
活動の中心が移る可能性を示している。

外国語の習い始めには、音を聞かせる方法が良いのかなど、
効果的な学習法の開発につながるかもしれない。
米専門誌電子版に25日掲載。

萩原教授らは、国内の小学1~5年生が、
難度の異なる英単語を復唱している時の脳活動を測定。

abash、nadirなど難しい英単語を復唱する時、
右脳の「縁上回」と呼ばれる場所の活動が活発になり、
brother、pictureなど易しい英単語では、
左脳にある「角回」の活動が高まった。

萩原教授によれば、新しい外国語を学ぶ時、
まず右脳で「音」の一種として聞くが、慣れるにつれ、
日本語を聞く時のように意味を持つ「言語」として
処理するようになる。

単語の意味を理解するなど、言語を処理する能力は
主に左脳がつかさどると考えられている。
子どもが外国語を覚える時の脳活動については、
よくわかっていなかった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/24/132821/

「定住自立圏」49地域に 総務省が取り組み報告

(2011年2月23日 共同通信社)

総務省は、複数の市町村が連携して地域活性化を図る
「定住自立圏構想」の取り組み状況を、
同省の有識者懇談会に報告。

中核的役割を担う「中心市」を宣言したのは、32道県の62市。
医療や産業振興などの連携策を盛り込んだ協定を結んだのは、
29道県の49地域(参加市町村は延べ192)、
1年前(2月11日現在)の23地域から倍増。

都道府県別で中心市が多いのは、北海道の7、秋田、島根の4など。
松江市と鳥取県米子市、高知県宿毛市と四万十市は、
2市で中心市を構成。

政策分野別では、医療や産業振興のほか、地域公共交通などで
共同の取り組みが目立ち、
「病気、病後の子どもの保育」(長野県飯田市など)、
「図書館ネットワーク」(滋賀県彦根市など)
といったユニークな事業も。

総務省によると、人口4万人超としている中心市要件の緩和などを
求める意見が自治体から出ている。

自立圏構想は、09年度に本格始動。
一定の条件を満たした圏域の市町村は、
特別交付税などの支援措置が受けられる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/23/132742/

2011年3月4日金曜日

インサイド:トヨタとスポーツ/2 重点強化部 「結果第一」現場に重圧

(毎日 2月23日)

国内スポーツの支援に力を注ぎ出した、
トヨタ自動車の豊田章男社長。
「不況の時こそ、スポーツが元気を与えてくれる」、

試合会場や練習場にも足を運ぶ。
トップの視線は、選手らを刺激、昨年から団体競技などで
顕著な成果が出ている。

今年元日のニューイヤー駅伝。

ゴール目前での3チームの競り合いから、トヨタが1秒差で振り切る
劇的な展開で、32回目出場にして初優勝。
直後、現地で選手やスタッフは、豊田社長にねぎらわれた。

陸上長距離部は、重点強化部の一つ。
佐藤敏信監督は、コニカミノルタのコーチとして、
実業団最高峰のこの大会で6回優勝。
佐藤監督には、忘れられない出会いがある。

就任直後の08年秋、渡辺捷昭社長(当時)と対面、
約20分の質問を受けた。

選手獲得などの方針は任せるが、いつまでに結果を出せるかが主。

「一クラブが、ここまで見られているかと思い、
感激もあったが、プレッシャーも感じた」

◆株主意識し順位付け

70年代までの高度経済成長期、職場の一体感醸成など
人事労務施策などの一環で、次々と創部され、
現在30を超えるトヨタ本体の運動部は、厳しくランク付け。

陸上長距離と硬式野球、ラグビー、男女バスケットの5部が、
重点強化部に指定。

専用グラウンドや体育館があり、野球部には元プロ、
男子バスケット部は外国人選手も所属。

それ以外の部は、移動やユニホームなどの活動費は
支援されているが、5部には及ばない。

人事部の藤原睦行主査は、
「これまでの経緯と従業員への影響力を考慮。
運動部をすべて強化できればいいが、
日本一を目指すため、絞っている」

昨年上半期の自動車国内販売は1位、シェア50%を占めた。
企業が、より株主を意識した経営をするようになった現在、
運動部にも、社会が認めるトップ成績が求められる。

藤原主査は、「株主への説明責任は、従来より重要。
企業のトップが、『費用はかかるが、経営に必要』と説明できればいい」

硬式野球部も変わった。
日本選手権で、89年の初陣から7回出場でベスト8が最高だったが、
ここ4年で3回優勝。

強化には、川島勝司総監督の力が大きい。
ヤマハで都市対抗優勝3回、96年アトランタ五輪銀メダルの名将は、
99年秋からチーム運営に携わり、試合結果を
人事考査に反映するよう、社に求めた。

「社業と野球の両立」から、「野球の勝利が社業」になった。
「各社員は、旋盤担当なら、見事な仕上がりを目指してプロになろうと努める。
野球も同じ」と川島総監督。
選手が、練習後に職場に戻る姿もなくなった。

◆ちらつく休廃部

昨年26年ぶりに、日本リーグで優勝した女子ソフトボール部。
重点強化部には、指定されていない。

07年から指揮した福田五志監督は、
「会社に見極められる立場。
現場の希望は受け入れられたが、3年以内の日本一を求められた」と
危機感を感じていた。

現チームで、福田監督になってから入社した選手は、21人中16人。
08年北京五輪で銀メダルを獲得した米国代表の主力投手、
モニカ・アボットもいる。
福田監督は、「現場で社長に応援され、かけられる言葉は重みが違う」

勝利を重要課題にする企業側と、存立を意識する現場。
休廃部がちらつく緊張感の中、トヨタの各部は結果を出した。

豊田社長は、「プロの下に実業団があってこそ、レベルを保てる。
そのためにも、実業団が必要なんだ」と、
次世代の育成のために、チームを持つ大切さを訴える。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/23/20110223ddm035050007000c.html

インタビュー・環境戦略を語る:イケア・グループ、ステファノ・ブラウン

(毎日 2月21日)

世界26カ国に280店舗を展開し、10年度決算の売上高が
235億ユーロ(約2兆6500億円)に上った家具小売りチェーンの
イケア・グループ(本社・スウェーデン)。

5年前に再進出した日本でも順調に成長し、
来年には福岡県に6店舗目をオープンする予定。
大量生産で低価格化を実現する一方、環境重視の姿勢も示す。
本社小売り部門の環境担当責任者を務める、
ステファノ・ブラウンさんに取り組みを聞いた。

--イケアは毎年、サステナビリティー(持続可能性)の取り組みに
関する報告書を出すなど、環境に力を入れている。

◆我々は、長期経営目標の柱の一つに、
サステナビリティーを位置づけ。
環境への責任を、成長、コスト削減、人材重視と並ぶ
4本柱の一つに据えている。

今後は、ビジネスとの融合を進め、持続可能性を高めるほど、
利益にもつながるような状況にまで進化させたい。

--具体的な取り組みは?

◆我々が、家具の製造などに使う木材の量は、
年間約530万立方メートルに。
うち97%は原産地を把握し、違法伐採されたものが
含まれていないかなどチェックを強化。
製造過程で出た木の切れ端を捨てずに、チップにして圧縮して
固めたうえで、製品に再利用。

「より少ない物から、より多くを生み出す」がイケアの基本哲学、
それによりコストとともに環境負荷も減らすことができる。

--環境負荷を減らす商品の販売にも力を入れている。

◆その代表が、蛍光灯を使った省エネ電球。
60ワットの白熱球と交換すれば、5分の1の消費電力で済む。
イケアが発明した製品ではない。
蛍光灯電球として、2個799円という低価格を実現したことが普及を促した。
これまでに、世界で1億5000万個売れた。

省エネ性能が高いLED(発光ダイオード)電球も、近く発売予定。
日本で今売られている製品より、かなり安く出せる。

--イケアの商品は低価格に加え、デザインも評判。

◆価格やデザインと環境への配慮を両立させることを目指す。
商品の環境負荷を少しずつ改善し、イケアを訪れる
年間6億2000万人のお客さんに選んでもらえれば、
環境への効果は大きい。

--環境を重視するのはなぜか?

◆起業の地であるスウェーデンには自然を愛し、
木や水を大事に使う文化がある。
欧州の消費者は、環境への関心が高く、商品がどこでどんなふうに
作られたのか、厳しく見ている。
多国籍企業として評判を守るためにも、不可欠な取り組み。
==============
◇Stefano Brown

97年イタリア・ミラノ工科大学卒業。03年イケア・イタリア入社。
07年からイケア・グループ本社で現職。39歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/02/21/20110221ddm008020033000c.html

「食べ過ぎ」を尿で判定 タニタ、2年以内に製品化

(2011年2月23日 共同通信社)

計量器メーカーのタニタは、尿中の微量な糖分を計測することで、
「食べ過ぎ」を判定する試作機を開発。

ダイエットや食生活の見直しに役立ててもらうため、
2年以内の商品化を目指す。

ご飯やパン、イモ類に多く含まれ、体内で糖分に変わる糖質は、
一定水準を超えて取りすぎると脂肪となり、太る原因となる。

食事で過剰に糖質を取ると、
尿中の糖分が多くなることが、同社の研究で判明。
試作機は、ハンドバッグに入るサイズ。

食事をしてから約2時間後に、センサー部分に尿をかけて
糖分量を計測し、数値と5段階の絵柄で食べ過ぎかどうかを表す。
一定基準以下なら、糖分が原因で太ることはない。

製品化に向け、糖分だけではなく、尿中のさまざまな成分を
総合的に計測できる仕組みを開発。
価格は、「1万円前後に抑えたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/23/132744/

2011年3月3日木曜日

慢性疲労症候群には認知行動療法や運動療法の併用が効果的

(日経 2月24日)

慢性疲労症候群(CFS)患者に対し、標準治療と併行して
認知行動療法(CBT)、段階的運動療法(GET)を行うのが
最も有効であることが、英国の新しい研究で示された。

今回の知見は、「身体的行動や精神的態度を、
追加的に調節することが、慢性疲労症候群CFSの改善につながる」
という議論の対象となっている考えを支持。

CFSの標準的な治療法は、専門家メディカルケア(SMC)と呼ばれ、
疾患に関する情報、症状の管理に関する助言、
さまざまな対処法による支援などの提供を軸とする。

今回の研究では、患者が活動と休養のパターンを
厳格に管理することに焦点を当てた適応ペーシング(調節)療法(APT)と
呼ばれる治療法では、ほとんど利益が認められない。

英ロンドン大学クイーンメアリー校バーツ・アンド・ロンドン
医学部教授のPeter D. White博士らによる今回の研究は、
英医学誌「The Lancet(ランセット)」オンライン版に2月18日掲載。

認知行動療法は、CFSを悪化させる行動の回避を目的とする治療法で、
精神的抑制による悪循環を断ち切ろうとするもの。

段階的運動療法は、徐々に患者の運動レベルを上げて
体力を向上させることにより、疲労および身体障害を軽減させる治療法。

今回の研究では、英国の4カ所のリハビリテーションセンターに通う
CFS患者641人を、4群に割り付け、
全群に標準的な専門家メディカルケア療法を行うとともに、
3群には適応ペーシング療法、認知行動療法、段階的運動療法の
いずれかの療法を併用。

その結果、標準的専門家メディカルケア療法と認知行動療法、
段階的運動療法を併用した群では、疲労レベルおよび身体機能の
両面で、最も大きな改善が認められた。

標準的専門家メディカルケア療法と適応ペーシング療法を併用群では、
標準治療単独群との差は認められなかった。

標準/認知行動療法群、標準/段階的運動療法群では、
患者の60%に疲労感および機能の改善がみられ、
30%が疲労感および機能が「正常レベル」であると報告、
標準治療単独、標準/適応ペーシング療法群で、
正常レベルであると報告したのは半数。

どの治療も安全性は同等であり、重篤な反応はまれ。

米マイアミ大学ミラー医学部慢性疲労センターのNancy Klimas博士は、
「CFSのさまざまな治療法の利点について、現在も議論が続いている」、
White氏らが、「認知行動療法、段階的運動療法は、適度な助けとなるが、
治癒をもたらすものではない」と述べている点に同意。

「CFS患者は、エネルギー量が極めて限られており、
閾値(threshold)を越えると再発するので、
その範囲内で治療に取り組まなくてはならない」

http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm

インサイド:トヨタとスポーツ/1 御曹司の仕掛け 社の士気高揚に利用

(毎日 2月22日)

自動車の国内販売シェア第1位を誇る、トヨタ自動車。
グループ企業も加わった所属のスポーツチームが、
10年度はプロ・アマを問わず、数々の栄冠を手にした。

「100年に1度の不況」と言われた08年のリーマン・ショックで、
企業スポーツが、休廃部に追い込まれる中、
トヨタは自社のリコール問題までもが続く苦境に立たされても手放さず、
日本のスポーツ界のリーダー役を担う。
総資産約30兆円に上る巨大企業のスポーツ戦略を探る。

「全国トヨタ販売店代表者会議」。
約290ある販売会社のトップやトヨタ役員ら、
スーツ姿の1000人を前に、ユニホーム姿の一団が登壇。

今年度全国優勝を果たした硬式野球と女子ソフト、
陸上長距離の各部監督と部員が謝意を述べ、
連覇を誓うと、大きな拍手が起きた。

年初の恒例行事に、初めて運動部が招かれた。
豊田章男社長は、「試合に出た選手だけでなく、
裏方を含めた総合力の優勝」とたたえ、
販売店を含めたオールトヨタとしてのチームワークの重要性を訴えた。

一時の危機的状況からは脱したとはいえ、景気低迷が続く日本経済。
自動車業界も例外ではない。

スポーツを組織の引き締めと士気高揚に利用して、
本業のテコ入れを図るのは、五輪を国威発揚に使う
政治家の手法と重なる。

会議は、運動部に社業を、より意識させる役割も果たした。
トヨタの国内スポーツ躍進の始まりは、
09年秋のF1撤退と、時期をほぼ同じくする。

◆歴史的転換のF1参戦

F1参戦の表明は、奥田碩社長時代の99年。

世界でブランド力を向上させ、シェア数%にとどまる欧州などでの
販売拡大につなげる狙い。

年間経費、数百億円とも言われるF1への挑戦は、
地方都市に本社を構え、1円単位のコスト削減を地道に続ける
経営が、「乾いたぞうきんを絞る」と評されるトヨタの歴史的転換。

参戦した02年以降、販売台数を毎年50万台規模で急激に伸ばし、
08年、米ゼネラル・モーターズを抜いて世界一に。

同年秋のリーマン・ショックの影響で、71年ぶりの営業赤字へ転落。
大市場の米国に偏重し、販売店から、「国内を向いていない」と
批判を浴びたトヨタの拡大路線は行き詰まった。

「原点回帰」を掲げ、早期黒字化を最重要課題に、
豊田社長が09年6月に就任。

子会社・富士スピードウェイでのF1日本GP開催を中止。
秋には、8年間未勝利のまま、世界一へ突っ走った
「よき時代」の象徴から完全撤退した。

◆国内スポーツへシフト

縮小の一方で国内、地域重視を強く打ち出す。
バラバラだった各運動部のインターネットホームページを
集約したサイト「GAZOO(ガズー) SPORTS」を開設。

ガズーは、画像と動物園のZOOを組み合わせた造語。
選手や試合の様子を、写真やブログで紹介し、
閲覧者も感想を返して、プロ選手から一般愛好家までが交流する場に。

学生時代、ホッケーで日本代表に選ばれた豊田社長には、
サイト広告の収入で、マイナー競技部を支援する構想もあり、
「子どもたちも、自分の写真や動画が載れば励みになる」と、
気軽に投稿できる仕組みも目指す。

4月、張富士夫会長が日本体育協会会長に就く。
「側面支援したい」という豊田社長だが、こうした取り組みは、
いずれも本業を意識したもの。

大会参加や観戦に伴う移動に、車の利用機会が増えれば、
国内シェア5割のトヨタ車も売れる算段。

愛知県内の一企業から、世界的企業に成長するにつれ、
「自動車の運転免許も持たずに入ってくる社員もいる」ほど質が変わり、
愛社精神が薄れたとの指摘。

創業者・喜一郎を祖父、章一郎名誉会長を父とする創業家直系の
豊田社長が、影響力を自覚しつつ、先頭に立って
自社のスポーツチームを応援する。

その頭の中には、常に自動車会社の経営者としての
冷徹な計算がめぐっている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/22/20110222ddm035050123000c.html

漢方最前線(4)葛根湯、2000年の歴史

(2011年2月21日 読売新聞)

中華料理店で「湯(スープ)」のメニューを見ると、
煎じ薬を連想してしまう。
クコ、百合根、ショウガなど、薬食共通の素材も多い。

富山大学和漢医薬学総合研究所の小松かつ子教授(54)は、
「東アジア全域から集めた数百種の薬用資源が、
漢方処方に投入されている」

煎じ薬は、「機能性食品」の究極だと感じる。
落語にも登場する風邪薬、「葛根湯」は、桂皮、麻黄、甘草、
大棗(たいそう)など7種類の生薬をブレンド、数十分煮込んだスープ。

桂皮はベトナム、麻黄や甘草はモンゴルや中央アジア、
大棗は黄土高原からもたらされる。

「インフルエンザ初期の典型的な症状、首や背中に痛みがあり、
悪寒が強く、熱も出てきた、
こんな時期に、熱々の葛根湯を飲んで寝ると、汗が出て、
ぐったり疲れを感じる。

これが回復への第一ステップ。
私たちに備わる治癒力のプログラムが起動したというサインで、
多くの人は、このまま休んでいれば治る」

日本東洋医学会長の寺沢捷年・前千葉大教授(66)は、
ウイルスを直接攻撃するのではなく、免疫系を調整して
短時間に自然治癒力を引き出す治療薬。
「タミフルなどない時代の知恵で、現代の治療薬に劣らず、今も有効」

1種類の生薬ではこの効果は出ず、7種の組み合わせ、配合比に
秘密があるようだが、だれがそんな遠隔地の材料を集め、
薬効を実験したのか?

葛根湯のレシピが記載された最も古い中国の文献は、
2世紀の「傷寒雑病論」。

その3世紀前、ゴビ砂漠の前漢の城塞跡などで出土する木簡文書に、
すでに同種の感染症の処方せんが残っている。

2000年以上、人々の健康を支えてきた生薬資源が今、
危機を迎えている。

甘草は、モンゴルなど砂漠周辺部の野生種。
「地下2mにも伸びる地下茎を掘るため、
採取自体が砂漠化を促進し、資源の枯渇を早めている」(小松教授)。

中国政府は、甘草や麻黄など重要生薬の輸出管理を強化。
「レアアース」に加え、「レアハーブ」問題も懸念され、
国内の製薬会社も生薬国産化を始めている。

武田薬品工業・京都薬用植物園の尾崎和男主席部員(58)は、
「甘草、大黄(だいおう)などは、自社製品を全量調達できるよう、
国内各地で栽培実験を進めている」

小松教授は、「栽培、遺伝子組み換え技術など、
生薬確保にも科学の知恵が欠かせなくなる」。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/22/132706/

2011年3月2日水曜日

イオン参入で議論に ゆれる葬祭

(日経 2011/2/5)

伝統的な葬祭文化が揺れている。
寺院からの檀家離れ、高齢化・無縁社会化が進んでいる。
葬送の形も多様化、簡素化する中、
葬式不要論のベストセラーが反響を呼んだ。
葬儀に対する現代人の意識は、大きな転換期を迎えている。

◆「料金表」の衝撃

流通大手イオンの葬祭業参入が、伝統的な仏教界に波紋。

イオンは昨年5月、葬儀に僧侶を紹介する
「寺院紹介サービス」を全国的に始めた。
通夜、葬儀などでの読経と戒名の授与がついた
数タイプの料金表を目安として示した。

これが、仏教各派で構成する全日本仏教会(全日仏)を刺激。
「8宗派の許可を得ている」との文面が。
全日仏が各宗派の本山に聴取すると、許可の事実はない。

全日仏は6月、イオン側に葬儀をビジネスではなく、
心の問題としてとらえ、本山の許可を得ているという
文言についての謝罪を求めた。

料金表に基づき、契約が成立すると、税法上、仏事が
請負業とみなされる問題も想定される、との懸念を伝えた。

イオン側は、料金表を削除するとともに、ホームページ上に、
総本山が許可したのではなく、紹介する宗教者は、
「宗教法人の寺院または宗派(8宗派の総本山)が認めた寺院のみ」と、
不適切な表現であったことを認めた。

イオンに続き、他の流通企業が葬祭事業への参加を検討する
動きもあり、寺院側にとって予断を許さない状況。

もう一つの衝撃は、宗教学者の島田裕巳氏が、
昨年初めに出した著書「葬式は、要らない」がベストセラーとなり、
葬儀の問題を議論する機運が一気に盛り上がった。

島田氏は、先進国の中でも、葬儀に多額な費用を強いている
日本の現在の葬儀事情を考察し、
葬式仏教化している仏教界の状態に疑問。

一条真也著「葬式は必要!」、
橋爪謙一郎著「お父さん、『葬式はいらない』って言わないで」
など、葬儀の意義を強調する著作物も刊行。

人の死に対し、葬儀という「けじめ」が必要であり、
遺族のグリーフケア(悲嘆からの回復)も考える必要性を指摘。

◆孤独死で直葬

島田氏の本が注目された背景には、時代の変化がある。

過疎地では、檀家がいなくなった寺院が、
自律的な運営をできなくなっている。

都市部では、寺院との関係が薄れ、葬儀の重点が
家から個人に移る中、樹木葬、散骨など、葬送の形も多様化。

高齢化、無縁化による孤独死が目立つようになり、
高い葬儀費用を経済的に負担できない所帯も増加傾向。

葬儀をせず、遺体を直接火葬場に送る「直葬」という
スタイルが増えている状況。

仏教寺院側は、危機感を募らせている。
9月中旬、全日仏による公開シンポジウム
「葬儀は誰の為に行うのか? お布施をめぐる問題を考える」が
東京で開催。

同シンポに参加した芥川賞作家で、僧侶の玄侑宗久師は、
「個々の人たちに、どれだけ寄り添えるかが、葬儀では重要」、
都市部の宗教的浮動層が行う葬儀を、
全国同一の「葬儀」として論じるのは問題だとの見解。

各宗派でも、葬儀問題について前向きに取り組み始めた。

9月の浄土宗定期宗議会では、
イオンの葬祭業参入問題が論議の的。

真言宗智山派は、11月に東京地区合同教区研修会で、
島田氏を招き、「葬儀のあり方」で激論を交わした。

浄土真宗本願寺派は11月、築地本願寺で葬儀をテーマにした
教学シンポジウムを催した。

日蓮宗は、現代宗教研究所が11月の研究発表大会で、
葬儀問題を論議、今年1月、葬儀をテーマに次世代教化研修会を開いた。

葬儀についての考え方を確認するため、冊子を発行する動きも。

浄土宗は昨年末、「浄土宗の葬儀と年回法要について」と題する
冊子を発行、宗内寺院に配布。

真宗本願寺派は、葬儀の意義を解説した
「『浄土真宗本願寺派葬儀規範』解説―浄土真宗の葬送儀礼」を刊行。

◆関係を再確認

キリスト教でも、カトリックの研究組織、オリエンス宗教研究所が、
「キリスト教葬儀のこころ」を発刊。

葬儀をめぐる波紋は広がっている。
仏教学者の末木文美士・国際日本文化研究センター教授は、
「葬式仏教は、家父長制を支えるため、近代になって確立、
戦後、核家族化が進む中、ここ20~30年を境に急速に崩れてきた。
今は、新しい葬儀の在り方を模索する過渡期」

死体処理の技術向上によって、死についてのケガレ意識が
薄まったことも大きい。

「千の風になって」の歌がヒットしたように、
死後の世界が美化されてとらえられるようになった状況も挙げる。

島田氏も、葬儀を全否定していない。
葬式には、一人の人間がさまざまな人間と結んだ関係を
再確認する機能がある。
その機能が十分に発揮される葬式が、
何よりも一番好ましい葬式かもしれない」

葬儀が必要かどうかという二項対立的な議論よりも、
葬儀の本来の意味を再考し、各人がよいと信じる形で
送られることが望まれている。

http://www.nikkei.com/life/culture/article/g=96958A90889DE0E0E5EAE2E4E4E2E2E1E2E0E0E2E3E39091EAE2E2E2;p=9694E3EBE2E6E0E2E3E2EBE7E3E6

平泉研究の深化へ連携 共同組織立ち上げへ

(岩手日報 2月18日)

県内5大学(岩手大、県立大、岩手医大、富士大、盛岡大)で
構成する「いわて高等教育コンソーシアム」は、
2011年度、平泉文化を多角的に研究する
平泉文化研究会を立ち上げる。

考古学や歴史学、中国学など、さまざまな視点から研究を展開し、
研究者同士や県教委との連携も強化。

「平泉の文化遺産」の世界遺産登録への期待が高まる中、
平泉研究の深化を目指す。
設立準備会は、岩手大、県立大、盛岡大から9人が参加。

今後の運営、活動方針などについて、意見を交わした。
同研究会は、5大学の研究者で組織。

歴史学、考古学のほか、中国学や文学、植物学など、
さまざまな分野の研究者が集まり、多面的な視点で
分野横断的に研究を進める。

当面は、各研究者がテーマを設定する。
主な活動として、
▽研究成果発表会の開催
▽平泉文化フォーラムの県教委との共催
▽研究雑誌への論文掲載―などを予定。

将来的には研究を充実、発展させるための
外部資金の獲得も視野に入れる。

同コンソーシアムは09年4月、県教委と連携覚書を取り交わし、
平泉文化の共同研究を進めてきた。

同研究会の発足により、組織的な研究体制が整い、
県教委との研究交流の充実や連携強化も図りたい。

岩手大の菅野文夫教授(日本中世史)は、
「岩手県の大学が集まった組織として、それぞれの研究者の分野、
立場で研究を進め、発展させていきたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110218_5

漢方最前線(3)日本が伝える「Kampo」

(2011年2月18日 読売新聞)

慶応大学医学部・漢方医学センターは、
お灸や煎じ薬のにおいという、漢方イメージとはかけ離れた雰囲気。

共通語は英語。
2001年以来、オーストリア、米国、ブラジル、中国--
世界各国の医学生が研修に集まり、数か月から1年間、
英語で討論し、漢方を学ぶ。
漢字の羅列だった漢方は、Kampoとして紹介、国際的な関心を集める。

日本の漢方は、西洋医学に理解されやすかったと、
同センター診療部長の渡辺賢治准教授(51)。
「実は日本の医師だけが、漢方、西洋両医学を
自在に使いこなすことができる」

中国伝統医学は、東アジア各国に伝わったが、
日本以外では漢方医(伝統医)と西洋医、二つの医師資格があり、
お互い別世界だ。

日本では、明治初期に医師を西洋医学に統一したため、
日本には「漢方医」はいない。
医学部を卒業し、さらに漢方も学んだ日本の医師は、
欧米研修や英語文献を読む機会も多く、
1980年代から漢方医療の成果を英語で発表してきた。

煎じ薬を粉末化したエキス製剤は品質が均一で、
漢方を学ばない医師にも、薬効がわかりやすい。
英語で説明しやすい。
だから、Kampoを学びに各国から留学生が集まるようになった。

国際的な関心を集める代表的な薬がある。
朝鮮人参、山椒、ショウガなどの生薬から作られる「大建中湯」。


外科出身の北島政樹・国際医療福祉大学長(69)は、
「大腸がんの手術後など、腸閉塞症状を起こす人が多いが、
大建中湯は腸閉塞を早期に回復させ、予防にも効果がある」
伝統的な胃腸薬に、手術後の主治療薬として、
新しい活用法が見いだされた形。

北島学長らは09年から、国内64医療施設で、数千人規模の
大規模臨床試験を続けている。
メイヨー・クリニックなど米国の医療機関でも効果を確認、
「欧米の研究者の目を、Kampoに向けさせる論文になる」(北島学長)。

中国も、国家戦略として伝統医学の国際化に着手。
世界各国で活用される針灸治療を、ユネスコに申請し、
昨年、世界無形文化遺産リストに採択。

「新たに、漢方のインフルエンザ治療薬も開発。
成果をアピールし、日本漢方も外に目を見開かなければならない時代」。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/22/132705/

2011年3月1日火曜日

スポーツ政策を考える:田里千代・天理大准教授(スポーツ人類学)

(毎日 2月19日)

スポーツの世界には今、閉塞感が漂っている。
社会は、多様性を認めて、受け入れる方向に変わっているにも
かかわらず、スポーツは強さや速さという、
近代スポーツを特徴付ける一つのベクトルしかないように感じる。

体育が苦手な娘を持つ母親の投書が、新聞に載った。
自分自身も走り方を教えられないので、
運動会に備えて体育の家庭教師を頼んだが、
本来は学校の体育の授業で教えてほしいと。

国語や算数などのテストでいい点を取るように、
運動会でもいい成績を収めないといけない、という発想が
浸透していることに驚いた。

文部科学省のスポーツ立国戦略は、
オリンピックに出場するようなトップアスリートを支援することに
重きが置かれ、国の力を世界にアピールする手段として、
スポーツを使っているように思える。

スポーツとは何か?

路上や空き地で踊っている若者たちがいる。
スポーツではないと、大人は言うけれど、ダンスも身体運動で、
彼らはそれで自己表現をしている。
最近は、登山やジョギングを楽しむ人たちも増えている。

そういう一般の人たちとトップのスポーツには優劣がないのに、
多様な在り方を認めない。

スポーツの定義は、時代や社会によって変化する。

スポーツマンシップやフェアプレーは、
キリスト教的価値観や英国の近代社会の世相を反映しながら、
スポーツをよりよいものとして演出するために、
付与されていった歴史。

体育の教員を目指す学生たちに、言っている。
「ちょっと立ち止まって振り返り、今は木に花は咲いているが、
その根っこはどうなっているのか、考えてほしい。
見えない根っこが腐ってきたら、その木は倒れてしまう」。

スポーツは、子どもたちに夢と感動を与えて、
人格の形成に役立っているのか?
アスリートは、青少年のモデルになっているのか?

食の世界は、スローフードの登場によって、幅が広がった。
じっくり味わって、時には野菜から栽培して、
という食との関わり方もあることを、新たな価値観として提示。

スローフードという発想や生き方は、
これからのスポーツを考えるうえで、ヒントになる。

伝統スポーツや民族スポーツは、速さや強さだけではなく、
独特な美しさや動物をまねた動きなど、競う基準や意味もさまざま。
生活に欠くことができないものとして、受け継がれてきた。

各駅停車みたいなもので、ゆっくり風景を眺めながら季節を感じる。
早く目的地に運んでくれる新幹線もいいが、
気が変わったら乗り換えたり、後戻りしたりしてもいい、
各駅停車という、違う旅の楽しみ方があってもいい。

スポーツに限らず、多様なあり方を認める社会になっていけばいい。
==============
◇たさと・ちよ

1968年生まれ。カナダ・レスブリッジ大卒。早大大学院修了。
日本スポーツ人類学会理事。「知るスポーツ事始め」(編著)

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/19/20110219dde035070033000c.html

岩手・医療環境 満足感3.8ポイント減少 沿岸で低く、診療の県内格差反映

(2011年2月19日 毎日新聞社)

県内で医療を受ける環境について、
満足感を持っている人が45・9%、前回調査(08年度)より3・8ポイント減少、
県のまとめた医療と健康に関する県民意識調査で分かった。

沿岸地域で満足度が低く、地域医療の県内格差を反映した形。
調査は10年11月5日~12月3日、
20歳以上の男女計5000人を対象に実施。
有効回収率は、71・1%。

調査結果によると、地域医療の満足度で「満足」、「だいたい満足」と
答えた人は45・9%、半数に届かなかった。

保健医療圏別では、高度専門医療機関がある盛岡が66・5%と
最も満足度が高かった。
宮古は25・7%、釜石は最低の24・9%、
地域によって満足度に大きな差がみられた。

満足していない人に不満な点を聞いたところ、
「高度・専門的な医療が受けられない」が53・4%で最多。
「産科、小児科、眼科、耳鼻科などの必要な診療科がない」51・2%。

医師不足による診療科の休診が、
住民に不安を与えている実態。
医師不足の認知度では、前回比0・2ポイント減の94・6%が、
聞いたことがあると回答。

県が進めている県立病院などの大きな病院と診療所(開業医)の
役割分担について、「知っている」と答えた人は
同2・6ポイント増の50・1%。

県医療推進課の佐々木亨・地域医療推進担当課長は、
満足度が下がったことについて、「大きな変化とは見ていない。
医師不足が解消されていない実態が、数字に表れたのだろう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/21/132606/

夜明け早まり春ホルモン 脳内に、光で季節感知

(2011年2月21日 共同通信社)

夜明けの光が照り始める時間が早まることで、
生物が春の訪れを知る仕組みを、
理化学研究所神戸研究所や近畿大、京都大のチームが突き止めた。

理研の上田泰己プロジェクトリーダーは、
「生き物が季節を感じ取り、発情期を迎えたり冬眠したりする
生態の一端が分かった。
人間でも、季節によって気分が浮き沈みする季節性情動障害が
知られており、治療に寄与できるかもしれない」

チームは、春になると脳内で作られる特有のホルモンを、
2008年に名古屋大と共に発見。

今回、マウスに光を当てる時間を調節し、
昼間が短い冬の日照条件(昼8時間、夜16時間)で、3週間飼育。

この状態では、春ホルモンはほとんど分泌されなかったが、
夜明けを8時間早めると、分泌されるようになった。

日没を8時間遅らせて、昼を長くしても春ホルモンは作られず、
夜明けの光で、季節変化を認識していることを確かめた。

春ホルモンが出るようになるには、夜明けが早まると働き始める
遺伝子「Eya3」が必要なことも発見。

米科学誌カレント・バイオロジーに掲載。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/21/132628/

2011年2月28日月曜日

評価される先生(6)専門家の活用が有効

(読売 2月17日)

学校評価や教員評価は、学校の改善や教員の能力向上を狙って
始まったが、期待された目的を果たしているのだろうか?
小松郁夫・玉川大学教職大学院教授に聞いた。

――文部科学省が、学校評価の模範的な手法をガイドラインとして公表。

「その実施要件を満たしている学校は、多くない。
評価が不可能な目標を設定したり、アンケート調査の分析が
お粗末だったりと、改善に結びつけることが十分にできていない」

保護者や地域住民らによる『学校関係者評価』も、課題が多い。
委員たちは、学校に有意義な批判ができる『辛口の友人』に
ならないといけないが、中には教育に不慣れな人もいて、
学校をチェックするのが難しい」

――きちんとチェックできるようにするにはどうしたらいいか?

教育の専門家による第三者評価が有効。
費用がかさむのが難点だが、各県教委の指導主事が、
他県の学校を評価しに行くことから始めてはどうか」

――文科省調査によると、教員評価は昨年4月現在、
47都道府県と19政令指定都市のすべてで実施され、
評価結果を昇給や昇任などに反映する自治体は57。
学校現場では、成果主義的な活用に消極的な雰囲気がある。

「職員室の人間関係が悪化することへの不安もある。
納税者である保護者は、一生懸命仕事をした教員に、
高い給料をあげる仕組みを望むのではないか。
教員も、意識を変える必要がある」

――成果を上げた優秀な教員を国や自治体が
表彰する制度が広がっている。

「まだ十分に機能していない。
指導力不足教員の排除ばかりが先行している。
これでは、教員が萎縮する」

――授業評価は、比較的順調に定着している。

教員も保護者も、『授業をよくしたい』という思いは共通。
目的が明確で、日々の活動につなげやすい」

――今後はどうするべきなのか?

いつまでも同じ基準や観点で評価していては、
改善が止まってしまう。
教師のレベルアップに応じて、評価指標も変えていく必要。
学校評価でも同じ。
制度を導入しただけで、満足してはいけない」

◆こまつ・いくお

1947年、秋田県生まれ。
国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長、
文科省「学校評価の推進に関する調査研究協力者会議」
副座長などを歴任。
専門は学校経営学、教育行政学、学校論。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110217-OYT8T00213.htm

最後のみなとまちづくり懇談会開催

(東海新報 2月25日)

大船渡市主催の「みなとまちづくり懇談会」。
岸壁にも近い大船渡駅周辺のにぎわい向上を目指し、
5年間にわたり、地域住民らが意見を交わしてきた。

新大船渡駅舎整備計画を確認したほか、
駅周辺を紹介する案内看板のデザインなどについて協議。

この懇談会は、「大船渡駅・大船渡港周辺のにぎわい再生と
環境にやさしいまちづくり」を目標とした、都市再生整備計画の一環、
平成18年度からスタート。

計画区域は、同駅を中心とし、市民文化会館・リアスホールや
大船渡魚市場を含む約248㌶。

事業総額は約40億円、このうち17億円が国からの交付金。
事業費は、リアスホールや加茂公園、笹崎公園などの整備、
現在建設が進む新大船渡魚市場、大船渡駅舎改築事業の
財源などとして活用。

水産や教育など、分野の枠に縛られずに予算を組める
「使い勝手の良さ」がある一方、国からは住民との合意形成を行う場を
求められ、懇談会の場で意見集約が行われてきた。

計画は、22年度までの5年間、懇談会も今回が最後。
市関係者や商工団体の関係者、大船渡青年会議所のメンバーら
約30人が出席。

これまでの協議内容を振り返った上で、市側から春以降建築工事に入る
新大船渡駅舎の整備計画が報告。

意見交換後は3グループに分かれ、駅前に設置する
観光案内板について協議。
テーブル上に駅舎の完成予定図や設置看板のモデル図などを並べ、
観光客らが活用しやすいデザインを話し合った。

事務局側が示したイメージ案では、
駅周辺と市全体の名所紹介をそれぞれまとめた
2種類の地図を並べたデザイン。

各グループとも、看板を独立して設置するのではなく、
駅舎の壁に直接はめ込む形を提案。

「駅全体がスッキリする」、「看板による陰が生まれず、
防犯にもつながる」といった意見。

季節に合わせて催事情報を更新できるような機能や、
携帯電話で情報を読み取ることができるQRコード掲示を望む声も。

市ではこうした意見をふまえて再度検討し、
23年度から整備に乗り出す。

新駅舎は、多目的ホールを持つ2階建て構造で、
線路をまたいで東西をつなぐ自由通路も整備。

これまでの懇談会でも、ホールや自由通路のあり方について
議論を交わしてきた。

仮駅舎設置、旧駅舎解体を経て、5月以降に建築工事が本格化し、
23年度内の完成を目指す。

財源は、22年度に予算化していた整備費を繰り越す予定、
JRに整備委託した事業費は約6億6000万円。
駅舎は、市所有の建物となるが、完成後は民間業者に
管理を委託する指定管理者制度導入を見込んでいる。

http://www.tohkaishimpo.com/

3-4年後に貿易額倍増 日印EPA、期待と課題

(2011年2月17日 共同通信社)

前原誠司外相とインドのシャルマ商工相が、経済連携協定(EPA)で、
インド側は、今後3~4年で両国間の貿易額倍増を目標に掲げるなど、
日印双方が経済効果に期待を高めている。

焦点だったインド人看護師の受け入れについては、
結論を先送りするなど課題も残った。

「日本とインドが、これまでに結んだどんな連携協定より
中身のあるものだ」。
シャルマ氏は、日印EPAが高度な貿易自由化を実現する
野心的な内容だと胸を張った。

日本からの輸出では、現在5~10%がかけられている
鉄鋼製品や家電、自動車部品のマフラー(消音装置)の関税が、
今後5~10年で撤廃。
盆栽や桃、柿など、日本が誇る農水産品も5~10年で無税。

インドからの輸入では、ほぼすべての鉱工業品の関税が即時撤廃。
エビやカレー粉、紅茶なども無税になるが、
コメや麦、牛肉、豚肉などは除外。

インド人が、日本で看護師や介護福祉士として就労できる
機会の拡大については、EPA発効後2年以内に結論を出すことを目指し、
継続協議となった。

シャルマ氏は、「インドは、医療分野で世界的に貢献してきた。
看護師や介護福祉士が、日本で良い仕事ができることを願っている」、
早期受け入れを求めた。

※経済連携協定(EPA)

特定の国・地域との間で貿易、投資などを自由化する協定、
自由貿易協定(FTA)の一種。
鉱工業製品や農作物の関税撤廃に加え、サービス貿易の障壁削減、
労働力の移動も進める。
環太平洋連携協定(TPP)の論議で、貿易自由化への機運が高まる中、
政府はEPAの交渉も加速。
日本は、メキシコやスイス、東南アジア諸国連合(ASEAN)など、
11カ国・地域とEPAを発効、現在はオーストラリアなどと交渉中。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/17/132502/

2011年2月27日日曜日

基礎学力定着の必要性強調 花巻で教研発表会

(岩手日報 2月18日)

第54回県教育研究発表会(県教委主催)は、
花巻市の花巻温泉で2日間の日程で始まった。

「真の学力向上をめざして」をテーマに、県内の教員ら約1800人が
教育の向上のため、研さんを深めている。

初日は、全体会を開催。
黒沢尻北高の上原耕太郎校長は、
「高校入学時の学力状況について」と題して報告。

大手進学情報業者のデータを基に、
「(2008年度の)本県の専門学校進学率が、東北で最も高いのは、
学力不足で大学入学や就職ができず、
やむを得ず行くという現状の表れ」と指摘。

他県との高校入学時の学力差が、
そのまま大学入試センター試験時の差になっていることに触れ、
生徒の希望する進路達成のため、
中学までの基礎学力定着の必要性を強調。

家庭学習の在り方と部活動の関わりをテーマにしたシンポジウムは、
学校長や県スポーツ少年団の谷藤文明本部長らが討論。

「家庭学習と部活動は、対立するものでなく、両立すべきもの」、
「生徒と教員のために、スポーツ休養日を徹底する必要がある」、
「家庭学習の指導は、家庭と連携して進めるべき」などの意見。

会場からも、部活動の内容や休養日の設定について、
次々と質問が出され、関心の高さをうかがわせた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110218_7

冬眠クマ、驚くほど省エネ 代謝活動は4分の1に

(2011年2月18日 共同通信社)

冬眠中のアメリカクロクマは、生命を維持するための
代謝活動が、通常時の4分の1のレベルにまで低下、
米アラスカ大フェアバンクス校などのチームが、
18日付の米科学誌サイエンスに発表。

体温の低下は、6度ほどにとどまっており、
動物は体温が10度下がると、代謝が半分程度に低下するとの
通説を覆す結果。

厳しい自然環境で暮らすクロクマの、驚くほどの"省エネ"が示された。
5~7カ月に及ぶ冬眠中には、筋肉や骨の量は減らないことが
分かっており、チームは今回のデータを骨粗しょう症防止の薬や、
将来の宇宙旅行などの分野に応用できるのではないか。

研究対象は、アラスカ中南部などで人里に近づき捕獲された5頭。
人工の巣に入れ、食べ物や飲み物は与えずに、
赤外線カメラや体内に埋め込んだ無線送信機で、
冬眠中の生態を調べた。

クロクマの通常の体温は、37~38度。
冬眠中は30度を下回ることはなく、数日間隔で30~36度の範囲を上下。
冬眠から覚める前には、36~37度に上昇。

代謝活動は、大幅に低下したまま推移。
心拍数も、通常時の1分間55回程度から14回程度に減っていた。
冬眠から覚めて2~3週間は、
体温が上がっても代謝活動レベルは半分ほど。

妊娠した雌の体温は、冬眠中でも高いまま。
胎児の成長には、体温の低下や変動は望ましくない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/18/132557/

高齢者の所得格差、がん死亡リスクに反映…日本福祉大調査

(2011年2月17日 読売新聞)

高齢者で所得の低い人は、高い人に比べ、がんで死亡する危険性が
2倍高いことが、日本福祉大などの研究グループの調査でわかった。

愛知、高知県の65歳以上の高齢者で、
要介護認定や、がん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器系疾患の治療を
受けていない1万5025人を対象、2008年まで、最長約4年間調査。

調査開始時点にアンケートした所得、教育年数などの情報と、
死亡原因を照らし合わせた。

男性高齢者で、所得400万円以上の層に比べ、
200万円未満の層では、がんによる死亡のリスクは1・9倍高かった。

男性高齢者で、教育年数が13年以上の層に対し、
6~9年の層では、がんによる死亡リスクは1・46倍高かった。

過去の調査で、教育年数が少ないほど健診の受診率が
低いことがわかっている。

健診受診率と死亡率との関係を分析したところ、
1年以内に健診を受けた高齢者に対し、
受けなかった層は、がんで約1・3倍、
心疾患で約1・6~1・7倍死亡リスクが高かった。

日本福祉大健康社会研究センター長の近藤克則教授(社会疫学)は、
「社会経済階層が低いほど、喫煙や過剰な飲酒など、
がんになりやすい生活習慣を持つ傾向にあり、
健康意識が低い人が多い。
病院にかかる金銭的な余裕がないことも、
重症化を招いていると推測」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/17/132537/